(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】液体現像剤、画像形成方法、液体現像剤カートリッジ及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 9/13 20060101AFI20240228BHJP
G03G 9/125 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
G03G9/13
G03G9/125
(21)【出願番号】P 2021529171
(86)(22)【出願日】2020-07-01
(86)【国際出願番号】 JP2020025906
(87)【国際公開番号】W WO2021002405
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2019123721
(32)【優先日】2019-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 章照
(72)【発明者】
【氏名】徐 宇清
(72)【発明者】
【氏名】熊野 勇太
(72)【発明者】
【氏名】石原 稔久
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-229876(JP,A)
【文献】特開平4-219761(JP,A)
【文献】特開2012-141463(JP,A)
【文献】特開2014-119612(JP,A)
【文献】特開2013-186412(JP,A)
【文献】特開2018-136429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/13
G03G 9/125
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア液と現像剤成分を有する液体現像剤であって、
前記現像剤成分が、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体A、並びに、ハードセグメント及びソフトセグメントを有するブロック共重合体B´を含有し、
前記ハードセグメントがビニル脂環式炭化水素重合体である、液体現像剤。
【請求項2】
前記ブロック共重合体B´が、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する、請求項1に記載の液体現像剤。
【化1】
(式(1)において、R
11~R
18はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、又はアルコキシ基を表す。)
【請求項3】
前記ブロック共重合体B´の含有量が、前記エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体A及び前記ブロック共重合体B´の総量に対して、5質量%以上50質量%以下である、請求項1又は2に記載の液体現像剤。
【請求項4】
前記ブロック共重合体B´が、更に下記一般式(2)で表される繰り返し単位を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の液体現像剤。
【化2】
(式(2)において、R
21~R
24はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基又はアルコキシ基を表し、nは1以上の整数を表す。nが2以上の場合、複数存在するR
21、R
22は同一であってもよくそれぞれ異なっていてもよい。)
【請求項5】
前記ブロック共重合体B´が、前記一般式(1)を繰り返し単位とする少なくとも2個の重合体ブロックPと、前記一般式(2)を繰り返し単位とする少なくとも1個の重合体ブロックQとを有するブロック共重合体である、請求項4に記載の液体現像剤。
【請求項6】
前記ブロック共重合体B´における前記一般式(1)で表される繰り返し単位の含有量(質量%)を[b1]とし、一方、前記ブロック共重合体B´における前記一般式(2)で表される繰り返し単位の含有量(質量%)を[b2]とした場合、[b1]/[b2]が0.050以上19以下である、請求項4又は5に記載の液体現像剤。
【請求項7】
前記[b1]/[b2]が0.67以上9.0以下である、請求項6に記載の液体現像剤。
【請求項8】
前記エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体Aにおける(メタ)アクリル酸由来の部位の含有量が1質量%以上30質量%以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載の液体現像剤。
【請求項9】
前記キャリア液が、パラフィン、ナフテン及びオレフィンからなる群から選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の液体現像剤。
【請求項10】
前記キャリア液が、イソパラフィンを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の液体現像剤。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の液体現像剤を用いる画像形成方法。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の液体現像剤を備える液体現像剤カートリッジ。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか一項に記載の液体現像剤を備える画像形成装置。
【請求項14】
キャリア液と現像剤成分を有する液体現像剤であって、
該現像剤成分が、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体A、及び、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体Bを含有する、液体現像剤。
【化3】
(式(1)において、R
11~R
18はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、又はアルコキシ基を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体現像方式の電子写真プリンター、印刷機に使用される液体現像剤に関する。また、本発明は、当該液体現像剤を用いた、画像形成方法、液体現像剤カートリッジ及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスを用いた印刷方式において、液体現像方式の印刷は、乾式現像方式の印刷よりも、現像層の厚さ及び現像剤の粒径が、オフセット印刷方式及びグラビア印刷方式に近く、高品質、高精細な画質を得られる。このことから、バリアブル印刷(Variable Data Printing)が可能な商業用のデジタル印刷用途での使用が拡大している。
【0003】
液体現像方式としては、キャリア液として高沸点の炭化水素系溶剤を使用し、現像剤のベース樹脂として100℃以下のガラス転移点を有するポリオレフィン系樹脂を使用し、中間転写体を使用する方式が挙げられる。この方式では、溶剤を含有する現像層を中間転写体上で半乾燥状態にし、印刷媒体に比較的低温(100℃以下)で圧力転写及び定着させることで、様々な印刷媒体への適用が試みられている。
【0004】
液体現像剤の定着性を高める手段としては、紫外線硬化による方法(特許文献1)等が知られている。しかし、紫外線硬化材料の使用は、現像剤のポットライフ及び化合物安全性の観点から好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
液体現像剤は、非浸透性の多様な印刷媒体に印刷するためには、比較的低温での中間転写体からの良好な転写性、及び印刷媒体への良好な定着性が求められている。一方、液体現像剤で印刷したものをパッケージ用途に用いる場合は、殺菌処理やレトルト処理のように高温(例えば100~120℃)での処理に印刷後の現像層が耐えられず溶融することがあるため、液体現像剤は耐熱性の面で課題を有していた。
【0007】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、中間転写体からの良好な転写性、印刷媒体への良好な定着性及び高温での耐熱性を有する液体現像剤を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、エチレン-(メタ)アクリル酸重合体と、特定の構造を含む重合体を含有する液体現像剤を使用することにより、中間転写体からの良好な転写性、印刷後の良好な定着性、及び高温での耐熱性を得ることができることを見出し、以下の本発明の完成に至った。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は下記の<1>~<14>に存する。
<1>キャリア液と現像剤成分を有する液体現像剤であって、
前記現像剤成分が、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体A、並びに、ハードセグメント及びソフトセグメントを有するブロック共重合体B´を含有し、
前記ハードセグメントがビニル脂環式炭化水素重合体である、液体現像剤。
<2>前記ブロック共重合体B´が、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する、<1>に記載の液体現像剤。
