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特許7444173コントローラーと調光窓の組み合わせ及び該組み合わせを備える車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】コントローラーと調光窓の組み合わせ及び該組み合わせを備える車両
(51)【国際特許分類】
   B60J 3/04 20060101AFI20240228BHJP
   E06B 9/24 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
B60J3/04
E06B9/24 C
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021548801
(86)(22)【出願日】2020-09-11
(86)【国際出願番号】 JP2020034446
(87)【国際公開番号】W WO2021060020
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2019175413
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】儀間 裕平
(72)【発明者】
【氏名】松島 孝典
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-322697(JP,A)
【文献】特開2002-067690(JP,A)
【文献】特開2017-026920(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0233384(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 3/04
E06B 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に配置される調光窓と、前記調光窓の遮光の強弱を継続的に調節するために、前記車両に配置されるコントローラーと、の組み合わせであって、
前記コントローラーは、
衛星測位システムと時刻とに基づき地球上の前記車両の位置から見た太陽の位置を継続的に算出するサーベイヤーと、
地球上の前記車両の位置における方位を継続的に検出するコンパスと、
前記車両に直射する太陽光の仰角及び方位角を、前記太陽の位置と前記方位とを用いて継続的に算出するゴニオメーターと、
前記算出される前記太陽光の仰角及び方位角の変化に応じて前記調光窓の遮光の強弱を継続的に電気的に調節するモジュレーターと、
を備え、
前記調光窓は
それ自体の遮光の強弱が印加電圧によって変化する透明板からなり、
定常領域と、前記定常領域よりも遮光が強い範囲でその遮光の強弱を電気的に調節可能な調光領域と、を有し、
調光素子層と前記調光素子層を挟むとともに前記調光素子層中に電界を生ずる導電膜とを有する透明な調光フィルムを有し、
前記調光フィルムは、互いに重なり合うフィルムF1とフィルムF2とで構成されており、
前記調光領域は少なくとも部分領域D1と部分領域D2とを有し、
前記モジュレーターは、
前記車両内の乗員に至る光路に沿って前記調光窓に直射する太陽光が前記調光窓と交差する時にその交差する部位の遮光を強くするとともに、前記車両内の乗員に至る光路に沿って前記調光窓に直射する太陽光が前記遮光を強くした部位と交差しなくなる時に前記遮光を強くした部位の遮光を弱く
前記調光領域の遮光の強弱を継続的に電気的に調節し、
前記部分領域D1の遮光の強弱を前記フィルムF1と前記フィルムF2の重なり部分で調節し、
さらに、前記部分領域D2の遮光の強弱を前記フィルムF2の前記フィルムF1と重ならない部分で調節する、
組み合わせ
【請求項2】
前記コントローラーは、前記車両の姿勢の変化を継続的に測定するジャイロをさらに備え、
前記ゴニオメーターはさらに、前記車両の姿勢の変化を前記太陽光の仰角及び方位角の算出に用いる、
請求項1に記載の組み合わせ
【請求項3】
前記コントローラーは、前記車両に配置される照度センサーから車両周囲の明るさの信号を継続的に受信するスイッチをさらに備え、
前記スイッチは:
前記車両の周囲が暗く変化した時に、前記モジュレーターに対して前記調光窓の遮光の強弱を継続的に調節することを止めさせるとともに、前記調光窓の遮光を弱い状態に保たせ;さらに
前記車両の周囲が明るく変化した時に、前記モジュレーターに対して前記調光窓の遮光の強弱を継続的に調節することを再開させる、
請求項1又は2に記載の組み合わせ
【請求項4】
前記サーベイヤー、前記コンパス、前記ゴニオメーター及び前記スイッチのそれぞれの計算機能を一まとめに備えるコンピューターで構成された、
請求項3に記載の組み合わせ
【請求項5】
さらに調光領域中の他の部分領域の遮光の強弱を調節する、他の調光フィルムをさらに備える、
請求項に記載の組み合わせ。
【請求項6】
前記調光領域は、色の濃淡の変化又はヘイズの変化によって前記遮光の強弱を変化させる、
請求項1又は5に記載の組み合わせ。
【請求項7】
調光窓と、前記調光窓の遮光の強弱を継続的に調節するために配置されるコントローラーと、の組み合わせを有する車両であって、
前記コントローラーは、
衛星測位システムと時刻とに基づき地球上の前記車両の位置から見た太陽の位置を継続的に算出するサーベイヤーと、
地球上の前記車両の位置における方位を継続的に検出するコンパスと、
前記車両に直射する太陽光の仰角及び方位角を、前記太陽の位置と前記方位とを用いて継続的に算出するゴニオメーターと、
前記算出される前記太陽光の仰角及び方位角の変化に応じて前記調光窓の遮光の強弱を継続的に電気的に調節するモジュレーターと、
を備え、
前記調光窓は、
それ自体の遮光の強弱が印加電圧によって変化する透明板からなり、
定常領域と、前記定常領域よりも遮光が強い範囲でその遮光の強弱を電気的に調節可能な調光領域と、を有し、
風防とサンルーフとが一つながりになったものであり、
前記調光領域は前記風防から前記サンルーフに跨っているとともに、日除けとして機能し、
前記定常領域は前記風防の少なくとも一部として機能
前記モジュレーターは、
前記車両内の乗員に至る光路に沿って前記調光窓に直射する太陽光が前記調光窓と交差する時にその交差する部位の遮光を強くするとともに、前記車両内の乗員に至る光路に沿って前記調光窓に直射する太陽光が前記遮光を強くした部位と交差しなくなる時に前記遮光を強くした部位の遮光を弱くし、
前記調光領域の遮光の強弱を継続的に電気的に調節する、
車両。
【請求項8】
前記調光窓は調光素子層と前記調光素子層を表裏から挟むとともに前記調光素子層中に電界を生ずる導電膜とを有する透明な調光フィルムを有し、
