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特許7443861ヒータ制御装置、ヒータ制御方法、及び画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】ヒータ制御装置、ヒータ制御方法、及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240228BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
G03G15/20 555
G03G21/00 398
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020049828
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021148988
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100186853
【弁理士】
【氏名又は名称】宗像 孝志
(72)【発明者】
【氏名】山内 智仁
(72)【発明者】
【氏名】大野 築
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-087922(JP,A)
【文献】特開2006-073431(JP,A)
【文献】特開2016-138944(JP,A)
【文献】特開2004-212510(JP,A)
【文献】特開2012-128170(JP,A)
【文献】特開2013-064913(JP,A)
【文献】特開2011-087238(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0142535(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/20
13/34
15/00
15/20
15/36
21/00-21/02
21/14
21/20
H05B 1/00-3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒータに通電する交流電圧の位相角を制御する位相制御により、前記交流電圧の周期の整数倍の制御周期毎に所定の点灯Duty比となるようにした第1の点灯パターンと、第2の点灯パターンと、を切り替えて用いて、前記ヒータを点灯制御する制御手段を有し、
前記第1の点灯パターンは、交流電圧の全ての半波区間で位相制御を行い、前記制御周期毎の位相制御を行う半波区間毎の電力配分が均一で、当該半波区間毎のプラス側とマイナス側の対称性が保たれていて、偶数次高調波の発生を抑制する点灯パターンであり、
前記第2の点灯パターンは、交流電圧の1周期おきの2つの半波区間で位相制御を行い、前記制御周期毎の位相制御を行う半波区間の数、及び当該位相制御により前記交流電圧のプラス側とマイナス側の対称性が保たれる半波区間の数が、前記第1の点灯パターンより少ない、奇数次高調波を抑制する点灯パターンであり、
前記制御手段は、前記ヒータの点灯制御における前記第1の点灯パターンと前記第2の点灯パターンの使用回数をそれぞれ計測し、
当該使用回数において、予め設定された前記第1の点灯パターンの最大連続使用回数に達したときには、当該第1の点灯パターンから前記第2の点灯パターンに切り替え、
また、予め設定された第2の点灯パターンの最大連続使用回数に達したときには、前記第2の点灯パターンから前記第1の点灯パターンに切り替える、
ことを特徴とするヒータ制御装置。
【請求項2】
媒体に顕像材を付着させて画像を形成する画像形成部と、
加熱により、前記媒体に付着した前記顕像材を前記媒体に定着させる定着装置と、
を有し、
前記定着装置の定着ローラを交流電圧により点灯させるヒータの点灯制御を、請求項1に記載のヒータ制御装置により行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
前記第1の点灯パターンの最大連続使用回数及び前記第2の点灯パターンの最大連続使用回数が、前記定着ローラに対する前記媒体の線速に応じて設定されていることを特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【請求項4】
ヒータに通電する交流電圧の位相角を制御する位相制御により、前記交流電圧の周期の整数倍の制御周期毎に所定の点灯Duty比となるようにした第1の点灯パターンと、第2の点灯パターンと、を切り替えて用いて、前記ヒータを点灯制御する制御ステップを有し、
前記第1の点灯パターンは、交流電圧の全ての半波区間で位相制御を行い、前記制御周期毎の位相制御を行う半波区間毎の電力配分が均一で、当該半波区間毎のプラス側とマイナス側の対称性が保たれていて、偶数次高調波の発生を抑制する点灯パターンであり、
前記第2の点灯パターンは、交流電圧の1周期おきの2つの半波区間で位相制御を行い、前記制御周期毎の位相制御を行う半波区間の数、及び当該位相制御により前記交流電圧のプラス側とマイナス側の対称性が保たれる半波区間の数が、前記第1の点灯パターンより少ない、奇数次高調波を抑制する点灯パターンであり、
