(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】円偏光板
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240226BHJP
G02B 1/111 20150101ALI20240226BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20240226BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240226BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B1/111
H05B33/02
H05B33/14 A
(21)【出願番号】P 2021537018
(86)(22)【出願日】2019-11-04
(86)【国際出願番号】 KR2019014804
(87)【国際公開番号】W WO2020091551
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-03-03
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-10
(31)【優先権主張番号】10-2018-0133584
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・クン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・ヒ・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ムン・キュ・ジョ
(72)【発明者】
【氏名】ドク・ファン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ドン・チュン・キム
【合議体】
【審判長】神谷 健一
【審判官】関根 洋之
【審判官】本田 博幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/110503(WO,A1)
【文献】特開2017-165941(JP,A)
【文献】特開2014-44394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
OLEDパネルおよび前記OLEDパネルの一面に配置された円偏光板を含むOLED装置であって、
前記OLEDパネルは、410nm~500nmの領域の波長に対する平均反射率が45%以下であり、600nm~650nmの領域の波長に対する平均反射率が50%以下であり、
前記円偏光板は、反射防止フィルム、偏光子、R(450)/R(550)値が0.99~1.01であり、前記偏光子の吸収軸と37~43度をなす遅相軸を有する位相差フィルム、および粘着剤層を順に含
み、前記円偏光板の430nmの波長に対する透過率が30%以下であ
り、前記粘着剤層は370nm~430nmの範囲内の波長で最大吸光度を示す染料を含み、前記円偏光板の460nmおよび550nmの波長に対する透過率はそれぞれ40%以上である、
OLED装置(R(λ)はλnm波長に対する面内位相差値である。)。
【請求項2】
前記反射防止フィルムのヘイズは1%以下である、請求項1に記載の
OLED装置。
【請求項3】
前記反射防止フィルムの最低反射波長は400nm~530nmの範囲内である、請求項1または2に記載の
OLED装置。
【請求項4】
前記偏光子の550nm波長に対する透過率は40%~50%の範囲内である、請求項1~3のいずれか一項に記載の
OLED装置。
【請求項5】
前記位相差フィルムの550nm波長に対する面内位相差値は135nm~142nmである、請求項1~4のいずれか一項に記載の
OLED装置。
【請求項6】
前記位相差フィルムは液晶重合フィルムまたは高分子延伸フィルムである、請求項1~5のいずれか一項に記載の
OLED装置。
【請求項7】
前記円偏光板の430nmの波長に対する透過率は4%以上である、請求項1~
6のいずれか一項に記載の
OLED装置。
【請求項8】
前記円偏光板が付着されたOLEDパネルの550nmの波長に対する反射率は1.7%以下である、請求項
1~7のいずれか一項に記載のOLED装置。
【請求項9】
前記円偏光板が付着されたOLEDパネルの反射色はL
*a
*b
*色座標基準でa
*<8およびb
*>-8.5を満足する、請求項
1~
8のいずれか一項に記載のOLED装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は円偏光板に関する。
【0002】
本出願は2018年11月2日付提出された大韓民国特許出願第10-2018-0133584号に基づいた優先権の利益を主張し、該当大韓民国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【背景技術】
【0003】
偏光子および位相差フィルムを基本的に含んでいるいわゆる円偏光板は、OLEDパネルのOff状態で表面反射を低くするために使用され得る。例えば、特許文献1(日本公開特許平8-321381号)では有機発光装置で透明電極側に円偏光板を配置する方法が開示されている。円偏光板に使用する上記位相差フィルムが逆分散特性を有する場合、反射色感が自然であるため最も優秀であるが、材料の特性上値段が非常に高価である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願はフラットな分散特性を有する位相差フィルムを使用して反射色感を改善できる円偏光板および上記円偏光板を含むOLED装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願は円偏光板に関する。
図1は、本出願の円偏光板を例示的に示す。
図1に示した通り、本出願の円偏光板100は反射防止フィルム10、偏光子20、位相差フィルム30、および粘着剤層40を順に含むことができる。上記位相差フィルムはフラットな分散特性を有することができる。上記位相差フィルムは上記偏光子の吸収軸と37度~43度をなす光軸を有することができる。上記円偏光板は430nm波長に対する透過率が30%以下であり得る。
【0006】
本出願はこのような円偏光板を通じて、フラットな分散特性を有する位相差フィルムを使用しても反射色感を改善することができる。以下、本出願の円偏光板について具体的に説明する。
【0007】
反射防止フィルムの反射率は、円偏光板が後述するOLEDパネルに付着された状態で測定された反射率が約2.0%%以下、1.95%以下、1.85%以下、1.75%以下、1.65%以下または1.50%以下となるようにする範囲内で調節され得る。上記反射率は視感反射率Y(D65)を意味し得る。
【0008】
上記反射防止フィルムの550nm波長に対する反射率は0.1%~1.2%範囲内であり得る。反射防止フィルムの550nm波長に対する反射率は具体的には、0.1%以上、0.2%以上、0.4%以上または0.6%以上であり得、1.2%以下、1.1%以下、1.0%以下または0.9%以下であり得る。
【0009】
