(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】接触端子、検査治具、及び検査装置
(51)【国際特許分類】
G01R 1/067 20060101AFI20240228BHJP
G01R 1/073 20060101ALI20240228BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
G01R1/067 C
G01R1/073 E
H01L21/66 B
(21)【出願番号】P 2020565667
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(86)【国際出願番号】 JP2019049797
(87)【国際公開番号】W WO2020145073
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2019002395
(32)【優先日】2019-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】392019709
【氏名又は名称】ニデックアドバンステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】太田 憲宏
(72)【発明者】
【氏名】戒田 理夫
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-197714(JP,A)
【文献】特開2000-346872(JP,A)
【文献】特開2007-024664(JP,A)
【文献】特開2015-158491(JP,A)
【文献】特開2002-323515(JP,A)
【文献】特開2012-145593(JP,A)
【文献】国際公開第2017/208690(WO,A1)
【文献】特開2017-162600(JP,A)
【文献】特開2017-134045(JP,A)
【文献】西独国特許出願公開第03332187(DE,A1)
【文献】特開2017-142080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 1/06-1/073、
31/26-31/27、
31/28-31/3193、
H01L 21/64-21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有し、かつ筒状形状を有する筒状体と、
導電性を有し、かつ棒状形状を有する第一中心導体とを備え、
前記筒状体は、軸方向に垂直な断面の形状が矩形又は六角形であり、
前記第一中心導体は、
当該第一中心導体の軸方向に垂直な断面の形状が前記筒状体の前記断面の形状と同じであり、前記筒状体の一端部側に挿入される第一挿入部と、
前記筒状体の一端部から突出する第一突出部とを含
み、
導電性を有し、棒状形状を有する第二中心導体をさらに備え、
前記第二中心導体は、
当該第二中心導体の軸方向に垂直な断面の形状が前記筒状体の前記断面の形状と同じであり、前記筒状体の他端部側に挿入される第二挿入部と、
前記筒状体の他端部から突出する第二突出部とを含み、
前記筒状体は、
前記第一突出部を前記突出する方向へ向けて付勢する螺旋状の第一ばね部と、
前記第一ばね部に連接された筒部と、
前記筒部の前記第一ばね部とは反対側に連接された螺旋状の第二ばね部とを含み、
前記第一ばね部と前記第二ばね部とは、螺旋の巻き方向が互いに逆である接触端子。
【請求項2】
前記第一挿入部の前記断面における対角線の長さは、前記筒状体の前記断面における内壁の一辺よりも長い請求項1に記載の接触端子。
【請求項3】
前記第一挿入部は、
前記第一突出部とは反対側の端部に設けられた第一膨出部と、
前記第一膨出部から前記第一突出部へ向かって延び、前記第一膨出部より細い第一棒状本体とを含む請求項
1又は2に記載の接触端子。
【請求項4】
前記第一膨出部は、前記筒部内に位置する請求項
3に記載の接触端子。
【請求項5】
前記第二挿入部は、
前記第二突出部とは反対側の端部に設けられた第二膨出部と、
前記第二膨出部から前記第二突出部へ向かって延び、前記第二膨出部より細い第二棒状本体とを含む請求項
4に記載の接触端子。
【請求項6】
前記第一膨出部及び前記第二膨出部は、前記筒部内に位置する請求項
5に記載の接触端子。
【請求項7】
前記筒状体は、前記第一突出部を前記突出する方向へ向けて付勢する螺旋状のばね部を含み、
前記ばね部は、前記螺旋状の巻き方向が一定である請求項1又は2に記載の接触端子。
【請求項8】
前記筒状体内に設けられ、前記第一中心導体を前記一端部側へ付勢する付勢部材をさらに備える請求項1又は2に記載の接触端子。
【請求項9】
複数の、請求項
1~8のいずれか1項に記載の接触端子と、
前記複数の接触端子を支持する支持部材とを備える検査治具。
【請求項10】
前記支持部材は、前記複数の接触端子の、前記筒状体の前記断面の形状における辺を、互いに同一方向に向けて支持する請求項
9に記載の検査治具。
【請求項11】
請求項
9又は10に記載の検査治具と、
前記接触端子を検査対象に設けられた検査点に接触させることにより得られる電気信号に基づき、前記検査対象の検査を行う検査処理部とを備える検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象の検査に使用される接触端子、この接触端子を検査対象に接触させるための検査治具、及びその検査治具を備えた検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、測定対象物の導電パッドに接触する接触子を有する接触ピンと、この接触ピンの接触子の一直線上に延設された円柱状案内子が挿入される円筒状の筒体とを具備し、筒体の周壁の一部がスプリングとなっているコイルスプリングプローブが知られている(例えば、特許文献1参照)。このコイルスプリングプローブは、複数並べて配置され、測定対象物の複数の導電パッドに対して接触される(特許文献1の
図3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、測定対象物の半導体基板や回路基板の微細化が進んでいる。そのため、測定対象物の隣接ピッチが小さくなっている。測定対象物の隣接ピッチが小さくなると、コイルスプリングプローブの隣接ピッチも小さくする必要がある。コイルスプリングプローブの隣接ピッチをある程度以上小さくするためには、筒体及び案内子を細くする必要がある。
【0005】
しかしながら、測定のための電流が流れる筒体及び案内子を細くすると、導体の断面積が小さくなるため、プローブの抵抗値が増大してしまうという不都合があった。
【0006】
