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特許7444408発泡成形品用補強材に用いられる不織布、発泡成形品用補強材、及び発泡成形品用補強材に用いられる不織布の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】発泡成形品用補強材に用いられる不織布、発泡成形品用補強材、及び発泡成形品用補強材に用いられる不織布の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/498 20120101AFI20240228BHJP
   B29C 39/10 20060101ALI20240228BHJP
   B32B 5/06 20060101ALI20240228BHJP
   D04H 1/485 20120101ALI20240228BHJP
   D04H 1/541 20120101ALI20240228BHJP
   D04H 1/544 20120101ALI20240228BHJP
   D04H 1/55 20120101ALI20240228BHJP
【FI】
D04H1/498
B29C39/10
B32B5/06 A
D04H1/485
D04H1/541
D04H1/544
D04H1/55
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021168789
(22)【出願日】2021-10-14
(65)【公開番号】P2023058955
(43)【公開日】2023-04-26
【審査請求日】2023-12-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516190138
【氏名又は名称】株式会社AETEC-α
(73)【特許権者】
【識別番号】000241485
【氏名又は名称】豊田通商株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】516190127
【氏名又は名称】豊通ヴィーテクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】岩田 康二
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/049627(WO,A1)
【文献】特開2013-129950(JP,A)
【文献】特開2013-076179(JP,A)
【文献】特開2012-007260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00 - 18/04
B29C 39/00 - 39/44
B32B 1/00 - 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡成形品を補強するために発泡成形材に接合される発泡成形品用補強材に用いられる不織布であって、前記不織布は、
短繊維から形成されたウェブを重ね合わせることによって積層された前記ウェブの短繊維同士が相互に結合された単層材であり、
7g/cm荷重での厚さが1~8mmであり、
層間剥離強度が0.05~2.45N/cmであり、前記層間剥離強度は、積層された前記ウェブ同士を互いに剥離させるのに要する引っ張り力の値であって、前記層間剥離強度の測定方法は
前記不織布からなる、幅3cmの長尺の試験片を作成する第1準備工程と、
前記試験片の長手方向の端部領域において、前記不織布の積層された前記ウェブ同士を剥離させて第1層と第2層とに分離させることにより、前記端部領域を層間剥離させる第2準備工程と、
剥離した前記第1層と前記第2層とを引張試験器にて別々に保持して、前記試験片の前記端部領域に続く部分を引張速度970mm/分で20cm層間剥離させる剥離工程と、
前記剥離工程において層間剥離に要する力の最大値を測定する測定工程と、
を含む試験を10回行うことを含み、
10回の前記試験における前記最大値の平均値が前記層間剥離強度であり、
熱処理された第1面と、
前記第1面の反対側の第2面であって、熱処理された第2面と、
前記第1面と前記第2面との間にある熱処理されていない内部繊維と、
を含む、
発泡成形品用補強材に用いられる不織布。
【請求項2】
前記ウェブは、重量比20%~60%のポリエチレンテレフタレート繊維と、重量比40~80%のポリプロピレン繊維とを含む、
請求項1に記載の発泡成形品用補強材に用いられる不織布。
【請求項3】
発泡成形品を補強するために発泡成形材に接合される発泡成形品用補強材に用いられる不織布であって、前記不織布は、
短繊維から形成されたウェブを重ね合わせることによって積層された前記ウェブの短繊維同士が相互に結合された単層材であり、
7g/cm荷重での厚さが1~8mmであり、
層間剥離強度が0.05~2.45N/cmであり、前記層間剥離強度は、積層された前記ウェブ同士を互いに剥離させるのに要する引っ張り力の値であって、前記層間剥離強度の測定方法は、