反射防止フィルムの380nm~780nm波長の光に対する透過率が90%以上または95%以上であり得る。反射防止フィルムのヘイズは例えば1%以下であり得る。反射防止フィルムのヘイズの下限は特に制限されないが、例えば、0.01%以上であり得る。
【0010】
反射防止フィルムはCIE 1976に定義された方法に則って決定されたL*a*b*色座標基準a*>0、b*>0およびa*<b*を満足することができる。このような反射防止フィルムの使用を通じて、フラットな分散特性を有する位相差フィルムを使用して反射色感を改善することがさらに有利となり得る。
【0011】
反射防止フィルムは最低反射波長が400nm~530nm範囲内であり得る。本明細書で最低反射波長は、反射防止フィルムの波長に対する反射率スペクトルにおいて反射率が最も低く現れる地点の波長を意味し得る。反射防止フィルムの最低反射率は例えば1.0%以下であり得る。本明細書で最低反射率は反射防止フィルムの波長に対する反射率スペクトルにおいて反射率が最も低く現れる地点の反射率を意味し得る。
【0012】
反射防止フィルムは波長に対する反射率スペクトルがU字状グラフを示し得る。
図2(a)はU字状グラフを例示的に示し、
図2(b)はW字状グラフを例示的に示す。しかし、
図2はU字状グラフを例示的に説明するための図面であり、本出願の範囲が
図2に制限されるものではない。反射防止フィルムは380nm~780nm波長範囲内で最低反射率を示す反射帯域、例えば、反射率が1%以下である波長帯域が1個(
図2(a)のR
1領域)存在し得る。このような、U字状グラフは380nm~780nm波長範囲内で最低反射率を示す反射帯域が2個ある領域(
図2(b)のR
1、R
2)であるW字状グラフと区分される概念であり得る。このような反射防止フィルムの使用を通じて、フラットな分散特性を有する位相差フィルムを使用して反射色感を改善することがさらに有利となり得る。
【0013】
反射防止フィルムの光学物性が上記範囲内である場合、材料は適切に選択され得る。例えば、反射防止フィルムは低屈折層を含むことができる。反射防止フィルムの光学物性を上記範囲内で調節することは公知である。例えば、反射防止フィルムの最低反射波長は、低屈折層の厚さを厚くするほど長波長に移動し、低屈折層の厚さを薄くするほど短波長に移動する傾向がある。例えば、反射防止フィルムの最低反射率は低屈折材料の屈折率が低くなるほど低くなる傾向がある。
【0014】
低屈折層は低屈折物質を含むことができる。一つの例示において、低屈折物質は低屈折無機粒子であり得る。低屈折無機粒子の550nm波長に対する屈折率は例えば、1.5以下、1.45以下または1.40以下であり得る。上記屈折率の下限は例えば、1.0以上、1.1以上、1.2以上または1.3以上であり得る。
【0015】
一つの例示において、低屈折無機粒子はシリカ系粒子であり得る。シリカ系粒子は例えば中空シリカ、メソポーラスシリカ(mesoporous silica)等を例示することができる。他の一つの例示において、低屈折無機粒子としてはフッ化マグネシウム(MgF2)を使用することができる。
【0016】
一つの例示において、低屈折無機粒子はナノサイズの粒子であり得る。低屈折無機粒子の平均粒径は例えば10nm~700nm、10nm~500nm、10nm~300nm、10nm~200nmまたは10nm~100nmの範囲内であり得る。
【0017】
低屈折層の厚さは本出願の目的を考慮して適切に調節され得る。低屈折層の厚さは、例えば、10nm~500nm、10nm~300nm、10nm~200nm、50nm~200nmまたは100nm~200nm範囲内であり得る。前述した通り、反射防止フィルムの最低反射波長は低屈折層の厚さに応じて調節できるので、所望の最低反射波長を考慮して、低屈折層の厚さを上記範囲内で適切に調節することができる。
【0018】
低屈折層はバインダー樹脂をさらに含むことができる。低屈折無機粒子はバインダー樹脂内に分散された状態で存在し得る。
【0019】
低屈折層はバインダー樹脂100重量部対比低屈折無機粒子を30~600重量部で含むことができる。具体的には、低屈折無機粒子はバインダー樹脂100重量部対比30~500重量部、30~400重量部、30~300重量部30~200重量部または100~200重量部の範囲で含まれ得る。低屈折無機粒子の含量が過度に多くなる場合、反射率が高くなり得、表面凹凸が過度に多く発生して耐スクラッチ性、防汚性のような表面特性が低下し得る。
【0020】
バインダー樹脂は例えば光重合性化合物であり得る。具体的には、光重合性化合物は(メタ)アクリレート基またはビニル基を含む単量体またはオリゴマーを含むことができる。より具体的には、光重合性化合物は(メタ)アクリレート基またはビニル基を1以上、または2以上、または3以上含む単量体またはオリゴマーを含むことができる。
【0021】
(メタ)アクリレート基を含む単量体またはオリゴマーの具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、ブチルメタクリレートまたはこれらの2種以上の混合物、またはウレタン変性アクリレートオリゴマー、エポキシドアクリレートオリゴマー、エーテルアクリレートオリゴマー、デンドリティックアクリレートオリゴマー、またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。この時、上記オリゴマーの分子量は1,000~10,000範囲内であることが好ましい。
【0022】
ビニル基を含む単量体またはオリゴマーの具体的な例としては、ジビニルベンゼン、スチレンまたはパラメチルスチレンが挙げられる。
【0023】
一方、光重合性化合物は前述した単量体またはオリゴマーの他にフッ素系(メタ)アクリレート系単量体またはオリゴマーをさらに含むことができる。上記フッ素系(メタ)アクリレート系単量体またはオリゴマーをさらに含む場合、上記(メタ)アクリレート基またはビニル基を含む単量体またはオリゴマーに対する上記フッ素系(メタ)アクリレート系単量体またはオリゴマーの重量比は0.1%~10%範囲内であり得る。
【0024】
反射防止フィルムは基材層をさらに含むことができ、低屈折層は基材層の一面に形成されていてもよい。
【0025】
基材層としては光透過性樹脂を含むことができる。したがって、基材層は光透過性基材層であり得る。基材層は例えば380nm~780nm波長の光に対する透過率が90%以上であり得る。基材層は例えば380nm~780nm波長の光に対するヘイズが1%以下であり得る。このような基材層の使用を通じて、透過度は高く維持しつつ、反射率は低くできる反射防止フィルムを提供することがさらに有利となり得る。
【0026】
基材層はトリアセチルセルロース(TAC)フィルム、環状オレフィン系高分子(cycloolefin polymer)フィルム、ポリ(メタ)アクリレート系フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリノルボルネン(polynorbornene)フィルムおよびポリエステルフィルムからなる群から選択された1種以上を含むことができる。基材層の厚さは生産性などを考慮して10μm~300μm範囲内であり得るが、これに限定するものではない。
【0027】