前記調光フィルムは、互いに重なり合わないフィルムF1とフィルムF2とで構成されており、
前記調光領域は少なくとも部分領域D1と部分領域D2とを有し、
前記モジュレーターは、前記フィルムF1に前記部分領域D1の遮光の強弱を調節させ、
前記モジュレーターはさらに、前記フィルムF2に前記部分領域D2の遮光の強弱を調節させる、
請求項7に記載の車両。
【請求項9】
前記フィルムF1の前記調光素子層と、前記フィルムF2の前記調光素子層とを分断するとともに、前記フィルムF1の前記表裏の導電膜と、前記フィルムF2の前記表裏の導電膜とを分断するギャップをさらに備える、
請求項8に記載の車両。
【請求項10】
前記フィルムF1と前記フィルムF2とは前記調光素子層を共有するものの、
前記表裏の導電膜の少なくともいずれかが、前記フィルムF1と前記フィルムF2との間で絶縁されている、
請求項8に記載の車両。
【請求項11】
前記調光窓は調光素子層と前記調光素子層を挟むとともに前記調光素子層中に電界を生ずる導電膜とを有する透明な調光フィルムを有し、
前記調光フィルムは、互いに重なり合うフィルムF1とフィルムF2とで構成されており、
前記調光領域は少なくとも部分領域D1と部分領域D2とを有し、
前記モジュレーターは、前記部分領域D1の遮光の強弱を前記フィルムF1と前記フィルムF2の重なり部分で調節し、
前記モジュレーターはさらに、前記部分領域D2の遮光の強弱を前記フィルムF2の前記フィルムF1と重ならない部分で調節する、
請求項7に記載の車両。
【請求項12】
さらに調光領域中の他の部分領域の遮光の強弱を調節する、他の調光フィルムをさらに備える、
請求項8~11のいずれかに記載の車両。
【請求項13】
前記調光領域は、色の濃淡の変化又はヘイズの変化によって前記遮光の強弱を変化させる、
請求項7~12のいずれかに記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乗り物の風防及び窓の遮光の強弱の調節に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽が地平線上の低い位置にある時、風防を通して射し込む直射日光を避けるために車両の運転手は日除けを使用する。特許文献1は電気的に制御可能な日除けを備える風防を開示している。日除けは別々に電気的に作動させることができるセグメントに分割された機能エレメントからなる(請求項6)。特許文献2も同様の風防ガラスを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2019-515841号公報
【文献】米国特許第9365161号明細書
【非特許文献】
【0004】
【文献】Continental Automotive GmbH,“Intelligent Glass Control, Overview”,[online],2019年,Continental Automotive GmbH,[2019年7月18日検索],インターネット<https://www.continental-automotive.com/en-gl/Passenger-Cars/Interior/Comfort-Security/Intelligent-Glass-Control>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1にも示唆される通り、車両の運転手が従来からある日除けを手で取り扱う時、運転手の前方の視界が損なわれる。また運転手の操縦に対する集中が短時間低下する。非特許文献1は未来の技術において、このような状況を事前に検出できるようになることを示唆している。また同文献は未来の技術において、窓を自動的に暗くできるようになる可能性を示唆している。
【0006】
本発明は乗り物の風防及び乗り物の窓に対して日除けが必要な状況を自動的に検出するとともに、このような状況が発生する時に風防及び窓の中の少なくとも一部分の遮光を自動的に強くすることでこれを日除けとする手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
<1> 車両に配置される調光窓の遮光の強弱を継続的に調節するために、前記車両に配置されるコントローラーであって、
衛星測位システムと時刻とに基づき地球上の前記車両の位置から見た太陽の位置を継続的に算出するサーベイヤーと、
地球上の前記車両の位置における方位を継続的に検出するコンパスと、
前記車両に直射する太陽光の仰角及び方位角を、前記太陽の位置と前記方位とを用いて継続的に算出するゴニオメーターと、
前記算出される前記太陽光の仰角及び方位角の変化に応じて前記調光窓の遮光の強弱を継続的に電気的に調節するモジュレーターと、
を備え、
前記調光窓はそれ自体の遮光の強弱が印加電圧によって変化する透明板からなり、
前記モジュレーターは、前記車両内の乗員に至る光路に沿って前記調光窓に直射する太陽光が前記調光窓と交差する時にその交差する部位の遮光を強くするとともに、前記車両内の乗員に至る光路に沿って前記調光窓に直射する太陽光が前記遮光を強くした部位と交差しなくなる時に前記遮光を強くした部位の遮光を弱くする、
コントローラー。
<2> 前記コントローラーは、前記車両の姿勢の変化を継続的に測定するジャイロをさらに備え、
前記ゴニオメーターはさらに、前記車両の姿勢の変化を前記太陽光の仰角及び方位角の算出に用いる、
<1>に記載のコントローラー。
<3> 前記コントローラーは、前記車両に配置される照度センサーから車両周囲の明るさの信号を継続的に受信するスイッチをさらに備え、
前記スイッチは:
前記車両の周囲が暗く変化した時に、前記モジュレーターに対して前記調光窓の遮光の強弱を継続的に調節することを止めさせるとともに、前記調光窓の遮光を弱い状態に保たせ;さらに
前記車両の周囲が明るく変化した時に、前記モジュレーターに対して前記調光窓の遮光の強弱を継続的に調節することを再開させる、
<1>又は<2>に記載のコントローラー。
<4> 前記サーベイヤー、前記コンパス、前記ゴニオメーター及び前記スイッチのそれぞれの計算機能を一まとめに備えるコンピューターで構成された、
<3>に記載のコントローラー。
<5> <1>~<4>のいずれかに記載のコントローラーと、前記調光窓との組み合わせであって、
前記調光窓は、定常領域 と、前記定常領域よりも遮光が強い範囲でその遮光の強弱を電気的に調節可能な調光領域と、を有し、
前記モジュレーターは前記調光領域の遮光の強弱を継続的に電気的に調節する、
組み合わせ。
<6> 前記調光窓は調光素子層と前記調光素子層を表裏から挟むとともに前記調光素子層中に電界を生ずる導電膜とを有する透明な調光フィルムを有し、
前記調光フィルムは、互いに重なり合わないフィルムF1とフィルムF2とで構成されており、
前記調光領域は少なくとも部分領域D1と部分領域D2とを有し、