前記不織布からなる、幅3cmの長尺の試験片を作成する第1準備工程と、
前記試験片の長手方向の端部領域において、前記不織布の積層された前記ウェブ同士を剥離させて第1層と第2層とに分離させることにより、前記端部領域を層間剥離させる第2準備工程と、
剥離した前記第1層と前記第2層とを引張試験器にて別々に保持して、前記試験片の前記端部領域に続く部分を引張速度970mm/分で20cm層間剥離させる剥離工程と、
前記剥離工程において層間剥離に要する力の最大値を測定する測定工程と、
を含む試験を10回行うことを含み、
10回の前記試験における前記最大値の平均値が前記層間剥離強度であり、
前記ウェブは、重量比20%~60%のポリエチレンテレフタレート繊維と、重量比40~80%のポリプロピレン繊維とを含む、
発泡成形品用補強材に用いられる不織布。
【請求項4】
前記ポリエチレンテレフタレート繊維は芯鞘構造を有し、
前記芯鞘構造は、芯と、前記芯よりも融点が低い鞘とを含む、
請求項2又は3に記載の発泡成形品用補強材に用いられる不織布。
【請求項5】
熱処理された第1面と、
前記第1面の反対側の第2面であって、熱処理された第2面と、
前記第1面と前記第2面との間にある熱処理されていない内部繊維と、
を含む、
請求項に記載の発泡成形品用補強材に用いられる不織布。
【請求項6】
7g/cm 荷重での厚さが2.5~6mmである、
請求項1~5のうち何れか一項に記載の発泡成形品用補強材に用いられる不織布。
【請求項7】
請求項1~のうち何れか一項に記載の不織布によって成形された、
発泡成形品用補強材。
【請求項8】
発泡成形品用補強材に用いられる不織布の製造方法であって、
短繊維から形成されたウェブを重ね合わせることによって前記ウェブを積層することと、
積層された前記ウェブの前記短繊維同士をニードルパンチにより相互に結合させて単層材に加工することと、
前記単層材の表面のみに熱処理を加えることと、を含み、
前記不織布は、
7g/cm荷重での厚さが1~8mmであり、
層間剥離強度が0.05~2.45N/cmであり、前記層間剥離強度は、積層された前記ウェブ同士を互いに剥離させるのに要する引っ張り力の値であって、前記層間剥離強度の測定方法は、
前記不織布からなる、幅3cmの長尺の試験片を作成する第1準備工程と、
前記試験片の長手方向の端部領域において、前記不織布の積層された前記ウェブ同士を剥離させて第1層と第2層とに分離させることにより、前記端部領域を層間剥離させる第2準備工程と、
剥離した前記第1層と前記第2層とを引張試験器にて別々に保持して、前記試験片の前記端部領域に続く部分を引張速度970mm/分で20cm層間剥離させる剥離工程と、
前記剥離工程において層間剥離に要する力の最大値を測定する測定工程と、
を含む試験を10回行うことを含み、
10回の前記試験における前記最大値の平均値が前記層間剥離強度である、
発泡成形品用補強材に用いられる不織布の製造方法。
【請求項9】
発泡成形品用補強材に用いられる不織布の製造方法であって、
短繊維から形成されたウェブを重ね合わせることによって前記ウェブを積層することと、
積層された前記ウェブの前記短繊維同士をニードルパンチにより相互に結合させて単層材に加工することと、を含み、
前記ウェブは、重量比20%~60%のポリエチレンテレフタレート繊維と、重量比40~80%のポリプロピレン繊維とを含み、
前記不織布は、
7g/cm荷重での厚さが1~8mmであり、
層間剥離強度が0.05~2.45N/cmであり、前記層間剥離強度は、積層された前記ウェブ同士を互いに剥離させるのに要する引っ張り力の値であって、前記層間剥離強度の測定方法は、
前記不織布からなる、幅3cmの長尺の試験片を作成する第1準備工程と、
前記試験片の長手方向の端部領域において、前記不織布の積層された前記ウェブ同士を剥離させて第1層と第2層とに分離させることにより、前記端部領域を層間剥離させる第2準備工程と、
剥離した前記第1層と前記第2層とを引張試験器にて別々に保持して、前記試験片の前記端部領域に続く部分を引張速度970mm/分で20cm層間剥離させる剥離工程と、
前記剥離工程において層間剥離に要する力の最大値を測定する測定工程と、
を含む試験を10回行うことを含み、
10回の前記試験における前記最大値の平均値が前記層間剥離強度である、
発泡成形品用補強材に用いられる不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発泡成形品用補強材に用いられる不織布、発泡成形品用補強材、及び発泡成形品用補強材に用いられる不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡成形品用補強材の一例として、発泡ウレタン成形品に接合される不織布がある(例えば特許文献1)。こうした発泡成形品の製造時には、例えば、モールド型内に補強材をセットし、型の内部に発泡ウレタン材料を供給した後に、型を閉じる。すると、ウレタン発泡により生じたガスが不織布の繊維の隙間を通過し、発泡ウレタンが補強材と接合される。
