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特許7444237車両用ガラス、枠部材及び車両用ガラスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】車両用ガラス、枠部材及び車両用ガラスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60J 1/00 20060101AFI20240228BHJP
   C03C 27/12 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
B60J1/00 H
C03C27/12 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022505998
(86)(22)【出願日】2021-03-04
(86)【国際出願番号】 JP2021008413
(87)【国際公開番号】W WO2021182290
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-08-07
(31)【優先権主張番号】P 2020042426
(32)【優先日】2020-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 達雄
(72)【発明者】
【氏名】山川 宏
(72)【発明者】
【氏名】井上 貴文
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-250498(JP,A)
【文献】特開2017-081520(JP,A)
【文献】特開2017-194489(JP,A)
【文献】特開2017-149185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 1/00
C03C 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基体を有し、遮光領域を備える車両用ガラスであって、
前記遮光領域に、前記ガラス基体に形成される開口部、及び前記開口部に配置された遠赤外線透過部材が設けられる遠赤外線透過領域が形成されており、
前記ガラス基体と前記遠赤外線透過部材とが枠部材を介して接合され、
前記枠部材は、車外側の面内において前記開口部に面する側における内周上の任意の2点を結ぶ直線のうち最長の直線の長さをD、前記ガラス基体の車外側の表面から突出する箇所の厚みをtとすると、D/tが1250より大きく、かつ、tが2.5mm以下である、
車両用ガラス。
【請求項2】
前記枠部材は、車外側において、前記ガラス基体と前記遠赤外線透過部材との境界を覆って配置されている、請求項1に記載の車両用ガラス。
【請求項3】
前記車両用ガラスは、第1ガラス基体と、前記第1ガラス基体よりも車内側に設けられて前記第1ガラス基体に対向する第2ガラス基体とを有しており、前記第1ガラス基体の開口と前記第2ガラス基体の開口とが連通して前記開口部を形成しており、
前記遠赤外線透過部材は、前記第1ガラス基体の開口内に設けられており、
前記枠部材は、前記開口部に配置される筒状部を有し、前記筒状部が、前記遠赤外線透過部材と前記第1ガラス基体の開口における内周面との間に設けられる第1保持部と、前記第2ガラス基体の開口に設けられる第2保持部と、を含む、請求項1又は請求項2に記載の車両用ガラス。
【請求項4】
前記筒状部は、前記第1保持部の内径より前記第2保持部の内径が小さくなる段差状に形成されている、請求項3に記載の車両用ガラス。
【請求項5】
前記枠部材は、車外側の表面に、少なくとも1つ以上の溝が形成されている、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の車両用ガラス。
【請求項6】
前記枠部材は、黒色である、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の車両用ガラス。
【請求項7】
前記遠赤外線透過部材は、車外側の面内の任意の2点を結ぶ直線のうち最長の直線の長さが80mm以下である、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の車両用ガラス。
【請求項8】
前記遠赤外線透過部材の平均厚みが1.5mm以上である、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の車両用ガラス。
【請求項9】
車両用ガラスのガラス基体に形成される開口部に配置された遠赤外線透過部材と前記ガラス基体とを接合する枠部材であって、
第1保持部と、
前記第1保持部と連続して設けられて内径が前記第1保持部の内径よりも小さい第2保持部と、
前記第1保持部の前記第2保持部が設けられる側とは反対側に設けられる鍔部と、
を有し、
前記鍔部の内周上の任意の2点を結ぶ直線のうち最長の直線の長さをD、前記鍔部の厚みをtとすると、D/tが1250より大きく、かつ、tが2.5mm以下である、
枠部材。
【請求項10】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の車両用ガラスの製造方法であって、
2枚の前記ガラス基体を中間層を介して接合して、厚さ方向に貫通した前記開口部を有する合わせガラスとして、
前記遠赤外線透過部材の周縁部に、前記枠部材を組み付けて、
前記開口部に、前記枠部材が組み付けられた前記遠赤外線透過部材を配置する、
車両用ガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ガラス、枠部材及び車両用ガラスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の安全性向上を目的に、各種センサが取り付けられる場合がある。自動車に取り付けられるセンサとしては、カメラ、LiDAR(Light Detecting and Ranging)、ミリ波レーダー、赤外線センサ等が挙げられる。
【0003】
赤外線は、その波長帯域により、近赤外(例えば、波長0.7μm~2μm)、中赤外(例えば、波長3μm~5μm)、および遠赤外(例えば、波長8μm~13μm)に分類される。これらの赤外線を検出する赤外線センサとしては、近赤外ではタッチセンサ、近赤外線カメラやLiDAR、中赤外ではガス分析や中赤外分光分析(官能基分析)、遠赤外ではナイトビジョンやサーモビュワー(以降、遠赤外カメラ)等が挙げられる。
【0004】
自動車の窓ガラスは、通常、波長8μm~13μmといった遠赤外線は透過しないため、遠赤外カメラは従来、例えば特許文献1のように、車室外、より具体的にはフロントグリルに設置される場合が多かった。しかし、遠赤外カメラを車室外に設置する場合、堅牢性、耐水性、防塵性等を確保するために、より構造が複雑になり、高コストに繋がっていた。遠赤外カメラを車室内、しかもワイパの稼働エリアに設置することによって、窓ガラスにより遠赤外カメラが保護され、汚れなども払拭できるため、このような課題を解決することができる。しかし、上記のとおり、窓ガラスは、遠赤外線を通さないという問題がある為、通常は、遠赤外カメラを車室内に配置しなかった。
