(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】低温解離型水系ブロックポリイソシアネート及びこれを含有する塗料
(51)【国際特許分類】
C08G 18/80 20060101AFI20240228BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20240228BHJP
C08G 18/79 20060101ALI20240228BHJP
C09D 175/00 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
C08G18/80 080
C08G18/00 C
C08G18/79 020
C09D175/00
(21)【出願番号】P 2019019688
(22)【出願日】2019-02-06
【審査請求日】2022-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】千葉 充
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/061954(WO,A1)
【文献】特開昭59-227925(JP,A)
【文献】特開平05-163452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
C09D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イミダゾール系ブロック剤(a)と、ポリイソシアネート(b)と、ノニオン性親水基含有化合物(c)とから得られる水系ブロックポリイソシアネートであって、
イミダゾール系ブロック剤(a)が、2-エチル-4-メチルイミダゾールであり、
ノニオン性親水基含有化合物(c)が、ポリオキシアルキレン
モノアルキルエーテル及びポリオキシアルキレン
モノエステルからなる
群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする低温解離型水系ブロックポリイソシアネート。
【請求項2】
ポリイソシアネート(b)が、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載の低温解離型水系ブロックポリイソシアネート。
【請求項3】
ポリイソシアネート(b)が、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されたイソシアヌレート変性ポリイソシアネートを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の低温解離型水系ブロックポリイソシアネート。
【請求項4】
ノニオン性親水基含有化合物(c)が、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルであることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の低温解離型水系ブロックポリイソシアネート。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の低温解離型水系ブロックポリイソシアネートと、
活性水素基を有する主剤と、を含む樹脂組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の樹脂組成物を含む塗料。
【請求項7】
請求項6に記載の塗料から得られる塗膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温でブロック剤が解離する水系ブロックポリイソシアネート、及びこれを含有する塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
ブロックポリイソシアネートは、イソシアネート基末端前駆体の遊離イソシアネートをイソシアネート基と反応しうる活性水素基を有するブロック剤と反応させることにより封止し、イソシアネート活性を常温では不活性としたものであり、これを加熱するとブロック剤が解離してイソシアネート基が再生されるという性質を持つ。
【0003】
ブロックポリイソシアネートは自動車や航空機、建築材料や家電製品に用いられるプレコートメタルなど、焼付け塗料に広く使用されている。ブロックポリイソシアネートに用いられている汎用的なブロック剤としては、アルコール系、フェノール系、ラクタム系、オキシム系などが知られている。ブロックポリイソシアネートの解離温度は、ポリイソシアネートの種類、ブロック剤の種類、反応相手の種類、触媒の種類・量などによって変わるが、一般的には130~250℃程度である。
【0004】
近年では、焼付け塗装時におけるコスト削減や二酸化炭素排出量削減を目的に、また、プラスチック部材への塗装が可能となるよう、従来よりも低温でブロック剤が解離し、且つ、短時間で硬化するブロックポリイソシアネートが求められている。そして、社会的及び産業界からの要請である環境保全性や作業安全性などから、有機溶剤を使用しない水系(水性)の組成物が要望され、水系塗料に使用できるブロックポリイソシアネートへの移行が積極的に行われている。
