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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】導体の接合構造および導体の接合方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 15/02 20060101AFI20240228BHJP
   H02G 1/14 20060101ALI20240228BHJP
   B23K 20/10 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
H02G15/02
H02G1/14
B23K20/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020054565
(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2021158722
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】生沼 良樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 拓郎
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-1590(JP,A)
【文献】特開2016-185009(JP,A)
【文献】特開2012-124078(JP,A)
【文献】特開2013-4346(JP,A)
【文献】特開2011-60726(JP,A)
【文献】国際公開第2019/215914(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 15/00-15/196
H02G 1/14- 1/16
B23K 20/10
H01R 3/00- 4/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体の外周が絶縁被覆で被覆された電線が複数本用いられ、複数の前記電線のそれぞれの端部において前記絶縁被覆が除去されて露出する前記導体同士が超音波接合された導体の接合構造であって、
複数の前記電線のそれぞれの露出する前記導体が同一方向を向くように複数の前記電線が配置され、
電線の軸方向から見た際に、超音波接合方向を導体接合部の上下方向とし、これと直交する方向を前記導体接合部の両側方とした際に、
前記導体接合部が、電線の軸方向から見た際の形状が略矩形に構成され、前記導体接合部の上部と両側部との境界部、又は前記導体接合部の下部と両側部との境界部の少なくとも一方が曲線で構成され、前記曲線の半径が、前記導体の直径の1/2以上であり、
前記導体接合部の上部と両側部との境界部、又は前記導体接合部の下部と両側部との境界部のいずれか一方のみが曲線で構成されることを特徴とする導体の接合構造。
【請求項2】
前記導体接合部は、上下方向の高さHよりも、両側方の幅Wの方が大きいことを特徴とする請求項1記載の導体の接合構造。
【請求項3】
前記曲線の半径が、前記導体接合部の上下方向の高さH又は両側方の幅Wの小さい方の値の1/2以下であることを特徴とする請求項1又は請求項に記載の導体の接合構造。
【請求項4】
前記導体接合部の上面と下面には、凹凸形状が形成されることを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載の導体の接合構造。
【請求項5】
複数の前記導体は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる第1導体と、銅又は銅合金からなる第2導体とが混在しており、前記第1導体又は前記第2導体が、前記導体接合部において略均等に分散していることを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載の導体の接合構造。
【請求項6】
導体の外周が絶縁被覆で被覆された電線を複数本用い、複数の前記電線のそれぞれの端部において前記絶縁被覆が除去されて露出する前記導体を集合させて超音波接合して導体接合部を形成する導体の接合方法であって、
複数本の前記電線のそれぞれの露出する前記導体を同一方向に向けて、電線の軸方向から見た際の形状が略矩形状となるように配置し、複数の導体をホーンとアンビルとで挟み込んで超音波接合を行う際に、
超音波接合後において、電線の軸方向から見て、少なくとも前記導体接合部のアンビル側の両側部を、前記導体の直径の1/2以上の半径の曲線で構成し、
前記導体接合部の上部と両側部との境界部、又は前記導体接合部の下部と両側部との境界部のいずれか一方のみを曲線で構成することを特徴とする導体の接合方法。
【請求項7】
