(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】検査装置、検査方法、及び検査装置用プログラム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/28 20060101AFI20240228BHJP
G01R 31/70 20200101ALI20240228BHJP
【FI】
G01R31/28 R
G01R31/70
(21)【出願番号】P 2020559076
(86)(22)【出願日】2019-11-26
(86)【国際出願番号】 JP2019046137
(87)【国際公開番号】W WO2020116236
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2018228749
(32)【優先日】2018-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】392019709
【氏名又は名称】ニデックアドバンステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】栗原 靖人
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-153615(JP,A)
【文献】実開平05-059349(JP,U)
【文献】特表2005-510735(JP,A)
【文献】実開昭58-125879(JP,U)
【文献】特開2012-047591(JP,A)
【文献】特開平11-031728(JP,A)
【文献】実開平03-025135(JP,U)
【文献】実開昭64-038576(JP,U)
【文献】国際公開第2009/024172(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/28
G01R 31/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイオードを有する複数の電流経路が並列接続された検査対象部の検査を行うための検査装置であって、
電流を供給可能な電流供給部と、
電圧を測定可能な電圧測定部と、
予め設定された第一電流値の電流を前記電流供給部によって
前記検査対象部の両端間に流させつつ、前記両端間の電圧を前記電圧測定部によって第一電圧値として測定させる測定処理部とを備え、
前記第一電流値は、正常な前記検査対象部の両端間の電圧が実質的に前記
ダイオードのオン電圧になる電流値以下であ
り、前記複数の電流経路のうち一つを除く残余の電流経路が断線した前記検査対象部に当該第一電流値の電流を流した場合に、前記検査対象部の両端間の電圧が実質的に前記オン電圧になる電流値以上である検査装置。
【請求項2】
前記第一電圧値に基づいて、前記検査対象部の良否を判定する判定部をさらに備える請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
ダイオードを有する複数の電流経路が並列接続された検査対象部の検査を行うための検査装置であって、
電圧を出力可能な電圧供給部と、
電流を測定可能な電流測定部と、
実質的に前記
ダイオードのオン電圧以下に予め設定された第一電圧値の電圧を前記電圧供給部によって前記検査対象部の両端間に印加させつつ、前記両端間に流れる電流を前記電流測定部によって第一電流値として測定させる測定処理部とを備え
、
前記複数の電流経路のうち一つを除く残余の電流経路が断線した前記検査対象部の両端間に当該第一電圧値の電圧を印加した場合に、前記検査対象部に流れる電流が実質的に前記オン電圧になる電流値以上である検査装置。
【請求項4】
前記第一電流値に基づいて、前記検査対象部の良否を判定する判定部をさらに備える請求項3に記載の検査装置。
【請求項5】
前記第一電流値は、前記複数の電流経路のうち一つのみが断線した前記検査対象部に当該第一電流値の電流を流した場合に前記検査対象部の両端間の電圧が実質的に前記オン電圧になる電流値以上である請求項1又は2に記載の検査装置。
【請求項6】
前記第一電流値は、前記複数の電流経路のうち一つのみが断線した前記検査対象部に当該第一電流値の電流を流した場合に前記検査対象部の両端間の電圧が実質的に前記オン電圧になる電流値である請求項
5に記載の検査装置。
【請求項7】
前記第一電流値は、正常な前記検査対象部の両端間の電圧が実質的に前記オン電圧になる電流値であり、
前記測定処理部は、さらに、前記第一電流値よりも小さな第二電流値の電流を前記電流供給部によって前記両端間に流させつつ前記両端間の電圧を前記電圧測定部によって第二電圧値として測定させ、
前記検査装置は、前記第一電流値と前記第二電流値との差、及び前記第一電圧値と前記第二電圧値との差の比に基づいて、前記検査対象部の良否を判定する判定部をさらに備える請求項1に記載の検査装置。
【請求項8】
電流値を異ならせつつ複数回、前記電流供給部によって前記両端間に電流を流させ、前記各電流が流れる各期間中に前記電圧測定部によって前記両端間の電圧を測定させ、当該測定された複数の電圧の変化に基づいて前記検査対象部のオン電圧を探索するオン電圧探索部をさらに備える請求項1
、2、5~7のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項9】
正常な前記検査対象部は、前記複数の電流経路が全て導通している請求項1~
8のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項10】
ダイオードを有する複数の電流経路が並列接続された検査対象部の検査を行う検査方法であって、
予め設定された第一電流値の電流を
前記検査対象部の両端間に流しつつ、前記両端間の電圧を第一電圧値として測定する測定処理工程を含み、
前記第一電流値は、正常な前記検査対象部の両端間の電圧が実質的に前記
ダイオードのオン電圧になる電流値以下であ
り、前記複数の電流経路のうち一つを除く残余の電流経路が断線した前記検査対象部に当該第一電流値の電流を流した場合に、前記検査対象部の両端間の電圧が実質的に前記オン電圧になる電流値以上である検査方法。
【請求項11】
ダイオードを有する複数の電流経路が並列接続された検査対象部の検査を行う検査方法であって、
実質的に前記
ダイオードのオン電圧以下に予め設定された第一電圧値の電圧を前記検査対象部の両端間に印加しつつ、前記両端間に流れる電流を第一電流値として測定する測定処理工程を含
み、
前記複数の電流経路のうち一つを除く残余の電流経路が断線した前記検査対象部の両端間に当該第一電圧値の電圧を印加した場合に、前記検査対象部に流れる電流が実質的に前記オン電圧になる電流値以上である検査方法。
【請求項12】
請求項1~
9のいずれか1項に記載の検査装置を動作させるための検査装置用プログラムであって、
コンピュータを、前記測定処理部として機能させる検査装置用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電路を検査するための検査装置、検査方法、及び検査装置用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、回路基板に設けられた検査対象の配線等に測定電流を流し、当該検査対象に生じた電圧を測定することによってその電流値と電圧値とから当該検査対象の抵抗値を測定する基板検査装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
ところで、基板に部品が実装された状態の回路基板、基板に部品が内蔵された部品内蔵基板、あるいは回路が形成された半導体基板等を検査する場合がある。このような場合、ダイオードや、ダイオードと同様のダイオード特性を生じる複数の電流経路が並列接続される場合がある。
【0005】
例えば通常の導体パターンが二本並列接続されている場合に、上述の基板検査装置でこの並列回路の抵抗値を測定すると、二本のうち一本が断線すれば、抵抗値が二倍になる。従って、並列接続された二本の導体パターンのうち一本が断線すれば、抵抗値に基づいて断線を検知することができる。
【0006】
しかしながら、ダイオードは、電流と電圧の関係が非線形であり、並列接続された二個のダイオードのうち一個が断線した場合であっても、抵抗測定のために流した電流に対して生じる電圧は、ほとんど変化しない。
【0007】
そのため、複数のダイオードが並列接続されている場合、これを上述の基板検査装置で検査すると、一部のダイオードが断線しても、断線を検知しにくいという、不都合があった。
【0008】
本発明の目的は、複数のダイオードが並列接続された検査対象の検査が容易な検査装置、検査方法、及び検査装置用プログラムを提供することである。
【0009】
本発明の一例に係る検査装置は、順方向の電圧がオン電圧を超えた場合の前記電圧の変化に対する電流の変化が、前記順方向の電圧が前記オン電圧に満たない場合よりも大きいダイオード特性を有する複数の電流経路が並列接続された検査対象部の検査を行うための検査装置であって、電流を供給可能な電流供給部と、電圧を測定可能な電圧測定部と、予め設定された第一電流値の電流を前記電流供給部によって前記両端間に流させつつ、前記両端間の電圧を前記電圧測定部によって第一電圧値として測定させる測定処理部とを備え、前記第一電流値は、正常な前記検査対象部の両端間の電圧が実質的に前記オン電圧になる電流値以下である。
【0010】
また、本発明の一例に係る検査装置は、順方向の電圧がオン電圧を超えた場合の前記電圧の変化に対する電流の変化が、前記順方向の電圧が前記オン電圧に満たない場合よりも大きいダイオード特性を有する複数の電流経路が並列接続された検査対象部の検査を行うための検査装置であって、電圧を出力可能な電圧供給部と、電流を測定可能な電流測定部と、実質的に前記オン電圧以下に予め設定された第一電圧値の電圧を前記電圧供給部によって前記検査対象部の両端間に印加させつつ、前記両端間に流れる電流を前記電流測定部によって第一電流値として測定させる測定処理部とを備える。
【0011】