低屈折層は低屈折層形成用組成物を基材層上にコーティングおよび硬化することによって製造することができる。低屈折層形成用組成物は上記低屈折無機粒子を含むことができ、ひいては上記バインダー樹脂をさらに含むことができる。後述するように、基材層上にハードコーティング層が形成されている場合、上記低屈折層形成用組成物をハードコーティング層上にコーティングおよび硬化することによって低屈折層を形成することができる。
【0028】
低屈折層形成用組成物をコーティングする方法は特に制限されず、スピンコーティング、バーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティングまたはブレードコーティングなどの公知のコーティング方法によって遂行され得る。
【0029】
低屈折層形成用組成物を硬化する方法は特に制限されず、例えば、光の照射または熱の印加によって遂行され得る。上記低屈折層形成用組成物を光硬化することは、200nm~400nm波長の紫外線または可視光線を照射することによって遂行され得る。また、光照射時の露光量は100mJ/cm2~4,000mJ/cm2範囲内であり得る。露光時間も特に限定されるものではなく、使われる露光装置、照射光線の波長または露光量により適切に変化させることができる。
【0030】
反射防止フィルムはハードコーティング層をさらに含むことができる。ハードコーティング層は基材層と低屈折層の間には存在し得る。ハードコーティング層は反射防止フィルムの硬度を向上させることができる。これを通じて、反射防止フィルムをディスプレイ装置の最外郭に位置する光学フィルム、すなわちウインドウフィルムとして使用することができる。
【0031】
ハードコーティング層の屈折率範囲は本出願の目的を損傷させない範囲内で適切に選択され得る。ハードコーティング層は例えば550nm波長に対する屈折率が例えば、1.5以下、1.40または1.30以下であり得る。上記屈折率の下限は例えば、1.0以上、1.1以上または1.2以上であり得る。
【0032】
ハードコーティング層としては通常的に知られているハードコーティング層を特に制限なく使用することができる。ハードコーティング層は例えば光硬化性樹脂を含むことができる。光硬化性樹脂は光透過性樹脂であり得る。ハードコーティング層に含まれる光硬化性樹脂は紫外線などの光が照射されると重合反応を起こし得る光硬化型化合物の重合体であって、当業界で通常的なものであり得る。具体的には、光硬化性樹脂はウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシドアクリレートオリゴマー、ポリエーテルアクリレート、およびポリエーテルアクリレートからなる反応性アクリレートオリゴマー群;およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチレンプロピルトリアクリレート、プロポキシレイテッドグリセロールトリアクリレート、トリメチルプロパンエトキシトリアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、プロポキシレイテッドグリセロールトリアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、およびエチレングリコールジアクリレートからなる多官能性アクリレート単量体群から選択される1種以上を含むことができる。
【0033】
ハードコーティング層は光硬化性樹脂に分散された有機または無機微粒子をさらに含むことができる。ハードコーティング層に含まれる有機または無機微粒子の具体的な例は限定されず、例えば上記有機または無機微粒子はアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシド樹脂およびナイロン樹脂からなる群から選択される1種以上の有機微粒子や酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化インジウム、酸化錫、酸化ジルコニウムおよび酸化亜鉛からなる群から選択される1種以上の無機微粒子であり得る。有機または無機微粒子の粒径は具体的に限定されず、例えば有機微粒子は1~10μmの粒径を有することができ、無機粒子は1nm~500nmまたは1nm~300nmの粒径を有することができる。上記有機または無機微粒子の粒径は体積平均粒径で定義され得る
【0034】
ハードコーティング層の厚さは例えば0.1μm~100μmの範囲内であり得る。ハードコーティング層を適用した反射防止フィルムの鉛筆硬度は例えば2H以上または4H以上であり得る。このような範囲内で、反射防止フィルムをディスプレイ装置の最外郭のウインドウフィルムとして使用する場合にも、透明ディスプレイ素子を外部から保護することが有利となり得る。
【0035】
ハードコーティング層は例えばハードコーティング層形成用組成物を基材層上にコーティングおよび硬化することによって製造することができる。ハードコーティング層形成用組成物は上記光硬化性樹脂を含むことができ、必要な場合、上記有機または無機微粒子をさらに含むことができる。
【0036】
ハードコーティング層形成用組成物を硬化する方法は特に制限されず、例えば、光の照射または熱の印加によって遂行され得る。ハードコーティング層形成用組成物を光硬化することは、200nm~400nm波長の紫外線または可視光線を照射することによって遂行され得る。また、光照射時の露光量は100mJ/cm2~4,000mJ/cm2範囲内であり得る。露光時間も特に限定されるものではなく、使われる露光装置、照射光線の波長または露光量により適切に変化させることができる。
【0037】
低屈折層形成用組成物はまたはハードコーティング層形成用組成物は溶媒をさらに含むことができる。上記溶媒は有機溶媒であり得る。有機溶媒としては炭化水素系、ハロゲン化炭化水素系またはエーテル系の溶媒を使用することができる。炭化水素系溶媒の例としてはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、n-デカン、n-ドデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン溶媒などが挙げられる。ハロゲン化炭化水素系溶媒の例としては四塩化炭素、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロベンゼン溶媒などが挙げられる。エーテル系溶媒の例としてはテトラヒドロフラン、チオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶媒などが挙げられる。
【0038】
低屈折層形成用組成物はまたはハードコーティング層形成用組成物は任意の添加剤をさらに含むことができる。このような添加剤としては、例えば、硬化性樹脂の硬化を補助する硬化剤や触媒またはラジカル開始剤や陽イオン開始剤などの開始剤、揺変性付与剤、レベリング剤、帯電防止剤、消泡剤、酸化防止剤、ラジカル生成物質、有無機顔料乃至は染料、分散剤、熱伝導性フィラーや絶縁性フィラーなどの各種フィラー、機能性高分子または光安定剤などが例示され得るがこれに制限されるものではない。
【0039】
本明細書で用語偏光子は偏光機能を有するフィルム、シートまたは素子を意味する。偏光子は多様な方向に振動する入射光から一方向に振動する光を抽出できる機能性素子である。
