(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】吸水性樹脂粒子及びその製造方法、吸収体、吸収性物品、並びに、浸透速度の調整方法
(51)【国際特許分類】
C08F 20/06 20060101AFI20240227BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
C08F20/06
A61F13/53 300
A61F13/53 100
(21)【出願番号】P 2021505001
(86)(22)【出願日】2020-03-05
(86)【国際出願番号】 JP2020009508
(87)【国際公開番号】W WO2020184395
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2019043017
(32)【優先日】2019-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【氏名又は名称】沖田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100160897
【氏名又は名称】古下 智也
(72)【発明者】
【氏名】居藤 崇志
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/169246(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/180547(WO,A1)
【文献】特開2006-176570(JP,A)
【文献】国際公開第2006/123561(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/144564(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/006135(WO,A1)
【文献】特開2016-028113(JP,A)
【文献】特開2016-028117(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
A61L 15/16-15/64
C08F 6/00-246/00;301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理食塩水の無加圧下の保水量が40g/g以下であり、
中位粒子径が250~370μmであり、
下記(1)~(3)の手順により測定されるゲルフローレートが
45.5~
50.6g/minである、吸水性樹脂粒子。
(1)前記吸水性樹脂粒子1質量部及び水199質量部を混合することによりゲルを得る。
(2)ロートにおける直径8mmの円形の下端開口を閉止した状態で前記ロートに前記ゲルを収容する。
(3)前記下端開口を開放して3分経過したときの前記ゲルの単位時間あたりの流出量を前記ゲルフローレートとして測定する。
【請求項2】
荷重4.14kPa下における生理食塩水の吸水量が10~40mL/gである、請求項1に記載の吸水性樹脂粒子。
【請求項3】
(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種に由来する構造単位を有する、請求項1又は2に記載の吸水性樹脂粒子。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の吸水性樹脂粒子を含有する、吸収体。
【請求項5】
前記吸水性樹脂粒子の含有量が当該吸収体の全質量を基準として50質量%以上である、請求項4に記載の吸収体。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の吸収体を備える、吸収性物品。
【請求項7】
おむつである、請求項6に記載の吸収性物品。
【請求項8】
下記(1)~(3)の手順により測定されるゲルフローレートに基づき吸水性樹脂粒子を選定する工程を備え
、
前記ゲルフローレートが45.5~50.6g/minである、吸水性樹脂粒子の製造方法。
(1)前記吸水性樹脂粒子1質量部及び水199質量部を混合することによりゲルを得る。
(2)ロートにおける直径8mmの円形の下端開口を閉止した状態で前記ロートに前記ゲルを収容する。
(3)前記下端開口を開放して3分経過したときの前記ゲルの単位時間あたりの流出量を前記ゲルフローレートとして測定する。
【請求項9】
吸収体を備える吸収性物品における浸透速度の調整方法であって、
前記吸収体が吸水性樹脂粒子を含有し、
当該調整方法が、下記(1)~(3)の手順により測定されるゲルフローレートを調整する工程を備え
、
前記ゲルフローレートが45.5~50.6g/minである、浸透速度の調整方法。
(1)前記吸水性樹脂粒子1質量部及び水199質量部を混合することによりゲルを得る。
(2)ロートにおける直径8mmの円形の下端開口を閉止した状態で前記ロートに前記ゲルを収容する。
(3)前記下端開口を開放して3分経過したときの前記ゲルの単位時間あたりの流出量を前記ゲルフローレートとして測定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂粒子及びその製造方法、吸収体、吸収性物品、並びに、浸透速度の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水を主成分とする液体(例えば尿)を吸収するための吸収性物品には、吸水性樹脂粒子を含有する吸収体が用いられている。例えば、下記特許文献1には、おむつ等の吸収性物品に好適に用いられる粒子径を有する吸水性樹脂粒子が開示されている。また、特許文献2には、尿のような体液を収容するのに効果的な吸収性部材として、特定の食塩水流れ誘導性、圧力下性能等を有するヒドロゲル吸収性重合体を使用する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平06-345819号公報
【文献】特表平09-510889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸収性物品に供された液が吸収性物品に充分浸透しなければ、余剰の液はその表面を流れる等して吸収性物品の外に漏れるといった不具合が生じ得る。そのため、吸収性物品に対しては、液が優れた浸透速度で浸透することが求められる。
【0005】
本発明の一側面は、優れた浸透速度を有する吸収性物品を得ることが可能な吸水性樹脂粒子及びその製造方法、並びに、浸透速度の調整方法を提供することを目的とする。また、本発明の他の一側面は、当該吸水性樹脂粒子を用いた吸収体及び吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、下記(1)~(3)の手順により測定されるゲルフローレートが10~70g/minである、吸水性樹脂粒子を提供する。
(1)前記吸水性樹脂粒子1質量部及び水199質量部を混合することによりゲルを得る。
(2)ロートにおける直径8mmの円形の下端開口を閉止した状態で前記ロートに前記ゲルを収容する。
(3)前記下端開口を開放して3分経過したときの前記ゲルの単位時間あたりの流出量を前記ゲルフローレートとして測定する。
【0007】
上述の吸水性樹脂粒子によれば、優れた浸透速度を有する吸収性物品を得ることができる。
【0008】
本発明の他の一側面は、上述の吸水性樹脂粒子を含有する、吸収体を提供する。
【0009】
本発明の他の一側面は、上述の吸収体を備える、吸収性物品を提供する。
【0010】
本発明の他の一側面は、下記(1)~(3)の手順により測定されるゲルフローレートに基づき吸水性樹脂粒子を選定する工程を備える、吸水性樹脂粒子の製造方法を提供する。
(1)前記吸水性樹脂粒子1質量部及び水199質量部を混合することによりゲルを得る。
(2)ロートにおける直径8mmの円形の下端開口を閉止した状態で前記ロートに前記ゲルを収容する。
(3)前記下端開口を開放して3分経過したときの前記ゲルの単位時間あたりの流出量を前記ゲルフローレートとして測定する。
【0011】
上述の吸水性樹脂粒子の製造方法によれば、ゲルフローレートに基づき吸水性樹脂粒子を選定することにより、優れた浸透速度を有する吸収性物品を得ることができる。
【0012】
本発明の他の一側面は、吸収体を備える吸収性物品における浸透速度の調整方法であって、前記吸収体が吸水性樹脂粒子を含有し、当該調整方法が、下記(1)~(3)の手順により測定されるゲルフローレートを調整する工程を備える、浸透速度の調整方法を提供する。
(1)前記吸水性樹脂粒子1質量部及び水199質量部を混合することによりゲルを得る。
(2)ロートにおける直径8mmの円形の下端開口を閉止した状態で前記ロートに前記ゲルを収容する。
(3)前記下端開口を開放して3分経過したときの前記ゲルの単位時間あたりの流出量を前記ゲルフローレートとして測定する。
【0013】
上述の浸透速度の調整方法によれば、ゲルフローレートを調整することにより、優れた浸透速度を有する吸収性物品を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一側面によれば、優れた浸透速度を有する吸収性物品を得ることが可能な吸水性樹脂粒子及びその製造方法、並びに、浸透速度の調整方法を提供することができる。また、本発明の他の一側面によれば、当該吸水性樹脂粒子を用いた吸収体及び吸収性物品を提供することができる。本発明の他の一側面によれば、吸液への吸水性樹脂粒子、吸収体及び吸収性物品の応用を提供することができる。本発明の他の一側面によれば、吸収性物品における浸透速度の調整への吸水性樹脂粒子、吸収体及び吸収性物品の応用を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】実施例で使用した撹拌翼の概形を示す平面図である。
【
図3】吸水性樹脂粒子の荷重下の吸水量の測定装置を示す概略図である。
【
図4】ゲルの流動性の測定装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0017】
