IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社荏原製作所の特許一覧

特許7443169基板処理装置、基板処理方法、および基板処理方法を基板処理装置のコンピュータに実行させるためのプログラムを格納した記憶媒体
<>
  • 特許-基板処理装置、基板処理方法、および基板処理方法を基板処理装置のコンピュータに実行させるためのプログラムを格納した記憶媒体 図1
  • 特許-基板処理装置、基板処理方法、および基板処理方法を基板処理装置のコンピュータに実行させるためのプログラムを格納した記憶媒体 図2
  • 特許-基板処理装置、基板処理方法、および基板処理方法を基板処理装置のコンピュータに実行させるためのプログラムを格納した記憶媒体 図3
  • 特許-基板処理装置、基板処理方法、および基板処理方法を基板処理装置のコンピュータに実行させるためのプログラムを格納した記憶媒体 図4
  • 特許-基板処理装置、基板処理方法、および基板処理方法を基板処理装置のコンピュータに実行させるためのプログラムを格納した記憶媒体 図5
  • 特許-基板処理装置、基板処理方法、および基板処理方法を基板処理装置のコンピュータに実行させるためのプログラムを格納した記憶媒体 図6
  • 特許-基板処理装置、基板処理方法、および基板処理方法を基板処理装置のコンピュータに実行させるためのプログラムを格納した記憶媒体 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】基板処理装置、基板処理方法、および基板処理方法を基板処理装置のコンピュータに実行させるためのプログラムを格納した記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240227BHJP
   B24B 37/32 20120101ALI20240227BHJP
   B24B 37/005 20120101ALI20240227BHJP
   B24B 49/08 20060101ALI20240227BHJP
   B24B 49/16 20060101ALI20240227BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
H01L21/304 622G
B24B37/32 Z
B24B37/005 Z
B24B49/08
B24B49/16
B24B49/12
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020111535
(22)【出願日】2020-06-29
(65)【公開番号】P2022010795
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】三ツ谷 隆
(72)【発明者】
【氏名】眞継 阿沙葵
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 歩
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-109281(JP,A)
【文献】特開2019-162716(JP,A)
【文献】特開2001-096455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/32
B24B 37/005
B24B 49/08
B24B 49/16
B24B 49/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を研磨するための研磨パッドが貼り付けられる研磨テーブルと、
基板を保持して研磨パッドに押圧するための研磨ヘッドと、
前記研磨ヘッドを囲んで配置されたリテーナ部材と、
前記リテーナ部材に隣接して配置されたリテーナ部材加圧室と、
前記研磨ヘッドを保持して旋回させるためのアームと、
前記アームの旋回トルクに基づいて、前記研磨ヘッドから基板が飛び出したことを検出するためのスリップアウト検出器と、
前記アームの旋回トルクに相関する物理量を検出するためのアームトルク検出器と、を含み、
前記スリップアウト検出器は、前記アームトルク検出器によって検出された物理量の変化に基づいて、前記研磨ヘッドから基板が飛び出したことを検出するように構成され、
前記アームの旋回速度を検出するための速度検出器をさらに含み、
前記スリップアウト検出器は、前記速度検出器によって検出された速度に基づいて、前記研磨ヘッドから基板が飛び出したことの検出を停止するように構成される、
基板処理装置。
【請求項2】
前記スリップアウト検出器は、前記アームトルク検出器によって検出された物理量の単位時間当たりの変化量が予め設定された閾値を超えたら、前記研磨ヘッドから基板が飛び出したことを検出するように構成される、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記アームトルク検出器は、前記アームを旋回させるための電動機の駆動電流を検出する電流計である、
請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記スリップアウト検出器は、前記速度検出器によって検出された速度が予め設定され
た閾値未満である場合には、前記研磨ヘッドから基板が飛び出したことの検出を停止するように構成される、
請求項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
基板を研磨するための研磨パッドが貼り付けられる研磨テーブルと、
基板を保持して研磨パッドに押圧するための研磨ヘッドと、
前記研磨ヘッドを囲んで配置されたリテーナ部材と、
前記リテーナ部材に隣接して配置されたリテーナ部材加圧室と、
前記研磨ヘッドを保持して旋回させるためのアームと、
前記リテーナ部材加圧室に供給される流体の流量に基づいて、前記研磨ヘッドから基板が飛び出したことを検出するためのスリップアウト検出器と、
前記リテーナ部材加圧室に流体を供給するための供給源と、
前記リテーナ部材加圧室に供給される流体の流量を検出するための流量検出器と、を含み、
前記スリップアウト検出器は、前記流量検出器によって検出された流量の変化に基づいて、前記研磨ヘッドから基板が飛び出したことを検出するように構成される、
板処理装置。
【請求項6】
前記スリップアウト検出器は、前記流量検出器によって検出された流体の流量の単位時間当たりの変化量が予め設定された閾値を超えたら、前記研磨ヘッドから基板が飛び出したことを検出するように構成される、
請求項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記研磨ヘッドの研磨パッドに対する高さ、前記研磨ヘッドに形成された複数の基板加圧室の圧力、前記リテーナ部材加圧室の圧力、前記研磨テーブルの回転数、前記研磨ヘッドの回転数、または、前記アームの旋回速度、の少なくとも1つの設定値を変更するための設定変更指令が発せられたことを検出する設定変更検出器をさらに含み、
前記スリップアウト検出器は、前記設定変更検出器によって前記設定変更指令が発せられたことを検出した場合には、前記研磨ヘッドから基板が飛び出したことの検出を所定時間停止するように構成される、
請求項1からのいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
基板を研磨するための研磨パッドが貼り付けられる研磨テーブルと、
基板を保持して研磨パッドに押圧するための研磨ヘッドと、
前記研磨ヘッドを囲んで配置されたリテーナ部材と、
前記リテーナ部材に隣接して配置されたリテーナ部材加圧室と、
前記研磨ヘッドを保持して旋回させるためのアームと、
前記研磨ヘッドから基板が飛び出したことを検出するためのスリップアウト検出器と、
