(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】レベルシフト回路
(51)【国際特許分類】
H03K 19/0185 20060101AFI20240227BHJP
【FI】
H03K19/0185 240
(21)【出願番号】P 2022083051
(22)【出願日】2022-05-20
(62)【分割の表示】P 2017087240の分割
【原出願日】2017-04-26
【審査請求日】2022-05-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古市 宗司
【審査官】竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-311712(JP,A)
【文献】特開2011-172213(JP,A)
【文献】特表2017-511061(JP,A)
【文献】国際公開第2001/008299(WO,A1)
【文献】米国特許第09571052(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0125404(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 19/00-19/096
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電位に基づいて定電流を生成する定電流生成部と、
前記定電流を第1ライン及び第2ラインに流すカレントミラー部と、
信号レベルが第1論理レベル及び第2論理レベルの間で変化し、前記第1論理レベルにおいて前記電源電位とは異なる第1電位の電位レベルを有し前記第2論理レベルにおいて前記第1電位よりも小なる第2電位の電位レベルを有する第1入力信号と、前記第1入力信号の位相を反転させた第2入力信号と、の入力を受け、前記第1入力信号及び前記第2入力信号の前記第1論理レベルでの信号レベルを前記第1電位の電位レベルから前記電源電位の電位レベルにシフトした第1出力信号及び第2出力信号を生成し、前記第1出力信号を前記第2ライン上のノードから出力し、前記第2出力信号を前記第1ライン上のノードから出力するレベルシフト部と、
を有し、
前記定電流生成部は、前記電源電位の供給ラインと接地電位の供給ラインとの間に直列に接続された第1導電型の第1~第nトランジスタ(n:2又は3)と、
ソース端子が前記接地電位の供給ラインに接続され、ドレイン端子が前記第nトランジスタのゲート端子に接続され、ゲート端子に前記第1電位の印加を受ける、前記第1導電型とは反対導電型の第2導電型のトランジスタを含み、前記第1電位の変化に応じて前記定電流の値を変化させる電流調整回路と、
を有し、
前記レベルシフト部は、前記第1ライン及び前記第2ラインに接続された一対の前記第2導電型のトランジスタからなるトランジスタ対を含み、
前記電流調整回路の前記第2導電型のトランジスタ及び前記トランジスタ対を構成する前記一対の前記第2導電型のトランジスタは、同じプロセス条件でレイアウトされ
、
前記カレントミラー部は、
前記電源電位の供給ラインと前記接地電位の供給ラインとの間に直列に接続され、前記第1ラインに前記定電流を流す前記第1導電型の第(n+1)~第2nトランジスタと、
前記電源電位の供給ラインと前記接地電位の供給ラインとの間に直列に接続され、前記第2ラインに前記定電流を流す前記第1導電型の第(2n+1)~第3nトランジスタと、
を有し、
前記定電流生成部の前記第1~第nトランジスタのゲート端子は、それぞれ前記カレントミラー部の前記第(n+1)~第2nトランジスタ及び前記第(2n+1)~第3nトランジスタのゲート端子に接続されてn段のカレントミラー回路を構成し、
前記定電流生成部は、前記第1~第nトランジスタとゲート端子同士が接続されてトランジスタ対を構成し且つ前記電源電位の供給ラインに直列に接続された前記第1導電型の第(3n+1)~第4nトランジスタと、前記第4nトランジスタ及び前記接地電位の供給ラインの間に接続された少なくとも1つの抵抗素子と、を含み、
前記少なくとも1つの抵抗素子は、一端が前記第(3n+1)トランジスタのゲート端子に接続され、他端が前記接地電位の供給ラインに接続されていることを特徴とするレベルシフト回路。
【請求項2】
前記レベルシフト部の前記トランジスタ対の一方のトランジスタは、ソース端子が前記第2電位に接続され、ドレイン端子が前記第1ラインに接続され、ゲート端子に前記第1入力信号の入力を受け、前記トランジスタ対の他方のトランジスタは、ソース端子が前記第2電位に接続され、ドレイン端子が前記第2ラインに接続され、ゲート端子に前記第2入力信号の入力を受けることを特徴とする請求項
