IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エフ イー アイ カンパニの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】真空対応X線遮蔽体
(51)【国際特許分類】
   G21F 3/00 20060101AFI20240227BHJP
   G21F 1/08 20060101ALI20240227BHJP
   G21F 1/10 20060101ALI20240227BHJP
   H01J 37/16 20060101ALI20240227BHJP
   H01J 37/18 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
G21F3/00
G21F1/08
G21F1/10
H01J37/16
H01J37/18
【請求項の数】 24
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022186257
(22)【出願日】2022-11-22
(65)【公開番号】P2023076814
(43)【公開日】2023-06-02
【審査請求日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】17/533,610
(32)【優先日】2021-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501233536
【氏名又は名称】エフ イー アイ カンパニ
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】プレウン ドナ
(72)【発明者】
【氏名】キャスパー スミット
(72)【発明者】
【氏名】ライエンツ ヤン デ グルート
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-062898(JP,U)
【文献】特開2009-142896(JP,A)
【文献】特開2015-076321(JP,A)
【文献】特開2020-073867(JP,A)
【文献】実開昭57-160698(JP,U)
【文献】特開2013-122398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 3
G21F 1
H01J 37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線遮蔽体を製造する方法であって、
チャンバを画定しかつ1つ以上のポートを有する、シェルを作製することと、
前記シェルを検査して、前記シェルに漏れがないことを確認することと、
前記検査されたシェルにX線遮蔽材を充填することと、
前記充填されたシェルの前記1つ以上のポートを密封することと、を含み、
前記1つ以上のポートが、前記充填の作業中に前記X線遮蔽材を前記チャンバ内に導入するために使用される第1のポートと、前記充填の作業中に前記チャンバから排される流体を排出するために使用される第2のポートと、を含む、方法。
【請求項2】
前記シェルが、積層造形プロセスによって作製される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記積層造形プロセスが、直接金属レーザ焼結(DMLS)、選択的レーザ溶融(SLM)、電子ビーム溶融(EBM)、又は結合剤噴射(BJ)を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記検査を含む期間中、前記シェルの周りの環境から前記チャンバを一時的に隔離することを更に含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記検査することが、10-7mbar・l/s以下の漏れ速度閾値を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記シェルが、剛性である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記シェルが、ステンレス鋼を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記シェルが、0.1~1.0mmの範囲の壁厚の中央値を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記X線遮蔽材が、金属を含み、前記充填の作業が、溶融状態の前記金属を前記チャンバ内に導入することを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記X線遮蔽材が、金属粒子を担持した樹脂を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記密封することが、前記1つ以上のポートの各々上にそれぞれのキャップを溶接することを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
剛性の前記シェルが、第1の平均原子番号Z1の材料を含み、前記方法が、
Z1より小さい平均原子番号Z2の別の材料で剛性の前記シェルをクラッディングすることを更に含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
真空エンクロージャ内に収容された電子顕微鏡からのX線放出を低減する方法であって、前記方法が、
請求項1に記載の方法によってX線遮蔽体を製造することと、
前記真空エンクロージャの内部容積内に前記X線遮蔽体を固定することと、を含む、方法。
【請求項14】
前記X線遮蔽体が、前記電子顕微鏡のポンプカプラ内に固定され、かつ前記ポンプカプラの吸気口を通り前記ポンプカプラの長手方向軸に平行に放出されるX線の少なくとも80%をブロックするように配向される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
装置であって、
真空エンクロージャと、
前記真空エンクロージャ内に位置決めされているX線遮蔽体と、を備え、
前記X線遮蔽体が、X線遮蔽材を包有する逆真空ボトルを備え、前記逆真空ボトルはチャンバを画定しかつ1つ以上のポートを有し、前記1つ以上のポートが、前記X線遮蔽材を前記チャンバ内に導入するための第1のポートと、前記チャンバから排される流体を排出するための第2のポートと、を備える、装置。
【請求項16】
前記装置が、カラム軸を有する電子顕微鏡であり、前記装置が、
ポンプカプラを更に備え、前記X線遮蔽体が、前記ポンプカプラ内に位置決めされており、かつ前記真空エンクロージャ内のX線発生場所から放出されて前記ポンプカプラの吸気口を通るX線の少なくとも80%をブロックするように配向されている、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記ポンプカプラの真空コンダクタンスが、前記X線遮蔽体によって、前記X線遮蔽体がない場合と比較して最大20%減少する、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
真空容器内の圧力が10-9mbar未満である、請求項15~17のいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
前記X線遮蔽材が、少なくとも50重量%の鉛を含む、請求項15~17のいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
前記逆真空ボトルが、ステンレス鋼を含む、請求項15~17のいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
前記ステンレス鋼が、14以下の平均原子番号の材料でクラッディングされている、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記X線遮蔽体が、ねじれた細長い部材を含む、請求項15~17のいずれか1項に記載の装置。
【請求項23】
方法であって、
電子顕微鏡の真空エンクロージャの内部にX線遮蔽材を包有する逆真空ボトルを設置することであって、前記逆真空ボトルは請求項1~3いずれか1項記載の方法によって製造された前記X線遮蔽体である、ことと、
前記真空エンクロージャを10-9mbar未満の圧力までポンピングすることと、を含む、方法。
【請求項24】
真空容器が、ポンプカプラを備え、前記設置することが、前記ポンプカプラ内に前記逆真空ボトルを固定することを含む、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月23日に出願された「Vacuum Compatible X-Ray Shield」と題する米国出願第17/533,610号の優先権を主張する。
【0002】
本開示は、X線遮蔽体に関する。
【背景技術】
【0003】
X線遮蔽体は、電子顕微鏡、及び高エネルギー粒子ビームが物質に入射し、その結果X線を発生させる他のシステムを含む、幅広い用途において必要とされる。幾何学的な理由から、X線発生場所の近くに位置決めされたX線遮蔽体は、遠くに設置された遮蔽体よりも必要な遮蔽材が少なくて済む。ただし、X線を発生させるシステムは、多くの場合、超高真空(UHV)下で動作するが、一部の一般的な遮蔽材は超高真空には非対応である。したがって、コンパクトなX線遮蔽体を超高真空内で利用できるようにする改良された技術が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