前記制御ステップにおいて、前記ヒータの点灯制御における前記第1の点灯パターンと前記第2の点灯パターンの使用回数をそれぞれ計測し、
当該使用回数において、予め設定された前記第1の点灯パターンの最大連続使用回数に達したときには、当該第1の点灯パターンから前記第2の点灯パターンに切り替え、
また、予め設定された第2の点灯パターンの最大連続使用回数に達したときには、前記第2の点灯パターンから前記第1の点灯パターンに切り替える、
ことを特徴とするヒータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒータ制御装置、ヒータ制御方法、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
用紙などの記録部材に転写されたトナー像を定着ユニットで加熱して定着させる画像形成装置では、ユーザの利便性やエネルギー効率を考慮して定着ユニットの温度を適切に制御している。定着ユニットは、ハロゲンヒータなどのヒータを内蔵した加熱ローラ、加熱ローラの表面温度を検知する温度センサ等を備え、ヒータ制御装置は、ヒータの表面温度と目標温度とに基づいて、ヒータの点灯制御を行って、定着ユニットの温度を設定温度に制御する。
【0003】
制御方法としては、交流電源からの交流電圧の半周期(半波区間)毎の通電率を設定し、交流電圧の周期の整数倍の制御周期毎に所定の平均通電率となるようにした通電パターンにより、ヒータを点灯制御(通電制御)する制御方法が知られている(例えば特許文献1)。ここで、通電率とは、交流電圧の半周期(半波区間)に対してヒータに通電する時間の比率であり、交流電圧のオン/オフのタイミングにより通電する位相角を制御する位相制御により変化させることができる。なお、「平均通電率」、「通電パターン」は、それぞれ「点灯Duty比」、「点灯パターン」とも称されることもある。以下、本明細書においては「平均通電率」、「通電パターン」については、「点灯Duty比」、「点灯パターン」と表記する。
【0004】
ところで定着ユニットは、印刷の短時間化の要求から、表面温度が設定温度にまで上昇するのに要する時間を短縮するために大型のヒータを実装している。大型のヒータは消費電力が大きいのでヒータに通電した際には、温度制御の初期段階において突入電流が生じ。特に、ハロゲンヒータは温度が低い状態では抵抗値が小さいため、温度が低下している温度制御の初期段階において突入電流がより大きくなりやすい。この突入電流の発生によって、電源の交流電圧が低下して、定着ユニットと電源系統を共にする蛍光灯などにフリッカ(蛍光灯のチラツキ等となって現れる)を生じさせる。
【0005】
位相制御を行う場合、ヒータの立ち上げ時には点灯Duty比を低くすることで突入電流を小さくし、電圧変動によるフリッカの発生を抑制することはできる。しかし、位相制御を行うことによって、ヒータに供給される交流電圧波形が大きく歪められてしまうため、高調波電流が発生しやすくなる。高調波電流は、周辺機器や電源系統を誤動作させる原因となる。
【0006】
この高調波電流を抑制するため、特許文献1に記載された定着装置では、複数の異なる点灯Duty比の各々に対して、半波区間の通電率の組み合わせの異なる複数の点灯パターンを用意する。そして、新たに使用する点灯パターンを決定する際、新たに使用する点灯パターンによって生じる高調波電流と、過去の所定期間に使用された点灯パターンによって生じる高調波電流との平均値を各点灯パターンについて算出する。さらに、算出した平均値が平均高調波電流の規格値を超えない点灯パターンの中から、必要な電力に対応する点灯Duty比を有するいずれかの点灯パターンを選択する。また、必要な電力に対応する点灯Duty比のどの点灯パターンを使用しても高調波電流の規制値を超えてしまう場合は、点灯Duty比を下げて点灯パターンを選択する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載されたヒータ制御装置では、点灯Duty比を維持したまま高調波電流を抑制することができないため、制御周期の長期化を招き、結果として電力応答性を悪化させてしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、電力応答性を悪化させることなく、高調波電流の抑制を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ヒータ制御装置に関し、ヒータに通電する交流電圧の位相角を制御する位相制御により、前記交流電圧の周期の整数倍の制御周期毎に所定の点灯Duty比となるようにした第1の点灯パターンと、第2の点灯パターンと、を切り替えて用いて、前記ヒータを点灯制御する制御手段を有し、前記第1の点灯パターンは、交流電圧の全ての半波区間で位相制御を行い、前記制御周期毎の位相制御を行う半波区間毎の電力配分が均一で、当該半波区間毎のプラス側とマイナス側の対称性が保たれていて、偶数次高調波の発生を抑制する点灯パターンであり、前記第2の点灯パターンは、交流電圧の1周期おきの2つの半波区間で位相制御を行い、前記制御周期毎の位相制御を行う半波区間の数、及び当該位相制御により前記交流電圧のプラス側とマイナス側の対称性が保たれる半波区間の数が、前記第1の点灯パターンより少ない、奇数次高調波を抑制する点灯パターンであり、前記制御手段は、前記ヒータの点灯制御における前記第1の点灯パターンと前記第2の点灯パターンの使用回数をそれぞれ計測し、当該使用回数において、予め設定された前記第1の点灯パターンの最大連続使用回数に達したときには、当該第1の点灯パターンから前記第2の点灯パターンに切り替え、また、予め設定された第2の点灯パターンの最大連続使用回数に達したときには、前記第2の点灯パターンから前記第1の点灯パターンに切り替える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電力応答性を悪化させることなく、高調波電流の抑制が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示すブロック図。
図2】第1の実施形態に係るヒータ制御装置の要部構成を示すブロック図。
図3】第1点灯パターンテーブルを示す図。
図4】第2点灯パターンテーブルを示す図。
図5】第3点灯パターンテーブルを示す図。
図6】第4点灯パターンテーブルを示す図。
図7】第1の実施形態に係るヒータ制御方法を示すフローチャート。
図8】第2の実施形態に係るヒータ制御装置の要部構成を示すブロック図。
図9】第2の実施形態に係るヒータ制御方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示すブロック図である。
【0013】
〈本発明の実施形態に係る画像形成装置〉
図1に示すように、画像形成装置100は、シート状の記録媒体である記録材(例えば、「転写紙」)に形成されている画像を光学的に読み取るスキャナ部10と、スキャナ部10で読み取った画像に対して所定の画像処理を施した後の画像に応じたトナー像を記録材に転写するエンジン部20と、記録材を格納するための記録材収容部としての給紙トレイ30と、エンジン部20で記録材に転写されたトナー像を定着させるための定着装置50と、から構成されている。なお、本発明の実施形態に係るヒータ制御装置は定着装置50に設けられている。
【0014】
スキャナ部10は、画像が形成された記録材を光学的にスキャンすることによって、記録材に付されている情報を画像信号に変換してエンジン部20に出力する。
【0015】
画像形成部としてのエンジン部20は、スキャナ部10から出力された画像信号に対して、色変換、階調補正などの画像処理を施し、画像処理後の画像に応じて静電潜像を像担持体に作像し、作像した静電潜像に顕像材としての付着物であるトナーを付着してトナー像を形成する。エンジン部20は、さらに、形成したトナー像を給紙トレイ30から搬送路40を介して搬送された媒体としての記録材に転写して、当該記録材を、搬送路40を介して定着装置50に向けて送り出す。
【0016】
定着装置50は、トナー像が付着した記録材に対して、円筒状の定着ローラ51aによる熱と加圧ローラ51bによる圧力を付加し、記録材に付着したトナー像を熱と圧力によって定着させて、排紙トレイに向けて排紙する。
【0017】
〈第1の実施形態に係るヒータ制御装置〉
次に、本発明の第1の実施形態に係るヒータ制御装置について説明する。図2は、本発明の第1の実施形態に係るヒータ制御装置である加熱制御装置60の要部構成を示すブロック図である。
【0018】
図2に示すように、加熱制御装置60は、定着装置50に備えられていて、トライアック54と、温度センサ55と、制御部56と、ゼロクロス検知部57と、を有する。加熱制御装置60は、記録材を加熱する加熱部材である定着ローラ51aを加熱するヒータ52の加熱動作(点灯動作、通電動作)を制御する装置である。ヒータ52は、加熱制御装置60の制御によって定着ローラ51aを加熱する加熱状態(点灯状態、通電状態)と加熱しない状態(消灯状態、非通電状態)が制御される。
【0019】
定着ローラ51aは、ヒータ52からの熱を受けるとともに、加圧ローラ51b(図1)と圧接しながら回転して、記録材に転写されているトナー像を定着させる。定着ローラ51aは、加熱部材の一例である。
【0020】
また、ヒータ52は、加熱部材としての定着ローラ51aを加熱する加熱手段の一例である。加熱手段としてのヒータ52は、例えば、定着ローラ51aに内蔵されている。ヒータ52の熱は、定着ローラ51aを介して記録材に付されたトナー像を熱で溶かす程度の温度である。ヒータ52は、定着ローラ51aを加熱して記録材にトナー画像を定着させる熱源となる。なお、ヒータ52には、例えば、ハロゲンランプを点灯した際に発生する放射熱によって加熱を行うハロゲンヒータが用いられる。
【0021】
交流電源53は、ヒータ52に対して交流電圧を供給する。本実施形態では、時間とともに正弦波状に変化する交流電圧を供給するものとする。また、本実施形態では、交流電源53からの供給電圧に係る電圧波形の周期に基づき、ヒータ52の加熱動作の制御を行う周期を「制御周期」とする。すなわち、ヒータ52の加熱動作の制御をフィードバック制御として行うときの周期は、交流電源53からの交流電圧に係る電圧波形周期に基づくものとする。本実施形態では、例えば、交流電源53からの交流電圧の2周期(4半波区間)を1制御周期とする。なお、制御周期は、ヒータ52の加熱に用いられる供給電圧の周期に基づき、その整数倍とするものであれば、上記の例に限定するものではない。この交流電源53は、画像形成装置100に供給される動作用電源や、定着装置50に供給される動作用電源を共用してもよいし、個別に設けてもよい。