また、本発明の一例に係る検査方法は、順方向の電圧がオン電圧を超えた場合の前記電圧の変化に対する電流の変化が、前記順方向の電圧が前記オン電圧に満たない場合よりも大きいダイオード特性を有する複数の電流経路が並列接続された検査対象部の検査を行う検査方法であって、予め設定された第一電流値の電流を前記両端間に流しつつ、前記両端間の電圧を第一電圧値として測定する測定処理工程を含み、前記第一電流値は、正常な前記検査対象部の両端間の電圧が実質的に前記オン電圧になる電流値以下である。
【0012】
また、本発明の一例に係る検査方法は、順方向の電圧がオン電圧を超えた場合の前記電圧の変化に対する電流の変化が、前記順方向の電圧が前記オン電圧に満たない場合よりも大きいダイオード特性を有する複数の電流経路が並列接続された検査対象部の検査を行う検査方法であって、実質的に前記オン電圧以下に予め設定された第一電圧値の電圧を前記検査対象部の両端間に印加しつつ、前記両端間に流れる電流を第一電流値として測定する測定処理工程を含む。
【0013】
また、本発明の一例に係る検査装置は、順方向の電圧がオン電圧を超えた場合の前記電圧の変化に対する電流の変化が、前記順方向の電圧が前記オン電圧に満たない場合よりも大きいダイオード特性を有する複数の電流経路が並列接続された検査対象部の検査を行うための検査装置であって、電流又は電圧のうち一方を、値を異ならせつつ複数回、前記検査対象部の両端間に供給し、前記一方が供給される各期間中に前記両端間における前記電流又は電圧のうち他方を測定し、当該測定された前記他方の変化に基づいて前記検査対象部がオンする前記電流を取得する測定処理部と、前記測定処理部によって取得された前記電流に基づいて前記検査対象部の良否を判定する判定部とを備える。
【0014】
また、本発明の一例に係る検査方法は、順方向の電圧がオン電圧を超えた場合の前記電圧の変化に対する電流の変化が、前記順方向の電圧が前記オン電圧に満たない場合よりも大きいダイオード特性を有する複数の電流経路が並列接続された検査対象部の検査を行うための検査方法であって、電流又は電圧のうち一方を、値を異ならせつつ複数回、前記検査対象部の両端間に供給し、前記一方が供給される各期間中に前記両端間における前記電流又は電圧のうち他方を測定し、当該測定された前記他方の変化に基づいて前記検査対象部がオンする前記電流を取得する測定処理工程と、前記測定処理部によって取得された前記電流に基づいて前記検査対象部の良否を判定する判定工程とを含む。
【0015】
また、本発明の一例に係る検査装置用プログラムは、上述の検査装置を動作させるための検査装置用プログラムであって、コンピュータを、前記測定処理部として機能させる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る検査方法を用いる検査装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】検査対象部に順方向に電流を流した場合の電流-電圧特性の一例を示すグラフである。
【
図4】
図1に示すオン電圧探索部の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図1に示すオン電圧探索部の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図1に示す測定処理部及び判定部による検査方法の一例を示すフローチャートである。
【
図9】電流経路が三つ並列接続された検査対象部に順方向に電流を流した場合の電流-電圧特性の一例を示すグラフである。
【
図10】
図1に示す検査装置の別の一例を示すブロック図である。
【
図11】第二実施形態に係る検査装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図12】
図11に示す基準傾き取得部の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図13】
図11に示す基準傾き取得部、測定処理部、及び判定部の動作を説明するための説明図である。
【
図14】
図11に示す測定処理部、及び判定部の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図15】
図11に示す基準傾き取得部、測定処理部、及び判定部の動作を説明するための説明図である。
【
図16】第三実施形態に係る測定処理部及び判定部の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図17】第三実施形態に係る測定処理部及び判定部の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図18】第三実施形態に係る測定処理部及び判定部の動作を説明するための説明図である。
【
図19】第三実施形態に係る測定処理部及び判定部の動作の変形例を示すフローチャートである。
【
図20】第三実施形態に係る測定処理部及び判定部の動作を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
(第一実施形態)
【0018】
図1に示す検査装置1は、電流供給部2、電圧測定部3、電流測定部4、プローブPr1,Pr2、及び制御部5を備えている。検査装置1は、基板の検査を行う基板検査装置であってもよく、半導体ウェハ等の検査を行う半導体検査装置であってもよい。
図1では、検査対象の回路基板100に、検査装置1のプローブPr1,Pr2を接触させた状態を示している。
【0019】
回路基板100は、例えば配線基板101と、配線基板101の表面に実装された部品102とを備えている。配線基板101は、いわゆるプリント配線基板である。配線基板101の表面には、配線パターンW1~W8が形成されている。
【0020】
配線基板101は、例えばプリント配線基板、フィルムキャリア、フレキシブル基板、セラミック多層配線基板、半導体チップ及び半導体ウェハ等の半導体基板、半導体パッケージ用のパッケージ基板、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ用の電極板、及びこれらの基板を製造する過程の中間基板や、いわゆるキャリア基板であってもよい。また、回路基板100は、例えば部品内蔵基板であってもよく、例えば半導体基板に半導体プロセスにより回路素子が形成されたものであってもよい。検査装置1の検査対象は、基板であってもよく、半導体ウェハ、半導体素子等であってもよい。配線基板101には、検査対象となる検査対象部Aが設けられている。
【0021】
部品102は、ダイオードD1,D2と、端子T1~T4とを備えている。ダイオードD1のアノードは端子T1に接続され、カソードは端子T2に接続されている。ダイオードD2のアノードは端子T3に接続され、カソードは端子T4に接続されている。ダイオードD1,D2は、例えば半導体集積回路(IC:Integrated Circuit)に内蔵された保護ダイオードであってもよい。
【0022】
部品102は、例えば半導体集積回路、半導体素子、ダイオード素子、ダイオードアレイ、LED(Light Emitting Diode)等、種々の部品であってよい。ダイオードは、順方向に印加された電圧を徐々に上昇させた場合に、ある電圧で流れる電流が急激に増加する特性を有する。この電流が急激に増加する電圧を、オン電圧と称する。
【0023】
部品102は、ダイオードと同様の、オン電圧を超える電圧が印加された場合に流れる電流が急激に増加する非線形の特性(以下、ダイオード特性と称する)を有していればよく、必ずしもダイオードそのものでなくてもよい。
図1では、単一の部品102が二つのダイオードD1,D2を備える例を示したが、ダイオードD1,D2は、それぞれ個別の部品であってもよい。例えばダイオードD1とダイオードD2とは、それぞれ別個のIC等に含まれており、外部配線によって並列接続されていてもよい。また、ダイオードの数は三つ以上であってもよい。
【0024】
また、ダイオードD1,D2は、意図的にダイオード素子として形成されたものに限らない。ダイオードD1,D2は、半導体素子の保護ダイオード、寄生ダイオード等であってもよく、配線の接合部分の酸化皮膜や異種材料の接合によりダイオード特性を生じるものであってもよく、部品として配線基板101に取り付けられる例に限らない。
【0025】
配線パターンW1~W4の一端には、パッドPa1~Pa4が形成されている。パッドPa1は端子T1と、パッドPa2は端子T2と、パッドPa3は端子T3と、パッドPa4は端子T4とそれぞれ接続されている。配線パターンW1の他端と配線パターンW3の他端とは配線パターンW5によって連結され、配線パターンW2の他端と配線パターンW4の他端とは配線パターンW6によって連結されている。配線パターンW5からは配線パターンW7が延び、配線パターンW7の先端にパッドPa5が設けられている。配線パターンW6からは配線パターンW8が延び、配線パターンW8の先端にパッドPa6が設けられている。
【0026】
これにより、配線パターンW1、ダイオードD1、及び配線パターンW2が直列接続された電流経路A1が形成され、配線パターンW3、ダイオードD2、及び配線パターンW4が直列接続された電流経路A2が形成されている。電流経路A1,A2は、ダイオード特性を有する電流経路の一例に相当している。電流経路A1,A2は、配線パターンW5,W6によって並列接続されている。
【0027】
パッドPa5からパッドPa6に至る回路部分が検査対象部Aとされている。本実施形態では、検査装置1の検査対象である検査対象部Aを、パッドPa5とパッドPa6との間に設けられた回路とする。すなわち、検査対象部Aの一端がパッドPa5、他端がパッドPa6とされている。なお、ダイオードD1,D2が半導体集積回路に内蔵されている場合、ダイオードD1,D2は、半導体集積回路内で並列接続されていてもよい。
【0028】
プローブPr1,Pr2は、図略の移動機構により移動され、予め検査点として設定されたパッドPa5,Pa6に接触される。なお、検査装置1は、例えば多針状に保持された数百~数千程度のプローブを備える構成であってもよい。そして、その多針状のプローブの中から図略の切替回路によってプローブPr1,Pr2が選択され、そのプローブPr1,Pr2が電流供給部2、電圧測定部3、及び電流測定部4と接続される構成であってもよい。また、プローブPr1,Pr2は、それぞれ任意に位置移動可能ないわゆるフライングプローブであってもよい。
【0029】
