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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】接着テープ用リール
(51)【国際特許分類】
   B65H 75/14 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
B65H75/14
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019138227
(22)【出願日】2019-07-26
(65)【公開番号】P2021020773
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】熊田 達也
(72)【発明者】
【氏名】立澤 貴
(72)【発明者】
【氏名】前原 泰夫
(72)【発明者】
【氏名】桑田 泰典
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 弘行
(72)【発明者】
【氏名】富坂 克彦
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-037315(JP,A)
【文献】特開平07-308945(JP,A)
【文献】特開2009-149397(JP,A)
【文献】特開2011-103397(JP,A)
【文献】特表2003-521263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 75/00-75/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着テープを巻き付け可能な筒状の巻芯と、
互いに対向するように前記巻芯に設けられた一対の側板と、を備え、
前記側板の内側面において、前記巻芯に巻き付けられる前記接着テープの幅方向の縁部と対向する対向領域の少なくとも一部には、シボ加工による複数の微細突起が前記内側面から突出する粗面化領域が設けられている接着テープ用リール。
【請求項2】
記粗面化領域において、前記側板の内側面の平均表面粗さRzは、2.0μm以上30.0μm以下となっている請求項1記載の接着テープ用リール。
【請求項3】
前記粗面化領域において、前記複数の微細突起の最大高さは、2.0μm以上30.0μm以下となっている請求項1又は2記載の接着テープ用リール。
【請求項4】
記側板の内側面に対する前記微細突起の抜き勾配は、2.0°以下となっている請求項1~3のいずれか一項記載の接着テープ用リール。
【請求項5】
前記側板の内側面に対する前記微細突起の抜き勾配は、0.5°以上となっている請求項1~4のいずれか一項記載の接着テープ用リール。
【請求項6】
前記側板の内側面には、リブが設けられておらず、
前記粗面化領域は、前記対向領域の全域にわたって設けられている請求項1~のいずれか一項記載の接着テープ用リール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接着テープ用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
多数の電極を有する被接続部材同士を電気的に接続するための接続材料として、異方導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)などの接着テープが使用されている。異方導電フィルムは、プリント配線基板、LCD用ガラス基板、フレキシブルプリント基板等の基板にIC、LSI等の半導体素子やパッケージなどの被接続部材を接続する際、相対する電極同士の導通状態を保ち、隣接する電極同士の絶縁を保つように電気的接続と機械的固着を行う接続材料として用いられる。
【0003】
異方導電フィルムは、例えば熱硬化性樹脂を含有する接着剤成分と、必要により配合される導電粒子とを含み、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)などの基材上にフィルム状に形成されている。異方導電テープは、このような異方導電フィルムの原反を用途に適した幅で切断することによって作製され、リールに巻き付けた状態で保存される(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-34468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
異方導電テープのような接着テープが巻き付けられるリールは、一般に、巻芯と、巻き崩れを防止するための一対の側板とを備えている。従来、接着テープが巻き付けられたリールでは、リールの側板の内側面にテープの接着剤層や基材が接触すると、基材からの接着剤層の剥がれ(ブロッキング現象)が生じることがあった。ブロッキング現象が生じると、リールの側板の内側面にテープが貼り付き、リールからの引き出し不良が生じるおそれがあった。
