(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】欠陥検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/956 20060101AFI20240227BHJP
【FI】
G01N21/956 A
(21)【出願番号】P 2021000536
(22)【出願日】2021-01-05
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】平野 亮一
【審査官】三宅 克馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-145887(JP,A)
【文献】特開2010-243283(JP,A)
【文献】特開2005-121778(JP,A)
【文献】特開2005-121788(JP,A)
【文献】特開2005-331250(JP,A)
【文献】特開2006-222118(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0004774(US,A1)
【文献】特表2007-536560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/956
G03F 1/84
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1試料に照明光を照射して前記第1試料の画像を取得し、参照画像と前記第1試料の前記画像とを比較して欠陥を検査する欠陥検査装置を用いた欠陥検査方法であって、
前記参照画像を生成する工程と、
前記第1試料の前記画像を取得する工程と、
前記第1試料とは異なる第2試料の欠陥検査の結果に基づく指標を用いて欠陥検出条件を設定する工程と、
前記参照画像と前記第1試料の前記画像とを比較した結果から、前記欠陥検出条件に基づいてニュイサンスを判別する工程と、
を備える欠陥検査方法。
【請求項2】
前記参照画像は、前記第1試料の設計データに基づいて生成される、
請求項1に記載の欠陥検査方法。
【請求項3】
前記参照画像は、前記第1試料の前記画像を取得する領域とは異なる領域の画像に基づいて生成される、
請求項1に記載の欠陥検査方法。
【請求項4】
前記指標は、前記第2試料の前記欠陥検査の結果と前記第1試料の設計データとに基づく歩留り予測に基づいて作成される、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の欠陥検査方法。
【請求項5】
前記第2試料の前記欠陥検査の欠陥検出条件は、前記第1試料の設計データに基づいて設定される、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の欠陥検査方法。
【請求項6】
前記指標は、前記第2試料の前記欠陥検査の結果と、前記第2試料に基づく製品の製造性能の情報とに基づいて設定される、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の欠陥検査方法。
【請求項7】
前記欠陥検出条件を設定する工程は、
前記第1及び第2試料とは異なる第3試料の欠陥検査を行う工程と、
前記第3試料の前記欠陥検査の結果に基づいて歩留りを予測する工程と
を含む、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の欠陥検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターンが形成された試料の欠陥検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程では、露光装置(「ステッパ―」または「スキャナー」とも呼ばれる)を用いた縮小露光により、回路パターンが半導体基板上に転写される。露光装置では、回路パターンを半導体基板(以下、「ウェハ」とも表記する)上に転写するために、原画パターン(以下、「マスクパターン」とも表記する)が形成されたマスク(「レチクル」とも呼ばれる)が用いられる。
【0003】
半導体デバイスの製造工程において、歩留まりを低下させる要因の1つとして、マスクの欠陥が挙げられる。マスクパターンに誤りや形成不良等が存在すると、そのマスクを用いて露光する全てのチップに回路パターンの形成不良が生じる。半導体デバイスの微細化に伴い、マスクパターンの微細化及び多様化が進行している。このため、マスクの欠陥検査装置には高い欠陥検出性能が求められる。
【0004】
欠陥検査装置は、高い感度とスループットを得るため、様々な光学系条件でマスクを観察し、得られた画像に対して数値演算処理を加える機能を有する。検査方式として、設計パターンに基づき検査装置で得られるべき画像を数値演算により生成し、採取した画像と比較するD-DB(Die to Database)方式と、マスク上に形成された同一パターンからなる複数の領域同士を比較するD-D(Die to Die)方式とがある。
【0005】
欠陥検査装置にて検出される欠陥は、大別すると、ユーザが検出したい欠陥(以下「DOI(Defect of Interest)」とも表記する)と、ノイズ(以下「ニュイサンス」とも表記する)とに分けられる。DOIには、例えば、半導体デバイスの歩留まりに影響を与えるパターン欠陥及びパーティクルが含まれる。ニュイサンスには、例えば、参照画像データと実画像データとの位置ずれ等、本来欠陥でないにも関わらず検出された擬似欠陥、並びに半導体デバイスの歩留まりに影響を与えない微細なパターン欠陥及びパーティクル等が含まれる。
【0006】
例えば、特許文献1には、高感度な欠陥観察方法として、異なる複数の光学系条件にて試料を照射して得られた複数の信号(光学画像)から欠陥とノイズとを判別し、その座標を求める手法が開示されている。また、特許文献2には、欠陥の位置に近接するマスクパターンの1つまたは複数の属性を用いて欠陥を分類し、ニュイサンスを取り除く方法が開示されている。但し、これらの検査方法で判別されるノイズ(ニュイサンス)は、ユーザが判別したいニュイサンスとは一致していない場合がある。マスクの欠陥検査においては、得られた結果の取り扱いが目的により異なる。
