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特許7443857シリカ粒子の製造方法、シリカゾルの製造方法、研磨方法、半導体ウェハの製造方法及び半導体デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】シリカ粒子の製造方法、シリカゾルの製造方法、研磨方法、半導体ウェハの製造方法及び半導体デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/18 20060101AFI20240228BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
C01B33/18 Z
C09K3/14 550D
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020047661
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021147266
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】住谷 直子
(72)【発明者】
【氏名】米盛 勉
(72)【発明者】
【氏名】河瀬 康弘
【審査官】玉井 一輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-212990(JP,A)
【文献】特開2019-089692(JP,A)
【文献】特開2013-014489(JP,A)
【文献】特開2014-043364(JP,A)
【文献】特開2013-033897(JP,A)
【文献】特開2018-107293(JP,A)
【文献】特開2010-058985(JP,A)
【文献】国際公開第2016/117560(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00 -33/193
C09K 3/14
B24B 37/00
H01L 21/304
C09C 1/28
C09C 1/68
G03G 9/097
A61K 8/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程(1)及び工程(2)を順次有する、シリカ粒子の製造方法。
工程(1):アルコールの濃度が70質量%以上の液(A1)中で、テトラアルコキシシランを加水分解反応及び縮合反応させて、シリカ粒子を得る工程。
工程(2):工程(1)で得られたシリカ粒子を含み、水の濃度が40質量%以上の液(A2)中で、テトラアルコキシシランを加水分解反応及び縮合反応させる工程。
【請求項2】
工程(1)における反応温度が、60℃以下である、請求項1に記載のシリカ粒子の製造方法。
【請求項3】
工程(2)における反応温度が、65℃以上である、請求項1又は2に記載のシリカ粒子の製造方法。
【請求項4】
工程(1)における加水分解反応及び縮合反応の方法が、液(A1)中に、テトラアルコキシシランを含む溶液(B1)及びアルカリ触媒を含む溶液(C1)を添加する方法である、請求項1~3のいずれか1項に記載のシリカ粒子の製造方法。
【請求項5】
工程(2)における加水分解反応及び縮合反応の方法が、液(A2)中に、テトラアルコキシシランを含む溶液(B2)、及び、水又はアルカリ触媒を含む溶液(C2)を添加する方法である、請求項1~4のいずれか1項に記載のシリカ粒子の製造方法。
【請求項6】
工程(1)と工程(2)との間に、以下の工程(1’)を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のシリカ粒子の製造方法。
工程(1’):アルコールを除去し、水を添加する工程。
【請求項7】
工程(2)における反応系内のpHを、8.0~12.0に維持する、請求項1~6のいずれか1項に記載のシリカ粒子の製造方法。
【請求項8】
更に、以下の工程(3)を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のシリカ粒子の製造方法。
工程(3):工程(2)で得られたシリカ粒子の分散液を濃縮し、分散媒を添加する工程。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のシリカ粒子の製造方法を含む、シリカゾルの製造方法。
【請求項10】
シリカゾル中のシリカ粒子の濃度が、3質量%~50質量%である、請求項9に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項11】
請求項9又は10に記載のシリカゾルの製造方法で得られたシリカゾルを含む研磨組成物を用いて研磨する、研磨方法。
【請求項12】
請求項11に記載の研磨方法を含む、半導体ウェハの製造方法。
【請求項13】
請求項11に記載の研磨方法を含む、半導体デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ粒子の製造方法、シリカゾルの製造方法、研磨方法、半導体ウェハの製造方法及び半導体デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属や無機化合物等の材料の表面を研磨する方法として、研磨液を用いた研磨方法が知られている。中でも、半導体用のプライムシリコンウェハやこれらの再生シリコンウェハの最終仕上げ研磨、及び、半導体デバイス製造時の層間絶縁膜の平坦化、金属プラグの形成、埋め込み配線形成等の化学的機械的研磨(CMP)では、その表面状態が半導体特性に大きく影響するため、これらの部品の表面や端面は、極めて高精度に研磨されることが要求されている。
【0003】
このような精密研磨においては、シリカ粒子を含む研磨組成物が採用されており、その主成分である砥粒として、コロイダルシリカが広く用いられている。コロイダルシリカは、その製造方法の違いにより、四塩化珪素の熱分解によるもの(ヒュームドシリカ等)、水ガラス等の珪酸アルカリの脱イオンによるもの、アルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応(一般に「ゾルゲル法」と称される)によるもの等が知られている。
【0004】
シリカ粒子の製造方法に関し、これまで多くの検討がなされてきた。例えば、特許文献1及び非特許文献1には、アルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応によりシリカ粒子を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-60232号公報
【文献】特開2009-224767号公報
【文献】特開2003-165718号公報
【文献】「Controlled growth of monodisperse silica spheres in the micron size range」 ステーバー, ジャーナル・オブ・コロイド・アンド・インターフェース・サイエンス 第26巻, 第62~69, (1968).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応により得られるシリカ粒子は、四塩化珪素の熱分解により得られるシリカ粒子や珪酸アルカリの脱イオンにより得られるシリカ粒子と比較して、金属不純物含有率が低く、精密な研磨が求められる用途において好適に用いることができる。しかしながら、特許文献1及び非特許文献1に開示されているシリカ粒子の製造方法は、アルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応における反応液としてアルコールを用いているため、シリカ粒子の形成速度が速く構造が未発達な部分が発生し、シリカ粒子に未反応のアルコキシ基が残存しやすい。そのため、特許文献1及び非特許文献1に開示されている製造方法で得られるシリカ粒子は、四塩化珪素の熱分解により得られるシリカ粒子や珪酸アルカリの脱イオンにより得られるシリカ粒子と比較して、表面シラノール基密度が高くなるという課題を有する。
【0007】
シリカ粒子の表面シラノール基密度を低くする方法として、特許文献2に開示されているようなオートクレーブ処理や特許文献3に開示されているような表面改質処理等の方法が挙げられる。しかしながら、これらの方法は、シリカ粒子の製造後に更なる工程を追加する必要があるため、多くの製造設備を必要とし、生産性に劣るという課題を有する。
【0008】
