(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】半導体チップ洗浄方法及び半導体チップ洗浄装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240228BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240228BHJP
H01L 21/52 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
H01L21/304 647Z
H01L21/304 643A
H01L21/304 644C
H01L21/304 651B
H01L21/78 P
H01L21/52 F
(21)【出願番号】P 2021567429
(86)(22)【出願日】2020-12-21
(86)【国際出願番号】 JP2020047631
(87)【国際公開番号】W WO2021132133
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-10-21
(31)【優先権主張番号】P 2019236079
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000146722
【氏名又は名称】ヤマハロボティクスホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】菊地 広
(72)【発明者】
【氏名】永田 憲雅
(72)【発明者】
【氏名】榎戸 聡
(72)【発明者】
【氏名】李 瑾
(72)【発明者】
【氏名】井田 純一
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-194367(JP,A)
【文献】特開2016-082195(JP,A)
【文献】特開2012-146690(JP,A)
【文献】特開平09-283487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/52
H01L 21/58
H01L 21/301
B08B 3/00 -3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着層で覆われているダイシングフィルムの
当該上面に貼り付けられた半導体チップの表面の洗浄を行う半導体チップ洗浄方法であって、
水素ガスを水に溶解したガス溶解水を用いて前記半導体チップの前記表面の洗浄を行うガス溶解水洗浄工程
であって、超音波加振した前記ガス溶解水を前記半導体チップの前記表面に接触させて前記半導体チップの前記表面の異物を除去することを含む、ガス溶解水洗浄工程と、
前記半導体チップの前記表面を拭き取る拭き取り洗浄工程と、
を含むこと、
を特徴とする半導体チップ洗浄方法。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体チップ洗浄方法であって、
前記ガス溶解水洗浄工程の後に前記拭き取り洗浄工程を実行して前記半導体チップの前記表面の異物を除去すること、
を特徴とする半導体チップ洗浄方法。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体チップ洗浄方法であって、
前記ガス溶解水洗浄工程の後に前記拭き取り洗浄工程を実行し、前記拭き取り洗浄工程の後に、再度、前記ガス溶解水洗浄工程を実行すること、
を特徴とする半導体チップ洗浄方法。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体チップ洗浄方法であって、
オゾンを水に溶解したオゾン水を用いて前記半導体チップの前記表面を洗浄するオゾン水洗浄工程を更に含み、
前記ガス溶解水洗浄工程の後に前記拭き取り洗浄工程を実行し、前記拭き取り洗浄工程の後に、再度、前記ガス溶解水洗浄工程を実行し、その後前記オゾン水洗浄工程を実行すること、
を特徴とする半導体チップ洗浄方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の半導体チップ洗浄方法であって、