本発明の目的は、抵抗値の増大を低減しつつ、隣接ピッチを小さくすることが容易な接触端子、及びこれを用いた検査治具、検査装置を提供することである。
【0007】
本発明の一例に係る接触端子は、導電性を有し、かつ筒状形状を有する筒状体と、導電性を有し、かつ棒状形状を有する第一中心導体とを備え、前記筒状体は、軸方向に垂直な断面の形状が矩形であり、前記第一中心導体は、軸方向に垂直な断面の形状が矩形であり、前記筒状体の一端部側に挿入される第一挿入部と、前記筒状体の一端部から突出する第一突出部とを含む。
【0008】
また、本発明の一例に係る検査治具は、複数の、上述の接触端子と、前記複数の接触端子を支持する支持部材とを備える。
【0009】
また、本発明の一例に係る検査装置は、上述の検査治具と、前記接触端子を検査対象に設けられた検査点に接触させることにより得られる電気信号に基づき、前記検査対象の検査を行う検査処理部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係るプローブを備えた半導体検査装置の構成を概略的に示す概念図である。
【
図2】
図1に示す検査治具の構成の一例を示す模式的な断面図である。
【
図3】
図2に示すプローブの具体的構成を示す正面図である。
【
図4】
図3に示すプローブを、筒状体と、第一中心導体と、第二中心導体とに分解して示す説明図である。
【
図6】
図2に示す検査治具を、下側からみた平面図である。
【
図7】
図2に示すプローブ及び検査治具の効果を説明するための説明図である。
【
図8】
図2に示す検査治具が第一ピッチ変換ブロックに取り付けられ、バンプにプローブの先端部が圧接された検査状態を示す模式的な断面図である。
【
図9】
図3に示す第一ばね部及び第二ばね部が圧縮されたときのプローブを示す正面図である。
【
図10】
図9に示す圧縮された状態のプローブを切断線Xで切断した断面図である。
【
図11】
図3に示すプローブの変形例を示す正面図である。
【
図12】
図11に示す第一ばね部及び第二ばね部が圧縮されたときのプローブを示す正面図である。
【
図13】
図3に示すプローブの別の変形例であるポゴピンを示す斜視図である。
【
図15】
図3に示すプローブの変形例を示す正面図である。
【
図16】
図5に示す断面形状の変形例を示す断面図である。
【
図17】第一中心導体の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
【0012】
図1に示す半導体検査装置1は検査装置の一例に相当している。
図1に示す半導体検査装置1は、検査対象物の一例である半導体ウェハ101に形成された回路を検査するための検査装置である。
【0013】
半導体ウェハ101には、例えばシリコンなどの半導体基板に、複数の半導体チップに対応する回路が形成されている。なお、検査対象物は、半導体チップ、CSP(Chip size package)、半導体素子(IC:Integrated Circuit)等の電子部品であってもよく、その他電気的な検査を行う対象となるものであればよい。
【0014】
また、検査装置は半導体検査装置に限られず、例えば基板を検査する基板検査装置であってもよい。検査対象物となる基板は、例えばプリント配線基板、ガラスエポキシ基板、フレキシブル基板、セラミック多層配線基板、半導体パッケージ用のパッケージ基板、インターポーザ基板、フィルムキャリア等の基板であってもよく、液晶ディスプレイ、EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ、タッチパネルディスプレイ等のディスプレイ用の電極板や、タッチパネル用等の電極板であってもよく、種々の基板であってよい。
【0015】
図1に示す半導体検査装置1は、検査部4と、試料台6と、検査処理部8とを備えている。試料台6の上面には、半導体ウェハ101が載置される載置部6aが設けられており、試料台6は、検査対象の半導体ウェハ101を所定の位置に固定するように構成されている。
【0016】
載置部6aは、例えば昇降可能にされており、試料台6内に収容された半導体ウェハ101を検査位置に上昇させたり、検査済の半導体ウェハ101を試料台6内に格納したりすることが可能にされている。また、載置部6aは、例えば半導体ウェハ101を回転させて、オリエンテーション・フラットを所定の方向に向けることが可能にされている。また、半導体検査装置1は、図略のロボットアーム等の搬送機構を備え、その搬送機構によって、半導体ウェハ101を載置部6aに載置したり、検査済の半導体ウェハ101を載置部6aから搬出したりする。
【0017】
検査部4は、検査治具3、ピッチ変換ブロック35、及び接続プレート37を備えている。検査治具3は、半導体ウェハ101に複数のプローブPrを接触させて検査するための治具であり、例えば、いわゆるプローブカードとして構成されている。
【0018】
半導体ウェハ101には、複数のチップが形成されている。各チップには、複数のパッドやバンプBP等の検査点が形成されている。検査治具3は、半導体ウェハ101に形成された複数のチップのうち一部の領域(例えば
図1にハッチングで示す領域、以下、検査領域と称する)に対応して、検査領域内の各検査点に対応するように、複数のプローブPrを保持している。
【0019】
検査領域内の各検査点にプローブPrを接触させて当該検査領域内の検査が終了すると、載置部6aが半導体ウェハ101を下降させ、試料台6が平行移動して検査領域を移動させ、載置部6aが半導体ウェハ101を上昇させて新たな検査領域にプローブPrを接触させて検査を行う。このように、検査領域を順次移動させつつ検査を行うことによって、半導体ウェハ101全体の検査が実行されるようになっている。
【0020】
なお、
図1は、半導体検査装置1の構成の一例を、発明の理解を容易にする観点から簡略的及び概念的に示した説明図であり、プローブPrの本数、密度、配置や、検査部4及び試料台6の各部の形状、大きさの比率、等についても、簡略化、概念化して記載している。例えば、プローブPrの配置の理解を容易にする観点で、一般的な半導体検査装置よりも検査領域を大きく強調して記載しており、検査領域はもっと小さくてもよく、もっと大きくてもよい。
【0021】
接続プレート37は、ピッチ変換ブロック35を着脱可能に構成されている。接続プレート37には、ピッチ変換ブロック35と接続される図略の複数の電極が形成されている。接続プレート37の各電極は、例えば図略のケーブルや接続端子等によって、検査処理部8と電気的に接続されている。ピッチ変換ブロック35は、プローブPr相互間の間隔を、接続プレート37の電極ピッチに変換するためのピッチ変換部材である。
【0022】
