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特許7444282コーティング剤組成物、該組成物を含む表面処理剤、及び該表面処理剤で表面処理された物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】コーティング剤組成物、該組成物を含む表面処理剤、及び該表面処理剤で表面処理された物品
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/10 20060101AFI20240228BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20240228BHJP
   C09D 167/00 20060101ALI20240228BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
C09D201/10
C09D183/04
C09D167/00
C09K3/00 R
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022561833
(86)(22)【出願日】2021-11-01
(86)【国際出願番号】 JP2021040250
(87)【国際公開番号】W WO2022102455
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-05-16
(31)【優先権主張番号】P 2020189284
(32)【優先日】2020-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 聖矢
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/159476(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/082583(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/008505(WO,A1)
【文献】特開2013-194055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)式(-C(=O)OR1)で表される基、式(-O-C(=O)R1)で表される基、式(-C(=O)NR1 2)で表される基、式(-C(=O)SR1)で表される基、及び式(-P(=O)(OR12)で表される基(前記式中、R1は独立に水素原子、炭素数1~30のアルキル基、炭素数6~30のアリール基又は炭素数7~30のアラルキル基である。)から選ばれる親油性基とシラノール基もしくは加水分解性シリル基とを含有する親油性基含有(加水分解性)オルガノシロキサン化合物及び/又はその部分(加水分解)縮合物と、
(B)2~6価のアルコールと炭素数3~22の脂肪酸との縮合物からなるポリオールエステル
を必須成分として含有し、(A)成分と(B)成分の質量比が0.1<(A)/(B)<10の範囲内であるコーティング剤組成物。
【請求項2】
(A)成分が、下記一般式(1)
【化1】
[式中、Aは-C(=O)OR1、-O-C(=O)R1、-C(=O)NR1 2、-C(=O)SR1又は-P(=O)(OR12(R1は独立に水素原子、炭素数1~30のアルキル基、炭素数6~30のアリール基又は炭素数7~30のアラルキル基である。)であり、Yは独立に2価の有機基であり、Wは独立に炭素数1~4のアルキル基、フェニル基、水酸基又は加水分解性基であり、Rは独立に炭素数1~4のアルキル基又はフェニル基であり、Xは独立に水酸基又は加水分解性基であり、nは1~3の整数であり、qは1~3の整数である。]
で表される親油性基含有(加水分解性)オルガノシロキサン化合物及び/又はその部分(加水分解)縮合物である請求項1に記載のコーティング剤組成物。
【請求項3】
(A)成分の一般式(1)で表される親油性基含有(加水分解性)オルガノシロキサン化合物において、Yが独立に、-O-、-S-、-NR-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NR-、-OC(=O)NR-(Rは炭素数1~4のアルキル基又はフェニル基である)、シルアルキレン基、シルアリーレン基、及びケイ素原子数2~10個の直鎖状、分岐状又は環状の2価のオルガノ(ポリ)シロキサン残基から選ばれる2価の基を含んでいてもよく、また炭素数6~20のアリーレン基を含んでいてもよい炭素数2~30のアルキレン基である請求項2に記載のコーティング剤組成物。
【請求項4】
(A)成分の一般式(1)で表される親油性基含有(加水分解性)オルガノシロキサン化合物において、Wが独立に、炭素数1~4のアルキル基、フェニル基、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数2~10のアルコキシ置換アルコキシ基、炭素数1~10のアシロキシ基、炭素数2~10のアルケニルオキシ基、ハロゲン原子、オキシム基、イソシアネート基、及びシアネート基からなる群より選ばれるものである請求項2又は3に記載のコーティング剤組成物。
【請求項5】
(A)成分が、下記一般式(2)で表される親油性基含有(加水分解性)オルガノシロキサン化合物及び/又はその部分(加水分解)縮合物である請求項1~4のいずれか1項に記載のコーティング剤組成物。
【化2】
(式中、R2は炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~20のアリール基又は炭素数7~20のアラルキル基であり、Qは単結合、又はシルアルキレン基、シルアリーレン基、及びケイ素原子数2~10個の直鎖状、分岐状もしくは環状の2価のオルガノ(ポリ)シロキサン残基から選ばれる2価の基であり、mは独立に1~20の整数であり、Xは独立に水酸基又は加水分解性基である。)
【請求項6】
(B)成分が、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールから選ばれる多価アルコールと炭素数3~22の脂肪酸との縮合物からなるポリオールエステルである請求項1~5のいずれか1項に記載のコーティング剤組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のコーティング剤組成物を含有する表面処理剤。
【請求項8】
更に、溶剤を含むものである請求項7に記載の表面処理剤。
【請求項9】
更に、加水分解縮合触媒を含むものである請求項7又は8に記載の表面処理剤。
【請求項10】
25℃、相対湿度40%におけるオレイン酸接触角が30°以下の硬化被膜を与えるものである請求項7~9のいずれか1項に記載の表面処理剤。
【請求項11】
請求項7~10のいずれか1項に記載の表面処理剤の硬化被膜を表面に有する物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親油性、耐摩耗性に優れるコーティング剤組成物、該組成物を含む表面処理剤、及び該表面処理剤で表面処理された物品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話をはじめ、ディスプレイのタッチパネル化が加速している。これらは指で触れて操作をするため、指紋等の汚れが付着し、見苦しいことが問題となっている。そこで、外観や視認性を良くするためにディスプレイの表面に指紋を付きにくくする技術や、指紋を目立たなくする技術の要求が年々高まってきており、これらの要求に応えることのできる材料の開発が望まれている。
【0003】
一般に、ガラスや布などの基材の表面改質剤として、シランカップリング剤が良く知られており、各種基材表面のコーティング剤として幅広く利用されている。シランカップリング剤は、1分子中に有機官能基と反応性シリル基(一般にはアルコキシシリル基等の加水分解性シリル基)を有し、この加水分解性シリル基が、空気中の水分などによって自己縮合反応を起こして被膜を形成する。該被膜は、加水分解性シリル基がガラスや金属などの表面と化学的・物理的に結合することにより耐久性を有する強固な被膜となる。
【0004】
そこで、フルオロポリエーテル基含有化合物に加水分解性シリル基を導入したフルオロポリエーテル基含有ポリマーを用いることによって、基材表面に、撥水撥油性、防汚性等を有する被膜を形成しうる組成物が数多く開示されている(特許文献1~6:特表2008-534696号公報、特表2008-537557号公報、特開2012-072272号公報、特開2012-157856号公報、特開2013-136833号公報、特開2015-199906号公報)。
【0005】
しかし、従来のフルオロポリエーテル基含有ポリマーを用いて作製した被膜層は、その高い撥水撥油性から汚れ拭取り性に優れるものの、指紋に含有する皮脂が表面に弾かれることで微小な油滴を形成し、光が散乱するために指紋が目立ちやすいという問題点があった。
【0006】
また、親油性化合物に加水分解性シリル基を導入したシラン化合物を用いることによって、基材表面に密着し、且つ基材表面に、親油性を有する被膜を形成しうる組成物も開示されている(特許文献7:特開2001-353808号公報)。
該親油性化合物に加水分解性シリル基を導入したシラン化合物を含有する組成物は、親油性に優れた硬化被膜を形成することができるため、指紋等が付着したときに皮脂が光を散乱することなく指紋が目立ちにくくなる。
【0007】
しかし、従来の親油性に優れた硬化被膜を形成することができるコーティング剤組成物は、実使用に伴う摩耗により消耗し、親油性が低下してしまうため、実用上満足できる性能を有するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特表2008-534696号公報
【文献】特表2008-537557号公報
【文献】特開2012-072272号公報
【文献】特開2012-157856号公報
【文献】特開2013-136833号公報
【文献】特開2015-199906号公報
【文献】特開2001-353808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、親油性、耐摩耗性に優れた硬化被膜を形成し得るコーティング剤組成物、該組成物を含む表面処理剤、及び該表面処理剤で表面処理された物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を解決すべく鋭意検討した結果、下記の(A)成分と(B)成分とを必須成分として含有し、該(A)成分と(B)成分の質量比が0.1<(A)/(B)<10の範囲内であるコーティング剤組成物が、親油性、耐摩耗性に優れた硬化被膜を形成し得、上記従来技術の課題を解決し得ることを見出し、本発明をなすに至った。
(A)式(-C(=O)OR1)で表される基、式(-O-C(=O)R1)で表される基、式(-C(=O)NR1 2)で表される基、式(-C(=O)SR1)で表される基、及び式(-P(=O)(OR12)で表される基(前記式中、R1は独立に水素原子、炭素数1~30のアルキル基、炭素数6~30のアリール基又は炭素数7~30のアラルキル基である。)から選ばれる親油性基とシラノール基もしくは加水分解性シリル基とを含有する親油性基含有(加水分解性)オルガノシロキサン化合物及び/又はその部分(加水分解)縮合物、
(B)2~6価のアルコールと炭素数3~22の脂肪酸との縮合物からなるポリオールエステル。
【0011】
従って、本発明は、下記のコーティング剤組成物、該組成物を含む表面処理剤、及び該表面処理剤で表面処理された物品を提供する。
1.
(A)式(-C(=O)OR1)で表される基、式(-O-C(=O)R1)で表される基、式(-C(=O)NR1 2)で表される基、式(-C(=O)SR1)で表される基、及び式(-P(=O)(OR12)で表される基(前記式中、R1は独立に水素原子、炭素数1~30のアルキル基、炭素数6~30のアリール基又は炭素数7~30のアラルキル基である。)から選ばれる親油性基とシラノール基もしくは加水分解性シリル基とを含有する親油性基含有(加水分解性)オルガノシロキサン化合物及び/又はその部分(加水分解)縮合物と、
(B)2~6価のアルコールと炭素数3~22の脂肪酸との縮合物からなるポリオールエステル
を必須成分として含有し、(A)成分と(B)成分の質量比が0.1<(A)/(B)<10の範囲内であるコーティング剤組成物。
2.