【0007】
ユーザが求めるDOIとニュイサンスとの判別基準には、検査目的(マスクの出荷検査、マスクの品質管理検査、または半導体デバイスの歩留まり改善等)、半導体デバイスの仕様、及び半導体デバイスの製造ラインにおける各プロセス(リソグラフィ及びドライエッチング等)の性能等の要素が反映され得る。従って、同じマスクでもユーザに応じて異なる判別基準が設定される場合がある。
【0008】
欠陥検査装置において検出された欠陥は、例えば、走査型電子顕微鏡(以下、「SEM(Scanning Electron Microscope)」と表記する)を用いたレビュー装置にてレビューされることにより、ユーザが求めるDOIとニュイサンスとに判別される。すなわち、欠陥検査装置におけるDOIとニュイサンスとの検出条件が、ユーザが求めるDOIとニュイサンスとの判別基準に対して適切であるかどうかは、レビューの結果により判断される。このため、欠陥検査装置においてニュイサンスと見なされる欠陥が多数検出されると、レビューの負荷が増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2016-20867号公報
【文献】特許第5965467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
例えば、欠陥検査装置において、欠陥検査装置の性能に基づいて欠陥の検出感度が最大となる光学系条件が設定され、検出可能な全ての欠陥が検出されると、ニュイサンスとして検出される欠陥の個数が増加し、レビューによるDOIとニュイサンスとの判別の負荷が増大する場合がある。これに対し、欠陥検査装置において、ユーザが求める判別基準を反映させた欠陥の検出条件が設定できれば、欠陥の検出感度が最大となるような光学系条件を設定した状態で、ニュイサンスの検出個数をレビュー可能な個数(例えば1000個以下)まで抑えることができる。
【0011】
本発明はこうした点に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、欠陥検査装置において、欠陥の検出感度を最大にしつつ、DOIに対するニュイサンスの比率を低減できる欠陥検出条件を設定できる欠陥検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様によれば、欠陥検査方法は、第1試料に照明光を照射して第1試料の画像を取得し、参照画像と第1試料の画像とを比較して欠陥を検査する欠陥検査装置を用いる。欠陥検査方法は、参照画像を生成する工程と、第1試料の画像を取得する工程と、第1試料とは異なる第2試料の欠陥検査の結果に基づく指標を用いて欠陥検出条件を設定する工程と、参照画像と第1試料の画像とを比較した結果から、欠陥検出条件に基づいてニュイサンスを判別する工程と、を備える。
【0013】
本発明の第1の態様によれば、参照画像は、第1試料の設計データに基づいて生成されることが好ましい。
【0014】
本発明の第1の態様によれば、参照画像は、第1試料の前記画像を取得する領域とは異なる領域の画像に基づいて生成されることが好ましい。
【0015】
本発明の第1の態様によれば、指標は、第2試料の欠陥検査の結果と第1試料の設計データとに基づく歩留り予測に基づいて作成されることが好ましい。
【0016】
本発明の第1の態様によれば、第2試料の欠陥検査の欠陥検出条件は、第1試料の設計データに基づいて設定されることが好ましい。
【0017】
本発明の第1の態様によれば、指標は、第2試料の欠陥検査の結果と、第2試料に基づく製品の製造性能の情報とに基づいて設定されることが好ましい。
【0018】
本発明の第1の態様によれば、欠陥検出条件を設定する工程は、第1及び第2試料とは異なる第3試料の欠陥検査を行う工程と、第3試料の欠陥検査の結果に基づいて歩留りを予測する工程とを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の欠陥検査方法によれば、DOIに対するニュイサンスの比率を低減できる欠陥検出条件を設定できる欠陥検査方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る欠陥検査方法に用いられる欠陥検査装置の全体構成を示す図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る欠陥検査方法に用いられる欠陥検査装置におけるマスクの欠陥検査のフローチャートである。
【
図3】
図3は、1つのマスクに着目したマスクの設計から半導体デバイスの製造までの流れを示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、一実施形態に係る欠陥検査方法をマスクハウスが実行する場合のフローチャートである。
【
図5】
図5は、一実施形態に係る欠陥検査方法をマスクハウスが実行する場合の情報(データ)の流れを示す図である。
【
図6】
図6は、一実施形態に係る欠陥検査方法をウェハファブが実行する場合のフローチャートである。
【
図7】
図7は、一実施形態に係る欠陥検査方法をウェハファブが実行する場合の情報(データ)の流れを示す図である。
【
図8】
図8は、一実施形態に係る欠陥検査方法をIDMが実行する場合のフローチャートである。
【
図9】
図9は、一実施形態に係る欠陥検査方法をIDMが実行する場合の情報(データ)の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、実施形態について図面を参照して説明する。実施形態は、発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示している。図面は模式的または概念的なものであり、各図面の寸法及び比率等は必ずしも現実のものと同一とは限らない。本発明の技術的思想は、構成要素の形状、構造、配置等によって特定されるものではない。