検査治具3は、後述する先端部P1と基端部P2とを有する複数のプローブPr(接触端子)と、複数のプローブPrを、先端部P1を半導体ウェハ101へ向けて保持する支持部材31とを備えている。
【0023】
ピッチ変換ブロック35には、各プローブPrの基端部P2と接触して導通する後述の電極34aが設けられている。検査部4は、接続プレート37、及びピッチ変換ブロック35を介して、検査治具3の各プローブPrを、検査処理部8と電気的に接続したり、その接続を切り替えたりする図略の接続回路を備えている。
【0024】
これにより、検査処理部8は、接続プレート37、及びピッチ変換ブロック35を介して、任意のプローブPrに対して検査用信号を供給したり、任意のプローブPrから信号を検出したりすることが可能にされている。
【0025】
検査処理部8は、例えば電源回路、電圧計、電流計、及びマイクロコンピュータ等を備えている。検査処理部8は、図略の駆動機構を制御して検査部4を移動、位置決めし、半導体ウェハ101の各検査点に、各プローブPrを接触させる。これにより、各検査点と、検査処理部8とが電気的に接続される。
【0026】
検査処理部8は、上述の状態で検査治具3の各プローブPrを介して半導体ウェハ101の各検査点に検査用の電流又は電圧を供給し、各プローブPrから得られた電圧信号又は電流信号に基づき、例えば回路パターンの断線や短絡等の半導体ウェハ101の検査を実行する。あるいは、検査処理部8は、交流の電流又は電圧を各検査点に供給することによって各プローブPrから得られた電圧信号又は電流信号に基づき、検査対象のインピーダンスを測定するものであってもよい。
【0027】
図2に示す支持部材31は、例えば板状の支持プレート31a,31b,31cが積層されることにより構成されている。支持プレート31a,31b,31cを貫通する貫通孔Hが複数、形成されている。貫通孔Hは、軸方向に垂直な断面形状が略正方形の矩形の孔である。
【0028】
支持プレート31a,31bには、所定径の開口孔からなる挿通孔部Haがそれぞれ形成されている。支持プレート31cには、挿通孔部Haよりも細径の支持孔Hbが形成されている。支持プレート31aの挿通孔部Haと、支持プレート31bの挿通孔部Haと、支持プレート31cの支持孔Hbとが連通されることにより、貫通孔Hが形成されている。
【0029】
なお、支持部材31の支持プレート31a,31bを互いに積層した例に代え、支持プレート31aと支持プレート31bとを互いに離間させた状態で、例えば支柱等により連結した構成としてもよい。また、支持部材31は、板状の支持プレート31a,31b,31cが積層されて構成される例に限らず、例えば一体の部材に貫通孔Hが設けられた構成としてもよい。
【0030】
支持プレート31aの一端部側には、例えば絶縁性の樹脂材料により構成されたピッチ変換ブロック35が取り付けられ、このピッチ変換ブロック35によって貫通孔Hの一端部側開口部が閉塞されるようになっている(
図8参照)。ピッチ変換ブロック35には、貫通孔Hの開口部に対向する位置において、ピッチ変換ブロック35を貫通するように配線34が取り付けられている。
【0031】
ピッチ変換ブロック35の、支持プレート31aに対向する面と、配線34の端面とが面一になるように設定されている。この配線34の端面が、電極34aとされている。各配線34は、ピッチを拡げつつ、接続プレート37の各電極と接続されている。ピッチ変換ブロック35は、配線34の代わりに、例えばMLO(Multi一Layer Organic)又はMLC(Multi―Layer Ceramic)等の多層配線基板を用いて構成されていてもよい。
【0032】
支持部材31の各貫通孔Hには、プローブPrが挿入されている。プローブPrは、導電性を有し、かつ筒状形状を有する筒状体Paと、導電性を有し、かつ棒状形状を有する第二中心導体Pb及び第一中心導体Pcとを備えている。
【0033】
図3~
図5を参照して、筒状体Paは、軸方向に垂直な断面の形状が、略正方形の矩形の管である。例えば、筒状体Paの断面における、一辺の外側の長さである外幅E2は例えば約25~300μm、一辺の内側の長さである内幅E1は約10~250μmである。筒状体Paとして、例えばニッケル又はニッケル合金を用いることができる。
【0034】
例えば、筒状体Paの外幅E2を約120μm、内幅E1を約100μm、全長を約1700μmとすることができる。また、筒状体Paの内面には、金メッキ等のメッキ層を施し、かつ筒状体Paの外面を、必要に応じて絶縁被覆した構造としてもよい。また、筒状体Paの軸方向に垂直な断面の形状は、略長方形であってもよい。
【0035】
筒状体Paの両端部には、後述するように第一棒状本体Pc1及び第二棒状本体Pb1の基端部を抱持する第一筒端部Pd1及び第二筒端部Pd2が形成されている。また、第一筒端部Pd1及び第二筒端部Pd2の間には、筒状体Paの軸方向に伸縮する第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2が所定長さに亘って形成されている。第一ばね部Pe1と第二ばね部Pe2とは、螺旋の巻き方向が互いに逆向きとなっている。さらに、筒状体Paの長さ方向の中央部には、第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2を互いに連結する筒部Pfが設けられている。
【0036】
例えば、図示を省略したレーザ加工機から、筒状体Paの周壁にレーザ光を照射して、第一螺旋溝Pg1及び第二螺旋溝Pg2を形成することにより、筒状体Paの周面に沿って延びる螺旋状体からなる第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2が構成される。そして、第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2を変形させることにより、筒状体Paを、その軸方向に伸縮させ得るようになっている。
【0037】
なお、筒状体Paの周壁を例えばエッチングして第一螺旋溝Pg1及び第二螺旋溝Pg2を形成することにより、螺旋状体からなる第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2を設けてもよい。また、例えば電鋳により形成された螺旋状体からなる第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2を設けた構造としてもよい。
【0038】