(A)成分が、下記一般式(1)
【化1】
[式中、Aは-C(=O)OR1、-O-C(=O)R1、-C(=O)NR1 2、-C(=O)SR1又は-P(=O)(OR12(R1は独立に水素原子、炭素数1~30のアルキル基、炭素数6~30のアリール基又は炭素数7~30のアラルキル基である。)であり、Yは独立に2価の有機基であり、Wは独立に炭素数1~4のアルキル基、フェニル基、水酸基又は加水分解性基であり、Rは独立に炭素数1~4のアルキル基又はフェニル基であり、Xは独立に水酸基又は加水分解性基であり、nは1~3の整数であり、qは1~3の整数である。]
で表される親油性基含有(加水分解性)オルガノシロキサン化合物及び/又はその部分(加水分解)縮合物である1に記載のコーティング剤組成物。
3.
(A)成分の一般式(1)で表される親油性基含有(加水分解性)オルガノシロキサン化合物において、Yが独立に、-O-、-S-、-NR-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NR-、-OC(=O)NR-(Rは炭素数1~4のアルキル基又はフェニル基である)、シルアルキレン基、シルアリーレン基、及びケイ素原子数2~10個の直鎖状、分岐状又は環状の2価のオルガノ(ポリ)シロキサン残基から選ばれる2価の基を含んでいてもよく、また炭素数6~20のアリーレン基を含んでいてもよい炭素数2~30のアルキレン基である2に記載のコーティング剤組成物。
4.
(A)成分の一般式(1)で表される親油性基含有(加水分解性)オルガノシロキサン化合物において、Wが独立に、炭素数1~4のアルキル基、フェニル基、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数2~10のアルコキシ置換アルコキシ基、炭素数1~10のアシロキシ基、炭素数2~10のアルケニルオキシ基、ハロゲン原子、オキシム基、イソシアネート基、及びシアネート基からなる群より選ばれるものである2又は3に記載のコーティング剤組成物。
5.
(A)成分が、下記一般式(2)で表される親油性基含有(加水分解性)オルガノシロキサン化合物及び/又はその部分(加水分解)縮合物である1~4のいずれかに記載のコーティング剤組成物。
【化2】
(式中、R2は炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~20のアリール基又は炭素数7~20のアラルキル基であり、Qは単結合、又はシルアルキレン基、シルアリーレン基、及びケイ素原子数2~10個の直鎖状、分岐状もしくは環状の2価のオルガノ(ポリ)シロキサン残基から選ばれる2価の基であり、mは独立に1~20の整数であり、Xは独立に水酸基又は加水分解性基である。)
6.
(B)成分が、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールから選ばれる多価アルコールと炭素数3~22の脂肪酸との縮合物からなるポリオールエステルである1~5のいずれかに記載のコーティング剤組成物。
7.
1~6のいずれかに記載のコーティング剤組成物を含有する表面処理剤。
8.
更に、溶剤を含むものである7に記載の表面処理剤。
9.
更に、加水分解縮合触媒を含むものである7又は8に記載の表面処理剤。
10.
25℃、相対湿度40%におけるオレイン酸接触角が30°以下の硬化被膜を与えるものである7~9のいずれかに記載の表面処理剤。
11.
7~10のいずれかに記載の表面処理剤の硬化被膜を表面に有する物品。
【発明の効果】
【0012】
本発明のコーティング剤組成物は、親油性基と水酸基含有シリル基(シラノール基)もしくは加水分解性シリル基とを含有する特定のオルガノシロキサン化合物及び/又はその部分(加水分解)縮合物と、特定のポリオールエステルとを特定割合で含有してなるものであり、基材表面上に該組成物を含有する表面処理剤にてコーティングされた硬化被膜は、指紋が付着した際に指紋が含有する皮脂を基材上に濡れ広げることができる。また、該コーティング剤組成物は、潤滑性に優れたポリオールエステルを含有することで、摩擦が低減され、耐摩耗性に優れた硬化被膜を与えることができる。これにより該コーティング剤組成物を含有する表面処理剤にて表面処理された硬化被膜を有する物品は、親油性、耐摩耗性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のコーティング剤組成物は、親油性基とシラノール基もしくは加水分解性シリル基とを含有する特定の親油性基含有(加水分解性)オルガノシロキサン化合物及び/又はその部分(加水分解)縮合物(以下、(A)成分という。)と、特定のポリオールエステル(以下、(B)成分という。)を必須成分として含有し、(A)成分と(B)成分の質量比が0.1<(A)/(B)<10の範囲内であることを特徴とするものである。
【0014】
本発明者は、基材との密着性を発現する(A)成分の親油性基含有(加水分解性)オルガノシロキサン化合物及び/又はその部分(加水分解)縮合物と、表面の潤滑性を発現する(B)成分のポリオールエステルとを特定割合で配合した場合、該コーティング剤組成物が、親油性、耐摩耗性に優れた硬化被膜を形成できることを見出した。
【0015】
本発明のコーティング剤組成物における第一の必須成分である(A)成分は、式(-C(=O)OR1)で表される基、式(-O-C(=O)R1)で表される基、式(-C(=O)NR1 2)で表される基、式(-C(=O)SR1)で表される基、及び式(-P(=O)(OR12)で表される基から選ばれる親油性基とシラノール基もしくは加水分解性シリル基とを含有する親油性基含有(加水分解性)オルガノシロキサン化合物であり、その部分(加水分解)縮合物でもよく、それらの1種又は2種以上の混合物でもよい。
【0016】
ここで、R1は独立に水素原子、炭素数1~30のアルキル基、炭素数6~30のアリール基又は炭素数7~30のアラルキル基であり、アルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、またこれらの組み合わせでもよい。好ましくは炭素数1~8の直鎖状のアルキル基であり、より好ましくは炭素数2~4の直鎖状のアルキル基である。
1として、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、テキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、デカヒドロナフチル基、アダマンチル基、アダマンチルメチル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基などが挙げられる。R1として、好ましくはメチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基である。
【0017】
(A)成分の親油性基含有(加水分解性)オルガノシロキサン化合物は、下記一般式(1)で表されるものが望ましい。
【化3】
[式中、Aは-C(=O)OR1、-O-C(=O)R1、-C(=O)NR1 2、-C(=O)SR1又は-P(=O)(OR12(R1は独立に水素原子、炭素数1~30のアルキル基、炭素数6~30のアリール基又は炭素数7~30のアラルキル基である。)であり、Yは独立に2価の有機基であり、Wは独立に炭素数1~4のアルキル基、フェニル基、水酸基又は加水分解性基であり、Rは独立に炭素数1~4のアルキル基又はフェニル基であり、Xは独立に水酸基又は加水分解性基であり、nは1~3の整数であり、qは1~3の整数である。]
【0018】
上記式(1)において、Aは-C(=O)OR1、-O-C(=O)R1で示されるエステル、カルボン酸又はアルデヒド、-C(=O)NR1 2で示される非置換又は置換アミド、-C(=O)SR1で示されるチオエステル又はチオ酸、及び-P(=O)(OR12で示されるホスホン酸エステル又はホスホン酸のいずれかであり、本発明における親油性末端基である。
なお、R1は上述したR1と同じであり、同様のものが例示でき、好ましくはメチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基である。
【0019】
Aとしては、例えば、下記に示すものを例示することができる。
【化4】
【化5】
【0020】
上記式(1)において、Wは互いに異なっていてよい炭素数1~4のアルキル基、フェニル基、水酸基又は加水分解性基である。このようなWとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、フェニル基、水酸基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基などの炭素数1~10のアルコキシ基、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基などの炭素数2~10のアルコキシ置換アルコキシ基、アセトキシ基などの炭素数1~10のアシロキシ基、イソプロペノキシ基などの炭素数2~10のアルケニルオキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、オキシム基、イソシアネート基、シアネート基などが挙げられる。中でもメチル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロペノキシ基、塩素原子が好適である。
【0021】
上記式(1)において、Xは互いに異なっていてよい水酸基又は加水分解性基である。このようなXとしては、水酸基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基などの炭素数1~10のアルコキシ基、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基などの炭素数2~10のアルコキシ置換アルコキシ基、アセトキシ基などの炭素数1~10のアシロキシ基、イソプロペノキシ基などの炭素数2~10のアルケニルオキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、オキシム基、イソシアネート基、シアネート基などが挙げられる。中でもメトキシ基、エトキシ基、イソプロペノキシ基、塩素原子が好適である。
【0022】
上記式(1)において、Rは独立に、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基、又はフェニル基であり、中でもメチル基が好適である。
