(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】ガラス組成物、ガラス組成物の製造方法、導電ペースト、及び太陽電池
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0224 20060101AFI20240228BHJP
C03C 3/064 20060101ALI20240228BHJP
C03C 8/18 20060101ALI20240228BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20240228BHJP
H01L 31/068 20120101ALI20240228BHJP
【FI】
H01L31/04 264
C03C3/064
C03C8/18
H01B1/22 A
H01L31/06 300
(21)【出願番号】P 2019104493
(22)【出願日】2019-06-04
【審査請求日】2022-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】399054321
【氏名又は名称】東洋アルミニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】中北 要佑
(72)【発明者】
【氏名】柏田 陽平
(72)【発明者】
【氏名】ダムリン マルワン
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 紹太
(72)【発明者】
【氏名】黒木 崇志
【審査官】桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-018666(JP,A)
【文献】特開2014-187345(JP,A)
【文献】特開2012-180261(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105261669(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0040470(US,A1)
【文献】特開2006-261350(JP,A)
【文献】特開2015-107892(JP,A)
【文献】特開2016-213284(JP,A)
【文献】特開2011-204759(JP,A)
【文献】国際公開第2014/050703(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/078
H01L 31/18-31/20
H10K 30/00-99/00
H02S 10/00-10/40
H02S 30/00-99/40
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物基準のモル%表記で、
Bi
2O
3を3%以上19%以下、
B
2O
3を20%以上70%以下、
SiO
2を1%以上30%以下、
K
2Oを
10.1%以上20%以下、
CaOを3%以上20%以下、
BaOを1%以上20%以下、
PbOを0.1%以下、
CuOを0.1%以下、
含有するガラス組成物。
【請求項2】
さらに、酸化物基準のモル%表記で、SrO、およびZnOから選ばれる少なくとも1種を合計で0%以上15%以下含有する請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項3】
酸化物基準のモル%表記で、
B
2O
3を35%以上60%以下、
K
2Oを1%以上40%以下、
CaOを3%以上30%以下、
BaOを2%以上25%以下、
SiO
2を5%以上10%以下、
PbOを0.1%以下、
CuOを0.1%以下含有する第1のガラス組成物と、
酸化物基準のモル%表記で、
Bi
2O
3を5%以上60%以下、
B
2O
3を15%以上80%以下
、
PbOを0.1%以下、
CuOを0.1%以下含有
する第2のガラス組成物と
を混合する工程を含む、
請求項1に記載のガラス組成物の製造方法。
【請求項4】
前記第1のガラス組成物が、さらに酸化物基準のモル%表記でSrOを0%以上15%以下含有する請求項3に記載のガラス組成物の製造方法。
【請求項5】
前記第2のガラス組成物が、さらに酸化物基準のモル%表記でZnOを0%以上30%以下含有する請求項3または4に記載のガラス組成物の製造方法。
【請求項6】
前記第1のガラス組成物と前記第2のガラス組成物の混合割合が質量比で80:20~40:60である請求項3~5のいずれか1項に記載のガラス組成物の製造方法。
【請求項7】
請求
項2に記載のガラス組成物の製造方法である、請求項3~6のいずれか1項に記載のガラス組成物の製造方法。
【請求項8】
酸化物基準のモル%表記で、Bi
2O
3を3%以上19%以下、B
2O
3を20%以上70%以下、SiO
2を1%以上30%以下、K
2Oを
10.1%以上20%以下、CaOを3%以上20%以下、BaOを1%以上20%以下、PbOを0.1%以下、CuOを0.1%以下含有するガラスの粉末と、導電性金属粉末と、有機ビヒクルとを含有する導電ペースト。
【請求項9】
請求項8に記載の導電ペーストを用いて形成された電極を具備する太陽電池。
【請求項10】
太陽光受光面を有するシリコン基板と、
前記シリコン基板の前記太陽光受光面に設けられた第1の絶縁膜と、
前記シリコン基板の前記太陽光受光面とは反対側の面に設けられた第2の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜の一部を貫通して前記シリコン基板に接触する第1の電極と、
前記第2の絶縁膜の一部を貫通して前記シリコン基板に接触する第2の電極と、
を備える太陽電池であって、
前記第1の電極は、Al、Ag、Cu、Au、PdおよびPtからなる群から選択される少なくとも1種を含む第1の金属と、第1のガラスとを含み、
前記第2の電極は、Al、Ag、Cu、Au、PdおよびPtからなる群から選択される少なくとも1種を含む第2の金属と、
酸化物基準のモル%表記で、
Bi
2O
3を3%以上19%以下、
B
2O
3を20%以上70%以下、
SiO
2を1%以上30%以下、
K
2Oを
10.1%以上20%以下、
CaOを3%以上20%以下、
BaOを1%以上20%以下、
PbOを0.1%以下、
CuOを0.1%以下、
含有する第2のガラスを含む
太陽電池。
【請求項11】
前記第2の電極は、前記第2の金属100質量部に対して、前記第2のガラスを0.1質量部以上15質量部以下含む請求項10に記載の太陽電池。
【請求項12】
前記第2の金属はAgを含む請求項10または11に記載の太陽電池。
【請求項13】
前記第2の金属はAlを含む請求項10~12のいずれか1項に記載の太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス組成物、ガラス組成物の製造方法、導電ペースト、及び太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコン(Si)等の半導体基板の上に電極となる導電層を形成した電子デバイスが、種々の用途に使用されている。この電極となる導電層は、一般的に、アルミニウム(Al)や銀(Ag)、銅(Cu)等の導電性金属粉末とガラス粉末を有機ビヒクル中に分散させた導電ペーストを、半導体基板上に塗布し、導電性金属粉末の融点以上の温度で焼成することにより形成される。
【0003】