【0010】
【0011】
(式(1)において、R11~R18はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、又はアルコキシ基を表す。)
<3>前記ブロック共重合体B´の含有量が、前記エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体A及び前記ブロック共重合体B´の総量に対して、5質量%以上50質量%以下である、<1>又は<2>に記載の液体現像剤。
<4>前記ブロック共重合体B´が、更に下記一般式(2)で表される繰り返し単位を有する、<1>~<3>のいずれか一つに記載の液体現像剤。
【0012】
【0013】
(式(2)において、R21~R24はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基又はアルコキシ基を表し、nは1以上の整数を表す。nが2以上の場合、複数存在するR21、R22は同一であってもよくそれぞれ異なっていてもよい。)
<5>前記ブロック共重合体B´が、前記一般式(1)を繰り返し単位とする少なくとも2個の重合体ブロックPと、前記一般式(2)を繰り返し単位とする少なくとも1個の重合体ブロックQとを有するブロック共重合体である、<4>に記載の液体現像剤。
<6>前記ブロック共重合体B´における前記一般式(1)で表される繰り返し単位の含有量(質量%)を[b1]とし、一方、前記ブロック共重合体B´における前記一般式(2)で表される繰り返し単位の含有量(質量%)を[b2]とした場合、[b1]/[b2]が0.050以上19以下である、<4>又は<5>に記載の液体現像剤。
<7>前記[b1]/[b2]が0.67以上9.0以下である、<6>に記載の液体現像剤。
<8>前記エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体Aにおける(メタ)アクリル酸由来の部位の含有量が1質量%以上30質量%以下である、<1>~<7>のいずれか一つに記載の液体現像剤。
<9>前記キャリア液が、パラフィン、ナフテン及びオレフィンからなる群から選ばれる少なくとも一種を含む、<1>~<8>のいずれか一つに記載の液体現像剤。
<10>前記キャリア液が、イソパラフィンを含む、<1>~<8>のいずれか一つに記載の液体現像剤。
<11><1>~<10>のいずれか一つに記載の液体現像剤を用いる画像形成方法。
<12><1>~<10>のいずれか一つに記載の液体現像剤を備える液体現像剤カートリッジ。
<13><1>~<10>のいずれか一つに記載の液体現像剤を備える画像形成装置。
<14>キャリア液と現像剤成分を有する液体現像剤であって、
該現像剤成分が、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体A、及び、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体Bを含有する、液体現像剤。
【0014】
【0015】
(式(1)において、R11~R18はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、又はアルコキシ基を表す。)
【発明の効果】
【0016】
本発明の液体現像剤を用いることによって、様々なフィルム印刷媒体に対して下塗り層(プライマー層)無しで印刷することが可能となる。また、本発明の液体現像剤は、中間転写体からの良好な転写性、低温での良好な定着性、及び高温での耐熱性を有するので、液体現像方式での幅広い用途向けの印刷を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の画像形成方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態につき詳細に説明するが、以下の説明は本発明の実施形態の代表例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変形して実施することができる。
【0019】
また、本発明において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」のいずれでもよいことを意味する。
【0020】
[1]液体現像剤
本発明の液体現像剤は、キャリア液と、現像剤成分を含有する。
現像剤成分とは、液体現像剤におけるキャリア液以外の成分である。本発明の液体現像剤の現像剤成分は、後述の共重合体A及び後述のブロック共重合体B´を含有する。また、本発明の別の実施形態に係る液体現像剤の現像剤成分は、後述の共重合体A及び後述の重合体Bを含有する。
本発明の液体現像剤は、更に必要に応じて着色剤や添加剤等を含有することができる。
【0021】
<キャリア液>
キャリア液は現像剤成分を溶解又は分散させる媒体であり、液体現像剤に流動性を付与することができる。キャリア液に特に制限はないが、常温常圧で液体であることが好ましく、また、絶縁性であることが好ましい。絶縁性とは、電気伝導率が1×10-10S/m以下であることを意味する。キャリア液は、不揮発性又は揮発性のいずれでもよいが、揮発性のキャリア液が好ましい。揮発性とは、引火点が130℃以下であること、又は、150℃下で24時間放置した際の揮発量が8質量%以上であることを意味する。引火点は、JIS K2265-4:2007に従って測定される温度である。
【0022】
キャリア液の成分に特に制限はないが、常温常圧で液体の炭化水素を含むことが好ましい。キャリア液全体に占める、常温常圧で液体の炭化水素の割合は、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、95質量%以上が特に好ましい。
【0023】
常温常圧で液体の炭化水素としては、脂肪族炭化水素及び芳香族炭化水素が挙げられ、好ましくは脂肪族炭化水素である。また、具体例としてはパラフィン、ナフテン、オレフィン等が挙げられ、好ましくはパラフィンである。パラフィンの具体例としてはイソパラフィンとノルマルパラフィンが挙げられ、これらの中でもイソパラフィンが更に好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
常温常圧で液体の炭化水素の市販品例としては、エクソンモービル社の「アイソパーL」(イソパラフィン)、「アイソパーM」(イソパラフィン)、「エクソールD80」(ナフテン)、「エクソールD110」(ナフテン)、「ソルベッソ100」(芳香族炭化水素)、「ソルベッソ150」(芳香族炭化水素);MORESCO社の「モレスコホワイトP-40」(パラフィン)、「モレスコホワイトP-70」(パラフィン)、「モレスコホワイトP-80」(パラフィン)、「モレスコホワイトP-100」(パラフィン)、「モレスコホワイトP-200」(パラフィン);JXTGエネルギー社の「ナフテゾール200」(ナフテン)、「ナフテゾール220」(ナフテン);等が挙げられる。
【0025】
キャリア液は、常温常圧で液体の炭化水素以外の成分を含んでいてもよい。常温常圧で液体の炭化水素以外の成分としては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリオール化合物等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
<現像剤成分>
現像剤成分は、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体A、及び、ブロック共重合体B´を含有する。また、本発明の別の実施形態に係る現像剤成分は、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体A、及び、重合体Bを含有する。
【0027】
(1)エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体A
現像剤成分は、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体Aを含有する。エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体Aは、エチレン及び(メタ)アクリル酸以外の成分が更に共重合されていてもよい。
エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体Aにおける、(メタ)アクリル酸由来の部位の含有量は、特に制限はないが、定着性と結晶性のバランスの観点から、質量百分率として、通常1質量%以上、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、一方、通常30質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
【0028】
エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体Aのメルトマスフローレイト(JIS K7210:1999、190℃/2.16kg荷重)は、好ましくは10~800g/10minである。前記メルトマスフローレイトが前記範囲となるように、エチレン-メタクリル酸共重合体とエチレン-アクリル酸共重合体を任意の比率で混合して使用してもよい。
【0029】
エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体Aの融点は、特に制限はないが、定着強度の観点から、通常80℃以上、好ましくは90℃以上、より好ましくは92℃以上であり、一方、多様な印刷媒体への適用性の観点から、通常120℃以下、好ましくは110℃以下、より好ましくは100℃以下である。
【0030】
エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体Aは単独使用でもよく、共重合比率、融点或いはメルトマスフローレイト等の異なる2つ以上のものを混合して使用してもよい。
【0031】
エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体Aの例としては、三井・ダウポリケミカル社製 ニュクレル(登録商標)N1035、N1050H、N1110H、N1525、N1560、日本ハネウェル社製 A-C5120、A-C5180、A-C540、日本ポリエチレン社製 レクスパール(登録商標)A201M、A221M、A211Sが挙げられる。
【0032】
(2)ブロック共重合体B´
現像剤成分は、ハードセグメント及びソフトセグメントを有するブロック共重合体B´を含有する。ここでハードセグメント、ソフトセグメントとは、ブロック共重合体を構成する異なるブロック単位を意味する。従って「ハード」、「ソフト」何れのセグメントであるのかを明確に識別する必要はないが、具体的には、ハードセグメントとソフトセグメントがそれぞれ、結晶性のセグメントと非晶性のセグメント、高融点のセグメントと低融点のセグメント、ガラス転位温度の高いセグメントとガラス転位温度の低いセグメント、貯蔵弾性率の高いセグメントと貯蔵弾性率の低いセグメント等の組合せが挙げられる。或いは、ハードセグメントとソフトセグメントがそれぞれ、上記の組合せの逆であってもよい。
【0033】
(2-1)ハードセグメント及びソフトセグメント
本発明において、ハードセグメントは、ビニル脂環式炭化水素重合体である。ビニル脂環式炭化水素としては、ビニルシクロプロパン、ビニルシクロブタン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘプタン、ビニルシクロオクタン、ビニルシクロノナン、ビニルシクロデカン等の単環のビニルシクロアルカン、1-ビニルデカヒドロナフタレン、1-ビニルアダマンタン、2-ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプタン、7-ビニルビシクロ[4.1.0]ヘプタン、1-ビニルスピロ[2.2]ペンタンなどの多環のビニルシクロアルカン等が挙げられる。この中でも、単環のビニルシクロアルカンが好ましく、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘプタン、ビニルシクロオクタンがより好ましい。
【0034】
脂環式炭化水素を構成する水素原子は、ハロゲン原子、炭化水素基、又はアルコキシ基で置換されていてもよい。また、ビニル基を構成する水素原子も、ハロゲン原子、炭化水素基、又はアルコキシ基で置換されていてもよい。
【0035】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子及び塩素原子が好ましい。炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基が挙げられ、アルキル基及びアルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。炭化水素基及びアルコキシ基の炭素数に特に制限はないが、通常10以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下、一層好ましくは3以下、特に好ましくは2以下、最も好ましくは1である。
【0036】
ビニル脂環式炭化水素重合体を構成する繰り返し単位としては、後述の一般式(1)で表される繰り返し単位が更に好ましい。
【0037】
また、ソフトセグメントの原料モノマーとしては、末端二重結合を1個あるいは2個有する直鎖炭化水素、末端二重結合を1個あるいは2個有する側鎖構造を持った分岐炭化水素、末端二重結合を1個あるいは2個有する炭化水素エーテル等が挙げられる。この中でも、末端二重結合を1個あるいは2個有する直鎖炭化水素、末端二重結合を1個あるいは2個有する側鎖構造を持った分岐炭化水素が好ましく、末端二重結合を1個あるいは2個有する直鎖炭化水素がより好ましい。
ソフトセグメントを構成する繰り返し単位としては、後述の一般式(2)で表される繰り返し単位が更に好ましい。
【0038】
ブロック共重合体B´中のハードセグメント及びソフトセグメントの含有比率は、ハードセグメント100質量部に対してソフトセグメントの含有量が、通常5質量部以上、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上であり、一方、通常2000質量部以下、好ましくは150質量部以下、より好ましくは100質量部以下である。
【0039】
前記含有比率が前記下限値以上であると、ブロック共重合体B´が適度な結晶性となるため、耐熱性、転写性の観点で好ましい。一方、前記含有比率が前記上限値以下であると、基体への親和性が増すため、接着性の観点で好ましい。
【0040】
(3)重合体B
本発明の別の実施形態に係る現像剤成分は、後述の一般式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体Bを含有する。なお、本明細書において「繰り返し単位」とは、必ずしも同一の構造が連続することのみを意味するものではなく、原料モノマー由来の構造単位(ユニット)であれば「繰り返し単位」という。
【0041】
【0042】
(式(1)において、R11~R18はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、又はアルコキシ基を表す。)
【0043】
水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、又はアルコキシ基の中では、水素原子、炭化水素基、アルコキシ基が好ましく、水素原子、炭化水素基がより好ましく、水素原子が更に好ましい。
【0044】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子及びアスタチン原子が挙げられ、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が好ましく、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子がより好ましく、フッ素原子及び塩素原子が更に好ましい。
【0045】
炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基が挙げられ、アルキル基及びアルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
【0046】
炭化水素基及びアルコキシ基の炭素数に特に制限はないが、通常10以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下、一層好ましくは3以下、特に好ましくは2以下、最も好ましくは1である。
【0047】
上記一般式(1)の好ましい構造は、下記の通りである。
【0048】
【0049】
上記の構造の中でも、より好ましい構造は以下の通りである。
【0050】
【0051】
上記の構造の中でも、更に好ましい構造は以下の通りである。
【0052】
【0053】
ブロック共重合体B´及び重合体Bに含まれる上記一般式(1)で表される繰り返し単位の含有量に特に制限はないが、通常30質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上で、通常95質量%以下、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。
【0054】
ブロック共重合体B´及び重合体Bの数平均分子量(Mn)は通常30,000以上、好ましくは40,000以上、より好ましくは45,000以上、最も好ましくは50,000以上で、通常120,000以下、好ましくは100,000以下、より好ましくは95,000以下、更に好ましくは90,000以下、特に好ましくは85,000以下、とりわけ好ましくは80,000以下である。ここで、ブロック共重合体B´及び重合体Bの数平均分子量(Mn)はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて決定されるポリスチレン換算の値である。
【0055】
また、ブロック共重合体B´及び重合体Bは、以下の物性を有するものであることが好ましい。
密度(ASTM D792):0.92~0.96g/cm3
MFR(メルトフローレート)〔ISO R1133(測定温度230℃、荷重2.16kg)〕:1~300g/10分
ガラス転移温度(Tg):110~150℃
【0056】
ブロック共重合体B´及び重合体Bの密度が上記下限値以上であると耐熱性が良好となる傾向があり、上記上限値以下であると耐衝撃性や柔軟性が良好となる傾向がある。また、ブロック共重合体B´及び重合体BのMFRが上記範囲内であると定着時の流動性の観点で好ましい。ブロック共重合体B´及び重合体Bのガラス転移温度は、耐熱性の観点から、より好ましくは115℃以上であり、一方、現像剤製造の観点からは、より好ましくは135℃以下である。