本明細書において、「アクリル」及び「メタクリル」を合わせて「(メタ)アクリル」と表記する。「アクリレート」及び「メタクリレート」も同様に「(メタ)アクリレート」と表記する。「(ポリ)」とは、「ポリ」の接頭語がある場合及びない場合の双方を意味するものとする。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「水溶性」とは、25℃において水に5質量%以上の溶解性を示すことをいう。本明細書に例示する材料は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。「生理食塩水」とは、0.9質量%塩化ナトリウム水溶液をいう。
【0018】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子において、下記(1)~(3)の手順により測定されるゲルフローレートは、10~70g/minである。
(1)前記吸水性樹脂粒子1質量部及び水199質量部を混合することによりゲルを得る。
(2)ロートにおける直径8mmの円形の下端開口を閉止した状態で前記ロートに前記ゲルを収容する。
(3)前記下端開口を開放して3分経過したときの前記ゲルの単位時間あたりの流出量を前記ゲルフローレートとして測定する。
【0019】
このような吸水性樹脂粒子によれば、優れた浸透速度を有する吸収性物品を得ることができる。このような効果が得られる原因は明らかではないが、本発明者は下記のように推察している。但し、原因は下記の内容に限定されない。すなわち、吸水性樹脂粒子は、水等の液体を吸収して膨潤した際に、溶解しない程度であり、かつ、膨潤が著しく阻害されない程度の架橋点を有している。一方、適度に膨潤できる程度の架橋点が存在しても、架橋点が偏在していると、ゲルの膨潤にも偏りが生じる。この場合、膨潤が不充分な箇所が発生することにより、ゲルブロッキングのような好ましくない現象に至る。すなわち、ゲルフローレートが特定の値である吸水性樹脂粒子は、吸水性樹脂粒子が適度に架橋されていて、かつ、粒子の架橋が均一であることから、吸収性物品において優れた浸透速度が得られるものと考えられる。
【0020】
ゲルフローレートは、吸収性物品において優れた浸透速度を得やすい観点から、15g/min以上、20g/min以上、25g/min以上、30g/min以上、35g/min以上、40g/min以上、又は、45g/min以上が好ましい。ゲルフローレートは、吸収性物品において優れた浸透速度を得やすい観点から、65g/min以下、60g/min以下、55g/min以下、又は、50g/min以下が好ましい。ゲルフローレートとしては、室温(25±2℃)におけるゲルフローレートを用いることができる。
【0021】
ゲルフローレートの試験における工程(1)で用いるゲルは、200倍膨潤の膨潤ゲルとして、吸水性樹脂粒子1質量部とイオン交換水199質量部とを混合することにより得ることができる。
【0022】
工程(2)で用いるロートは、直径8mmの円形の下端開口(排出口)を有する。下端開口は、ダンパー等により開閉できる。ロートは、例えば、ゲルを供給する上端開口(供給口)を有しており、上端開口から供給されたゲルが下端開口から排出される。ロートは、例えば、上端開口から下端開口に至るに伴い狭まるテーパー形状を有している。ロートの側壁の傾斜角度は、ロートの軸方向に対して例えば20°である。ロートは、水平に設置することができる。ロートの構成材料は、例えばステンレスである。
【0023】
工程(3)では、ゲルを受ける受器をロートに対して鉛直方向下方に配置し、下端開口を開放してから3分経過するまでにおけるゲルの流出量を測定する。受器の上端がロートの排出口から38mm下に位置する状態でゲルを流出させることができる。そして、工程(3)では、3分経過した時点のゲルの流出量を経過時間(3分)で除することにより、ゲルの単位時間あたりの流出量(ゲルフローレート)を得ることができる。
【0024】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、水を保水可能であればよく、吸液対象の液は水を含むことができる。本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、尿、汗、血液(例えば経血)等の体液の吸収性に優れている。本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、本実施形態に係る吸収体の構成成分として用いることができる。
【0025】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の生理食塩水の保水量(無加圧下の保水量)は、下記の範囲が好ましい。保水量は、吸収性物品において優れた浸透速度を得やすい観点から、10g/g以上、15g/g以上、20g/g以上、25g/g以上、30g/g以上、又は、32g/g以上が好ましい。保水量は、吸収性物品において優れた浸透速度を得やすい観点から、80g/g以下、80g/g未満、75g/g以下、70g/g以下、65g/g以下、60g/g以下、55g/g以下、50g/g以下、48g/g以下、45g/g以下、44g/g以下、43g/g以下、42g/g以下、又は、40g/g以下が好ましい。これらの観点から、保水量は、10~80g/gが好ましく、30~60g/gがより好ましい。
【0026】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の荷重4.14kPa下における生理食塩水の吸水量は、下記の範囲が好ましい。吸水量は、吸収性物品において優れた浸透速度を得やすい観点から、10mL/g以上、12mL/g以上、15mL/g以上、17mL/g以上、18mL/g以上、20mL/g以上、22mL/g以上、又は、24mL/g以上が好ましい。吸水量は、吸収性物品における過度の膨潤を抑制しやすい観点から、40mL/g以下、35mL/g以下、30mL/g以下、又は、28mL/g以下が好ましい。これらの観点から、吸水量は、10~40mL/gが好ましく、12~35mL/gがより好ましい。吸水量としては、室温(25±2℃)における吸水量を用いることができる。吸水量は、後述する実施例に記載の方法によって測定できる。
【0027】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の形状としては、略球状、破砕状、顆粒状等が挙げられる。本実施形態に係る吸水性樹脂粒子(吸水前の吸水性樹脂粒子)の中位粒子径は、下記の範囲が好ましい。中位粒子径は、ゲルブロッキングを回避して吸収性物品の浸透速度を良好に保ちやすい観点から、250μm以上、280μm以上、300μm以上、310μm以上、320μm以上、330μm以上、340μm以上、350μm以上、又は、360μm以上が好ましい。中位粒子径は、吸収性物品の触感を柔らかく保ちやすい観点から、600μm以下、550μm以下、500μm以下、450μm以下、400μm以下、380μm以下、又は、370μm以下が好ましい。これらの観点から、中位粒子径は、250~600μmが好ましい。本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、後述する製造方法により得られた時点で所望の粒度分布を有していてよいが、篩による分級を用いた粒度調整等の操作を行うことにより粒度分布を調整してもよい。
【0028】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、例えば、重合体粒子として、エチレン性不飽和単量体を含有する単量体を重合させて得られる架橋重合体(エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体)を含むことができる。すなわち、本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有することが可能であり、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子を含むことができる。エチレン性不飽和単量体としては、水溶性エチレン性不飽和単量体を用いることができる。重合方法としては、逆相懸濁重合法、水溶液重合法、バルク重合法、沈殿重合法等が挙げられる。これらの中では、得られる吸水性樹脂粒子の良好な吸水特性(保水量等)の確保、及び、重合反応の制御が容易である観点から、逆相懸濁重合法又は水溶液重合法が好ましい。以下においては、エチレン性不飽和単量体を重合させる方法として、逆相懸濁重合法を例にとって説明する。
【0029】
エチレン性不飽和単量体は水溶性であることが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸及びその塩、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸及びその塩、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。エチレン性不飽和単量体がアミノ基を有する場合、当該アミノ基は4級化されていてもよい。エチレン性不飽和単量体は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。上述の単量体のカルボキシル基、アミノ基等の官能基は、後述する表面架橋工程において架橋が可能な官能基として機能し得る。
【0030】
これらの中でも、工業的に入手が容易である観点から、エチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸及びその塩、アクリルアミド、メタクリルアミド、並びに、N,N-ジメチルアクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸及びその塩、並びに、アクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含むことがより好ましい。吸水特性(保水量等)を更に高める観点から、エチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含むことが更に好ましい。すなわち、吸水性樹脂粒子は、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種に由来する構造単位を有することが好ましい。
