(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】吸着剤の使用方法、及び、吸着剤セット
(51)【国際特許分類】
C02F 1/28 20230101AFI20240227BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20240227BHJP
B01J 20/34 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
C02F1/28 A
B01J20/26 C
B01J20/26 E
B01J20/34 H
(21)【出願番号】P 2021546916
(86)(22)【出願日】2020-09-15
(86)【国際出願番号】 JP2020034928
(87)【国際公開番号】W WO2021054329
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-06-20
(31)【優先権主張番号】P 2019171201
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100138955
【氏名又は名称】末次 渉
(72)【発明者】
【氏名】後藤 健彦
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-132606(JP,A)
【文献】特開2005-177557(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106824091(CN,A)
【文献】特開平9-48917(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109364889(CN,A)
【文献】特開2012-170871(JP,A)
【文献】国際公開第2013/187512(WO,A1)
【文献】特開2012-139678(JP,A)
【文献】特開平5-253479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/28、42、58-64
B01J20/00-34、39/00-49/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰イオン及び陽イオンを含有する水溶液中に温度応答性のカチオン性高分子ゲルから構成されるカチオン性吸着剤と温度応答性のアニオン性高分子ゲルから構成されるアニオン性吸着剤とを共在させ、
前記カチオン性高分子ゲルのイオン化したカチオン基に前記陰イオンを吸着させるとともに、前記アニオン性高分子ゲルのイオン化したアニオン基に前記陽イオンを吸着させ、
前記陰イオンを吸着した前記カチオン性吸着剤及び前記陽イオンを吸着した前記アニオン性吸着剤を昇温させて前記陰イオン及び前記陽イオンをそれぞれ脱着させ、前記カチオン性吸着剤及び前記アニオン性吸着剤を再利用する、
ことを特徴とする吸着剤の使用方法。
【請求項2】
前記カチオン性吸着剤と前記アニオン性吸着剤を重量比で0.9:1.1~1.1:0.9で用いる、
ことを特徴とする請求項1に記載の吸着剤の使用方法。
【請求項5】
温度応答性のカチオン性高分子ゲルから構成されるカチオン性吸着剤と、
温度応答性のアニオン性高分子ゲルから構成されるアニオン性吸着剤と、を備える吸着材セットであって、
前記吸着材セットは、陰イオン及び陽イオンを含有する水溶液中にて、前記カチオン性高分子ゲルのイオン化したカチオン基に前記陰イオンが吸着するとともに、前記アニオン性高分子ゲルのイオン化したアニオン基に前記陽イオンが吸着し、
前記吸着材セットは、昇温によって前記カチオン性吸着剤に吸着した前記陰イオン及び前記アニオン性吸着剤に吸着した前記陽イオンがそれぞれ脱着し、再利用可能である、
ことを特徴とする吸着剤セット。
【請求項6】
前記カチオン性吸着剤と前記アニオン性吸着剤とが重量比で0.9:1.1~1.1:0.9で配合されている、
ことを特徴とする請求項5に記載の吸着剤セット。
【請求項7】
前記カチオン性高分子ゲルは、温度応答性のモノマーとカチオン性モノマーとの共重合体であり、温度応答性成分とカチオン性成分とのモル比が17:3~99:1である、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の吸着剤セット。
【請求項8】
前記カチオン性モノマーが、末端に第3級アミノ基を有するアクリルアミドモノマー又はメタクリルアミドモノマーである、
