(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】画像符号化装置、方法およびプログラム、画像復号化装置、方法およびプログラム、画像処理装置、学習装置、方法およびプログラム、並びに類似画像検索装置、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20240228BHJP
G06V 10/40 20220101ALI20240228BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
G06T7/00 350B
G06V10/40
A61B6/03 560D
(21)【出願番号】P 2022550372
(86)(22)【出願日】2021-07-12
(86)【国際出願番号】 JP2021026147
(87)【国際公開番号】W WO2022059315
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2020154532
(32)【優先日】2020-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「人工知能技術を活用した革新的ながん創薬システムの開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】510097747
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立がん研究センター
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 和馬
(72)【発明者】
【氏名】三宅 基隆
(72)【発明者】
【氏名】浜本 隆二
(72)【発明者】
【氏名】桝本 潤
【審査官】松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-229161(JP,A)
【文献】特開平07-123268(JP,A)
【文献】特開2013-165765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00 - 7/90
G06V 10/00 -20/90
A61B 6/00 - 6/12
A61B 5/05 - 5/07
A61B 8/00 - 8/15
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
対象画像を符号化することにより、前記対象画像に含まれる関心領域の異常さについての画像特徴を表す少なくとも1つの第1の特徴量を導出し、
前記対象画像を符号化することにより、前記対象画像に含まれる前記関心領域が正常な領域であったとした場合の画像についての画像特徴を表す少なくとも1つの第2の特徴量を導出するように構成される画像符号化装置。
【請求項2】
前記第1の特徴量および前記第2の特徴量の組み合わせは、前記対象画像についての画像特徴を表す請求項1に記載の画像符号化装置。
【請求項3】
前記関心領域の異常さについての代表的な画像特徴を表す少なくとも1つの第1の特徴ベクトル、および前記関心領域が正常な領域であったとした場合の画像についての代表的な画像特徴を表す
少なくとも1つの第2の特徴ベクトルを記憶するストレージを備え、
前記プロセッサは、前記関心領域の異常さについての画像特徴を表す特徴ベクトルを、前記第1の特徴ベクトルのうちの、前記関心領域の異常さについての画像特徴との差分が最小となる第1の特徴ベクトルに置換することにより量子化して、前記第1の特徴量を導出し、
前記関心領域が正常な領域であったとした場合の画像についての画像特徴を表す特徴ベクトルを、前記第2の特徴ベクトルのうちの、前記関心領域が正常な領域であったとした場合の画像についての画像特徴との差分が最小となる第2の特徴ベクトルに置換することにより量子化して、前記第2の特徴量を導出するように構成される請求項1または2に記載の画像符号化装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記対象画像が入力されると、前記第1の特徴量および前記第2の特徴量を導出するように学習がなされた符号化学習モデルを用いて、前記第1の特徴量および前記第2の特徴量を導出するように構成される請求項1から3のいずれか1項に記載の画像符号化装置。
【請求項5】
少なくとも1つのプロセッサを備え、
前記プロセッサは、請求項1から4のいずれか1項に記載の画像符号化装置によって、前記対象画像から導出した前記第1の特徴量に基づいて、前記対象画像における前記関心領域の異常さについての種類に応じた領域を抽出するように構成される画像復号化装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記第2の特徴量に基づいて、前記対象画像における前記関心領域が正常な領域であったとした場合の画像についての画像特徴を再構成した第1の再構成画像を導出し、
前記第1の特徴量および前記第2の特徴量に基づいて、前記対象画像についての画像特徴を再構成した第2の再構成画像を導出するように構成される請求項5に記載の画像復号化装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記第1の特徴量に基づいて、前記対象画像における前記関心領域の異常さについての種類に応じたラベル画像を導出し、前記第2の特徴量に基づいて、前記対象画像における前記関心領域が正常な領域であったとした場合の画像についての画像特徴を再構成した第1の再構成画像を導出し、前記第1の特徴量および前記第2の特徴量に基づいて、前記対象画像の画像特徴を再構成した第2の再構成画像を導出するように学習がなされた復号化学習モデルを用いて、前記関心領域の異常さについての種類に応じたラベル画像の導出、前記第1の再構成画像の導出および前記第2の再構成画像の導出を行うように構成される請求項6に記載の画像復号化装置。
【請求項8】
請求項1から4のいずれか1項に記載の画像符号化装置と、請求項5から7のいずれか1項に記載の画像復号化装置とを備えた画像処理装置。
【請求項9】
関心領域を含む教師画像および該教師画像における該関心領域の異常さについての種類に応じた教師ラベル画像からなる教師データを用いて、請求項4に記載の画像符号化装置における符号化学習モデルと、請求項7に記載の画像復号化装置における復号化学習モデルとを学習する学習装置であって、
少なくとも1つのプロセッサを備え、
前記プロセッサは、前記符号化学習モデルを用いて、前記教師画像から前記第1の特徴量および前記第2の特徴量にそれぞれ対応する第1の学習用特徴量および第2の学習用特徴量を導出し、
前記復号化学習モデルを用いて、前記第1の学習用特徴量に基づいて前記教師画像に含まれる関心領域の異常さについての種類に応じた学習用ラベル画像を導出し、前記第2の学習用特徴量に基づいて、前記教師画像における前記関心領域が正常な領域であったとした場合の画像についての画像特徴を再構成した第1の学習用再構成画像を導出し、前記第1の学習用特徴量および前記第2の学習用特徴量に基づいて、前記教師画像の画像特徴を再構成した第2の学習用再構成画像を導出し、
前記第1の学習用特徴量と予め定められた第1の特徴量の確率分布との差である第1の損失、前記第2の学習用特徴量と予め定められた第2の特徴量の確率分布との差である第2の損失、前記教師データに含まれる前記教師ラベル画像と前記学習用ラベル画像との前記教師画像に対するセマンティックセグメンテーションとしての差に基づく第3の損失、前記第1の学習用再構成画像と前記教師画像における前記関心領域外の画像との差に基づく第4の損失、前記第2の学習用再構成画像と前記教師画像との差に基づく第5の損失、および前記第1の学習用再構成画像と前記第2の学習用再構成画像との前記関心領域内外にそれぞれ対応する領域間の差に基づく第6の損失の少なくとも1つが予め定められた条件を満足するように、前記符号化学習モデルおよび前記復号化学習モデルを学習するように構成される学習装置。
【請求項10】
少なくとも1つのプロセッサと、
請求項1から4のいずれか1項記載の画像符号化装置とを備え、
前記プロセッサは、
前記画像符号化装置により、クエリ画像についての第1の特徴量および第2の特徴量を導出し、
複数の参照画像のそれぞれについての第1の特徴量および第2の特徴量が、前記複数の参照画像のそれぞれと対応づけられて登録された画像データベースを参照して、前記クエリ画像から導出された前記第1の特徴量および前記第2の特徴量の少なくとも一方に基づいて、前記クエリ画像と前記複数の参照画像のそれぞれとの類似度を導出し、
前記類似度に基づいて、前記クエリ画像に類似する参照画像を類似画像として前記画像データベースから抽出するように構成される類似画像検索装置。
【請求項11】
対象画像を符号化することにより、前記対象画像に含まれる関心領域の異常さについての画像特徴を表す少なくとも1つの第1の特徴量を導出し、
前記対象画像を符号化することにより、前記対象画像に含まれる前記関心領域が正常な領域であったとした場合の画像についての画像特徴を表す少なくとも1つの第2の特徴量を導出する画像符号化方法。
【請求項12】
請求項1から4のいずれか1項に記載の画像符号化装置によって、前記対象画像から導出した前記第1の特徴量に基づいて、前記対象画像における前記関心領域の異常さについての種類に応じた領域を抽出する画像復号化方法。
【請求項13】
関心領域を含む教師画像および該教師画像における該関心領域の異常さについての種類に応じた教師ラベル画像からなる教師データを用いて、請求項4に記載の画像符号化装置における符号化学習モデルと、請求項7に記載の画像復号化装置における復号化学習モデルとを学習する学習方法であって、
前記符号化学習モデルを用いて、前記教師画像から前記第1の特徴量および前記第2の特徴量にそれぞれ対応する第1の学習用特徴量および第2の学習用特徴量を導出し、
前記復号化学習モデルを用いて、前記第1の学習用特徴量に基づいて前記教師画像に含まれる関心領域の異常さについての種類に応じた学習用ラベル画像を導出し、前記第2の学習用特徴量に基づいて、前記教師画像における前記関心領域が正常な領域であったとした場合の画像についての画像特徴を再構成した第1の学習用再構成画像を導出し、前記第1の学習用特徴量および前記第2の学習用特徴量に基づいて、前記教師画像の画像特徴を再構成した第2の学習用再構成画像を導出し、
前記第1の学習用特徴量と予め定められた第1の特徴量の確率分布との差である第1の損失、前記第2の学習用特徴量と予め定められた第2の特徴量の確率分布との差である第2の損失、前記教師データに含まれる前記教師ラベル画像と前記学習用ラベル画像との前記教師画像に対するセマンティックセグメンテーションとしての差に基づく第3の損失、前記第1の学習用再構成画像と前記教師画像における前記関心領域外の画像との差に基づく第4の損失、前記第2の学習用再構成画像と前記教師画像との差に基づく第5の損失、および前記第1の学習用再構成画像と前記第2の学習用再構成画像との前記関心領域内外にそれぞれ対応する領域間の差に基づく第6の損失の少なくとも1つが予め定められた条件を満足するように、前記符号化学習モデルおよび前記復号化学習モデルを学習する学習方法。