最後に行う洗浄工程の後に前記半導体チップの前記表面の乾燥を行う乾燥工程を実行すること、
を特徴とする半導体チップ洗浄方法。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載の半導体チップ洗浄方法であって
、
前記ガス溶解水は、大気圧下における前記
水素ガスの飽和度の合計が60%~100%となるように前記
水素ガスを溶解した水であること、
を特徴とする半導体チップ洗浄方法。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか1項に記載の半導体チップ洗浄方法であって
、
前記ガス溶解水は、大気圧下における前記
水素ガスの飽和度の合計が60%~100%となるように前記
水素ガスを溶解した水にアルカリを添加したこと、
を特徴とする半導体チップ洗浄方法。
【請求項8】
請求項1から4のいずれか1項に記載の半導体チップ洗浄方法であって、
前記拭き取り洗浄工程は、前記半導体チップの前記表面に
二酸化炭素ガスを水に溶解した炭酸水の洗浄液を
連続的に流しながら前記半導体チップの前記表面の拭き取りを行うこと、
を特徴とする半導体チップ洗浄方法。
【請求項9】
請求項1から4のいずれか1項に記載の半導体チップ洗浄方法であって、
前記拭き取り洗浄工程は、前記半導体チップの前記表面に
水素ガスを水に溶解した水素水にアルカリを添加したアンモニア添加水素水の洗浄液を
連続的に流しながら前記半導体チップの前記表面の拭き取りを行うこと、
を特徴とする半導体チップ洗浄方法。
【請求項10】
請求項
9に記載の半導体チップ洗浄方法であって、
前記洗浄液の比抵抗が0.05~1MΩ・cmであること、
を特徴とする半導体チップ洗浄方法。
【請求項11】
請求項1から4のいずれか1項に記載の半導体チップ洗浄方法であって、
前記拭き取り洗浄工程は、多孔質スポンジを用いて前記半導体チップの前記表面を拭き取ること、
を特徴とする半導体チップ洗浄方法。
【請求項12】
請求項1から4のいずれか1項に記載の半導体チップ洗浄方法であって、
前記拭き取り洗浄工程は、マイクロファイバーを含む布によって前記半導体チップの前記表面を拭き取ること、
を特徴とする半導体チップ洗浄方法。
【請求項13】
粘着層で覆われているダイシングフィルムの
当該上面に貼り付けられた半導体チップの表面の洗浄を行う半導体チップ洗浄装置であって、
前記上面に前記半導体チップが貼り付けられた前記
ダイシングフィルムが載置した状態で前記
ダイシングフィルムを回転させる回転台と、
水素ガスを水に溶解したガス溶解水
に超音波振動を与える超音波振動子が取り付けられており、超音波加振した前記ガス溶解水を前記半導体チップの前記表面に噴射するガス溶解水ノズルと、
先端に取付けられた拭き取り部材を前記半導体チップの前記表面に沿って移動させて前記半導体チップの前記表面を拭き取る拭き取りアームと、を含み、
前記拭き取りアームは、前記半導体チップの前記表面に
二酸化炭素ガスを水に溶解した炭酸水、又は、水素ガスを水に溶解した水素水にアルカリを添加したアンモニア添加水素水の洗浄液を流す洗浄液ノズルを備えていること、
を特徴とする半導体チップ洗浄装置。
【請求項14】
請求項
13に記載の半導体チップ洗浄装置であって、
前記拭き取り部材が多孔質スポンジで構成されていること、
を特徴とする半導体チップ洗浄装置。
【請求項15】
請求項
13に記載の半導体チップ洗浄装置であって、
前記拭き取り部材は、マイクロファイバーを用いた織物または編物で構成されていること、
を特徴とする半導体チップ洗浄装置。
【請求項16】
請求項
13から
15のいずれか1項に記載の半導体チップ洗浄装置であって、
前記拭き取りアームは、前記拭き取り部材を前記半導体チップの前記表面に押し付ける押し付け機構を備え、
前記押し付け機構は、押し付け圧力の調整を行う押圧力調整機構と、押し付け量の調整を行う押圧量調整機構とのいずれか一方又は両方を有すること、
を特徴とする半導体チップ洗浄装置。
【請求項17】
請求項