1に記載のレベルシフト回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レベルシフト回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LCD(Liquid Crystal Display)ドライバやOLED(Organic Light Emitting Diode)ドライバの駆動回路の高集積化が進み、高電圧の電源電圧で駆動回路が駆動される一方、ロジック素子を駆動する低電圧側の電源電圧については益々低電圧化が進んでいる。
【0003】
また、TV等に用いる大型のOLEDでは、パネル素子の特性のばらつきや経時劣化が発生する。このため、画素の特性を補正するべく、OLEDドライバにパネル素子の特性測定用のADC(Analog to Digital Converter)を搭載して素子特性の測定が行われている。このADCによるAD変換の高速化に伴い、低電圧信号を高電圧信号に変換するレベルシフト回路(レベルシフタ)の高速性が求められている。
【0004】
レベルシフト回路の高集積化と高速動作は相反する特性であり、その相反する特性を実現するために、定電流型のレベルシフト回路が考案されている(例えば、特許文献1)。かかる定電流型のレベルシフト回路は、例えば電源電圧に基づいて定電流を生成する定電流生成部と、生成された定電流と同じ電流を流すカレントミラー部、及びノード電位を反転させつつ低電圧信号を高電圧信号に変換するレベルシフト部から構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
定電流型のレベルシフト回路では、高速動作が必要な場合、定電流生成部において定電流を多く流す必要がある。また、レベルシフト部において確実にノード電位の反転動作を行うためには、低電圧信号を受ける素子が定電流以上の電流を流せるように電流能力を設定する必要がある。
【0007】
一方、低電圧信号の信号レベルの低下等により素子の電流能力が低下した場合、例えば定電流生成部における抵抗を増やすことにより、定電流を減らす必要があった。また、設計時に定電流の値が一定に設定されるのに対して、低電圧信号を受ける素子の電流能力はばらつくため、素子サイズに余裕を持たせる必要があり、素子領域が大きくなるという問題点があった。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、素子の電流能力が変化した場合にも確実に動作を行うことが可能なレベルシフト回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るレベルシフト回路は、電源電位に基づいて定電流を生成する定電流生成部と、前記定電流を第1ライン及び第2ラインに流すカレントミラー部と、信号レベルが第1論理レベル及び第2論理レベルの間で変化し、前記第1論理レベルにおいて前記電源電位とは異なる第1電位の電位レベルを有し前記第2論理レベルにおいて前記第1電位よりも小なる第2電位の電位レベルを有する第1入力信号と、前記第1入力信号の位相を反転させた第2入力信号と、の入力を受け、前記第1入力信号及び前記第2入力信号の前記第1論理レベルでの信号レベルを前記第1電位の電位レベルから前記電源電位の電位レベルにシフトした第1出力信号及び第2出力信号を生成し、前記第1出力信号を前記第2ライン上のノードから出力し、前記第2出力信号を前記第1ライン上のノードから出力するレベルシフト部と、を有し、前記定電流生成部は、前記電源電位の供給ラインと接地電位の供給ラインとの間に直列に接続された第1導電型の第1~第nトランジスタ(n:2又は3)と、ソース端子が前記接地電位の供給ラインに接続され、ドレイン端子が前記第nトランジスタのゲート端子に接続され、ゲート端子に前記第1電位の印加を受ける、前記第1導電型とは反対導電型の第2導電型のトランジスタを含み、前記第1電位の変化に応じて前記定電流の値を変化させる電流調整回路と、を有し、前記レベルシフト部は、前記第1ライン及び前記第2ラインに接続された一対の前記第2導電型のトランジスタからなるトランジスタ対を含み、前記電流調整回路の前記第2導電型のトランジスタ及び前記トランジスタ対を構成する前記一対の前記第2導電型のトランジスタは、同じプロセス条件でレイアウトされ、前記カレントミラー部は、前記電源電位の供給ラインと前記接地電位の供給ラインとの間に直列に接続され、前記第1ラインに前記定電流を流す前記第1導電型の第(n+1)~第2nトランジスタと、前記電源電位の供給ラインと前記接地電位の供給ラインとの間に直列に接続され、前記第2ラインに前記定電流を流す前記第1導電型の第(2n+1)~第3nトランジスタと、を有し、前記定電流生成部の前記第1~第nトランジスタのゲート端子は、それぞれ前記カレントミラー部の前記第(n+1)~第2nトランジスタ及び前記第(2n+1)~第3nトランジスタのゲート端子に接続されてn段のカレントミラー回路を構成し、前記定電流生成部は、前記第1~第nトランジスタとゲート端子同士が接続されてトランジスタ対を構成し且つ前記電源電位の供給ラインに直列に接続された前記第1導電型の第(3n+1)~第4nトランジスタと、前記第4nトランジスタ及び前記接地電位の供給ラインの間に接続された少なくとも1つの抵抗素子と、を含み、前記少なくとも1つの抵抗素子は、一端が前記第(3n+1)トランジスタのゲート端子に接続され、他端が前記接地電位の供給ラインに接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るレベルシフト回路によれば、素子の電流能力が変化した場合にも確実にレベルシフト動作を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1のレベルシフト回路の構成を示す回路図である。