また、3Dプリンティングによって、第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2が設けられた筒状体Paを形成してもよい。3Dプリンティングを用いる場合、筒状体Paの軸方向に対して垂直な方向に積層形成することが好ましい。筒状体Paは断面矩形の形状を有しているので、このような3Dプリンティングにより製造することが容易である。また、3Dプリンティングを用いる場合、筒状体Paに第一中心導体Pcと、第二中心導体Pbとが挿入された状態で、プローブPr全体を製造してもよい。
【0039】
筒部Pfは、筒状体Paに第一螺旋溝Pg1及び第二螺旋溝Pg2の非形成部を設けることによって残存された筒状体Paの周壁部からなり、筒状体Paの中央部に、所定長さに亘って形成されている。筒状体Paの一端部にはばね部が形成されていない第一筒端部Pd1が形成され、筒状体Paの他端部にはばね部が形成されていない第二筒端部Pd2が形成されている。
【0040】
第一中心導体Pcは、
図3及び
図4に示すように、筒状体Paの一端部内に挿通される第一棒状本体Pc1と、その基端部に設けられた第一被抱持部Pc2と、この第一被抱持部Pc2に連設された鍔部Pc3と、この鍔部Pc3に連設された第一突出部Pc4と、第一棒状本体Pc1の先端部に設けられた第一膨出部Pc6とを備えている。第一棒状本体Pc1、第一被抱持部Pc2、及び第一膨出部Pc6は、第一挿入部の一例に相当している。
【0041】
第一突出部Pc4、鍔部Pc3、第一被抱持部Pc2、第一棒状本体Pc1、及び第一膨出部Pc6は、軸方向に垂直な断面形状が略正方形の矩形形状とされている。なお、第一突出部Pc4、鍔部Pc3、第一被抱持部Pc2、第一棒状本体Pc1、及び第一膨出部Pc6の断面形状は、略正方形とは異なる矩形形状であってもよい。
【0042】
第一棒状本体Pc1は、筒状体Paに対して容易に挿入し得るように、第一棒状本体Pc1の断面における一辺の外側長さD1が筒状体Paの内幅E1よりも小さく設定されている。例えば、筒状体Paの内幅E1が100μmである場合、第一棒状本体Pc1の外側長さD1は92μmに形成されている。また、第一中心導体Pcを筒状体Paに組み付けた際に、先端部の第一膨出部Pc6が筒状体Paの筒部Pf内に導入された状態となるように、第一被抱持部Pc2、第一棒状本体Pc1及び第一膨出部Pc6の軸方向長さが形成されている。
【0043】
第一膨出部Pc6の断面における一辺の外側長さD2は、第一棒状本体Pc1の外側長さD1よりも大きく、かつ筒状体Paの内幅E1よりも小さく形成されている。また、第一膨出部Pc6の外側長さD2と筒状体Paの内幅E1との差が微差に設定されることにより、後述の検査時に、筒状体Paの筒部Pfと第一膨出部Pc6及び第二膨出部Pb6とが互いに摺動可能に接触して、電気的に導通するようになっている。例えば、第一棒状本体Pc1の外側長さD1が92μmで、筒状体Paの内幅E1が100μmである場合、第一膨出部Pc6の外側長さD2は94μmに形成されている。
【0044】
また、第一膨出部Pc6の断面における対角線の対角長さD7は、筒状体Paの内幅E1よりも長い。これにより、筒状体Pa内で第一中心導体Pcが回動しようとすると、第一膨出部Pc6の角部が筒状体Paの内壁と干渉し、第一膨出部Pc6と筒状体Paとが接触するようになっている。
【0045】
第一被抱持部Pc2の断面における一辺の長さである幅D3は、筒状体Paの内幅E1と略同一に設定されている。この結果、第一棒状本体Pc1を筒状体Pa内に挿入して組み付ける際に、第一被抱持部Pc2が第一筒端部Pd1に圧入され、この第一被抱持部Pc2の周面に第一筒端部Pd1の内面が圧着された状態で、第一中心導体Pcが筒状体Paに組み付けられるようになっている。なお、第一筒端部Pd1と第一被抱持部Pc2、及び第二筒端部Pd2と第二被抱持部Pb2の接続は、カシメ加工、溶接等、種々の接続方法を用いることができる。
【0046】
第一中心導体Pcの鍔部Pc3は、その断面における一辺の長さである幅D4が筒状体Paの内幅E1よりも大きく、かつ第一被抱持部Pc2の幅D3よりも大きく設定されている。例えば、筒状体Paの内幅E1が100μmで、第一被抱持部Pc2の幅D3が103μmある場合、鍔部Pc3の幅D4は、130μmに形成されている。これにより、第一棒状本体Pc1を筒状体Pa内に挿入して第一中心導体Pcを組み付ける際に、鍔部Pc3が筒状体Paの端部に当接して第一棒状本体Pc1の位置決めがなされる。
【0047】
また、
図2に示すように、支持部材31の挿通孔部Ha内にプローブPrの筒状体Paを挿入した状態で、支持部材31にプローブPrを支持させ得るように、鍔部Pc3は、その幅D4が、挿通孔部Haの内幅よりも小さく形成されている。
【0048】
第一中心導体Pcの第一突出部Pc4は、その断面の一辺の長さである幅D6が、鍔部Pc3の幅D4よりもやや細く、かつ支持プレート31cに形成された支持孔Hbの内幅よりも小さく設定されることより、支持孔Hbに挿通可能に構成されている。
【0049】
また、プローブPrを支持部材31に支持させた状態で、第一突出部Pc4の端部が支持プレート31cの支持孔Hbから支持部材31の外方に突出した状態となるように、第一突出部Pc4の全長が支持プレート31cの板厚よりも大きく設定されている。さらに、第一突出部Pc4の先端面は、略平坦に形成されている。なお、第一突出部Pc4の先端部P1の形状は、クラウン形状、円錐状等、検査点との接触に適した種々の形状とすることができる。
【0050】
一方、第二中心導体Pbは、第一中心導体Pcの第一膨出部Pc6、第一棒状本体Pc1、第一被抱持部Pc2と同様の形状及び外径を有する第二膨出部Pb6、第二棒状本体Pb1、第二被抱持部Pb2を有している。第二棒状本体Pb1の基端部には、第二被抱持部Pb2よりも大きく、かつ第一中心導体Pcの鍔部Pc3と同程度の、例えば130μm程度の幅D4’を有する鍔部Pb3が設けられている。
【0051】
第二中心導体Pbの第二突出部Pb4は、その断面における一辺である幅D5が、鍔部Pb3の幅D4’よりもやや細く、かつ支持プレート31aに形成された挿通孔部Haの内幅よりも小さく設定されることより、挿通孔部Haに挿通可能に構成されている。
【0052】
また、第二突出部Pb4の先端部には、先窄まりの傾斜部Pb5が形成され、後述する半導体ウェハ101等の検査時に、ピッチ変換ブロック35に設けられた電極34aに傾斜部Pb5の先端面が当接するようになっている。
【0053】
また、第一中心導体Pc及び第二中心導体Pbを筒状体Paに組み付けた状態で、
図3に示すように第一膨出部Pc6の先端面と、第二膨出部Pb6の先端面との間に、所定の間隙KGが形成されるように、第一棒状本体Pc1及び第二棒状本体Pb1等の全長がそれぞれ設定されている。
【0054】
さらに、後述する検査時に、第一突出部Pc4と、第二突出部Pb4とがそれぞれ支持部材31内に押し込まれた際(