【0022】
トライアック54は、スイッチング手段であり、交流電源53から供給される交流電圧を、制御部56から指示されたタイミングでスイッチング(オン/オフ)する。そして、トライアック54は、スイッチングされた交流電圧をヒータ52に供給する。なお、トライアック54がオン時には、ヒータ52が点灯状態(通電状態)となり発熱する。そして、トライアック54がオフ時には、ヒータ52が消灯状態(非通電状態)となる。
【0023】
温度センサ55は、温度検知手段の一例であり、定着ローラ51aの表面温度を測定する。温度センサ55は、例えば、温度に応じて抵抗値が変化するサーミスタを内蔵しており、当該サーミスタの抵抗値に基づいて定着ローラ51aの表面温度を測定する。温度センサ55は、定着ローラ51aに内蔵してもよい。また、温度センサ55を定着ローラ51aの表面に対向する位置に設置して、定着ローラ51aの表面温度を非接触で測定してもよい。温度センサ55により測定された定着ローラ51aの表面温度は、制御部56によって取得される。
【0024】
ゼロクロス検知部57は、交流電源53から供給される交流電圧が0ボルトを横切るタイミング、すなわちプラス側(正電圧)からマイナス側(負電圧)へ移行するタイミング、またはマイナス側(負電圧)からプラス側(正電圧)へ移行するタイミングを検知する。供給電圧が0ボルトを横切るタイミングを、以降では「ゼロクロスのタイミング」と称する。そして、ゼロクロス検知部57は、ゼロクロスのタイミングを検知したときに、制御部56に対して、ゼロクロス検知信号を出力する。
【0025】
制御手段としての制御部56は、温度センサ55が測定した定着ローラ51aの表面温度と、ゼロクロス検知部57が検知した交流電圧のゼロクロスのタイミングとに基づいて、交流電圧をスイッチングするタイミングを決定する。そして、制御部56は、決定したタイミングに基づいてトライアック54を動作させる。
【0026】
制御部56は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、入出力インタフェースとがバスを介して接続されたコンピュータとして実装される情報処理装置と同等のハードウェアにより構成される。また、制御部56において実現される機能ブロックは、ハードウェア資源としてのCPUが、ROMが記憶しているプログラムを読み出して実行することにより実現される。
【0027】
制御部56は、ハードウェア資源とコンピュータプログラムによって実現される以下の機能ブロックを有する。すなわち、制御部56は、加熱制御部561と、点灯パターン記憶部562と、連続使用回数カウンタ563と、最大連続使用回数設定値記憶部564と、点灯パターン切替判定部565と、を有する。
【0028】
加熱制御部561は、温度センサ55により検知された定着ローラ51aの表面温度、及び点灯パターン切替判定部565から通知される判定結果に基づいて、特定点灯パターンが格納されている点灯パターンテーブルを選択する。特定点灯パターンとは、点灯パターン記憶部562に記憶されている点灯パターンテーブルの中から上記の判定結果に基づいて特定される電圧波形パターンである。本実施形態において、特定点灯パターンには、偶数次の高調波電流の抑制に有利であり、奇数次の高調波電流の抑制に不利な点灯パターンと、奇数次の高調波電流の抑制に有利であり、偶数次の高調波電流の抑制に不利な点灯パターンと、が含まれる。加熱制御部561は、選択した特定点灯パターンに基づいて、トライアック54のスイッチング動作を制御する。
【0029】
記憶手段としての点灯パターン記憶部562には点灯パターンテーブルが記憶されている。点灯パターンテーブルは、トライアック54のスイッチング動作によって、交流電源53からヒータ52に通電する交流電圧の位相角を制御し、ヒータ52に通電する交流電圧が制御周期毎に所定の点灯Duty比となるようにするためのデータである点灯パターンを記憶しているテーブルである。点灯パターンは複数あり、それぞれが格納されている複数の点灯パターンテーブルがある。本実施形態では、偶数次の高調波電流の抑制に有利であり、奇数次の高調波電流の抑制に不利な第1点灯パターン、奇数次の高調波電流の抑制に有利であり、偶数次の高調波電流の抑制に不利な第2乃至第4点灯パターンからなる4つの点灯パターンを保持する4つの点灯パターンテーブルがある。ただし、これは一例であって、奇数次の高調波電流の抑制に不利な点灯パターン、奇数次の高調波電流の抑制に有利であり、偶数次の高調波電流の抑制に不利な点灯パターンは、それぞれ1つ以上あればよい。これらの点灯パターン及び点灯パターンテーブルの詳細については後述する。
【0030】