【
図2】実施例1のレベルシフト回路の各部の動作点を示す図である。
【
図3】実施例2のレベルシフト回路の構成を示す回路図である。
【
図4】実施例2のレベルシフト回路の各部の動作点を示す図である。
【
図5】実施例3のレベルシフト回路の構成を示す回路図である。
【
図6】実施例3のレベルシフト回路の各部の動作点を示す図である。
【
図7】実施例3のレベルシフト回路の各部の動作点を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して説明する。なお、以下の各実施例における説明及び添付図面においては、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符号を付している。
【実施例1】
【0013】
本実施例のレベルシフト回路10は、低電圧信号を高電圧信号に変換(レベルシフト)する回路であり、LCD(Liquid Crystal Display)ドライバやOLED(Organic Light Emitting Diode)ドライバ等の表示ドライバに用いられる。例えば、レベルシフト回路10は、タイミングコントローラ(図示せず)から低電圧の制御信号の供給を受け、当該制御信号を表示画素を駆動するための高電圧信号に変換する。
【0014】
図1は、本実施例のレベルシフト回路10の構成を示す図である。レベルシフト回路10は、定電流生成部11、カレントミラー部12、及びレベルシフト部13から構成されている。
【0015】
定電流生成部11は、Pチャネル型(第1チャネル型)のMOS(Metal-Oxide-Semiconductor)トランジスタであるトランジスタPM11及びトランジスタPM12と、抵抗R1と、Nチャネル型(第2チャネル型)のMOSトランジスタであるトランジスタNM11と、を含む。
【0016】
トランジスタPM11のソースには、電源電圧VDDが印加されている。トランジスタPM11のドレインは、ノードn3を介してトランジスタPM12のソースに接続されている。トランジスタPM11のゲートは、ノードn1に接続され、ノードn1を介してトランジスタPM12のドレイン及び抵抗R1の一端に接続されている。
【0017】
トランジスタPM12のドレインは、抵抗R1の一端に接続されている。トランジスタPM12のゲートは、ノードn2に接続され、ノードn2を介して抵抗R1の他端に接続されている。
【0018】
トランジスタNM11のドレインは、抵抗R1の他端に接続されている。また、トランジスタNM11のドレインは、ノードn2を介してトランジスタPM12のゲートに接続されている。トランジスタNM11のソースは接地電位VSSに接続されている。トランジスタNM11のゲートには、低電源電圧VCCが印加される。低電源電圧VCCは、電源電圧VDDよりも小なる電圧レベルを有する。
【0019】
トランジスタNM11のドレインには、低電源電圧VCCに応じたドレイン電流が流れる。このドレイン電流は、定電流Icとして抵抗R1、トランジスタPM11及びPM12を流れる。トランジスタNM11は、低電源電圧VCCの電圧レベルに応じて定電流Icの電流値を調整する電流調整回路としての機能を有する。
【0020】
図2は、抵抗R1、トランジスタNM11、トランジスタPM11及びPM12の電圧
-電流曲線を示す図である。ノードn1及びn2の電位(図中、〇印)は、夫々トランジスタPM11及びPM12の動作点を考慮して設定されている。抵抗R1の抵抗値は、ノードn3の電位がトランジスタPM11の定電流特性の良い領域となるように調整されている。
【0021】
再び
図1を参照すると、カレントミラー部12は、Pチャネル型のMOSトランジスタであるトランジスタPM13、PM14、PM15及びPM16から構成されている。
【0022】
トランジスタPM13のソースには、電源電圧VDDが印加されている。トランジスタPM13のドレインは、トランジスタPM14のソースに接続されている。トランジスタPM13のゲートは、ノードn1を介してトランジスタPM11のゲート、トランジスタPM12のドレイン及び抵抗R1の一端に接続されている。
【0023】