【0005】
上記の要請に応えるため、特許文献2には、窓ガラスの一部に貫通孔を開けて当該貫通孔に赤外線透過性の部材を充填した窓部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2003/0169491号明細書
【文献】英国特許出願公開第2271139号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2のように窓ガラスに貫通孔をあけて赤外線透過性の部材を充填する場合、耐衝撃性、防汚、防音、接着剤の外環境からの保護等を目的として、窓ガラスの貫通孔と赤外線透過性の部材との間に、シール性のある枠部材を介在させることが考えられる。ところが、枠部材を設ける場合、窓ガラスの車外側の表面から枠部材が突出するおそれがある。窓ガラスの車外側の表面から枠部材が突出している場合、ワイパによる窓ガラスの拭き取り性が低下したり、ワイパの負荷が増加したりするおそれがある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ワイパによる拭き取り性低下及びワイパの負荷の増加を抑制可能な車両用ガラス、枠部材及び車両用ガラスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る車両用ガラスは、ガラス基体を有し、遮光領域を備える車両用ガラスであって、前記遮光領域に、前記ガラス基体に形成される開口部、及び前記開口部に配置された遠赤外線透過部材が設けられる遠赤外線透過領域が形成されており、前記ガラス基体と前記遠赤外線透過部材とが枠部材を介して接合され、前記枠部材は、車外側の面内において前記開口部に面する側における内周上の任意の2点を結ぶ直線のうち最長の直線の長さをD、前記車両用ガラスの車外側の表面から突出する箇所の厚みをtとすると、D/tが1250より大きく、かつ、tは2.5mm以下である。
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る枠部材は、第1保持部と、前記第1保持部と連続して設けられて内径が前記第1保持部の内径よりも小さい第2保持部と、前記第1保持部の前記第2保持部が設けられる側とは反対側に設けられる鍔部と、を有し、前記第1保持部の内周上の任意の2点を結ぶ直線のうち最長の直線の長さをD、前記鍔部の厚みをtとすると、D/tが1250より大きく、かつ、tが2.5mm以下である。
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、上記の車両用ガラスの製造方法は、2枚のガラス基体を中間層を介して接合して、厚さ方向に貫通した前記開口部を有する合わせガラスとして、前記遠赤外線透過部材の周縁部に、前記枠部材を組み付けて、前記開口部に、前記枠部材が組み付けられた前記遠赤外線透過部材を配置する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ワイパによる拭き取り性低下及びワイパの負荷の増加を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、第1実施形態に係る車両用ガラスが車両に搭載された状態を示す模式図である。
図2図2は、第1実施形態に係る車両用ガラスの概略平面図である。
図3図3は、図2のA-A線に沿った断面図である。
図4図4は、図2のB-B断面に沿った断面図である。
図5図5は、車両用ガラスにおける遠赤外線透過領域の周辺の拡大断面図である。
図6図6は、車両用ガラスにおける枠部材の斜視図である。
図7図7は、車両用ガラスにおける枠部材の正面図である。
図8図8は、車両用ガラスにおける枠部材の側面図である。
図9図9は、車両用ガラスにおける枠部材の断面図である。
図10図10は、車両用ガラスに遠赤外カメラを取り付ける場合の構成例を示す図である。
図11図11は、第1実施形態に係る車両用ガラスの製造方法の例を説明する模式図である。
図12図12は、第2実施形態に係る車両用ガラスにおける遠赤外線透過領域の周辺の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。数値については四捨五入の範囲が含まれる。
【0015】
<第1実施形態>
(車両)
図1は、第1実施形態に係る車両用ガラス1が車両Vに搭載された状態を示す模式図である。図1に示すように、第1実施形態に係る車両用ガラス1は、車両Vに搭載される。車両用ガラス1は、車両Vのフロントガラスに適用される窓部材である。すなわち、車両用ガラス1は、車両Vのフロントウィンドウ、言い換えれば風防ガラスとして用いられている。車両Vの内部(車内)には、遠赤外カメラCA1及び可視光カメラCA2が搭載されている。車両Vの内部(車内)とは、例えばドライバーの運転席が設けられる車室内を指す。
【0016】
車両用ガラス1、遠赤外カメラCA1及び可視光カメラCA2は、第1実施形態に係るカメラユニット100を構成する。遠赤外カメラCA1は、遠赤外線を検出するカメラである。遠赤外カメラCA1は、車両Vの外部からの遠赤外線を検出することによって、車両Vの外部の熱画像を撮像する。可視光カメラCA2は、可視光を検出するカメラである。可視光カメラCA2は、車両Vの外部からの可視光を検出することによって、車両Vの外部の画像を撮像する。カメラユニット100は、遠赤外カメラCA1及び可視光カメラCA2以外に、例えばLiDAR(Light Detection And Ranging)やミリ波レーダーをさらに備えてもよい。ここでの遠赤外線とは、例えば、波長が8μm以上13μm以下の波長帯の電磁波であり、可視光とは、例えば、波長が360nm以上830nm以下の波長帯の電磁波である。
【0017】
(車両用ガラス)
図2は、第1実施形態に係る車両用ガラス1の概略平面図である。図3は、図2のA-A線に沿った断面図である。図4は、図2のB-B断面に沿った断面図である。図2に示すように、以下、車両用ガラス1の上縁を、上縁部1aとし、下縁を、下縁部1bとし、一方の側縁を、側縁部1cとし、他方の側縁を、側縁部1dとする。上縁部1aは、車両用ガラス1を車両Vに搭載した際に、鉛直方向上側に位置する縁部分である。下縁部1bは、車両用ガラス1を車両Vに搭載した際に、鉛直方向下側に位置する縁部分である。側縁部1cは、車両用ガラス1を車両Vに搭載した際に、一方の側方側に位置する縁部分である。側縁部1dは、車両用ガラス1を車両Vに搭載した際に、他方の側方側に位置する縁部分である。
【0018】
