(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】液体吐出装置および廃液異常判定方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/17 20060101AFI20240228BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
B41J2/17 203
B41J2/01 401
(21)【出願番号】P 2020051808
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】大村 裕二
【審査官】佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-203065(JP,A)
【文献】特開2011-025599(JP,A)
【文献】特開2014-024259(JP,A)
【文献】特開2015-157427(JP,A)
【文献】特開2015-013374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/17
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体に対してノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記ノズルから吐出される液体を廃液として複数の廃液配管を通して収容する収容容器と、
前記収容容器に収容される廃液量を検出する廃液量検出部と、
前記ノズルからの液体の吐出状態に基づいて前記収容容器に収容される廃液量を算出する廃液量算出部と、
前記廃液量検出部により検出された検出廃液量が増加する時期と前記検出廃液量が増加する時期における前記検出廃液量と前記検出廃液量が増加する時期における前記廃液量算出部により算出された算出廃液量とに基づいて異常である前記廃液配管を特定する廃液異常判定部と、
を備える液体吐出装置。
【請求項2】
複数の前記廃液配管に廃液が通過する時期を変更する、
請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
複数の前記廃液配管を通過する廃液量を変更する、
請求項1または請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
複数の前記廃液配管の長さを相違させる、
請求項2または請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
複数の前記廃液配管の角度を相違させる、
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記廃液異常判定部の判定結果を表示する表示部を有し、前記廃液異常判定部は、前記検出廃液量と前記算出廃液量とを比較し、前記検出廃液量と前記算出廃液量との偏差が予め設定された基準値を超えると前記表示部に判定結果を表示する、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記廃液異常判定部は、前記検出廃液量が予め設定された上限値を超えると前記表示部に判定結果を表示する、
請求項6に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記廃液異常判定部は、前記検出廃液量が前記算出廃液量よりも予め設定された上限基準値より多いときに前記表示部に前記液体吐出ヘッドのメンテナンスが必要であることを表示する、
請求項6または請求項7に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記廃液異常判定部は、前記検出廃液量が前記算出廃液量よりも予め設定された下限基準値より少ないときに前記表示部に前記廃液配管のメンテナンスが必要であることを表示する、
請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記廃液量算出部は、前記検出廃液量が予め設定された上限値に到達すると、前記算出廃液量を求める演算式を補正する、
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記ノズルから吐出する液体は、固形分が15%以上含むインクである、
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
液体吐出ヘッドのノズルから吐出される
液体を廃液として複数の廃液配管を通して収容容器に収容するステップと、
前記収容容器に収容される第1廃液量を検出するステップと、
前記ノズルからの
液体の吐出状態に基づいて
前記収容容器に収容される第2廃液量を算出するステップと、
前記第1廃液量が増加する時期と前記第1廃液量が増加する時期における前記第1廃液量と
前記第1廃液量が増加する時期における前記第2廃液量と基づいて異常である
前記廃液配管を特定するステップと、
を有する廃液異常判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置および廃液異常判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を記録媒体等の対象物に吐出するヘッドを有する液体吐出装置において、ノズルの目詰まりを解消するためのクリーニング装置が設けられている。クリーニング装置が作動すると、ノズルからヘッドキャップにインクが吐出され、ヘッドキャップ内に溜まったインクの廃液が廃液配管を通して廃液タンクに排出される。
【0003】
