(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】極紫外光源の光パルス発生
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20240227BHJP
G02F 1/03 20060101ALI20240227BHJP
H01S 3/00 20060101ALI20240227BHJP
H01S 3/10 20060101ALI20240227BHJP
H05G 2/00 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
G03F7/20 503
G03F7/20 521
G02F1/03 502
H01S3/00 A
H01S3/10 Z
H05G2/00 K
(21)【出願番号】P 2019548362
(86)(22)【出願日】2018-03-19
(86)【国際出願番号】 US2018023094
(87)【国際公開番号】W WO2018175295
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-03-12
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-06
(32)【優先日】2017-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】リーベンベルグ,クリストッフェル,ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】パリー,ロバート,ウィリアム
【合議体】
【審判長】山村 浩
【審判官】野村 伸雄
【審判官】松川 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-93308(JP,A)
【文献】特開2013-140328(JP,A)
【文献】特開2013-61454(JP,A)
【文献】特開2013-174744(JP,A)
【文献】特表2016-513280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20-7/24
G03F 9/00-9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
極端紫外線(EUV)光源
においてターゲット領域に向かって伝播する光パルスを形成する方法であって、
変調システムの半導体材料を、第1の波長を有する第1の光ビームで照らすことと、
前記半導体材料を通過する第2の波長を有する第2の光ビームの偏光状態が修正されて前記変調システムの少なくとも1つの偏光ベースの光学要素を通過するように、前記半導体材料
に前記半導体材料の屈折率を修正するのに十分な電圧を印加することと、
前
記電圧が印加されている時間の間、前記半導体材料に前記第2の波長を有する前記第2の光ビームを通過させることによって、光パルスを形成することであって、前記形成される光パルスは第1の部分及び第2の部分を備え、前記第1の部分と前記第2の部分とは時間的に連続し、前記第1の部分は前記第2の部分の前
であって前記電圧が印加される時間の前に発生することと、
前記形成される光パルスの前記第1の部分の平均強度、最大強度、及び持続時間のうち1つ以上を
低減するように、前記第1の光ビームの特性を調整することであって、前記変調システムの前記半導体材料を前記第1の光ビームで照らすことによって、前記形成される光パルスの前記第1の部分の前記平均強度、前記最大強度、及び前記持続時間のうち1つ以上が
低減されることと、
を備える、方法。
【請求項2】
前記形成される光パルスの前記第1の部分は、前記形成される光パルスの前記第2の部分の最大強度よりも小さい最大強度を有する、請求項1
に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の部分の前記最大強度は、前記ターゲット領域のターゲットのターゲット材料をEUV光を放出するプラズマに変換するのに十分である、請求項2
に記載の方法。
【請求項4】
前記半導体材料はバンドギャップエネルギと関連しており、前記バンドギャップエネルギは前記半導体材料の価電子帯と前記半導体材料の伝導帯との間のエネルギ差であり、前記第1の波長の光子エネルギは前記バンドギャップエネルギよりも小さい、請求項1
に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の波長は10.6μmを備え、前記半導体材料はテルル化亜鉛カドミウム(CdZnTe)、テルル化カドミウム(CdTe)、テルル化亜鉛(ZnTe)、及び砒化ガリウム(GaAs)のうちの1つを備える、請求項1
に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の波長は0.75ミクロン(μm)乃至3.5μmの波長を備え、前記第2の波長は9μm乃至11μmの波長を備える、請求項1
に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の光ビーム及び前記第2の光ビームは、前記半導体材料を通る同じ空間経路を辿る、請求項1
に記載の方法。
【請求項8】
極端紫外線(EUV)光源のシステムであって、
1つ以上のタイプの欠陥を備える半導体材料であって電圧の印加に応答して屈折率が変化する半導体材料を備える変調システムと、
前記半導体材料を第1の波長を有する光で照らすと前記半導体材料の漏れ電流が増大するところ、前記第1の波長を有する第1の光ビームを生成するように構成された第1の光源と、
前記変調システムに結合された制御システムであって、
第2の波長を有する第2の光ビームが前記半導体材料内を伝播して前記第2の光ビームから光パルスを形成する間、前記半導体材料に電圧を印加させるように構成されており、前記光パルスは少なくともいくらかのターゲット材料をEUV光を放出するプラズマに変換するように構成されている、制御システムと、
を含み、
前記半導体材料はテルル化亜鉛カドミウム(CdZnTe)、テルル化カドミウム(CdTe)、テルル化亜鉛(ZnTe)、及び砒化ガリウム(GaAs)のうちの1つを備え、
前記光パルスは第1の部分及び第2の部分を備え、前記第1の部分と前記第2の部分とは時間的に連続し、前記第1の部分は前記第2の部分の前であって前記電圧が印加される時間の前に発生し、
前記制御システムはさらに、前記第1の光源を制御し、それによって前記
光パルスの第1の部分の平均強度、最大強度、及び持続時間のうち1つ以上を
低減するように構成されている、
システム。
【請求項9】
前記第2の光ビームのパルスを生成する第2の光源をさらに含み、
前記制御システムは前記変調システム及び前記第2の光源に結合されており、
前記制御システムは
前記第2の光ビームのパルスを放出するように前記第2の光源を制御するように構成されている、請求項8
に記載のシステム。
【請求項10】
前記第1の光源は前記第1の光ビームのパルスを生成するように構成され、
第1の光ビーム及び前記第2の光ビームの少なくとも1つのパルスは、同時に前記半導体材料内にある、請求項
9に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本願は、2017年3月24日に提出された米国出願第15/469,267号の優先権を主張するものであり、同出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002] 本開示は、極紫外光源の光パルス発生に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] フォトリソグラフィプロセスにおいては、極端紫外線(EUV)光、例えば約50nm以下の波長を有し(軟X線と称されることもある)約13nmの波長の光を含む電磁放射が、基板、例えばシリコンウェーハに極めて小さなフィーチャを作製するために用いられ得る。
【0004】
[0004] EUV光を生成する方法は、プラズマ状態でEUV領域に輝線を有する元素、例えばキセノン、リチウム、又はスズを有する材料を変換することを含むが、必ずしもこれに限定されない。レーザ生成プラズマ(「LPP」)と呼ばれることの多い1つのそのような方法においては、必要とされるプラズマは、例えば材料の液滴、板、テープ、流れ、又はクラスタなどの形をとるターゲット材料を、ドライブレーザと称され得る増幅された光ビームで照射することによって生成可能である。このプロセスのため、プラズマは一般的に密閉容器、例えば真空チャンバ内で生成され、様々な種類のメトロロジ(計測)設備を用いて監視される。
【発明の概要】
【0005】
[0005] 一般的な一態様において、極端紫外線(EUV)光源の光パルスを形成する方法は、変調システムの半導体材料を第1の波長を有する第1の光ビームで照らすことと、半導体材料を通過する第2の波長を有する光ビームの偏光状態が修正されて変調システムの少なくとも1つの偏光ベースの光学要素(polarization-based optical element)を通過するように、半導体材料に、ある持続時間にわたって、半導体材料の屈折率を修正するのに十分な電圧を印加することと、その持続時間の間、第2の波長を有する第2の光ビームに半導体材料を通過させることによって、光パルスを形成することと、を含む。形成される光パルスは第1の部分及び第2の部分を含み、第1の部分と第2の部分とは時間的に連続し、第1の部分は第2の部分の前に発生し、変調システムの半導体材料を第1の光ビームで照らすことによって、形成される光パルスの第1の部分の1つ以上の特徴が修正される。
【0006】
