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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】包装物、印刷装置および印刷システム
(51)【国際特許分類】
   B65D 30/10 20060101AFI20240228BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240228BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20240228BHJP
   B65D 85/18 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
B65D30/10 Z
B41J2/01 109
B41M5/00 132
B65D85/18 A
B65D85/18 G
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020019785
(22)【出願日】2020-02-07
(65)【公開番号】P2020152446
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2019047772
(32)【優先日】2019-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】毛利野 哲
(72)【発明者】
【氏名】萩原 元太
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-157139(JP,A)
【文献】特開2015-186893(JP,A)
【文献】特開2002-154246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 30/10
B41J 2/01
B41M 5/00
B65D 85/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置による印刷対象となる被印刷材を有する包装物であって、
前記被印刷材の印刷が施される部分を平坦な状態で保持する板状部材と、
前記印刷装置における印刷位置に対して前記被印刷材を位置決めするための位置決め部と係合し、前記板状部材に設けられ、1または複数の脚部である被位置決め部と、
前記被印刷材の印刷範囲の部分が開口した開口部と、
前記板状部材を内包した状態で前記脚部を露出させる脚露出部と、
を備えることを特徴とする包装物。
【請求項2】
前記開口部と前記脚露出部とを有する封筒状に形成された包装袋を備える、
ことを特徴とする請求項に記載の包装物。
【請求項3】
前記被位置決め部は、前記板状部材に保持された前記被印刷材の印刷面と前記印刷装置における当該被印刷材を載置するプラテンとの間を一定距離に保つ、
ことを特徴とする請求項1に記載の包装物。
【請求項4】
前記包装袋は、前記開口部に形成される開口を覆う剥離可能な保護部材を備える、
ことを特徴とする請求項に記載の包装物。
【請求項5】
前記保護部材は、再剥離および再貼り付け可能な粘着剤を使用して貼り付けられている、
ことを特徴とする請求項に記載の包装物。
【請求項6】
前記被印刷材には、前記印刷装置で用いられるインクの前処理剤が塗布されている、
ことを特徴とする請求項1ないしの何れか一項に記載の包装物。
【請求項7】
印刷対象となる被印刷材を包装した請求項1ないしの何れか一項に記載の包装物を載置するプラテンと、
前記プラテンに設けられ、前記被印刷材を包装した前記包装物を、前記被位置決め部と係合することによって位置決めする位置決め部材と、
前記プラテンに載置された前記包装物に対して印刷を行う印刷部と、
を備え
前記位置決め部材は、前記プラテンから突出形成されていて、
前記被位置決め部の高さは、前記位置決め部材の高さよりも高く形成されている
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項8】
前記被印刷材には、前記印刷部で用いられるインクの前処理剤が塗布されている、
ことを特徴とする請求項に記載の印刷装置。
【請求項9】
印刷対象となる被印刷材を包装した請求項1ないしの何れか一項に記載の包装物と、
前記包装物を載置するプラテンと、
前記プラテンに設けられ、前記被印刷材を包装した前記包装物を、前記被位置決め部と係合することによって位置決めする位置決め部材と、
前記プラテンに載置された前記包装物に対して印刷する印刷部と、
を備え
前記位置決め部材は、前記プラテンから突出形成されていて、
前記被位置決め部の高さは、前記位置決め部材の高さよりも高く形成されている
ことを特徴とする印刷システム。
【請求項10】
前記被印刷材には、前記印刷部で用いられるインクの前処理剤が塗布されている、