半導体基板上に電極を形成する際には、半導体基板上に絶縁膜を形成し、当該絶縁膜を部分的に貫通して半導体基板に接触するようにしてパターン状の電極を形成する場合がある。例えば、太陽電池においては、半導体基板の受光面上に反射防止膜(絶縁膜)が設けられ、その上にパターン状の電極が設けられる。反射防止膜は、十分な可視光透過率を保ちつつ表面反射率を低減して受光効率を高めるためのものであって、通常、窒化珪素、二酸化チタン、二酸化珪素、酸化アルミニウム等の絶縁材料で構成される。また、PERC(Passivated Emitter and Rear Contact)等の太陽電池では、裏面にも反射防止膜と同様の絶縁材料からなるパッシベーション膜が設けられ、該パッシベーション膜上に電極が部分的に半導体基板に接触するように形成される。
【0004】
電極は、半導体基板に接触するように形成する必要がある。したがって、電極形成の際には、形成する電極のパターンに応じて絶縁膜が部分的に除去され、絶縁膜が除去された部分に電極が形成される。
絶縁層を部分的に除去する方法としてレーザー等で物理的に除去する方法が挙げられるが、当該方法は製造工程の増加や、装置導入コストの増加を伴う。したがって、近年では導電性金属粉末とガラス粉末を含有する導電ペースト(ペースト状の電極材料)を絶縁膜上に塗布して熱処理を行うことで、該導電ペーストに絶縁膜を貫通させる方法(ファイヤースルー)が採用されている。
【0005】
ファイヤースルーに用いる導電ペーストとしては様々なものが開発されており、例えば特許文献1には、所定量のアルミニウム粉末、ガラス粉末、銀、有機ビヒクルを含む裏面電極用ペーストが開示されている。また、特許文献2には、所定の形状のアルミニウム粉末と、有機ビヒクルと、Bi2O3-ZnO-B2O3-CuOを含むガラス粉末を含むペースト組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5530928号公報
【文献】特許第6188480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明者らは特許文献1に開示された裏面ペーストを用いて裏面パッシベーション層を貫通する裏面電極を形成することを試みた。しかしながら、当該裏面ペーストはファイヤースルー性が低く、良好なp+層が得られなかった。また、特許文献2に開示された裏面ペーストはCuOを必須成分として含むが、Cuは半導体基板の材料であるシリコン中を拡散しやすいので、太陽電池の電気特性を悪化させやすい。
【0008】
上記に鑑みて、本発明は、導電性金属粉末と有機ビヒクルと混合してペースト化することにより、ファイヤースルー性が高くさらに半導体基板を劣化させることがない導電ペーストを得られるガラス組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、導電性金属粉末と有機ビヒクルと混合してペースト化することにより、ファイヤースルー性が高くさらに半導体基板を劣化させることがない導電ペーストを得られるガラス組成物の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、ファイヤースルー性が高くさらに半導体基板を劣化させることがない導電ペーストを提供することを目的とする。
また、本発明はファイヤースルー性が高くさらに半導体基板を劣化させることがない導電ペーストにより形成された電極を備える太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下の構成のガラス組成物、ガラス組成物の製造方法、導電ペーストおよび太陽電池を提供する。
[1]酸化物基準のモル%表記で、Bi2O3を3%以上19%以下、B2O3を20%以上70%以下、SiO2を1%以上30%以下、K2Oを3%以上20%以下、CaOを3%以上20%以下、BaOを1%以上20%以下、含有し、実質的にPbOとCuOとを含まないガラス組成物。
[2]さらに、酸化物基準のモル%表記で、SrO、およびZnOから選ばれる少なくとも1種を合計で0%以上15%以下含有する[1]に記載のガラス組成物。
[3]酸化物基準のモル%表記で、B2O3を35%以上60%以下、K2Oを1%以上40%以下、CaOを3%以上30%以下、BaOを2%以上25%以下、SiO2を5%以上10%以下含有し、実質的にPbOとCuOとを含まない第1のガラス組成物と、酸化物基準のモル%表記で、Bi2O3を5%以上60%以下、B2O3を15%以上80%以下含有し、実質的にPbOとCuOとを含まない第2のガラス組成物とを混合する工程を含む、ガラス組成物の製造方法。
[4]前記第1のガラス組成物が、さらに酸化物基準のモル%表記でSrOを0%以上15%以下含有する[3]に記載のガラス組成物の製造方法。
[5]前記第2のガラス組成物が、さらに酸化物基準のモル%表記でZnOを0%以上30%以下含有する[3]または[4]に記載のガラス組成物の製造方法。
[6]前記第1のガラス組成物と前記第2のガラス組成物の混合割合が質量比で80:20~40:60である[3]~[5]のいずれか1つに記載のガラス組成物の製造方法。
[7][1]または[2]に記載のガラス組成物の製造方法である、[3]~[6]のいずれか1つに記載のガラス組成物の製造方法。
[8]酸化物基準のモル%表記で、Bi2O3を3%以上19%以下、B2O3を20%以上70%以下、SiO2を1%以上30%以下、K2Oを3%以上20%以下、CaOを3%以上20%以下、BaOを1%以上20%以下含有し、実質的にPbOとCuOとを含まないガラスの粉末と、導電性金属粉末と、有機ビヒクルとを含有する導電ペースト。
[9][8]に記載の導電ペーストを用いて形成された電極を具備する太陽電池。
[10]太陽光受光面を有するシリコン基板と、前記シリコン基板の前記太陽光受光面に設けられた第1の絶縁膜と、前記シリコン基板の前記太陽光受光面とは反対側の面に設けられた第2の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜の一部を貫通して前記シリコン基板に接触する第1の電極と、前記第2の絶縁膜の一部を貫通して前記シリコン基板に接触する第2の電極と、を備える太陽電池であって、前記第1の電極は、Al、Ag、Cu、Au、PdおよびPtからなる群から選択される少なくとも1種を含む第1の金属と、第1のガラスとを含み、前記第2の電極は、Al、Ag、Cu、Au、PdおよびPtからなる群から選択される少なくとも1種を含む第2の金属と、酸化物基準のモル%表記で、Bi2O3を3%以上19%以下、B2O3を20%以上70%以下、SiO2を1%以上30%以下、K2Oを3%以上20%以下、CaOを3%以上20%以下、BaOを1%以上20%以下、含有し、実質的にPbOとCuOとを含まない第2のガラスを含む太陽電池。
[11]前記第2の電極は、前記第2の金属100質量部に対して、前記第2のガラスを0.1質量部以上15質量部以下含む[10]に記載の太陽電池。
[12]前記第2の金属はAgを含む[10]または[11]に記載の太陽電池。
[13]前記第2の金属はAlを含む[10]~[12]のいずれか1つに記載の太陽電池。
【発明の効果】
【0010】
本発明のガラス組成物は、導電性金属粉末と有機ビヒクルと混合してペースト化することにより、ファイヤースルー性が高くさらに半導体基板を劣化させることがない導電ペーストを得られる。
また、本発明のガラス組成物の製造方法は、導電性金属粉末と有機ビヒクルと混合してペースト化することにより、ファイヤースルー性が高くさらに半導体基板を劣化させることがない導電ペーストを得られるガラス組成物の製造方法を提供する。
また、本発明の導電ペーストは、ファイヤースルー性が高くさらに半導体基板を劣化させることがない。