本発明は、このような課題を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、多くの製造設備を必要とせず、表面シラノール基密度を調整できるシリカ粒子の製造方法、その製造方法で得られたシリカ粒子を含むシリカゾルの製造方法を提供することにある。また、本発明のもう1つの目的は、研磨に適した研磨方法、その研磨方法を含む半導体ウェハの製造方法、その研磨方法を含む半導体デバイスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従来、アルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応により得られるシリカ粒子は、四塩化珪素の熱分解により得られるシリカ粒子や珪酸アルカリの脱イオンにより得られるシリカ粒子と比較して、表面シラノール基密度が高くなるという課題を有する。また、シリカ粒子の表面シラノール基密度を低くするために、オートクレーブ処理や表面改質処理に代表される更なる工程を追加する必要があるため、多くの製造設備を必要とし、生産性に劣るという課題を有する。しかしながら、本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、シリカ粒子の製造条件を好適化することで、多くの製造設備を必要とせず、表面シラノール基密度を調整できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の要旨は、以下の通りである。
[1]以下の工程(1)及び工程(2)を順次有する、シリカ粒子の製造方法。
工程(1):アルコールの濃度が70質量%以上の液(A1)中で、テトラアルコキシシランを加水分解反応及び縮合反応させる工程。
工程(2):水の濃度が40質量%以上の液(A2)中で、テトラアルコキシシランを加水分解反応及び縮合反応させる工程。
[2]工程(1)における反応温度が、60℃以下である、[1]に記載のシリカ粒子の製造方法。
[3]工程(2)における反応温度が、65℃以上である、[1]又は[2]に記載のシリカ粒子の製造方法。
[4]工程(1)における加水分解反応及び縮合反応の方法が、液(A1)中に、テトラアルコキシシランを含む溶液(B1)及びアルカリ触媒を含む溶液(C1)を添加する方法である、[1]~[3]のいずれかに記載のシリカ粒子の製造方法。
[5]工程(2)における加水分解反応及び縮合反応の方法が、液(A2)中に、テトラアルコキシシランを含む溶液(B2)、及び、水又はアルカリ触媒を含む溶液(C2)を添加する方法である、[1]~[4]のいずれかに記載のシリカ粒子の製造方法。
[6]工程(1)と工程(2)との間に、以下の工程(1’)を有する、[1]~[5]のいずれかに記載のシリカ粒子の製造方法。
工程(1’):アルコールを除去し、水を添加する工程。
[7]工程(2)における反応系内のpHを、8.0~12.0に維持する、[1]~[6]のいずれかに記載のシリカ粒子の製造方法。
[8]更に、以下の工程(3)を含む、[1]~[7]のいずれかに記載のシリカ粒子の製造方法。
工程(3):工程(2)で得られたシリカ粒子の分散液を濃縮し、分散媒を添加する工程。
[9][1]~[8]のいずれかに記載のシリカ粒子の製造方法を含む、シリカゾルの製造方法。
[10]シリカゾル中のシリカ粒子の濃度が、3質量%~50質量%である、[9]に記載のシリカゾルの製造方法。
[11][9]又は[10]に記載のシリカゾルの製造方法で得られたシリカゾルを含む研磨組成物を用いて研磨する、研磨方法。
[12][11]に記載の研磨方法を含む、半導体ウェハの製造方法。
[13][11]に記載の研磨方法を含む、半導体デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のシリカ粒子の製造方法及び本発明のシリカゾルの製造方法は、多くの製造設備を必要とせず、シリカ粒子の表面シラノール基密度を調整できる。また、本発明のシリカ粒子の製造方法及び本発明のシリカゾルの製造方法は、シリカ粒子の表面シラノール基密度を調整できるため、研磨に適した所望の表面シラノール基密度のシリカ粒子を得ることができる。そのため、本発明の研磨方法は、研磨に適する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明について詳述するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。尚、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いる。
【0013】
(シリカ粒子の製造方法)
本発明のシリカ粒子の製造方法は、以下の工程(1)及び工程(2)を順次有する。
工程(1):アルコールの濃度が70質量%以上の液(A1)中で、テトラアルコキシシランを加水分解反応及び縮合反応させる工程。
工程(2):水の濃度が40質量%以上の液(A2)中で、テトラアルコキシシランを加水分解反応及び縮合反応させる工程。
【0014】
(工程(1))
工程(1)は、アルコールの濃度が70質量%以上の液(A1)中で、テトラアルコキシシランを加水分解反応及び縮合反応させる工程である。
【0015】
液(A1)は、初期に仕込んだ反応液中の液体の媒体及び加水分解反応で発生するアルコールを指し、テトラアルコキシシランとその反応物、及び、アルカリ触媒を除いたものである。
【0016】
液(A1)は、テトラアルコキシシランの反応溶液中での分散性に優れることから、アルコールを含む。
アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール等が挙げられる。これらのアルコールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのアルコールの中でも、テトラアルコキシシランを溶解しやすく、加水分解反応及び縮合反応で用いるものと副生するものとが同一で、製造上の利便性に優れることから、メタノール、エタノールが好ましく、メタノールがより好ましい。
【0017】
液(A1)は、アルコール以外に、テトラアルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応を進行させることができることから、水を含むことが好ましい。
【0018】
液(A1)は、アルコールと水以外の他の液を含んでもよい。他の液としては、例えば、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、スルホラン等が挙げられる。
【0019】
液(A1)中のアルコールの濃度は、液(A1)100質量%中、70質量%以上であり、70質量%~95質量%が好ましく、75質量%~90質量%がより好ましい。液(A1)中のアルコールの濃度が下限値以上であると、加水分解反応と縮合反応との反応バランスがよく、粒子形状を制御しやすい。液(A1)中のアルコールの濃度が上限値以下であると、テトラアルコキシシランの加水分解反応速度を制御しやすい。
【0020】
液(A1)中の水の濃度は、液(A1)100質量%中、30質量%以下であり、5質量%~30質量%が好ましく、10質量%~25質量%がより好ましい。液(A1)中の水の濃度が下限値以上であると、テトラアルコキシシランの加水分解反応速度を制御しやすい。液(A1)中の水の濃度が上限値以下であると、加水分解反応と縮合反応との反応バランスがよく、粒子形状を制御しやすい。
【0021】
液(A1)中の他の液の濃度は、テトラアルコキシシランの加水分解反応性に優れることから、液(A1)100質量%中、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0022】
テトラアルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応の反応速度を高めることができることから、液(A1)にアルカリ触媒を溶解させることが好ましい。
液(A1)に溶解させるアルカリ触媒としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、アンモニア、尿素、エタノールアミン、テトラメチル水酸化アンモニウム等が挙げられる。これらのアルカリ触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのアルカリ触媒の中でも、触媒作用に優れ、粒子形状を制御しやすく、金属不純物の混入を抑制することができ、揮発性が高く加水分解反応及び縮合反応後の除去性に優れることから、アンモニアが好ましい。
【0023】
液(A1)に溶解させるアルカリ触媒の濃度は、液(A1)とアルカリ触媒との合計100質量%中、0.5質量%~2.0質量%が好ましく、0.6質量%~1.5質量%がより好ましい。アルカリ触媒の濃度が下限値以上であると、シリカ粒子の凝集を抑制し、分散液中のシリカ粒子の分散安定性に優れる。また、アルカリ触媒の濃度が上限値以下であると、反応が過度に速く進行せず、反応制御性に優れる。
【0024】
工程(1)におけるテトラアルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応は、反応工程中のテトラアルコキシシラン及びアルカリ触媒の濃度の制御性に優れることから、液(A1)中に、テトラアルコキシシランを含む溶液(B1)及びアルカリ触媒を含む溶液(C1)を添加する方法が好ましい。
【0025】
溶液(B1)中のテトラアルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン等が挙げられる。これらのテトラアルコキシシランは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのテトラアルコキシシランの中でも、加水分解反応が早く、未反応物が残留しづらく、生産性に優れ、安定なシリカゾルを容易に得ることができることから、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが好ましく、テトラメトキシシランがより好ましい。