【0022】
以下では、マスクの欠陥検査方法を例に挙げて説明する。なお、本実施形態では、検査対象の試料がマスクである場合について説明するが、パターンを有する基板であればよい。例えば、試料は、半導体基板であってもよい。
【0023】
1 欠陥検査装置の構成
まず、欠陥検査装置の全体構成の一例について、
図1を用いて説明する。
図1は、欠陥検査装置1の全体構成を示す図である。なお、本実施形態では、受光素子(フォトダイオード)を用いて、マスクを反射または透過した光の光学画像を撮像する検査装置について説明するが、これに限定されない。欠陥検査装置は、光学顕微鏡を用いてパターンの光学画像を撮像してもよいし、SEMを用いて、パターンの電子線画像を撮像してもよい。
【0024】
図1に示すように、欠陥検査装置1は、画像取得機構10と制御機構20とを含む。画像取得機構10は、マスク30の光学画像を取得するための構成を有する。制御機構20は、画像取得機構10を制御し、画像取得機構10が取得した光学画像に基づいて欠陥を検出する。
【0025】
画像取得機構10は、ステージ101、照明光源111、ハーフミラー112、ミラー113~115及び117、照明光調整部118、レンズ116、119、及び121、ビームスプリッタ120、アパーチャ122、結像光調整部123、並びに受光センサ124を含む。
【0026】
ステージ101の上には、マスク30が載置される。ステージ101は、ステージ101の表面に平行な方向に移動及び回転可能である。なお、ステージ101は、ステージ101の表面に垂直な方向に移動可能であってもよい。
【0027】
照明光源111は、欠陥検査用の照明光を射出する。例えば、照明光源111は、199nmの深紫外光(DUV光:deep ultra-violet light)を照射するパルスレーザー照射装置である。
【0028】
ハーフミラー112は、照明光源111から射出された照明光を、透過照明光学系と反射照明光学系との2つに分割する。より具体的には、ハーフミラー112を透過した照明光は、透過照明光学系に入射される。透過照明光学系は、マスク30を透過した照明光(以下、「透過光」とも表記する)を撮像する場合に、マスク30を照射する照明光の光路を調整する。また、ハーフミラー112を反射した照明光は、反射照明光学系に入射される。反射照明光学系は、マスク30を反射した照明光(以下、「反射光」とも表記する)を撮像する場合に、マスク30を照射する照明光の光路を調整する。
【0029】
ミラー113、114、及び115は、透過照明光学系において、ハーフミラー112を透過した照明光の光路の調整に用いられる。
【0030】
レンズ116は、透過照明光学系において、ミラー115によって向きを変えられた照明光をマスク30の上面上に集光させる。
【0031】
ミラー117は、反射照明光学系において、ハーフミラー112を反射した照明光の光路の調整に用いられる。
【0032】
照明光調整部118は、照明光の偏光方向及び光束の量を調整する。照明光調整部118は、光学フィルタ118t及び118rを含む。光学フィルタ118tは、透過照明光学系において、ミラー114とミラー115との間の光路に設けられ、照明光の偏光方向及び光束の量の調整に用いられる。光学フィルタ118rは、反射照明光学系において、ミラー117とビームスプリッタ120との間の光路に設けられ、照明光の偏光方向及び光束の量の調整に用いられる。
【0033】
レンズ119は、透過照明光学系において、マスク30を透過した照明光(透過光)をビームスプリッタ120に集光させる。また、レンズ119は、反射照明光学系において、光学フィルタ118rを通過した後にビームスプリッタ120を反射した照明光をマスク30の下面上に集光させ、マスク30を反射した照明光(反射光)をビームスプリッタ120に集光させる。
【0034】
ビームスプリッタ120は、反射照明光学系において、光学フィルタ118rを通過した照明光をレンズ119に向かって反射させる。また、ビームスプリッタ120は、レンズ119によって集光された透過光また反射光を透過させる。
【0035】
レンズ121は、ビームスプリッタ120を透過した透過光及び反射光をアパーチャ122上に集光させる。
【0036】
アパーチャ122は、レンズ121によって集光された透過光及び反射光の成形に用いられる。アパーチャ122は、開口部122t及び122rを有する。開口部122tは、透過光を成形する際に用いられる。開口部122rは、反射光を成形する際に用いられる。
【0037】
結像光調整部123は、受光センサ124上に結像される照明光(透過光及び反射光)の偏光方向及び光束の量を調整する。結像光調整部123は、光学フィルタ123t及び123rを含む。光学フィルタ123tは、透過光の偏光方向及び光束の量の調整に用いられる。また、光学フィルタ123rは、反射光の偏光方向及び光束の量の調整に用いられる。
【0038】
受光センサ124は、受光した透過光及び反射光をセンスする。受光センサ124は、フォトダイオードアレイ124t及び124rを含む。フォトダイオードアレイ124tは、光学フィルタ123tを通過した透過光を光電変換し、電気信号を生成する。フォトダイオードアレイ124rは、光学フィルタ123rを通過した反射光を光電変換し、電気信号を生成する。フォトダイオードアレイ124t及び124rは、生成した電気信号を後述する画像データ入力部260に送信する。フォトダイオードアレイ124t及び124rは、図示せぬ画像センサをそれぞれ含む。画像センサとしては、撮像素子としてのCCDカメラを一列に並べたラインセンサが用いられてもよい。ラインセンサの例としては、TDI(Time Delay Integration)センサが挙げられる。例えば、TDIセンサによって、連続的に移動しているステージ101上に載置されたマスク30のパターンが撮像される。
【0039】