ことを特徴とする請求項7に記載の吸着剤セット。
【請求項9】
前記アニオン性高分子ゲルは、温度応答性のモノマーとアニオン性モノマーとの共重合体であり、温度応答性成分とアニオン性成分とのモル比が17:3~99:1である、
ことを特徴とする請求項5乃至8のいずれか一項に記載の吸着剤セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着剤の使用方法、及び、吸着剤セットに関する。
【背景技術】
【0002】
工場などの排水中には硝酸やリン酸、アンモニウムなどが含まれており、水環境に富栄養化などの悪影響を及ぼしており、これらを除去することが求められている。また、希少金属資源の不足などから、自動車や電子機器類の生産時に貴金属を破砕して排出される廃水からの金属の分離回収が望まれている。
【0003】
このような水溶液からの有害物質や有価物質の除去、回収にあたり、これらを吸着する吸着剤の利用が提案されている。たとえば、水溶液中のイオンを吸着可能なイオン性高分子化合物からなる吸着剤があり、陽イオンを吸着可能なアニオン性高分子化合物、陰イオンを吸着可能なカチオン性高分子化合物がある(たとえば、特許文献1、2)。更には、分子内にカチオン基、及び、アニオン基の双方を有する吸着剤もある(たとえば、特許文献3、4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-108287号公報
【文献】特開2012-139678号公報
【文献】特開2012-30197号公報
【文献】特開2011-169660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カチオン性高分子化合物の場合、陰イオンの吸着が進行すると、水溶液中の対イオン(陽イオン)の濃度が高まることから、陰イオンの吸着が阻害されてしまうという問題がある。アニオン性高分子化合物の場合でも同様である。
【0006】
また、分子内にカチオン基及びアニオン基の双方を有する高分子化合物の場合、イオン化したカチオン基、アニオン基同士が相互作用により結合し、陰イオン及び陽イオンの吸着サイトが消費されてしまうという課題がある。
【0007】
本発明は上記事項に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、水溶液中の陽イオン及び陰イオンの双方を吸着し得るとともに、吸着量の向上も成し得る吸着剤の使用方法、及び、吸着剤セットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点に係る吸着剤の使用方法は、
陰イオン及び陽イオンを含有する水溶液中にカチオン性高分子ゲルから構成されるカチオン性吸着剤とアニオン性高分子ゲルから構成されるアニオン性吸着剤とを共在させ、
前記カチオン性高分子ゲルのイオン化したカチオン基に前記陰イオンを吸着させるとともに、前記アニオン性高分子ゲルのイオン化したアニオン基に前記陽イオンを吸着させる、
ことを特徴とする。
【0009】
また、前記カチオン性吸着剤と前記アニオン性吸着剤を重量比で0.9:1.1~1.1:0.9で用いることが好ましい。
【0010】
また、温度応答性の前記カチオン性高分子ゲルから構成される前記カチオン性吸着剤及び/又は温度応答性の前記アニオン性高分子ゲルから構成される前記アニオン性吸着剤を用いることが好ましい。
【0011】
また、前記陰イオンを吸着した前記カチオン性吸着剤及び前記陽イオンを吸着した前記アニオン性吸着剤を昇温させて前記陰イオン及び前記陽イオンをそれぞれ脱着させ、前記アニオン性吸着剤及び前記カチオン性吸着剤を再利用してもよい。
【0012】
本発明の第2の観点に係る吸着剤セットは、
温度応答性のカチオン性高分子ゲルから構成されるカチオン性吸着剤と、
温度応答性のアニオン性高分子ゲルから構成されるアニオン性吸着剤と、を備える、
ことを特徴とする。
【0013】
また、前記カチオン性吸着剤と前記アニオン性吸着剤とが重量比で0.9:1.1~1.1:0.9で配合されていることが好ましい。
【0014】
また、前記カチオン性高分子ゲルは、温度応答性のモノマーとカチオン性モノマーとの共重合体であり、温度応答性成分とカチオン性成分とのモル比が17:3~99:1であることが好ましい。
【0015】
また、前記カチオン性モノマーが、末端に第3級アミノ基を有するアクリルアミドモノマー又はメタクリルアミドモノマーであることが好ましい。
【0016】