前記アンビルと前記ホーンとの間に、接合対象の導体を配置し、一対の押さえ部材によって幅方向を規制した状態でホーンとアンビルとで導体を一括して圧縮しながらホーンより超音波振動を発生させることを特徴とする請求項記載の導体の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電線の導体同士が超音波接合された導体の接合構造及び導体の接合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等に用いられるワイヤハーネスは、複数本の電線が接合されて用いられる。このような電線同士の接合としては、例えば、複数の電線のそれぞれの絶縁被覆を皮剥ぎして芯線を露出し、各芯線の先端を揃えた状態にして重ね合わせ、この状態で、芯線を挟み込むようにして超音波接合等で芯線同士を接合する方法がある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開公報2019/225492
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図8(a)は、一般的な超音波接合方法を示す図である。まず、複数の導体107が、アンビル103とホーン101の間に配置される。導体107は、例えば複数の導体素線109からなる。複数の導体107の両側方には、押さえ部材105が配置される。
【0005】
次に、図8(b)に示すように、アンビル103上に導体107が配置された状態で、押さえ部材105で導体107の両側方を挟み込み、上方からホーン101を降下させて導体107を挟み込む。この状態で、ホーン101より超音波で導体107同士に超音波振動を加えることで、導体107(導体素線109)同士が接合され、接合部111が形成される。
【0006】
しかし、ホーン101から発生する超音波振動は接合部111の隅に位置する導体107(導体素線109)へは伝搬しにくい。このため、図9に示すように、特に接合部111の隅部の導体素線が十分に接合されずに、素線こぼれがし易く(図中X)、製造時の歩留まりの悪化の要因となっている。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、超音波接合によって効率良く導体同士を接合することが可能な導体の接合構造および導体の接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達するために第1の発明は、導体の外周が絶縁被覆で被覆された電線が複数本用いられ、複数の前記電線のそれぞれの端部において前記絶縁被覆が除去されて露出する前記導体同士が超音波接合された導体の接合構造であって、複数の前記電線のそれぞれの露出する前記導体が同一方向を向くように複数の前記電線が配置され、電線の軸方向から見た際に、超音波接合方向を導体接合部の上下方向とし、これと直交する方向を前記導体接合部の両側方とした際に、前記導体接合部が、電線の軸方向から見た際の形状が略矩形に構成され、前記導体接合部の上部と両側部との境界部、又は前記導体接合部の下部と両側部との境界部の少なくとも一方が曲線で構成され、前記曲線の半径が、前記導体の直径の1/2以上であり、前記導体接合部の上部と両側部との境界部、又は前記導体接合部の下部と両側部との境界部のいずれか一方のみが曲線で構成されることを特徴とする導体の接合構造である。
【0009】
前記導体接合部は、上下方向の高さHよりも、両側方の幅Wの方が大きいことが望ましい。
【0010】
前記導体接合部の上部と両側部との境界部、又は前記導体接合部の下部と両側部との境界部のいずれか一方のみが曲線で構成されてもよい。
【0011】
前記曲線の半径が、前記導体接合部の上下方向の高さH又は両側方の幅Wの小さい方の値の1/2以下であることが望ましい。
【0013】
前記導体接合部の上面と下面には、凹凸形状が形成されてもよい。
【0014】
複数の前記導体は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる第1導体と、銅又は銅合金からなる第2導体とが混在しており、前記第1導体又は前記第2導体が、前記導体接合部において略均等に分散していることが望ましい。
【0015】
第1の発明によれば、超音波接合された接合部において、隅部が所定以上の大きさの曲線状に形成されるため、超音波振動が伝わりにくい位置における素線こぼれ等の発生を抑制することができる。
【0016】
また、導体接合部の両側方の幅Wを、上下方向の高さHよりも大きくすることで、アンビルとホーンとで挟み込んだ際にホーンからアンビルへの振動がより伝わりやすくなる。
【0017】
また、導体接合部の上部と両側部との境界部、又は導体接合部の下部と両側部との境界部のいずれか一方のみが曲線で構成されれば、他方の側の隅部には上述した曲線が不要であるため、従来と同一形状のアンビルやホーン等を使用することができる。
【0018】
また、曲線の半径が、導体接合部の上下方向の高さH又は両側方の幅Wの小さい方の値の1/2以下であれば、必要以上に導体接合部を曲線状に形成する必要がなく、導体接合部の高さや幅が大きくなることを抑制することができる。
【0019】
また、導体接合部の全周が曲線で形成されれば、超音波振動が伝わりにくい角形状を確実になくして効率良く接合を行うことができる。
【0020】
また、導体接合部の上面と下面に凹凸形状を形成することで、超音波振動を伝達しやすくすることができる。
【0021】