制御機構20は、装置制御部200、記憶部210、検査条件設定部220、照明条件設定部230、結像条件設定部240、参照画像生成部250、画像データ入力部260、及び比較部270を含む。なお、検査条件設定部220、照明条件設定部230、結像条件設定部240、参照画像生成部250、画像データ入力部260、及び比較部270は、CPU(Central Processing Unit)、特定用途集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:Field Programmable Gate Alley)、または、グラフィック処理ユニット(GPU:Graphics Processing Unit)などの集積回路が実行するプログラムによって構成されてもよいし、それらの集積回路が備えるハードウェアまたはファームウェアによって構成されてもよいし、それらの集積回路によって制御される個別の回路によって構成されてもよい。以下では、これらが、装置制御部200によって実行される欠陥検査プログラムである場合について説明する。
【0040】
装置制御部200は、欠陥検査装置1の全体を制御する。より具体的には、装置制御部200は、画像取得機構10を制御して光学画像を取得する。また、装置制御部200は、制御機構20を制御して、参照画像と、取得した光学画像とを比較し、欠陥を検出する。例えば、装置制御部200は、図示せぬCPU、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)を含む。例えば、CPUは、ROMに格納された欠陥検査プログラムをRAMに展開する。そして、CPUは、RAMに展開された欠陥検査プログラムを実行して、欠陥検査装置1を制御する。なお、ROMの代わりに記憶部210に欠陥検査プログラムが格納されていてもよい。また、装置制御部200は、例えば、マイクロプロセッサなどのCPUデバイスであってもよいし、パーソナルコンピュータなどのコンピュータ装置であってもよい。また、装置制御部200の少なくとも一部の機能が、ASIC、FPGA、GPU等の他の集積回路によって担われてもよい。
【0041】
記憶部210は、欠陥検査に関する情報を記憶する。より具体的には、記憶部210には、マスク30のマスクデータ(設計データ)、検査条件の設定データ、検査データ等が記憶される。例えば、検査条件の設定データには、画像取得機構10の光学系条件、欠陥検出条件、及び後述する検査指標等が含まれる。また、検査データには、参照画像データ、光学画像データ、及び検出された欠陥に関するデータ(座標及びサイズ等)が含まれる。なお、記憶部210は、非一時的な記憶媒体として、装置制御部200が実行する欠陥検査プログラムを記憶していてもよい。また、記憶部210は、外部ストレージとして、磁気ディスク記憶装置(HDD:Hard Disk Drive)またはソリッドステートドライブ(SSD)等の各種記憶装置を含んでいてもよい。
【0042】
検査条件設定部220は、画像取得機構10における1つまたは複数の光学画像の取得条件(光学系条件)を設定する。
【0043】
また、検査条件設定部220は、欠陥の検出条件を設定する。より具体的には、例えば、検査条件設定部220は、欠陥の形状、サイズ、検出位置(周辺パターンの形状)等に基づいて、欠陥を分類し、グループ化する機能を有する。また、検査条件設定部220は、例えば、欠陥検出信号に対する閾値を変化させて、検出感度を調整する機能を有する。また、検査条件設定部220は、ニュイサンスと判断された複数の欠陥検出信号から一定の傾向が抽出された場合、抽出された傾向に基づいて、欠陥検出信号からニュイサンスを分類(フィルタリング)する機能を有する。また、検査条件設定部220は、検出された欠陥が、例えば半導体デバイスの製造において障害にならないことを判断する、あるいは基準となる欠陥検査の結果に基づいて同等の欠陥が検出されているのか確認する欠陥レビュー機能を有する。そして、検査条件設定部220は、上述の欠陥の分類、欠陥のグループ化、欠陥の検出感度の変化、ニュイサンスのフィルタリング、欠陥レビュー等をサンプリング(検出)スキームの要素として使用することにより、欠陥の検出条件を設定するコンテキスト・ベース機能を有する。
【0044】
本実施形態では、検査条件設定部220は、図示せぬ入出力回路を介して、外部から入力された検査指標に基づいて、コンテキスト・ベース機能を構成する要素を取捨選択したり、新たな要素を追加したり、検出感度を変更したりする編集機能を有する。すなわち、検査条件設定部220は、検査指標に基づいて欠陥検出条件を変更できる。検査指標は、検査対象のマスクとは異なるマスクの欠陥検査、及びそのレビュー結果または歩留まり情報等に基づいて作成される欠陥検出条件の変更を指定するための指標である。これにより、検査条件設定部220は、例えば同じマスクであってもユーザまたは目的等に応じて異なる欠陥検出条件を設定できる。
【0045】
より具体的には、例えば、検査条件設定部220は、検査指標に基づいて、欠陥をグループ化する際の区分を変更して、ニュイサンスとしてフィルタリングされる欠陥をユーザの目的に合わせて変更できる。また、検査条件設定部220は、欠陥の検出感度を変更することにより、半導体デバイスには反映されない微細なニュイサンスの検出個数を抑制できる。また、検査条件設定部220は、DOIとニュイサンスとを判別する閾値を変更できる。これらにより、欠陥検査装置1は、ユーザの目的に合わせたニュイサンスをより高い確度で検出でき、ニュイサンスと判別される欠陥の個数を低減できる。
【0046】
検査条件設定部220が設定した検査条件(光学系条件及び欠陥検出条件)及び外部から入力された検査指標等は、記憶部210に記憶される。
【0047】
照明条件設定部230は、検査条件設定部220において設定された検査条件に基づいて、照明光源111及び照明光調整部118を制御する。例えば、照明条件設定部230は、照明光調整部118を制御して、透過照明光学系または反射照明光学系のいずれか、またはその両方を選択する。照明条件設定部230は、照明光を調整することにより、マスク上のパターンの種類やサイズの違いに応じて特性の変化する光学画像が取得できる。