【0057】
ブロック共重合体B´及び重合体Bとしては、市販のものを用いることもでき、具体的には三菱ケミカル社製 Zelas(商標登録)が挙げられる。
【0058】
(重合体Bが共重合体である場合)
重合体Bは上記一般式(1)で表される繰り返し単位からなる単独重合体であってもよいが、重合体Bは上記一般式(1)で表される繰り返し単位に加えて、他の構造(以下、第2の構造と記載する場合がある)も含む共重合体であってもよい。重合体Bは好ましくは共重合体である。
重合体Bが共重合体である場合、第2の構造については特に制限はない。
【0059】
(一般式(2)で表される繰り返し単位)
ブロック共重合体B´及び重合体Bは、更に下記一般式(2)で表される繰り返し単位を有する共重合体であることが好ましい。
【0060】
【0061】
(式(2)において、R21~R24はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基又はアルコキシ基を表し、nは1以上の整数を表す。nが2以上の場合、複数存在するR21、R22は同一であってもよくそれぞれ異なっていてもよい。)
【0062】
R21~R24は水素原子、炭化水素基、アルコキシ基が好ましく、水素原子、炭化水素基がより好ましい。
【0063】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、及びアスタチン原子が挙げられ、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が好ましく、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子がより好ましく、フッ素原子及び塩素原子が更に好ましい。
【0064】
炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基が挙げられ、アルキル基及びアルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
【0065】
炭化水素基及びアルコキシ基の炭素数に特に制限はないが、通常10以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下、一層好ましくは3以下、特に好ましくは2以下、最も好ましくは1である。
【0066】
nは1以上の整数を表し、好ましくは2以上、一方通常10以下、好ましくは9以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは7以下、一層好ましくは6以下、特に好ましくは5以下である。
【0067】
上記一般式(2)の好ましい例示は、下記の通りである。
【0068】
【0069】
上記の構造の中でも、より好ましい構造は以下の通りである。
【0070】
【0071】
上記の構造の中でも、更に好ましい構造は以下の通りである。
【0072】
【0073】
上記一般式(2)で表される繰り返し単位の原料に特に制限はないが、通常、末端に二重結合を有するアルケンが挙げられる。その具体例としては、イソブチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、イソプレン等である。これらの中でも、2個の共役二重結合を持つ化合物が重合体の結晶制御性の観点から好ましく、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、イソプレンがより好ましく、1,3-ブタジエンが樹脂の結晶制御性の観点から更に好ましい。
【0074】
上記一般式(2)で表される繰り返し単位の原料は、これらの1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。二重結合を複数有する繰り返し単位を使用する場合は、重合後に水素化によって、残存する二重結合を飽和結合に変換する。水素化が100%行われる場合は上記一般式(2)で表される繰り返し単位の構造のみとなるが、水素化率が100%でない場合は、主鎖に二重結合を有する構造となり得る。ブロック共重合体B´及び重合体Bは、そのような繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0075】
ブロック共重合体B´及び重合体Bに含まれる上記一般式(2)で表される繰り返し単位の含有量に特に制限はないが、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上で、通常70質量%以下、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
【0076】
また、ブロック共重合体B´及び重合体Bにおける、上記一般式(1)で表される繰り返し単位の含有量と上記一般式(2)で表される繰り返し単位の含有量との合計含有量は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましい。
【0077】
また、ブロック共重合体B´及び重合体Bにおける上記一般式(1)で表される繰り返し単位の含有量(質量%)を[b1]とし、一方、ブロック共重合体B´及び重合体Bにおける上記一般式(2)で表される繰り返し単位の含有量(質量%)を[b2]とした場合、[b1]/[b2]の値に特に制限はないが、通常0.050以上、好ましくは0.67以上、より好ましくは1以上、一方通常19以下、好ましくは9.0以下、より好ましくは7.0以下である。[b1]/[b2]の値が上記の範囲内であると、ブロック共重合体B´及び重合体Bが適度な結晶性と基体への親和性を有するようになるため、転写性、定着性と耐熱性の観点で好ましい。
【0078】
ブロック共重合体B´及び重合体Bは上記一般式(1)で表される繰り返し単位及び上記一般式(2)で表される繰り返し単位を含む二元共重合体でもよく、更に任意の構造を1種含む三元共重合体でもよく、任意の構造が2種以上含まれていてもよい。
【0079】
重合体Bが共重合体である場合、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体のいずれでもよいが、定着性及び耐熱性を効果的に付与する観点からブロック共重合体であることが好ましい。
【0080】
ブロック共重合体B´、及び、ブロック共重合体である場合の重合体Bを用いる際には、ブロック共重合体B´、及び、ブロック共重合体である場合の重合体Bは、上記一般式(1)を繰り返し単位とする、重合体ブロックP及び、上記一般式(2)を重合単位とする重合体ブロックQを有するブロック共重合体であることが、柔軟性付与による定着性向上に加えて、適度な結晶性付与による、キャリア液中での微細重合体粒子形成の観点から好ましい。また、ブロック共重合体B´、及び、ブロック共重合体である場合の重合体Bは、重合後の前駆体に残存する二重結合を、水素化により飽和結合に変換した、水素化ブロック共重合体であることが更に好ましい。
【0081】
重合体ブロックQ中に、直鎖状の繰り返し単位(Q1)が連続して存在する場合は結晶性の向上に寄与し、一方で側鎖にアルキル基を有する繰り返し単位(Q2)が存在すると、そのような結晶性を一部阻害する。例えば、1,3-ブタジエンを原料として重合体ブロックQを製造する場合は、1,4-付加重合及びそれに引き続く水素化により、直鎖状のn-ブチレンの構造単位からなる重合体が得られ、結晶性が高くなる。一方、1,2-付加重合による1-エチルエチレンの構造単位の含有割合が高くなると、結晶性を下げる。そのため、これらのバランスで重合体の結晶性を制御することができる。
【0082】
前記直鎖状の繰り返し単位(Q1)の、前記直鎖状の繰り返し単位(Q1)と前記側鎖にアルキル基を有する繰り返し単位(Q2)の合計(Q1+Q2)に対する含有割合は、耐熱性の観点から、通常80質量%以上、好ましくは85質量%以上であり、一方、適度な結晶性の観点から、通常98質量%以下、好ましくは95質量%以下である。
【0083】
ブロック共重合体B´、及び、ブロック共重合体である場合の重合体Bのブロック構造は特に限定されず、直鎖状、分岐状、放射状等のいずれであってもよいが、下記式(3)又は(4)で表されるブロック共重合体である場合が好ましい。
【0084】
P-(Q-P)r (3)
(P-Q)s (4)
(式(3)及び式(4)中、Pは重合体ブロックPを、Qは重合体ブロックQをそれぞれ示し、rは1以上の整数を示し、sは2以上の整数を示す。)
【0085】
ブロック共重合体としては、製造の容易さの観点から、式(4)で表されるブロック共重合体よりも式(3)で表されるブロック共重合体(少なくとも2個の重合体ブロックPと、少なくとも1個の重合体ブロックQとを有するブロック共重合体)の方が好ましい。
【0086】
rは1以上の整数を示し、上限値に特に制限はないが、製造の容易さの観点から、通常5以下、好ましくは3以下、より好ましくは2以下である。
sは2以上の整数を示し、上限値に特に制限はないが、製造の容易さの観点から、通常5以下、好ましくは4以下、より好ましくは3以下である。
【0087】
(2-4)ブロック共重合体B´及び重合体Bの製造方法
[重合体の製造方法]
ブロック共重合体B´及び重合体Bの製造方法は特に限定されない。例えば、ビニルシクロヘキサン系モノマーを重合させて得る方法、スチリル系モノマーを重合し、更に核水素化することによって得る方法等が挙げられる。
【0088】