【0031】
吸水性樹脂粒子を得るための単量体としては、上述のエチレン性不飽和単量体以外の単量体が使用されてもよい。このような単量体は、例えば、上述のエチレン性不飽和単量体を含む水溶液に混合して用いることができる。エチレン性不飽和単量体の使用量は、単量体全量(吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量。例えば、架橋重合体の構造単位を与える単量体の全量。以下同様)に対して70~100モル%であることが好ましい。中でも、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が単量体全量に対して70~100モル%であることがより好ましい。「(メタ)アクリル酸及びその塩の割合」は、(メタ)アクリル酸及びその塩の合計量の割合を意味する。
【0032】
本実施形態によれば、吸水性樹脂粒子の一例として、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子であって、前記エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、前記(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量(例えば、前記架橋重合体の構造単位を与える単量体の全量)に対して70~100モル%である、吸水性樹脂粒子を提供することができる。
【0033】
エチレン性不飽和単量体は、通常、水溶液として用いることが好適である。エチレン性不飽和単量体を含む水溶液(以下、単に「単量体水溶液」という)におけるエチレン性不飽和単量体の濃度は、20質量%以上飽和濃度以下が好ましく、25~70質量%がより好ましく、30~55質量%が更に好ましい。水溶液において使用される水としては、水道水、蒸留水、イオン交換水等が挙げられる。
【0034】
単量体水溶液は、エチレン性不飽和単量体が酸基を有する場合、その酸基をアルカリ性中和剤によって中和して用いてもよい。エチレン性不飽和単量体における、アルカリ性中和剤による中和度は、得られる吸水性樹脂粒子の浸透圧を高くし、吸水特性(保水量等)を更に高める観点から、エチレン性不飽和単量体中の酸性基の10~100モル%であることが好ましく、50~90モル%であることがより好ましく、60~80モル%であることが更に好ましい。アルカリ性中和剤としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属塩;アンモニアなどが挙げられる。アルカリ性中和剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。アルカリ性中和剤は、中和操作を簡便にするために水溶液の状態で用いられてもよい。エチレン性不飽和単量体の酸基の中和は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液を上述の単量体水溶液に滴下して混合することにより行うことができる。
【0035】
逆相懸濁重合法においては、界面活性剤の存在下、炭化水素分散媒中で単量体水溶液を分散し、ラジカル重合開始剤等を用いてエチレン性不飽和単量体の重合を行うことができる。ラジカル重合開始剤としては、水溶性ラジカル重合開始剤を用いることができる。
【0036】
界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤等が挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピルアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルメチルタウリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルのリン酸エステル等が挙げられる。界面活性剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0037】
W/O型逆相懸濁の状態が良好であり、好適な粒子径を有する吸水性樹脂粒子が得られやすく、工業的に入手が容易である観点から、界面活性剤は、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含むことが好ましい。吸水性樹脂粒子の適切な粒度分布が得られやすい観点、並びに、吸水性樹脂粒子の吸水特性(保水量等)及びそれを用いた吸収性物品の性能が向上しやすい観点から、界面活性剤は、ショ糖脂肪酸エステルを含むことが好ましく、ショ糖ステアリン酸エステルがより好ましい。
【0038】
界面活性剤の使用量は、使用量に対する効果が充分に得られる観点、及び、経済的である観点から、単量体水溶液100質量部に対して、0.05~10質量部が好ましく、0.08~5質量部がより好ましく、0.1~3質量部が更に好ましい。
【0039】
逆相懸濁重合では、上述の界面活性剤と共に高分子系分散剤を併せて用いてもよい。高分子系分散剤としては、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン・ターポリマー)、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、無水マレイン酸・エチレン共重合体、無水マレイン酸・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・ブタジエン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、酸化型ポリプロピレン、酸化型エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。高分子系分散剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。高分子系分散剤としては、単量体の分散安定性に優れる観点から、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン共重合体、無水マレイン酸・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン・プロピレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、酸化型ポリプロピレン、及び、酸化型エチレン・プロピレン共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。
【0040】
高分子系分散剤の使用量は、使用量に対する効果が充分に得られる観点、及び、経済的である観点から、単量体水溶液100質量部に対して、0.05~10質量部が好ましく、0.08~5質量部がより好ましく、0.1~3質量部が更に好ましい。
【0041】
炭化水素分散媒は、炭素数6~8の鎖状脂肪族炭化水素、及び、炭素数6~8の脂環式炭化水素からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含んでいてもよい。炭化水素分散媒としては、n-ヘキサン、n-ヘプタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、2,3-ジメチルペンタン、3-エチルペンタン、n-オクタン等の鎖状脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、trans-1,2-ジメチルシクロペンタン、cis-1,3-ジメチルシクロペンタン、trans-1,3-ジメチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などが挙げられる。炭化水素分散媒は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0042】
炭化水素分散媒は、工業的に入手が容易であり、かつ、品質が安定している観点から、n-ヘプタン及びシクロヘキサンからなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでいてもよい。また、同様の観点から、上述の炭化水素分散媒の混合物としては、例えば、市販されているエクソールヘプタン(エクソンモービル社製:n-ヘプタン及び異性体の炭化水素75~85%含有)を用いてもよい。
【0043】
炭化水素分散媒の使用量は、重合熱を適度に除去し、重合温度を制御しやすい観点から、単量体水溶液100質量部に対して、30~1000質量部が好ましく、40~500質量部がより好ましく、50~400質量部が更に好ましい。炭化水素分散媒の使用量が30質量部以上であることにより、重合温度の制御が容易である傾向がある。炭化水素分散媒の使用量が1000質量部以下であることにより、重合の生産性が向上する傾向があり、経済的である。
【0044】
ラジカル重合開始剤は水溶性であることが好ましく、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシピバレート、過酸化水素等の過酸化物;2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(N-フェニルアミジノ)プロパン]2塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(N-アリルアミジノ)プロパン]2塩酸塩、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]2塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}2塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド]、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)等のアゾ化合物などが挙げられる。ラジカル重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。ラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]2塩酸塩、及び、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}2塩酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましく、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]2塩酸塩、及び、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}2塩酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種のアゾ系化合物がより好ましい。アゾ系化合物の割合は、ラジカル重合開始剤の全量に対して、20~100モル%が好ましく、35~90モル%がより好ましく、50~85モル%が更に好ましい。