簡単に言えば、開示された技術の例は、超高真空環境内に配置できるスタンドアロンの真空気密エンクロージャ内にX線遮蔽材を提供する。
【0005】
第1の態様では、開示された技術は、X線遮蔽体を製造する方法として実装することができる。チャンバを画定し、かつ1つ以上のポートを有するシェルが作製される。シェルは、検査されて、シェルに漏れがないことを確認する。検査されたシェルに、X線遮蔽材が充填される。充填されたシェルの1つ以上のポートが密封される。
【0006】
いくつかの例では、シェルは、積層造形プロセスによって作製することができ、積層造形プロセスは、直接金属レーザ焼結(DMLS)、選択的レーザ溶融(SLM)、電子ビーム溶融(EBM)、又は結合剤噴射(BJ)のうちの1つ以上を組み込むことができる。様々な例では、シェルは剛性にすることができ、ステンレス鋼を組み込むことができ、かつ/又は0.1~1.0mmの範囲の壁厚の中央値を有することができる。剛性シェルは、第1の平均原子番号Z1の材料を組み込むことができ、方法は、Z1より小さい平均原子番号Z2の別の材料で剛性シェルをクラッディングすることを含むことができる。
【0007】
追加の例では、X線遮蔽材は金属を組み込むことができ、充填作業は、溶融状態の金属をチャンバ内に導入することを含むことができる。X線遮蔽材は、金属粒子を担持した樹脂を組み込むことができる。1つ以上のポートは、充填作業中にX線遮蔽材をチャンバ内に導入するために使用される第1のポートと、充填作業中にチャンバから排される流体を排出するために使用される第2のポートと、を含むことができる。
【0008】
更なる例では、密封することは、1つ以上のポートの各々上にそれぞれのキャップを溶接することを含むことができる。検査を含む期間中、シェルの周りの環境からシェルを一時的に隔離することができる。検査することは、10-7mbar・l/s以下の漏れ速度閾値を有することができる。
【0009】
更なる例では、開示された技術は、真空エンクロージャ内に収容された電子顕微鏡からのX線放出を低減する方法として実装することができる。X線遮蔽体は、上記の方法又は変形のうちのいずれかによって製造することができる。X線遮蔽体は、真空エンクロージャの内部容積内に固定することができる。X線遮蔽体は、電子顕微鏡のポンプカプラ内に固定することができ、かつポンプカプラの長手方向軸に平行にポンプカプラの吸気口を通り放出されるX線の少なくとも80%をブロックするように配向することができる。
【0010】
第2の態様では、開示された技術は、真空エンクロージャと、真空エンクロージャ内に位置決めされたX線遮蔽体と、を有する装置として実装することができる。X線遮蔽体は、X線遮蔽材を包有する逆真空ボトルを含む。
【0011】
いくつかの例では、装置は、カラム軸を有する電子顕微鏡とすることができ、ポンプカプラを更に含むことができる。X線遮蔽体は、ポンプカプラ内に位置決めされ、かつ真空エンクロージャ内のX線発生場所からポンプカプラの吸気口を通って放出されるX線の少なくとも80%をブロックするように配向され得る。ポンプカプラの真空コンダクタンスは、X線遮蔽体によって、X線遮蔽体がない場合と比較して最大20%減少する。
【0012】
逆真空ボトルは、ステンレス鋼を組み込むことができる。ステンレス鋼は、平均原子番号が14以下の材料でクラッディングすることができる。X線遮蔽体は、ねじれた細長い部材を含むように形成することができる。X線遮蔽材は、少なくとも50重量%の鉛を組み込むことができる。真空容器内の圧力は10-9mbar未満に保つことができる。
【0013】
別の態様では、開示された技術は、X線遮蔽材を包有する逆真空ボトルが電子顕微鏡の真空エンクロージャ内部に設置され、かつ真空エンクロージャが10-9mbar未満の圧力までポンピングされる方法として実装することができる。
【0014】
いくつかの例では、真空容器は、ポンプカプラを組み込むことができ、設置することは、ポンプカプラ内に逆真空ボトルを固定することを含むことができる。
【0015】
本発明の前述の及び他の目的、特徴、及び利点は、添付図面を参照して進められる以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】開示された技術の配置に適した電子顕微鏡の一部の断面図である。
図1B】開示された技術の配置に適した電子顕微鏡の一部の断面図である。
図2】真空エンクロージャの外部に従来配置されるX線遮蔽を備える装置の断面図である。
図3】開示された技術の第1の例によるX線遮蔽体を備える、真空エンクロージャ内部に配置された装置の断面図である。
図4】開示された技術の第2の例によるX線遮蔽体を備える、真空エンクロージャ内部に配置された装置の断面図である。
図5】開示された技術による第1の例示的な方法のフローチャートである。
図6A】開示された技術による第1の例示的なX線遮蔽体の図である。
図6B】開示された技術による第1の例示的なX線遮蔽体の図である。
図6C】開示された技術による第1の例示的なX線遮蔽体の図である。
図6D】開示された技術による第1の例示的なX線遮蔽体の図である。
図7】開示された技術による第2の例示的な方法のフローチャートである。
図8】開示された技術によるX線遮蔽体を組み込んだ装置のブロック図である。
図9】開示された技術による第3の例示的な方法のフローチャートである。
図10A】開示された技術による第2の例示的なX線遮蔽体の図である。
図10B】開示された技術による第2の例示的なX線遮蔽体の図である。
図11】開示された技術による第3の例示的なX線遮蔽体の図である。
図12A】開示された技術による第4の例示的なX線遮蔽体の図である。
図12B】開示された技術による第4の例示的なX線遮蔽体の図である。
図12C】開示された技術による第4の例示的なX線遮蔽体の図である。
図13】開示された技術による第5の例示的なX線遮蔽体の図である。
図14A】開示された技術による第6の例示的なX線遮蔽体の図である。
図14B】開示された技術による第6の例示的なX線遮蔽体の図である。
図14C】開示された技術による第6の例示的なX線遮蔽体の図である。
図14D】開示された技術による第6の例示的なX線遮蔽体の図である。
図15】開示された非線形光学デバイスに関連する説明された実施形態、技法、及び技術が実装され得る、好適なコンピューティング環境の一般化された例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
序論
X線遮蔽は、人員の安全上の理由から、X線発生機器の周囲でよく用いられる。X線は、電子顕微鏡(例えば、TEM及びSEM)、集束イオンビームマシン、他の分析機器(例えば、電子散乱、X線回折、又は同様の技法を実行する)、又は高エネルギー粒子ビームが材料に作用する他の機器で発生し得る。
【0018】
電子顕微鏡では、迷走電子がアパーチャプレート又は顕微鏡カラムの壁に衝突することによるX線の発生は、慎重な設計によって制御又は最小限に抑えることができる。しかし、サンプルへの電子ビームの入射は、電子顕微鏡動作の基本的な側面であり、なくすことはできない。更に、電子顕微鏡は一般的に60keVを超えるビーム電圧で使用され、その結果、多量のX線が生成され得る。同様の考慮事項は、他の粒子ビーム機器にも当てはまる。
【0019】
したがって、電子顕微鏡による画像化のためにサンプルが通常設置されるサンプルチャンバの中心は、多量のX線発生場所を表す。特に透過型電子顕微鏡(TEM)の場合、電子顕微鏡のサンプルチャンバは密集している可能性がある。いくつかの方向においては、サンプルチャンバの外部の場所は、X線遮蔽体を設置するのが実際的である限り近くてもよく、そのような遮蔽体は真空適合性を考慮せずに配置することができる。ただし、サンプルチャンバ(及び電子ビームチャネル全体)は超高真空下に維持される可能性があり、そのために、カプラと呼ばれるパイプセクションを使用して、サンプルチャンバを真空ポンプに接続することができる。真空コンダクタンスを最大化するために、カプラは広い断面を持ち得、一般にガスの流れを妨げないようにすることができる。したがって、カプラは、X線の明確な退出経路を提示することもできる。真空ポンプ及びカプラの寸法のために、カプラの外部に設けられたX線遮蔽体はかさばり、重くなる可能性があり、カプラの内部又はカプラとサンプルチャンバの中心のX線発生場所との間にX線遮蔽体を設けることが望ましい場合がある。
【0020】
このような内部のX線遮蔽体の位置決めは、ステンレス鋼遮蔽体の場合は簡単であり得る(真空コンダクタンスの低下を考慮する必要がある)。ただし、ステンレス鋼のX線に対する阻止能は比較的低い。典型的な電子ビーム条件及び遮蔽体によるX線減衰の典型的な要件の下では、遮蔽に必要なステンレス鋼の厚さは約20cmである場合がある。原子番号が小さいアルミニウムは、更に多くの厚さ(約40cm)を必要とする場合がある。
【0021】
一方、鉛は阻止能に優れており、わずか1.5cmの厚さで十分な遮蔽を提供できる。しかし、鉛はガス排出しやすく、露出した鉛表面はUHVシステム内では望ましくない場合がある。更に、鉛構造に適用される真空対応コーティング(一般に、金属コーティング)は、傷を受けやすい場合がある。すなわち、鉛上に傷のない密封コーティングを達成することは困難であり得る。更に、コーティングされた構造に実際に漏れがないかどうかを検査することが困難な場合がある。
【0022】
開示された技術は、中空シェルの漏れ検査を行い、その後X線遮蔽材を充填することにより、これらの問題を解決する。結果として得られるX線遮蔽体は、超高真空システム内の好適な場所ならどこにでも配置することができる。シェル材(ステンレス鋼又はアルミニウムなどの低Z型真空対応材料であり得る)のみが真空にさらされ、遮蔽体の防漏性は保証され得る。したがって、ステンレス鋼及び鉛のそれぞれの利点を有利に組み合わせることができ、コンパクトなX線遮蔽体をポンプカプラ内又はUHVエンクロージャ内のいずれかの他の利用可能な位置に配置することができる。