また、前記アニオン性高分子ゲルは、温度応答性のモノマーとアニオン性モノマーとの共重合体であり、温度応答性成分とアニオン性成分とのモル比が17:3~99:1であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る吸着剤の使用方法、及び、吸着剤セットによれば、水溶液中の陽イオン及び陰イオンの双方を吸着し得るとともに、吸着量の向上も成し得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】硝酸ナトリウム水溶液中にアニオン性高分子ゲル及びカチオン性高分子ゲルを共在させた状態を模式的に示した図であり、
図1(A)がナトリウムイオン及び硝酸イオンが吸着した状態を示す図、
図1(B)がナトリウムイオン及び硝酸イオンが脱着した状態を示す図である。
【
図2】実施例における高分子ゲルの膨潤状態を示す写真である。
【
図3】実施例における外部溶液濃度及び温度変化が高分子ゲルの膨潤収縮挙動に及ぼす影響を示すグラフである。
【
図4】実施例における吸着等温線を示すグラフである。
【
図5】実施例における吸着等温線を示すグラフである。
【
図6】実施例における吸着等温線を示すグラフである。
【
図7】実施例における吸着等温線を示すグラフである。
【
図8】実施例における吸着等温線を示すグラフである。
【
図9】実施例における高分子ゲルのNa
+の吸着量を示すグラフである。
【
図10】実施例における高分子ゲルのPb
2+の吸着量を示すグラフである。
【
図11】実施例における高分子ゲルの吸水量を示すグラフである。
【
図12】実施例における高分子ゲルのPb
2+、Zn
2+の吸着量を示すグラフである。
【
図13】実施例における高分子ゲルのNa
+、Cl
-の吸着量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本実施の形態に係る吸着剤の使用方法は、陽イオン及び陰イオンを含有する水溶液中にカチオン性吸着剤とアニオン性吸着剤とを共在させ、カチオン性吸着剤に陰イオンを吸着させ、アニオン性吸着剤に陽イオンを吸着させる。水溶液中にカチオン性吸着剤とアニオン性吸着剤とを共在させることにより、カチオン性吸着剤の単体使用、或いは、アニオン性吸着剤の単体使用に比べ、カチオン性吸着剤及びアニオン性吸着剤それぞれの陰イオン、陽イオンの吸着能力を向上させることができる。
【0020】
カチオン性吸着剤は、カチオン性高分子ゲルから構成される。カチオン性高分子ゲルは、カチオン基を有するイオン性ポリマーである。カチオン基とは、その基内にアンモニウム、ホスホニウム、スルホニウムなどのオニウムを有する基である。具体的には、一級アンモニウム、二級アンモニウム、三級アンモニウム、四級アンモニウムなどのアンモニウム、ホスホニウム、スルホニウム、これらアンモニウム、ホスホニウム又はスルホニウムを有する基が挙げられ、より具体的には、-N(CH2)2、-N+(CH2)3Cl-、-N+(CH2)2(CH2CH2OH)3Cl-が挙げられる。
【0021】
カチオン基を有するイオン性ポリマーは、カチオン基を有するカチオン性モノマーを重合し用いられ得る。カチオン性モノマーとしては、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド(ジアルキル(炭素数1~3)アミノアルキル(炭素数1~3)(メタ)アクリルアミド)、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジプロピルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキル((メタ)アクリル酸ジアルキル(炭素数1~3)アミノアルキル(炭素数1~3))、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、又はこれらのアンモニウム四級化物等が挙げられる。また、アンモニウム四級化物として、具体的には、トリメチルアンモニウムクロライド、エチルジメチルクロライド等が挙げられる。
【0022】
アニオン性吸着剤は、アニオン性高分子ゲルから構成される。アニオン性高分子ゲルは、アニオン基を有するイオン性ポリマーである。アニオン基として、カルボン酸基、リン酸基、スルホン酸基等が挙げられる。
【0023】
アニオン基を有するイオン性ポリマーは、アニオン基を有するアニオン性モノマーを重合し用いられ得る。アニオン性モノマーとしては、アクリル酸、(メタ)アクリル酸、マレイン酸等のカルボン酸基を有するモノマー、アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-アシッドホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のリン酸基を有するモノマー、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基を有するモノマーが挙げられる。