前記モジュレーターは、前記フィルムF1に前記部分領域D1の遮光の強弱を調節させ、
前記モジュレーターはさらに、前記フィルムF2に前記部分領域D2の遮光の強弱を調節させる、
<5>に記載の組み合わせ。
<7> 前記フィルムF1の前記調光素子層と、前記フィルムF2の前記調光素子層とを分断するとともに、前記フィルムF1の前記表裏の導電膜と、前記フィルムF2の前記表裏の導電膜とを分断するギャップをさらに備える、
<6>に記載の組み合わせ。
<8> 前記フィルムF1と前記フィルムF2とは前記調光素子層を共有するものの、
前記表裏の導電膜の少なくともいずれかが、前記フィルムF1と前記フィルムF2との間で絶縁されている、
<6>に記載の組み合わせ。
<9> 前記調光窓は調光素子層と前記調光素子層を挟むとともに前記調光素子層中に電界を生ずる導電膜とを有する透明な調光フィルムを有し、
前記調光フィルムは、互いに重なり合うフィルムF1とフィルムF2とで構成されており、
前記調光領域は少なくとも部分領域D1と部分領域D2とを有し、
前記モジュレーターは、前記部分領域D1の遮光の強弱を前記フィルムF1と前記フィルムF2の重なり部分で調節し、
前記モジュレーターはさらに、前記部分領域D2の遮光の強弱を前記フィルムF2の前記フィルムF1と重ならない部分で調節する、
>に記載の組み合わせ。
<10> さらに調光領域中の他の部分領域の遮光の強弱を調節する、他の調光フィルムをさらに備える、
<6>~<9>のいずれかに記載の組み合わせ。
<11> 前記調光領域は、色の濃淡の変化又はヘイズの変化によって前記遮光の強弱を変化させる、
<5>~<10>のいずれかに記載の組み合わせ。
<12> <5>~<11>のいずれかに記載の組み合わせを備える車両であって、
前記調光窓は風防とサンルーフとが一つながりになったものであり、
前記調光領域は前記風防から前記サンルーフに跨っているとともに、日除けとして機能し、
前記定常領域は前記風防の少なくとも一部として機能する、
車両。
<13> 車両における<5>に記載の組み合わせの使用であって、
前記調光窓は前記車両の風防であり、
前記調光領域は、前記風防の上側から順に部分領域D1と部分領域D2とが配置されてなるとともに日除けとして機能し、
前記使用に当たり、前記車両内の乗員の目の高さを特定し、
前記モジュレーターに対して、
前記車両内の乗員の目に至る光路に沿って前記調光窓に直射する太陽光が前記部分領域D1と交差する時に前記部分領域D1の遮光を強くさせるとともに前記部分領域D2の遮光を弱くさせ、さらに
前記車両内の乗員の目に至る光路に沿って前記調光窓に直射する太陽光が前記部分領域D2と交差する時に前記部分領域D1及び前記部分領域D2の両方の遮光を強くさせる、 使用。
<14> <5>に記載の組み合わせを備える車両であって、
前記調光窓は前記車両の風防であり、
前記調光領域は、前記風防の上側において、運転手に近い側から左又は右に向かって部分領域D1と部分領域D2とが順に配置されてなるとともに日除けとして機能し、
前記モジュレーターは、
前記車両内の乗員に至る光路に沿って前記調光窓に直射する太陽光が前記部分領域D1と交差する時に前記部分領域D1の遮光を強くするとともに前記部分領域D2の遮光を弱くし、さらに
前記車両内の乗員に至る光路に沿って前記調光窓に直射する太陽光が前記部分領域D2と交差する時に前記部分領域D2の遮光を強くするとともに前記部分領域D1の遮光を弱くする、
車両。
<15> <1>~<4>のいずれかに記載のコントローラーを備える車両であって、
風防として用いられる前記調光窓と、前記調光窓の上方、左側方及び右側方のいずれかが開放された構造とをさらに備える、
車両。
<16> <1>~<4>のいずれかに記載のコントローラーを備える車両であって、
サンルーフ、サイドウィンドウ及びリアウィンドウの少なくともいずれかとして用いられる前記調光窓をさらに備える、
車両。
<17> <1>~<4>のいずれかに記載のコントローラーと前記調光窓との組み合わせの、車両における使用であって、
前記使用に当たり、前記車両の周囲の天候を特定し、
前記天候が曇り又は雨になった時に、前記モジュレーターに対して前記調光窓の遮光の強弱を継続的に調節することを止めさせるとともに、常に前記調光窓の遮光を弱く保たせ、さらに
前記天候が晴れになった時に、前記モジュレーターに対して前記調光窓の遮光の強弱を継続的に調節することを再開させる、
使用。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、乗り物の風防及び乗り物の窓に対して日除けが必要な状況を自動的に検出するとともに、このような状況が発生する時に風防及び窓の中の少なくとも一部分の遮光を自動的に強くすることでこれを日除けとする手段を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】コントローラーと車両とのブロック図。
図2】コントローラーと車両とのブロック図。
図3】コントローラーと車両とのブロック図。
図4】調光窓の正面図。
図5】調光領域間の境界の断面図。
図6】調光領域間の境界の断面図。
図7】調光領域間の境界の断面図。
図8】調光領域間の境界の断面図。
図9】車両の風防及び屋根の斜視図。
図10】調光窓とコントローラーとのブロック図。
図11】車両の左側方図。
図12】調光窓の左側方図。
図13】調光窓の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<用語>
【0011】
本実施形態は「乗り物」(vehicle)、特に「車両」(wheeled vehicle)に関する。一態様において車両は車輪及び無限軌道の少なくともいずれかを有する。一態様において車両は自動車(car)である。一態様において自動車は四輪以上の車輪を有する。一態様において車両は無動力のトレーラーである。一態様において車両はキャビンを有する。一態様において車両は輸送機械、建設機械、農業機械及び産業機械のいずれかである。一態様において車両は道路を走行する。一態様において車両はオフロードを走行する。一態様において車両には鉄道車両が含まれる。一態様において車両は自動車である。一態様において車両は自動運転車である。
【0012】
「車両」は種々の窓を有する。閉じられたキャビンを持つ車両は通常、フロントウィンドウを有する。フロントウィンドウは風防として機能する。本実施形態において「風防」は運転席の目の前に配置され、堅牢な枠と前方を見通せるガラス及びその他の透明材料で構成されているものである。
【0013】
一例においてフロントウィンドウはボディに一体化している。一例においてフロントウィンドウはボンネットとフロントピラーとルーフに囲まれている。一例において車両は左右のサイドウィンドウ又はドアウィンドウを備える。一例において車両はリアウィンドウを備える。一例において車両はサンルーフすなわち天窓を備える。