【0006】
本開示は、上記課題の解決のためになされたものであり、ブロッキング現象を効果的に防止できる接着テープ用リールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面に係る接着テープ用リールは、接着テープを巻き付け可能な筒状の巻芯と、互いに対向するように巻芯に設けられた一対の側板と、を備え、側板の内側面において、巻芯に巻き付けられる接着テープの幅方向の縁部と対向する対向領域の少なくとも一部には、シボ加工による粗面化領域が設けられている。
【0008】
この接着テープ用リールでは、側板の内側面において接着テープの幅方向の縁部と対向する対向領域の少なくとも一部が粗面化領域となっている。粗面化領域では、内側面の表面にシボ加工による微細突起が存在する。この微細突起の存在により、接着テープの幅方向の縁部と内側面との直接的な接触が低減され、ブロッキング現象を効果的に防止できる。
【0009】
粗面化領域において、側板の内側面の平均表面粗さRzは、2.0μm以上30.0μm以下となっていてもよい。内側面の平均表面粗さRzを2.0μm以上とすることで、接着テープの幅方向の縁部と内側面との直接的な接触が十分に低減され、ブロッキング現象の防止効果を十分に確保できる。内側面の平均表面粗さRzを30.0μm以下とすることで、過剰な表面粗さに起因する接着テープと内側面との密着性の上昇を回避できる。
【0010】
粗面化領域において、側板の内側面には、微細突起が形成されており、側板の内側面に対する微細突起の抜き勾配は、2.0°以下となっていてもよい。微細突起の抜き勾配を2.0°以下とすることで、粗面化領域を通した接着テープの視認性を確保できる。この場合、接着テープをリールから引き出すことなく、巻芯に巻き付けられた状態で接着テープの異物検査を側板を通して実施することができる。
【0011】
側板の内側面に対する微細突起の抜き勾配は、0.5°以上となっていてもよい。微細突起の抜き勾配を0.5°以上とすることで、シボ加工の際に用いられる金型からの離型が容易となる。
【0012】
側板の内側面には、リブが設けられておらず、粗面化領域は、対向領域の全域にわたって設けられていてもよい。リブが無いことで、接着テープ用リールから接着テープを引き出す際の作業性を担保できる。また、粗面化領域が対向領域の全域にわたって設けられることで、ブロッキング現象をより確実に防止できる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、ブロッキング現象を効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示に係る接着テープ用リールの一実施形態を示す側面図である。
図2図1に示した接着テープ用リールの正面図である。
図3】(a)は粗面化領域の模式的な拡大図であり、(b)は微細突起の形成の様子を示す模式的な拡大図である。
図4】粗面化領域を通した接着テープの視認性の評価結果を示す図である。
図5】実施例に係る接着テープ用リールの評価結果を示す図である。
図6】比較例に係る接着テープ用リールの評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本開示の一側面に係る接着テープ用リールの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0016】
図1は、本開示に係る接着テープ用リールの一実施形態を示す側面図である。また、図2は、図1に示した接着テープ用リールの正面図である。図1及び図2に示すように、接着テープ用リール1は、接着テープが巻き付けられる筒状の巻芯2と、巻芯2を挟むように互いに対向して設けられた一対の側板3,3とを備えている。接着テープ用リール1は、接着テープを製造、供給、保存する際に用いられる。以下の説明では、接着テープとして異方導電テープT(図2参照)を例示する。
【0017】
巻芯2の軸方向の長さは、異方導電テープTの幅に応じて適宜設定されている。巻芯2の中央部には、巻付装置又は繰出装置(不図示)の回転軸が挿入される軸穴4が設けられている。軸穴4は、例えば断面円形状をなしている。巻付装置又は繰出装置の回転軸を軸穴4に差し込んだ状態で回転軸を駆動させることにより、接着テープ用リール1が空回りすることなく回転するようになっている。
【0018】
側板3は、例えば巻芯2に対して十分に大きな径の円板状をなし、内側面3a及び外側面3bを有している。巻芯2を介して隔てられた側板3,3間の間隔は、異方導電テープTの幅に応じて適宜設定されている。側板3の厚さは、0.5mm~5.0mm、好ましくは0.9mm~3.0mm、より好ましくは1.0mm~2.0mm程度となっている。側板3の径は、巻き付ける異方導電テープTの長さ(異方導電テープTの巻重体の直径)に応じて適宜設定される。なお、側板3,3間の間隔は、側板3の周縁側ほど広がる傾向にある。このため、上記の側板3,3間の間隔は、巻芯付近での測定値で定義している。通常、側板3,3間の間隔は、異方導電テープTの幅に対して105%~120%、より好ましくは107~115%の幅で設定される。