16に記載の半導体チップ洗浄装置であって、
前記拭き取りアームは、前記拭き取り部材を自転または公転のいずれか一方又は両方の回転を行う回転駆動機構を備え、
前記拭き取り部材を回転させながら連続的に前記洗浄液を流し、
前記半導体チップの前記表面を拭き取り洗浄するとともに、前記拭き取り部材に付着した異物を洗い落としが可能であること、
を特徴とする半導体チップ洗浄装置。
【請求項18】
請求項
13から
15のいずれか1項に記載の半導体チップ洗浄装置であって、
前記半導体チップを他の前記半導体チップ又は基板の上にボンディングするボンディング装置と一体に配置され、
洗浄後の清浄な前記半導体チップを前記ボンディング装置に供給可能であること、
を特徴とする半導体チップ洗浄装置。
【請求項19】
請求項
13から
15のいずれか1項に記載の半導体チップ洗浄装置であって、
ダイシングフィルムに貼り付けられた半導体のウェーハを切断して前記半導体チップとするダイシング装置と一体に配置され、
前記ウェーハの切断の際に前記半導体チップの前記表面に付着する無機系および有機系の異物を前記半導体チップの前記表面から除去可能であること、
を特徴とする半導体チップ洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップの洗浄を行う半導体チップ洗浄方法、及び、半導体チップ洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップは、8インチや12インチの大きさのウェーハを所定の大きさに切断して製造される。切断の際には切断した半導体チップがバラバラにならないように、裏面にダイシングフィルムを貼り付け、表面側からダイシングソーやレーザ光線などによってウェーハを切断する。この際、裏面に貼り付けられたダイシングフィルムは若干切り込まれるが切断されないで各半導体チップを保持した状態となっている。そして、切断された各半導体チップは一つずつダイシングフィルムからピックアップされてフリップチップボンディング等の次の工程に送られる。
【0003】
ダイシングの際には、半導体ウェーハの切削屑やダイシングフィルムの切削屑等の異物が半導体チップの表面に付着するので、ダイシングの際、或いは、ダイシング後に半導体チップの表面、或いは、切断されたウェーハの表面の洗浄が行われる。半導体チップの洗浄は、例えば、特許文献1に記載されているように、洗浄流体を半導体チップに吹き付ける方法が用いられる場合がある。
【0004】
また、ウェーハの表面を鏡面研磨する仕上げ加工が行われた後には、ウェーハの表面を清浄化するための洗浄が行われる。例えば、特許文献2には、アルカリ系洗浄液や、酸系
洗浄液、或いは、オゾン水を用いて洗浄を行うことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-257912号公報
【文献】特許第4675448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、半導体チップの上に他の半導体チップを直接ボンディングするダイレクトボンディングが多用されるようになってきている。ダイレクトボンディングを行う場合には、表面に数ミクロン~サブミクロンの大きさの微細な異物が付着していてもボンディング品質が低下する場合がある。一方、特許文献1,2に記載された従来技術の洗浄方法では、数十ミクロン程度の大きさに異物の除去を行うことはできるが、ダイレクトボンディングで問題になるような数ミクロン~サブミクロンの微細な異物の除去を行うことは難しかった。
【0007】
そこで、本発明は、半導体チップの表面に付着した微細な異物の除去を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の半導体チップ洗浄方法は、支持材の上面に貼り付けられた半導体チップの表面の洗浄を行う半導体チップ洗浄方法であって、特定ガスを水に溶解したガス溶解水を用いて半導体チップの表面の洗浄を行うガス溶解水洗浄工程と、半導体チップの表面を拭き取る拭き取り洗浄工程と、を含むこと、を特徴とする。
【0009】