トランジスタPM14のソースは、トランジスタPM13のドレインに接続されている。トランジスタPM14のゲートは、ノードn2を介してトランジスタPM12のゲート、抵抗R1の他端及びトランジスタNM11のドレインに接続されている。
【0024】
トランジスタPM15のソースには、電源電圧VDDが印加されている。トランジスタPM15のゲートは、トランジスタPM13のゲートに接続されている。
【0025】
トランジスタPM16のソースは、トランジスタPM15のドレインに接続されている。トランジスタPM16のゲートは、トランジスタPM14のゲートに接続されている。また、トランジスタPM16のゲートは、ノードn2を介してトランジスタPM12のゲート、抵抗R1の他端及びトランジスタNM11のドレインに接続されている。
【0026】
トランジスタPM11及びPM13はノードn1を介してゲート同士が接続され、トランジスタPM12及びPM14はノードn2を介してゲート同士が接続され、カレントミラー回路を構成している。これにより、定電流生成部11を流れる電流がコピーされ、トランジスタPM14のドレインに接続されたラインL1に定電流Icが流れる。すなわち、トランジスタPM11、PM12、PM13及びPM14は、2段カスケードの定電流源を構成している。
【0027】
トランジスタPM11及びPM15はノードn1を介してゲート同士が接続され、トランジスタPM12及びPM16はノードn2を介してゲート同士が接続され、カレントミラー回路を構成している。これにより、定電流生成部11を流れる電流がコピーされ、トランジスタPM16のドレインに接続されたラインL2に定電流Icが流れる。すなわち、トランジスタPM11、PM12、PM15及びPM16は、2段カスケードの定電流源を構成している。
【0028】
レベルシフト部13は、Pチャネル型のMOSトランジスタであるトランジスタPM17及びPM18と、Nチャネル型のMOSトランジスタであるトランジスタNM12及びNM13と、から構成されている。
【0029】
トランジスタPM17のソースは、トランジスタPM14のドレインに接続されている。トランジスタPM17のドレインは、ノードn4を介してトランジスタPM18のゲート及びトランジスタNM12のドレインに接続されている。トランジスタPM17のゲートは、ノードn5を介してトランジスタPM18のドレイン及びトランジスタNM13のドレインに接続されている。
【0030】
トランジスタPM18のソースは、トランジスタPM16のドレインに接続されている
。トランジスタPM18のドレインは、ノードn5を介してトランジスタPM17のゲート及びトランジスタNM13のドレインに接続されている。トランジスタPM18のゲートは、ノードn4を介してトランジスタPM17のドレイン及びトランジスタNM12のドレインに接続されている。
【0031】
トランジスタNM12のソースは、接地電位VSSに接続されている。トランジスタNM12のドレインは、ノードn4を介してトランジスタPM17のドレイン及びトランジスタPM18のゲートに接続されている。トランジスタNM12のゲートには、入力信号INPが供給される。
【0032】
入力信号INPは、信号レベルが論理レベル1(Hレベル)及び論理レベル0(Lレベル)の間で変化する信号であり、論理レベル1で低電源電圧VCCの電位レベル、論理レベル0で接地電位VSSの電位レベルとなる。以下の説明では、低電源電圧VCCの電位レベルをVCC電位とも称する。また、接地電位VSSの電位レベルを0Vとも称する。また、電源電圧VDDの電圧レベルをVDD電位とも称する。
【0033】
トランジスタNM13のソースは、接地電位VSSに接続されている。トランジスタNM13のドレインは、ノードn5を介してトランジスタPM17のゲート及びトランジスタPM18のドレインに接続されている。トランジスタNM13のゲートには、入力信号INPの位相を反転した反転入力信号INNが供給される。
【0034】
反転入力信号INNは、入力信号INPとは逆位相で信号レベルが論理レベル1及び論理レベル0の間で変化する信号であり、論理レベル1でVCC電位、論理レベル0で0Vとなる信号である。従って、トランジスタNM12のゲートに低電源電圧VCCが印加されている間はトランジスタNM13のゲートに0Vが印加され、トランジスタNM13のゲートに低電源電圧VCCが印加されている間はトランジスタNM12のゲートに低電源電圧VCCが印加される。
【0035】
トランジスタPM17及びPM18のゲートは、ノードn5及びノードn4にたすき掛けの形で接続されており、トランジスタNM12及びNM13とともにレベルシフタを構成している。トランジスタNM12及びNM13は、トランジスタNM11と同じプロセス条件の下にペアでレイアウトされ、チャネル幅がNM11:(NM12,NM13)=1:N(Nは2~6の整数)となるように設定されている。
【0036】
本実施例のレベルシフト回路10は、上記のような条件でバイアス設定がなされる。次に、本実施例のレベルシフト回路10の動作について説明する。