【0045】
ラジカル重合開始剤の使用量は、エチレン性不飽和単量体1モルに対して0.05~10ミリモルであってよい。ラジカル重合開始剤の使用量が0.05ミリモル以上であると、重合反応に長時間を要さず、効率的である。ラジカル重合開始剤の使用量が10ミリモル以下であると、急激な重合反応が起こることを抑制しやすい。
【0046】
上述のラジカル重合開始剤は、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、L-アスコルビン酸等の還元剤と併用して、レドックス重合開始剤として用いることもできる。
【0047】
重合反応の際、重合に用いる単量体水溶液は、連鎖移動剤を含んでいてもよい。連鎖移動剤としては、次亜リン酸塩類、チオール類、チオール酸類、第2級アルコール類、アミン類等が挙げられる。
【0048】
吸水性樹脂粒子の粒子径を制御するために、重合に用いる単量体水溶液は、増粘剤を含んでいてもよい。増粘剤としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等が挙げられる。なお、重合時の撹拌速度が同じであれば、単量体水溶液の粘度が高いほど、得られる粒子の中位粒子径は大きくなる傾向にある。
【0049】
重合の際に自己架橋による架橋が生じ得るが、内部架橋剤を用いることで架橋を施してもよい。内部架橋剤を用いると、吸水性樹脂粒子の吸水特性(保水量等)を制御しやすい。内部架橋剤は、通常、重合反応の際に反応液に添加される。内部架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール類のジ又はトリ(メタ)アクリル酸エステル類;上述のポリオール類と不飽和酸(マレイン酸、フマール酸等)とを反応させて得られる不飽和ポリエステル類;N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド等のビス(メタ)アクリルアミド類;ポリエポキシドと(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるジ又はトリ(メタ)アクリル酸エステル類;ポリイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等)と(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとを反応させて得られるジ(メタ)アクリル酸カルバミルエステル類;アリル化澱粉、アリル化セルロース、ジアリルフタレート、N,N’,N”-トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン等の、重合性不飽和基を2個以上有する化合物;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、α-メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物;イソシアネート化合物(2,4-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等)などの、反応性官能基を2個以上有する化合物などが挙げられる。内部架橋剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。内部架橋剤としては、ポリグリシジル化合物が好ましく、ジグリシジルエーテル化合物がより好ましく、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、及び、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一種が更に好ましい。
【0050】
内部架橋剤の使用量は、吸収性物品において優れた浸透速度を得やすい観点、及び、得られる重合体が適度に架橋されることにより水溶性の性質が抑制され、充分な吸水量が得られやすい観点から、エチレン性不飽和単量体1モル当たり、30ミリモル以下が好ましく、0.01~10ミリモルがより好ましく、0.012~5ミリモルが更に好ましく、0.015~1ミリモルが特に好ましく、0.02~0.1ミリモルが極めて好ましく、0.025~0.06ミリモルが非常に好ましい。
【0051】
エチレン性不飽和単量体、ラジカル重合開始剤、界面活性剤、高分子系分散剤、炭化水素分散媒等(必要に応じて更に内部架橋剤)を混合した状態において撹拌下で加熱し、油中水系において逆相懸濁重合を行うことができる。
【0052】
逆相懸濁重合を行う際には、界面活性剤(必要に応じて更に高分子系分散剤)の存在下で、エチレン性不飽和単量体を含む単量体水溶液を炭化水素分散媒に分散させる。このとき、重合反応を開始する前であれば、界面活性剤、高分子系分散剤等の添加時期は、単量体水溶液の添加の前後どちらであってもよい。
【0053】
その中でも、得られる吸水性樹脂に残存する炭化水素分散媒の量を低減しやすい観点から、高分子系分散剤を分散させた炭化水素分散媒に単量体水溶液を分散させた後に界面活性剤を更に分散させてから重合を行うことが好ましい。
【0054】
逆相懸濁重合は、1段、又は、2段以上の多段で行うことができる。逆相懸濁重合は、生産性を高める観点から、2~3段で行うことが好ましい。
【0055】
2段以上の多段で逆相懸濁重合を行う場合には、1段目の逆相懸濁重合を行った後、1段目の重合反応で得られた反応混合物にエチレン性不飽和単量体を添加して混合し、1段目と同様の方法で2段目以降の逆相懸濁重合を行えばよい。2段目以降の各段における逆相懸濁重合では、エチレン性不飽和単量体の他に、上述のラジカル重合開始剤及び/又は内部架橋剤を、2段目以降の各段における逆相懸濁重合の際に添加するエチレン性不飽和単量体の量を基準として、上述のエチレン性不飽和単量体に対する各成分のモル比の範囲内で添加して逆相懸濁重合を行うことが好ましい。なお、2段目以降の各段における逆相懸濁重合では、必要に応じて内部架橋剤を用いてもよい。内部架橋剤を用いる場合は、各段に供するエチレン性不飽和単量体の量を基準として、上述のエチレン性不飽和単量体に対する各成分のモル比の範囲内で添加して逆相懸濁重合を行うことが好ましい。
【0056】
重合反応の温度は、使用するラジカル重合開始剤によって異なるが、重合を迅速に進行させ、重合時間を短くすることにより、経済性を高めると共に、容易に重合熱を除去して円滑に反応を行う観点から、20~150℃が好ましく、40~120℃がより好ましい。反応時間は、通常、0.5~4時間である。重合反応の終了は、例えば、反応系内の温度上昇の停止により確認することができる。これにより、エチレン性不飽和単量体の重合体は、通常、含水ゲルの状態で得られる。
【0057】
重合後、得られた含水ゲル状重合体に重合後架橋剤を添加して加熱することで架橋を施してもよい。重合後に架橋を行うことで含水ゲル状重合体の架橋度を高めて吸水特性(保水量等)を更に向上させることができる。
【0058】
重合後架橋剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル等の、2個以上のエポキシ基を有する化合物;エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、α-メチルエピクロルヒドリン等のハロエポキシ化合物;2,4-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の、2個以上のイソシアネート基を有する化合物;1,2-エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物;エチレンカーボネート等のカーボネート化合物;ビス[N,N-ジ(β-ヒドロキシエチル)]アジプアミド等のヒドロキシアルキルアミド化合物などが挙げられる。これらの中でも、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物が好ましい。架橋剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0059】
重合後架橋剤の量は、得られる含水ゲル状重合体が適度に架橋されることにより、好適な吸水特性(保水量等)が得られやすい観点から、エチレン性不飽和単量体1モル当たり、30ミリモル以下が好ましく、10ミリモル以下がより好ましく、0.01~5ミリモルが更に好ましく、0.012~1ミリモルが特に好ましく、0.015~0.1ミリモルが極めて好ましく、0.02~0.05ミリモルが非常に好ましい。
【0060】
重合後架橋剤の添加時期としては、重合に用いられるエチレン性不飽和単量体の重合後であればよく、多段重合の場合は、多段重合後に添加されることが好ましい。なお、重合時及び重合後の発熱、工程遅延による滞留、架橋剤添加時の系の開放、及び架橋剤添加に伴う水の添加等による水分の変動を考慮して、重合後架橋剤は、含水率(後述)の観点から、[重合直後の含水率±3質量%]の領域で添加することが好ましい。
【0061】
引き続き、得られた含水ゲル状重合体から水分を除去するために乾燥を行うことにより重合体粒子(例えば、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する重合体粒子)が得られる。乾燥方法としては、例えば、(a)含水ゲル状重合体が炭化水素分散媒に分散した状態で、外部から加熱することにより共沸蒸留を行い、炭化水素分散媒を還流させて水分を除去する方法、(b)デカンテーションにより含水ゲル状重合体を取り出し、減圧乾燥する方法、(c)フィルターにより含水ゲル状重合体をろ別し、減圧乾燥する方法等が挙げられる。中でも、製造工程における簡便さから、(a)の方法を用いることが好ましい。