【0040】
本明細書で用語偏光子と偏光板は互いに区別される対象を指し示す。用語偏光子は偏光機能を有するフィルム、シートまたは素子のそれ自体を意味し、用語偏光板は、上記偏光子の一面または両面に積層されている他の要素を含む対象を意味する。上記で他の要素としては偏光子の保護フィルム、反射防止フィルム、位相差フィルム、粘着剤層、接着剤層、表面処理層などが例示され得るが、これに制限されるものではない。本出願の円偏光板によると、上記偏光子の一面または両面に付着された保護フィルムを含んでもよく、含まなくてもよい。偏光子の一面または両面に付着された別途の保護フィルムを含まなくても反射防止フィルムおよび/または位相差フィルムが偏光子の保護基材として作用することができる。
【0041】
本出願で偏光子としては、吸収型線偏光子を使用することができる。このような偏光子としては、PVA(poly(vinyl alcohol))偏光子が知られている。基本的には、本出願では偏光子としては公知の偏光子を使用することができる。一例示においては公知のPVA(poly(vinyl alcohol))偏光子として、下記の特性を有する偏光子が適用され得る。
【0042】
偏光子の550nm波長に対する透過率は40%~50%範囲内であり得る。上記透過率は具体的には、42%~43%または43.5%~44.5%範囲内であり得る。上記透過率は550nm波長に対する偏光子の単体(Single)透過率を意味し得る。上記偏光子の単体透過率は、例えば、スペクトロメーター(V7100、Jasco社製)を使用して測定することができる。例えば、偏光子試料(上部および下部保護フィルム含まず)を機器に載置した状態でairをbase lineとして設定し、偏光子試料の軸を基準偏光子の軸と垂直および水平に整列した状態でそれぞれの透過率を測定した後に単体透過率を計算することができる。
【0043】
通常、PVA系吸収型線偏光子は上記のような単体透過率を示し、本出願ではこのようなPVA系吸収型線偏光子が適用され得るが、上記のような単体透過率を示す限り適用され得る偏光子の種類は上記に制限されない。
【0044】
PVA系偏光子は、一般的にPVAフィルムまたはシートおよび上記PVAフィルムまたはシートに吸着配向された二色性色素またはヨウ素のような異方吸水性物質を含むことができる。
【0045】
PVAフィルムまたはシートは、例えば、ポリビニルアセテートをゲル化して得ることができる。ポリビニルアセテートとしては、ビニルアセテートの単独重合体;およびビニルアセテートおよび他の単量体の共重合体などが例示され得る。上記でビニルアセテートと共重合される他の単量体としては、不飽和カルボン酸化合物、オレフィン化合物、ビニルエーテル化合物、不飽和スルホン酸化合物およびアンモニウム基を有するアクリルアミド化合物などの一種または二種以上が例示され得る。
【0046】
ポリビニルアセテートのゲル化度は、一般的に約85モル%~約100モル%または98モル%~100モル%程度である。線偏光子のポリビニルアルコールの重合度は、一般的に約1,000~約10,000または約1、500~約5,000であり得る。
【0047】
PVA偏光子は、PVAフィルムまたはシートに、染色工程と延伸工程を経て製造される。必要な場合、上記偏光子の製造工程は膨潤、架橋、洗浄および/または乾燥工程をさらに含むことができる。
【0048】
例えば、上記で染色工程は異方吸水性物質であるヨウ素をPVAフィルムまたはシートに吸着させるための工程であって、ヨウ素およびヨウ化カリウムを含む処理槽内に上記PVAフィルムまたはシートを浸漬させて遂行できるが、この過程で処理槽内のヨウ素およびヨウ化カリウムの濃度を調節する方式で上記単体透過率の調節が可能である。
【0049】
染色工程でPVAフィルムまたはシートはヨウ素(I2)、KIなどのヨウ化物および/またはほう酸化合物(ほう酸またはほう酸塩)等を含む染色液または架橋液に浸漬され、この過程でヨウ素などの異方吸水性物質がPVAフィルムまたはシートに吸着する。したがって、上記過程で染色液内の上記化合物の濃度に応じて偏光子に吸着する異方吸水性物質の種類乃至は量が決定され、それにより偏光子の特定波長の光に対する吸収率と透過率が決定され得る。
【0050】
例えば、上記染色液に存在できるヨウ素化合物の種はヨウ化物(M+I-)とヨウ素(I2)から由来したI-、I2、I3
-またはI5
-などがあり得る。ところが、上記化合物のうちI-は吸収波長範囲が約190nm~260nmであり、色感影響は小さく、I2は吸収波長範囲が約400nm~500nmであり、色感は主にレッド(red)であり、I3
-は吸収波長範囲が約250nm~400nmであり、色感は主にイエロー(Yellow)であり、線形構造のI5
-は吸収波長範囲が観測されず、色感影響は小さく、曲がった構造のI5
-は吸収波長範囲が約500nm~900nmであり、色感は主にブルー(blue)である。
【0051】
上記位相差フィルムはフラットな分散特性を有することができる。本明細書でフラットな分散特性は波長が増加するにつれ位相差値が一定な特性を意味し得る。一つの例示において、上記フラットな分散特性は、位相差フィルムのR(450)/R(550)値が0.99~1.01であることを意味し得る。また、上記フラットな分散特性によると、位相差フィルムのR(650)/R(550)値が0.99~1.01であり得る。上記でR(λ)はλnm波長に対する面内位相差値を意味し得る。フラットな分散特性の位相差フィルムは、逆分散特性の位相差フィルムに比べて安価で市販される製品を入手できる長所がある。また、フラットな分散特性の位相差フィルムは追加のコーティング工程が不要であるため工程歩留まりにも有利である。
【0052】
本明細書で面内位相差値は下記の数式1により計算され得る。
【0053】
[数式1]
Rin=d×(nx-ny)
【0054】
数式1でRinは面内位相差で、nxおよびnyはそれぞれ位相差フィルムのx軸方向の屈折率とy軸方向の屈折率を意味し、dは位相差フィルムの厚さである。このような定義は特に別途に規定しない限り、本明細書で同様に適用され得る。上記でx軸方向は、位相差フィルムの面上遅相軸方向を意味し、y軸方向は上記x軸に垂直な面上方向(進相軸方向)を意味し、z軸方向は、上記x軸とy軸によって形成される平面の法線の方向、例えば位相差フィルムの厚さ方向を意味し得る。本明細書で遅相軸は位相差フィルムの面方向を基準として屈折率が最も高く示される方向と平行な軸を意味し得る。本明細書で屈折率を言及しながら特に別途に規定しない限り、屈折率は約550nm波長の光に対する屈折率である。
【0055】
位相差フィルムの550nm波長に対する面内位相差値は135nm~142nmであり得る。上記位相差フィルムの550nm波長に対する面内位相差値は具体的には、135nm~137.5nm範囲内であり得る。このような範囲内で、フラット分散位相差フィルムを使用して、反射視感の向上に適切であり得る。
【0056】
位相差フィルムの面内位相差値を調節する方式は公知である。一つの例示において、位相差フィルムが高分子延伸フィルムである場合、高分子フィルムの材料、厚さ、延伸比率を調節することによって面内位相差値を調節することができる。他の一つの例示において、位相差フィルムが液晶重合フィルムである場合、液晶層の厚さ、液晶の複屈折値などを調節することによって面内位相差値を調節することができる。