【0024】
カチオン性高分子ゲルとアニオン性高分子ゲルの双方を水溶液中に共在させると、イオン性相互作用によって、カチオン性高分子ゲルには水溶液中の陰イオンが吸着するとともに、アニオン性高分子ゲルには水溶液中の陽イオンが吸着する。そして、カチオン性高分子ゲル単体、アニオン性高分子ゲル単体で用いるよりも、陽イオン、陰イオンの吸着量が向上する。このメカニズムについて、具体的に、カチオン基としてジメチルアミノ基を有するカチオン性高分子ゲル、及び、アニオン基としてカルボキシル基を有するアニオン性高分子ゲルを硝酸ナトリウム水溶液に併用した例をもって説明する。
【0025】
硝酸ナトリウム水溶液にカチオン性高分子ゲル、及びアニオン性高分子ゲルを共在させると、カチオン性高分子ゲル及びアニオン性高分子ゲルは水を吸収して膨潤し、カチオン基、アニオン基のそれぞれがイオン化する。ここでは、
図1(A)に示すように、アニオン性高分子ゲルの-COOHからH
+が脱離し、-COO
-になるとともに、脱離したH
+がカチオン性高分子ゲルのジメチルアミノ基に結合し-N
+H(CH
3)
2になる。
【0026】
そして、イオン性相互作用により、イオン化したアニオン基(-COO-)にはナトリウムイオン(Na+)が吸着し、ナトリウムイオンがアニオン性高分子ゲルのネットワーク空間内に留まる。一方、イオン化したカチオン基(-N+H(CH3)2)には、硝酸イオン(NO3
-)が吸着し、硝酸イオンはカチオン性高分子ゲルのネットワーク空間に留まることになる。
【0027】
更に、カチオン性高分子ゲル、及びアニオン性高分子ゲルを共在させた場合、カチオン性高分子ゲル単体、アニオン性高分子ゲル単体で使用した場合に比べ、硝酸イオン、ナトリウムイオンの吸着量が向上する。水溶液中において、カチオン性高分子ゲルに硝酸イオンが吸着する一方、対イオン(ナトリウムイオン)がアニオン性高分子ゲルに吸着するので、水溶液中において、硝酸イオン、ナトリウムイオンの一方のイオン濃度が過剰に増大することがなく、それぞれのイオンの吸着が阻害されないためである。
【0028】
また、カチオン性吸着剤とアニオン性吸着剤は、重量比で0.9:1.1~1.1:0.9で共在させることが好ましく、より好ましくは1:1である。カチオン性吸着剤の吸着サイト(カチオン基)とアニオン性吸着剤の吸着サイト(アニオン基)がほぼ同数であれば、水溶液中における陰イオン濃度及び陽イオン濃度の一方が過剰に増大することが抑えられるためである。
【0029】
更に、カチオン性高分子ゲル、アニオン性高分子ゲルは、温度応答性のカチオン性高分子ゲル、温度応答性のアニオン性高分子ゲルであることが好ましい。温度応答性のカチオン性高分子ゲル、アニオン性高分子ゲルである場合、温度に応じて陰イオン及び陽イオンの吸着、脱着の可逆反応が進行するので、酸やアルカリを使用することなく、温度操作のみで再利用が可能である。
【0030】
具体的には、
図1(A)に示すように、カチオン性高分子ゲル及びアニオン性高分子ゲルでは、低温状態では硝酸イオン、ナトリウムイオンが吸着しているが、高温状態にすると、
図1(B)に示すように、吸着していた硝酸イオン、ナトリウムイオンそれぞれが脱着する。したがって、陰イオン及び陽イオンを吸着させたカチオン性高分子ゲル及びアニオン性高分子ゲルを水溶液から回収し、別途用意した水に入れて加温すると、陰イオン及び陽イオンを脱着させることができ、カチオン性高分子ゲル及びアニオン性高分子ゲルを再利用することが可能である。
【0031】
なお、温度応答性のカチオン性高分子ゲル、アニオン性高分子ゲルは、上述したカチオン性モノマーやアニオン性モノマーと温度応答性のモノマーとを共重合することでそれぞれ合成して用いられ得る。温度応答性モノマーとカチオン性モノマー又はアニオン性モノマーとの割合は、17:3~99:1であることが好ましい。温度応答性モノマーの割合が高すぎると、陽イオン又は陰イオンの吸着量が少なくなる。一方、温度応答性モノマーの割合が低すぎると、上述した温度変化による陽イオン又は陰イオンの吸着、脱着の可逆反応が生じ難くなる。使用し得る温度応答性のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド化合物、N-(若しくはN,N-ジ)アルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体、またはビニルエーテル誘導体が挙げられる。