【0005】
低温解離型ブロックポリイソシアネートに用いられるブロック剤として活性メチレン系が提案されているが(特許文献1)、塗膜を完全硬化させるには100℃程度の加熱が必要であり耐熱性の低いプラスチック部材には使用できない。また、活性メチレン系ブロックポリイソシアネートは常温でも加水分解しやすく、水系塗料とした際の安定性に劣る。
【0006】
更なる低温解離ブロック剤としてはイミダゾール系が知られ、80~90℃で十分な塗膜硬度が得られるものもあり、プラスチック部材への塗装も可能である。しかしながら、イミダゾール系ブロックポリイソシアネートは水系塗料とした際の安定性が劣るとされ、この特性を包水ゲル形成材に利用する提案もされている(特許文献2)。
【0007】
イミダゾール系ブロックポリイソシアネートの水分散安定性改善策としては、酸成分を反応させる手法が提案されている(特許文献3)。しかし、酸成分はブロック剤の解離温度上昇や、ブロック剤解離後に再生したイソシアネート基の反応性を低下させるなど、悪影響を及ぼす恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平10-231348号公報
【文献】特開昭56-59832号公報
【文献】特開昭60-40121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、低温でブロック剤が解離し、且つ、水系塗料とした際の貯蔵安定性が良好な水系ブロックポリイソシアネート、及びこれを含有する塗料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、特定のイミダゾール系ブロック剤成分を用いて得られる水系ブロックポリイソシアネート、及び、これを含有する塗料が、前記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、以下の[1]~[8]の実施形態を含むものである。
【0012】
[1]イミダゾール系ブロック剤(a)と、ポリイソシアネート(b)と、ノニオン性親水基含有化合物(c)とから得られる水系ブロックポリイソシアネートであって、イミダゾール系ブロック剤(a)が、2-エチル-4-メチルイミダゾールであることを特徴とする低温解離型水系ブロックポリイソシアネート。
【0013】
[2]ポリイソシアネート(b)が、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、前記[1]に記載の低温解離型水系ブロックポリイソシアネート。
【0014】
[3]ノニオン性親水基含有化合物(c)が、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びポリオキシアルキレンエステルからなる群れより選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、前記[1]又は[2]に記載の低温解離型水系ブロックポリイソシアネート。
【0015】
[4]ポリイソシアネート(b)が、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されたイソシアヌレート変性ポリイソシアネートを含むことを特徴とする、前記[1]乃至[3]のいずれかに記載の低温解離型水系ブロックポリイソシアネート。
【0016】
[5]ノニオン性親水基含有化合物(c)が、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルであることを特徴とする、前記[1]乃至[4]のいずれかに記載の低温解離型水系ブロックポリイソシアネート。
【0017】
[6]前記[1]乃至[5]のいずれかに記載の低温解離型水系ブロックポリイソシアネートと主剤とを含む樹脂組成物。
【0018】
[7]前記[6]に記載の樹脂組成物を含む塗料。
【0019】
[8]前記[7]に記載の塗料から得られる塗膜。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、解離温度が低いイミダゾール系ブロック剤を用いたブロックポリイソシアネートでも、水系塗料とした際の貯蔵安定性が良好な水系ブロックポリイソシアネート、及びこれを含む塗料を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0022】
本発明の低温解離型水系ブロックポリイソシアネート及びこれを含む塗料は、イミダゾール系ブロック剤(a)と、ポリイソシアネート(b)と、ノニオン系親水基含有化合物(c)とから得られる水系ブロックポリイソシアネートであって、イミダゾール系ブロック剤(a)が、2-エチル-4-メチルイミダゾールであることを特徴とする。
【0023】
本発明で用いるブロック剤(a)は、2-エチル-4-メチルイミダゾールであり、該ブロック剤で封止したポリイソシアネートを用いることで、水系塗料とした際の貯蔵安定性に優れ、且つ、焼き付け温度が低温であっても得られた塗膜の耐溶剤性が良好な、水系ブロックポリイソシアネートを得ることができる。