図2は、半導体集積回路103に内蔵された二つのダイオードが半導体集積回路103内で並列接続されている場合の一例を示している。
図2では、入出力ポートの一例として、入力ポート周辺の回路を半導体集積回路103として示している。半導体集積回路103は、入力バッファ104、保護ダイオードD3~D6、信号入力端子T5、電源端子V+、及び電源端子V-を備えている。
【0030】
入力バッファ104の入力端子は、信号入力端子T5、保護ダイオードD3,D4のアノード、及び保護ダイオードD5,D6のカソードに接続されている。保護ダイオードD3,D4のカソードは電源端子V+に接続され、保護ダイオードD5,D6のアノードは電源端子V-に接続されている。信号入力端子T5、電源端子V+、電源端子V-は、例えばICソケット又は基板等に設けられたパッドPa7,Pa8,Pa9とそれぞれ接続されている。
【0031】
パッドPa7からパッドPa8に至る回路部を検査対象部Bとした場合、パッドPa7にプローブPr1を当接し、パッドPa8にプローブPr2を当接して検査装置1を動作させればよい。パッドPa9からパッドPa7に至る回路部を検査対象部Cとした場合、
図2に括弧書きで示すように、パッドPa9にプローブPr1を当接し、パッドPa7にプローブPr2を当接して検査装置1を動作させればよい。なお、プローブPr1,Pr2は、信号入力端子T5、電源端子V+,V-に直接当接させてもよい。プローブPr1,Pr2は、物理的に移動させる必要はなく、後述するように、切替回路等を用いてその接続関係を変更すればよい。
【0032】
電流供給部2は、例えば定電流回路を用いて構成されている。電流供給部2の正極はプローブPr1に接続され、電流供給部2の負極はプローブPr2に接続されている。これにより、電流供給部2は、ダイオードD1,D2に対して制御部5からの制御信号に応じた順方向電流を供給する。
【0033】
電圧測定部3は、いわゆる電圧計であり、例えばアナログデジタルコンバータと分圧回路等を用いて構成されている。電圧測定部3は、プローブPr1,Pr2間の電圧、すなわちプローブPr1,Pr2が接触する検査対象部Aの両端間の電圧を測定し、その測定電圧を示す信号を制御部5へ出力する。
【0034】
電流測定部4は、いわゆる電流計であり、例えばアナログデジタルコンバータ、シャント抵抗、ホール素子等を用いて構成されている。電流測定部4は、プローブPr1,Pr2間に流れる電流、すなわちプローブPr1,Pr2が接触する検査対象部Aに流れる電流を測定し、その測定電流を示す信号を制御部5へ出力する。
【0035】
制御部5は、いわゆるマイクロコンピュータであり、例えば、所定の演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)、一時的にデータを記憶するRAM(Random Access Memory)及び不揮発性のフラッシュメモリやHDD(Hard Disk Drive)等を含む記憶部54、及びこれらの周辺回路等を備える。記憶部54には、本発明の一実施形態に係る検査装置用プログラムが予め記憶されている。そして、制御部5は、記憶部54に記憶された検査装置用プログラムを実行することによって、測定処理部51、判定部52、及びオン電圧探索部53として機能する。
【0036】
測定処理部51は、予め設定された第一電流値Iaの電流を、電流供給部2によってプローブPr1,Pr2間に流させつつ、電圧測定部3によって、プローブPr1,Pr2間の電圧を第一電圧値Vaとして測定させる。第一電流値Iaは、正常な検査対象部Aの両端間の電圧が、実質的にオン電圧になる電流値である基準電流値IS以下に予め設定されている。測定処理部51は、電流測定部4によって測定される電流値が第一電流値Iaと等しくなるように電流供給部2を制御することによって、電流供給部2から第一電流値Iaの電流を出力させてもよい。
【0037】
なお、実質的にオン電圧になる電流値とは、測定誤差やバラツキ程度の差異を許容する趣旨である。第一電流値Iaは、正確にオン電圧になる電流値に対して、例えば-10%~+10%程度の範囲内の値であってもよい。
【0038】
判定部52は、電圧測定部3によって測定された第一電圧値Vaに基づいて、検査対象部Aの良否を判定する。
【0039】
オン電圧探索部53は、検査対象の回路基板100とは別の、回路基板100の基準サンプルから検査対象部Aのオン電圧Vonを探索する。基準サンプルのオン電圧Vonは、判定部52の判定基準及び第一電流値Iaを決定するために用いられる。
【0040】
オン電圧探索部53は、電流供給部2によって、電流値を異ならせつつ複数回、プローブPr1,Pr2間に電流を流させる。そしてオン電圧探索部53は、各電流が流れる各期間中に、電圧測定部3によってプローブPr1,Pr2間の電圧を測定させ、当該測定された複数の電圧の変化に基づいて検査対象部Aのオン電圧Vonを探索する。
【0041】
次に、上述のように構成された検査装置1の動作について、
図3~
図5を参照しつつ、説明する。
図3に示すグラフG1は、検査対象部Aが正常な場合、グラフG2は、電流経路A1,A2のうちいずれか一方が断線している場合のグラフを示している。以下、ダイオードD1とダイオードD2の特性は略等しいものとする。なお、
図3及び後述する検査対象部Aの電流-電圧特性は、あくまで一例であって、これらに限定されるものではない。
【0042】
なお、以下のフローチャートにおいて、同一の動作には同一のステップ番号を付してその説明を省略する。
【0043】
まず、例えばユーザが、図略の載置台に基準サンプルとして正常な回路基板を載置する。そして、オン電圧探索部53は、プローブPr1をパッドPa5に接触させ、プローブPr2をパッドPa6に接触させる(ステップS1)。
【0044】
次に、オン電圧探索部53は、変数kに1を代入し、電流値I(k)を初期値として、例えば0.1mAとする(ステップS2)。変数kは、電流値Iと電圧値Vとを対応付けるための整理番号であり、電流値I(k)はk番の電流値I、電圧値V(k)はk番の電圧値Vを示し、同じ番号の電流値Iと電圧値Vとが対応する。なお、電流値I及び電圧値Vについては、単位を省略する場合があるが、電流値Iの単位はミリアンペア(mA)、電圧値Vの単位はボルト(V)である。
【0045】
次に、オン電圧探索部53は、電流供給部2によってプローブPr1,Pr2間に、電流値I(k)の電流を流させ、その電流が流れている期間中に、電圧測定部3によってプローブPr1,Pr2間の電圧を電圧値V(k)として測定させる(ステップS3)。
【0046】
以下、測定処理部51、判定部52、又はオン電圧探索部53等が電流供給部2によって電流を供給させることを、単に測定処理部51、判定部52、又はオン電圧探索部53等が電流を供給する、と記載し、測定処理部51、判定部52、又はオン電圧探索部53等が電圧測定部3によって電圧を測定させることを、単に測定処理部51、判定部52、又はオン電圧探索部53等が電圧を測定する、と記載し、測定処理部51、判定部52、又はオン電圧探索部53等が電流測定部4によって電流を測定させることを、単に測定処理部51、判定部52、又はオン電圧探索部53等が電流を測定する、と記載する。
【0047】
これにより、オン電圧探索部53は、検査対象部AのパッドPa5,Pa6間に電流値I(k)の電流が流れている期間中に、パッドPa5,Pa6間の電圧を電圧値V(k)として測定する。オン電圧探索部53は、このようにして測定された電圧値V(k)を、番号k及び電流値I(k)と対応付けて、測定情報として記憶部54に記憶させる。
【0048】
図6は、ステップS3と後述するステップS5で測定される測定情報を示している。電流経路A1,A2がいずれも断線していない正常な検査対象部Aが、グラフG1で示す特性を有していれば、0.1mAの電流に対して0.033Vが測定される。
【0049】
次に、オン電圧探索部53は、変数kに1を加算する。また、オン電圧探索部53は、電流値I(k-1)すなわち前回設定された電流値に0.1を加算し、新たな電流値I(k)とする(ステップS4)。これにより、0.1mAずつ電流値を増加させながら、電圧値を測定することができる。電流値の増加量は、小さいほどオン電圧の取得精度が増大するが、処理時間は増大する。従って、電流値の増加量は、0.1mAに限られず、精度と処理時間のバランスにより適宜設定すればよい。
【0050】
次に、オン電圧探索部53は、ステップS3と同様にして、プローブPr1,Pr2間に電流値I(k)の電流を流し、その電流が流れている期間中にプローブPr1,Pr2間の電圧を電圧値V(k)として測定する(ステップS5)。オン電圧探索部53は、このようにして測定された電圧値V(k)を、番号k及び電流値I(k)と対応付けて、測定情報として記憶部54に記憶させる。
【0051】
今、電流値I(k)は0.2mAであるから、グラフG1によれば、0.2mAの電流に対して0.065Vが測定される。
【0052】
次に、オン電圧探索部53は、下記の式(1)に基づき、傾きr(k-1)を算出する(ステップS6)。
【0053】
傾きr(k-1)={I(k)-I(k-1)}/{V(k)-V(k-1)} ・・・(1)
【0054】
今、k=2、I(2)=0.2、I(1)=0.1、V(2)=0.065、V(1)=0.033であるから、傾きr(1)={I(2)-I(1)}/{V(2)-V(1)}=(0.2-0.1)/(0.065-0.033)=3.13となる。
【0055】
オン電圧探索部53は、このようにして得られた傾きr(k-1)を、傾き情報として記憶部54に記憶させる。
【0056】
次に、オン電圧探索部53は、電流値I(k)を1.0mAと比較する(ステップS7)。電流値I(k)が1.0mAに満たなければ(ステップS7でNO)、再びステップS4~S7を繰り返す。
【0057】
一方、電流値I(k)が1.0mA以上であれば(ステップS7でYES)、オン電圧探索部53は、k-1を傾きrの数であるデータ数nとし(ステップS8)、ステップS11へ移行する。電流値I(k)と比較される電流値は、オン電圧が得られると想定される電流値よりも大きな値が設定されていればよく、1.0mAに限らない。
【0058】
以上、ステップS1~S7の処理によって、電流値を異ならせつつ複数回、検査対象部Aの両端間に電流が流され、各電流が流れる各期間中に検査対象部Aの両端間の電圧が測定されることになる。
