(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法、基板処理方法、プログラム、及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/318 20060101AFI20240227BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
H01L21/318 A
H01L21/31 C
(21)【出願番号】P 2021159797
(22)【出願日】2021-09-29
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坪田 康寿
(72)【発明者】
【氏名】中谷 公彦
(72)【発明者】
【氏名】山角 宥貴
【審査官】船越 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/264170(WO,A1)
【文献】特開2017-069254(JP,A)
【文献】特開2006-303063(JP,A)
【文献】特開2017-222928(JP,A)
【文献】特表2020-515082(JP,A)
【文献】特開2021-027067(JP,A)
【文献】国際公開第2019/229785(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
H01L 21/31
H01L 21/312-21/32
H01L 21/365
H01L 21/469-21/475
H01L 21/86
C23C 16/00-16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に窒素含有膜及び酸素含有膜を有する基板に対して、窒素を含有する活性種及び水素を含有する活性種を供給することにより、
前記窒素含有膜を、前記窒素含有膜の表面の窒素濃度を第1の増加量で増加させるように改質させるとともに、前記酸素含有膜を、前記酸素含有膜の表面の窒素濃度を、前記第1の増加量よりも小さい第2の増加量で増加させるか、又は増加させないように改質させる
基板処理方法。
【請求項2】
請求項
1の基板処理方法であって、
前記窒素含有膜の表面には、酸素及び窒素含有層が形成されており、
前記窒素を含有する活性種及び水素を含有する活性種を供給することにより、前記酸素及び窒素含有層を窒化させる。
【請求項3】
表面に窒素含有膜及び酸素含有膜を有する基板に対して、窒素を含有する活性種及び水素を含有する活性種を供給することにより、前記窒素含有膜の表面を窒化させるように改質させ、
更に前記酸素含有膜に含まれる酸素原子と前記水素を含有する活性種とを反応させることにより水酸基ラジカルを生成させ、前記酸素含有膜の表面を水酸基終端させる
基板処理方法。
【請求項4】
請求項
3の基板処理方法であって、
前記窒素含有膜の表面を窒化させるように改質させた後、前記酸素含有膜の表面が水酸基終端された前記基板に対して成膜阻害剤を供給し、前記酸素含有膜の表面へ前記成膜阻害剤を構成する分子の分子構造の少なくとも一部を吸着させて成膜阻害層を形成する工程を有する。
【請求項5】
請求項
1の基板処理方法であって、
前記窒素を含有する活性種及び前記水素を含有する活性種は、窒素及び水素を含有するガスをプラズマ励起させることにより生成させる。
【請求項6】
請求項
5の基板処理方法であって、
前記窒素及び水素を含有するガスは、窒素含有ガスと水素含有ガスとの混合ガス、及び窒素と水素との化学結合(N-H結合)を含有するガスのうち少なくともいずれかである。
【請求項7】
請求項
6の基板処理方法であって、
窒素含有ガスと水素含有ガスとの混合ガスは、窒素ガス(N
2)と水素ガス(H
2)の混合ガスである。
【請求項8】
請求項
7の基板処理方法であって、
窒素含有ガスと水素含有ガスとの混合ガスにおける水素ガス(H
2)の比率は、20%以上60%以下である。
【請求項9】
請求項
6の基板処理方法であって、
前記窒素と水素との化学結合を含有するガスは、アンモニア(NH
3)ガス、ヒドラジン(N
2H
4)ガス、及びジアゼン(N
2H
2)ガスの群から選択される少なくともいずれか一つである。
【請求項10】
(a)表面に窒素含有膜及び酸素含有膜を有する基板を準備する工程と、
(b)
水素及び酸素を含有するガスをプラズマ励起することにより、前記水素及び酸素を含有する活性種を生成し、前記基板に対して、
前記水素を含有する活性種、
前記水素及び
前記酸素を含有する活性種、及び
前記水素及び窒素を含有する活性種の少なくともいずれかの活性種を供給することにより、前記酸素含有膜の表面に水酸基終端を選択的に形成させる工程と、
を有する基板処理方法。
【請求項11】
請求項
10の基板処理方法であって、
(b)では、前記基板に対して、前記酸素含有膜の表面に水酸基終端を選択的に形成する一方、前記窒素含有膜の表面には水酸基終端を形成しない、又は、前記酸素含有膜の表面に形成される水酸基終端の密度よりも小さい密度で水酸基終端を形成させる。
【請求項12】
請求項
10又は
11の基板処理方法であって、
前記水素を含有する活性種は、酸素を含有しない。
【請求項13】
請求項
10の基板処理方法であって、
前記水素及び酸素を含有するガスにおける水素の比率を調整することにより、前記酸素含有膜の表面が酸化される速度に対する前記窒素含有膜の表面が酸化される速度の比率を制御する。
【請求項14】
(a)表面に窒素含有膜及び酸素含有膜を有する基板を準備する工程と、
(b)水素を含有する活性種を前記基板に対して供給することにより、前記窒素含有膜の表面に形成された酸素及び窒素含有層を前記窒素含有膜へと還元させ
、前記基板に対して、前記水素を含有する活性種、前記水素及び酸素を含有する活性種、及び前記水素及び窒素を含有する活性種の少なくともいずれかの活性種を供給することにより、前記酸素含有膜の表面に水酸基終端を選択的に形成させる工程と、
を有する基板処理方法。
【請求項15】
請求項
10又は14の基板処理方法であって、
(c)(b)の後、前記酸素含有膜の表面が水酸基終端された前記基板に対して成膜阻害剤を供給し、前記酸素含有膜の表面へ前記成膜阻害剤を構成する分子の分子構造の少なくとも一部を吸着させて成膜阻害層を形成する工程を有する。
【請求項16】
表面に窒素含有膜及び酸素含有膜を有する基板に対して、窒素を含有する活性種及び水素を含有する活性種を供給することにより、
前記窒素含有膜を、前記窒素含有膜の表面の窒素濃度を第1の増加量で増加させるように改質させるとともに、前記酸素含有膜を、前記酸素含有膜の表面の窒素濃度を、前記第1の増加量よりも小さい第2の増加量で増加させるか、又は増加させないように改質させる
半導体装置の製造方法。
【請求項17】
基板処理装置の処理室に、表面に窒素含有膜及び酸素含有膜を有する基板を導入する手順と、
前記処理室内の前記基板に
対して活性化された窒素を含有する活性種を供給する手順と、
前記処理室内の前記基板に
対して活性化された水素を含有する活性種を供給する手順と、
前記処理室内において、前記基板に対して、前記窒素を含有する活性種及び前記水素を含有する活性種を供給するとき、
前記窒素含有膜を、前記窒素含有膜の表面の窒素濃度を第1の増加量で増加させるように改質させるとともに、前記酸素含有膜を、前記酸素含有膜の表面の窒素濃度を、前記第1の増加量よりも小さい第2の増加量で増加させるか、又は増加させないように改質させるように、前記窒素を含有する活性種を供給する手順及び前記水素を含有する活性種を供給する手順を制御する手順と、
をコンピュータによって前記基板処理装置に実行させる
プログラム。
【請求項18】
基板を処理する処理室と、
前記処理室内の前記基板に
対して活性化された窒素を含有する活性種を供給する窒素含有ガス供給系と、
前記処理室内の前記基板に
対して活性化された水素を含有する活性種を供給する水素含有ガス供給系と、
前記処理室内において、表面に窒素含有膜及び酸素含有膜を有する基板に対して、前記窒素を含有する活性種及び前記水素を含有する活性種を供給することにより、
前記窒素含有膜を、前記窒素含有膜の表面の窒素濃度を第1の増加量で増加させるように改質させるとともに、前記酸素含有膜を、前記酸素含有膜の表面の窒素濃度を、前記第1の増加量よりも小さい第2の増加量で増加させるか、又は増加させないように改質させるように、前記窒素含有ガス供給系及び前記水素含有ガス供給系を制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項19】
表面に窒素含有膜及び酸素含有膜を有する基板に対して、窒素を含有する活性種及び水素を含有する活性種を供給することにより、前記窒素含有膜の表面を窒化させるように改質させ、
更に前記酸素含有膜に含まれる酸素原子と前記水素を含有する活性種とを反応させることにより水酸基ラジカルを生成させ、前記酸素含有膜の表面を水酸基終端させる
半導体装置の製造方法。
【請求項20】
基板処理装置の処理室に、表面に窒素含有膜及び酸素含有膜を有する基板を導入する手順と、
前記処理室内の前記基板に対して活性化された窒素を含有する活性種を供給する手順と、
前記処理室内の前記基板に対して活性化された水素を含有する活性種を供給する手順と、
前記処理室内において、前記基板に対して、前記窒素を含有する活性種及び前記水素を含有する活性種を供給するとき、表面に窒素含有膜及び酸素含有膜を有する基板に対して、窒素を含有する活性種及び水素を含有する活性種を供給することにより、前記窒素含有膜の表面を窒化させるように改質させ、更に前記酸素含有膜に含まれる酸素原子と前記水素を含有する活性種とを反応させることにより水酸基ラジカルを生成させ、前記酸素含有膜の表面を水酸基終端させるように、前記窒素を含有する活性種を供給する手順及び前記水素を含有する活性種を供給する手順を制御する手順と、
をコンピュータによって前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項21】
基板を処理する処理室と、
前記処理室内の前記基板に対して活性化された窒素を含有する活性種を供給する窒素含有ガス供給系と、
前記処理室内の前記基板に対して活性化された水素を含有する活性種を供給する水素含有ガス供給系と、