【0003】
補強材の一例として、車両用座席シートに用いられるシートパットがある。シートパットは、金属部品、例えばパイプフレームまたはスプリングと接する位置に配置されることがある。補強材は、金属部品から受ける局所的な力によって発泡材が損傷することを防ぐために用いられるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-82548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発泡成形品の製造時に、繊維の隙間に含浸した発泡材が不織布を通過すると、成型品の表面に発泡材が露出する。このように露出した発泡材に金属部材が接触すると、摩擦によって異音が生じる。こうした異音の発生を抑制するために、複数の不織布層が積層された多層材を用いることがある。不織布層の1つとして、例えばスパンボンド法により製造された緻密な不織布を含むことにより、発泡材の通過を抑制することができるためである。しかし、緻密な層を含む多層材は一般に成形性に劣るという課題がある。
【0006】
本開示の目的は、発泡成形品用補強材に用いられる不織布、発泡成形品用補強材、及び発泡成形品用補強材に用いられる不織布の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る、発泡成形品を補強するために発泡成形材に接合される発泡成形品用補強材に用いられる不織布は、積層されたウェブが相互に結合された単層材であり、7g/cm荷重での厚さが1~8mmであり、層間剥離強度が0.05~2.45N/cmであり、前記層間剥離強度は、結合された前記ウェブ同士を互いに剥離させるのに要する引っ張り力の値である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る補強材の斜視図である。
図2図1の補強材に成形される前の不織布の平面図である。
図3図1の補強材を用いて発泡成形品を製造する方法を説明する断面図である。
図4図3の方法で製造された発泡成形品の断面図である。
図5図2の不織布の製造方法を示すフローである。
図6図5の積層工程を示す模式図である。
図7図5のニードルパンチ工程及び熱処理工程を説明する模式図である。
図8図7のニードルパンチ工程において使用されるニードルの側面図である。
図9図1の補強材を成形するための成形装置の斜視図である。
図10図9の成形装置に不織布を被せる様子を示す斜視図である。
図11図9の成形装置を用いて不織布を成形する様子を示す斜視図である。
図12図9の成形装置が備える第1補助カバーの斜視図である。
図13】層間剥離強度の測定に供される試験片の平面図である。
図14図13の試験片を用いて層間剥離強度を測定するときの様子を示す模式である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
[1]発泡成形品を補強するために発泡成形材に接合される発泡成形品用補強材に用いられる不織布は、積層されたウェブが相互に結合された単層材であり、7g/cm荷重での厚さが1~8mmであり、層間剥離強度が0.05~2.45N/cmであり、前記層間剥離強度は、結合された前記ウェブ同士を互いに剥離させるのに要する引っ張り力の値である。
【0010】
別の例では、発泡成形品を補強するために発泡成形材に接合される発泡成形品用補強材に用いられる不織布は、積層されたウェブが相互に結合された単層材であり、7g/cm荷重での厚さが2.5~6mmであり、層間剥離強度が0.05~2.45N/cmであり、前記層間剥離強度は、結合された前記ウェブ同士を互いに剥離させるのに要する引っ張り力の値である。
【0011】
不織布は、例えばニードルパンチにより製造される場合、突起を有する複数のニードルで繊維同士を絡ませることにより、積層されたウェブ同士が結合されている。層間剥離強度は、値が大きいほど強固に繊維が結合されていることを意味し、ニードルパンチ加工におけるパンチ密度が高いほど層間剥離強度は高くなる。パンチ密度が高い不織布は、ニードルの貫通により生じた貫通孔を多く含む。そのため、パンチ密度が高い不織布は、発泡成形材と接合される際に発泡材が通過しやすい。したがって、成形品の表面に発泡材が露出しやすくなる。
【0012】
本開示の不織布は、引っ張ればウェブ同士が互いに剥離する程度にウェブを結合させることにより、0.05~2.45N/cmの層間剥離強度を有する。ここで、層間剥離強度の下限値0.05N/cmは、不織布としての形状を保つために最低限必要な強度であり、層間剥離強度の上限値2.45N/cmは、層の形状を保ちつつ不織布を剥離させることができる最大の値である。言い換えると、層間剥離強度が下限値0.05N/cm未満ということは、不織布として使用が困難であることを意味し、層間剥離強度が上限値2.45N/cmより大きいということは、ウェブ同士を層状に剥離させることはできないことを意味する。したがって、従来の不織布であれば、ウェブ同士を剥離させようとしても、層の形状を保ちつつ厚さ方向にウェブ同士を剥離させることができない。