【0059】
図7は、
図1に示すオン電圧探索部53によって算出される傾きrと、後述する比Rの説明図である。今、データ数nは9であるから、k=1~9に対応する傾きr(1)~r(9)が、記憶部54に記憶される。
【0060】
以上、ステップS2~S7の処理により、オン電圧探索部53は、電流値を異ならせつつ複数回、プローブPr1,Pr2間に電流を流し、各電流が流れる各期間中にプローブPr1,Pr2間の電圧を測定する。
【0061】
次に、ステップS11において、オン電圧探索部53は、変数kに2を代入する(ステップS11)。
【0062】
次に、オン電圧探索部53は、下記の式(2)に基づいて比R(k)を算出し(ステップS12)、kがnに満たなければ(ステップS13でNO)変数kに1を加算して(ステップS14)ステップS12,S13を繰り返し、kがnになれば(ステップS13でYES)ステップS15へ処理を移行する。これにより、番号2~nに対応する比R(2)~R(n)が算出される。
【0063】
比R(k)=r(k)/r(k-1) ・・・(2)
【0064】
ステップS15において、オン電圧探索部53は、比R(2)~R(n)のうち、最大のR(m)を、オン電圧Vonに対応する比Rとして探索する(ステップS15)。オン電圧探索部53は、探索された最大の比R(m)から番号mを取得する。番号mは、オン電圧Vonに対応する電圧値V(m)の番号であるから、最大の比R(m)を探索することは、オン電圧Vonを探索することに他ならない。
【0065】
図7の例では、最大となるのはR(8)=4.2である。従って、番号m=8となる。
【0066】
次に、オン電圧探索部53は、ステップS5で記憶部54に記憶された測定情報を参照し、V(m)をオン電圧Vonとして記憶部54に記憶させる(ステップS16)。
図6に示す例では、番号がmと等しい8の電圧値V(8)は0.30Vであるから、オン電圧Vonは0.30Vとなる。オン電圧Vonは、検査対象部Aに順方向に印加された電圧を徐々に上昇させた場合に、流れる電流が急激に増加する電圧である。
【0067】
さらにオン電圧探索部53は、下記の式(3)に基づき第一電流値Iaを算出し、記憶部54に記憶させる(ステップS17)。第一電流値Iaは、複数の電流経路A1,A2のうち、いずれか一つが断線した検査対象部Aがオンするオン電流である。
【0068】
第一電流値Ia= I(m)×(Q-1)/Q ・・・(3)
但し、Qは、ダイオード特性を有する電流経路の並列数である。
【0069】
今、検査対象部Aの並列数は2、
図6に示す例では、番号がmと等しい8の電流値I(8)は0.8mAとなるから、式(3)から、第一電流値Ia=0.8/2=0.4mAとなる。
【0070】
ここで、I(m)は、基準電流値ISとほぼ等しい。そこで、オン電圧探索部53は、ステップS17において、I(m)を、基準電流値ISとして記憶部54に記憶させることが好ましい。
【0071】
なお、第一電流値Iaは、複数の電流経路A1,A2のうちいずれか一つが断線した検査対象部Aがオンするオン電流と、実質的に等しければよい。第一電流値Iaが実質的にオン電流と等しい、とは、第一電流値Iaとオン電流との間に、例えば、ステップS1~S17により取得されるI(m)の誤差、電圧測定部3又は電流測定部4の測定誤差、電流供給部2の出力誤差等により生じる程度の差異を許容する趣旨である。第一電流値Iaは、例えばオン電流に対して、例えば-10%~+10%程度の範囲内の値であってもよい。
【0072】
オン電圧Vonは、ダイオードD1とダイオードD2の特性が略等しければ、
図3に示すように、グラフG1に示す正常な検査対象部Aのオン電圧Vonと、グラフG2に示す不良の検査対象部Aのオン電圧Vonとは略等しい。第一電流値Iaは、不良の検査対象部Aの両端間の電圧がオン電圧Vonになる電流値(グラフG2における0.4mA)である。一方、正常な検査対象部Aの両端間の電圧がオン電圧Vonになる電流値(グラフG1における0.8mA)は、
図3に示すように、不良の検査対象部Aの両端間の電圧がオン電圧Vonになる電流値よりも大きくなる。従って、ステップS1~S17の処理によって求められた第一電流値Iaは、基準電流値IS以下となる。
【0073】
なお、ステップS1~S17では、基準サンプルとして正常な回路基板を用い、ステップS17により、計算によって電流経路A1,A2のうち一つが断線した検査対象部Aの第一電流値Iaを求める例を示した。しかしながら、ステップS1において、実際に電流経路A1,A2のうち一つが断線した不良の回路基板を用い、ステップS17において、I(m)をそのまま第一電流値Iaとしてもよい。
【0074】
以上、ステップS6~S17の処理により、オン電圧探索部53は、複数の電圧値V(1)~V(10)の変化に基づいて、基準サンプルの検査対象部Aのオン電圧Vonを取得することができる。
【0075】
次に、オン電圧探索部53は、プローブPr1,Pr2間に第一電流値Iaの電流を流しつつ、プローブPr1,Pr2間の電圧を電圧値Vgとして測定する(ステップS18)。これにより、オン電圧探索部53は、検査対象部AのパッドPa5,Pa6間に第一電流値Iaの電流が流れている期間中に、パッドPa5,Pa6間の電圧を電圧値Vgとして測定する。
【0076】
今、第一電流値Iaは0.4mAであるから、
図3のグラフG1の例によれば、電圧値Vgとして0.14Vが得られる。
【0077】
次に、オン電圧探索部53は、電圧値Vgに基づいて、検査対象部Aの良否を判定するための判定電圧Vrefを算出し、これを記憶部54に記憶させる(ステップS19)。具体的には、例えば電圧値Vgのバラツキや測定誤差が最大10%想定される場合、電圧値Vgに1.1を乗じることによって、判定電圧Vrefを算出する。今、電圧値Vgは0.14Vであるから、判定電圧Vrefとして0.15Vが得られる。
【0078】
これにより、電圧値Vgに対し、製造バラツキや測定誤差による誤差が生じた場合であっても、正しく判定することが可能な判定電圧Vrefが得られる。
【0079】
以上、ステップS1~S19の処理によって、第一電流値Iaと判定電圧Vrefとが記憶部54に記憶され、すなわち予め設定される。
【0080】
なお、検査装置1は、必ずしもオン電圧探索部53を備えていなくてもよい。例えばユーザが実験的に、ステップS1~S19と同様の方法により、第一電流値Iaと判定電圧Vrefとを取得し、記憶部54に記憶させ、予め設定するようにしてもよい。あるいはユーザが、
図3に示すグラフG1,G2を作図して、グラフG1,G2から読み取った第一電流値Iaと判定電圧Vrefとを記憶部54に記憶させ、予め設定するようにしてもよい。
【0081】
次に、
図1に示す測定処理部51及び判定部52の動作について、
図8に基づき説明する。まず、例えばユーザが、図略の載置台に、検査しようとする回路基板100を載置する。そして、測定処理部51は、プローブPr1をパッドPa5に接触させ、プローブPr2をパッドPa6に接触させる(ステップS21)。
【0082】
次に、測定処理部51は、記憶部54から第一電流値Iaを読み出す。そして、測定処理部51は、プローブPr1,Pr2間に第一電流値Iaの電流を流しつつ、プローブPr1,Pr2間の電圧を第一電圧値Vaとして測定する(ステップS22)。これにより、測定処理部51は、検査対象部AのパッドPa5,Pa6間に第一電流値Iaの電流が流れている期間中に、パッドPa5,Pa6間の電圧を第一電圧値Vaとして測定する。
【0083】
今、第一電流値Iaは0.4mAであるから、
図3に示す例によれば、検査対象部Aが正常であればグラフG1に示すとおり第一電圧値Vaとして0.14Vが測定され、検査対象部Aが不良であればグラフG2に示すとおり第一電圧値Vaとして0.30Vが測定されることになる。
【0084】
次に、判定部52は、記憶部54から判定電圧Vrefを読み出す。そして、判定部52は、第一電圧値Vaと判定電圧Vrefとを比較する(ステップS23)。そして、第一電圧値Vaが判定電圧Vref以下であれば(ステップS23でYES)、判定部52は、検査対象部Aは正常であると判定する(ステップS24)。判定部52は、その判定結果を例えば図略の表示装置に表示したり、外部に送信したりして報知し、あるいは記憶部54に記憶し(ステップS26)、処理を終了する。
【0085】
図3に示す例では、検査対象部Aが正常であればグラフG1から第一電圧値Vaは0.14Vとなり、判定電圧Vref(=0.15V)以下である(ステップS23でYES)から、正しく検査対象部Aは正常であると判定される。
【0086】
一方、第一電圧値Vaが判定電圧Vrefを超えていれば(ステップS23でNO)、判定部52は、検査対象部Aは不良であると判定する(ステップS25)。判定部52は、その判定結果を例えば図略の表示装置に表示したり、外部に送信したりして報知し、あるいは記憶部54に記憶し(ステップS26)、処理を終了する。
【0087】
図3に示す例では、検査対象部Aが不良であればグラフG2から第一電圧値Vaは0.30Vとなり、判定電圧Vref(=0.15V)を超える(ステップS23でNO)から、正しく検査対象部Aは不良であると判定される。
【0088】
ここで、第一電流値Iaは、ステップS1~S17の処理により、複数の電流経路のうち一つが断線した検査対象部A、すなわち不良の検査対象部Aに第一電流値Iaの電流を流した場合に検査対象部Aの両端間の電圧が実質的にオン電圧Vonになる電流値に設定されている。
【0089】
その結果、
図3に示すように、検査対象部Aに第一電流値Iaの電流を流した場合の検査対象部Aの両端間の電圧は、正常な検査対象部A(グラフG1)で0.14V、不良の検査対象部A(グラフG2)で0.30Vとなるから、その電圧差Vd1は0.16Vとなる。
【0090】
一方、もし仮に、第一電流値Iaが、正常な検査対象部Aに第一電流値Iaの電流を流したときに検査対象部Aの両端間の電圧が実質的にオン電圧Vonになる電流値に設定されていた場合には、例えば
図3の場合、第一電流値Iaは0.8mA、検査対象部Aの両端間の電圧は、正常な検査対象部A(グラフG1)で0.30V、不良の検査対象部A(グラフG2)で0.32Vとなるから、その電圧差Vd2は0.02Vとなる。