研磨パッドに対して光を発射するための光発射部材および研磨パッドから反射した光を受光するための光受光部材とを含み、
前記スリップアウト検出器は、前記光受光部材によって受光された反射光の光量または色の変化に基づいて、前記研磨ヘッドから基板が飛び出したことを検出するように構成される、
基板処理装置。
【請求項9】
研磨ヘッドを用いて基板を保持して研磨テーブルに貼り付けられた研磨パッドに押圧する研磨ステップと、
前記研磨ヘッドを旋回させるためのアームの旋回トルクに基づいて、前記研磨ヘッドから基板が飛び出したことを検出するためのスリップアウト検出ステップと、
を含み、
前記スリップアウト検出ステップは、前記研磨テーブルの回転トルクに相関する物理量の変化、または、前記研磨ヘッドの回転トルクに相関する物理量の変化、に基づいて、前記研磨ヘッドから基板が飛び出したことを検出
前記スリップアウト検出ステップは、前記アームの旋回速度が予め設定された閾値未満である場合には、前記研磨ヘッドから基板が飛び出したことの検出を停止する、
基板処理方法。
【請求項10】
前記スリップアウト検出ステップは、前記アームの旋回トルクに相関する物理量の単位時間当たりの変化量が予め設定された閾値を超えたら、前記研磨ヘッドから基板が飛び出したことを検出する、
請求項に記載の基板処理方法。
【請求項11】
研磨ヘッドを用いて基板を保持して研磨テーブルに貼り付けられた研磨パッドに押圧する研磨ステップと、
前記研磨ヘッドを囲んで配置されたリテーナ部材に隣接して配置されたリテーナ部材加圧室に供給される流体の流量に基づいて、前記研磨ヘッドから基板が飛び出したことを検出するためのスリップアウト検出ステップと、
を含み、
前記スリップアウト検出ステップは、前記リテーナ部材加圧室に供給される流体の流量の単位時間当たりの変化量が予め設定された閾値を超えたら、前記研磨ヘッドから基板が飛び出したことを検出する、
板処理方法。
【請求項12】
前記スリップアウト検出ステップは、前記研磨ヘッドの研磨パッドに対する高さ、前記研磨ヘッドに形成された複数の基板加圧室の圧力、リテーナ部材加圧室の圧力、前記研磨テーブルの回転数、前記研磨ヘッドの回転数、または、アームの旋回速度、の少なくとも1つの設定値を変更するための設定変更指令が発せられたら、スリップアウト検出を所定時間停止するように構成される、
請求項から11のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項13】
研磨ヘッドを用いて基板を保持して研磨テーブルに貼り付けられた研磨パッドに押圧する研磨ステップと、
前記研磨ヘッドから基板が飛び出したことを検出するためのスリップアウト検出ステップと、
を含み、
前記スリップアウト検出ステップは、研磨パッドに対して発射した光の反射光の光量または色の変化に基づいて、前記研磨ヘッドから基板が飛び出したことを検出する、
板処理方法。
【請求項14】
研磨ヘッドを用いて基板を保持して研磨テーブルに貼り付けられた研磨パッドに押圧する研磨ステップと、
前記研磨ヘッドを旋回させるためのアームの旋回トルクに基づいて、前記研磨ヘッドから基板が飛び出したことを検出するためのスリップアウト検出ステップと、を含み、
前記スリップアウト検出ステップは、前記研磨テーブルの回転トルクに相関する物理量の変化、または、前記研磨ヘッドの回転トルクに相関する物理量の変化、に基づいて、前記研磨ヘッドから基板が飛び出したことを検出し
前記スリップアウト検出ステップは、前記アームの旋回速度が予め設定された閾値未満である場合には、前記研磨ヘッドから基板が飛び出したことの検出を停止する、
板処理方法を基板処理装置のコンピュータに実行させるためのプログラムを格納した記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、基板処理装置、基板処理方法、および基板処理方法を基板処理装置のコンピュータに実行させるためのプログラムを格納した記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体加工工程において用いられる基板処理装置の一種にCMP(Chemical Mechanical Polishing、化学的機械的研磨)装置が存在する。CMP装置は、基板の被研磨面が向
いている方向によって「フェースアップ式(基板の被研磨面が上向きの方式)」と「フェースダウン式(基板の被研磨面が下向きの方式)」に大別され得る。
【0003】
フェースダウン式の化学機械研磨装置は、基板を保持する研磨ヘッドと、研磨パッドが貼り付けられた研磨テーブルと、を含み、研磨ヘッドおよび研磨テーブルを回転させながら基板を研磨パッドに押圧することによって基板を研磨するように構成される。ここで、基板を研磨している際に研磨ヘッドから基板が外れて研磨ヘッドの外側に飛び出すことがある。
【0004】
これに対して、例えば特許文献1には、研磨ヘッドまたは研磨テーブルの回転駆動電流を測定することによって基板の飛び出しを検出することが開示されている。また、特許文献2には、基板の背面に供給する流体の圧力または流量を測定することによって基板の飛び出しを検出することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-96455号公報
【文献】特開平10-230450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている技術は、研磨ヘッドから基板が飛び出したら、基板と研磨パッドとの間の摩擦抵抗が変化し、この摩擦抵抗の変化が研磨ヘッドまたは研磨テーブルの回転駆動電流値に比例することから、この電流値の変化に基づいて基板の飛び出しを検出するものである。また、特許文献2に開示されている技術は、研磨ヘッドから基板が飛び出したら、基板の背面に供給する流体の圧力/流量が変化することから、この流体の圧力/流量の変化に基づいて基板の飛び出しを検出するものである。
【0007】
しかしながら、特許文献1、2に記載されている技術には、基板の飛び出し検出の精度を向上させる余地が残されている。すなわち、研磨ヘッドおよび研磨テーブルは、研磨パッドを介して基板を挟んで押圧しながら研磨する部材である。したがって、研磨ヘッドおよび研磨テーブルは基板の研磨に起因する振動を直接受け、この振動が研磨ヘッドおよび研磨テーブルの回転駆動電流値、または基板の背面に供給する流体の圧力/流量にノイズとして反映される。その結果、特許文献1、2に記載されている技術は、ノイズに起因する回転駆動電流値の変化、またはノイズに起因する基板の背面に供給する流体の圧力/流量の変化を基板の飛び出しと誤検出するおそれがある。
【0008】
そこで、本願は、研磨ヘッドからの基板の飛び出し検出の精度を向上させることを1つの目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態によれば、基板を研磨するための研磨パッドが貼り付けられる研磨テーブルと、基板を保持して研磨パッドに押圧するための研磨ヘッドと、前記研磨ヘッドを囲んで配置されたリテーナ部材と、前記リテーナ部材に隣接して配置されたリテーナ部材加圧室と、前記研磨ヘッドを保持して旋回させるためのアームと、前記アームの旋回トルクに基づいて、または、前記リテーナ部材加圧室に供給される流体の流量に基づいて、前記研磨ヘッドから基板が飛び出したことを検出するためのスリップアウト検出器と、を含む、基板処理装置が開示される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態による基板処理装置の全体構成を示す平面図である。
図2】一実施形態による研磨ユニットの構成を概略的に示す斜視図である。
図3】一実施形態による、研磨対象物である基板を保持して研磨パッド上の研磨面に基板を押圧する研磨ヘッドの模式的な断面図である。