【0026】
シリカ粒子の原料は、テトラアルコキシシランの低縮合物等のテトラアルコキシシラン以外の原料を用いてもよいが、反応性に優れることから、シリカ粒子を構成する全原料100質量%中、テトラアルコキシシランが50質量%以上で、テトラアルコキシシラン以外の原料が50質量%以下であることが好ましく、テトラアルコキシシランが90質量%以上で、テトラアルコキシシラン以外の原料が10質量%以下であることがより好ましい。
【0027】
溶液(B1)は、溶媒を含まずテトラアルコキシシランのみでもよいが、反応液中でのテトラアルコキシシランの分散性に優れることから、溶媒を含むことが好ましい。
溶液(B1)中の溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール等が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの溶媒の中でも、加水分解反応及び縮合反応で用いるものと副生するものとが同一で、製造上の利便性に優れることから、アルコールが好ましく、メタノール、エタノールがより好ましく、メタノールが更に好ましい。
【0028】
溶液(B1)のテトラアルコキシシランの濃度は、溶液(B)100質量%中、60質量%~95質量%が好ましく、70質量%~90質量%がより好ましい。溶液(B1)のテトラアルコキシシランの濃度が下限値以上であると、反応液が均一になりやすい。また、溶液(B1)のテトラアルコキシシランの濃度が上限値以下であると、ゲル状物の生成を抑制することができる。
【0029】
溶液(B1)の溶媒の濃度は、溶液(B1)100質量%中、5質量%~40質量%が好ましく、10質量%~30質量%がより好ましい。溶液(B1)の溶媒の濃度が下限値以上であると、ゲル状物の生成を抑制することができる。また、溶液(B1)の溶媒の濃度が上限値以下であると、反応液が均一になりやすい。
【0030】
溶液(B1)の添加速度は、0.05kg/時間/L~1.3kg/時間/Lが好ましく、0.1kg/時間/L~0.8kg/時間/Lがより好ましい。溶液(B1)の添加速度が下限値以上であると、シリカ粒子の生産性に優れる。また、溶液(B1)の添加速度が上限値以下であると、ゲル状物の生成を抑制することができる。
溶液(B1)の添加速度は、液(A1)にアルカリ触媒を溶解させた溶液の体積に対する時間当たりの溶液(B1)の添加速度である。
【0031】
溶液(B1)の添加時間は、0.2時間~10時間が好ましく、0.5時間~5時間が好ましい。溶液(B1)の添加時間が下限値以上であると、ゲル状物の生成を抑制することができる。また、溶液(B1)の添加時間が上限値以下であると、シリカ粒子の生産性に優れる。
【0032】
溶液(C1)中のアルカリ触媒としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、アンモニア、尿素、エタノールアミン、テトラメチル水酸化アンモニウム等が挙げられる。これらのアルカリ触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのアルカリ触媒の中でも、触媒作用に優れ、粒子形状を制御しやすく、金属不純物の混入を抑制することができ、揮発性が高く加水分解反応及び縮合反応後の除去性に優れることから、アンモニアが好ましい。
【0033】
溶液(C1)は、反応液中のアルカリ触媒の濃度の変動を小さくすることができることから、溶媒を含むことが好ましい。
溶液(C1)中の溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール等が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの溶媒の中でも、加水分解反応及び縮合反応で用いるものと副生するものとが同一で、製造上の利便性に優れることから、水、アルコールが好ましく、水がより好ましい。
【0034】
溶液(C1)中のアルカリ触媒の濃度は、溶液(C1)100質量%中、0.5質量%~10質量%が好ましく、1質量%~6質量%がより好ましい。溶液(C1)中のアルカリ触媒の濃度が下限値以上であると、反応開始から反応終了まで反応液中のアルカリ触媒の濃度を調整しやすい。また、溶液(C1)中のアルカリ触媒の濃度が上限値以下であると、反応液中のアルカリ触媒の濃度の変動を小さくすることができる。
【0035】
溶液(C1)中の溶媒の濃度は、溶液(C1)100質量%中、90質量%~99.5質量%が好ましく、94質量%~99質量%がより好ましい。溶液(C1)中の溶媒の濃度が下限値以上であると、反応液中のアルカリ触媒の濃度の変動を小さくすることができる。また、溶液(C1)中の溶媒の濃度が上限値以下であると、反応開始から反応終了まで反応液中のアルカリ触媒の濃度を調整しやすい。
【0036】
溶液(C1)の添加速度は、0.02kg/時間/L~0.5kg/時間/Lが好ましく、0.04kg/時間/L~0.3kg/時間/Lがより好ましい。溶液(C1)の添加速度が下限値以上であると、シリカ粒子の生産性に優れる。また、溶液(C1)の添加速度が上限値以下であると、ゲル状物の生成を抑制することができる。
溶液(C1)の添加速度は、液(A1)にアルカリ触媒を溶解させた溶液の体積に対する時間当たりの溶液(C1)の添加速度である。
【0037】
溶液(C1)の添加時間は、0.2時間~10時間が好ましく、0.5時間~5時間が好ましい。溶液(C1)の添加時間が下限値以上であると、ゲル状物の生成を抑制することができる。また、溶液(C1)の添加時間が上限値以下であると、シリカ粒子の生産性に優れる。
【0038】
溶液(B1)及び溶液(C1)の添加は、液(A1)にアルカリ触媒を溶解させた溶液の液中に行うことが好ましい。溶液(B1)及び溶液(C1)を液(A1)にアルカリ触媒を溶解させた溶液の液中に添加することで、アンモニアに代表される揮発性が高いアルカリ触媒を用いたい場合、かつ、高い反応温度で加水分解反応及び縮合反応を進めたい場合に、反応液中での各成分の混合性が高まり、気中での異常反応を抑制できると共に、粒子径を制御しやすくなる。液中に添加するとは、液面以下に添加することをいい、溶液(B1)の供給出口及び溶液(C1)の供給出口を液(A1)にアルカリ触媒を溶解させた溶液の液面以下とすることで、溶液(B1)及び溶液(C1)を液(A1)にアルカリ触媒を溶解させた溶液の液中に添加することができる。
【0039】
溶液(B1)と溶液(C1)の添加のタイミングは、同一であってもよく、交互のように異なっていてもよいが、反応組成の変動が少なく、操作が煩雑にならないことから、同一であることが好ましい。
【0040】
工程(1)における加水分解反応及び縮合反応の反応温度は、60℃以下が好ましく、10℃~60℃が好ましく、20℃~50℃がより好ましい。反応温度が下限値以上であると、粒子形状の制御が容易となる。また、反応温度が上限値以下であると、突沸や溶媒の揮発を抑制でき、反応液組成の変動を少なくすることができる。
【0041】
工程(1)における加水分解反応及び縮合反応の反応系内の水の濃度は、反応系内の全量100質量%中、5質量%~30質量%に維持することが好ましく、10質量%~25質量%に維持することがより好ましい。反応系内の水の濃度が下限値以上であると、テトラアルコキシシランの加水分解反応速度を制御しやすい。また、反応系内の水の濃度が上限値以下であると、加水分解反応と縮合反応との反応バランスがよく、粒子形状を制御しやすい。
【0042】
工程(1)における加水分解反応及び縮合反応の反応系内のアルカリ触媒の濃度は、反応系内の全量100質量%中、0.5質量%~2.0質量%に維持することが好ましく、0.6質量%~1.5質量%に維持することがより好ましい。反応系内のアルカリ触媒の濃度が下限値以上であると、シリカ粒子の凝集を抑制し、分散液中のシリカ粒子の分散安定性に優れる。また、反応系内のアルカリ触媒の濃度が上限値以下であると、反応が過度に速く進行せず、反応制御性に優れる。
【0043】
工程(1)における加水分解反応及び縮合反応の反応系内のpHは、8.0~12.0に維持することが好ましく、8.2~11.8に維持することがより好ましい。反応系内のpHが下限値以上であると、加水分解反応及び縮合反応の反応速度に優れ、シリカ粒子の凝集を抑制することができる。また、反応系内のpHが上限値以下であると、粒子形状を制御しやすく、シリカ粒子表面の平滑性に優れる。
【0044】
(工程(2))
工程(2)は、水の濃度が40質量%以上の液(A2)中で、テトラアルコキシシランを加水分解反応及び縮合反応させる工程である。
【0045】
液(A2)は、反応液中の液体の媒体及び加水分解反応で発生するアルコールを指し、テトラアルコキシシランとその反応物、及び、アルカリ触媒を除いたものである。
【0046】