【0091】
すなわち、
図3に示す例では、第一電流値Iaを、不良の検査対象部Aに第一電流値Iaの電流を流した場合に検査対象部Aの両端間の電圧が実質的にオン電圧Vonになる電流値に設定することによって、正常な検査対象部Aに第一電流値Iaの電流を流した場合に検査対象部Aの両端間の電圧が実質的にオン電圧Vonになる電流値に設定する場合よりも、正常時と不良時の第一電圧値Vaの差が、Vd1/Vd2=0.16/0.02=8倍大きくなる。
【0092】
正常時と不良時の第一電圧値Vaの差が大きいほど、正常か否かの判定が容易である。従って、第一電流値Iaを、不良の検査対象部Aに第一電流値Iaの電流を流した場合に検査対象部Aの両端間の電圧が実質的にオン電圧Vonになる電流値に設定することによって、正常な検査対象部Aに第一電流値Iaの電流を流した場合に検査対象部Aの両端間の電圧が実質的にオン電圧Vonになる電流値に設定する場合よりも、正常か否かの判定を容易にすることができる。
【0093】
なお、第一電流値Iaは、必ずしも不良の検査対象部Aに第一電流値Iaの電流を流した場合に検査対象部Aの両端間の電圧が実質的にオン電圧Vonになる電流値でなくてもよい。例えば、第一電流値Iaを、基準電流値IS(
図3の0.8mA)より小さな電流値とする。さらに、第一電流値Iaを、不良の検査対象部Aに第一電流値Iaの電流を流した場合に検査対象部Aの両端間の電圧が実質的にオン電圧Vonになる電流値(
図3の0.4mA)以上の電流値とする。このようにすれば、
図3から、正常時のグラフG1と不良時のグラフG2との電圧差が、第一電流値Iaが0.8mAを超える場合よりも大きくなり、従って判定が容易になることがわかる。
【0094】
また、
図3から、第一電流値Iaを、0.4mAより小さく、0.1mA以上の電流値とした場合であっても、第一電流値Iaが0.8mAを超える場合よりも正常時と不良時の第一電圧値Vaの差が大きくなり、従って判定が容易になることがわかる。
【0095】
なお、検査装置1は、必ずしも判定部52を備えていなくてもよく、ステップS23~S25を実行しなくてもよい。第一電圧値Vaには、検査対象部Aが正常か否かを示す情報が反映されているので、測定処理部51により第一電圧値Vaが得られることによって、検査対象部Aの検査が容易になる。
【0096】
また、検査対象部Aは、二つの電流経路A1,A2が並列接続された例を示したが、並列接続される電流経路の数は、三つ以上であってもよい。例えば、電流経路A1,A2に加えて図略の電流経路A3が並列接続されている場合、電流経路A3の特性が電流経路A1,A2と略同じであれば、その電流-電圧特性は、
図9で示される。
【0097】
図9に示すグラフG3は正常時の特性を示し、グラフG4は三つの電流経路のうち一つが断線した場合の特性を示し、グラフG5は三つの電流経路のうち二つが断線した場合の特性を示している。グラフG5は、二つの電流経路A1,A2が並列接続された
図3において、一つの電流経路が断線した場合のグラフG2と同じになる。
【0098】
このように、三つの電流経路が並列接続された場合であっても、オン電圧探索部53は、ステップS1~S19と同じ処理によって、オン電圧Von、判定電圧Vref、及び第一電流値Iaを取得することができる。
【0099】
この場合、オン電圧Von=0.30V、第一電流値Ia=0.80mA、電圧値Vg=0.195V、判定電圧Vref=0.215Vとなる。そして、このようにして得られた判定電圧Vref(=0.215V)、及び第一電流値Ia(=0.8mA)に基づいて、ステップS21~S25と同様の処理により、第一電圧値Vaを測定し、検査対象部を検査することができる。
【0100】
この場合、第一電流値Iaを、複数の電流経路のうち一つのみが断線した検査対象部Aに当該第一電流値Iaの電流を流した場合に検査対象部Aの両端間の電圧が実質的にオン電圧Vonになる電流値にすることによって、不良のグラフG4における判定電圧Vrefと第一電圧値Vaとの電圧差Vd3が0.30-0.215=0.085Vとなる。
【0101】
一方、複数の電流経路のうち一つを除く残余の電流経路が断線した検査対象部Aの第一電流値Iaは、ステップS17を、第一電流値Ia=I(m)/Qとすることにより求められる。I(m)/Qにより得られる第一電流値Iaは、複数の電流経路のうち一つを除く残余の電流経路が断線した検査対象部Aに当該第一電流値Iaの電流を流した場合に検査対象部Aの両端間の電圧が実質的にオン電圧Vonになる電流値になる。この場合、
図9に括弧書きで示すように、第一電流値Iaは0.40mA、電圧値Vgは0.09V、判定電圧Vref=0.10Vとなり、不良のグラフG4における判定電圧Vrefと第一電圧値Vaとの電圧差Vd4が0.14-0.10=0.04Vとなる。
【0102】
すなわち、電圧差Vd4よりも電圧差Vd3の方が大きくなる。従って、複数の電流経路のうち一つを除く残余の電流経路が断線した検査対象部Aに基づき第一電流値Iaを得るよりも、複数の電流経路のうち一つのみが断線した検査対象部Aに基づき第一電流値Iaを得る方が、正常時と不良時の第一電圧値Vaの差が大きくなり、正常か否かの判定が容易である。
【0103】
従って、第一電流値Iaを、複数の電流経路のうち一つのみが断線した検査対象部Aに当該第一電流値Iaの電流を流した場合に検査対象部Aの両端間の電圧が実質的にオン電圧Vonになる電流値とすることが、より好ましい。
【0104】
他方、
図9に示すように、電圧差Vd4は、第一電流値Iaを基準電流値IS以上にした場合における、正常のグラフG3と不良のグラフG4との電圧差Vd5よりも大きい。従って、複数の電流経路のうち一つを除く残余の電流経路が断線した検査対象部Aに当該第一電流値Iaの電流を流した場合に検査対象部Aの両端間の電圧が実質的にオン電圧Vonになる電流値とした場合であっても、正常か否かの判定を容易にする効果は得られる。
【0105】
さらに、複数の電流経路のうち一つを除く残余の電流経路が断線した検査対象部Aに電流を流した場合に検査対象部Aの両端間の電圧が実質的にオン電圧Vonになる電流値を、不良電流値IEとする。そして、第一電流値Iaを、基準電流値IS(=1.2mA)より小さく、かつ、不良電流値IE(=0.4mA)以上の電流範囲とした場合の正常なグラフG3と不良のグラフG4との電圧差は、
図9に示すように、電圧差Vd5より大きく、従って、正常か否かの判定が容易である。
【0106】
従って、基準電流値ISより小さく、かつ、不良電流値IE以上の電流範囲を、第一電流値Iaとして好適に用いることができる。
【0107】
また、検査対象部Aに対して第一電流値Iaの電流を流すことにより、検査対象部Aに生じる第一電圧値Vaを測定する例を示したが、以下のようにしてもよい。すなわち、
図10に示すように、検査装置1cは、例えば電流供給部2の代わりに定電圧電源回路等の電圧供給部2cを備えてもよい。そして、測定処理部51cは、電圧供給部2cによって検査対象部Aに対して実質的にオン電圧Von以下の第一電圧値Vaを印加させつつ、検査対象部Aに生じる第一電流値Iaを電流測定部4によって測定させてもよい。そして、判定部52cは、電流測定部4によって測定された第一電流値Iaに基づいて検査対象部Aの良否を判定してもよい。
【0108】
このようにして得られた第一電流値Iaにも、検査対象部Aが正常か否かを示す情報が反映されているので、測定処理部51により第一電圧値Vaが得られることによって、検査対象部Aの検査が容易になる。
(第二実施形態)
【0109】
次に、本発明の第二実施形態に係る検査装置1aについて、
図11に基づき説明する。
図11に示す検査装置1aは、
図1に示す検査装置1とは、制御部5aの構成が異なる。制御部5aは、基準傾き取得部55をさらに備える。測定処理部51a、判定部52a、及びオン電圧探索部53aは、測定処理部51、判定部52、及びオン電圧探索部53とは、動作が異なる。
【0110】
また、検査装置1aは、検査装置1と同様、オン電圧探索部53aを備えなくてもよい。その他の構成は第一実施形態に係る検査装置1と同様であるのでその説明を省略し、以下本実施形態の特徴的な点について説明する。
【0111】
オン電圧探索部53aは、
図5に示すステップS17において、第一電流値Ia=I(m)とすることによって、第一電流値Iaを記憶部54に記憶させる。また、オン電圧探索部53aは、ステップS18,S19は実行不要である。その他の点では、オン電圧探索部53と同様である。
【0112】
オン電圧探索部53aによれば、オン電圧探索部53と同様、検査対象部Aのオン電圧Vonが探索され、探索されたオン電圧Vonと第一電流値Iaとが記憶部54に記憶されることにより予め設定される。
【0113】
基準傾き取得部55は、正常な基準サンプルの検査対象部Aにおいて、その両端間の電圧がオン電圧Von以下の領域における電流-電圧特性の傾きを基準傾きrsとして取得する。
【0114】
測定処理部51aは、第一電流値Iaの電流をパッドPa5,Pa6間に流しつつパッドPa5,Pa6間の電圧を第一電圧値Vaとして測定し、第一電流値Iaよりも小さな第二電流値Ibの電流をパッドPa5,Pa6間に流しつつパッドPa5,Pa6間の電圧を第二電圧値Vbとして測定する。
【0115】
判定部52aは、第一電流値Iaと第二電流値Ibとの差、及び第一電圧値Vaと第二電圧値Vbとの差の比に基づいて、すなわち、検査対象部Aの電流-電圧特性の傾きrtに基づいて、検査対象部Aの良否を判定する。具体的には、判定部52aは、傾きrtを基準傾きrsと比較することによって、検査対象部Aの良否を判定する。
【0116】
次に、上述のように構成された基準傾き取得部55、測定処理部51a、及び判定部52aの動作について、
図12、
図13に基づき説明する。
【0117】
まず、例えばユーザが、図略の載置台に、基準サンプルとして、正常な回路基板100を載置する。そして、基準傾き取得部55は、プローブPr1をパッドPa5に接触させ、プローブPr2をパッドPa6に接触させる(ステップS31)。
【0118】
次に、基準傾き取得部55は、記憶部54から正常な検査対象部Aのオン電圧Vonを読み出して、第一電圧値Vaを、オン電圧Vonと等しい値に設定する(ステップS32)。
【0119】