従来、クリーニング動作により廃液タンクに排出される廃液量を算出し、廃液タンクの廃液量が所定量に到達すると、廃液タンクが満タンであるというメッセージを表示したり、メンテナンス時期を示すメッセージを表示したりしている。しかし、クリーニング動作により発生したインクの廃液が廃液配管を通して廃液タンクに排出するとき、固着したインクや異物などが廃液配管に詰まって閉塞してしまうことがある。この場合、クリーニング動作により発生したインクの廃液が廃液配管により廃タンクに排出することができずに溢れてしまう。すると、印刷物や装置などを汚したり、その復旧作業のために装置を停止して清掃などをしたりする必要が発生し、装置の停止時間が長くなり、稼働率が低下してしまう。このような課題を解消するものとして、特許文献1に記載されたものがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の技術は、廃液配管を通過した廃液量を検知し、検知した廃液量と吐出された廃液量とを比較演算することで、廃液配管からの廃インクの漏れを判断するものである。ところが、液体吐出装置は、複数の液体吐出ヘッドおよび廃液配管を有するものが多い。この場合、従来の技術では、廃インクの漏れが発生した廃液配管を特定することは困難である。そして、廃インクの漏れが発生した廃液配管を特定するために、全ての廃液配管を確認する必要があり、作業者によるメンテナンス工数が増加したり、装置の停止時間が長くなって稼働率が低下したりしまうという課題がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、メンテナンス工数の削減を図ると共に装置の停止による稼働率の低下を抑制する液体吐出装置および廃液異常判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、被記録媒体に対してノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記ノズルから吐出される液体を廃液として複数の廃液配管を通して収容する収容容器と、前記収容容器に収容される廃液量を検出する廃液量検出部と、前記ノズルからの液体の吐出状態に基づいて前記収容容器に収容される廃液量を算出する廃液量算出部と、前記廃液量検出部により検出された検出廃液量が増加する時期と前記検出廃液量が増加する時期における前記検出廃液量と前記検出廃液量が増加する時期における前記廃液量算出部により算出された算出廃液量とに基づいて異常である前記廃液配管を特定する廃液異常判定部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、メンテナンス工数の削減を図ることができると共に装置の停止による稼働率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る液体吐出装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、時間の経過による廃液量の変動を表す一例を示すグラフである。
【
図3】
図3は、インク吐出異常による廃液異常を説明するためのグラフである。
【
図4】
図4は、配管漏洩による廃液異常を説明するためのグラフである。
【
図5】
図5は、配管詰まりによる廃液異常を説明するためのグラフである。
【
図6】
図6は、配管詰まりによる廃液異常を説明するためのグラフである。
【
図7】
図7は、タンク漏洩による廃液異常を説明するためのグラフである。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係る液体吐出装置の構成の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、時間の経過による廃液量の変動を表す一例を示すグラフである。
【
図10】
図10は、第2実施形態に係る液体吐出装置の変形例の構成の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、第3実施形態に係る液体吐出装置の構成の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、時間の経過による廃液量の変動を表す一例を示すグラフである。
【
図13】
図13は、第4実施形態に係る液体吐出装置の構成の一例を示す図である。
【
図14】
図14は、時間の経過による廃液量の変動を表す一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面を参照しながら、本発明に係る液体吐出装置および廃液異常判定方法の実施形態を詳細に説明する。また、以下の実施形態によって本発明が限定されるものではなく、以下の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想到できるもの、実質的に同一のもの、およびいわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、以下の実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換、変更および組み合わせを行うことができる。
【0010】
以下では、本発明が適用される液体吐出装置の一例として、液体吐出装置の一態様である画像形成装置を例に挙げて説明するが、これに限らない。実施形態に係る技術は、立体造形装置、処理液塗布装置、噴射造粒装置など、画像形成装置の他の液体吐出装置にも適用可能である。
【0011】
本実施形態では、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の4色の液体吐出ヘッドを有する画像形成装置を例として説明するが、本発明を適用できる画像形成装置はこれらの液体吐出ヘッドを有するものに限定されない。すなわち、本発明を用いることができる画像形成装置は、グリーン(G)、レッド(R)、ライトシアン(LC)及び/又はその他の色に対応する液体吐出ヘッドをさらに有するものであってもよいし、ブラック(K)のみの液体吐出ヘッドを有するものであってもよい。ここで、以下の説明において、添え字K、C、M及びYを付与された記号は、それぞれ、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローに対応するものとする。なお、以下の説明において、液体吐出ヘッドは、ヘッド、吐出ヘッド、記録ヘッド又はインクヘッドと記載されることもある。
【0012】
また、本実施形態では、記録媒体として、ロール紙を用いる場合を例として説明するが、本発明に係る画像形成装置が画像を形成することができる記録媒体は、ロール紙に限定されない。すなわち、本発明に係る画像形成装置が画像を形成することができる記録媒体は、所定の箇所で折られて給紙部に積載されたZ紙でもよいし、カット紙でもよい。また、本発明に係る画像形成装置を用いて画像を形成することができる記録媒体は、普通紙、上質紙、薄紙、厚紙、記録紙及びロール紙、並びに、OHPシート、合成樹脂フィルム、金属薄膜及びその他表面にインク等で画像を形成することができるものを含む。ここで、ロール紙とは、切断可能なミシン目が所定間隔で形成された連続紙(連帳紙、連続帳票)である。また、ロール紙におけるページ(頁)とは、例えば所定間隔のミシン目で挟まれる領域とする。
【0013】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る液体吐出装置の構成の一例を示す図、