【0023】
上記式(1)において、Yは独立に2価の有機基で、-O-、-S-、-NR-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NR-、-OC(=O)NR-(Rは上記と同じ)、シルアルキレン基、シルアリーレン基、及びケイ素原子数2~10個の直鎖状、分岐状又は環状の2価のオルガノ(ポリ)シロキサン残基から選ばれる2価の基を含んでいてもよく、また炭素数6~20のアリーレン基を含んでいてもよい炭素数2~30、特に炭素数2~20のアルキレン基であることが好ましく、より好ましくは下記式(3)で表される2価の基である。
【化6】
【0024】
上記式(3)において、R3は独立に2価の炭化水素基であり、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基(トリメチレン基、メチルエチレン基)、ブチレン基(テトラメチレン基、メチルプロピレン基)、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基等の炭素数1~30のアルキレン基、フェニレン基等の炭素数6~20のアリーレン基を含む炭素数7~30のアルキレン基が挙げられ、好ましくは炭素数2~20のアルキレン基である。
【0025】
上記式(3)において、Zは単結合、又は-O-、-S-、-NR-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NR-、-OC(=O)NR-、シルアルキレン基、シルアリーレン基、及びケイ素原子数2~10個、好ましくは2~5個の直鎖状、分岐状もしくは環状の2価のオルガノ(ポリ)シロキサン残基から選ばれる2価の基であり、Rは上記と同じである。
【0026】
ここで、シルアルキレン基、シルアリーレン基としては、下記に示すものが例示できる。
【化7】
(式中、R4はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基、フェニル基等の炭素数6~10のアリール基であり、R4は同一でも異なっていてもよい。R5はメチレン基、エチレン基、プロピレン基(トリメチレン基、メチルエチレン基)、ブチレン基(テトラメチレン基、メチルプロピレン基)、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等の炭素数1~12のアルキレン基、フェニレン基等の炭素数6~12のアリーレン基である。)
【0027】
また、ケイ素原子数2~10個、好ましくは2~5個の直鎖状、分岐状又は環状の2価のオルガノ(ポリ)シロキサン残基としては、下記に示すものが例示できる。
【化8】
(式中、R4は上記と同じである。gは1~9、好ましくは1~4の整数であり、hは1~8、好ましくは1~3の整数である。)
【0028】
上記式(3)において、aは0又は1である。なお、aが1の場合、R3のアルキレン基の炭素数の合計は2~30であることが好ましい。また、aが0の場合、Zは単結合であることが好ましい。
【0029】
Yの具体例としては、例えば、下記の基が挙げられる。
【化9】
【0030】
【化10】
【0031】
【化11】
【0032】
【化12】
【化13】
【0033】
上記式(1)において、nは1~3の整数であり、qは1~3の整数であり、好ましくは、nは2又は3、qは2又は3であり、より好ましくは、nは3、qは3である。
【0034】
上記式(1)で表される親油性基含有(加水分解性)オルガノシロキサン化合物としては、下記式で表されるものが例示できる。
【化14】
【化15】
【0035】
【化16】
【化17】
【0036】
【化18】
【化19】
【0037】
【化20】
【化21】
【0038】
【化22】
【化23】
【0039】
上記式(1)で表される親油性基含有(加水分解性)オルガノシロキサン化合物として、更に好ましくは下記一般式(2)で表されるものである。
【化24】
(式中、R2は炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~20のアリール基又は炭素数7~20のアラルキル基であり、Qは単結合、又はシルアルキレン基、シルアリーレン基、及びケイ素原子数2~10個の直鎖状、分岐状もしくは環状の2価のオルガノ(ポリ)シロキサン残基から選ばれる2価の基であり、mは独立に1~20、好ましくは2~10の整数であり、Xは上記と同じである。)
【0040】
上記式(2)において、R2は炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~20のアリール基又は炭素数7~20のアラルキル基であり、好ましくは炭素数1~8の直鎖状のアルキル基である。
2として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、テキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、デカヒドロナフチル基、アダマンチル基、アダマンチルメチル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基などが挙げられる。R2として、好ましくはメチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基である。
【0041】
上記式(2)において、Qは単結合、又はシルアルキレン基、シルアリーレン基、及びケイ素原子数2~10個、好ましくは2~5個の直鎖状、分岐状もしくは環状の2価のオルガノ(ポリ)シロキサン残基から選ばれる2価の基である。
【0042】
ここで、シルアルキレン基、シルアリーレン基、ケイ素原子数2~10個、好ましくは2~5個の直鎖状、分岐状もしくは環状の2価のオルガノ(ポリ)シロキサン残基は、上述した式(3)のZ中のシルアルキレン基、シルアリーレン基、もしくはケイ素原子数2~10個、好ましくは2~5個の直鎖状、分岐状又は環状の2価のオルガノ(ポリ)シロキサン残基として例示したものと同様のものが例示できる。
【0043】
mは独立に1~20、好ましくは2~10の整数である。なお、Qが単結合である場合、Qの両隣に存在する2つのmの合計は2~20、特に2~10の整数であることが好ましい。
【0044】
上記式(2)で表される親油性基含有(加水分解性)オルガノシロキサン化合物としては、下記式で表されるものが例示できる。
【化25】
【化26】
【0045】
【化27】
【化28】
【0046】
【化29】
【0047】
上記式(1)で表される親油性基含有(加水分解性)オルガノシロキサン化合物、特にRがメチル基である親油性基含有加水分解性オルガノシロキサン化合物の調製方法としては、例えば、下記のような方法が挙げられる。
分子鎖末端に上記式(1)におけるAと複数のSiH基(ケイ素原子に結合した水素原子)とをそれぞれ有するシロキサン化合物(オルガノハイドロジェンシロキサン化合物)を40~120℃、好ましくは60~100℃、より好ましくは約80℃の温度で加熱撹拌し、ヒドロシリル化反応触媒、例えば塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液を添加する。続いて分子鎖末端に加水分解性シリル基とオレフィン部位(例えば、アルケニル基)をそれぞれ有するシラン化合物を滴下し、40~120℃、好ましくは60~100℃、より好ましくは約80℃の温度で、10分~12時間、好ましくは1~6時間、より好ましくは約3時間熟成させる。また、反応を行う際、有機溶剤で希釈してもよい。
【0048】
ここで、分子鎖末端に上記式(1)におけるAと複数のSiH基とをそれぞれ有するシロキサン化合物(オルガノハイドロジェンシロキサン化合物)としては、下記一般式(4)で表されるシロキサン化合物が例示できる。
【化30】
(式中、A、Y、W、qは上記と同じである。)
【0049】
式(4)で表されるシロキサン化合物として、具体的には、下記一般式(a)~(h)で表されるオルガノハイドロジェンシロキサン化合物が例示できる。
【化31】
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
【化38】
(式中、R2、W、m、qは上記と同じである。m’は2~20、好ましくは2~10の整数であり、Q’はシルアルキレン基、シルアリーレン基、及びケイ素原子数2~10個の直鎖状、分岐状もしくは環状の2価のオルガノ(ポリ)シロキサン残基から選ばれる2価の基である。)
【0050】
式(a)で表されるオルガノハイドロジェンシロキサン化合物として、具体的には、下記に示すものが例示できる。
【化39】
【化40】
【0051】
【化41】
【0052】
式(b)で表されるオルガノハイドロジェンシロキサン化合物として、具体的には、下記に示すものが例示できる。
【化42】
【0053】
【化43】
【0054】
【化44】
【0055】
式(c)で表されるオルガノハイドロジェンシロキサン化合物として、具体的には、下記に示すものが例示できる。
【化45】
【化46】
【0056】
式(d)で表されるオルガノハイドロジェンシロキサン化合物として、具体的には、下記に示すものが例示できる。
【化47】
【0057】
【化48】
【0058】
【化49】
【0059】
式(e)で表されるオルガノハイドロジェンシロキサン化合物として、具体的には、下記に示すものが例示できる。
【化50】
【化51】
【0060】
式(f)で表されるオルガノハイドロジェンシロキサン化合物として、具体的には、下記に示すものが例示できる。
【化52】
【0061】
【化53】
【0062】
【化54】
【0063】
式(g)で表されるオルガノハイドロジェンシロキサン化合物として、具体的には、下記に示すものが例示できる。
【化55】
【化56】
【0064】
式(h)で表されるオルガノハイドロジェンシロキサン化合物として、具体的には、下記に示すものが例示できる。
【化57】
【0065】
【化58】
【0066】
【化59】
【0067】
上記式(4)、特に式(a)~(h)で表されるオルガノハイドロジェンシロキサン化合物の調製方法としては、分子鎖末端に上記式(1)におけるAと加水分解性シリル基をそれぞれ有するシラン又はシロキサン化合物を-20~40℃、好ましくは-10~20℃、より好ましくは0~10℃の温度で撹拌し、テトラメチルジシロキサン(1,3-ジヒドロ-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン)等のテトラオルガノジシロキサン(1,3-ジヒドロ-1,1,3,3-テトラオルガノジシロキサン)及び共加水分解反応触媒、例えば塩酸又は硫酸を滴下し、-20~40℃、好ましくは-10~20℃、より好ましくは0~10℃の温度で、10分~12時間、好ましくは1~6時間熟成させる。また、反応を行う際、有機溶剤で希釈してもよい。