ことを特徴とする請求項に記載の印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装物、印刷装置および印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被印刷材(記録媒体)である布地(Tシャツやバック等の加工品を含む)に対して画像を印刷するインクジェットプリンタが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、布地を一部露出した状態で収納するプリント箱を用意し、プリント箱に収納されて露出した状態の布地に対して印刷を実施するプリント装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の布地に対して印刷を実施するプリント装置によれば、例えばTシャツ等の布製品の包装(個包装)を完全に解いてからプリント箱にセットして印刷を行わなければならず、手間が掛かるものとなっていた。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、被印刷物に対する印刷を手早く行うことができる包装物、印刷装置および印刷システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の包装物は、印刷装置による印刷対象となる被印刷材を有する包装物であって、前記被印刷材の印刷が施される部分を平坦な状態で保持する板状部材と、前記印刷装置における印刷位置に対して前記被印刷材を位置決めするための位置決め部材と係合し、前記板状部材に設けられ、1または複数の脚部である被位置決め部と、前記被印刷材の印刷範囲の部分が開口した開口部と、前記板状部材を内包した状態で前記脚部を露出させる脚露出部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、布地に対する高品質な印刷を簡単な構成で手早く行うことができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施の形態にかかる印刷装置を示す外観斜視図である。
図2図2は、印刷装置を示す分解斜視図である。
図3図3は、印刷装置の内部を示す斜視図である。
図4図4は、印刷部および搬送部の構成を概略的に示す図である。
図5-1】図5-1は、布地保持部材における布地の印刷面を保持する表側を示す斜視図である。
図5-2】図5-2は、布地保持部材における裏側を示す斜視図である。
図6-1】図6-1は、布地保持部材に保持された布地の印刷面を示す斜視図である。
図6-2】図6-2は、図6-1における布地保持部材を裏面から見た状態を示す斜視図である。
図7-1】図7-1は、包装袋を例示的に示す斜視図である。
図7-2】図7-2は、包装袋による包装状態の布地の印刷面を示す斜視図である。
図7-3】図7-3は、図7-2における包装状態の布地を裏面から見た状態を示す斜視図である。
図8図8は、カセット上のプラテン部材を示す斜視図である。
図9図9は、布地を包装した包装袋をカセットに載せた状態を示す斜視図である。
図10図10は、第2の実施の形態にかかる包装袋による包装状態の布地の印刷面を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、包装物、印刷装置および印刷システムの実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
本実施の形態においては、印刷装置としてシリアル式のインクジェットプリンタを適用したものである。より詳細には、印刷装置として布地(Tシャツやバック等の加工品を含む)を被印刷材(記録媒体)とするインクジェットプリンタを適用したものである。
【0011】
(第1の実施の形態)
ここで、図1は第1の実施の形態にかかる印刷装置1を示す外観斜視図、図2は印刷装置1を示す分解斜視図である。
【0012】
印刷装置1は、被印刷材(記録媒体)である布地400(図6-1参照)に画像を付与する。図1および図2に示すように、印刷装置1は、装置本体100と、カセット200とを備える。
【0013】
カセット200は、画像が付与される(印刷される)対象である布地400を保持するトレイである。カセット200は、ベース部材であるカセットベース201と、布地400の印刷が施される部分を平坦な状態で保持するプラテンであるプラテン部材300とを有している。
【0014】
なお、布地400としては、ハンカチ、タオルなどの一枚の布地で形成されるものだけではなく、Tシャツ、トレーナーなどの衣服として加工された布地、トートバック等の製品の一部となっている布地にも用いることができる。
【0015】
印刷装置1は、装置本体100内に、ステージ111と、印刷部112(図3参照)とを備えている。ステージ111は、カセット200を着脱可能に保持して進退移動する受け部材である。印刷部112は、ステージ111で保持されたカセット200に保持されている布地400に印刷する。
【0016】