また、本発明の太陽電池はファイヤースルー性が高くさらに半導体基板を劣化させることがない導電ペーストにより形成された電極を備える太陽電池であり、信頼性と生産性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の導電ペーストを用いて電極形成されたp型Si基板両面受光型太陽電池の一例の断面を模式的に示した図である。
【
図2】接触抵抗Rc[Ω]を評価する際に使用したSi基板に形成した電極パターンを示した図である。
【
図3】
図2に示す電極パターンを用いて接触抵抗Rc[Ω]を求める際の電極間距離L[mm]と電気抵抗R[Ω]の関係を示すグラフ(例37、例51)である。
【
図4】実施例(例37)のガラス組成物を含有する導電ペーストの絶縁膜貫通性の評価結果を示す写真である。
【
図5】比較例(例51)のガラス組成物を含有する導電ペーストの絶縁膜貫通性の評価結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。
なお、本明細書において、ガラスの組成について「モル%」又は単に「%」というときは、酸化物基準のモル%を意味する。
また、本明細書において、実質的に含有しないとは、積極的には含有させないが、不可避不純物による混入を許容することを意味する。
<1.ガラス組成物>
まず、本発明において提供されるガラス組成物について説明する。
本発明のガラス組成物はモル%表示で、Bi2O3を3%以上19%以下、B2O3を20%以上70%以下、SiO2を1%以上30%以下、K2Oを3%以上20%以下、CaOを3%以上20%以下、BaOを1%以上20%以下含有し、実質的にPbOとCuOとを含まない。
なお、本発明のガラス組成物における各成分の含有量は、誘導結合プラズマ発光分析(ICP-AES:Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectroscopy)、または電子線マイクロアナライザ(EPMA:Electron Probe Micro Analyzer)分析の結果から求められる。
【0013】
上記組成を有する本発明のガラス組成物を導電性金属粉末及び有機ビヒクルと混合してペースト化すると、ファイヤースルー性が高くさらに半導体基板を劣化させることがない導電ペーストを得られる。より詳細には、本発明のガラス組成物を含む導電ペーストを焼成すると、比較的早い段階でガラス組成物が流動して絶縁膜と反応し、絶縁膜を貫通する。また、更に温度が上がるとガラス組成物が半導体基板中への電極の侵入を促進させ、これにより半導体基板と十分な接触を有する信頼性の高い絶縁膜貫通電極が形成される。このように本発明のガラス組成物を含む導電ペーストを用いると、レーザー等で絶縁膜を物理的に除去してから電極を形成する方法に比べて、高効率、低コストで絶縁膜貫通電極を形成できる。
【0014】
以下、本発明のガラス組成物に含有される成分について説明する。
【0015】
Bi2O3は、ガラス組成物の軟化時の流動性を向上させ、また、ガラス転移点を低下させることにより、ガラス組成物と絶縁膜との反応性を向上させる成分である。
本発明のガラス組成物のBi2O3の含有量が3%未満であると、ガラス組成物の流動性が低下し、ガラス組成物と絶縁膜との反応性が低下する。したがって、本発明のガラス組成物のBi2O3の含有量は3%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは8%以上である。
一方、本発明のガラス組成物のBi2O3の含有量が19%超であると、結晶化によりガラス組成物が得られない恐れがある。したがって、本発明のガラス組成物のBi2O3の含有量は19%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは13%以下である。
【0016】
B2O3は、ガラス組成物の軟化時の流動性を向上させ、半導体基板との接合強度を向上させる成分である。また、B2O3はガラスの網目構造形成成分であり、ガラス組成物の安定化に寄与する成分でもある。更に、B2O3は半導体基板とガラス組成物の反応を促進する成分でもあり、例えば、半導体基板がpn接合型のSi半導体基板である場合、電極と接触するp+層やn+層の良好な形成を促進する。例えば、p+層に接触する電極を形成する際には、B2O3中のBがp+層に拡散し、より良好なp+層の形成に寄与する。
本発明のガラス組成物のB2O3の含有量が20%未満であると、ガラス組成物の安定性が低下してガラス化できない恐れがあり、また、上記の半導体基板とガラス組成物の反応の促進効果が十分に得られない恐れがある。したがって、本発明のガラス組成物のB2O3の含有量は20%以上、好ましくは25%以上、より好ましくは35%以上である。
一方、本発明のガラス組成物のB2O3の含有量が70%超であると、ガラス組成物の耐候性が劣化する恐れがある。したがって、本発明のガラス組成物のB2O3の含有量は70%以下、好ましくは60%以下、より好ましくは55%以下である。
【0017】
SiO2は、ガラス組成物の耐候性の向上及び安定性の向上に寄与する成分である。
本発明のガラス組成物のSiO2の含有量が1%未満であると、結晶化によりガラス組成物が得られない恐れがある。したがって、本発明のガラス組成物のSiO2の含有量は1%以上、好ましくは3%以上である。
一方、本発明のガラス組成物のSiO2の含有量が30%超であると、ガラス転移点が高くなり、ガラス組成物が流動しにくくなる恐れがある。したがって、本発明のガラス組成物のSiO2の含有量は30%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下である。
【0018】
K2Oは、ガラス組成物の軟化時の流動性を向上させ、半導体基板と電極の接合強度を向上させる成分である。また、K2Oに含まれるKは、絶縁膜を貫通して半導体基板と接触した際に半導体基板中に移動しやすく、したがって、例えば導電性金属がAlの場合、Al粒子のSi半導体基板への拡散するのを助けることができる。このことから、K2Oは電極と半導体基板との間の接触抵抗を下げる成分であり、また、良好なp+層の形成に寄与する成分である。
本発明のガラス組成物のK2Oの含有量が3%未満であると、ガラス転移点が高くなり、ガラスが流動しにくくなる恐れがある。したがって、本発明のガラス組成物のK2Oの含有量は3%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは8%以上である。
一方、本発明のガラス組成物のK2Oの含有量が20%超であると、結晶化によりガラス組成物が得られない恐れがある。したがって、本発明のガラス組成物のK2Oの含有量は20%以下、好ましくは18%以下である。
【0019】
CaOは、電極と半導体基板との接触抵抗の低下に寄与する成分である。CaOは熱が加わることにより結晶核を形成し、結晶粒を成長させることにより絶縁膜の貫通を促進する。
本発明のガラス組成物のCaOの含有量が3%未満であると、絶縁膜の貫通が不十分となる恐れがある。したがって、本発明のガラス組成物のCaOの含有量は3%以上、好ましくは4%以上である。
一方、本発明のガラス組成物のCaOの含有量が20%超であると、結晶化によりガラス組成物が得られない恐れがある。したがって、本発明のガラス組成物のCaOの含有量は20%以下、好ましくは18%以下である。
【0020】
BaOは、電極と半導体基板との接触抵抗の低下に寄与する成分である。
本発明のガラス組成物のBaOの含有量が1%未満であると、ガラス転移点が高くなり、ガラス組成物が流動しにくくなる恐れがある。したがって、本発明のガラス組成物のBaOの含有量は1%以上、好ましくは4%以上である。
一方、本発明のガラス組成物のBaOの含有量が20%超であると、結晶化によりガラス組成物が得られない恐れがある。したがって、本発明のガラス組成物のBaOの含有量は20%以下、好ましくは18%以下、より好ましくは15%以下である。