前記処理室内において、表面に窒素含有膜及び酸素含有膜を有する基板に対して、前記窒素を含有する活性種及び前記水素を含有する活性種を供給することにより、前記窒素含有膜の表面を窒化させるように改質させ、更に前記酸素含有膜に含まれる酸素原子と前記水素を含有する活性種とを反応させることにより水酸基ラジカルを生成させ、前記酸素含有膜の表面を水酸基終端させるように、前記窒素含有ガス供給系及び前記水素含有ガス供給系を制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置の製造方法、基板処理方法、プログラム、及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に、窒素含有膜及び酸素含有膜がある構造において、表面に存在する自然酸化膜をフッ酸処理によって除去した後、その表面を選択的に改質する技術がある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フッ酸処理を行った後、酸化膜の表面にフッ素が残留することがある。
【0005】
本開示の目的は、フッ素を残留させることなく、窒素含有膜及び酸素含有膜を有する表面を膜の種類毎に選択的に改質させることが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態によれば、表面に窒素含有膜及び酸素含有膜を有する基板に対して、窒素を含有する活性種及び水素を含有する活性種を供給することにより、前記窒素含有膜の表面を窒化させるように改質させる技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、フッ素を残留させることなく、複数の異なる種類の膜の表面を膜の種類毎に選択的に改質させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の第1実施形態に好適に用いられる改質処理装置を示す概略構成図であり、処理炉部分を縦断面図で示す図である。
【
図2】上記改質処理装置におけるプラズマの発生原理を例示する図である。
【
図3】上記改質処理装置のコントローラの概略構成図であり、コントローラの制御系をブロック図で示す図である。
【
図4】上記改質処理装置における改質処理シーケンスを説明するための図であり、
図4(A)はウエハ準備工程を示す図、
図4(B)は表面改質処理工程を示す図、
図4(C)は成膜阻害剤結合処理工程を示す図、
図4(D)は成膜処理工程を示す図、
図4(E)は成膜阻害剤除去処理工程を示す図である。
【
図5】表面改質処理の詳細を示す図であり、
図5(A)はウエハに窒素の活性種及び水素の活性種を供給した状態を示す図、
図5(B)は表面改質処理後の状態を示す図である。
【
図6】表面改質処理の仕組みを説明するための図であり、
図6(A)はウエハに窒素の活性種及び水素の活性種を供給した状態を示す図、
図6(B)はウエハの表面の窒素含有膜から酸素が放出された状態を示す図、
図6(C)は水酸基の活性種がウエハの表面の酸素含有膜に結合する状態を示す図である。
【
図7】表面改質処理の仕組みを説明するための図であり、
図7(A)はウエハの表面の窒素含有膜に水素の活性種を供給した状態を示す図、
図7(B)はウエハの表面の窒素含有膜が水酸基終端された状態を示す図である。
【
図9】表面改質処理の詳細を示す図であり、
図9(A)はウエハに水素の活性種を供給した状態を示す図、
図9(B)は表面改質処理後の状態を示す図である。
【
図10】表面改質処理の仕組みを説明するための図であり、
図10(A)はウエハに水素の活性種を供給した状態を示す図、
図10(B)はウエハの表面の窒素含有膜から酸素が放出された状態を示す図、
図10(C)は水酸基の活性種がウエハの表面の酸素含有膜に結合する状態を示す図である。
【
図11】表面改質処理の詳細を示す図であり、
図11(A)はウエハに水素の活性種及び酸素の活性種を供給した状態を示す図、
図11(B)は表面改質処理後の状態を示す図である。
【
図12】水素及び酸素を含有するガスの供給条件と、水酸基、水素基、酸素基の各活性種の量との関係を示すグラフである。
【
図13】水素及び酸素を含有するガスの供給条件と、水酸基、水素基、酸素基の各活性種の量との関係を示すグラフである。
【
図14】水素及び酸素を含有するガスとして水素含有ガス及び酸素含有ガスを用いた場合の水素の比率と、酸素含有膜の表面が酸化される速度に対する窒素含有膜の表面が酸化される速度の比率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
以下、図面を参照しつつ本開示の第1実施形態について説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、必ずしも一致していない。
【0010】
(1)改質処理装置
図1に示すように、基板処理装置の一形態である改質処理装置100は、基板としてのウエハ200を収容してプラズマ処理する処理炉202を備えている。処理炉202は、処理室201を構成する処理容器203を備えている。処理容器203は、ドーム型の上側容器210と碗型の下側容器211とを備えている。上側容器210が下側容器211の上に被さることにより、処理室201が形成される。
【0011】
下側容器211の下部側壁には、搬入出口(仕切弁)としてのゲートバルブ244が設けられている。ゲートバルブ244を開くことにより、搬入出口245を介して処理室201内外へウエハ200を搬入出することができる。ゲートバルブ244を閉じることにより、処理室201内の気密性を保持することができる。
【0012】
図2に示すように、処理室201は、プラズマ生成空間201aと、プラズマ生成空間201aに連通し、ウエハ200が処理される改質処理空間201bと、を有している。プラズマ生成空間201aの周囲であって処理容器203の外周側には、後述する共振コイル212が設けられている。プラズマ生成空間201aは、プラズマが生成される空間であって、処理室201の内、例えば共振コイル212の下端(
図1における一点鎖線)よりも上方側の空間をいう。一方、改質処理空間201bは、ウエハ200がプラズマで処理される空間であって、共振コイル212の下端よりも下方側の空間をいう。
【0013】
処理室201内の底側中央には、基板載置部としてのサセプタ217が配置されている。サセプタ217の上面には、ウエハ200が載置される基板載置面217dが設けられている。サセプタ217の内部には、加熱機構としてのヒータ217bが埋め込まれている。ヒータ電力調整機構276を介してヒータ217bに電力が供給されることにより、基板載置面217d上に載置されたウエハ200を、例えば25~1000℃の範囲内の所定の温度に加熱することができる。
【0014】
サセプタ217は、下側容器211とは電気的に絶縁されている。サセプタ217の内部にはインピーダンス調整電極217cが装備されている。インピーダンス調整電極217cは、インピーダンス調整部としてのインピーダンス可変機構275を介して接地されている。インピーダンス可変機構275のインピーダンスを所定の範囲内で変化させることによって、インピーダンス調整電極217c及びサセプタ217を介して、プラズマ処理中のウエハ200の電位(バイアス電圧)を制御することが可能となる。
【0015】
サセプタ217の下方には、サセプタ217を昇降させるサセプタ昇降機構268が設けられている。サセプタ217には、貫通孔217aが3つ設けられている。下側容器211の底面には、ウエハ200を支持する支持体としての支持ピン266が、3つの貫通孔217aのそれぞれに対応するように3本設けられている。サセプタ217が下降させられた際、3本の支持ピン266の各先端が、対応する各貫通孔217aを突き抜けて、サセプタ217の基板載置面217dよりも上面側へそれぞれ突出する。これにより、ウエハ200を下方から保持することが可能となる。
【0016】
処理室201の上方、つまり上側容器210の上部には、ガス供給ヘッド236が設けられている。ガス供給ヘッド236は、キャップ状の蓋体233と、ガス導入口234と、バッファ室237と、開口238と、ガス吹出口239と、遮蔽プレート240と、を備え、処理室201内へガスを供給するように構成されている。バッファ室237は、ガス導入口234より導入されるガスを分散する分散空間として機能する。
【0017】
ガス導入口234には、窒素(N)含有ガスを供給するガス供給管232aの下流端、及び、水素(H)含有ガスを供給するガス供給管232bの下流端等が合流するように接続されている。ガス供給管232aには、ガス流の上流側から順に、N含有ガス供給源250a、流量制御装置としてのマスフローコントローラ(MFC)252a、開閉弁としてのバルブ253aが設けられている。ガス供給管232bには、ガス流の上流側から順に、H含有ガス供給源250b、MFC252b、バルブ253bが設けられている。ガス供給管232a,232b等が合流した下流側には、バルブ243a及びガス供給管232が設けられている。バルブ253a,253b,243aを開閉させることで、MFC252a,252bにより流量を調整しつつ、N含有ガス、H含有ガスのそれぞれを処理容器203内へ供給することが可能となる。
【0018】
後述する改質処理工程では、シリコン(Si)基板の表面に窒素含有膜((以降、簡潔にSiN膜と記す)及び酸素含有膜(以降、簡潔にSiO膜と記す)を有するウエハ200に対して処理を行う。ウエハ200の窒素含有膜の表面には、自然酸化膜(SiON膜)が存在すると想定される。
【0019】
主に、ガス供給管232a、バルブ253a、MFC252a、N含有ガス供給源250aにより、N含有ガス供給系が構成される。また、主に、ガス供給管232b、バルブ253b、MFC252b、H含有ガス供給源250bにより、H含有ガス供給系が構成される。
【0020】
また、改質処理装置100は、N含有ガス供給系及びH含有ガス供給系以外にも、改質処理工程で使用する各種のガスを供給するための不図示の複数のガス供給系を備える。各ガス供給系は、N含有ガス供給系及びH含有ガス供給系と同様に、ガス供給管、バルブ、MFC、ガス供給源を備える。
【0021】
なお、ガス供給ヘッド236(蓋体233、ガス導入口234、バッファ室237、開口238、ガス吹出口239、遮蔽プレート240)、ガス供給管232、バルブ243aを、各ガス供給系に含めてもよい。
【0022】