以下、車両用ガラス1の表面に平行な方向のうち、上縁部1aから下縁部1bに向かう方向を、Y方向(第1方向)とし、側縁部1cから側縁部1dに向かう方向を、X方向とする。本実施形態において、X方向とY方向とは直交している。車両用ガラス1の表面に直交する方向、すなわち車両用ガラス1の厚み方向を、Z方向とする。Z方向は、例えば、車両用ガラス1を車両Vに搭載した際に、車両Vの車外側から車内側に向かう方向である。X方向及びY方向は、車両用ガラス1の表面に沿っているが、例えば車両用ガラス1の表面が曲面の場合、車両用ガラス1の中心点Oにおいて車両用ガラス1の表面に接する方向となっていてもよい。中心点Oとは、Z方向から車両用ガラス1を見た場合の、車両用ガラス1の中心位置である。
【0019】
車両用ガラス1には、透光領域A1及び遮光領域A2が形成されている。透光領域A1は、Z方向から見て車両用ガラス1の中央部分を占める領域である。透光領域A1は、ドライバーの視野を確保するための領域である。透光領域A1は、可視光を透過する領域である。遮光領域A2は、Z方向から見て透光領域A1の周囲に形成される領域である。遮光領域A2は、可視光を遮蔽する領域である。遮光領域A2のうち、上縁部1a側の部分である遮光領域A2a内には、遠赤外線透過領域Bと可視光透過領域Cとが形成されている。
【0020】
遠赤外線透過領域Bは、遠赤外線を透過する領域であり、遠赤外カメラCA1が設けられる領域である。すなわち、遠赤外カメラCA1は、遠赤外カメラCA1の光軸方向から見た場合に、遠赤外線透過領域Bと重なる位置に設けられる。可視光透過領域Cは、可視光を透過する領域であり、可視光カメラCA2が設けられる領域である。すなわち、可視光カメラCA2は、可視光カメラCA2の光軸方向から見た場合に、可視光透過領域Cと重なる位置に設けられる。
【0021】
このように、遮光領域A2には、遠赤外線透過領域Bと可視光透過領域Cとが形成されているため、遮光領域A2は、遠赤外線透過領域Bが形成されている領域以外では遠赤外線を遮蔽し、可視光透過領域Cが形成されている領域以外では可視光を遮蔽する。遠赤外線透過領域B及び可視光透過領域Cは、周囲に遮光領域A2aが形成されている。このように周囲に遮光領域A2aが設けられることにより各種センサが太陽光から保護されるため好ましい。各種センサの配線が車外から見えなくなるので、意匠性の観点からも好ましい。遠赤外線透過領域B及び可視光透過領域Cの詳細な説明は、後述する。
【0022】
図3に示すように、車両用ガラス1は、ガラス基体12(第1ガラス基体)と、ガラス基体14(第2ガラス基体)と、中間層16と、遮光層18とを備える。車両用ガラス1は、ガラス基体12、中間層16、ガラス基体14及び遮光層18が、Z方向に向けてこの順で積層されている。ガラス基体12とガラス基体14とは、中間層16を介して互いに固定(接着)されている。
【0023】
ガラス基体12、14としては、例えばソーダライムガラス、ボロシリケートガラス、アルミノシリケートガラス等を用いることができる。中間層16は、ガラス基体12とガラス基体14とを接着する接着層である。中間層16としては、例えばポリビニルブチラール(以下PVBともいう)改質材料、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)系材料、ウレタン樹脂材料、塩化ビニル樹脂材料等を用いることができる。より詳しくは、ガラス基体12は、一方の表面12Aと他方の表面12Bとを含み、他方の表面12Bが、中間層16の一方の表面16Aに接触して、中間層16に対して固定(接着)されている。ガラス基体14は、一方の表面14Aと他方の表面14Bとを含み、一方の表面14Aが、中間層16の他方の表面16Bに接触して、中間層16に対して固定(接着)されている。このように、車両用ガラス1は、ガラス基体12とガラス基体14とが積層された合わせガラスである。ただし、車両用ガラス1は、合わせガラスに限られず、例えばガラス基体12とガラス基体14とのうち一方のみを含む構成であってよい。この場合、中間層16も設けられていなくてよい。以下、ガラス基体12、14を区別しない場合は、ガラス基体10と記載する。
【0024】
遮光層18は、一方の表面18Aと他方の表面18Bとを含み、一方の表面18Aが、ガラス基体14の他方の表面14Bに接触して固定されている。遮光層18は、可視光を遮蔽する層である。遮光層18としては、例えばセラミックス遮光層や遮光フィルムを用いることができる。セラミックス遮光層としては、例えば黒色セラミックス層等の従来公知の材料からなるセラミックス層を用いることができる。遮光フィルムとしては、例えば遮光ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、遮光ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、遮光ポリメチルメタクリレート(PMMA)フィルム等を用いることができる。
【0025】
本実施形態においては、車両用ガラス1は、遮光層18が設けられる側が、車両Vの内部側(車内側)となり、ガラス基体12が車両Vの外部側(車外側)となるが、それに限られず、遮光層18が車両Vの外部側であってもよい。ガラス基体12、14の合わせガラスで構成されている場合は、遮光層18が、ガラス基体12とガラス基体14との間に形成されてもよい。
【0026】
遮光領域A2は、ガラス基体10に遮光層18を設けることにより形成される。すなわち、遮光領域A2は、ガラス基体10が遮光層18を備える領域である。すなわち、遮光領域A2は、ガラス基体12と中間層16とガラス基体14と遮光層18が積層された領域である。一方、透光領域A1は、ガラス基体10が遮光層18を備えない領域である。すなわち、透光領域A1は、ガラス基体12と中間層16とガラス基体14とが積層されて、遮光層18が積層されない領域である。
【0027】
図4に示すように、可視光透過領域Cは、透光領域A1と同様に、Z方向において、ガラス基体10が遮光層18を備えない領域である。すなわち、可視光透過領域Cは、ガラス基体12と中間層16とガラス基体14とが積層されて、遮光層18が積層されない領域である。
【0028】
(遠赤外線透過部材)
図5は、車両用ガラス1における遠赤外線透過領域Bの周辺の拡大断面図である。図3図5に示すように、車両用ガラス1は、Z方向における一方の表面(ここでは表面12A)から他方の表面(ここでは表面14B)までにわたって貫通する開口部19が形成されている。開口部19内には、周縁部に枠部材30が設けられた遠赤外線透過部材20が設けられている。開口部19が形成されて遠赤外線透過部材20が設けられている領域が、遠赤外線透過領域Bである。すなわち、遠赤外線透過領域Bは、開口部19と、開口部19内に配置された遠赤外線透過部材20とが設けられる領域である。遠赤外線透過領域Bには、遮光層18が設けられていない。すなわち、遠赤外線透過領域Bにおいては、ガラス基体12、中間層16、ガラス基体14、及び遮光層18が設けられておらず、形成された開口部19に遠赤外線透過部材20が設けられている。