【0057】
位相差フィルムの遅相軸は偏光子の吸収軸と37度~43度範囲内をなすことができる。上記角度は具体的には、37度以上、37.5度以上、38度以上、38.5度以上、39度以上、39.5度以上または40度以上であり得、43度以下または42.5度以下であり得る。これを通じて、フラット分散位相差フィルムを使用した円偏光板の反射視感を改善させることができる。本明細書で、A軸がB軸に対してなす角度は、B軸を0度基準として、時計回り方向にA軸がなす角度と反時計回り方向にA軸がなす角度をすべて含む意味であり得る。
【0058】
位相差フィルムの厚さは高分子延伸フィルムである場合には例えば10μm~100μm範囲内であり得る。他の一つの例示において、位相差フィルムの厚さは液晶重合フィルムである場合には例えば0.1μm~5μm範囲内であり得る。
【0059】
位相差フィルムは液晶重合フィルムまたは高分子延伸フィルムであり得る。具体的には、位相差フィルムとしては、延伸によって光学異方性を付与できる高分子フィルムを適切な方式で延伸した延伸高分子層または液晶層を使用することができる。液晶層としては、液晶高分子層または重合性液晶化合物の硬化層を使用することができる。
【0060】
液晶重合フィルムは基材層および上記基材層の一面に液晶層を含むことができる。液晶重合フィルムの基材層は、上記反射防止フィルムの基材層に関する内容が同様に適用され得る。したがって、液晶重合フィルムの基材層も光透過性基材を使用することができる。上記液晶層は重合性液晶化合物を重合された状態で含むことができる。本明細書で用語「重合性液晶化合物」は、液晶性を示すことができる部位、例えば、メソゲン(mesogen)骨格などを含み、また、重合性官能基を一つ以上含む化合物を意味し得る。このような重合性液晶化合物はいわゆるRM(Reactive Mesogen)という名称で多様に公知とされている。上記重合性液晶化合物は、上記硬化層内で重合された形態、すなわち前述した重合単位で含まれていてもよく、これは上記液晶化合物が重合されて硬化層内で液晶高分子の主鎖または側鎖のような骨格を形成している状態を意味し得る。
【0061】
重合性液晶化合物は単官能性または多官能性重合性液晶化合物であり得る。上記で単官能性重合性液晶化合物は、重合性官能基を1個有する化合物であり、多官能性重合性液晶化合物は、重合性官能基を2個以上含む化合物を意味し得る。一つの例示で多官能性重合性液晶化合物は重合性官能基を2個~10個、2個~8個、2個~6個、2個~5個、2個~4個、2個~3個または2個または3個含むことができる。
【0062】
上記のような重合性液晶化合物を、例えば開始剤、安定剤および/または非重合成液晶化合物などの他の成分と配合して製造された重合性液晶組成物を配向膜上で配向させた状態で硬化させて複屈折が発現された上記硬化層を形成することは公知である。上記フラットな分散特性を有する位相差フィルムはフラットな分散特性を有する重合性液晶化合物を含むことによって製造され得る。
【0063】
高分子延伸フィルムとしては、例えば、高分子材料として、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリノルボルネンなどの環状オレフィンポリマー(COP:Cycloolefin polymer)、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアクリレート、ポリビニルアルコールまたはTAC(Triacetyl cellulose)等のセルロースエステル系ポリマーや上記ポリマーを形成する単量体のうち2種以上の単量体の共重合体などを含む高分子層を使用することができる。
【0064】
高分子延伸フィルムを得る方法は特に制限されない。例えば、上記高分子材料をフィルム形態で成形した後、延伸することによって得ることができる。上記フィルム形態への成形方法は特に制限されず、射出成形、シート成形、ブロー成形、射出ブロー成形、インフレーション成形、押出成形、発泡成形、キャスト成形などの公知の方法でフィルムに成形することが可能であり、圧空成形、真空成形などの2次加工成形法も利用することができる。その中でも押出成形、キャスト成形が好ましく利用される。この時、例えばTダイ、円形ダイなどが装着された押出機などを利用して未延伸フィルムを押出成形することができる。押出成形によって成形品を得る場合には、事前に各種樹脂成分、添加剤などを溶融混錬した材料を利用してもよく、押出成形時に溶融混錬を経て成形してもよい。また各種樹脂成分に共通する溶媒、例えばクロロホルム、2塩化メチレンなどの溶媒を利用して各種樹脂成分を溶解後、キャスト乾燥固体化することによって未延伸フィルムをキャスト成形することもできる。
【0065】
高分子延伸フィルムは上記成形されたフィルムを機械的流れ方向に一軸延伸、機械的流れ方向(MD;Mechanical Direction、縦方向または長さ方向)に直交する方向(TD;Transverse Direction、横方向または幅方向)に一軸延伸することができ、またロール延伸とテンター延伸の順次二軸延伸法、テンター延伸による同時二軸延伸法、チューブラー延伸による二軸延伸法などによって延伸することによって二軸延伸フィルムを製造してもよい。
【0066】
高分子延伸フィルムの位相差値の制御は一般的にフィルムの延伸条件を制御することによって遂行され得る。これは位相差値がフィルムの延伸によるフィルム自らの厚さによるためである。二軸延伸の場合は機械的流れ方向(MD方向)と機械的流れ方向に直交する方向(TD方向)の延伸倍率の比(MD方向/TD方向)を0.67以下あるいは1.5以上とすることが好ましく、0.55以下あるいは1.8以上がさらに好ましく、0.5以下あるいは2以上が最も好ましい。
【0067】
粘着剤層は円偏光板をディスプレイパネルに付着させる機能を遂行することができる。上記粘着剤層は粘着性樹脂を含むことができる。上記粘着性樹脂としては例えば光透過性粘着性樹脂を使用することができる。例えば、上記粘着性樹脂によって形成された粘着剤層の380nm~780nm波長に対する透過率が約80%以上、85%以上、90%以上または95%以上となるようにする粘着性樹脂を使用することができる。上記透過率は上記粘着剤層に入射する光量に対する、上記粘着剤層を透過する光量の百分率を意味し得る。粘着性樹脂は、例えば、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、エステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、エーテル系樹脂、フッ素系樹脂およびゴム系樹脂からなる群から選択されたいずれか一つ以上を含むことができる。
【0068】
粘着剤層の厚さは例えば、15μm~30μm範囲内であり得る。
【0069】
粘着剤層を位相差フィルムの一面に形成する方法は特に制限されない。一つの例示において、離型フィルムに上記粘着性樹脂を含む粘着剤組成物を塗布して粘着剤層を形成した後、上記粘着剤層を位相差フィルムの一面に転写し、離型フィルムを除去する工程によって遂行され得る。他の一つの例示において、上記位相差フィルムの一面に直接粘着剤組成物を塗布することによって粘着剤層を形成することができる。