下側容器211の側壁には、処理室201内を排気する排気口235が設けられている。排気口235には、排気管231の上流端が接続されている。排気管231には、上流側から順に、圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ242、バルブ243b、真空排気装置としての真空ポンプ246が設けられている。主に、排気口235、排気管231、APCバルブ242、バルブ243bにより、排気系が構成されている。真空ポンプ246を排気系に含めてもよい。
【0023】
処理室201の外周部、すなわち、上側容器210の側壁の外側には、処理容器203を囲うように螺旋状の共振コイル212が設けられている。共振コイル212には、RF(Radio Frequency)センサ272、高周波電源273及び周波数整合器(周波数制御部)274が接続されている。共振コイル212の外周側には、遮蔽板223が設けられている。
【0024】
高周波電源273は、共振コイル212に対して高周波電力(RF電力)を供給するよう構成されている。RFセンサ272は、高周波電源273から供給される高周波電力の進行波や反射波の情報をモニタするよう構成されている。周波数整合器274は、RFセンサ272でモニタされた反射波の情報に基づいて、反射波が最小となるように、高周波電源273から出力される高周波電力の周波数を整合させるよう構成されている。
【0025】
共振コイル212の両端は、電気的に接地されている。共振コイル212の一端は、可動タップ213を介して接地されている。共振コイル212の他端は、固定グランド214を介して接地されている。共振コイル212のこれら両端の間には、高周波電源273から給電を受ける位置を任意に設定できる可動タップ215が設けられている。
【0026】
主に、共振コイル212、RFセンサ272、周波数整合器274により、プラズマ生成部(プラズマ生成ユニット)が構成されている。高周波電源273や遮蔽板223をプラズマ生成部に含めてもよい。
【0027】
以下、プラズマ生成部の動作や生成されるプラズマの性質について、
図2を用いて補足する。
【0028】
共振コイル212は、高周波誘導結合プラズマ(ICP)電極として機能するよう構成されている。共振コイル212は、所定の波長の定在波を形成し、全波長モードで共振するように、その巻径、巻回ピッチ、巻数等が設定される。例えば、共振コイル212の電気的長さ、すなわち、アース間の電極長は、高周波電源273から供給される高周波電力の波長の整数倍の長さとなるように調整される。
【0029】
周波数整合器274は、反射波電力に関する電圧信号をRFセンサ272から受信し、反射波電力が最小となるように、高周波電源273が出力する高周波電力の周波数(発振周波数)を増加又は減少させるような補正制御を行う。
【0030】
以上の構成により、プラズマ生成空間201a内に励起される誘導プラズマは、処理室201の内壁やサセプタ217等との容量結合が殆どない良質なものとなる。プラズマ生成空間201a中には、電気的ポテンシャルの極めて低い、平面視がドーナツ状のプラズマが生成されることとなる。
【0031】
図3に示すように、制御部としてのコントローラ221は、CPU(Central Processing Unit)221a、RAM(Random Access Memory)221b、記憶装置221c、I/Oポート221dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM221b、記憶装置221c、I/Oポート221dは、内部バス221eを介して、CPU221aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ221には、入出力装置225として、例えばタッチパネル、マウス、キーボード、操作端末等が接続されていてもよい。コントローラ221には、表示部として、例えばディスプレイ等が接続されていてもよい。
【0032】
記憶装置221cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、CD-ROM等で構成されている。記憶装置221c内には、改質処理装置100の動作を制御する制御プログラム、基板処理の手順や条件などが記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ221に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。RAM221bは、CPU221aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0033】
I/Oポート221dは、上述のMFC252a,252b、バルブ253a,253b,243a,243b、ゲートバルブ244、APCバルブ242、真空ポンプ246、ヒータ217b、RFセンサ272、高周波電源273、周波数整合器274、サセプタ昇降機構268、インピーダンス可変機構275等に接続されている。
【0034】
CPU221aは、記憶装置221cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置225からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置221cからプロセスレシピを読み出すように構成されている。
図1に示すように、CPU221aは、読み出したプロセスレシピの内容に沿うように、I/Oポート221d及び信号線Aを通じてAPCバルブ242の開度調整動作、バルブ243bの開閉動作、及び真空ポンプ246の起動及び停止を、信号線Bを通じてサセプタ昇降機構268の昇降動作を、信号線Cを通じてヒータ電力調整機構276による温度センサに基づくヒータ217bへの供給電力量調整動作(温度調整動作)及びインピーダンス可変機構275によるインピーダンス値調整動作を、信号線Dを通じてゲートバルブ244の開閉動作を、信号線Eを通じてRFセンサ272、周波数整合器274及び高周波電源273の動作を、信号線Fを通じてMFC252a,252bによる各種ガスの流量調整動作及びバルブ253a,253b,243aの開閉動作を、それぞれ制御することが可能なように構成されている。
【0035】
(2)基板処理工程
上述の改質処理装置100を用い、半導体装置の製造工程の一工程としての基板処理シーケンス例について説明する。以下の説明において、改質処理装置100を構成する各部の動作はコントローラ221により制御される。
【0036】
本形態の基板処理シーケンスでは、
(a)表面に窒素含有膜及び酸素含有膜を有するウエハ200を準備する工程と、
(b)ウエハ200に対して、窒素を含有する活性種及び水素を含有する活性種を供給することにより、窒素含有膜の表面を窒化させるように改質させる工程と、
を有する。
【0037】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0038】
本実施形態では、一例として
図4に示すように、Si基板の表面にSiN膜及びSiO膜を有するウエハ200に対して、SiN膜上のみに選択的に窒化チタン(TiN)膜を形成する基板処理シーケンスについて説明する。この基板処理シーケンスは、主な工程として、ウエハ準備工程、表面改質処理工程、成膜阻害剤結合処理工程、成膜処理工程、及び、成膜阻害剤除去処理工程を有する。
【0039】
図4(A)に示すように、ウエハ準備工程は、Si基板の表面にSiN膜及びSiO膜を有するウエハ200を準備する工程である。なお、ウエハ200のSiNの表面には、自然酸化膜(SiON膜)が存在すると想定される。
図4(B)に示すように、表面改質処理工程は、上記ウエハ200の表面に形成されているSiNの表面を窒化させるように改質させるとともに、ウエハ200の表面に形成されているSiO膜の表面を水酸基(OH)終端させるように改質させる処理を行う工程である。
図4(C)に示すように、成膜阻害剤結合処理工程は、SiO膜の表面のみに、選択的に成膜阻害剤を結合させる処理を行う工程である。
図4(D)に示すように、成膜処理工程は、SiN膜の表面のみに選択的にTiN膜を形成させる処理を行う工程である。
図4(E)に示すように、成膜阻害剤除去処理工程は、SiO膜の表面の結合している成膜阻害剤を除去させる処理を行う工程である。以下、この基板処理シーケンスについて詳細に説明する。
【0040】
(ウエハ搬入(ウエハ準備))
サセプタ217を所定の搬送位置まで降下させた状態で、ゲートバルブ244を開き、処理対象のウエハ200を、図示しない搬送ロボットにより処理容器203内へ搬入する。処理容器203内へ搬入されたウエハ200は、サセプタ217の基板載置面217dから上方へ突出した3本の支持ピン266上に水平姿勢で支持される。処理容器203内へのウエハ200の搬入が完了した後、処理容器203内から搬送ロボットのアーム部を退去させ、ゲートバルブ244を閉じる。その後、サセプタ217を所定の処理位置まで上昇させ、処理対象のウエハ200を、支持ピン266上からサセプタ217上へと移載させる。
【0041】
(圧力調整、温度調整)
続いて、処理容器203内が所望の処理圧力となるように、真空ポンプ246によって真空排気される。処理容器203内の圧力は圧力センサで測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ242がフィードバック制御される。また、ウエハ200が所望の処理温度となるように、ヒータ217bによって加熱される。処理容器203内が所望の処理圧力となり、また、ウエハ200の温度が所望の処理温度に到達して安定したら、後述する表面改質処理を開始する。
【0042】
(表面改質処理)
改質処理ガスとして、N含有ガス及びH含有ガスを処理容器203内へ供給してプラズマ励起させることにより、Nを含有する活性種としてNの活性種およびNH基の活性種の少なくともいずれかを生成し、Hを含有する活性種としてHの活性種を生成する。
【0043】
具体的には、バルブ253a,253bを開き、MFC252a、252bにより流量調整しながら、ガス導入口234、バッファ室237、ガス吹出口239を介して処理室201内へN含有ガス及びH含有ガスを混合させつつ供給する。このとき、共振コイル212に対して、高周波電源273から高周波電力を供給する。これにより、プラズマ生成空間201a内における共振コイル212の電気的中点に相当する高さ位置に、平面視がドーナツ状である誘導プラズマが励起される。
【0044】