ステージ111は、搬送部113上に設けられ、装置本体100に対して矢印Y方向(副走査方向)に移動可能に保持される。
【0017】
また、印刷装置1は、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル104を備えている。
【0018】
ここで、図3は印刷装置1の内部を示す斜視図、図4は印刷部112および搬送部113の構成を概略的に示す図である。
【0019】
図3および図4に示すように、印刷部112は、ステージ111に対して矢印X方向(主走査方向)に移動するキャリッジ121と、キャリッジ121に搭載された記録ヘッド122とを備えている。
【0020】
キャリッジ121は、矢印X方向(主走査方向)に沿って配置されたガイド部材123で移動可能に保持される。キャリッジ121は、主走査モータ124によって回転駆動する駆動プーリ126と従動プーリ127間に渡したタイミングベルト125を介して矢印X方向(主走査方向)に往復移動される。
【0021】
記録ヘッド122は、例えばイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出する4個の液吐出ヘッドから成る。記録ヘッド122は、複数のインク吐出口(ノズル)を形成したノズル面のノズル列を矢印X方向(主走査方向)と直交する方向(矢印Y方向(副走査方向))に配列し、インク吐出口方向を下方に向けて装着している。
【0022】
なお、各色のインクは、装置本体100内に設けられたインク供給ユニット(図示せず)にセットされたインクカートリッジから、送液ポンプを用いて記録ヘッド122の直上に設けられた一時貯留場所であるサブタンク(図示せず)に送られる。記録ヘッド122でのインク消費に伴い、サブタンクのインクは記録ヘッド122へと供給される。
【0023】
なお、記録ヘッド122は、色毎に独立した液滴吐出ヘッドを用いているが、これに限るものではない。例えば、記録ヘッド122は、各色の記録液の液滴を吐出する複数のノズル列を有する1または複数のヘッドを用いる構成とすることもできる。また、色の数および配列順序は、これに限るものではない。
【0024】
記録ヘッド122としては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、液滴を吐出するための圧力を発生する圧力発生部として備えたものなどを使用できる。
【0025】
また、印刷部112は、スリットを形成したエンコーダスケール128を矢印X方向(主走査方向)に沿って設けている。キャリッジ121は、エンコーダスケール128のスリットを検出するエンコーダセンサ129を備える。エンコーダスケール128およびエンコーダセンサ129は、キャリッジ121の矢印X方向(主走査方向)の位置を検知するためのリニアエンコーダを構成する。
【0026】
このような構成により、印刷部112は、キャリッジ121の移動に合わせて所望の位置でインク滴を吐出して印刷を行う。
【0027】
搬送部113は、カセット200を着脱可能に保持するステージ111を搬送ガイド部材136,137に沿って矢印Y方向(副走査方向)に水平に進退移動させる。搬送ガイド部材136は、副走査モータ130によって回転駆動する搬送ローラプーリ132を備える。そして、搬送部113は、副走査モータ130によって回転駆動する搬送駆動プーリ131と搬送ローラプーリ132間に渡したタイミングベルト133を介して搬送ガイド部材136を回動させて矢印Y方向(副走査方向)にステージ111を往復移動する。
【0028】
搬送部113は、スリットを形成したエンコーダホイール134を搬送ローラプーリ132と同軸に設けている。また、搬送部113は、エンコーダホイール134のスリットを検出するエンコーダセンサ135を設けている。エンコーダホイール134およびエンコーダセンサ135は、ステージ111の矢印Y方向(副走査方向)の位置を検知するためのホイールエンコーダを構成する。
【0029】
また、搬送部113は、ステージ111を昇降させる昇降モータを含む昇降部(図示せず)と、昇降部で昇降したステージ111(カセット200)のZ方向の位置を検出する高さ検知センサ141(図3参照)とを備える。
【0030】
このような構成により、印刷装置1においては、カセット200に布地400をセットした状態で、装置本体100内のステージ111にカセット200を装着して保持する。そして、ステージ111の矢印Y方向(副走査方向)への移動と記録ヘッド122の矢印X方向(主走査方向)への往復移動を繰り返すことで、布地400に所望の画像を印刷する。
【0031】
次に、布地400の保持態様について説明する。本実施の形態においては、布地400は、包装物によって所定の形状に包装される。包装物は、布地400を保持する布地保持部材500(図5-1等参照)、および包装袋600(図7-2等参照)によって構成される。包装物は、印刷装置1とともに印刷システムを構成する。
【0032】