また、複数の導体が、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる第1導体と、銅又は銅合金からなる第2導体とが混在している場合において、第1導体又は第2導体を、導体接合部において略均等に分散させることで、いずれかの導体が一部に集中することを抑制することができる。このため、全体を略均一に接合することができる。
【0022】
第2の発明は、導体の外周が絶縁被覆で被覆された電線を複数本用い、複数の前記電線のそれぞれの端部において前記絶縁被覆が除去されて露出する前記導体を集合させて超音波接合して導体接合部を形成する導体の接合方法であって、複数本の前記電線のそれぞれの露出する前記導体を同一方向に向けて、電線の軸方向から見た際の形状が略矩形状となるように配置し、複数の導体をホーンとアンビルとで挟み込んで超音波接合を行う際に、超音波接合後において、電線の軸方向から見て、少なくとも前記導体接合部のアンビル側の両側部を、前記導体の直径の1/2以上の半径の曲線で構成し、前記導体接合部の上部と両側部との境界部、又は前記導体接合部の下部と両側部との境界部のいずれか一方のみを曲線で構成することを特徴とする導体の接合方法である。
前記アンビルと前記ホーンとの間に、接合対象の導体を配置し、一対の押さえ部材によって幅方向を規制した状態でホーンとアンビルとで導体を一括して圧縮しながらホーンより超音波振動を発生させてもよい。
【0023】
第2の発明によれば、素線こぼれ等の発生を抑制して、確実に導体同士を接合することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、超音波接合によって効率良く導体同士を接合することが可能な導体の接合構造および導体の接合方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】導体接合構造1を示す概略図。
図2】(a)は、図1のA-A線端面図、(b)は、図1のB-B線端面図。
図3】(a)は、図2(b)のC部拡大図、(b)は、図2(b)のD部拡大図。
図4】導体接合構造1の接合方法を示す図。
図5図2に対応する図であり、導体部5a、5bが混在する状態を示す図。
図6】導体接合部7bの接合方法を示す図。
図7】(a)、(b)は、導体接合部7cの接合方法を示す図。
図8】従来の導体107の接合方法を示す図。
図9】従来の接合部111を示す概念図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、導体接合構造1を示す概略図であり、図2(a)は、図1のA-A線端面図、図2(b)は、図1のB-B線端面図である。
【0027】
導体接合構造1は、複数の電線の導体同士が超音波接合された導体の接合構造である。電線3は、導体部5の外周が絶縁被覆で被覆されて構成される。電線3の端部は、所定の範囲の絶縁被覆が除去され、内部の導体部5が露出する。図2(a)に示すように、導体部5は、複数の導体素線9が撚り合わせられて構成される。なお、導体部5は単線であってもよい。
【0028】
導体部5は、アルミニウム系(アルミニウム又はアルミニウム合金)や銅系(銅又は銅合金)などが適用可能である。なお、本実施形態では、同一金属の導体部5を接合する例について説明する。
【0029】
複数の電線3のそれぞれの導体部5が、同一方向に向けて配置され、導体部5の先端部において、各導体部5が互いに超音波接合された導体接合部7が形成される。すなわち、導体接合部7において、導体部5は一体化される。なお、電線3の方向は、必ずしも全てが同一方向でなくてもよい。
【0030】
ここで、電線3の軸方向から見た際に、超音波接合方向を導体接合部7の上下方向(図2(b)の上下方向)とし、これと直交する方向を導体接合部7の両側方(図2(b)の左右方向)とする。この場合、図2(b)に示すように、導体接合部7は、上下方向の高さHよりも、両側方の幅Wの方が大きいことが望ましい。このようにすることで、後述する超音波接合時に、より効率良く超音波振動を伝達させることができる。なお、超音波接合が可能であれば、導体接合部7の上下方向の高さHを、両側方の幅W以上としてもよい。
【0031】
また、導体接合部7の上部と両側部との境界部及び導体接合部7の下部と両側部との境界部が曲線で構成される。すなわち、導体接合部7を略矩形とした場合に、矩形の角部が除去された形状である。この際、曲線の半径R(図2(b)参照)は、導体の直径d(図2(a)参照)の1/2以上である。より好ましくは、曲線の半径R(図2(b)参照)は、導体の直径d(図2(a)参照)以上とする。なお、導体部5が複数の導体素線9からなる場合には、導体の直径dは、導体素線9の直径とする。また、導体部5が単線の場合には、導体の直径は導体部5の直径とする。
【0032】
曲線の半径Rが小さすぎると、本発明の効果が小さくなる。なお、曲線の半径Rが、導体の直径dの1/2の場合には、接合前(変形前)の導体の外形と曲線とが略一致するため、超音波振動が逃げにくく効率良く超音波振動を四隅まで伝達させることができる。さらに、曲線の半径Rを、導体の直径d以上とすれば、曲線部分に接合前(変形前)の導体を二つ以上接触させることが可能となり、より効率良く超音波振動を四隅まで伝達させることができる。
【0033】