図2は、時間の経過による廃液量の変動を表す一例を示すグラフである。
【0014】
第1実施形態において、
図1に示すように、液体吐出装置10は、液体吐出ヘッド11と、廃液配管12と、廃液タンク(収容容器)13と、廃液量検出部14と、吐出制御部15と、廃液量算出部16と、廃液異常判定部17と、表示部18とを有する。
【0015】
液体吐出ヘッド11は、図示しないノズルを有し、ノズルは、被記録媒体に対してインク(液体)を吐出する。液体吐出ヘッド11は、インク供給管21が連結され、インク供給管21からインクが供給される。ここで、インクは、固形分が15%以上含むものである。液体吐出ヘッド11は、下方に対向してヘッドキャップ22を有する。液体吐出ヘッド11は、クリーニング動作により、廃液として廃インクをヘッドキャップ22に吐出する。ヘッドキャップ22は、廃液配管12を介して廃液タンク13に連結される。廃液タンク13は、ノズルからヘッドキャップ22に吐出される廃インクを廃液配管12を通して収容する。
【0016】
廃液量検出部14は、廃液タンク13に収容される廃インクの廃液量(検出廃液量)を検出する。廃液量検出部14は、例えば、廃液タンク13に収容された廃インクの液面の高さを検出する高さセンサや廃液タンク13に収容された廃インクの重量を検出する重量センサなどが適用される。但し、廃液量検出部14は、このようなセンサに限定されるものではない。吐出制御部15は、ノズルのクリーニング動作において、ヘッドキャップ22に吐出して廃インクとなるインクの吐出量を制御する。廃液量算出部16は、ノズルから廃インクとなるインクの吐出状態、つまり、吐出制御部15が設定したノズルのクリーニング動作における廃インクとなるインクの吐出量に基づいて廃液タンク13に収容される廃液量(算出廃液量)を算出(推定)する。廃液異常判定部17は、廃液量検出部14が検出した検出廃液量と廃液量算出部16が算出した算出廃液量に基づいて廃液異常を判定する。廃液異常判定部17は、判定結果を表示部18に送信し、表示部18は、廃液異常判定部17の判定結果を表示する。廃液異常判定部17は、検出廃液量が予め設定された上限値(満タン)を超えると、廃液タンク13が満タンであることを表示部18に表示する。
【0017】
なお、吐出制御部15と廃液量算出部16と廃液異常判定部17は、図示しない制御装置の一部である。制御装置は、液体吐出ヘッド11だけでなく、液体吐出装置10の全体を制御する。
【0018】
制御装置は、CPU、メモリ、I/Fなどを有する。CPU、メモリ73、I/Fは、バスを介して相互に通信可能に接続されている。Central Processing Unit(CPU)は、画像形成装置の動作を統括的に制御する。CPUは、例えば、メモリに記憶されている制御プログラムを実行することにより、画像形成装置の動作を制御する。
【0019】
メモリは、プログラム等の各種のデータを記憶する不揮発性のメモリと、CPUが実行する各種の演算の処理の作業領域(ワークエリア)として機能する揮発性のメモリとを含む。メモリとしては、Read Only Memory(ROM)、Random Access Memory(RAM)、Hard Disk Drive(HDD)、Solid State Drive(SSD)等が利用可能である。メモリには、画像形成装置を制御するための制御プログラムが記憶される。
【0020】
図2に示すように、0から時間t1までの実施時間Taの間に、ノズルのクリーニング動作が実行され、時間t1から時間t2までの時間Tbの間に、印刷が実行される。時間t2以降も同様に、ノズルのクリーニング動作(実施時間Ta)と、印刷(時間Tb)が交互に実行される。
図2にて、算出廃液量Q1を実線で表し、検出廃液量Q2を点線で表す。また、算出廃液量Q1に対して設定された上限値Q1Uと下限値Q1Lを一転鎖線で表す。上限値Q1Uと下限値Q1Lは、算出廃液量Q1に対する適正範囲であり、例えば、実験などにより設定されるものである。
【0021】
図1および
図2に示すように、ノズルのクリーニング動作が実行されると、ノズルがインクを廃インクとしてヘッドキャップ22に吐出することから、廃液配管12を通して廃液タンク13に収容される廃液量が増加する。一方、印刷時が実行されると、ノズルがインクを被記録媒体に吐出することから、廃液配管12を通して廃液タンク13に収容される廃液量は増加せず、一定量に維持される。算出廃液量Q1は、ノズルのクリーニング動作に伴って発生する廃インク量に基づいて算出されるものであることから、ノズルのクリーニング動作の実施時間Taに増加する。一方、検出廃液量Q2は、廃液量検出部14が検出した廃液タンク13に収容された廃インクの廃液量である。ノズルからのインクの吐出状態、廃液配管12による廃インクの輸送状態、廃液タンク13による廃インクの収容状態などが正常であれば、検出廃液量Q2も、算出廃液量Q1と同様に、ノズルのクリーニング動作の実施時間Taに増加する。
【0022】
しかし、ノズルからのインクの吐出状態、廃液配管12による廃インクの輸送状態、廃液タンク13による廃インクの収容状態などに異常が発生した場合、検出廃液量Q2と算出廃液量Q1との間に大きな偏差が発生する。例えば、時間t4から時間t5の間におけるクリーニング動作の実施時間Taに、算出廃液量Q1が増加しているにも拘らず、検出廃液量Q2が増加せずに一定であると検出される。このとき、検出廃液量Q2が算出廃液量Q1の下限値Q1Lよりも低くなる。つまり、検出廃液量Q2と算出廃液量Q1との偏差が予め設定された基準値を超える。この基準値は、算出廃液量Q1と上限値Q1Uとの差分、または、算出廃液量Q1と下限値Q1Lとの差分である。
【0023】
廃液異常判定部17は、検出廃液量Q2と算出廃液量Q1との偏差が基準値を超えると、表示部18に判定結果を表示すると共に、作業者に対してメンテナンスの実施などを促す表示を行う。なお、表示部18は、例えば、ディスプレイ、スピーカ、多色(LED)ランプなどである。
【0024】
検出廃液量Q2と算出廃液量Q1との大小関係、検出廃液量Q2と算出廃液量Q1との偏差の大きさなどにより廃液異常の原因やメンテナンスする場所などを特定することができる。
図3は、インク吐出異常による廃液異常を説明するためのグラフ、
図4は、配管漏洩による廃液異常を説明するためのグラフ、
図5は、配管詰まりによる廃液異常を説明するためのグラフ、
図6は、配管詰まりによる廃液異常を説明するためのグラフ、
図7は、タンク漏洩による廃液異常を説明するためのグラフである。ここで、縦軸は、単位時間当たりの廃液量(廃液量増減加速度)である。