[0006] 実装形態は以下の特徴のうち1つ以上を含み得る。光パルスの第1の部分の1つ以上の特徴は、平均強度、最大強度、及び持続時間のうち1つ以上を含み得る。形成されるパルスはターゲット領域に向かって伝播することが可能であってもよく、形成されるパルスの第1の部分は、形成されるパルスの第2の部分の最大強度よりも小さい最大強度を有し得る。第2の部分の最大強度は、ターゲット領域のターゲットのターゲット材料をEUV光を放出するプラズマに変換するのに十分であり得る。
【0007】
[0007] 第2の波長は、第1の波長の少なくとも3倍の大きさであってもよい。
【0008】
[0008] 半導体材料は分光透過特性と関連していてもよく、分光透過特性は透過領域と吸収端波長とを含み、吸収端波長は透過領域の最も低い波長であり、第1の波長は吸収端波長と第2の波長との間にあり、第2の波長は透過領域内の波長であってもよい。第2の波長は、第1の波長の3.5倍を超えない大きさである。
【0009】
[0009] 半導体材料はバンドギャップエネルギと関連していてもよく、バンドギャップエネルギは半導体材料の価電子帯と半導体材料の伝導帯との間のエネルギ差であり、第1の波長の光子エネルギはバンドギャップエネルギよりも小さくてもよい。半導体材料は欠陥を含んでいてもよく、この欠陥は価電子帯と伝導帯との間のエネルギ準位を有する深い準位のトラップを生成し、第1の波長の光子エネルギは、深い準位のトラップの少なくとも1つのエネルギ準位と伝導帯との間又は深い準位のトラップの少なくとも1つのエネルギ準位と価電子帯との間のエネルギ差と等しいか又はそれよりも大きくてもよい。
【0010】
[00010] 第2の波長は10.6μmを含んでいてもよく、半導体材料はテルル化亜鉛カドミウム(CdZnTe)、テルル化カドミウム(CdTe)、テルル化亜鉛(ZnTe)、及び砒化ガリウム(GaAs)のうちの1つであってもよい。第1の波長は0.75ミクロン(μm)乃至3.5μmの波長であってもよく、第2の波長は9μm乃至11μmの波長を含んでいてもよい。
【0011】
[00011] 第1の光ビーム及び第2の光ビームは、半導体材料を通る同じ空間経路を辿り得る。第1の光ビーム及び第2の光ビームは、同時に半導体材料内にあってもよい。
【0012】
[00012] 第1の光ビームの特性は、光パルスの第1の部分の特徴のうち1つ以上を調整するように調整されてもよい。第1の光ビームの特性を調整することは、第1の光ビームの強度を増大させて光パルスの第1の部分の最大強度又は平均強度を低減させることを含んでいてもよい。
【0013】
[00013] 別の一般的な一態様において、極端紫外線(EUV)光源のシステムは、1つ以上のタイプの欠陥を含む半導体材料であって電圧の印加に応答して屈折率が変化する半導体材料を含む変調システムと、半導体材料を第1の波長を有する光で照らすと半導体材料の漏れ電流が増大するところ、第1の波長を有する第1の光ビームを生成するように構成された第1の光源と、
変調システムに結合された制御システムであって、
第2の波長を有する第2の光ビームが半導体材料内を伝播して第2の光ビームから光パルスを形成する間、半導体材料に電圧を印加させるように構成されており、光パルスは少なくともいくらかのターゲット材料をEUV光を放出するプラズマに変換するように構成されている、制御システムと、を含む。
【0014】
[00016] 実装形態は以下の特徴のうち1つ以上を含み得る。パルスは第1の部分及び第2の部分を含んでいてもよく、第1の部分と第2の部分とは時間的に連続し、第1の部分は第2の部分の前に発生する。
【0015】
[00017] 変調システムは、少なくとも1つの偏光ベースの光学要素も含み得る。半導体材料は水晶であってもよい。第2の光ビームは、連続光ビームであってもよい。欠陥のタイプは、沈殿物、包含物、双晶、及び滑り面のうち1つ以上を含み得る。
【0016】
[00018] 第2の光源はパルス光源を含んでいてもよく、制御システムは変調システム及び第2の光源に結合されていてもよく、制御システムは光のパルスを放出するように第2の光源を制御するように構成されていてもよい。また、制御システムは、半導体材料に電圧が印加される間、及び第1の光ビームが半導体材料の方に誘導される間、第2の光ビームのパルスを半導体材料の方に誘導するように第2の光源を制御するように構成されていてもよい。第1の光ビーム及び第2の光ビームの少なくとも1つのパルスは、同時に半導体材料内にあってもよい。
【0017】
[00019] また、制御システムは、第1の光源を制御し、それによって光パルスの第1の部分の1つ以上の特徴を制御するように構成されていてもよい。第1の部分の1つ以上の特徴は、平均強度、最大強度、及び持続時間のうち1つ以上を含み得る。制御システムは、第1の光源を制御することによってパルスの第1の部分の強度を制御するように構成されていてもよい。
【0018】
[00020] EUV光源のシステムは、第1の光源と半導体材料との間に光ビームデリバリシステムも備えていてもよく、光ビームデリバリシステムは第1の光ビームを半導体材料上の特定の場所に誘導するように構成されている。
【0019】
[00021] 別の一般的な一態様において、電気光学変調器における音響効果を修正する方法は、第1の期間の間、電気光学変調器の半導体に電圧を印加し、その電圧の印加により半導体において振動音波を含む音響効果を発生させることと、半導体を、半導体のバンドギャップエネルギよりも小さい光子エネルギを有する波長を有するシード光ビームで照らし、それによって音波の振幅と周波数とのうち1つ以上を修正することと、を含む。
【0020】
[00022] 実装形態は以下の特徴のうち1つ以上を含み得る。連続波光ビームが電気光学変調器の半導体の方に誘導されてもよい。ここで、連続波光ビームの第1の量は、電圧が半導体に印加されているとき、第1の期間の間、第1の偏光状態で電気光学変調器を通過し、
連続波光ビームの第2の量は、電圧が半導体に印加されておらず半導体内に音響効果が存在するとき、第1の期間ではない時刻に、電気光学変調器を通過し、半導体をシード光ビームで照らすことにより、電気光学変調器を通過する光ビームの第2の量が変化する。
【0021】
[00024] パルス光ビームのパルスは電気光学変調器の方に誘導されてもよく、パルスの光の第1の量は、電圧が半導体に印加されているとき、第1の期間の間、半導体を通過し、パルスの光の第2の量は、第1の期間ではない時刻で電圧が半導体に印加されていないときに、半導体を通過する。ここで、半導体をシード光ビームで照らすことにより、光の第2の量は変化する。
【0022】
[00025] 上述した技術のうちいずれの実装形態も、EUV光源、システム、方法、プロセス、デバイス、又は装置を含み得る。1つ以上の実装形態の詳細を、添付の図面及び以下の説明に記載する。他の特徴は、説明及び図面から、ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】[00026] EUV光源を備える極端紫外線(EUV)リソグラフィシステムの一例のブロック図である。
【
図2A】[00027]
図1のEUV光源において用いられる変調モジュールのブロック図である。
【
図3A】[00029]
図2Aの変調モジュールの光漏れ及び
図2Aの変調器によって形成される2つのパルスのプロット図である。
【
図3B】[00030]
図3Aに示されるパルスを生成するための変調モジュールへの印加のタイミング図の一例である。
【
図4A】[00031]
図2Aの変調モジュールの半導体のエネルギ図の一例である。
【
図4B】[00032]
図2Aの変調モジュールの半導体の分光透過特性の一例である。
【
図5A】[00033]
図2Aの変調モジュールによって生成され得る2つの光パルスのプロット図である。
【
図5B】[00034]
図5Aに示されるパルスを生成するための変調モジュールへの印加のタイミング図の一例である。
【
図6】[00035] 光パルスを形成するプロセスの一例のフローチャートである。
【
図11】[00037]
図1のEUV光源において用いられ得るパルス発生システムの斜視図である。
【
図12】[00037]
図1のEUV光源において用いられ得るパルス発生システムの斜視図である。
【
図13A】[00038] EUV光源の一例のブロック図である。
【
図13B】[00038] EUV光源の一例のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[00039] 極端紫外線(EUV)光源において光パルスを形成する技術について述べる。光パルスを形成するために用いられる電気光学変調器は、シード光ビームで照らされると、電気光学変調器の半導体内にトラップされた電荷を解放する。電荷は半導体に存在する欠陥に起因してトラップされ、トラップされた電荷は変調器の光漏れを増大させる。光漏れは、変調器によって形成されるパルスに追加的な又は不要な光(spurious light)を与える。こうした不要な光のいくらかは、形成されるパルスの始めに「ペデスタル」を形成する。トラップされた電荷を解放することによって、光漏れが低減及び/又は制御され、ペデスタルもまた低減及び/又は制御され得る。
【0025】
[00040]
図1を参照すると、システム100のブロック図が示されている。システム100は、EUVリソグラフィシステムの一例である。システム100はEUV光源101を備えており、このEUV光源がEUV光196をリソグラフィ装置195に提供する。リソグラフィ装置195は、ウェーハ(例えばシリコンウェーハ)をEUV光196で露光させて、ウェーハ上に電子フィーチャを形成する。EUV光196は、ターゲット118のターゲット材料に光パルス107を照射することによって形成されるプラズマから放出される。ターゲット材料は、プラズマ状態でEUV光を放出する任意の材料(例えばスズ)である。
【0026】