【0013】
また、本開示の不織布は、7g/cm荷重での厚さが1~8mmであってもよく、または、7g/cm荷重で2.5~6mmであってもよい。不織布を厚くすると発泡材の通過を抑制できるものの、成形時の加工性が悪化する。より詳細には、厚さが1mm未満になると発泡材が通過しやすくなり、厚さが8mmを超えると加工性が悪くなる。その点、上記層間剥離強度を有する不織布の厚さを7g/cm荷重において1~8mmとすれば、発泡材の露出抑制と良好な加工性とを両立することができる。
【0014】
さらに、多層材である不織布は、発泡材の通過を抑制できるものの、成形時の加工性が悪化する。したがって、上記層間剥離強度を有する不織布であれば、単層材であっても適切に発泡材の通過を抑制でき、かつ、単層であるために加工性に優れる。また、単層材は多層材に比べて一般に安価であるため、経済性に優れる。
【0015】
こうした不織布の製造に用いるウェブは、ニードルパンチ加工に限らず、空気流で短繊維を並べるエアレー式の機械を用いて形成することもできる。エアレー式の機械を用いる場合には、加熱温度、圧縮距離、および圧縮時間のうち少なくとも1つを調整することにより、本開示の不織布を製造することができる。
【0016】
[2]前記ウェブは、重量比20%~60%のポリエチレンテレフタレート繊維と、重量比40~80%のポリプロピレン繊維とを含んでもよい。
ポリプロピレン(PP)はポリエチレンテレフタレート(PET)よりも比重が小さい。そのためPPを含むことにより、重さを増すことなく繊維本数を増やすことができる。不織布を構成する繊維の本数を増やすことにより、発泡材の通過を抑制することができる。
【0017】
[3]前記ポリエチレンテレフタレート繊維は芯鞘構造を有し、前記芯鞘構造は、芯と、前記芯よりも融点が低い鞘とを含んでもよい。
この構成によれば、加熱により鞘が溶融することで繊維同士を結合させつつ、溶融しにくい芯により繊維の強度を維持することができる。
【0018】
[4]前記不織布は、熱処理された第1面と、前記第1面の反対側の第2面であって、熱処理された第2面と、前記第1面と前記第2面との間にある熱処理されていない内部繊維と、を含んでもよい。
【0019】
上記不織布は、ウェブの結合が強くならないように加工されているため、表面が毛羽立ちやすい。また、内部繊維が熱処理されていると、不織布が固くなり、成形性が悪くなる。本開示の不織布は表面のみに熱処理が施されているので、毛羽立ちが抑制される。また、第1面と第2面との間にある内部繊維は熱処理されていないので良好な加工性を維持することができる。
【0020】
[5]上記不織布によって成形された発泡成形品用補強材。特に、上記不織布を加熱を伴う成形加工により成形することにより得られる発泡成形品用補強材。
成形性の高い上記不織布を成形することにより、成形の精度が高い補強材を得ることができる。特に、加熱を伴う成形加工により補強材を立体的に成形する場合には、上記不織布の加工性の高さが有用である。
【0021】
[6]発泡成形品用補強材に用いられる不織布の製造方法は、積層されたウェブをニードルパンチにより相互に結合させて単層材に加工することと、前記単層材の表面のみに熱処理を加えることと、を含み、前記不織布は、7g/cm荷重での厚さが1~8mmであり、層間剥離強度が0.05~2.45N/cmであり、前記層間剥離強度は、結合された前記ウェブ同士を互いに剥離させるのに要する引っ張り力の値である。
【0022】
別の例では、発泡成形品用補強材に用いられる不織布の製造方法は、積層されたウェブをニードルパンチにより相互に結合させて単層材に加工することと、前記単層材の表面のみに熱処理を加えることと、を含み、前記不織布は、7g/cm荷重での厚さが2.5~6mmであり、層間剥離強度が0.05~2.45N/cmであり、前記層間剥離強度は、結合された前記ウェブ同士を互いに剥離させるのに要する引っ張り力の値である。
【0023】
積層されたウェブを相互にニードルパンチにより結合させる際にパンチ密度を調整することにより、層間剥離強度が0.05~2.45N/cmの単層材を形成することができる。また、単層材の表面のみに熱処理を加えることにより、7g/cm荷重での厚さが1~8mmとなるように調整することができる。熱処理が加えられた表面は、パンチ密度が低いことに起因して生じる毛羽立ちが抑制される。このとき、不織布を内部まで加熱すると、不織布の内部繊維が熱により変質して、不織布の剛性が増す。剛性の増した不織布は加工性が悪くなる。そのため、内部繊維を加熱しないように表面のみを加熱処理した不織布は、成形性に優れる。
【0024】
[本開示の実施形態の詳細]
図1に示すように、本開示の一態様に係る発泡成形品用補強材10は、例えば、自動車用シートのクッション材を補強するためのシートパットである。クッション材は、発泡成形品19(図4参照)の一例である。発泡成形品19はシートパットに限らず、例えば、家具のクッション材であってもよい。