図8参照)においても、第一膨出部Pc6の先端面と、第二膨出部Pb6の先端面とが所定間隔を隔てて相対向した状態に維持されるように、第一棒状本体Pc1及び第二棒状本体Pb1等の軸方向長さが設定されている。
【0055】
図6に示すように、支持プレート31cには、格子の交点に対応する位置に、複数の支持孔Hbが形成されている。そして、各支持孔Hb内に、プローブPrが保持されている。
【0056】
各貫通孔Hの矩形の開口部の一辺が第一方向Xに沿い、その一辺に連なる他の辺が第一方向Xと垂直な第二方向Yに沿うように、各貫通孔Hが配置されている。貫通孔Hの開口部の辺の幅W1は、第一突出部Pc4の幅D6よりも僅かに大きく、かつ第一突出部Pc4の対角線の長さである対角長さD8よりも小さい。従って、貫通孔H内のプローブPrは、その断面の辺の方向が、貫通孔H内壁の辺の方向によって規制される。その結果、筒状体Paの断面の辺の方向もまた、貫通孔H内壁の辺の方向によって、タテの辺同士、ヨコの辺同士で互いに同一方向に沿うように配置される。
【0057】
なお、複数のプローブPrは、タテの辺同士、ヨコの辺同士で互いに同一方向に沿うように配置されていればよく、必ずしも格子の交点に対応する位置に配置される例に限らない。
【0058】
図7は、特許文献1に記載の、円筒状の筒状体Paxに円柱状の第一棒状本体Pc1xが挿入されたプローブPrxが、格子状に配置された円形の支持孔Hbxに挿入された状態を示している。
図7には、
図6に示す支持孔Hb、プローブPr、筒状体Pa、及び第一棒状本体Pc1を、一点鎖線で重ね合わせて示している。また、第一棒状本体Pc1の断面と、第一棒状本体Pc1xの断面との差を斜線のハッチングで示している。
【0059】
図7に示す支持孔Hbx同士の隣接間隔は間隔L1であり、支持孔Hb同士の隣接間隔も同じ間隔L1となっている。
図7から、丸断面のプローブPrxと矩形断面のプローブPrとで、各支持孔及びプローブの隣接間隔が互いに等しい場合であっても、丸断面の第一棒状本体Pc1xよりも矩形断面のプローブPrの方が、断面積が大きくなることが判る。断面積が大きければ、プローブPrの抵抗値は小さくなる。
【0060】
従って、プローブPr、及びこれを用いた検査治具3によれば、抵抗値の増大を低減しつつ、隣接ピッチを小さくすることが容易である。
【0061】
検査治具3がピッチ変換ブロック35に取り付けられる前の状態では、
図2に示すように、第二突出部Pb4は支持プレート31aから僅かに突出している。そして、
図8に示すように、支持プレート31aの一端部側(
図2,
図8の上方側)がピッチ変換ブロック35に取り付けられると、第二突出部Pb4の上端、すなわちプローブPrの基端部P2が、ピッチ変換ブロック35の電極34aに接触して、支持部材31側に押圧される。
【0062】
この結果、筒状体Paの第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2が圧縮されて弾性変形することにより、その付勢力に抗して第二突出部Pb4の突出部分が、支持部材31に押し込まれる。そして、第二突出部Pb4の先端、すなわちプローブPrの基端部P2が、第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2の付勢力に応じて電極34aに圧接されることにより、プローブPrの一端部と電極34aとが安定した導電接触状態に保持される。
【0063】
なお、第二突出部Pb4の上端部に、必ずしも先窄まりの傾斜部Pb5を形成する必要はなく、第二突出部Pb4の上端面を平坦面に形成してもよく、第二突出部Pb4の先端形状は、電極34aとの接触に適した種々の形状とすることができる。
【0064】
検査治具3が半導体ウェハ101に圧接されると、第一中心導体Pcの第一突出部Pc4が、半導体ウェハ101のバンプBPに接触して支持部材31側に押圧される。
【0065】
この結果、筒状体Paの第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2がさらに圧縮されて弾性変形することにより、その付勢力に抗して、第一突出部Pc4の突出部分が支持部材31に押し込まれる。そして、第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2の付勢力に応じ、第一突出部Pc4の先端部P1が半導体ウェハ101のバンプBPに圧接される。これにより、第一突出部Pc4の先端部P1と半導体ウェハ101の検査点(バンプBP)とが安定した導電接触状態に保持される。
【0066】
図9を参照して、第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2が圧縮されると、第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2は、それぞれの螺旋の巻き方向に応じた回転力を生じる。第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2は螺旋の巻き方向が互いに逆であるから、第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2は互いに逆回転の回転力を生じることになる。
【0067】
その結果、第一ばね部Pe1と第二ばね部Pe2との間にある筒部Pfが、
図9に示す回転方向Rに、回転する。
【0068】
図10に示すように、筒部Pf内に位置する第一膨出部Pc6の対角長さD7は、筒状体Paの内幅E1、すなわち筒部Pfの内幅E1よりも長い。そのため、筒部Pfが回転すると、第一中心導体Pcの第一膨出部Pc6の角部Cが筒部Pfの内壁に当接する。
【0069】
同様に、筒部Pfが回転すると、第二中心導体Pbの第二膨出部Pb6の角部もまた、筒部Pfの内壁に当接する。その結果、プローブPrをバンプBPに圧接した際に、第一膨出部Pc6及び第二膨出部Pb6を筒部Pfの内壁に導通接触させる確実性が向上する。
【0070】
第一膨出部Pc6及び第二膨出部Pb6の、筒部Pf内壁への接触が不十分な場合、プローブPrの、先端部P1と基端部P2との間の電気抵抗が増大する。
【0071】
しかしながら、上述のプローブPrは、第一突出部Pc4の先端部P1がバンプBPに圧接された際に第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2が圧縮され、その圧縮により生じる回転力によって筒部Pfが回転する。その結果、第一膨出部Pc6及び第二膨出部Pb6を筒部Pfの内壁に導通接触させる確実性が向上する。第一膨出部Pc6及び第二膨出部Pb6が筒部Pfの内壁に導通接触する確実性が増大すれば、第一膨出部Pc6及び第二膨出部Pb6と筒部Pfとの間の接触抵抗が、接触不良により増大するおそれが低減する。その結果、第二突出部Pb4から、第二棒状本体Pb1、第二膨出部Pb6、筒部Pf、第一膨出部Pc6、及び第一棒状本体Pc1を経由して第一突出部Pc4に至る検査電流の電流経路F(