連続使用回数カウンタ563は、加熱制御部561がいずれかの点灯パターンによるヒータ点灯制御を開始してから、その点灯パターンによる連続点灯制御回数をカウントする。本実施形態では、連続使用回数カウンタ563は、第1点灯パターンによる連続点灯制御回数をカウントする第1カウント手段、第2点灯パターンによる連続点灯制御回数をカウントする第2カウント手段、第3点灯パターンによる連続点灯制御回数をカウントする第3カウント手段、第4点灯パターンによる連続点灯制御回数をカウントする第4カウント手段を含む。
【0031】
最大連続使用回数設定値記憶部564は、各点灯パターンの最大連続使用回数の設定値を記憶している。本実施形態では、第1点灯パターンの最大連続使用回数の設定値である第1設定値を記憶する第1設定値記憶部、第2点灯パターンの最大連続使用回数の設定値である第2設定値を記憶する第2設定値記憶部、第3点灯パターンの最大連続使用回数の設定値である第3設定値を記憶する第3設定値記憶部、第4点灯パターンの最大連続使用回数の設定値である第4設定値を記憶する第4設定値記憶部を含む。
【0032】
点灯パターン切替判定部565は、連続使用回数カウンタ563のカウント値が最大連続使用回数設定値記憶部564に記憶されている設定値を超えたか否かを判定し、その判定結果を加熱制御部561に通知する。本実施形態では、点灯パターン切替判定部565は、第1カウント手段のカウント値が第1設定値を超えたか否かを判定し、その判定結果を加熱制御部561に通知する第1判定手段、第2カウント手段のカウント値が第2設定値を超えたか否かを判定し、その判定結果を加熱制御部561に通知する第2判定手段、第3カウント手段のカウント値が第3設定値を超えたか否かを判定し、その判定結果を加熱制御部561に通知する第3判定手段、第4カウント手段のカウント値が第4設定値を超えたか否かを判定し、その判定結果を加熱制御部561に通知する第4判定手段を構成する。
【0033】
加熱制御部561は、第1判定手段、第2判定手段、第3判定手段、第4判定手段のいずれかから、最大連続使用回数の設定値を超えたとの判定結果が通知された場合、使用する点灯パターンを切り替えて点灯制御を行う。この点灯制御の切替えの詳細については後述する。
【0034】
〈点灯パターンテーブル〉
ここで、点灯パターン記憶部562に記憶されている各点灯パターンテーブルに格納されている点灯パターンについて、図3乃至図6を用いて説明する。
【0035】
図3図4図5図6は、それぞれ第1点灯パターン、第2点灯パターン、第3点灯パターン、第4点灯パターンが格納されている第1点灯パターンテーブル、第2点灯パターンテーブル、第3点灯パターンテーブル、第4点灯パターンテーブルを示す図である。ここでは、説明の便宜上、これらの図において第1乃至第4の点灯パターンとして図示されている交流電圧の波形は、点灯パターンテーブル上のデータ、すなわち点灯パターン自身ではなく、その点灯パターンによりトライアック54をスイッチングした場合にヒータ52に供給される電圧の波形を例示したものである。また、各点灯パターンにおける電圧波形の半波毎の比率は通電率である。
【0036】
第1点灯パターンは、偶数次の高調波電流の抑制に有利であり、奇数次の高調波電流の抑制に不利な点灯パターンである。また、第2点灯パターン、第3点灯パターン、及び第4点灯パターンは、どれも奇数次の高調波電流の抑制に有利であり、偶数次の高調波電流の抑制に不利な点灯パターンである。すなわち、第1点灯パターンは、本発明に係る第1の点灯パターンの例であり、第2点灯パターン、第3点灯パターン、第4点灯パターンは、いずれも本発明に係る第2の点灯パターンの例である。
【0037】
図3に示されているように、第1点灯パターンテーブル5621に格納されている第1点灯パターンでは、制御周期の全ての半波区間、すなわち第1半波区間a、第2半波区間b、第3半波区間c、及び第4半波区間dで位相制御を行い、各半波区間で均一に通電率を増加させていく。ここでは、点灯Duty比、すなわち制御周期毎の各半波区間の通電率の平均値が10%、50%、及び90%の場合について図示した(以後説明する図4図5図6についても同様)。加熱制御部561は、温度センサ55が検知した定着ローラ51aの表面温度に基づいて、所要の点灯Duty比の点灯パターンを選択する。
【0038】
第1点灯パターンでは、半波区間毎の電力配分が均一であるため、半波区間毎のプラス側とマイナス側の対称性が保たれ、偶数次高調波の発生を抑えることができる。このため、偶数次の高調波電流の抑制に有利である。しかし、半波区間毎に位相制御を行うため、奇数次高調波が多くなる。したがって、奇数次の高調波電流の抑制には不利である。
【0039】
図4に示されているように、第2点灯パターンテーブル5622に格納されている第2点灯パターンでは、点灯Duty比に応じて、制御周期の前半(第1半波区間a及び第2半波区間b)又は後半(第3半波区間c及び第4半波区間d)で位相制御を行う。すなわち、まず第1半波区間a及び第2半波区間bで位相制御を行って、それらの区間の通電率を増加させていく。この間、第3半波区間c及び第4半波区間dでは位相制御を行わず、通電率は0%に固定されている。第1半波区間a及び第2半波区間bの通電率が100%(点灯Duty比が50%)になったら、第1半波区間a及び第2半波区間bの通電率を100%に固定するとともに、第3半波区間c及び第4半波区間dで位相制御を行い、第3半波区間c及び第4半波区間dの通電率を増加させていく。つまり、第2の点灯パターンは、交流電圧の1周期置きの2つの半波区間で位相制御を行う点灯パターンである。