液(A2)は、テトラアルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応を進行させることができることから、水を含む。
【0047】
液(A2)は、水以外にテトラアルコキシシランの反応溶液中での分散性に優れることから、アルコールを含むことが好ましい。
アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール等が挙げられる。これらのアルコールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのアルコールの中でも、テトラアルコキシシランを溶解しやすく、加水分解反応及び縮合反応で用いるものと副生するものとが同一で、製造上の利便性に優れることから、メタノール、エタノールが好ましく、メタノールがより好ましい。
【0048】
液(A2)は、水とアルコール以外の他の液を含んでもよい。他の液としては、例えば、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、スルホラン等が挙げられる。
【0049】
液(A2)中の水の濃度は、液(A2)100質量%中、40質量%以上であり、40質量%~98質量%が好ましく、65質量%~95質量%がより好ましい。液(A2)中の水の濃度が下限値以上であると、テトラアルコキシシランの加水分解反応速度を制御しやすく、反応温度を上げやすく、シリカ粒子の表面シラノール基密度を調整しやすい。液(A2)中の水の濃度が上限値以下であると、加水分解反応と縮合反応との反応バランスがよく、粒子形状を制御しやすい。
【0050】
液(A2)中のアルコールの濃度は、液(A2)100質量%中、60質量%以下であり、2質量%~60質量%が好ましく、5質量%~35質量%がより好ましい。液(A2)中のアルコールの濃度が下限値以上であると、加水分解反応と縮合反応との反応バランスがよく、粒子形状を制御しやすい。液(A2)中のアルコールの濃度が上限値以下であると、テトラアルコキシシランの加水分解反応速度を制御しやすく、反応温度を上げやすく、シリカ粒子の表面シラノール基密度を調整しやすい。
【0051】
液(A2)中の他の液の濃度は、テトラアルコキシシランの加水分解反応性に優れることから、液(A2)100質量%中、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0052】
テトラアルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応の反応速度を高めることができることから、液(A2)にアルカリ触媒を溶解させることが好ましい。
液(A2)に溶解させるアルカリ触媒としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、アンモニア、尿素、エタノールアミン、テトラメチル水酸化アンモニウム等が挙げられる。これらのアルカリ触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのアルカリ触媒の中でも、触媒作用に優れ、粒子形状を制御しやすく、金属不純物の混入を抑制することができ、揮発性が高く加水分解反応及び縮合反応後の除去性に優れることから、アンモニアが好ましい。
【0053】
液(A2)に溶解させるアルカリ触媒の濃度は、液(A2)とアルカリ触媒との合計100質量%中、0.5質量%~2.0質量%が好ましく、0.6質量%~1.5質量%がより好ましい。アルカリ触媒の濃度が下限値以上であると、シリカ粒子の凝集を抑制し、分散液中のシリカ粒子の分散安定性に優れる。また、アルカリ触媒の濃度が上限値以下であると、反応が過度に速く進行せず、反応制御性に優れる。
【0054】
工程(2)におけるテトラアルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応は、反応工程中のテトラアルコキシシラン及びアルカリ触媒の濃度の制御性に優れることから、液(A2)中に、テトラアルコキシシランを含む溶液(B2)、及び、アルカリ触媒を含む溶液又は水(C2)を添加する方法が好ましい。
【0055】
溶液(B2)中のテトラアルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン等が挙げられる。これらのテトラアルコキシシランは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのテトラアルコキシシランの中でも、加水分解反応が早く、未反応物が残留しづらく、生産性に優れ、安定なシリカゾルを容易に得ることができることから、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが好ましく、テトラメトキシシランがより好ましい。
【0056】
シリカ粒子の原料は、テトラアルコキシシランの低縮合物等のテトラアルコキシシラン以外の原料を用いてもよいが、反応性に優れることから、シリカ粒子を構成する全原料100質量%中、テトラアルコキシシランが50質量%以上で、テトラアルコキシシラン以外の原料が50質量%以下であることが好ましく、テトラアルコキシシランが90質量%以上で、テトラアルコキシシラン以外の原料が10質量%以下であることがより好ましい。
【0057】
溶液(B2)は、溶媒を含まずテトラアルコキシシランのみでもよいが、反応液中でのテトラアルコキシシランの分散性に優れることから、溶媒を含むことが好ましい。
溶液(B2)中の溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール等が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの溶媒の中でも、加水分解反応及び縮合反応で用いるものと副生するものとが同一で、製造上の利便性に優れることから、アルコールが好ましく、メタノール、エタノールがより好ましく、メタノールが更に好ましい。
【0058】
溶液(B2)のテトラアルコキシシランの濃度は、溶液(B)100質量%中、60質量%~95質量%が好ましく、70質量%~90質量%がより好ましい。溶液(B2)のテトラアルコキシシランの濃度が下限値以上であると、反応液が均一になりやすい。また、溶液(B2)のテトラアルコキシシランの濃度が上限値以下であると、ゲル状物の生成を抑制することができる。
【0059】
溶液(B2)の溶媒の濃度は、溶液(B2)100質量%中、5質量%~40質量%が好ましく、10質量%~30質量%がより好ましい。溶液(B2)の溶媒の濃度が下限値以上であると、ゲル状物の生成を抑制することができる。また、溶液(B2)の溶媒の濃度が上限値以下であると、反応液が均一になりやすい。
【0060】
溶液(B2)の添加速度は、0.01kg/時間/L~1.3kg/時間/Lが好ましく、0.03kg/時間/L~0.8kg/時間/Lがより好ましい。溶液(B2)の添加速度が下限値以上であると、シリカ粒子の生産性に優れる。また、溶液(B2)の添加速度が上限値以下であると、ゲル状物の生成を抑制することができる。
溶液(B2)の添加速度は、液(A2)にアルカリ触媒を溶解させた溶液の体積に対する時間当たりの溶液(B2)の添加速度である。
【0061】
溶液(B2)の添加時間は、0.7時間~10時間が好ましく、1.5時間~5時間が好ましい。溶液(B2)の添加時間が下限値以上であると、シリカ粒子の表面シラノール基密度を調整しやすい。また、溶液(B2)の添加時間が上限値以下であると、シリカ粒子の生産性に優れる。
【0062】
溶液(C2)は、水又はアルカリ触媒を含む溶液であるが、後述する工程(2)における加水分解反応及び縮合反応の反応系内のpHを所望の値に調整するため、水又はアルカリ触媒を含む溶液を適宜選択すればよい。
【0063】
溶液(C2)がアルカリ触媒を含む溶液である場合、溶液(C2)中のアルカリ触媒としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、アンモニア、尿素、エタノールアミン、テトラメチル水酸化アンモニウム等が挙げられる。これらのアルカリ触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのアルカリ触媒の中でも、触媒作用に優れ、粒子形状を制御しやすく、金属不純物の混入を抑制することができ、揮発性が高く加水分解反応及び縮合反応後の除去性に優れることから、アンモニアが好ましい。
【0064】
溶液(C2)がアルカリ触媒を含む溶液である場合、溶液(C2)は、反応液中のアルカリ触媒の濃度の変動を小さくすることができることから、溶媒を含むことが好ましい。
溶液(C2)がアルカリ触媒を含む溶液である場合、溶液(C2)中の溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール等が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの溶媒の中でも、加水分解反応及び縮合反応で用いるものと副生するものとが同一で、製造上の利便性に優れることから、水、アルコールが好ましく、水がより好ましい。
【0065】