【0029】
遠赤外線透過部材20は、波長8~13μmの遠赤外線の平均透過率が、25%以上であることが好ましく、40%以上であることがさらに好ましく、50%以上であることがさらに好ましく、70%以上であることがさらに好ましく、85%以上であることが特に好ましい。また、遠赤外線透過部材20は、波長8~13μmの遠赤外線の平均透過率が、100%以下であることが好ましい。なお、遠赤外線の平均透過率を85%以上に向上させるためには、反射防止膜を設けることが好ましい。遠赤外線の平均透過率がこの数値範囲となることで、遠赤外線を適切に透過して、遠赤外カメラCA1の性能を十分に発揮できる。
【0030】
遠赤外線透過部材20の材料は、特に限定はされないが、例えばZnS、Ge、Si、カルコゲナイトガラス等が挙げられる。
カルコゲナイトガラスの好ましい組成としては、
原子%表示で、
Ge+Ga;7%~25%、
Sb;0%~35%、
Bi;0%~20%、
Zn;0%~20%、
Sn;0%~20%、
Si;0%~20%、
La;0%~20%、
S+Se+Te;55%~80%、
Ti;0.005%~0.3%、
Li+Na+K+Cs;0%~20%、
F+Cl+Br+I;0%~20%含有する組成である。そして、このガラスは、140℃~550℃のガラス転移点(Tg)を有することが好ましい。
【0031】
このように、遠赤外線透過部材20は、後述するように枠部材30を介して開口部19に取り付けられている。遠赤外線透過部材20は、車外側の面が、遮光領域A2の車外側の面と、面一に(連続して)形成されていることが好ましい。言い換えれば、遠赤外線透過部材20の車外側の表面20Aは、ガラス基体12の表面12Aと連続するように取り付けられている。このように遠赤外線透過部材20の表面20Aがガラス基体12の表面12Aと連続することで、ワイパの拭き取り効果が損なわれることを抑制できる。また、段差があることで車両Vとしてのデザイン性が損なわれることや、段差に砂埃等が堆積することなどのおそれを抑制できる。さらに、遠赤外線透過部材20は、適用される車両用ガラス1の曲面形状に合わせて成形されていることが好ましい。遠赤外線透過部材20の成形方法は特に限定されないが、曲面形状や部材に応じて、研磨もしくはモールド成形が選択される。
【0032】
遠赤外線透過部材20は、車外側の面や車内側の面にコーティングがなされていてもよい。例えば、車外側の面(表面20A)に反射防止膜を備えてもよい。反射防止膜としては、3層~12層の反射防止膜が好ましく、材質は特に限定されないが、Ge、Si、ZnS、ZnSe、As、AsSe、金属酸化物(Al、Bi、CeO、CuO、HfO、MgO、SiO、SiO、TiO、TiO、Ti、Y、ZrO)、水素化炭素、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、フッ化金属(MgF、CaF、SrF、BaF、PbF、LaF、YF)が好ましい。反射防止膜の最も車外側の層は、耐擦傷性の観点から、モース硬度7以上、かつ遠赤外線の透過率が高い膜が好ましい。反射防止膜の最も車外側の層は、ダイヤモンドライクカーボン膜であることが特に好ましい。
【0033】
遠赤外線透過部材20の形状は特に限定されないが、開口部19の形状にあわせた板状の形状であることが好ましい。すなわち、例えば開口部19が円形である場合は、遠赤外線透過部材20は円板状(円柱状)であることが好ましい。また、意匠性の観点から、車外側の遠赤外線透過部材20の表面形状は、ガラス基体12の外表面形状の曲率に合うように加工してもよい。さらに、遠赤外カメラCA1の視野角の広角化と、機械的特性の向上との両立を図る等の理由から、遠赤外線透過部材20を、レンズ形状にしてもよい。このような構成とすると、遠赤外線透過部材20の面積が小さくても効率的に遠赤外光を集光することができるため好ましい。この場合、レンズ形状の遠赤外線透過部材20の個数は、1個~3個が好ましく、典型的には2個が好ましい。さらにレンズ形状の遠赤外線透過部材20は、予め調芯されモジュール化され、遠赤外カメラCA1を車両用ガラス1に接着させる筐体、もしくはブラケットと一体化されていることが特に好ましい。
【0034】
本実施形態の車両用ガラス1においては、車内側の面における開口部19の面積が、車外側の面における開口部19の面積より小さい構成とし、遠赤外線透過部材20の形状もこれにあわせて車内側の面における面積が車外側の面における面積より小さくすることが好ましい。このような構成とすることにより、車外側からの衝撃に対する強度が向上する。さらに言えば、本実施形態の車両用ガラス1がガラス基体12(車外側)とガラス基体14(車内側)とを備える合わせガラスである場合は、開口部19は、ガラス基体12の開口部12aとガラス基体14の開口部14aとが重なって形成される。この場合、ガラス基体12の開口部12aの面積を、ガラス基体14の開口部14aの面積より大きくし、ガラス基体12の開口部12aのサイズに合わせた遠赤外線透過部材20を、ガラス基体12の開口部12a内に配置すればよい。
【0035】
強度の観点から、遠赤外線透過部材20の厚みは、1.5mm以上であることが好ましく、2.0mm以上がより好ましく、3.0mm以上がさらに好ましい。遠赤外線透過部材20の厚みの上限は、特に限定されないが、通常は5.0mm以下である。ここでの厚みとは、Z方向における遠赤外線透過部材20の長さである。
【0036】
(枠部材)
図6は、車両用ガラス1における枠部材30の斜視図である。図7は、車両用ガラス1における枠部材30の正面図である。図8は、車両用ガラス1における枠部材30の側面図である。図9は、車両用ガラス1における枠部材30の断面図である。枠部材30は、遠赤外線透過部材20とガラス基体10との間に介在して、シール材として機能する。枠部材30は、ガラス基体10の開口部19における内周面と、遠赤外線透過部材20との間に配置される。枠部材30の形状は、特に限定されないが、遠赤外線透過部材20が円板上の場合は、筒状に形成され、遠赤外線透過部材20の周縁部に配置される。枠部材30は、遠赤外線透過部材20とガラス基体10との間に配置される筒状部33と、筒状部33に対して車外側に形成される第1鍔部34(鍔部)と、筒状部33に対して車内側に形成される第2鍔部35と、を有する。筒状部33は、遠赤外線透過部材20を保持する第1保持部31と、第1保持部31よりも車内側に形成されてガラス基体10を保持する第2保持部32と、第1保持部31及び第2保持部32を接続する壁部36を有する。本実施形態では、筒状部33は、遠赤外線透過部材20の周縁部を覆う円筒状に形成されている。
【0037】