【0040】
この第2点灯パターンは、制御周期毎の半波区間の位相制御数が2つであり、第1の点灯パターンより少ないため、第1点灯パターンよりも奇数次高調波が少なくなる。したがって、奇数次の高調波電流の抑制に有利である。
【0041】
図5に示されているように、第3点灯パターンテーブル5623に格納されている第3点灯パターンでは、まず第1半波区間a及び第3半波区間cで位相制御を行い、それらの区間の通電率を増加させていく。この間、第2半波区間b及び第4半波区間dでは位相制御を行わず、通電率は0%に固定されている。第1半波区間a及び第3半波区間cの通電率が100%(点灯Duty比が50%)になったら、第1半波区間a及び第3半波区間cの通電率を100%に固定するとともに、第2半波区間b及び第4半波区間dで位相制御を行い、第2半波区間b及び第4半波区間dの通電率を増加させていく。つまり、第3点灯パターンは、交流電圧の各周期の1つの半波区間で位相制御を行うパターンである。
【0042】
この第3点灯パターンも、第2点灯パターンと同様に制御周期毎の半波区間の位相制御数が2つであり、第1点灯パターンより少ないため、第1点灯パターンよりも奇数次高調波が少なくなる。したがって、奇数次の高調波電流の抑制に有利である。また、1半波区間置きに通電されるため、第2点灯パターンより突入電流が少なくなる。
【0043】
図6に示されているように、第4点灯パターンテーブル5624に格納されている第4点灯パターンでは、まず第1半波区間aで位相制御を行い、その区間の通電率を増加させていく。この間、他の3つの半波区間では位相制御を行わず、通電率は0%に固定されている。そして、第1半波区間aの通電率が100%(点灯Duty比が25%)になったら、の通電率を第1半波区間a100%に固定するとともに、第2半波区間bで位相制御を行い、第2半波区間bの通電率を増加させていく。そして、第2半波区間bの通電率が100%(点灯Duty比が50%)になったら、第3半波区間cで位相制御を行い、第3半波区間cの通電率を増加させていく。以後、第3半波区間c、第4半波区間dでも同様に通電率を増加させていく。つまり、第4点灯パターンは、交流電圧の1周期おきの1つの半波区間で位相制御を行うパターンである。
【0044】
この第4点灯パターンは、制御周期毎の半波区間の位相制御数が1つであり、第1乃至第3の点灯パターンより少ないため、第1乃至第3点灯パターンよりも奇数次高調波が少なくなる。したがって、第1乃至第4点灯パターンのうち、奇数次の高調波電流の抑制に最も有利である。
【0045】
なお、以上の各点灯パターンテーブルに格納されている点灯パターンの同一の点灯Duty比において、ヒータに対する供給電力が等しくなるようにする。また、各点灯パターンは実際のヒータに合わせて通電率を調整し、供給電力を設定することが必要である。
【0046】
〈第1の実施形態に係るヒータ制御方法〉
偶数次の高調波電流の抑制に有利であり、奇数次の高調波電流の抑制に不利な点灯パターンである第1点灯パターン、又は奇数次の高調波電流の抑制に有利であり、偶数次の高調波電流の抑制に不利な点灯パターン、例えば第2点灯パターンを続けて使用してヒータ52の点灯制御を行った場合、奇数次又は偶数次の高調波電流が規制を満たさない場合がある。
【0047】
そこで、本実施形態に係るヒータ制御方法では、第1点灯パターンを用いたヒータ点灯制御を連続N回(前述した第1設定値)行う度に、第2点灯パターンを用いてヒータ点灯制御を連続M回(前述した第2設定値)行う。以下、図7に示されているフローチャートを用いて説明する。このフローは、加熱制御装置60の制御部56が実行する。
【0048】
まず、加熱制御部561は、連続使用回数カウンタ563における第1点灯パターンの連続使用回数をカウントする第1カウント手段のカウント値n、及び第2点灯パターンの連続使用回数をカウントする第2カウント手段のカウント値mをゼロクリアする(ステップS1)。
【0049】
次に加熱制御部561は、ヒータ52の点灯要求の有無を監視する(ステップS2)。点灯要求がない間は(ステップS2:No)、第1カウント手段のカウント値n、及び第2カウント手段のカウント値mをゼロクリアし(ステップS3)、点灯要求の監視を続ける。
【0050】
点灯要求あれば(ステップS2:Yes)、点灯パターン切替判定部565は、第1カウント手段のカウント値nがN以下か否かを判定する(ステップS4)。すなわち、第1点灯パターンの連続使用回数が、最大連続使用回数設定値記憶部564に記憶されている第1点灯パターンの最大連続使用回数の設定値である第1設定値N以下か否かを判定する。点灯パターン切替判定部565は判定結果を加熱制御部561に通知する。
【0051】
第1カウント手段のカウント値nが第1設定値N以下であれば(ステップS4:Yes)、加熱制御部561は、点灯パターン記憶部562に記憶されている第1点灯パターンによりヒータを点灯制御し(ステップS5)、点灯制御が終了したら、第1カウント手段のカウント値nを1インクリメントし(ステップS6)、ステップS2に戻る。
【0052】