【0048】
結像条件設定部240は、検査条件設定部220において設定された検査条件に基づいて、結像光調整部123を制御する。例えば、結像条件設定部240は、結像光調整部123を制御して、透過光または反射光のいずれか、またはその両方を選択する。また、結像条件設定部240は、照明光調整部118を制御して、撮像領域の空間周波数を調整(抑制)できる。例えば、装置制御部200は、DOIとニュイサンスとを分離しやすくするために、空間周波数を抑制し得る。
【0049】
参照画像生成部250は、例えば、記憶部210に格納されているマスクデータに基づいて参照画像を生成する。参照画像生成部250は、生成した参照画像を比較部270に送信する。なお、参照画像生成部250は、マスク上に形成された同一パターンからなる複数の領域の光学画像の1つを参照画像としてもよいし、他のマスクの同一パターンの光学画像を参照画像としてもよい。
【0050】
画像データ入力部260は、受光センサ124から複数の光学系条件を用いた複数の光学画像データを受信する。画像データ入力部260は、受信した光学画像データを比較部270に送信する。
【0051】
比較部270は、光学画像と、参照画像とを、適切なアルゴリズムを用いて比較する。比較して得られた信号(欠陥検出信号)は、検査条件設定部220において設定された欠陥検出条件に基づいて判定される。検査結果(検査データ)は、記憶部210に保存される。なお、欠陥検査装置1が表示部を有している場合、表示部に検査結果が表示されてもよい。
【0052】
2.欠陥検査装置におけるマスク欠陥検査の流れ
次に、欠陥検査装置1におけるマスクの欠陥検査の流れの一例について、
図2を用いて説明する。
図2は、欠陥検査装置1におけるマスクの欠陥検査のフローチャートである。以下では、D-DB方式について説明する。なお、検査方式は、D-D方式であってもよい。
【0053】
図2に示すように、まず、検査対象のマスクデータを取得する(ステップS101)。取得したマスクデータは、記憶部210に格納される。
【0054】
参照画像生成部250は、マスクデータに基づいて、参照画像を生成する(ステップS102)。参照画像生成部250は、作成した参照画像を、記憶部210または比較部270に送信する。なお、D-D方式の場合、参照画像生成部250は、同一パターンの光学画像を参照画像とする。
【0055】
検査条件設定部220は、例えばマスクデータに基づいて、画像取得機構10における光学系条件を設定する(ステップS103)。このとき、検査条件設定部220は、光学画像の取得条件として、複数の光学系条件を設定してもよい。
【0056】
画像取得機構10は、設定された1つまたは複数の光学系条件に基づいて光学画像を取得する(ステップS104)。より具体的には、ステージ101上にマスク30が載置される。照明条件設定部230は、照明光源111からDUV光を射出させる。また、照明条件設定部230は、検査条件設定部220が設定した光学系条件に基づいて、照射光の光路を調整し、照明光調整部118を制御する。結像条件設定部240は、検査条件設定部220が設定した光学系条件に基づいて、結像光調整部123を制御する。この状態において、ステージ101が移動することによって、光学系を介して照明光がマスク上を走査する。マスクを透過または反射した照明光は、受光センサ124上に結像する。受光センサ124は、取得した画像データを画像データ入力部260に送信する。これにより、複数の光学画像が連続的に取得される。なお、参照画像作成と光学画像取得との順序は入れ替えてもよいし、同時に実行されてもよい。
【0057】
光学画像の取得が終了すると、検査条件設定部220は、例えば、マスクデータ(参照画像)及び取得した光学画像に基づいて、コンテキスト・ベース機能を用いた欠陥検出条件を設定する(ステップS105)。
【0058】
記憶部210に検査指標が保存されている場合(ステップS106_Yes)、検査条件設定部220は、検査指標に基づいて、欠陥検出条件の設定(変更)を行う(ステップS107)。
【0059】
検査指標が無い場合(ステップS106_No)または検査指標に基づく欠陥検出条件の設定終了後、比較部270は、参照画像と取得した光学画像とを比較する(ステップS108)。比較部270は、欠陥検出条件に基づいて、比較して得られた光学画像と参照画像との差異を示す信号が欠陥であるか否かを判定する。そして、比較部270は、検出した欠陥のグループ化を行い、欠陥がDOIであるかニュイサンスであるかを判別する。そして、比較部270は、欠陥の情報(座標、サイズ、形状、及びDOIとニュイサンスとの区別等)、並びに欠陥判定の根拠となった光学画像及び参照画像を、検査結果として、記憶部210に保存する。なお、記憶部210に保存された結果は、図示せぬ表示部に表示されてもよく、図示せぬ入出力回路を介して外部デバイス(例えば、レビュー装置)に出力されてもよい。
【0060】
なお、本例では、検査条件設定部220は、コンテキスト・ベース機能を用いて欠陥検出条件を一旦設定してから、検査指標に基づいて欠陥検出条件を変更する場合について説明したが、コンテキスト・ベース機能を用いて欠陥検出条件を設定する工程を省略してもよい。すなわち、検査条件設定部220は、検査指標に基づいて欠陥検出条件を直接設定してもよい。
【0061】
3.マスク設計からデバイス製造までの流れ
次に、1つのマスクに着目したマスク設計からデバイス製造までの流れの一例について、
図3を用いて説明する。
図3は、マスク設計からデバイス製造までの流れを示すフローチャートである。以下の説明では、マスク設計から半導体デバイスの製造までを行うデバイスメーカーを、「IDM((Integrated Device Manufacturer)」と表記する。マスク設計を行い、マスク及び半導体デバイスの製造を自社で行わないデバイスメーカーを「ファブレス」と表記する。IDMとファブレスとを区別しない場合は、単に「デバイスメーカー」と表記する。また、マスク製造会社を、「マスクハウス」と表記する。例えば、IDMにおいても、半導体デバイスの開発コスト及び製造コスト等の上昇により、マスク製造をマスクハウスに発注する場合がある。更に、IDMまたはファブレスから半導体デバイスの製造を委託されたデバイス製造会社(工場)を「ウェハファブ」と表記する。例えば、IDMにおいても、自社の製造ラインの生産能力に応じて、製造の一部をウェハファブに発注する場合がある。
