(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】水噴射装置および水ノズル
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/10 20060101AFI20240228BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240228BHJP
B05B 1/30 20060101ALI20240228BHJP
B05B 1/34 20060101ALI20240228BHJP
B24B 55/02 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
B23Q11/10 A
B23Q11/10 E
H01L21/304 643C
B05B1/30
B05B1/34
B24B55/02 D
(21)【出願番号】P 2020027172
(22)【出願日】2020-02-20
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 大
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-047671(JP,A)
【文献】特開平06-047666(JP,A)
【文献】特開2017-217754(JP,A)
【文献】特開2007-160155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00 - 11/10
B24B 55/00 - 55/12
H01L 21/304
H01L 21/301
B05B 1/30
B05B 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工具によって被加工物を加工する際に供給する加工水を、着水点に着水するよう噴射させる水噴射装置であって、
先端が合流するよう互いに傾斜している複数の傾斜配管と、該複数の傾斜配管の先端が合流している噴射口とを備え、該噴射口から加工水を噴射する水ノズルと、
該噴射口から噴射される加工水を着水点に着水させる着水点制御手段と、を備え、
該着水点制御手段は、
少なくとも1つの該傾斜配管を流れる水の量を調整する流量調整部と、
該流量調整部を制御する制御部と、備え、
該制御部の制御によって該少なくとも1つの傾斜配管を流れる水の量を制御することによって、該噴射口から噴射される加工水の噴射方向を変えて、加工水を所定の着水点に着水させることを特徴とする水噴射装置。
【請求項2】
該複数の傾斜配管は、第1傾斜配管、第2傾斜配管および第3傾斜配管を含む少なくとも3つの傾斜配管を備え、
該流量調整部は、
該第1傾斜配管を流れる水の量を調整する第1流量調整部と、
該第2傾斜配管を流れる水の量を調整する第2流量調整部と、
該第3傾斜配管を流れる水の量を調整する第3流量調整部と、を含む、
請求項1に記載の水噴射装置。
【請求項3】
該水ノズルは、該複数の傾斜配管に囲まれるように配置され、先端が該噴射口に接続される中央配管をさらに備え、
該制御部は、該流量調整部を制御して、該中央配管を流れる水と、少なくとも1つの傾斜配管を流れる水と、を合流させて、該噴射口から噴射させる、
請求項1記載の水噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水噴射装置および水ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているような切削装置では、切削ブレードに切削水を供給しながら、切削ブレードを被加工物に切り込ませる高さに位置づけ、被加工物と切削ブレードとを切削送り方向に相対的に移動させる。これにより、被加工物を、切削ブレードによって切削している。
【0003】
この際、切削ブレードによって被加工物を切削することによって生じる切削溝に、切削屑が溜まると、切削溝の溝幅が、所定の幅よりも広くなってしまう。
【0004】
このような切削溝の広がりを抑制するために、切削水の着水点が、切削ブレードの厚みの中心で、被加工物の上面と切削ブレードとの交点となるように、切削水ノズルの取り付け位置が調整されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