【0023】
ポンプカプラによる真空コンダクタンスを維持するために、細長いツイスト構造などの複雑な形状を使用できる。このような形状のシェルは、付加的な機械加工を用いて都合よく製造することができるが、これは必須ではない。例えば、シェルのセクションは、積層造形に加えて、又はその代わりに、板金、押出形材、又は鋳物を形成し、セクションを一緒に溶接することによって製造することができる。
【0024】
以下のセクションでは、開示された技術の恩恵を受けることができる代表的なTEMについての簡単な説明を提供する。
【0025】
例示的な電子顕微鏡
図1A~1Bは、電子顕微鏡の一部の断面図101~102であり、本明細書に記載の開示された技術の例のための背景を提供する。例示の目的で、図1A~1Bは一般的なTEM構成を示しているが、開示の技術は他の機器にも同様に適用することができる。
【0026】
図1Aは、カラム軸105を通る垂直断面である。サンプルチャンバ110は、コンデンサ電子光学系122と対物電子光学系128との間に位置し得る。光学系122、128及びサンプルチャンバ110は、電子顕微鏡の電子カラムの一部を画定し、その中で電子ビームをチャネル125を通して誘導することができる。
【0027】
磁極片124、126は、それらの間に磁場を作り出す。通常の動作では、サンプルは、カラム軸105に沿って磁極片124、126の中間に保持することができる。サンプルに電子ビームが入射すると、X線が発生し得る。したがって、楕円115はX線発生場所を示す。
【0028】
サンプルチャンバ110を含む電子カラムの内部は、動作中、超高真空に維持することができる。したがって、真空ポンプ140は、吸気口132及び排気口134を有するポンプカプラ130によってサンプルチャンバ110に接合され得る。電子顕微鏡の真空エンクロージャは、サンプルチャンバ110の壁の全て又は一部、カプラ130、ポンプ140の一部、及び電子チャネル125に沿ったサンプルチャンバ110の上方又は下方の追加の構成要素を含む。サンプルチャンバ110及びX線発生場所115を含む真空エンクロージャの内部空間は、超高真空下にあり得るが、外部環境103は、1気圧の室内環境であり得る。
【0029】
図1Bは、対称軸112、114及び8つのポートを有する一般的な八角形構成を示す、サンプルチャンバ110の中央平面を通る水平断面である。いくつかの例では、2つの対向するポート181、185はサンプルローダ及びサンプルマニピュレータ用に使用され得、一方、他のポート182~184、186~187は、コールドフィンガ、計装アクセス、若しくは補助ツール用に様々に使用される場合があり、又は使用されない場合がある。通常の動作では、各ポート181~187は、関連する機器への真空気密接続を提供する場合があり、又は単純に密封される場合がある。サンプルチャンバ110のチャネル180は、吸気口132でポンプカプラ130に結合することができる。例示を明確にするために、フランジ、ガスケット、又は他の結合の詳細は、図1A~1Bから省略されている。対称軸112、114の交点は、カラム軸105上にあり得る。
【0030】
用語
「積層造形」(場合によっては「3Dプリンティング」)という用語は、層ごとの材料堆積を用いてオブジェクトを作製するプロセスを指し、オブジェクトの形状は、事前に形成された金型ではなく、コンピュータによって指示された材料の堆積によって定義される。つまり、追加の材料層を堆積させる基部として基板を使用することはできるが、積層造形では金型を使用せずに形状を作製する。
【0031】
「原子番号」(Z)という用語は、元素物質の1つの原子核内の陽子の数を指す。複数の元素の組成(例えば、合金、化合物、混合物、又は別の材料が散在する若しくは別の材料内に散在する1つの材料の複合体)の場合、「平均原子番号」Zavgは次のように定義できる。
【数1】
式中、下付きのiは原子番号Ziを有する組成物中のそれぞれの元素を表し、fiは元素iの原子に属する組成物中の陽子の割合である。つまり、Σ=1である。k及び1/kは正の指数であり、k=1は単純な平均原子番号を表し、一方k=2.94はカーン平均原子番号を表し、「有効原子番号」と呼ばれることもある。元素物質の場合、平均原子番号は単にその元素の原子番号である。原子番号は整数だが、平均原子番号は整数である必要はない。低Z材料の平均原子番号は14以下である。いくつかの例では、アルミニウム(Z=13)をX線遮蔽体のシェルを覆う低Zクラッディングとして使用できる。高Z材料の平均原子番号は50以上である。
【0032】
X線又はX線遮蔽の文脈において、「ブロック」という用語は、吸収又は非弾性散乱をもたらすX線遮蔽体と相互作用するX線を指す。非弾性散乱は、各々が入射X線よりも低いエネルギーを持つ1つ以上の光子が発生して、元のX線が消滅するプロセスである。相互作用のない入射X線は、遮蔽体を通って「通過」すると言える。通過には、弾性散乱が含まれる場合がある。ブロックという用語は、装置の通常の動作に付随する場合がある。例示すると、所与のX線遮蔽体は、10keVの電子ビームによって発生したX線の99%をブロックするか(一方、他の1%を通過させる)、100keVのビームによって発生したX線の90%をブロックするか(一方、他の10%を通過させる)、又は1MeVのビームによって発生したX線の50%ブロックすることができる(一方、他の50%を通過させる)。
【0033】
「ボトル」という用語は、コンテナの内部をその外部に結合する少なくとも1つのポートを有する、密封可能なコンテナを指す。少なくとも1つのポートが閉鎖している場合、ボトルはボトルのままである。「真空ボトル」は、(例えば、ポートを通して)排気してボトルの内部を真空に保つことができるボトルであり、個別のオブジェクトが任意選択で真空中に位置し得る。「逆真空ボトル」とは、ボトルの外部の真空から密封して材料を保持することができるボトルである。ボトルは多岐にわたる形状のうちのいずれかとすることができ、円筒の形状又はポートにつながる細い首の形状に限定されない。本明細書で対象とするいくつかのボトルは、1つ、2つ、又はそれ以上のポートを備える、ねじれた又はらせん形状を有することができる。
【0034】
「チャンバ」という用語は、エンクロージャ内の空間又は容積を指す。1つ以上のポートが存在しても、エンクロージャがチャンバを画定することを除外するものではない。「サンプルチャンバ」とは、電子顕微鏡又は他の分析機器内にあることが多いチャンバであり、通常の動作下における分析のためにサンプルをその中に設置することができる。
【0035】
「電子顕微鏡」は、サンプルに電子ビームを照射し、その結果生じる粒子又は電磁放射を使用して画像を形成するタイプの分析機器である。走査型電子顕微鏡(SEM)は、電子ビームが入射するサンプル表面からの反射粒子、二次粒子、若しくは後方散乱粒子、又は放射に基づいてサンプル表面を画像化する。SEMによって検出されるビーム相互作用は、この表面又はその近くで発生するため、SEMは任意の厚さのサンプルで動作することができる。一方、透過型電子顕微鏡(TEM)は、透過電子(散乱電子を含む)に基づいてサンプル表面を画像化する。TEMは厚さ約10~150nmのサンプルで動作し、サンプルは、機械的サポート及び熱伝導率のためのグリッドに取り付けられ得、次に、グリッドはサンプルホルダに保持され得る。TEMは5000万倍を超えるまでの倍率を提供できるが、SEMの倍率は通常は約200万倍が限度である。本開示では、透過電子からの画像化を実行する走査型透過電子顕微鏡(STEM)をTEMとみなす。電子顕微鏡内の電子ビームは、電子銃において発生され得、一連のステージを介してサンプルチャンバに向かって加速、集束、又は操縦され得る。一般的に、電子銃、中間ステージ、サンプルチャンバ、及び終了段階の画像化ステージは、「電子顕微鏡カラム」又は単に「カラム」と呼ばれる柱状構造として配列することができる。カラムの長手方向軸を「カラム軸」と呼ぶ。
【0036】
「エンクロージャ」という用語は、内部空間(例えば、チャンバ)を画定する構造を指す。本明細書に記載されたいくつかのエンクロージャは密封されているが、これは必須ではなく、他のエンクロージャは1つ以上のポートを有し、内部空間と外部空間の間で物質が自由に移動することを可能にし得る。特に、記載されたいくつかのエンクロージャは、最初は開放されているが、その後一時的に閉鎖されるか(例えば、漏れ検査のために)、又は恒久的に閉鎖される(例えば、エンクロージャを使用し始める前)、ポートを持つことができる。
【0037】
チャンバ(又はシェル)に適用される「充填」という用語は、チャンバ(又はシェルの内部空間)の容積の少なくとも50%が、X線遮蔽材などの充填材料によって占められていることを意味すると理解される。
【0038】
「流体」という用語は、取り囲んでいるエンクロージャの形状をとることができる液相又は気相の物質を指す。流体は均質であり得るか、又は、不均質であり得る。
【0039】
エンクロージャの文脈における「隔離された」という用語は、2つの空間を接続する明確な経路がない2つの空間を指す。ポートが開放されていないエンクロージャは、その内部容積を外部空間から隔離するのに役立ち得る。エンクロージャ内に漏れが存在しても、空間が隔離されていることを除外するものではない。
【0040】