ここで、図5-1は布地保持部材500における布地400の印刷面を保持する表側を示す斜視図、図5-2は布地保持部材500における裏側を示す斜視図である。図5-1および図5-2に示すように、布地保持部材500は、平板形状の板状部材501と、板状部材501に設けられた被位置決め部である円筒形状の4つの脚部502と、を備える。
【0033】
板状部材501は、印刷する布地400(ここでは、Tシャツ)の印刷面のしわや浮きを低減するための部材である。布地400の印刷面を平滑に近づけることにより、記録ヘッド122との距離がばらつくのを抑制し、記録ヘッド122との距離を一定にするので、印刷品質を向上させることができる。
【0034】
板状部材501は、布地400上に塗布されたインクの熱定着の際の加熱温度(定着温度)に対して耐熱性を有している。加熱温度(定着温度)は、70~150℃程度である。例えば、板状部材501の材質としては、シリコンゴムやフッ素ゴム等からなる耐熱性スポンジゴムや各種耐熱樹脂、フェルト、珪酸カルシウム板、カルホン、カルライト、石膏ボード、メラミンスポンジ、グラスウール、ガラス等が利用できる。
【0035】
布地保持部材500の脚部502は、印刷時にプラテン部材300に接触し、プラテン部材300と布地保持部材500に保持された布地400の印刷面との間を一定距離に保つための部材である。布地400の印刷面と記録ヘッド122とを一定間隔で水平に保つことで、記録ヘッド122との距離がばらつくのを抑制し、記録ヘッド122との距離を一定にするので、印刷品質を向上させることができる。
【0036】
なお、本実施の形態の布地保持部材500においては、板状部材501に対して、円筒形状の4つの脚部502を設けるようにしたが、プラテン部材300と布地保持部材500に保持された布地400の印刷面との間を一定距離に保つことができるのであれば、これに限るものではない。例えば、4つ以上の脚部502で支えるものであってもよいし、三角形の頂点を形成する3つの脚部502で支えるものであってもよいし、接地面が広い1つないし2つの脚部502で支えるものであってもよい。すなわち、被位置決め部は、1または複数の脚部502である。
【0037】
図6-1は布地保持部材500に保持された布地400の印刷面を示す斜視図、図6-2は図6-1における布地保持部材500を裏面から見た状態を示す斜視図である。
【0038】
図6-2に示すように、布地保持部材500は、印刷する布地400(ここでは、Tシャツ)の裏面(印刷する面と反対の面)側に載せ置かれる。その後、布地400の布地保持部材500からはみ出ている余剰部分400aが、布地保持部材500の裏側に折り畳まれ、図6-2に示す状態となる。余剰部分400aは、例えばTシャツの前面に印刷を行う場合においては、両袖や襟口、裾等が該当する。なお、余剰部分400aは、テープなどによって板状部材501に対して一時的に固定されてもよい。この状態の布地保持部材500をひっくり返すと、図6-1に示す状態となる。
【0039】
ここで、図6-1に示すように、布地400(ここでは、Tシャツ)は、板状部材501において脚部502が設けられていない側(表側)に対してしわや浮きが無いように密着させられる。これは、印刷時に記録ヘッド122と布地400との距離を一定に保つためである。布地400に浮きやしわがあると部分的に高低差ができてしまい、記録ヘッド122と布地400との距離も部分的に変わることとなるため、印刷品質を均一に保つことができない。
【0040】
なお、上述のように、布地400の布地保持部材500からはみ出ている余剰部分400aが布地保持部材500の裏側に折り畳まれている。この時、折り畳まれている余剰部分400aの高さが布地保持部材500の脚部502より低い範囲に収まっている必要がある。これは、布地保持部材500の脚部502より高くなってしまうと、プラテン部材300に脚部502が接しなくなってしまうため、記録ヘッド122と印字面の高さが適切な範囲に収まらなくなるからである。
【0041】
また、同様の理由で、布地保持部材500の脚部502のプラテン部材300と接する面に、布地400がかからないようにする必要もある。
【0042】
加えて、本実施の形態においては、布地400は、布地保持部材500に保持された状態で包装袋600によって包装される。ここで、図7-1は包装袋600を例示的に示す斜視図、図7-2は包装袋600による包装状態の布地400の印刷面を示す斜視図、図7-3は図7-2における包装状態の布地400を裏面から見た状態を示す斜視図である。
【0043】
包装袋600は、紙、樹脂フィルムなどを素材として封筒状に形成され、布地保持部材500に保持された状態の布地400の全体を収納するための空間を形成する。包装袋600の一端部には、布地保持部材500に保持された状態の布地400を挿入するための挿入部603が設けられている。包装袋600の挿入部603は、布地保持部材500に保持された状態の布地400を収納した後、封止部材604を用いて封止される。封止部材604は、例えば粘着剤が塗布されたフラップなどである。