【0025】
補強材10は、背もたれの表面に対応する背部12と、背部12の左右から車両の前方に向かって張り出す2つの側部13と、ヘッドレストの取り付け箇所に対応する2つの貫通孔14とを有してもよい。補強材10は、例えば、図2に示す不織布11を成形または縫製することによって得られる。成形は、プレス成形または真空成形など、任意の手法で行うことができる。
【0026】
図2に示すように、不織布11は、不織布シート33(図7参照)を目的の形状、例えば自動車用シートの背もたれの形状に裁断することによって得られる。不織布11は、中央回り込み部15と2つの側方回り込み部16とを備えてもよい。中央回り込み部15は、成形時に背部12の背面に回り込む部分である。側方回り込み部16は、成形時に側部13の背面に回り込む部分である。
【0027】
本開示の不織布11は、ニードルパンチ法により製造される単層材である。より詳細には、短繊維から形成されたウェブを複数層重ね合わせ、それら層の繊維を金属製ニードルの往復運動により互いに交絡させて一枚の単層材を形成する。重ね合わせるウェブの層数は、例えば7層であるが、これに限定されず、任意に変更することができる。
【0028】
図3に示すように、補強材10はモールド型20を用いて成形されてもよい。このモールド型20の中で、補強材10は発泡成形材18に接合されてもよい。モールド型20は、上型21、中子型22、及び下型23を含んでもよい。補強材10は、例えば中子型22を覆うようにセットされる。その後、発泡剤を含む発泡材17、例えばウレタンをモールド型20内に注入する。これにより、発泡成形材18が発泡成形される。補強材10は、発泡成形材18の発泡成形時に、モールド型20内のガスを抜くための隙間を提供する。
【0029】
図4に示すように、発泡成形品19は、発泡成形材18と、発泡成形材18に接合された補強材10とを含んでもよい。補強材10は、発泡成形材18の表面を保護するように配置されてもよい。補強材10は、発泡成形品19のうち、金属部品、例えばパイプフレームまたはスプリングに触れる部分に配置されてもよい。補強材10に介在により、発泡成形材18が金属部品とこすれて生じる異音が抑制される。
【0030】
[不織布の製造方法]
図5に、不織布11の製造方法の一例を示す。
まず、ステップS11のウェブ形成工程においてウェブ31(図6参照)を形成する。ウェブ31は、ポリエチレンテレフタレート繊維及びポリプロピレン繊維のうち少なくとも一方である短繊維を機械または空気流によって並べることにより、形成される。
【0031】
ウェブ31は、重量比20%~60%のポリエチレンテレフタレート(PET)繊維と、重量比40~80%のポリプロピレン(PP)繊維とを含んでもよい。一例として、PP繊維が55重量%、PET繊維が45重量%であってもよい。不織布11の目付は、例えば50~500g/mであってもよく、あるいは80~250g/mであってもよく、より詳細には、140g/mであってもよい。
【0032】
PP繊維は、太さが異なる繊維を混合して用いてもよい。細い繊維を用いれば、重量を変えずに繊維本数を増すことができるので、発泡材17の通過を抑制することができる。PET繊維は芯鞘構造を有してもよい。この芯鞘構造は、芯と、芯よりも融点が低い鞘とを含んでもよい。鞘材料の融点は例えば110℃程度であってもよい。これら繊維の融点は、例えば成形等の加工方法に応じて変更することができる。
【0033】
図6に示すように、ステップS12の積層工程において、ウェブ31を複数層、例えば7層に積層して積層材30を形成する。ウェブ31は、連続的に延びる長尺状のウェブ31折り重ねていくことで積層してもよい。ウェブ31は、積層材30を搬送方向に搬送しながら連続的に積層していくことで、連続的に加工に供するようにしてもよい。
【0034】
図7に示すように、ステップS13のニードルパンチ工程において、積層材30に複数のニードル40により繰り返し突き刺す、ニードルパンチ加工を施す。ニードルパンチ工程では、層間剥離強度が0.05~2.45N/cmになるように、ニードルパンチのパンチ密度を低く設定する。層間剥離強度は、結合されたウェブ31同士を互いに剥離させるのに要する引っ張り力の値である。層間剥離強度の測定方法は後述する。
【0035】
図8に示すように、各ニードル40は複数の突起41を有する。
図7に示すように、ニードル40は、往動で積層材30を貫通し、復動で積層材30から引き抜かれるように、繰り返し往復移動する。この往復移動に伴って複数の突起41(図8参照)が繊維を引っかけることにより、ウェブ31間で繊維が互いに絡みあい、積層されたウェブ31が単層材32となる。
【0036】
積層材30の搬送経路には、1または複数の支持ベッド45と、支持ベッド45と対抗するように配置される1または複数の移動装置44を配置してもよい。各移動装置44は、複数のニードル40を保持してもよい。例えば、搬送経路には、2つの移動装置44を配置してもよい。