名詞としての「漏れ」という用語は、エンクロージャの壁を通り抜ける意図しない経路を指す。動詞として、この用語は漏れを通過させる行為を指す。壁を通り抜ける経路は、その漏れ速度が10-3mbar・l/sと所定の漏れ速度閾値(10-12mbar・l/sなど)との間である場合、漏れとみなすことができる。
【0041】
「漏れ速度」という用語は、所与の圧力差の下で材料が表面を通過する速度を指し、一般的にはmbar・liter/second(短縮してmbar・l/s)のような単位で測定される。空気は、薄い壁にある直径10μmの穴を、1気圧の圧力差で約10-2mbar・l/sで通過できる。超高真空システムについて本明細書で対象とする漏れ速度は、1000mbar(1気圧)の圧力差で25℃のHeガスの場合、10-3~10-12mbar・l/sの範囲であり得る。
【0042】
「ポート」という用語は、エンクロージャ中の肉眼で見える開口部を指す。一般的に、ポートは0.1mm~10cm、場合によっては1mm~1cmの範囲の横断空間範囲を持つことができるが、これは必須ではない。ポートは円形にすることができるが、これは必須ではなく、正方形、楕円形、細長いスロット形状、又は他の形状のポートも使用できる。「ポンピングポート」は、真空ポンプに結合された真空エンクロージャのポートである。
【0043】
「ポンプカプラ」という用語は、真空エンクロージャのメインチャンバを真空ポンプに結合する真空エンクロージャのセクションを指す。真空エンクロージャ内のポンピングポートとメインチャンバとの間の境界領域は、ポンプカプラの「吸気口」と呼ばれる。ポンプカプラと真空ポンプとの間の境界は、真空エンクロージャのポンピングポートであり得、ポンプカプラの「排気口」と呼ばれることもある。すなわち、メインチャンバから真空ポンプによって引き出された流体原子又は分子は、メインチャンバから吸気口を通過してポンプカプラに入り、そこから排気口を通って真空ポンプに入ることができる。
【0044】
「樹脂」という用語は、粘性流体を指す。樹脂は、X線遮蔽材の粒子などの懸濁粒子を保持する媒体として機能する場合、「担持した」と呼ばれる。一部の樹脂は、エポキシ樹脂又は剛性固体に硬化する他の硬化性樹脂であり得るが、これは必須ではない。他の樹脂は、粘性流体の性質を永続的に保ち得る。
【0045】
「剛性」という用語は、通常の使用下で一定の形状を有するエンクロージャ又は他の固体オブジェクトを指す。例示すると、ガラス瓶は剛性なのに対し、一般的なビニール袋はそうではない。振動、熱膨張、エンクロージャの内部と外部との圧力差の変化、又は同様の影響による微細な形状の変形は、オブジェクトが剛性であるとみなされることを除外するものではない。
【0046】
動詞としての「密封する」という用語は、エンクロージャのポートを閉鎖する行為を指す。ポートは、例えば、ポート上にキャップを溶接することによって閉鎖することができる。エンクロージャの全てのポートが密封されている場合、エンクロージャの内部容積を外部空間から隔離できる。
【0047】
「シェル」という用語は、薄壁のエンクロージャを指す。シェルは剛性であり得るが、これは必須ではない。ベローズ構造は、ステンレス鋼製であろうと別の材料であろうと、柔軟性のあるシェルとすることができる。開示された例のいくつかのシェルは、30μm~3mm、100μm~1mm、又は約0.3mmの範囲の壁厚を有し得る。壁厚は、シェルの異なる部分間で異なっていてもよい。例示すると、厚さの中央値が0.3mmのシェルは、厚さ約1mmの基部セクション及び厚さ約3mmのフランジセクションを有し得る。
【0048】
「真空」という用語は、10-3mbar未満の流体圧力を有するチャンバの状態を指す。「超高真空」(UHV)とは、10-9mbar未満の圧力を指す。1mbarは、約10Pa、10N/m、すなわち0.75torrである。
【0049】
「真空コンダクタンス」という用語は、真空中の2つの平面間の質量流量を平面間の圧力差で割ったものを指す。例示すると、2つの平面は、ポンプカプラの吸気口及び排気口であり得る。分子流の条件下においては、ポンプカプラを通過する質量流は、吸気口と排気口との圧力差に比例し得る。一般に、ポンプカプラ内のオブジェクト(例えば、X線遮蔽体)の存在、ポンプカプラの湾曲、断面の不均一性、又は表面の粗さにより、ポンプカプラの真空コンダクタンスは、同じ又は類似の寸法のストレートスムースボアの空のポンプカプラよりも低くなる可能性がある。
【0050】
「真空エンクロージャ」という用語は、真空下ではない環境からエンクロージャ内部の真空を隔離するように構成された構造を指す。いくつかの例では、環境は空気であり得るが、これは必須ではなく、他のガス又は液体環境を用いることができる。あるいは、真空エンクロージャの外部の環境は、エンクロージャ内部よりも高圧の真空にすることができる。真空エンクロージャは、1つ以上のシェル、他の構造、ポート、又はガスケットを任意の組み合わせで組み合わせて形成することができる。
【0051】
「真空ポンプ」という用語は、真空ポンプに結合された真空エンクロージャの内部空間から流体原子又は分子を引き出すように動作可能な装置を指す。UHVシステムに見られる真空ポンプには、ターボ分子ポンプ、クライオポンプ、イオンポンプ、又はゲッタが含まれ得、機械式、拡散、又は他のタイプの粗引きポンプによって補助され得る。
【0052】
「溶接」という用語は、2つの固体オブジェクトを接合するプロセスを指し、このプロセスでは、両方のオブジェクトの材料が接合部の近傍で一時的に加熱又は液化される。金属オブジェクトの場合、加熱は、例えば、溶接トーチを使用して液化を伴ってもよく、又、加熱は、超音波溶接における音響エネルギーを使用して、液化を伴わずに実行されてもよい。ポリマーなどの非金属の場合、加熱又は液化は、音響エネルギー又は溶媒を用いて実行することができる。タングステン不活性ガス(TIG)溶接又は金属不活性ガス(MIG)溶接などの一部の一般的な溶接プロセスでは、溶加材を使用することができる。レーザ溶接又は超音波溶接などの他の溶接プロセスでは、溶加材を省略できる。
【0053】
「内」という用語は、完全に内部に含まれていることを意味する。このように、革新的なX線遮蔽体は、真空エンクロージャ内に配置でき、真空エンクロージャから取り外すことができる。X線遮蔽体を取り外した後、X線遮蔽体の有無にかかわらず、真空エンクロージャを再密封して完全な状態で同じ構成で真空にすることができる。
【0054】
「X線」という用語は、約10pm~10nmの範囲の波長又は約100eV~100keVの範囲の光子エネルギーを有する電磁放射を指す。X線は、高エネルギー粒子ビームと静止材料との相互作用によって発生することがよくあるが、これは必須ではない。X線はまた、高エネルギーの光子(例えば、ガンマ線又は他のX線)と物質との相互作用によって、又は放射性崩壊によって発生することもある。いくつかの開示された例では、X線は電子顕微鏡内で、例えば、電子ビームがサンプルに入射する場所で生じる場合がある。X線は、集束イオンビームをサンプルに入射させることによっても発生し得る。
【0055】
「X線発生場所」という用語は、装置の通常の動作下でX線が発生すると予想される装置内の位置を指す。例えば、電子顕微鏡内のサンプルステージ又はサンプルチャンバは、X線発生場所になり得る。電子ビームが通過するアパーチャを画定するプレート又はブロックもまた、X線発生場所になり得る。したがって、X線発生場所は、装置のスイッチが切られているとき、又はサンプルが存在しないとき、装置内に存在する。
【0056】
「X線遮蔽体」(又は単に「遮蔽体」)という用語は、X線遮蔽材を組み込み、一部のX線をブロックするように構成されたデバイスを指す。ブロックされたX線は、X線遮蔽体に関連する装置の通常の動作中に発生する可能性がある。
【0057】
「X線遮蔽材」という用語は、少なくとも30、又は30~100の範囲の平均原子番号の材料を指す。本開示で対象とするいくつかのX線遮蔽材には、鉛(原子番号Z=82)、タングステン(Z=74)、又はスズ(Z=50)が含まれる。アンチモン(Z=51)、タンタル(Z=73)、ビスマス(Z=83)、又は劣化ウラン(Z=92)もまた使用することができる。ステンレス鋼(Zavg=29)又はアルミニウム(Z=13)などの一般的な構造材料は、本明細書ではX線遮蔽材とはみなされない。
【0058】
例示的なX線遮蔽体の配置
図2は、真空エンクロージャの外部に配置されたX線遮蔽を図示する断面図200である。図2は、図1Aのものとほぼ同様の代表的な電子顕微鏡を示している。X線発生場所215は、カラム軸205に沿ってサンプルエンクロージャ210内に位置し、サンプルエンクロージャ210は、ポンプカプラ230を介してポンプ240に結合されており、図1A~1Bに関連して説明したものと同様の構成である。図示の装置は、やはり図1Aのものと同様の電子光学系222、228及び磁極片224、226を含む。
【0059】
図2において、X線遮蔽体250は、従来の配列で真空エンクロージャの外部(203)に設けられている。遮蔽体250は内部の真空空間内にないため、真空適合性を提供する必要はない。しかしながら、遮蔽体250は、ポンプカプラ230を取り囲み、ポンプカプラ230よりも大きく、遮蔽体250の質量は相当なものとなり得る。
【0060】
図3は、X線遮蔽体が真空エンクロージャ内部に配置された装置の断面図300である。特に、革新的なX線遮蔽体350は、真空エンクロージャ内、例えば、サンプルチャンバ310内及びX線発生場所315の近傍に設置することができる。軸305を有する電子カラムに沿った構成要素322、324、326、328、並びにポンピングポート構成要素のカプラ330及びポンプ340を含む、図3の他の構成要素は、概して、図1Aに関連して説明された同様の番号が付けられた構成要素と同様であり、これ以上は説明しない。