N含有ガスとしては、例えば、窒素(N2)ガスや、アンモニア(NH3)ガス、ジアゼン(N2H2)ガス、ヒドラジン(N2H4)ガス、N3H8ガス等の窒化水素系ガス、等を用いることができる。N含有ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。なお、N含有ガスとして窒化水素系ガスを用いる場合は、H含有ガスとして窒化水素系ガス以外のガスを用いることが好ましい。
【0045】
H含有ガスとしては、例えば、水素(H2)ガス、重水素(D2)ガス、水蒸気(H2Oガス)、上述の窒化水素系ガス等を用いることができる。水素含有ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0046】
混合ガスに含まれるN含有ガス及びH含有ガスは、誘導プラズマの励起等により活性化(励起)されて反応し、処理容器203内においてNを含有する活性種及びHを含有する活性種が生成される。
【0047】
例えばN含有ガスとしてN2ガスを用いる場合、Nの活性種には、励起状態のN原子、励起状態のN2分子、及びイオン化されたN原子のうち、少なくともいずれかが含まれる。なお、以下の説明及び図では、Nの活性種を総称して「N*」と記載する。また、NH基の活性種には、励起状態のNH基が含まれる。Nを含有する活性種としてNの活性種およびNH基の活性種の少なくともいずれかは、後述のように窒化種として作用する。
【0048】
また、例えばH含有ガスとしてH2ガスを用いる場合、Hの活性種には、励起状態のH原子、励起状態のH2分子、及びイオン化されたH原子のうち、少なくともいずれかが含まれる。なお、以下の説明及び図では、Hの活性種を総称して「H*」と記載する。
【0049】
そして、
図5(A)に示すように、生成されたNを含有する活性種及びHを含有する活性種がウエハ200に対して供給される。その結果、
図5(B)に示すように、ウエハ200の表面に形成されているSiN膜の表面が窒化されるように改質されるとともに、ウエハ200の表面に形成されているSiO膜の表面が水酸基(OH)終端されるように改質される。
【0050】
このときの仕組みは、
図6に示す通りである。先ず、
図6(A)に示すように、Si基板の表面にSiN膜及びSiO膜を有するウエハ200にN
*及びH
*が供給されると、N
*が窒化種としてSiN膜の表面の自然酸化膜(SiON膜)を窒化する。次に、
図6(B)に示すように、SiON膜の窒化によりSiON膜から酸素(O)が放出され、放出されたOがH
*と結合し、OHの活性種であるOHラジカル(以下の説明及び図では、OHの活性種を総称して「OH
*」と記載する)が発生する。次に、
図6(C)に示すように、発生したOH
*が、SiO膜の表面に供給され、SiO膜の再酸化及び/又は、SiO膜の表面へのOH終端の形成が行われる。また、上述の仕組みに加えて、または上述の仕組みに替わって、SiO膜の再酸化及び/又はSiO膜の表面へのOH終端の形成が行われることがある。すなわち、ウエハ200にN
*及びH
*が供給されると、N
*が窒化種としてSiO膜の表面を一時的に窒化する。この際、SiO膜からはOが放出(脱離)され、この放出されたOはH
*と結合してOH
*を発生させる。このようにして発生したOH
*は、SiO膜の表面に供給され、SiO膜の再酸化及び/又は、SiO膜の表面へのOH終端の形成が行われる。したがって、SiO膜に対してN
*及びH
*が供給される場合、H
*を非含有とする場合に比べて、SiO膜の窒化が抑制されるとともに、SiO膜の表面へのOH終端の形成が促進される。
【0051】
また、ウエハ200の表面に形成されているSiO膜の表面のOH終端は、上記の仕組み以外に、
図7に示す仕組みによっても起こり得る。
図7(A)に示すように、ウエハ200の表面に形成されているSiO膜にH
*が供給されると、
図7(B)に示すように、H
*の還元作用により、SiO膜の表面のSiO終端部分においてSiとOの結合が切断され、切断されたOとH
*が結合することにより、SiO膜の表面がOH終端される。
【0052】
上記のように、Si基板の表面にSiN膜及びSiO膜を有するウエハ200に対して、N含有ガスとH含有ガスの混合ガスを供給して表面改質処理を行うことにより、一度の工程で、SiN膜の窒化とSiO膜のOH終端とを同時に行うことができる。
【0053】
本工程における処理条件は、下記の条件が例示される。
【0054】
処理圧力は、1~100Pa、より好ましくは20~30Paである。圧力が1Paよりも低いと窒化、還元、OH終端化の生成レートが低下し、実質的なレートが得られない可能性がある。一方、圧力が100Paよりも高いとプラズマが生成されない可能性がある。
【0055】
各ガス供給時間は、1~10分、好ましくは2~3分である。時間が1分よりも短いと、SiN膜の表面のSiON膜の窒化が不完全となる可能性がある。時間が10分よりも長いと、SiO膜が実質的に窒化される可能性がある。
【0056】
処理温度は、室温~700℃、好ましくは200~400℃である。上限としては、OH終端がSiO膜の表面から脱離しない温度とする必要がある。処理温度は、後述の成膜阻害剤との相性に依存するが、低い方が好ましい。しかし、温度が低すぎると窒化速度が低下することがあるため、成膜阻害剤との相性と、窒化速度との関係を考慮して処理温度を選択することが望ましい。また窒化には、プラズマ下ではあるが、室温以上が好ましく、200℃以上であればより安定したプラズマの生成が可能となる。
【0057】
高周波電力は、ウエハ200の表面積に依存し、例示するならば、100~7900W、好ましくは500~2000Wである。
【0058】
N含有ガスとH含有ガスの混合ガスの供給流量は、処理圧力に依存し、例示するならば、0.2~1.0slm、好ましくは0.4~0.6slmである。
【0059】
混合ガスにおけるH含有ガスの濃度は、10~80%、好ましくは20~60%である。混合ガスにN含有ガスだけでなくH含有ガスを添加することにより、ウエハ200の表面のSiN膜だけを窒化し、SiO膜はOH終端することができる。すなわち、H*の供給により、SiO膜の表面が窒化されることを防ぐことが可能となる。なお、本明細書における「1~100Pa」のような数値範囲の表記は、「1Pa以上100Pa以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。
【0060】
上記の通り、表面改質処理を行った後、処理容器203内へのN含有ガス及びH含有ガスの供給を停止するとともに、共振コイル212への高周波電力の供給を停止する。そして、パージガスとしての不活性ガスを処理容器203内へ供給し、排気管231より排気する。これにより、処理容器203内がパージされ、処理容器203内に残留するガスや反応副生成物が処理容器203内から除去される。
【0061】
不活性ガスとしては、例えば、N2ガスや、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いることができる。不活性ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。この点は、後述する各ステップにおいても同様である。
【0062】
(成膜阻害剤結合処理)
表面改質処理が実施されたウエハ200は、
図8に示すように、成膜阻害剤結合処理を実施するために、改質処理装置100から成膜装置300に真空搬送路400を介して真空搬送される。この真空搬送路300を介してウエハ200を搬送するため、ウエハ200の表面は、大気に暴露されることなく、その表面の酸化を防ぐことができる。なお、改質処理装置100、成膜装置300とからなるシステムを基板処理システム500と呼ぶ。
【0063】
成膜装置300の処理容器内に搬送されたウエハ200に対して、成膜阻害剤含有ガスを供給する。ここで、成膜阻害剤含有ガスは、OH基に選択的に結合し、かつ、後述の成膜処理に用いる原料の結合を阻害する物質を含有するガスである。成膜阻害剤含有ガスとしては、例えば、例えば、Siにアミノ基が直接結合した構造を有する化合物や、Siにアミノ基とアルキル基とが直接結合した構造を有する化合物を用いることができる。例えば、(ジメチルアミノ)トリメチルシラン((CH3)2NSi(CH3)3、略称:DMATMS)、(ジエチルアミノ)トリエチルシラン((C2H5)2NSi(C2H5)3、略称:DEATES)、(ジメチルアミノ)トリエチルシラン((CH3)2NSi(C2H5)3、略称:DMATES)、(ジエチルアミノ)トリメチルシラン((C2H5)2NSi(CH3)3、略称:DEATMS)、(ジプロピルアミノ)トリメチルシラン((C3H7)2NSi(CH3)3、略称:DPATMS)、(ジブチルアミノ)トリメチルシラン((C4H9)2NSi(CH3)3、略称:DBATMS)、(トリメチルシリル)アミン((CH3)3SiNH2、略称:TMSA)、(トリエチルシリル)アミン((C2H5)3SiNH2、略称:TESA)、(ジメチルアミノ)シラン((CH3)2NSiH3、略称:DMAS)、(ジエチルアミノ)シラン((C2H5)2NSiH3、略称:DEAS)、(ジプロピルアミノ)シラン((C3H7)2NSiH3、略称:DPAS)、(ジブチルアミノ)シラン((C4H9)2NSiH3、略称:DBAS)等を用いることができる。また、例えば、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン([(CH3)2N]2Si(CH3)2、略称:BDMADMS)、ビス(ジエチルアミノ)ジエチルシラン([(C2H5)2N]2Si(C2H5)2、略称:BDEADES)、ビス(ジメチルアミノ)ジエチルシラン([(CH3)2N]2Si(C2H5)2、略称:BDMADES)、ビス(ジエチルアミノ)ジメチルシラン([(C2H5)2N]2Si(CH3)2、略称:BDEADMS)、ビス(ジメチルアミノ)シラン([(CH3)2N]2SiH2、略称:BDMAS)、ビス(ジエチルアミノ)シラン([(C2H5)2N]2SiH2、略称:BDEAS)、ビス(ジメチルアミノジメチルシリル)エタン([(CH3)2N(CH3)2Si] 2C2H6、略称:BDMADMSE)、ビス(ジプロピルアミノ)シラン([(C3H7)2N]2SiH2、略称:BDPAS)、ビス(ジブチルアミノ)シラン([(C4H9)2N]2SiH2、略称:BDBAS)、ビス(ジプロピルアミノ)ジメチルシラン([(C3H7)2N]2Si(CH3)2、略称:BDPADMS)、ビス(ジプロピルアミノ)ジエチルシラン([(C3H7)2N]2Si(C2H5)2、略称:BDPADES)、(ジメチルシリル)ジアミン((CH3)2Si(NH2)2、略称:DMSDA)、(ジエチルシリル)ジアミン((C2H5)2Si(NH2)2、略称:DESDA)、(ジプロピルシリル)ジアミン((C3H7)2Si(NH2)2、略称:DESDA)、ビス(ジメチルアミノジメチルシリル)メタン([(CH3)2N(CH3)2Si]2CH2、略称:BDMADMSM)、ビス(ジメチルアミノ)テトラメチルジシラン([(CH3)2N]2(CH3)4Si2、略称:BDMATMDS)等を用いることもできる。成膜阻害剤含有ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0064】