切削装置では、切削水ノズルは、切削ブレードを覆うカバーに装着されている。したがって、切削ブレードが消耗すると、切削水ノズルが被加工物に接近する。このため、切削ブレードの消耗が大きい時には、切削水ノズルの高さ調整が必要となることがある。
【0007】
また、切削ブレードの厚みが変わると、切削水の着水点が、切削ブレードの厚みの中心からズレる。このため、切削ブレードの厚み方向に沿って着水点を移動させるために、この方向に関する切削水ノズルの位置調整が必要となることもある。
【0008】
さらに、被加工物を砥石で研削する研削装置においても、被加工物と砥石との間に、研削水が供給される。この装置でも、被加工物の厚みに応じて、研削水ノズルから噴出される研削水の着水点を移動させたいことがある。
【0009】
したがって、本発明の目的は、加工具によって被加工物を加工する加工装置に用いられる水ノズルから噴射される加工水の着水点を、容易に調整することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の水噴射装置(本水噴射装置)は、加工具によって被加工物を加工する際に供給する加工水を、着水点に着水するよう噴射させる水噴射装置であって、先端が合流するよう互いに傾斜している複数の傾斜配管と、該複数の傾斜配管の先端が合流している噴射口とを備え、該噴射口から加工水を噴射する水ノズルと、該噴射口から噴射される加工水を着水点に着水させる着水点制御手段と、を備え、該着水点制御手段は、少なくとも1つの該傾斜配管を流れる水の量を調整する流量調整部と、該流量調整部を制御する制御部と、備え、該制御部の制御によって該少なくとも1つの傾斜配管を流れる水の量を制御することによって、該噴射口から噴射される加工水の噴射方向を変えて、加工水を所定の着水点に着水させる。
【0011】
本水噴射装置では、該複数の傾斜配管は、第1傾斜配管、第2傾斜配管および第3傾斜配管を含む少なくとも3つの傾斜配管を備えてもよく、該流量調整部は、該第1傾斜配管を流れる水の量を調整する第1流量調整部と、該第2傾斜配管を流れる水の量を調整する第2流量調整部と、該第3傾斜配管を流れる水の量を調整する第3流量調整部と、を含んでもよい。
【0012】
本水噴射装置では、該水ノズルは、該複数の傾斜配管に囲まれるように配置され、先端が該噴射口に接続される中央配管をさらに備えてもよく、該制御部は、該流量調整部を制御して、該中央配管を流れる水と、少なくとも1つの傾斜配管を流れる水と、を合流させて、該噴射口から噴射させてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本水噴射装置では、制御部が、流量調整部を制御することによって、少なくとも1つの傾斜配管を流れる水の量を制御している。これにより、制御部は、水ノズルの噴射口から噴射される加工水の噴射方向を変えて、所定の着水点に着水させることができる。このように、本水噴射装置では、少なくとも1つの傾斜配管を流れる水の量を制御することにより、水ノズルの位置および向きを変更することなく、水ノズルの噴射口から噴射される加工水の着水点を、容易に調整することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図5】切削ブレードおよび切削水ノズルを示す上面図である。
【
図6】切削ブレードによるウェーハに対する切削加工を示す説明図である。
【
図7】切削水ノズルの他の構成を示す説明図である。
【
図8】切削水ノズルの他の構成を示す底面図である。
【
図9】切削水ノズルのさらに他の構成を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示すウェーハ100は、被加工物の一例であり、概略円形状を有している。ウェーハ100の表面には、格子状の分割予定ライン102が形成されている。分割予定ライン102によって区画された各領域には、各種デバイス(図示せず)が形成されている。
【0019】
ウェーハ100の裏面には、ダイシングテープ103が貼着されている。ダイシングテープ103の外周には、リングフレーム105が貼着されている。このように、ウェーハ100は、ダイシングテープ103を介してリングフレーム105に支持されたワークセット107の状態で、切削装置1において加工される。また、ワークセット107は、図示しないカセットに収容されて、切削装置1に搬入される。