本発明の半導体チップ洗浄方法は、支持材の上面に貼り付けられた半導体チップの表面の洗浄を行う半導体チップ洗浄方法であって、特定ガスを水に溶解したガス溶解水を用いて半導体チップの表面を洗浄するガス溶解水洗浄工程と、半導体チップの表面を拭き取る拭き取り洗浄工程と、を含み、ガス溶解水洗浄工程の後に拭き取り洗浄工程を実行して半導体チップの表面の異物を除去すること、を特徴とする。
【0010】
ガス溶解水洗浄工程によりウェーハの切削屑等の無機系の微細な異物の除去を行い、拭き取り洗浄工程により有機系の微細な異物の除去を行うので、効果的に半導体チップの表面の洗浄を行うことができる。
【0011】
本発明の半導体チップ洗浄方法において、ガス溶解水洗浄工程の後に拭き取り洗浄工程を実行し、拭き取り洗浄工程の後に、再度、ガス溶解水洗浄工程を実行してもよい。
【0012】
また、本発明の半導体チップ洗浄方法において、オゾンを水に溶解したオゾン水を用いて半導体チップの表面を洗浄するオゾン水洗浄工程を更に含み、ガス溶解水洗浄工程の後に拭き取り洗浄工程を実行し、拭き取り洗浄工程の後に、再度、ガス溶解水洗浄工程を実行し、その後オゾン水洗浄工程を実行してもよい。
【0013】
また、本発明の半導体チップ洗浄方法において、最後に行う洗浄工程の後に半導体チップの表面の乾燥を行う乾燥工程を実行してもよい。
【0014】
また、本発明の半導体チップ洗浄方法において、ガス溶解水洗浄工程は、超音波加振したガス溶解水を半導体チップの表面に接触させて半導体チップの表面の異物を除去してもよい。
【0015】
また、本発明の半導体チップの洗浄方法において、特定ガスは、水素、酸素、窒素の内の少なくとも1つを含むガスであり、ガス溶解水は、大気圧下における特定ガスの飽和度の合計が60%~100%となるように特定ガスを溶解した水でもよい。ここで、ガス溶解水は、特定ガスを溶解した水にアルカリを添加したものでもよい。
【0016】
また、本発明の半導体チップの洗浄方法において、拭き取り洗浄工程は、半導体チップの表面に連続的に洗浄液を流しながら半導体チップの表面の拭き取りを行ってもよい。
【0017】
また、本発明の半導体チップの洗浄方法において、洗浄液は、二酸化炭素ガスを水に溶解した炭酸水でもよいし、洗浄液は、水素ガスを水に溶解した水素水にアルカリを添加したアンモニア添加水素水でもよい。ここで、洗浄液の比抵抗が0.05~1MΩ・cmでもよい。
【0018】
また、本発明の半導体チップの洗浄方法において、半導体チップが貼り付けられる支持材はフィルムでもよく、半導体チップが貼り付けられる上面が粘着層で覆われてもよい。また、半導体チップを貼り付けたフィルムはダイシングフィルムでもよい。
【0019】
また、本発明の半導体チップの洗浄方法において、支持材がシリコンウェーハまたはガラス板または基板でもよい。
【0020】
また、本発明の半導体チップの洗浄方法において、拭き取り洗浄工程は、多孔質スポンジを用いて半導体チップの表面を拭き取ってもよいし、マイクロファイバーを含む布によって半導体チップの表面を拭き取ってもよい。
【0021】
本発明に半導体洗浄装置は、支持材の上面に貼り付けられた半導体チップの表面の洗浄を行う半導体チップ洗浄装置であって、上面に半導体チップが貼り付けられた支持材が載置した状態で支持材を回転させる回転台と、特定ガスを水に溶解したガス溶解水を半導体チップの表面に噴射するガス溶解水ノズルと、先端に取付けられた拭き取り部材を半導体チップの表面に沿って移動させて半導体チップの表面を拭き取る拭き取りアームと、を含み、拭き取りアームは、半導体チップの表面に洗浄液を流す洗浄液ノズルを備えていること、を特徴とする。
【0022】
これにより、ガス溶解水ノズルからガス溶解水を半導体チップの表面に噴射してウェーハの切削屑等の無機系の微細な異物の除去を行い、拭き取りアームの先端に取り付けた拭き取り部材により半導体チップの表面に付着している有機系の微細な異物の除去を行うので、効果的に半導体チップの表面の洗浄を行うことができる。
【0023】
本発明の半導体洗浄装置において、拭き取り部材を多孔質スポンジで構成してもよいし、マイクロファイバーを用いた織物または編物で構成してもよい。