【0062】
重合反応時の撹拌機の回転数を調整することによって、あるいは、重合反応後又は乾燥の初期において凝集剤を系内に添加することによって吸水性樹脂粒子の粒子径を調整することができる。凝集剤を添加することにより、得られる吸水性樹脂粒子の粒子径を大きくすることができる。凝集剤としては、無機凝集剤を用いることができる。無機凝集剤(例えば粉末状無機凝集剤)としては、シリカ、ゼオライト、ベントナイト、酸化アルミニウム、タルク、二酸化チタン、カオリン、クレイ、ハイドロタルサイト等が挙げられる。凝集効果に優れる観点から、凝集剤としては、シリカ、酸化アルミニウム、タルク及びカオリンからなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。
【0063】
逆相懸濁重合において、凝集剤を添加する方法としては、重合で用いられるものと同種の炭化水素分散媒又は水に凝集剤を予め分散させてから、撹拌下で、含水ゲル状重合体を含む炭化水素分散媒中に混合する方法が好ましい。
【0064】
凝集剤の添加量は、重合に使用するエチレン性不飽和単量体100質量部に対して、0.001~1質量部が好ましく、0.005~0.5質量部がより好ましく、0.01~0.2質量部が更に好ましい。凝集剤の添加量が上述の範囲内であることによって、目的とする粒度分布を有する吸水性樹脂粒子が得られやすい。
【0065】
吸水性樹脂粒子の製造においては、乾燥工程(水分除去工程)又はそれ以降の工程において、表面架橋剤を用いて含水ゲル状重合体の表面部分(表面及び表面近傍)の表面架橋が行われることが好ましい。表面架橋を行うことで、吸水性樹脂粒子のゲルフローレート、吸水特性(保水量等)などを制御しやすい。表面架橋は、含水ゲル状重合体が特定の含水率であるタイミングで行われることが好ましい。表面架橋の時期は、含水ゲル状重合体の含水率が5~50質量%である時点が好ましく、10~40質量%である時点がより好ましく、15~35質量%である時点が更に好ましい。なお、含水ゲル状重合体の含水率(質量%)は、次の式で算出される。
含水率=[Ww/(Ww+Ws)]×100
Ww:全重合工程の重合前の単量体水溶液に含まれる水分量から、乾燥工程により系外部に排出された水分量を差し引いた量に、凝集剤、表面架橋剤等を混合する際に必要に応じて用いられる水分量を加えた含水ゲル状重合体の水分量。
Ws:含水ゲル状重合体を構成するエチレン性不飽和単量体、架橋剤、開始剤等の材料の仕込量から算出される固形分量。
【0066】
表面架橋剤としては、例えば、反応性官能基を2個以上有する化合物を挙げることができる。表面架橋剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール類;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、α-メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物;2,4-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物;3-メチル-3-オキセタンメタノール、3-エチル-3-オキセタンメタノール、3-ブチル-3-オキセタンメタノール、3-メチル-3-オキセタンエタノール、3-エチル-3-オキセタンエタノール、3-ブチル-3-オキセタンエタノール等のオキセタン化合物;1,2-エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物;エチレンカーボネート等のカーボネート化合物;ビス[N,N-ジ(β-ヒドロキシエチル)]アジプアミド等のヒドロキシアルキルアミド化合物などが挙げられる。表面架橋剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。表面架橋剤としては、ポリグリシジル化合物が好ましく、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、及び、ポリグリセロールポリグリシジルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一種がより好ましい。
【0067】
表面架橋剤の使用量は、好適な吸水特性(保水量等)が得られやすい観点から、重合に使用するエチレン性不飽和単量体1モルに対して、0.01~20ミリモルが好ましく、0.05~10ミリモルがより好ましく、0.1~5ミリモルが更に好ましく、0.15~1ミリモルが特に好ましく、0.2~0.5ミリモルが極めて好ましい。
【0068】
表面架橋後において、公知の方法で水及び炭化水素分散媒を留去すること、加熱減圧下で乾燥すること等により、表面架橋された乾燥品である重合体粒子を得ることができる。
【0069】
重合反応は、撹拌翼を有する各種撹拌機を用いて行うことができる。撹拌翼としては、平板翼、格子翼、パドル翼、プロペラ翼、アンカー翼、タービン翼、ファウドラー翼、リボン翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼等を用いることができる。平板翼は、軸(撹拌軸)と、軸の周囲に配置された平板部(撹拌部)とを有している。平板部は、スリット等を有していてもよい。撹拌翼として平板翼を用いた場合には、重合体粒子における架橋反応を均一に行いやすく、保水量等の吸水特性を維持しながらゲルフローレートを増加させて好適な範囲に調整しやすい。
【0070】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、重合体粒子に加えて、例えば、ゲル安定剤、金属キレート剤(エチレンジアミン4酢酸及びその塩、ジエチレントリアミン5酢酸及びその塩、例えばジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム等)、重合体粒子の流動性向上剤(滑剤)等の追加成分を更に含むことができる。追加成分は、重合体粒子の内部、重合体粒子の表面上、又は、これらの両方に配置され得る。
【0071】
吸水性樹脂粒子は、重合体粒子の表面上に配置された複数の無機粒子を含んでいてもよい。例えば、重合体粒子と無機粒子とを混合することにより、重合体粒子の表面上に無機粒子を配置することができる。この無機粒子は、非晶質シリカ等のシリカ粒子であってもよい。
【0072】
吸水性樹脂粒子が、重合体粒子の表面上に配置された無機粒子を含む場合、無機粒子の含有量は、重合体粒子の全質量を基準として下記の範囲であってよい。無機粒子の含有量は、0.05質量%以上、0.1質量%以上、0.15質量%以上、又は、0.2質量%以上であってよい。無機粒子の含有量は、5.0質量%以下、3.0質量%以下、1.0質量%以下、又は、0.5質量%以下であってよい。
【0073】
ここでの無機粒子は、通常、重合体粒子の大きさと比較して微小な大きさを有する。例えば、無機粒子の平均粒子径は、0.1~50μm、0.5~30μm、又は、1~20μmであってよい。平均粒子径は、粒子の特性に応じて、細孔電気抵抗法又はレーザー回折・散乱法によって測定できる。
【0074】
本実施形態に係る吸収体は、本実施形態に係る吸水性樹脂粒子を含有する。本実施形態に係る吸収体は、繊維状物を含有していてもよく、例えば、吸水性樹脂粒子及び繊維状物を含む混合物である。吸収体の構成としては、例えば、吸水性樹脂粒子及び繊維状物が均一混合された構成であってよく、シート状又は層状に形成された繊維状物の間に吸水性樹脂粒子が挟まれた構成であってもよく、その他の構成であってもよい。
【0075】
繊維状物としては、微粉砕された木材パルプ;コットン;コットンリンター;レーヨン;セルロースアセテート等のセルロース系繊維;ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン等の合成繊維;これらの繊維の混合物などが挙げられる。繊維状物は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。繊維状物としては、親水性繊維を用いることができる。
【0076】
吸収体の使用前及び使用中における形態保持性を高めるために、繊維状物に接着性バインダーを添加することによって繊維同士を接着させてもよい。接着性バインダーとしては、熱融着性合成繊維、ホットメルト接着剤、接着性エマルジョン等が挙げられる。接着性バインダーは、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0077】
熱融着性合成繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等の全融型バインダー;ポリプロピレンとポリエチレンとのサイドバイサイド又は芯鞘構造からなる非全融型バインダーなどが挙げられる。上述の非全融型バインダーにおいては、ポリエチレン部分のみ熱融着することができる。
【0078】
ホットメルト接着剤としては、例えば、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマー、アモルファスポリプロピレン等のベースポリマーと、粘着付与剤、可塑剤、酸化防止剤等との混合物が挙げられる。
【0079】
接着性エマルジョンとしては、例えば、メチルメタクリレート、スチレン、アクリロニトリル、2-エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、ブタジエン、エチレン、及び、酢酸ビニルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体の重合物が挙げられる。
【0080】
本実施形態に係る吸収体は、無機粉末(例えば非晶質シリカ)、消臭剤、抗菌剤、顔料、染料、香料、粘着剤等を含有してもよい。吸水性樹脂粒子が無機粒子を含む場合、吸収体は、吸水性樹脂粒子中の無機粒子とは別に無機粉末を含有してよい。
【0081】