図9)の抵抗値が増大するおそれが低減する。すなわち、プローブPrの抵抗値が増大するおそれを低減することができる。
【0072】
なお、
図15に示すように、第一中心導体Pc及び第二中心導体Pbは、第一膨出部Pc6及び第二膨出部Pb6を備えず、第一棒状本体Pc1及び第二棒状本体Pb1の断面における対角線の長さが筒状体Paの内幅E1よりも長く、かつ第一棒状本体Pc1及び第二棒状本体Pb1の先端部が筒部Pf内に位置するように第一棒状本体Pc1及び第二棒状本体Pb1の長さが設定されていてもよい。
【0073】
このような構成であっても、筒部Pfが回転した場合に第一棒状本体Pc1及び第二棒状本体Pb1が筒部Pfの内壁に当接し、導通接触するので、プローブPrの抵抗値及びインダクタンスが増大するおそれを低減する効果が得られる。
【0074】
しかしながら、第一中心導体Pc及び第二中心導体Pbに、第一膨出部Pc6及び第二膨出部Pb6を設け、第一膨出部Pc6及び第二膨出部Pb6よりも第一棒状本体Pc1及び第二棒状本体Pb1を細くすることによって、第一棒状本体Pc1及び第二棒状本体Pb1が第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2に接触するおそれが低減される。
【0075】
その結果、第一棒状本体Pc1及び第二棒状本体Pb1から第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2へ部分的に検査電流が流れたり、第一棒状本体Pc1及び第二棒状本体Pb1と第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2との間で摩擦が生じたりするおそれが低減される。従って、第一中心導体Pc及び第二中心導体Pbに、第一膨出部Pc6及び第二膨出部Pb6を設けることがより好ましい。
【0076】
また、第一ばね部Pe1と第二ばね部Pe2とで螺旋の巻き方向を逆にすることによって、第一突出部Pc4と第二突出部Pb4との間において、第一ばね部Pe1の圧縮による回転が、第二ばね部Pe2の圧縮による回転によって相殺される。従って、第一突出部Pc4及び第二突出部Pb4の回転運動が低減される。特に、第一ばね部Pe1と第二ばね部Pe2とで螺旋の巻き方向を逆、巻き数を同一にした場合には、第一突出部Pc4及び第二突出部Pb4は略静止した状態になる。その結果、バンプBP及び電極34aに対するプローブPrの接触安定性が向上する。
【0077】
なお、第一ばね部Pe1と第二ばね部Pe2とは、螺旋の巻き方向が同一であってもよい。螺旋の巻き方向が同一であれば、第一螺旋溝Pg1及び第二螺旋溝Pg2を同一要項に切ればよいので加工が容易となり、従って第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2の製造が容易となる。
【0078】
図11に示すプローブPr’は、
図3に示すプローブPrとは、第二中心導体Pbを備えず、第一ばね部Pe1と第二ばね部Pe2’の螺旋の巻き方向が同一方向とされている点で異なる。その他の点ではプローブPr’はプローブPrと同様に構成されているので、以下、プローブPr’の特徴的な点について説明する。
【0079】
プローブPr’は、
図2、
図8に示す検査治具3において、プローブPrの代わりに用いられる。
【0080】
筒状体Pa’は、第二ばね部Pe2の代わりに第二ばね部Pe2’を備える。第二ばね部Pe2’は、第一ばね部Pe1と螺旋の巻き方向が同一である。また、筒状体Pa’の第二筒端部Pd2’は、第二筒端部Pd2より長く、
図2、
図8に示す検査治具3において挿通孔部Haに挿通される。ピッチ変換ブロック35に検査治具3が取り付けられていない状態では、支持プレート31aから第二筒端部Pd2’の先端部が突出するようになっている。
【0081】
そして、ピッチ変換ブロック35に検査治具3が取り付けられると、第二筒端部Pd2’の先端部が電極34aに当接する。
【0082】
第一中心導体Pc’は、第一中心導体Pcとは、第一棒状本体Pc1’の長さが異なる。第一棒状本体Pc1’は、第一棒状本体Pc1より長い。第一膨出部Pc6が第二筒端部Pd2’内に位置するように、第一棒状本体Pc1’の長さが設定されている。第二筒端部Pd2’は、筒部の一例に相当する。
【0083】
図12を参照して、第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2’が圧縮されると、第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2’は、それぞれの螺旋の巻き方向に応じた回転力を生じる。第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2’は螺旋の巻き方向が同一であるから、第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2’は同じ方向の回転力を生じることになる。
【0084】
筒状体Pa’と第一中心導体Pc’とは、第一筒端部Pd1と第一被抱持部Pc2とで固定されているから、第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2’によって生じた筒状体Pa’の回転量は、第一筒端部Pd1から離れるほど増大し、第二筒端部Pd2’で最大になる。
【0085】
そして、回転量が最大の第二筒端部Pd2’内に第一膨出部Pc6が位置しているから、
図10に括弧書きで示すように、第一膨出部Pc6が第二筒端部Pd2’の内壁に当接する。第二筒端部Pd2’と第一膨出部Pc6とが導通接触していれば、検査に用いられる検査電流は、
図12に電流経路Gとして示すように、第二筒端部Pd2’、第一膨出部Pc6、及び第一棒状本体Pc1’を経由して第一突出部Pc4に至る。従って、検査電流が第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2’を流れることがない。
【0086】
検査電流が第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2’を流れなければ、プローブPrと同様、プローブPr’の抵抗値及びインダクタンスが増大するおそれを低減することができる。
【0087】