【0020】
図1に示す切削装置1は、加工装置の一例であり、このようなウェーハ100に対して、切削加工を実施する。切削装置1は、チャックテーブル30の保持面32に保持されたウェーハ100に対して、第1切削手段6および第2切削手段7に備えられる加工具である切削ブレードを回転させて切り込ませて、切削加工を施す装置である。
【0021】
切削装置1による切削加工は、たとえば、ウェーハ100のエッジの表面側を除去するエッジトリミング加工、あるいは、ウェーハ100を分割予定ライン102に沿って分割することによってチップを形成するダイシング加工である。
【0022】
切削装置1は、基台10、基台10に立設された門型コラム14、および、切削装置1の各部材を制御する制御部70を備えている。
制御部70は、制御プログラムに従って演算処理を行うCPU、および、メモリ等の記憶媒体等を備えている。制御部70は、切削装置1の各部材を制御して、ウェーハ100に対する切削加工を実施する。
【0023】
基台10上には、X軸方向送り手段11が配設されている。X軸方向送り手段11は、加工送り手段であり、チャックテーブル30と第1切削手段6および第2切削手段7とを、相対的に、チャックテーブル30の保持面32に平行な水平方向(加工送り方向;X軸方向)に沿って移動させる。
【0024】
X軸方向送り手段11は、X軸方向に延びる一対のガイドレール111、ガイドレール111に載置されたX軸テーブル113、ガイドレール111と平行に延びるボールネジ110、および、ボールネジ110を回転させるモータ112を含んでいる。
【0025】
一対のガイドレール111は、X軸方向に平行に、基台10の上面に配置されている。X軸テーブル113は、一対のガイドレール111上に、これらのガイドレール111に沿ってスライド可能に設置されている。X軸テーブル113上には、保持部3が載置されている。
【0026】
ボールネジ110は、X軸テーブル113の下面側に設けられたナット部(図示せず)に螺合されている。モータ112は、ボールネジ110の一端部に連結されており、ボールネジ110を回転駆動する。ボールネジ110が回転駆動されることで、X軸テーブル113および保持部3が、ガイドレール111に沿って、加工送り方向であるX軸方向に沿って移動する。
【0027】
保持部3は、ワークセット107のウェーハ100を保持するチャックテーブル30、および、チャックテーブル30の周囲に備えられた4つのクランプ33を備えている。さらに、保持部3は、チャックテーブル30を支持して回転させるθテーブル31を有している。
【0028】
チャックテーブル30は、
図1に示したウェーハ100を吸着保持するための部材であり、円板状に形成されている。チャックテーブル30は、ポーラス材からなる保持面32を備えている。保持面32は、図示しない吸引源に連通されている。チャックテーブル30は、この保持面32によって、ワークセット107のウェーハ100を、ダイシングテープ103を介して吸引保持する。また、クランプ33は、ワークセット107のリングフレーム105を、外側から支持する。
【0029】
チャックテーブル30は、チャックテーブル30の底面側に配設されたθテーブル31に支持されている。θテーブル31は、X軸テーブル113の上面に、XY平面内で回転可能に設けられている。したがって、θテーブル31は、チャックテーブル30を支持するとともに、チャックテーブル30をXY平面内で回転駆動することができる。
【0030】
基台10上の後方側(-X方向側)には、門型コラム14が、X軸方向送り手段11を跨ぐように立設されている。門型コラム14の前面(+X方向側の面)には、第1切削手段6および第2切削手段7を移動させる切削手段移動機構13が設けられている。切削手段移動機構13は、第1切削手段6および第2切削手段7を、Y軸方向にインデックス送りするとともに、Z軸方向に切込み送りする。
【0031】
切削手段移動機構13は、+Y側の第1切削手段6を切込み送り方向(Z軸方向)に移動する第1Z軸方向移動手段16、-Y側の第2切削手段7を切込み送り方向に移動する第2Z軸方向移動手段17、および、第1切削手段6および第2切削手段7をインデックス送り方向(Y軸方向)に移動するY軸方向移動手段12を備えている。
【0032】