【0014】
一態様においてこれらの「窓」は、車両内の乗員がこれを通して車両外の物を視認できるように設計されている。窓はガラス及びその他の透明材料で形成される。一態様において「ガラス」は板ガラスである。板ガラスは合わせガラスを含む。その他の透明材料は有機ガラスでもよい。
【0015】
説明の便宜のため、本実施形態では閉じられたキャビンを持たない車両の風防も「窓」に含めるものとする。そのような風防を有する車両としてオープンカーやゴルフカートが挙げられる。一態様において、そのような車両は風防として用いられる窓と、窓の上方、左側方及び右側方のいずれかが開放された構造とをさらに備える。また調光を受ける風防を「調光窓」に含めるものとする。
【0016】
本実施形態は窓の遮光の強弱の調節に関する。調節を受ける窓は「調光窓」である。一態様において調光窓は透明板からなる。一態様において透明板はそれ自体の遮光の強弱が透明板に印加される電圧によって変化する。そのような透明板の例は後述する。
【0017】
本実施形態では遮光の強弱の「調節」は車両に配置された調光窓に対して動的に行われる。調節は電気的に行われる。本実施形態の「調節」の用語は、例えば材料の選択により遮光の強い窓又は遮光の弱い窓を作製することのような、生産工程上の「調節」の問題に関するものではない。一態様において遮光の強弱の調節は防眩のために行われる。遮光の強弱は透過率を尺度として決定してもよい。
【0018】
<コントローラー>
【0019】
図1はコントローラー50の使用態様を示すブロック図である。ブロック図内の各ブロック間の信号接続は有線でも無線でもよい。他のブロック図において同様とする。コントローラー50は調光窓20の遮光の強弱を継続的に調節するために用いられる。調光窓20は車両Vhに配置される、車両Vhの風防である。コントローラー50は車両Vh内に配置される。便宜的にコントローラー50を拡大して図の下側に表示している。コントローラー50はサーベイヤー51、コンパス52、ゴニオメーター53及びモジュレーター56を備える。
【0020】
図1に示すサーベイヤー51は地球上の車両Vhの位置から見た太陽Snの位置を継続的に算出する。衛星測位システムSpで測定された車両Vhの位置を測定する。衛星測位システムSpの例としては、米国政府の提供するGPS(全地球測位システム)が挙げられる。さらに、衛星測位システムSpで判明した位置から、見た天球上の太陽の位置は時刻により決定される。図中では概ね真西に太陽がある。
【0021】
図1に示すコンパス52は地球上の車両Vhの位置における方位を継続的に検出する。
一例においてコンパス52は地球上の車両Vhの位置における北の方位を継続的に検出する。図中では北は右下方向である。また車両Vhの向きは概ね南西である。
【0022】
図1に示すコンパス52の動作原理は限定されない。一例において、不図示のセンサーが検知した地磁気及び地球のコリオリ力のいずれかに基づきコンパス52が北の方位を検出してもよい。この時、センサーは車両Vh内に配置される。ジャイロで測定した車両Vhの姿勢変化を上記センサーで補正することで方位を求めてもよい。
【0023】
図1に示すコントローラー50はゴニオメーター53を備える。ゴニオメーター53は車両Vh内の乗員Crに至る光路に沿って調光窓20に直射する太陽光の方位角を継続的に算出する。乗員Crは運転手でもよく、運転手以外の乗員でもよい。ゴニオメーター53はこの時、サーベイヤー51の提供する太陽Snの位置と、コンパス52の提供する車両Vhを中心とした方位とを用いる。図には表されていないが、さらにゴニオメーター53は直射する太陽光の仰角すなわち高度を継続的に算出する。
【0024】
本実施形態において『直射』の用語は、太陽光が直線的な光路を辿りながら車両に照射することを意味する。さらに太陽光が風防や窓を透過してから乗員に至る直線的な光路を辿りながら照射することを意味する場合がある。本実施形態において乗員に向かって照射する太陽光は窓と交差し、窓を通過して乗員に到達する。太陽光が窓と交差し、窓を通過する時にいくらか減衰したり、いくらか散乱したりしてから、乗員に向かって照射することがある。太陽光は、窓と交差し、窓を通過する時に大きく減衰したり、大きく散乱したりすることなく乗員に向かって照射することがある。この場合、乗員は太陽光を直射日光としてまぶしく感じることがある。乗員に向かって照射する方位及び仰角を有する太陽光が、実際には窓以外の部材、例えばピラーや、車両外の遮蔽物、例えば建物などによって偶発的に遮られることもある。
【0025】
一態様において、調光窓が最も遮光が弱い状態にあるとき、太陽光は調光窓と交差し、通過して乗員に向かって直射する。直射する太陽光は通常まぶしい。他の態様において、調光窓が最も遮光が弱い状態であっても、直射とは言えない程度まで調光窓が太陽光を散乱し又はその一部を吸収していてもよい。このような太陽光は乗員にとってまぶしい場合もあり、まぶしくない場合もある。
【0026】
太陽光の中には車両に直射しない光、いわゆる反射光がある。太陽光は建物の表面や地面や雪面や水面といった表面で反射することで、太陽の方位及び仰角とは異なる一定の方向から反射光として車両に向かって到達する。本実施形態では、これら反射光よりも、むしろ太陽の方位及び仰角から届く直射光を調光窓で遮光する。ただし本実施形態の記載は、反射光のまぶしさを軽減するために、調光窓の遮光の強弱を自動で又は手動で別途調節することを除外する意図を有しない。
【0027】
図1に示すモジュレーター56は、調光窓20の遮光の強弱を継続的に電気的に調節する。モジュレーター56はゴニオメーター53が算出する太陽光の方位角の変化に応じてこれを行う。太陽光の方位角は車両Vhの進行方向の変化と太陽Snの日周運動に応じて変化する。図中では車両Vhの進行方向に対する太陽光の方位角は0°に近い。モジュレーター56は、このように車両Vh内の乗員Crに至る光路に沿って調光窓20に直射する太陽光が調光窓20と交差する時に調光窓20のその交差する部位の遮光を強くする。
【0028】
図2はコントローラー50の使用態様を示す。図1と異なり図2では、車両Vhの向きが概ね南東である。図中では車両Vhの進行方向に対する太陽光の方位角は90°を超える。モジュレーター56は、このように車両Vh内の乗員Crに至る光路に沿って調光窓20に直射する太陽光が調光窓20と交差しなくなる時に調光窓20の遮光を強くした部位の遮光を弱くする。
【0029】
図3はコントローラー50の使用態様を示す。モジュレーター56は方位角の変化に加えて、ゴニオメーター53が算出する太陽光の仰角の変化に応じて、調光窓20の遮光の強弱を調節する。太陽光の仰角は概ね太陽の日周運動に応じて変化する。