【0024】
本発明で用いるポリイソシアネート(b)としては、脂肪族系ポリイソシアネート、脂環族系ポリイソシアネート、及びそれらを組み合わせたポリイソシアネートが好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されたイソシアヌレート変性ポリイソシアネートを含むことがさらに好ましい。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、芳香族系ポリイソシアネート、芳香脂肪族系ポリイソシアネートを併用することもできる。
【0025】
脂肪族系ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、2-メチル-ペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチル-ペンタン-1,5-ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0026】
脂環族系ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0027】
芳香族系ポリイソシアネートとしては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2-ニトロジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジフェニルプロパン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ナフチレン-1,4-ジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシジフェニル-4,4’-ジイソシアネート等を挙げることができる。
【0028】
芳香脂肪族系ポリイソシアネートとしては、1,3-又は1,4-キシレンジイソシアネート、1,3-又は1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン、ω,ω’-ジイソシアナト-1,4-ジエチルベンゼン等を挙げることができる。
【0029】
また、これらのポリイソシアネートのアロファネート変性体、ウレア変性体、ビウレット変性体、ウレトジオン変性体、イソシアヌレート変性体を併用してもよい。
【0030】
本発明で用いるノニオン系親水基含有化合物(c)としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンエステル、及びそれらを組み合わせたノニオン系親水基含有化合物を好ましく使用できる。
【0031】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノドデシルエーテル、ポリエチレングリコールモノセチルエーテル、ポリエチレングリコールモノオレイルエーテル、エチレングリコールモノドデシルエーテル、ジエチレングリコールモノドデシルエーテル、トリエチレングリコールモノドデシルエーテル、テトラエチレングリコールモノドデシルエーテル、ペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル、ヘキサエチレングリコールモノドデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル等を挙げることができる。
【0032】
ポリオキシアルキレンエステルとしては、例えば、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート等を挙げることができる。
【0033】
これらの中でもポリオキシアルキレンアルキルエーテルが好ましく、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルが最も好ましい。また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンエステルの数平均分子量としては、400~4000が好ましく、400~1000が最も好ましい。
【0034】
本発明におけるブロックポリイソシアネートは、例えば、前記した(a)~(c)成分を有機溶媒に投入し、以下に示すウレタン化反応・ブロック化反応条件に従って反応させることにより製造できる。
【0035】
反応工程としては、まず、ポリイソシアネートとノニオン性親水基含有化合物によるウレタン化を行う。ノニオン性親水基含有化合物の仕込量は、ポリイソシアネートに対して1~30質量%であり、好ましくは2~20質量%である。このウレタン化反応は、無触媒でも反応が進行するが、公知のウレタン化反応触媒を使用し、反応を促進させることもできる。ウレタン化反応の反応温度は通常20~200℃、ウレタン化反応の時間は、触媒の有無・添加量、溶剤の種類、固形分濃度、および温度により異なるが、通常1~10時間である。
【0036】
ウレタン化反応時は、イソシアネート基に対して不活性な有機溶剤にて、任意の固形分に希釈してもよい。