【請求項14】
請求項1から4のいずれか1項記載の画像符号化装置により、クエリ画像についての第1の特徴量および第2の特徴量を導出し、
複数の参照画像のそれぞれについての第1の特徴量および第2の特徴量が、前記複数の参照画像のそれぞれと対応づけられて登録された画像データベースを参照して、前記クエリ画像から導出された前記第1の特徴量および前記第2の特徴量の少なくとも一方に基づいて、前記クエリ画像と前記複数の参照画像のそれぞれとの類似度を導出し、
前記類似度に基づいて、前記クエリ画像に類似する参照画像を類似画像として前記画像データベースから抽出する類似画像検索方法。
【請求項15】
対象画像を符号化することにより、前記対象画像に含まれる関心領域の異常さについての画像特徴を表す少なくとも1つの第1の特徴量を導出する手順と、
前記対象画像を符号化することにより、前記対象画像に含まれる前記関心領域が正常な領域であったとした場合の画像についての画像特徴を表す少なくとも1つの第2の特徴量を導出する手順とをコンピュータに実行させる画像符号化プログラム。
【請求項16】
請求項1から4のいずれか1項に記載の画像符号化装置によって、前記対象画像から導出した前記第1の特徴量に基づいて、前記対象画像における前記関心領域の異常さの種類に応じた領域を抽出する手順をコンピュータに実行させる画像復号化プログラム。
【請求項17】
関心領域を含む教師画像および該教師画像における該関心領域の異常さについての種類に応じた教師ラベル画像からなる教師データを用いて、請求項4に記載の画像符号化装置における符号化学習モデルと、請求項7に記載の画像復号化装置における復号化学習モデルとを学習する手順をコンピュータに実行させる学習プログラムであって、
前記符号化学習モデルを用いて、前記教師画像から前記第1の特徴量および前記第2の特徴量にそれぞれ対応する第1の学習用特徴量および第2の学習用特徴量を導出する手順と、
前記復号化学習モデルを用いて、前記第1の学習用特徴量に基づいて前記教師画像に含まれる関心領域の異常さについての種類に応じた学習用ラベル画像を導出し、前記第2の学習用特徴量に基づいて、前記教師画像における前記関心領域が正常な領域であったとした場合の画像についての画像特徴を再構成した第1の学習用再構成画像を導出し、前記第1の学習用特徴量および前記第2の学習用特徴量に基づいて、前記教師画像の画像特徴を再構成した第2の学習用再構成画像を導出する手順と、
前記第1の学習用特徴量と予め定められた第1の特徴量の確率分布との差である第1の損失、前記第2の学習用特徴量と予め定められた第2の特徴量の確率分布との差である第2の損失、前記教師データに含まれる前記教師ラベル画像と前記学習用ラベル画像との前記教師画像に対するセマンティックセグメンテーションとしての差に基づく第3の損失、前記第1の学習用再構成画像と前記教師画像における前記関心領域外の画像との差に基づく第4の損失、前記第2の学習用再構成画像と前記教師画像との差に基づく第5の損失、および前記第1の学習用再構成画像と前記第2の学習用再構成画像との前記関心領域内外にそれぞれ対応する領域間の差に基づく第6の損失の少なくとも1つが予め定められた条件を満足するように、前記符号化学習モデルおよび前記復号化学習モデルを学習する手順とをコンピュータに実行させる学習プログラム。
【請求項18】
請求項1から4のいずれか1項記載の画像符号化装置により、クエリ画像についての第1の特徴量および第2の特徴量を導出する手順と、
複数の参照画像のそれぞれについての第1の特徴量および第2の特徴量が、前記複数の参照画像のそれぞれと対応づけられて登録された画像データベースを参照して、前記クエリ画像から導出された前記第1の特徴量および前記第2の特徴量の少なくとも一方に基づいて、前記クエリ画像と前記複数の参照画像のそれぞれとの類似度を導出する手順と、
前記類似度に基づいて、前記クエリ画像に類似する参照画像を類似画像として前記画像データベースから抽出する手順とをコンピュータに実行させる類似画像検索プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像符号化装置、方法およびプログラム、画像復号化装置、方法およびプログラム、画像処理装置、学習装置、方法およびプログラム、並びに類似画像検索装置、方法およびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、CT(Computed Tomography)装置およびMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置等の医療機器により取得された医用画像から関心領域を検出するための各種手法が提案されている。例えば、特開2020-062355号公報には、訓練用の医用画像データから、病変内部の領域である第1の領域の画像に係る第1のデータと、病変周囲の領域である第2の領域の画像に係る第2のデータと、病変外部の領域である第3の領域の画像に係る第3のデータとを抽出し、抽出したデータを学習した学習モデルを用いて、抽出対象となる医用画像から病変領域を抽出する手法が提案されている。特開2020-062355号公報に記載された学習モデルにおいては、対象となる医用画像について、病変領域の特徴量および病変周囲の領域の特徴量を用いて、病変の領域が抽出される。
【0003】
一方、医用画像に含まれる関心領域についての症例と類似する過去の医用画像を参照することにより、診断を効率よく行うことができる。このため、対象となる医用画像に類似する過去の医用画像を検索する手法が提案されている(例えば特開2004-05364号公報参照)。特開2004-05364号公報に記載された手法は、まず診断対象となる医用画像に含まれる関心領域の特徴量を導出する。そして、データベースに保存された医用画像について予め導出された特徴量と、対象となる医用画像から導出した特徴量との差に基づいて類似度を導出し、類似度に基づいて、類似する過去の医用画像を検索する。
【0004】
ところで、医用画像における病変のような関心領域の画像特徴は、疾患により引き起こされる病的な変化と、そこに元々存在している正常な解剖学的特徴とが組み合わさったものであると言える。人体の正常な解剖学的特徴は共通しているため、臨床医は、関心領域に注目した際に、関心領域の背後に存在していたであろう正常な解剖学的特徴を差し引いて、異常さのみを純粋に反映する画像特徴を想起して、関心領域を評価している。
【0005】
このため、同一患者について疾患が発症した前後の医用画像について疾患の領域を比較読影すること、および類似した病変を有する異なる患者間の医用画像を比較読影することが、画像診断において非常に重要となる。このような医用画像に対する臨床医の認識過程をコンピュータにより再現するためには、関心領域の画像特徴を、そこに本来存在しているであろう正常な解剖学的特徴からの差分として表現する必要がある。また、これと同時に、関心領域が仮に正常な領域であったとした場合の正常な解剖学的特徴を再現できるようにする必要もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特開2020-062355号公報に記載された手法は、医用画像から関心領域を検出するのみである。また、特開2004-05364号公報に記載された手法は、画像における関心領域が類似する医用画像が検索されるのみである。このため、特開2020-062355号公報および特開2004-05364号公報に記載の手法を用いても、医用画像に含まれる関心領域の画像特徴と、関心領域が正常な領域であったとした場合の画像特徴とを分離的に扱うことができない。
【0007】
本開示は上記事情に鑑みなされたものであり、異常な領域を関心領域として含む対象画像に関して、関心領域の異常さについての画像特徴と、関心領域が仮に正常な領域であったとした場合の画像についての画像特徴とを分離して扱うことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示による画像符号化装置は、少なくとも1つのプロセッサを備え、
プロセッサは、
対象画像を符号化することにより、対象画像に含まれる関心領域の異常さについての画像特徴を表す少なくとも1つの第1の特徴量を導出し、
対象画像を符号化することにより、対象画像における関心領域が正常な領域であったとした場合の画像についての画像特徴を表す少なくとも1つの第2の特徴量を導出するように構成される。
【0009】
なお、関心領域は、本開示による画像符号化装置において、第1の特徴量および第2の特徴量の少なくとも一方を導出しつつ、抽出されるものであってもよい。あるいは、対象画像においてすでに関心領域が抽出されたものであってもよい。また、表示された対象画像に対する操作者の入力により、対象画像から関心領域を抽出してもよい。
【0010】
本開示において、関心領域の「異常さ」についての画像特徴とは、対象画像における関心領域が仮に正常な領域であったとした場合の画像についての画像特徴を基準として、実際の対象画像に含まれる関心領域についての画像特徴が、その基準からどれだけ逸脱しているかという画像特徴の差分として表されてもよい。
【0011】
なお、本開示による画像符号化装置においては、第1の特徴量および第2の特徴量の組み合わせは、対象画像についての画像特徴を表すものであってもよい。
【0012】
また、本開示による画像符号化装置においては、関心領域の異常さについての代表的な画像特徴を表す少なくとも1つの第1の特徴ベクトル、および関心領域が正常な領域であったとした場合の画像についての代表的な画像特徴を表す少なくとも1つの第2の特徴ベクトルを記憶するストレージを備え、
プロセッサは、関心領域の異常さについての画像特徴を表す特徴ベクトルを、第1の特徴ベクトルのうちの、関心領域の異常さについての画像特徴との差分が最小となる第1の特徴ベクトルに置換することにより量子化して、第1の特徴量を導出し、
関心領域が正常な領域であったとした場合の画像についての画像特徴を表す特徴ベクトルを、第2の特徴ベクトルのうちの、関心領域が正常な領域であったとした場合の画像についての画像特徴との差分が最小となる第2の特徴ベクトルに置換することにより量子化して、第2の特徴量を導出するように構成されるものであってもよい。
【0013】
また、本開示による画像符号化装置においては、プロセッサは、対象画像が入力されると、第1の特徴量および第2の特徴量を導出するように学習がなされた符号化学習モデルを用いて、第1の特徴量および第2の特徴量を導出するように構成されるものであってもよい。
【0014】
本開示による画像復号化装置は、少なくとも1つのプロセッサを備え、
プロセッサは、本開示による画像符号化装置によって、対象画像から導出した第1の特徴量に基づいて、対象画像における関心領域の異常さについての種類に応じた領域を抽出するように構成される。
【0015】
なお、本開示による画像復号化装置においては、プロセッサは、第2の特徴量に基づいて、対象画像における関心領域が正常な領域であったとした場合の画像についての画像特徴を再構成した第1の再構成画像を導出し、