【0025】
図3に示すように、時間t1にて、ノズルのクリーニング動作が開始されることで、単位時間当たりの算出廃液量Q1が増加し、時間t2にて、ノズルのクリーニング動作が終了することで、単位時間当たりの算出廃液量Q1が低下する。一方、時間t1にて、単位時間当たりの検出廃液量Q2が増加し、時間t1より後の時間t3にて、単位時間当たりの検出廃液量Q2が低下する。ここで、算出廃液量Q1に対して検出廃液量Q2が多く、且つ、低下時期が遅れる。この場合、実際の廃インクの廃液量が多く、且つ、廃液時間が長いことから、液体吐出ヘッド11からインクが漏れている可能性が高いことがわかる。そのため、廃液異常判定部17は、液体吐出ヘッド11のメンテナンスの必要性を表示部18に表示する。
【0026】
また、
図4に示すように、時間t1にて、単位時間当たりの検出廃液量Q2が増加し、時間t1より前の時間t3にて、単位時間当たりの検出廃液量Q2が低下する。ここで、算出廃液量Q1に対して検出廃液量Q2が少なく、且つ、低下時期が早まる。この場合、廃液配管12から廃液タンク13に収容される廃インクの廃液量が少なく、且つ、廃液時間が短いことから、廃液配管12からインクが漏れている可能性が高いことがわかる。そのため、廃液異常判定部17は、廃液配管12のメンテナンスの必要性を表示部18に表示する。
【0027】
また、
図5に示すように、時間t1にて、単位時間当たりの検出廃液量Q2が増加し、時間t1より後の時間t3にて、単位時間当たりの検出廃液量Q2が低下する。ここで、算出廃液量Q1に対する検出廃液量Q2がほぼ同じで、且つ、低下時期が遅れる。この場合、廃液配管12から廃液タンク13に収容される廃インクの廃液量は変わらず、且つ、廃液時間が長い(廃液増減加速度が遅い)ことから、廃液配管12の一部が目詰まりしている可能性が高いことがわかる。そのため、廃液異常判定部17は、廃液配管12のメンテナンスの必要性を表示部18に表示する。
【0028】
また、
図6に示すように、時間t1にて、単位時間当たりの検出廃液量Q2が若干増加するものの、ほとんど変化とない。ここで、算出廃液量Q1に対して検出廃液量Q2がほとんどなく、且つ、増加しない。この場合、廃液配管12から廃液タンク13に収容される廃インクの廃液量がほとんど少なく、且つ、増加しないことから、廃液配管12が完全に目詰まりしているか、または、廃液がほとんど漏れている可能性が高いことがわかる。そのため、廃液異常判定部17は、廃液配管12のメンテナンスの必要性を表示部18に表示する。
【0029】
また、
図7に示すように、時間t1にて、単位時間当たりの検出廃液量Q2が増加し、時間t2にて、単位時間当たりの検出廃液量Q2が低下する。ここで、算出廃液量Q1に対して検出廃液量Q2が少ない。この場合、廃液配管12から廃液タンク13に収容される廃インクの廃液量が少なく、且つ、廃インクの廃液量が減少していることから、廃液タンク13から廃液が漏れている可能性が高いことがわかる。そのため、廃液異常判定部17は、廃液タンク13のメンテナンスの必要性を表示部18に表示する。
【0030】
[第2実施形態]
図8は、第2実施形態に係る液体吐出装置の構成の一例を示す図、
図9は、時間の経過による廃液量の変動を表す一例を示すグラフである。なお、上述した第1実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0031】
第2実施形態において、
図8に示すように、液体吐出装置10Aは、液体吐出ヘッド11A,11Bと、廃液配管12A,12Bと、廃液タンク13と、廃液量検出部14と、吐出制御部15と、廃液量算出部16と、廃液異常判定部17と、表示部18とを有する。第2実施形態では、2色刷りが可能な画像形成装置である。
【0032】
液体吐出ヘッド11A,11Bは、それぞれ図示しないノズルを有し、各ノズルは、被記録媒体に対して異なる色のインク(液体)を吐出する。液体吐出ヘッド11A,11Bは、インク供給管21A,21Bが連結される。液体吐出ヘッド11A,11Bは、下方に対向してヘッドキャップ22A,22Bを有する。液体吐出ヘッド11A,11Bは、クリーニング動作により、廃液として廃インクをヘッドキャップ22A,22Bに吐出する。ヘッドキャップ22A,22Bは、廃液配管12A,12Bを介して廃液タンク13に連結される。廃液タンク13は、ノズルからヘッドキャップ22A,22Bに吐出される廃インクを廃液配管12A,12Bを通して収容する。
【0033】
廃液量検出部14は、廃液タンク13に収容される廃インクの廃液量(検出廃液量)を検出する。吐出制御部15は、ノズルのクリーニング動作において、ヘッドキャップ22A,22Bに吐出して廃インクとなるインクの吐出量を制御する。廃液量算出部16は、吐出制御部15が設定したノズルのクリーニング動作における廃インクとなるインクの吐出量に基づいて廃液タンク13に収容される廃液量(算出廃液量)を算出する。廃液異常判定部17は、廃液量検出部14が検出した検出廃液量と廃液量算出部16が算出した算出廃液量に基づいて廃液異常を判定する。廃液異常判定部17は、判定結果を表示部18に送信し、表示部18は、廃液異常判定部17の判定結果を表示する。
【0034】
図8および
図9に示すように、ノズルのクリーニング動作が実行されると、ノズルがインクを廃インクとしてヘッドキャップ22A,22Bに吐出することから、廃液配管12A,12Bを通して廃液タンク13に収容される廃液量が増加する。一方、印刷時が実行されると、ノズルがインクを被記録媒体に吐出することから、廃液配管12A,12Bを通して廃液タンク13に収容される廃液量は増加せず、一定量が維持される。算出廃液量Q1は、ノズルのクリーニング動作の実施時間Ta1,Ta2に増加する。一方、検出廃液量Q2は、ノズルからのインクの吐出状態、廃液配管12による廃インクの輸送状態、廃液タンク13による廃インクの収容状態などが正常であれば、算出廃液量Q1と同様に、ノズルのクリーニング動作の実施時間Ta1,Ta2に増加する。
【0035】
ここで、廃液異常判定部17は、廃液量検出部13により検出された検出廃液量Q2が増加する時期と検出廃液量Q2が増加する時期における検出廃液量Q2と検出廃液量Q2が増加する時期における算出廃液量Q1とに基づいて異常である廃液配管12A,12Bを特定する。廃液配管12A,12Bに廃液が通過する時期を変更可能として廃液異常を判定する。
【0036】