[00041] EUV光源101は、パルス107を生成するパルス発生システム104を備えている。パルス発生システム104は光源105を含み、この光源は、例えば、パルス(例えばQスイッチ)レーザ又は連続波炭酸ガス(CO2)レーザであってもよい。光源105は光ビーム106を生成する。この光ビームは、光のパルス列又は連続光ビームであってもよい。光源105は、半導体122を含む変調モジュール120に向かって光ビーム106を放出する。
【0027】
[00042] 変調モジュール120は、電気光学効果に基づいて入射光ビームを変調する電気光学変調器である。電気光学効果は、直流(DC)電界又は低周波電界の印加によってもたらされる材料(半導体122)の屈折率の変化を表す。変調モジュール120は、制御システム175によって、光ビーム106から又は光ビーム106の光のパルスからパルス107を形成するように制御される。パルス107は、経路111上を、ターゲット118を収容する真空容器180に向かって伝播する。パルス107とターゲット118とは真空容器180内のターゲット領域115において相互作用し、その相互作用が、ターゲット118のターゲット材料のうち少なくともいくらかを、EUV光196を放出するプラズマに変換する。
【0028】
[00043] EUV光源101は、シード光源110も備えている。シード光源110は、半導体122を照らすシード光ビーム114を放出する。半導体122は欠陥を含んでおり、これが電荷をトラップし得る。シード光ビーム114は、トラップされた電荷を励起するのに十分な光子エネルギに関連する波長を有しており、トラップされた電荷を半導体122の伝導帯に移動させて、半導体122の伝導性を高め得る。
図2から
図12に関して以下でより詳細に述べるように、トラップされた電荷を除去又は低減することにより、変調モジュール120のパルス107を形成する能力が向上する。
【0029】
[00044] 制御システム175は、パルス発生システム104及び/又はパルス発生システム104の構成要素のいずれかと、通信インターフェイス176を介して、データ及び/又は情報を交換する。例えば、いくつかの実装形態においては、制御システム175は、変調モジュール120及び/又は光源105を動作させるためのトリガ信号を提供してもよい。制御システム175は、電子プロセッサ177、電子記憶装置178、及び入力/出力(I/O)インターフェイス179を含む。電子プロセッサ177は、汎用又は専用マイクロプロセッサのようなコンピュータプログラムの実行に適した1つ以上のプロセッサと、任意の種類のデジタルコンピュータの任意の1つ以上のプロセッサとを備えている。概して、電子プロセッサは、読み出し専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、又はその両方から命令及びデータを受信する。電子プロセッサ177は、どんなタイプの電子プロセッサであってもよい。
【0030】
[00045] 電子記憶装置178は、RAMなどの揮発性メモリであってもよいし、又は不揮発性メモリであってもよい。いくつかの実装形態においては、電子記憶装置178は、不揮発性及び揮発性の部分又は構成要素を含む。電子記憶装置178は、制御システム175及び/又は制御システム175の構成要素の動作において用いられるデータ及び情報を記憶し得る。
【0031】
[00046] また、電子記憶装置178は、実行時にプロセッサ177に制御システム175内の構成要素、変調モジュール120、及び/又は光源105との通信を行わせる命令を、恐らくはコンピュータプログラムとして、記憶し得る。例えば、光源105がパルス光源である実装形態においては、命令は、電子プロセッサ177に信号を発生させる命令であってもよく、その信号によって光源105が光パルスを放出する。
【0032】
[00047] I/Oインターフェイス179は、制御システム175がデータ及び信号を、受信すること、及び/又はオペレータ、変調モジュール120、及び/又は光源105、及び/又は別の電子機器上で動作する自動化されたプロセスに提供することを可能にする、任意の種類の電子インターフェイスである。例えば、I/Oインターフェイス179は、視覚的ディスプレイ、キーボード、及び通信インターフェイスのうち1つ以上を含み得る。
【0033】
[00048]
図2Aは、変調モジュール120のブロック図である。変調モジュール120は半導体122を備えており、この半導体は電極123a,123bの間に位置決めされている。電極123a,123bは、電極123a,123bの間に電界を形成するように制御可能である。例えば、制御システム175は、電極123aを電極123bよりも高い電圧で保持させ、それによって半導体122を横切る電界又は電位差(V)を生じさせてもよい。
【0034】
[00049] 変調モジュール120は、1つ以上の偏光ベースの光学要素124も含む。
図2Aの例においては、偏光ベースの光学要素124は1つしか示されていない。しかしながら、他の実装形態においては、追加的な偏光ベースの光学要素124が含まれていてもよい。例えば、第2の偏光ベースの光学要素124が、変調モジュール120の、光ビーム106を受ける側にあってもよい。
【0035】
[00050] 偏光ベースの光学要素124は、光の偏光状態に基づいてその光と相互作用する任意の光学要素である。例えば、偏光ベースの光学要素124は、水平偏光光を透過して垂直偏光光を遮蔽するか、又はその逆の、直線ポラライザであってもよい。偏光ベースの光学要素124は、水平偏光光を透過し垂直偏光光を反射する偏光ビームスプリッタであってもよい。偏光ベースの光学要素124は、特定の偏光状態を有する光を除くすべての光を吸収する光学要素であってもよい。いくつかの実装形態においては、偏光ベースの光学要素124は、4分の1波長板を含んでいてもよい。少なくとも1つの偏光ベースの光学要素124が、半導体122を通過する光を受けるように、且つある偏光状態の光をビーム経路111上に誘導するように、位置決めされる。
【0036】
[00051] 半導体122は、光ビーム106の1つ以上の波長を透過する任意の材料であり得る。また、半導体122は、制御可能な外力(電位差(V)など)の印加によって修正できる異方性を発現させる。異方性の制御は、半導体122を通って伝播する光の様々な偏光成分の屈折率の制御を可能にする。光ビーム106が10.6ミクロン(μm)の波長の光を含む実装形態の場合、半導体122は、例えば、テルル化亜鉛カドミウム(CdZnTe又はCZT)、テルル化カドミウム(CdTe)、テルル化亜鉛(ZnTe)、及び/又は砒化ガリウム(GaAs)であってもよい。他の波長では他の材料が用いられ得る。例えば、半導体122は、リン酸一カリウム(KDP)、リン酸二水素アンモニウム(ADP)、石英、塩化第一銅(CuCl)、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、リン化ガリウム(GaP)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、又はチタン酸バリウム(BaTiO3)であってもよい。光ビーム106の1つ以上の波長を透過するとともに外力の印加に応答して複屈折性を示す他の材料も用いられ得る。
【0037】
[00052] 半導体122を通過する光の偏光状態は、電極123a,123bの間の電位差(V)を制御することによって制御され得る。理想的な動作の下では、変調モジュール120は、半導体122に印加される電位差Vが半導体122を通過する光の偏光状態を偏光ベースの光学要素124に一致させるときにのみ、光を放出する。例えば、偏光ベースの光学要素124が水平偏光光をビーム経路111上に透過するように位置決めされた直線ポラライザであり、光ビーム106が半導体122への当初入射時に垂直偏光される場合には、パルス107は、半導体122に印加される電位差Vが、光ビーム106の偏光状態を、光ビーム106が水平偏光されるように変化させるときにのみ、形成される。
【0038】
[00053] しかしながら、実際の動作においては、変調モジュール120は不要な光も放出する(光漏れ)。この光漏れは変調モジュール120の動作の全体を通じて存在するものであり、光が変調モジュール120を通過すべきでないときを含め、更なる量の光に変調モジュール120を通過させる。例えば、この更なる光がパルス107の始まりに追加的な又は余分な量をもたらし、この更なる光がペデスタル部分を形成する。
【0039】
[00054]
図2Bも参照すると、ペデスタル125を有するパルス107の図が示されている。
図2Bはパルス107の強度を時間の関数として示す。ペデスタル125は、121と標識されたウインドウ内で発生する。また、ペデスタル125は、パルス107の残りの部分よりも時間的に早く発生する。パルス107のうちペデスタル125ではない部分は、主部分168と称される。ペデスタル125及び主部分168は、いずれもパルス107の一部であり、ペデスタル125は主部分168に時間的に接続されている。
【0040】
[00055] ペデスタル125の平均及び最大強度ならびに光エネルギは、主部分168の平均及び最大強度ならびに光エネルギよりも小さい。主部分168は、ターゲット118のターゲット材料のうち少なくともいくらかをEUV光を放出するプラズマへと変換するのに十分な強度又はエネルギを有する。ペデスタル125はそれほどのエネルギを有しておらず、ターゲット材料をプラズマに変換するのに十分なエネルギは有さないであろう。しかし、ペデスタル125の光は、ターゲット118に反射し、ターゲット118の表面から材料を蒸発させ、及び/又はターゲット118の一部を取り除き得る。
【0041】