【0032】
上記では、カチオン性高分子ゲル及びアニオン性高分子ゲルを水溶液に共在させた際のメカニズムの理解の容易化のため、具体的に硝酸ナトリウム水溶液を例に硝酸イオン、ナトリウムイオンの吸着、脱着について説明したが、硝酸ナトリウム水溶液に限られるものではない。たとえば、除去や回収を行いたい種々の陽イオン及び陰イオンを含有する水溶液に対して使用可能である。
【0033】
具体的には、吸着剤の使用方法は、産業排水や家庭排水などの水処理に応用できる。産業排水や家庭排水には、硝酸やリン酸、塩酸、硫酸などの陰イオンと、アンモニウムや溶解金属イオンなどの陽イオンからなる無機塩類が含まれており、これら無機塩類を除去する工程に利用できる。このような排水に吸着剤を介在させて、吸着剤に無機塩類を吸着させる。これにより、排水から無機塩類を除去することができる。排水への吸着剤の介在は、網状の袋に吸着剤を入れて介在させる手法等が挙げられる。
【0034】
また、吸着剤の使用方法は、金属を含有する水溶液から金属を回収する用途にも用いることができる。例えば、自動車や電子機器、半導体等を製造する工場では、希少金属等が用いられ、希少金属を含有する廃水が生じる。このような金属を含有する水溶液に吸着剤を介在させて金属を吸着させる。その後、水溶液から吸着剤を取出して、水に入れて温度変化(加熱)させることで、吸着剤に吸着している金属を脱着させ、金属を分離回収することができる。金属が脱着した吸着剤は再度利用することができる。
【0035】
また、海水淡水化用途にも利用できる。海水淡水化の方法として、透過特性に優れた逆浸透膜を用いた手法が広く利用されているが、海水を逆浸透膜に直接通過させると、逆浸透膜の劣化が早まりランニングコストが高くなる。このため、逆浸透膜の前処理として、吸着剤を用いて海水の淡水化を行い、NaCl濃度が低下した水を逆浸透膜に通過させることで、逆浸透膜の寿命を延ばすことにより、ランニングコストの低下をなし得る。
【0036】
(吸着剤セット)
吸着剤セットは、温度応答性のカチオン性高分子ゲルから構成されるカチオン性吸着剤と、温度応答性のアニオン性高分子ゲルから構成されるアニオン性吸着剤と、を備える。吸着剤セットは、乾燥状態のカチオン性高分子ゲル、及び、アニオン性高分子ゲルが均一に分散して配合されてパッケージ化されていればよい。また、カチオン性高分子ゲル、及び、アニオン性高分子ゲルは、粒状、球状、多角形状などどのような形態であってもよい。また、吸着剤セットは、カチオン性吸着剤とアニオン性吸着剤とが重量比で0.9:1.1~1.1:0.9で配合されていることが好ましい。
【0037】
カチオン性高分子ゲルは、温度応答性のモノマーとカチオン性モノマーとの共重合体であることが好ましい。この場合、温度応答性成分とカチオン性成分とのモル比が17:3~99:1であることが好ましい。カチオン性モノマー、及び、温度応答性モノマーについては、上述した通りである。また、カチオン性モノマーが、末端に第3級アミノ基を有するアクリルアミドモノマー又はメタクリルアミドモノマーであることが好ましい。
【0038】
アニオン性高分子ゲルは、温度応答性のモノマーとアニオン性モノマーとの共重合体であり、温度応答性成分とアニオン性成分とのモル比が17:3~99:1であることが好ましい。温度応答性のモノマー及びアニオン性モノマーについては、上述した通りである。
【実施例】
【0039】
(各種高分子ゲルの調製)
表1に示すモノマー、コモノマー、架橋剤、促進剤、開始剤、溶媒を反応容器に加えた混合溶液を調製した。混合溶液を窒素曝気しつつ、恒温水槽で合成温度10℃、合成時間6時間で重合した。生成物を水で洗浄し、乾燥することで乾燥状態の高分子ゲルを得た。高分子ゲルを粉砕し、ふるいで粒径0.6~1.0mmのものを選別し、以下の実験に用いた。なお、NIPA(登録商標)はN-isopropyl acrylamide、NTBAはN-tert butyl acrylamide、AAcはAcrylic Acid、DMAPAA(登録商標)はN,N-dimethylaminopropyl acrylamide、MBAAはNN’-methylenebisacrylamide、TEMEDはN,N,N',N'-tetramethylethylenediamine、APSはAmmonium peroxodisulfateである。
【0040】
【0041】
なお、使用するコモノマーを変えることにより、以下の4種の高分子ゲルを合成した。