溶液(C2)がアルカリ触媒を含む溶液である場合、溶液(C2)中のアルカリ触媒の濃度は、溶液(C2)100質量%中、0.01質量%~10質量%が好ましく、0.05質量%~6質量%がより好ましい。溶液(C2)中のアルカリ触媒の濃度が下限値以上であると、反応開始から反応終了まで反応液中のアルカリ触媒の濃度を調整しやすい。また、溶液(C2)中のアルカリ触媒の濃度が上限値以下であると、反応液中のアルカリ触媒の濃度の変動を小さくすることができる。
【0066】
溶液(C2)がアルカリ触媒を含む溶液である場合、溶液(C2)中の溶媒の濃度は、溶液(C2)100質量%中、90質量%~99.99質量%が好ましく、94質量%~99.95質量%がより好ましい。溶液(C2)中の溶媒の濃度が下限値以上であると、反応液中のアルカリ触媒の濃度の変動を小さくすることができる。また、溶液(C2)中の溶媒の濃度が上限値以下であると、反応開始から反応終了まで反応液中のアルカリ触媒の濃度を調整しやすい。
【0067】
溶液(C2)の添加速度は、0.01kg/時間/L~1.5kg/時間/Lが好ましく、0.03kg/時間/L~1.3kg/時間/Lがより好ましい。溶液(C2)の添加速度が下限値以上であると、シリカ粒子の生産性に優れる。また、溶液(C2)の添加速度が上限値以下であると、ゲル状物の生成を抑制することができる。
溶液(C2)の添加速度は、液(A2)にアルカリ触媒を溶解させた溶液の体積に対する時間当たりの溶液(C2)の添加速度である。
【0068】
溶液(C2)の添加時間は、0.7時間~10時間が好ましく、1.5時間~5時間が好ましい。溶液(C2)の添加時間が下限値以上であると、シリカ粒子の表面シラノール基密度を調整しやすい。また、溶液(C2)の添加時間が上限値以下であると、シリカ粒子の生産性に優れる。
【0069】
溶液(B2)及び溶液(C2)の添加は、液(A2)にアルカリ触媒を溶解させた溶液の液中に行うことが好ましい。溶液(B2)及び溶液(C2)を液(A2)にアルカリ触媒を溶解させた溶液の液中に添加することで、アンモニアに代表される揮発性が高いアルカリ触媒を用いたい場合、かつ、高い反応温度で加水分解反応及び縮合反応を進めたい場合に、反応液中での各成分の混合性が高まり、気中での異常反応を抑制できると共に、粒子径を制御しやすくなる。液中に添加するとは、液面以下に添加することをいい、溶液(B2)の供給出口及び溶液(C2)の供給出口を液(A2)にアルカリ触媒を溶解させた溶液の液面以下とすることで、溶液(B2)及び溶液(C2)を液(A2)にアルカリ触媒を溶解させた溶液の液中に添加することができる。
【0070】
溶液(B2)と溶液(C2)の添加のタイミングは、同一であってもよく、交互のように異なっていてもよいが、反応組成の変動が少なく、操作が煩雑にならないことから、同一であることが好ましい。
【0071】
工程(2)における加水分解反応及び縮合反応の反応温度は、65℃以上が好ましく、65℃~100℃が好ましく、75℃~90℃がより好ましい。反応温度が下限値以上であると、シリカ粒子の表面シラノール基密度を調整しやすく、粒子形状の制御が容易である。また、反応温度が上限値以下であると、突沸や溶媒の揮発を抑制でき、反応液組成の変動を少なくすることができる。
【0072】
工程(2)における加水分解反応及び縮合反応の反応系内の水の濃度は、反応系内の全量100質量%中、40質量%~98質量%に維持することが好ましく、65質量%~95質量%に維持することがより好ましい。反応系内の水の濃度が下限値以上であると、テトラアルコキシシランの加水分解反応速度を制御しやすい。また、反応系内の水の濃度が上限値以下であると、加水分解反応と縮合反応との反応バランスがよく、粒子形状を制御しやすい。
【0073】
工程(2)における加水分解反応及び縮合反応の反応系内のアルカリ触媒の濃度は、反応系内の全量100質量%中、0.5質量%~2.0質量%に維持することが好ましく、0.6質量%~1.5質量%に維持することがより好ましい。反応系内のアルカリ触媒の濃度が下限値以上であると、シリカ粒子の凝集を抑制し、分散液中のシリカ粒子の分散安定性に優れる。また、反応系内のアルカリ触媒の濃度が上限値以下であると、反応が過度に速く進行せず、反応制御性に優れる。
【0074】
工程(2)における加水分解反応及び縮合反応の反応系内のpHは、8.0~12.0に維持することが好ましく、8.2~10.5に維持することがより好ましい。反応系内のpHが下限値以上であると、加水分解反応及び縮合反応の反応速度に優れ、シリカ粒子の凝集を抑制することができる。また、反応系内のpHが上限値以下であると、粒子形状を制御しやすく、シリカ粒子表面の平滑性に優れる。
【0075】
工程(2)において、アルコール等の低沸点成分を除去しながら、テトラアルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応を行ってもよい。工程(2)において、アルコール等の低沸点成分を除去しながら、テトラアルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応を行うことで、反応系内の各成分の濃度を前述した範囲に維持することが容易となる。
【0076】
工程(1)で用いるテトラアルコキシシランの質量は、工程(1)で用いるテトラアルコキシシランの質量と工程(2)で用いるテトラアルコキシシランの質量との合計100質量%中、10質量%~90質量%が好ましく、20質量%~80質量%がより好ましい。工程(1)で用いるテトラアルコキシシランの質量が下限値以上であると、粒子形状を制御しやすい。また、工程(1)で用いるテトラアルコキシシランの質量が上限値以下であると、シリカ粒子の表面シラノール基密度を調整しやすい。
【0077】
工程(2)で用いるテトラアルコキシシランの質量は、工程(2)で用いるテトラアルコキシシランの質量と工程(2)で用いるテトラアルコキシシランの質量との合計100質量%中、10質量%~90質量%が好ましく、20質量%~80質量%がより好ましい。工程(2)で用いるテトラアルコキシシランの質量が下限値以上であると、シリカ粒子の表面シラノール基密度を調整しやすい。また、工程(2)で用いるテトラアルコキシシランの質量が上限値以下であると、粒子形状を制御しやすい。
【0078】
(工程(1’))
本発明のシリカ粒子の製造方法は、液(A1)から液(A2)に液の組成を変更するため、工程(1)と工程(2)との間に、以下の工程(1’)を有することが好ましい。
工程(1’):アルコールを除去し、水を添加する工程。
【0079】
工程(1’)におけるアルコールの除去量や水の添加量は、所望の液(A2)の組成に合わせて、適宜設定すればよい。
【0080】
工程(2)における反応系内のpHを所望の値とするため、工程(1’)においてアルカリ触媒を添加することが好ましい。
アルカリ触媒としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、アンモニア、尿素、エタノールアミン、テトラメチル水酸化アンモニウム等が挙げられる。これらのアルカリ触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのアルカリ触媒の中でも、触媒作用に優れ、粒子形状を制御しやすく、金属不純物の混入を抑制することができ、揮発性が高く加水分解反応及び縮合反応後の除去性に優れることから、アンモニアが好ましい。
【0081】
(工程(3))
本発明のシリカ粒子の製造方法は、不必要な成分を除去し、必要な成分を添加することができることから、更に、以下の工程(3)を含むことが好ましい。
工程(3):工程(2)で得られたシリカ粒子の分散液を濃縮し、分散媒を添加する工程。
【0082】
分散媒は、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール等が挙げられる。これらの分散媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの分散媒の中でも、シリカ粒子との親和性に優れることから、水、アルコールが好ましく、水がより好ましい。
【0083】
本発明のシリカ粒子の製造方法は、表面シラノール基密度を低くすることができることから、工程(3)で得られたシリカ粒子の分散液の加圧加熱処理を行ってもよいが、多くの製造設備を必要とすることから、工程(3)で得られたシリカ粒子の分散液の加圧加熱処理を行わないことが好ましい。
【0084】
(シリカ粒子の物性)
シリカ粒子の平均1次粒子径は、5nm~100nmが好ましく、10nm~60nmがより好ましい。シリカ粒子の平均1次粒子径が5nm以上であると、シリカゾルの保存安定性に優れる。また、シリカ粒子の平均1次粒子径が100nm以下であると、シリコンウェハに代表される被研磨体の表面粗さや傷を低減でき、シリカ粒子の沈降を抑制することができる。
【0085】
シリカ粒子の平均1次粒子径は、BET法により測定する。具体的には、比表面積自動測定装置を用いてシリカ粒子の比表面積を測定し、下記式(1)を用いて平均1次粒子径を算出する。
平均1次粒子径(nm)=6000/(比表面積(m/g)×密度(g/cm)) ・・・ (1)
【0086】