【0068】
ここで、分子鎖末端に上記式(1)におけるAと加水分解性シリル基をそれぞれ有するシラン又はシロキサン化合物としては、下記一般式(5)で表されるシラン又はシロキサン化合物が例示できる。
【化60】
(式中、A、Y、W、qは上記と同じである。)
【0069】
式(5)で表されるシラン又はシロキサン化合物として、具体的には、下記に示すものが挙げられる。
【化61】
【0070】
【化62】
【0071】
【化63】
【0072】
【化64】
【0073】
【化65】
【0074】
【化66】
【0075】
【化67】
【0076】
【化68】
【0077】
【化69】
【0078】
【化70】
【0079】
【化71】
【0080】
【化72】
【0081】
【化73】
【0082】
【化74】
【0083】
【化75】
【0084】
【化76】
【0085】
【化77】
【0086】
【化78】
【0087】
【化79】
【0088】
【化80】
【0089】
【化81】
【0090】
式(5)で表される分子鎖末端に上記式(1)におけるAと加水分解性シリル基をそれぞれ有するシラン又はシロキサン化合物、特に式(5)において、Yがシルアルキレン基、シルアリーレン基、及びケイ素原子数2~10個の直鎖状、分岐状又は環状の2価のオルガノ(ポリ)シロキサン残基から選ばれる2価の基を含むアルキレン基であるシラン又はシロキサン化合物の調製方法としては、分子鎖末端に2個のSiH基を有する化合物、例えば、1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼンを40~120℃、好ましくは60~100℃、より好ましくは約80℃の温度で加熱撹拌し、ヒドロシリル化反応触媒、例えば塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液を添加する。続いて分子鎖末端に上記式(1)におけるAとオレフィン部位(例えば、アルケニル基)をそれぞれ有する化合物を、ゆっくり時間をかけて滴下し、40~120℃、好ましくは60~100℃、より好ましくは約80℃の温度で、10分~12時間、好ましくは1~6時間熟成させることにより、分子鎖末端に上記式(1)におけるAと末端SiH基をそれぞれ有するシラン又はシロキサン化合物を得ることができる。また、反応を行う際、有機溶剤で希釈してもよい。
続いて、上記で得られた分子鎖末端に上記式(1)におけるAと末端SiH基をそれぞれ有するシラン又はシロキサン化合物を40~120℃、好ましくは60~100℃、より好ましくは約80℃の温度で加熱撹拌し、ヒドロシリル化反応触媒、例えば塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液を添加する。続いて分子鎖末端に加水分解性シリル基とオレフィン部位(例えば、アルケニル基)をそれぞれ有するシラン化合物を滴下し、40~120℃、好ましくは60~100℃、より好ましくは約80℃の温度で、10分~12時間、好ましくは1~6時間、より好ましくは3~6時間熟成させる。また、反応を行う際、有機溶剤で希釈してもよい。
【0091】
ここで、分子鎖末端に2個のSiH基を有する化合物として、具体的には、下記に示すものが挙げられる。
【化82】
【0092】
また、分子鎖末端に上記式(1)におけるAとオレフィン部位をそれぞれ有する化合物として、具体的には、下記に示すものが挙げられる。
【化83】
【0093】
【化84】
【0094】
分子鎖末端に上記式(1)におけるAとオレフィン部位をそれぞれ有する化合物の使用量は、分子鎖末端に2個のSiH基を有する化合物1当量に対して0.05~0.5当量、より好ましくは0.1~0.4当量、更に好ましくは0.2当量用いることができる。
【0095】
上記式(5)で表されるシラン又はシロキサン化合物の調製において、ヒドロシリル化反応触媒としては、白金黒、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール変性物、塩化白金酸とオレフィン、アルデヒド、ビニルシロキサン、アセチレンアルコール類等との錯体等、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等の白金族金属系触媒が挙げられる。好ましくはビニルシロキサン配位化合物等の白金系化合物である。
【0096】
分子鎖末端に2個のSiH基を有する化合物と、分子鎖末端に上記式(1)におけるAとオレフィン部位をそれぞれ有する化合物との反応に用いるヒドロシリル化反応触媒の使用量は、分子鎖末端に2個のSiH基を有する化合物と、分子鎖末端に上記式(1)におけるAとオレフィン部位をそれぞれ有する化合物との合計質量に対して、遷移金属換算(質量)で0.1~100ppm、より好ましくは0.2~50ppmとなる量で使用する。
【0097】
上記式(5)で表されるシラン又はシロキサン化合物の調製には、有機溶剤を用いてもよい。用いられる有機溶剤としては、エーテル系溶剤(ジブチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなど)、炭化水素系溶剤(石油ベンジン、トルエン、キシレンなど)を例示することができる。これらの中では特にトルエンが好ましい。
【0098】
分子鎖末端に2個のSiH基を有する化合物と、分子鎖末端に上記式(1)におけるAとオレフィン部位をそれぞれ有する化合物との反応に用いる有機溶剤の使用量は、分子鎖末端に上記式(1)におけるAとオレフィン部位をそれぞれ有する化合物100質量部に対して、10~300質量部、好ましくは50~150質量部、更に好ましくは約100質量部用いることができる。
【0099】
続いて、反応を停止し、有機溶剤を留去することで、分子鎖末端に上記式(1)におけるAと末端SiH基をそれぞれ有するシラン又はシロキサン化合物が得られる。
【0100】
上記式(5)で表されるシラン又はシロキサン化合物の調製において、分子鎖末端に加水分解性シリル基とオレフィン部位(例えば、アルケニル基)をそれぞれ有するシラン化合物として、具体的には、下記に示すものが例示できる。
【化85】
【0101】
分子鎖末端に加水分解性シリル基とオレフィン部位をそれぞれ有するシラン化合物の使用量は、上記で得られた分子鎖末端に上記式(1)におけるAと末端SiH基をそれぞれ有するシラン又はシロキサン化合物1当量に対して1~5当量、より好ましくは1.1~2.5当量用いることができる。
【0102】
上記式(5)で表されるシラン又はシロキサン化合物の調製において、上記で得られた分子鎖末端に上記式(1)におけるAと末端SiH基をそれぞれ有するシラン又はシロキサン化合物と、分子鎖末端に加水分解性シリル基とオレフィン部位をそれぞれ有するシラン化合物との反応に用いるヒドロシリル化反応触媒としては上記と同様のものが例示でき、このヒドロシリル化反応触媒の使用量は、上記分子鎖末端に上記式(1)におけるAと末端SiH基をそれぞれ有するシラン又はシロキサン化合物と、分子鎖末端に加水分解性シリル基とオレフィン部位をそれぞれ有するシラン化合物との合計質量に対して、遷移金属換算(質量)で0.1~100ppm、より好ましくは0.2~50ppmとなる量で使用する。
【0103】
上記式(5)で表されるシラン又はシロキサン化合物の調製において、上記で得られた分子鎖末端に上記式(1)におけるAと末端SiH基をそれぞれ有するシラン又はシロキサン化合物と、分子鎖末端に加水分解性シリル基とオレフィン部位をそれぞれ有するシラン化合物との反応に有機溶剤を用いる場合、有機溶剤としては上記と同様のものが例示でき、この有機溶剤の使用量は、上記で得られた分子鎖末端に上記式(1)におけるAと末端SiH基をそれぞれ有するシラン又はシロキサン化合物100質量部に対して、10~300質量部、好ましくは50~150質量部、更に好ましくは約100質量部用いることができる。
【0104】
続いて、反応を停止し、有機溶剤及び未反応成分を留去することで、上記式(5)で表されるシラン又はシロキサン化合物、特に式(5)において、Yがシルアルキレン基、シルアリーレン基、及びケイ素原子数2~10個の直鎖状、分岐状又は環状の2価のオルガノ(ポリ)シロキサン残基から選ばれる2価の基を含むアルキレン基であるシラン又はシロキサン化合物を得ることができる。
【0105】
また、式(5)で表される分子鎖末端に上記式(1)におけるAと加水分解性シリル基をそれぞれ有するシラン又はシロキサン化合物、特に式(5)において、Yがアルキレン基であるシラン又はシロキサン化合物の調製方法としては、上述した分子鎖末端に上記式(1)におけるAとオレフィン部位(例えば、アルケニル基)をそれぞれ有する化合物を40~120℃、好ましくは60~100℃、より好ましくは約80℃の温度で加熱撹拌し、ヒドロシリル化反応触媒、例えば塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液を添加する。続いて分子鎖末端に加水分解性シリル基とSiH基をそれぞれ有するシラン化合物を、ゆっくり時間をかけて滴下し、40~120℃、好ましくは60~100℃、より好ましくは約80℃の温度で、10分~12時間、好ましくは1~6時間、より好ましくは1~3時間熟成させることにより、上記式(1)におけるAと加水分解性シリル基をそれぞれ有するシラン又はシロキサン化合物、特に式(5)において、Yがアルキレン基であるシラン又はシロキサン化合物を得ることができる。また、反応を行う際、有機溶剤で希釈してもよい。
【0106】
ここで、分子鎖末端に加水分解性シリル基とSiH基をそれぞれ有するシラン化合物として、具体的には、下記に示すものが挙げられる。
【化86】
【0107】
分子鎖末端に上記式(1)におけるAとオレフィン部位(例えば、アルケニル基)をそれぞれ有する化合物の使用量は、分子鎖末端に加水分解性シリル基とSiH基をそれぞれ有するシラン化合物1当量に対して0.2~1当量、より好ましくは0.4~1当量用いることができる。
【0108】