【0037】
有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのグリコールエーテル系が挙げられる。これらの溶剤は、単独、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
次に、上記反応にて得られたイソシアネート基末端前駆体と、ブロック剤とによるブロック化反応を行う。ブロック化反応の反応温度は、通常20~200℃、ブロック化反応の時間は通常1~20時間である。ブロック剤の仕込量は、遊離イソシアネート基に対して1.0~2.0倍モル量であり、好ましくは1.0~1.5倍モル量である。ブロック剤の添加時に発熱が大きい場合は、数回に分けて添加するか、滴下添加して急激な発熱を抑制する。
【0039】
更に必要に応じて、顔料、分散安定剤、粘度調整剤、レベリング剤、ゲル化防止剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐熱性向上剤、無機及び有機充填剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、補強材等を添加することができる。
【0040】
本発明における塗料は、前述の水系ブロックポリイソシアネートを含むものである。なお、塗料の主剤に用いられる水系(水性)樹脂は、活性水素基を有しているものが好ましく、具体的には、例えばポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、飽和又は不飽和ポリエステル樹脂、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸で変性したアルキド樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、セルロース樹脂等が挙げられる。更には、光沢、肉持感、硬度、耐久性、柔軟性、乾燥性等の塗膜性能やコストを考慮すると、飽和又は不飽和ポリエステル樹脂、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸で変性したアルキド樹脂、アクリル樹脂が好ましい。
【0041】
本発明の塗料における水系ブロックポリイソシアネートと主剤の配合比率は、水系ブロックポリイソシアネートの有効イソシアネート基/主剤中の活性水素基=1/9~9/1(モル比)であり、好ましくは4/6~6/4(モル比)である。この範囲を外れる場合は、塗膜が硬化し難くなる。なお、水系ブロックポリイソシアネートの有効イソシアネート基とは、ブロック剤でブロックされたイソシアネート基であり、ブロック剤が解離することにより活性水素基と反応し得る有効なイソシアネート基となる。
【0042】
本発明で得られた塗料の塗装方法は、特に限定されるものではなく、公知の手法から適宜選択すればよい。また、塗布量、塗膜の厚み等は、被塗装面の材質等に応じて適宜なものとすればよい。塗膜の硬化条件は、ブロック剤、主剤の種類等にもよるが、本発明の水系ブロックポリイソシアネートであれば80℃、30分で十分硬化する。
【0043】
本発明の水系ブロックポリイソシアネートは、水系塗料として貯蔵安定性が劣るとされるイミダゾール系ブロック剤であっても、特定のブロック剤として2-エチル-4-メチルイミダゾール用いれば、ブロック剤解離温度が低く、且つ、貯蔵安定性に優れる水系塗料を得ることが可能となった。この水系ブロックポリイソシアネートを用いた塗料は、硬化条件がマイルドであるため、加熱硬化時のエネルギーが少なく、環境やコスト的に有利なものとなった。また、耐熱温度の低いプラスチック部材への塗装も可能となった。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の実施例及び比較例について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
<実施例1> 〔水系ブロックポリイソシアネートの製造1〕
撹拌機、温度計、加熱装置、窒素シール管、冷却管を組んだ4ツ口フラスコに、コロネートHXR(東ソー社製、ヘキサメチレンジイソシアネート三量体、NCO含有量21.8質量%、商品名)を403g、MPG-081(日本乳化剤社製、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、商品名)を80g、ジエチルジグリコール(日本乳化剤社製、ジエチレングリコールジエチルエーテル、商品名)を300g仕込み、フラスコ内を窒素置換して、撹拌しながら80℃に加温し、同温度で4時間反応させ、イソシアネート基末端前駆体を得た。続いて、得られたイソシアネート基末端前駆体に、2-エチル-4-メチルイミダゾール217gを、反応温度が80℃を超えないよう、2分割して仕込んだ。初期の発熱が収まった後、60℃で10時間反応させ、赤外吸収スペクトル(IR測定)にて、NCO基のピーク(2270cm-1付近)が消失したところで室温まで冷却し、水系ブロックポリイソシアネートBI-1を得た。
【0046】
<比較例1> 〔ブロックポリイソシアネートの製造2〕