【0019】
接着テープ用リール1は、射出成形などによって巻芯2及び一対の側板3,3を一体的に成形してもよい。接着テープ用リール1は、巻芯2及び一対の側板3,3を別々に成形し、これらを嵌合・接着することによって形成してもよい。巻芯2と側板3とを一体的に成型した場合、製造工程の簡単化が図られる。巻芯2と側板3とを別体とした場合、巻き付ける異方導電テープTの長さに適した直径の側板3を適宜採用したり、異方導電テープTの幅に適した長さの巻芯2を適宜採用したりすることができるという利点がある。
【0020】
異方導電テープTは、電気的接続と機械的固着とを両立する接続材料であり、基材及び接着剤層を備えて構成されている。異方導電テープTを用いることにより、例えば相対する電極同士の導通状態を保ち、かつ隣接する電極同士の絶縁を保つことができる。巻芯2に巻き付けられる異方導電テープTの長さは、通常は50m~1000m程度であり、本実施形態では300m以上となっている。異方導電テープTの幅は、0.3mm~10mm、好ましくは0.4mm~3.0mm、より好ましくは0.4mm~2.0mm程度となっている。異方導電テープTの厚さは、5μm~100μm、好ましくは10μm~40μm、より好ましくは10μm~20μm程度となっている。基材の厚さは、異方導電テープTの厚さと同程度となっている。
【0021】
基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ポリアセテート、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、合成ゴム系、液晶ポリマー等からなる各種テープを使用可能である。基材を構成する材質はこれらに限定されるものではない。基材として、接着剤層との当接面等に離型処理が施されたものを使用してもよい。
【0022】
接着剤層は、例えば、接着剤成分と、必要により含有される導電粒子とを含んでなる接着剤組成物からなる。接着剤成分としては、例えば、熱や光により硬化性を示す材料を広く適用できる。接続後の耐熱性や耐湿性に優れていることから、架橋性材料の使用が好ましい。熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂を主成分として含有するエポキシ系接着剤は、短時間硬化が可能で接続作業性がよく、分子構造上接着性に優れている等の特徴から好ましい。また、国際公開2009/063827号に記載されるようなラジカル硬化系の接着剤組成物も使用することができる。
【0023】
エポキシ系接着剤は、例えば高分子量エポキシ、固形エポキシ又は液状エポキシ、あるいは、これらをウレタン、ポリエステル、アクリルゴム、ニトリルゴム(NBR)、合成線状ポリアミド等で変性したエポキシを主成分とするものを使用することができる。エポキシ系接着剤は、主成分をなす上記エポキシに硬化剤、触媒、カップリング剤、充填剤等を添加してなるものが一般的である。
【0024】
導電粒子としては、例えばAu、Ag、Pt、Pd、Ni、Cu、W、Sb、Sn、はんだ等の金属やカーボンの粒子が挙げられる。導電粒子は、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック等を核とし、この核を上記の金属やカーボンで被覆した被覆粒子であってもよい。導電粒子の平均粒径は、分散性及び導電性の観点から1μm~30μmであることが好ましい。なお、導電粒子を絶縁層で被覆してなる絶縁被覆粒子を使用してもよく、隣接する電極同士の絶縁性を向上させる観点から導電粒子と絶縁性粒子とを併用してもよい。
【0025】
導電粒子の配合割合は、接着剤層に含まれる接着剤成分100体積部に対して、0.1~30体積部であることが好ましく、0.1~10体積部であることがより好ましい。配合割合を0.1体積部以上とすることで、対向する電極間の接続抵抗を十分に小さくすることができ、配合割合を30体積部以下とすることで、隣接する電極間の短絡の発生を抑制することができる。接着剤層に含有される成分、配合量、配合方法などについては、国際公開2009/063827号に記載される成分、配合量、配合方法などを使用することが可能である。
【0026】
続いて、図1及び図2を参照しながら、上述した側板3の構成について更に詳細に説明する。
【0027】