コモノマーとしてDMAPAA(登録商標)を用い、カチオン性高分子ゲルを合成した。この高分子ゲルをNIPA-co-DMAPAAとも記す。
また、コモノマーとしてアクリル酸を用いることで、アニオン性高分子ゲルを合成した。この高分子ゲルをNIPA-co-AAcとも記す。
また、コモノマーとしてDMAPAA(登録商標)、及び、NTBAを用い、カチオン性高分子ゲルを合成した。このゲルをNIPA-co-NTBA-co-DMAPAAとも記す。
また、コモノマーとしてアクリル酸、及び、NTBAを用いることで、アニオン性高分子ゲルを合成した。この高分子ゲルをNIPA-co-NTBA-co-AAcとも記す。
【0042】
(高分子ゲルの膨潤収縮挙動の検証1)
カチオン性高分子ゲル及びアニオン性高分子ゲルの共在が膨潤収縮に及ぼす影響について、沈降体積変化を測定することにより検証した。
目盛り付き試験管に所定濃度の硝酸ナトリウム水溶液(12mL)を入れ、これに乾燥状態の高分子ゲル(0.12g)を浸漬させた。そして、振盪器(100rpm、20℃)を用い、12時間高分子ゲルを膨潤させ、沈降体積を目視で測定した。
【0043】
使用した高分子ゲルは、NIPA-co-DMAPAA及びNIPA-co-AAcの併用、NIPA-co-DMAPAA単体使用、及び、NIPA-co-AAc単体使用である。
【0044】
その結果を
図2、表2に示す。使用した高分子ゲルの総量は同じであるが、NIPA-co-DMAPAA及びNIPA-co-AAcを併用することで、それぞれの単体使用に対し、およそ1.5倍に膨潤している。カチオン性高分子ゲル及びアニオン性高分子ゲルの併用により、いずれの高分子ゲルにおいてもカチオン基、アニオン基のイオン化が促進し、親水性が増したためと考えられる。
【0045】
【0046】
(高分子ゲルの膨潤収縮挙動の検証2)
硝酸ナトリウム水溶液にカチオン性高分子ゲル及びアニオン性高分子ゲルを共在させた際の膨潤収縮挙動に及ぼす塩濃度及び温度変化の影響について検証した。
1mM、3mM、5mMの硝酸ナトリウム水溶液(12mL)をそれぞれ入れた試験管を用意し、カチオン性高分子ゲル及びアニオン性高分子ゲルを入れた。振盪器(100rpm、20℃)を用い、硝酸イオン及びナトリウムイオンの吸着を行った。その後、20℃から80℃まで温度を変化(12時間ごとに10℃昇温)させ、高分子ゲルの沈降体積の変化をそれぞれ測定した。
使用した高分子ゲルは以下の通りである。
・カチオン性高分子ゲル:NIPA-co-DMAPAA(0.06g)
・アニオン性高分子ゲル:NIPA-co-AAc(0.06g)
【0047】
その結果を
図3に示す。硝酸ナトリウム水溶液の濃度が増大するに従って、高分子ゲルの沈降体積が大きくなるとともに、吸着したイオンを脱着する収縮開始温度が高くなっている。これは、初期の硝酸ナトリウム濃度の増加に伴って、高分子ゲルへのイオン吸着量が増加した結果、外部溶液と高分子ゲル内部との濃度差が生じて浸透圧が高まったため、吸水量が増加し、高分子ゲルの体積が増加した結果、高分子ゲルの収縮に高い温度(エネルギー)を要するためである。
【0048】
(吸脱着挙動の検証1)
硝酸ナトリウム水溶液を用い、高分子ゲルへの陰イオン、陽イオンの吸脱着挙動を検証した。
所定濃度の硝酸ナトリウム水溶液(4mL)それぞれについて、カチオン性高分子ゲル(0.01g)及びアニオン性高分子ゲル(0.01g)を入れ、振盪器(100rpm、20℃)を用い、24時間硝酸イオン、ナトリウムイオンの吸着を行った。
吸着後、水溶液を昇温して硝酸イオン、ナトリウムイオンの脱着を行った。温度変化の条件は、20℃から80℃まで、12時間ごとに10℃ずつ昇温することで行った。
吸着、脱着後の硝酸ナトリウム水溶液中の硝酸イオン濃度を吸光光度計で測定し、また、ナトリウムイオン濃度を液体クロマトグラフィーで測定した。そして、吸着前後の濃度差により高分子ゲルの硝酸イオン、ナトリウムイオンの吸着量を算出した。
【0049】
使用した高分子ゲルは以下の通りである。
・カチオン性高分子ゲル:NIPA-co-DMAPAA(0.01g)
・アニオン性高分子ゲル:NIPA-co-AAc(0.01g)
【0050】
また、比較例としてカチオン性高分子ゲル(NIPA-co-DMAPAA(0.02g))単体でも、吸着を行った。
【0051】