第1の特徴量および第2の特徴量に基づいて、対象画像についての画像特徴を再構成した第2の再構成画像を導出するように構成されるものであってもよい。
【0016】
また、本開示による画像復号化装置においては、プロセッサは、第1の特徴量に基づいて、対象画像における関心領域の異常さについての種類に応じたラベル画像を導出し、第2の特徴量に基づいて、対象画像における関心領域が正常な領域であったとした場合の画像についての画像特徴を再構成した第1の再構成画像を導出し、第1の特徴量および第2の特徴量に基づいて、対象画像の画像特徴を再構成した第2の再構成画像を導出するように学習がなされた復号化学習モデルを用いて、関心領域の異常さについての種類に応じたラベル画像の導出、第1の再構成画像の導出および第2の再構成画像の導出を行うように構成されるものであってもよい。
【0017】
本開示による画像処理装置は、本開示による画像符号化装置と、本開示による画像復号化装置とを備える。
【0018】
本開示による学習装置は、関心領域を含む教師画像および教師画像における関心領域の異常さについての種類に応じた教師ラベル画像からなる教師データを用いて、本開示による画像符号化装置における符号化学習モデルと、本開示による画像復号化装置における復号化学習モデルとを学習する学習装置であって、
少なくとも1つのプロセッサを備え、
プロセッサは、符号化学習モデルを用いて、教師画像から第1の特徴量および第2の特徴量にそれぞれ対応する第1の学習用特徴量および第2の学習用特徴量を導出し、
復号化学習モデルを用いて、第1の学習用特徴量に基づいて教師画像に含まれる関心領域の異常さについての種類に応じた学習用ラベル画像を導出し、第2の学習用特徴量に基づいて、教師画像における関心領域が正常な領域であったとした場合の画像についての画像特徴を再構成した第1の学習用再構成画像を導出し、第1の学習用特徴量および第2の学習用特徴量に基づいて、教師画像の画像特徴を再構成した第2の学習用再構成画像を導出し、
第1の学習用特徴量と予め定められた第1の特徴量の確率分布との差である第1の損失、第2の学習用特徴量と予め定められた第2の特徴量の確率分布との差である第2の損失、教師データに含まれる教師ラベル画像と学習用ラベル画像との教師画像に対するセマンティックセグメンテーションとしての差に基づく第3の損失、第1の学習用再構成画像と教師画像における関心領域外の画像との差に基づく第4の損失、第2の学習用再構成画像と教師画像との差に基づく第5の損失、および第1の学習用再構成画像と第2の学習用再構成画像との関心領域内外にそれぞれ対応する領域間の差に基づく第6の損失の少なくとも1つが予め定められた条件を満足するように、符号化学習モデルおよび復号化学習モデルを学習するように構成される。
【0019】
第3の損失に関しての「セマンティックセグメンテーションとしての差」とは、教師ラベル画像により表される異常さの種類に応じた領域と、学習用ラベル画像により表される異常さの種類に応じた領域との重なりに基づいて定められる指標である。
【0020】
第4の損失に関しての「関心領域外」とは、教師画像における関心領域以外のすべての領域を意味する。なお、教師画像に何ら構造物が含まれない背景が含まれる場合、関心領域外には背景も含めた領域も含む。一方、関心領域外には背景を含めない領域のみを含むものであってもよい。
【0021】
第6の損失に関しての「関心領域内外に対応する領域」とは、第1の学習用再構成画像と第2の学習用再構成画像との関心領域に対応する領域および、関心領域に対応しない領域の双方を意味する。関心領域に対応しない領域とは、第1の学習用再構成画像と第2の学習用再構成画像との関心領域に対応する領域以外のすべての領域を意味する。なお、第1および第2の学習用再構成画像に何ら構造物が含まれない背景が含まれる場合、関心領域に対応しない領域には背景も含めた領域も含む。一方、関心領域に対応しない領域には背景を含まない領域のみを含むものであってもよい。
【0022】
本開示による類似画像検索装置は、少なくとも1つのプロセッサと、
本開示による画像符号化装置とを備え、
プロセッサは、
画像符号化装置により、クエリ画像についての第1の特徴量および第2の特徴量を導出し、
複数の参照画像のそれぞれについての第1の特徴量および第2の特徴量が、複数の参照画像のそれぞれと対応づけられて登録された画像データベースを参照して、クエリ画像から導出された第1の特徴量および第2の特徴量の少なくとも一方に基づいて、クエリ画像と複数の参照画像のそれぞれとの類似度を導出し、
類似度に基づいて、クエリ画像に類似する参照画像を類似画像として画像データベースから抽出するように構成される。
【0023】
本開示による画像符号化方法は、対象画像を符号化することにより、対象画像に含まれる関心領域の異常さについての画像特徴を表す少なくとも1つの第1の特徴量を導出し、
対象画像を符号化することにより、対象画像に含まれる関心領域が正常な領域であったとした場合の画像についての画像特徴を表す少なくとも1つの第2の特徴量を導出する。
【0024】
本開示による画像復号化方法は、本開示による画像符号化装置によって、対象画像から導出した第1の特徴量に基づいて、対象画像における関心領域の異常さについての種類に応じた領域を抽出する。
【0025】
本開示による学習方法は、関心領域を含む教師画像および教師画像における関心領域の異常さについての種類に応じた教師ラベル画像からなる教師データを用いて、本開示による画像符号化装置における符号化学習モデルと、本開示による画像復号化装置における復号化学習モデルとを学習する学習方法であって、
符号化学習モデルを用いて、教師画像から第1の特徴量および第2の特徴量にそれぞれ対応する第1の学習用特徴量および第2の学習用特徴量を導出し、
復号化学習モデルを用いて、第1の学習用特徴量に基づいて教師画像に含まれる関心領域の異常さについての種類に応じた学習用ラベル画像を導出し、第2の学習用特徴量に基づいて、教師画像における関心領域が正常な領域であったとした場合の画像についての画像特徴を再構成した第1の学習用再構成画像を導出し、第1の学習用特徴量および第2の学習用特徴量に基づいて、教師画像の画像特徴を再構成した第2の学習用再構成画像を導出し、
第1の学習用特徴量と予め定められた第1の特徴量の確率分布との差である第1の損失、第2の学習用特徴量と予め定められた第2の特徴量の確率分布との差である第2の損失、教師データに含まれる教師ラベル画像と学習用ラベル画像との教師画像に対するセマンティックセグメンテーションとしての差に基づく第3の損失、第1の学習用再構成画像と教師画像における関心領域外の画像との差に基づく第4の損失、第2の学習用再構成画像と教師画像との差に基づく第5の損失、および第1の学習用再構成画像と第2の学習用再構成画像との関心領域内外にそれぞれ対応する領域間の差に基づく第6の損失の少なくとも1つが予め定められた条件を満足するように、符号化学習モデルおよび復号化学習モデルを学習する。
【0026】
本開示による類似画像検索方法は、本開示による画像符号化装置により、クエリ画像についての第1の特徴量および第2の特徴量を導出し、
複数の参照画像のそれぞれについての第1の特徴量および第2の特徴量が、複数の参照画像のそれぞれと対応づけられて登録された画像データベースを参照して、クエリ画像から導出された第1の特徴量および第2の特徴量の少なくとも一方に基づいて、クエリ画像と複数の参照画像のそれぞれとの類似度を導出し、
類似度に基づいて、クエリ画像に類似する参照画像を類似画像として画像データベースから抽出する。
【0027】
なお、本開示による画像符号化方法、画像復号化方法、学習方法および類似画像検索方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして提供してもよい。
【発明の効果】
【0028】
本開示によれば、異常な領域を関心領域として含む対象画像に関して、関心領域の異常さについての画像特徴と、関心領域が仮に正常な領域であった場合の画像についての画像特徴とを分離して扱うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本開示の実施形態による画像符号化装置、画像復号化装置、学習装置および類似画像検索装置を適用した医療情報システムの概略構成を示す図
【
図2】本実施形態による画像処理システムの概略構成を示す図
【
図3】本実施形態による画像処理システムの機能構成図
【
図4】本実施形態による画像符号化装置および画像復号化装置が行う処理の概念図
【
図5】第1の特徴ベクトルへの置換を説明するための図
【
図8】第1の検索条件による検索結果の表示画面を示す図
【
図9】第2の検索条件による検索結果の表示画面を示す図
【
図10】第3の検索条件による検索結果の表示画面を示す図
【
図11】本実施形態において行われる学習処理を示すフローチャート
【
図12】本実施形態において行われる類似画像検索処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。まず、本実施形態による画像符号化装置、画像復号化装置、学習装置および類似画像検索装置を適用した医療情報システムの構成について説明する。なお、以降の説明において、画像処理装置には、本開示の画像符号化装置および画像復号化装置を含む。
図1は、医療情報システムの概略構成を示す図である。
図1に示す医療情報システムは、本実施形態による画像処理装置、学習装置および類似画像検索装置を内包するコンピュータ1、撮影装置2、および画像保管サーバ3が、ネットワーク4を経由して通信可能な状態で接続されている。
【0031】
コンピュータ1は、本実施形態による画像処理装置、学習装置および類似画像検索装置を内包するものであり、本実施形態の画像符号化プログラム、画像復号化プログラム、学習プログラムおよび類似画像検索プログラムがインストールされている。コンピュータ1は、診断を行う医師が直接操作するワークステーションあるいはパーソナルコンピュータでもよいし、それらとネットワークを介して接続されたサーバコンピュータでもよい。画像符号化プログラム、画像復号化プログラム、学習プログラムおよび類似画像検索プログラムは、ネットワークに接続されたサーバコンピュータの記憶装置、あるいはネットワークストレージに、外部からアクセス可能な状態で記憶され、要求に応じて医師が使用するコンピュータ1にダウンロードされ、インストールされる。または、DVD(Digital Versatile Disc)あるいはCD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)等の記録媒体に記録されて配布され、その記録媒体からコンピュータ1にインストールされる。
【0032】
撮影装置2は、被検体の診断対象となる部位を撮影することにより、その部位を表す3次元画像を生成する装置であり、具体的には、CT(Computed Tomography)装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、およびPET(Positron Emission Tomography)装置等である。撮影装置2により生成された、複数のスライス画像からなる3次元画像は画像保管サーバ3に送信され、保存される。なお、本実施形態においては、被検体である患者の診断対象部位は脳であり、撮影装置2はMRI装置であり、被検体の脳を含む頭部のMRI画像を3次元画像として生成する。