【0021】
本発明のガラス組成物は、本発明の効果を奏する限りにおいて上記成分以外の成分を含有してもよい。例えば、本発明のガラス組成物は、さらに、SrO、およびZnOから選ばれる少なくとも1種を含有してもよい。これらの成分は、ガラスの安定性や耐候性の向上に寄与する成分である。本発明のガラス組成物にSrO、およびZnOから選ばれる少なくとも1種を含有させる場合の含有量は、合計で0.5%以上が好ましい。
一方、本発明のガラス組成物をガラス化しやすくするためには、本発明のガラス組成物にSrO、およびZnOから選ばれる少なくとも1種を含有させる場合の含有量は、合計で15%以下が好ましく、13%以下がより好ましい。
【0022】
また、本発明のガラス組成物は他にも例えばP2O5、As2O5、MgO、Li2O、Na2O、ZrO2、Al2O3、Fe2O3、Sb2O3、Sb2O5、SnO2、MoO3、WO3、MnO、MnO2、CeO2、TiO2等の通常ガラスに用いられる酸化物成分を含有してもよい。これらの酸化物成分は目的に応じて、1種を単独で、または2種以上を組み合せて用いることができる。これらの酸化物成分の含有量は合計で5%以下が好ましい。
【0023】
PbOは、環境負荷物質としてRoHS規制などにより禁止される、或いは、規制外の用途においても使用が敬遠されている成分である。
したがって、本発明のガラス組成物にはPbOを添加しない。すなわち、本発明のガラス組成物はPbOを実質的に含有しない。なお、本発明のガラス組成物にはPbOが不純物として含まれる場合がある。本発明のガラス組成物のPbOの含有量は、好ましくは0.1%以下である。
【0024】
CuOは半導体基板中を拡散して半導体基板の特性を劣化させやすい成分である。
したがって、本発明のガラス組成物にはCuOを添加しない。すなわち、本発明のガラス組成物はCuOを実質的に含有しない。なお、本発明のガラス組成物にはCuOが不純物として含まれる場合がある。本発明のガラス組成物のCuOの含有量は、好ましくは0.1%以下である。
【0025】
本発明のガラス組成物は、単一種のガラス組成物からなってもよく、また、組成の異なる複数種のガラス組成物の混合物であってもよい。混合物である場合は、平均組成が上記の組成範囲の条件を満足すればよい。
例えば本発明のガラス組成物は、後述の第1のガラス組成物と第2のガラス組成物を、平均組成が上記の組成範囲の条件を満足するように混合した混合物であってもよい。本発明のガラス組成物が後述の第1のガラス組成物と第2のガラス組成物の混合物である場合、第1のガラス組成物と第2のガラス組成物の混合割合は、質量比で80:20~40:60が好ましく、75:25~45:55がより好ましい。
【0026】
本発明のガラス組成物の形状は特に限定されず、例えば粒上、薄板状(フレーク状)、粉状などであってよいが、ペースト化される際の分散性を向上させるためには粉状であることが好ましい。
本発明のガラス組成物が粉状である場合は、体積基準の50%粒径D50が0.5μm以上10μm以下であることが好ましい。D50が0.5μm以上であると、ペースト化される際の分散性が向上する。D50が10μm以下であると、本発明のガラス組成物を含むペースト内において導電性金属粉末の周りにガラスが存在しない個所が発生しにくくなり、得られる電極と半導体基板との接着性が特に良好になる。D50は、より好ましくは7.0μm以下である。
なお、本明細書においてD50は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した粒径分布の累積粒度曲線において、その積算量が体積基準で50%を占めるときの粒径を意味する。
【0027】
本発明のガラス組成物は完全に非晶質であること、すなわち結晶化度が0%であることが好ましいが、本発明の効果を奏する範囲であれば、結晶化した部分を含んでいても、すなわち結晶化度が0%超であってもよい。
【0028】
上記の本発明のガラス組成物は、例えば以下の方法により得られる。
【0029】
まず、所望の組成範囲となるようにガラス原料を混合して原料混合物を得る。ガラス原料は、通常の酸化物系のガラスの製造に用いる原料であれば特に限定されず、酸化物や炭酸塩等を用いることができる。
【0030】
次に、原料混合物を加熱して溶融物を得る。この際の加熱温度(溶融温度)は、800~1500℃が好ましく、900~1400℃がより好ましい。加熱時間は、30~300分が好ましい。
【0031】
その後、溶融物を冷却し固化することにより、ガラス組成物を得る。冷却方法は特に限定されない。ロールアウトマシン、プレスマシン、冷却液体への滴下等により急冷する方法をとることもできる。このようにして得られるガラス組成物の形状は特に限定されず、例えば、ブロック状、板状、薄い板状(フレーク状)、粉末状等であってもよい。また、この後ガラス組成物に必要に応じて形状を整えるための処理を施してもよい。
例えば、粉状のガラス組成物を得たい場合は、乾式粉砕法や湿式粉砕法によってガラス組成物を粉砕すればよい。湿式粉砕法の場合、溶媒として水を用いることが好ましい。粉砕は、例えばロールミル、ボールミル、ジェットミル等の粉砕機を用いて行うことができる。また、粉砕後に必要に応じて分級することにより、粉状のガラス組成物の粒径(D50)を調整することができる。
【0032】
また、本発明のガラス組成物が組成の異なる複数種のガラス組成物の混合物である場合は、上記のようにして得られたガラス組成物を混合することにより得られる。この際の混合方法は特に限定されないが、例えばVミキサー等を用いて1~2時間混合する方法が挙げられる。また、本発明のガラス組成物が組成の異なる複数種のガラス粉末の混合物である場合は、複数種のガラス組成物を混合した後に粉砕して粉状にしてもよいが、複数種のガラス組成物をそれぞれ粉砕して粉状にした後に混合することが好ましい。
【0033】
本発明のガラス組成物は、半導体基板上への電極形成、例えば、太陽電池の電極形成に好適に用いられる。本発明のガラス組成物は特に、ファイヤースルーにより電極を形成する導電ペーストの材料として好適に用いられる。更には、Al電極を形成するための導電ペーストの材料として用いられた際に、特に効果を発揮する。後述の<2.ガラス組成物の製造方法>の欄において説明する方法により得られるガラス組成物についても同様である。
【0034】
<2.ガラス組成物の製造方法>
次に、本発明において提供されるガラス組成物の製造方法(以下「本発明の製造方法」ともいう)について説明する。
本発明の製造方法は、酸化物基準のモル%表記でB2O3を35%以上60%以下、K2Oを1%以上40%以下、CaOを3%以上30%以下、BaOを2%以上25%以下、SiO2を5%以上10%以下含有し、実質的にPbOとCuOとを含まない第1のガラス組成物と、酸化物基準のモル%表記で、Bi2O3を5%以上60%以下、B2O3を15%以上80%以下含有し、実質的にPbOとCuOとを含まない第2のガラス組成物とを混合する工程を含む。
なお、本発明の製造方法は、<1.ガラス組成物>の欄において説明した本発明のガラス組成物を製造する方法に限定されず、本発明のガラス組成物に包含されないガラス組成物を製造する方法も包含する。
【0035】
上記第2のガラス組成物はBi2O3を含むことから絶縁膜との反応性に優れるガラス組成物であり、主として絶縁膜の貫通に寄与する成分である。上記第1のガラス組成物は、主として絶縁膜貫通後の電極と半導体基板との反応の促進に寄与する成分である。これらのガラス組成物を混合する本発明の製造方法により得られるガラス組成物は、絶縁膜との反応性、及び、絶縁膜貫通後の電極と半導体基板との反応の促進効果の両方に優れる。したがって、本発明の製造方法により得られるガラス組成物を含む導電ペーストを用いると、絶縁膜貫通電極を容易に形成することができ、また、半導体基板との接触抵抗の低い電極を形成できる。