図4】アームの駆動電流と基板のスリップアウトとの関係を示す図である。
図5】基板のスリップアウト時のリテーナ部材加圧室の状態を模式的に示す図である。
図6】リテーナ部材加圧室に供給される流体の流量と基板のスリップアウトとの関係を示す図である。
図7】本実施形態の基板処理方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る基板処理装置、基板処理方法、および基板処理方法を基板処理装置のコンピュータに実行させるためのプログラムを格納した記憶媒体の実施形態を添付図面とともに説明する。添付図面において、同一または類似の要素には同一または類似の参照符号が付され、各実施形態の説明において同一または類似の要素に関する重複する説明は省略することがある。また、各実施形態で示される特徴は、互いに矛盾しない限り他の実施形態にも適用可能である。
【0012】
図1は、一実施形態による基板処理装置1000の全体構成を示す平面図である。図1に示される基板処理装置1000は、ロードユニット100、搬送ユニット200、研磨ユニット300、乾燥ユニット500、およびアンロードユニット600を有する。図示の実施形態において、搬送ユニット200は、2つの搬送ユニット200A、200Bを有し、研磨ユニット300は、2つの研磨ユニット300A、300Bを有する。一実施形態において、これらの各ユニットは、独立に形成することができる。これらのユニットを独立して形成することで、各ユニットの数を任意に組み合わせることで異なる構成の基板処理装置1000を簡易に形成することができる。また、基板処理装置1000は、制御装置900を備え、基板処理装置1000の各構成要素は制御装置900により制御される。一実施形態において、制御装置900は、入出力装置、演算装置、記憶装置などを備える一般的なコンピュータから構成することができる。
【0013】
<ロードユニット>
ロードユニット100は、研磨および洗浄などの処理が行われる前の基板WFを基板処理装置1000内へ導入するためのユニットである。一実施形態において、ロードユニット100は、SMEMA(Surface Mount Equipment Manufacturers Association)の機
械装置インタフェース規格(IPC-SMEMA-9851)に準拠するように構成される。
【0014】
図示の実施形態において、ロードユニット100の搬送機構は、複数の搬送ローラ202と、搬送ローラ202が取り付けられる複数のローラシャフト204とを有する。図1
に示される実施形態においては、各ローラシャフト204には3つの搬送ローラ202が取り付けられている。基板WFは、搬送ローラ202上に配置され、搬送ローラ202が回転することで基板WFが搬送される。
【0015】
<搬送ユニット>
図1に示される基板処理装置1000は、2つの搬送ユニット200A、200Bを備えている。2つの搬送ユニット200A、200Bは同一の構成とすることができるので、以下において、一括して搬送ユニット200として説明する。
【0016】
図示の搬送ユニット200は、基板WFを搬送するための複数の搬送ローラ202を備えている。搬送ローラ202を回転させることで、搬送ローラ202上の基板WFを所定の方向に搬送することができる。搬送ローラ202は、図示していないモータにより駆動される。基板WFは、搬送ローラ202によって基板受け渡し位置まで搬送される。
【0017】
一実施形態において、搬送ユニット200は、洗浄ノズル284を有する。洗浄ノズル284は、図示しない洗浄液の供給源に接続される。洗浄ノズル284は、搬送ローラ202によって搬送される基板WFに洗浄液を供給するように構成される。
【0018】
<乾燥ユニット>
乾燥ユニット500は、基板WFを乾燥させるための装置である。図1に示される基板処理装置1000においては、乾燥ユニット500は、研磨ユニット300で研磨された後に、搬送ユニット200の洗浄部で洗浄された基板WFを乾燥させる。図1に示されるように、乾燥ユニット500は、搬送ユニット200の下流に配置される。
【0019】
乾燥ユニット500は、搬送ローラ202上を搬送される基板WFに向けて気体を噴射するためのノズル530を有する。気体は、たとえば圧縮された空気または窒素とすることができる。搬送される基板WF上の水滴を乾燥ユニット500によって吹き飛ばすことで、基板WFを乾燥させることができる。
【0020】
<アンロードユニット>
アンロードユニット600は、研磨および洗浄などの処理が行われた後の基板WFを基板処理装置1000の外へ搬出するためのユニットである。図1に示される基板処理装置1000においては、アンロードユニット600は、乾燥ユニット500で乾燥された後の基板を受け入れる。図1に示されるように、アンロードユニット600は、乾燥ユニット500の下流に配置される。一実施形態において、アンロードユニット600は、SMEMA(Surface Mount Equipment Manufacturers Association)の機械装置インタフェ
ース規格(IPC-SMEMA-9851)に準拠するように構成される。
【0021】
<研磨ユニット>
図2は、一実施形態による研磨ユニット300の構成を概略的に示す斜視図である。図1に示される基板処理装置1000は、2つの研磨ユニット300A、300Bを備えている。2つの研磨ユニット300A、300Bは同一の構成とすることができるので、以下において、一括して研磨ユニット300として説明する。
【0022】
図2に示すように、研磨ユニット300は、研磨テーブル350と、研磨対象物である基板を保持して研磨テーブル350上の研磨面に押圧する研磨ヘッド302とを備えている。研磨テーブル350は、テーブルシャフト351を介してその下方に配置される研磨テーブル回転モータ359に連結されており、テーブルシャフト351周りに回転可能になっている。研磨テーブル回転モータ359には、研磨テーブル350の回転トルクに相関する物理量を検出するための研磨テーブルトルク検出器として、研磨テーブル回転モー
タ359の駆動電流を計測可能な研磨テーブル電流計359´が設けられている。研磨テーブル350の上面には研磨パッド352が貼付されており、研磨パッド352の表面352aが基板を研磨する研磨面を構成している。
【0023】
研磨テーブル350の上方には研磨液供給ノズル354が設置されており、この研磨液供給ノズル354によって研磨テーブル350上の研磨パッド352上に研磨液が供給されるようになっている。また、図2に示されるように、研磨テーブル350およびテーブルシャフト351には、研磨液を供給するための通路353が設けられている。通路353は、研磨テーブル350の表面の開口部355に連通している。研磨テーブル350の開口部355に対応する位置において研磨パッド352は貫通孔357が形成されており、通路353を通る研磨液は、研磨テーブル350の開口部355および研磨パッド352の貫通孔357から研磨パッド352の表面に供給される。
【0024】
図2には示されていないが、一実施形態において、研磨ユニット300は、液体、または、液体と気体との混合流体、を研磨パッド352に向けて噴射するためのアトマイザ358を備える(図1参照)。アトマイザ358から噴射される液体は、例えば、純水であり、気体は、例えば、窒素ガスである。
【0025】