【0033】
画像保管サーバ3は、各種データを保存して管理するコンピュータであり、大容量外部記憶装置およびデータベース管理用ソフトウェアを備えている。画像保管サーバ3は、有線あるいは無線のネットワーク4を介して他の装置と通信を行い、画像データ等を送受信する。具体的には撮影装置2で生成された3次元画像の画像データを含む各種データをネットワーク経由で取得し、大容量外部記憶装置等の記録媒体に保存して管理する。なお、画像データの格納形式およびネットワーク4経由での各装置間の通信は、DICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine)等のプロトコルに基づいている。また、画像保管サーバ3には、後述する教師データも記憶されている。
【0034】
なお、本実施形態においては、画像保管サーバ3には、画像データベースDBが保存されている。画像データベースDBには、脳出血および脳梗塞等の各種疾患を含む複数の画像が参照画像として登録されている。画像データベースDBについては後述する。また、本実施形態においては、参照画像も複数のスライス画像からなる3次元画像である。
【0035】
次いで、本実施形態による画像符号化装置、画像復号化装置、学習装置および類似画像検索装置について説明する。
図2は、本実施形態による画像符号化装置、画像復号化装置、学習装置および類似画像検索装置を含む画像処理システムのハードウェア構成を説明する。
図2に示すように、本実施形態による画像処理システム20は、CPU(Central Processing Unit)11、不揮発性のストレージ13、および一時記憶領域としてのメモリ16を含む。また、画像処理システム20は、液晶ディスプレイ等のディスプレイ14、キーボードとマウス等の入力デバイス15、およびネットワーク4に接続されるネットワークI/F(InterFace)17を含む。CPU11、ストレージ13、ディスプレイ14、入力デバイス15、メモリ16およびネットワークI/F17は、バス18に接続される。なお、CPU11は、本開示におけるプロセッサの一例である。
【0036】
ストレージ13は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、およびフラッシュメモリ等によって実現される。記憶媒体としてのストレージ13には、画像符号化プログラム12A、画像復号化プログラム12B、学習プログラム12Cおよび類似画像検索プログラム12Dが記憶される。CPU11は、ストレージ13から画像符号化プログラム12A、画像復号化プログラム12B、学習プログラム12Cおよび類似画像検索プログラム12Dを読み出してからメモリ16に展開し、展開した画像符号化プログラム12A、画像復号化プログラム12B、学習プログラム12Cおよび類似画像検索プログラム12Dを実行する。
【0037】
次いで、本実施形態による画像処理システムの機能的な構成を説明する。
図3は、本実施形態による画像処理システムの機能的な構成を示す図である。
図3に示すように本実施形態による画像処理システム20は、情報取得部21、画像符号化装置22、画像復号化装置23、学習装置24、類似画像検索装置25および表示制御部26を備える。画像符号化装置22は、第1の特徴量導出部22Aおよび第2の特徴量導出部22Bを備える。画像復号化装置23は、セグメンテーション部23A、第1の再構成部23Bおよび第2の再構成部23Cを備える。学習装置24は、学習部24Aを備える。類似画像検索装置25は、類似度導出部25Aおよび抽出部25Bを備える。なお、画像符号化装置22が情報取得部21を備えるものであってもよい。また、類似画像検索装置25が表示制御部26を備えるものであってもよい。
【0038】
そして、CPU11が、画像符号化プログラム12A、画像復号化プログラム12B、学習プログラム12Cおよび類似画像検索プログラム12Dを実行することにより、CPU11は、情報取得部21、第1の特徴量導出部22A、第2の特徴量導出部22B、セグメンテーション部23A、第1の再構成部23B、第2の再構成部23C、学習部24A、類似度導出部25A、抽出部25Bおよび表示制御部26として機能する。
【0039】
情報取得部21は、操作者による入力デバイス15からの指示により、画像保管サーバ3から、後述する検索の対象となるクエリ画像を対象画像として取得する。ここで、以降の説明において、画像符号化装置22および画像復号化装置23について説明する場合には、画像符号化装置22に入力される画像を対象画像と称する。一方、学習装置24が学習を行う際に画像符号化装置22に入力される画像は、教師画像となる。また、類似画像検索装置25について説明する場合には、画像符号化装置22に入力される画像をクエリ画像と称する。
【0040】
なお、対象画像が既にストレージ13に保存されている場合には、情報取得部21は、ストレージ13から対象画像を取得するようにしてもよい。また、情報取得部21は、後述する符号化学習モデルおよび復号化学習モデルの学習のために、画像保管サーバ3から複数の教師データを取得する。
【0041】
画像符号化装置22を構成する第1の特徴量導出部22Aは、対象画像を符号化することにより、対象画像に含まれる関心領域の異常さについての画像特徴を表す少なくとも1つの第1の特徴量を導出する。なお、本実施形態においては、関心領域は、第1の特徴量を導出しつつ抽出されることとなる。なお、関心領域は第1の特徴量を導出する前に、対象画像から予め抽出されていてもよい。例えば、対象画像から関心領域を検出する機能を画像符号化装置22に設け、画像符号化装置22において第1の特徴量を導出する前に対象画像から関心領域を抽出するようにしてもよい。あるいは、画像保管サーバ3に保管された対象画像において、すでに関心領域が抽出されたものであってもよい。また、対象画像をディスプレイ14に表示し、表示された対象画像に対する操作者の入力により、対象画像から関心領域を抽出してもよい。
【0042】
画像符号化装置22を構成する第2の特徴量導出部22Bは、対象画像を符号化することにより、対象画像に含まれる関心領域が正常な領域であったとした場合の画像についての画像特徴を表す少なくとも1つの第2の特徴量を導出する。
【0043】
このために、第1の特徴量導出部22Aおよび第2の特徴量導出部22Bは、対象画像が入力されると、第1の特徴量および第2の特徴量を導出するように学習がなされた符号化学習モデルとしてのエンコーダおよび潜在モデル(Latent model)を有する。また、本実施形態においては、第1の特徴量導出部22Aと第2の特徴量導出部22Bとで共通の符号化学習モデルを有するものとする。符号化学習モデルとしてのエンコーダおよび潜在モデルについては後述する。
【0044】
なお、本実施形態においては、対象画像は脳を含み、関心領域は、脳梗塞または脳出血等の脳の疾患の種類に応じて定められた領域とする。
【0045】
ここで、第2の特徴量は、対象画像における関心領域が正常な領域であったとした場合の画像についての画像特徴を表す。このため、第2の特徴量は、対象画像における関心領域、すなわち疾患の領域が、疾患が仮に存在しなかったとした場合の領域、とくに脳の正常組織の画像特徴により補間された画像特徴を表すものとなる。したがって、第2の特徴量は、対象画像における脳がすべて正常組織となった状態における画像の画像特徴を表すものとなる。
【0046】
また、第1の特徴量および第2の特徴量の組み合わせは、対象画像の画像特徴、とくに疾患の種類に応じて定められた領域を含む脳の画像特徴を表すものであってもよい。この場合、第1の特徴量は、対象画像に含まれる関心領域の異常さについての画像特徴を表すが、対象画像に含まれる関心領域が正常な領域であったとした場合の画像特徴との差分を表現する画像特徴を表すものとなる。本実施形態においては、関心領域は脳の疾患であるため、第1の特徴量は、対象画像における脳がすべて正常組織となった状態における画像の画像特徴との差分を表現する画像特徴を表すものとなる。これにより、異常な領域を関心領域として含む脳の画像から、疾患の種類に応じて定められた領域の異常さについての画像特徴と、脳がすべて正常組織となった状態における画像の画像特徴とを、分離して獲得することができる。
【0047】
画像復号化装置23のセグメンテーション部23Aは、第1の特徴量導出部22Aが導出した第1の特徴量に基づいて、対象画像における関心領域の異常さについての種類に応じた関心領域ラベル画像を導出する。
【0048】
画像復号化装置23の第1の再構成部23Bは、第2の特徴量導出部22Bが導出した第2の特徴量に基づいて、対象画像における関心領域が正常な領域であったとした場合の画像についての画像特徴を再構成した第1の再構成画像を導出する。
【0049】
画像復号化装置23の第2の再構成部23Cは、第1の特徴量導出部22Aが導出した第1の特徴量および第2の特徴量導出部22Bが導出した第2の特徴量に基づいて、対象画像の画像特徴を再構成した第2の再構成画像を導出する。なお、再構成される対象画像の画像特徴とは、対象画像に含まれる脳以外の背景も含む画像特徴である。
【0050】
このために、セグメンテーション部23A、第1の再構成部23Bおよび第2の再構成部23Cは、第1の特徴量および第2の特徴量が入力されると、関心領域の異常さについての種類に応じた関心領域ラベル画像を導出し、第1の再構成画像および第2の再構成画像を導出するように学習がなされた、復号化学習モデルとしてのデコーダを有する。
【0051】
図4は、本実施形態における画像符号化装置および画像復号化装置が行う処理の概念図である。
図4に示すように、画像符号化装置22は、符号化学習モデルであるエンコーダ31および潜在モデル31Aを有する。エンコーダ31および潜在モデル31Aは、本実施形態による第1の特徴量導出部22Aおよび第2の特徴量導出部22Bとしての機能を有する。また、画像復号化装置23は、復号化学習モデルであるデコーダ32A~32Cを有する。デコーダ32A~32Cは、それぞれセグメンテーション部23A、第1の再構成部23Bおよび第2の再構成部23Cとしての機能を有する。
【0052】
符号化学習モデルとしてのエンコーダ31および潜在モデル31A、並びに復号化学習モデルとしてのデコーダ32A~32Cは、関心領域を含む脳を被写体とした教師画像および教師画像における脳の疾患の種類に応じて定められた領域に応じた教師ラベル画像の組み合わせを教師データとして使用して、機械学習を行うことにより構築される。エンコーダ31およびデコーダ32A~32Cは、例えば、複数の処理層が階層的に接続された多層ニューラルネットワークの1つである、畳み込みニューラルネットワーク(CNN(Convolutional Neural Network))からなる。また、潜在モデル31Aは、VQ-VAE(Vector Quantised-Variational AutoEncoder)の手法を用いて学習される。
【0053】