【0061】
図4は、別のX線遮蔽体が真空エンクロージャ内に配置された装置の断面図400である。特に、革新的なX線遮蔽体450は、真空エンクロージャ内、例えば、ポンプカプラ430内に設置することができる。軸405を有する電子カラムに沿った構成要素410、422、424、426、428、及びポンプ440を含む、図4の他の構成要素は、概して、図1Aに関連して説明された同様の番号が付けられた構成要素と同様であり、これ以上は説明しない。
【0062】
開示された方法の多数の変形及び拡張を実装することができる。いくつかの例では、X線遮蔽体は、部分的にサンプルチャンバ310内に、かつ部分的にポンプカプラ330内に、すなわち、吸気口332にまたがって設置され得る。他の例では、複数のX線遮蔽体を、サンプルチャンバ310、ポンプカプラ330の間、又は他の(例えば、図1Bの181~187と同様の)ポートに近接して様々に配設された、真空エンクロージャ内に配置することができる。更なる例では、X線遮蔽体の組み合わせを、真空エンクロージャの内部(350又は450に類似)及び真空エンクロージャの外部(250に類似)に配置することができる。革新的なX線遮蔽体350、450について示された形状は単なる例示であり、革新的なX線遮蔽体は、所与の用途の幾何学的又は機能的な制約に適合するように、広範囲の形状又はサイズで作製することができる。
【0063】
第1の例示的な方法
図5は、X線遮蔽体を作製するための第1の例示的な方法のフローチャート500である。この方法では、シェルが作製され、漏れ検査され、充填され、かつ密封されて、超高真空エンクロージャ内での配置に適したX線遮蔽体を得る。
【0064】
プロセスブロック510で、シェルを作製することができる。シェルはチャンバを画定することができ、かつ1つ以上のポートを有することができる。ブロック520で、シェルを検査して、シェルに漏れがないことを確認することができる。次いで、ブロック530で、検査されたシェルにX線遮蔽材を充填することができ、ブロック540で、シェルのポートを密封することができる。
【0065】
開示された方法の多数の変形及び拡張を実装することができる。ブロック510での作製は積層造形によって実行することができ、直接金属レーザ焼結(DMLS)、選択的レーザ溶融(SLM)、電子ビーム溶融(EBM)、又は結合剤噴射(BJ)のうちの1つ以上を含むことができる。
【0066】
シェルは剛性とすることができる。シェル材は、ステンレス鋼を含む場合がある。シェルは、約0.3mm、又は0.05~2.0mm、又は0.1~1.0mmの範囲の壁厚の中央値を有し得る。
【0067】
漏れ検査の前に、シェル内部のチャンバをシェルの外部の環境から一時的に隔離することができる。例えば、1つのポートをキャップで密封し、別のポートをヘリウム漏れ検出器に結合させることができる。一時的な隔離は、漏れ検査520の間維持することができ、その後元に戻すことができ、それによって、プロセスブロック530でシェルを充填するためにポートを使用することができる。
【0068】
漏れ検査520は、所定の漏れ速度閾値に対して実行することができ、これは、測定漏れ速度が閾値を超えると検査に不合格となり、一方、測定漏れ速度が閾値未満であると検査に合格することを意味する。所定の漏れ速度閾値は、ヘリウム漏れ検出器の限界感度、又は限界感度よりも高い別の漏れ速度値とすることができる。例示すると、漏れ検出器の感度は10-9mbar・l/sであり得、所定の閾値は10-7mbar・l/sであり得る。よって、10-8mbar・l/sの漏れ速度が検出されたシェルは、漏れ検査に合格することができ、漏れがないとみなすことができる。別の例示として、所定の閾値は、本漏れ検出器の感度に等しくすることができ、その結果、何らかの漏れが検出されるとシェルは漏れ検査に不合格となり、漏れ検査に合格するにはいかなる検出可能な漏れもないことが必要である。
【0069】
いくつかの例では、充填530中に第1のポートを使用してX線遮蔽材をチャンバ内に導入することができ、第2のポートを使用して、チャンバが充填されるときにチャンバから排される既存の流体(例えば、空気)を排出することができる。他の例では、第2のポートをポンプに接続して、充填前にチャンバを排気することによって閉じ込められたエアポケットを回避し、ボイドのないX線遮蔽体を確保することができる。更なる例では、充填機能又は排出機能のいずれかのために、1つ以上のポートを使用することができる。更に、充填530は、単一のポートを使用して実行することができる。単一のポートは2つのバルブに接続され得、一方のバルブはポンプによるチャンバ排気用に開放され、他方のバルブは供給リザーバからの充填用に開放される。あるいは、単一のポートは、ポートに挿入された供給チューブを介して充填するため、かつ供給チューブによってブロックされていないポートの一部を介して排される流体を排出するために、同時に使用することができる。
【0070】
X線遮蔽材は、鉛などの高Z金属を少なくとも50重量%含むことができる。ブロック530における充填することは、金属を溶融状態でチャンバ内に導入することを含み得る。X線遮蔽材は、樹脂内に懸濁された金属粉末の形態であり得る。
【0071】
ブロック540における密封することは、シェルの1つ以上のポートの各々にそれぞれのキャップを溶接することを含み得る。
【0072】
シェルは平均原子番号Z1を有し得、この方法は、平均原子番号Z2<Z1の別の材料でシェルをクラッディングすることに拡張することができる。
【0073】
X線放出を低減するための例示的な手順
いくつかの例では、開示された技術を適用して、電子顕微鏡又は他のX線発生機器からのX線放出を低減することができる。電子顕微鏡又は他の機器は、真空エンクロージャ内に位置するX線発生場所を有し得る。X線遮蔽体は、図5若しくは図7の、それぞれの図に示すような方法によって、又は本明細書に記載の変形若しくは拡張のいずれかを任意の組み合わせで使用して製造することができる。次に、真空エンクロージャの内部容積内にX線遮蔽体を固定することができる。いくつかの例では、X線遮蔽体は、例えば、X線発生場所と真空ポンプとの間の経路に沿ってポンプカプラ内に位置決めすることができ、ポンプカプラの吸気口を通りX線遮蔽体の長手方向軸に平行に放出されるX線の、第1の閾値の割合よりも多くをブロックするように配向することができる。様々な例では、第1の閾値の割合は、50%、80%、90%、95%、98%、又は99%であり得る。
【0074】
例示的なX線遮蔽体
図6A~6Dは、開示された技術による第1の例示的なX線遮蔽体のビュー601~604である。ビュー601~602は、X線遮蔽体の切り欠き図である。例示を明確にするために、X線遮蔽材はビュー601~602から省略されているが、以下に説明される。
【0075】
図6Aは、壁612を有する湾曲したねじれた表面を有し、チャンバ620を画定するシェル610を示している。また、シェル610の一部は、基部614及び取り付けフランジ616である。いくつかの例では、少なくとも壁612は、積層造形技法を用いて作製することができる。様々な例では、基部614及びフランジ616の一方又は両方を、例えば、壁612と同じプロセス動作で積層造形によって作製することもでき、基部614及びフランジ616のうちの一方が、壁612が積層造形される基部として提供され得るか、又は、基部614及びフランジ616の一方若しくは両方を、壁612とは別個に作製し、別個のプロセス動作で壁612に接合することができる。したがって、基部616、壁612、及びフランジ614は、同じ材料又は異なる材料の任意の組み合わせで形成することができる。いくつかの例では、基部616、壁612、及びフランジ614は全てステンレス鋼とすることができる。図6Aでは、チャンバ620は、本X線遮蔽体の構造をよりよく図示するために、中空で示されている。使用のために配置されるとき、チャンバ620はX線遮蔽材で充填することができる。XYZ座標軸608もまた示されている。
【0076】
図6Bは、フランジ616の中央平面を通る別のビュー602であり、キャップ632によって(一時的又は恒久的に)密封されたポート622の構造を示している。概して、キャップ632は完成したX線遮蔽体の一部とみなすことができるが、シェル610の一部とみなすことはできない。図6Bにおいて、破線609は、キャップ632の方向(図6Aに示す座標軸608のZ方向)におけるシェル610の最も遠い範囲を示している。
【0077】
図6C~6Dは、ポンプカプラ630内に位置決めされたX線遮蔽体650(切り欠き図ではなく、X線遮蔽材で充填されている)を示す、ポンプカプラ630の半透明の切り欠き図603~604である。フランジ636は、ポンプカプラ630の一部とみなすことができる。
【0078】
図示のように細長いねじれた形状のシェル610は、(図3~4のX線遮蔽体350、450と同様に)ポンプカプラ内又はその近くで有利に使用することができる。一方では、608のZ軸の周りのねじれた形状の方位角曲線は、Z軸に平行かつシェル610の横断範囲内のX線の大部分をブロックする。他方では、シェル610の狭い横断プロファイル及び穏やかな螺旋状の曲線は、関連するポンプカプラを通る分子流に対して低インピーダンスを提供する。
【0079】