研磨ヘッド302は、研磨ヘッドシャフト18に接続されており、この研磨ヘッドシャフト18は、上下動機構319によりアーム360に対して上下動するようになっている。この研磨ヘッドシャフト18の上下動により、アーム360に対して研磨ヘッド302の全体を上下動させ位置決めするようになっている。研磨ヘッドシャフト18は、研磨ヘッド回転モータ304の駆動により回転するようになっている。研磨ヘッド回転モータ304には、研磨ヘッド302の回転トルクに相関する物理量を検出するための研磨ヘッドトルク検出器として、研磨ヘッド回転モータ304の駆動電流を計測可能な研磨ヘッド電流計304´が設けられている。研磨ヘッドシャフト18の回転により、研磨ヘッド302が研磨ヘッドシャフト18を中心にして回転するようになっている。研磨ヘッド302は、その下面に四角形の基板を保持できるようになっている。研磨ヘッドシャフト18の上端にはロータリージョイント323が取り付けられている。
【0026】
アーム360は支軸362を中心として旋回可能に構成されている。アーム360は、支軸362を介してその下方に配置されるアーム回転モータ364に連結されており、支軸362周りに回転可能になっている。アーム回転モータ364には、アーム360の旋回トルク(回転トルク)に相関する物理量を検出するためのアームトルク検出器として、アーム回転モータ364の駆動電流を計測可能なアーム電流計364´が設けられている。アーム回転モータ364がサーボモータである場合には、アーム回転モータ364がアームトルク検出器となる。研磨ヘッド302は、アーム360の旋回により、上述の搬送ユニット200の基板受け渡し位置と研磨テーブル350の上方との間で移動可能である。研磨ヘッドシャフト18を下降させることで、研磨ヘッド302を下降させて基板を研磨パッド352の表面(研磨面)352aに押圧することができる。このとき、研磨ヘッド302および研磨テーブル350をそれぞれ回転させ、研磨テーブル350の上方に設けられた研磨液供給ノズル354から、および/または、研磨テーブル350に設けられた開口部355から研磨パッド352上に研磨液を供給する。このように、基板WFを研磨パッド352の研磨面352aに押圧して基板の表面を研磨することができる。基板WFの研磨中に、研磨ヘッド302が研磨パッド352の中心を通過するように(研磨パッド352の貫通孔357を覆うように)、アーム360を固定あるいは揺動させてもよい。
【0027】
研磨ヘッドシャフト18および研磨ヘッド302を上下動させる上下動機構319は、軸受321を介して研磨ヘッドシャフト18を回転可能に支持するブリッジ28と、ブリ
ッジ28に取り付けられたボールねじ32と、支柱130により支持された支持台29と、支持台29上に設けられたサーボモータ38とを備えている。サーボモータ38を支持する支持台29は、支柱130を介してアーム360に固定されている。
【0028】
ボールねじ32は、サーボモータ38に連結されたねじ軸32aと、このねじ軸32aが螺合するナット32bとを備えている。研磨ヘッドシャフト18は、ブリッジ28と一体となって上下動するようになっている。したがって、サーボモータ38を駆動すると、ボールねじ32を介してブリッジ28が上下動し、これにより研磨ヘッドシャフト18および研磨ヘッド302が上下動する。研磨ユニット300は、サーボモータ38から受信したデータに基づいて研磨ヘッド302の高さ位置を算出することができる。研磨ヘッド302の高さ位置の算出は、例えば、研磨パッド352の厚さの変化に関わらず研磨ヘッド302と研磨パッド352との距離を一定に維持するために、研磨パッド352の表面の高さを検出する工程で用いられる。この工程は、研磨ヘッド302を下降させながらサーボモータ38のエンコーダにより回転数を積算し、研磨ヘッド302の下面が研磨パッド352の表面に接触したときのサーボモータ38のエンコーダの積算値から研磨ヘッド302の下降距離(高さ位置)を算出することによって行われる。なお、サーボモータ38をはじめとする研磨ユニット内の各機器は、制御装置900により制御されるように構成される。
【0029】
一実施形態による研磨ユニット300は、研磨パッド352の研磨面352aをドレッシングするドレッシングユニット356を備えている。図2に示すように、ドレッシングユニット356は、研磨面352aに摺接されるドレッサ50と、ドレッサ50が連結されるドレッサシャフト51と、ドレッサシャフト51を昇降駆動するためのエアシリンダ53と、ドレッサシャフト51を回転自在に支持するアーム55とを備えている。ドレッサ50の下部にはドレッシング部材50aが保持されており、このドレッシング部材50aの下面には針状のダイヤモンド粒子が電着している。エアシリンダ53は、支柱56により支持された支持台57上に配置されており、これらの支柱56はアーム55に固定されている。
【0030】
アーム55は図示しないモータに駆動されて、支軸58を中心として旋回するように構成されている。ドレッサシャフト51は、研磨パッド352に対向して配置され、図示しないモータの駆動により回転し、このドレッサシャフト51の回転により、ドレッサ50がドレッサシャフト51周りに回転するようになっている。エアシリンダ53は、ドレッサシャフト51を介してドレッサ50を上下動させ、ドレッサ50を所定の押圧力で研磨パッド352の研磨面352aに押圧する。
【0031】
研磨パッド352の研磨面352aのドレッシングは次のようにして行われる。ドレッサ50はエアシリンダ53により研磨面352aに押圧され、これと同時に図示しない純水供給ノズルから純水が研磨面352aに供給される。この状態で、ドレッサ50がドレッサシャフト51周りに回転し、ドレッシング部材50aの下面(ダイヤモンド粒子)を研磨面352aに摺接させる。このようにして、ドレッサ50により研磨パッド352が削り取られ、研磨面352aがドレッシングされる。
【0032】
次に、一実施形態による研磨ユニット300における研磨ヘッド302について説明する。図3は、一実施形態による、研磨対象物である基板を保持して研磨パッド上の研磨面に基板を押圧する研磨ヘッド302の模式的な断面図である。図3おいては、研磨ヘッド302を構成する主要構成要素だけを模式的に図示している。
【0033】
図3に示されるように、研磨ヘッド302は、基板WFを研磨面352aに対して押圧する研磨ヘッド本体2と、研磨ヘッド302の周囲を囲んで設けられ、研磨面352aを
直接押圧するリテーナ部材3とを有する。研磨ヘッド本体2は概略四角形の平板状の部材からなり、リテーナ部材3は研磨ヘッド本体2の外周部に取り付けられている。研磨ヘッド本体2の下面には、基板の裏面に接触する弾性膜(メンブレン)4が取り付けられている。一実施形態において、弾性膜(メンブレン)4は、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリウレタンゴム、シリコンゴム等の強度および耐久性に優れたゴム材によって形成される。
【0034】
弾性膜(メンブレン)4は同心状の複数の隔壁4aを有し、これら隔壁4aによって、弾性膜4の上面と研磨ヘッド本体2の下面との間に円形状のセンター室5、センター室5を囲う四角の枠状のリプル室6、リプル室6を囲う四角の枠状の中間室7、中間室7を囲う四角の枠状のアウター室8、アウター室8を囲う四角の枠状のエッジ室9が形成されている。すなわち、研磨ヘッド本体2の中心部にセンター室5が形成され、中心から外周方向に向かって、順次、同心状に、リプル室6、中間室7、アウター室8、エッジ室9が形成されている。図3に示されるように、研磨ヘッド本体2内には、センター室5に連通する流路11、リプル室6に連通する流路12、中間室7に連通する流路13、アウター室8に連通する流路14、エッジ室9に連通する流路15がそれぞれ形成されている。そして、流路11、流路12、流路13、流路14、および流路15は、ロータリージョイント323を介して流路21、22、23、24、25にそれぞれ接続されている。そして、流路21,22,23,24,25は、それぞれバルブV1-1,V2-1,V3-1,V4-1,V5-1および圧力レギュレータR1,R2,R3,R4,R5を介して流体供給源30に接続されている。また、流路21,22,23,24,25は、それぞれバルブV1-2,V2-2,V3-2,V4-2,V5-2を介して真空源31に接続されるとともに、バルブV1-3,V2-3,V3-3,V4-3,V5-3を介して大気に連通可能になっている。