VQ-VAEは、「Neural Discrete Representation Learning、Aaron van den Oordら、Advances in Neural Information Processing Systems 30 (NIPS)、6306-6315、2017」において提案された手法であり、特徴量抽出器(すなわちエンコーダ)によりエンコードされた入力データの特徴を表す潜在変数を受け取り、受け取った潜在変数を量子化し、量子化された潜在変数を特徴量復号器(すなわちデコーダ)に渡し、元の入力データが正しく再構成されたか否かによって、潜在変数の量子化の過程を学習する手法である。学習については後述する。
【0054】
なお、潜在モデル31Aは、VQ-VAEに代えて、自己符号化器(AutoEncoder)、VAE(Variational AutoEncoder)、GAN(Generative Adversarial Networks)、およびBiGAN(Bidirectional GAN)の手法等、任意の手法を用いて学習することが可能である。
【0055】
エンコーダ31を構成する畳み込みニューラルネットワークは、複数の処理層からなる。各処理層は畳み込み処理層であり、前段の処理層から入力される画像をダウンサンプリングしつつ、各種カーネルを用いた畳み込み処理を行う。カーネルは、予め定められた画素サイズ(例えば3×3)を有し、各要素に重みが設定されている。具体的には前段の入力された画像のエッジを強調する微分フィルタのような重みが設定されている。各処理層は、カーネルの注目画素をずらしながら、入力された画像または前段の処理層から出力された特徴量の全体にカーネルを適用し、特徴マップとして出力する。また、エンコーダ31の処理層は後段ほど特徴マップの解像度が小さくなっている。これにより、エンコーダ31は、入力される対象画像G0の特徴を、特徴マップの解像度が小さくなるように圧縮(すなわち次元圧縮)することにより符号化して、2つの潜在変数、すなわち第1の潜在変数z1および第2の潜在変数z2を出力する。第1の潜在変数z1は、対象画像G0における関心領域の異常さについての画像特徴を表し、第2の潜在変数z2は、対象画像G0における関心領域が正常な領域であったとした場合の画像についての画像特徴を表す。
【0056】
第1および第2の潜在変数z1,z2は、それぞれn×n個のD次元のベクトルからなる。
図4においては、例えばn=4であり、第1および第2の潜在変数z1,z2は、各位置がD次元のベクトルからなるn×nのマップとして表すことができる。なお、第1の潜在変数z1と第2の潜在変数z2とで、ベクトルの次元数およびベクトルの数を異なるものとしてもよい。ここで、第1の潜在変数z1が、関心領域の異常さについての画像特徴を表す特徴ベクトルに対応する。また、第2の潜在変数z2が、対象画像G0に含まれる関心領域が正常な領域であったとした場合の画像についての画像特徴を表す特徴ベクトルに対応する。
【0057】
ここで、本実施形態においては、潜在モデル31Aにおいて、第1の潜在変数z1に対して、関心領域の異常さついての代表的な画像特徴を表す、K個のD次元の第1の特徴ベクトルe1kが予め用意されている。また、潜在モデル31Aにおいて、第2の潜在変数z2に対して、関心領域が正常な領域であった場合の画像についての代表的な画像特徴を表す、K個のD次元の第2の特徴ベクトルe2kが予め用意されている。なお、第1の特徴ベクトルe1kおよび第2の特徴ベクトルe2kは、ストレージ13に記憶される。また、用意する第1の特徴ベクトルe1kの数と第2の特徴ベクトルe2kの数とを異なるものとしてもよい。
【0058】
画像符号化装置22は、潜在モデル31Aにおいて、第1の潜在変数z1に含まれるn×n個のD次元のベクトルのそれぞれを、第1の特徴ベクトルe1kにより置換する。この際、第1の潜在変数z1に含まれるn×n個のD次元のベクトルは、それぞれD次元のベクトル空間において、差が最小となる第1の特徴ベクトルe1kに置換される。
図5は、第1の特徴ベクトルへの置換を説明するための図である。なお、
図5においては、説明を容易なものとするために、潜在変数のベクトルを2次元で示している。また、
図5においては、4つの第1の特徴ベクトルe11~e14が用意されているものとする。
図5に示すように、第1の潜在変数z1に含まれる1つの潜在変数のベクトルz1-1は、ベクトル空間において、第1の特徴ベクトルe12との差が最小となる。このため、ベクトルz1-1は、第1の特徴ベクトルe12と置換される。また、第1の潜在変数z2についても、第1の潜在変数z1と同様に、n×n個のD次元のベクトルのそれぞれが第2の特徴ベクトルe2kのいずれかにより置換される。
【0059】
このように、第1の潜在変数z1に含まれるn×n個のD次元のベクトルのそれぞれを第1の特徴ベクトルe1kと置換することにより、第1の潜在変数z1は、n×n個の予め定められた値を持つ最大K個の潜在変数の組み合わせにより表されるものとなる。したがって、第1の潜在変数zd1は、D次元の潜在空間において量子化されて分布することとなる。
【0060】
また、第2の潜在変数z2に含まれるn×n個のD次元のベクトルのそれぞれを第2の特徴ベクトルe2kと置換することにより、第2の潜在変数z2は、n×n個の予め定められた値を持つ最大K個の潜在変数の組み合わせにより表されるものとなる。したがって、第2の潜在変数zd2は、D次元の潜在空間において量子化されて分布することとなる。
【0061】
量子化された第1および第2の潜在変数として参照符号zd1,zd2を用いる。なお、量子化された第1および第2の潜在変数zd1,zd2も、各位置がD次元のベクトルからなるn×nのマップとして表すことができる。量子化された第1および第2の潜在変数zd1,zd2が、それぞれ第1の特徴量および第2の特徴量に対応する。
【0062】
デコーダ32A~32Cを構成する畳み込みニューラルネットワークは、複数の処理層からなる。各処理層は畳み込み処理層であり、第1および第2の潜在変数zd1,zd2が第1および第2の特徴量として入力されると、前段の処理層から入力される特徴量をアップサンプリングしつつ、各種カーネルを用いた畳み込み処理を行う。各処理層は、カーネルの注目画素をずらしながら、前段の処理層から出力された特徴量からなる特徴マップの全体にカーネルを適用する。また、デコーダ32A~32Cの処理層は後段ほど特徴マップの解像度が大きくなっている。なお、後述するように類似画像検索装置が類似画像を検索する際には、デコーダ32A~32Cにおいて処理は行われない。しかしながら、ここでは、後述する学習の処理に必要であることから、画像符号化装置22により対象画像G0から導出された第1および第2の潜在変数zd1,zd2を用いて、デコーダ32A~32Cにおいて行われる処理を説明する。
【0063】
本実施形態においては、デコーダ32Aには、第1の潜在変数zd1が入力される。デコーダ32Aは、第1の潜在変数zd1に基づいて、エンコーダ31に入力された対象画像G0の関心領域の異常さの種類に応じた関心領域ラベル画像V0を導出する。
【0064】
デコーダ32Bには、第2の潜在変数zd2が入力される。デコーダ32Bは、第2の潜在変数zd2に基づいて、エンコーダ31に入力された対象画像G0に含まれる関心領域が正常な領域であったとした場合の画像についての画像特徴を再構成した第1の再構成画像V1を導出する。このため、対象画像G0に関心領域が含まれていても、第1の再構成画像V1には関心領域が含まれず、その結果、第1の再構成画像V1に含まれる脳は正常組織のみからなるものとなる。
【0065】
デコーダ32Cには、第2の潜在変数zd2が入力される。また、デコーダ32Cの各処理層には、各処理層の解像度に応じたサイズの関心領域ラベル画像V0が側副的に入力される。具体的には、各処理層の解像度に応じたサイズの関心領域ラベル画像V0の特徴マップが側副的に入力される。なお、側副的に入力される特徴マップは、デコーダ32Aにおいて、関心領域ラベル画像V0を導出する直前の処理層から出力される特徴マップを、デコーダ32Cの各処理層の解像度に応じたサイズとなるように縮小することにより導出してもよい。あるいは、デコーダ32Aが関心領域ラベル画像V0を導出する過程において導出した、各処理層の解像度に応じたサイズの特徴マップを、デコーダ32Cの各処理層に入力してもよい。以降の説明においては、関心領域ラベル画像V0を導出する直前の処理層から出力される特徴マップを、デコーダ32Cの各処理層の解像度に応じたサイズとなるように縮小することにより、デコーダ32Cの各処理層に側副的に入力するものとする。
【0066】
ここで、関心領域ラベル画像V0および特徴マップは、第1の潜在変数zd1に基づいて導出されるものである。このため、デコーダ32Cは、第1および第2の潜在変数zd1,zd2に基づいて、入力された対象画像G0の画像特徴を再構成した第2の再構成画像V2を導出することとなる。これにより、第2の再構成画像V2は、第2の潜在変数zd2に基づく、第1の再構成画像V1に含まれる正常組織のみからなる脳についての画像特徴に対して、第1の潜在変数zd1に基づく、疾患の種類に応じて定められた領域の異常さについての画像特徴が付加されたものとなる。したがって、第2の再構成画像V2は、入力された対象画像G0の画像特徴を再構成したものとなる。
【0067】
学習装置24の学習部24Aは、画像符号化装置22のエンコーダ31および潜在モデル31A、並びに画像復号化装置23のデコーダ32A~32Cの学習を行う。
図6は学習に使用する教師データの例を示す図である。
図6に示すように、教師データ35は、梗塞あるいは出血等の関心領域37を含む脳の教師画像36と、教師画像36における関心領域の異常さの種類に応じた教師ラベル画像38とを有する。
【0068】
学習部24Aは、エンコーダ31に教師画像36を入力し、教師画像36についての第1の潜在変数z1および第2の潜在変数z2を出力させる。なお、以降の説明においては、教師画像36についての第1の潜在変数および第2の潜在変数についても、参照符号としてz1,z2を用いるものとする。
【0069】
次いで、学習部24Aは、第1の潜在変数z1および第2の潜在変数z2に含まれる潜在変数のベクトルを、潜在モデル31Aにおいて第1および第2の特徴ベクトルによりそれぞれ置換することにより、量子化された第1の潜在変数zd1および第2の潜在変数zd2を取得する。なお、以降の説明においては、教師画像36についての量子化された第1の潜在変数および第2の潜在変数についても、参照符号としてzd1,zd2を用いるものとする。教師画像36についての、量子化された第1の潜在変数zd1および第2の潜在変数zd2が、第1の学習用特徴量および第2の学習用特徴量にそれぞれ対応する。
【0070】