側板3は、巻芯2に巻き付けられる異方導電テープTを側板3を通して視認可能な程度の透明性を有している。側板3の形成材料としては、例えばポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。側板3の内側面3aには、リブなどの突起物が形成されておらず、内側面3aの全体が平坦な形状となっている。側板3の内側面3aにおいて、巻芯2に巻き付けられる異方導電テープTの幅方向の縁部Ta(図2参照)と対向する対向領域の少なくとも一部には、図1に示すように、シボ加工による粗面化領域11が設けられている。図1の例では、内側面3aの側面視において、巻芯2の周面(異方導電テープTの巻付面)2aから側板3の外縁部3cの近傍にわたる環状の領域が粗面化領域11となっている。これにより、巻芯2に巻き付けられる異方導電テープTの幅方向の縁部Taと対向する対向領域の全域が粗面化領域11となっている。
【0028】
シボ加工とは、対象物の表面にシワのような模様を施す表面加工である。粗面化領域11では、シボ加工により、図3(a)に示すように、側板3の内側面3aに複数の微細突起12が形成されている。図3(a)では、概略的に円錐台形状の微細突起12を例示している。本実施形態では、図3(b)に示すように、側板3を押出成型する際の金型13において、内側面3aを画成する部分に微細な凹部14のパターンを設け、当該凹部14のパターンを内側面3aに転写することにより、内側面3aの所望の領域に粗面化領域11が形成されている。
【0029】
粗面化領域11において、側板3の内側面3aの平均表面粗さRzは、例えば2.0μm以上30.0μm以下となっている。側板3の内側面3aの平均表面粗さRzは、2.0μm以上20.0μm以下となっていることが好ましく、2.0μm以上15.0μm以下となっていることが更に好ましい。平均表面粗さRzは、隣り合う微細突起12の十点平均高さであり、隣り合う十点の微細突起12の高さをR1,R2…R9,R10とすると(図3(a)参照)、Rz=(R1,R2…R9,R10)/10で算出される値である。
【0030】
微細突起12の最大高さRmaxは、例えば2.0μm以上30.0μm以下となっている。微細突起12の最大高さRmaxは、2.0μm以上20.0μm以下となっていることが好ましく、2.0μm以上15.0μm以下となっていることが更に好ましい。最大高さRmaxは、粗面化領域11に存在する複数の微細突起12における内側面3aの表面からの最大の高さである。
【0031】
微細突起12の抜き勾配θ(図3(b)参照)は、例えば0.5°以上2.0°以下となっている。抜き勾配θは、0.5°以上1.5°以下となっていることがより好ましい。抜き勾配θは、側板3を押出成型する際の金型13に設けられた凹部14の内周面14aと、金型13の主面13aとがなす角度である。この抜き勾配θは、円錐台形状の微細突起12において底面に対する母線の角度に相当する。金型13からの離型の際に樹脂の流動が生じるため、離型後の微細突起12は、元の円錐台形状に比べてやや丸みを帯びた形状になる場合がある。したがって、抜き勾配θと、離型後の微細突起12における底面に対する母線の角度とは、必ずしも一致しない。
【0032】
以上のような接着テープ用リール1では、側板3の内側面3aにおいて異方導電テープTの幅方向の縁部Taと対向する対向領域の少なくとも一部が粗面化領域11となっている。粗面化領域11では、内側面3aの表面にシボ加工による微細突起12が存在する。この微細突起12の存在により、異方導電テープTの幅方向の縁部Taと内側面3aとの直接的な接触が低減され、ブロッキング現象を効果的に防止できる。
【0033】
また、接着テープ用リール1では、粗面化領域11において、側板3の内側面3aの平均表面粗さRzが2.0μm以上30.0μm以下となっている。内側面3aの平均表面粗さRzを2.0μm以上とすることで、異方導電テープTの幅方向の縁部Taと内側面3aとの直接的な接触が十分に低減され、ブロッキング現象の防止効果を十分に確保できる。内側面3aの平均表面粗さRzを30.0μm以下とすることで、過剰な表面粗さに起因する異方導電テープTと内側面3aとの密着性の上昇を回避できる。
【0034】
また、接着テープ用リール1では、粗面化領域11において、側板3の内側面3aに微細突起12が形成されており、側板3の内側面3aに対する微細突起12の抜き勾配θが0.5°以上2.0°以下となっている。微細突起12の抜き勾配θを0.5°以上とすることで、シボ加工の際に用いられる金型13からの離型が容易となる。微細突起12の抜き勾配θを2.0°以下とすることで、粗面化領域11を通した異方導電テープTの視認性を確保できる。この場合、異方導電テープTを接着テープ用リール1から引き出すことなく、巻芯2に巻き付けられた状態で接着テープ用リール1の異物検査を側板3を通して実施することができる。
【0035】
図4は、粗面化領域を通した接着テープの視認性の評価結果を示す図である。この視認性の評価では、図4(a)に示すように、紙に付した黒点を疑似的に異方導電テープTの異物とし、この紙を側板を通して観察した。黒点の径は、概ね300μm程度とした。また、黒点は、粗面化領域が設けられた内側面を紙と対向させた状態で、外側面側からの透過画像を光学顕微鏡を用いて行った。
【0036】