【0070】
円偏光板は染料を含むことができる。上記染料は円偏光板の透過率を調節する機能をする。本明細書で染料は可視光領域、例えば、380nm~780nm波長範囲内で少なくとも一部または全体範囲内の光を集中的に吸収および/または変形させることができる物質を意味し得る。
【0071】
染料を含む円偏光板は430nm波長に対する透過率が30%以下または28%以下であり得る。円偏光板はこのような透過率範囲を満足することによってneutral反射色に寄与できるので、フラットな分散特性の位相差フィルムを使用しても、反射視感を改善させることができる。より具体的には、上記染料を含む円偏光板は460nmおよび550nm波長に対する透過率がそれぞれ35%以上または40%以上であり得る。
【0072】
染料を含む円偏光板の430nm波長に対する透過率の下限は4%以上であり得る。上記透過率が過度に低い場合、OLEDで発光するwhite光のカラー変化が過度に大きくなるため、染料を含む粘着剤層の透過率の下限は上記範囲内であることが好ましい。
【0073】
染料としては円偏光板が上記透過度特性を示すことができるようにする範囲内で適切に選択され得る。上記染料は例えばブルー領域で吸収を示す染料であり得る。上記染料はブルー領域で最大吸光度を示すことができる。本明細書で染料の吸収乃至吸光度は染料を光透過性樹脂に混合して形成された層に対して測定した透過度スペクトルから決定され得る。本明細書で光透過性樹脂は上記樹脂単独で形成された層に対して測定した、380nm~780nm波長に対する透過率が約80%以上、85%以上、90%以上または95%以上である層を意味し得る。
【0074】
上記のような吸収特性を有する染料を本明細書でブルーカットダイ(Blue cut dye)と略称することができる。上記ブルー領域は例えば370nm~430nm波長範囲内であり得る。したがって、上記染料を含む円偏光板も380nm~780nm波長範囲のうち370nm~430nm範囲内で最大吸光度を示すことができる。上記染料はブルー領域を吸収するのでYellow色感を示すことができる。上記染料は、円偏光板が上記透過度特性を示すようにする範囲内で、単一染料でもよく、2種以上の染料の混合物でもよい。
【0075】
上記染料としてはアントラキノン系染料、メチン系染料、アゾメチン系染料、オキサジン系染料、アゾ系染料、スチリル系染料、クマリン系染料、ポルフィリン系染料、ジベンゾフラノン系染料、ジケトピロロピロール系染料、ローダミン系染料、キサンテン系染料およびピロメテン系染料からなる群から選択された一つ以上の染料を使用することができる。
【0076】
上記染料は円偏光板が上記透過率を示すことができるようにする範囲内で、円偏光板に含まれる任意の層に含まれ得る。
【0077】
例えば、上記染料は上記反射防止フィルム、位相差フィルムおよび粘着剤層のうち一つ以上に含まれ得る。一つの例示において、上記染料は上記反射防止フィルムに含まれ得る。前述した通り、反射防止フィルムは基材層および上記基材層の一面に低屈折層を含むことができる。この場合、上記染料は反射防止フィルムの基材層内に含まれ得る。または前述した通り、反射防止フィルムは基材層と低屈折層間にハードコーティング層をさらに含むことができる。この場合、上記染料は反射防止フィルムのハードコーディング層内に含まれ得る。一つの例示において、上記染料は上記位相差フィルムに含まれ得る。前述した通り、位相差フィルムが液晶重合フィルムである場合、位相差フィルムは基材層および上記基材層の一面に液晶層を含むことができる。この場合、上記染料は位相差フィルムの基材層内に含まれ得る。一方、位相差フィルムが高分子延伸フィルムである場合、上記染料は高分子延伸フィルム内に含まれ得る。一つの例示において、上記染料は上記粘着剤層に含まれ得る。
【0078】
他の一つの例示において、上記円偏光板は、上記反射防止フィルム、位相差フィルムおよび粘着剤層以外に、染料を含ませるための用途のための別途の層をさらに含んでもょい。このような別途の層も光透過性樹脂を主成分として含みつつ、上記染料を含むことができる。上記別途の層の位置は特に制限されず、反射防止フィルム、偏光子、位相差フィルムまたは粘着剤層の一面または両面に形成され得る。ただし、上記粘着剤層は円偏光板をパネルに付着するための用途であるので、粘着剤層のパネル付着面には存在しないことが好ましい。
【0079】
染料を含む層は430nm波長に対する透過率が75%以下、70%以下、65%以下または60%以下であり得る。染料を含む層はこのような透過率範囲を満足することによってneutral反射色に寄与できるので、フラットな分散特性の位相差フィルムを使用しても、反射視感を改善させることができる。より具体的には、染料を含む層は460nmおよび550nm波長に対する透過率がそれぞれ90%以上であり得る。染料を含む層の430nm波長に対する透過率の下限は10%以上であり得る。上記透過率が過度に低い場合、OLEDで発光するwhite光のカラー変化が過度に大きくなるため、染料を含む層の透過率の下限は上記範囲内であることが好ましい。
【0080】
染料を含む層で染料の含量は、円偏光板が上記透過度特性を示すことができるようにする範囲内で適切に選択され得る。前述した通り、染料を含む層は光透過性樹脂を主成分として含みつつ、上記染料をさらに含むことができる。染料を含む層で染料の含量は例えば光透過性樹脂100重量部対比0.5重量部~10重量部範囲で含まれ得る。染料の含量が上記範囲内である場合、円偏光板の反射視感の改善に適切であり得、上記範囲内で染料の含量が増加するほど目的とする反射色に近接することができる。ただし、染料の含量が過度に高い場合、染料の溶解度が足りず析出が発生し得、各層の物性に影響を与えることもあり得るため、上記範囲内で調節されることが好ましい。
【0081】
染料を含む層内で染料の重量が同じである場合、上記染料を含む層の厚さを変化させても同じ透過率特性を得ることができる。したがって、染料を含む層の透過度を前述した範囲内で、高めようとする場合には、染料を含む層の厚さを固定し染料の重量を減らして染料の濃度を低くするか、染料の濃度が同一の染料を含む層の厚さを低くして染料の重量を低くする方法がある。
【0082】
本出願はまた、上記円偏光板を含むディスプレイ装置に関する。上記ディスプレイ装置としては、OLED(Organic Light Emitting Diode)装置を例示することができる。
【0083】
図3は本出願のOLED装置を例示的に示す。
図3に示した通り、OLED装置はOLEDパネル200および上記OLEDパネルの一面に配置された円偏光板100を含むことができる。OLEDパネルと円偏光板は粘着剤層40を媒介として付着され得る。
【0084】