【0036】
以下に、第1のガラス組成物に含有される成分について説明する。
【0037】
B2O3は先述のとおり、ガラス組成物の安定性及び軟化時の流動性の向上に寄与し、また、半導体基板との接合強度を向上させる成分である。当該効果を奏するために、第1のガラス組成物のB2O3の含有量は35%以上、好ましくは38%以上、より好ましくは40%以上である。
一方、第1のガラス組成物のB2O3の含有量が60%超であると、本実施形態のガラス組成物の耐候性が劣化する恐れがある。したがって、第1のガラス組成物のB2O3の含有量は60%以下、好ましくは58%以下、より好ましくは55%以下である。
【0038】
K2Oは先述のとおり、ガラス組成物の安定性及び軟化時の流動性の向上に寄与し、半導体基板との接合強度を向上させ、また、電極と半導体基板との間の接触抵抗を下げる成分である。当該効果を奏するために、第1のガラス組成物のK2Oの含有量は1%以上、好ましくは6%以上、より好ましくは10%以上である。
一方、第1のガラス組成物のK2Oの含有量が40%超であると、結晶化によりガラス組成物が得られない恐れがある。したがって、第1のガラス組成物のK2Oの含有量は40%以下、好ましくは35%以下、より好ましくは25%以下である。
【0039】
CaOは先述のとおり、電極と半導体基板との接触抵抗の低下に寄与する成分である。当該効果を奏するために、第1のガラス組成物のCaOの含有量は3%以上、好ましくは4%以上、より好ましくは5%以上である。
一方、第1のガラス組成物のCaOの含有量が30%超であると、結晶化によりガラス組成物が得られない恐れがある。したがって、第1のガラス組成物のCaOの含有量は30%以下、好ましくは28%以下、より好ましくは25%以下である。
【0040】
BaOは先述のとおり、電極と半導体基板との接触抵抗の低下に寄与する成分である。当該効果を奏するために、第1のガラス組成物のBaOの含有量は2%以上、好ましくは3%以上である。
一方、第1のガラス組成物のBaOの含有量が25%超であると、結晶化によりガラス組成物が得られない恐れがある。したがって、第1のガラス組成物のBaOの含有量は25%以下、好ましくは20%以下である。
【0041】
SiO2は先述のとおり、ガラス組成物の耐候性の向上及び安定性の向上に寄与する成分である。当該効果を奏するために、第1のガラス組成物のSiO2の含有量は5%以上、好ましくは6%以上である。
一方、第1のガラス組成物のSiO2の含有量が10%超であると、ガラス転移点が高くなり、ガラス組成物が流動しにくくなる恐れがある。したがって、第1のガラス組成物のSiO2の含有量は10%以下、好ましくは9%以下である。
【0042】
第1のガラス組成物は、さらにSrOを含有してもよい。第1のガラス組成物にSrOを含有させることにより、本実施形態のガラス組成物のファイヤースルー性がより一層向上する。第1のガラス組成物にSrOを含有させる場合の含有量は、好ましくは3%以上である。一方、第1のガラス組成物がSrOを過剰に含むと、ガラス化しない恐れがある。したがって、第1のガラス組成物にSrOを含有させる場合の含有量は、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下である。
【0043】
次に、第2のガラス組成物に含有される成分について説明する。
【0044】
Bi2O3は先述のとおり、ガラス組成物と絶縁膜との反応性を向上させる成分である当該効果を奏するために、第2のガラス組成物のBi2O3の含有量は5%以上、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上である。
一方、第2のガラス組成物のBi2O3の含有量が60%超であると、結晶化によりガラス組成物が得られない恐れがある。したがって、第2のガラス組成物のBi2O3の含有量は60%以下、好ましくは55%以下である。
【0045】
B2O3は先述のとおり、ガラス組成物の安定性及び軟化時の流動性の向上に寄与し、また、半導体基板との接合強度を向上させる成分である。当該効果を奏するために、第2のガラス組成物のB2O3の含有量は15%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上である。
一方、第2のガラス組成物のB2O3の含有量が80%超であると、本実施形態のガラス組成物の耐候性が劣化する恐れがある。したがって、第1のガラス組成物のB2O3の含有量は80%以下、好ましくは70%以下である。
【0046】
また、第1のガラス組成物および第2のガラス組成物は、上記成分以外にも例えば、ZnO、P2O5、As2O5、MgO、Li2O、Na2O、ZrO2、Al2O3、Fe2O3、Sb2O3、Sb2O5、SnO2、MoO3、WO3、MnO、MnO2、CeO2、TiO2等の通常ガラスに用いられる各種酸化物成分を含有してもよい。これらの酸化物成分は目的に応じて、1種を単独で、または2種以上を組み合せて用いることができる。これらの成分の含有量は、本発明の方法により得られるガラス組成物において5%以下となるようにすることが好ましい。
【0047】
また、先述のとおりPbOは環境負荷物質であり、したがって、第1のガラス組成物および第2のガラス組成物は、いずれもPbOを実質的に含有しない。なお、第1のガラス組成物および第2のガラス組成物にはPbOが不純物として含まれる場合がある。第1のガラス組成物および第2のガラス組成物のPbOの含有量は、いずれも好ましくは0.1%以下である。
【0048】
また、先述のとおりCuOは半導体基板中を拡散して半導体基板の特性を劣化させやすい成分であり、したがって、第1のガラス組成物および第2のガラス組成物は、いずれもCuOを実質的に含有しない。なお、第1のガラス組成物および第2のガラス組成物にはCuOが不純物として含まれる場合がある。第1のガラス組成物および第2のガラス組成物のCuOの含有量は、いずれも好ましくは0.1%以下である。
【0049】
第1のガラス組成物及び第2のガラス組成物の形状、D50、結晶化度、製造方法については、<1.ガラス組成物>の欄において説明した本発明のガラス組成物と同様である。
【0050】
本発明の製造方法の第1のガラス組成物と第2のガラス組成物とを混合する工程(以下単に「本発明の製造方法の混合工程」ともいう)における混合方法は第1及び第2のガラス組成物が均一に混合される方法であれば特に限定されない。例えば、Vミキサー等を用いて1~2時間混合する方法が挙げられる。
【0051】
本発明の製造方法の混合工程における第1のガラス組成物:第2のガラス組成物の混合割合は特に限定されないが、先述の第1及び第2のガラス組成物の効果を充分に発揮するためには、質量比で80:20~40:60が好ましく、75:25~45:55がより好ましい。また、本発明の製造方法により得られるガラス組成物の平均組成が<1.ガラス組成物>の欄において説明した本発明のガラス組成物の組成と同様になるような混合割合が特に好ましい。
また、本発明の製造方法の混合工程では、本発明の効果を奏する範囲で、第1及び第2のガラス組成物に加え更にその他のガラス組成物を混合させてもよい。
【0052】
<3.導電ペースト>
次に、本発明において提供される導電ペーストについて説明する。
本発明の導電ペーストは、<1.ガラス組成物>の欄において説明したガラス組成物の粉末(以下、「本発明のガラス粉末」ともいう)と、導電性金属粉末と、有機ビヒクルとを含有する。