Y軸方向移動手段12は、インデックス送り手段であり、門型コラム14の前面に配設されている。Y軸方向移動手段12は、Y軸方向に、第1切削手段6を含む第1Z軸方向移動手段16、および、第2切削手段7を含む第2Z軸方向移動手段17を往復移動させる。
【0033】
Y軸方向移動手段12は、Y軸方向に延びる一対のガイドレール121、ガイドレール121に載置された第1Y軸テーブル123および第2Y軸テーブル125、ガイドレール121と平行に延びる第1ボールネジ120および第2ボールネジ122、第1ボールネジ120を回転させる第1モータ124、ならびに、第2ボールネジ122を回転させる第2モータ(図示せず)を含んでいる。
【0034】
一対のガイドレール121は、Y軸方向に平行に、門型コラム14の前面に配置されている。第1Y軸テーブル123および第2Y軸テーブル125は、一対のガイドレール121上に、これらのガイドレール121に沿ってスライド可能に設置されている。第1Y軸テーブル123上には、第1Z軸方向移動手段16および第1切削手段6が取り付けられている。第2Y軸テーブル125上には、第2Z軸方向移動手段17および第2切削手段7が取り付けられている。
【0035】
第1ボールネジ120は、第1Y軸テーブル123の背面側に設けられたナット部(図示せず)に螺合されている。第1モータ124は、第1ボールネジ120の一端部に連結されており、第1ボールネジ120を回転駆動する。第1ボールネジ120が回転駆動されることで、第1Y軸テーブル123、第1Z軸方向移動手段16および第1切削手段6が、ガイドレール121に沿って、インデックス送り方向であるY軸方向に移動する。
【0036】
同様に、第2ボールネジ122は、第2Y軸テーブル125の背面側のナット部(図示せず)に螺合されており、その一端部に連結された第2モータによって回転駆動される。これにより、第2Y軸テーブル125、第2Z軸方向移動手段17および第2切削手段7が、ガイドレール121に沿ってY軸方向に移動する。
【0037】
第1Z軸方向移動手段16は、切り込み送り手段であり、第1切削手段6をZ軸方向(上下方向)に往復移動させる。Z軸方向は、X軸方向およびY軸方向に直交するとともに、チャックテーブル30の保持面32に対して直交する方向である。
【0038】
第1Z軸方向移動手段16は、Z軸方向に延びる一対のガイドレール161、ガイドレール161に載置された支持部材163、ガイドレール161と平行に延びるボールネジ160、および、ボールネジ160を回転させるモータ162を含んでいる。
【0039】
一対のガイドレール161は、Z軸方向に平行に、Y軸テーブル123に配置されている。支持部材163は、一対のガイドレール161上に、これらのガイドレール161に沿ってスライド可能に設置されている。支持部材163の下端部には、第1切削手段6が取り付けられている。
【0040】
ボールネジ160は、支持部材163の背面側に設けられたナット部(図示せず)に螺合されている。モータ162は、ボールネジ160の一端部に連結されており、ボールネジ160を回転駆動する。ボールネジ160が回転駆動されることで、支持部材163および第1切削手段6が、ガイドレール161に沿って、切込み送り方向であるZ軸方向に移動する。
【0041】
第2Z軸方向移動手段17も、第1Z軸方向移動手段16と同様に切り込み送り手段であり、第2切削手段7をZ軸方向(上下方向)に往復移動させる。第2Z軸方向移動手段17は、第1Z軸方向移動手段16と同様の構成を有しているため、その説明を省略する。
【0042】
また、本実施形態では、第1切削手段6と第2切削手段7とは、同様の構成および機能を有している。このため、以下では、第1切削手段6の構成成および機能について説明するとともに、第2切削手段7についての説明を省略する。
【0043】
第1切削手段6は、チャックテーブル30に保持されたウェーハ100を切削する。第1切削手段6は、支持部材163の下端に設けられたハウジング61を備えている。さらに、第1切削手段6は、
図2に示すように、Y軸方向に延びるスピンドル60、スピンドル60に装着される切削ブレード63、スピンドル60を駆動するモータ(図示せず)、および、切削ブレード63を囲むブレードカバー64を備えている。
【0044】