なお、プローブPrの場合と同様、第一中心導体Pc’は、第一膨出部Pc6を備えず、第一棒状本体Pc1’の断面における対角線の長さが筒状体Pa’の内幅E1よりも長く、かつ第一棒状本体Pc1’の先端部が第二筒端部Pd2’内に位置するように第一棒状本体Pc1’の長さが設定されていてもよい。
【0088】
このような構成であっても、第二筒端部Pd2’が回転した場合に第一棒状本体Pc1’が第二筒端部Pd2’の内壁に当接し、導通接触するので、プローブPr’の抵抗値及びインダクタンスが増大するおそれを低減する効果が得られる。
【0089】
しかしながら、第一中心導体Pc’に第一膨出部Pc6を設け、第一膨出部Pc6よりも第一棒状本体Pc1’を細くすることによって、第一棒状本体Pc1’が第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2’に接触するおそれが低減される。
【0090】
その結果、第一棒状本体Pc1’から第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2’へ部分的に検査電流が流れたり、第一棒状本体Pc1’と第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2’との間で摩擦が生じたりするおそれが低減される。従って、第一中心導体Pc’に、第一膨出部Pc6を設けることがより好ましい。
【0091】
なお、筒状体Pa’は、筒部Pfを備えていなくてもよく、第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2’は、一連のばね部であってもよい。
【0092】
図13、
図14に示すポゴピンPpは、接触端子の一例に相当している。
【0093】
ポゴピンPpは、プローブPrの代わりにプローブとして用いることができる。また、ポゴピンPpは、コネクタのピンや接続ピン等の接触子として用いることができる。
【0094】
図13、
図14に示すポゴピンPpは、導電性を有し、かつ筒状形状を有する筒状体Pa”と、導電性を有し、かつ棒状形状を有する第一中心導体Pc”と、導電性を有する第二中心導体Pb”と、筒状体Pa”内に設けられ、第一中心導体Pc”を筒状体Pa”から突出させる方向に付勢するスプリングSP(付勢部材)とを備える。
【0095】
筒状体Pa”は、軸方向に垂直な断面の形状が矩形である。筒状体Pa”の一端部には、筒状体Pa”の内周から内側へ向かって突出する係合突起11が形成されている。係合突起11の先端部によって、開口部12が形成されている。筒状体Pa”の他端部には、筒状体Pa”の内周から内側へ向かって突出する係合突起13が形成されている。係合突起13の先端部によって、開口部14が形成されている。
【0096】
第一中心導体Pc”は、筒状体Pa”に挿入される第一棒状本体Pc1”(第一挿入部)と、筒状体Pa”の一端部から突出する第一突出部Pc4”とを含む。第一中心導体Pc”、すなわち第一棒状本体Pc1”と第一突出部Pc4”とは、軸方向に垂直な断面の形状が矩形である。
【0097】
第一棒状本体Pc1”は、筒状体Pa”の内部に配置されている。第一突出部Pc4”は、開口部12に挿通され、一端が第一棒状本体Pc1”と連結され、他端が開口部12から突出している。第一棒状本体Pc1”の、軸方向に垂直な断面の一辺は、開口部12の一辺より長い。これにより、第一棒状本体Pc1”と係合突起11とが干渉し、第一中心導体Pc”が筒状体Pa”から抜けないようになっている。
【0098】
第二中心導体Pb”は、筒状体Pa”に挿入される第二挿入部Pb1”と、筒状体Pa”の一端部から突出する第二突出部Pb4”とを含む。第二中心導体Pb”、すなわち第二挿入部Pb1”と第二突出部Pb4”とは、軸方向に垂直な断面の形状が矩形である。
【0099】
第二挿入部Pb1”は、筒状体Pa”の内部に配置されている。第二突出部Pb4”は、開口部14に挿通され、一端が第二挿入部Pb1”と連結され、他端が開口部14から突出している。第二挿入部Pb1”の、軸方向に垂直な断面の一辺は、開口部14の一辺より長い。これにより、第二挿入部Pb1”と係合突起13とが干渉し、第二中心導体Pb”が筒状体Pa”から抜けないようになっている。
【0100】
スプリングSPは、筒状体Pa”内において、第一棒状本体Pc1”と第二挿入部Pb1”との間に配設されている。スプリングSPは、第一中心導体Pc”と第二中心導体Pb”とを、互いに離間する方向に付勢する。なお、ポゴピンPpは、第二中心導体Pb”を備えず、開口部14は閉塞されていてもよい。
【0101】
以上のように構成された複数のポゴピンPpを、
図6に示すプローブPrと同様に、矩形の開口部の一辺が第一方向Xに沿い、その一辺に連なる他の辺が第一方向Xと垂直な第二方向Yに沿うように配置された各貫通孔Hに挿入して用いた場合、
図7に示すプローブPrと同様、特許文献1に係る円柱形状のプローブと比べて導体の断面積を増大させることができる。従って、ポゴピンPp、及びこれを用いた検査治具によれば、抵抗値の増大を低減しつつ、隣接ピッチを小さくすることが容易である。
【0102】
なお、筒状体Pa,Pa’,Pa”、第一棒状本体Pc1,Pc1’,Pc1”、第一膨出部Pc6、及び第二棒状本体Pb1,Pb1’,Pb1”は、その軸方向に垂直な断面形状が、六角形であってもよい。一例として、断面形状が六角形の筒状体Pa'''、第一棒状本体Pc1'''、及び第一膨出部Pc6'''の断面図を
図16に示す。
【0103】
また、第一中心導体Pc,Pc’を、
図17に示す第一中心導体Pc''''のように、鍔部Pc3'''が、第一突出部Pc4''''における相対向する一対の外壁面からのみ突出し、他の一対の外壁面には設けられない構成としてもよい。
【0104】
すなわち、本発明の一例に係る接触端子は、導電性を有し、かつ筒状形状を有する筒状体と、導電性を有し、かつ棒状形状を有する第一中心導体とを備え、前記筒状体は、軸方向に垂直な断面の形状が矩形又は六角形であり、前記第一中心導体は、当該第一中心導体の軸方向に垂直な断面の形状が前記筒状体の前記断面の形状と同じであり、前記筒状体の一端部側に挿入される第一挿入部と、前記筒状体の一端部から突出する第一突出部とを含む。
【0105】
この構成によれば、筒状体及び第一中心導体の、軸方向に垂直な断面の形状が矩形又は六角形である。その結果、背景技術に記載の丸断面のプローブに対して、隣接する接触端子との間隔が等しい場合であっても、丸断面のプローブよりも第一中心導体の断面積が大きくなり、接触端子の抵抗値は小さくなる。
【0106】
また、前記第一挿入部の前記断面における対角線の長さは、前記筒状体の前記断面における内壁の一辺よりも長いことが好ましい。
【0107】
この構成によれば、筒状体と第一挿入部とが相対的に回転すると、筒状体の内壁と第一挿入部の角部とが干渉するので、筒状体と第一挿入部とを電気的に導通させる確実性が向上する。