【0024】
本発明の半導体洗浄装置において、拭き取りアームは、拭き取り部材を半導体チップの表面に押し付ける押し付け機構を備え、押し付け機構は、押し付け圧力の調整を行う押圧力調整機構と、押し付け量の調整を行う押圧量調整機構とのいずれか一方又は両方を有してもよい。また、拭き取りアームは、拭き取り部材を自転または公転のいずれか一方又は両方の回転を行う回転駆動機構を備え、拭き取り部材を回転させながら連続的に洗浄液を流し、半導体チップの表面を拭き取り洗浄するとともに、拭き取り部材に付着した異物を洗い落としが可能としてもよい。
【0025】
本発明の半導体洗浄装置において、半導体チップを他の半導体チップ又は基板の上にボンディングするボンディング装置と一体に配置され、洗浄後の清浄な半導体チップをボンディング装置に供給可能としてもよい。また、ダイシングシートに貼り付けられた半導体のウェーハを切断して半導体チップとするダイシング装置と一体に配置され、ウェーハの切断の際に半導体チップの表面に付着する無機系および有機系の異物を半導体チップの表面から除去可能としてもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、半導体チップの表面に付着した微細な異物の除去を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施形態の半導体チップ洗浄装置の構成を示す側面図である。
【
図2】ダイシング後のウェーハと半導体チップとを示す平面図である。
【
図3】
図1に示す半導体チップ洗浄装置における半導体チップの洗浄工程を示すフローチャートである。
【
図5】ダイシング後のウェーハと半導体チップを示す断面図である。
【
図6】ガス溶解水洗浄工程が終了した状態の半導体チップを示す断面図である。
【
図7】拭き取り洗浄工程が終了した状態の半導体チップの断面図である。
【
図8】従来技術の洗浄方法によって洗浄した後の半導体チップをピックアップする状態を示す断面図である。
【
図9】
図1に示す半導体チップ洗浄装置における半導体チップの他の洗浄工程を示すフローチャートである。
【
図10】
図1に示す半導体チップ洗浄装置における半導体チップの他の洗浄工程を示すフローチャートである。
【
図11】
図1に示す半導体チップ洗浄装置における半導体チップの他の洗浄工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら実施形態の半導体チップ洗浄装置100の構成について説明する。
図1に示すように、半導体チップ洗浄装置100は、回転台50と、ガス溶解水ノズル61と、拭き取りアーム70と、水受け55とを含んでいる。また、ガス溶解水ノズル61には、超音波発振器62が取付けられている。
【0029】
回転台50は、回転板51と、回転軸52と、回転駆動部53とで構成されている。回転軸52は、回転板51の下側に配置された水受け55を貫通し、上端に回転板51が取付けられており、下端には、回転駆動部53が取付けられている。回転板51は円形の平板で、上面にダイシング後のウェーハ10が載置されている。
【0030】
図2に示すように、ウェーハ10は円板状のシリコン製で支持材であるダイシングフィルム30の上面に貼り付けられている。ダイシングフィルム30の外周縁の上側は、リング20に取付けられている。ウェーハ10は、上側からダイシングソーで格子状に切り込み14が入れられ、複数の半導体チップ11に分割されている。
【0031】
図1に示すように、回転板51の上面には、ウェーハ10をダイシングした後の複数の半導体チップ11がダイシングフィルム30を介して載置されている。回転台50は、回転駆動部53によって回転板51を回転させる。これにより、回転台50は、回転板51の上面に載置された半導体チップ11を回転させる。
【0032】
ガス溶解水ノズル61は、回転台50の上側に配置され、回転台50の上面に載置された半導体チップ11の表面にガス溶液水を噴射するものである。ガス溶解水ノズル61の根元側は、図示しないガス溶解水製造装置に接続されている。また、ガス溶解水ノズル61の下端近傍の外周面には、ガス溶解水を超音波加振する超音波発振器62が取付けられている。また、ガス溶解水ノズル61は、図示しないXY駆動装置によって半導体チップ11の表面に沿ったXY方向に移動可能になっている。