筒状部33は、第1保持部31の内径より第2保持部32の内径が小さく形成されることで、車外側より車内側の内径が小さくなる段差状に形成されている。図9に示すように、筒状部33の第1保持部31は、Z方向に延びる筒状の部材である。壁部36は、第1保持部31の車内側の周縁部から径方向内側に延びる、円板状の部材である。第2保持部32は、壁部36の径方向内側の周縁部からZ方向に延びる、筒状の部材である。第1保持部31の車外側の周縁部に第1鍔部34が配置されている。第1鍔部34は、第1保持部31に対して径方向の内側及び径方向外側に延在している。第1鍔部34は、枠部材30が車両用ガラス1に取り付けられた際に、遠赤外線透過部材20とガラス基体10との境界を覆って、遠赤外線透過部材20及びガラス基体10から車外側に突出している部分である。第2保持部32の車内側の周縁部に第2鍔部35が配置されている。第2鍔部35は、枠部材30が車両用ガラス1に取り付けられた際に、遠赤外線透過部材20及びガラス基体10から車内側に突出する部分である。第2鍔部35は、第2保持部32に対して径方向外側に延在している。
【0038】
図9に示すように、第1保持部31の内周面31aは、遠赤外線透過部材20の周縁部(外周面)に接合され、第1鍔部34の径方向内側に突出する部分の車内側の表面34aは、遠赤外線透過部材20の車外側の表面20Aに接合され、壁部36の車外側の表面36aは、遠赤外線透過部材20の車内側の表面20Bに接合される。すなわち、枠部材30は、内周面31aと表面34aと表面36aとで、遠赤外線透過部材20に固定される。より詳しくは、内周面31aと表面34aと表面36aとに接着剤が塗布されて、遠赤外線透過部材20が保持される。また、第1保持部31の外周面31bは、ガラス基体12の開口部12aにおける内周面に接合され、第1鍔部34の径方向外側に突出する部分の車内側の表面34bは、ガラス基体12の車外側の表面12Aに接合される。また、壁部36の車内側の表面36bは、ガラス基体14の開口部14aの周縁部の車外側の表面14Aに接合され、第2保持部32の外周面32aは、ガラス基体14の開口部14aにおける内周面に接合され、第2鍔部35の径方向外側に突出する部分の車外側の表面35aは、遮光層18の表面18Bに接合される。すなわち、枠部材30は、外周面31bと表面34bと表面36bと外周面32aと表面35aとで、ガラス基体10(ガラス基体12、14)に固定される。より詳しくは、外周面31bと表面34bと表面36bと外周面32aと表面35aとに、接着剤が塗布されて、ガラス基体10が保持される。このような構成により、遠赤外線透過部材20の周縁部と、壁部36と、ガラス基体14の開口部19に面した周縁部とが、Z方向に重なって配置されている。
【0039】
第1鍔部34の径方向内側の周縁部は、第2鍔部35の径方向内側の周縁部と、径方向において同じ位置か、より外側に位置する。第1鍔部34の径方向外側の周縁部は、第2鍔部35の径方向外側の周縁部より外側に位置する。
【0040】
第1鍔部34の径方向内側に突出する部分の車外側の表面34cは、車内側の表面34aに対して傾斜角θ1を有する。第1鍔部34の径方向外側に突出する部分の車外側の表面34dは、車内側の表面34bに対して傾斜角θ2を有する。傾斜角θ1は、傾斜角θ2より大きい。第1鍔部34の表面34c及び表面34bを傾斜させることにより、ワイパの拭き取り効果が損なわれることや、ワイパへの負荷が増加すること等のおそれを抑制できる。
【0041】
図5に示すように、枠部材30は、車外側の面内において開口部19に面する側における内周上の任意の2点を結ぶ直線のうち最長の直線の長さ(内径)D、ガラス基体10の車外側の表面(ここでは表面12A)から車外側に突出する箇所の厚みtとすると、D/tは1250より大きく、tは2.5mm以下であることが好ましい。より好ましくは、D/tは1400以上、tは1.5mm以下であり、特に好ましくは、D/tは2000以上、tは1.0mm以下である。内径Dは、枠部材30の車外側の内径、言い換えると、第1鍔部34の内径である。厚みtは、第1鍔部34の厚み、言い換えると、ガラス基体12の表面12Aから第1鍔部34の頂部34eまでの厚みである。枠部材30の内径Dや厚みtをこの範囲とすることによって、ワイパの拭き取り効果が損なわれることや、ワイパへの負荷が増加すること等のおそれを抑制できる。ここでの内径Dは、車両用ガラス1を車両Vに搭載する状態における長さを指しており、例えばガラスを曲げ加工して車両Vに搭載する形状とする場合は、内径Dは、曲げ加工した後の状態における長さとなる。内径D以外の寸法や位置の説明についても、特に説明していない場合は、同様である。尚、枠部材30は、一体型でなくともよく、例えば、筒状部33、第1鍔部34、および第2鍔部35は、樹脂成形性、コストの観点から必要に応じて、複数に、例えば2つもしくは3つに、分割されていてもよい。さらに簡略化し、複数(例えば2つ、もしくは3つ)の径の異なるOリングにより、筒状部33、第1鍔部34、および第2鍔部35の機能を持たせてもよい。また、車両用ガラス1が合わせガラスではない場合、枠部材30は、車外側から車内側にかけて面積が小さくなるように、テーパーをつけてもよい。
【0042】
内径Dは、18mm以上76mm以下が好ましく、25mm以上70mm以下がより好ましく、30mm以上60mm以下が更に好ましい。内径Dがこの範囲となることで、遠赤外線透過部材20が覆われる面積を適切な範囲に保つことができる。また、枠部材30の、車外側の面内において開口部19に面する側における外周上の任意の2点を結ぶ直線のうち最長の直線の長さ(外径)を、外径DLとする。この場合、外径DLは、22mm以上100mm以下が好ましく、29mm以上94mm以下がより好ましく、34mm以上84mm以下が更に好ましい。外径DLがこの範囲となることで、枠部材30の幅が大きくなり過ぎることを抑制できる。
【0043】
図6及び図7に示すように、枠部材30は、車外側の面に、少なくとも1つ以上の溝が形成されていることが好ましい。本実施形態では、第1鍔部34の車外側の面には、溝37及び溝38が形成されている。溝37及び溝38は、第1鍔部34の径方向に沿って形成されている。溝37及び溝38は、車両Vのワイパが動作した際の、ワイパの拭き取り範囲内に設けられている。本実施形態では、溝38は、第1鍔部34の下部に配置されている。本実施形態では、溝37は、溝38から、第1鍔部34の周方向に45°程度ずれた位置に配置されている。このように配置された溝37及び溝38は、枠部材30の車外側の面において、枠部材30の径方向内側に溜まった水を、枠部材30の外部にスムースに排出する。
【0044】
枠部材30は、黒色の合成樹脂材料、例えば、ABS樹脂、PP(ポリプロピレン)、PC(ポリカーボネート)、変性PPE(ポリフェニレンエーテル)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PA6やPA66等のポリアミドや、ゴム材料、例えばIIR(ブチルゴム)、EPDM(エチレン・プロピレンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、TPE(熱可塑性エラストマー)、もしくはこれらの複合材料などで形成されていることが好ましい。枠部材30は、紫外線耐性を有する合成樹脂材料、ゴム材料、もしくはこれらの複合材料であることが好ましい。