【0037】
トランジスタNM11のゲートに低電源電圧VCCが印加されると、トランジスタNM11のドレインに、低電源電圧VCCに応じた定電流Icが流れる。定電流Icは、抵抗R1、トランジスタPM11及びPM12に流れる。トランジスタPM11及びPM12を流れる定電流Icは、カレントミラー部12に電流コピーされる。
【0038】
トランジスタNM12のゲートには入力信号INPが供給され、トランジスタNM13のゲートには反転入力信号INNが供給される。入力信号INP及び反転入力信号INNの信号レベルは、相補的にVCC電位又は0Vに変化する。
【0039】
入力信号INPの信号レベルが0V、反転入力信号INNの信号レベルがVCC電位のとき、トランジスタNM12はオフ状態となり、トランジスタNM13はオン状態となる。トランジスタNM13がオン状態であるため、トランジスタNM13のドレインからソースに向かって電流が流れ、トランジスタNM13のドレインに接続されたトランジスタ
PM17のゲート電位が低下し、トランジスタPM17がオン状態となる。トランジスタPM17がオン状態で且つトランジスタNM12がオフ状態となるため、ノードn4の電位はVDD電位まで上昇する。トランジスタPM18はオフ状態となり、ノードn5の電位は0Vとなる。従って、ノードn4からはVDD電位の信号レベルを有する出力信号OUTNが出力され、ノードn5からは0Vの信号レベルを有する出力信号OUTPが出力される。
【0040】
次に、入力信号INPの信号レベルがVCC電位、反転入力信号INNの信号レベルが0Vに変化すると、トランジスタNM12はオン状態となり、トランジスタNM13はオフ状態となる。トランジスタNM12がオン状態であるため、トランジスタNM12のドレインからソースに向かって電流が流れ、トランジスタNM12のドレインに接続されたトランジスタPM18のゲート電位が低下し、トランジスタPM18がオン状態となる。トランジスタPM18がオン状態で且つトランジスタNM13がオフ状態となるため、ノードn5の電位はVDD電位まで上昇する。トランジスタPM17はオフ状態となり、ノードn4の電位は0Vに低下する。従って、ノードn4からは0Vの信号レベルを有する出力信号OUTNが出力され、ノードn5からはVDD電位の信号レベルを有する出力信号OUTPが出力される。
【0041】
出力信号OUTNは、反転入力信号INNと同位相で信号レベルが異なる信号である。すなわち、出力信号OUTNは、反転入力信号INNの論理レベル1における信号レベルをVCC電位からVDD電位にレベルシフトした信号となる。出力信号OUTPは、入力信号INPと同位相で信号レベルが異なる信号である。すなわち、出力信号OUTPは、入力信号INPの論理レベル1における信号レベルをVCC電位からVDD電位にレベルシフトした信号となる。
【0042】
以上のように、入力信号INP及び反転入力信号INNの信号レベルが相補的にVCC電位又は0Vに変化し、トランジスタNM12及びNM13のドレインからソースに電流が流れることにより、ノードn4及びn5の電位が反転する。
【0043】
低電源電圧VCCの電圧レベルが低下すると、入力信号INP及び反転入力信号INNのHレベルにおける信号レベルが低下するため、トランジスタNM12及びNM13の電流能力が低下する。しかし、低電源電圧VCCは定電流生成部11のトランジスタNM11のゲートに印加される電圧であるため、定電流Icの電流値も低下する。従って、トランジスタNM12及びNM13の電流能力の低下に関わらず、ノードn4及びn5の電位の反転を確実に行うことができる。
【0044】
また、レベルシフト回路10を高温条件下で動作させた場合やトランジスタNM11、NM12及びNM13がプロセスSLOW条件で設計されていた場合、閾値電圧が高くなることによりトランジスタNM12及びNM13の電流能力は低下する。しかし、本実施例のレベルシフト回路10では、トランジスタNM11の電流能力も同様に低下するため、定電流Icの電流値が低下する。従って、トランジスタNM12及びNM13の電流能力の低下に関わらず、ノードn4及びn5の電位の反転を確実に行うことができる。
【0045】
また、トランジスタNM12及びNM13の電流能力のばらつきを考慮して素子サイズに余裕を持たせておく必要がないため、チップ面積の増大を抑えることができる。
【実施例2】
【0046】
図3は、本実施例のレベルシフト回路20の構成を示す図である。レベルシフト回路20は、定電流生成部21、カレントミラー部22、及びレベルシフト部23から構成されている。
【0047】
定電流生成部21は、Pチャネル型のMOSトランジスタであるトランジスタPM21と、抵抗R2とを含む点で、実施例1の定電流生成部11と異なる。
【0048】