[00056] ペデスタル125は、主部分168の前に発生し、主部分168の前にターゲット118に到達する。ペデスタル125は、主部分168がターゲット118に到達する前にターゲット118を変えることによってプラズマ形成に干渉し、及び/又は経路111上を戻り伝播する望ましくない反射を引き起こし得る。したがって、ペデスタル125の光の量は、制御するのが望ましい。半導体122をシード光ビーム114で照らすことによっても、ペデスタル125の1つ以上の特徴を変更し、制御し、低減し、又は無くすことが可能になる。例えば、ペデスタル125の光の平均量及び/又は光の最大量が低減され得る。
【0042】
[00057]
図3Aは、シード光ビーム114による照射の恩恵を受けない場合の、時間の関数としての光変調器の光漏れのプロット図を示す。
図3Aに示す例について、変調モジュール120及び半導体122に関して述べる。パルス307_1及び307_2(
図3A)は、変調モジュール120の半導体122に電位差を印加することによって生成される(
図3B)。光漏れとは、変調モジュール120に入射する光の、電位差が半導体122に印加されないときであっても変調モジュール120を通過する百分率である。
【0043】
[00058]
図3Aの例においては、連続波光ビームが半導体122に入射する。
図3Bも参照すると、タイミング
図300Bが示されている。タイミング
図300Bは、
図3Aに示される期間の間、半導体122に印加される電圧の一例である。電位差Vが半導体122に印加され、半導体122から出射する光の偏光が偏光ベースの光学要素124に一致すると、比較的高い百分率の入射光が変調モジュール120を通過する。パルス307_1及び307_2は、電位差Vが半導体122に印加されている間に変調モジュール120を通過する光から形成される。
【0044】
[00059] タイミング
図300Bは、4つの期間333~336を示す。期間333は、時刻(t=0)から時刻(t=t2)を含む。この期間333の間、電位差Vは半導体122に印加されない。期間334は、時刻(t=t2)に始まり、時刻(t=t3)に終わる。この期間334の間、電位差Vが半導体122に印加され、パルス307_1が形成される。期間335は、時刻(t=t3)に始まり、時刻(t=t5)に終わる。この期間335の間、電位差Vは半導体122に印加されない。電位差Vは、期間336(t=t5に始まりt=t6に終わる)の間、再び半導体122に印加され、パルス307_2が形成される。
【0045】
[00060] 期間333~336の持続時間は、変調モジュール120の特徴及びEUV光源101の動作パラメータに応じて決まる。例えば、変調モジュール120の立ち上がり時間(半導体122が印加された電位差に反応するための時間)は、期間334及び336の最小持続時間を決定し得る。パルス307_1及び307_2の所望の持続時間も、期間334及び336の持続時間を決定し得る。いくつかの実装形態においては、期間334及び336は、例えば、50~300ナノ秒(ns)、50~1000ns、又は50~100nsであってもよい。期間335は、例えば、20,000nsであってもよい。
図3Aの例は、2つのパルス307_1及び307_2を示している。しかしながら、後の時刻に再び電位差Vを印加することによって、更なるパルスが形成されてもよい。例えば、20,000ns毎に電位差Vを半導体122に印加することによって、50kHzでパルスが生成されてもよい。
【0046】
[00061] パルス307_1及び307_2に加え、他の時刻に、半導体122の欠陥及び他の効果に起因して、不要な光(例えば光漏れ)が変調モジュール120から出射する。光漏れはいくつかの成分を有しており、その全部が光漏れのタイプ、すなわち静的漏れ328、音響漏れ329、及び動的漏れオフセット(DLO:dynamic leakage offset)330である。静的光漏れ328は、電位差Vが印加されるか否かに関わらず存在する。音響漏れ329及びDLO330は、電位差Vの印加に起因して生じる。音響漏れ329及びDLO330は、合わせて動的光漏れとみなされ得る。
【0047】
[00062] 静的光漏れ328は、電位差Vが半導体122に印加されるか否かに関わりなく変調モジュール120を通過する入射光の百分率である。
図3Bの例では、線327が静的光漏れ328を時間の関数として示している。
【0048】
[00063] 動的光漏れは音響漏れ329も含む。電位差Vの印加は、半導体122の圧電特性に影響を及ぼすとともに、半導体122中を伝播する音波を発生させる。音波は、電位差Vが除去された後、持続する。半導体122における音波の存在は、半導体122の屈折率を変化させ、その結果、期間335の間、変調モジュール120を通る光の意図せぬ透過が発生し得る。入射光のうち音響漏れ329として放出される部分又は百分率は、最小音響漏れ326とピーク音響漏れ329pとの間で経時的に揺れ動く。音響漏れ329は期間335にわたって減衰もされる(音響漏れの量は、ピーク329pから、期間335に起こる以降の揺れ毎に減少する)。減衰の特徴は半導体の特性に応じて決まり、揺れは、電位差Vが次に印加されるまで、完全には減衰しないであろう。例えば、揺れは電位差Vの印加後約100μsまで完全には減衰せず、期間335は例えば約20μであってもよい。よって、揺れは、電位差Vが再び印加されるとき、依然として半導体122に存在し得る。
【0049】
[00064] 動的光漏れはDLO330も含む。DLO330は、主に、半導体122の欠陥にトラップされた電荷(例えば電子)の存在によって引き起こされるものと考えられる。トラップされた電荷は半導体122内に電界を生じさせ、印加された電位差Vが半導体122の全体にわたって均一になるのを妨げる。
【0050】
[00065] このように、期間334及び336の間、電位差Vが半導体に印加されて各パルス307_1及び307_2が形成されるが、光漏れが存在することによって、パルス307_1及び307_2は、不要な光源から生じる光を含むことになる。例えば、パルス307_1及び307_2は、それぞれペデスタル部分325a,325bを含む。ペデスタル部分325a,325bは、各パルス307_1,307_2の残りの部分の前に発生する。
図3Aの例においては、ペデスタル部分325a,325bは、400ナノ秒(ns)のウインドウ内での平均合計光漏れの透過の百分率として示されている。ウインドウは321a及び321bと標識されている。ウインドウ321aは時刻=t1から時刻=t2まで、そしてウインドウ321bは時刻=t4から時刻=t5までである。ペデスタル部分325a,325bは、電位差Vが半導体122に印加されていないときに発生する。
【0051】
[00066]
図3Aの例においては、DLO330が合計光漏れの最大の成分であり、ペデスタル部分325a,325bの大部分は、DLO330を低減又は排除することによって除去され得る。例えば、DLO330は、合計光漏れの33%乃至66%を占め得る。一例では、合計光漏れは0.3%、静的漏れ328は0.07%、音響漏れ329は0.07%であり、DLO330は0.16%を占める。しかし、他の例は異なるパラメータを有し得る。例えば、CZT(半導体122として用いられ得る)は、2%のDLOを有するであろう。別の一例において、CdTeを半導体122として用いる変調モジュールにおける光漏れは、比較的少ないDLO成分と、より優勢な音響成分とを有するであろう。これらの実装形態においては、光漏れの音響成分の低減がペデスタル部分の低減又は排除に対してより大きな影響を有する。
図4A及び4Bに関して述べるように、DLO330及び音響漏れ329は、半導体122をシード光ビーム114で照らすことによって、低減される。
【0052】
[00067]
図4Aを参照すると、半導体122の電子帯構造440(エネルギ対キャリア運動量)の図が示されている。電子帯構造440は、半導体122において電子が有し得るエネルギの範囲を表す。半導体122はバンドギャップエネルギ(Eg)441を有しており、これは、伝導帯442と価電子帯443との間の(電子ボルトすなわちeVでの)エネルギ差である。ある電子(例えば電子445)は、その電子が伝導帯442へと動くのに十分なエネルギを得ると、価電子帯443から伝導帯442へと移動し得る。電子は、音子(熱)又は光子(光)を吸収することによってエネルギを得るであろう。伝導帯442の電子は、電流として流れる。
【0053】
[00068] 半導体122は、例えば沈殿物、包含物、双晶、及び/又は滑り面などの欠陥を含む。欠陥は、電荷(例えば電子446)がトラップされる場所として作用する。
図4Aの例においては、欠陥から深い準位のトラップ444が形成されている。深い準位のトラップ444は、深い準位のトラップ444と伝導帯442とのエネルギ差であるトラップギャップエネルギ(trap gap energy)447と関連する。トラップギャップエネルギ447は、バンドギャップエネルギ441よりも小さい。
【0054】
[00069]
図4Bも参照すると、半導体122の分光透過特性450が示されている。分光透過特性450は、透過百分率を入射光の波長の関数として表す。分光透過特性450において、最も低い波長(すなわち最短波長)は横軸の最も左側にあり、x軸が右へ増加するにつれて波長は増大する(すなわち長くなる)。
【0055】
[00070] 分光透過特性450は、透過領域452と、電子吸収領域451と、吸収端453とを含む。吸収端453は、透過領域452と電子吸収領域451との間の界面又は境界である。吸収端453の波長は、バンドギャップエネルギ441に対応する光子エネルギを有する。波長(λ)を有する光子は、方程式1によって求められる光子エネルギ(E)を有する。
【数1】
ただし、hはプランク定数であり、cは光の速度である。
【0056】