【0037】
ニードル40は、支持ベッド45上を搬送される積層材30の片面のみから刺すようにしてもよい。また、積層材30の搬送経路には複数、例えば2つのニードル群42,43を配置してもよい。ニードル群42,43は、それぞれ対応する移動装置44に保持されてもよい。ニードル群42,43の動作は互いに異なっていてもよい。例えばニードル群42,43において、ニードル40を突き刺す深さ、またはペネ数を互いに異ならせてもよい。
【0038】
例えば、第1ニードル群42の針密度(ペネ数)を50本/cmとし、第2ニードル群43の針密度(ペネ数)を75本/cmにしてもよい。あるいは、第1ニードル群42の針密度を50本/cmとし、第2ニードル群43の針密度を75本/cmにしてもよい。
【0039】
例えば、第1ニードル群42の針深度を9mmにして、第2ニードル群43の針深度を3mmにしてもよい。針深度は、ニードル40の先端が支持ベッド45を通過する長さである。針深度が浅いと、ウェブ31を通過する突起41の数が少なくなる。そのため、針深度が浅い第2ニードル群43では、繊維同士を絡ませる効果が第1ニードル群42よりも低い。第2ニードル群43は、突起41が繊維を引っかけない程度に針深度を浅くしてもよい。これにより、繊維を絡ませる効果が低くなる。
【0040】
ステップS14に示す熱処理工程において、カレンダーロール46により、7g/cm荷重での厚さが1~8mmとなるように、単層材32の表面にのみ熱処理加工を施す。カレンダーロール46は、単層材32を挟むロール47,48と、ロール47,48を加熱する1または複数の加熱装置49とを備えてもよい。2つの加熱装置49は、それぞれロール47,48を加熱するように配置してもよい。加熱ロール47,48の表面温度は例えば130℃である。ロール47,48間の距離は、単層材32を押しつぶさない距離に設定される。ロール47,48間の距離は、例えば4mmである。ロール47,48間を搬送される単層材32の搬送速度は、例えば5m/分である。
【0041】
熱処理加工を施すことにより、単層材32は不織布シート33となる。不織布シート33は、熱処理された第1面33aと、第1面33aの反対側の第2面33bであって、熱処理された第2面33bと、第1面33aと第2面33bとの間にある熱処理されていない内部繊維33cとを含む。
【0042】
熱処理加工の目的は、単層材32の表面の毛羽をとることであって、その内部繊維33cを加熱することではない。よって、熱処理工程における加熱温度、ロール47,48間距離、及び搬送速度は、単層材32の内部にまで熱処理が及ばない範囲で、7g/cm荷重での厚さが1~8mmとなるように、任意に変更することができる。
【0043】
上記ステップS11~S14により、7g/cm荷重での厚さが1~8mmであり、層間剥離強度が0.05~2.45N/cmである、不織布シート33が製造される。不織布シート33はロール状に巻かれてもよい。このときの巻き方向は製造時の搬送方向に沿う。不織布シート33を目的の形状に裁断すると、不織布11(図2参照)になる。不織布11は不織布シート33と実質的に同様の性質を有する。
【0044】
[補強材の成形方法]
以下に、補強材10の製造方法、特にその成形方法の一例を説明する。
図9に示す補強材10の成形装置50は、例えば、成形型51と、脚部53,54と、基台60と、給排気ユニット61と、を備える。成形型51は、内部空間と、内部空間に連通する複数の通気孔51aとを有する。成形型51は、ヘッドレストと対応する位置に2つの筒部52を有してもよい。成形型51は、給気脚部53及び排気脚部54を介して基台60に支持されていてもよい。
【0045】
基台60は内部に給気路60a及び排気路60bを有している。給気路60a及び排気路60bはそれぞれ給気脚部53及び排気脚部54を通じて成形型51の内部空間と連通していてもよい。給気路60a及び排気路60bは、それぞれ給気管62及び排気管63を通じて給排気ユニット61と連通していてもよい。給排気ユニット61は、給気管62を通じて加熱蒸気または加熱空気を供給するように構成されてもよい。また、給排気ユニット61は、排気管63を通じて吸気するように構成されてもよい。
【0046】
図10に示す被覆工程において、成形に供される不織布11は、成形型51に被せられる。
図11に示すように、成形装置50は、さらに、カバー材64と、第1補助カバー70と、2つの第2補助カバー56とを備えてもよい。第1補助カバー70は、給気脚部53と排気脚部54との間に配置されてもよい。
【0047】
図12に示すように、第1補助カバー70は、2つのカバー本体71と、4つの磁石72と、連結バー73とを備える。連結バー73は、2つのカバー本体71を連結する。各カバー本体71は成形型51の下端に沿うように湾曲した縁領域71aを有する。各カバー本体71には、互いに対向するように2つの磁石72が取り付けられている。成形型51の下端領域には、図示しない磁石を配置してもよい。第1補助カバー70は、第1補助カバー固定工程において、成形型51を覆う不織布11の下端を成形型51に対して固定するように磁石72により成形型51に対して固定されてもよい。