このように、導体接合部7の角形状をなくして、所定の大きさの曲線で構成することで、超音波振動の伝わりにくい部位における導体をなくし、効率良く導体同士を接合することができる。なお、曲線の半径Rは、導体接合部7の上下方向の高さH又は両側方の幅Wの小さい方(同一の場合にはいずれか)の値の1/2以下であることが望ましい。過剰に大きな曲線とすると、導体接合部7の高さや幅が大きくなるためである。
【0034】
なお、導体接合部7の上下面及び両側面の、四隅の曲線部以外の部位は、必ずしも一直線に形成されなくてもよい。
【0035】
図3(a)は、図2(b)のC部拡大図、図3(b)は、図2(b)のD部拡大図である。図3(a)、図3(b)に示すように、導体接合部7の上面と下面には、凹凸形状が形成されることが望ましい。すなわち、導体接合部7の後述するアンビルとホーンとの接触部には、凹凸形状が形成されることが望ましい。
【0036】
なお、凹凸形状は必ずしも図示したような矩形でなくてもよい。また、凹凸形状が所定のピッチで繰り返される場合において、凸部のピッチは前述した導体の直径d以上であり、導体接合部7の幅Wの1/10以下とすることが望ましい。また、凸部の高さは、前述した導体の直径d以上であり、導体接合部7の高さHの1/10以下とすることが望ましい。このような細かな凹凸形状を形成することで、後述する超音波振動をより効率良く伝達させることができる。
【0037】
次に、複数の電線3の導体を集合させて超音波接合して導体接合部7を形成する導体の接合方法について説明する。図4は、導体接合部7を超音波接合によって形成する工程を示す図である。前述したように、アンビル13とホーン11との間に、接合対象の導体部5を配置し、押さえ部材15によって幅方向を規制した状態でホーン11とアンビル13とで導体部5を一括して圧縮しながらホーン11より超音波振動を発生させる。以上により、導体部5同士が接合されて、導体接合部7が形成される。
【0038】
このように、複数の導体をホーン11とアンビル13とで挟み込んで超音波接合を行う際、電線3の軸方向から見て、使用されるホーン11及びアンビル13の両端部が、導体接合部7の形状に応じて、導体の直径dの1/2以上の半径の曲線で構成される。すなわち、ホーン11及びアンビル13の対向面において、ホーン11及びアンビル13の両端部には、端部に行くにつれて互いの距離が徐々に近くなるように凸形状が形成される。
【0039】
このような形状のホーン11及びアンビル13を用いることで、従来と同様の手法で超音波接合を行っても、導体接合部7の四隅を曲線形状とすることができる。
【0040】
以上、第1の実施の形態によれば、複数の電線3を超音波接合によって接合する際に、導体接合部7の四隅を曲線形状とすることで、従来の矩形の導体接合部における角形状をなくし、この部位における素線こぼれが生じることを抑制することができる。したがって、超音波接合によって効率良く、信頼性の高い導体接合部を形成することができる。
【0041】
また、導体接合部7の幅Wを、上下方向の高さHよりも大きくすることで、アンビル13とホーン11とで挟み込んだ際に、ホーン11からアンビル13方向へ振動がより伝わりやすくなる。
【0042】
また、導体接合部7の上面と下面に凹凸形状を形成することで、より効率良く超音波振動を伝達しやすくすることができる。
【0043】
(第2実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。図5(a)、図5(b)は、第2の実施形態にかかる導体部5a、5b及び導体接合部7aを示す図で、図2(a)、図2(b)に対応する図である。なお、以下の説明において、第1の実施形態と同一の機能を奏する構成については、図1図4と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0044】
第2の実施形態では、複数の導体部がすべて同一の金属ではなく、複数の金属が混在する。例えば、第1導体である導体部5aは、アルミニウム又はアルミニウム合金からなり、第2導体である導体部5bは、銅又は銅合金からなる。すなわち、異なる金属からなる導体部5a、5bが混在している。
【0045】
本実施形態では、接合前において、導体部5aに対して、導体部5bが一カ所に偏らないように配置される。このため、接合後の導体接合部7aにおいて、導体部5bが略均等に分散している。
【0046】
ここで、導体接合部7aにおいて、導体部5bが略均等に分散しているとは、導体部5aを構成する材料に対して、導体部5bを構成する材料が分散していることを意味する。また、ほぼ均等に分散しているとは、導体部5b同士の距離が均等であることまでを要さず、いずれかの位置に集合せずに配置されることを意味する。
【0047】
なお、本実施形態では、相対的に数の多い導体部5aに対して、導体部5bが一カ所に偏らないように配置される例を示すが、導体部5aと導体部5bは逆であってもよい。また、導体部5a、5bが複数の導体素線からなる場合には、導体素線が分散することを意味するのではなく、電線3の単位において、導体部が分散していればよい。
【0048】