[00073] 半導体122は、CdZnTeであってもよい。この例においては、透過領域452は約0.8ミクロン(μm)乃至20(μm)、吸収端は約730ナノメートル(nm)である。透過領域の波長を有する光については、入射光の約60%が透過される。別の一例においては、半導体122はCdTeである。この例の場合、透過領域452は約0.9μm乃至20μm、吸収端は約861ナノメートル(nm)である。透過領域の波長を有する光については、入射光の約65%が透過される。電子吸収領域451の波長を有する光は、バンドギャップエネルギ441よりも大きい光子エネルギを有する。そのような光子は、半導体122によって吸収されやすい。
【0057】
[00074] パルス107を形成するために用いられる光ビーム106は、透過領域452の波長を有しており、したがって半導体122を通って透過される。半導体122を照らすために用いられる光ビーム114は、広域スペクトルを有し得るとともに、バンドギャップエネルギ441よりも小さい光子エネルギを有する波長を含め、多くの波長(及びひいては多くの異なる光子エネルギ)を備え得る。吸収端453よりも大きい波長を有する(又はバンドギャップエネルギ441よりも小さい光子エネルギを有する)光は、半導体122内を進み、
図4Aのトラップ444内の電子446のような、欠陥によって形成された深い準位のトラップ内にトラップされた電荷を励起し得る。光ビーム114の光子はトラップされた電荷にエネルギを伝達し、伝達されるエネルギは、トラップされた電荷を、電荷が電流として流れる伝導帯442内に移動するのに十分であろう。例えば、これらの光子は、電荷が伝導帯442に移動することができるように、トラップされた電荷の熱エネルギを増大させ得る。追加的又は代替的には、そのような光子は、価電子帯443内に蓄積した電荷にエネルギを提供して、これらの電荷をトラップ444に移動させてもよい。ビーム114からの他の光子がこれらの電荷をさらに励起し、電荷をトラップ444から伝導帯442へと移動させて電流として流れさせてもよい。
【0058】
[00075] このように、半導体122を光ビーム114で照らすことによって、トラップされた電荷(
図4Aの電子446など)が解放され、これらの電荷が励起されて伝導帯442に移る。また、半導体122を光ビーム114で照らすことによって、伝導帯442へと移動する価電子帯443内の電子の量が増大し得る。一旦伝導帯442に入ると、電荷は電流として流れ、それによって伝導性を高めるとともに、半導体122の抵抗率を低減させる。伝導性が高くなると、DLO330は低くなる。さらに、トラップされた電荷を除去すること又は減少させることによって、電位差Vが印加されるときの半導体122内の電界がより均一になる。また、半導体122をシード光ビーム114で照らすことによって、音響漏れ329も低減されるであろうし、半導体122の音響効果の性質も修正されるであろう。例えば、音響効果(又は音響漏れ)の周波数及び振幅のうち1つ以上が変化し得る。したがって、半導体122をシード光ビーム114で照らすことによって、光漏れが低減され、ペデスタル部分325a,325bの光の量が低減される。
【0059】
[00076]
図3A及び3Bは、光ビーム106が連続波光ビームである例を示す。もっとも、いくつかの実装形態においては、光ビーム106は、時間的に分離された光のパルス列を含むパルス光ビームであり、水晶に印加される電位Vに同期する。変調モジュール120は、パルス光ビームのパルスのいずれかから光パルスを形成するために用いられてもよい。
図5A及び5Bは、光のパルスから形成された光パルス507に関係する。
【0060】
[00077] 光ビーム106がパルス光ビームである実装形態においては、制御システム175(
図1及び2A)は、電位差が半導体122に印加されている間に光のパルスが放出されるように、光源105にトリガを提供し得る。例えば、光源105は、制御システム175からトリガを受信することによってパルスを放出するように制御されたQスイッチCO
2レーザであってもよい。いくつかの実装形態においては、光源105は、制御システム175からトリガを受信することなく、周期的にパルスを放出する。
【0061】
[00078]
図5Aは、光変調器120によって透過される光の、時間の関数としてのプロット図である。
図5Aの縦軸は対数目盛である。
図5Bは、
図5Aに示される期間に半導体122に印加された電圧を示すプロット図である。光パルス507は、光ビーム106のパルスの全部又は一部が半導体122中を伝播する間に電位差Vを半導体122に印加することによって形成される。パルスが半導体122中を伝播する間に電位差を半導体122に印加することによって、偏光ベースの光学要素124(
図2A)が半導体122から出射する光をビーム経路111(
図2A)上へと向けるようにパルスの偏光が変更されることが可能になる。
【0062】
[00079]
図5A及び5Bの例においては、電位差Vは、時刻t=t8に始まり時刻t=t9に終わる期間537の間、半導体122に印加される。電位差Vは、
図5Bに示される他の時刻には印加されない。電位差Vが時刻t=t8で印加されると、半導体122の屈折率は、半導体122を通過する光の偏光が偏光ベースの光学要素124に一致して光変調器120を出ていくように、瞬時に変化する。時刻t7と時刻t8との間では、光ビーム106のパルスからの光が光漏れに起因して変調モジュール120を通過し、ペデスタル部分525を形成する。光漏れは、DLO330及び/又は電位差Vの前回の印加の際に半導体で形成された音波によって引き起こされた音響漏れ329を含み得る。半導体122をシード光ビーム114で照らすことによって、ペデスタル525の光の最大量又は光の平均量は、変更され、低減され、又は除去され得る。
図5Aの例では、ウインドウ521が、パルス507のペデスタル525の部分を示している。
【0063】
[00080]
図6を参照すると、プロセス600のフローチャートが示されている。プロセス600は、
図1のEUV光源101又は任意の他のEUV光源において使用される、光パルス107(
図1及び2B)などの光パルスを生成するプロセスの一例である。プロセス600は、光パルスのペデスタル部分の1つ以上の特徴を制御又は修正するために用いられ得る。例えば、プロセス600は、生成された光パルスのペデスタル部分の平均強度又は最大強度を低減するために用いられ得る。プロセス600について、
図1のEUV光源101及び変調モジュール120(
図1及び2A)に関して述べる。
【0064】
[00081] 変調モジュール120の半導体122は、第1の波長を有する第1の光ビームで照らされる(610)。第1の光ビームは、シード光ビーム114であってもよい。第1の波長は、半導体122にトラップされた電荷を解放することのできる任意の波長である。半導体122の欠陥は、深い準位のトラップ444(
図4A)のように、電荷がトラップされる場所として作用し得る。トラップされた電荷は、欠陥及びトラップされた電荷のない理想的なバージョンの半導体122と比較して、より低い伝導性及びより高い抵抗率をもたらす。欠陥によって形成されたトラップは、半導体122のバンドギャップエネルギ441よりも小さいバンドギャップエネルギを有する。したがって、トラップされた電荷は、バンドギャップエネルギ441よりも小さい光子エネルギに関連した波長を有する光で電荷を励起することによって、欠陥トラップから解放され得る。
【0065】
[00082] 例えば、半導体122は、730nmの波長に対応するバンドギャップエネルギを有するCZTであってもよいし、又は、861nmの波長に対応するバンドギャップエネルギを有するCdTeであってもよい。これらの例において、シード光源110は、半導体122のバンドギャップエネルギよりも小さい光子エネルギを有する波長の光を含む近赤外(NIR)光を生成する任意の光源であってもよい。NIR光は、750nm乃至3.5ミクロン(μm)の波長を含む。例えば、905.7nmのピーク波長及び1nmの半値全幅(FWHM)を有するダイオードレーザ、又は873nmのピーク波長及び70nmのFWHMを有する発光ダイオードが、シード光源110として用いられ得る。別の一例においては、シード光ビーム114は、838nm乃至988nmの1つ以上の波長を含み得る。第1の波長は、トラップギャップエネルギ447よりも大きい光子エネルギと関連していてもよい。上述のように、トラップギャップエネルギ447はバンドギャップエネルギ441よりも小さい。
【0066】
[00083] 半導体122には、ある持続時間にわたって電圧が印加される(620)。この持続時間の間に、第2の波長を有する第2の光ビームに半導体を通過させることによって、光パルス(光パルス107など)が形成される(630)。第2の光ビームは、例えば、
図1の光ビーム106であってもよい。光ビーム106は、連続波又は1つ以上の光のパルスを含むビームであってもよい。
【0067】
[00084] 第2の光ビームは、半導体122のバンドギャップ441を遥かに下回る光子エネルギを有する少なくとも1つの波長を含む。したがって、第2の光ビームは、半導体を通って透過され、パルス107を形成するために用いられる。光ビーム106は、第1の波長とは異なる1つ以上の波長を含む。光ビーム106は、第1の光ビームのピーク波長の3.5倍を超えない大きさ(長さ)の波長を含んでいてもよい。いくつかの実装形態においては、光ビーム106は、シード光ビーム114のピーク波長の10倍を超えない大きさ(長さ)の波長を含む。上記の例に続き、半導体122は、730nmのバンドギャップを有するCZTであってもよいし、又は、861nmのバンドギャップを有するCdTeであってもよい。これらの例において、第2の光ビームは、CO2レーザによって生成されてもよいし、8μm乃至15μmの1つ以上の波長又は9μm乃至11μmの1つ以上の波長を含んでいてもよい。光ビーム106及び光ビーム114は、半導体122を同時に伝播し得る。また、光ビーム106及び光ビーム114は、半導体122を通る同じ経路を辿り得る。半導体122をシード光ビーム114で照射することの効果は、シード光ビーム114がもはや半導体122を照らさなくなった後も、持続することが可能であろう。例えば、電気的特性(漏れ電流及び抵抗率など)は、シード光ビーム114で照らした後には、より安定的に(より少ない経時変動を有するように)なるであろう。