切削ブレード63は、円環状のブレードであり、フランジ630と、フランジ630の外周に備えられた環状の刃先(切り刃)631とを有する。フランジ630の中心には、スピンドル60の先端が挿入および固定されている。刃先631は、たとえば、ダイヤモンド砥粒等を適宜のバインダーにより固定することで形成されている。
【0045】
スピンドル60は、ハウジング61によって回転可能に支持されている。モータがスピンドル60を高速で回転駆動することにより、切削ブレード63も高速回転する。切削装置1では、高速回転する切削ブレード63により、ウェーハ100に対する切削加工が実施される。
【0046】
ブレードカバー64は、ブレードカバー基部641を介して、ハウジング61に支持されている。ブレードカバー64の+X方向側の側面には、第1ノズル支持ブロック65が設けられている。第1ノズル支持ブロック65には、切削ブレード63とウェーハ100との接触部位(加工点)に向かって斜め上方から切削水を噴射する切削水ノズル66が配設されている。
【0047】
切削水ノズル66は、水ノズルの一例である。切削水ノズル66には、第1ノズル支持ブロック65を介して、切削水供給部材67が連通している。切削水ノズル66の先端の噴射口は、切削ブレード63の刃先631に向かって延びている。
【0048】
ブレードカバー64の-X方向側の側面には、第2ノズル支持ブロック68が設けられている。第2ノズル支持ブロック68は、一対の冷却水供給部材681、および、この冷却水供給部材681に連通された一対のブレード冷却ノズル69を支持している。ブレード冷却ノズル69は、切削ブレード63を冷却および洗浄するための冷却水を切削ブレード63に供給する。
【0049】
このブレード冷却ノズル69に連通された冷却水供給部材681、ならびに、切削水ノズル66に連通された切削水供給部材67には、水源200(
図3参照)が連結されている。
【0050】
図3に示すように、切削水ノズル66は、先端が合流するよう互いに傾斜している複数の傾斜配管としての第1~第3傾斜配管201~203と、第1~第3傾斜配管201~203の先端が合流している噴射口205とを備え、噴射口205から水を噴射するように構成されている。
【0051】
すなわち、切削水ノズル66は、その先端に、噴射口205を備えている。また、切削水ノズル66は、その内部に、第1傾斜配管201、第2傾斜配管202および第3傾斜配管203を有している。第1~第3傾斜配管201~203は、切削水ノズル66の噴射口の中心を中心とする円周方向に、例えば、120度おきに等間隔で設けられている。なお、第1~第3傾斜配管201~203の設置の間隔は、等間隔で無くてもよい。
【0052】
これらの第1傾斜配管201、第2傾斜配管202および第3傾斜配管203は、切削水ノズル66を矢印300の方向から示す
図4にも示されているように、噴射口205において先端が合流するように、互いに傾斜している。
さらに、第1傾斜配管201、第2傾斜配管202および第3傾斜配管203は、軸線401によって示す切削水ノズル66の中心軸の方向(切削水ノズル66の延びる方向)に対しても、所定の角度をもって傾斜している。
【0053】
切削水ノズル66の噴射口205では、第1傾斜配管201、第2傾斜配管202および第3傾斜配管203を流れる水が合流されて、合流された水が、噴射口205から、切削水として噴射される。
【0054】
また、
図3に示すように、第1傾斜配管201、第2傾斜配管202および第3傾斜配管203には、それぞれ、第1流水路211、第2流水路212および第3流水路213が接続されている。これら第1流水路211、第2流水路212および第3流水路213は、水源配管210および切削水供給部材67(
図2参照)を介して、水源200に連通されており、それぞれ、第1傾斜配管201、第2傾斜配管202および第3傾斜配管203に対して水を供給するように構成されている。
【0055】
なお、水源配管210には、水源バルブ220が設けられている。水源バルブ220は、水源200からの水の供給量を調整するものである。本実施形態では、水源バルブ220の開度を制御することによって、たとえば、切削装置1における切削加工の際に、水源200から予め設定した水量の水を着水点に供給している。
【0056】