すなわち、本発明の導電ペーストは、酸化物基準のモル%表記で、Bi2O3を3%以上19%以下、B2O3を20%以上70%以下、SiO2を1%以上30%以下、K2Oを3%以上20%以下、CaOを3%以上20%以下、BaOを1%以上20%以下含有し、実質的にPbOとCuOとを含まないガラスの粉末と、導電性金属粉末と、有機ビヒクルとを含有する導電ペーストである。
【0053】
本発明の導電ペーストに含有される導電性金属粉末として、半導体基板上に形成される電極に通常用いられる金属の粉末が特に制限なく用いられる。導電性金属粉末として、具体的には、Al、Ag、Cu、Au、Pd、Pt等の粉末が挙げられ、これらのうちでも、Al粉末が好ましい。Al粉末を導電性金属粉末として用いると、導電ペーストに含まれる本発明のガラス粉末の絶縁膜を貫通する効果、及びSi基板との反応性を高める効果が特に特に顕著に発揮される。
導電性金属粉末のD50は、凝集の抑制及び分散性の向上のために1~10μmが好ましい。
【0054】
本発明の導電ペーストのガラス粉末の含有量は、特に限定されないが、導電性金属粉末100質量部に対して0.1質量部以上、好ましくは0.5質量部以上とすることにより、特に良好なファイヤースルー性が得られる。
一方、ガラス粉末の含有量を導電性金属粉末100質量部に対して15質量部以下、より好ましくは10質量部以下とすることにより、得られる電極の電気抵抗が小さくなる。
ガラス粉末のD50は、凝集の抑制及び分散性の向上のために0.5μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましく、また、10μm以下が好ましく、5.0μm以下がより好ましい。
【0055】
本発明の導電ペーストに含有される有機ビヒクルとしては、有機樹脂バインダーを溶媒に溶解して得られる有機樹脂バインダー溶液を用いることができる。
【0056】
有機樹脂バインダーとしては、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、オキシエチルセルロース、ベンジルセルロース、プロピルセルロース、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ブチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート等のアクリル系モノマーの1種以上を重合して得られるアクリル系樹脂等の有機樹脂が用いられる。
【0057】
溶媒としては、セルロース系樹脂の場合はターピネオール、ブチルジグリコールアセテート、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールジアセテート等の溶媒が、アクリル系樹脂の場合はメチルエチルケトン、ターピネオール、ブチルジグリコールアセテート、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールジアセテート等の溶媒が好ましく用いられる。
【0058】
有機ビヒクルにおける有機樹脂バインダーと溶媒の割合は、特に制限されないが、得られる有機樹脂バインダー溶液が導電ペーストの粘度を調整できる粘度となるように選択される。具体的には、有機樹脂バインダー:溶媒の質量比が、3:97~15:85程度であることが好ましい。
【0059】
本発明の導電ペーストにおける有機ビヒクルの含有量は、特に限定されないが、導電ペースト全量に対して5質量%以上とすると良好な塗布性が得られるため好ましい。
一方、本発明の導電ペーストにおける有機ビヒクルの含有量は、導電ペースト全量に対して30質量%以下とすると導電ペーストの固形分の含有割合が好適な範囲となり、十分な塗布膜厚が得られやすいため好ましい。
【0060】
本発明の導電ペーストには、本発明のガラス粉末、導電性金属粉末、および有機ビヒクルに加え、必要に応じて、かつ、本発明の目的に反しない限度において公知の添加剤を配合することができる。
【0061】
添加剤としては、例えば、各種無機酸化物が挙げられる。無機酸化物として具体的には、B2O3、SiO2、Al2O3、TiO2、MgO、ZrO2、Sb2O3、およびこれらの複合酸化物等が挙げられる。これらの無機酸化物は、導電ペーストの焼成に際し、導電性金属粉末の焼結を和らげる効果があり、それにより、焼成後の電極表面のブリスター発生を抑制する作用を有する。これらの無機酸化物の大きさは特に限定されるものではないが、例えば、D50が10μm以下であることが好ましい。
【0062】
導電ペーストにおける、無機酸化物の含有量は目的に応じて適宜に設定されるものであり特に限定されないが、ガラス粉末100質量部に対して10質量部以下、好ましくは7質量部以下とすると、電極形成時に好適な流動性が得られやすくなり、電極と半導体基板との接着強度が高くなりやすい。
一方、導電ペーストにおける、無機酸化物の含有量をガラス粉末100質量部に対して3質量部以上、好ましくは5質量部以上とすると、無機酸化物添加による効果(電極と半導体基板との電気抵抗抑制)を得られやすい。
【0063】
導電ペーストには、消泡剤や分散剤のように導電ペーストの分野において公知の添加物を加えてもよい。なお、上記有機ビヒクルおよびこれらの添加物は、通常、電極形成の過程で消失する成分である。導電ペーストの調製には、撹拌翼を備えた回転式の混合機や擂潰機、ロールミル、ボールミル等を用いた公知の方法を適用することができる。
【0064】
本発明の導電ペーストは、半導体基板上への焼成による電極形成、特には、半導体基板上に設けられた絶縁膜上に導電ペーストを部分的に塗布してファイヤースルーにより行われる電極形成に好適に用いられる。本発明の導電ペーストを用いれば、焼成時に、導電ペーストが塗布された部分において、該導電ペーストが含有するガラス中の酸素が導電性金属粉末に拡散するのを抑制しながら、ガラスが絶縁膜材料と反応し絶縁膜を溶融させることで、絶縁膜を貫通し半導体基板に十分に接触する電極が得られる。
本発明の導電ペーストを用いて形成した電極、具体的には、半導体基板上に焼付けられた電極を具備する製品としては、太陽電池、ダイオード素子、トランジスタ素子、サイリスタ等が挙げられる。本発明の導電ペーストは、太陽電池の製造において、絶縁膜付き半導体基板上にファイヤースルーにより絶縁膜を部分的に貫通して半導体基板に接触する電極を形成するのに特に好適である。例えば、p型Si基板を用いたPERC太陽電池の裏面電極、n型Si基板を用いたPERT(Passivated Emitter, Rear Totally diffused)太陽電池の裏面電極、n型Si基板またはp型Si基板を用いた両面受光太陽電池の、p層またはp+層側に設けられた電極、バックコンタクト型太陽電池の一方の電極の形成に好適である。
【0065】
絶縁膜上への導電ペーストの塗布および焼成は、従来のファイヤースルーにより行われる電極形成における塗布、焼成と同様の方法により行うことができる。塗布方法としては、スクリーン印刷、ディスペンス等が挙げられる。焼成温度は、含有する導電性金属粉末の種類、ガラス粉末の種類等によるが、例えば約600~1000℃である。焼成時間は、貫通させる絶縁膜の厚さ、半導体基板等により適宜調整される。また、導電ペーストの塗布と焼成の間に、100~200℃程度での乾燥処理を施してもよい。
【0066】
<4.太陽電池>
次に、本発明において提供される太陽電池について説明する。
本発明の太陽電池は、<3.導電ペースト>の欄において説明した導電ペーストにより形成された電極を具備する。
本発明の太陽電池においては、電極の少なくとも1つが、本発明の導電ペーストを用いて、ファイヤースルーにより、絶縁膜を部分的に貫通して半導体基板に接触する形に設けられた電極であることが好ましい。
【0067】