すなわち、液体吐出ヘッド11A,11Bから廃液配管12A,12Bを介して廃液タンク13に収容される廃インクの到達時期をずらす。廃液タンク13への廃インクの到達時期をずらす方法としては、クリーニング動作時に液体吐出ヘッド11A,11Bがヘッドキャップ22a,22bにインクを吐出するタイミングをずらす。インク廃液を廃液タンク13に排出するためのポンプや廃液配管12A,12Bごとに送液のタイミングを変えられる電磁弁などが搭載されている場合、このポンプや電磁弁などを制御することで、廃液量検出部14が検出するタイミングをずらす。
【0037】
本実施形態では、ノズルのクリーニング動作の実施時間Ta1では、液体吐出ヘッド11Aから廃液配管12Aを介して廃液タンク13に廃インクが排出するように設定し、ノズルのクリーニング動作の実施時間Ta2では、液体吐出ヘッド11Bから廃液配管12Bを介して廃液タンク13に廃インクが排出するように設定する。そして、時間t3から時間t4の間におけるクリーニング動作の実施時間Ta2に、算出廃液量Q1が増加しているにも拘らず、検出廃液量Q2が増加せずに一定であると検出する。このとき、検出廃液量Q2が算出廃液量Q1の下限値Q1Lよりも低くなる。つまり、検出廃液量Q2と算出廃液量Q1との偏差が予め設定された基準値を超える。廃液異常判定部17は、検出廃液量Q2と算出廃液量Q1との偏差が基準値を超えると、表示部18に判定結果を表示すると共に、作業者に対してメンテナンスの実施などを促す表示を行う。この場合、ノズルのクリーニング動作の実施時間Ta2にて、液体吐出ヘッド11Bから廃液配管12Bを介して廃液タンク13に廃インクの排出系統に異常があることが特定される。
【0038】
そのため、作業者は、廃液異常が発生した廃液配管12A,12Bを見付けるために、全ての廃液配管12A,12Bを確認する必要はなく、廃液配管12Bに廃液異常があることを即座に把握することができ、早期に廃液配管12Bのメンテナンスを開始することができる。廃液異常が発生した廃液配管12A,12Bを探す工数が不要となるため、メンテナンス工数や装置ダウンタイムを低減することができる。なお、廃液配管12Aに異常が発生した場合も同様である。ここで、算出廃液量Q1に対する検出廃液量Q2の増減量や増減時期などを比較することで、第1実施形態と同様に、廃液異常の理由や場所を特定することができる。
【0039】
但し、液体吐出装置10Aで使用するインクの粘度が変わったなどの理由により、廃液量検出部14が検出するタイミングのずれ量が変化することが考えられる。タイミングのずれが小さく(極端な例としては、全くずれがなく)なり、異常の発生した廃液配管12A,12Bを特定することが不可能になったり、異常を判定する精度が低下したりすることも考えられる。この場合、算出廃液量Q1が増加するタイミングを変更とすることで対応することができる。算出廃液量Q1が増加するタイミングを変更とする方法は、例えば、作業者による入力装置を設け、クリーニング時に液体吐出ヘッド11A,11Bがヘッドキャップ22A,22Bにインクを吐出するタイミングを作業者が変更可能とすればよい。この構成により、使用するインクや環境条件が変わった場合であっても、廃液異常が発生した廃液配管12A,12Bを精度よく特定することができる。
【0040】
なお、上述した説明では、廃液量検出部14を、廃液タンク13に収容された廃インクの液面の高さを検出する高さセンサや廃液タンク13に収容された廃インクの重量を検出する重量センサとしたが、この構成に限定されるものではない。
図10は、第2実施形態に係る液体吐出装置の変形例の構成の一例を示す図である。
【0041】
第2実施形態の変形例において、
図10に示すように、液体吐出装置10Bは、液体吐出ヘッド11A,11Bと、廃液配管12A,12Bと、廃液タンク13と、廃液量検出部32と、吐出制御部15と、廃液量算出部16と、廃液異常判定部17と、表示部18とを有する。
【0042】
液体吐出ヘッド11A,11Bは、ヘッドキャップ22A,22Bに廃液配管12A,12Bが連結される。廃液配管12A,12Bは、下端部が合流廃液配管31に連結され、合流廃液配管31が廃液タンク13に連結される。廃液タンク13は、ノズルからヘッドキャップ22A,22Bに吐出されるインクを廃インク(廃液)として廃液配管12A,12Bおよび合流廃液配管31を通して収容する。
【0043】
廃液量検出部32は、合流廃液配管31を流れて廃液タンク13に収容される廃インクの廃液量(検出廃液量)を検出する。廃液量検出部32は、廃液配管12A,12B内の液流速を検出し、液流速を液流量に換算し、さらに液流量に基づいて演算により廃液量を算出する。廃液異常判定部17は、廃液量検出部32が検出した検出廃液量と廃液量算出部16が算出した算出廃液量に基づいて廃液異常を判定する。廃液異常判定部17は、判定結果を表示部18に送信し、表示部18は、廃液異常判定部17の判定結果を表示する。
【0044】
[第3実施形態]
図11は、第3実施形態に係る液体吐出装置の構成の一例を示す図、
図12は、時間の経過による廃液量の変動を表す一例を示すグラフである。なお、上述した第1実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0045】
第3実施形態において、
図11に示すように、液体吐出装置10Cは、液体吐出ヘッド11A,11B,11C,11D,11Eと、廃液配管12A,12B,12C,12D,12Eと、廃液タンク13と、廃液量検出部14と、吐出制御部15と、廃液量算出部16と、廃液異常判定部17と、表示部18とを有する。第3実施形態では、5色刷りが可能な画像形成装置である。
【0046】
液体吐出ヘッド11A,11B,11C,11D,11Eは、それぞれ図示しないノズルを有し、各ノズルは、被記録媒体に対して異なる色のインク(液体)を吐出する。液体吐出ヘッド11A,11B,11C,11D,11Eは、インク供給管21A,21B,21C,21D,21Eが連結される。液体吐出ヘッド11A,11B,11C,11D,11Eは、下方に対向してヘッドキャップ22A,22B,22C,22D,22Eを有する。液体吐出ヘッド11A,11B,11C,11D,11Eは、クリーニング動作により、廃液として廃インクをヘッドキャップ22A,22B,22C,22D,22Eに吐出する。ヘッドキャップ22A,22B,22C,22D,22Eは、廃液配管12A,12B,12C,12D,12Eを介して廃液タンク13に連結される。廃液タンク13は、ノズルからヘッドキャップ22A,22B,22C,22D,22Eに吐出される廃インクを廃液配管12A,12B,12C,12D,12Eを通して収容する。
【0047】