【0033】
拭き取りアーム70は、アーム本体71と、拭き取り部材保持部73と、洗浄液ノズル72と、回転駆動部75と、押し付け機構76と、XY駆動部77とを備えている。
【0034】
アーム本体71は、XY駆動部77によって半導体チップ11の表面に沿ったXY方向に移動可能になっている。アーム本体71の先端の下側には、下端に拭き取り部材74が取付けられる拭き取り部材保持部73が取付けられている。また、アーム本体71の先端の上側には、拭き取り部材74を回転駆動する回転駆動機構を含む回転駆動部75と、拭き取り部材保持部73を上下方向に駆動して拭き取り部材74を半導体チップ11の表面に押し付ける押し付け機構76が取付けられている。また、アーム本体71の先端には、根元側が図示しない洗浄液タンクに接続されて下端から洗浄液を半導体チップ11の表面に流す洗浄液ノズル72が取付けられている。
【0035】
拭き取り部材74は、半導体チップ11の表面に付着した有機物の微細な異物を拭き取り除去するもので、例えば、多孔質スポンジで構成されていてもよいし、マイクロファイバーを含む布又はマイクロファイバーを用いた織物または編物で構成されていてもよい。
【0036】
押し付け機構76は、拭き取り部材74を半導体チップ11の表面への押し付け圧力の調整を行う押圧力調整機構と、押し付け量の調整を行う押圧量調整機構とのいずれか一方又は両方を有している。
【0037】
ガス溶解水は、特定ガスを水に溶解した水である。ここで、特定ガスとは、水素、酸素、窒素の内の少なくとも1つを含むガスであり、ガス溶解水は、大気圧下における特定ガスの飽和度の合計が60%~100%となるように特定ガスを溶解した水である。具体的には、ガス溶解水は、水に水素を溶解させた水素水でもよい。また、ガス溶解水は、アルカリ成分を添加したものでもよく、例えば、水素水にアンモニアを添加したアンモニア添加水素水でもよい。
【0038】
洗浄液は、二酸化炭素ガスを水に溶解した炭酸水でもよいし、水素ガスを水に溶解した水素水にアルカリを添加したアンモニア添加水素水でもよい。ここで、洗浄液は、比抵抗が0.05~1MΩ・cmのものでもよい。
【0039】
次に
図3~7を参照して、以上のように構成された半導体チップ洗浄装置100を用いて半導体チップ11の表面の洗浄工程と半導体チップ洗浄方法について説明する。
【0040】
図3のステップS101に示すように、ウェーハ製造工程で製造されたウェーハ10は、
図4に示すようにダイシングフィルム30の上面に貼り付けられている。ダイシングフィルム30は基材31と基材31の上面を覆う粘着層32とで構成されており、粘着層32の上面にウェーハ10が貼り付けられている。
【0041】
図3のステップS102に示すダイシング工程は、ダイシング装置によって実行される。ダイシング装置とは、ダイシングフィルム30に貼り付けられた半導体のウェーハ10を切断して半導体チップ11とする装置である。ダイシング装置は、
図5に示すようにウェーハ10に切り込み14を入れてウェーハ10を複数の半導体チップ11に切断する。この際、ダイシングフィルム30の粘着層32もウェーハ10と共に切断される。ダイシング工程では、ウェーハ10に切り込み14を入れる際にシリコンの切り屑等の無機系の異物15と、粘着層32の切り屑のような有機系の異物16とが発生する。これらの異物15,16の内の大きなものは、
図3のステップS103に示すダイシング後洗浄工程において、除去される。しかし、数ミクロン~サブミクロンオーダーの微細な異物15,16は除去されず、
図5に示すように、無機系の微細な異物15は、半導体チップ11の表面や切り込み14に面する半導体チップ11の側面に付着した状態となっている。また、有機系の微細な異物16は、半導体チップ11の上面に付着した状態となっている。
【0042】
次に、