シェル610の図示の形状は単なる例示である。いくつかの例では、シェル610の方位角ねじれは、フランジ616から基部614まで約195°、又は180°~210°の範囲であり得る。他の例では、様々な横断プロファイル及び方位角曲線を用いることができる。十字形の横断面を有する(つまり、4つのアームを有する)シェルは、わずか約100°の方位角ねじれ、又は90°~110°の範囲で作製することができる。あるいは、シェルは、フランジから基部までZ軸を中心に約390°回転する単一のベーン(例えば、ビュー602に対してポート622付近からエッジ627まで延在する)で作製することができる。更なる例では、シェル610の曲面は、一組の平面によって近似させることができる。
【0080】
第2の例示的な方法
図7は、開示された技術による第2の例示的な方法のフローチャート700である。この方法は、図5で説明した変形又は拡張のいくつかを組み込んでいる。プロセスブロック710では、積層造形によって剛性シェルを作製することができる。シェルはチャンバを画定することができ、1つ以上のポートを有し得る。プロセスブロック720では、ブロック730での漏れ検査を容易にするために、シェルの内部と外部とを一時的に互いに隔離することができる。ブロック720では、ポートをキャッピングして封鎖すること、又はポートをHe漏れ検出器に結合することによる、任意の組み合わせで実行することができる。ブロック730で、シェルを検査して、シェルに所定の漏れ速度閾値までの漏れがないことを確認することができる。
【0081】
シェルに漏れがないことが確認されると、任意選択のプロセスブロック740で、低Zクラッディングを漏れ検査された(かつ漏れのない)シェルの外部に適用することができる。ブロック750で、検査されたシェルにX線遮蔽材を充填することができる。いくつかの例では、ブロック750は、溶融金属(例えば、溶融鉛又は溶融スズ)をシェルの内部チャンバに注入することによって、ブロック752を用いて実行することができる。他の例では、ブロック754を用いてブロック750を実行することができる。液体中の粒子状金属を、シェルの内部チャンバに注入することができる。いくつかの例では、粒子状金属は、鉛又はタングステンなどの金属の粒子又は粉末であり得る。
【0082】
充填されると、シェルはブロック760において密封され得る。いくつかの例では、ブロック762を用いて、充填されたシェルの各ポート上にキャップを溶接することにより、ブロック760を実行することができる。他の技法もまた用いることができる。別の例として、シェルポートをチューブとして作製することができ、チューブを圧着してポートを閉鎖し、次に閉鎖されたポートを溶接して密封することができる。ブロック760の後、X線遮蔽体の作製を完了することができる。
【0083】
ブロック770では、作製されたX線遮蔽体を真空エンクロージャの内部容積内に固定することができる。ブロック780では、内部にX線遮蔽体を備えた真空エンクロージャを超高真空までポンピングすることができる。このように、外部に超高真空を有し、内部に真空非対応の可能性がある材料(鉛又は樹脂など)を有するX線遮蔽体は、本明細書に記載の逆真空ボトルとみなすことができる。
【0084】
この方法の変形では、ブロック740は、後で、例えば、プロセスブロック750と760との間、又はブロック760と770との間で実行することができる。
【0085】
例示的な装置
図8は、X線遮蔽体を組み込んだ装置800のブロック図である。装置800は、X線発生場所815が存在する真空エンクロージャ802を有する。X線遮蔽体850はまた、真空エンクロージャ802内に位置し得、X線遮蔽材854を包有する逆真空ボトル852を含み得る。
【0086】
いくつかの例では、装置800は、カラム軸を有する電子顕微鏡であり得る。装置800は、ポンプカプラ(図1Aの130と同様)を含むことができる。X線遮蔽体850は、X線発生場所820からポンプカプラの吸気口を通って放出されるX線の少なくとも80%をブロックするように配向され、ポンプカプラ内に、位置決めされ得る。更なる例では、ポンプカプラ内に位置決めされたX線遮蔽体830は、ポンプカプラの真空コンダクタンスを最大で20%減少させることができる。真空エンクロージャ802内の圧力は、10-9mbar未満に保持することができる。X線遮蔽材854は、鉛であるか、又は少なくとも50重量%の鉛を含むことができる。逆真空ボトル852は、ステンレス鋼を組み込むことができる。追加の例では、逆真空ボトル852は、14以下の平均原子番号の低Z材料でクラッディングすることができる。X線遮蔽体850は、ねじれた細長い部材を組み込むことができる。
【0087】
第3の方法例
図9は、開示された技術による第3の例示的な方法のフローチャート900である。プロセスブロック910では、X線遮蔽材を包有する逆真空ボトルを電子顕微鏡の真空エンクロージャ内部に設置することができる。次に、プロセスブロック920では、真空エンクロージャを10-9mbar以下の圧力までポンピングして下げることができる。
【0088】
いくつかの例では、真空エンクロージャはポンプカプラを含むことができ、ブロック910において、逆真空ボトルをポンプカプラ内に固定することができる。
【0089】
追加の例示的なX線遮蔽体
図10A~10Bは、開示された技術による第2の例示的なX線遮蔽体のビュー1001~1002である。図6A~6Dの例とは対照的に、本遮蔽体1050は、2つのポート1022を有する。図10A~10Bは両方とも、シェル1010を示している(例えば、510と同様のプロセスブロックで作製される)。ポートキャップ及びX線遮蔽材は、例示を明確にするために、図10A~10Bから省略されている。
【0090】
図10Aは、遮蔽体1050の斜視図である。図10Bは、基部1014からフランジ1016まで細長いねじれた形状で配列された、壁1012及びチャンバ1020を示す切り欠き図である。示された形状は例示であり、他の形状を使用することができる。XYZ座標軸1008もまた示されている。
【0091】
図11は、第3の例示的なX線遮蔽体1150の形状を示す概念図1100である。本明細書に開示された他の例と同様に、遮蔽体1150は、チャンバ1120を取り囲むシェル1110を有する。シェル1110の壁1112は実線で示されている。図示を簡略化するために、エンドキャップ、ポート、フランジ、又は充填遮蔽材は、図11から省略されている。遮蔽体1150は、長手方向軸1105から離れたところよりも長手方向軸1105の近くで薄い横断面を有する。軸1105から離れて遮蔽材を再分配することにより、軸1105から離れた、又は発散するX線に対する遮蔽を改善することができ、わずかな利益しか提供しない軸上の余分な遮蔽材を除去することができる。したがって、図示の構成は、所与の質量のX線遮蔽材の遮蔽効果を改善することができる。遮蔽体1150は、約270°の方位角ねじれを有するように示されているが、これは必須ではなく、図示の概念は、他のねじれ又は他の形状の遮蔽体に適用することができる。
【0092】
図12A~12Cは、第4の例示的なX線遮蔽体1250の形状を示す概念図1201~1203である。シェル、チャンバ、及びポートなどの機械的詳細は、図示を簡略化するために図12から省略されており、本明細書に開示されている他の例と同様であり得る。図12Aは、長手方向軸1205を中心に約360°のねじれを有する遮蔽体1250の側面図を示している。図12Bは、遮蔽体1250の斜視図を示しており、一方、図12Cは、ポンプカプラの一部であり得る円筒形パイプ1230の内部に嵌合された遮蔽体1250を示す。他の開示された例に対する遮蔽体1250の追加のねじれは、より少ないねじれを有する遮蔽体と比較して、例えば、特に軸1205から発散する角度を有するX線のより大きなパーセンテージをブロックするなど、改善された遮蔽を提供することができる。
【0093】
図13は、第5の例示的なX線遮蔽体1350の形状を示す概念図1300である。遮蔽体1250の形状は、軸1205を中心に2つの絡み合った螺旋エッジ1257を有するが、遮蔽体1350は、軸1305を中心に1つの螺旋エッジ1357と、軸1305とほぼ同一線上にある1つの直線エッジ1355と、を有する。遮蔽体1250と比較して、遮蔽体1350は、軸1305に平行なX線に対して、より低い真空インピーダンスで匹敵する遮蔽効果を提供することができる。遮蔽体1350は、軸1305を中心に約390°のらせん状のねじれを有する。
【0094】
図14A~14Dは、第6の例示的なX線遮蔽体1450の形状を示す概念図1401~1404である。シェル、チャンバ、及びポートなどの機械的詳細は、図示を簡略化するために図14から省略されており、本明細書に開示されている他の例と同様であり得る。図14Aは、細長いねじれ部材1453及びスリーブ部材1456を有する遮蔽体1450の側面断面図を示している。図14Bは遮蔽体1450の端面図を示しており、一方、図14Cは遮蔽体1450の斜視図を示し、図14Dは遮蔽体1450の切り欠き断面図を示している。他の開示された例と同様に、ねじれ部材1453内の内部容積1420は、X線遮蔽材で充填することができる。ねじれ部材1453は、遮蔽体1250と同様に、長手方向軸1405を中心に約360°のねじれを有する。いくつかの例では、スリーブ1456は、ねじれ部材1453の内部と同じ又は異なるチャンバを取り囲む二重壁パイプ(例えば、環状の中空シェル)であり得る。このような構成は、軸1405に平行なX線に対してねじれ部材1453によって提供される高レベルの遮蔽と併せて、軸1405から発散する角度で放出されるX線に対する遮蔽を有利に改善することができる。他の例では、スリーブ1456は単一壁パイプであり得、それは遮蔽体1450のX線遮蔽効果を大幅に増加させない場合があるが、機械的剛性を改善するか、又はポンプカプラ若しくは他の真空エンクロージャ内の遮蔽体1450の備え付けを容易にすることができる。
【0095】
一般化されたコンピュータ環境