また、水源配管210から分岐した、第1流水路211、第2流水路212および第3流水路213には、それぞれ、第1流量調整部221、第2流量調整部222および第3流量調整部223が配設されている。これら第1流量調整部221、第2流量調整部222および第3流量調整部223は、それぞれ、切削水ノズル66における第1傾斜配管201、第2傾斜配管202および第3傾斜配管203を流れる水の量を調整するバルブである。これら第1流量調整部221、第2流量調整部222および第3流量調整部223は、制御部70によって制御される。
【0057】
このような構成を有する切削装置1では、制御部70が、たとえば、保持部3のチャックテーブル30の保持面32によって保持されているウェーハ100の分割予定ライン102(
図1参照)上に、切削ブレード63の刃先631を配置する。
【0058】
この状態で、制御部70は、
図5および
図6に示すように、スピンドル60を介して切削ブレード63を回転駆動しながら、切削ブレード63を、ウェーハ100に切り込ませる高さに位置づける。すなわち、制御部70は、切削ブレード63の刃先631が、ウェーハ100の下面のダイシングテープ103に到達するまで、切削ブレード63を降下させる。
【0059】
その後、制御部70は、
図6の矢印301に示すように、
図1に示したX軸方向送り手段11を用いて、チャックテーブル30を含む保持部3を、X軸方向に切削送りする。これにより、ウェーハ100が、分割予定ライン102に沿って切断される。
【0060】
また、この切削ブレード63による切削の際に、制御部70は、刃先631とウェーハ100との接点(交点)に向けて、切削水ノズル66から、矢印303によって示すように、切削水を噴射する。
【0061】
この切削加工の際、制御部70および第1~第3流量調整部221~223は、着水点制御手段として機能し、噴射口205から噴射される切削水を、着水点、たとえば、作業者の所望する所定の着水点に着水させる。
【0062】
すなわち、制御部70は、第1~第3流量調整部221~223を制御して、第1~第3傾斜配管201~203の少なくとも1つを流れる水の量を制御することによって、噴射口205から噴射される切削水の噴射方向を変えて、切削水を所定の着水点に着水させる(すなわち、着水点を変更(調整)する)。
【0063】
本実施形態では、制御部70は、
図3に示した第1流量調整部221、第2流量調整部222および第3流量調整部のそれぞれを制御して、切削水ノズル66内の第1傾斜配管201、第2傾斜配管202および第3傾斜配管203を流れる水の量を、個別に調整する。
【0064】
上述したように、噴射口205では、互いに傾斜して配置されている第1~第3傾斜配管201~203を流れる水が合流されて、合流された水が噴射口205から切削水として噴射される。したがって、第1~第3傾斜配管201~203のいずれかを流れる水の量が増減すると、噴射口205から噴射される切削水の方向が変化する。
【0065】
たとえば、制御部70が、第1~第3流量調整部221~223を制御して、第1~第3傾斜配管201~203を同量の水を流す場合、切削水は、
図3に軸線401によって示す切削水ノズル66の中心軸の方向に沿うように、噴射口205から噴射される。
【0066】
また、この状態から、制御部70が、第1~第3流量調整部221~223を制御して、第1傾斜配管201および第2傾斜配管202を流れる水の量を、第3傾斜配管203を流れる水の量よりも減らすと、噴射口205からの切削水の噴射方向は、軸線401によって示す方向から、第3傾斜配管203の延びる方向に近づく。
【0067】
このように、制御部70は、第1~第3流量調整部221~223を用いて、第1~第3傾斜配管201~203を流れる水の量を調整することによって、切削水の噴射方向を変えることができる。したがって、制御部70は、切削水の着水点を調整することができる。
【0068】
以上のように、本実施形態では、第1~第3傾斜配管201~203および噴射口205を備えた切削水ノズル66、第1~第3流量調整部221~223、および制御部70が、水噴射装置を構成している。この水噴射装置は、加工具としての切削ブレード63によってウェーハ100を加工する際に供給する切削水(加工水)を、着水点に着水するよう噴射させるものである。
【0069】