シリカ粒子の平均1次粒子径は、公知の条件・方法により、所望の範囲に設定することができる。
【0087】
シリカ粒子の平均2次粒子径は、10nm~200nmが好ましく、20nm~100nmがより好ましい。シリカ粒子の平均2次粒子径が10nm以上であると、研磨後の洗浄における粒子等の除去性に優れ、シリカゾルの保存安定性に優れる。シリカ粒子の平均2次粒子径が200nm以下であると、研磨時のシリコンウェハに代表される被研磨体の表面粗さや傷を低減でき、研磨後の洗浄における粒子等の除去性に優れ、シリカ粒子の沈降を抑制することができる。
【0088】
シリカ粒子の平均2次粒子径は、DLS法により測定する。具体的には、動的光散乱粒子径測定装置を用いて測定する。
【0089】
シリカ粒子の平均2次粒子径は、公知の条件・方法により、所望の範囲に設定することができる。
【0090】
シリカ粒子のcv値は、10~50が好ましく、15~40がより好ましく、20~35が更に好ましい。シリカ粒子のcv値が下限値以上であると、シリコンウェハに代表される被研磨体に対する研磨レートに優れ、シリコンウェハの生産性に優れる。また、シリカ粒子のcv値が上限値以下であると、研磨時のシリコンウェハに代表される被研磨体の表面粗さや傷を低減でき、研磨後の洗浄における粒子等の除去性に優れる。
【0091】
シリカ粒子のcv値は、動的光散乱粒子径測定装置を用いてシリカ粒子の平均2次粒子径を測定し、下記式(2)を用いて算出する。
cv値=(標準偏差(nm)/平均2次粒子径(nm))×100 ・・・ (2)
【0092】
シリカ粒子の会合比は、1.0~4.0が好ましく、1.1~3.0がより好ましい。シリカ粒子の会合比が下限値以上であると、シリコンウェハに代表される被研磨体に対する研磨レートに優れ、シリコンウェハの生産性に優れる。また、シリカ粒子の会合比が上限値以下であると、研磨時のシリコンウェハに代表される被研磨体の表面粗さや傷を低減でき、シリカ粒子の凝集を抑制することができる。
【0093】
シリカ粒子の会合比は、前述の測定方法にて測定した平均1次粒子径と前述の測定方法にて測定した平均2次粒子径とから、下記式(3)を用いて会合比を算出する。
会合比=平均2次粒子径/平均1次粒子径 ・・・ (3)
【0094】
シリカ粒子の表面シラノール基密度は、研磨特性に影響を与えることから、研磨に適した所望の表面シラノール基密度のシリカ粒子を製造することが必要となる。本発明のシリカ粒子の製造方法は、多くの製造設備を必要とせず、シリカ粒子の表面シラノール基密度を容易に調整でき、好適な製造方法である。
【0095】
シリカ粒子の表面シラノール基密度は、シアーズ法により測定する。具体的には、下記に示す条件で測定、算出する。
シリカ粒子1.5gに相当するシリカゾルを採取し、純水を加えて液量を90mLにする。25℃の環境下、pHが3.6になるまで0.1mol/Lの塩酸水溶液を加え、塩化ナトリウム30gを加え、純水を徐々に加えながら塩化ナトリウムを完全に溶解させ、最終的に試験液の総量が150mLになるまで純水を加え、試験液を得る。
得られた試験液を自動滴定装置に入れ、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、pHが4.0から9.0になるのに要する0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の滴定量A(mL)を測定する。
下記式(4)を用いて、シリカ粒子1.5gあたりのpHが4.0から9.0になるのに要した0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の消費量V(mL)を算出し、下記式(5)を用いて、シリカ粒子の表面シラノール基密度ρ(個/nm)を算出する。
V=(A×f×100×1.5)/(W×C) ・・・ (4)
A:シリカ粒子1.5gあたりのpHが4.0から9.0になるのに要した0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の滴定量(mL)
f:用いた0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の力価
C:シリカゾル中のシリカ粒子の濃度(質量%)
W:シリカゾルの採取量(g)
ρ=(B×N)/(1018×M×SBET) ・・・ (5)
B:Vから算出したシリカ粒子1.5gあたりのpHが4.0から9.0になるのに要した水酸化ナトリウム量(mol)
:アボガドロ数(個/mol)
M:シリカ粒子量(1.5g)
BET:平均1次粒子径の算出の際に測定したシリカ粒子の比表面積(m/g)
【0096】
前記シリカ粒子の表面シラノール基密度の測定、算出方法は、「G.W.Sears,Jr., Analytical Chemistry, Vol.28, No.12, pp.1981-1983(1956).」、「羽場真一, 半導体集積回路プロセス用研磨剤の開発, 高知工科大学博士論文, pp.39-45, 2004年3月」、「特許第5967118号公報」、「特許第6047395号公報」を参考にした。
【0097】
シリカ粒子の金属不純物含有率は、5ppm以下が好ましく、2ppm以下がより好ましい。
【0098】
半導体デバイスのシリコンウェハの研磨において、金属不純物が被研磨体の表面に付着、汚染することで、ウェハ特性に悪影響を及ぼすと共に、ウェハ内部に拡散して品質が劣化するため、このようなウェハによって製造された半導体デバイスの性能が著しく低下する。
また、シリカ粒子に金属不純物が存在すると、酸性を示す表面シラノール基と金属不純物とが配位的な相互作用が発生し、表面シラノール基の化学的性質(酸性度等)を変化させたり、シリカ粒子表面の立体的な環境(シリカ粒子の凝集のしやすさ等)を変化させたり、研磨レートに影響を及ぼす。
【0099】
シリカ粒子の金属不純物含有率は、高周波誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)により測定する。具体的には、シリカ粒子0.4g含むシリカゾルを正確に量り取り、硫酸とフッ酸を加え、加温、溶解、蒸発させ、残存した硫酸滴に総量が正確に10gとなるよう純水を加えて試験液を作成し、高周波誘導結合プラズマ質量分析装置を用いて測定する。対象の金属は、ナトリウム、カリウム、鉄、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、コバルト、クロム、銅、マンガン、鉛、チタン、銀、ニッケルとし、これらの金属の含有率の合計を金属不純物含有率とする。
【0100】
シリカ粒子の金属不純物含有率は、アルコキシシランを主原料として加水分解反応及び縮合反応を行ってシリカ粒子を得ることで、5ppm以下とすることができる。
水ガラス等の珪酸アルカリの脱イオンによる方法では、原料由来のナトリウム等が残存するため、シリカ粒子の金属不純物含有率を5ppm以下とすることが極めて困難である。
【0101】
シリカ粒子の形状としては、例えば、球状、鎖状、繭状(こぶ状や落花生状とも称される)、異形状(例えば、疣状、屈曲状、分岐状等)等が挙げられる。これらのシリカ粒子の形状の中でも、研磨時のシリコンウェハに代表される被研磨体の表面粗さや傷を低減させたい場合は、球状が好ましく、シリコンウェハに代表される被研磨体に対する研磨レートをより高めたい場合は、異形状が好ましい。
【0102】
シリカ粒子は、機械的強度、保存安定性に優れることから、細孔を有しないことが好ましい。
シリカ粒子の細孔の有無は、窒素を吸着ガスとした吸着等温線を用いたBET多点法解析により確認する。
【0103】
(シリカゾルの製造方法)
本発明のシリカゾルの製造方法は、本発明のシリカ粒子の製造方法を含む。
【0104】
シリカゾルは、本発明のシリカ粒子の製造方法で得られたシリカ粒子の分散液をそのまま用いてもよく、得られたシリカ粒子の分散液中の成分のうち、不必要な成分の除去や必要な成分の添加をして製造してもよい。
【0105】
シリカゾルは、シリカ粒子及び分散媒を含むことが好ましい。
シリカゾル中の分散媒は、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール等が挙げられる。これらのシリカゾル中の分散媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのシリカゾル中の分散媒の中でも、シリカ粒子との親和性に優れることから、水、アルコールが好ましく、水がより好ましい。
【0106】
シリカゾル中のシリカ粒子の含有率は、シリカゾル全量100質量%中、3質量%~50質量%が好ましく、4質量%~40質量%がより好ましく、5質量%~30質量%が更に好ましい。シリカゾル中のシリカ粒子の含有率が3質量%以上であると、シリコンウェハに代表される被研磨体に対する研磨レートに優れる。また、シリカゾル中のシリカ粒子の含有率が50質量%以下であると、シリカゾルや研磨組成物中のシリカ粒子の凝集を抑制することができ、シリカゾルや研磨組成物の保存安定性に優れる。
【0107】