上記式(5)において、Yがアルキレン基であるシラン又はシロキサン化合物の調製において、ヒドロシリル化反応触媒としては上記と同様のものが例示でき、このヒドロシリル化反応触媒の使用量は、分子鎖末端に上記式(1)におけるAとオレフィン部位をそれぞれ有する化合物と、分子鎖末端に加水分解性シリル基とSiH基をそれぞれ有するシラン化合物との合計質量に対して、遷移金属換算(質量)で0.1~100ppm、より好ましくは0.2~50ppmとなる量で使用する。
【0109】
上記式(5)において、Yがアルキレン基であるシラン又はシロキサン化合物の調製において、有機溶剤を用いる場合、有機溶剤としては上記と同様のものが例示でき、この有機溶剤の使用量は、分子鎖末端に上記式(1)におけるAとオレフィン部位をそれぞれ有する化合物100質量部に対して、10~300質量部、好ましくは50~150質量部、更に好ましくは約100質量部用いることができる。
【0110】
上記式(4)、特に式(a)~(h)で表されるオルガノハイドロジェンシロキサン化合物の調製において、式(5)で表される分子鎖末端に上記式(1)におけるAと加水分解性シリル基をそれぞれ有するシラン又はシロキサン化合物の使用量は、テトラオルガノジシロキサン1当量に対して0.2~0.6当量、より好ましくは0.3~0.5当量、更に好ましくは0.4~0.5当量用いることができる。
【0111】
上記式(4)、特に式(a)~(h)で表されるオルガノハイドロジェンシロキサン化合物の調製において、共加水分解反応触媒としては、有機錫化合物(ジブチル錫ジメトキシド、ジラウリン酸ジブチル錫など)、有機チタン化合物(テトラn-ブチルチタネートなど)、有機酸(酢酸、メタンスルホン酸など)、無機酸(塩酸、硫酸、リン酸など)が挙げられる。これらの中では、塩酸、硫酸が好ましい。
共加水分解反応触媒の使用量は、分子鎖末端に上記式(1)におけるAと加水分解性シリル基をそれぞれ有するシラン又はシロキサン化合物1当量に対して、1~5当量、より好ましくは2~4当量、更に好ましくは2~3当量用いることができる。
【0112】
上記式(4)、特に式(a)~(h)で表されるオルガノハイドロジェンシロキサン化合物の調製には有機溶剤を用いてもよい。用いられる有機溶剤としては、エーテル系溶剤(ジブチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなど)、炭化水素系溶剤(石油ベンジン、トルエン、キシレンなど)、フッ素系溶剤(パーフルオロヘキサン、1,4-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンなど)を例示することができる。これらの中では特にトルエン、1,4-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンが好ましい。
有機溶剤の使用量は、分子鎖末端に上記式(1)におけるAと加水分解性シリル基をそれぞれ有するシラン又はシロキサン化合物100質量部に対して、10~300質量部、好ましくは50~150質量部用いることができる。
【0113】
続いて、反応を停止し、有機溶剤を留去することで、上記式(4)、特に式(a)~(h)で表されるオルガノハイドロジェンシロキサン化合物が得られる。
【0114】
式(1)で表される親油性基含有(加水分解性)オルガノシロキサン化合物の調製において、分子鎖末端に加水分解性シリル基とオレフィン部位(例えば、アルケニル基)をそれぞれ有するシラン化合物として、具体的には、下記に示すものが例示できる。
【化87】
【0115】
分子鎖末端に加水分解性シリル基とオレフィン部位をそれぞれ有するシラン化合物の使用量は、上記分子鎖末端に上記式(1)におけるAと複数のSiH基とをそれぞれ有するオルガノハイドロジェンシロキサン化合物1当量に対して3~5当量、より好ましくは3.5~4.5当量、更に好ましくは4.0~4.3当量用いることができる。
【0116】
上記式(1)で表される親油性基含有(加水分解性)オルガノシロキサン化合物の調製において、ヒドロシリル化反応触媒としては、白金黒、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール変性物、塩化白金酸とオレフィン、アルデヒド、ビニルシロキサン、アセチレンアルコール類等との錯体等、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等の白金族金属系触媒が挙げられる。好ましくはビニルシロキサン配位化合物等の白金系化合物である。
ヒドロシリル化反応触媒の使用量は、上記分子鎖末端に上記式(1)におけるAと複数のSiH基とをそれぞれ有するオルガノハイドロジェンシロキサン化合物と分子鎖末端に加水分解性シリル基とオレフィン部位をそれぞれ有するシラン化合物の合計質量に対して、遷移金属換算(質量)で0.1~100ppm、より好ましくは0.2~50ppmとなる量で使用する。
【0117】
上記式(1)で表される親油性基含有(加水分解性)オルガノシロキサン化合物の調製には有機溶剤を用いてもよい。用いられる有機溶剤としては、エーテル系溶剤(ジブチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなど)、炭化水素系溶剤(石油ベンジン、トルエン、キシレンなど)を例示することができる。これらの中では特にトルエンが好ましい。
有機溶剤の使用量は、分子鎖末端に上記式(1)におけるAと複数のSiH基とをそれぞれ有するオルガノハイドロジェンシロキサン化合物100質量部に対して、10~300質量部、好ましくは50~150質量部、更に好ましくは約100質量部用いることができる。
【0118】
続いて、反応を停止し、有機溶剤及び未反応成分を留去することで、上記式(1)で表される親油性基含有(加水分解性)オルガノシロキサン化合物が得られる。
【0119】
例えば、分子鎖末端に上記式(1)におけるAと複数のSiH基とをそれぞれ有するオルガノハイドロジェンシロキサン化合物として、下記式で表される化合物
【化88】
を使用し、分子鎖末端に加水分解性シリル基とオレフィン部位をそれぞれ有するシラン化合物として、下記式で表される化合物
【化89】
を使用した場合には、下記式で表されるシロキサン化合物が得られる。
【化90】
【0120】
以上のような反応で得られる一般式(1)で表される親油性基含有(加水分解性)オルガノシロキサン化合物は、濃縮、カラム精製、蒸留、抽出等の精製単離操作を行い、また反応溶液をそのまま一般式(1)で表される親油性基含有(加水分解性)オルガノシロキサン化合物を含む混合物として、あるいは有機溶剤等で更に希釈して使用することもできる。
【0121】
(A)成分は、上記式(1)で表される親油性基含有(加水分解性)オルガノシロキサン化合物の水酸基、又は該シロキサン化合物の末端加水分解性基を予め公知の方法により部分的に加水分解した水酸基を縮合させて得られる部分(加水分解)縮合物を含んでいてもよい。
【0122】
本発明のコーティング剤組成物における第二の必須成分である(B)成分のポリオールエステルは、2~6価のアルコールと炭素数3~22の飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸との縮合物からなるものであり、1種又は2種以上の混合物でもよい。
【0123】
前記2~6価のアルコールの好ましい例として、具体的には、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の多価アルコールを挙げることができる。このような多価アルコールと炭素数3~22の脂肪酸との縮合物からなるポリオールエステルは、入手性と潤滑性の点で優れている。
【0124】
前記炭素数3~22、好ましくは炭素数6~18の飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸の好ましい例として、具体的には、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、2-エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸等を挙げることができる。このような炭素数3~22の飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸と多価アルコールとの縮合物からなるポリオールエステルは、入手性と潤滑性の点で優れている。
【0125】
(B)成分の好ましい例として、具体的には、ジ(2-エチルヘキサン酸)ネオペンチルグリコールエステル、ジ(オレイン酸)ネオペンチルグリコールエステル、ジ(ステアリン酸)ネオペンチルグリコールエステル、トリ(2-エチルヘキサン酸)トリメチロールエタンエステル、トリ(オレイン酸)トリメチロールエタンエステル、トリ(ステアリン酸)トリメチロールエタンエステル、トリ(2-エチルヘキサン酸)トリメチロールプロパンエステル、トリ(オレイン酸)トリメチロールプロパンエステル、トリ(ステアリン酸)トリメチロールプロパンエステル、トリ(2-エチルヘキサン酸)グリセロールエステル、トリ(オレイン酸)グリセロールエステル、トリ(ステアリン酸)グリセロールエステル、テトラ(2-エチルヘキサン酸)ペンタエリスリトールエステル、テトラ(オレイン酸)ペンタエリスリトールエステル、テトラ(ステアリン酸)ペンタエリスリトールエステル、ヘキサ(2-エチルヘキサン酸)ジペンタエリスリトールエステル、ヘキサ(オレイン酸)ジペンタエリスリトールエステル、ヘキサ(ステアリン酸)ジペンタエリスリトールエステル等を挙げることができる。
【0126】
(B)成分は単一でもあるいは上記定義に当てはまる複数の化合物の混合物でもよく、混合物の場合は(B)成分に該当する化合物の含有量の合計を(B)成分の含有量として計算すればよい。(B)成分に該当する化合物は、必要に応じて公知の方法で合成可能であるが、試薬メーカー等から各種のものが市販されており、これをそのまま使用することもできる。
【0127】
本発明のコーティング剤組成物は、上記(A)成分と、上記(B)成分を所定の割合、即ち(A)成分と(B)成分の質量比が0.1<(A)/(B)<10、好ましくは0.5<(A)/(B)<10、より好ましくは1≦(A)/(B)≦9の範囲内で含有するものである。基材への密着性を担保する(A)成分が少なすぎると耐摩耗性が低下してしまい、潤滑性を担保する(B)成分が少なすぎると十分な耐摩耗性向上効果が得られない。
【0128】
本発明は、更に上記コーティング剤組成物を含有する表面処理剤を提供する。