図15は、X線遮蔽体の製造を制御するための説明された例、技法、及び技術が実装され得る、好適なコンピューティングシステム1500の一般化された例を示している。コンピューティングシステム1500は、様々な汎用又は専用コンピューティングシステムでイノベーションを実装できるため、本開示の使用又は機能の範囲に関する制限を示唆することを意図しない。コンピューティングシステム1500は、積層造形プロセス、別の製造プロセス、漏れ検査プロセス、ポンピングプロセス、又は電子顕微鏡若しくは関連する計装の動作を制御することができ、又は、測定データ若しくは動作データを取得、処理、出力、若しくは保存することができる。
【0096】
図15を参照すると、コンピューティング環境1510は、1つ以上の処理ユニット1522及びメモリ1524を含む。図15では、この基本構成1520は破線内に含まれている。処理ユニット1522は、本明細書で説明されるように、制御又はデータ取得のためなど、コンピュータ実行可能命令を実行することができる。処理ユニット1522は、汎用中央処理装置(CPU)、特定用途向け集積回路(ASIC)のプロセッサ、又は任意の他のタイプのプロセッサであり得る。マルチ処理システムでは、複数の処理ユニットがコンピュータ実行可能命令を実行して、処理能力を増加させる。コンピューティング環境1510はまた、グラフィックス処理ユニット又は共処理ユニット1530を含むことができる。有形メモリ1524は、処理ユニット1522、1530によってアクセス可能な、揮発性メモリ(例えば、レジスタ、キャッシュ、又はRAM)、不揮発性メモリ(例えば、ROM、EEPROM、又はフラッシュメモリ)、又はそれらの何らかの組み合わせであり得る。メモリ1524は、処理ユニット1522、1530による実行に適したコンピュータ実行可能命令の形式で、本明細書で説明される1つ以上のイノベーションを実装するソフトウェア1580を格納する。例えば、ソフトウェア1580は、積層造形プロセスを制御するためのソフトウェア1581、コーティングプロセスを制御するためのソフトウェア1582、漏れ検査を制御するためのソフトウェア1583、又は他のソフトウェア1584を含むことができる。ストレージ1540内のソフトウェア1580について示す挿入図は、図15の他の場所のソフトウェア1580にも同様に適用可能であり得る。メモリ1524はまた、制御パラメータ、較正データ、測定データ、又はデータベースデータを格納することができる。メモリ1524はまた、構成データ及び動作データを格納することができる。
【0097】
コンピューティングシステム1510は、ストレージ1540、入力デバイス1550、出力デバイス1560、又は通信ポート1570のうちの1つ以上などの追加機能を有することができる。バス、コントローラ、又はネットワークなどの相互接続機構(図示せず)は、コンピューティング環境1510のコンポーネントを相互接続する。典型的には、オペレーティングシステムソフトウェア(図示せず)は、コンピューティング環境1510で実行される他のソフトウェアに対してオペレーティング環境を提供し、コンピューティング環境1510のコンポーネントのアクティビティを調整する。
【0098】
有形ストレージ1540は、リムーバブル又は非リムーバブルとすることができ、磁気ディスク、磁気テープ若しくはカセット、CD-ROM、DVD、又はコンピューティング環境1510に非一時的な方法で情報を格納するために使用でき、かつアクセスできる任意の他の媒体を含む。ストレージ1540は、本明細書に記載の1つ以上のイノベーションを実装するソフトウェア1580の命令(命令及び/又はデータを含む)を格納する。ストレージ1540はまた、画像データ、測定データ、参照データ、較正データ、構成データ、又は本明細書で説明される他のデータベース若しくはデータ構造を格納することができる。
【0099】
入力デバイス1550は、キーボード、マウス、ペン、タッチスクリーン、若しくはトラックボールなどの機械式、タッチ感知式、若しくは近接感知式の入力デバイス、音声入力デバイス、走査デバイス、又はコンピューティング環境1510への入力を提供する別のデバイスであり得る。出力デバイス1560は、ディスプレイ、プリンタ、スピーカ、光ディスクライター、又はコンピューティング環境1510からの出力を提供する別のデバイスであり得る。入力又は出力はまた、通信ポート1570を介して、ネットワーク接続を介してリモートデバイスと通信することができる。
【0100】
通信ポート1570は、通信媒体を介した別のコンピューティングエンティティへの通信を可能にする。通信媒体は、コンピュータ実行可能命令、オーディオ若しくはビデオ入力若しくは出力、又は変調されたデータ信号の他のデータなどの情報を伝達する。変調されたデータ信号は、信号内の情報を符号化するような様式で設定又は変更された1つ以上の特性を持つ信号である。限定ではなく一例として、通信媒体は、電気、光、RF、音響、又は他のキャリアを使用することができる。
【0101】
データ取得システムは、入力デバイス1550として、又は通信ポート1570に結合されて、コンピューティング環境1510に統合することができ、アナログ-デジタル変換器又は計装バスへの接続を含むことができる。計装制御システムは、出力デバイス1560として、又は通信ポート1570に結合されて、コンピューティング環境1510に統合することができ、デジタル-アナログ変換器、スイッチ、又は計装バスへの接続を含むことができる。
【0102】
いくつかの例では、コンピュータシステム1500は、開示された技術の全部又は一部を実装する命令が実行されるコンピューティングクラウド1590も含むことができる。メモリ1524、ストレージ1540、及びコンピューティングクラウド1590の任意の組み合わせを使用して、開示された技術のソフトウェア命令及びデータを格納することができる。
【0103】
本イノベーションは、プログラムモジュールに含まれる命令などのコンピュータ実行可能命令の一般的な文脈で説明することができ、ターゲットの実プロセッサ又は仮想プロセッサ上のコンピューティングシステムで実行される。一般に、プログラムモジュール又はコンポーネントには、特定のタスクを実行するか又は特定のデータタイプを実装するルーチン、プログラム、ライブラリ、オブジェクト、クラス、コンポーネント、データ構造などが含まれる。プログラムモジュールの機能は、様々な実施形態で必要に応じて、プログラムモジュール間で組み合わせるか又は分割することができる。プログラムモジュールのコンピュータ実行可能命令は、ローカル又は分散コンピューティングシステム内で実行できる。
【0104】
「コンピューティングシステム」、「コンピューティング環境」、及び「コンピューティングデバイス」という用語は、本明細書では交換可能に使用される。文脈上明確に別段の指示がない限り、いずれの用語もコンピューティングシステム、コンピューティング環境、又はコンピューティングデバイスのタイプを限定するものではない。一般に、コンピューティングシステム、コンピューティング環境、又はコンピューティングデバイスは、ローカル又は分散型にすることができ、専用ハードウェア及び/又は汎用ハードウェア及び/又は仮想化ハードウェアの任意の組み合わせを、本明細書で説明する機能を実装するソフトウェアとともに含むことができる。
【0105】
一般的な考慮事項
本出願及び特許請求の範囲において使用される、「a」、「an」、及び「the」という単数形は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数形も含む。加えて、「含む」という用語は、「備える」を意味する。更に、「結合された」という用語は、結合された項目間の中間要素の存在を排除するものではない。更に、本明細書で使用される「又は」及び「及び/又は」という用語は、句中の任意の1つの項目又は項目の組み合わせを意味する。
【0106】
本明細書に記載のシステム、方法、及び装置は、いかなる方法によっても限定的なものとして解釈されるべきではない。代わりに、本開示は、単独で、並びに相互の様々な組み合わせ及び部分的な組み合わせにおいて、様々な開示された実施形態の全ての新規かつ非自明な特徴及び態様を対象とする。開示されたシステム、方法、及び装置は、任意の特定の態様若しくは特徴又はそれらの組み合わせに限定されるものではなく、開示されたシステム、方法、及び装置は、任意の1つ以上の特定の利点が存在すべきである、又は問題が解決されるべきであることも必要としない。また、任意の例からの技術は、他の例のうちの任意の1つ以上で記載された技術と組み合わせることができる。いずれの動作理論も説明を容易にするためであるが、開示されたシステム、方法、及び装置は、そのような動作理論に限定されない。
【0107】
開示された方法のいくつかの動作は、便宜的な提示のため、特定の順番で記載されているが、以下に記載される具体的な用語によって特定の順序が要求されない限り、この説明様式が並び替えを包含することを理解されたい。例えば、順次記載される動作は、場合によっては、並び替えられ得るか、又は同時に実行され得る。更に、単純化のために、添付の図は、開示されたシステム、方法、及び装置を、他のシステム、方法、及び装置とともに使用することができる様々な方式を示していない場合がある。加えて、説明は、時に、開示された方法を説明するために、「生成する」、「提供する」、又は「検査する」のような用語を使用する。これらの用語は、実行される実際の動作の高レベルの抽象化である。これらの用語に対応する実際の動作は、特定の実施態様に応じて、様々であり、当業者には容易に認識可能である。
【0108】