シリカゾル中の分散媒の含有率は、シリカゾル全量100質量%中、50質量%~97質量%が好ましく、60質量%~96質量%がより好ましく、70質量%~95質量%が更に好ましい。シリカゾル中の分散媒の含有率が50質量%以上であると、シリカゾルや研磨組成物中のシリカ粒子の凝集を抑制することができ、シリカゾルや研磨組成物の保存安定性に優れる。また、シリカゾル中の分散媒の含有率が97質量%以下であると、シリコンウェハに代表される被研磨体に対する研磨レートに優れる。
【0108】
シリカゾル中のシリカ粒子や分散媒の含有率は、得られたシリカ粒子の分散液中の成分のうち、不必要な成分を除去し、必要な成分を添加することで、所望の範囲に設定することができる。
【0109】
シリカゾルは、シリカ粒子及び分散媒以外に、その性能を損なわない範囲において、必要に応じて、酸化剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、pH緩衝剤、界面活性剤、キレート剤、抗菌殺生物剤等の他の成分を含んでもよい。
特に、シリカゾルの保存安定性に優れることから、シリカゾル中に抗菌殺生物剤を含ませることが好ましい。
【0110】
抗菌殺生物剤としては、例えば、過酸化水素、アンモニア、第四級アンモニウム水酸化物、第四級アンモニウム塩、エチレンジアミン、グルタルアルデヒド、p-ヒドロキシ安息香酸メチル、亜塩素酸ナトリウム等が挙げられる。これらの抗菌殺生物剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの抗菌殺生物剤の中でも、シリカゾルとの親和性に優れることから、過酸化水素が好ましい。
殺生物剤は、一般に殺菌剤と言われるものも含む。
【0111】
シリカゾル中の抗菌殺生物剤の含有率は、シリカゾル全量100質量%中、0.0001質量%~10質量%が好ましく、0.001質量%~1質量%がより好ましい。シリカゾル中の抗菌殺生物剤の含有率が0.0001質量%以上であると、シリカゾルの保存安定性に優れる。シリカゾル中の抗菌殺生物剤の含有率が10質量%以下であると、シリカゾルの本来の性能を損なわない。
【0112】
シリカゾルのpHは、6.0~8.0が好ましく、6.5~7.8がより好ましい。シリカゾルのpHが6.0以上であると、分散安定性に優れて、シリカ粒子の凝集を抑制することができる。また、シリカゾルのpHが8.0以下であると、シリカ粒子の溶解を防ぎ、長期間の保存安定性に優れる。
シリカゾルのpHは、pH調整剤を添加することで、所望の範囲に設定することができる。
【0113】
(研磨組成物)
本発明のシリカゾルの製造方法で得られたシリカゾルは、研磨組成物として好適に用いることができる。
研磨組成物は、前述したシリカゾル及び水溶性高分子を含むことが好ましい。
【0114】
水溶性高分子は、シリコンウェハに代表される被研磨体に対する研磨組成物の濡れ性を高める。水溶性高分子は、水親和性の高い官能基を保有する高分子であることが好ましく、この水親和性の高い官能基とシリカ粒子の表面シラノール基との親和性が高く、研磨組成物中でより近傍にシリカ粒子と水溶性高分子とが安定して分散する。そのため、シリコンウェハに代表される被研磨体への研磨の際、シリカ粒子と水溶性高分子との効果が相乗的に機能する。
【0115】
水溶性高分子としては、例えば、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン骨格を有する共重合体、ポリオキシアルキレン構造を有する重合体等が挙げられる。
【0116】
セルロース誘導体としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、加水分解処理を施したヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
ポリビニルピロリドン骨格を有する共重合体としては、例えば、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンとのグラフト共重合体等が挙げられる。
ポリオキシアルキレン構造を有する重合体としては、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体等が挙げられる。
【0117】
これらの水溶性高分子は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの水溶性高分子の中でも、シリカ粒子の表面シラノール基との親和性が高く、相乗的に作用して被研磨体の表面に良好な親水性を与えることから、セルロース誘導体が好ましく、ヒドロキシエチルセルロースがより好ましい。
【0118】
水溶性高分子の質量平均分子量は、1,000~3,000,000が好ましく、5,000~2,000,000がより好ましく、10,000~1,000,000が更に好ましい。水溶性高分子の質量平均分子量が1,000以上であると、研磨組成物の親水性が向上する。また、水溶性高分子の質量平均分子量が3,000,000以下であると、シリカゾルとの親和性に優れ、シリコンウェハに代表される被研磨体に対する研磨レートに優れる。
【0119】
水溶性高分子の質量平均分子量は、ポリエチレンオキサイド換算で、0.1mol/LのNaCl溶液を移動相とする条件で、サイズ排除クロマトグラフィーにより測定する。
【0120】
研磨組成物中の水溶性高分子の含有率は、研磨組成物全量100質量%中、0.02質量%~10質量%が好ましく、0.05質量%~5質量%がより好ましい。研磨組成物中の水溶性高分子の含有率が0.02質量%以上であると、研磨組成物の親水性が向上する。また、研磨組成物中の水溶性高分子の含有率が10質量%以下であると、研磨組成物調製時のシリカ粒子の凝集を抑制することができる。
【0121】
研磨組成物は、シリカゾル及び水溶性高分子以外に、その性能を損なわない範囲において、必要に応じて、塩基性化合物、研磨促進剤、界面活性剤、親水性化合物、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、pH緩衝剤、界面活性剤、キレート剤、抗菌殺生物剤等の他の成分を含んでもよい。
特に、シリコンウェハに代表される被研磨体の表面に化学的な作用を与えて化学的研磨(ケミカルエッチング)ができ、シリカ粒子の表面シラノール基との相乗効果により、シリコンウェハに代表される被研磨体の研磨速度を向上させることができることから、研磨組成物中に塩基性化合物を含ませることが好ましい。
【0122】
塩基性化合物としては、例えば、有機塩基性化合物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ金属炭酸塩、アンモニア等が挙げられる。これらの塩基性化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの塩基性化合物の中でも、水溶性が高く、シリカ粒子や水溶性高分子との親和性に優れることから、アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウムが好ましく、アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウムがより好ましく、アンモニアが更に好ましい。
【0123】
研磨組成物中の塩基性化合物の含有率は、研磨組成物全量100質量%中、0.001質量%~5質量%が好ましく、0.01質量%~3質量%がより好ましい。研磨組成物中の塩基性化合物の含有率が0.001質量%以上であると、シリコンウェハに代表される被研磨体の研磨速度を向上させることができる。また、研磨組成物中の塩基性化合物の含有率が5質量%以下であると、研磨組成物の安定性に優れる。
【0124】
研磨組成物のpHは、8.0~12.0が好ましく、9.0~11.0がより好ましい。研磨組成物のpHが8.0以上であると、研磨組成物中のシリカ粒子の凝集を抑制することができ、研磨組成物の分散安定性に優れる。また、研磨組成物のpHが12.0以下であると、シリカ粒子の溶解を抑制することができ、研磨組成物の安定性に優れる。
研磨組成物のpHは、pH調整剤を添加することで、所望の範囲に設定することができる。
【0125】
研磨組成物は、本発明のシリカゾルの製造方法で得られたシリカゾル、水溶性高分子、及び、必要に応じて、他の成分を混合することで得られるが、保管、運搬を考慮し、一旦高濃度で調製し、研磨直前に水等で希釈してもよい。
【0126】
(研磨方法)
本発明の研磨方法は、本発明のシリカゾルの製造方法で得られたシリカゾルを含む研磨組成物を用いて研磨する方法である。
研磨組成物は、前述した研磨組成物を用いることが好ましい。
具体的な研磨の方法としては、例えば、シリコンウェハの表面を研磨パッドに押し付け、研磨パッド上に本発明の研磨組成物を滴下し、シリコンウェハの表面を研磨する方法が挙げられる。
【0127】
(半導体ウェハの製造方法)
本発明の半導体ウェハの製造方法は、本発明の研磨方法を含む方法であり、具体的な研磨方法は、前述した通りである。
半導体ウェハとしては、例えば、シリコンウェハ、化合物半導体ウェハ等が挙げられる。
【0128】
(半導体デバイスの製造方法)
本発明の半導体デバイスの製造方法は、本発明の研磨方法を含む方法であり、具体的な研磨方法は、前述した通りである。