【0035】
また、リテーナ部材3の上にも弾性膜からなるリテーナ部材加圧室10が形成されており、リテーナ部材加圧室10は、研磨ヘッド本体2内に形成された流路16およびロータリージョイント323を介して流路26に接続されている。そして、流路26は、バルブV6-1および圧力レギュレータR6を介して流体供給源30に接続されている。また、流路26は、バルブV6-2を介して真空源31に接続されるとともに、バルブV6-3を介して大気に連通可能になっている。圧力レギュレータR1,R2,R3,R4,R5,R6は、それぞれ流体供給源30からセンター室5、リプル室6、中間室7、アウター室8、エッジ室9およびリテーナ部材加圧室10に供給する圧力流体の圧力を調整する圧力調整機能を有している。このような構造により、基板WFを研磨パッド352に押圧する押圧力を基板WFの領域毎に調整でき、かつリテーナ部材3が研磨パッド352を押圧する押圧力を調整できる。圧力レギュレータR1,R2,R3,R4,R5,R6および各バルブV1-1~V1-3、V2-1~V2-3,V3-1~V3-3,V4-1~V4-3,V5-1~V5-3,V6-1~V6-3は、制御装置900(図1参照)に接続されていて、それらの作動が制御されるようになっている。また、流路21,22,23,24,25,26にはそれぞれ圧力センサP1,P2,P3,P4,P5,P6および流量センサF1,F2,F3,F4,F5,F6が設置されている。なお、本実施形態では、リテーナ部材加圧室10は、矩形のリテーナ部材3の上に一体に形成されているが、これに限定されず、リテーナ部材3の4辺のそれぞれに対して別々に形成されてもよい。この場合、4個のリテーナ部材加圧室10のそれぞれに対して、バルブV6-1、圧力レギュレータR6、圧力センサP6、流量センサF6が設けられていてもよい。
【0036】
<スリップアウト検出>
図2に示すように、研磨ユニット300は、スリップアウト検出器910を備える。スリップアウト検出器910は、制御装置900の機能ブロックとして実現することができる。スリップアウト検出器910は、アーム360の旋回トルクに基づいて、研磨ヘッド
302から基板WFが飛び出したことを検出することができる。例えば、スリップアウト検出器910は、アーム360の旋回トルクに相関する物理量の変化に基づいて、研磨ヘッド302から基板WFが飛び出したことを検出するように構成される。具体的には、スリップアウト検出器910には、アーム電流計364´によって計測された駆動電流値が入力される。スリップアウト検出器910は、アーム電流計364´によって計測された駆動電流値の単位時間当たりの変化量が予め設定された閾値を超えたら、研磨ヘッド302から基板WFが飛び出したことを検出するように構成される。なお、本実施形態では、アーム電流計364´によって計測された駆動電流値に基づいてアーム360の旋回トルクを検出する例を示すが、これに限定されない。アーム回転モータ364がサーボモータである場合には、スリップアウト検出器910は、アーム回転モータ364から受信したデータに基づいてアーム360の旋回トルクを検出することができる。この場合、アーム電流計364´は設けなくてもよい。
【0037】
図4は、アーム360の駆動電流と基板WFのスリップアウトとの関係を示す図である。図4において縦軸はアーム360の駆動電流(A)であり、横軸は時間(秒)である。図4の上図は、基板WFの研磨処理を開始してからスリップアウトが発生する過程におけるアーム360の駆動電流を示しており、図4の下図は、基板WFのスリップアウトが発生した部分を拡大して示している。
【0038】
アーム360を研磨テーブル350の外側から研磨テーブル350の上に旋回させると、図4の50秒付近に示すように、アーム360の旋回トルクが発生し、アーム360の駆動電流が大きく変化する。その後、研磨テーブル350上の所定の位置で基板WFを研磨パッド352に押圧して研磨を開始すると、アーム360は、基板WFと研磨パッド352との間の摩擦力に抗して研磨ヘッド302を研磨テーブル350上の所定の位置に保ち続ける。これにより、図4の60秒付近から120秒付近に示すように、アーム360に所定の旋回トルクが発生し続けることに伴って、アーム360に所定の駆動電流が流れ続ける。そして、基板WFのスリップアウトが発生すると、基板WFと研磨パッド352との間の摩擦力が失われることによってアーム360の旋回トルクが急速に減少し、図4の121秒付近に示すようにアーム360の駆動電流が大きく変化する。このタイミングで、アーム360の駆動電流値の単位時間当たり(例えば、0.1秒毎)の変化量が予め設定された閾値を超えるので、スリップアウト検出器910は、研磨ヘッド302から基板WFが飛び出したことを検出することができる。
【0039】
本実施形態によれば、研磨ヘッド302からの基板WFの飛び出し(スリップアウト)検出の精度を向上させることができる。すなわち、従来技術のように研磨ヘッドまたは研磨テーブルの回転トルクの変化に基づいて基板WFのスリップアウトを検出する場合には、研磨時の振動に起因するノイズが研磨ヘッドまたは研磨テーブルの回転トルクに直接反映されるので、このノイズによる誤検出が発生する可能性がある。これに対して本実施形態では、アーム360の旋回トルクの変化に基づいて基板WFのスリップアウトを検出するので、アーム360の旋回トルクに研磨時の振動が直接反映されず、その結果、振動ノイズによる誤検出の発生を抑制することができる。
【0040】
ここで、本実施形態のようにアーム360の旋回トルクの変化に基づいて基板WFのスリップアウトを検出する場合には、アーム360の揺動(旋回)に起因する基板WFのスリップアウトの誤検出のおそれがある。すなわち、研磨ユニット300は、アーム360を研磨テーブル350上の所定の範囲で揺動(往復移動)させながら基板WFを研磨する場合がある。この場合、アーム360の揺動の折り返し領域においてアーム360の減速および加速が行われるので、これがアーム360の旋回トルクの変化として現れ、基板WFがスリップアウトしたと誤検出されるおそれがある。
【0041】
この点、図2に示すように、研磨ユニット300は、アーム360の旋回速度を検出するための速度検出器920を含んでいる。速度検出器920は、制御装置900の機能ブロックとして実現することができる。速度検出器920は、アーム回転モータ364から送信されるアーム360の回転方向および回転数の情報を受信し、単位時間当たりのアーム360の位置の変化に基づいてアーム360の旋回速度を検出することができる。スリップアウト検出器910は、速度検出器920によって検出された速度に基づいて、研磨ヘッド302から基板WFが飛び出したことの検出を停止するように構成することができる。具体的には、スリップアウト検出器910は、速度検出器920によって検出された速度が予め設定された閾値未満である場合には、アーム360が揺動の折り返し領域にあると考えられるので、研磨ヘッド302から基板WFが飛び出したことの検出を停止するように構成することができる。
【0042】
本実施形態によれば、アーム360の揺動の折り返し領域においてアーム360が減速され、再び加速されて所定の速度に至るまでは、基板WFが飛び出したことの検出を停止することができるので、アーム360の揺動の折り返し領域における誤検出の発生を抑制することができる。
【0043】