【0045】
(遠赤外線透過領域)
次に、遠赤外線透過領域Bについて説明する。図2に示すように、遠赤外線透過領域Bは、Y方向における車両用ガラス1の上縁部1aの近傍であって、X方向における車両用ガラス1の中央近傍に形成されている。開口部19及び遠赤外線透過部材20は、Y方向における車両用ガラス1の上縁部1aの近傍であって、X方向における車両用ガラス1の中央近傍に形成されている。
【0046】
図3に示すように、遠赤外線透過領域Bの遠赤外線透過部材20は、車外側の面内の任意の2点を結ぶ直線のうち最長の直線の長さDAが、80mm以下となっている。長さDAは、70mm以下であることが好ましく、より好ましくは65mm以下、さらに好ましくは50mm以下である。長さDAは、25mm以上であることが好ましく、より好ましくは30mm以上、さらに好ましくは35mm以上である。長さDAは、Z方向に平行な同一平面における、枠部材30の第1保持部31の内周上の任意の2点を結ぶ直線のうちの最長の直線の長さ(すなわち第1保持部31の内径)であるともいえる。遠赤外線透過領域Bの開口部19は、車外側の面内の任意の2点を結ぶ直線のうち最長の直線の長さDBが、80mm以下となっていることが好ましい。長さDBは、70mm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは65mm以下、さらに好ましくは50mm以下である。長さDBは、25mm以上であることが好ましく、より好ましくは30mm以上、さらに好ましくは35mm以上である。長さDBは、車両用ガラス1の車外側の面(表面12A)での開口部19の外周における、任意の2点を結ぶ直線のうち最長の直線の長さともいえる。また、長さDBは、Z方向に平行な同一平面における、枠部材30の第1保持部31の外周上の任意の2点を結ぶ直線のうちの最長の直線の長さ(すなわち第1保持部31の外径)であるともいえる。遠赤外線透過部材20の長さDAや開口部19の長さDBをこの範囲とすることによって、遠赤外カメラの画質を維持しながら、車両用ガラス1の強度低下を抑制し、開口部19の周囲の透視歪み量も抑制できる。また、使用温度範囲内におけるそれぞれの材質の膨張も考慮して、長さDA、DBは歪が生じないよう、適切な長さが決められる。さらに膨張による歪対策として、予め隙間を設けておいてもよい。長さDA、DBは、遠赤外線透過部材20の車外側の面の形状が円形である場合は、車外側の面の直径にあたる長さである。ここでの長さDA、DBは、車両用ガラス1を車両Vに搭載する状態における長さを指しており、例えばガラスを曲げ加工して車両Vに搭載する形状とする場合は、長さDA、DBは、曲げ加工した後の状態における長さとなる。長さDA、DB以外の寸法や位置の説明についても、特に説明していない場合は、同様である。
【0047】
(可視光透過領域)
次に、可視光透過領域Cについて説明する。図2に示すように、可視光透過領域Cは、遠赤外線透過領域Bの近傍に設けられることが好ましい。具体的には、Z方向から見た遠赤外線透過領域Bの中心を中心点OBとし、Z方向から見た可視光透過領域Cの中心を中心点OCとする。Z方向から見た場合の、遠赤外線透過領域B(開口部19)と可視光透過領域Cとの間の最短距離を距離Lとすると、距離Lは、0mmより大きく100mm以下であることが好ましく、10mm以上80mm以下であることがさらに好ましい。可視光透過領域Cを、遠赤外線透過領域Bに対してこの範囲の位置とすることによって、遠赤外カメラCA1と可視光カメラCA2とで近い位置の画像を撮像することを可能としつつ、可視光透過領域Cでの透視歪み量を抑えて、可視光カメラCA2で適切に画像を撮像できる。遠赤外カメラCA1と可視光カメラCA2とで近い位置の画像を撮像することによって、それぞれのカメラから得られるデータを演算処理する際の負荷が軽減され、電源や信号ケーブルの取り廻しも好適となる。
【0048】
図2に戻り、可視光透過領域Cと遠赤外線透過領域Bとは、X方向に並んで位置していることが好ましい。すなわち、可視光透過領域Cは、遠赤外線透過領域BのY方向側に位置しておらず、遠赤外線透過領域BとX方向で並んでいることが好ましい。可視光透過領域Cを遠赤外線透過領域BにX方向に並べて配置することによって、可視光透過領域Cを上縁部1aの近傍に配置することができる。従って、透光領域A1におけるドライバーの視野を適切に確保することができる。
【0049】
可視光透過領域Cは、遠赤外線透過領域Bと同様に、Y方向において上縁部1aの近傍に位置し、X方向において遠赤外線透過領域Bの近傍に位置していることが好ましい。可視光透過領域Cをこの位置に配置することによって、遠赤外カメラCA1と可視光カメラCA2とで近い位置の画像を撮像することを可能としつつ、可視光透過領域Cでの透視歪み量を抑えて、可視光カメラCA2で適切に画像を撮像できる。
【0050】
(カメラユニットの構成)
次に、本実施形態のカメラユニット100の構成、より具体的には、車両用ガラス1に遠赤外カメラCA1を取り付ける場合の構成例について説明する。図10は、車両用ガラス1に遠赤外カメラCA1を取り付ける場合の構成例を示す図である。
【0051】
本実施形態のカメラユニット100は、車両用ガラス1と、遠赤外カメラCA1と、可視光カメラCA2とを備える。車両用ガラス1については、先述のとおりである。遠赤外カメラCA1は、車両用ガラス1の遠赤外線透過領域Bを通して外部の熱画像を撮像できるように車両用ガラス1に取り付けられている。遠赤外カメラCA1は、車両Vの内部(車内)において、遠赤外線透過領域Bと対向する位置に設けられる。遠赤外カメラCA1の種類は特に限定されず、公知の遠赤外カメラを用いることができる。図10に示すように、遠赤外カメラCA1は、例えばブラケット40により車両用ガラス1に取り付けられる。遠赤外カメラCA1は、通常、光軸LXが略水平となるように取り付けられる。
【0052】
可視光カメラCA2は、車両用ガラス1の可視光透過領域Cを通して外部の画像を撮像できるように車両用ガラス1に取り付けられている。可視光カメラCA2は、車両Vの内部(車内)において、可視光透過領域Cと対向する位置に設けられる。可視光カメラCA2は、遠赤外カメラCA1の光軸LXと可視光カメラCA2の光軸とが略平行となるように取り付けられることが好ましい。略平行とは、これらの光軸が完全な平行である場合のみならず、誤差程度にわずかに平行からずれる場合も含む概念である。このようにすることによって、遠赤外カメラCA1の光軸LXと可視光カメラCA2の視野の中心がほぼ一致するため、これらのカメラから得られた画像を組み合わせて情報処理する際に好ましい。
【0053】