該表面処理剤は、適当な溶剤を含んでもよい。このような溶剤としては、アルコール系溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテル、ブタノール、イソプロパノールなど)、エーテル系溶剤(ジブチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなど)、炭化水素系溶剤(石油ベンジン、トルエン、キシレンなど)、ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)を例示することができる。これらの中では、溶解性、濡れ性などの点で、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤が望ましく、特には、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジブチルエーテルが好ましい。
【0129】
上記溶剤は、その2種以上を混合してもよく、上記(A)成分と(B)成分とを均一に溶解させることが好ましい。なお、溶剤に溶解させる(A)成分及び(B)成分の合計質量の最適濃度は、処理方法により異なり、秤量しやすい量であればよいが、直接塗工する場合は、溶剤及び(A)、(B)成分の混合物(表面処理剤)の合計100質量部中0.01~10質量部(0.01~10質量%)、特に0.05~5質量部(0.05~5質量%)であることが好ましく、蒸着処理をする場合は、溶剤及び(A)、(B)成分の混合物(表面処理剤)の合計100質量部中1~100質量部(1~100質量%)、特に3~30質量部(3~30質量%)であることが好ましく、ウェット処理する場合は、溶剤及び(A)、(B)成分の混合物(表面処理剤)の合計100質量部中0.01~10質量部(0.01~10質量%)、特に0.05~1質量部(0.05~1質量%)であることが好ましい。
【0130】
表面処理剤には、加水分解縮合触媒、例えば、有機錫化合物(ジブチル錫ジメトキシド、ジラウリン酸ジブチル錫など)、有機チタン化合物(テトラn-ブチルチタネートなど)、有機酸(酢酸、メタンスルホン酸など)、無機酸(塩酸、硫酸、リン酸など)を添加してもよい。これらの中では、特に酢酸、テトラn-ブチルチタネート、ジラウリン酸ジブチル錫などが望ましい。
加水分解縮合触媒を添加する場合の添加量は、(A)、(B)成分の混合物(表面処理剤)100質量部に対して0.1~150質量部であることが好ましく、特に25~125質量部であることが好ましく、更に50~110質量部であることが好ましい。
【0131】
本発明の表面処理剤は、刷毛塗り、ディッピング、スプレー、蒸着処理など公知の方法で基材に施与することができる。蒸着処理時の加熱方法は、抵抗加熱方式でも、電子ビーム加熱方式のどちらでもよく、特に限定されるものではない。また、硬化温度は、硬化方法によって異なるが、例えば、直接塗工(刷毛塗り、ディッピング、スプレー等)の場合は、25~200℃、特に25~150℃にて15分~36時間、特に30分~24時間とすることが好ましい。加湿下で硬化させてもよい。また、蒸着処理で施与する場合は、20~200℃の範囲が望ましい。加湿下で硬化させてもよい。硬化被膜の膜厚は、基材の種類により適宜選定されるが、通常0.1~100nm、特に1~20nmである。また、例えばスプレー塗工では予め水分を添加した有機溶剤に希釈し、加水分解、つまりSi-OHを生成させた後にスプレー塗工すると塗工後の硬化が速い。
【0132】
本発明の表面処理剤は、接触角計Drop Master(協和界面科学社製)を用いて測定した、25℃、相対湿度40%におけるオレイン酸に対する接触角が、好ましくは30°以下、より好ましくは25°以下である硬化被膜を形成することができる。従って、皮脂が付着した場合、接触角が小さく、視認性が低くなり、指紋が目立たない。
【0133】
本発明の表面処理剤は、スチールウールにより摩耗した場合も基材に目視で確認できる傷がつかない耐摩耗性に優れた硬化被膜を形成できる。
【0134】
本発明の表面処理剤で処理される基材は特に制限されず、紙、布、金属及びその酸化物、ガラス、プラスチック、セラミック、石英など各種材質のものであってよい。本発明の表面処理剤は、前記基材に撥水撥油性を付与することができる。特に、SiO2処理されたガラスやフイルムの表面処理剤として好適に使用することができる。
【0135】
本発明の表面処理剤で処理される物品としては、カーナビゲーション、携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、PDA、ポータブルオーディオプレーヤー、カーオーディオ、ゲーム機器、眼鏡レンズ、カメラレンズ、レンズフィルター、サングラス、胃カメラ等の医療用器機、複写機、PC、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、タッチパネルディスプレイ、保護フイルム、反射防止フイルムなどの光学物品が挙げられる。本発明の表面処理剤により形成される硬化被膜は、前記物品に指紋及び皮脂が付着しても視認しづらく、特にタッチパネルディスプレイ、反射防止フイルムなどの親油層として有用である。
【実施例
【0136】
以下、合成例、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記実施例によって限定されるものではない。
【0137】
[合成例1]
反応容器に入れたウンデセン酸エチル10.0g(4.71×10-2mol)を80℃まで加熱した。続いて、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液1.0×10-2g(Pt単体として0.3×10-7molを含有)を添加した後、トリメトキシシラン8.6g(7.06×10-2mol)を3時間かけて滴下し、80℃にて1時間加熱撹拌した。その後、溶剤及び未反応物を減圧留去することで、下記式(A)
【化91】
で示される化合物を12.1g得た。
【0138】
1H-NMR
δ0.8(-(CH27 2 -Si(OCH33)2H
δ1.2-1.4(-(C 2 7-,-OCH2 3 )17H
δ1.6(-OOC-CH2 2 (CH27CH2-Si-)2H
δ2.3(-OOC-C 2 -)2H
δ3.5(-Si(OC 3 3)9H
δ4.1(-OC 2 CH3)2H
【0139】
反応容器に入れたテトラメチルジシロキサン4.5g(3.4×10-2mol)、12規定塩酸水溶液3.6g、1,4-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン2.5gの混合物を0℃まで冷却した。続いて、上記で得られた下記式(A)
【化92】
で表される化合物5.0g(1.5×10-2mol)を滴下し、0℃で6時間熟成した。その後、分液操作により下層を回収し、溶剤及び未反応物を減圧留去することで、下記式(B)
【化93】
で示される生成物を5.8g得た。
【0140】
1H-NMR
δ0.1-0.2(-Si-C 3 )18H
δ0.5(-(CH27 2 -Si(O-Si(CH32-)3)2H
δ1.2-1.5(-(C 2 7-,-OCH2 3 )17H
δ1.6(-OOC-CH2 2 (CH27CH2-Si-)2H
δ2.3(-OOC-C 2 -)2H
δ4.1(-OC 2 CH3)2H
δ4.7(-Si-H)3H
【0141】
反応容器に入れた、上記で得られた下記式(B)
【化94】
で表される化合物5.0g(1.1×10-2mol)を80℃まで加熱した。続いて、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液5.0×10-3g(Pt単体として1.5×10-8molを含有)を添加した後、アリルトリメトキシシラン7.3g(4.5×10-2mol)を滴下し、80℃にて3時間加熱撹拌した。その後、溶剤及び未反応物を減圧留去することで、下記式(C)
【化95】
で示される生成物(親油性基含有加水分解性オルガノシロキサン化合物1)を8.8g得た。
【0142】
1H-NMR
δ0.1-0.2(-Si-C 3 )18H
δ0.5(-(CH27 2 -Si(O-Si(CH32-)3)2H
δ0.6-0.8(-SiCH2CH2 2 -Si(OCH33,-SiC 2 CH2CH2-Si(OCH33)12H
δ1.2-1.4(-(C 2 7-,-OCH2 3 )17H
δ1.5(-SiCH2 2 CH2-Si(OCH33)6H
δ1.6(-OOC-CH2 2 (CH27CH2-Si-)2H
δ2.3(-OOC-C 2 -)2H
δ3.5(-SiCH2CH2CH2-Si(OC 3 3)27H
δ4.1(-OC 2 CH3)2H
【0143】
[合成例2]
反応容器に入れた1,8-ビス(ジメチルシリル)オクタン10.0g(4.34×10-2mol)を80℃まで加熱した。続いて、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液1.0×10-2g(Pt単体として0.3×10-7molを含有)を添加した後、ウンデセン酸エチル1.9g(8.95×10-3mol)を3時間かけて滴下し、80℃にて1時間加熱撹拌した。その後、溶剤及び未反応物を減圧留去することで、下記式(D)
【化96】
で示される生成物を4.1g得た。
【0144】
1H-NMR
δ0.2-0.4(-Si-C 3 )12H
δ0.7(-C 2 -Si-)6H
δ1.2-1.5(-(C 2 7-,-(C 2 6-,-OCH2 3 )29H
δ1.6(-OOC-CH2 2 (CH27CH2-Si-)2H
δ2.3(-OOC-C 2 -)2H
δ4.1(-OC 2 CH3)2H
δ4.4(-Si-H)1H
【0145】
反応容器に入れた、上記で得られた下記式(D)
【化97】
で表される化合物4.0g(9.03×10-3mol)を80℃まで加熱した。続いて、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液1.0×10-2g(Pt単体として0.3×10-7molを含有)を添加した後、7-オクテニルトリメトキシシラン2.9g(1.26×10-2mol)を滴下し、80℃にて3時間加熱撹拌した。その後、溶剤及び未反応物を減圧留去することで、下記式(E)
【化98】
で示される化合物を5.0g得た。
【0146】
1H-NMR
δ0.2(-Si-C 3 )12H
δ0.6(-C 2 -Si-)10H
δ0.7(-C 2 -Si(OCH33)2H