スリップアウト検出器910は、アーム360の旋回トルクの変化に基づく基板WFのスリップアウト検出に代えて、またはこれと併せて、リテーナ部材加圧室10に供給される流体の流量に基づいて、基板WFのスリップアウト検出を行うことができる。すなわち、スリップアウト検出器910は、流量センサF6によって検出された流量の変化に基づいて、研磨ヘッド302から基板WFが飛び出したことを検出するように構成することができる。具体的には、スリップアウト検出器910は、流量センサF6によって検出された流体の流量の単位時間当たりの変化量が予め設定された閾値を超えたら、研磨ヘッド302から基板WFが飛び出したことを検出するように構成することができる。
【0044】
図5は、基板WFのスリップアウト時のリテーナ部材加圧室10の状態を模式的に示す図である。図5の上図は基板WFのスリップアウトが発生していない状態を示しており、図5の下図は基板WFのスリップアウトが発生した状態を示している。図5の上図に示すように、リテーナ部材加圧室10に流体が供給されてリテーナ部材3が研磨パッド352を押圧している状態で、基板WFのスリップアウトが発生していない場合には、リテーナ部材加圧室10に供給される流体の流量は変化が生じ難くなる。一方、基板WFのスリップアウトが発生すると、基板WFがリテーナ部材3を押し上げることによってリテーナ部材加圧室10から流体が流出するなど、リテーナ部材加圧室10に供給される流体の流量は変化が大きくなる。
【0045】
図6は、リテーナ部材加圧室10に供給される流体の流量と基板WFのスリップアウトとの関係を示す図である。図6において縦軸はリテーナ部材加圧室10に供給される流体の流量(mL)であり、横軸は時間(秒)である。図6の上図は、基板WFの研磨処理を開始してからスリップアウトが発生する過程におけるリテーナ部材加圧室10に供給される流体の流量を示しており、図6の下図は、基板WFのスリップアウトが発生した部分を拡大して示している。
【0046】
基板WFの研磨処理を開始するにあたってリテーナ部材加圧室10に流体を供給してリテーナ部材3を研磨パッド352に押圧すると、図6の60秒を経過したあたりに示すように、リテーナ部材加圧室10に供給される流体の流量が大きく変化する。その後、基板WFの研磨処理を行っている間は、リテーナ部材3が研磨パッド352に押圧され続け、リテーナ部材3の位置変化があまり生じないので、リテーナ部材加圧室10に供給される流体の流量はほとんど変化しない。その後、基板WFのスリップアウトが発生すると、基板WFがリテーナ部材3に接触してリテーナ部材3を押し上げたり、流体供給源30から
の流体の供給によってリテーナ部材3を押し返したりすることによって、リテーナ部材加圧室10に対して流体の流入/流出が生じる。これにより、図6の96秒付近に示すようにリテーナ部材加圧室10に供給される流体の流量が大きく変化する。このタイミングで、リテーナ部材加圧室10に供給される流体の流量の単位時間当たり(例えば、0.1秒毎)の変化量が予め設定された閾値を超えるので、スリップアウト検出器910は、研磨ヘッド302から基板WFが飛び出したことを検出することができる。
【0047】
本実施形態によれば、研磨ヘッド302からの基板WFの飛び出し(スリップアウト)検出の精度を向上させることができる。すなわち、従来技術のように基板の背面に供給する流体の圧力/流量の変化に基づいて基板の飛び出しを検出する場合には、研磨時の振動に起因するノイズが流体の圧力/流量に直接反映されるので、このノイズによる誤検出が発生する可能性がある。これに対して本実施形態では、リテーナ部材加圧室10に供給される流体の流量の変化に基づいて基板WFのスリップアウトを検出するので、リテーナ部材加圧室10に供給される流体の流量に研磨時の振動が直接反映されず、その結果、振動ノイズによる誤検出の発生を抑制することができる。
【0048】
なお、本実施形態では、リテーナ部材加圧室10に供給される流体の流量の変化に基づいて基板WFのスリップアウトを検出したが、これに限定されず、リテーナ部材加圧室10に供給される流体の圧力の変化に基づいて基板WFのスリップアウトを検出することもできる。この場合、スリップアウト検出器910は、圧力センサP6によって検出された流体の圧力の単位時間当たりの変化量が予め設定された閾値を超えたら、研磨ヘッド302から基板WFが飛び出したことを検出するように構成することができる。また、本実施形態では、リテーナ部材加圧室10が矩形の枠状に一体に形成されている場合を説明したが、これに限られない。リテーナ部材加圧室10がリテーナ部材3の4辺のそれぞれに対して別々に設けられており、それぞれのリテーナ部材加圧室10に対して流量センサF6が設けられていてもよい。この場合には、スリップアウト検出器910は、4個の流量センサF6のいずれかによって検出された流体の流量の変化に基づいて基板WFのスリップアウトを検出することができる。
【0049】
スリップアウト検出器910は、アーム360の旋回トルクの変化および/またはリテーナ部材加圧室10に供給される流体の流量の変化に基づく基板WFのスリップアウト検出に加えて、他のスリップアウト検出を組み合わせることもできる。例えば、研磨ユニット300は、研磨テーブル350の回転トルクに相関する物理量を検出するためのテーブルトルク検出器として、研磨テーブル電流計359´を備える。スリップアウト検出器は、研磨テーブル電流計359´によって検出された駆動電流の変化に基づいて、研磨ヘッド302から基板WFが飛び出したことを検出することができる。
【0050】
また、研磨ユニット300は、研磨ヘッド302の回転トルクに相関する物理量を検出するための研磨ヘッドトルク検出器として、研磨ヘッド電流計304´を備える。スリップアウト検出器910は、研磨ヘッド電流計304´によって検出された駆動電流の変化に基づいて、研磨ヘッド302から基板WFが飛び出したことを検出することができる。
【0051】
さらに、図2に示すように、研磨ユニット300は、研磨パッド352に対して光を発射するための光発射部材370および研磨パッド352から反射した光を受光するための光受光部材372を含む。スリップアウト検出器910は、光発射部材370から発射され光受光部材372によって受光された反射光の光量の変化に基づいて、研磨ヘッド302から基板WFが飛び出したことを検出することができる。すなわち、研磨パッド352と基板WFは光の反射率が異なるので、基板WFが研磨ヘッド302から外れて光の発射領域に現れると、反射光の光量が変化するので、この変化を検出したら基板WFが研磨ヘッド302から外れたと判定する。また、スリップアウト検出器910は、光発射部材3
70から発射され光受光部材372によって受光された反射光の色の変化に基づいて、研磨ヘッド302から基板WFが飛び出したことを検出することができる。すなわち、スリップアウト検出器910は、基板WFの研磨処理が行われる前に研磨パッド352に対して光を発射し、研磨パッド352から反射した光に基づいて研磨パッドの基準色を登録する。スリップアウト検出器910は、基板WFの研磨処理中に、研磨パッド352から反射した光に基づく色と、基準色とを比較する。研磨パッド352と基板WFは色が異なるので、基板WFが研磨ヘッド302から外れて光の発射領域に現れると、スリップアウト検出器910は、研磨パッド352の基準色とは異なる色を検出するので、トップリング302から基板WFが飛び出したことを検出することができる。
【0052】
スリップアウト検出器910は、基板WFのスリップアウトを検出するための上記の複数の方法のうちの1つまたは複数でスリップアウトが検出された場合に、基板WFがスリップアウトしたと判断して、研磨ユニット300を停止させることができる。さらに、スリップアウト検出器910は、研磨パッド352の上方で研磨ヘッド302の外側近くに研磨パッド352の表面を撮像するCCDカメラなどの監視手段を配置して、これにより研磨ヘッド302から基板WFが飛び出したことを検出するようにすることもできる。