【0030】
図3に示すように昼下がり、図中では13時の太陽光は仰角が大きい。太陽光は車両Vhの屋根に遮られることがある。このように車両Vh内の乗員Crに至る光路に沿って調光窓20に直射する太陽光が調光窓20と交差しない時には、調光窓20の遮光を弱くする。また夕暮れ、図中では17時の太陽光は仰角が小さい。太陽光は調光窓20と交差してしてから、乗員Crに照射する。このような時に調光窓20のその交差する部位の遮光を強くする。
【0031】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上記窓の遮光の強弱の調節は鉄道車両(train)や船(watercraft)や水陸両用の乗り物(amphibious vehicle)や航空機(aircraft)に用いてもよい。またフロントウィンドウ又は風防のみならず、サンルーフなどその他の窓に使用してもよい。
【0032】
コントローラーの使用に当たり、車両の周囲の天候を特定してもよい。天候の特定は外部から天気情報を取得することで行ってもよい。雨滴センサーで降雨を検知してもよい。カメラや照度センサーで晴天や曇天を検知してもよい。天候が曇り又は雨になった時に、モジュレーターは調光窓の遮光の強弱を継続的に調節することを止めてもよい。さらにモジュレーターは調光窓の遮光を弱く保ってもよい。天候が晴れになった時に、モジュレーターは調光窓の遮光の強弱を継続的に調節することを再開してもよい。
【実施例
【0033】
以下の実施例ではまず調光窓を説明する。次に調光窓とコントローラーとの組み合わせを説明する。さらにこれらの使用を説明する。
【0034】
<調光窓>
【0035】
図4は正面視した調光窓20の一態様を示す。調光窓20は風防である。調光窓20は枠21と、透明板22とを有する。一態様において透明板22は調光機能を有する合わせガラスである。枠21に対して透明板22を樹脂で保持してもよい。かかる樹脂を透明板22の周縁に沿って帯状に設けられる不図示の遮蔽層で保護してもよい。
【0036】
図4において調光窓20は透明板22内に、定常領域24と調光領域25とを有する。調光領域25は定常領域24よりも遮光が強いことが好ましい。調光領域25は当該遮光の強度の範囲においてその遮光の強弱を電気的に調節可能である。調光領域25がこの調光機能を発揮することで、透明板22は日除けとしても働く。
【0037】
図4において、定常領域24は最も遮光が弱い時の調光領域25よりも遮光が弱いか、これと遮光が同等であることが好ましい。調光領域25よりも定常領域24の方が、調光窓20の内側すなわち風防の内側から外側を視認しやすい。定常領域24は光を実質的に散乱しない。
【0038】
図4に示す調光領域25はいくつかの部分に分かれている。図中では調光領域25は境界27によって2つの部分領域D1と部分領域D2とに分けられている。本実施例では調光窓20の上側から順に部分領域D1と部分領域D2とが配置されている。
【0039】
図4に示す調光領域25にはフィルムF1及びフィルム2が配置されている。部分領域D1にはフィルムF1が配置されている。部分領域D1にはフィルムF1が配置されている。部分領域D2にはフィルムF2が配置されている。これらの調光フィルムを電気的に制御することで、各部分領域の遮光の強弱を調節できる。
【0040】
モジュレーター56が調光領域25の遮光の強弱を継続的に電気的に調節する。モジュレーター56からフィルムF1とフィルムF2へのそれぞれ通じる配線は枠21内を経由する。不図示のバスバーを介してモジュレーター56と調光領域25とを電気的に接続してもよい。モジュレーター56が各調光フィルムを調節することで各部分領域の遮光の強度を異なるものとすることができる。
【0041】
<境界の形成>
【0042】
図5から図8は調光領域間の境界の構造を表す断面図である。図5は境界27の一例を示す。境界27はフィルムF1とフィルムF2とを分けている。フィルムF1とフィルムF2とは互いに重なり合わない。フィルムF1は部分領域D1の遮光の強弱を調節する。フィルムF2は部分領域D2の遮光の強弱を調節する。フィルムF1とフィルムF2とは、部分領域D1と部分領域D2との遮光の強弱を互いに独立して調節できる。
【0043】
図5に示すように板ガラス41a及び板ガラス41bがフィルムF1とフィルムF2とを挟んでいる。板ガラス41aとこれらの調光フィルムとは接着層42aを介して互いに結合している。板ガラス41bとこれらの調光フィルムとは接着層42bを介して互いに結合している。
【0044】
図5に示すようにフィルムF1は上下二層の基材43a及び基材43bを有する。これらの基材は透明である。フィルムF1は上下二層の導電膜44a及び導電膜44bを有する。これらの導電膜は透明である。基材43a上に導電膜44aが形成されている。基材43b上に導電膜44bが形成されている。基材43aは接着層42aを介して板ガラス41aに結合する。基材43bは接着層42bを介して板ガラス41bに結合する。
【0045】
図5に示すようにフィルムF1は調光素子層45aを有する。導電膜44a及び導電膜44bの組は調光素子層45aをその表裏から挟む。導電膜44a及び導電膜44bの組は調光素子層45a中に電界を生ずる。基材43a及び基材43bの組は導電膜44a及び導電膜44bの組をその表裏から挟む。
【0046】
図5に示すようにフィルムF2は上下二層の基材43c及び基材43dを有する。これらの基材は透明である。フィルムF2は上下二層の導電膜44c及び導電膜44dを有する。これらの導電膜は透明である。基材43c上に導電膜44cが形成されている。基材43d上に導電膜44dが形成されている。基材43cは接着層42aを介して板ガラス41aに結合する。基材43dは接着層42bを介して板ガラス41bに結合する。
【0047】
図5に示すようにフィルムF2は調光素子層45bを有する。導電膜44c及び導電膜44dの組は調光素子層45bをその表裏から挟む。導電膜44c及び導電膜44dの組は調光素子層45b中に電界を生ずる。基材43c及び基材43dの組は導電膜44c及び導電膜44dの組をその表裏から挟む。
【0048】
図5に示すように境界27はギャップ47を有する。ギャップ47は調光素子層45aと調光素子層45bとの間を分断する。ギャップ47は空間でもよく、また絶縁体で占められていてもよい。境界27の幅は好ましくは0.1mm以下である。
【0049】
図5に示すように導電膜44a及び導電膜44cはいずれも板ガラス41aと調光素子層との間に位置する。導電膜44b及び導電膜44dはいずれも板ガラス41bと調光素子層との間に位置する。ギャップ47はこれらの導電膜を分断する。ギャップ47はさらに各基材を分断する。
【0050】