次に、基準傾き取得部55は、記憶部54から正常な検査対象部Aの第一電流値Iaを読み出して、第一電流値Iaよりも小さい値を第二電流値Ibとして設定する(ステップS33)。例えば
図13に示す例では、第一電圧値Va=オン電圧Von=0.30V、第一電流値Ia=0.8mAである。正常な検査対象部AのグラフG1において、座標(Va,Ia)=(0.30,0.8)の点を、ポイントP1として示している。
【0120】
基準傾き取得部55は、例えば第一電流値Iaである0.8から、予め設定された数、例えば0.5を減算することによって、第二電流値Ibを0.3に設定することができる。あるいは、基準傾き取得部55は、第一電流値Iaに1/2を乗じたり、1/3を乗じたりする等、0より大きく1より小さい係数を第一電流値Iaに乗算することによって第二電流値Ibを求めてもよい。
【0121】
次に、基準傾き取得部55は、プローブPr1,Pr2間に、第二電流値Ibの電流を流し、その電流が流れている期間中にプローブPr1,Pr2間の電圧を第二電圧値Vbとして測定する(ステップS34)。第二電流値Ibが、例えば0.3mAであった場合、
図13に示す正常な検査対象部AのグラフG1において、0.10Vが第二電圧値Vbとして得られる。正常な検査対象部AのグラフG1において、座標(Vb,Ib)=(0.10,0.3)の点を、ポイントP2として示している。
【0122】
次に、基準傾き取得部55は、下記の式(4)に基づいて、基準傾きrsを算出する(ステップS35)。
【0123】
基準傾きrs=(Ia-Ib)/(Va-Vb) ・・・(4)
【0124】
図13におけるグラフG1の場合であれば、基準傾きrs=(0.8-0.3)/(0.30-0.10)=2.5となる。
【0125】
基準傾きrsは、正常な検査対象部AのグラフG1における、ポイントP1とポイントP2とを結ぶ直線の傾きに相当している。基準傾き取得部55は、ステップS31~S35によって得られた第二電流値Ibと基準傾きrsとを記憶部54に記憶させることによって予め設定し、処理を終了する。
【0126】
なお、検査装置1aは、必ずしも基準傾き取得部55を備えていなくてもよい。例えばユーザが実験的に、ステップS31~S35と同様の方法により基準傾きrsを取得し、記憶部54に記憶させ、予め設定するようにしてもよい。あるいはユーザが、
図13に示すグラフG1を作図して直線L1の傾きを基準傾きrsとして読み取り、その読み取った基準傾きrsと第二電流値Ibとを記憶部54に記憶させ、予め設定するようにしてもよい。
【0127】
図14を参照して、まず、例えばユーザが、図略の載置台に、検査しようとする回路基板100を載置する。そして、測定処理部51aは、プローブPr1をパッドPa5に接触させ、プローブPr2をパッドPa6に接触させる(ステップS41)。
【0128】
次に、測定処理部51aは、記憶部54から第一電流値Iaを読み出す。そして、測定処理部51aは、プローブPr1,Pr2間に、第一電流値Iaの電流を流し、その電流が流れている期間中にプローブPr1,Pr2間の電圧を第一電圧値Vaとして測定する(ステップS42)。例えば
図13の場合、検査対象部Aが正常であれば、グラフG1におけるポイントP1において、第一電圧値Va=0.30Vが測定される。一方、電流経路A1,A2のいずれかが断線し、検査対象部Aが不良であれば、グラフG2におけるポイントP3において、第一電圧値Va=0.32Vが測定される。
【0129】
次に、測定処理部51aは、記憶部54から第二電流値Ibを読み出す。そして、測定処理部51aは、プローブPr1,Pr2間に、第二電流値Ibの電流を流し、その電流が流れている期間中にプローブPr1,Pr2間の電圧を第二電圧値Vbとして測定する(ステップS43)。例えば
図13の場合、検査対象部Aが正常であれば、グラフG1におけるポイントP2において、第二電圧値Vb=0.10Vが測定される。一方、電流経路A1,A2のいずれかが断線し、検査対象部Aが不良であれば、グラフG2におけるポイントP4において、第二電圧値Vb=0.22Vが測定される。
【0130】
次に、判定部52aは、下記の式(5)に基づいて、傾きrtを算出する(ステップS44)。
【0131】
傾きrt=(Ia-Ib)/(Va-Vb) ・・・(5)
【0132】
傾きrtは、検査対象部Aが正常であればグラフG1におけるポイントP1とポイントP2とを結ぶ直線L1の傾きを示すことになる。一方、検査対象部Aが不良であれば傾きrtは、グラフG2におけるポイントP3とポイントP4とを結ぶ直線L2の傾きを示すことになる。
図13の直線L1,L2から明らかなように、検査対象部Aが不良の場合、正常な場合と比べて傾きrtが大きくなる。
【0133】
図13に示す例によれば、検査対象部Aが正常な場合、傾きrt=(0.8-0.3)/(0.30-0.10)=2.5となる。一方、検査対象部Aが不良の場合、傾きrt=(0.8-0.3)/(0.32-0.22)=5となる。
【0134】
次に、判定部52aは、基準傾きrsに基づいて、検査対象部Aの良否を判定するための判定値rthを算出する(ステップS45)。具体的には、例えば基準傾きrsのバラツキや測定誤差が最大10%想定される場合、基準傾きrsに1.1を乗じることによって、判定値rthを算出する。例えば基準傾きrs=2.5であれば、判定値rth=2.5×1.1=2.75となる。
【0135】
これにより、基準傾きrsに対し、製造バラツキや測定誤差による誤差が生じた場合であっても、正しく判定することが可能な判定値rthが得られる。
【0136】
次に、判定部52aは、傾きrtと判定値rthとを比較する(ステップS46)。そして、傾きrtが判定値rth以下であれば(ステップS46でNO)、判定部52aは、検査対象部Aは正常であると判定する(ステップS47)。判定部52aは、その判定結果を例えば図略の表示装置に表示したり、外部に送信したりして報知し、あるいは記憶部54に記憶して処理を終了する。
【0137】
一方、傾きrtが判定値rthを超えていれば(ステップS46でYES)、判定部52aは、検査対象部Aは不良であると判定する(ステップS48)。判定部52aは、その判定結果を例えば図略の表示装置に表示したり、外部に送信したりして報知し、あるいは記憶部54に記憶して処理を終了する(ステップS26)。
【0138】
図13に示す例では、検査対象部Aが正常であれば、上述したように傾きrtは2.5となり、判定値rth=2.75以下である(ステップS46でNO)から、正しく検査対象部Aは正常であると判定される。一方、検査対象部Aが不良であれば、上述したように傾きrtは5となり、判定値rth=2.75を超える(ステップS46でYES)から、正しく検査対象部Aは不良であると判定される。
【0139】
式(5)において、(Ia-Ib)は第一電流値Iaと第二電流値Ibとの差であり、(Va-Vb)は第一電圧値Vaと第二電圧値Vbとの差であるから、傾きrtは、第一電流値Iaと第二電流値Ibとの差、及び第一電圧値Vaと第二電圧値Vbとの差の比である。従って、判定部52aは、第一電流値Iaと第二電流値Ibとの差、及び第一電圧値Vaと第二電圧値Vbとの差の比である傾きrtに基づいて、検査対象部Aの良否を判定する。
【0140】
以上、ステップS41~S48によれば、第一電流値Iaが、正常な検査対象部Aにおいて実質的にオン電圧Vonが得られる電流値に設定され、第二電流値Ibが、第一電流値Iaより小さな電流値に設定されている。その結果、正常な検査対象部Aにおけるオン電圧Vonに対応するポイントP1が直線L1における高電圧、高電流側の端部となり、ポイントP2が直線L1における低電圧、低電流側の端部となる。
【0141】
そして、このような第一電流値Ia及び第二電流値Ibに基づいて第一電圧値Va及び第二電圧値Vbが取得されるので、検査対象部Aが不良で有った場合には、
図13のグラフG2に示すように、第一電流値Iaに対応するポイントP3はグラフG2のオン電圧より高電圧側、すなわち急峻にグラフG2が立ち上がり、傾きが大きい領域に位置することとなる。
【0142】
その結果、検査対象部Aが不良の場合の直線L2は、検査対象部Aが正常な場合の直線L1よりも傾きrtが大きくなる。従って、ステップS41~S48によれば、直線L1,L2の傾きrtに基づいて、検査対象部Aを検査することが容易である。
【0143】
なお、検査対象部Aは、並列接続された二つの電流経路A1,A2が並列接続された例を示したが、並列接続される電流経路の数は、三つ以上であってもよい。例えば、電流経路A1,A2に加えて図略の電流経路A3が並列接続されている場合、電流経路A3の特性が電流経路A1,A2と略同じであれば、その電流-電圧特性は、
図15で示される。
【0144】
図15に示すグラフG3,G4,G5は、
図9に示すグラフG3,G4,G5と同じになる。
【0145】
このように、三つの電流経路が並列接続された場合であっても、オン電圧探索部53aは、ステップS7において電流値の上限を1.0から1.4程度に変更することによって、正常時のグラフG3におけるオン電圧Von(=0.30V)及び第一電流値Ia(=1.2mA)を取得することができる。
【0146】
そして、このようにして得られた第一電流値Ia(=1.2mA)に基づいて、基準傾き取得部55は、
図12に示すステップS31~S35と同様の処理により基準傾きrsを算出することができる。
図15に示すグラフG3では、ステップS33において第一電流値Iaの1/3を第二電流値Ib(=0.4mA)とした例を示している。グラフG3の場合、第一電流値Ia(=1.2mA)、第一電圧値Va(=0.30V)の点がポイントP5、第二電流値Ib(=0.4mA)、第二電圧値Vb(=0.09V)の点がポイントP6となる。ポイントP5とポイントP6を結ぶ直線L3の傾き、すなわち基準傾きrs=(1.2-0.4)/(0.30-0.09)=3.8となる。
【0147】
また、測定処理部51a及び判定部52aは、
図14に示すステップS41~S48と同様の処理により、グラフG4,G5の不良を正しく判定することができる。例えば、グラフG4の場合、第一電流値Ia(=1.2mA)、第一電圧値Va(=0.31V)の点がポイントP7、第二電流値Ib(=0.4mA)、第二電圧値Vb(=0.14V)の点がポイントP8となる。ポイントP7とポイントP8を結ぶ直線L4の傾きrt=(1.2-0.4)/(0.31-0.14)=4.7となる。