【0053】
また、図2に示すように、研磨ユニット300は、研磨ヘッド302の研磨パッド352に対する高さ、研磨ヘッド302に形成された複数の基板加圧室(センター室5、リプル室6、中間室7、アウター室8、エッジ室9)の圧力、リテーナ部材加圧室10の圧力、研磨テーブル350の回転数、研磨ヘッド302の回転数、または、アーム360の旋回速度、の少なくとも1つの設定値を変更するための設定変更指令が発せられたことを検出する設定変更検出器930を含む。設定変更検出器930は、制御装置900の機能ブロックとして実現することができる。設定変更検出器930は、例えば基板処理装置1000に設けられたGUI(Graphical User Interface)画面を介してオペレータが入力した設定変更指令、または、基板処理装置1000のホストコンピュータから発せられた自動コマンドによる設定変更指令を検出することができる。スリップアウト検出器910は、設定変更検出器930によって設定変更指令が発せられたことを検出した場合には、研磨ヘッド302から基板WFが飛び出したことの検出を所定時間停止するように構成することができる。
【0054】
すなわち、研磨ユニット300において基板WFを研磨しているときに上記のような各種の設定変更指令が発せられた場合、設定を変更して正常な研磨状態に至るまでに所定の時間を要する。この設定変更を行う過渡期には上記の基板WFの飛び出し検出におけるトリガとなる各種の検出値に変化が生じて、これを基板WFの飛び出しと誤検出するおそれがある。そこで、スリップアウト検出器910は、上記のような各種の設定変更指令が発せられた場合には、スリップアウト検出を所定時間無効にすることによって、誤検出の発生を抑制することができる。なお、上記に限定されず、スリップアウト検出器910は、基板WFの研磨中にアーム360の旋回(揺動)速度が変更されてもスリップアウト検出を行うように構成することもできる。すなわち、スリップアウト検出器910は、アーム360を揺動させながら基板WFを研磨するときにアーム360の速度を常時変更させる場合、または一定速度で移動させ端部で折り返しを行う場合においてもスリップアウト検出を有効にしておくこともできる。
【0055】
<基板処理方法>
次に、本実施形態の基板処理方法について説明する。図7は、本実施形態の基板処理方法を示すフロー図である。基板処理方法では、まず、オペレータがGUI画面を介して基板処理のための各種レシピを作成して(ステップ102)、基板の研磨処理を開始する(ステップ104)。具体的には、研磨ステップは、研磨ヘッド302によって基板WFを保持して研磨パッド352に押圧するとともに、基板WFと研磨パッド352とを相対運
動させることによって基板WFを研磨する。続いて、基板処理方法では、基板WFのスリップアウト検出機能が有効になっているか否かを判定し(ステップ106)、有効になっていなければ(ステップ106,No)、処理を終了する。
【0056】
一方、スリップアウト検出機能が有効になっている場合には(ステップ106,Yes)、スリップアウト検出器910は、研磨ヘッド302が監視対象範囲内であるか否かを判定する(ステップ108)。すなわち、基板WFの研磨処理が開始されると、研磨ヘッド302が基板の受け渡し位置で基板を受け取り、アーム360の旋回によって研磨テーブル350の上に搬送する。このときにアーム360の旋回トルクの変化に基づいてスリップアウトの誤検出が発生しないように、研磨ヘッド302が研磨テーブル350上の所定の範囲に運ばれるまでスリップアウトが発生したか否かの判定は行われないようになっている。
【0057】
研磨ヘッド302が監視対象範囲内であると判定されたら(ステップ108,Yes)、スリップアウト検出器910は、スリップアウト検出の監視条件に変更があるか否かを判定する(ステップ110)。スリップアウト検出器910は、設定変更検出器930によって上述の設定変更指令が検出されるか否かによってステップ110の判定を行うことができる。スリップアウト検出器910は、スリップアウト検出の監視条件に変更がある場合には(ステップ110,Yes)、所定の検出開始ディレイ時間待機する(ステップ112)。これにより、設定変更に起因するスリップアウトの誤検出の発生を抑制することができる。
【0058】
一方、スリップアウト検出器910は、スリップアウト検出の監視条件に変更がない場合(ステップ110,No)、または、ステップ112において所定の検出開始ディレイ時間待機した後に、基板WFのスリップアウト検出を実行してスリップアウトが発生したか否かを判定する(ステップ116)。スリップアウト検出器910は、アーム360の旋回トルクの変化に基づいて、または、リテーナ部材加圧室10に供給される流体の流量の変化に基づいて、基板WFのスリップアウトを検出することができる。また、これに加えて、スリップアウト検出器910は、研磨テーブル350/研磨ヘッド302の回転トルクの変化に基づくスリップアウト検出、または、光受光部材372によって受光された反射光の光量または色の変化に基づくスリップアウト検出を組み合わせてもよい。
【0059】
スリップアウト検出器910は、基板WFのスリップアウトが検出されたら(ステップ116,Yes)、研磨ユニット300の異常停止処理を行う(ステップ118)。一方、スリップアウト検出器910は、基板WFのスリップアウトが検出されない場合には(ステップ116,No)、研磨処理が終了したか否かを判定する(ステップ120)。スリップアウト検出器910は、研磨処理が終了していない場合には(ステップ120,No)、ステップ108に戻って処理を繰り返す。一方、スリップアウト検出器910は、研磨処理が終了した場合には(ステップ120,Yes)、処理を終了する。
【0060】
図2に示すように、制御装置900は記憶媒体940を備える。記憶媒体940には、基板処理装置1000で用いられる各種データの他、上記の基板処理方法における各ステップを基板処理装置1000のコンピュータ(制御装置900)に実行させるためのプログラムが格納されている。制御装置900のCPU(中央処理装置)は、記憶媒体940に格納されたプログラムを読み出して実行することができる。このプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記録され、記憶媒体を介して制御装置900に提供され得る。或いは、このプログラムは、インターネットなどの通信ネットワークを介して制御装置900に提供されてもよい。
【0061】
以上、いくつかの本発明の実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態
は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。例えば、本実施形態では四角形の形状の基板WFのスリップアウト検出を例に挙げて説明したが、これに限定されず、他の多角形または半導体ウエハなどの円形の基板のスリップアウト検出についても本発明を適用することができる。
【0062】
本願は、一実施形態として、基板を研磨するための研磨パッドが貼り付けられる研磨テーブルと、基板を保持して研磨パッドに押圧するための研磨ヘッドと、前記研磨ヘッドを囲んで配置されたリテーナ部材と、前記リテーナ部材に隣接して配置されたリテーナ部材加圧室と、前記研磨ヘッドを保持して旋回させるためのアームと、前記アームの旋回トルクに基づいて、または、前記リテーナ部材加圧室に供給される流体の流量に基づいて、前記研磨ヘッドから基板が飛び出したことを検出するためのスリップアウト検出器と、を含む、基板処理装置を開示する。