廃液量検出部14は、廃液タンク13に収容される廃インクの廃液量(検出廃液量)を検出する。吐出制御部15は、ノズルのクリーニング動作において、ヘッドキャップ22A,22B,22C,22D,22Eに吐出して廃インクとなるインクの吐出量を制御する。廃液量算出部16は、吐出制御部15が設定したノズルのクリーニング動作における廃インクとなるインクの吐出量に基づいて廃液タンク13に収容される廃液量(算出廃液量)を算出する。廃液異常判定部17は、廃液量検出部14が検出した検出廃液量と廃液量算出部16が算出した算出廃液量に基づいて廃液異常を判定する。廃液異常判定部17は、判定結果を表示部18に送信し、表示部18は、廃液異常判定部17の判定結果を表示する。
【0048】
図11および
図12に示すように、ノズルのクリーニング動作が実行されると、ノズルがインクを廃インクとしてヘッドキャップ22A,22B,22C,22D,22Eに吐出することから、廃液配管12A,12B,12C,12D,12Eを通して廃液タンク13に収容される廃液量が増加する。一方、印刷時が実行されると、ノズルがインクを被記録媒体に吐出することから、廃液配管12A,12B,12C,12D,12Eを通して廃液タンク13に収容される廃液量は増加せず、一定量が維持される。算出廃液量Q1は、ノズルのクリーニング動作の実施時間Ta1,Ta2,Ta3,Ta4,Ta5に増加する。一方、検出廃液量Q2は、ノズルからのインクの吐出状態、廃液配管12による廃インクの輸送状態、廃液タンク13による廃インクの収容状態などが正常であれば、算出廃液量Q1と同様に、ノズルのクリーニング動作の実施時間Ta1,Ta2,Ta3,Ta4,Ta5に増加する。
【0049】
ここで、廃液異常判定部17は、検出廃液量Q2が増加する時期と検出廃液量Q2が増加する時期における検出廃液量Q2と検出廃液量Q2が増加する時期における算出廃液量Q1とに基づいて異常である廃液配管12A,12B,12C,12D,12Eを特定する。廃液配管12A,12B,12C,12D,12Eに廃液が通過する時期または廃液量を変更して廃液異常を判定する。具体的に、複数の廃液配管12A,12B,12C,12D,12Eの長さを相違させたり、傾斜角度を相違させたりする。すると、廃インクが廃液配管12A,12B,12C,12D,12Eを流れる流速が変わるため、廃液タンクに到達するまでの時間に差異が発生し、液体吐出ヘッド11A,11B,11C,11D,11Eから廃液配管12A,12B,12C,12D,12Eを介して廃液タンク13に収容される廃インクの到達時期、つまり、廃液量検出部14による検出時期をずらす。そのため、クリーニング動作のための液体吐出ヘッド11A,11B,11C,11D,11Eからのインク吐出時期をずらす必要がない。
【0050】
本実施形態では、ノズルのクリーニング動作の実施時間Ta1では、液体吐出ヘッド11Aから廃液配管12Aを介して廃液タンク13に廃インクが排出するように設定する。また、ノズルのクリーニング動作の実施時間Ta2では、液体吐出ヘッド11Bから廃液配管12Bを介して廃液タンク13に廃インクが排出するように設定する。ノズルのクリーニング動作の実施時間Ta3では、液体吐出ヘッド11Cから廃液配管12Cを介して廃液タンク13に廃インクが排出するように設定する。ノズルのクリーニング動作の実施時間Ta4では、液体吐出ヘッド11Dから廃液配管12Dを介して廃液タンク13に廃インクが排出するように設定する。ノズルのクリーニング動作の実施時間Ta5では、液体吐出ヘッド11Eから廃液配管12Eを介して廃液タンク13に廃インクが排出するように設定する。
【0051】
そして、時間t5から時間t6の間におけるクリーニング動作の実施時間Ta3に、算出廃液量Q1が増加しているにも拘らず、検出廃液量Q2が増加せずに一定であると検出する。このとき、検出廃液量Q2が算出廃液量Q1の下限値Q1Lよりも低くなる。つまり、検出廃液量Q2と算出廃液量Q1との偏差が予め設定された基準値を超える。廃液異常判定部17は、検出廃液量Q2と算出廃液量Q1との偏差が基準値を超えると、表示部18に判定結果を表示すると共に、作業者に対してメンテナンスの実施などを促す表示を行う。この場合、ノズルのクリーニング動作の実施時間Ta3にて、液体吐出ヘッド11Cから廃液配管12Cを介して廃液タンク13に廃インクの排出系統に異常があることが特定される。
【0052】
そのため、作業者は、廃液異常が発生した廃液配管12A,12B,12C,12D,12Eを見付けるために、全ての廃液配管12A,12B,12C,12D,12Eを確認する必要はなく、廃液配管12Cに廃液異常があることを即座に把握することができ、早期に廃液配管12Cのメンテナンスを開始することができる。廃液異常が発生した廃液配管12A,12B,12C,12D,12Eを探す工数が不要となるため、メンテナンス工数や装置ダウンタイムを低減することができる。なお、他の廃液配管12A,12B,12D,12Eに異常が発生した場合も同様である。ここで、算出廃液量Q1に対する検出廃液量Q2の増減量や増減時期などを比較することで、第1実施形態と同様に、廃液異常の理由や場所を特定することができる。
【0053】
第3実施形態では、5個の液体吐出ヘッド11A,11B,11C,11D,11Eを有する5色刷り可能な画像成形装置であり、5個のヘッドキャップ22A,22B,22C,22D,22Eに吐出された廃インクが各廃液配管12A,12B,12C,12D,12Eを通して廃液タンク13に収容される。しかし、5個の液体吐出ヘッド11A,11B,11C,11D,11Eをアレイ化した構成であることから、実際には、50本の廃液配管12A,12B,12C,12D,12Eがある。クリーニング動作時に、廃液配管12A,12B,12C,12D,12Eから廃液タンク13に収容される廃インクの到達時期をずらす場合、例えば、それぞれ2秒だけずらすと、クリーニング動作(廃インク吐出動作)に余分に100秒必要となってしまう。
【0054】
一方で、本実施形態の方法では、クリーニング動作(廃インク吐出動作)の時間の延長を抑制することができる。廃液配管の長さや傾斜を変える手段と、クリーニング動作の廃インク吐出のタイミングをずらす手段を併用することも考えられる。廃液配管の本数や使用条件に応じた故障や異常の発生率を考慮し、通常時のクリーニング動作時間(廃インク吐出動作)が延長して増加する装置ダウンタイムと、異常が発生した場合にその廃液配管を探し、特定するために増加する装置ダウンタイムとのトータルでの装置ダウンタイムを抑制することのできるバランスの良い構成である。
【0055】