<スチリル系モノマーを重合し、更に核水素化することによって得る方法>
スチリル系モノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、4-t-ブチルスチレン、5-t-ブチル-2-メチルスチレン、4-モノクロロスチレン、4-クロロメチルスチレン、4-ヒドロキシメチルスチレン、4-t-ブトキシスチレン、ジクロロスチレン、4-モノフルオロスチレン、4-フェニルスチレン等が挙げられ、スチレン、α-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、4-クロロメチルスチレン、ビニルナフタレンが好ましく用いられ、スチレン、α-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-t-ブチルスチレンがより好ましく用いられる。最も好ましくはスチレンが用いられる。これらのスチリル系モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0089】
<核水素化方法>
以下、核水素化前の重合体を重合体Cとして核水素化によりブロック共重合体B´及び重合体Bを得る方法について説明する。
【0090】
本明細書における核水素化とは、重合体Cに含まれる芳香族環を水素化し、飽和炭化水素骨格に変換することを指す。芳香族環は、通常ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等の炭素骨格で形成されるものが挙げられる。これらの芳香族環は、重合体Cに1種類のみ含まれていてもよく、2種類以上が任意の割合で含まれていてもよい。
【0091】
例えばポリスチレンであれば、核水素化によってフェニル基がシクロヘキシル基に変換される。
重合体骨格中の任意の部位に脂肪族不飽和炭化水素(オレフィン)部分が含まれている場合、核水素化を行った際に同時にこの部分が飽和炭化水素部分となってもよい。なお、この場合、当該部分は上記一般式(2)で表される繰り返し単位に該当する。
【0092】
核水素化率は特に限定されないが、重合体Cに含まれる芳香族環のうち、通常5モル%以上、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、特に好ましくは95モル%以上、最も好ましくは99モル%以上であり、上限は特に限定されない。核水素化率が上記範囲内であることで、得られる水素化共重合体を使用した現像剤の定着性を向上できる傾向にある。核水素化率は、例えば、1H-NMRにより、0.5~2.5ppm付近の脂肪族由来ピークと6.0~8.0ppm付近の芳香族由来のピークの積分値から算出することができる。
【0093】
核水素化の方法は特に限定されないが、例えば、触媒、水素等の存在下で芳香族環を水素化する方法がある。必要に応じて加圧や加熱を行ってもよい。
核水素化の具体的方法について、以下に説明する。
【0094】
(触媒)
核水素化では触媒を使用してもよく、触媒としては金属触媒が使用できる。金属触媒としては、合金触媒、担体に活性金属種を担持させた担持金属触媒等が挙げられる。
【0095】
金属触媒の金属成分は、ビニル芳香族共重合体中の芳香族環を水素化できるものであれば特に限定されないが、通常、ルテニウム、ニッケル、銅、パラジウム、金、白金、鉄、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム等の金属を用いることができる。なかでも、水素化能力を発揮するものとして、長周期型周期表第8族、第9族、第10族及び第11族からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を含むことが好ましい。特に水素化能力が高いことから、長周期型周期表第8族、第9族及び第10族からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を含むことが好ましく、特に選択性が高いことから、ルテニウム、ロジウム、ニッケル、パラジウム又は白金が好ましく、特に核水素化に対する能力の高さからルテニウム、ニッケル又はパラジウムが好ましい。
【0096】
核水素化で用いる金属触媒は、上記の金属の1種類を用いても、2種類以上を用いてもよい。金属を2種類以上用いるときは、その組み合わせは特に限定されず、それぞれの金属が触媒活性を有するもの(共触媒)でも、1種類以上の金属の触媒活性を向上させるもの(助触媒)であってもよいが、これらのうち助触媒が好ましい。
【0097】
合金触媒は、特に限定はされないが、ルテニウム、ニッケル、銅、パラジウム、金、白金等の金属の合金が用いられる。具体的には一般的に知られているラネー触媒、銅クロム触媒等が挙げられる。
【0098】
金属触媒は、活性金属種を後述する各種の担体に担持させた担持金属触媒であってもよく、反応液からの分離を容易に行えること、触媒の再使用が容易であるという点から、担持金属触媒を用いることが好ましい。
【0099】
担体としては特に限定はされないが、例えば活性炭、カーボンブラック、シリコンカーバイド等の炭素系担体;アルミナ、シリカ、ジルコニア、ニオビア、チタニア、セリア、珪藻土、ゼオライト等の金属酸化物担体等が挙げられる。中でも活性炭、シリカ及びアルミナからなる群より選ばれる少なくとも1種を担体として用いることが、反応活性発現と触媒の活性安定化の面で好ましい。
【0100】
担持金属触媒における金属の含有量は特に限定されないが、金属に換算した質量百分率で、通常、担体と金属の合計質量に対して0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上である。また、担持金属触媒における金属の含有量は、通常50質量%以下であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。金属含有量を前記範囲内とすることにより、十分な触媒活性を得ることができる。なお、以上の触媒の記載において、質量%と記載されている値は、その触媒の担体と金属の合計質量に対する金属含有量を示す。
【0101】
担持金属触媒に用いられる担体の比表面積は特に限定されないが、通常1m2/g以上であり、好ましくは10m2/g以上、より好ましくは50m2/g以上である。また、担持金属触媒に用いられる担体の比表面積は、好ましくは2000m2/g以下であり、より好ましくは1500m2/g以下、更に好ましくは1000m2/g以下である。
【0102】
比表面積が前記下限値以上のものを用いることで、金属を担体に高い分散度で担持することを可能とし、十分な触媒活性を得る上で好ましい。また、前記上限値以下の比表面積を有する金属触媒を用いることは、通常担体が有する細孔を有効に利用できる点で好ましい。
【0103】
担持金属触媒に用いられる担体の平均細孔径は特に限定されないが、通常200Å以上であり、好ましくは250Å以上である。また、担持金属触媒に用いられる担体の平均細孔径は、好ましくは1000Å以下であり、より好ましくは600Å以下である。
【0104】
平均細孔径が上記下限以上であることで、重合体Cの取り込みが十分行われ、処理効率を維持できる傾向にある。上記上限より平均細孔径が大きい担体も使用できるが、担体表面を有効に利用する点から、平均細孔径は上記上限以下が好ましい。
【0105】
核水素化で用いられる金属触媒の形状は、特に限定はされず、金属触媒を用いて行う反応の形式に応じて、適宜選択して用いることができる。金属触媒の具体的な形状としては、例えば粉末状、粒子状、ペレット状等が挙げられるが、中でも細孔内拡散の影響が少ない粉末状が好ましい。
【0106】
また、核水素化で用いられる金属触媒の平均粒子径等も特に限定はされない。平均粒子径は、金属触媒を用いる反応の形式に応じて、適宜選択できるが、通常、30μm以上、20mm以下である。
【0107】
なお、金属触媒の平均粒子径は、動的光散乱法によって得ることができる。
【0108】
核水素化で用いられる金属触媒の使用量は、芳香族環を適切な時間内に水素化できる程であればよく、特に限定されないが、重合体Cの質量に対して、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。また、金属触媒の使用量は、重合体Cの質量に対して、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0109】
(核水素化反応条件)
核水素化は、水素雰囲気下で行ってもよい。水素源としては特に限定はされないが、反応終了後に分離精製の必要がない気体の水素を用いることが望ましい。
【0110】
核水素化反応は、通常、水素ガスによる加圧条件下で行われる。核水素化反応の圧力は特に限定されないが、通常1MPa以上、好ましくは3MPa以上、より好ましくは5MPa以上である。また、核水素化反応の圧力は、好ましくは30MPa以下、より好ましくは20MPa以下、さらに好ましくは15MPa以下である。
【0111】
一般的には、反応圧力を上昇させると金属触媒への水素供給が促進され、核水素化の反応速度が向上する。一方で、高い反応圧力で実施するには特別に耐圧性を高めた反応器等の設備が必要となるほか、高い反応圧力の条件によって共重合体の分解反応が生じる可能性がある。
【0112】
水素雰囲気下における水素ガスの水素濃度は、特に限定はされないが、通常70体積%以上、好ましくは80体積%以上、より好ましくは90体積%以上であり、上限は通常100体積%以下であり、好ましくは95体積%以下である。