本発明の太陽電池の具体的な実施態様として、例えば太陽光受光面を有するシリコン基板と、シリコン基板の太陽光受光面に設けられた第1の絶縁膜と、シリコン基板の太陽光受光面とは反対側の面に設けられた第2の絶縁膜と、第1の絶縁膜の一部を貫通して前記シリコン基板に接触する第1の電極と、前記第2の絶縁膜の一部を貫通して前記シリコン基板に接触する第2の電極とを備える太陽電池であって、第1の電極は、Al、Ag、Cu、Au、PdおよびPtからなる群から選択される少なくとも1種を含む第1の金属と、第1のガラスとを含み、第2の電極は、Al、Ag、Cu、Au、PdおよびPtからなる群から選択される少なくとも1種を含む第2の金属と、酸化物基準のモル%表記で、Bi2O3を3%以上19%以下、B2O3を20%以上70%以下、SiO2を1%以上30%以下、K2Oを3%以上20%以下、CaOを3%以上20%以下、BaOを1%以上20%以下含有し、実質的にPbOとCuOとを含まない第2のガラスを含む太陽電池が挙げられる。
【0068】
太陽電池が有する絶縁膜を貫通する電極としては、例えば、pn接合型の半導体基板を用いた太陽電池の受光面に設けられる電極であって、反射防止膜である絶縁膜を部分的に貫通して半導体基板に接触するように設けられた電極が挙げられる。反射防止膜である絶縁膜を構成する絶縁材料としては窒化珪素、二酸化チタン、二酸化珪素、酸化アルミニウム等が挙げられる。この場合、受光面は半導体基板の片面であっても両面であってもよく、半導体基板はn型、p型のいずれであってもよい。このような太陽電池の受光面に設けられる電極は、本発明の導電ペーストを用いてファイヤースルーにより形成できる。
【0069】
以下、本発明の導電ペーストで形成された電極を備えるp型Si基板両面受光型の太陽電池を例に説明する。
図1は、本発明の導電ペーストを用いて電極形成されたp型Si基板両面受光型太陽電池の一例の断面を模式的に示した図である。
【0070】
図1に示す太陽電池10は、p型Si基板1と、その上面に設けられた絶縁膜2A、下面に設けられた絶縁膜2Bを有し、絶縁膜2Bの一部を貫通してp型Si基板に接触するAl電極4、および絶縁膜2Aの一部を貫通してp型Si基板1に接触するAg電極3を有する。p型Si基板1の上面は、例えば、ウエットエッチング法を用いて形成される、光反射率を低減させるような凹凸構造を有する。なお、図面の上下は、必ずしも使用時における上下を示すものではない。なお、必要に応じて、p型Si基板の両表面が凹凸構造を有してもよい。
【0071】
p型Si基板1は、上から順にn+層1a、p層1bで構成され、Al電極4はp層1bに、Ag電極3はn+層1aに接触している。ここで、n+層1aは、上記凹凸構造が形成された表面に、例えば、P、Sb、As等をドープすることで形成され得る。
【0072】
Al電極4およびAg電極3は、ガラス粉末とAl粉末を含有するAl電極形成用導電ペースト、ガラス粉末とAg粉末を含有するAg電極形成用導電ペーストを、それぞれ用いて次のようにして形成される。すなわち、p型Si基板1の両面に設けられた絶縁膜2B、絶縁膜2Aは、Al電極4、Ag電極3の形成前は全面に隙間なく存在し、Al電極4およびAg電極3を形成するための上記導電ペーストがそれぞれ塗布された部分のみが導電ペーストの焼成時に溶融することで、絶縁膜2B、絶縁膜2Aをそれぞれ貫通しp型Si基板1に接触するAl電極4およびAg電極3が形成される。
【0073】
なお、Al電極4は、絶縁膜2Bを貫通した後、p型Si基板1のp層1bに到達後、Al電極からAlがp層1b内に拡散することでAl電極直上にAl-Si合金層5を形成する。さらにAl-Si合金層5の直上にはp+層としてBSF(Back Surface Field)層6が形成される。
【0074】
当該太陽電池10においてはAg電極3及びAl電極4のいずれかが本発明の導電ペーストを用いて形成されたものであればよいが、特にAl電極が本発明の導電ペーストを用いて形成されたものであることが好ましい。
【0075】
なお、太陽電池が有する絶縁膜2Aおよび絶縁膜2Bは、反射防止膜であり、該膜を構成する絶縁材料としては、上記に挙げた絶縁材料が使用可能である。反射防止膜は、単層膜であってもよく、多層膜であってもよい。本発明の導電ペーストは、特に窒化珪素を含む層と酸化アルミニウムを含む層を有する絶縁膜に対して高い貫通性を有する。
【0076】
本発明の太陽電池は、本発明のガラスの粉末を含有する電極形成時に容易に絶縁膜を貫通し半導体基板との接触が確保された電極を形成し得る導電ペーストを用いて電極が形成されていることで、信頼性と生産性に優れる太陽電池である。
【実施例】
【0077】
以下、本発明について実施例を参照してさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されない。例1~9は第1のガラス組成物の調製例、例10~13は比較例用のガラス組成物の調製例である。例21~23は第2のガラス組成物の調製例、例24は比較例用のガラスである。例31~41、52はガラス組成物の実施例、例42~46、51、53はガラス組成物の比較例である。
【0078】
[例1~13、例21~24]
実施例および比較例のガラス組成物の製造に使用する第1のガラス組成物、比較例用のガラス組成物、第2のガラス組成物として、表1~3に示す組成、特性を有するガラス粉末を製造した。すなわち、表1~3に示す組成となるように原料粉末を配合、混合し、1000~1300℃の電気炉中で白金ルツボを用いて30分~1時間溶融し、薄板状ガラスを成形した後、この薄板状ガラスをボールミルでD50が所定の範囲(0.5~10μm)となるように乾式粉砕し、150メッシュの篩にて粗粒を除去した。
【0079】
例1~13のガラス組成物(ガラス粉末)については、上記所定の範囲内でD50をより小さくさせるために、上記乾式粉砕後、粗粒を除去するために気流分級によって得られたガラス粉末を用いた。
【0080】
例21~24のガラス組成物(ガラス粉末)については、上記所定の範囲内でD50をより小さくさせるために、上記乾式粉砕後、粗粒を除去したガラス粉末をさらにボールミルで水を用いて湿式粉砕して得られたガラス粉末を用いた。この湿式粉砕の際に所定のD50を得るために直径5mmのアルミナ製のボールを用いて、D50を粉砕時間で調整をした。その後、湿式粉砕で得られたスラリーを濾過して、ほとんどの水分を除去した後に、水分量を調整するために乾燥機により130℃で乾燥させて得られたガラス粉末を用いた。
【0081】
上記で得られた例1~13、例21~24のガラス粉末について、以下のようにして、ガラス転移点およびD50を測定した。
【0082】
(ガラス転移点;表中「DTA Tg」で示す。)
ガラス転移点は、示差熱分析(DTA)により、発熱-吸熱量を示すDTA曲線の変曲点を用いて求めた。
(D50)
例1~13、例21~24のガラス粉末0.02gをイソプロピルアルコール60ccに混ぜ、超音波分散により1分間分散させた。その後マイクロトラック測定機に試料を投入し、体積基準の50%粒径であるD50の値を測定した。
【0083】
なお、例1~13、例21~24のガラス粉末を以下それぞれ、G1~13、G21~24の略号で示す場合がある。ガラス組成、ガラス粉末の略号、ガラス転移点、D50の測定結果を、表1~表3に示す。表1~表3において空欄はその成分を含有しないことを意味する。後述の表4~表6においても同様である。
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
[例31~46、例51~53]