図3のステップS201に示すように、ガス溶解水洗浄工程を実行する。ガス溶解水洗浄工程は、ガス溶解水ノズル61からガス溶解水を半導体チップ11の表面に噴射して半導体チップ11の表面を洗浄する工程である。ガス溶解水は、ガス溶解水ノズル61を通る際に超音波発振器62で超音波加振され、微細な泡を含むものとなる。この微細な泡は、半導体チップ11の表面や切り込み14の中で発泡し、その衝撃で半導体チップ11の表面の微細な無機系の異物15を除去する。ガス溶解水として水素水を用いた場合、水素水は有機物を腐食しないので有機物であるダイシングフィルム30の基材31を損傷させることなく無機系の異物15を除去することができる。また、水素水によって表面の酸化が抑制されるので、半導体チップ11の表面を酸化していない表面に仕上げることができる。更に、アルカリ添付水素水を用いると除去した異物15が半導体チップ11の表面に再付着することを抑制できるので、洗浄後の半導体チップ11の表面の清浄度をより高くすることができる。
【0043】
一方、水素水は有機物を腐食しないので、半導体チップ11の上面に付着している粘着層32の切り屑のような有機系の微細な異物16を除去することができず、ガス溶解水洗浄工程が終了しても、
図6に示すように、半導体チップ11の上面には、有機系の微細な異物16が付着している。そこで、
図3のステップS202に進んで、拭き取り洗浄工程を実行する。
【0044】
拭き取り洗浄工程は、洗浄液ノズル72から半導体チップ11の表面に連続的に洗浄液を流しながら、回転駆動部75で拭き取りアーム70の先端に取付けた拭き取り部材保持部73を回転させ、押し付け機構76によって拭き取り部材保持部73に取付けた拭き取り部材74を半導体チップ11の表面に押し付けて、半導体チップ11の表面に付着している有機系の異物16を拭き取る工程である。
【0045】
拭き取り洗浄工程において、拭き取り部材保持部73を自転させてもよい。なお、回転台50の回転により拭き取り部材保持部73は回転軸52の周りに公転する。また、XY駆動部77によってアーム本体71をXY方向に移動させてもよい。また、回転駆動部75で拭き取り部材保持部73を回転軸52の周りに公転させてもよい。また、拭き取り洗浄工程の際に、押し付け機構76の中の押圧力調整機構によって拭き取り部材74を半導体チップ11の表面への押し付け圧力の調整を行ってもよいし、押し付け機構76の中の押圧量調整機構によって拭き取り部材74の半導体チップ11への押し付け量を調整してもよい。
【0046】
拭き取り洗浄工程によって有機系の異物16を効果的に半導体チップ11の表面から除去することができる。ここで、洗浄液としては、純水、水素水、アルカリ添加水素水、炭酸水等を用いることができる。水素水、アルカリ添加水素水、炭酸水を用いた場合には、静電気の発生を抑制することができる。
【0047】
そして、拭き取り洗浄工程が終了すると、有機系の微細な異物16が半導体チップ11の表面から除去され、半導体チップ11の表面は、
図8に示すような清浄な表面となる。そして、清浄な表面を持つ半導体チップ11は、
図3のステップS301に示すように、ボンディング装置において他の半導体チップ11或いは、基板の上にボンディングされる。なお、
図3のステップS202に示す拭き取り洗浄工程の後に乾燥工程を実行し、半導体チップ11を乾燥させてからボンディングを行うようにしてもよい。なお、ボンディング装置は、例えばフリップチップボンディング装置であるが、ダイボンディング装置等、半導体チップ11を被接合物に接合する装置であれば用いることができる。
【0048】
以上説明したように、実施形態の半導体チップ洗浄装置100は、半導体チップ11の表面に付着した微細な異物15,16の除去を行うことができる。
【0049】
一方、
図8に示すように、従来技術の洗浄方法では、洗浄後でも半導体チップ11の表面には、数ミクロン~サブミクロンオーダーの無機系の異物15や有機系の異物16が残っている。このため、半導体チップ11をダイシングフィルム30から剥がした際に半導体チップ11の表面に付着していた異物15が矢印91に示すように、隣接する半導体チップ11の表面に落下する。半導体チップ11の表面に落下した異物15の上に半導体チップ11をダイレクトボンディングすると、異物15の為に良好なボンディングができない場合がある。