具体的には、成膜装置の成膜阻害剤含有ガス供給系のバルブを開き、MFCにより流量調整しながら、処理容器内へ成膜阻害剤含有ガスを供給する。
【0065】
このように、ウエハ200に対して成膜阻害剤含有ガスを供給して、
図4(C)に示すように、ウエハ200の表面のうち、表面がOH終端されたSiO膜上のみに、成膜阻害剤含有ガスに含まれる有機配位子(成膜阻害剤ともいう。成膜阻害剤を構成する分子の分子構造の少なくとも一部であってもよい)をSi層及びSiO
2層の表面に結合させて有機終端させる。このように、SiO膜上に結合された有機配位子からなる成膜阻害層が形成される。
【0066】
その後、処理容器内への成膜阻害剤含有ガスの供給を停止し、パージガスとしての不活性ガスを処理容器内へ供給し、排気する。これにより、処理容器内がパージされ、処理容器内に残留するガスや反応副生成物が処理容器内から除去される。
【0067】
上記の成膜阻害剤結合処理を1回以上(所定回数(n回))行うことにより、ウエハ200の表面のうち、表面がOH終端されたSiO膜上のみに、必要量の成膜阻害剤が結合する。上述の処理は、複数回繰り返すのが好ましい。
【0068】
(成膜処理)
次に、成膜処理の一例として、ウエハ200の表面のうち、SiN膜上のみに選択的に窒化チタン(TiN)膜を形成する場合について説明する。
【0069】
先ず、成膜装置の処理容器内のウエハ200に対して、チタン(Ti)含有ガスを供給する。具体的には、Ti含有ガス供給系のバルブを開き、MFCにより流量調整しながら、処理室内へTi含有ガスを供給する。
【0070】
これにより、ウエハ200に対してTi含有ガスが供給され、ウエハ200の表面のうち、実質的に成膜阻害剤が結合していないSiN膜上のみに、Ti原料が結合しチタン(Ti)含有膜が形成される。Ti含有ガスとしては、例えば、四塩化チタン(TiCl4)ガス、四ヨウ化チタン(TiI4)等のハロゲン化Ti含有ガスや、テトラキスエチルメチルアミノチタニウム(Ti[N(CH3)C2H5]4)、テトラキスジエチルアミノチタニウム(Ti[N(C2H5)2]4)、テトラキスジメチルアミノチタニウム(Ti[N(CH3)2]4)、Ti(O-tBu)4、Ti(MMP)4、トリスジメチルアミノシクロペンタジエニルチタニウム((C5H5)Ti[N(CH3)2]3)等の有機系Ti含有ガス等を用いることができる。Ti含有ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0071】
その後、処理容器内へのTi含有ガスの供給を停止し、パージガスとしての不活性ガスを処理容器内へ供給し、排気する。これにより、処理容器内がパージされ、処理容器内に残留するガスや反応副生成物が処理容器内から除去される。
【0072】
次に、処理容器内のウエハ200に対して、Nを含有する窒化ガスを供給する。具体的には、窒化ガス供給系のバルブを開き、MFCにより流量調整しながら、処理室内へ窒化ガスを供給する。これにより、ウエハ200に対して窒化ガスが供給され、ウエハ200の表面のSiN層上のTi含有膜の少なくとも一部と置換反応する。置換反応の際には、Ti含有膜に含まれるTiと窒化ガスに含まれるNとが結合して、
図4(D)に示すように、ウエハ200上のSiN層上にTiとNとを含むTiN膜が形成される。なお、ウエハ200の表面のうち、成膜阻害剤が結合しているSiO膜上には、実質的にTiN膜が形成されない。
【0073】
窒化ガスとしては、例えば、アンモニア(NH3)ガス、ジアゼン(N2H2)ガス、ヒドラジン(N2H4)ガス、N3H8ガス等の窒化水素系ガス等を用いることができる。窒化ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0074】
その後、処理容器内への窒化ガスの供給を停止し、パージガスとしての不活性ガスを処理容器内へ供給し、排気する。これにより、処理容器内がパージされ、処理容器内に残留するガスや反応副生成物が処理容器内から除去される。
【0075】
上記の成膜処理を1回以上(所定回数(n回))行うことにより、ウエハ200の表面のうち、成膜阻害剤が結合していないSiN膜上のみに、所望の厚さのTiN膜を形成する。上述の処理は、複数回繰り返すのが好ましい。
【0076】
(成膜阻害剤除去処理)
その後、ウエハ200に対して熱処理等の処理を実施する。これにより、表面に残存する成膜阻害剤の少なくとも一部を脱離および/または無効化させることができる。なお、成膜阻害剤の無効化とは、成膜阻害剤を構成する分子の分子構造や原子の配列構造等を変化させ、膜表面への成膜剤の吸着や、膜表面と成膜剤との反応を可能とすることを意味する。
【0077】
これにより、
図4(E)に示すように、ウエハ200の表面のうち、SiO膜上のみに結合された成膜阻害剤を除去することができる。
【0078】
(アフターパージ及び大気圧復帰)
その後、処理容器203内の雰囲気が不活性ガスに置換され、処理容器内の圧力が常圧に復帰される。
【0079】
(ウエハ搬出)
続いて、ウエハ200を、適宜処理容器外へ搬出する。以上により、本形態に係る基板処理工程を終了する。上述した成膜阻害剤結合処理(改質)ステップ、成膜処理ステップ、成膜阻害剤除去処理(熱処理)ステップは、同一処理室内にて(in-situにて)行うことが好ましい。これにより、ウエハ200を大気に曝すことなく、すなわち、ウエハ200の表面を清浄な状態に保持したまま、改質ステップ、成膜処理ステップ、熱処理ステップを行うことができ、選択成長を適正に行うことが可能となる。すなわち、これらのステップを、同一処理室内にて行うことで、高い選択性をもって選択成長を行うことが可能となる。さらに、上記実施の形態では、表面改質処理は改質処理装置100を用いて実施されたが、この処理を成膜装置300内で実施してもよい。この方法によれば、表面改質処理ステップ、成膜阻害剤結合処理(改質)ステップ、成膜処理ステップ、および成膜阻害剤除去処理(熱処理)ステップを、同一処理室内にて(in-situにて)実施することが可能となる。
【0080】
(3)本形態による効果
上述の様に、第1実施形態では、Si基板の表面にSiN膜及びSiO膜を有するウエハ200に対して、N含有ガスとH含有ガスの混合ガスを供給して表面改質処理を行うことにより、一度の工程で、SiN膜の表面の窒化とSiO膜のOH終端とを同時に行うことができる。また、表面改質処理において、従来のフッ化水素酸(HF)を用いたウエットエッチング処理(DHF(Dilute HF)処理)のようにフッ素を用いないため、フッ素を残留させることなく、膜の表面を改質させることが可能となる。
【0081】
なお、本実施形態において、SiN膜の表面の窒化とは、SiN膜を、SiN膜の表面の窒素濃度を第1の増加量で増加させるように改質させるとともに、SiO膜を、SiO膜の表面の窒素濃度を、前記第1の増加量よりも小さい第2の増加量で増加させるか、又は増加させないように改質させることと同義である。
【0082】
本実施形態において、SiN膜の表面に、酸素及び窒素含有層(SiON膜)が形成されている場合には、SiON膜を窒化させることができる。
【0083】
また、表面改質処理では、SiO膜に含まれるO原子とHを含有する活性種とを反応させることによりOHラジカルを生成させ、SiO膜の表面をOH終端させることにより、表面改質処理の後の成膜阻害剤結合処理において、SiO膜の表面のみに選択的に成膜阻害剤を結合させることが可能となる。
【0084】
また、表面改質処理の後に、成膜阻害剤結合処理を行うことにより、SiO膜上を除いて、SiN膜上に選択的に成膜することが可能となる。
【0085】
また、表面改質処理において供給されるNを含有する活性種及びHを含有する活性種は、N及びHを含有するガスをプラズマ励起させることにより生成させるようにすることにより、上記実施形態で説明したようなプラズマ処理が可能な改質処理装置100において、容易に実現することが可能となる。
【0086】
また、表面改質処理において供給されるN及びHを含有するガスは、N含有ガスとH含有ガスとの混合ガス、及びNとHとの化学結合(N-H結合)を含有するガスのうち少なくともいずれかとしても、上述の基板処理シーケンスと同様の効果が得られる。
【0087】
また、N含有ガスとH含有ガスとの混合ガスにおけるHの比率(すなわち、混合ガス中におけるNとHの原子数の合計に対するHの原子数の比率)は、10%以上80%以下、より好ましくは20%以上60%以下とすることが好ましい。Hの比率が10%を下回ると、ウエハ200の表面のSiO膜の表面におけるOH終端の程度が低下してしまう。また、Hの比率が80%を上回ると、ウエハ200の表面のSiN膜の表面における窒化の程度が低下してしまう。そのため、Hの比率を10%以上80%以下とすることにより、ウエハ200の表面のSiN膜の窒化と、SiO膜のOH終端を両立させることができる。Hの比率を20%以上60%以下とすると、よりその両立を良好なものとすることができる。
【0088】
なお、このような特性を利用し、ウエハ200に対して供給する混合ガスにおけるN含有ガスとH含有ガスの比率を調整することにより、所望の程度で、SiO膜の表面を窒化させるように改質させ、かつSiO膜の表面をOH終端させるようにしてもよい。
【0089】
また、NとHとの化学結合を含有するガスは、例えば、アンモニア(NH3)ガス、ヒドラジン(N2H4)ガス、及びジアゼン(N2H2)ガス等の窒化水素系ガスのうち少なくともいずれかとしても、上述の基板処理シーケンスと同様の効果が得られる。但し、混合ガス中に含まれるNとHの比率を調整可能という点においては、N含有ガスとH含有ガスの混合ガスを用いることがより好ましい。
【0090】