(車両用ガラスの製造方法)
車両用ガラス1の製造方法は特に限定されないが、その一例を以下に説明する。図11は、第1実施形態に係る車両用ガラス1の製造方法の例を説明する模式図である。図11の例に示すように、車両用ガラス1を製造する場合、平板状のガラス基体12、14を準備し、それらに開口部12a、14aを形成する(ステップS10)。そして、開口部12a、14aが形成された平板状のガラス基体12、14のそれぞれを曲げ加工して(ステップS12)、車両Vのフロントガラスに合う形状とする。そして、曲げ加工したガラス基体12とガラス基体14とを、中間層16を介して接合して、合わせガラスとする(ステップS14)。この場合、開口部12aと開口部14aとが連通するように、かつ、その連通する箇所に中間層16が形成されないように、ガラス基体12とガラス基体14とを接合する。中間層16は、合わせガラスとした後に、開口部12aと開口部14aとに重なる部分のみ、熱的、化学的手法により取り除いて連通させてもよい。これにより、開口部12aと開口部14aとが連通して、開口部19が形成される。そして、枠部材30を、遠赤外線透過部材20の周縁部に組み付ける(ステップS16)。この際、第1保持部31の周面には、接着剤が塗布されている。第1保持部31によって、遠赤外線透過部材20が保持される。そして、開口部19内に、枠部材30が組み付けられた遠赤外線透過部材20を配置して(ステップS18)、車両用ガラス1の製造が完了する。この際、第2保持部32の周面には、接着剤が塗布されている。第2保持部32によって、ガラス基体10が保持される。さらに遮光層18を形成してもよい。遮光層18は、ステップS10からステップS18のどの段階で形成してもよいが、例えば曲げ加工の前に形成してよい。
【0054】
(効果)
以上説明したように、本実施形態では、車両用ガラス1は、ガラス基体10を有して、遮光領域A2を備える。車両用ガラス1は、遮光領域A2内に、ガラス基体10に形成される開口部19、及び開口部19内に配置された遠赤外線透過部材20が設けられる遠赤外線透過領域Bが形成されている。本実施形態では、ガラス基体10と遠赤外線透過部材20とが枠部材30を介して接合されている。本実施形態では、枠部材30は、車外側の面内において開口部19に面する側における内周上の任意の2点を結ぶ直線のうち最長の直線の長さをD、ガラス基体10の車外側の表面から突出する箇所の厚みをtとすると、D/tが1250より大きく、かつ、tは2.5mm以下である。このような本実施形態によれば、枠部材30が車外側に突出しすぎないので、ワイパの拭き取り性の低下及びワイパの負荷の増加を抑制できる。本実施形態は、枠部材30が車外側に突出しすぎないので、車両Vとしてのデザイン性が損なわれることや、枠部材30と車両用ガラス1及び遠赤外線透過部材20との段差に砂埃等が堆積すること等のおそれを抑制できる。
【0055】
本実施形態では、枠部材30は、車外側において、車両用ガラス1と遠赤外線透過部材20との境界を覆って配置されている。本実施形態では、第1保持部31の周面に塗布された接着剤によって、遠赤外線透過部材20が保持される。本実施形態では、第2保持部32の周面に塗布された接着剤によって、ガラス基体10が保持される。本実施形態では、遠赤外線透過部材20の周縁部と、壁部36と、ガラス基体14の開口部19に面した周縁部とが、Z方向に重なって配置されている。本実施形態によれば、枠部材30と、車両用ガラス1と遠赤外線透過部材20との境界から、車内側に砂塵等の汚れ及び異物が浸入することを抑制できる。本実施形態は、高い防汚効果を得ることができる。本実施形態によれば、枠部材30と、車両用ガラス1と遠赤外線透過部材20との境界における防音性の低減を抑制できる。本実施形態によれば、枠部材30と、車両用ガラス1と遠赤外線透過部材20とを接合する接着剤が、車外側及び車内側に露出することを規制できる。本実施形態は、接着剤を外環境から保護できる。
【0056】
本実施形態では、車両用ガラス1は、ガラス基体12(第1ガラス基体)と、ガラス基体12よりも車内側に設けられてガラス基体12に対向するガラス基体14(第2ガラス基体)とを有しており、ガラス基体12の開口12aとガラス基体14の開口14aとが連通して開口部19が形成されている。遠赤外線透過部材20は、ガラス基体12の開口12a内に設けられている。枠部材30は、開口部19に配置される筒状部33を有し、筒状部33は、第1保持部31と第2保持部32とを含む。第1保持部31は、遠赤外線透過部材20とガラス基体12の開口12aにおける内周面との間に設けられる。第2保持部32は、ガラス基体14の開口14aに設けられる。本実施形態では、第1保持部31と第2保持部32とによって、ガラス基体12と遠赤外線透過部材20とを適切に保持できる。
【0057】
本実施形態では、筒状部33は、第1保持部31の内径より第2保持部32の内径が小さくなる段差状に形成されている。本実施形態では、枠部材30がこのように段差状となることで、水が内部まで浸透することを抑制できる。
【0058】
本実施形態では、壁部36の表面36aによって、遠赤外線透過部材20の表面20Bの周縁部が保持される。本実施形態によれば、車外側からの衝撃に対する強度低下を抑制できる。
【0059】
本実施形態では、枠部材30は、車外側の表面に、少なくとも1つ以上の溝、例えば、溝37及び溝38が形成されている。本実施形態によれば、枠部材30の車外側の表面において、径方向内側に溜まった水をスムースに外部に排水できる。
【0060】
本実施形態では、枠部材30は、黒色の材料で形成されている。本実施形態によれば、車外側から視認した際に、遮光領域A2a内に設けられた枠部材30が、周囲から目立つことが抑制できる。本実施形態は、車両用ガラス1の外観、デザイン性を保つことができる。
【0061】
本実施形態に係る枠部材30は、車両用ガラス1のガラス基体10に形成される開口部19に配置された遠赤外線透過部材20とガラス基体10とを接合する。枠部材30は、第1保持部31と、第1保持部31と連続して設けられて内径が第1保持部31の内径よりも小さい第2保持部32と、第1保持部31の第2保持部32が設けられる側とは反対側に設けられる鍔部(第1鍔部34)と、を有する。鍔部(第1鍔部34)の内周上の任意の2点を結ぶ直線のうち最長の直線の長さをD、鍔部(第1鍔部34)の厚みをtとすると、D/tが1250より大きく、かつ、tが2.5mm以下である。この枠部材30によると、車両用ガラス1に取り付けた際に、ワイパの拭き取り性の低下及びワイパの負荷の増加を抑制できる。
【0062】
(実施例)
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。以下、拭き取り性及びワイパの負荷の評価を行った実施例について説明する。
【0063】
(枠部材の準備)