トランジスタPM21のソースは、ノードn7を介してトランジスタPM11のドレインに接続されている。トランジスタPM21のドレインは、抵抗R1の一端に接続されている。また、トランジスタPM21のドレインは、ノードn1に接続され、ノードn1を介してトランジスタPM11のゲート、トランジスタPM13のゲート及びトランジスタPM15のゲートに接続されている。トランジスタPM21のゲートは、ノードn6に接続され、ノードn6を介してトランジスタPM22及びPM23のゲートに接続されている。
【0049】
抵抗R2は、一端が抵抗R1の他端及びノードn2に接続され、他端がトランジスタNM11のドレイン及びノードn6に接続されている。
【0050】
図4は、抵抗R1、抵抗R2、トランジスタNM11、PM11、PM12及びPM21の電圧-電流曲線を示す図である。ノードn1、n2及びn6の電位(図中、〇印)は、夫々トランジスタPM11、PM12及びPM21の動作点を考慮して設定されている。抵抗R1及びR2の抵抗値は、ノードn3及びn7の電位(図中、〇印)がトランジスタPM11及びPM12の定電流特性の良い領域となるように調整されている。
【0051】
再び
図3を参照すると、カレントミラー部22は、Pチャネル型のMOSトランジスタであるトランジスタPM22及びPM23を含む点で、実施例1のカレントミラー部12と異なる。
【0052】
トランジスタPM22のソースは、トランジスタPM14のドレインに接続されている。トランジスタPM22のドレインは、トランジスタPM17のソースに接続されている。トランジスタPM22のゲートは、ノードn6を介してトランジスタPM21のゲート、抵抗R2の他端及びトランジスタNM11のドレインに接続されている。
【0053】
トランジスタPM23のソースは、トランジスタPM16のドレインに接続されている。トランジスタPM23のドレインは、トランジスタPM18のソースに接続されている。トランジスタPM23のゲートは、ノードn6を介してトランジスタPM21のゲート、抵抗R2の他端及びトランジスタNM11のドレインに接続されている。
【0054】
トランジスタPM11及びPM13はノードn1を介してゲート同士が接続され、トランジスタPM12及びPM14はノードn2を介してゲート同士が接続され、トランジスタPM21及びPM22はノードn6を介してゲート同士が接続され、カレントミラー回路を構成している。これにより、定電流生成部21を流れる電流がコピーされ、トランジスタPM22のドレインに接続されたラインL1に定電流Icが流れる。すなわち、トランジスタPM11、PM12、PM21、PM13、PM14及びPM22は、3段カスケードの定電流源を構成している。
【0055】
トランジスタPM11及びPM15はノードn1を介してゲート同士が接続され、トランジスタPM12及びPM16はノードn2を介してゲート同士が接続され、トランジスタPM21及びPM23はノードn6を介してゲート同士が接続され、カレントミラー回路を構成している。これにより、定電流生成部21を流れる電流がコピーされ、トランジスタPM23のドレインに接続されたラインL2に定電流Icが流れる。すなわち、トランジスタPM11、PM12、PM21、PM15、PM16及びPM23は、3段カスケードの定電流源を構成している。
【0056】
次に、本実施例のレベルシフト回路20の動作について説明する。
【0057】
トランジスタNM11のゲートに低電源電圧VCCが印加されると、トランジスタNM11のドレインに、低電源電圧VCCに応じた定電流Icが流れる。定電流Icは、抵抗R1、抵抗R2、トランジスタPM11、PM12及びPM21に流れる。トランジスタPM11、PM12及びPM21を流れる定電流Icは、カレントミラー部22に電流コピーされる。
【0058】
トランジスタNM12のゲートには入力信号INPが供給され、トランジスタNM13のゲートには反転入力信号INNが供給される。入力信号INP及び反転入力信号INNの信号レベルは、相補的にVCC電位又は0Vに変化する。
【0059】
入力信号INPの信号レベルが0V、反転入力信号INNの信号レベルがVCC電位のとき、トランジスタNM12はオフ状態となり、トランジスタNM13はオン状態となる。トランジスタNM13がオン状態であるため、トランジスタNM13のドレインからソースに向かって電流が流れ、トランジスタNM13のドレインに接続されたトランジスタPM17のゲート電位が低下し、トランジスタPM17がオン状態となる。トランジスタPM17がオン状態で且つトランジスタNM12がオフ状態となるため、ノードn4の電位はVDD電位まで上昇する。トランジスタPM18はオフ状態となり、ノードn5の電位は0Vとなる。従って、ノードn4からはVDD電位の信号レベルを有する出力信号OUTNが出力され、ノードn5からは0Vの信号レベルを有する出力信号OUTPが出力される。
【0060】