そして、本実施形態では、制御部70が、第1~第3流量調整部221~223を制御することによって、第1~第3傾斜配管201~203を流れる水の量を制御している。これにより、制御部70は、切削水ノズル66の噴射口205から噴射される切削水の噴射方向を変えて、所定の着水点に着水させることができる。
このように、本実施形態では、1~第3傾斜配管201~203を流れる水の量を制御することにより、切削水ノズル66の位置および向きを変更することなく、切削水ノズル66の噴射口205から噴射される切削水の着水点を、容易に調整することが可能である。
【0070】
たとえば、切削ブレード63の刃先631が消耗して、切削水ノズル66がウェーハ100に接近するようになった場合には、制御部70が、第1~第3流量調整部221~223を制御することによって、切削水の噴射方向を上下方向(Z軸方向)に沿って変更することにより、切削水の着水点を適切な位置(ウェーハ100と刃先631との接点)となるように調整することができる。
【0071】
また、切削ブレード63の厚みが変わった場合には、制御部70が、第1~第3流量調整部221~223を制御することによって、切削水の噴射方向を水平方向(Y軸方向)に沿って変更することにより、切削水の着水点を、適切な位置(切削ブレード63における厚み方向の中心)となるように調整することができる。
【0072】
なお、
図3に示した実施形態では、切削水ノズル66は、第1~第3傾斜配管201~203からなる3本の配管を有している。これに代えて、切削水ノズル66は、たとえば、
図7に示すような構成を有していてもよい。
【0073】
図7、および、
図7に示した切削水ノズル66を矢印305の方向から示す
図8に示すように、この切削水ノズル66は、
図3に示した第1~第3傾斜配管201~203に加えて、中央配管207をさらに備えている。なお、
図7では、第2傾斜配管202の図示を省略している。
【0074】
図7および
図8に示す中央配管207は、軸線401(
図3参照)によって示す切削水ノズル66の中心軸の方向に延びている。したがって、中央配管207は、複数の第1~第3傾斜配管201~203に囲まれるように配置されている。また、中央配管207の先端は、噴射口205に接続されている。
【0075】
さらに、中央配管207には、中央流水路217が接続されている。中央流水路217は、水源配管210および切削水供給部材67(
図2参照)を介して、水源200に連通されている。したがって、この構成では、水源200から、第1傾斜配管201、第2傾斜配管202および第3傾斜配管203に加えて、中央配管207に対して水が供給される。
【0076】
そして、噴射口205では、第1傾斜配管201、第2傾斜配管202、第3傾斜配管203および中央配管207を流れる水が合流されて、合流された水が、噴射口205から、切削水として噴射される。
【0077】
この構成では、制御部70は、第1~第3流量調整部221~223を制御して、中央配管207を流れる水と、第1~第3傾斜配管201~203を流れる水とを合流させて、噴射口205から噴射させる。
【0078】
そして、制御部70は、第1~第3流量調整部221~223を用いて、第1~第3傾斜配管201~203を流れる水の量を調整することによって、切削水の噴射方向を代えて、着水点を調整することができる。
【0079】
また、
図7および
図8に示す構成において、中央流水路217に、中央配管207を流れる水の量を調整するバルブ(中央流量調整部)が備えられてもよい。この場合、制御部70は、第1~第3流量調整部221~223および中央流量調整部を用いて、第1~第3傾斜配管201~203および中央配管207を流れる水の量を調整することによって、切削水の噴射方向を代えて、着水点を調整することができる。
【0080】
また、上述した実施形態では、切削水ノズル66は、第1~第3傾斜配管201~203からなる3本の傾斜配管を有している。これに関し、切削水ノズル66は、複数の傾斜配管を含むように構成されていればよい。
【0081】
したがって、切削水ノズル66に含まれる傾斜配管は、3本に限らず、
図9に示すように、4本であってもよい。
図9に示す構成では、切削水ノズル66は、第1~第4傾斜配管201~204からなる4本の傾斜配管を有している。第1~第4傾斜配管201~204は、切削水ノズル66の噴射口205の中心を中心とする円周方向に、例えば、90度おきに等間隔で設けられている。なお、第1~第4傾斜配管201~204の設置の間隔は、等間隔で無くてもよい。