また、表面にSiO膜を有するウエハ200に対して、Nを含有する活性種及びHを含有する活性種のいずれかの活性種を供給することにより、SiO膜の表面にOH終端を形成させる工程と、OH終端に成膜阻害層を形成させる工程とを設けることにより、成膜阻害剤結合処理の後の成膜処理において、SiN膜の表面のみに選択的に所望の膜を形成させることが可能となる。
【0091】
また、表面にSiON膜が存在するSiN膜を有するウエハ200に対して、Nを含有する活性種及びHを含有する活性種を供給することにより、SiN膜上のSiON膜を窒化膜に改質させる工程と、改質されたSiN膜の表面に、膜を形成させる工程とを設けることにより、SiN膜の表面のみに選択的に所望の膜を形成させることが可能となる。
【0092】
また、表面に第1膜(SiO膜)及び第2膜(SiN膜)を有するウエハ200の第1膜の表面に成膜阻害層を設けることにより、成膜阻害層が設けられていない第2膜の表面に成膜する場合において、ウエハ200に対して、Nを含有する活性種及びHを含有する活性種を供給することにより、第2膜の表面の窒素濃度が増加するように改質させるとともに、第1膜にOH基を形成させる工程と、OH基に成膜阻害剤を構成する分子の分子構造の少なくとも一部を吸着させて成膜阻害層を形成させる工程とを設けることにより、成膜阻害剤結合処理の後の成膜処理において、SiN膜の表面のみに選択的に所望の膜を形成させることが可能となる。
【0093】
<第2実施形態>
第1実施形態では、基板処理シーケンスにおける表面改質処理において、改質処理ガスとしてNを含有する活性種及びHを含有する活性種を供給する形態について説明した。本実施の形態では、改質処理ガスとしてHを含有する活性種のみを供給する形態について説明する。
【0094】
なお、本実施形態おける改質処理装置100のハードウェア構成は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0095】
(1)基板処理工程
本実施形態の基板処理シーケンスにおける表面改質処理以外の処理は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0096】
(表面改質処理)
本実施形態の表面改質処理では、改質処理ガスとして、N及びOを非含有とする、または本質的に非含有とするH含有ガス(以下、単に「N及びO非含有であるH含有ガス」と称する)を処理容器203内へ供給してプラズマ励起させることにより、Hを含有する活性種としてH*を生成する。本実施形態におけるN及びO非含有であるH含有ガスとしては、例えば、H2ガスやD2ガス等を用いることができる。H含有ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0097】
具体的には、バルブ253bを開き、MFC252bにより流量調整しながら、ガス導入口234、バッファ室237、ガス吹出口239を介して処理室201内へN及びO非含有であるH含有ガスを供給する。このとき、共振コイル212に対して、高周波電源273から高周波電力を供給する。これにより、プラズマ生成空間201a内における共振コイル212の電気的中点に相当する高さ位置に、平面視がドーナツ状である誘導プラズマが励起される。
【0098】
H含有ガスは、誘導プラズマの励起等により活性化(励起)されて反応し、処理容器203内においてH*が生成される。
【0099】
そして、
図9(A)に示すように、生成されたH
*がウエハ200に対して供給される。その結果、
図9(B)に示すように、ウエハ200の表面に形成されているSiN膜の表面が還元されるように改質されるとともに、ウエハ200の表面に形成されているSiO膜の表面が水酸基(OH)終端されるように改質される。
【0100】
このときの仕組みは、
図10に示す通りである。先ず、
図10(A)に示すように、Si基板の表面にSiN膜及びSiO膜を有するウエハ200にH
*が供給されると、H
*の還元作用により、SiN膜の表面の自然酸化膜(SiON膜)にHが結合する。次に、
図10(B)に示すように、H
*の還元作用によりSiON膜から酸素(O)が放出され、放出されたOがH
*と結合してOH
*が発生する。このように、H
*の還元作用により、SiN膜の表面のSiON膜を、SiN膜へと還元させる。なお、
図10(B)では、基板内にHが入り込んでいるが、必ず入り込むわけではなく、単にOを放出させ、そのOの放出に基づき、基板表面の結晶構造を変化させることもある。次に、
図10(C)に示すように、発生したOH
*が、SiO膜の表面に供給され、SiO膜の再酸化及び/又は、SiO膜の表面のOH終端形成が行われる。また、第1実施形態における場合と同様に、SiO膜の表面に対するH*の供給によってもOH
*が発生し、OH
*の供給によるSiO膜の再酸化及び/又は、SiO膜の表面のOH終端形成が行われる。
【0101】
また、ウエハ200の表面に形成されているSiO膜の表面のOH終端は、上記の仕組み以外に、第1実施形態において
図7を用いて説明した仕組みによっても起こり得る。
図7(A)に示すように、ウエハ200の表面に形成されているSiO膜にH
*が供給されると、
図7(B)に示すように、H
*の還元作用により、SiO膜の表面のSiO終端部分においてSiとOの結合が切断され、切断されたOとH
*が結合することにより、SiO膜の表面がOH終端される。
【0102】
上記のように、Si基板の表面にSiN膜及びSiO膜を有し、SiN膜の表面にSiON膜が形成されたウエハ200に対して、N及びO非含有であるH含有ガスを供給して表面改質処理を行った場合でも、一度の工程で、SiON膜からSiN膜への還元とSiO膜のOH終端とを同時に行うことができる。
【0103】
上記の通り、表面改質処理を行った後、処理容器203内へのH含有ガスの供給を停止するとともに、共振コイル212への高周波電力の供給を停止する。そして、パージガスとしての不活性ガスを処理容器203内へ供給し、排気管231より排気する。これにより、処理容器203内がパージされ、処理容器203内に残留するガスや反応副生成物が処理容器203内から除去される。
【0104】
(2)本形態による効果
上述の様に、Si基板の表面にSiN膜及びSiO膜を有し、SiN膜の表面にSiON膜が形成されたウエハ200に対して、N及びO非含有であるH含有ガスを供給して表面改質処理を行うことにより、一度の工程で、SiON膜からSiN膜への還元とSiO膜のOH終端とを同時に行うことができる。また、表面改質処理において、従来のフッ化水素酸(HF)を用いたDHF処理のようにフッ素を用いないため、フッ素を残留させることなく、膜の表面を改質させることが可能となる。
【0105】
なお、本実施形態においてSiO膜のOH終端とは、SiO膜の表面にOH終端を選択的に形成する一方、SiN膜の表面にはOH終端を形成しない、又は、SiO膜の表面に形成されるOH終端の密度よりも小さい密度でOH終端を形成させるように改質させることと同義である。
【0106】
本実施形態において、改質処理ガスとしてのH含有ガスは、Oを含有しない、又は本質的にOを含有しない。また、本実施形態において、N及びO非含有であるH含有ガスのみを用いる例について説明したが、H含有ガスは、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスを含んでもよい。このようなガスであっても、上述の基板処理シーケンスと同様の効果が得られる。
【0107】
<第3実施形態>
第1実施形態では、基板処理シーケンスにおける表面改質処理において、改質処理ガスとしてNを含有する活性種及びHを含有する活性種を供給する形態について説明した。本実施の形態では、改質処理ガスとしてH及びOを含有する活性種を供給する形態について説明する。
【0108】
なお、本実施形態おける改質処理装置100のハードウェア構成は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0109】
(1)基板処理工程
本実施形態の基板処理シーケンスにおける表面改質処理以外の処理は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0110】
(表面改質処理)
本実施形態の表面改質処理では、改質処理ガスとして、H含有ガス及びO含有ガスを処理容器203内へ供給してプラズマ励起させることにより、Hを含有する活性種としてH*を生成し、Oを含有する活性種としてOの活性種(以下の説明及び図では、Oの活性種を総称して「O*」と記載する)、及びOHを含有する活性種としてOHの活性種(OH*)を生成する。具体的には、H含有ガス供給系のバルブ253bを開き、MFC252bにより流量調整しながら、ガス導入口234、バッファ室237、ガス吹出口239を介して処理室201内へH含有ガスを供給する。また、不図示のO含有ガス供給系のバルブを開き、MFCにより流量調整しながら、ガス導入口234、バッファ室237、ガス吹出口239を介して処理室201内へO2ガスを供給する。このとき、共振コイル212に対して、高周波電源273から高周波電力を供給する。これにより、プラズマ生成空間201a内における共振コイル212の電気的中点に相当する高さ位置に、平面視がドーナツ状である誘導プラズマが励起される。
【0111】
H含有ガスとしては、例えば、H2ガス、D2ガス、H2Oガス、上述の窒化水素系ガス等を用いることができる。H含有ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。 O含有ガスとしては、例えば、酸素(O2)ガス、亜酸化窒素(N2O)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、二酸化窒素(NO2)ガス、オゾン(O3)ガス、水蒸気(H2Oガス)、一酸化炭素(CO)ガス、二酸化炭素(CO2)ガス等を用いることができる。O含有ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。なお、O含有ガスとしてH2Oガスを用いる場合は、H含有ガスとしてH2Oガス以外のガスを用いることが好ましい。
【0112】
H含有ガス及びO含有ガスは、誘導プラズマの励起等により活性化(励起)されて反応し、処理容器203内においてH*、O*、及びOH*が生成される。H比率、総ガス流量、及びRFパワー等により、H*、O*、及びOH*の比率の変更が可能である。OH*リッチとなるように、プロセス条件を選択する。例えば、H及びOを含有するガスにおけるHの比率は、10%以上40%以下とする。より好ましくは、20%以上40%以下である。