図6及び図7は境界27の他の例を示す。以下、図5に示す境界の構造と異なる点のみ説明する。フィルムF1とフィルムF2との間で調光素子層は分断されていない。これらの調光フィルムは調光素子層45cを共有する。フィルムF1とフィルムF2との間で基材は分断されていない。これらの調光フィルムは基材43e及び基材43fを共有する。本態様では調光素子層の表裏の導電膜の少なくともいずれかが、フィルムF1とフィルムF2との間で絶縁されている。
【0051】
図6に示すように絶縁48aが上側の導電膜44a及び導電膜44cとの間に位置する。フィルムF1とフィルムF2との間で下側の導電膜は絶縁されていない。これらの調光フィルムは導電膜44eを共有する。導電膜44aと導電膜44eとは電気的に対になっている。導電膜44cと導電膜44eとは電気的に対になっている。絶縁48aの幅は好ましくは0.1mm以下である。
【0052】
図7では絶縁48aが上側の導電膜44a及び導電膜44cとの間に位置する。さらに絶縁48bが下側の導電膜44b及び導電膜44dとの間に位置する。絶縁48a及び48bの幅は好ましくは0.1mm以下である。
【0053】
図8は境界27の他の例を示す。この例ではフィルムF1とフィルムF2を、互いに別の層上で形成することでこれらを分離する。フィルムF1とフィルムF2とは互いに重なり合う。境界27はフィルムF1の端である。
【0054】
図8ではフィルムF1とフィルムF2との重なり部分が部分領域D1の遮光の強弱を調節する。フィルムF2中のフィルムF1と重ならない部分が部分領域D2の遮光の強弱を調節する。一態様においてフィルムF2のみが部分領域D2の遮光の強弱を調節する。
【0055】
図8に示すように板ガラス41a及び板ガラス41bがフィルムF1とフィルムF2とを挟んでいる。板ガラス41a及びフィルムF2がフィルムF1を挟んでいる。フィルムF1及び板ガラス41bがフィルムF2を挟んでいる。部分領域D1において板ガラス41aとフィルムF1とが接着層42cを介して互いに結合している。部分領域D2において板ガラス41aとフィルムF2とが接着層42cを介して互いに結合している。境界27において接着層42cはフィルムF1の端面を覆っている。フィルムF1とフィルムF2とは接着層42cを介して互いに結合している。板ガラス41bとフィルムF2とは接着層42bを介して互いに結合している。
【0056】
図8に示すように部分領域D1及びD2においてフィルムF2は上下二層の基材43g及び基材43hを有する。これらの基材は透明である。フィルムF2は上下二層の導電膜44f及び導電膜44gを有する。これらの導電膜は透明である。基材43g上に導電膜44fが形成されている。基材43h上に導電膜44gが形成されている。
【0057】
図8に示すように部分領域D1において基材43aは接着層42cを介して板ガラス41aに結合する。基材43bは接着層42cを介して基材43gに結合する。部分領域D2において基材43gは接着層42cを介して板ガラス41aに結合する。基材43hは接着層42bを介して板ガラス41bに結合する。
【0058】
図8に示すようにフィルムF2は調光素子層45dを有する。導電膜44f及び導電膜44gの組は調光素子層45dをその表裏から挟む。導電膜44f及び導電膜44gの組は調光素子層45d中に電界を生ずる。基材43g及び基材43hの組は導電膜44f及び導電膜44gの組をその表裏から挟む。
【0059】
図4に戻る。図4において、調光領域中の他の領域の遮光の強弱を調節する、他の調光フィルムをさらに調光領域に付加してもよい。かかる調光フィルムはフィルムF1及びF2と重なり合っていてもよく、これらと重なっていなくてもよい。
【0060】
<調光フィルムの特性>
【0061】
調光フィルムは自身の色の濃淡の変化又はヘイズの変化によってその遮光の強弱を変化させる。調光フィルムの平行光線透過率は、最も遮光が強い状態において、好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下である。最も遮光が弱い状態において、好ましくは20%以上さらに好ましくは30%以上である。平行光線透過率は調光フィルムの色が濃くなった時、又はヘイズが増大した時に低下する。
【0062】
一例として調光フィルムの応答速度は、電圧を導電膜間に印加してから平行光線透過率が最大変化幅の80%相当変化するのに要する時間で評価できる。かかる時間は、好ましくは2秒以下、さらに好ましくは1秒以下である。
【0063】
一態様において調光フィルムの遮光の強弱はヘイズの変化による。調光フィルムのヘイズは最も遮光が強い状態において、好ましくは50%以下、さらに好ましくは30%以下、さらに好ましくは10%以下である。最も遮光が弱い状態において、好ましくは5%以下さらに好ましくは3%以下である。
【0064】
調光素子層の様式は、懸濁粒子デバイス(SPD)、高分子分散型液晶(PDLC)、ツイストネマティック型液晶、高分子ネットワーク液晶、ゲストホスト液晶、フォトクロミック、エレクトロクロミック及びエレクトロキネティックのいずれかでもよい。
【0065】
SPDフィルムでは、電圧の印加により配向可能な懸濁粒子を含有するポリマー層を、導電膜を内側にコートした2枚の基材で挟み込むことで得る。導電膜間に電圧を印加することにより、ポリマー層中の懸濁粒子が配向するため、SPDフィルムの可視光透過率が高くなる。電圧を解除することで、ポリマー層中の懸濁粒子が配向することがなくなるため可視光透過率が低くなる。この状態はいわゆる透明性が低い状態である。
【0066】
接着層の材料は可塑化ポリビニルアセタール系樹脂、可塑化ポリ塩化ビニル系樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、可塑化飽和ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、可塑化ポリウレタン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン-エチルアクリレート共重合体系樹脂、及びシクロオレフィンポリマー樹脂の群から選択されるいずれかの樹脂でもよい。
【0067】
板ガラスはガラス以外の透明材料に置き換えてもよい。板ガラス、接着層及び調光素子層の少なくとも一つが、赤外線反射、低放射率削減、撥水、結露防止及び紫外線遮断のいずれかの機能を有してもよい。
【0068】
<調光領域の細分割>
【0069】
図9は車両Vhの風防から屋根にかけての領域を示す。図は風防として用いられる調光窓20の一態様を示す。この調光窓20では、調光領域25が部分領域をn個有する。図中ではn個目の部分領域をDnとしている。これらのn個の部分領域は互いに接していなくてもよい。nは2でもよく、2より大きくてもよい。