出力信号OUTNは、反転入力信号INNと同位相で信号レベルが異なる信号である。すなわち、出力信号OUTNは、反転入力信号INNの論理レベル1における信号レベルをVCC電位からVDD電位にレベルシフトした信号となる。出力信号OUTPは、入力信号INPと同位相で信号レベルが異なる信号である。すなわち、出力信号OUTPは、入力信号INPの論理レベル1における信号レベルをVCC電位からVDD電位にレベルシフトした信号となる。
【0061】
以上のように、入力信号INP及び反転入力信号INNの信号レベルが相補的に電VCC電位又は0Vに変化し、トランジスタNM12及びNM13のドレインからソースに電流が流れることにより、ノードn4及びn5の電位が反転する。
【0062】
低電源電圧VCCの電圧レベルが低下すると、入力信号INP及び反転入力信号INNのHレベルにおける信号レベルが低下するため、トランジスタNM12及びNM13の電流能力が低下する。しかし、低電源電圧VCCは定電流生成部11のトランジスタNM11のゲートに印加される電圧であるため、定電流Icの電流値も低下する。従って、トランジスタNM12及びNM13の電流能力の低下に関わらず、ノードn4及びn5の電位の反転を確実に行うことができる。
【0063】
また、本実施例のレベルシフト回路20では、トランジスタPM11、PM12、PM21、PM13、PM14及びPM22が3段カスケードの定電流源を構成し、同様にトランジスタPM11、PM12、PM21、PM15、PM16及びPM23が3段カスケードの定電流源を構成している。従って、定電流源が2段カスケードで構成されている場合と比べてさらに定電流特性が良くなるため、ノードn4及びn5の電圧がVDD電位から0Vまで変化した場合における定電流Icの変化が小さい。従って、ノードn4及びn5における電流のスルーレートをほぼ一定にすることができる。
【実施例3】
【0064】
図5は、本実施例のレベルシフト回路30の構成を示す図である。レベルシフト回路30は、定電流生成部31、カレントミラー部32、及びレベルシフト部33から構成されている。
【0065】
定電流生成部31は、Pチャネル型のMOSトランジスタであるトランジスタPM31及びPM32と抵抗R4とを有する。トランジスタPM31、PM32及び抵抗R4は直列に接続されている。また、実施例1の定電流生成部11とは異なり、トランジスタPM12とトランジスタNM11とが抵抗を介さずに接続されている。
【0066】
トランジスタPM12のドレインは、ノードn8を介してトランジスタNM11のドレインに接続されている。
【0067】
トランジスタPM31のソースには、電源電圧VDDが印加されている。トランジスタPM31のドレインは、トランジスタPM32のソースに接続されている。トランジスタPM31のゲートは、トランジスタPM11のゲート、トランジスタPM13のゲート及びトランジスタPM15のゲートに接続されている。トランジスタPM31及びトランジスタPM11は、ゲート同士が接続され、トランジスタ対を構成している。
【0068】
トランジスタPM32のソースは、トランジスタPM31のドレインに接続されている。トランジスタPM32のドレインは、ノードn9に接続され、ノードn9を介して抵抗R4の一端に接続されている。また、トランジスタPM32のドレインは、トランジスタPM11及びPM31のゲートに接続され、さらにトランジスタPM13及びPM15のゲートに接続されている。トランジスタPM32のゲートは、トランジスタPM12のゲートに接続されている。また、トランジスタPM32のゲートは、ノードn8を介してトランジスタNM11のドレインに接続されている。また、トランジスタPM32のゲートは、トランジスタPM12のドレイン、トランジスタPM14のゲート及びトランジスタPM16のゲートに接続されている。トランジスタPM32及びトランジスタPM12は、ゲート同士が接続され、トランジスタ対を構成している。
【0069】
抵抗R4の一端は、ノードn9に接続され、ノードn9を介してトランジスタPM32のドレイン、トランジスタPM11及びPM31のゲート、及びトランジスタPM13及びPM15のゲートに接続されている。抵抗R4の他端は、接地電位VSSに接続されている。
【0070】
トランジスタPM11、PM12、PM31及びPM32によりカレントミラー回路が構成されている。このカレントミラー回路の動作は、トランジスタNM11のドレイン-ソース間を流れる電流Idsと、抵抗R4に流れる電流Irとに基づいて規定される。具体的には、電流Ids>電流Irの場合と、電流Ir>電流Idsの場合とで各素子の動作点が異なる。
【0071】
図6は、電流Ids>電流Irの場合における抵抗R4、トランジスタNM11、PM11、PM12、PM31及びPM32の電圧-電流曲線を示す図である。ノードn8の電位は、トランジスタNM11、PM11及びPM31の動作点を考慮して設定されている。ノードn9の電位は、トランジスタPM11、PM31、PM12及びPM32の動作点を考慮して設定されている。
【0072】