δ1.2-1.4(-(C 2 7-,-(C 2 6-,-OCH2 3 )41H
δ1.6(-OOC-CH2 2 (CH27CH2-Si-)2H
δ2.3(-OOC-C 2 -)2H
δ3.5(-SiCH2(CH26CH2-Si(OC 3 3)9H
δ4.1(-OC 2 CH3)2H
【0147】
反応容器に入れたテトラメチルジシロキサン1.8g(1.36×10-2mol)、12規定塩酸水溶液1.5g、1,4-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン5.0gの混合物を0℃まで冷却した。続いて、上記で得られた下記式(E)
【化99】
で表される化合物4.0g(5.92×10-3mol)を滴下し、0℃で6時間熟成した。その後、分液操作により下層を回収し、溶剤及び未反応物を減圧留去することで、下記式(F)
【化100】
で示される生成物を3.3g得た。
【0148】
1H-NMR
δ0.1-0.2(-Si-C 3 )30H
δ0.5(-(CH27 2 -Si(O-Si(CH32-)3)2H
δ0.7-0.8(-Si-C 2 -)8H
δ1.2-1.5(-(C 2 7-,-OCH2 3,-Si-CH2(C 2 6CH2-Si-)41H
δ1.6(-OOC-CH2 2 (CH27CH2-Si-)2H
δ2.3(-OOC-C 2 -)2H
δ4.1(-OC 2 CH3)2H
δ4.7(-Si-H)3H
【0149】
反応容器に入れた、上記で得られた下記式(F)
【化101】
で表される化合物2.0g(2.48×10-3mol)を80℃まで加熱した。続いて、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液5.0×10-3g(Pt単体として1.5×10-8molを含有)を添加した後、7-オクテニルトリメトキシシラン2.4g(1.04×10-2mol)を滴下し、80℃にて3時間加熱撹拌した。その後、溶剤及び未反応物を減圧留去することで、下記式(G)
【化102】
で示される生成物(親油性基含有加水分解性オルガノシロキサン化合物2)を3.8g得た。
【0150】
1H-NMR
δ0.1-0.2(-Si-C 3 )30H
δ0.5(-(CH27 2 -Si(O-Si(CH32-)3)2H
δ0.6-0.8(-Si-C 2 -,-C 2 -Si(OCH33)20H
δ1.2-1.4(-(C 2 6-,-(C 2 7-,-OCH2 3 )77H
δ1.5(-SiCH2(C 2 6CH2-Si(OCH33)36H
δ1.6(-OOC-CH2 2 (CH27CH2-Si-)2H
δ2.3(-OOC-C 2 -)2H
δ3.5(-SiCH2CH2CH2-Si(OC 3 3)27H
δ4.1(-OC 2 CH3)2H
【0151】
[合成例3]
反応容器に入れたテトラメチルジシロキサン31.6g(2.35×10-1mol)を80℃まで加熱した。続いて、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液1.0×10-2g(Pt単体として0.3×10-7molを含有)を添加した後、ウンデセン酸エチル10.0g(4.71×10-2mol)を3時間かけて滴下し、80℃にて1時間加熱撹拌した。その後、溶剤及び未反応物を減圧留去することで、下記式(H)
【化103】
で示される生成物を16.4g得た。
【0152】
1H-NMR
δ0.2-0.4(-Si-C 3 )12H
δ0.7(-(CH27 2 -Si-)2H
δ1.2-1.5(-(C 2 7-,-OCH2 3 )17H
δ1.6(-OOC-CH2 2 (CH27CH2-Si-)2H
δ2.3(-OOC-C 2 -)2H
δ4.1(-OC 2 CH3)2H
δ4.4(-Si-H)1H
【0153】
反応容器に入れた、上記で得られた下記式(H)
【化104】
で表される化合物10.0g(2.88×10-2mol)を80℃まで加熱した。続いて、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液1.0×10-2g(Pt単体として0.3×10-7molを含有)を添加した後、7-オクテニルトリメトキシシラン9.4g(4.04×10-2mol)を滴下し、80℃にて3時間加熱撹拌した。その後、溶剤及び未反応物を減圧留去することで、下記式(I)
【化105】
で示される化合物を15.1g得た。
【0154】
1H-NMR
δ0.2-0.3(-Si-C 3 )12H
δ0.7(-(CH27 2 -Si-,-SiC 2 (CH26CH2-Si(OCH33)4H
δ0.8(-SiCH2(CH26 2 -Si(OCH33)2H
δ1.2-1.4(-(C 2 7-,-SiCH2(C 2 6CH2-Si(OCH33,-OCH2 3 )29H
δ1.6(-OOC-CH2 2 (CH27CH2-Si-)2H
δ2.3(-OOC-C 2 -)2H
δ3.5(-SiCH2(CH26CH2-Si(OC 3 3)9H
δ4.1(-OC 2 CH3)2H
【0155】
反応容器に入れたテトラメチルジシロキサン5.1g(3.8×10-2mol)、12規定塩酸水溶液4.1g、1,4-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン5.0gの混合物を0℃まで冷却した。続いて、上記で得られた下記式(I)
【化106】
で表される化合物10.0g(1.7×10-2mol)を滴下し、0℃で6時間熟成した。その後、分液操作により下層を回収し、溶剤及び未反応物を減圧留去することで、下記式(J)
【化107】
で示される生成物を8.6g得た。
【0156】
1H-NMR
δ0.1-0.2(-Si-C 3 )30H
δ0.5-0.6(-O-Si(CH32-C 2 -)6H
δ1.2-1.5(-(C 2 7-,-OCH2 3,-Si-CH2(C 2 6CH2-Si-)29H
δ1.6(-OOC-CH2 2 (CH27CH2-Si-)2H
δ2.3(-OOC-C 2 -)2H
δ4.1(-OC 2 CH3)2H
δ4.7(-Si-H)3H
【0157】
反応容器に入れた、上記で得られた下記式(J)
【化108】
で表される化合物5.0g(7.0×10-3mol)を80℃まで加熱した。続いて、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液5.0×10-3g(Pt単体として1.5×10-8molを含有)を添加した後、7-オクテニルトリメトキシシラン6.5g(2.8×10-2mol)を滴下し、80℃にて3時間加熱撹拌した。その後、溶剤及び未反応物を減圧留去することで、下記式(K)
【化109】
で示される生成物(親油性基含有加水分解性オルガノシロキサン化合物3)を7.6g得た。
【0158】
1H-NMR
δ0.1-0.2(-Si-C 3 )30H
δ0.5-0.7(-O-Si(CH32-C 2 -,-SiCH2(C 2 6 2 -Si(OCH33,-SiC 2 (CH26CH2-Si(OCH33)18H
δ1.2-1.4(-(C 2 7-,-OCH2 3 )17H
δ1.5(-SiCH2(C 2 6CH2-Si(OCH33)36H
δ1.6(-OOC-CH2 2 (CH27CH2-Si-)2H
δ2.3(-OOC-C 2 -)2H
δ3.5(-SiCH2CH2CH2-Si(OC 3 3)27H
δ4.1(-OC 2 CH3)2H
【0159】
[合成例4]
反応容器に入れた1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼン45.7g(2.35×10-1mol)を80℃まで加熱した。続いて、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液1.0×10-2g(Pt単体として0.3×10-7molを含有)を添加した後、ウンデセン酸エチル10.0g(4.71×10-2mol)を3時間かけて滴下し、80℃にて1時間加熱撹拌した。その後、溶剤及び未反応物を減圧留去することで、下記式(L)
【化110】
で示される生成物を18.0g得た。
【0160】
1H-NMR
δ0.2-0.4(-Si-C 3 )12H
δ0.7(-(CH27 2 -Si-)2H
δ1.2-1.5(-(C 2 7-,-OCH2 3 )17H
δ1.6(-OOC-CH2 2 (CH27CH2-Si-)2H
δ2.3(-OOC-C 2 -)2H
δ4.1(-OC 2 CH3)2H
δ4.4(-Si-H)1H
δ7.5(-Si-C6 4 -Si-)4H
【0161】
反応容器に入れた、上記で得られた下記式(L)
【化111】
で表される化合物10.0g(2.46×10-2mol)を80℃まで加熱した。続いて、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液1.0×10-2g(Pt単体として0.3×10-7molを含有)を添加した後、7-オクテニルトリメトキシシラン9.10g(3.94×10-2mol)を滴下し、80℃にて4時間加熱撹拌した。その後、溶剤及び未反応物を減圧留去することで、下記式(M)
【化112】
で示される化合物を14.0g得た。
【0162】
1H-NMR
δ0.2(-Si-C 3 )12H
δ0.6(-SiC 2 (CH26CH2-Si(OCH33)2H
δ0.7(-(CH27 2 -Si-,-SiCH2(CH26 2 -Si(OCH33)4H
δ1.2-1.4(-(C 2 7-,-(C 2 6-,-OCH2 3 )29H
δ1.6(-OOC-CH2 2 (CH27CH2-Si-)2H
δ2.3(-OOC-C 2 -)2H
δ3.5(-SiCH2(CH26CH2-Si(OC 3 3)9H
δ4.1(-OC 2 CH3)2H
δ7.5(-Si-C6 4 -Si-)4H
【0163】
反応容器に入れたテトラメチルジシロキサン3.3g(2.5×10-2mol)、12規定塩酸水溶液2.6g、1,4-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン3.5gの混合物を0℃まで冷却した。続いて、上記で得られた下記式(M)
【化113】
で表される化合物7.0g(1.1×10-2mol)を滴下し、0℃で6時間熟成した。その後、分液操作により下層を回収し、溶剤及び未反応物を減圧留去することで、下記式(N)
【化114】
で示される生成物を5.6g得た。
【0164】