【0070】
図9において調光領域25は境界28をさらに備えてもよい。境界28は調光領域25を横方向に分割する。一態様においてモジュレーター56は縦方向と横方向とに配列された各部分領域の遮光の強弱をそれぞれ調節する。モジュレーター56と調光領域25との電気的接続の図示は省略されている。
【0071】
<サンルーフ及びその他の窓>
【0072】
図9に示す車両Vhは一態様において屋根に調光サンルーフ29を備える。調光サンルーフ29は調光領域30を備える。調光領域30は調光サンルーフ29の日除けとして機能する。調光サンルーフ29の全面が調光領域30で占められていてもよい。モジュレーター56又はその他のモジュレーターが調光領域30の遮光の強弱を調節する。
【0073】
図9において調光窓20と調光サンルーフ29とは一つながりとなっていてもよい。このようなサンルーフはパノラマルーフとも呼ばれる。この時、調光領域25と調光領域30とは風防からサンルーフに跨る一つながりの調光領域であってもよい。定常領域24は風防の少なくとも一部として機能する。
【0074】
コントローラーによる調光を受ける窓はサンルーフや風防に限定されない。例えば図2においてコントローラー50は、太陽光の方位及び仰角に合わせて、車両Vhの右側面に設けられるサイドウィンドウや、車両Vhの後方に設けられたリアウィンドウの遮光の強弱を調節してもよい。車両Vhの向きが変われば、コントローラー50は、太陽光の方位及び仰角に合わせて、車両Vhの左側面に設けられるサイドウィンドウの遮光の強弱を調節してもよい。以上の様に本実施例のコントローラーは風防以外の窓を自動的に調光してもよい。
【0075】
<調光窓とコントローラーとの組み合わせ>
【0076】
図10は調光窓20の構成例とコントローラー50の構成例を示す。サーベイヤー51はGPSアンテナ31とGPS処理部36とを備える。GPSアンテナ31は車両に配置される。GPS処理部36はGPSアンテナ31を介してGPS衛星の信号を継続的に受信する。GPS処理部36はGPS衛星の信号より車両の位置における緯度及び経度を取得する。ゴニオメーター53はこの変化と時刻を元に太陽の仰角及び方位角を算出する。
以下GPS衛星の信号と、GPS処理部36の取得した緯度及び経度とをGPS情報という場合がある。
【0077】
図10に示すコンパス52はジャイロセンサー32とジャイロ処理部37とを備える。ジャイロセンサー32は車両の姿勢の変化を継続的に測定するジャイロである。ジャイロセンサー32は車両に配置される。ジャイロセンサー32は車両の姿勢の変化の信号を継続的にジャイロ処理部37に送る。ジャイロ処理部37はジャイロセンサー32から当該信号を継続的に受信する。コンパス52はジャイロセンサーのもたらす、車両の姿勢の変化の情報を用いて、車両の方位角と車両の仰角及び俯角を算出する。
【0078】
図10に示すゴニオメーター53は車両の姿勢の変化を、太陽光の仰角(図3)及び方位角(図1及び図2)の算出の考慮に入れる。
【0079】
図11には坂道と水平路を走行する車両Vhが示されている。車両の仰角又は俯角によって、車両に差し込む太陽光の仰角が異なる。図の例を参照すると坂道で車両が俯角を有しているので、太陽光の仰角は大きくなる。車両が水平な時に太陽光の仰角は小さくなる。車両の仰角及び俯角の変化に伴い、乗員Crに射し込む太陽光と調光窓20とが交差する位置は変化する。
【0080】
図10に戻る。ゴニオメーター53はメモリー54と接続する。一態様においてメモリー54は不揮発性メモリーや磁気ディスクで形成される。メモリー54は、過去の任意の時点から現時点までの期間において、ゴニオメーター53がGPS処理部36を介してGPSアンテナ31から取得したGPS情報を記憶している。メモリー54はさらに、同期間においてゴニオメーター53がジャイロ処理部37から取得した車両の方位角と車両の仰角及び俯角との情報を記憶している。メモリー54はさらに、同期間において、これらの情報からゴニオメーター53が算出した、各時点において車両内の乗員に至る光路に沿って調光窓に直射する太陽光の仰角及び方位角の情報を記憶している。
【0081】
図10に示すゴニオメーター53はメモリー54に対して、上述のGPS情報、車両の方位角と車両の仰角及び俯角との情報、並びに太陽光の仰角及び方位角の情報を記録する。
【0082】
図10に示すゴニオメーター53はメモリー54から、上述のGPS情報、車両の方位角と車両の仰角及び俯角との情報、並びに太陽光の仰角及び方位角の情報を読み出す。
【0083】
図10に示すコントローラー50はさらに照度センサー35とスイッチ55とを備える。照度センサー35は車両に配置される。照度センサー35は車両周囲の明るさの信号を継続的にスイッチ55に送る。スイッチ55は照度センサー35から当該信号を継続的に受信する。
【0084】
図10に示すモジュレーター56は部分領域D1,D2,・・・Dnと電気的に接続する。モジュレーター56は電源57を備える。電源57は調光領域25の駆動電力を提供する。モジュレーター56は調光領域25に駆動電力を送る。調光領域25は駆動電力を受け取る。調光領域25が駆動電力を受け取れない時、調光領域25は透明である、又は最も遮光が弱い状態である。
【0085】
図10に示すスイッチ55は車両の周囲が暗く変化した時に、モジュレーター56に対して調光窓20の遮光の強弱を継続的に調節することを止めさせる。モジュレーター56はさらに、調光窓20の遮光を弱い状態に定常的に保つ。スイッチ55は車両の周囲が明るく変化した時に、モジュレーター56に対して調光窓20の遮光の強弱を継続的に調節することを再開させる。車両の周囲が暗く変化したか明るく変化したかを知るために、照度センサー35のもたらす照度の信号を照度の閾値で区別してもよい。
【0086】
図10に示すスイッチ55は、照度センサー35のもたらす照度の信号を他の閾値で区別し、調光窓20の遮光の強弱を調整してもよい。例えば、スイッチ55は、(1)車両の周囲の明るさの変化速度や(2)車両の周囲の明るさの切り替わりの頻度に応じて、モジュレーター56に対して調光窓20の遮光の強弱を調節させることもできる。ここでいう切り替わりの頻度とは過去の一定期間における切り替わりの回数を指す。また、スイッチ55は、ゴニオメーター53が算出する太陽光の方位角の変化、太陽光の仰角の変化及びその他の変化に基づく遮光状態の制御に優先して、照度センサー35のもたらす信号に基づく遮光状態の制御を実行しても良い。
【0087】