【0050】
しかし、実施形態の半導体チップ洗浄装置100によれば、半導体チップ11の表面に付着した微細な異物15,16を除去することができるので、ダイレクトボンディングの際のボンディング品質を向上させることができる。
【0051】
以上説明した実施形態の半導体チップ洗浄装置100では、ダイシングフィルム30の上に貼り付けられた半導体チップ11の表面の洗浄を行うこととして説明したが、これに限らず、例えば、ダイシング洗浄工程の後、ダイシングした複数の半導体チップ11の中から良品の半導体チップ11のみをピックアップしてガラス板の上に粘着剤を介して貼り付け、複数の半導体チップ11が貼り付けられてガラス板を回転台50の上に載置して半導体チップ11の表面の洗浄を行う場合にも適用することができる。この場合、ガラス板は、支持材を構成する。また、ガラス板ではなく、シリコンウェーハ或いは基板の上に半導体チップ11を貼り付け、シリコンウェーハ或いは基板を回転台50に載置して半導体チップ11の洗浄を行うようにしてもよい。この場合、シリコンウェーハ、基板は、支持材を構成する。
【0052】
次に、
図9から
図11を参照しながら、実施形態の半導体チップ洗浄装置100の他の洗浄工程について説明する。先に
図3を参照して説明した洗浄工程と同一の工程には、同一の符号を付して説明は省略する。
【0053】
図9に示す洗浄工程は、
図9のステップS201に示すようにダイシング工程の後にガス溶解水洗浄工程を実施し、その後、ステップS202において拭き取り洗浄工程を実行し、その後、
図9のステップS203において、再度、ガス溶解水洗浄工程を実行するものである。これにより、無機系の微細な異物15をより効果的に除去することができる。
【0054】
図10に示す洗浄工程は、
図9の洗浄工程のように、ステップS202で拭き取り洗浄工程を実行した後にS203において、再度、ガス溶解水洗浄工程を実行し、その後で、更に、ステップS204でオゾン水洗浄工程を実行するものである。
【0055】
オゾン水洗浄工程は、オゾンを水に溶解したオゾン水をガス溶解水ノズル61から噴出させて半導体チップ11の表面を洗浄するものである。オゾン水洗浄工程を追加することにより、より効果的に有機系の微細な異物16を除去することができる。
【0056】
図11に示す洗浄工程は、
図3のステップS103に示すダイシング後洗浄工程を行わず、ガス溶解水洗浄工程と拭き取り洗浄工程のみを行うものである。これにより、洗浄工程を短縮することができる。
【0057】
なお、
図9から
図11を参照して説明した洗浄工程において、それぞれ最後の洗浄工程であるガス溶解水洗浄工程、オゾン水洗浄工程、拭き取り洗浄工程の後に乾燥工程を実施し、半導体チップ11の表面を乾燥させてもよい。
【0058】
実施形態の半導体チップ洗浄装置100をボンディング装置と一体に配置し、洗浄後の清浄な半導体チップ11をボンディング装置に供給するように構成してもよい。これにより、より清浄度の高い半導体チップ11をボンディング装置に供給することができる。
【0059】
また、実施形態の半導体チップ洗浄装置100をダイシング装置と一体に配置してもよい。例えば、ダイシング装置のダイシング洗浄装置に代えて半導体チップ洗浄装置100をダイシング装置に一体に組み込んで、ウェーハ10の切断の際に半導体チップ11の表面に付着する無機系および有機系の微細な異物15,16を半導体チップ11の表面から除去することができる。
【符号の説明】
【0060】
10 ウェーハ、11 半導体チップ、14 切り込み、15,16 異物、20 リング、30 ダイシングフィルム、31 基材、32 粘着層、50 回転台、51 回転板、52 回転軸、53,75 回転駆動部、55 水受け、61 ガス溶解水ノズル、62 超音波発振器、70 拭き取りアーム、71 アーム本体、72 洗浄液ノズル、73 拭き取り部材保持部、74 拭き取り部材、76 押し付け機構、77 XY駆動部、100 半導体チップ洗浄装置。