そして、学習部24Aは、第1の潜在変数zd1をデコーダ32Aに入力して、教師画像36に含まれる関心領域37の異常さについての種類に応じた学習用関心領域ラベル画像VT0を導出させる。また、学習部24Aは、第2の潜在変数zd2をデコーダ32Bに入力して、教師画像36に含まれる関心領域37が正常な領域であったとした場合の画像についての画像特徴を再構成した第1の学習用再構成画像VT1を導出させる。さらに、学習部24Aは、第2の潜在変数zd2をデコーダ32Cに入力し、デコーダ32Cの各処理層に、各処理層の解像度に応じたサイズの学習用関心領域ラベル画像VT0、具体的には学習用関心領域ラベル画像VT0の特徴マップを側副的に入力して、教師画像36についての画像特徴を再構成した第2の学習用再構成画像VT2を導出させる。なお、第2の学習用再構成画像VT2の導出に際し、学習用関心領域ラベル画像VT0を導出する直前の処理層から出力される特徴マップを、デコーダ32Cの各処理層の解像度に応じたサイズとなるように縮小することにより、デコーダ32Cの各処理層に側副的に入力すればよい。
【0071】
学習部24Aは、第1の学習用特徴量である第1の潜在変数zd1と予め定められた第1の特徴量の確率分布との差を第1の損失L1として導出する。ここで、予め定められた第1の特徴量の確率分布とは、第1の潜在変数zd1が従うべき確率分布である。VQ-VAEの手法を用いた場合、コードワード損失およびコミットメント損失が、第1の損失L1として導出される。コードワード損失とは、第1の特徴量の確率分布における代表的な局所特徴であるコードワードが取るべき値である。コミットメント損失とは、第1の潜在変数zd1と、第1の潜在変数zd1に最も近いコードワードとの距離である。第1の損失L1によって、予め定められた第1の特徴量の確率分布にしたがった第1の潜在変数zd1が取得されるように、エンコーダ31および潜在モデル31Aが学習される。
【0072】
また、学習部24Aは、第2の学習用特徴量である第2の潜在変数zd2と予め定められた第2の特徴量の確率分布との差を第2の損失L2として導出する。ここで、予め定められた第2の特徴量の確率分布とは、第2の潜在変数zd2が従うべき確率分布である。VQ-VAEの手法を用いた場合、第1の損失L1と同様に、コードワード損失およびコミットメント損失が、第2の損失L2として導出される。第2の潜在変数zd2に関するコードワード損失とは、第2の特徴量の確率分布における代表的な局所特徴であるコードワードが取るべき値である。第2の潜在変数zd2に関するコミットメント損失とは、第2の潜在変数zd2と、第2の潜在変数zd2に最も近いコードワードとの距離である。第2の損失L2によって、予め定められた第2の特徴量の確率分布にしたがった第2の潜在変数zd2が取得されるように、エンコーダ31および潜在モデル31Aが学習される。
【0073】
また、学習部24Aは、教師画像36に含まれる関心領域37の異常さについての種類に応じた教師ラベル画像38と、学習用関心領域ラベル画像VT0との教師画像に対するセマンティックセグメンテーションとしての差を第3の損失L3として導出する。
【0074】
「セマンティックセグメンテーションとしての差」とは、教師ラベル画像38により表される異常さの種類に応じた領域と、学習用関心領域ラベル画像VT0により表される異常さの種類に応じた領域との重なりに基づいて定められる指標である。具体的には、教師ラベル画像38の要素数と学習用関心領域ラベル画像VT0の要素数との和に対する、教師ラベル画像38と学習用関心領域ラベル画像VT0との共通の要素数×2の値をセマンティックセグメンテーションとしての差、すなわち第3の損失L3として用いることができる。
【0075】
また、学習部24Aは、教師画像36に含まれる関心領域37外の領域と第1の学習用再構成画像VT1との差を、第4の損失L4として導出する。具体的には、学習部24Aは、教師画像36から関心領域37を除去した領域と、第1の学習用再構成画像VT1との差を第4の損失L4として導出する。
【0076】
また、学習部24Aは、教師画像36と第2の学習用再構成画像VT2との差を、第5の損失L5として導出する。
【0077】
さらに、学習部24Aは、第1の学習用再構成画像VT1と第2の学習用再構成画像VT2との、関心領域内外にそれぞれ対応する領域間の差に基づく第6の損失L6を導出する。
【0078】
第6の損失L6に関し、第1の学習用再構成画像VT1は、教師画像36における関心領域37が正常な領域であったとした場合の画像であり、関心領域を含まないように導出される。一方、第2の学習用再構成画像VT2は関心領域を含むように導出される。このため、第1の学習用再構成画像VT1と第2の学習用再構成画像VT2との対応する画素についての差分値を導出すると、関心領域に対応する領域においてのみ差分値が存在し、関心領域に対応しない領域においては、差分値は存在しないはずである。しかしながら、学習が終了していない段階においては、符号化および復号化の精度が低いことから、関心領域に対応する領域において差分値が存在しない場合がある。また、関心領域に対応しない領域において差分値が存在する場合もある。第1の学習用再構成画像VT1と第2の学習用再構成画像VT2との、関心領域内外にそれぞれ対応する領域間の差に基づく第6の損失L6とは、第1の学習用再構成画像VT1と第2の学習用再構成画像VT2との対応する画素についての差分値を導出した際に、関心領域に対応する領域において差分値が存在し、かつ関心領域に対応しない領域において差分値が存在しないことを表す指標となる。
【0079】
ここで、エンコーダ31および潜在モデル31Aにより取得された第1の潜在変数zd1が、予め定められた第1の特徴量の確率分布に従うほど、エンコーダ31からは教師画像36に含まれる関心領域37の異常さを忠実に再現可能な好ましい第1の潜在変数z1を出力することが可能となる。また、潜在モデル31Aによってより好ましい量子化された第1の潜在変数zd1を取得することが可能となる。
【0080】
また、エンコーダ31および潜在モデル31Aにより取得された第2の潜在変数zd2が、予め定められた第2の特徴量の確率分布に従うほど、エンコーダ31からは、教師画像36に含まれる関心領域37が正常な領域であったとした場合の画像を忠実に再現可能な好ましい第2の潜在変数z2を出力することが可能となる。また、潜在モデル31Aによってより好ましい量子化された第2の潜在変数zd2を取得することが可能となる。
【0081】
また、デコーダ32Aから出力される学習用関心領域ラベル画像VT0は、第1の潜在変数zd1に基づいて導出されるため、教師ラベル画像38とは完全には一致しない。また、学習用関心領域ラベル画像VT0は、教師画像36に含まれる関心領域37と完全には一致しない。しかしながら、学習用関心領域ラベル画像VT0と教師ラベル画像38との教師画像36に対するセマンティックセグメンテーションとしての差が小さいほど、対象画像G0が入力された場合に、エンコーダ31からはより好ましい第1の潜在変数z1を出力することが可能となる。すなわち、対象画像G0におけるどこが関心領域であるかを表す情報および関心領域の異常さについての画像特徴を潜在的に含む第1の潜在変数z1を出力することが可能となる。また、潜在モデル31Aによってより好ましい量子化された第1の潜在変数zd1を取得することが可能となる。したがって、エンコーダ31により対象画像G0から関心領域を抽出しつつ、関心領域の異常さについての画像特徴を表す第1の潜在変数zd1が導出されることとなる。また、デコーダ32Aからは対象画像に含まれる関心領域に対応する領域に関して、関心領域の異常さについての種類に応じた関心領域ラベル画像V0を出力することが可能となる。
【0082】
また、デコーダ32Bから出力される第1の学習用再構成画像VT1は、第2の潜在変数zd2に基づいて導出されるため、教師画像36に含まれる関心領域37が正常な領域であったとした場合の画像についての画像特徴とは完全には一致しない。しかしながら、第1の学習用再構成画像VT1と教師画像36における関心領域37でない領域との差が小さいほど、対象画像G0が入力された場合に、エンコーダ31からはより好ましい第2の潜在変数z2を出力することが可能となる。また、潜在モデル31Aによってより好ましい量子化された第2の潜在変数zd2を取得することが可能となる。また、デコーダ32Bからは対象画像G0に含まれる関心領域が正常な領域であったとした場合の画像についての画像特徴により近い第1の再構成画像V1を出力することが可能となる。
【0083】
また、デコーダ32Cから出力される第2の学習用再構成画像VT2は、第1の潜在変数zd1および第2の潜在変数zd2に基づいて導出されるため、教師画像36とは完全には一致しない。しかしながら、第2の学習用再構成画像VT2と教師画像36との差が小さいほど、対象画像G0が入力された場合に、エンコーダ31からはより好ましい第1の潜在変数z1および第2の潜在変数z2を出力することが可能となる。また、潜在モデル31Aによってより好ましい量子化された第1の潜在変数zd1および量子化された第2の潜在変数zd2を取得することが可能となる。また、デコーダ32Cからは対象画像G0により近い第2の再構成画像V2を出力することが可能となる。
【0084】
また、デコーダ32Bから出力される第1の学習用再構成画像VT1とデコーダ32Cから出力される第2の学習用再構成画像VT2とは、関心領域の存在の有無に差異がある。このため、関心領域に対応する領域においては第1の学習用再構成画像VT1と第2の学習用再構成画像VT2との差分値が一定値以上担保されているほど、かつ関心領域に対応しない領域においては第1の学習用再構成画像VT1と第2の学習用再構成画像VT2との差の絶対値が小さいほど、対象画像G0が入力された場合に、エンコーダ31からはより好ましい第1の潜在変数z1および第2の潜在変数z2を出力することが可能となる。また、潜在モデル31Aによってより好ましい量子化された第1の潜在変数zd1および量子化された第2の潜在変数zd2を取得することが可能となる。また、デコーダ32Bからは対象画像G0に含まれる関心領域が正常な領域であったとした場合の画像により近い第1の再構成画像V1を出力することが可能となる。さらに、デコーダ32Cからは対象画像G0により近い第2の再構成画像V2を出力することが可能となる。
【0085】
このため、学習部24Aは、上述したように導出した第1から第6の損失L1~L6のうちの少なくとも1つに基づいて、エンコーダ31、潜在モデル31Aおよびデコーダ32A~32Cの学習を行う。本実施形態においては、学習部24Aは、第1から第6の損失L1~L6のすべてが、予め定められた条件を満足するように、エンコーダ31、潜在モデル31Aおよびデコーダ32A~32Cを学習する。すなわち、第1から第5の損失L1~L5が小さくなり、第6の損失L6が適切な値となるように、エンコーダ31およびデコーダ32A~32Cを構成する処理層の数、プーリング層の数、処理層におけるカーネルの係数、カーネルの大きさおよび各層間の結合の重み等を導出することにより、エンコーダ31およびデコーダ32A~32Cを学習する。また、学習部24Aは、潜在モデル31Aについては、第1から第5の損失L1~L5が小さくなり、第6の損失L6が適切な値となるように、第1の特徴ベクトルe1kおよび第2の特徴ベクトルe2kを更新する。
【0086】