図4(b)は、比較例の試験結果を示す図である。比較例では、粗面化領域の平均表面粗さRzを31.7μmとし、微細突起の抜き勾配θを3°とした。図4(b)に示すように、比較例では、粗面化領域の透明性が不足し、側板を通して紙の黒点を見通すことは困難であった。一方、図4(c)は、実施例の試験結果を示す図である。実施例では、粗面化領域の平均表面粗さRzを4.29μmとし、微細突起の抜き勾配θを1°とした。実施例では、粗面化領域の透明性が十分に確保され、側板を通して紙の黒点を見通すことができた。
【0037】
また、接着テープ用リール1では、側板3の内側面3aには、リブが設けられておらず、粗面化領域11は、異方導電テープTの幅方向の縁部Taと対向する対向領域の全域にわたって設けられている。リブが無いことで、内側面3aの形状が平坦に保たれるので、接着テープ用リール1から異方導電テープTを引き出す際の作業性を担保できる。また、粗面化領域11が対向領域の全域にわたって設けられることで、ブロッキング現象をより確実に防止できる。
【0038】
なお、上記実施形態では、側板3の内側面3aにリブを設けず、内側面3aを平坦とした構成を例示したが、内側面3aにリブを設けた構成を採用してもよい。この場合、内側面3aにおいて、側板3の中心側から周縁側にかけて複数のリブを放射状に設ける構成としてもよい。また、内側面3aにおいて、側板3の周縁に沿って環状のリブが設けられていてもよい。リブを設ける場合、シボ加工による粗面化領域は、リブの形成領域及びリブの非形成領域の双方に設けられていてもよく、リブの形成領域及びリブの非形成領域のいずれか一方に設けられていてもよい。
【0039】
図5は、実施例に係る接着テープ用リールの評価結果を示す図である。また、図6は、比較例に係る接着テープ用リールの評価結果を示す図である。この評価は、粗面化領域の平均表面粗さRz、微細突起の最大高さRmax、微細突起の抜き勾配θを変化させた場合のブロッキング現象の発生の有無及び粗面化領域を通した接着テープの視認性をそれぞれ検証したものである。
【0040】
実施例1では、Rzを10.48μm、Rmaxを13.15μm、θを1°とした。実施例2では、Rzを3.13μm、Rmaxを3.70μm、θを1°とした。実施例3では、Rzを20.81μm、Rmaxを27.6μm、θを2°とした。
【0041】
比較例1では、シボ加工による粗面化領域を側板の内側面に設けない構成とした。比較例2では、Rzを27.0μm、Rmaxを29.7μm、θを3°とした。比較例3では、Rzを1.72μm、Rmaxを2.7μm、θを1°とした。比較例4では、Rzを33.3μm、Rmaxを44.6μm、θを3°とした。
【0042】
ブロッキング現象の発生の有無については、まず、作製した接着テープ用リールを横にした状態で、温度30℃の恒温槽(相対湿度40~60%)内に24時間にわたって放置した。その後、材料試験機(商品名:テンシロン/株式会社エー・アンド・デイ製)を使用して接着テープ用リールから接着テープを1m/分の速度で引き出し、接着テープを引き出す際に浮きや剥がれが生じなかった場合はOKと判定し、接着テープを引き出す際に浮きや剥がれが生じた場合はNGと判定した。また、粗面化領域を通した接着テープの視認性については、紙面に描かれた直径300μm程度の黒点を側板越しに観察した際に、形状が円形であると確認できた場合はOKと判定し、形状が円形であると確認できなかった場合はNGと判定した。
【0043】
図5の結果から、平均表面粗さRzが2.0μm以上30.0μm以下の範囲では、Rmaxの値にかかわらず、ブロッキング現象の発生が防止できている。また、微細突起の抜き勾配θが0.5°以上2.0°以下の範囲では、Rmaxの値にかかわらず、粗面化領域を通した接着テープの視認性が確保できている。一方、図6の結果から、シボ加工による粗面化領域を側板の内側面に設けない場合には、粗面化領域を通した接着テープの視認性は確保されるものの、ブロッキング現象が発生している。シボ加工による粗面化領域を側板の内側面に設けた場合であっても、平均表面粗さRzが2.0μm未満或いは30.0μmを超える範囲では、Rmaxの値にかかわらず、ブロッキング現象が発生している。また、微細突起の抜き勾配θが2.0°を超える範囲では、粗面化領域を通した接着テープの視認性が低下している。
【0044】
以上の結果から、シボ加工による粗面化領域の平均表面粗さRzを2.0μm以上30.0μm以下とすることで、ブロッキング現象の発生が効果的に防止できることが結論付けられる。また、微細突起の抜き勾配θを2.0°以下とすることで、粗面化領域を設けた場合でも粗面化領域を通した接着テープの視認性を十分に確保できることが結論付けられる。
【符号の説明】
【0045】
1…接着テープ用リール、2…巻芯、3…側板、3a…内側面、11…粗面化領域、12…微細突起、T…異方導電テープ(接着テープ)、Ta…縁部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6