いくつかの例では、値、手順、又は装置は、「最低」、「最良」、「最小」などと言及される。そのような記載は、少数又は多くの代替例の中から選択できることを示すことを意図しており、そのような選択は、考慮されていない他の代替例よりも低い、より良い、より少ない、又はそうでなければ好ましいものである必要はないことが理解されよう。
【0109】
本開示の装置又は方法を参照して本明細書に提示される動作理論、科学的原理、又は他の理論的説明は、理解を深めるために提供されたものであり、範囲を限定することを意図したものではない。添付の特許請求の範囲における装置及び方法は、そのような動作理論によって説明される様式で機能する装置及び方法に限定されない。
【0110】
開示された方法のいずれも、有形の非一時的なコンピュータ可読ストレージ媒体などの1つ以上のコンピュータ可読ストレージ媒体に格納されて、コンピューティングデバイス(例えば、タブレット、スマートフォン、又はコンピューティングハードウェアを含む他のモバイルデバイスを含む、任意の利用可能なコンピューティングデバイス)上で実行されるコンピュータ実行可能命令又はコンピュータプログラム製品によって制御されるか、又はコンピュータ実行可能命令又はコンピュータプログラム製品として実装することができる。有形のコンピュータ可読ストレージ媒体は、コンピューティング環境内でアクセスできる任意の利用可能な有形の媒体である(例えば、1つ以上の、DVD若しくはCDなどの光メディアディスク、揮発性メモリコンポーネント(DRAM若しくはSRAMなど)、又は不揮発性メモリコンポーネント(フラッシュメモリ若しくはハードドライブなど))。例として、図15を参照すると、コンピュータ可読ストレージ媒体は、メモリ1524及びストレージ1540を含む。コンピュータ可読ストレージ媒体又はコンピュータ可読媒体という用語には、信号及び搬送波は含まれない。更に、コンピュータ可読ストレージ媒体又はコンピュータ可読媒体という用語には、通信ポート(例えば、1570)は含まれない。
【0111】
開示された技法を実装するためのコンピュータ実行可能命令、及び開示された実施形態の実装中に作成及び使用される任意のデータのいずれも、1つ以上のコンピュータ可読ストレージ媒体に格納することができる。コンピュータ実行可能命令は、例えば、ウェブブラウザ又は他のソフトウェアアプリケーション(リモートコンピューティングアプリケーションなど)を介してアクセス又はダウンロードされる、専用ソフトウェアアプリケーション又はソフトウェアアプリケーションの一部であり得る。そのようなソフトウェアは、例えば、1つ以上のネットワークコンピュータを使用して、単一のローカルコンピュータ(例えば、任意の適切な市販のコンピュータ)上で、又はネットワーク環境(例えば、インターネット、広域ネットワーク、ローカルエリアネットワーク、クライアントサーバネットワーク、クラウドコンピューティングネットワーク、又は他のそのようなネットワークを介する)において、実行することができる。
【0112】
明確にするために、ソフトウェアベースの実装の、ある特定の選択された態様のみが説明されている。当技術分野で周知の他の詳細は省略する。例えば、開示された技術は特定のコンピュータ言語又はプログラムに限定されないことを理解されたい。例えば、開示された技術は、Adobe Flash、C、C++、C#、Curl、Dart、Fortran、Java、JavaScript、Julia、Lisp、Matlab、Octave、Perl、Python、Qt、R、Ruby、SAS、SPSS、SQL、WebAssembly、その任意の派生語、若しくは他の適切なプログラミング言語、又はいくつかの例では、HTML若しくはXMLなどのマークアップ言語で、又は適切な言語、ライブラリ、及びパッケージの任意の組み合わせとともに書かれたソフトウェアによって実装することができる。同様に、開示された技術は、任意の特定のコンピュータ又はハードウェアのタイプに限定されない。適切なコンピュータ及びハードウェアのある特定の詳細は周知であり、本開示で詳細に説明する必要はない。
【0113】
更に、ソフトウェアベースの実施形態のうちのいずれか(例えば、開示された方法のうちのいずれかをコンピュータに実行させるためのコンピュータ実行可能命令を含む)は、適切な通信手段を介して、アップロード、ダウンロード、サイドロード、又はリモートアクセスすることができる。このような適切な通信手段には、例えば、インターネット、ワールドワイドウェブ、イントラネット、ソフトウェアアプリケーション、ケーブル(光ファイバケーブルを含む)、磁気通信、電磁通信(RF、マイクロ波、赤外線、及び光通信を含む)、電子通信、又は他のそのような通信手段が含まれる。
【0114】
開示された主題の原理が適用され得る多くの可能な実施形態を考慮して、例示された実施形態は、開示された主題の好ましい例にすぎず、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことを認識すべきである。むしろ、特許請求される主題の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定義される。したがって、私たちはこれらの特許請求の範囲に含まれる全てのものを請求する。
【0115】
更に、本明細書に開示された本発明は、以下に列記された項目のうちの1つ以上によって説明され得るか、又はそれらと一致し得る。
項目1.X線遮蔽体を製造する方法であって、
チャンバを画定しかつ1つ以上のポートを有する、シェルを作製することと、
シェルを検査して、シェルに漏れがないことを確認することと、
検査されたシェルにX線遮蔽材を充填することと、
充填されたシェルの1つ以上のポートを密封することと、を含む、方法。
項目2.シェルが、積層造形プロセスによって作製される、項目1に記載の方法。
項目3.積層造形プロセスが、直接金属レーザ焼結(DMLS)、選択的レーザ溶融(SLM)、電子ビーム溶融(EBM)、又は結合剤噴射(BJ)を含む、項目2に記載の方法。
項目4.
検査を含む期間中、シェルの周りの環境からチャンバを一時的に隔離することを更に含む、先行項目のいずれかに記載の方法。
項目5.検査することが、10-7mbar・l/s以下の漏れ速度閾値を有する、先行項目のいずれかに記載の方法。
項目6.シェルが、剛性である、先行項目のいずれかに記載の方法。
項目7.シェルが、ステンレス鋼を含む、先行項目のいずれかに記載の方法。
項目8.シェルが、0.1~1.0mmの範囲の壁厚の中央値を有する、先行項目のいずれかに記載の方法。
項目9.X線遮蔽材が、金属を含み、充填作業が、溶融状態の金属をチャンバ内に導入することを含む、先行項目のいずれかに記載の方法。
項目10.X線遮蔽材が、金属粒子を担持した樹脂を含む、項目1~8のいずれか1項に記載の方法。
項目11.1つ以上のポートが、充填作業中にX線遮蔽材をチャンバ内に導入するために使用される第1のポートと、充填作業中にチャンバから排される流体を排出するために使用される第2のポートと、を含む、先行項目のいずれかに記載の方法。
項目12.密封することが、1つ以上のポートの各々上にそれぞれのキャップを溶接することを含む、先行項目のいずれかに記載の方法。
項目13.剛性シェルが、第1の平均原子番号Z1の材料を含み、方法が、
Z1より小さい平均原子番号Z2の別の材料で剛性シェルをクラッディングすることを更に含む、先行項目のいずれかに記載の方法。
項目14.真空エンクロージャ内に収容された電子顕微鏡からのX線放出を低減する方法であって、方法が、
項目1に記載の方法によってX線遮蔽体を製造することと、
真空エンクロージャの内部容積内にX線遮蔽体を固定することと、を含む、方法。
項目15.X線遮蔽体が、電子顕微鏡のポンプカプラ内に固定され、かつポンプカプラの吸気口を通りポンプカプラの長手方向軸に平行に放出されるX線の少なくとも80%をブロックするように配向される、項目14に記載の方法。
項目16.装置であって、
真空エンクロージャと、
真空エンクロージャ内に位置決めされているX線遮蔽体と、を備え、X線遮蔽体が、
X線遮蔽材を包有する逆真空ボトルを備える、装置。
項目17.装置が、カラム軸を有する電子顕微鏡であり、装置が、
ポンプカプラを更に備え、X線遮蔽体が、ポンプカプラ内に位置決めされており、かつ真空エンクロージャ内のX線発生場所から放出されてポンプカプラの吸気口を通るX線の少なくとも80%をブロックするように配向されている、項目16に記載の装置。
項目18.ポンプカプラの真空コンダクタンスが、X線遮蔽体によって、X線遮蔽体がない場合と比較して最大20%減少する、項目17に記載の装置。
項目19.真空容器内の圧力が10-9mbar未満である、項目16~18のいずれか1項に記載の装置。
項目20.X線遮蔽材が、少なくとも50重量%の鉛を含む、項目16~19のいずれか1項に記載の装置。
項目21.逆真空ボトルが、ステンレス鋼を含む、項目16~20のいずれか1項に記載の装置。
項目22.ステンレス鋼が、14以下の平均原子番号の材料でクラッディングされている、項目21に記載の装置。
項目23.X線遮蔽体が、ねじれた細長い部材を含む、項目16~22のいずれか1項に記載の装置。
項目24.方法であって、
電子顕微鏡の真空エンクロージャ内部にX線遮蔽材を包有する逆真空ボトルを設置することと、
真空エンクロージャを10-9mbar未満の圧力までポンピングすることと、を含む、方法。
項目25.真空容器が、ポンプカプラを備え、設置することが、ポンプカプラ内に逆真空ボトルを固定することを含む、項目24に記載の方法。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12A
図12B
図12C
図13
図14A
図14B
図14C
図14D
図15