本実施形態に係る吸収体の形状は、例えばシート状であってよい。吸収体の厚さ(例えば、シート状の吸収体の厚さ)は、0.1~20mm又は0.3~15mmであってよい。
【0082】
吸収体における吸水性樹脂粒子の含有量は、吸収体の全質量、又は、吸水性樹脂粒子及び繊維状物の合計を基準として下記の範囲が好ましい。吸水性樹脂粒子の含有量は、充分な吸水特性を得やすい観点から、2質量%以上、10質量%以上、20質量%以上又は50質量%以上が好ましい。吸水性樹脂粒子の含有量は、100質量%以下であり、充分な吸水特性を得やすい観点から、80質量%以下、70質量%以下又は60質量%以下が好ましい。これらの観点から、吸水性樹脂粒子の含有量は、2~100質量%、10~80質量%、20~70質量%又は50~60質量%が好ましい。
【0083】
吸収体における吸水性樹脂粒子の含有量は、充分な吸水特性を得やすい観点から、吸収体1m2当たり、100~1000gが好ましく、150~800gがより好ましく、200~700gが更に好ましい。吸収体における繊維状物の含有量は、充分な吸水特性を得やすい観点から、吸収体1m2あたり、50~800gが好ましく、100~600gがより好ましく、150~500gが更に好ましい。
【0084】
本実施形態に係る吸収性物品は、本実施形態に係る吸収体を備える。本実施形態に係る吸収性物品の他の構成部材としては、吸収体を保形すると共に吸収体の構成部材の脱落や流動を防止するコアラップ;吸液対象の液が浸入する側の最外部に配置される液体透過性シート;吸液対象の液が浸入する側とは反対側の最外部に配置される液体不透過性シート等が挙げられる。吸収性物品としては、おむつ(例えば紙おむつ)、トイレトレーニングパンツ、失禁パッド、衛生材料(生理用ナプキン、タンポン等)、汗取りパッド、ペットシート、簡易トイレ用部材、動物排泄物処理材などが挙げられる。
【0085】
図1は、吸収性物品の一例を示す断面図である。
図1に示す吸収性物品100は、吸収体10と、コアラップ20a,20bと、液体透過性シート30と、液体不透過性シート40と、を備える。吸収性物品100において、液体不透過性シート40、コアラップ20b、吸収体10、コアラップ20a、及び、液体透過性シート30がこの順に積層している。
図1において、部材間に間隙があるように図示されている部分があるが、当該間隙が存在することなく部材間が密着していてよい。
【0086】
吸収体10は、本実施形態に係る吸水性樹脂粒子10aと、繊維状物を含む繊維層10bと、を有する。吸水性樹脂粒子10aは、繊維層10b内に分散している。
【0087】
コアラップ20aは、吸収体10に接した状態で吸収体10の一方面側(
図1中、吸収体10の上側)に配置されている。コアラップ20bは、吸収体10に接した状態で吸収体10の他方面側(
図1中、吸収体10の下側)に配置されている。吸収体10は、コアラップ20aとコアラップ20bとの間に配置されている。コアラップ20a,20bとしては、ティッシュ、不織布、織布、液体透過孔を有する合成樹脂フィルム、網目を有するネット状シート等が挙げられる。コアラップ20a及びコアラップ20bは、例えば、吸収体10と同等の大きさの主面を有している。
【0088】
液体透過性シート30は、吸収対象の液が浸入する側の最外部に配置されている。液体透過性シート30は、コアラップ20aに接した状態でコアラップ20a上に配置されている。液体透過性シート30としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等の合成樹脂からなる不織布、多孔質シートなどが挙げられる。液体不透過性シート40は、吸収性物品100において液体透過性シート30とは反対側の最外部に配置されている。液体不透過性シート40は、コアラップ20bに接した状態でコアラップ20bの下側に配置されている。液体不透過性シート40としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂からなるシート、これらの合成樹脂と不織布との複合材料からなるシートなどが挙げられる。液体透過性シート30及び液体不透過性シート40は、例えば、吸収体10の主面よりも広い主面を有しており、液体透過性シート30及び液体不透過性シート40の外縁部は、吸収体10及びコアラップ20a,20bの周囲に延在している。
【0089】
吸収体10、コアラップ20a,20b、液体透過性シート30、及び、液体不透過性シート40の大小関係は、特に限定されず、吸収性物品の用途等に応じて適宜調整される。また、コアラップ20a,20bを用いて吸収体10を保形する方法は、特に限定されず、
図1に示すように複数のコアラップにより吸収体を包んでよく、1枚のコアラップにより吸収体を包んでもよい。
【0090】
吸収体は、トップシートに接着されていてもよい。吸収体がコアラップにより挟持又は被覆されている場合、少なくともコアラップとトップシートとが接着されていることが好ましく、コアラップとトップシートとが接着されていると共にコアラップと吸収体とが接着されていることがより好ましい。吸収体の接着方法としては、ホットメルト接着剤をトップシートに対して所定間隔で幅方向にストライプ状、スパイラル状等に塗布して接着する方法;デンプン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、その他の水溶性高分子等の水溶性バインダーを用いて接着する方法などが挙げられる。また、吸収体が熱融着性合成繊維を含む場合、熱融着性合成繊維の熱融着によって接着する方法を採用してもよい。
【0091】
本実施形態によれば、本実施形態に係る吸水性樹脂粒子、吸収体又は吸収性物品を用いた吸液方法を提供することができる。本実施形態に係る吸液方法は、本実施形態に係る吸水性樹脂粒子、吸収体又は吸収性物品に吸液対象の液を接触させる工程を備える。
【0092】
本実施形態によれば、吸収性物品における浸透速度(液体の浸透速度)の調整方法であって、本実施形態に係る吸水性樹脂粒子、吸収体又は吸収性物品を用いた浸透速度の調整方法(例えば向上方法)を提供することができる。本実施形態に係る浸透速度の調整方法は、本実施形態に係る吸水性樹脂粒子に関して上述した(1)~(3)の手順により測定されるゲルフローレートを調整する調整工程を備える。調整工程では、ゲルフローレートを上述の各範囲(例えば10~70g/min)に調整することができる。
【0093】
本実施形態によれば、本実施形態に係る吸水性樹脂粒子に関して上述した(1)~(3)の手順により測定されるゲルフローレートに基づき吸水性樹脂粒子を選定する選定工程を備える、吸水性樹脂粒子の製造方法を提供することができる。選定工程では、ゲルフローレートを上述の各範囲(例えば10~70g/min)に調整することができる。
【0094】
本実施形態によれば、上述の吸水性樹脂粒子の製造方法により得られた吸水性樹脂粒子を用いた、吸収体の製造方法を提供することができる。本実施形態に係る吸収体の製造方法は、上述の吸水性樹脂粒子の製造方法により吸水性樹脂粒子を得る粒子製造工程を備える。本実施形態に係る吸収体の製造方法は、粒子製造工程の後に、吸水性樹脂粒子と繊維状物とを混合する工程を備えてよい。本実施形態によれば、上述の吸収体の製造方法により得られた吸収体を用いた、吸収性物品の製造方法を提供することができる。本実施形態に係る吸収性物品の製造方法は、上述の吸収体の製造方法により吸収体を得る吸収体製造工程を備える。本実施形態に係る吸収性物品の製造方法は、吸収体製造工程の後に、吸収体と吸収性物品の他の構成部材とを用いて吸収性物品を得る工程を備えてよく、当該工程では、例えば、吸収体と吸収性物品の他の構成部材とを互いに積層することにより吸収性物品を得る。
【実施例】
【0095】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明の内容を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0096】
<吸水性樹脂粒子の製造>
(実施例1)
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、及び、撹拌機を備えた内径11cm、内容積2Lの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。撹拌機には、
図2に概形を示す撹拌翼(平板翼)200を取り付けた。撹拌翼200は、軸200a及び平板部200bを備えている。平板部200bは、軸200aに溶接されていると共に、湾曲した先端を有している。平板部200bには、軸200aの軸方向に沿って延びる4つのスリットSが形成されている。4つのスリットSは平板部200bの幅方向に配列されており、内側の二つのスリットSの幅は1cmであり、外側二つのスリットSの幅は0.5cmである。平板部200bの長さは約10cmであり、平板部200bの幅は約6cmである。続いて、上述のセパラブルフラスコに、炭化水素分散媒としてn-ヘプタン293gを添加し、高分子系分散剤として無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社製、ハイワックス1105A)0.736gを添加することにより混合物を得た。この混合物を撹拌しつつ80℃まで昇温することにより分散剤を溶解した後、混合物を50℃まで冷却した。
【0097】
次に、内容積300mLのビーカーに、水溶性エチレン性不飽和単量体として80.5質量%のアクリル酸水溶液92.0g(アクリル酸:1.03モル)を添加した。続いて、外部より冷却しつつ、20.9質量%の水酸化ナトリウム水溶液147.7gをビーカー内に滴下することにより75モル%の中和を行った。その後、増粘剤としてヒドロキシルエチルセルロース0.092g(住友精化株式会社製、HEC AW-15F)、水溶性ラジカル重合開始剤として2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩0.092g(0.339ミリモル)及び過硫酸カリウム0.018g(0.067ミリモル)、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.0046g(0.026ミリモル)を加えて溶解させることにより第1段目の水性液を調製した。