【0108】
また、導電性を有し、棒状形状を有する第二中心導体をさらに備え、前記第二中心導体は、当該第二中心導体の軸方向に垂直な断面の形状が前記筒状体の前記断面の形状と同じであり、前記筒状体の他端部側に挿入される第二挿入部と、前記筒状体の他端部から突出する第二突出部とを含み、前記筒状体は、前記第一突出部を前記突出する方向へ向けて付勢する螺旋状の第一ばね部と、前記第一ばね部に連接された筒部と、前記筒部の前記第一ばね部とは反対側に連接された螺旋状の第二ばね部とを含み、前記第一ばね部と前記第二ばね部とは、螺旋の巻き方向が互いに逆であることが好ましい。
【0109】
この構成によれば、接触端子を対象物に当接させて第一ばね部と第二ばね部とが圧縮されると、第一ばね部及び第二ばね部は、それぞれの螺旋の巻き方向に応じた回転力を生じる。第一ばね部及び第二ばね部は螺旋の巻き方向が互いに逆であるから、第一ばね部及び第二ばね部は互いに逆回転の回転力を生じることになる。その結果、第一ばね部と第二ばね部との間にある筒部が回転する。筒部が回転することにより、第一及び第二中心導体を筒部の内壁に接触させる確実性が向上する。
【0110】
また、前記第一挿入部は、前記第一突出部とは反対側の端部に設けられた第一膨出部と、前記第一膨出部から前記第一突出部へ向かって延び、前記第一膨出部より細い第一棒状本体とを含むことが好ましい。
【0111】
この構成によれば、第一挿入部の端部が太い第一膨出部となり、第一膨出部と第一突出部との間の第一棒状本体が細くなる。その結果、第一突出部から第一膨出部までの区間では第一棒状本体が筒状体と接触し難くなるので、第一棒状本体と筒状体との摩擦を低減し、かつ第一膨出部と筒状体とが導通接触する確実性を向上させることができる。
【0112】
また、前記第一膨出部は、前記筒部内に位置することが好ましい。
【0113】
この構成によれば、第一突出部を対象物に対して弾性的に接触させることができる。また、第一膨出部は、ばねが形成されていない筒部の内壁に接触する。その結果、接触端子を流れる電流がばね部を流れるおそれが低減される。
【0114】
また、前記第二挿入部は、前記第二突出部とは反対側の端部に設けられた第二膨出部と、前記第二膨出部から前記第二突出部へ向かって延び、前記第二膨出部より細い第二棒状本体とを含むことが好ましい。
【0115】
この構成によれば、第二挿入部の端部が太い第二膨出部となり、第二膨出部と第二突出部との間の第二棒状本体が細くなる。その結果、第二突出部から第二膨出部までの区間では第二棒状本体が筒状体と接触し難くなるので、第二棒状本体と筒状体との摩擦を低減し、かつ第二膨出部と筒状体とが導通接触する確実性を向上させることができる。
【0116】
また、前記第一膨出部及び前記第二膨出部は、前記筒部内に位置することが好ましい。
【0117】
この構成によれば、筒状体の筒部内の内壁に、第一膨出部と第二膨出部とが接触する。その結果、接触端子を流れる電流は、第一棒状本体、筒部、及び第二棒状本体を流れ、ばね部を流れないので、ばね部によって接触端子の抵抗値が増大するおそれを低減できる。
【0118】
また、前記筒状体は、前記第一突出部を前記突出する方向へ向けて付勢する螺旋状のばね部を含み、前記ばね部は、前記螺旋状の巻き方向が一定であってもよい。
【0119】
筒状体の端部に筒部が設けられている場合、ばね部の巻き方向が一定である方が筒部の回転量が大きくなる。その結果、筒部の内壁と第一膨出部とが導通接触する確実性が増大する。
【0120】
また、前記筒状体内に設けられ、前記第一中心導体を前記一端部側へ付勢する付勢部材をさらに備えることが好ましい。
【0121】
この構成によれば、第一中心導体は、筒状体内の付勢部材の付勢力によって、一端部側に突出する。この接触端子は、いわゆるポゴピンを構成する。
【0122】
また、本発明の一例に係る検査治具は、複数の、上述の接触端子と、前記複数の接触端子を支持する支持部材とを備える。
【0123】
この構成によれば、上述の接触端子を複数備えた検査治具が得られる。
【0124】
また、前記支持部材は、前記複数の接触端子の、前記筒状体の前記断面の形状における辺を、互いに同一方向に向けて支持することが好ましい。
【0125】
この構成によれば、複数の接触端子の隣接ピッチを小さくすることが容易である。
【0126】
また、本発明の一例に係る検査装置は、上述の検査治具と、前記接触端子を検査対象に設けられた検査点に接触させることにより得られる電気信号に基づき、前記検査対象の検査を行う検査処理部とを備える。
【0127】
この構成によれば、検査に用いる接触端子の抵抗値の増大を低減しつつ、接触端子の隣接ピッチを小さくすることが容易である。
【0128】
このような構成の接触端子、検査治具及び検査装置は、抵抗値の増大を低減しつつ、接触端子の隣接ピッチを小さくすることが容易である。
【0129】
この出願は、2019年1月10日に出願された日本国特許出願特願2019-002395を基礎とするものであり、その内容は、本願に含まれるものである。なお、発明を実施するための形態の項においてなされた具体的な実施態様又は実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、本発明は、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではない。
【符号の説明】
【0130】
1 半導体検査装置
3 検査治具
4 検査部
6 試料台
6a 載置部
8 検査処理部
11 係合突起
12 開口部
13 係合突起
14 開口部
31 支持部材
31a,31b,31c 支持プレート
34 配線
34a 電極
35 ピッチ変換ブロック
37 接続プレート
101 半導体ウェハ
A1,A1’,A1” 第一挿入部
A2,A2”,Pb1” 第二挿入部
BP バンプ
D3,D4,D5,D6 幅
E1 内幅
E2 外幅
F,G 電流経路
H 貫通孔
Ha 挿通孔部
Hb,Hbx 支持孔
KG 間隙
L1 間隔
P1 先端部
P2 基端部
Pa,Pa”,Pax 筒状体
Pb,Pb” 第二中心導体
Pb1 第二棒状本体
Pb2 第二被抱持部
Pb3,Pc3 鍔部
Pb4,Pb4” 第二突出部
Pb5 傾斜部
Pb6 第二膨出部
Pc,Pc” 第一中心導体
Pc1,Pc1”,Pc1x 第一棒状本体
Pc2 第一被抱持部
Pc4,Pc4” 第一突出部
Pc6 第一膨出部
Pd1 第一筒端部
Pd2 第二筒端部
Pe1 第一ばね部
Pe2 第二ばね部
Pf 筒部
Pg1 第一螺旋溝
Pg2 第二螺旋溝
Pp ポゴピン
Pr,Pr’,Pr”,Prx プローブ
R 回転方向
SP スプリング
W1 幅