実施例1と同様の製造装置に、コロネートHXRを452g、MPG-081を89g、ジエチルジグリコールを300g仕込み、フラスコ内を窒素置換して、撹拌しながら80℃に加温し、同温度で4時間反応させ、イソシアネート基末端前駆体を得た。続いて、得られたイソシアネート基末端前駆体に、イミダゾール159gを、反応温度が80℃を超えないよう、2分割して仕込んだ。初期の発熱が収まった後、60℃で10時間反応させ、赤外吸収スペクトル(IR測定)にて、NCO基のピーク(2270cm-1付近)が消失したところで室温まで冷却し、水系ブロックポリイソシアネートBI-2を得た。
【0047】
<比較例2> 〔ブロックポリイソシアネートの製造3〕
実施例1と同様の製造装置に、コロネートHXRを432g、MPG-081を85g、ジエチルジグリコールを300g仕込み、フラスコ内を窒素置換して、撹拌しながら80℃に加温し、同温度で4時間反応させ、イソシアネート基末端前駆体を得た。続いて、得られたイソシアネート基末端前駆体に、2-メチルイミダゾール183gを反応温度が80℃を超えないよう、2分割して仕込んだ。初期の発熱が収まった後、60℃で10時間反応させ、赤外吸収スペクトル(IR測定)にて、NCO基のピーク(2270cm-1付近)が消失したところで室温まで冷却し、水系ブロックポリイソシアネートBI-3を得た。
【0048】
<比較例3> 〔ブロックポリイソシアネートの製造4〕
実施例1と同様の製造装置に、コロネートHXRを419g、MPG-081を83g、ジエチルジグリコールを300g仕込み、フラスコ内を窒素置換して、撹拌しながら80℃に加温し、同温度で4時間反応させ、イソシアネート基末端前駆体を得た。続いて、得られたイソシアネート基末端前駆体に、2-エチルイミダゾール199gを反応温度が80℃を超えないよう、2分割して仕込んだ。初期の発熱が収まった後、60℃で10時間反応させ、赤外吸収スペクトル(IR測定)にて、NCO基のピーク(2270cm-1付近)が消失したところで室温まで冷却し、水系ブロックポリイソシアネートBI-4を得た。
【0049】
<比較例4> 〔ブロックポリイソシアネートの製造5〕
実施例1と同様の製造装置に、コロネートHXRを431g、MPG-081を85g、ジエチルジグリコールを300g仕込み、フラスコ内を窒素置換して、撹拌しながら80℃に加温し、同温度で4時間反応させ、イソシアネート基末端前駆体を得た。続いて、得られたイソシアネート基末端前駆体に、メチルエチルケトキシム184gを反応温度が80℃を超えないよう、2分割して仕込んだ。初期の発熱が収まった後、60℃で10時間反応させ、赤外吸収スペクトル(IR測定)にて、NCO基のピーク(2270cm-1付近)が消失したところで室温まで冷却し、水系ブロックポリイソシアネートBI-5を得た。水系ブロックポリイソシアネートBI-1~5の組成を表1に示す。
【0050】
【0051】
〔塗料配合液貯蔵安定性評価〕
<塗料P-1>
水系ブロックポリイソシアネートBI-1を100g、バーノックWE-304(DIC社製、アクリルエマルション、固形分濃度45質量%、水酸基価43mgKOH/g、商品名)を457g、水を133g混合し、塗料P-1を得た。得られた塗料P-1を200mLサンプル瓶に150g入れ、40℃恒温槽に保管して塗料外観を確認した。5日間ゲル化しなければ良好と言える。
【0052】
<塗料P-2~5>
表2に示す組成で、塗料P-1と同様の調製方法で、塗料P-2~5を得た。塗料P-2~5について塗料P-1と同様の評価方法で、塗料配合液貯蔵安定性を評価した。
【0053】
塗料配合は表2に、塗料配合液貯蔵安定性評価については表4に、それぞれ示す。
【0054】
【0055】
〔塗膜耐溶剤性評価〕
<塗料P-6>
水系ブロックポリイソシアネートBI-1を100g、バーノックWE-306(DIC社製、アクリルエマルション、固形分濃度45質量%、水酸基価100mgKOH/g)を196g、水を100g混合し、塗料P-6を得た。得られた塗料P-6について、以下条件で塗膜の耐溶剤性を評価した。
・試験条件
試験片:SPCC-SB鋼板に100μm(wet)になるよう塗料P-6を塗布。
養生:上記塗膜を室温で30分静置後、80℃恒温槽にて30分焼付ける。
評価:メチルエチルケトンを染み込ませた脱脂綿を500gの荷重をかけて擦るように硬化塗膜をラビングし、50往復後の塗膜に損傷が無ければ良好と言える。
【0056】
<塗料P-7~10>
表3に示す組成で、塗料P-6と同様の調製方法で、塗料P-7~10を得た。塗料P-7~10について塗料P-6と同様の評価方法で、塗膜耐溶剤性を評価した。
【0057】
塗料配合は表3に、塗膜耐溶剤性評価については表4に、それぞれ示す。
【0058】
【0059】
【0060】
表4に示すように、本発明の水系ブロックポリイソシアネートを用いた塗料は、ブロック剤として用いた2-エチル-4-メチルイミダゾールの効果により、塗料の貯蔵安定性に優れ、且つ80℃という低温でもブロック剤の解離が良好であり、すなわち主剤との反応が十分に進行し、耐溶剤性に優れる塗膜が得られることがわかる。