上記で得られた第1のガラス粉末(G1~G9)、比較例用のガラス粉末(G10~G13)および第2のガラス粉末(G21~G24)を用いて、表4~表6に組成を示す例31~46、例51~53のガラス組成物(ガラス粉末)を製造した。例31~46のガラス粉末については、表4および表5に示す第1のガラス粉末または比較例用のガラス粉末と、第2のガラス粉末を質量比1:1で混合して製造した。例51~53のガラス粉末については、第1のガラスG7と第2のガラスG21を表6に示す割合で混合し製造した。各例において、混合はVミキサーにより1時間行った。
【0088】
(評価)
例31~46、例51~53のガラス粉末を用いて、Al電極形成用導電ペーストを製造し、電極形成時の絶縁膜貫通性を評価した。この際、絶縁膜は窒化珪素層と酸化アルミニウム層の2層からなるものを用いた。その結果を表4~表6に示す。
【0089】
(1)Al電極形成用導電ペーストの作製
例31~46、例51~53のガラス粉末を含有するAl電極形成用導電ペーストを以下の方法で作製した。
【0090】
まず、エチルセルロース10質量部にブチルジグリコールアセテート90質量部を混合し、85℃で2時間撹拌して有機ビヒクルを調製した。次に、こうして得られた有機ビヒクル21質量部を、Al粉末(東洋アルミニウム社製)79質量部に混合した後、擂潰機により10分間混練した。その後、ガラス粉末を、Al粉末100質量部に対して5質量部の割合で配合し、さらに擂潰機により60分間混練しAl電極形成用導電ペーストとした。
【0091】
(2)Al電極の作製および絶縁膜貫通性の評価
上記で作製したAl電極形成用導電ペーストをそれぞれ用いて、以下のようにして半導体基板上に絶縁膜(窒化珪素層と酸化アルミニウム層から成る2層膜)を介してAl電極を形成し、その際の絶縁膜貫通性について評価した。
【0092】
160μmの厚みにスライスされたp型の結晶系Si半導体基板を用いて、まず、基板のスライス面を洗浄するために、表面をフッ酸でごく微量程度エッチング処理した。その後、受光面側の結晶系Si半導体基板表面にウエットエッチング法を用いて、光反射率を低減させるような凹凸構造を形成した。次に、半導体基板の受光面にn型層を拡散にて形成した。n型化のドーピング元素としてはPを用いた。次に、半導体基板のn型層に対して裏面(p型Si基板の裏面)に絶縁膜を形成した。絶縁膜の材料としては、おもに、窒化珪素と酸化アルミニウムを用い、プラズマCVDにて酸化アルミニウム層を10nmの厚さに形成した後にその上層に酸化珪素層を120nmの厚さに形成した。
【0093】
次に、絶縁膜上に上記で得られたAl電極形成用導電ペーストを325メッシュのスクリーン印刷により
図2に示すパターン状、すなわち10mm×10mmの正方形のパターンP1と、パターンP1の1辺から1mmずつ間隔を開けて、4個の1mm×10mmの長方形のパターンP2、P3、P4、P5がその順に上記1辺にそれぞれの長辺が平行となるように配置されたパターン形状に塗布した。その後、赤外光加熱式ベルト炉を用いてピーク温度が800℃で100秒間の焼成を行い、Al電極を形成した。
【0094】
(2-1)貫通性評価(1)
上記で得られた、p型層側に絶縁膜(窒化珪素層と酸化アルミニウム層から成る2層膜)を介して形成されたAl電極を有するp型Si半導体基板とAl電極との接触抵抗Rc[Ω]を評価した。接触抵抗Rc[Ω]は、
図2のパターンP1にテスターの陽極側を固定させて、パターンP2、P3、P4、P5のそれぞれの位置にテスターの陰極側を当てて電気抵抗を測定し、接触抵抗Rc[Ω]と、シート抵抗成分Rs[Ω]とを分離させることにより求めた。
【0095】
具体的には、
図3に示すように、陽極と陰極間の距離L[mm]を横軸にとり、電気抵抗R[Ω]を縦軸にとったグラフに、パターンP1とパターンP2(L=1mm)、P3(L=3mm)、P4(L=5mm)、P5(L=7mm)、との間でそれぞれ測定された電気抵抗値をプロットした。得られた4プロットから近似直線を求め、該近似直線の切片の値が2Rcである。
図3には、例37と例51のガラス粉末を用いた場合に得られた近似直線が実線および破線で示されている。例37では切片の値は5.1[Ω]であり、Rcが2.6[Ω]と求められた。例51では切片の値は21.8[Ω]であり、Rcが10.9[Ω]と求められた。Rc[Ω]の値が小さいほど貫通性が良好と評価できる。尚、表4~6において、Rcが「×」と記載されているものは、電気抵抗値が高く測定が困難であったことを示す。
【0096】
(2-2)貫通性評価(2)
また、上記で得られた、p型層側に絶縁膜(窒化珪素層と酸化アルミニウム層から成る2層膜)を介して形成されたAl電極を有するp型Si半導体基板を、塩酸(塩化水素の35~38%水溶液)と水を1:1の質量比で混合した水溶液中に24時間浸して、該基板からAl電極を除去した。その後、光学顕微鏡(500倍)により絶縁膜が除去されているかどうかを確認し、貫通性を以下の基準により評価した。
【0097】
○;絶縁膜が除去されている箇所が確認できた。
×;絶縁膜が除去されている箇所が確認できなかった。
【0098】
貫通性の評価結果を表4~表6に示す。また、
図4に例37(実施例)のガラス組成物を含有するAl電極形成用導電ペーストを用いて上記のようにしてAl電極を形成後、Al電極が除去されたp型Si半導体基板のp型層側表面の光学顕微鏡(500倍)写真を示す。
図4の写真によれば、絶縁膜が除去されている箇所が確認できた。すなわち、上記Al電極形成時に、絶縁膜を構成する窒化珪素層と酸化アルミニウム層から成る2層膜に例37のガラス組成物が反応して、得られたAl電極がSi半導体基板まで到達したことが分かった。
図5に例51(比較例)のガラス組成物を含有するAl電極形成用導電ペーストを用いて上記のようにしてAl電極を形成後、Al電極が除去されたp型Si半導体基板のp型層側表面の光学顕微鏡(500倍)写真を示す。
図5の写真によれば、絶縁膜が除去されている箇所が確認できなかった。すなわち、例51のガラス組成物は絶縁膜を構成する窒化珪素層と酸化アルミニウム層から成る2層膜との反応性が乏しく、そのため上記Al電極形成時に、絶縁膜とガラス組成物が十分反応せず、得られたAl電極がSi半導体基板にまで到達していなかったことが分かった。
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
表4~表6および
図4、5から明らかなように、実施例である例31~41、52のガラス組成物は太陽電池のAl電極を形成するために好適なものである。
【0103】
[太陽電池としての評価]
上記例31~46のガラス粉末をそれぞれ含有するAl電極形成用導電ペーストを用いて製造した太陽電池の変換効率を、ソーラシミュレータ(共進電機社製、KSX-3000H)を用いて測定した。具体的には、ソーラシミュレータに太陽電池を設置し、分光特性AM1.5Gの基準太陽光線によって、JIS C8904-9(2017年)に準拠して電流電圧特性を測定して、各太陽電池の変換効率を導き出した。得られた変換効率[%]の結果を表4および表5に併せて示す。
比較例である例42はCuOを含むため、これを用いて得られた太陽電池は、実施例である例31~41を用いて得られた太陽電池と比較して、変換効率が割合として10%程度低かった。また、貫通性に劣る比較例である例43~46を用いて得られた太陽電池は、実施例である例31~41を用いて得られた太陽電池と比較して、顕著に変換効率が低かった。
【0104】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは、当業者にとって明らかである。
【符号の説明】
【0105】
10…太陽電池、1…p型Si(半導体)基板、1a…n+層、1b…p層、2A,2B…絶縁膜、3…Ag電極、4…Al電極、5…Al-Si合金層、6…BSF層。