【0062】
図3に示すように、まず、デバイスメーカー(IDM及びファブレス)において、半導体デバイスの回路パターンのレイアウト設計を行う(ステップS11)。
【0063】
次に、レイアウト設計された回路データに対して、例えば、OPC(Optical Proximity Correction)またはILT(Inverse Lithography Technology)といった解像度向上手法を用いたマスクデータ補正(ステップS12)を実行し、マスクデータを作成する。
【0064】
マスクハウスがデバイスメーカーからマスクの製造を受注している場合、デバイスメーカーからマスクハウスにマスクデータが提供される。
【0065】
マスクハウスにおいて、マスク描画装置を用いて、入手したマスクデータに基づいて、ブランクマスク上にマスクパターンを作成(描画)する(ステップS13)。
【0066】
次に、製造したマスクの品質保証検査が行われる(ステップS14)。より具体的には、マスクパターンの寸法測定及び座標測定、並びにマスクの欠陥検査等を実行する。このとき、例えば、マスクハウスは、出荷する製品(マスク)の品質保証の観点から、製品ランクに応じた品質保証検査(マスクの欠陥検査)の規格を設ける。品質保証検査を合格したマスクには、ペリクルが貼り付けられる。そして、ペリクルを張り付けられたマスクが、検査結果を記載した検査表とともにIDMまたはウェハファブに出荷される。
【0067】
マスクを納品されたIDMの製造部門またはウェハファブにおいて、半導体デバイスを製造する(以下、「前工程」とも表記する)。このとき、リソグラフィ工程においてマスクの受入検査または品質管理検査(「受入/品質管理検査」と表記する)を実行する(ステップS20)。
【0068】
より具体的には、マスクハウスから納品されたマスクに対しては、マスクの欠陥検査を含む受入検査を実行する。
【0069】
マスクは、露光装置において繰り返し使用される間に、露光光の照射及び環境の影響等により、徐々に汚染されることが知られている。また、マスク表面にペリクルが貼り付けられている場合、ペリクルの定期的な貼り換えが行われる。このため、リソグラフィ工程で使用されるマスクに対しては、マスクの品質管理のため、定期的にマスクの欠陥検査を含む品質管理検査を実行する。
【0070】
受入/品質管理検査を合格したマスクは、露光装置において、露光に用いられる(ステップS21)。
【0071】
露光後あるいは回路パターンの加工後に、ウェハの欠陥検査(ステップS22)を実行する。このとき、少なくとも一部のウェハ(またはチップ)について、欠陥のレビューを実行する。
【0072】
前工程が終了すると、後工程(「組み立て工程」とも呼ばれる)において、例えば、特性検査を合格したチップが組み立てられる。その後、出荷検査を合格した製品が出荷される。
【0073】
4.マスクの欠陥検査の具体例
次に、マスクの欠陥検査の具体例について説明する。マスクの欠陥検査は、実行するユーザにより、その目的が異なる。例えば、マスクハウスでは、出荷のためのマスクの品質保証が検査の目的となり得る。また、ウェハファブでは、マスクを透過する露光光の透過率変化や、マスクへの異物の付着の確認が検査の目的となり得る。例えば、検査により検出される様々な種類の欠陥の対処方法は、ウェハファブの技術レベルによって異なる。また、IDMでは、半導体デバイスの歩留まり向上の目的から、マスク設計へのフィードバックが検査の目的となり得る。
【0074】
このため、ユーザにより、検査指標の作成手順が異なる。以下では、マスクハウス、ウェハファブ、及びIDMにおけるマスクの欠陥検査方法について、それぞれ説明する。
【0075】
4.1 マスクハウスにおけるマスクの欠陥検査方法
まず、マスクハウスにおけるマスクの欠陥検査方法の一例について、
図4及び
図5を用いて説明する。
図4は、マスクハウスにて実行されるマスクの欠陥検査のフローチャートである。
図5は、マスクハウスがマスクの欠陥検査を実行する場合の情報(データ)の流れを示す図である。以下では、半導体デバイスの製造に用いられるマスクを「製品マスク」と表記する。また、欠陥検査装置1における欠陥の検出感度の確認、すなわち、欠陥検査装置1の性能保証に用いられる、様々な欠陥が作りこまれているテストパターンからなるマスクを「品質保証マスク」と表記する。
【0076】
図4及び
図5に示すように、まず、IDMまたはファブレスにおいて、回路パターンのレイアウト設計を行う(ステップS31)。
【0077】
IDMの設計部門またはファブレスは、IDMの製造部門またはウェハファブから露光装置の性能情報(「露光性能の情報」と表記する)、並びにウェハの欠陥検査、レビュー、及び歩留まりの情報を含む製造ラインのデバイス製造性能の情報を入手する。そして、露光性能の情報及びデバイス製造性能の情報に基づいて、目標とするコストで予め設定された性能(すなわち、歩留まり)を実現できるように、使用する製造ラインのデバイス製造性能に合わせて、レイアウト設計後の回路データを補正し(ステップS32)、マスクデータを作成する。
【0078】
マスクハウスは、マスク発注元のIDMまたはファブレスからマスクデータを入手する。
【0079】
欠陥検査装置1は、入手したマスクデータに対応するテストパターンを有する品質保証マスクを用いたマスクの欠陥検査を実行する(ステップS33)。このとき、検査条件設定部220は、コンテキスト・ベース機能を用いて、欠陥検出条件を設定する。
【0080】