【0113】
重合体Cを核水素化する温度は、特に限定されないが、通常20℃以上、好ましくは50℃以上、より好ましくは90℃以上、さらに好ましくは150℃以上である。また、重合体Cを核水素化する温度は、好ましくは300℃以下、より好ましくは250℃以下、さらに好ましくは220℃以下である。反応温度が前記範囲内であることで、共重合体の分解反応を抑制しながら、効率的な核水素化が達成できる傾向にある。
【0114】
重合体Cを核水素化する反応時間については、共重合体の核水素化が達成されれば特に限定されない。反応時間は好ましくは30分以上、より好ましくは1時間以上であり、好ましくは24時間以下、より好ましくは12時間以下である。
【0115】
核水素化において溶媒を用いてもよい。溶媒は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、1,4ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブテンジオール等のアルコール類;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;ヘキサン、シクロヘキサン、デカリン等の炭化水素;等が挙げられる。これらの溶媒は、単独でも2種類以上の混合溶媒としても用いることができる。重合体Cの溶解性の点から、溶媒としてはテトラヒドロフラン(THF)又はシクロヘキサンを用いることが好ましい。
【0116】
核水素化において溶媒を用いる際、溶媒中の重合体Cの濃度としては、特に限定されないが、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。また、溶媒中の重合体Cの濃度は、好ましくは70質量%以下であり、より好ましく50質量%以下である。重合体Cの濃度が前記範囲内であることで、生産性を維持しながら、重合体Cの反応溶液の粘度の上昇を抑制し、反応溶液のハンドリング性を維持することができる傾向にある。
【0117】
(反応装置)
核水素化で用いられる反応装置については、特に限定されないが、通常は高圧反応が可能なオートクレーブが使用される。またループリアクターを使用してもよい。連続反応器の使用も可能であり、触媒を反応器に充填し、原料液と水素を流通させ、反応を行うことも選択できる。連続反応器を使用する場合は、触媒の分離工程が不要であるので、大量生産を行う場合は連続反応器の方が望ましい。
【0118】
反応装置の材質については通常SUS(ステンレス鋼材)が用いられるが、ハステロイ等の耐酸性のSUSを用いてもよい。発生する酸に対する対応として、グラスライニングの容器やテフロン(登録商標)コーティングの容器等も使用できる。
【0119】
(触媒の分離)
核水素化の後に、得られた水素化共重合体から触媒を分離してもよい。具体的な触媒の分離方法は特に限定されないが、フィルター等による濾過、デカンテーション、遠心分離等が挙げられる。得られる共重合体は、その分岐構造により濾過が非常に困難な場合がある。その場合は、中でもデカンテーションや遠心分離による分離が望ましい。
【0120】
<ブロック共重合体の製造方法>
ブロック共重合体の製造(重合)は、一般には有機溶剤を使用したリビングアニオン重合法を用いて行われる。アニオン重合でブロック共重合体を製造する一般的な方法としては、スチレン等のモノマーの重合完了後、更にブタジエンやイソプレン等の異種モノマーを逐次的に添加する方法、アニオン末端を有するスチレン-ブタジエンのジブロック共重合体のリビングポリマーをカップリングさせる方法などが知られている。
【0121】
(3)エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体Aと、ブロック共重合体B´又は重合体Bの混合割合
エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体Aと、ブロック共重合体B´又は重合体Bの混合割合に特に制限はないが、ブロック共重合体B´又は重合体Bの含有量が、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体Aと、ブロック共重合体B´又は重合体Bの総量に対して、通常、5質量%以上、好ましくは7質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、一方、50質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。上記の含有量であることにより、耐熱性と定着性の両立の観点から好ましい。
【0122】
エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体Aと、ブロック共重合体B´又は重合体Bが共存することによる、定着性及び耐熱性への相乗効果発現のメカニズムに関しては、以下のように推定できる。
【0123】
エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体Aは、極性基であるカルボキシル基を有していることから、ポリエステルやナイロンのように、極性を有する印刷媒体への親和性が高く、それらへの定着性に優れている。
【0124】
一方、ブロック共重合体B´及び重合体Bは、柔軟で低極性の脂環式炭化水素基を有することから、ポリエチレンやポリプロピレンのような低極性の印刷媒体への親和性が高く、それらへの定着性に優れている。この理由は、前記脂環式炭化水素基と印刷媒体の低結晶部分とが、マクロな分子集合体レベルで構造的に類似していることによると推察される。この場合、特に側鎖部分に脂環式炭化水素基があることによって印刷媒体への分子レベルの接近、共晶化が促進されるため、印刷媒体に対して親和性が高まると考えられる。従って、主鎖部分に脂環式炭化水素基があっても、印刷媒体への親和性は十分に発現しない。
【0125】
また、ブロック共重合体B´及び重合体Bの主鎖部分に脂環式炭化水素基がある場合は、構造が剛直すぎて溶剤への親和性が低くなるため、液体現像剤製造の観点からも、側鎖部分に脂環式炭化水素基がある場合よりも劣る。但し、ブロック共重合体B´及び重合体Bが主鎖部分に脂環式炭化水素基を有することを排除するものではない。
【0126】
加えて、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体Aとブロック共重合体B´、及び、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体Aと重合体Bは、完全相溶せずに、適度なミクロ相分離構造を有していると考えられる。そのため、印刷媒体の種類によって、より定着性を発現し易い成分が印刷媒体界面に適度な面積で露出し易く、幅広い種類の印刷媒体に定着すると考えられる。更には、耐熱性を発現するブロック共重合体B´及び重合体Bが、ミクロ相分離の「島」で、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体Aが「海」となっていると予想される。そこで、ブロック共重合体B´及び重合体Bが、キャリア液が揮発して印刷層を形成した後に、印刷表面及び印刷媒体との界面に相分離して局在化することによって、より耐熱性を発現し易い形態になっていると考えられる。
【0127】
特に、ブロック共重合体B´、及び、ブロック共重合体である場合の重合体Bのブロック構造は、共重合体に適度な結晶性を付与するため、ミクロ相分離構造の形成において有利であると考えられる。ブロック共重合体B´、及び、ブロック共重合体である場合の重合体Bがミクロ相分離構造を形成するものであれば、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体Aとの親和性を向上させることも期待できる。
【0128】
<その他の成分>
(着色剤)
本発明の液体現像剤は、必要に応じて着色剤を含有してもよい。着色剤としては、例えば、カーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、ピグメントイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン3B、ブリリアントカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ピグメントレッド、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレート等の顔料;アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、チオインジコ系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系等の染料;が挙げられる。着色剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0129】
着色剤は、必要に応じて表面処理された着色剤を用いてもよく、分散剤と併用してもよい。また、着色剤は、複数種を併用してもよい。
【0130】
着色剤を用いる場合の着色剤の含有量に特に制限はないが、現像剤成分に対して、通常、1質量%以上、好ましくは3質量%以上、一方、通常60質量%以下、好ましくは50質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。
【0131】
(電荷制御剤)