【0098】
そして、撹拌機の回転数425rpmで撹拌しながら上述の第1段目の水性液を上述のセパラブルフラスコに添加した後、10分間撹拌した。その後、n-ヘプタン6.62gにショ糖ステアリン酸エステル(界面活性剤、三菱化学フーズ株式会社製、リョートーシュガーエステルS-370、HLB値:3)0.736gを加熱溶解することにより得られた界面活性剤溶液をセパラブルフラスコに添加した。そして、撹拌機の回転数425rpmで撹拌しながら系内を窒素で充分に置換した。その後、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を60分間行うことにより第1段目の重合スラリー液を得た。
【0099】
次に、内容積500mLの別のビーカーに水溶性エチレン性不飽和単量体として80.5質量%のアクリル酸水溶液128.8g(アクリル酸:1.43モル)を添加した。続いて、外部より冷却しつつ、27質量%の水酸化ナトリウム水溶液159.0gをビーカー内に滴下することにより75モル%の中和を行った。その後、水溶性ラジカル重合開始剤として2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩0.129g(0.476ミリモル)及び過硫酸カリウム0.026g(0.096ミリモル)を加えると共に内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.0117g(0.067ミリモル)を加えた後に溶解させることにより第2段目の水性液を調製した。
【0100】
次に、撹拌機の回転数650rpmで撹拌しながら、上述のセパラブルフラスコ内を25℃に冷却した後、上述の第2段目の水性液の全量を上述の第1段目の重合スラリー液に添加した。続いて、系内を窒素で30分間置換した後、再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合反応を60分間行うことにより第2段目の含水ゲル状重合体を得た。
【0101】
上述の第2段目の含水ゲル状重合体に45質量%のジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム水溶液0.589gを撹拌下で添加した。その後、125℃の油浴で反応液を昇温し、n-ヘプタンと水との共沸蒸留によりn-ヘプタンを還流しながら207.9gの水を系外へ抜き出した。そして、フラスコに表面架橋剤として2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液4.42g(エチレングリコールジグリシジルエーテル:0.507ミリモル)を添加した後、83℃で2時間保持した。
【0102】
その後、n-ヘプタンを125℃にて蒸発させて乾燥させることによって重合体粒子(乾燥品)を得た。この重合体粒子を目開き850μmの篩を通過させた後、重合体粒子の全質量を基準として0.2質量%の非晶質シリカ(オリエンタルシリカズコーポレーション社製、トクシールNP-S)を重合体粒子に混合することにより、非晶質シリカを含む吸水性樹脂粒子を232.3g得た。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は361μmであった。
【0103】
(実施例2)
第2段目の重合後の含水ゲル状重合体において、共沸蒸留により224.3gの水を系外へ抜き出したこと以外は、実施例1と同様にして、吸水性樹脂粒子231.0gを得た。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は342μmであった。
【0104】
(実施例3)
第2段目の重合後の含水ゲル状重合体において、共沸蒸留により234.6gの水を系外へ抜き出したこと以外は、実施例1と同様にして、吸水性樹脂粒子232.1gを得た。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は355μmであった。
【0105】
(比較例1)
無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体を溶解させる際に、撹拌機として、平板翼に代えて、翼径5cmの4枚傾斜パドル翼を2段有する撹拌翼を用いたこと、第1段目の水性液の調製において、水溶性ラジカル重合開始剤として2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩を用いずに、過硫酸カリウム0.0736g(0.272ミリモル)を用いると共に、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.010g(0.057ミリモル)を用いたこと、第1段目の重合スラリー液の調製において撹拌機の回転数を550rpmへ変更したこと、第2段目の水性液の調製において、水溶性ラジカル重合開始剤として2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩を用いずに、過硫酸カリウム0.090g(0.333ミリモル)を用いると共に内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.0117g(0.067ミリモル)を用いたこと、第2段目の水性液の全量を第1段目の重合スラリー液に添加する際の撹拌機の回転数を1000rpmへ変更したこと、第2段目の重合後の含水ゲル状重合体に添加する45質量%のジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム水溶液の使用量を0.265gへ変更すると共に、共沸蒸留により247.9gの水を系外へ抜き出したこと、及び、重合体粒子の質量に対して0.5質量%の非晶質シリカを重合体粒子と混合したこと以外は、実施例1と同様にして、吸水性樹脂粒子231.0gを得た。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は355μmであった。
【0106】
(比較例2)
第2段目の重合後の含水ゲル状重合体において、共沸蒸留により253.9gの水を系外へ抜き出したこと、及び、重合体粒子の質量に対して0.1質量%の非晶質シリカを重合体粒子と混合したこと以外は、比較例1と同様にして、吸水性樹脂粒子230.8gを得た。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は360μmであった。
【0107】
(比較例3)
第2段目の重合後の含水ゲル状重合体において、共沸蒸留により271.4gの水を系外へ抜き出したこと、及び、当該共沸蒸留の後に添加する2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液の使用量を6.40g(0.735ミリモル)へ変更したこと以外は、比較例1と同様にして、吸水性樹脂粒子230.6gを得た。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は355μmであった。
【0108】
(比較例4)
第2段目の重合後の含水ゲル状重合体において、共沸蒸留により278.9gの水を系外へ抜き出したこと、及び、重合体粒子の質量に対して0.2質量%の非晶質シリカを重合体粒子と混合したこと以外は、比較例1と同様にして、吸水性樹脂粒子230.8gを得た。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は358μmであった。
【0109】
(比較例5)
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、及び、撹拌機(翼径5cmの4枚傾斜パドル翼を2段有する撹拌翼)を備えた内径11cm、内容積2Lの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコに、炭化水素分散媒としてn-ヘプタン300gを添加し、高分子系分散剤として無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社製、ハイワックス1105A)0.74gを添加することにより混合物を得た。この混合物を撹拌しつつ分散剤を加温溶解した後、混合物を50℃まで冷却した。
【0110】
次に、内容積500mLの三角フラスコに、水溶性エチレン性不飽和単量体として80質量%のアクリル酸水溶液92g(アクリル酸:1.02モル)を添加した。続いて、外部より冷却しつつ、30質量%の水酸化ナトリウム水溶液102.2gをフラスコ内に滴下することにより75モル%の中和を行った。その後、増粘剤としてヒドロキシルエチルセルロース0.092g(住友精化株式会社製、HEC AW-15F)と、水溶性ラジカル重合開始剤として2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩0.110g(0.407ミリモル)及び過硫酸カリウム0.009g(0.034ミリモル)と、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.006g(0.037ミリモル)と、イオン交換水48.0gとを加えて溶解させることにより第1段目の水性液を調製した。
【0111】
そして、撹拌機の回転数550rpmで撹拌しながら上述の第1段目の水性液を上述のセパラブルフラスコに添加した後、10分間撹拌した。その後、n-ヘプタン6.66gにショ糖ステアリン酸エステル(界面活性剤、三菱化学フーズ株式会社製、リョートーシュガーエステルS-370、HLB値:3)0.74gを加熱溶解することにより得られた界面活性剤溶液7.4gに添加した。そして、撹拌機の回転数550rpmで撹拌しながら系内を窒素で充分に置換した。その後、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を60分間行うことにより第1段目の重合スラリー液を得た。
【0112】