【0148】
従って、直線L4の傾きrt(=4.7)は、判定値rth(=3.8×1.1=4.2)より大きくなるから(ステップS46でYES)、判定部52aは、グラフG4の検査対象部Aを正しく不良であると判定することができる。
【0149】
例えば、グラフG5の場合、第一電流値Ia(=1.2mA)、第一電圧値Va(=0.33V)の点がポイントP9、第二電流値Ib(=0.4mA)、第二電圧値Vb(=0.30V)の点がポイントP10となる。ポイントP9とポイントP10を結ぶ直線L5の傾きrt=(1.2-0.4)/(0.33-0.30)=26.7となる。
【0150】
従って、直線L5の傾きrt(=26.7)は、判定値rth(=4.2)より大きくなるから(ステップS46でYES)、判定部52aは、グラフG5の検査対象部Aを正しく不良であると判定することができる。
(第三実施形態)
【0151】
次に、本発明の第三実施形態に係る検査装置1bについて説明する。検査装置1bの構成は、第一実施形態と同様、
図1で示される。
図1において、検査装置1とは異なる構成についてはカッコ書きで符号を付している。第三実施形態に係る検査装置1bは、第一実施形態に係る検査装置1とは、制御部5bの構成が異なる。制御部5bは、測定処理部51b及び判定部52bの動作が、測定処理部51及び判定部52とは異なる。また、制御部5bは、オン電圧探索部53の代わりに制御部5aと同様のオン電圧探索部53aを備える。
【0152】
その他の構成は第一実施形態に係る検査装置1と同様であるのでその説明を省略し、以下本実施形態の特徴的な点について説明する。
【0153】
測定処理部51bは、電流値を異ならせつつ複数回、プローブPr1,Pr2間に電流を流し、各電流が流れる各期間中にプローブPr1,Pr2間の電圧を測定し、当該測定された複数の電圧の変化に基づいて検査対象部Aがオンしたときのオン電流Ionを取得する。
【0154】
判定部52bは、オン電流Ionに基づいて検査対象部Aの良否を判定する。
【0155】
次に、上述のように構成された検査装置1bの動作について説明する。まず、オン電圧探索部53aによって、上述したように、検査対象部Aのオン電圧Vonが探索され、探索されたオン電圧Vonに対応する第一電流値Iaが記憶部54に記憶されることにより予め設定される。なお、第三実施形態においては、オン電圧探索部53aは、ステップS16を実行しなくてもよい。
【0156】
図16~
図18を参照して、例えばユーザが、図略の載置台に、検査しようとする回路基板100を載置する。そして、測定処理部51bは、プローブPr1をパッドPa5に接触させ、プローブPr2をパッドPa6に接触させる(ステップS51)。以下、測定処理部51bによって、
図4、
図5と同様のステップS2~S8、S11~S15が実行される。
【0157】
測定処理部51bは、ステップS2~S7の処理により、電流値を異ならせつつ複数回、プローブPr1,Pr2間に電流を流し、各電流が流れる各期間中にプローブPr1,Pr2間の電圧を測定する。
【0158】
次に、測定処理部51bは、ステップS15で得られた最大の比R(m)から、オン電圧Vonに対応する番号mを取得する。そして、測定処理部51bは、ステップS5で記憶部54に記憶された測定情報を参照し、番号mの電流値I(m)をオン電流Ionとする(ステップS61)。
図18に示す例では、正常な検査対象部Aを測定した場合にはオン電流Ionとして0.8mAが得られ、不良の検査対象部Aを測定した場合にはオン電流Ionとして0.4mAが得られることになる。
【0159】
以上、ステップS6~S61の処理により、測定処理部51bは、n個の電圧値V(1)~V(n)の変化に基づいて、検査対象部Aのオン電流Ionを取得することができる。
【0160】
次に、判定部52bは、オン電圧探索部53aによって、
図5に示すステップS17において記憶部54に記憶された正常な検査対象部Aのオン電流であるI(m)を第一電流値Iaとして読み出して、この第一電流値Iaに基づいて、検査対象部Aの良否を判定するための判定値Irefを算出する(ステップS62)。具体的には、例えば第一電流値Iaのバラツキや測定誤差が最大10%想定される場合、第一電流値Iaに0.9を乗じることによって、判定値Irefを算出する。
図18に示すグラフG1の例では、第一電流値Ia=0.8となるから、判定値Iref=0.8×0.9=0.72となる。
【0161】
これにより、オン電流Ionに対し、製造バラツキや測定誤差による誤差が生じた場合であっても、正しく判定することが可能な判定値Irefが得られる。
【0162】
次に、判定部52bは、オン電流Ionと判定値Irefとを比較する(ステップS63)。そして、オン電流Ionが判定値Irefを超えていれば(ステップS63でYES)、判定部52bは、検査対象部Aは正常であると判定する(ステップS64)。判定部52bは、その判定結果を例えば図略の表示装置に表示したり、外部に送信したりして報知し、あるいは記憶部54に記憶して処理を終了する(ステップS26)。
【0163】
一方、オン電流Ionが判定値Iref以下であれば(ステップS63でNO)、判定部52bは、検査対象部Aは不良であると判定する(ステップS65)。判定部52bは、その判定結果を例えば図略の表示装置に表示したり、外部に送信したりして報知し、あるいは記憶部54に記憶して処理を終了する。
【0164】
図18に示す例では、検査対象部Aが正常であれば、グラフG1に示すようにオン電流Ionは0.8となり、判定値Iref=0.72を超えている(ステップS63でYES)から、正しく検査対象部Aは正常であると判定される。一方、検査対象部Aが不良であれば、グラフG2に示すようにオン電流Ionは0.4となり、判定値Iref=0.72以下である(ステップS63でNO)から、正しく検査対象部Aは不良であると判定される。
【0165】
以上、ステップS51~S65の処理によれば、検査対象部Aの良否を正しく判定することができ、従って、検査対象部Aを検査することが容易である。
【0166】
なお、
図16に示すステップS4において電流値を異ならせつつ複数回、ステップS5においてプローブPr1,Pr2間に電流を流し、各電流が流れる各期間中にプローブPr1,Pr2間の電圧を測定する例を示したが、例えば
図19に示すようにステップS2~S5,S7の代わりにステップS2a~S5a,S7aを実行することによって、測定処理部51bは、電圧値を異ならせつつ複数回、プローブPr1,Pr2間に電圧を印加し、各電圧が印加されている各期間中にプローブPr1,Pr2間を流れる電流を測定してもよい。この場合であっても、ステップS6~S61の処理により、測定処理部51bは、n個の電流値I(1)~I(n)の変化に基づいて、検査対象部Aのオン電流Ionを取得することができる。
【0167】
なお、検査対象部Aは、二つの電流経路A1,A2が並列接続された例を示したが、並列接続される電流経路の数は、三つ以上であってもよい。例えば、電流経路A1,A2に加えて図略の電流経路A3が並列接続されている場合、電流経路A3の特性が電流経路A1,A2と略同じであれば、その電流-電圧特性は、
図20で示される。
【0168】
図20に示すグラフG3,G4,G5は、
図9に示すグラフG3,G4,G5と同じになる。
【0169】
このように、三つの電流経路が並列接続された場合であっても、オン電圧探索部53aは、ステップS7において電流値の上限を1.0から1.4程度に変更することによって、正常時のグラフG3における第一電流値Ia(=1.2mA)を取得することができる。
【0170】
そして、測定処理部51bは、
図16、
図17、
図19に示すステップS51~S61の処理によりオン電流Ionを取得することができる。判定部52bは、オン電流Ionと、第一電流値Iaとに基づき、
図17に示すステップS61~S65の処理により、検査対象部Aの良否を判定することができる。第一電流値Ia=1.2mAの場合、判定値Iref=1.2×0.9=1.08となる(ステップS62)。
【0171】
グラフG3の場合、オン電流Ion(=1.2)が判定値Iref(=1.08)を超えている(ステップS63でYES)から、グラフG3の検査対象部Aを正しく正常と判定することができる(ステップS64)。グラフG4の場合、オン電流Ion(=0.8)が判定値Iref(=1.08)以下である(ステップS63でNO)から、グラフG4の検査対象部Aを正しく不良と判定することができる(ステップS65)。グラフG5の場合、オン電流Ion(=0.4)が判定値Iref(=1.08)以下である(ステップS63でNO)から、グラフG5の検査対象部Aを正しく不良と判定することができる(ステップS65)。
【0172】
すなわち、本発明の一例に係る検査装置は、順方向の電圧がオン電圧を超えた場合の前記電圧の変化に対する電流の変化が、前記順方向の電圧が前記オン電圧に満たない場合よりも大きいダイオード特性を有する複数の電流経路が並列接続された検査対象部の検査を行うための検査装置であって、電流を供給可能な電流供給部と、電圧を測定可能な電圧測定部と、予め設定された第一電流値の電流を前記電流供給部によって前記両端間に流させつつ、前記両端間の電圧を前記電圧測定部によって第一電圧値として測定させる測定処理部とを備え、前記第一電流値は、正常な前記検査対象部の両端間の電圧が実質的に前記オン電圧になる電流値以下である。
【0173】
また、本発明の一例に係る検査方法は、順方向の電圧がオン電圧を超えた場合の前記電圧の変化に対する電流の変化が、前記順方向の電圧が前記オン電圧に満たない場合よりも大きいダイオード特性を有する複数の電流経路が並列接続された検査対象部の検査を行う検査方法であって、予め設定された第一電流値の電流を前記両端間に流しつつ、前記両端間の電圧を第一電圧値として測定する測定処理工程を含み、前記第一電流値は、正常な前記検査対象部の両端間の電圧が実質的に前記オン電圧になる電流値以下である。
【0174】