【0044】
包装袋600は、布地400上に塗布されたインクの熱定着の際の加熱温度(定着温度)に対して耐熱性を有している。加熱温度(定着温度)は、70~150℃程度である。
【0045】
図7-2に示すように、包装袋600は、布地400の印刷面側に、印刷範囲の部分が開口した開口部601を備える。また、図7-3に示すように、包装袋600は、布地400の印刷面とは反対側であって布地保持部材500の脚部502に対応する位置に、脚露出部602を設ける。脚露出部602は、開口部となっている。布地400とともに布地保持部材500を内包した包装袋600は、開口部となっている脚露出部602から布地保持部材500の脚部502を露出させる。
【0046】
なお、包装袋600に包装されている布地400には、インクの定着性や発色性等の改善のための前処理剤が予め塗布されている。前処理剤は、例えば凝集剤(多価金属塩、有機酸、カチオン性化合物等)を含有する。このように包装袋600に包装されている布地400に対してインクの前処理剤をあらかじめ塗布しておくことで、印刷前に前処理剤を塗布する手間を省き、即座に印刷することが可能となる。
【0047】
これにより、例えば店頭で客からの注文を受けて印刷する場合などでは、布地400に対する印刷の仕上がりまでの時間を短縮することができるため、客の待ち時間を減らすことができる。
【0048】
次に、プラテン部材300について説明する。
【0049】
図8は、カセット200上のプラテン部材300を示す斜視図である。図8に示すように、プラテン部材300は、表面に、包装袋600を、カセット200における印刷位置に対して、矢印X方向(主走査方向)および矢印Y方向(副走査方向)で位置決めするための位置決め部材301を備える。位置決め部材301は、プラテン部材300から突出形成されている。より詳細には、位置決め部材301は、図8に示すように、包装袋600の脚露出部602から露出する布地保持部材500の脚部502に係合するものであって、脚部502に対応して3か所に設けられた突起301a~301cにより形成されている。
【0050】
なお、3か所に設けられた突起301a~301cの高さは、布地保持部材500の脚部502の高さに比較して、低く形成されている。すなわち、布地保持部材500の脚部502の高さは、位置決め部材301(突起301a~301c)の高さよりも高く形成されている。これは、突起301a~301cが布地保持部材500の脚部502より高くなってしまうと、プラテン部材300に脚部502が接しなくなってしまうため、記録ヘッド122と印字面の高さが適切な範囲に収まらなくなるからである。
【0051】
突起301aは、直方体形状であって、包装袋600の矢印X方向(主走査方向)を位置決めする。突起301bは、直方体形状であって、包装袋600の矢印Y方向(副走査方向)を位置決めする。突起301cは、2つの直方体をL字形状に接続したものであって、包装袋600の矢印X方向(主走査方向)および矢印Y方向(副走査方向)を位置決めする。
【0052】
なお、本実施の形態においては、位置決め部材301は、図8に示すように、3か所に設けられた突起301a~301cによりプラテン部材300から突出形成されているが、これに限るものではなく、包装袋600の矢印X方向(主走査方向)および矢印Y方向(副走査方向)の位置決めができるのであれば、突起の数がいくつでもよい。また、突起301a~301cの形状についても、図8に示す形状に限るものではない。さらに、位置決め部材301は、突起でプラテン部材300から突出形成するものに限るものではなく、凹み形状等でも構わない。
【0053】
次に、カセット200への布地400を包装した包装袋600の取り付け方法について説明する。
【0054】
図9は、布地400を包装した包装袋600をカセット200に載せた状態を示す斜視図である。布地保持部材500に保持された状態の布地400の全体を包装した包装袋600は、カセット200のプラテン部材300の位置決め部材301に対して、布地保持部材500の脚部502を突き当てて載置される。これにより、包装袋600は、カセット200における印刷位置に位置決めされる。布地400を包装した包装袋600が位置決めされたカセット200は、装置本体100に取り付けられる。そして、印刷装置1は、包装袋600の開口部601により印刷範囲として規定された布地400に対する印刷を実行する。
【0055】
ここで、印刷装置1における印刷処理手順について簡単に説明する。
【0056】
まず、ユーザは、装置本体100からカセット200を取り外す。次に、ユーザは、布地保持部材500に保持された状態の布地400の全体を包装した包装袋600を、プラテン部材300の位置決め部材301に対して、布地保持部材500の脚部502を突き当てて載置する。
【0057】