図4に、カチオン性高分子ゲル及びアニオン性高分子ゲルの併用、並びに、カチオン性高分子ゲル単体での硝酸ナトリウムの吸着等温線を示している。吸着等温線での硝酸イオン、ナトリウムイオンの吸着量は、高分子ゲル合成の仕込み組成から算出したそれぞれの吸着サイト数から計算される吸着量の約70%が使用されており、中性塩溶液中においても高い吸着量を示している。一方、カチオン性高分子ゲル単体使用では、吸着サイトへの吸着量は吸着サイト量から計算される吸着量の約2.5%であった。このことから、カチオン性高分子ゲル及びアニオン性高分子ゲルを併用させると、陰イオン及び陽イオン双方の吸着量が向上することを立証した。
【0052】
また、
図5に、併用したカチオン性高分子ゲル及びアニオン性高分子ゲルを昇温してイオンを脱着させた際の吸着等温線を示す。高分子ゲルに吸着しているイオンを脱着させるにあたり、昇温させるにつれて、それぞれのイオンの脱着が進行していることがわかる。
【0053】
(吸脱着挙動の検証2)
疎水性を増したカチオン性高分子ゲル、アニオン性高分子ゲルを用い、吸脱着特性に及ぼす影響について検証した。
【0054】
まず、疎水性を増したカチオン性高分子ゲルを用いる以外、上記の吸脱着挙動の検証1に準じて行った。併用した高分子ゲルは以下の通りである。
・カチオン性高分子ゲル:NIPA-co-NTBA-co-DMAPAA(0.01g)
・アニオン性高分子ゲル:NIPA-co-AAc(0.01g)
【0055】
また、疎水性を増したアニオン性高分子ゲルを用いる以外、上記の吸脱着挙動の検証1に準じて行った。併用した高分子ゲルは以下の通りである。
・カチオン性高分子ゲル:NIPA-co-DMAPAA(0.01g)
・アニオン性高分子ゲル:NIPA-co-NTBA-co-AAc(0.01g)
【0056】
疎水性を増したカチオン性高分子ゲルを用いて行った結果を
図6に、疎水性を増したアニオン性高分子ゲルを用いて行った結果を
図7に示す。20℃における吸着量は、NIPA-co-DMAPAA及びNIPA-co-AAcを行った場合(
図4)に比べて減少したが、60℃におけるナトリウムイオン及び硝酸イオンの脱着は大幅に促進されている。疎水性の増したアニオン性高分子ゲル内にて、カルボキシル基の水素結合の形成が容易になることに基づく。即ち、吸着時にはアミノ基へのH+の供給が困難になる一方、脱着時には水素結合形成のためナトリウムと交換するH
+を取り込みやすくなったためである。
【0057】
続いて、疎水性を増したカチオン性高分子ゲル及び疎水性を増したアニオン性高分子ゲルを用いる以外、上記の吸脱着挙動の検証1に準じて行った。
・カチオン性高分子ゲル:NIPA-co-NTBA-co-DMAPAA(0.01g)
・アニオン性高分子ゲル:NIPA-co-NTBA-co-AAc(0.01g)
【0058】
その結果を
図8に示す。硝酸イオン、ナトリウムイオンのいずれも脱着がより促進されていることがわかる。併用するカチオン性高分子ゲル、アニオン性高分子ゲルの双方とも疎水性が増しており、全体の相転移温度が低下したためと考えられる。このように、使用する高分子ゲルの疎水性の特性によって、吸着させたイオンの脱着を低温で行うことができることがわかる。したがって、高分子ゲルの再生時における省エネルギー化が可能であるため、簡易、低コストに再利用して、水溶液中の陽イオン及び陰イオンを効果的に除去、回収することが可能である。
【0059】
表3に示す組成にて、各種高分子ゲル(NIPA-co-DMAPAA、NIPA-co-AMPS)を上記と同様の手法で合成し、以下の実験に供した。なお、AMPSは2-Acrylamido-2-methylpropanesulfonic acidである。
【0060】
【0061】
(ナトリウムの吸着、脱着実験)
7.5mLの塩化ナトリウム水溶液(5mM,0.029wt%)に、乾燥状態のNIPA-co-DMAPAA及びNIPA-co-AMPSを0.06gずつ(計0.12g)添加し、25℃で24時間、高分子ゲルに塩化ナトリウムを吸着させた。その後、高分子ゲルを塩化ナトリウム水溶液から取出して、5mLの蒸留水、水酸化ナトリウム水溶液(0.1mM)、及び、硝酸水溶液(0.1mmol/L)の各脱着液に入れ、50℃で24時間Na+を脱着させた。
【0062】
その結果を
図9に示す。高分子ゲルは1g当たり0.283mmolのNa
+を吸着しており、その後、50℃の蒸留水中にて吸着していたNa
+のうち、0.135mmol(47.7%)のNa
+を脱着した。また、水酸化ナトリウム水溶液中では、0.140mmol(49.5%)、硝酸水溶液中では0.276mmol(97.2%)のNa
+を脱着した。
【0063】
(鉛の吸着、脱着実験)