【0082】
また、これら第1~第4傾斜配管201~204は、噴射口205において先端が合流するように、互いに傾斜しているとともに、切削水ノズル66の中心軸の方向(
図3の軸線401参照)に対しても、所定の角度をもって傾斜している。
この構成では、第1~第4傾斜配管201~204を流れる水が合流されて、合流された水が、噴射口205から、切削水として噴射される。
【0083】
また、この構成では、
図3に示した第1~第3傾斜配管201~203を流れる水の量を調整する第1~第3流量調整部221~223に加えて、第4傾斜配管204を流れる水の量を調整する第4流量調整部(図示せず)が備えられる。そして、制御部70は、第1~第3流量調整部221~223および第4流量調整部を用いて、第1~第4傾斜配管201~204を流れる水の量を調整することによって、切削水の噴射方向を代えて、着水点を調整することができる。
【0084】
なお、切削水ノズル66は、
図9に示した構成に加えて、
図7に示した中央配管207をさらに備えてもよい。
【0085】
また、切削水ノズル66に含まれる傾斜配管は、3本あるいは4本に限られず、2本、あるいは、5本以上であってもよい。切削水ノズル66に含まれる傾斜配管が2本であっても、制御部70は、少なくともいずれかの傾斜配管に設けられた流量調整部(バルブ)によって、その傾斜配管を流れる水の量を調整することによって、切削水ノズル66の噴射口205から噴射される水の噴射方向を変えて、切削水を、適切な着水点に着水させることができる。
【0086】
また、本実施形態では、第1傾斜配管201、第2傾斜配管202および第3傾斜配管203のそれぞれの水の流量を調整するための、第1流量調整部221、第2流量調整部222および第3流量調整部223が設けられている。これに関し、本実施形態にかかる水噴射装置は、少なくとも1つの傾斜配管を流れる水の量を調整する流量調整部を備えていればよい。
【0087】
したがって、第1傾斜配管201、第2傾斜配管202および第3傾斜配管203の少なくともいずれかに、水の流量を調整可能な流量調整部(バルブ)が設けられていればよい。制御部70は、この流量調整部を制御することによって、切削水ノズル66の噴射口205から噴射される水の噴射方向を変えて、切削水を、適切な着水点に着水させることができる。
【0088】
また、上述した実施形態では、加工装置の一例として、切削装置1を示している。これに関し、本発明の一態様に関する加工装置は、たとえば、被加工物を砥石で研削する研削装置であってもよい。この場合、加工装置は、被加工物と砥石との間に研削水を供給するための、上述した切削水ノズル66と同様の構成を有する水ノズルを備える。さらに、加工装置は、水ノズルの少なくとも1つの傾斜配管を流れる水の量を調整する流量調整部と、流量調整部を制御する制御部と、備え、制御部が、少なくとも1つの傾斜配管を流れる水の量を制御することによって、噴射口から噴射される水の噴射方向を変えて、研削水を所定の着水点に着水させる。この場合、たとえば、被加工物の厚みに応じて、水ノズルから噴出される研削水の着水点を移動させることができる。
【符号の説明】
【0089】
1:切削装置、10:基台、14:門型コラム、
11:X軸方向送り手段、12:Y軸方向移動手段、13:切削手段移動機構、
16:第1Z軸方向移動手段、17:第2Z軸方向移動手段、
3:保持部、30:チャックテーブル、31:θテーブル、32:保持面、
6:第1切削手段、7:第2切削手段、
60:スピンドル、61:ハウジング、64:ブレードカバー、
63:切削ブレード、630:フランジ、631:刃先、67:切削水供給部材、
70:制御部、
100:ウェーハ、102:分割予定ライン、103:ダイシングテープ、
105:リングフレーム、107:ワークセット、
66:切削水ノズル、205:噴射口、401:軸線、
200:水源、210:水源配管、220:水源バルブ、
201:第1傾斜配管、211:第1流水路、221:第1流量調整部、
202:第2傾斜配管、212:第2流水路、222:第2流量調整部、
203:第3傾斜配管、213:第3流水路、223:第3流量調整部、
204:第4傾斜配管、
207:中央配管、217:中央流水路