【0113】
そして、
図11(A)に示すように、生成されたH
*、O
*、及びOH
*がウエハ200に対して供給される。その結果、
図11(B)に示すように、ウエハ200の表面に形成されているSiO膜の表面が水酸基(OH)終端されるように改質される。また、SiO膜の表面上の汚染物を除去することができる。
【0114】
また、ウエハ200の表面に形成されているSiN膜表面の酸化は、適宜プロセス条件を選択することにより、実質的に防ぐことが可能となる。例えば、H濃度や温度により対SiN膜への酸化レートは変化する。また、処理時間を短縮化することによりO*による影響を小さくすることができる。それ故、O*が存在していても、SiN膜の酸化を実質的に防ぐことができる。
【0115】
また、ウエハ200の表面に形成されているSiO膜の表面のOH終端は、上記の仕組み以外に、第1実施形態において
図7を用いて説明した仕組みによっても起こり得る。さらに、SiO膜の表面に存在する汚染に関して、OH
*は、酸化力が強力であり、CやF等の汚染は、OH
*で除去可能である。さらに、H
*の還元力により、汚染を除去することができる。更に、O
*の酸化力により、有機物等の汚染を除去することができる。
【0116】
上記のように、Si基板の表面にSiO膜が形成されたウエハ200に対して、H含有ガス及びO含有ガスを供給して表面改質処理を行った場合でも、SiO膜のOH終端を行うことができる。さらに、SiO膜の表面に存在するOH終端以外の終端及び汚染の除去を行うことができる。さらに、SiN膜の酸化を実質的に防ぐことができる。
【0117】
なお、SiO膜の表面に存在するOH終端以外の終端は、フッ素(F)終端又は酸素(O)終端のいずれかであってもよい。また、SiO膜の表面に存在する汚染は、有機物であってもよい。
【0118】
上記の通り、表面改質処理を行った後、処理容器203内へのH含有ガス及びO含有ガスの供給を停止するとともに、共振コイル212への高周波電力の供給を停止する。そして、パージガスとしての不活性ガスを処理容器203内へ供給し、排気管231より排気する。これにより、処理容器203内がパージされ、処理容器203内に残留するガスや反応副生成物が処理容器203内から除去される。
【0119】
(2)本形態による効果
上述の様に、Si基板の表面にSiN膜及びSiO膜を有するウエハ200に対して、H含有ガス及びO含有ガスを供給して表面改質処理を行うことにより、SiO膜のOH終端を行うことができる。また、表面改質処理において、従来のフッ化水素酸(HF)を用いたDHF処理のようにフッ素を用いないため、フッ素を残留させることなく、膜の表面を改質させることが可能となる。
【0120】
なお、本実施形態においてSiO膜のOH終端とは、SiO膜の表面にOH終端を選択的に形成する一方、SiN膜の表面にはOH終端を形成しない、又は、SiO膜の表面に形成されるOH終端の密度よりも小さい密度でOH終端を形成させるように改質させることと同義である。
【0121】
本実施形態において、表面改質処理において供給されるHを含有する活性種及びOを含有する活性種は、H及びOを含有するガスをプラズマ励起させることにより生成させるようにすることにより、上記実施形態で説明したようなプラズマ処理が可能な改質処理装置100において、容易に実現することが可能となる。
【0122】
また、OH*を採用することにより、H*と比べて、SiO膜上のOH終端の密度をより上げることが可能となる。さらに、H*で除去できない、又は、しにくい汚染を除去することが可能である。
【0123】
図12及び
図13は、H及びOを含有するガスの供給条件と、OH
*,H
*,O
*の各量との関係を示すグラフである。
図12及び
図13のグラフの縦軸は、SiO膜上の各物質の量に基づく強度を示しており、単位は[A.U.]である。[A.U.]は、任意単位(Arbitrary Unit)であり、同一測定系における測定値の比を示したものである。
【0124】
図12では、ガスの供給条件として、Hの比率(%)のみを変化させ、高周波電力(W)は7900W、ガスの供給流量は10slmに固定した状態を示している。Hの比率は、0%,5%,10%,20%,30%,40%,50%の状態を示している。
図12のグラフから、Hの比率が10%及び50%の状態と比較して、Hの比率が20%以上40%以下の状態で、OH
*に基づく強度が高くなっている、すなわち、OH
*の量が多くなっていることが分かる。このように、OH終端の量を多くすることが可能となる。
【0125】
図13では、ガスの供給条件として、Hの比率が5%、高周波電力が3500W、ガスの供給流量が10slmの状態と、Hの比率が20%、高周波電力が7900W、ガスの供給流量が2slmの状態と、Hの比率が20%、高周波電力が7900W、ガスの供給流量が10slmの状態の3つの状態を示している。
【0126】
図12のHの比率が5%、高周波電力が7900W、ガスの供給流量が10slmの状態と、
図13のHの比率が5%、高周波電力が3500W、ガスの供給流量が10slmの状態とを比較すると、高周波電力が高いと、OH
*に基づく強度が高くなっている、すなわちSiO膜上のOH終端の量が多くなっていることが分かる。このように、OH終端の量を多くすることが可能となる。
【0127】
また、
図13のHの比率が20%、高周波電力が7900W、ガスの供給流量が2slmの状態と、Hの比率が20%、高周波電力が7900W、ガスの供給流量が10slmの状態とを比較すると、ガスの供給流量が多いと、OH
*に基づく強度が高くなっている、すなわちOH
*の量が多くなっていることが分かる。このように、OH終端の量を多くすることが可能となる。
【0128】
また、H及びOを含有するガスにおけるHの比率を調整することにより、SiO膜の表面が酸化される速度に対するSiN膜の表面が酸化される速度の比率を制御することができる。
【0129】
図14は、H及びOを含有するガス中に含まれるOとHの原子数の合計に対するHの原子数の比率と、SiO膜の表面が酸化される速度に対するSiN膜の表面が酸化される速度の比率との関係を示すグラフである。
図14のグラフの縦軸は、SiO膜の表面が酸化される速度に対するSiN膜の表面が酸化される速度の比率を示しており、単位はない。また、
図14のグラフの横軸は、H及びOを含有するガス中のHの比率を示しており、単位は[%]である。
【0130】
図14のグラフから、Hの比率が高くなる程、SiN膜の表面が酸化される速度が低くなり、反対にSiO膜の表面が酸化される速度が高くなることが分かる。このような特性を利用し、SiO膜の表面が酸化される速度及びSiN膜の表面が酸化される速度を調整することができる。
【0131】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態を具体的に説明した。しかしながら、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0132】
例えば、改質処理装置として、一度に1枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて成膜してもよい。また、改質処理装置として、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の縦型装置である基板処理装置を用いて成膜してもよい。また、窒素含有膜としてSiN膜を例示したが、窒素含有膜は、この膜に限らず、例えば、SiN、SiCN、SiBN、SiBCN、N-rich SiON、又はN-rich SiOCNであってもよい。また、酸素含有膜としてSiO膜を例示したが、酸素含有膜は、この膜に限らず、例えば、SiO、SiOC、O-rich SiON、又はO-rich SiOCNであってもよい。すなわち、窒素含有膜及び酸素含有膜として、それぞれ選択比を得ることが可能であるかぎり、どのような膜種が採用されてもよい。さらに、OH*処理、NH*処理、およびH*処理のうちいずれかを混合して本開示が実施されてもよい。例えば、OH*処理を採用してSiO膜上にOH終端を多量に設けたのち、NH*またはH*処理を採用して、SiN膜の表面を窒化又は還元しつつ、SiO膜のOH終端の量を強化してもよい。さらに、TiN膜を設けることを例示したが、他の膜、例えばSiN膜、SiO膜、Ti以外の金属膜等を適宜設けてもよい。
【0133】
また、本開示の実施形態における基板処理システム、改質処理装置、及び成膜装置は、半導体を製造する半導体製造装置だけではなく、LCD装置の様なガラス基板を処理する装置でも適用可能である。また、基板処理システムで適用可能な基板に対する処理は、例えば、CVD、PVD、酸化膜、窒化膜を形成する処理、金属を含む膜を形成する処理、アニール処理、酸化処理、窒化処理、拡散処理等を含んでもよい。また、露光装置、塗布装置、乾燥装置、加熱装置等の各種基板処理装置にも適用可能であるのは言うまでもない。
【0134】
<本開示の好ましい形態>
以下に、本開示の好ましい形態について付記する。
【0135】
[付記1]
(a1)表面に窒素含有膜及び酸素含有膜を有する基板を準備する工程と、
(b1)前記基板に対して、窒素を含有する活性種及び水素を含有する活性種を供給することにより、前記窒素含有膜の表面を窒化させるように改質させる工程と、
を有する半導体装置の製造方法、又は基板処理方法。
【0136】
[付記2]
付記1の方法であって、
(b1)では、前記基板に対して、窒素を含有する活性種及び水素を含有する活性種を供給することにより、前記窒素含有膜を、前記窒素含有膜の表面の窒素濃度を第1の増加量で増加させるように改質させるとともに、前記酸素含有膜を、前記酸素含有膜の表面の窒素濃度を、前記第1の増加量よりも小さい第2の増加量で増加させるか、又は増加させないように改質させる。
【0137】
[付記3]
付記1又は2の方法であって、
前記窒素含有膜の表面には、酸素及び窒素含有層が形成されており、
(b1)では、前記酸素及び窒素含有層を窒化させる。
【0138】
[付記4]
付記1から3のいずれかの方法であって、
(b1)では、前記酸素含有膜に含まれる酸素原子と前記水素を含有する活性種とを反応させることにより水酸基ラジカルを生成させ、前記酸素含有膜の表面を水酸基終端させる。
【0139】
[付記5]
付記4の方法であって、