本発明の液体現像剤は、必要に応じて電荷制御剤を含有してもよい。電荷制御剤としては、特に制限はなく、従来公知の電荷制御剤が使用される。例えば、ニグロシン染料、脂肪酸変性ニグロシン染料、カルボキシル基含有脂肪酸変性ニグロシン染料、四級アンモニウム塩、アミン系化合物、アミド系化合物、イミド系化合物、有機金属化合物等の正帯電性電荷制御剤;オキシカルボン酸の金属錯体、アゾ化合物の金属錯体、金属錯塩染料、サリチル酸誘導体等の負帯電性電荷制御剤;等が挙げられる。電荷制御剤は1種のみであってもよいし、2種以上を併用してもよい。また、電荷制御剤のうち、一部を帯電補助剤として現像剤粒子に包含させ、他の電荷制御剤を溶液として印刷機中で適宜現像剤と混合してもよい。
【0132】
(ワックス)
本発明の液体現像剤は、必要に応じてワックスを含有してもよい。ワックスとしては、特に制限はなく、例えば、カルナバワックス、サトウワックス、木ワックス等の植物性ワックス;蜜ワックス、昆虫ワックス、鯨ワックス、羊毛ワックス等の動物性ワックス;エステルを側鎖に有するフィッシャートロプシュワックス(FTワックス)、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエステルワックス等の合成炭化水素系ワックス;等が挙げられる。ワックスは1種のみであってもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0133】
(その他添加剤)
本発明の液体現像剤は、一つ又はそれ以上の上記以外の添加剤、例えば、界面活性剤、殺菌剤、粘度調整剤、pH調整剤、保存剤、相溶化剤、乳化剤等を含有してもよい。
【0134】
<液体現像剤の製造方法>
以下に、液体現像剤の製造方法の一例を示すが、以下の方法に限定されるものではなく、適宜改変して適用することができる。
【0135】
(重合体ペーストの製造)
エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体Aと、ブロック共重合体B´又は重合体B、必要に応じて樹脂ワックス等を、キャリア液と共に、プラネタリーミキサー又はフルゾーン撹拌翼を有する容器中に仕込む。そして、撹拌しながら、内温を120℃程度まで昇温し、120℃到達後、温度を保持しながら一定時間撹拌する。その後、ゆっくり内温25℃程度まで降温しながら撹拌を続け、重合体ペーストを製造する。
【0136】
(液体現像剤の製造)
次に、上記重合体ペースト、必要に応じて着色剤、帯電補助剤、ワックスを、アトライターに粉砕用のビーズ(例えばステンレスビーズ)、希釈用キャリア液と共に仕込み、必要に応じて内温を制御しながら湿式粉砕し、これをメッシュ濾過してビーズを除去し、液体現像剤を製造する。
【0137】
液体現像剤に含まれる粒子の平均粒子径に特に制限はないが、通常0.3μm以上、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは0.8μm以上であり、一方、通常10μm以下、好ましくは8μm以下、より好ましくは5μm以下である。また、液体現像剤に含まれる粒子の粒度分布は一山で単分散に近いものが好ましい。
【0138】
なお、液体現像剤に含まれる粒子の平均粒子径は、動的光散乱法によって得ることができる。
【0139】
[2]画像形成方法、液体現像剤カートリッジ、画像形成装置
本発明の液体現像剤は、例えば
図1で示すような電子写真方式の本発明の画像形成装置で使用される。コンピューター100のデジタル画像データが、露光装置102で光パターンに変換され、予め帯電装置101で均一に帯電された感光体105に照射される。それによって形成された静電潜像に、現像剤タンク103から供給された現像剤が現像装置104によって感光体105上に現像される。感光体105上に現像された現像剤は、中間転写体107に静電気力によって一次転写される。なお、感光体105は、中間転写体107に現像剤を転写後は、クリーニング装置106によって余分な現像剤が除去され、次の画像形成に移行する。
【0140】
感光体105より中間転写体107上に一次転写されたキャリア液を含む現像剤は、中間転写体107の内部ヒーター109、外部ヒーター108によって乾燥、溶融され、圧力ローラー110によって、フィルム等の印刷媒体111上に二次転写、定着され、所望の画像が印刷媒体111に形成される。
【0141】
この画像形成装置において、これらのプロセスの一部、例えば帯電装置101、現像装置104、感光体105及びクリーニング装置106を一体の本発明の液体現像剤カートリッジとして、取り外して交換可能としてもよい。
【0142】
なお、本発明の画像形成装置で使用されたキャリア液は、画像形成装置内で回収して再利用してもよい。また、感光体105、中間転写体107は、シリンダー状基体に取り外し交換可能なシート形状であってもよい。
【実施例】
【0143】
以下、実施例により本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。ただし、以下の実施例は本発明を詳細に説明するために示すものであり、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下に示した実施例に限定されるものではなく任意に変形して実施することができる。
【0144】
<ブロック共重合体B´又は重合体B>
スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体を用いて、日本国特開2014-019789号公報の段落[0084]~[0087]の記載の方法により、以下の共重合体MC-1及びMC-2を得た。実施例で用いた重合体は以下の通りである。
【0145】
[MC-1]
下記のPで表される繰り返し単位、下記のQ1で表される繰り返し単位、下記のQ2で表される繰り返し単位を含み、質量比率で[Pで表される繰り返し単位]:[Q1で表される繰り返し単位]:[Q2で表される繰り返し単位]=84.4:14.4:1.2であり、Pで表される繰り返し単位の重合体で構成されるブロック([P]と表す)、Q1とQ2で表される繰り返し単位の重合体で構成されるブロック([Q]と表す)が、[P]-[Q]-[P]-[Q]-[P]のペンタブロック共重合体である。
・MFR〔測定温度230℃、荷重2.16kg(ISO R1133)〕:1.3g/10分
・ガラス転移温度(Tg):129℃
【0146】
【0147】
[MC-2]
上記のPで表される繰り返し単位、上記のQ1で表される繰り返し単位、上記のQ2で表される繰り返し単位を含み、質量比率で[Pで表される繰り返し単位]:[Q1で表される繰り返し単位]:[Q2で表される繰り返し単位]=81.7:16.3:1.9であり、Pで表される繰り返し単位の重合体で構成されるブロック([P]と表す)、Q1とQ2で表される繰り返し単位の重合体で構成されるブロック([Q]と表す)が、[P]-[Q]-[P]-[Q]-[P]のペンタブロック共重合体である。
・MFR〔測定温度230℃、荷重2.16kg(ISO R1133)〕:35g/10分
・ガラス転移温度(Tg):110℃
【0148】
[MC-3]
スチレン-イソブチレン-スチレントリブロック重合物(カネカ製 SIBSTAR(商標登録)S103T、スチレン30質量%、Mn=100,000)を用いて、日本国特開2014-019789号公報の段落[0084]~[0087]の記載の方法により核水素化を行い、共重合体MC-3を得た。(水素化率:99.0%)
・ガラス転移温度(Tg):132℃
【0149】
実施例1
<重合体ペーストの製造>
ポリ(エチレン-メタクリル酸)共重合体(商品名N1050H、三井デュポンポリケミカル社製)100g、ポリ(エチレン-アクリル酸)共重合体(商品名AC-5120、日本ハネウェル社製)100g、50gのMC-1、及びイソパラフィン系溶剤(商品名アイソパーL、エクソンモービル社製)380gを、プラネタリーミキサー(商品名PLM-2、井上製作所製)中に仕込んだ。そして、公転毎分30回転、自転毎分90回転で撹拌しながら、1時間かけて内温120℃まで昇温し、120℃到達後、温度を保持しながら1.5時間撹拌した。その後、4時間かけて内温25℃まで降温しながら撹拌を続け、重合体ペーストを製造した。
【0150】
<液体現像剤の製造>
次に、上記重合体ペースト92.3g、カーボンブラック(商品名三菱カーボンブラック#960、三菱ケミカル社製)9.5g、アルミニウムトリステアレート(日本油脂社製)0.60g、ポリエチレンワックス(商品名ACumist B-6、日本ハネウェル社製)3.0g、及びイソパラフィン系溶剤(商品名アイソパーL、エクソンモービル社製)145gを、アトライター(商品名MA01SC、日本コークス工業社製)に直径5mmのステンレス製ビーズ2kgと共に仕込んだ。そして、内温58℃に昇温し、回転数30rpmで1.5時間撹拌、粉砕し、更に内温36℃に降温して3.5時間撹拌、粉砕し、得られた分散液をメッシュ濾過して液体現像剤を製造した。
【0151】
<定着性試験1>
得られた液体現像剤を、ワイヤーバーNo.6を使用して、予めコロナ処理された二軸延伸ポリプロピレンフィルム(略称OPP、膜厚20μm)上に塗布し、120℃で10分間乾燥した。そして、塗布表面にフッ素樹脂シートを重ねてラミネーター(商品名Proteus A3、Fellowes製)に120℃で通して圧熱処理し、当該フッ素樹脂シートを液体現像剤塗布面から剥がして、室温まで冷却した。その後、翌日に液体現像剤表面にテープ(商品名Masking Tape234、3M社製)を貼付し、180度方向に引き剥がすことにより、液体現像剤とフィルムの定着性を評価した。また、上記OPPの代わりに二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(略称OPET、膜厚12μm)を使用して同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0152】