また、廃液量算出部16が演算する算出廃液量Q1について、積算した廃液量が所定の廃液量(例えば、廃液タンク13の満タン)に到達した場合、この演算式を補正するようにしても良い。例えば、使用当初はデフォルトの演算式にて運用するが、個々の装置のばらつきや使用環境および使用条件の差異により、当初考えていた想定の廃液量増加曲線と差異が発生することが考えられる。そのため、積算した廃液量が所定の廃液量に到達した場合、それまでに検出した廃液量増加曲線に基づいて想定する廃液量増加曲線の傾き(時間あたりの増加量)を加減調整補正し、装置の実態により近い想定する廃液量増加曲線とする。このようにすることで、異常の発生した廃液配管をより精度よく特定することができる。また、使用するインクを変更したり、液体吐出ヘッドを交換したりすることで、クリーニング動作時に吐出される廃インクの廃液量に変動が発生した場合、新しいインクや液体吐出ヘッドに交換した時点を基準として、そこから積算した廃液量が所定の廃液量に到達したとき、基準時点からの検出した廃液量増加曲線に基づいて想定する廃液量増加曲線を補正することも考えられる。演算式を補正するタイミングは、作業者の入力により決定できるようにしても良い。
【0056】
[第4実施形態]
図13は、第1実施形態に係る液体吐出装置の構成の一例を示す図、
図14は、時間の経過による廃液量の変動を表す一例を示すグラフである。なお、上述した第3実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0057】
第4実施形態において、
図13に示すように、液体吐出装置10Dは、液体吐出ヘッド11A,11B,11C,11D,11Eと、廃液配管12A,12B,12C,12D,12Eと、廃液タンク13と、廃液量検出部14と、吐出制御部15と、廃液量算出部16と、廃液異常判定部17と、表示部18とを有する。
【0058】
液体吐出ヘッド11A,11B,11C,11D,11Eは、それぞれ図示しないノズルを有し、各ノズルは、被記録媒体に対して異なる色のインク(液体)を吐出する。液体吐出ヘッド11A,11B,11C,11D,11Eは、インク供給管21A,21B,21C,21D,21Eが連結される。液体吐出ヘッド11A,11B,11C,11D,11Eは、下方に対向してヘッドキャップ22A,22B,22C,22D,22Eを有する。液体吐出ヘッド11A,11B,11C,11D,11Eは、クリーニング動作により、廃液として廃インクをヘッドキャップ22A,22B,22C,22D,22Eに吐出する。ヘッドキャップ22A,22B,22C,22D,22Eは、それぞれ廃液配管12A,12B,12C,12D,12Eが連結される。廃液配管12A,12Bは、下方に受け皿51が配置され、廃液配管12C,12D,12Eは下方に受け皿52が配置される。受け皿51,52は、下部に合流廃液配管53,54が連結される。合流廃液配管53,54と廃液配管12Eは、下端部が合流廃液配管55に連結され、合流廃液配管55が廃液タンク13に連結される。廃液タンク13は、ノズルからヘッドキャップ22A,22B,22C,22D,22Eに吐出される廃インクを廃液配管12A,12B,12C,12D,12E、受け皿51,52、合流廃液配管53,54,55を通して収容する。
【0059】
廃液量検出部14は、廃液タンク13に収容される廃インクの廃液量(検出廃液量)を検出する。吐出制御部15は、ノズルのクリーニング動作において、ヘッドキャップ22A,22B,22C,22D,22Eに吐出して廃インクとなるインクの吐出量を制御する。廃液量算出部16は、吐出制御部15が設定したノズルのクリーニング動作における廃インクとなるインクの吐出量に基づいて廃液タンク13に収容される廃液量(算出廃液量)を算出する。廃液異常判定部17は、廃液量検出部14が検出した検出廃液量と廃液量算出部16が算出した算出廃液量に基づいて廃液異常を判定する。廃液異常判定部17は、判定結果を表示部18に送信し、表示部18は、廃液異常判定部17の判定結果を表示する。
【0060】
図13および
図14に示すように、ノズルのクリーニング動作が実行されると、ノズルがインクを廃インクとしてヘッドキャップ22A,22B,22C,22D,22Eに吐出することから、廃液配管12A,12B,12C,12D,12Eを通して廃液タンク13に収容される廃液量が増加する。一方、印刷時が実行されると、ノズルがインクを被記録媒体に吐出することから、廃液配管12A,12B,12C,12D,12Eを通して廃液タンク13に収容される廃液量は増加せず、一定量が維持される。算出廃液量Q1は、ノズルのクリーニング動作の実施時間Ta1,Ta2,Ta3,Ta4,Ta5に増加する。一方、検出廃液量Q2は、ノズルからのインクの吐出状態、廃液配管12による廃インクの輸送状態、廃液タンク13による廃インクの収容状態などが正常であれば、算出廃液量Q1と同様に、ノズルのクリーニング動作の実施時間Ta1,Ta2,Ta3,Ta4,Ta5に増加する。
【0061】
ここで、廃液異常判定部17は、検出廃液量Q2が増加する時期と検出廃液量Q2が増加する時期における検出廃液量Q2と検出廃液量Q2が増加する時期における算出廃液量Q1とに基づいて異常である廃液配管12A,12B,12C,12D,12Eを特定する。廃液配管12A,12B,12C,12D,12Eに廃液が通過する時期または廃液量を変更して廃液異常を判定する。すなわち、液体吐出ヘッド11A,11B,11C,11D,11Eから廃液配管12A,12B,12C,12D,12Eを介して廃液タンク13に収容される廃インクの到達時期、つまり、廃液量検出部14による検出時期をずらす。
【0062】
本実施形態では、ノズルのクリーニング動作の実施時間Ta1では、液体吐出ヘッド11A,11Bから廃液配管12A,12B、受け皿51、合流廃液配管53,55を介して廃液タンク13に廃インクが排出するように設定する。また、ノズルのクリーニング動作の実施時間Ta2では、液体吐出ヘッド11C,11Dから廃液配管12C,12D、受け皿51、合流廃液配管54,55を介して廃液タンク13に廃インクが排出するように設定する。ノズルのクリーニング動作の実施時間Ta3では、液体吐出ヘッド11Eから廃液配管12Eを介して廃液タンク13に廃インクが排出するように設定する。
【0063】