【0063】
さらに本願は、一実施形態として、前記アームの旋回トルクに相関する物理量を検出するためのアームトルク検出器をさらに含み、前記スリップアウト検出器は、前記アームトルク検出器によって検出された物理量の変化に基づいて、前記研磨ヘッドから基板が飛び出したことを検出するように構成される、基板処理装置を開示する。
【0064】
さらに本願は、一実施形態として、前記スリップアウト検出器は、前記アームトルク検出器によって検出された物理量の単位時間当たりの変化量が予め設定された閾値を超えたら、前記研磨ヘッドから基板が飛び出したことを検出するように構成される、基板処理装置を開示する。
【0065】
さらに本願は、一実施形態として、前記アームトルク検出器は、前記アームを旋回させるための電動機の駆動電流を検出する電流計である、基板処理装置を開示する。
【0066】
さらに本願は、一実施形態として、前記アームの旋回速度を検出するための速度検出器をさらに含み、前記スリップアウト検出器は、前記速度検出器によって検出された速度に基づいて、前記研磨ヘッドから基板が飛び出したことの検出を停止するように構成される、基板処理装置を開示する。
【0067】
さらに本願は、一実施形態として、前記スリップアウト検出器は、前記速度検出器によって検出された速度が予め設定された閾値未満である場合には、前記研磨ヘッドから基板が飛び出したことの検出を停止するように構成される、基板処理装置を開示する。
【0068】
さらに本願は、一実施形態として、前記リテーナ部材加圧室に流体を供給するための供給源と、前記リテーナ部材加圧室に供給される流体の流量を検出するための流量検出器と、をさらに含み、前記スリップアウト検出器は、前記流量検出器によって検出された流量の変化に基づいて、前記研磨ヘッドから基板が飛び出したことを検出するように構成される、基板処理装置を開示する。
【0069】
さらに本願は、一実施形態として、前記スリップアウト検出器は、前記流量検出器によって検出された流体の流量の単位時間当たりの変化量が予め設定された閾値を超えたら、前記研磨ヘッドから基板が飛び出したことを検出するように構成される、基板処理装置を開示する。
【0070】
さらに本願は、一実施形態として、前記研磨ヘッドの研磨パッドに対する高さ、前記研磨ヘッドに形成された複数の基板加圧室の圧力、前記リテーナ部材加圧室の圧力、前記研磨テーブルの回転数、前記研磨ヘッドの回転数、または、前記アームの旋回速度、の少なくとも1つの設定値を変更するための設定変更指令が発せられたことを検出する設定変更検出器をさらに含み、前記スリップアウト検出器は、前記設定変更検出器によって前記設定変更指令が発せられたことを検出した場合には、前記研磨ヘッドから基板が飛び出したことの検出を所定時間停止するように構成される、基板処理装置を開示する。
【0071】
さらに本願は、一実施形態として、前記研磨テーブルの回転トルクに相関する物理量を検出するためのテーブルトルク検出器をさらに含み、前記スリップアウト検出器は、前記テーブルトルク検出器によって検出された物理量の変化に基づいて、前記研磨ヘッドから基板が飛び出したことを検出するように構成される、基板処理装置を開示する。
【0072】
さらに本願は、一実施形態として、前記研磨ヘッドの回転トルクに相関する物理量を検出するための研磨ヘッドトルク検出器をさらに含み、前記スリップアウト検出器は、前記研磨ヘッドトルク検出器によって検出された物理量の変化に基づいて、前記研磨ヘッドから基板が飛び出したことを検出するように構成される、基板処理装置を開示する。
【0073】
さらに本願は、一実施形態として、研磨パッドに対して光を発射するための光発射部材および研磨パッドから反射した光を受光するための光受光部材をさらに含み、前記スリップアウト検出器は、前記光受光部材によって受光された反射光の光量または色の変化に基づいて、前記研磨ヘッドから基板が飛び出したことを検出するように構成される、基板処理装置を開示する。
【0074】
さらに本願は、一実施形態として、研磨ヘッドを用いて基板を保持して研磨テーブルに貼り付けられた研磨パッドに押圧する研磨ステップと、前記研磨ヘッドを旋回させるためのアームの旋回トルクに基づいて、または、前記研磨ヘッドを囲んで配置されたリテーナ部材に隣接して配置されたリテーナ部材加圧室に供給される流体の流量に基づいて、前記研磨ヘッドから基板が飛び出したことを検出するためのスリップアウト検出ステップと、を含む、基板処理方法を開示する。
【0075】
さらに本願は、一実施形態として、前記スリップアウト検出ステップは、前記アームの旋回トルクに相関する物理量の単位時間当たりの変化量が予め設定された閾値を超えたら、前記研磨ヘッドから基板が飛び出したことを検出する、基板処理方法を開示する。
【0076】
さらに本願は、一実施形態として、前記スリップアウト検出ステップは、前記アームの旋回速度が予め設定された閾値未満である場合には、前記研磨ヘッドから基板が飛び出したことの検出を停止する、基板処理方法を開示する。
【0077】
さらに本願は、一実施形態として、前記スリップアウト検出ステップは、前記リテーナ部材加圧室に供給される流体の流量の単位時間当たりの変化量が予め設定された閾値を超えたら、前記研磨ヘッドから基板が飛び出したことを検出する、基板処理方法を開示する。
【0078】
さらに本願は、一実施形態として、前記スリップアウト検出ステップは、前記研磨ヘッドの研磨パッドに対する高さ、前記研磨ヘッドに形成された複数の基板加圧室の圧力、前記リテーナ部材加圧室の圧力、前記研磨テーブルの回転数、前記研磨ヘッドの回転数、または、前記アームの旋回速度、の少なくとも1つの設定値を変更するための設定変更指令が発せられたら、前記スリップアウト検出を所定時間停止するように構成される、基板処理方法を開示する。
【0079】
さらに本願は、一実施形態として、前記スリップアウト検出ステップは、前記研磨テーブルの回転トルクに相関する物理量の変化、または、前記研磨ヘッドの回転トルクに相関する物理量の変化、に基づいて、前記研磨ヘッドから基板が飛び出したことを検出する、基板処理方法を開示する。
【0080】
さらに本願は、一実施形態として、前記スリップアウト検出ステップは、研磨パッドに対して発射した光の反射光の光量または色の変化に基づいて、前記研磨ヘッドから基板が飛び出したことを検出する、基板処理方法を開示する。
【0081】
さらに本願は、一実施形態として、研磨ヘッドを用いて基板を保持して研磨テーブルに貼り付けられた研磨パッドに押圧する研磨ステップと、前記研磨ヘッドを旋回させるためのアームの旋回トルクに基づいて、または、前記研磨ヘッドを囲んで配置されたリテーナ部材に隣接して配置されたリテーナ部材加圧室に供給される流体の流量に基づいて、前記研磨ヘッドから基板が飛び出したことを検出するためのスリップアウト検出ステップと、を含む基板処理方法を基板処理装置のコンピュータに実行させるためのプログラムを格納した記憶媒体を開示する。
【符号の説明】
【0082】
3 リテーナ部材
10 リテーナ部材加圧室
30 流体供給源
300 研磨ユニット
302 研磨ヘッド
304 研磨ヘッド回転モータ
304´ 研磨ヘッド電流計
350 研磨テーブル
352 研磨パッド
359 研磨テーブル回転モータ
359´ 研磨テーブル電流計
360 アーム
364 アーム回転モータ
364´ アーム電流計
370 光発射部材
372 光受光部材
900 制御装置
910 スリップアウト検出器
920 速度検出器
930 設定変更検出器
940 記憶媒体
1000 基板処理装置
F1,F2,F3,F4,F5,F6 流量センサ
P1,P2,P3,P4,P5,P6 圧力センサ
WF 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7