【0129】
(用途)
本発明のシリカ粒子の製造方法で得られたシリカ粒子、本発明のシリカゾルの製造方法で得られたシリカゾルは、研磨用途に好適に用いることができ、例えば、シリコンウェハ等の半導体材料の研磨、ハードディスク基板等の電子材料の研磨、集積回路を製造する際の平坦化工程における研磨(化学的機械的研磨)、フォトマスクや液晶に用いる合成石英ガラス基板の研磨、磁気ディスク基板の研磨等に用いることができ、中でもシリコンウェハの研磨や化学的機械的研磨に特に好適に用いることができる。
【実施例
【0130】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0131】
(平均1次粒子径の測定)
実施例及び比較例で得られたシリカ粒子の分散液を150℃で乾燥し、比表面積自動測定装置「BELSORP-MR1」(機種名、マイクロトラック・ベル株式会社)を用いて、シリカ粒子の比表面積を測定し、下記式(1)を用い、密度を2.2g/cmとし、平均1次粒子径を算出した。
平均1次粒子径(nm)=6000/(比表面積(m/g)×密度(g/cm)) ・・・ (1)
【0132】
(平均2次粒子径、cv値の測定)
実施例及び比較例で得られたシリカ粒子の分散液を、動的光散乱粒子径測定装置「ゼーターサイザーナノZS」(機種名、マルバーン社製)を用いて、シリカ粒子の平均2次粒子径を測定し、下記式(2)を用いてcv値を算出した。
cv値=(標準偏差(nm)/平均2次粒子径(nm))×100 ・・・ (2)
【0133】
(会合比の算出)
測定した平均1次粒子径と平均2次粒子径とから、下記式(3)を用いて会合比を算出した。
会合比=平均2次粒子径/平均1次粒子径 ・・・ (3)
【0134】
(表面シラノール基密度の測定)
実施例・比較例で得られたシリカ粒子の分散液の、シリカ粒子1.5gに相当する量を、200mLトールビーカーに採取し、純水を加えて液量を90mLにした。
25℃の環境下、トールビーカーにpH電極を挿入し、マグネティックスターラーにより試験液を5分間撹拌させた。マグネティックスターラーによる攪拌を続けた状態で、pHが3.6になるまで0.1mol/Lの塩酸水溶液を加えた。トールビーカーからpH電極を取り外し、マグネティックスターラーによる攪拌を続けた状態で、塩化ナトリウムを30g加え、純水を徐々に加えながら塩化ナトリウムを完全に溶解させ、最終的に試験液の総量が150mLになるまで純水を加え、マグネティックスターラーにより試験液を5分間撹拌させ、試験液を得た。
【0135】
得られた試験液の入ったトールビーカーを、自動滴定装置「COM-1600」(平沼産業株式会社製)にセットし、装置付属のpH電極とビュレットをトールビーカーに挿入して、マグネティックスターラーにより試験液を撹拌させながら、ビュレットを通じて0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、pHが4.0から9.0になるのに要する0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の滴定量A(mL)を測定した。
下記式(4)を用いて、シリカ粒子1.5gあたりのpHが4.0から9.0になるのに要した0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の消費量V(mL)を算出し、下記式(5)を用いて、シリカ粒子の表面シラノール基密度ρ(個/nm)を算出した。
V=(A×f×100×1.5)/(W×C) ・・・ (4)
A:シリカ粒子1.5gあたりのpHが4.0から9.0になるのに要した0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の滴定量(mL)
f:用いた0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の力価
C:シリカゾル中のシリカ粒子の濃度(質量%)
W:シリカゾルの採取量(g)
ρ=(B×N)/(1018×M×SBET) ・・・ (5)
B:Vから算出したシリカ粒子1.5gあたりのpHが4.0から9.0になるのに要した水酸化ナトリウム量(mol)
:アボガドロ数(個/mol)
M:シリカ粒子量(1.5g)
BET:平均1次粒子径の算出の際に測定したシリカ粒子の比表面積(m/g)
【0136】
[実施例1]
(工程(1))
メタノール82質量%及び純水18質量%を混合した液(A1)259.3質量部と29質量%アンモニア水10.2質量部とを混合した液中に、テトラメトキシシラン81.5質量部及びメタノール27.2質量部を混合した溶液(B1)並びに29質量%アンモニア水2.6質量部及び純水32.3質量部を混合した溶液(C1)を、1.2時間かけてそれぞれ等速で添加した。滴下中、反応温度を31℃に保ったまま、反応系内の撹拌を続けた。滴下終了後、反応系内の温度を31℃に保ったまま、更に反応系内を10分間撹拌し、シリカ粒子の分散液を得た。反応開始から反応終了まで反応系内のpHは11に維持され、反応終了時の液(A1)中のメタノールの濃度は86質量%であった。
【0137】
(工程(1’))
工程(1)で得られたシリカ粒子の分散液を、純水を添加しながら昇温し、メタノールとアンモニアとを除去し、シリカ粒子の含有率が約10質量%のシリカ粒子の分散液を得た。
【0138】
(工程(2))
工程(1’)で得られたシリカ粒子の分散液313.1質量部及びメタノール32.0を混合し、水89質量%及びメタノール11質量%を混合した液(A2)にシリカ粒子が分散したシリカ粒子の分散液を得た。
得られたシリカ粒子の分散液345.1質量部を85℃まで昇温し、テトラメトキシシラン34.95質量部及びメタノール11.64質量部を混合した溶液(B2)並びに純水(C2)108.02質量部を、2.1時間かけてそれぞれ等速で添加した。滴下中、反応温度を85℃に保ったまま、反応系内の撹拌を続けた。滴下終了後、反応系内の温度を85℃に保ったまま、更に反応系内を60分間撹拌し、シリカ粒子の分散液を得た。反応開始から反応終了まで反応系内のpHは8に維持され、反応終了時の液(A1)中のメタノールの濃度は84質量%であった。
【0139】
(工程(3))
工程(2)で得られたシリカ粒子の分散液を、純水を添加しながら昇温し、メタノールとアンモニアとを除去し、シリカ粒子の含有率が約20質量%のシリカ粒子の分散液を得た。
得られたシリカ粒子の評価結果を、表3に示す。
【0140】
[実施例2~16]
工程(2)の反応条件を表2のように変更した以外は、実施例1と同様に操作し、シリカ粒子の含有率が約20質量%のシリカ粒子の分散液を得た。
得られたシリカ粒子の評価結果を、表3に示す。
【0141】
[実施例17~20]
工程(1)の反応条件を表1のように変更し、工程(2)の反応条件を表2のように変更した以外は、実施例1と同様に操作し、シリカ粒子の含有率が約20質量%のシリカ粒子の分散液を得た。
得られたシリカ粒子の評価結果を、表3に示す。
【0142】
[比較例1]
工程(1)を実施例1と同様に操作し、工程(1)で得られたシリカ粒子の分散液を、純水を添加しながら昇温し、メタノールとアンモニアとを除去し、シリカ粒子の含有率が約20質量%のシリカ粒子の分散液を得た。工程(2)及び工程(3)は行わなかった。
得られたシリカ粒子の評価結果を、表3に示す。
【0143】
[比較例2]
工程(1)の反応条件を表1のように変更した以外は、比較例1と同様に操作し、シリカ粒子の含有率が約20質量%のシリカ粒子の分散液を得た。
得られたシリカ粒子の評価結果を、表3に示す。
【0144】
【表1】
【0145】
【表2】
【0146】
【表3】
【0147】
表3から分かるように、工程(1)及び工程(2)を有する実施例1~20は、一般的な製造方法である工程(2)を有しない比較例1~2と比較して、平均1次粒子径、平均2次粒子径、cv値及び会合比を大きく変化させることなく、表面シラノール基密度を低く調整することができた。
工程(1)により得られた核粒子を、工程(2)で成長させることで、成長途中のシリカ粒子の表面シラノール基の反応性を段階的に向上させることができ、表面シラノール基密度を低く調整することができたと考えられる。
これらの結果から、本発明のシリカ粒子の製造方法により、表面シラノール基密度が2.0個/nm~7.0個/nmの範囲でシリカ粒子を作り分けることができることを確認できた。また、本発明のシリカ粒子の製造方法は、工程(1)と工程(2)とで同一の製造設備を用いて製造することができることも確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0148】
本発明のシリカ粒子の製造方法で得られたシリカ粒子、本発明のシリカゾルの製造方法で得られたシリカゾルは、研磨用途に好適に用いることができ、例えば、シリコンウェハ等の半導体材料の研磨、ハードディスク基板等の電子材料の研磨、集積回路を製造する際の平坦化工程における研磨(化学的機械的研磨)、フォトマスクや液晶に用いる合成石英ガラス基板の研磨、磁気ディスク基板の研磨等に用いることができ、中でもシリコンウェハの研磨や化学的機械的研磨に特に好適に用いることができる。