表1に示すような、内径D及び外径DLと、厚みtとが異なる、枠部材30を準備した。内径Dとは、枠部材30の車外側の面内において開口部19に面する周縁部上の任意の2点を結ぶ直線のうち最長の直線の長さのことである。外径DLとは、枠部材30の車外側の面内の任意の2点を結ぶ直線のうち最長の直線の長さのことである。このようにして準備された、開口部19内に、周縁部に枠部材30が設けられた遠赤外線透過部材20が設けられた車両用ガラス1を使用して、以下の評価を実施した。
【0064】
(拭き取り性の評価)
拭き取り性の評価においては、所望の内径Dおよび外径DLをもつ厚み0.25mmの円形状のシール(PVC製、粘着剤:アクリル系)を準備し、そのシールを重ねることで厚みを0.25~3.0mmまで可変とした。前面ガラスの外表面を洗浄、水を払拭してよく乾燥させた後、ワイパ稼働範囲のカメラ設置想定部に、このシールを、外側から貼り付け、よく押し付けて5分間待機した。
次に、φ1.0mmの穴が開いたシャワーヘッドを用い、約5mm/hの降水量を想定した水量でフロントガラスに水を掛けながら、ワイパを約1回/秒の速度で往復動作させ、車室内運転席から円形状のシール内側にフォーカスし、約2分間ビデオ撮影した。その際、内側が拭き取られていれば合格「〇」、水の膜が内側全体、もしくは3割以上の面積を占めていれば不合格「×」とした。なお、用いたワイパは、運転席側が幅5mm、長さ700mm、助手席側が幅5mm、長さ375mmである。
【0065】
(ワイパの負荷の評価)
ワイパの負荷の評価においては、上述の拭き取り性の評価の際、ワイパが振動せず、かつ、異音が発生していない場合、合格「〇」、ワイパが振動した、又は、異音が発生した場合、不合格「×」とした。
例1は、内径Dを25mm、外径DLを36mm、厚みtを0.25mmとして、D/tを2500とした。
例2は、内径Dを25mm、外径DLを36mm、厚みtを0.5mmとして、D/tを1250とした。
例3は、内径Dを25mm、外径DLを36mm、厚みtを1.0mmとして、D/tを625とした。
例4は、内径Dを36mm、外径DLを50mm、厚みtを0.25mmとして、D/tを5184とした。
例5は、内径Dを36mm、外径DLを50mm、厚みtを0.5mmとして、D/tを2592とした。
例6は、内径Dを36mm、外径DLを50mm、厚みtを1.0mmとして、D/tを1296とした。
例7は、内径Dを46mm、外径DLを60mm、厚みtを0.5mmとして、D/tを4232とした。
例8は、内径Dを46mm、外径DLを60mm、厚みtを1.0mmとして、D/tを2116とした。
例9は、内径Dを46mm、外径DLを60mm、厚みtを1.5mmとして、D/tを1410.667とした。
例10は、内径Dを46mm、外径DLを60mm、厚みtを3.0mmとして、D/tを705.3333とした。
【0066】
【表1】
【0067】
各例についての拭き取り性の評価の結果について、以下に説明する。
例1、例4~例9は、合格「〇」であり、好ましい結果が得られた。例1、例4ないし例9は、D/tが、1250より大きい。
例2、例3、例10は、不合格「×」であり、好ましい結果が得られなかった。例2、例3、例10は、D/tが、1250以下である。
【0068】
各例についてのワイパの負荷の評価の結果について、以下に説明する。
例1~例9は、合格「〇」であり、好ましい結果が得られた。例1~例9は、厚みtが、1.5mm以下である。
例10は、不合格「×」であり、好ましい結果が得られなかった。例10は、厚みtが、1.5mmより大きい。
【0069】
上記の結果からも明らかなように、D/tが、1250より大きいものは、拭き取り性の低下を抑制できる。厚みtが、1.5mm以下であるものは、ワイパの負荷を抑制できる。
【0070】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態においては、枠部材30Aが複数の部材から構成される点で、第1実施形態とは異なる。
【0071】
図12は、第2実施形態に係る枠部材の模式図である。図12に示すように、第2実施形態に係る枠部材30Aは、第1枠部材30A1と、第2枠部材30A2とを有する。第1枠部材30A1、第2枠部材30A2は、この例ではOリングである。第1枠部材30A1は、遠赤外線透過部材20の外周面とガラス基体12の開口12aにおける内周面との間に設けられる。第1枠部材30A1は、遠赤外線透過部材20の外周面とガラス基体12の内周面との間に充填されて、遠赤外線透過部材20の外周面とガラス基体12の内周面との間をシールする。すなわち、第1枠部材30A1は、第1実施形態の第1保持部31の機能を備えているといえる。また、第1枠部材30A1は、遠赤外線透過部材20の外周面とガラス基体12の内周面との間から、車外側にはみ出して、車両用ガラス1の車外側の表面において、遠赤外線透過部材20とガラス基体12との境界を覆う。すなわち、第1枠部材30A1は、第1実施形態の第1保持部31の機能に加えて、第1鍔部34の機能も備えているといえる。
【0072】
第2枠部材30A2は、ガラス基体14の内周面に配置される。第2枠部材30A2は、ガラス基体12とガラス基体14との間の空間を、すなわち中間層16の径方向内側の空間をシールする。すなわち、第2枠部材30A2は、第1実施形態の第2保持部32の機能を備えているといえる。
なお、枠部材30Aは、3つ以上の部材から構成されてもよい。例えば、枠部材30Aが3つの部材から構成される場合、枠部材30は、第1枠部材30A1と第2枠部材30A2との間にOリングを介した構成であってもよい。この場合、Oリングは、第1実施形態の第2保持部32の機能を備えていてもよい。このとき、Oリングには止水性が求められることから、Oリングの材質は、ゴム材料、もしくは合成樹脂とゴムの複合材料が好ましい。また、第1枠部材30A1及び第2枠部材30A2の材質は、前記の紫外線耐性を有する合成樹脂材料、ゴム材料、もしくはこれらの複合材料、さらにはステンレス等の金属材料でもよい。
【0073】
このように複数の部材で構成される枠部材30Aを用いても、ワイパの拭き取り性の低下及びワイパの負荷の増加を抑制できる。なお、枠部材の形状は、第1実施形態及び第2実施形態の例に限られない。
【0074】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0075】
1 車両用ガラス
1a 上縁部
1b 下縁部
1c、1d 側縁部
10、12、14 ガラス基体
16 中間層
18 遮光層
19 開口部
20 遠赤外線透過部材
30 枠部材
33 筒状部
34 第1鍔部
35 第2鍔部
40 ブラケット
100 カメラユニット
A1 透光領域
A2 遮光領域
B 遠赤外線透過領域
C 可視光透過領域
CA1 遠赤外カメラ
CA2 可視光カメラ
D 内径
t 厚み
V 車両
図1
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図12