図10において、例えば、照度センサー35のもたらす上記(1)及び(2)の信号が共に所定の閾値を超えた場合、スイッチ55は、ゴニオメーター53による制御に優先して、遮光状態の制御を実行する。一態様においてスイッチ55は、ビルや街灯の光を検知した時に、調光窓20の遮光を強くする。スイッチ55は、ビルや街灯の間にある暗闇を検知した時に、調光窓20の遮光を弱くする。これによりスイッチ55は、連続して立ち並ぶビルや街灯の光と、これらの間にある暗闇とによる、短時間の光の明滅の影響を軽減する。スイッチ55が、調光窓20の遮光の強弱を一定に保つことでも、同様の効果をもたらす。上記(1)及び(2)の信号が共に所定の閾値を下回った場合、スイッチ55は元の状態に戻る。すなわちスイッチ55は、ゴニオメーター53が算出する太陽光の方位角の変化、太陽光の仰角の変化及びその他の変化に応じて、調光窓20の遮光の強弱を、モジュレーター56を介して調節する。
【0088】
図10に示すコントローラー50はコンピューター60を備える。コンピューター60はサーベイヤー51の計算機能すなわちGPS処理部36、コンパス52の計算機能すなわちジャイロ処理部37、並びにゴニオメーター53及びスイッチ55のそれぞれの計算機能を一まとめに備える。
【0089】
<太陽光の仰角に合わせた調節>
【0090】
図12は調光窓20の左側面図である。モジュレーター56を備えるコントローラーと調光窓20との組み合わせの使用例を表している。調光窓20は45°の傾きを持つ風防である。定常領域24は調光窓20の下方に位置する。調光領域25は調光窓20の上方に位置する。調光領域25は日除けとして機能する。調光領域25の上端から下端までの長さは50 cmである。調光領域25は上から順に部分領域D3、D4、D5、D1及びD2の計5個の部分領域を有する。各部分領域の上下長は10 cmである。部分領域の符号に用いられる数字の順序は説明の便宜上のものであり、発明を限定する意図はない。
【0091】
図12に示す調光窓20の使用に当たり、車両内の乗員Crの目の高さを特定する。図では調光領域25の上端を高さの基準とする。乗員Crの目の高さは上端から30 cm低い。調光窓20の傾きで換算すると、乗員Crの目の60 cm前方、上端から42.3 cmのところで水平な視線と交差する。ここでいう水平な視線とは地球ではなく、自動車前後左右方向を基準とした水平である。乗員Crが車両内から見た太陽の仰角、すなわち太陽光の仰角は5°である。
【0092】
図12に示す例では午後17時ごろ、車両内の乗員Crの目に至る光路に沿って調光窓20に直射する太陽光が部分領域D1と交差する。その交差する位置と、調光窓20及び水平な視線が交差する位置との間の距離をXとする。太陽光が部分領域D1と交差する位置と、乗員Crの目との間の距離をAとする。三角比を用いて下記式の通り表すことができる。
【0093】
Xcos45°+Acos5°=60
Xsin45°=Asin5°
【0094】
上記式より、A=55.45cm,X=6.82cmが導かれる。調光領域25の上端から42.3-6.82=35.48cmの地点を担当しているのは部分領域D1である。
【0095】
図12において、この時モジュレーター56は部分領域D1の遮光を強くする。モジュレーター56はさらに部分領域D2の遮光を弱くする。またモジュレーター56は部分領域D1より上にある部分領域D3、D4及びD5の遮光を強くする。モジュレーター56と調光領域25との電気的接続は図示を省略する。調光領域25は防眩効果を有する。
【0096】
図12に示す例では、午後17時30分ごろ太陽高度がさらに下がり、車両内の乗員Crの目に至る光路に沿って調光窓20に直射する太陽光が部分領域D2と交差するようになる。この時、モジュレーター56は部分領域D1及びD2の両方の遮光を強くする。またモジュレーター56は部分領域D1より上にある部分領域D3、D4及びD5の遮光を強くする。調光領域25は防眩効果を有する。
【0097】
<太陽光の方位角に合わせた調節>
【0098】
図13は平面視した調光窓20の一態様を示す。調光窓20は風防である。調光領域25は調光窓20の上側に位置する。調光領域25は乗員に近い側から右に向かって順に部分領域D1と部分領域D2とが配置されている。左右が逆でもよい。部分領域D1及びD2の全幅はそれぞれ60 cmである。部分領域D1の中心が乗員Crの正面に位置する。車両に対する太陽光の方位角は車両の正面方向に対して左20°である。
【0099】
図13に示す一態様において乗員Crは車両の運転手である。運転手の左右の位置は車両の設計時点で決定できる。右側通行の地域において、運転手は車両の左側に位置することがある。左側通行の地域において、運転手は車両の右側に位置することがある。
【0100】
図13に示す例では、車両内の乗員Crに至る光路に沿って調光窓20に直射する太陽光が部分領域D1と交差する。この時にモジュレーター56は部分領域D1の遮光を強くする。モジュレーター56はさらに部分領域D2の遮光を弱くさせる。
【0101】
図13において車両の方位角又は太陽の方位角が変化すると、車両内の乗員Crに至る光路に沿って調光窓20に直射する太陽光が部分領域D2と交差する時がある。この場合、モジュレーター56は部分領域D2の遮光を強くするとともに部分領域D1の遮光を弱くする。図中には示していないが、運転手である乗員Cr以外の乗員、例えば助手席や後部座席に座る乗員がいてもよい。本実施形態のコントローラーは、乗員Crに合わせて行った遮光の調節と同様に、これらの乗員に対しても遮光の調節を行うことできる。
【0102】
なお図12では調光領域25を縦方向に5個に分割する例を示した。図13では調光領域25を縦方向に2個に分割する例を示した。他の例において調光領域25を例えば縦5×横2の10個の部分領域に分割してもよい。調光領域の分割の仕方は制限されない(図9参照)。
【0103】
この出願は、2019年9月26日に出願された日本出願特願2019-175413を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0104】
20 調光窓、 21 枠、 22 透明板、 24 定常領域、 25 調光領域、 27-28 境界、 29 調光サンルーフ、 30 調光領域、 31 アンテナ、 32 ジャイロセンサー、 35 照度センサー、 36 処理部、 37 ジャイロ処理部、 41a-b 板ガラス、 42a-c 接着層、 43a-h 基材、 44a-g 導電膜、 45a-d 調光素子層、 47 ギャップ、 48a-b 絶縁、 50 コントローラー、 51 サーベイヤー、 52 コンパス、 53 ゴニオメーター、 54 メモリー、 55 スイッチ、 56 モジュレーター、 57 電源、 60 コンピューター、 Cr 乗員、 D1-D5 部分領域、 Dn 部分領域、 F1-F2 フィルム、 Sn 太陽、 Sp 衛星測位システム、 Vh 車両
図1
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図13