次に、内容積500mLの別の三角フラスコに水溶性エチレン性不飽和単量体として80質量%のアクリル酸水溶液128.8g(アクリル酸:1.43モル)を添加した。続いて、外部より冷却しつつ、30質量%の水酸化ナトリウム水溶液143.1gを三角フラスコ内に滴下することにより75モル%の中和を行った。その後、水溶性ラジカル重合開始剤として2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩0.155g(0.570ミリモル)及び過硫酸カリウム0.013g(0.048ミリモル)と、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.009g(0.052ミリモル)と、イオン交換水12.5gとを加えた後に溶解させることにより第2段目の水性液を調製した。
【0113】
次に、撹拌機の回転数1000rpmで撹拌しながら、上述のセパラブルフラスコ内を25℃に冷却した後、上述の第2段目の水性液の全量を上述の第1段目の重合スラリー液に添加した。続いて、系内を窒素で充分に置換した後、再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、第2段目の重合を30分間行った。
【0114】
第2段目の重合後、125℃の油浴で第2段目の反応液を昇温し、n-ヘプタンと水との共沸蒸留によりn-ヘプタンを還流しながら245gの水を系外へ抜き出した。そして、n-ヘプタンを蒸発させて乾燥させることによって重合体粒子(乾燥品)を得た。この重合体粒子を目開き1000μmの篩を通過させることにより吸水性樹脂粒子233.2gを得た。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は370μmであった。
【0115】
<中位粒子径>
吸水性樹脂粒子の上述の中位粒子径は下記手順により測定した。すなわち、JIS標準篩を上から、目開き600μmの篩、目開き500μmの篩、目開き425μmの篩、目開き300μmの篩、目開き250μmの篩、目開き180μmの篩、目開き150μmの篩、及び、受け皿の順に組み合わせた。組み合わせた最上の篩に、吸水性樹脂粒子50gを入れ、ロータップ式振とう器(株式会社飯田製作所製)を用いてJIS Z 8815(1994)に準じて分級した。分級後、各篩上に残った粒子の質量を全量に対する質量百分率として算出し粒度分布を求めた。この粒度分布に関して粒子径の大きい方から順に篩上を積算することにより、篩の目開きと篩上に残った粒子の質量百分率の積算値との関係を対数確率紙にプロットした。確率紙上のプロットを直線で結ぶことにより、積算質量百分率50質量%に相当する粒子径を中位粒子径として得た。
【0116】
<吸水性樹脂粒子の保水量>
吸水性樹脂粒子の生理食塩水の保水量(室温、25±2℃)を下記手順で測定した。まず、吸水性樹脂粒子2.0gを量り取った綿袋(メンブロード60番、横100mm×縦200mm)を内容積500mLのビーカー内に設置した。吸水性樹脂粒子の入った綿袋内に生理食塩水500gを、ママコができないように一度に注ぎ込んだ後、綿袋の上部を輪ゴムで縛り、30分静置させることで吸水性樹脂粒子を膨潤させた。30分経過後の綿袋を、遠心力が167Gとなるように設定した脱水機(株式会社コクサン製、品番:H-122)を用いて1分間脱水した後、脱水後の膨潤ゲルを含んだ綿袋の質量Wa[g]を測定した。吸水性樹脂粒子を添加せずに同様の操作を行い、綿袋の湿潤時の空質量Wb[g]を測定し、下記式から吸水性樹脂粒子の生理食塩水の保水量を算出した。結果を表1に示す。
保水量[g/g]=(Wa-Wb)/2.0
【0117】
<吸水性樹脂粒子の荷重下の吸水量>
吸水性樹脂粒子の荷重下の生理食塩水の吸水量(室温、25℃±2℃)を、
図3に示す測定装置Yを用いて測定した。測定装置Yは、ビュレット部61、導管62、測定台63、及び、測定台63上に置かれた測定部64から構成される。ビュレット部61は、鉛直方向に伸びるビュレット61aと、ビュレット61aの上端に配置されたゴム栓61bと、ビュレット61aの下端に配置されたコック61cと、コック61cの近傍において一端がビュレット61a内に伸びる空気導入管61dと、空気導入管61dの他端側に配置されたコック61eとを有している。導管62は、ビュレット部61と測定台63との間に取り付けられている。導管62の内径は6mmである。測定台63の中央部には、直径2mmの穴があいており、導管62が連結されている。測定部64は、円筒64a(アクリル樹脂製)と、円筒64aの底部に接着されたナイロンメッシュ64bと、重り64cとを有している。円筒64aの内径は20mmである。ナイロンメッシュ64bの目開きは75μm(200メッシュ)である。そして、測定時にはナイロンメッシュ64b上に測定対象の吸水性樹脂粒子66が均一に撒布される。重り64cの直径は19mmであり、重り64cの質量は119.6gである。重り64cは、吸水性樹脂粒子66上に置かれ、吸水性樹脂粒子66に対して4.14kPaの荷重を加えることができる。
【0118】
測定装置Yの円筒64aの中に0.100gの吸水性樹脂粒子66を入れた後、重り64cを載せて測定を開始した。吸水性樹脂粒子66が吸水した生理食塩水と同容積の空気が、空気導入管より、速やかにかつスムーズにビュレット61aの内部に供給されるため、ビュレット61aの内部の生理食塩水の水位の減量が、吸水性樹脂粒子66が吸水した生理食塩水量となる。ビュレット61aの目盛は、上から下方向に0mLから0.5mL刻みで刻印されており、生理食塩水の水位として、吸水開始前のビュレット61aの目盛りVaと、吸水開始から120分後のビュレット61aの目盛りVbとを読み取り、下記式より荷重下の吸水量を算出した。結果を表1に示す。
荷重下の吸水量[mL/g]=(Vb-Va)/0.1
【0119】
<ゲルフローレート>
(膨潤ゲルの作製)
内容積1000mLのビーカーにイオン交換水398gを量り取った。次に、マグネチックスターラーバー(8mmφ×30mm、リング無し)を用いて1000rpmでイオン交換水を撹拌させながら、ママコができないように吸水性樹脂粒子2.0gをイオン交換水(室温(25℃±2℃))に分散させた。撹拌を続けながら30分間放置し、吸水性樹脂粒子を充分に膨潤させて膨潤ゲルを得た。
【0120】
図4に示す測定装置Zを用いてゲルフローレート(膨潤ゲルの流動性、室温(25℃±2℃))を測定した。測定装置Zは、ロート71と、ダンパー73と、円筒75と、受器77と、を備える。
【0121】
ロート71は、開口として、膨潤ゲルを供給する供給口(上端開口。直径(内径):91mm)、及び、膨潤ゲルを排出する排出口(下端開口。直径(内径):8mm)を有しており、供給口から排出口に至るに伴い狭まるテーパー形状を有している。ロート71の側壁の傾斜角度は、ロート71の軸方向に対して20°である。ロート71における供給口から排出口までの長さは、114mmである。供給口及び排出口を含むロート71の軸方向に垂直な断面は、円形である。ロート71の構成材料は、ステンレスである。ロート71は、供給口側の外周部を支持リングにより把持されて固定される。
【0122】
ダンパー73は、長さ47mm、幅15mmの部材である。ダンパー73は、ロート71の排出口に配置されており、ロート71の排出口を開閉させる。円筒75は、長さ35mm、内径20mmの部材である。円筒75は、ロート71の排出口側の部分が内部に位置するようにロート71の排出口側に配置されている。受器77は、内容積500mLのビーカー(サンプラテック株式会社製、サンプラカップ500mL)である。
【0123】
まず、水平計を用いて、測定装置Zのロート71の上端面が実験台に対して水平に設置されていることを確認した。次に、ダンパー73で排出口を閉止した状態でロート71に上述の膨潤ゲル250gを収容した後、3分間静置させた。ダンパー73(排出口)から38mm下に受器77の上端が位置する状態でダンパー73を速やかに引き抜くことで排出口を開放した。開放して3分経過したときに受器77をスライドさせて、排出口の下のゲルが流れ出る位置から受器77を外し、受器77に流れ出た膨潤ゲルの質量(ゲルフロー量)を測定した。そして、下記式より、ゲルフローレートとして単位時間あたりの流出量を算出した。結果を表1に示す。
ゲルフローレート[g/min]=ゲルフロー量[g]/3[min]
【0124】
<吸収性物品の作製>
気流型混合装置(有限会社オーテック社製、パッドフォーマー)を用いて、吸水性樹脂粒子10g及び粉砕パルプ6.8gを空気抄造によって均一混合することにより、40cm×12cmの大きさのシート状の吸収体を作製した。次に、シート状の吸収体と同じ大きさを有する坪量16g/m2の2枚のティッシュッペーパーで吸収体の上下を挟んだ状態で全体に196kPaの荷重を30秒間加えてプレスすることにより積層体を得た。さらに、吸収体と同じ大きさを有する坪量22g/m2のポリエチレン-ポリプロピレン製のエアスルー型多孔質液体透過性シートを積層体の上面に配置することにより吸収性物品を作製した。
【0125】
<浸透速度>
温度25±2℃の室内において、水平の台の上に吸収性物品を配置した。次に、内径3cmの投入口を有する容量100mLの液投入用シリンダー(両端が開口した円筒)を吸収性物品の主面の中心部に置いた。続いて、あらかじめ少量の青色1号で着色して25±1℃に調整した生理食塩水80mLをシリンダー内に一度に投入した(鉛直方向から供給した)。ストップウォッチを用いて、投入開始から、生理食塩水がシリンダー内から完全に消失するまでの吸収時間を測定した。この操作を30分間隔で更に2回(計3回)行い、3回目の吸収時間を浸透速度[秒]として得た。浸透速度は短い方が好ましい。結果を表1に示す。
【0126】
【0127】
表1によれば、ゲルフローレートを調整することが、優れた浸透速度を有する吸収性物品を得ることに有効であることが確認される。
【符号の説明】
【0128】
10…吸収体、10a,66…吸水性樹脂粒子、10b…繊維層、20a,20b…コアラップ、30…液体透過性シート、40…液体不透過性シート、61…ビュレット部、61a…ビュレット、61b…ゴム栓、61c…コック、61d…空気導入管、61e…コック、62…導管、63…測定台、64…測定部、64a…円筒、64b…ナイロンメッシュ、64c…重り、71…ロート、73…ダンパー、75…円筒、77…受器、100…吸収性物品、200…撹拌翼、200a…軸、200b…平板部、S…スリット、Y,Z…測定装置。