【0068】
[00085] 半導体122をシード光ビーム114で照らすことによって、半導体122にトラップされた電荷が解放され、半導体122の伝導性が高まるとともに変調モジュール120の光漏れが低減される。光漏れの低減は、パルス107のペデスタル部分の光の量も低減させる。
図7から
図10は、半導体122をシード光ビーム114で照らすことによって得られる実験結果を示す。
【0069】
[00086]
図7は電流-電圧(I-V)プロット
図701及び702を含み、これらは、シード光ビーム114による照射がないとき(I-Vプロット
図701)及びシード光ビーム114による照射があるとき(I-Vプロット
図702)の、測定電流(マイクロアンペア)対半導体122に印加された電圧(キロボルト)を示す。
図7の例においては、CZTが半導体122として用いられた。印加電圧は直流(DC)電源によって0Vから5000V(5kV)まで変化した。半導体122には2メガオーム(MΩ)のサンプリング抵抗器が接続され、漏れ電流はその2MΩ抵抗器の高電圧プローブで測定された。漏れ電流は、まず、半導体122を照らさずに測定された。この測定電流はプロット
図701に含まれる。NIR源がシード光源110として用いられた。半導体122がシード光ビーム114で照らされている間、漏れ電流が測定された。この測定された漏れ電流はプロット
図702に含まれる。
【0070】
[00087]
図7に見られるように、半導体122をシード光ビーム114で照らすことによって、ゼロよりも大きいすべての印加電圧で漏れ電流が増加した。漏れ電流の増加は、トラップされた電荷がシード光ビーム114による照射によって解放されたことを示す。この、シードレーザビームでの照明による漏れ電流の増加は、半導体の光伝導性の増大とも考えられる。
【0071】
[00088]
図8は、半導体122の(1kV-DCでの)抵抗率(オームセンチメートル単位)の関数としての合計光漏れ(%)のプロット
図800を含む。プロット
図800において、半導体122はCZTであった。データが収集される間、シード光ビーム114が半導体122を照らした。シード光ビーム114はNIRビームであった。また、ビームの強度は、データ収集の間、ゼロから最大で1マイクロワット(μW)まで増大され、半導体に結合された。図示するように、合計光漏れは、半導体122の抵抗率が低減しシード光ビーム114の強度が増大するにつれて、減少する。抵抗率は伝導性に反比例するので、プロット
図800は、伝導性の増大及びシード光ビーム114の強度の増大につれて光漏れが減少することを示している。伝導性の増大は、シード光ビーム114による励起を通じた、トラップされた電荷の解放に対応する。プロット
図800は、シード光ビーム114の強度を変化させることによって異なる光漏れが得られ得ることも示している。したがって、シード光ビーム114の強度を変化させることによって、光漏れの量を減少させることに加え、光漏れの量(及びひいてはパルス107のペデスタルの光の量)を制御又は変更することができる。
【0072】
[00089]
図9は、実験的に測定された光漏れを時間の関数として示す。プロット
図901は半導体122がシード光ビーム114で照らされないときの光漏れを示し、プロット
図902は半導体122がシード光ビーム114で照らされるときの光漏れを示す。
図9の例においては、光ビーム106は、CO
2レーザによって発生された連続波光ビームであった。シード光ビーム114は、連続波NIR光ビームであった。パルス907_1及び907_2は変調モジュール120を用いて形成された。
【0073】
[00090]
図9のプロット
図901とプロット
図902との比較によって示されるように、半導体122をシード光ビーム114で照らすと、光漏れは減少する。この特定の例においては、ペデスタル領域921における最大光漏れは、約1.1%(シード光ビーム114なし)から約0.05%(シード光ビームあり)に減少する。また、パルス907_1と907_2との間で起こる光漏れ(音響漏れに起因する漏れの成分を含む)も、最大約1.4%(シード光ビーム114なし)から最大約0.3%(シード光ビーム114あり)に減少する。DLOを除いて音響漏れのみを考えると、最高値と最低値との差は、照明なしでは約0.6%、照明ありでは約0.2%である。したがって、この例においては、半導体122をシード光ビームで照明することによって、音響漏れが約3分の1に減少した。他の例においては、音響漏れの更なる減少(例えば6分の1への減少)が達成され得る。半導体122をシード光ビーム114で照らすことは、
図9に線927として示されている静的漏れを排除せず又は略変更しない。
【0074】
[00091]
図10は、パルス1007_a及び1007_bを測定されたセンサ電圧対時間として示す。パルス1007_aは、光変調器120によって、半導体122をシード光ビーム114で照らすことなく形成された。パルス1007_bは、光変調器120によって、半導体122をシード光ビーム114で照らしながら形成された。
図10の例においては、光ビーム106は、CO
2レーザによって生成されたパルス光ビームであった。パルス1007_a及び1007_bはそれぞれパルス光ビームの別々のパルスから形成されたものであるが、比較のために同じ時間スケールで示されている。変調モジュール120を通過する光は、光の検出に応答して電圧を生成するセンサによって測定された。センサによって生成された電圧は経時的に測定され、これを用いて
図10に示されるプロット図が作成された。
【0075】
[00092] 1007_a及び1007_bはそれぞれ、時間ウインドウ1021にわたって発生するペデスタル部分1025a,1025bを有する。この例において、ペデスタル1025aについてセンサによって測定される最大電圧は、約0.8ミリボルト(mV)であった。ペデスタル1025bについてセンサによって測定される最大電圧は、約0.1mV未満であった。このように、半導体122をシード光ビーム114で照らすことによって、ペデスタルの光の量が減少した。半導体122が照らされている間に生成されるパルスのペデスタル部分についてセンサによって測定される最大電圧は、半導体122がシード光ビームで照らされていない間に生成されるパルスのペデスタル部分に比較して、10分の1~20分の1の低さであってもよい。例えば、変調モジュール120を用いるシステムの使用の最初の1~2時間、半導体122は、当初の非加熱状態から、光ビーム106と電位差Vの印加とによって加熱される。ペデスタル部分の減少は、半導体122が非加熱状態であるときには、約20倍であろう。半導体122が光ビーム106と電位差Vの印加とによって温まるにつれ、ペデスタル部分の減少は10倍程度になるであろう。
【0076】
[00093]
図8から
図10に示されるデータは、同一の電圧センサである、Boston Electronics社から入手可能なPEMセンサによって測定されたものであるが、このデータは、生成されたパルスのピーク強度に標準化された。
【0077】
[00094]
図11及び12は、パルス発生システム1104(
図11)及び1204(
図12)の斜視図を示す。パルス発生システム1104及び1204は、パルス発生システム104の実装形態の例であり、EUV光源101(
図1)において用いられ得る。
【0078】
[00095] パルス発生システム1104においては、光ビーム106とシード光ビーム114とは、二色性光学要素1161によって結合される。二色性光学要素1161は、光の波長に基づいてその光と相互作用する任意の光学要素であり得る。例えば、二色性光学要素1161は、第1の波長(光ビーム106の波長)を透過し第2の波長(シード光ビーム114の波長)を反射するダイクロイックミラーであってもよい。
【0079】
[00096] 二色性光学要素1161と相互作用した後、光ビーム106及びシード光ビーム114は、光変調器120の半導体122(
図1及び2A)と相互作用する。光ビーム106及びシード光ビーム114は、半導体122を通る同じ経路を辿る。また、光ビーム106及びシード光ビーム114は、半導体122を同時に伝播し得る。電位差Vを半導体122に印加することによって光ビーム106の一部が抽出され、パルス107が形成される。シード光ビーム114の一部もまた、光変調器120を通過し得る。
【0080】
[00097] パルス発生システム1204においては、光ビーム106が側面1262で半導体122に入射し、シード光ビーム114が側面1263で半導体122に入射する。側面1262及び1263は異なる側面であり、シード光ビーム114及び光ビーム106は半導体122中を異なる方向で伝播する。
図12の実装形態では、シード光ビーム114は、シード光ビーム114が半導体の1つよりも多くの部分を同時に照らすように、拡散又は分岐される。シード光ビーム114は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ディフューザなどのディフューザ要素(図示しない)によって拡散されてもよい。ディフューザ要素はシード光源110と半導体122との間に設置される。
【0081】
[00098]