第1カウント手段のカウント値nが第1設定値Nを超えていた場合は、加熱制御部561は、点灯パターン記憶部562に記憶されている第2点灯パターンによりヒータを点灯制御し(ステップS7)、点灯制御が終了したら、第2カウント手段のカウント値mを1インクリメントする(ステップS8)。そして、第2カウント手段のカウント値mがM以下か否かを判定する(ステップS9)。すなわち、第2点灯パターンの連続使用回数が、最大連続使用回数設定値記憶部564に記憶されている第2点灯パターンの最大連続使用回数の設定値である第2設定値M以下か否かを判定する。
【0053】
第2カウント手段のカウント値mが第2設定値M以下であれば(ステップS9:Yes)、そのままステップS2に戻る。また、第2カウント手段のカウント値mが第2設定値Mを超えていた場合は(ステップS9:No)、第1カウント手段のカウント値n、及び第2カウント手段のカウント値mをゼロクリアし(ステップS10)、ステップS2に戻る。
【0054】
以上のように、本発明の第1の実施形態に係るヒータ制御装置、及びその装置により実行されるヒータ制御方法によれば、偶数次の高調波電流の抑制に有利であり、奇数次の高調波電流の抑制に不利な点灯パターンと、奇数次の高調波電流の抑制に有利であり、偶数次の高調波電流の抑制に不利な点灯パターンのそれぞれの連続使用回数を予め設定した最大値以下に制限している。このため、奇数次の高調波電流が多くなるタイミングと偶数次の高調波電流が多くなるタイミングとが分散されることで、交流電圧の4半波程度の短い制御周期でも電力応答性を悪化させることなく、高調波電流規制を満たすことができる。
【0055】
〈第2の実施形態に係るヒータ制御装置〉
次に本発明の第2の実施形態に係るヒータ制御装置ついて説明する。
図8は、本発明の第2の実施形態に係るヒータ制御装置である加熱制御装置60の要部構成を示すブロック図である。この図において、図2(第1の実施形態に係るヒータ制御装置)と同一又は対応する部分については、図2と同一の参照符号が付されており、それらの部分については、説明を省略又は簡略化する。
【0056】
図8に示されているように、本実施形態に係るヒータ制御装置である加熱制御装置60における制御部56が線速設定値記憶部566を備えていることが第1の実施形態に係る加熱制御装置60との構成上の主な相違である。
【0057】
線速設定値記憶部566は、定着装置50によりトナー像が定着される記録材の線速の設定値を保持する。線速の値は、例えば給紙トレイ30から搬送される記録材の種類(普通紙、厚紙、薄紙等)に応じて低線速、中線速、高線速が設定される。また、最大連続使用回数設定値記憶部564には、記録材の低線速、中線速、高線速のそれぞれに対する最大連続使用回数の設定値が記憶されている。本実施形態では、第1点灯パターンの最大連続使用回数の第1設定値Nとして、低線速用の第1設定値N、中線速用の第1設定値N、高線速用の第1設定値Nが、第2点灯パターンの最大連続使用回数の第2設定値Mとして、低線速用の第2設定値M、中線速用の第2設定値M、高線速用の第2設定値Mが記憶されている。
【0058】
〈第2の実施形態に係るヒータ制御方法〉
次に本実施形態に係るヒータ制御方法について説明する。本実施形態に係るヒータ制御装置のヒータ点灯制御手順も基本的には第1の実施形態に係るヒータ制御装置のヒータ点灯制御手順と同じである。すなわち、偶数次の高調波電流の抑制に有利であり、奇数次の高調波電流の抑制に不利な点灯パターンと、奇数次の高調波電流の抑制に有利であり、偶数次の高調波電流の抑制に不利な点灯パターンのそれぞれの連続使用回数を予め設定した最大値以下に制限している。
【0059】
第1の実施形態に係るヒータ制御方法との主な相違点は、本実施形態では、各点灯パターンの最大連続使用回数の設定値が定着装置50における記録材の線速に応じて異なることである。以下、図9に示されているフローチャートを用いて説明する。
【0060】
この図において、ステップS101,S102,S103は、それぞれ図7におけるステップS1,S2,S3と同じであるから、説明を省略する。ステップS104では、加熱制御部561は、線速設定値記憶部566の設定値に基づき、定着装置50における記録材の線速が低線速か否かを判定する(ステップS104)。
【0061】
低線速であった場合は(ステップS104:Yes)、加熱制御部561は、第1点灯パターンの最大連続使用回数の第1設定値Nとして、線速設定値記憶部566から低線速用の第1設定値Nを選択し、第2点灯パターンの最大連続使用回数の第2設定値Mとして低線速用の第2設定値Mを選択する(ステップS105)。
【0062】
低線速でなかった場合は(ステップS104:No)、加熱制御部561は、中線速であるか否かを判定する(ステップS106)。中線速であった場合は(ステップS106:Yes)、加熱制御部561は、第1点灯パターンの最大連続使用回数の第1設定値Nとして、線速設定値記憶部566から中線速用の第1設定値Nを選択し、第2点灯パターンの最大連続使用回数の第2設定値Mとして中線速用の第2設定値Mを選択する(ステップS105)。
【0063】