なお、本実施形態においては、学習部24Aは、第1の損失L1が予め定められたしきい値Th1以下となり、第2の損失L2が予め定められたしきい値Th2以下となり、第3の損失L3が予め定められたしきい値Th3以下となり、第4の損失L4が予め定められたしきい値Th4以下となり、第5の損失L5が予め定められたしきい値Th5以下となるように、エンコーダ31、潜在モデル31Aおよびデコーダ32A~32Cを学習する。また、学習部24Aは、第6の損失L6について、関心領域に対応する領域においては第1の学習用再構成画像VT1と第2の学習用再構成画像VT2との差の絶対値が予め定められたしきい値Th6以上となり、関心領域に対応しない領域においては第1の学習用再構成画像VT1と第2の学習用再構成画像VT2との差分値が予め定められたしきい値Th7以下となるように、エンコーダ31、潜在モデル31Aおよびデコーダ32A~32Cを学習する。なお、しきい値を使用する学習に代えて,予め定められた回数の学習を行うようにしてもよく、各損失L1~L6が最小あるいは最大になるように学習を行うようにしてもよい。
【0087】
このように学習部24Aがエンコーダ31、潜在モデル31Aおよびデコーダ32A~32Cの学習を行うことにより、エンコーダ31は、入力される対象画像G0に含まれる脳の関心領域の異常さの画像特徴をより適切に表す第1の潜在変数z1を出力するようになる。また、エンコーダ31は、入力される対象画像G0に含まれる脳において、関心領域が正常な領域であったとした場合の脳の画像特徴をより適切に表す第2の潜在変数z2を出力するようになる。また、潜在モデル31Aは、入力される対象画像G0に含まれる脳の関心領域の異常さを表す画像特徴をより適切に表す量子化された第1の潜在変数zd1を取得するようになる。また、潜在モデル31Aは、入力される対象画像G0に含まれる脳において、関心領域が正常な領域であったとした場合の脳の画像特徴をより適切に表す量子化された第2の潜在変数zd2を取得するようになる。
【0088】
また、デコーダ32Aは、量子化された第1の潜在変数zd1が入力されると、対象画像G0に含まれる関心領域の異常さの種類に応じたセマンティックセグメンテーションをより正確に表す関心領域ラベル画像V0を出力するようになる。また、デコーダ32Bは、量子化された第2の潜在変数zd2が入力されると、対象画像G0における、関心領域が仮に正常な領域であった場合の脳の画像特徴を再構成した第1の再構成画像V1を出力するようになる。また、デコーダ32Cは、量子化された第2の潜在変数zd2が入力され、かつ各処理層に関心領域ラベル画像V0が側副的に入力されると、第2の潜在変数zd2に基づく、第1の再構成画像V1に含まれる正常組織のみからなる脳についての画像特徴に対して、第1の潜在変数zd1に基づく、疾患の種類に応じて定められた領域の異常さについての画像特徴が付加され、その結果、関心領域を含む脳の画像特徴を再構成した第2の再構成画像V2を出力するようになる。
【0089】
類似画像検索装置25の類似度導出部25Aは、画像保管サーバ3に保管された画像データベースDBに登録された参照画像のうち、診断の対象となるクエリ画像(すなわち対象画像G0)と類似する類似参照画像を検索すべく、クエリ画像と画像データベースDBに登録されたすべての参照画像との類似度を導出する。なお、以降の説明においては、クエリ画像として対象画像と同一の参照符号G0を用いるものとする。ここで、画像データベースDBには、脳の各種症例についての複数の参照画像が登録されている。本実施形態においては、参照画像について、学習済みのエンコーダ31を含む画像符号化装置22により、量子化された第1および第2の潜在変数が予め導出されて、参照画像と対応づけられて画像データベースDBに登録されている。参照画像と対応づけられて画像データベースDBに登録された第1および第2の潜在変数を、第1および第2の参照潜在変数と称する。
【0090】
以下、類似度導出部25Aにおける類似度の導出について説明する。本実施形態においては、クエリ画像G0には脳の疾患である関心領域が含まれているものとする。類似度導出部25Aは、検索条件に基づいて、クエリ画像G0と参照画像との類似度を導出する。
【0091】
ここで、本実施形態においては、画像符号化装置22により、クエリ画像G0に含まれる関心領域の異常さについての画像特徴を表す第1の潜在変数が導出される。また、画像符号化装置22により、クエリ画像G0における関心領域が正常な領域であったとした場合の画像についての画像特徴を表す第2の潜在変数が導出される。このため、本実施形態においては、検索条件として、関心領域も含めてクエリ画像G0と類似する参照画像を検索する第1の検索条件、クエリ画像G0に含まれる関心領域の異常さのみが類似する参照画像を検索する第2の検索条件、およびクエリ画像G0に含まれる関心領域が正常な領域であったとした場合の画像が類似する参照画像を検索する第3の検索条件が選択可能となっている。選択は、入力デバイス15を用いて画像処理システム20に入力することができる。そして、類似度導出部25Aは、入力された検索条件にしたがって、クエリ画像G0と参照画像との類似度を導出する。
【0092】
第1の検索条件が入力された場合、類似度導出部25Aは、クエリ画像G0について導出された第1の潜在変数zd1と参照画像に対応する第1の参照潜在変数との差、およびクエリ画像G0について導出された第2の潜在変数zd2と参照画像に対応する第2の参照潜在変数との差に基づいて、類似度を導出する。
【0093】
具体的には、類似度導出部25Aは、下記の式(1)に示すように、潜在変数のベクトル空間において、第1の潜在変数zd1と第1の参照潜在変数とのマップにおける対応する位置のベクトルのユークリッド距離√{(Vt1(i,j)-Vr1(i,j)}2を導出し、導出したユークリッド距離の総和Σ[√{(Vt1(i,j)-Vr1(i,j)}2]を導出する。また、類似度導出部25Aは、第2の潜在変数zd2と第2の参照潜在変数とのマップにおける対応する位置のベクトルのユークリッド距離√{(Vt2(i,j)-Vr2(i,j)}2を導出し,導出したユークリッド距離の総和Σ[√{(Vt2(i,j)-Vr2(i,j)}2]を導出する。そして、類似度導出部25Aは、2つの総和の和を類似度として導出する。
【0094】
式(1)において、S1は第1の検索条件に基づく類似度、Vt1(i,j)は、第1の潜在変数zd1におけるマップの位置(i,j)におけるベクトル、Vr1(i,j)は、第1の参照潜在変数におけるマップの位置(i,j)におけるベクトル、Vt2(i,j)は、第2の潜在変数zd2におけるマップの位置(i,j)におけるベクトル、Vr2(i,j)は、第2の参照潜在変数におけるマップの位置(i,j)におけるベクトルをそれぞれ表す。
【0095】
S1=Σ[√{(Vt1(i,j)-Vr1(i,j)}2]+Σ[√{(Vt2(i,j)-Vr2(i,j)}2] (1)
【0096】
なお、上記式(1)に代えて、下記の式(1a)により、類似度S1を導出してもよい。ここで、concat(a,b)とはベクトルaとベクトルbとを連結する演算である。
S1 = Σ[√{(Vt12(i,j)-Vr12(i,j)}2] (1a)
但し、
Vt12(i,j) = concat(Vt1(i,j),Vt2(i,j))
Vr12(i,j) = concat(Vr1(i,j),Vr2(i,j))
【0097】
一方、第2の検索条件が入力された場合、類似度導出部25Aは、クエリ画像G0について導出された第1の潜在変数zd1と参照画像に対応する第1の参照潜在変数との差に基づいて、類似度を導出する。具体的には、類似度導出部25Aは、潜在変数のベクトル空間において、下記の式(2)に示すように、第1の潜在変数zd1と第1の参照潜在変数とのマップにおける対応する位置のベクトルのユークリッド距離√{(Vt1(i,j)-Vr1(i,j)}2を導出し、導出したユークリッド距離の総和Σ[√{(Vt1(i,j)-Vr1(i,j)}2]を類似度S2として算出する。
【0098】
S2=Σ[√{(Vt1(i,j)-Vr1(i,j)}2] (2)
【0099】
さらに、第3の検索条件が入力された場合、類似度導出部25Aは、クエリ画像G0について導出された第2の潜在変数zd2と参照画像に対応する第2の参照潜在変数との差に基づいて、類似度を導出する。具体的には、類似度導出部25Aは、潜在変数のベクトル空間において、下記の式(3)に示すように、第2の潜在変数zd2と第2の参照潜在変数とのマップにおける対応する位置のベクトルのユークリッド距離√{(Vt2(i,j)-Vr2(i,j)}2を導出し、導出したユークリッド距離の総和Σ[√{(Vt2(i,j)-Vr2(i,j)}2]を類似度S3として算出する。
【0100】
S3=[√{(Vt2(i,j)-Vr2(i,j)}2] (3)
【0101】
なお、類似度S1~S3の導出は、上記手法に限定されるものではない。ユークリッド距離に代えて、マンハッタン距離、ベクトル内積あるいはコサイン類似度等を用いてもよい。
【0102】
類似画像検索装置25の抽出部25Bは、画像データベースDBから、入力された検索条件に応じた類似度S1~S3に基づいて、クエリ画像G0に類似する
類似参照画像を抽出する。抽出部25Bは、クエリ画像G0と画像データベースDBに登録されたすべての参照画像との類似度S1~S3に基づいて、対象画像G0に類似する参照画像を類似参照画像として抽出する。具体的には、抽出部25Bは、類似度S1~S3が大きい順に参照画像をソートして検索結果リストを作成する。
図7は検索結果リストを示す図である。
図7に示すように、検索結果リスト50には、画像データベースDBに登録された参照画像が、類似度S1~S3が大きい順にソートされている。そして、抽出部25Bは、検索結果リスト50におけるソート順が上位所定数の参照画像を、画像データベースDBから類似参照画像として抽出する。
【0103】
表示制御部26は、抽出部25Bによる抽出結果をディスプレイ14に表示する。
図8~
図10はそれぞれ第1から第3の検索条件に基づく抽出結果の表示画面を示す図である。
図8~10に示すように、
抽出結果の表示画面40は、クエリ画像G0
を表示する第1の
表示領域41および検索結果を表示する第2の表示領域42を含む。また、表示画面40は、検索条件を選択するためのプルダウンメニュー43および検索を実行するための検索実行ボタン44を含む。なお、プルダウンメニュー43は、第1の検索条件を表す「関心領域+正常領域」、第2の検索条件を表す「関心領域のみ」、および第3の検索条件を表す「正常領域のみ」を選択可能となっている。操作者が、プルダウンメニュー43において所望とする検索条件を選択し、検索実行ボタン44を選択することにより、本実施形態の処理が実行されて、検索結果の表示画面40がディスプレイ14に表示される。
【0104】
図8に示すように、第1の検索条件に基づく検索結果の表示画面40の第2の表示領域42には、クエリ画像G0に含まれる関心領域も含めて、クエリ画像G0と類似する4つの類似参照画像R11~R14が表示されている。また、
図9に示すように、第2の検索条件に基づく表示画面の第2の表示領域42には、クエリ画像G0に含まれる関心領域の異常さのみが類似する4つの類似参照画像R21~R24が表示されている。また、