そして、時間t3から時間t4の間におけるクリーニング動作の実施時間Ta2に、算出廃液量Q1が所定の変化率で増加しているにも拘らず、検出廃液量Q2が所定の変化率より低い変化率で増加していると検出する。このとき、検出廃液量Q2が算出廃液量Q1の下限値Q1Lよりも低くなる。つまり、検出廃液量Q2と算出廃液量Q1との偏差が予め設定された基準値を超える。廃液異常判定部17は、検出廃液量Q2と算出廃液量Q1との偏差が基準値を超えると、表示部18に判定結果を表示すると共に、作業者に対してメンテナンスの実施などを促す表示を行う。この場合、ノズルのクリーニング動作の実施時間Ta2にて、液体吐出ヘッド11C,11Dから廃液配管12C,12Dを介して廃液タンク13に廃インクの排出系統に異常があることが特定される。
【0064】
そのため、作業者は、廃液異常が発生した廃液配管12A,12B,12C,12D,12Eを見付けるために、全ての廃液配管12A,12B,12C,12D,12Eを確認する必要はなく、廃液配管12Cまたは廃液配管12Dに廃液異常があることを即座に把握することができ、早期に廃液配管12Cまたは廃液配管12Dのメンテナンスを開始することができる。廃液異常が発生した廃液配管12A,12B,12C,12D,12Eを探す工数が不要となるため、メンテナンス工数や装置ダウンタイムを低減することができる。なお、他の廃液配管12A,12B,12D,12Eに異常が発生した場合も同様である。ここで、算出廃液量Q1に対する検出廃液量Q2の増減量や増減時期などを比較することで、第1実施形態と同様に、廃液異常の理由や場所を特定することができる。
【0065】
[本実施形態の作用効果の説明]
本実施形態に係る液体吐出装置は、被記録媒体に対してノズルからインク(液体)を吐出する液体吐出ヘッド11と、ノズルから吐出されるインクを廃インク(廃液)として複数の廃液配管12(12A,12B,12C,12D,12E)を通して収容する廃液タンク(収容容器)13と、廃液タンク13に収容される廃液量を検出する廃液量検出部14と、ノズルからのインクの吐出状態に基づいて廃液タンク13に収容される廃液量を算出する廃液量算出部16と、検出廃液量Q2が増加する時期と検出廃液量Q2が増加する時期における検出廃液量Q2と検出廃液量Q2が増加する時期における算出廃液量Q1とに基づいて異常である廃液配管12を特定する廃液異常判定部17とを備える。そのため、廃液異常となった廃液配管12A,12B,12C,12D,12Eを容易に特定することができ、メンテナンス工数の削減を図ることができると共に、装置の停止による稼働率の低下を抑制することができる。
【0066】
本実施形態に係る液体吐出装置は、複数の廃液配管12A,12B,12C,12D,12Eに廃液が通過する時期を変更可能とする。そのため、廃液異常となった廃液配管12A,12B,12C,12D,12Eを容易に特定することができる。
【0067】
本実施形態に係る液体吐出装置は、複数の廃液配管12A,12B,12C,12D,12Eに廃液が通過する廃液量を変更可能とする。そのため、廃液異常となった廃液配管12A,12B,12C,12D,12Eを容易に特定することができる。
【0068】
本実施形態に係る液体吐出装置は、複数の廃液配管12A,12B,12C,12D,12Eの長さを相違させる。そのため、簡単な構成で容易に廃液異常となった廃液配管12A,12B,12C,12D,12Eを特定することができる。
【0069】
本実施形態に係る液体吐出装置は、複数の廃液配管12A,12B,12C,12D,12Eの角度を相違させる。そのため、簡単な構成で容易に廃液異常となった廃液配管12A,12B,12C,12D,12Eを特定することができる。
【0070】
本実施形態に係る液体吐出装置は、廃液異常判定部17の判定結果を表示する表示部18を有し、廃液異常判定部17は、検出廃液量Q2と算出廃液量Q1とを比較し、検出廃液量Q2と算出廃液量Q1との偏差が予め設定された基準値を超えると表示部18に判定結果を表示する。そのため、作業者に廃液異常を知らせることができ、廃液異常が発生した場所のメンテナンスを早期に実施することができる。
【0071】
本実施形態に係る液体吐出装置は、廃液異常判定部17は、検出廃液量Q2が予め設定された上限値を超えると表示部18に判定結果を表示する。そのため、廃液タンク13の満タン状態を作業者に知らせることができる。
【0072】
本実施形態に係る液体吐出装置は、廃液異常判定部17は、検出廃液量Q2が算出廃液量Q1よりも予め設定された上限基準値より多いときに表示部18に液体吐出ヘッド11のメンテナンスが必要であることを表示する。そのため、液体吐出ヘッド11の異常による廃液異常であることを作業者に知らせることができる。
【0073】
本実施形態に係る液体吐出装置は、廃液異常判定部17は、検出廃液量Q2が算出廃液量Q1よりも予め設定された下限基準値より少ないときに表示部20に廃液配管12のメンテナンスが必要であることを表示する。そのため、廃液配管12の異常による廃液異常であることを作業者に知らせることができる。
【0074】
本実施形態に係る液体吐出装置は、廃液量算出部16は、検出廃液量Q2が予め設定された上限値に到達すると算出廃液量Q1を求める演算式を補正する。そのため、液体吐出ヘッド11や使用するインクなどが変更された場合、変更された液体吐出ヘッド11やインクなどに合わせた演算式を適用することで、廃液異常の判定精度を向上することができる。
【0075】
本実施形態に係る廃液異常判定方法は、液体吐出ヘッド11のノズルから吐出される検出廃液量(第1廃液量)Q2を検出するステップと、ノズルからの廃インクの吐出状態に基づいてノズルから吐出される算出廃液量(第2廃液量)を算出するステップと、検出廃液量Q2が増加する時期と検出廃液量Q2が増加する時期における検出廃液量Q2と検出廃液量Q2が増加する時期における算出廃液量Q1とに基づいて異常である廃液配管12を特定するステップとを有する。そのため、廃液異常となった廃液配管12A,12B,12C,12D,12Eを容易に特定することができ、メンテナンス工数の削減を図ることができると共に、装置の停止による稼働率の低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0076】
10,10A,10B,10C,10D 液体吐出装置
11,11A,11B,11C,11D,11E 液体吐出ヘッド
12,12A,12B,12C,12D,12E 廃液配管
13 廃液タンク(収容容器)
14,32 廃液量検出部
15 吐出制御部
16 廃液量算出部
17 廃液異常判定部
18 表示部
21,21A,21B,21C,21D,21E インク供給管
22,22A,22B,22C,22D,22E ヘッドキャップ
31,53,54,55 合流廃液配管
51,52 受け皿
【先行技術文献】
【特許文献】
【0077】