上記OLEDパネルは基板、下部電極、有機発光層および上部電極を順に含むことができる。有機発光層は下部電極と上部電極に電圧が印加された時に光を発し得る有機物質を含むことができる。上記下部電極と上部電極のうちいずれか一つは正極(anode)であり、他の一つは負極(cathode)であり得る。正極は正孔(hole)が注入される電極であって仕事関数(work function)が高い導電物質で製作され得、負極は電子が注入される電極であって仕事関数が低い導電物質で製作され得る。通常正極としては仕事関数が大きいITOまたはIZOのような透明金属酸化物層を使用することができ、負極としては仕事関数が低い金属電極を使用することができる。一般的に有機発光層は透明であるため、上部および下部電極を透明にする場合、透明ディスプレイを具現することができる。一つの例示において、上記金属電極の厚さを非常に薄くする場合、透明なディスプレイを具現することができる。
【0085】
上記OLEDパネルは上部電極上に外部から水分および/または酸素が流入することを防止する機能をする封止基板をさらに含むことができる。下部電極と有機発光層間および上部電極と有機発光層間には付帯層をさらに含むことができる。付帯層は電子と正孔の釣り合いを合わせるための正孔伝達層(hole transporting layer)、正孔注入層(hole injecting layer)、電子注入層(electron injecting layer)および電子伝達層(electron transporting layer)を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0086】
上記円偏光板はOLED素子から光が出る側に配置され得る。例えばベース基板側に光が出る背面発光(bottom emission)構造である場合にはベース基板の外側に配置され得、封止基板側に光が出る前面発光(top emission)構造である場合には封止基板の外側に配置され得る。円偏光板は外光がOLEDパネルの電極および配線などのように、金属で作られた反射層によって反射してOLEDパネルの外側に出ることを防止することによって視認性とディスプレイ性能を改善することができる。
【0087】
一つの例示において、上記OLEDパネルはカラーフィルターが形成された基板をさらに含むことができる。上記カラーフィルターが形成された基板は、OLEDパネルの金属電極が配置された反対面に配置され得る。この時、OLEDパネルは、カラーフィルターが形成された基板、透明金属酸化物電極(正極)、発光層、金属電極(負極)およびベース基板を順に含む構造を有することができる。カラーフィルターはRed、GreenおよびBlue領域を含むことができ、上記領域を区分するためのブラックマトリクス(black matrix)をさらに含むことができる。OLEDパネルの基板にカラーフィルターが存在する場合、カラーフィルターが存在しない場合に比べて、低い反射率を示し得る。具体的には、Red、GreenおよびBlueのカラーフィルターがOLEDの発光層の前に位置する場合、発光層の裏面に位置した金属電極での高い反射率を低減させるためである。
【0088】
上記OLEDパネルの410nm~500nm領域の平均反射率は45%以下であり得る。上記OLEDパネルの410nm~500nm領域の平均反射率は20%以上であり得る。また、上記OLEDパネルの600nm~650nm領域の平均反射率は50%以下であり得る。上記OLEDパネルの600nm~650nm領域の平均反射率は20%以上であり得る。このようなOLEDパネルの適用を通じて、フラットな分散特性の位相差フィルムを使用して反射視感を改善することがさらに有利となり得る。
【0089】
前述した通り、本出願の円偏光板をOLEDパネルに適用したOLED装置は優秀な反射視感を示すことができる。一つの例示において、上記円偏光板が付着されたOLEDパネルの550nmの反射率は2.0%以下、1.9%以下、1.8%以下または1.7%以下であり得る。上記円偏光板が付着されたOLEDパネルの反射率は低いほど反射視感が優秀であることを意味するものであって、下限は特に制限されないが、例えば、0.1%以上であり得る。
【0090】
一つの例示において、上記円偏光板が付着されたOLEDパネルの反射色はL*a*b*色座標基準a*値が8未満b*値が-8.5超過であり得る。上記a*値は具体的には、7.75以下、7.5以下、7.25以下、7以下、6.75以下、6.5以下または6.25以下であり得る。上記b*値は具体的には-8.3以上、-8以上、-7.5以上、-7以上、-6.6以上、-6以上、-5以上または-4以上であり得る。上記a*の下限は0超過であり、上記b*の上限は0未満であり得る。円偏光板が付着されたOLEDパネルの反射率と反射色が上記範囲内である場合、反射視感が優秀と言える。また、上記a*およびb*値のうち特にa*値の範囲がさらに重要であり得るが、一般的に青い光よりは赤い光の反射色感が観察者の視感をさらに低下させるためである。また、OLEDパネルの550nm波長に対する反射率を上記範囲とする場合、a*およびb*の絶対値が大きくなってもさらに黒く感じるので反射視感の向上にさらに有利であり得る。
【発明の効果】
【0091】
本出願はフラットな分散特性を有する位相差フィルムを使用して反射色感を改善できる円偏光板および上記円偏光板を含むOLED装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【
図2】反射防止フィルムの反射率スペクトルを例示的に示した図面。
【
図3】本出願のOLED装置を例示的に示した図面。
【
図4】比較例18と実施例4の円偏光板に対する透過率を測定した結果を示した図面。
【
図5】評価例2のOLEDパネルの発光特性評価結果を示した図面。
【
図6】評価例2のOLEDパネルの反射スペクトルを示した図面。
【発明を実施するための形態】
【0093】
以下、本出願に係る実施例および本出願に従わない比較例を通じて本出願を具体的に説明するが、本出願の範囲は下記に提示された実施例によって制限されるものではない。
【0094】
[実施例1~3および比較例1~17]
(円偏光板)
反射防止フィルム、偏光子、位相差フィルムおよび粘着剤層を順に含む円偏光板を準備した。
【0095】
反射防止フィルムは、トリアセチルセルロース(TAC)基材フィルム上に、厚さが約5μmのハードコーティング層をコーティングした後、上記ハードコーティング層上に中空型シリカナノ粒子を含む低屈折層をコーティングすることにより製造した。低屈折層は550nm波長に対する屈折率が約1.3~1.4であり、厚さが約70nm~150nmである。上記反射防止フィルムは、550nm波長に対する反射率が約0.1%~0.9%以下であり、ヘイズが約0.01%~0.5%以下であり、最低反射波長は510nmであり、最低反射率は0.8%である。
【0096】
位相差フィルムはZeon社でCOPフィルムを傾斜延伸して生産された製品であり、R(450)/R(550)値が1であり、550nm波長に対する面内位相差値と偏光子の光吸収軸に対する位相差フィルムの遅相軸を下記の表1のように変更して比較例2~17および実施例1~3の円偏光板を準備した。
【0097】
偏光子は透過率が42.5%であるPVA系偏光子と透過率が44%であるPVA系偏光子の2種類を使用する。
【0098】