1H-NMR
δ0.1-0.2(-Si-C 3 )30H
δ0.5(-(CH27 2 -Si(O-Si(CH32-)3)2H
δ0.7-0.8(-C64-Si-C 2 -)4H
δ1.2-1.5(-(C 2 7-,-OCH2 3,-Si-CH2(C 2 6CH2-Si-)29H
δ1.6(-OOC-CH2 2 (CH27CH2-Si-)2H
δ2.3(-OOC-C 2 -)2H
δ4.1(-OC 2 CH3)2H
δ4.7(-Si-H)3H
δ7.5(-Si-C6 4 -Si-)4H
【0165】
反応容器に入れた、上記で得られた下記式(N)
【化115】
で表される化合物1.8g(2.3×10-3mol)を80℃まで加熱した。続いて、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液2.0×10-3g(Pt単体として6.0×10-9molを含有)を添加した後、7-オクテニルトリメトキシシラン2.3g(9.8×10-3mol)を滴下し、80℃にて3時間加熱撹拌した。その後、溶剤及び未反応物を減圧留去することで、下記式(O)
【化116】
で示される生成物(親油性基含有加水分解性オルガノシロキサン化合物4)を2.7g得た。
【0166】
1H-NMR
δ0.1-0.2(-Si-C 3 )30H
δ0.5(-(CH27 2 -Si(O-Si(CH32-)3)2H
δ0.6-0.8(-C64-Si-C 2 -,-SiCH2(C 2 6 2 -Si(OCH33,-SiC 2 (CH26CH2-Si(OCH33)16H
δ1.2-1.4(-(C 2 7-,-OCH2 3 )17H
δ1.5(-SiCH2(C 2 6CH2-Si(OCH33)36H
δ1.6(-OOC-CH2 2 (CH27CH2-Si-)2H
δ2.3(-OOC-C 2 -)2H
δ3.5(-SiCH2(CH26CH2-Si(OC 3 3)27H
δ4.1(-OC 2 CH3)2H
δ7.5(-Si-C6 4 -Si-)4H
【0167】
[合成例5]
反応容器に入れた1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼン40.6g(2.09×10-1mol)を80℃まで加熱した。続いて、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液1.0×10-2g(Pt単体として0.3×10-7molを含有)を添加した後、下記式(P)
【化117】
で示される化合物10.0g(4.18×10-2mol)を3時間かけて滴下し、80℃にて6時間加熱撹拌した。その後、溶剤及び未反応物を減圧留去することで、下記式(Q)
【化118】
で示される生成物を17.1g得た。
【0168】
1H-NMR
δ0.2-0.4(-Si-C 3 )12H
δ0.7(-(CH27 2 -Si-)2H
δ1.0-1.2(-N(CH2 3 2)6H
δ1.2-1.5(-(C 2 7-)14H
δ1.6(-NOC-CH2 2 (CH27CH2-Si-)2H
δ2.3(-NOC-C 2 -)2H
δ3.2-3.4(-N(C 2 CH32)4H
δ4.4(-Si-H)1H
δ7.5(-Si-C6 4 -Si-)4H
【0169】
反応容器に入れた、上記で得られた下記式(Q)
【化119】
で表される化合物10.0g(2.31×10-2mol)を80℃まで加熱した。続いて、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液1.0×10-2g(Pt単体として0.3×10-7molを含有)を添加した後、7-オクテニルトリメトキシシラン7.5g(3.23×10-2mol)を滴下し、80℃にて6時間加熱撹拌した。その後、溶剤及び未反応物を減圧留去することで、下記式(R)
【化120】
で示される化合物を12.6g得た。
【0170】
1H-NMR
δ0.2-0.3(-Si-C 3 )12H
δ0.7(-(CH27 2 -Si-,-SiC 2 (CH26CH2-Si(OCH33)4H
δ0.8(-SiCH2(CH26 2 -Si(OCH33)2H
δ1.0-1.2(-N(CH2 3 2)6H
δ1.2-1.4(-(C 2 7-)14H
δ1.5(-SiC 2 (CH26CH2-Si(OCH33)2H
δ1.6(-NOC-CH2 2 (CH27CH2-Si-)2H
δ2.3(-NOC-C 2 -)2H
δ3.2-3.4(-N(C 2 CH32)4H
δ3.5(-SiCH2(CH26CH2-Si(OC 3 3)9H
δ7.5(-Si-C6 4 -Si-)4H
【0171】
反応容器に入れたテトラメチルジシロキサン4.5g(3.4×10-2mol)、12規定塩酸水溶液3.6g、1,4-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン5.0gの混合物を0℃まで冷却した。続いて、上記で得られた下記式(R)
【化121】
で表される化合物10.0g(1.5×10-2mol)を滴下し、0℃で6時間熟成した。その後、分液操作により下層を回収し、溶剤及び未反応物を減圧留去することで、下記式(S)
【化122】
で示される生成物を8.6g得た。
【0172】
1H-NMR
δ0.1-0.2(-Si-C 3 )30H
δ0.5(-(CH27 2 -Si(O-Si(CH32-)3)2H
δ0.7-0.8(-C64-Si-C 2 -)4H
δ1.0-1.2(-N(CH2 3 2)6H
δ1.2-1.5(-(C 2 7-,-Si-CH2(C 2 6CH2-Si-)26H
δ1.6(-NOC-CH2 2 (CH27CH2-Si-)2H
δ2.3(-NOC-C 2 -)2H
δ3.2-3.4(-N(C 2 CH32)4H
δ4.7(-Si-H)3H
δ7.5(-Si-C6 4 -Si-)4H
【0173】
反応容器に入れた、上記で得られた下記式(S)
【化123】
で表される化合物5.0g(6.3×10-3mol)を80℃まで加熱した。続いて、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液5.0×10-3g(Pt単体として1.5×10-8molを含有)を添加した後、7-オクテニルトリメトキシシラン5.9g(2.5×10-2mol)を滴下し、80℃にて3時間加熱撹拌した。その後、溶剤及び未反応物を減圧留去することで、下記式(T)
【化124】
で示される生成物(親油性基含有加水分解性オルガノシロキサン化合物5)を8.1g得た。
【0174】
1H-NMR
δ0.1-0.2(-Si-C 3 )30H
δ0.5(-(CH27 2 -Si(O-Si(CH32-)3)2H
δ0.6-0.8(-C64-Si-C 2 -,-SiCH2(CH26 2 -Si(OCH33,-SiC 2 (CH26CH2-Si(OCH33)16H
δ1.0-1.2(-N(CH2 3 2)6H
δ1.2-1.4(-(C 2 7-,-Si-CH2(C 2 6CH2-Si-)26H
δ1.5(-SiCH2(CH26 2 -Si(OCH33)6H
δ1.6(-NOC-CH2 2 (CH27CH2-Si-)2H
δ2.3(-NOC-C 2 -)2H
δ3.2-3.4(-N(C 2 CH32)4H
δ3.5(-SiCH2(CH26CH2-Si(OC 3 3)27H
δ7.5(-Si-C6 4 -Si-)4H
【0175】
[実施例1~14、比較例1~3]
上記で得られた親油性基含有(加水分解性)オルガノシロキサン化合物(化合物1)~(化合物5)と以下のポリオールエステル(B-1)~(B-6)を用いて、表1~3に示す比率で混合し、プロピレングリコールモノメチルエーテルに溶解させて0.2質量%溶液を調製し、表面処理剤を調製した。その後、コーニング社製Gorillaガラスにスプレー塗工し、40℃、80%RHで12時間硬化させ、厚さ約5nmの硬化被膜を作製した。
(B-1)ジ(オレイン酸)ネオペンチルグリコールエステル
(B-2)トリ(2-エチルヘキサン酸)トリメチロールプロパンエステル
(B-3)トリ(オレイン酸)トリメチロールプロパンエステル
(B-4)トリ(オレイン酸)グリセロールエステル
(B-5)トリ(ステアリン酸)グリセロールエステル
(B-6)テトラ(2-エチルヘキサン酸)ペンタエリスリトールエステル
【0176】
[指紋視認性の評価]
上記にて作製した硬化被膜を形成したガラスに1kg荷重で皮脂を付着させ、その視認性について以下4段階にて目視による官能評価を行った。なお、「指紋がほとんど見えない」とは一見して指紋が見えず目を凝らしてようやく指紋が見える程度のことをいい、「指紋がわずかに見える」とは一見して指紋がかすかにあることが見える程度をいう。結果を表1~3に示す。
4:指紋がほとんど見えない~指紋が見えない
3:指紋がわずかに見える
2:指紋が薄いがはっきり見える
1:指紋がはっきり見える
【0177】
[親油性の評価]
上記にて作製した硬化被膜を形成したガラスについて、接触角計Drop Master(協和界面科学社製)を用いて、硬化被膜のオレイン酸に対する接触角(オレイン酸接触角)を測定した(液滴:2μl、温度:25℃、湿度(RH):40%、測定時間:40秒)。結果を表1~3に示す。
【0178】
[耐摩耗性の評価]
上記にて作製した硬化被膜を形成したガラスについて、ラビングテスター(新東科学社製)を用いて、下記条件で50回摩耗し、目視で表面の傷の有無を確認するという工程を傷が確認できるまで繰り返し、耐摩耗性の評価とした。傷が確認できるまでの回数が多いほど耐摩耗性が高く、傷が確認できるまでの回数が少ないほど耐摩耗性が低い。試験環境条件は25℃、湿度40%である。目視で傷が確認された時の摩耗回数(耐スチールウール耐久回数)を表1~3に示す。
耐スチールウール摩耗性
スチールウール:BONSTAR#0000(日本スチールウール株式会社製)
接触面積:10mmφ
移動距離(片道):40mm
移動速度:3,200mm/分
荷重:1.5kg/cm
【0179】
【表1】
【0180】
【表2】
【0181】
【表3】
【0182】
実施例は、優れた指紋低視認性、親油性、耐摩耗性を示した。一方、親油性基含有(加水分解性)オルガノシロキサン化合物((A)成分)のみを有する比較例1は極めて低い耐摩耗性を示した。また、ポリオールエステル((B)成分)のみを有する比較例2は低い耐摩耗性を示した。また、ポリオールエステル((B)成分)の配合量が本発明で規定する量より少ない比較例3は耐摩耗性の改善効果が十分ではなかった。