【0048】
図11に示すように、第2補助カバー固定工程において、2つの第2補助カバー56は、不織布11の側部13を押さえるように、それぞれ成形型51の側方に図示しない固定具、例えば磁石またはねじにより固定される。さらに、複数の紐58により不織布11を成形型51に固定してもよい。カバー材64は、空間形成工程において、成形型51を覆った状態で、その端縁が基台60に固定されることで閉塞空間65を形成する。このとき、補助カバー56,70は閉塞空間65内に配置される。
【0049】
空間形成工程の後、給気工程または加熱工程において、給排気ユニット61が、給気管62、給気路60a、給気脚部53、及び通気孔51aを通じて、成形型51の内部に加熱蒸気または加熱空気を供給する。これにより、不織布11及び成形型51が加熱される。このとき、供給された加熱蒸気によりカバー材64が膨らむ。
【0050】
その後、排気工程において、給排気ユニット61が、排気管63、排気路60b、排気脚部54、及び通気孔51aを通じて吸引することにより、閉塞空間65から空気を排気する。これにより、膨らんでいたカバー材64は成形型51に吸い寄せられるように収縮する。その結果、加熱されて可塑性が高くなっている不織布11は成形型51に密着し、成形型51の外形に沿った形状に成形される。このような、被覆工程、第1補助カバー固定工程、第2補助カバー固定工程、空間形成工程、給気工程(加熱工程)、及び排気工程を含む成形方法により、図1に示す補強材10が成形される。
【0051】
不織布11のうち補助カバー56,70で覆われた被覆部分は、加熱されにくいだけでなく、カバー材64によって成形型51に押し付けられない。したがって、この被覆部分は、それ以外の部分よりも剛性が低く、柔らかい。すなわち、補強材10は、第1の剛性を有する第1部分(補助カバー56,70で覆われていなかった部分)と、第1の剛性よりも低い第2の剛性を有する第2部分(補助カバー56,70で覆われていた被覆部分)とを有する。第2部分を、発泡成形品19の異音が発生しやすい箇所に配置することにより、異音の発生を抑えることができる。
【0052】
成形装置50は、第1補助カバー70及び第2補助カバー56のうち少なくとも一方を備えなくてもよい。言い換えると、補強材10の成形方法は、第1補助カバー固定工程及び第2補助カバー固定工程のうち少なくとも一方を含まなくてもよい。
【0053】
[層間剥離強度の測定方法]
以下に、層間剥離強度の測定方法を説明する。
図13に示すように、不織布シート33(図7参照)を切断して、幅3cm、長さ30cmの試験片80を作成する。試験片80の幅及び長さは変更可能であるが、幅は1cm以上であることが好ましい。
【0054】
次に、準備工程として、試験片80の長手方向の端部領域を50mmほど層間剥離させる。準備工程で剥離させる端部領域の長さは、試験に必要な剥離長さが確保できる範囲で、任意に変更できる。
【0055】
図14に示すように、「層間剥離」とは、ニードルパンチ加工により単層材となった不織布のウェブ同士を剥離させて、第1層81と第2層82とに分離させることをいう。第1層81は第1面33aを含み、第2層82は第2面33bを含む。
【0056】
続いて、剥離工程において、剥離した第1層81と第2層82とを図示しない引張試験器にて別々に保持し、層間剥離させる。この層間剥離に要する力の最大値が層間剥離強度である。一例として、試験片80を引張速度970mm/分で20cm程層間剥離させてもよい。引張速度および剥離長さは、任意に変更することができる。引張試験器は、引張強度が測定可能であれば、任意の装置を用いることができる。
【0057】
表1に、実施例1~4を用いた層間剥離強度の試験結果を示す。実施例1~4は、同じウェブを用いて形成された不織布からなる試験片80であって、互いにパンチ密度が異なる。実施例2は実施例1よりもパンチ密度が高く、実施例3は実施例2よりもさらにパンチ密度が高い。実施例4は実施例1よりもパンチ密度が低い。各実施例においては、同様の試験を10回ずつ行った。各10回の試験結果、すなわち引っ張り力を平均し、その平均値を単位幅(1cm幅)での強度に換算するため、3で除算した。このようにして算出された値が層間剥離強度である。
【0058】
【表1】
【0059】
実施例1~4の層間剥離強度から明らかなように、パンチ密度が高ければウェブ間(層間)の結合が強固になるので、層間剥離に要する引っ張り力が大きくなる。すなわち、層間剥離強度が高くなる。実施例1~4の層間剥離強度は、いずれも0.05~2.45N/cmの範囲にある。層間剥離強度の測定は、安定した値を算出するために複数回試験を行って平均値をとることができるが、試験回数は任意に変更できる。
【0060】
表1の比較例は、従来の不織布である。比較例では、層間剥離強度の試験に供しても2層に剥離しないため、層間剥離強度の数値は算出できない。