低電源電圧VCCの電圧レベル(すなわち、VCC電位)が十分に高く、トランジスタNM11、NM12及びNM13の電流能力が十分にある条件下では、ノードn8の電位は
図6に○印で示す電位(トランジスタNM11及びPM11のVds-Ids曲線の交
点付近の電位)となる。
【0073】
その際、トランジスタPM12及びPM32のゲートには十分なドライブ電圧がかかり、トランジスタPM12及びPM32のドレイン-ソース間は低抵抗となる(
図6のVds-Ids曲線)。
【0074】
トランジスタPM32が低抵抗であるため、ダイオード接続されたトランジスタPM31には十分な電流が流れ、ノードn9の電位は
図6に○印で示す電位(トランジスタPM11及びPM31のVds-Ids曲線と、トランジスタPM11及びPM31のVgs-Ids曲線と、トランジスタPM12及びPM32のVds-Ids曲sンとの交点付近の電位)となる。
【0075】
ノードn8及びn9の電位がバイアス電圧となり、カレントミラー部32及びレベルシフト部33には十分な定電流が流れ、高速なレベルシフタが構成される。
【0076】
一方、
図7は、電流Ids<電流Irの場合における抵抗R4、トランジスタNM11、PM11、PM12、PM31及びPM32の電圧-電流曲線を示す図である。
【0077】
図7は、電流Ids<電流Irの場合における抵抗R4、トランジスタNM11、PM11、PM12、PM31及びPM32の電圧-電流曲線を示す図である。ノードn8の電位は、トランジスタNM11、PM11及びPM31の動作点を考慮して設定されている。ノードn9の電位は、トランジスタPM11、PM31、PM12及びPM32の動作点を考慮して設定されている。
【0078】
低電源電圧VCCの電圧レベル(すなわち、VCC電位)が低下して、トランジスタNM11、NM12及びNM13の電流能力が十分にない条件下では、ノードn8の電位は
図7に○印で示す電位となる。
【0079】
その際、トランジスタPM12及びPM32のゲートにかかるドライブ電圧が低下し、トランジスタPM12及びPM32のドレイン-ソース間は高抵抗となる(
図7のトランジスタPM12及びPM32のVds-Ids曲線)。
【0080】
トランジスタPM32が高抵抗であるため、ノードn9の電位は低電位となり、トランジスタPM11、PM31、PM13及びPM15は低抵抗となる(
図7のトランジスタPM11及びPM31のVd-Ids曲線)。
【0081】
トランジスタPM12、PM32、PM14及びPM16から構成されるカレントミラー回路により、トランジスタNM11、NM12及びNM13の電流能力に応じた電流が定電流IcとしてラインL1及びL2に流れる。
【0082】
以上のように、ノードn8及びn9の電位がバイアス電圧となり、カレントミラー部32及びレベルシフト部33に流れる定電流Icが設定される。
【0083】
本実施例のレベルシフト回路30では、VCC電位の低下等によりトランジスタNM11、NM12及びNM13の電流能力が低下し、低速(SLOWケース)で動作する条件下においても、レベルシフト回路30は確実にレベルシフト動作を行うことが可能となる。
【0084】
これに対し、高速(FASTケース)で動作する条件下では、抵抗R4の抵抗値を調整して定電流Icの電流量を制限することにより、低速で動作する場合とのばらつきを抑え
ることができる。
【0085】
また、トランジスタNM11、NM12及びNM13の電流能力が低下した場合には、定電流Icが減少するため、動作不良が発生しない。従って、トランジスタNM11、NM12及びNM13の素子サイズに余裕を持たせておく必要がないため、チップ面積の増大を抑えることができる。
【0086】
また、抵抗R4の抵抗値を調整して定電流Icの電流量を制限することにより、レベルシフト回路30の遷移動作の遅延を調整することができる。
【0087】
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施例では、定電流生成部が電源電圧VDD(VDD電位)に直列に接続された2つ又は3つのPチャネル型のMOSトランジスタを含む例について説明した。しかし、トランジスタの数はこれに限られず、n個(n:2以上)のトランジスタが直列に接続された構成を有していれば良い。
【0088】
また、上記実施例では、レベルシフト回路が表示ドライバに用いられる例について示したが、これに限られず、例えば電源コントローラや昇圧コントローラ等の高電圧回路を含む製品に用いることが可能である。
【0089】
また、上記実施例のレベルシフト回路は、高電圧回路を含むレベルシフタ用バイアス回路の他、差動アンプ回路等の定電流源をもつ回路にも適用可能である。
【符号の説明】
【0090】
10,20,30 レベルシフト回路
11,21,31 定電流生成部
12,22,32 カレントミラー部
13,23,33 レベルシフト部
NM11~13 Nチャネル型MOSトランジスタ
PM11~32 Pチャネル型MOSトランジスタ