図13Aを参照すると、LPP EUV光源1300が示されている。パルス発生システム104,1104,及び1204は、光源1300のようなEUV光源の一部であり得る。パルス発生システム104,1104,及び1204は、
図13Aには図示されていない。しかし、パルス発生システム104,1104,及び1204は、例えばビーム伝送システム1320の一部として、光源1300内に配置され得る。これらの実装形態において、システム104,1104,及び1204の光源105はドライブレーザ1315の一部であり、制御システム175は、マスタコントローラ1355の一部であってもよいし、マスタコントローラ1355の構成要素のいずれかであってもよいし、又は別個の制御システムとして実装されてもよい。
【0082】
[00099] LPP EUV光源1300は、ターゲット領域1305にあるターゲット混合物1314を、ターゲット混合物1314に向かうビーム経路に沿って進む増幅光ビーム1310で照射することによって、形成される。ターゲット118のターゲット材料は、ターゲット混合物1314であってもよいし、ターゲット混合物1314を含んでいてもよい。ターゲット領域1305は、真空チャンバ1330の内部1307にある。増幅光ビーム1310がターゲット混合物1314に当たると、ターゲット混合物1314内のターゲット材料は、EUV領域に輝線がある元素を有するプラズマ状態に変換される。生成されたプラズマは、ターゲット材料1314内のターゲット材料の組成物に応じて決まる、ある特徴を有する。これらの特徴は、プラズマによって生成されるEUV光の波長と、プラズマから放出されるデブリのタイプ及び量とを含み得る。
【0083】
[000100] 光源1300は、液体小滴、液体流、固体粒子又はクラスタ、液体小滴に含有される固体粒子又は液体流に含有される固体粒子の形のターゲット材料1314を送出し、制御し、及び誘導する、ターゲット物質送出システム1325も含む。ターゲット混合物1314は、例えば、水、スズ、リチウム、キセノン、又は、プラズマ状態に変換されたときにEUV領域に輝線を有する任意の材料などのターゲット材料を含む。例えば、元素スズは、純スズ(Sn)として、SnBr4、SnBr2、SnH4などのスズ化合物として、スズ-ガリウム合金、スズ-インジウム合金、若しくはスズ-インジウム-ガリウム合金、又はこれらの合金の任意の組み合わせなどのスズ合金として、用いられ得る。ターゲット混合物1314は、非ターゲット粒子などの不純物も含み得る。したがって、不純物がない状況では、ターゲット混合物1314はターゲット材料のみから成る。ターゲット混合物1314は、ターゲット材料送出システム1325によって、チャンバ1330の内部1307及びターゲット領域1305へと送出される。
【0084】
[000101] 光源1300はドライブレーザシステム1315を含み、このドライブレーザシステムは、利得媒質又はレーザシステム1315の媒質における反転分布によって増幅光ビーム1310を生成する。光源1300は、レーザシステム1315とターゲット領域1305との間にビームデリバリシステムを備え、このビームデリバリシステムはビーム伝送システム1320及び焦点アセンブリ1322を含む。ビーム伝送システム1320は、レーザシステム1315から増幅光ビーム1310を受け、この増幅光ビーム1310を必要に応じて導光及び修正し、増幅光ビーム1310を焦点アセンブリ1322に出力する。焦点アセンブリ1322は、増幅光ビーム1310を受け、このビーム1310をターゲット領域1305に合焦させる。
【0085】
[000102] いくつかの実装形態においては、レーザシステム1315は、1つ以上のメインパルスと、場合によっては1つ以上のプリパルスとを提供するために、1つ以上の光アンプ、レーザ、及び/又はランプを備えていてもよい。各光アンプは、所望の波長を高利得で光増幅することのできる利得媒質と、励起源と、内部光学部品とを含む。光アンプは、レーザミラー又はレーザ空洞を形成する他のフィードバックデバイスを有していてもよいし、又は有していなくてもよい。したがって、レーザシステム1315は、レーザ空洞がない場合あっても、レーザアンプの利得媒質における反転分布によって、増幅光ビーム1310を生成する。さらに、レーザシステム1315は、レーザシステム1315に十分なフィードバックを提供するためのレーザ空洞がある場合、コヒーレントなレーザビームである増幅光ビーム1310を生成し得る。「増幅光ビーム」という用語は、単に増幅されただけで必ずしもコヒーレントなレーザ発振ではないレーザシステム1315からの光と、増幅され且つコヒーレントなレーザ発振であるレーザシステム1315からの光とのうち、1つ以上を含む。
【0086】
[000103] レーザシステム1315の光アンプは、利得媒質としてCO2を含む充填ガスを備えていてもよく、約9100乃至約11000nmの波長の光、とりわけ約10600nmの波長の光を800倍以上の利得で増幅し得る。レーザシステム1315での使用に適当なアンプ及びレーザは、例えばDC励起又はRF励起によって約9300nm又は約10600nmの放射を生成し、例えば10kW以上の比較的高いパワー及び例えば40kHz以上の高いパルス反復率で動作する、例えばパルスガス放電CO2レーザデバイスのようなパルスレーザデバイスを含み得る。パルス反復率は、例えば、50kHzであってもよい。レーザシステム1315の光アンプは、レーザシステム1315をより高いパワーで動作させるときに用いることのできる水などの冷却システムも含んでいていてもよい。
【0087】
[000104]
図13Bは、ドライブレーザシステム1380のブロック図を示す。ドライブレーザシステム1380は、光源1300のドライブレーザシステム1315の一部として用いられ得る。ドライブレーザシステム1380は3つ(以上)のパワーアンプ1381,1382,及び1383を含む。パワーアンプ1381,1382,及び1383のうちいずれか又はすべては、内部光学要素(図示しない)を含んでいてもよい。
【0088】
[000105] 光1384は出力窓1385を通ってパワーアンプ1381を出ていき、曲面ミラー1386で反射される。反射の後、光1384は、空間フィルタ1387を通過し、曲面ミラー1388で反射され、入力窓1389を通ってパワーアンプ1382に入る。光1384は、パワーアンプ1382において増幅され、方向転換されて、光1391として出力窓1390を通りパワーアンプ1382を出ていく。光1391は、折り畳みミラー1392によってアンプ1383の方に導かれ、入力窓1393を通ってアンプ1383に入る。アンプ1383は光1391を増幅し、出力窓1394を通り出力ビーム1395としてアンプ1383から出ていくように光1391を導く。折り畳みミラー1396が、出力ビーム1395を上(紙面から外)に向け、ビーム伝送システム1320(
図13A)の方に導く。
【0089】
[000106] 再び
図13Bを参照すると、空間フィルタ1387はアパーチャ1397を定義しており、このアパーチャは、例えば、約2.2mm乃至3mmの直径を有する円であってもよい。曲面ミラー1386及び1388は、例えば、それぞれ約1.7m及び2.3mの焦点距離を有するオフアクシス・パラボラミラーであってもよい。空間フィルタ1387は、アパーチャ1397がドライブレーザシステム1380の焦点と一致するように位置決めされてもよい。
【0090】
[000107] 再び
図13Aを参照すると、光源1300は、増幅光ビーム1310が通過してターゲット領域1305に到達することを可能にするアパーチャ1340を有する集光ミラー1335を備えている。集光ミラー1335は、例えば楕円面鏡であってもよく、ターゲット領域1305に第1焦点を有するとともに、EUV光が光源1300から出力され例えば集積回路リソグラフィツール(図示しない)に入力され得る中間位置1345に第2焦点(中間焦点とも呼ばれる)を有する。光源1300は、端部が開放された中空円錐形のシュラウド1350(例えばガス円錐(gas cone))も含み得る。このシュラウドは、集光ミラー1335からターゲット領域1305に向かって先細になっており、増幅光ビーム1310がターゲット領域1305に到達することを可能にしつつ、焦点アセンブリ1322及び/又はビーム伝送システム1320に進入するプラズマ生成デブリの量を減少させる。このために、シュラウド内には、ターゲット領域1305の方に向けられたガス流が提供されてもよい。
【0091】
[000108] 光源1300は、液滴位置検出フィードバックシステム1356と、レーザ制御システム1357と、ビーム制御システム1358とに接続されたマスタコントローラ1355も含み得る。光源1300は、1つ以上のターゲット又は液滴イメージャ1360を含んでいてもよく、このイメージャは、例えばターゲット領域1305に対する液滴の位置を表す出力を提供するとともに、この出力を液滴位置検出フィードバックシステム1356に提供する。液滴位置検出フィードバックシステムは、例えば液滴の位置及び軌道を計算することができ、そこから液滴位置エラーが液滴毎に又は平均して算出され得る。液滴位置検出フィードバックシステム1356は、こうして、液滴位置エラーを入力としてマスタコントローラ1355に提供する。したがって、マスタコントローラ1355は、レーザの位置、方向、及びタイミングの補正信号を、例えばレーザタイミング回路を制御するためなどに使用可能なレーザ制御システム1357に、及び/又は、ビーム制御システム1358に提供し、ビーム伝送システム1320の増幅光ビームの位置及び整形を制御して、チャンバ1330内のビーム焦点の場所及び/又は集光力を変化させることができる。
【0092】