次に、ユーザは、包装袋600が位置決めされたカセット200を、装置本体100に取り付ける。印刷装置1は、包装袋600の開口部601により印刷範囲として規定された布地400に対する印刷を開始する。
【0058】
印刷装置1は、内部にカセット200を引き込んで、印刷開始位置へと移動する。この時、印刷装置1は、高さ検知センサ141を用いて記録ヘッド122とカセット200との間隔が適切になるようにZ軸(高さ方向)も併せて制御する。
【0059】
その後、印刷装置1は、キャリッジ121を印刷開始位置に移動させてインクの吐出を開始する。印刷装置1は、キャリッジ121の1スキャンが完了するごとにステージ111(カセット200)も所要量移動する。印刷装置1は、このようにキャリッジ121とステージ111(カセット200)が交互に移動することで、印刷領域全面に印刷動作を行う。
【0060】
ユーザは、印刷動作が完了した後、カセット200を装置本体100から取り外し、さらにカセット200から布地保持部材500に保持された状態の布地400の全体を包装した包装袋600を取り外す。そして、ユーザは、布地400上に塗布されたインクの熱定着を行って印刷処理を終了する。
【0061】
このように本実施の形態によれば、板状部材501によって平坦な状態で保持された布地400の印刷範囲が開口した開口部601を包装袋600に設けるとともに、プラテン部材300上の位置合わせ用の位置決め部材301に対応した脚部502を板状部材501に設けて包装袋600の脚露出部602から露出させる。そして、布地保持部材500に保持された状態の布地400の全体を包装した包装袋600を、プラテン部材300の位置決め部材301に対して、包装袋600の脚露出部602から露出した脚部502を突き当てて載置することで、包装袋600をプラテン部材300における印刷位置に位置決めすることができる。これにより、Tシャツ等の布製品の包装を解かずに、印字装置1のプラテン部材300に対して包装袋600による包装状態の布地400を載置するだけで、布地400に対する高品質な印刷を簡単な構成で手早く行うことができる。
【0062】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態について説明する。
【0063】
第2の実施の形態は、包装袋600の開口部601に形成される開口を覆う保護部材を備える点が、第1の実施の形態と異なる。以下、第2の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0064】
図10は、第2の実施の形態にかかる包装袋600による包装状態の布地400の印刷面を示す斜視図である。図10に示すように、包装袋600は、輸送時の汚れ防止などの目的で、開口部601に形成される開口を覆うものであってシート状の保護部材700を備える。保護部材700は、包装袋600の開口部601に対して再剥離、再貼り付け可能な粘着剤で貼り付けられている。
【0065】
保護部材700は、布地400に対する印刷前に包装袋600から剥離されることで、布地400の印刷面の露出を直前まで防止し、布地400の印刷面に対する汚れの付着の可能性を低減する。
【0066】
保護部材700は、再剥離および再貼り付け可能であるため、布地400に対する印刷後に、再度、包装袋600の開口部601に形成される開口を覆う位置に貼り付けられる。これにより、布地400の印刷完了面を汚れ等から保護することが可能となる。特に、保護部材700を包装袋600の開口部601に形成される開口を覆う位置に再度貼り付けられるようにすることで、店頭などで印刷したものを客が持ち帰る際などに、布地400の印刷完了面を汚れ等から保護することができるので、非常に有効となる。
【0067】
なお、上記の各実施の形態では、本発明の印刷装置を、布地に画像を付与する印刷装置1に適用した例を挙げて説明するが、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能のうち少なくとも2つの機能を有する複合機、複写機、プリンタ、スキャナ装置、ファクシミリ装置等の画像形成装置であればいずれにも適用することができる。
【0068】
なお、上記の各実施の形態では、布地400がTシャツなどである場合について説明しているが、例えば布地を含めて、印刷対象を媒体(メディア)とする場合にも本発明を同様に適用することができる。この場合、上記の各実施の形態における「布地」が媒体となる。
【符号の説明】
【0069】
1 印刷装置
112 印刷部
300 プラテン
301 位置決め部材
400 被印刷材
501 板状部材
502 被位置決め部、脚部
600 包装袋
601 開口部
602 脚露出部
700 保護部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0070】
【文献】特開2001-187467号公報
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図8
図9
図10