なお、導体接合部7aの形状は、前述した導体接合部7と略同様である。すなわち、電線3の軸方向から見た際に、導体接合部7aの上部と両側部との境界部、及び導体接合部7aの下部と両側部との境界部が曲線で構成され、曲線の半径は、導体の直径の1/2以上である。
【0049】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、複数の材質からなる導体が、ほぼ均等に分散されているため、局所的に他の部位とは異なる材質で構成されることがなく、全体をほぼ均等に接合することができる。
【0050】
例えば、銅系の導体は、材料が比較的硬いので、振動が伝わりにくいと接合不足になりやすい。一方、アルミニウム系の導体の場合には、材料は比較的軟らかいが、振動が伝わりにくいと酸化被膜が除去されず接合不足になりやすい。このため、銅とアルミニウムのどちらでも接合不足は起こりうるが、このような影響は、いずれかの導体が局所的に集中した際に起こりやすいため、導体をほぼ均等に分散させることで、このような影響を抑制することができる。
【0051】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。図6は、第3の実施形態にかかる導体接合部7bを形成する工程を示す図である。導体接合部7bは、導体接合部7と略同様の構成であるが、導体接合部7bの上部(ホーン11側)と両側部との境界部には、曲線が形成されない点で異なる。
【0052】
このように、導体接合部7bの四隅の全てを曲線とするのではなく、導体接合部7bの上部と両側部との境界部、又は導体接合部7bの下部と両側部との境界部のいずれか一方のみが曲線で構成されればよい。
【0053】
なお、この場合には、導体接合部7bの下部と両側部との境界部のみを曲線で構成することが望ましい。すなわち、電線3の軸方向から見て、少なくとも導体接合部7bのアンビル13側の両側部を曲線とすることが望ましい。ホーン11側は、超音波振動の発生部に近いため、隅部にも十分に超音波振動が伝達しやすいが、ホーン11から離れた位置のアンビル13側では、隅部に超音波振動が伝達しにくいためである。
【0054】
このため、電線3の軸方向から見て、ホーン11のアンビル13側は、フラットに形成され、アンビル13は、前述したように、両端部において曲線が形成されるように凸形状となる。
【0055】
第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。このように、導体接合部7bの四隅の全てを曲線とするのではなく、導体接合部7bの上部と両側部との境界部、又は導体接合部7bの下部と両側部との境界部の少なくとも一方が曲線で構成されればよい。
【0056】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。図7(a)は、第4の実施形態にかかる導体接合部7cを形成する工程を示す図である。導体接合部7cは、導体接合部7と略同様の構成であるが、導体接合部7cの全周が曲線で構成され、直線部が形成されない。すなわち、導体接合部7cの上部と両側部との境界部、及び導体接合部7cの下部と両側部との境界部のいずれも曲線で構成される。
【0057】
なお、この場合、必ずしも、導体接合部7cの上部及び下部のそれぞれと、両側部との境界は明確ではない。このような場合には、導体接合部を、幅方向の中心線と、高さ方向の中心線とで4区分し、それぞれの境界部は、それぞれの領域の中のいずれかの位置に存在しているものとする。
【0058】
導体接合部7cは、ホーン11とアンビル13とで上下から挟まれるとともに、幅方向の両側部は押さえ部材15によって規制される。この際、ホーン11及びアンビル13の対向面が曲面で構成され、押さえ部材15の対向面にも、ホーン11及びアンビル13の曲面と連続するように、曲面で形成される。このようにすることで、全周面が曲線で構成される導体接合部7cが形成される。例えば、導体接合部7cは、略円形状又は略楕円形状である。
【0059】
なお、図7(b)に示すように、導体接合部7cは、押さえ部材を用いずに、ホーン11とアンビル13とを突き合せて連続する曲線を形成するようにしてもよい。
【0060】
以上、第4の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、矩形の形状を想定した際に、導体接合部7cは、この四隅部分を確実に切除した形態となるため、超音波振動を全体に伝達することができる。
【0061】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0062】
たとえば、電線の本数や配置は、図示した例には限られない。また、各実施形態の構成は、互いに適宜組み合わせることもできる。
【符号の説明】
【0063】
1………導体接合構造
3………電線
5、5a、5b………導体部
7、7a、7b、7c………導体接合部
9………導体素線
11………ホーン
13………アンビル
15………押さえ部材
101………ホーン
103………アンビル
105………押さえ部材
107………導体
109………導体素線
111………接合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9