中線速でなかった場合は(ステップS106:No)、加熱制御部561は、加熱制御部561は、第1点灯パターンの最大連続使用回数の第1設定値Nとして、線速設定値記憶部566から高線速用の第1設定値Nを選択し、第2点灯パターンの最大連続使用回数の第2設定値Mとして高線速用の第2設定値Mを選択する(ステップS105)。
【0064】
加熱制御部561がステップS105,S107,S108のいずれかを実行した後、点灯パターン切替判定部565は、第1カウント手段のカウント値nが第1設定値N以下か否かを判定する(ステップS109)。この処理は図7におけるステップS4と同じである。
【0065】
ここで、第1点灯パターンの最大連続使用回数の低速用、中速用、高速用の第1設定値N、N、Nの関係、及び第2点灯パターンの最大連続使用回数の低線速、中線速、高線速用の第2設定値M、M、Mの関係について説明する。定着装置50における記録材の線速が遅い程、低い点灯Duty比の点灯パターンが使用されるため、第2点灯パターンで点灯制御を行うと、奇数次の高調波がより多くなりやすい。そこで、線速が遅い程、第2点灯パターンの連続使用回数が少なくなり、第1点灯パターンの連続使用回数が多くなるように、それぞれの初期設定値を決めておく。すなわち、「N>N>N」、「M<M<M」の関係になる。
【0066】
図9の説明に戻る。第1カウント手段のカウント値nが第1設定値N(N又はN又はN)以下であれば(ステップS109:Yes)、加熱制御部561は、点灯パターン記憶部562に記憶されている第1点灯パターンによりヒータを点灯制御し(ステップS110)、点灯制御が終了したら、第1カウント手段のカウント値nを1インクリメントし(ステップS111)、ステップS102に戻る。
【0067】
第1カウント手段のカウント値nが第1設定値Nを超えていた場合は、加熱制御部561は、点灯パターン記憶部562に記憶されている第2点灯パターンによりヒータを点灯制御し(ステップS112)、点灯制御が終了したら、第2カウント手段のカウント値mを1インクリメントする(ステップS113)。そして、第2カウント手段のカウント値mがM(M又はM又はM)以下か否かを判定する(ステップS114)。すなわち、第2点灯パターンの連続使用回数が、最大連続使用回数設定値記憶部564に記憶されている第2点灯パターンによる連続点灯制御回数の設定値である第2設定値M以下か否かを判定する。
【0068】
第2カウント手段のカウント値mが第2設定値M以下であれば(ステップS114:Yes)、そのままステップS102に戻る。また、第2カウント手段のカウント値mが第2設定値Mを超えていいた場合は(ステップS114:No)、第1カウント手段のカウント値n、及び第2カウント手段のカウント値mをゼロクリアし(ステップS115)、ステップS102に戻る。
【0069】
以上のように、本発明の第2の実施形態に係るヒータ制御装置、及びその装置により実行されるヒータ制御方法によれば、第1の実施形態に係るヒータ制御装置、及びその装置により実行されるヒータ制御方法が有する効果に加えて、定着装置50における記録材の線速に応じて、点灯パターンの選択が可能になるため、低い点灯Duty比の第2点灯パターンの使用に起因する奇数次高調波の増加を抑えることができるという効果を有する。
【0070】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるから、当業者であれば、開示した内容から様々な変形例を実現することが可能である。そのような変形例も、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【0071】
以下、変形例を挙げる。
(1)図7に示されているフローチャートにおいて、奇数次の高調波電流の抑制に有利であり、偶数次の高調波電流の抑制に不利な点灯パターンとして、第2点灯パターンの代わりに第3点灯パターン又は第4点灯パターンを用いる。
(2)図7に示されているフローにおいて、第1点灯パターンと切り替える点灯パターンを第2乃至第4点灯パターンのいずれか1つに固定するのではなく、2つ以上を順番に用いる。
(3)図9に示されているフローチャートにおいて、線速を2つ、又は4つ以上とする。
(4)図7に示されているフロー、及び図9に示されているフローにおいて、第2点灯パターンと第3点灯パターンの切替え、第3点灯パターンと第4点灯パターンの切替えを行う。
【符号の説明】
【0072】
10:スキャナ部
20:エンジン部
30:給紙トレイ
40:搬送路
50:定着装置
51a:定着ローラ
51b:加圧ローラ
52:ヒータ
53:交流電源
54:トライアック
55:温度センサ
56:制御部
57:ゼロクロス検知部
60:加熱制御装置
100:画像形成装置
561:加熱制御部
562:点灯パターン記憶部
563:連続使用回数カウンタ
564:最大連続使用回数設定値記憶部
565:点灯パターン切替判定部
566:線速設定値記憶部
5621:第1点灯パターンテーブル
5622:第2点灯パターンテーブル
5623:第3点灯パターンテーブル
5624:第4点灯パターンテーブル
【先行技術文献】
【特許文献】
【0073】
【文献】特開2012-132946号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9