次に、例えば、欠陥検査装置のレビュー機能、SEM、または露光波長光源を使用したパターンの転写性評価装置等を用いて、検出された欠陥を、DOIとニュイサンスとに判別する。そして、コンテキスト・ベースの欠陥検出条件を用いた品質保証マスクの欠陥検査の結果と、DOIとニュイサンスとの判別結果から、コンテキスト・ベースの機能に基づいた欠陥検出条件におけるDOI及びニュイサンスの検出感度を示す感度情報を作成する(ステップS34)。なお、感度情報には、コンテキスト・ベースにおける各種パラメータ情報及びマスク描画装置の描画性能の情報が含まれていてもよい。マスクハウスは、マスク発注元のIDMまたはファブレスに、作成した感度情報を提示する。換言すれば、マスクハウスは、マスク発注元に、品質保証マスクを用いて保証できる欠陥検査装置1の検出値を提示する。
【0081】
マスク発注元のIDMまたはファブレスにおいて、マスクデータと感度情報とに基づいて、歩留まりを予測する(ステップS35)。より具体的には、例えば、マスクデータを用いて製品マスクを作成した場合に、欠陥検査装置1によるマスクの品質保証(マスクの欠陥検査)に基づいて、マスクデータの補正の効果が目標どおりに得られ、且つ製品マスクを用いた半導体デバイスの製造において目標とする歩留まりが得られるか否かを確認(予測)できることを、シミュレーション等を用いて確認する。なお、シミュレーションには、露光性能の情報及びデバイス製造性能の情報も用いられ得る。
【0082】
次に、歩留まり予測の結果から、欠陥検査装置1の欠陥検出条件を変更するための検査指標を作成する(ステップS36)。より具体的には、欠陥検査装置1の欠陥検出条件が、DOIの検出感度を最大に設定し、且つニュイサンスの検出個数を抑制できる条件となるように、コンテキスト・ベース機能を構成する要素の取捨選択、新たな要素の追加、あるいはニュイサンスの検出感度の変更を指定する検査指標を作成する。なお、例えば、マスクハウスからIDMまたはファブレスに複数の光学系条件に対応する複数の感度情報が提示された場合、検査指標には、最適な光学系条件に関する情報が含まれていてもよい。この場合、欠陥検査装置1の検査条件設定部220は、検査指標に基づいて光学系条件を設定してもよい。IDMまたはファブレスは、マスクハウスに、作成した検査指標を提供する。
【0083】
マスクハウスにおいて、欠陥検査装置1に検査指標を入力する。検査条件設定部220は、入力された検査指標に基づいて、欠陥検出条件を設定(変更)する(ステップS37)。
【0084】
欠陥検査装置1は、検査指標に基づいて設定された欠陥検出条件に基づいて、製品マスクの欠陥検査を実行する(ステップS38)。
【0085】
換言すれば、品質保証マスクの欠陥検査の結果とマスクデータとに基づいて、歩留まり予測を実行する。歩留まり予測の結果に基づいて、検査指標を作成する。そして、検査指標に基づいて、欠陥検査条件を設定し、設定された欠陥検査条件を用いて製品マスクの欠陥検査を実行する。この結果、ニュイサンスの検出個数を抑制したマスクの欠陥検出が実行される。
【0086】
4.2 ウェハファブにおけるマスクの欠陥検査方法
次に、ウェハファブにおけるマスクの欠陥検査方法の一例について、
図6及び
図7を用いて説明する。
図6は、ウェハファブにおいて実行する受入/品質管理検査におけるマスクの欠陥検査のフローチャートである。
図7は、ウェハファブがマスクの欠陥検査を実行する場合の情報(データ)の流れを示す図である。
【0087】
図6及び
図7に示すように、ウェハファブにおいて、検査対象ではない製品マスクを用いて、コンテキスト・ベース機能に基づく欠陥検出条件を用いたマスクの欠陥検査を実行する。そして、マスクの欠陥検査の結果と、当該製品マスクを用いた半導体デバイスのデバイス製造性能(ウェハの欠陥検査及びレビューの結果、並びに歩留まり情報等)とを比較し、検査指標を作成する(ステップS41)。より具体的には、欠陥検査装置1の欠陥検出条件において、DOIの検出感度を最大にし、且つニュイサンスの検出個数を抑制できる条件となるように、コンテキスト・ベース機能を構成する要素の取捨選択、新たな要素の追加、あるいはニュイサンスの検出感度の変更を指定する検査指標を作成する。例えば、ウェハファブでは、検査する欠陥の種類(例えば、パーティクル)に着目し、その検出感度を最大に設定し且つニュイサンスの検出個数を抑制できるように、検査指標を作成してもよい。
【0088】
欠陥検査装置1に検査指標を入力する。検査条件設定部220は、入力された検査指標に基づいて、欠陥検出条件を設定(変更)する(ステップS42)。
【0089】
欠陥検査装置1は、設定された欠陥検出条件に基づいて、品質保証マスクの欠陥検査を実行する(ステップS43)。
【0090】
品質保証マスクの欠陥検査の結果に基づいて、シミュレーション等により歩留まりを予測する(ステップS44)。なお、シミュレーションには、コンテキスト・ベースに基づく欠陥検出条件及びデバイス製造性能の情報も用いられ得る。また、歩留まり予測の結果、目標とする歩留まりが得られなかった場合、検査指標を修正してもよい。
【0091】
歩留まり予測の結果、目標とする歩留まりが得られると確認できた場合、欠陥検査装置1は、検査指標に基づいて設定された欠陥検出条件を用いて、マスクハウスから納品された製品マスクの受入検査(マスク欠陥検査)を実行する(ステップS45)。
【0092】
前工程において、受入検査を合格した製品マスクを用いて、露光が実行される(ステップS46)。
【0093】
製品マスクの品質を維持管理するため、欠陥検査装置1では、品質保証マスクを用いた欠陥検出性能の確認が定期的に行われる。品質保証マスクに基づいて欠陥検出性能が管理された欠陥検査装置1を用いて、露光に使用された製品マスクの品質管理検査を実行する(ステップS47)。
【0094】
換言すれば、ウェハファブにおいて、他の製品マスクの欠陥検査の結果とデバイス製造性能(ウェハの欠陥検査及びレビューの結果、並びに歩留まり情報等)とに基づいて、検査指標を作成する。検査指標に基づいて欠陥検査条件を設定し、設定された欠陥検査条件を用いて品質保証マスクの欠陥検査を実行する。そして、品質保証マスクの欠陥検査の結果に基づいて、歩留まりを予測する。そして、歩留まり遅く目標の歩留まりが得られる場合、マスクの欠陥検査を実行される。この結果、ニュイサンスの検出個数を抑制したマスクの欠陥検出が実行される。