<定着性試験2>
得られた液体現像剤を、電子写真方式の液体現像印刷機(商品名Indigo WS6600、ヒューレッドパッカード製)の液体現像剤缶に封入して液体現像剤ステーションに設置した。そして、液体現像剤を予めコロナ処理された二軸延伸ポリプロピレンフィルム(略称OPP、膜厚20μm)上に、プライマーを使用せずに直接印刷した。そして、印刷翌日に液体現像剤表面にテープ(商品名Masking Tape234、3M社製)を貼付し、180度方向に引き剥がすことにより、液体現像剤とフィルムの定着性を評価した。また、上記OPPの代わりに二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(略称OPET、膜厚12μm)を使用して同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0153】
なお、定着性試験1及び2において、定着性の度合いは、下記の5段階で評価した。3以上が許容レベルで、1、2は不可レベルであることを示す。
5:テープを貼付した部分に剥離無し
4:テープを貼付した部分に点状の剥離有り
3:テープを貼付した部分に点が一部つながった剥離有り
2:貼付部分の半分程度の面積に剥離有り
1:貼付部分に全面的な剥離有り
【0154】
<耐熱性試験>
上記定着性試験2で使用したものと同じ印刷フィルムを、印刷面と紙(日本紙通商より入手したHQ-500)を接触させた状態で厚さ1cmのガラス板2枚の間にはさみ、120℃のオーブン中で5分間加熱した。冷却後、紙をフィルムから剥がして、紙への液体現像剤の移行度合いを調べた。液体現像剤が移行する度合いが強いほど耐熱性が低く、加熱中に液体現像剤が溶融していたことを示す。
【0155】
なお、耐熱性試験において、耐熱性の度合いは、下記の3段階で評価した。2以上が許容レベルで、1は不可レベルであることを示す。
3:液体現像剤の移行無し
2:点状に薄く液体現像剤の移行有り
1:濃い液体現像剤の移行有り
【0156】
実施例2
MC-1に代えて、MC-2を使用した以外は、実施例1と同様に重合体ペーストの製造、液体現像剤の製造、及び定着性試験1、定着性試験2、耐熱性試験を行った。結果を表1に示す。
【0157】
実施例3
重合体ペーストの製造方法を下記に変更した以外は、実施例1と同様に液体現像剤の製造、及び定着性試験1、定着性試験2、耐熱性試験を行った。結果を表1に示す。
【0158】
<重合体ペーストの製造>
ポリ(エチレン-メタクリル酸)共重合体(商品名N1050H、三井デュポンポリケミカル社製)56g、ポリ(エチレン-アクリル酸)共重合体(商品名AC-5120、日本ハネウェル社製)169g、25gのMC-1、及びイソパラフィン系溶剤(商品名アイソパーL、エクソンモービル社製)380gを、プラネタリーミキサー(商品名PLM-2、井上製作所製)中に仕込んだ。そして、公転毎分30回転、自転毎分90回転で撹拌しながら、1時間かけて内温120℃まで昇温し、120℃到達後、温度を保持しながら1.5時間撹拌した。その後4時間かけて内温25℃まで降温しながら撹拌を続け、重合体ペーストを製造した。
【0159】
実施例4
MC-1に代えて、MC-2を使用した以外は、実施例3と同様に重合体ペーストの製造、液体現像剤の製造、及び定着性試験1、定着性試験2、耐熱性試験を行った。結果を表1に示す。
【0160】
実施例5
MC-1に代えて、MC-3を使用した以外は、実施例1と同様に重合体ペーストの製造、液体現像剤の製造、及び定着性試験1、定着性試験2、耐熱性試験を行った。結果を表1に示す。
【0161】
比較例1
重合体ペーストの製造方法を下記に変更した以外は、実施例1と同様に液体現像剤の製造、及び定着性試験1、定着性試験2、耐熱性試験を行った。結果を表1に示す。
【0162】
<重合体ペーストの製造>
ポリ(エチレン-メタクリル酸)共重合体(商品名N1110H、三井デュポンポリケミカル社製)200g、ポリ(エチレン-アクリル酸)共重合体(商品名AC-5120、日本ハネウェル社製)50g、及びイソパラフィン系溶剤(商品名アイソパーL、エクソンモービル製)380gを、プラネタリーミキサー(商品名PLM-2、井上製作所製)中に仕込んだ。そして、公転毎分30回転、自転毎分90回転で撹拌しながら、1時間かけて内温120℃まで昇温し、120℃到達後、温度を保持しながら1.5時間撹拌した。その後4時間かけて内温25℃まで降温しながら撹拌を続け、重合体ペーストを製造した。
【0163】
比較例2
OPPとOPET上に予めポリエチレンイミン水溶液を塗布、乾燥して、0.1μm厚のプライマー層を形成した後に、液体現像剤を塗布及び印刷した以外は、比較例1と同様に液体現像剤の製造、及び定着性試験1、定着性試験2、耐熱性試験を行った。結果を表1に示す。
【0164】
比較例3
MC-1に代えて、下記式で表される繰り返し単位を有する重合体R1を使用した以外は、実施例1と同様に重合体ペーストの製造を行ったが、粉砕困難な大きな凝集物と粗粒が発生したため良好な重合体ペーストが製造できず、液体現像剤の製造ができなかった。
【0165】
【0166】
上記式において、mは1以上の整数を表す。
【0167】
比較例4
MC-1に代えて、下記式で表される繰り返し単位を有するブロック共重合体R2を使用した以外は、実施例1と同様に重合体ペーストの製造を行ったが、粉砕困難な大きな凝集物と粗粒が発生したため良好な重合体ペーストが製造できず、液体現像剤が製造できなかった。
【0168】
【0169】
比較例5
実施例1において、MC-1のPで表される繰り返し単位に代えて、下記P’で表される繰り返し単位を含むブロック共重合体R3を使用したところ、キャリア液に溶解してしまい、適切な重合体ペーストが製造できず、液体現像剤が製造できなかった。
【0170】
【0171】
比較例6
実施例1において、MC-1のPで表される繰り返し単位及びQで表される繰り返し単位に代えて、それぞれ水素化処理されていない下記P’で表される繰り返し単位、Q1’で表される繰り返し単位及びQ2’で表される繰り返し単位からなるブロック共重合体R4を使用したところ、キャリア液に溶解してしまい、適切な重合体ペーストが製造できず、液体現像剤が製造できなかった。
【0172】
【0173】
比較例7
<重合体ペーストの製造>
75gのMC-1、及びイソパラフィン系溶剤(商品名アイソパーL、エクソンモービル社製)300gを、プラネタリーミキサー(商品名PLM-2、井上製作所製)中に仕込んだ。そして、公転毎分30回転、自転毎分90回転で撹拌しながら、1時間かけて内温120℃まで昇温し、120℃到達後、温度を保持しながら1.5時間撹拌した。その後4時間かけて内温25℃まで降温しながら撹拌を続け、重合体ペーストを製造した。
【0174】
<液体現像剤の製造>
実施例1と同様に、液体現像剤の製造を試みたものの、カーボンブラックの凝集が発生し、液体現像剤が製造できなかった。
【0175】
【0176】
表1の結果から分かるように、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体Aと、ブロック共重合体B´又は重合体Bを含有する本発明の液体現像剤は、良好な定着性、耐熱性を有する(実施例1~5)。
【0177】
一方、ブロック共重合体B´又は重合体Bが含まれずエチレン-(メタ)アクリル酸共重合体Aのみを含む液体現像剤はフィルムへの転写不良(フィルムへの定着性の低さと関係する)が発生したり、耐熱性が不足したりすることが分かった。
【0178】
具体的には、プライマー層を形成しない比較例1では印刷に必要なレベルの転写性が得られず、印刷が不可であった。プライマー層を形成した比較例2では印刷は可能であったが、耐熱性が不足することが分かった。
【0179】
また、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体Aが含まれず、ブロック共重合体B´又は重合体Bのみを含む液体現像剤は、液体現像剤製造の際に、顔料の分散不良が発生し、良好な液体現像剤が製造できなかった。
【0180】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2019年7月2日出願の日本特許出願(特願2019-123721)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0181】
本発明の液体現像剤は、電子写真方式の1つである液体現像法の技術分野において、広範な産業上の利用可能性を有する。本発明の液体現像剤は、プリンター、印刷機、複写機及びファクシミリ装置からなる群から選ばれる少なくとも2つの機能を有する複合機、又は前記群から選ばれる少なくとも1つの機能と、他の機能を有する複合機に採用され得る。
【符号の説明】
【0182】
100 コンピューター
101 帯電装置
102 露光装置
103 現像剤タンク
104 現像装置
105 感光体
106 クリーニング装置
107 中間転写体
108 外部ヒーター
109 内部ヒーター
110 圧力ローラー
111 印刷媒体