実施例1~4及び比較例を用いた染出し度の試験結果を表1に示す。染み出し度は、実施例1~4及び比較例の不織布でそれぞれ30cm×30cmの試験片を作成し、試験用金型内で各試験片を発泡材と接合した後、試験片を通過して染み出した発泡材が露出している面積の割合(%)を目視にて算出した。目視は複数人で行い、5%刻みで数値を決定した。
【0061】
従来の不織布では染み出し度が80%であるのに対して、実施例1~4の染み出し度はそれぞれ40%,60%,65%,30%であり、層間剥離強度が低いほど、すなわちパンチ密度が低いほど、染み出し度が小さいことがわかる。
【0062】
層間剥離強度の簡易的な判断方法として、不織布11を手でつまんで層間剥離させてもよい。すなわち、手動で不織布11を厚さ方向に引っ張った場合に、部分的にちぎれたりすることなく、層状の形状を保ったままで2層に剥離させることができれば、不織布11に必要な層間剥離強度を備えると判断することができる。つまり、層間剥離強度を有さない不織布は2層に剥離させることができないし、2層に剥離できない不織布は層間剥離強度の数値を得ること自体ができない。
【0063】
以下、本開示の不織布11(または不織布シート33)の作用を説明する。
不織布11は、層間剥離が可能な程に、低いパンチ密度でウェブ31同士が結合されている。言い換えると、不織布11は、0.05~2.45N/cmの層間剥離強度を有する。こうした不織布11は、層間剥離しない程度に高いパンチ密度でウェブ同士が結合された従来の不織布よりも、ニードル40が貫通した孔が少ない。そのため、発泡成形時に発泡材17が不織布11(補強材10)を通過しにくい。したがって、発泡成形品19の表面への発泡材17の露出あるいは染み出しが抑制される。そのため、発泡成形材18が補強材10を介して金属部品とこすれても、異音が発生しにくい。
【0064】
本開示の不織布11によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)層間剥離強度を有する不織布11は発泡材を通過させにくい。また、こうした不織布11は適度な柔軟性を備える上、単層材であって厚さが1~8mmと薄いので、成形性に優れる。より詳細には、不織布11は、適度に伸びるため、モールド型20または成形型51にセットするとき、あるいは縫製するときに作業がしやすく、また、型20,51への追従性がよい。
【0065】
(2)重量比40~80%のPP繊維を含むウェブ31は、PET繊維のみからなるウェブよりも、重さを増すことなく繊維本数を増やすことができる。不織布11は従来よりも繊維の本数が多いので、発泡材17の通過を抑制することができる。
【0066】
(3)不織布11に含まれるPET繊維が芯鞘構造を有するので、加熱により鞘が溶融することで繊維同士を結合させつつ、溶融しにくい芯により繊維の強度を維持することができる。
【0067】
(4)不織布11は、表面33a,33bを熱処理することにより、毛羽立ちが抑制されている。熱処理を表面33a,33bのみに施すことにより、内部繊維33cには加熱処理が及ばないので、不織布11は柔軟性が保たれている。そのため、不織布11は、例えば加熱を伴う整形加工においても、加工性に優れる。また、補強材10を加熱により成形する場合には、収縮によって成形シワを軽減させる効果をより発揮できる。
【0068】
(5)補強材10は、加工性に優れる不織布11を成形して製造されるので、成形の精度が高い。
[本開示の変更例]
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0069】
・不織布11は、縫製により成形されてもよい。
・積層材30の搬送経路には、第1面33aを刺すニードル群と、第2面33bを刺すニードル群とを配置してもよい。
【符号の説明】
【0070】
10…補強材、11…不織布、12…背部、13…側部、14…貫通孔、15…中央回り込み部、16…側方回り込み部込み部、17…発泡材、18…発泡成形材、19…発泡成形品、20…モールド型、21…上型、22…中子型、23…下型、30…積層材、31…ウェブ、32…単層材、33…不織布シート、33a…第1面、33b…第2面、33c…内部繊維、40…ニードル、41…突起、42…第1ニードル群、43…第2ニードル群、44…移動装置、45…支持ベッド、46…カレンダーロール、47…加熱ロール、48…ロール、49…加熱装置、50…成形装置、51…成形型、51a…通気孔、52…筒部、53…給気脚部、54…排気脚部、56…第2補助カバー、58…紐、60…基台、60a…給気路、60b…排気路、61…給排気ユニット、62…給気管、63…排気管、64…カバー材、65…閉塞空間、70…第1補助カバー、71…カバー本体、71a…縁領域、72…磁石、73…連結バー、80…試験片、81…第1層、82…第2層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14