15mLの塩化鉛水溶液(5mmol/L)に、乾燥状態のNIPA-co-DMAPAA及びNIPA-co-AMPSを0.06gずつ(計0.12g)添加した。そして、水溶液の温度を変化(25℃(24時間)、50℃(24時間))を繰り返し行い、Pb2+の吸着、脱着を行った。
【0064】
その結果を
図10に示す。25℃では、高分子ゲル1g当たりのPb
2+の吸着量は、0.566~0.582mmolであり、50℃での吸着量は0.456~0.470mmolであった。25℃と50℃の間で水溶液の温度変化を繰り返すと、温度変化のみで、高分子ゲルは1g当たり約0.12mmolのPb
2+を可逆的に吸着、脱着できることが示された。
【0065】
表4に示す組成にて、4種の高分子ゲル(NIPA-co-DMAPAA(以下、NDと記す)、NIPA-co-AMPS(以下、NSと記す)、NIPA-co-AAC(以下、NAと記す)、NIPA-co-DMAAPS(以下、NAsと記す))を上記と同様の手法で合成し、以下の実験に供した。なお、NDはカチオン性、NS及びNAはアニオン性、NAsは両性の高分子ゲルである。また、DMAAPSはN,N’- dimethyl (acrylamidopropyl) ammonium propane sulfonateである。
【0066】
【0067】
(吸水性実験)
15mLの蒸留水に、乾燥状態の各種高分子ゲルを添加し、25℃で24時間、高分子ゲルに吸水させた。高分子ゲルは、ND、NS、NA、NAsの単体で添加(それぞれ0.12g)、NDとNA(ND+NA)の併用、NDとNSの併用(ND+NS)で添加(0.06gずつ、計0.12g)の6パターンで行った。
【0068】
その結果を
図11に示す。カチオン性感温性高分子ゲルとアニオン性感温性高分子ゲルを併用したND+NA、ND+NSでは、ND、NA、NSの単体使用に比べ、吸水量が多くなっており、カチオン性高分子ゲル、アニオン性高分子ゲルを併用することで吸水量が向上することがわかる。なお、NAsでは、高分子ゲル中に陽イオン吸着基と陰イオン吸着基の双方を有しているため、陽イオン吸着基と陰イオン吸着基が吸着し、高分子ゲルの吸水が阻害されたことを示している。
【0069】
(鉛、亜鉛の吸着実験)
15mLの塩化鉛水溶液(5mmol/L)に、乾燥状態の各種高分子ゲルを0.12g添加し、25℃で24時間、高分子ゲルにPb2+を吸着させた。また、15mLの塩化亜鉛水溶液(5mmol/L)を用いて、同様にして行い、高分子ゲルにZn2+を吸着させた。高分子ゲルは、ND、NS、NA、NAsの単体で添加(それぞれ0.12g)、NDとNA(ND+NA)の併用、NDとNSの併用(ND+NS)で添加(0.06gずつ、計0.12g)の6パターンで行った。
【0070】
その結果を
図12に示す。Pb
2+、Zn
2+ともに、吸水量の場合と同様、カチオン性の感温性高分子ゲルとアニオン性の感温性高分子ゲルを併用したND+NA、ND+NSでは、ND、NA、NSの単体使用に比べ、吸着量が多い結果となった。
【0071】
(NaClの吸着実験)
5mM(0.029wt%)の塩化ナトリウム溶液7.5mLに、乾燥状態の各種高分子ゲルを添加し、25℃で24時間浸漬させ、高分子ゲルに塩化ナトリウムを吸着させた。高分子ゲルは、ND、NS、NA、NAsの単体で添加(それぞれ0.12g)、NDとNA(ND+NA)の併用、NDとNSの併用(ND+NS)で添加(0.06gずつ、計0.12g)の6パターンで行った。
【0072】
その結果を
図13に示す。ND+NA、ND+NSでは、ND、NA、NS、NAsを単体で使用した場合に比べ、Na
+、Cl
-ともに吸着量が多くなっており、カチオン性高分子ゲル、アニオン性高分子ゲルを併用することで吸着量が向上している。ND、NA、NSを単独で用いた場合は、片方のイオンしか吸着しないために、残った対イオンが吸着を阻害するためである。また、NAsでは、高分子ゲル内に陰イオン吸着基と陽イオン吸着基の双方があるために、陽イオン吸着基と陰イオン吸着基が吸着してしまい、併用した場合に比べ、Na
+、Cl
-の吸着量が少なくなったことが示された。
【0073】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【0074】
本出願は、2019年9月20日に出願された日本国特許出願2019-171201号に基づく。本明細書中に、日本国特許出願2019-171201号の明細書、特許請求の範囲、図面全体を参照として取り込むものとする。
【産業上の利用可能性】
【0075】
排水処理や有害物質除去、有価物質回収など、水溶液中の陽イオン及び陰イオンの除去や回収など、種々の用途に利用可能である。