図10に示すように、第3の検索条件に基づく検索結果の表示画面40の第2の表示領域42には、クエリ画像G0に含まれる脳において関心領域が正常な領域であったとした場合の画像が類似する4つの類似参照画像R31~R34が表示されている。
【0105】
次いで、本実施形態において行われる処理について説明する。
図11は本実施形態において行われる学習処理を示すフローチャートである。なお、複数の教師データは画像保管サーバ3から取得されてストレージ13に保存されているものとする。まず、学習装置24の学習部24Aは、教師画像36および教師ラベル画像38を含む1つの教師データ35をストレージ13から取得し(ステップST1)、教師データ35に含まれる、教師画像36を画像符号化装置22のエンコーダ31に入力する。エンコーダ31は、第1の潜在変数z1および第2の潜在変数z2を、それぞれ第1の学習用特徴量および第2の学習用特徴量として導出する(学習用特徴量導出;ステップST2)。
【0106】
次いで、学習部24Aは、第1の潜在変数z1および第2の潜在変数z2から、量子化された第1の潜在変数zd1および量子化された第2の潜在変数zd2を導出する(量子化;ステップST3)。そして学習部24Aは、量子化された第1の潜在変数zd1を画像復号化装置23のデコーダ32Aに入力する。これにより、デコーダ32Aは、教師画像36から関心領域37の異常さについての種類に応じた学習用関心領域ラベル画像VT0を導出する。また、学習部24Aは、量子化された第2の潜在変数zd2を画像復号化装置23のデコーダ32Bに入力する。これにより、デコーダ32Bは、教師画像36に含まれる関心領域が正常な領域であったとした場合の画像を再構成した第1の学習用再構成画像VT1を導出する。さらに、学習部24Aは、第2の潜在変数zd2をデコーダ32Cに入力し、さらにデコーダ32Cの各処理層の解像度に応じたサイズの学習用関心領域ラベル画像VT0を、デコーダ32Cの各処理層に側副的に入力する。これにより、デコーダ32Cは教師画像36の画像特徴を再構成した第2の学習用再構成画像VT2を導出する(学習用画像導出;ステップST4)。
【0107】
続いて、学習部24Aは、上述したように第1から第6の損失L1~L6を導出する(ステップST5)。
【0108】
そして、学習部24Aは、第1から第6の損失L1~L6が、予め定められた条件を満足するか否かを判定する(条件判定;ステップST6)。ステップST6が否定されると、学習部24Aは新たな教師データをストレージ13から取得し(ステップST7)、ステップST2の処理に戻り、新たな教師データを用いてステップST2~ステップST6の処理を繰り返す。ステップST6が肯定されると、学習部24Aは学習処理を終了する。これにより、画像符号化装置22のエンコーダ31および画像復号化装置23のデコーダ32A~32Cが構築される。
【0109】
次いで、本実施形態において行われる類似画像検索処理について説明する。
図12は、本実施形態において行われる類似画像検索処理のフローチャートである。まず、情報取得部21が、検索の対象となるクエリ画像G0を取得し(ステップST11)、表示制御部26が、クエリ画像G0をディスプレイ14に表示する(ステップST12)。そして、プルダウンメニュー43において検索条件が指定されて、検索実行ボタン44が選択されることにより検索実行が指示されると(ステップST13;YES)、画像符号化装置22が、クエリ画像G0についての量子化された第1の潜在変数zd1および量子化された第2の潜在変数zd2を第1の特徴量および第2の特徴量として導出する(特徴量導出;ステップST14)。そして、類似度導出部25Aが、第1および第2の特徴量に基づいて、対象画像G0と画像保管サーバ3の画像データベースDBに登録された参照画像との類似度を導出する(ステップST15)。次いで、抽出部25Bが、検索条件に応じて、類似度が上位所定数の参照画像を類似参照画像として抽出する(ステップST16)。さらに、表示制御部26が、類似参照画像を表示画面40の第2の表示領域42に表示し(検索結果表示;ステップST17)、処理を終了する。
【0110】
このように、本実施形態においては、画像符号化装置22のエンコーダ31において、対象画像G0を符号化することにより、対象画像G0に含まれる関心領域の異常さについての画像特徴を表す少なくとも1つの第1の特徴量を導出するようにした。また、エンコーダ31において、対象画像G0を符号化することにより、対象画像G0に含まれる関心領域が正常な領域であったとした場合の画像についての画像特徴を表す少なくとも1つの第2の特徴量を導出するようにした。これにより、対象画像G0を符号化することによって、対象画像G0に含まれる関心領域の異常さについての画像特徴と、関心領域が正常な領域であったとした場合の画像についての画像特徴とを、分離して扱うことが可能となる。
【0111】
また、対象画像G0に含まれる関心領域に含まれる疾患の種類に応じて定められた領域についての画像特徴を、関心領域が正常な領域であったとした場合の画像についての画像特徴からの差分として扱うことにより、対象画像G0に含まれる関心領域の異常さについての画像特徴を表す第1の特徴量のみを用いた、対象画像G0に類似する参照画像の検索を行うことができる。また、対象画像G0に含まれる関心領域が正常な領域であったとした場合についての画像の画像特徴を表す第2の特徴量のみを用いた、対象画像G0に類似する参照画像の検索を行うことができる。また、第1および第2の特徴量の双方を用いた、対象画像G0に類似する参照画像の検索を行うことができる。したがって、所望とする検索条件に応じた類似画像の検索を行うことができる。
【0112】
また、本実施形態においては、画像復号化装置23の学習済みのデコーダ32Aを用いることにより、第1の特徴量から、入力された対象画像G0に含まれる関心領域の異常さについての種類に応じた関心領域ラベル画像V0を導出することができる。これにより、対象画像G0に含まれる疾患の種類に応じて定められた領域をラベル画像として取得することができる。
【0113】
また、本実施形態においては、画像復号化装置23の学習済みのデコーダ32Bを用いることにより、第2の特徴量から、入力された対象画像G0に含まれる関心領域が仮に正常な領域であった場合の画像についての画像特徴を再構成した第1の再構成画像V1を導出することができる。これにより、入力された画像から関心領域を除去した正常組織のみからなる画像を取得することができる。
【0114】
また、本実施形態においては、画像復号化装置23の学習済みのデコーダ32Cを用いることにより、対象画像G0についての画像特徴を再構成した第2の再構成画像V2を導出することができる。これにより、対象画像G0を再現することができる。
【0115】
なお、本実施形態による画像符号化装置においては、対象画像が異常な領域を関心領域として含まない場合、第1の特徴量が無効な値となる。この場合、第2の特徴量、あるいは第1の特徴量および第2の特徴量の組み合わせは、対象画像についての画像特徴を表すものであってもよい。
【0116】
なお、上記実施形態においては、脳を対象画像として用いているが、対象画像は脳に限定されるものではない。脳の他に、肺、心臓、肝臓、腎臓、および四肢等の人体の任意の部位を含む画像を対象画像とすることができる。この場合、部位に現れる腫瘤、梗塞、癌および骨折等の疾患を関心領域として含む教師画像および教師ラベル画像を用いて、エンコーダ31およびデコーダ32A~32Cの学習を行えばよい。これにより、対象画像G0から、対象画像G0に含まれる部位に応じた関心領域の異常さについての画像特徴を表す第1の特徴量および、対象画像G0に含まれる関心領域が正常な領域であったとした場合の画像についての画像特徴を表す第2の特徴量を導出することが可能となる。
【0117】
また、上記実施形態においては、第1の特徴量導出部22Aおよび第2の特徴量導出部22Bのそれぞれについて、別々の符号化学習モデルを使用し、別々の符号化学習モデルにより、第1の特徴量および第2の特徴量をそれぞれ導出するようにしてもよい。
【0118】
また、上記実施形態において、例えば、情報取得部21、第1の特徴量導出部22A、第2の特徴量導出部22B、セグメンテーション部23A、第1の再構成部23B、第2の再構成部23C、学習部24A、類似度導出部25A、抽出部25Bおよび表示制御部26といった各種の処理を実行する処理部(Processing Unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(Processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、上述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device :PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0119】
1つの処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせまたはCPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0120】
複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントおよびサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアとの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0121】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(Circuitry)を用いることができる。
【符号の説明】
【0122】
1 コンピュータ
2 撮影装置
3 画像保管サーバ
4 ネットワーク
11 CPU
12A 画像符号化プログラム
12B 画像復号化プログラム
12C 学習プログラム
12D 類似画像検索プログラム
13 ストレージ
14 ディスプレイ
15 入力デバイス
16 メモリ
17 ネットワークI/F
18 バス
20 画像処理システム
21 情報取得部
22 画像符号化装置
22A 第1の特徴量導出部
22B 第2の特徴量導出部
23 画像復号化装置
23A セグメンテーション部
23B 第1の再構成部
23C 第2の再構成部
24 学習装置
24A 学習部
25 類似画像検索装置
25A 類似度導出部
25B 抽出部
26 表示制御部
31 エンコーダ
31A 潜在モデル
32A~32C デコーダ
35 教師データ
36 教師画像
37 関心領域
38 教師ラベル画像
40 表示画面
41 第1の表示領域
42 第2の表示領域
43 プルダウンメニュー
44 検索実行ボタン
G0 対象画像
50 検索結果リスト
R11~R14、R21~R24、R31~R34 類似参照画像
V0 関心領域ラベル画像
V1 第1の再構成画像
V2 第2の再構成画像
VT0 学習用関心領域ラベル画像
VT1 学習用第1の再構成画像
VT2 学習用第2の再構成画像
z1 第1の潜在変数
z2 第2の潜在変数
zd1 量子化された第1の潜在変数
zd2 量子化された第2の潜在変数