粘着剤層は離型フィルムの間にコーティングされた製品を利用して位相差フィルム面にラミネーティングする。粘着剤層は市販の偏光板用アクリル粘着剤を使用し、粘着剤層にブルーカットダイを含むか否かにより下記表1のようにサンプルを準備した。ブルーカットダイを含む粘着剤層は430nm波長に対する透過率が60%であり、460nmおよび550nm波長に対する透過率がそれぞれ90%以上である。ブルーカットダイとしてはブルー領域内で最大吸収波長が互いに異なる二つの染料である、Eutec Chemical Co.,Ltd.社のEusorb UV-390とEusorb UV-1990)を混合して使用した。
【0099】
下記の表1において、比較例1はZeon社のZD製品であってフラット分散フィルムであり、550nm波長に対する面内位相差が130nmであり、R(450)/R(550)値が1.0である。
【0100】
(OLEDパネル)
上記円偏光板をOLEDパネルに付着した。上記OLEDパネルは410nm~550nm範囲の波長に対する平均反射率が40%であり、600nm~650nm範囲の波長に対する平均反射率が48%であるLGD社製品を使用した。
【0101】
[評価例1.円偏光板の構成による反射視感の評価]
上記実施例および比較例の円偏光板が付着されたOLEDパネルに対して、円偏光板の構成による反射視感を評価した。この時、OLEDパネルは電界Off状態である。具体的には、円偏光板が付着されたOLEDパネルに対してL*a*b*色座標を測定した。D65光源環境でL*a*b*色座標基準a*が8未満でありb*が-8.5超過である場合、反射視感が優秀なものと評価することができる。
【0102】
上記で位相差フィルムの位相差値と光軸はAxometrics社のAxoscan装備を利用して決定し、偏光子の透過率および吸収軸はJasco社のV-7100 Spectrophotometer装備を利用して決定する。
【0103】
ブルーカットダイを含む粘着剤層の透過率はShimadzu UV-3600を利用して測定した。具体的には、ブルーカットダイを含む粘着剤をガラス基板に付着した後、透明なPETフィルムを露出した粘着剤表面にさらに付着したサンプルを利用して測定した。サンプル測定前の装備のベースラインを設定する時は、測定サンプルと同一構造でありブルーカットダイを含む粘着剤の代わりに、透明な粘着剤を導入したサンプルをローディングした状態で進行した。結果として、測定したサンプルの透過率に反射率が含まれない条件で測定したし、したがってダイの吸収がない波長帯の透過率は100%となる。
【0104】
反射防止フィルムの反射率は,基材の反射防止コーティング層の背面に光を吸収するBlack Tapeを付着した後、Minolta社のCM-2600d装備を利用して反射防止コーティング層の表面層の鏡反射率を測定した。具体的には、上記反射率は、上記装備の測定値のうち、SCI(Specular Component Included)値からSCE(Specular Component Excluded)値を差し引いた結果値である。反射率測定時、偏光子の吸収軸方向により測定値に差が観察されて、測定機の長さ方向と偏光子の吸収軸方向を水平の条件で測定した。ヘイズはMurakami Color Research Laboratory社のHM-150装備を利用して測定する。L*a*b*色座標はMinolta社のCM-2600d装備を利用して、円偏光板をOLEDパネルに付着してD65光源条件でCIE 1964/10°規格の反射率と反射色を測定する。反射視感の評価結果を表1に示した。下記の表1でY(D65)は視感反射率(%)を意味し、R@(550)は550nmの反射率(%)を意味する。円偏光板の透過率はJasco社のV-7100 Spectrophotometerを利用して測定した。
【0105】
【0106】
[実施例4]
反射防止フィルム、偏光子、位相差フィルムおよび粘着剤層を順に含む円偏光板を準備した。下記で言及した構成を除いては実施例1と同じである。
【0107】
位相差フィルムは550nm波長に対する位相差値が137.5nmであり、位相差フィルムの遅相軸が偏光子の光吸収軸と42.5度をなすように付着する。
【0108】
偏光子としては透過率が42.5%であるPVA系偏光子を使用した。
【0109】
粘着剤層はブルーカットダイを含み、ブルーカットダイを含む粘着剤層は430nm波長に対する透過率が71%であり、460nmおよび550nm波長に対する透過率がそれぞれ90%以上である。
【0110】
上記円偏光板をOLEDパネルに付着した。OLEDパネルは実施例1と同じである。
【0111】
[比較例18]
粘着剤層にブルーカットダイを適用させないことを除いては実施例4と同様にして円偏光板を製造した。上記円偏光板をOLEDパネルに付着した。OLEDパネルは実施例1と同じである。
【0112】
図4は比較例18と実施例4の円偏光板に対する透過率を測定した結果である。上記透過率は円偏光板をOLEDパネルに付着する前に円偏光板それ自体に対して測定した透過率である。
図4(a)と
図4(b)は同一の実験結果をx軸の波長範囲(a:400~500nm、b:400~700nm)のみを異ならせて表現したものである。実施例4は430nm波長に対して約27%の透過率を示し、460nmに対する透過率が約40%であり、550nm波長に対する透過率は約43%である。比較例18は430nm波長に対して約38%の透過率を示し、460nmに対する透過率が約40%であり、550nm波長に対する透過率は約43%である。
【0113】
[評価例2.ブルーカットダイのOLED発光特性影響]
実施例4および比較例18の円偏光板をOLEDパネルに付着した後、ブルーカットダイの適用による発光特性影響を評価した。上記円偏光板を付着したOLEDパネルに対して、MinoltaのSpectro radiometer CS-1000装備を利用して、ブルーカットダイを適用していない比較例18の円偏光板を付着したOLEDパネルとブルーカットダイを適用した実施例4の円偏光板を付着したOLEDパネルに対してそれぞれ測定したwhite colorの色座標のu’v’座標を測定した結果、ブルーカットダイを適用する前と比較して、適用後にOLEDパネルの発光に輝度の影響はなかったものの、white colorは多少変化した。white colorの変化は、u’v’座標基準として(0.216、0.434)から(0.217、0.436)に移動したことから分かる。ブルーカットダイの濃度が増加するほどwhiteの色座標に変化が増加し、反射色がneutralに移動する。
【0114】
図5は、ブルーカットダイを含む粘着剤層の透過特性とブルーカットダイの適用の有無によるOLEDパネルの発光特性を示す。ブルーカットダイの適用の有無は、実施例4の円偏光板をOLEDパネルに付着するかと、比較例18の円偏光板をOLEDパネルに付着するかの有無により分類する。
図5から、ブルーカットダイを適用しても、OLEDパネルの輝度には影響がないことを確認することができる。
【0115】
図6は、実施例4の円偏光板を適用したOLEDパネルと、比較例18の円偏光板を適用したOLEDパネルに対する、反射スペクトルを示す。反射スペクトルはOLEDパネルに円偏光板を付着した状態でMinoltaのCM-2600d装備を利用して測定する。
図6からブルーカットダイを適用時、反射色感がneutralに移動することを確認することができる。
【符号の説明】
【0116】
10:反射防止フィルム
20:偏光子
30:位相差フィルム
40:粘着剤層