(c1)(b1)の後、前記酸素含有膜の表面が水酸基終端された前記基板に対して成膜阻害剤を供給し、前記酸素含有膜の表面へ前記成膜阻害剤を構成する分子の分子構造の少なくとも一部を吸着させて成膜阻害層を形成する工程を有する。
【0140】
[付記6]
付記1から5のいずれかの方法であって、
前記窒素を含有する活性種及び前記水素を含有する活性種は、窒素及び水素を含有するガスをプラズマ励起させることにより生成させる。
【0141】
[付記7]
付記6の方法であって、
前記窒素及び水素を含有するガスは、窒素含有ガスと水素含有ガスとの混合ガス、及び窒素と水素との化学結合(N-H結合)を含有するガスのうち少なくともいずれかである。
【0142】
[付記8]
付記7の方法であって、
窒素含有ガスと水素含有ガスとの混合ガスは、窒素ガス(N2)と水素ガス(H2)の混合ガスである。
【0143】
[付記9]
付記8の方法であって、
窒素含有ガスと水素含有ガスとの混合ガスにおける水素ガス(H2)の比率は、20%以上60%以下である。
【0144】
[付記10]
付記7から9のいずれかの方法であって、
前記窒素と水素との化学結合を含有するガスは、アンモニア(NH3)ガス、ヒドラジン(N2H4)ガス、及びジアゼン(N2H2)ガスの群から選択される少なくともいずれか一つである。
【0145】
[付記11]
(a2)表面に窒素含有膜及び酸素含有膜を有する基板を準備する工程と、
(b2)前記基板に対して、水素を含有する活性種、水素及び酸素を含有する活性種、及び水素及び窒素を含有する活性種の少なくともいずれかの活性種を供給することにより、前記酸素含有膜の表面に水酸基終端を選択的に形成させる工程と、
を有する半導体装置の製造方法、および基板処理方法。
【0146】
[付記12]
付記11の方法であって、
(b2)では、前記基板に対して、前記酸素含有膜の表面に水酸基終端を選択的に形成する一方、前記窒素含有膜の表面には水酸基終端を形成しない、又は、前記酸素含有膜の表面に形成される水酸基終端の密度よりも小さい密度で水酸基終端を形成させる。
【0147】
[付記13]
付記11又は12の方法であって、
前記水素を含有する活性種は、酸素を含有しない。
【0148】
[付記14]
付記11から13のいずれかの方法であって、
(b2)では、いずれかの活性種の供給により、前記酸素含有膜の表面に存在する水酸基終端以外の終端及び汚染の少なくともいずれかを、前記酸素含有膜の表面から除去させる。
【0149】
[付記15]
付記14の方法であって、
前記酸素含有膜の表面に存在する水酸基終端以外の終端は、フッ素終端又は酸素終端の少なくともいずれかである。
【0150】
[付記16]
付記14又は15の方法であって、
前記酸素含有膜の表面に存在する汚染は有機物である。
【0151】
[付記17]
付記11から16のいずれかの方法であって、
水素及び酸素を含有するガスをプラズマ励起することにより、前記水素及び酸素を含有する活性種を生成する。
【0152】
[付記18]
付記17の方法であって、
前記水素及び酸素を含有するガスにおける水素の比率は、20%以上60%以下である。
【0153】
[付記19]
付記17の方法であって、
前記水素及び酸素を含有するガスにおける水素の比率を調整することにより、前記酸素含有膜の表面が酸化される速度に対する前記窒素含有膜の表面が酸化される速度の比率を制御する。
【0154】
[付記20]
付記11から19のいずれかの方法であって、
水素を含有する活性種を前記基板に対して供給することにより、前記窒素含有膜の表面に形成された酸素及び窒素含有層を前記窒素含有膜へと還元させる。
【0155】
[付記21]
付記11から20のいずれかの方法であって、
(c1)(b1)の後、前記酸素含有膜の表面が水酸基終端された前記基板に対して成膜阻害剤を供給し、前記酸素含有膜の表面へ前記成膜阻害剤を構成する分子の分子構造の少なくとも一部を吸着させて成膜阻害層を形成する工程を有する。
【0156】
[付記22]
表面に酸素含有膜を有する基板に対して、窒素を含有する活性種及び水素を含有する活性種の両方、水素を含有する活性種、及び酸素を含有する活性種及び水素を含有する活性種の両方のいずれかの活性種を供給することにより、前記酸素含有膜の表面に水酸基終端を形成させる工程と、
前記水酸基終端に成膜阻害層を形成させる工程と、
を有する半導体装置の製造方法、または基板処理方法。
【0157】
[付記23]
表面に自然酸化膜が存在する窒素含有膜を有する基板に対して、窒素を含有する活性種及び水素を含有する活性種を供給することにより、前記窒素含有膜の前記自然酸化膜を窒化膜に改質させ、
改質された前記窒素含有膜の表面に、膜を形成させる半導体装置の製造方法、又は基板処理方法。
【0158】
[付記24]
表面に第1膜及び第2膜を有する基板の前記第1膜の表面に成膜阻害層を設けることにより、前記成膜阻害層が設けられていない前記第2膜の表面に成膜する半導体装置の製造方法において、
前記基板に対して、窒素を含有する活性種及び水素を含有する活性種を供給することにより、前記第2膜の表面の窒素濃度が増加するように改質させるとともに、前記第1膜に水酸基を形成させる工程と、
前記水酸基に成膜阻害剤を構成する分子の分子構造の少なくとも一部を吸着させて前記成膜阻害層を形成させる工程と、
を有する半導体装置の製造方法、または基板処理方法。
【0159】
[付記25]
基板処理装置の処理室に、表面に窒素含有膜及び酸素含有膜を有する基板を導入する手順と、
前記処理室内の前記基板に対してプラズマにより活性化された窒素を含有する活性種を供給する手順と、
前記処理室内の前記基板に対してプラズマにより活性化された水素を含有する活性種を供給する手順と、
前記処理室内において、前記基板に対して、前記窒素を含有する活性種及び前記水素を含有する活性種を供給するとき、前記窒素含有膜の表面を窒化させるように改質させるように、前記窒素を含有する活性種を供給する手順及び前記水素を含有する活性種を供給する手順を制御する手順と、
をコンピュータによって前記基板処理装置に実行させるプログラム、または、該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【0160】
[付記26]
基板処理装置の処理室に、表面に酸素含有膜を有する基板を導入する手順と、
前記処理室内の前記基板に対して、プラズマにより活性化された窒素を含有する活性種及びプラズマにより活性化された水素を含有する活性種を供給する手順と、
前記処理室内の前記基板に対して、成膜阻害剤を供給する手順と、
前記処理室内において、前記基板に対して、前記窒素を含有する活性種及び前記水素を含有する活性種を供給するとき、前記酸素含有膜の表面に水酸基終端を形成させるように、前記活性種を供給する手順を制御する手順と、
前記処理室内において、前記基板に対して、前記成膜阻害剤を供給するとき、前記水酸基終端に成膜阻害層を形成させるように、前記成膜阻害剤を供給する手順を制御する手順と、
をコンピュータによって前記基板処理装置に実行させるプログラムまたは、該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【0161】
[付記27]
表面に第1膜及び第2膜を有する基板の前記第1膜の表面に成膜阻害層を設けることにより、前記成膜阻害層が設けられていない前記第2膜の表面に成膜する基板処理装置の処理室に、前記基板を導入する手順と、
前記処理室内の前記基板に対して、プラズマにより活性化された窒素を含有する活性種及びプラズマにより活性化された水素を含有する活性種を供給する手順と、
前記処理室内の前記基板に対して、成膜阻害剤を供給する手順と、
前記処理室内において、前記基板に対して、前記窒素を含有する活性種及び前記水素を含有する活性種を供給するとき、前記第2膜の表面の窒素濃度が増加するように改質させるとともに、前記第1膜に水酸基を形成させるように、前記活性種を供給する手順を制御する手順と、
前記処理室内において、前記基板に対して、前記成膜阻害剤を供給するとき、前記水酸基に成膜阻害剤を構成する分子の分子構造の少なくとも一部を吸着させて前記成膜阻害層を形成させるように、前記成膜阻害剤を供給する手順を制御する手順と、
をコンピュータによって前記基板処理装置に実行させるプログラムまたは、該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【0162】
[付記28]
基板を処理する処理室と、
前記処理室内の前記基板に対してプラズマにより活性化された窒素を含有する活性種を供給する窒素含有ガス供給系と、
前記処理室内の前記基板に対してプラズマにより活性化された水素を含有する活性種を供給する水素含有ガス供給系と、
前記処理室内において、付記1における各処理(各工程)を行わせるように、前記窒素含有ガス供給系及び前記水素含有ガス供給系を制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【0163】
[付記29]
基板を処理する処理室と、
前記処理室内の前記基板に対して、プラズマにより活性化された窒素を含有する活性種及びプラズマにより活性化された水素を含有する活性種を供給する改質処理ガス供給系と、
前記処理室内の前記基板に対して、成膜阻害剤を供給する成膜阻害剤含有ガス供給系と、
前記処理室内において、付記22における各処理(各工程)を行わせるように、前記改質処理ガス供給系及び前記成膜阻害剤含有ガス供給系を制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【0164】
[付記30]
表面に第1膜及び第2膜を有する基板の前記第1膜の表面に成膜阻害層を設けることにより、前記成膜阻害層が設けられていない前記第2膜の表面に成膜する基板処理装置において、
基板を処理する処理室と、
前記処理室内の前記基板に対して、プラズマにより活性化された窒素を含有する活性種及びプラズマにより活性化された水素を含有する活性種を供給する改質処理ガス供給系と、
前記処理室内の前記基板に対して、成膜阻害剤を供給する成膜阻害剤含有ガス供給系と、
前記処理室内において、付記23における各処理(各工程)を行わせるように、前記改質処理ガス供給系及び前記第2の供給系を制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【符号の説明】
【0165】
100 改質処理装置
200 ウエハ(基板の一例)
201 処理室
221 コントローラ(制御部の一例)