ダイオード特性を有する検査対象部は、その特性上、両端間の電圧がオン電圧を超える領域では、流れる電流に対する前記電圧の変化が僅かである。これらの構成によれば、正常な検査対象部の両端間の電圧が実質的にオン電圧になる電流値以下の第一電流値が検査対象部に流れたときの、その検査対象部の両端間の電圧が第一電圧値として測定される。そうすると、正常な検査対象部の両端間の電圧がオン電圧を超えない領域において、検査対象部に流れる第一電流値の電流に対してその両端間に生じる電圧が第一電圧値として測定されるから、複数の電流経路のいずれかが断線した場合の第一電圧値の変化が大きく現れる。従って、第一電圧値には、検査対象部が正常か否かを示す情報が反映されるので、第一電圧値が得られることによって、検査対象部の検査が容易になる。
【0175】
また、前記第一電圧値に基づいて、前記検査対象部の良否を判定する判定部をさらに備えることが好ましい。
【0176】
この構成によれば、第一電圧値に基づいて、検査対象部の良否を判定することができる。
【0177】
また、本発明の一例に係る検査装置は、順方向の電圧がオン電圧を超えた場合の前記電圧の変化に対する電流の変化が、前記順方向の電圧が前記オン電圧に満たない場合よりも大きいダイオード特性を有する複数の電流経路が並列接続された検査対象部の検査を行うための検査装置であって、電圧を出力可能な電圧供給部と、電流を測定可能な電流測定部と、実質的に前記オン電圧以下に予め設定された第一電圧値の電圧を前記電圧供給部によって前記検査対象部の両端間に印加させつつ、前記両端間に流れる電流を前記電流測定部によって第一電流値として測定させる測定処理部とを備える。
【0178】
また、本発明の一例に係る検査方法は、順方向の電圧がオン電圧を超えた場合の前記電圧の変化に対する電流の変化が、前記順方向の電圧が前記オン電圧に満たない場合よりも大きいダイオード特性を有する複数の電流経路が並列接続された検査対象部の検査を行う検査方法であって、実質的に前記オン電圧以下に予め設定された第一電圧値の電圧を前記検査対象部の両端間に印加しつつ、前記両端間に流れる電流を第一電流値として測定する測定処理工程を含む。
【0179】
これらの構成によれば、第一電流の代わりに第一電圧が検査対象部の両端間に印加され、第一電圧の代わりに検査対象部の両端間に流れる電流が第一電流として測定される。この場合であっても、測定される第一電流には、検査対象部が正常か否かを示す情報が反映されるので、第一電流が得られることによって、検査対象部の検査が容易になる。
【0180】
また、前記第一電流値に基づいて、前記検査対象部の良否を判定する判定部をさらに備えることが好ましい。
【0181】
この構成によれば、第一電流値に基づいて、検査対象部の良否を判定することができる。
【0182】
また、正常な前記検査対象部は、前記複数の電流経路が全て導通しているものであることが好ましい。
【0183】
並列接続された複数の電流経路が全て導通していれば、検査対象部は正常である。
【0184】
また、前記第一電流値は、前記複数の電流経路のうち一つを除く残余の電流経路が断線した前記検査対象部に当該第一電流値の電流を流した場合に前記検査対象部の両端間の電圧が実質的に前記オン電圧になる電流値以上であることが好ましい。
【0185】
この構成によれば、第一電流値は、正常な検査対象部の両端間の電圧が実質的にオン電圧になる電流値以下であって、かつ、複数の電流経路のうち一つを除く残余の電流経路が断線した検査対象部に当該第一電流値の電流を流した場合に検査対象部の両端間の電圧が実質的にオン電圧になる電流値以上の電流範囲に、予め設定されている。このような電流範囲は、第一電流値として好適である。
【0186】
また、前記第一電流値は、前記複数の電流経路のうち一つのみが断線した前記検査対象部に当該第一電流値の電流を流した場合に前記検査対象部の両端間の電圧が実質的に前記オン電圧になる電流値以上であることが好ましい。
【0187】
この構成によれば、第一電流値は、正常な検査対象部の両端間の電圧が実質的にオン電圧になる電流値以下であって、かつ、複数の電流経路のうち一つのみが断線した前記検査対象部に当該第一電流値の電流を流した場合に検査対象部の両端間の電圧が実質的にオン電圧になる電流値以上の電流範囲に、予め設定されている。このような電流範囲は、第一電流値として好適である。
【0188】
また、前記第一電流値は、前記複数の電流経路のうち一つのみが断線した前記検査対象部に当該第一電流値の電流を流した場合に前記検査対象部の両端間の電圧が実質的に前記オン電圧になる電流値であることが好ましい。
【0189】
この構成によれば、第一電流値は、複数の電流経路のうち一つのみが断線した検査対象部に当該第一電流値の電流を流した場合に検査対象部の両端間の電圧が実質的にオン電圧になる電流値に、予め設定されている。この場合、第一電流値が、正常な検査対象部に当該第一電流値の電流を流した場合に検査対象部の両端間の電圧が実質的にオン電圧になる電流値である場合よりも、正常時と不良時とで得られる第一電圧値の差が大きい。従って、第一電圧値に基づいて検査対象部の良否を判定することが、より容易になる。
【0190】
また、前記第一電流値は、正常な前記検査対象部の両端間の電圧が実質的に前記オン電圧になる電流値であり、前記測定処理部は、前記第一電流値の電流を前記電流供給部によって前記両端間に流させつつ前記両端間の電圧を前記電圧測定部によって第一電圧値として測定させ、前記第一電流値よりも小さな第二電流値の電流を前記電流供給部によって前記両端間に流させつつ前記両端間の電圧を前記電圧測定部によって第二電圧値として測定させ、前記検査装置は、前記第一電流値と前記第二電流値との差、及び前記第一電圧値と前記第二電圧値との差の比に基づいて、前記検査対象部の良否を判定する判定部をさらに備えることが好ましい。
【0191】
この構成によれば、第一電流値と第二電流値との差、及び第一電圧値と第二電圧値との差の比は、検査対象部の電流-電圧特性グラフにおける、第一電流値と第一電圧値とが交わる点と、第二電流値と第二電圧値とが交わる点とを結ぶ直線の傾きを表す。そして、この傾きは、正常な検査対象部よりも、複数の電流経路のうちいずれかが断線した検査対象部の方が大きくなる。従って、判定部は、上記傾きに基づいて、検査対象部の良否を判定することができる。
【0192】
また、電流値を異ならせつつ複数回、前記電流供給部によって前記両端間に電流を流させ、前記各電流が流れる各期間中に前記電圧測定部によって前記両端間の電圧を測定させ、当該測定された複数の電圧の変化に基づいて前記検査対象部のオン電圧を探索するオン電圧探索部をさらに備えることが好ましい。
【0193】
この構成によれば、特性が不明な検査対象部のオン電圧を探索することができる。
【0194】
また、本発明の一例に係る検査装置は、順方向の電圧がオン電圧を超えた場合の前記電圧の変化に対する電流の変化が、前記順方向の電圧が前記オン電圧に満たない場合よりも大きいダイオード特性を有する複数の電流経路が並列接続された検査対象部の検査を行うための検査装置であって、電流又は電圧のうち一方を、値を異ならせつつ複数回、前記検査対象部の両端間に供給し、前記一方が供給される各期間中に前記両端間における前記電流又は電圧のうち他方を測定し、当該測定された前記他方の変化に基づいて前記検査対象部がオンする前記電流を取得する測定処理部と、前記測定処理部によって取得された前記電流に基づいて前記検査対象部の良否を判定する判定部とを備える。
【0195】
また、本発明の一例に係る検査方法は、順方向の電圧がオン電圧を超えた場合の前記電圧の変化に対する電流の変化が、前記順方向の電圧が前記オン電圧に満たない場合よりも大きいダイオード特性を有する複数の電流経路が並列接続された検査対象部の検査を行うための検査方法であって、電流又は電圧のうち一方を、値を異ならせつつ複数回、前記検査対象部の両端間に供給し、前記一方が供給される各期間中に前記両端間における前記電流又は電圧のうち他方を測定し、当該測定された前記他方の変化に基づいて前記検査対象部がオンする前記電流を取得する測定処理工程と、前記測定処理部によって取得された前記電流に基づいて前記検査対象部の良否を判定する判定工程とを含む。
【0196】
検査対象部がオンする電流は、複数の電流経路のうちいずれかに断線が生じた検査対象部よりも、正常な検査対象部の方が多くなる。そこでこれらの構成によれば、検査対象部がオンする電流が取得され、その電流に基づいて検査対象部の良否を判定することができる。
【0197】
また、本発明の一例に係る検査装置用プログラムは、上述の検査装置を動作させるための検査装置用プログラムであって、コンピュータを、前記測定処理部として機能させる。
【0198】
このプログラムによれば、コンピュータを、前記測定処理部として機能させることによって、上述の検査装置を動作させることができる。
【0199】
このような構成の検査装置、検査方法、及び検査装置用プログラムは、複数のダイオードが並列接続された検査対象の検査が容易である。
【0200】
この出願は、2018年12月6日に出願された日本国特許出願特願2018-228749を基礎とするものであり、その内容は、本願に含まれるものである。なお、発明を実施するための形態の項においてなされた具体的な実施態様又は実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、本発明は、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではない。
【符号の説明】
【0201】
1,1a,1b 検査装置
2 電流供給部
3 電圧測定部
4 電流測定部
5,5a,5b 制御部
51,51a,51b 測定処理部
52,52a,52b 判定部
53,53a オン電圧探索部
54 記憶部
55 基準傾き取得部
100 回路基板
101 配線基板
102 部品
A,B,C 検査対象部
A1,A2,A3 電流経路
D1,D2 ダイオード
G1,G2,G3,G4,G5 グラフ
I 電流値
Ia 第一電流値
Ib 第二電流値
Ion オン電流
Iref 判定値
IS 基準電流値
L1,L2,L3,L4,L5 直線
P1~P10 ポイント
Pa1~Pa6 パッド
Pr1,Pr2 プローブ
R 比
T1~T4 端子
V 電圧値
Va 第一電圧値
Vb 第二電圧値
Vd1,Vd2 電圧差
Vg 電圧値
Von オン電圧
Vref 判定電圧
W1~W8 配線パターン
rs 基準傾き
rt 傾き
rth 判定値