【0095】
4.3 IDMにおけるマスクの欠陥検査方法
次に、IDMにおけるマスクの欠陥検査方法の一例について、
図8及び
図9を用いて説明する。
図8は、IDMにおいて実行するマスクの欠陥検査のフローチャートである。
図9は、IDMがマスクの欠陥検査を実行する場合の情報(データ)の流れを示す図である。なお、
図8及び
図9の例は、IDMが、マスク及び半導体デバイスを製造する場合を示している。
【0096】
図8及び
図9に示すように、まず、回路パターンのレイアウト設計を行う(ステップS51)。
【0097】
次に、マスク描画装置の描画性能の情報、露光性能の情報、及びデバイス製造性能の情報に基づいて、目標とするコストで予め設定された性能を実現できるように、使用する製造ライン(装置)のデバイス製造性能に合わせて、レイアウト設計した回路データを補正し(ステップS52)、マスクデータを作成する。
【0098】
欠陥検査装置1は、マスクデータに対応するテストパターンを有する品質保証マスクを用いたマスクの欠陥検査を実行する(ステップS53)。このとき、検査条件設定部220は、コンテキスト・ベース機能を用いて、欠陥検出条件を設定する。
【0099】
次に、例えば、欠陥検査装置のレビュー機能、SEM、または露光波長光源を使用したパターンの転写性評価装置等を用いて、検出された欠陥を、DOIとニュイサンスとに判別する。そして、品質保証マスクの欠陥検査の結果と、DOIとニュイサンスとの判別結果から、コンテキスト・ベースの機能に基づいた欠陥検出条件におけるDOI及びニュイサンスの検出感度を示す感度情報を作成する(ステップS54)。なお、感度情報には、コンテキスト・ベースにおける各種パラメータ情報及び描画装置の描画性能の情報が含まれていてもよい。
【0100】
次に、マスクデータと感度情報とに基づいて、歩留まりを予測する(ステップS55)。マスクデータを用いて製品マスクを作成した場合に、欠陥検査装置1によるマスクの品質保証(マスクの欠陥検査)に基づいて、マスクデータの補正の効果が目標どおりに得られ、且つ製品マスクを用いた半導体デバイスの製造において目標とする歩留まりが得られるか否かを確認できることを、シミュレーション等を用いて確認する。なお、シミュレーションには、露光性能の情報及びデバイス製造性能の情報も用いられ得る。
【0101】
次に、歩留まり予測の結果から、欠陥検査装置1の欠陥検出条件を変更するための検査指標を作成する(ステップS56)。より具体的には、欠陥検査装置1の欠陥検出条件が、DOIの検出感度を最大にし、且つニュイサンスの検出個数を抑制できる条件となるように、コンテキスト・ベース機能を構成する要素の取捨選択、新たな要素の追加、あるいはニュイサンスの検出感度の変更を指定する検査指標を作成する。例えば、IDMでは、マスク設計にILT技術を適用した際に生じる可能性のある欠陥(微小パターン)の検出感度を最大に設定し且つニュイサンスの検出個数を抑制できるように、検査指標を作成してもよい。
【0102】
次に、欠陥検査装置1に検査指標を入力する。検査条件設定部220は、入力された検査指標に基づいて、欠陥検出条件を設定(変更)する(ステップS57)。
【0103】
欠陥検査装置1は、検査指標に基づいて設定された欠陥検出条件に基づいて、製品マスクの欠陥検査を実行する(ステップS58)。
【0104】
換言すれば、IDMにおいて、品質保証マスクの欠陥検査の結果とマスクデータとに基づいて、歩留まりを予測する。歩留まり予測の結果に基づいて、検査指標を作成する。そして、検査指標に基づいて、欠陥検査条件を設定し、設定された欠陥検査条件を用いて製品マスクの欠陥検査を実行する。この結果、ニュイサンスの検出個数を抑制したマスクの欠陥検出が実行される。
【0105】
5.本実施形態に係る効果
例えば、マスクの欠陥検査の後にレビューを実施する場合、マスクの欠陥検査においてニュイサンスと判定された欠陥の個数が多くなると、レビューの負荷が増大する。このため、例えば、欠陥検査装置において、欠陥の検出感度を低下させて、検出される欠陥の個数を減少させる場合がある。しかし、欠陥の検出感度を低下させるとDOIの検出感度も低下し、製品の歩留まりが低下する可能性がある。
【0106】
これに対し、本実施形態に係る構成であれば、検査対象と異なるマスクによるウェハの欠陥結果の結果に基づく検査指標を作成できる。そして、検査指標に基づいて欠陥検査条件を設定し、マスクの欠陥検査を実行できる。このため、欠陥検査装置1における欠陥検出条件にユーザが求めるDOIとニュイサンスとの判別基準を反映させることができる。これにより、DOIの検出感度を最大にしつつ、ニュイサンスの検出個数を抑制できる。従って、欠陥検査装置において、DOIに対するニュイサンスの比率を低減できる欠陥検出条件を設定できる。
【0107】
6.変形例等
上記実施形態では、D-DB方式について説明したが、これに限定されない。例えば、D-D方式においても本実施形態を提要できる。
【0108】
更に、上記実施形態は、試料がマスクである場合について説明したが、試料が半導体基板であってもよい。
【0109】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0110】
1…欠陥検査装置、10…画像取得機構、20…制御機構、30…マスク、101…ステージ、111…照明光源、112…ハーフミラー、113~115、117…ミラー、116、119、121…レンズ、118…照明光調整部、118r、118t、123r、123t…光学フィルタ、120…ビームスプリッタ、122…アパーチャ、122r、122t…開口部、123…結像光調整部、124…受光センサ、124r、124t…フォトダイオードアレイ、200…装置制御部、210…記憶部、220…検査条件設定部、230…照明条件設定部、240…結像条件設定部、250…参照画像生成部、260…画像データ入力部、270…比較部