[000109] ターゲット材料送出システム1325はターゲット材料送出制御システム1326を備えており、この制御システムは、マスタコントローラ1355からの信号に応答して、例えば、ターゲット材料供給装置1327によって放出される液滴の放出点を修正し、所望のターゲット領域1305に到着する液滴の誤差を訂正するように動作可能である。
【0093】
[000110] さらに、光源1300は光源ディテクタ1365及び1370を含んでいてもよい。これらの光源ディテクタは、パルスエネルギ、波長の関数としてのエネルギ分布、波長の特定の帯域内のエネルギ、波長の特定の帯域外のエネルギ、及びEUV強度及び/又は平均パワーの角度分布を含むがこれらに限定されない、1つ以上のEUV光パラメータを測定する。光源ディテクタ1365は、マスタコントローラ1355によって用いられるフィードバック信号を発生する。フィードバック信号は、効果的且つ効率的なEUV光生成のために適正な場所及び時間に適切に液滴を遮断するべく、例えば、レーザパルスのタイミング及び焦点などのパラメータの誤差を表す。
【0094】
[000111] 光源1300は、光源1300の様々な部分を整列させるため、又は増幅光ビーム1310をターゲット領域1305へ導光するのを補助するために用いられ得る、ガイドレーザ1375も含んでいてもよい。このガイドレーザ1375に関連して、光源1300は、焦点アセンブリ1322内に設置されてガイドレーザ1375及び増幅光ビーム1310からの光の一部をサンプリングするメトロロジシステム1324を含む。他の実装形態では、メトロロジシステム1324は、ビーム伝送システム1320内に設置される。メトロロジシステム1324は、光のサブセットをサンプリング又はリダイレクトする光学要素も含み得る。そのような光学要素は、ガイドレーザビーム及び増幅光ビーム1310のパワーに耐え得る任意の材料から作製される。ビーム分析システムがメトロロジシステム1324及びマスタコントローラ1355から形成される。なぜなら、マスタコントローラ1355が、ガイドレーザ1375からのサンプリングされた光を分析し、この情報を用いて焦点アセンブリ1322内の構成要素をビーム制御システム1358を通じて調整するからである。
【0095】
[000112] このように、要約すると、光源1300は増幅光ビーム1310を生成し、このビームはビーム経路に沿って導かれ、ターゲット領域1305でターゲット混合物1314を照射して、混合物1314中のターゲット材料をEUV領域の光を放出するプラズマに変換する。増幅光ビーム1310は、レーザシステム1315の設計及び特性に基づいて決定される特定の波長(ドライブレーザ波長とも称される)で動作する。また、増幅光ビーム1310は、ターゲット材料がコヒーレントなレーザ光を生成するのに十分なフィードバックをレーザシステム1315に提供するとき、又は、ドライブレーザシステム1315がレーザ空洞を形成するのに適当な光フィードバックを含む場合には、レーザビームであってもよい。
【0096】
[000113] 他の実装形態は特許請求の範囲内にある。本発明の他の態様は、以下の番号を付した条項に記載する。
【0097】
条項1.極端紫外線(EUV)光源の光パルスを形成する方法であって、
変調システムの半導体材料を、第1の波長を有する第1の光ビームで照らすことと、
半導体材料を通過する第2の波長を有する光ビームの偏光状態が修正されて変調システムの少なくとも1つの偏光ベースの光学要素を通過するように、半導体材料に、ある持続時間にわたって、半導体材料の屈折率を修正するのに十分な電圧を印加することと、
持続時間の間、第2の波長を有する第2の光ビームに半導体材料を通過させることによって、光パルスを形成することと、
を備え、
形成される光パルスは第1の部分及び第2の部分を備え、第1の部分と第2の部分とは時間的に連続し、第1の部分は第2の部分の前に発生し、
変調システムの半導体材料を第1の光ビームで照らすことによって、形成される光パルスの第1の部分の1つ以上の特徴が修正される、方法。
【0098】
条項2.光パルスの第1の部分の1つ以上の特徴は、平均強度、最大強度、及び持続時間のうち1つ以上を備える、条項1の方法。
【0099】
条項3.形成されるパルスがターゲット領域に向かって伝播することを可能にすることをさらに備え、形成されるパルスの第1の部分は、形成されるパルスの第2の部分の最大強度よりも小さい最大強度を有する、条項1の方法。
【0100】
条項4.第2の部分の最大強度は、ターゲット領域のターゲットのターゲット材料をEUV光を放出するプラズマに変換するのに十分である、条項3の方法。
【0101】
条項5.半導体材料は分光透過特性と関連しており、分光透過特性は透過領域と吸収端波長とを備え、吸収端波長は透過領域の最も低い波長であり、
第1の波長は吸収端波長と第2の波長との間にあり、
第2の波長は透過領域内の波長である、条項1の方法。
【0102】
条項6.半導体材料はバンドギャップエネルギと関連しており、バンドギャップエネルギは半導体材料の価電子帯と半導体材料の伝導帯との間のエネルギ差であり、第1の波長の光子エネルギはバンドギャップエネルギよりも小さい、条項1の方法。
【0103】
条項7.半導体材料は欠陥を備え、欠陥は価電子帯と伝導帯との間のエネルギ準位を有する深い準位のトラップを生成し、第1の波長の光子エネルギは、深い準位のトラップの少なくとも1つのエネルギ準位と伝導帯との間又は深い準位のトラップの少なくとも1つのエネルギ準位と価電子帯との間のエネルギ差と等しいか又はそれよりも大きい、条項6の方法。
【0104】
条項8.第2の波長は10.6μmを備え、半導体材料はテルル化亜鉛カドミウム(CdZnTe)、テルル化カドミウム(CdTe)、テルル化亜鉛(ZnTe)、及び砒化ガリウム(GaAs)のうちの1つを備える、条項1の方法。
【0105】
条項9.第1の波長は0.75ミクロン(μm)乃至3.5μmの波長を備え、第2の波長は9μm乃至11μmの波長を備える、条項1の方法。
【0106】
条項10.第1の光ビーム及び第2の光ビームは、半導体材料を通る同じ空間経路を辿る、条項1の方法。
【0107】
条項11.第1の光ビーム及び第2の光ビームは、同時に半導体材料内にある、条項10の方法。
【0108】
条項12.第1の光ビームの特性を、光パルスの第1の部分の特徴のうち1つ以上を調整するように調整することをさらに備える、条項1の方法。
【0109】
条項13.第1の光ビームの特性を調整することは、第1の光ビームの強度を増大させて光パルスの第1の部分の最大強度又は平均強度を低減させることを備える、条項12の方法。
【0110】
条項14.極端紫外線(EUV)光源のシステムであって、
1つ以上のタイプの欠陥を備える半導体材料であって電圧の印加に応答して屈折率が変化する半導体材料を備える変調システムと、
半導体材料を第1の波長を有する光で照らすと半導体材料の漏れ電流が増大するところ、第1の波長を有する第1の光ビームを生成するように構成された第1の光源と、
変調システムに結合された制御システムであって、
第2の波長を有する第2の光ビームが半導体材料内を伝播して第2の光ビームから光パルスを形成する間、半導体材料に電圧を印加させるように構成されており、光パルスは少なくともいくらかのターゲット材料をEUV光を放出するプラズマに変換するように構成されている、制御システムと、
を含む、システム。
【0111】
条項15.パルスは第1の部分及び第2の部分を備え、第1の部分と第2の部分とは時間的に連続し、第1の部分は第2の部分の前に発生する、条項14のシステム。
【0112】
条項16.第2の光源はパルス光源を備え、
制御システムは変調システム及び第2の光源に結合されており、
制御システムは光のパルスを放出するように第2の光源を制御するように構成されている、条項14のシステム。
【0113】
条項17.第1の光ビーム及び第2の光ビームの少なくとも1つのパルスは、同時に半導体材料内にある、条項16のシステム。
【0114】
条項18.制御システムはさらに、第1の光源を制御し、それによって光パルスの第1の部分の1つ以上の特徴を制御するように構成されている、条項15のシステム。
【0115】
条項19.第1の部分の1つ以上の特徴は、平均強度、最大強度、及び持続時間のうち1つ以上を備える、条項18のシステム。
【0116】
条項20.制御システムは、第1の光源を制御することによってパルスの第1の部分の強度を制御するように構成されている、条項19のシステム。
【0117】
条項21.第2の光ビームは連続光ビームを備える、条項14のシステム。
【0118】
条項22.電気光学変調器における音響効果を修正する方法であって、
第1の期間の間、電気光学変調器の半導体に電圧を印加し、電圧の印加により半導体において振動音波を含む音響効果を発生させることと、
半導体を、半導体のバンドギャップエネルギよりも小さい光子エネルギを有する波長を有するシード光ビームで照らし、それによって音波の振幅と周波数とのうち1つ以上を修正することと、
を備える、方法。
【0119】
条項23.連続波光ビームを電気光学変調器の半導体の方に誘導することをさらに備え、
連続波光ビームの第1の量は、電圧が半導体に印加されているとき、第1の期間の間、第1の偏光状態で電気光学変調器を通過し、
連続波光ビームの第2の量は、電圧が半導体に印加されておらず半導体内に音響効果が存在するとき、第1の期間ではない時刻に、電気光学変調器を通過し、
半導体をシード光ビームで照らすことにより、電気光学変調器を通過する光ビームの第2の量が変化する、条項22の方法。
【0120】
条項24.パルス光ビームのパルスを電気光学変調器の方に誘導することをさらに備え、パルスの光の第1の量は、電圧が半導体に印加されているとき、第1の期間の間、半導体を通過し、パルスの光の第2の量は、第1の期間ではない時刻で電圧が半導体に印加されていないときに、半導体を通過し、
半導体をシード光ビームで照らすことにより、光の第2の量が変化する、条項22の方法。