(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】光ファイバケーブル
(51)【国際特許分類】
G02B 6/44 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
G02B6/44 371
(21)【出願番号】P 2020083694
(22)【出願日】2020-05-12
【審査請求日】2023-02-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】三浦 貴博
(72)【発明者】
【氏名】安冨 徹也
【審査官】奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-174389(JP,A)
【文献】特開2008-095399(JP,A)
【文献】特開2017-099825(JP,A)
【文献】特開2014-219494(JP,A)
【文献】特開2017-049510(JP,A)
【文献】特開2017-129706(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0056650(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108121041(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の光ファイバ心線又は複数本の光ファイバが併設された一つ以上の光ファイバテープ心線からなる光ファイバユニットと、
前記光ファイバユニットの長手方向に垂直な断面において、前記光ファイバユニットを挟み込むように配置される一対の防護壁と、
前記防護壁の間であって、前記光ファイバユニットを両側方から挟み込む一対の介在と、
前記光ファイバユニットの両側に設けられる一対のテンションメンバと、
前記光ファイバユニット、前記防護壁、前記介在および前記テンションメンバを覆うように設けられる外被と、
を具備し、
前記介在には、長手方向に向けて断続的に複数のスリットが形成され、前記介在の幅は、一対の前記防護壁の距離よりも長く、前記スリットにより分割された小片の幅は、前記介在1枚の厚み以上であ
り、
前記介在は、撚りがないことを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
前記介在はフィルム状であり、長手方向に断続的に前記スリットが入ったスプリットヤーンであることを特徴とする請求項1記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
前記小片の幅の平均値は、前記介在1枚の厚みの5倍以上であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の光ファイバケーブル
。
【請求項4】
前記介在の任意の部位において、前記小片の幅の平均値が100~800μmであることを特徴とする請求項1から請求項
3のいずれかに記載の光ファイバケーブル
。
【請求項5】
前記介在は、一対の前記防護壁の間において、それぞれ
、前記光ファイバユニット側の面が外側に膨らんでいることを特徴とする請求項1から請求項
4のいずれかに記載の光ファイバケーブル。
【請求項6】
前記介在は一対の前記防護壁と接触し、前記光ファイバユニットの長手方向に垂直な断面において、一対の前記防護壁と一対の前記介在により囲まれた領域において、四隅に空隙がないことを特徴とする請求項1から請求項
5のいずれかに記載の光ファイバケーブル。
【請求項7】
前記光ファイバユニットの長手方向に垂直な断面において、一対の前記防護壁と一対の前記介在により囲まれ、前記光ファイバ心線が収納される光ファイバ心線収納部において、前記光ファイバ心線の密度は、9本/mm
2以上であることを特徴とする請求項1から請求項
6のいずれかに記載の光ファイバケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の光ファイバが内蔵され、いわゆる少心架空ケーブルと呼ばれる光ファイバケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、少心架空ケーブルは、複数の光ファイバ心線が外被で被覆されたものが用いられている。内部の光ファイバ心線を取り出す際には、外被に切込みを入れて解体し、光ファイバ心線が取り出される。
【0003】
このような、光ファイバケーブルとしては、例えば、光ファイバケーブルの上下に、2対のノッチを形成し、外被の内部に、光ファイバ心線の上下に介在テープを配し、介在テープの間であって、光ファイバ心線の両側に介在物を配置した光ファイバケーブルがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来の光ファイバケーブルは、長手方向に垂直な断面において、光ファイバ心線収納部(光ファイバユニットが収納される部分であって、介在等で囲まれた空間)の上下方向には、互いに対向する1対の防護壁が配置され、光ファイバ心線収納部の幅方向には、互いに対向する介在が配置される。ここで、介在は、走水防止と外被の樹脂が光ファイバと接触するのを避けるために配置され、繊維を撚った状態で光ファイバ心線収納部の幅方向の両方に配置される。このように、介在は、繊維を撚り合わせることで断面を丸くし、形状を安定させるとともに、介在の繊維がばらけて光ファイバ心線間に入り込むことを避けて使用される。
【0006】
しかし、光ファイバケーブルの断面積を変えないで、収納する光ファイバ心線を増やすと、光ファイバ心線収納部において光ファイバ心線が占める面積割合が増え、光ファイバ心線の配置が密になるため、光ファイバ心線間の隙間が少なくなる。この様な状態で外被をかぶせると、撚って幅方向に丸みを帯びた介在と光ファイバ心線が局所的に接触して、特定の光ファイバ心線に応力がかかり伝送損失が増加するという問題がある。さらに心数が増えた状態で丸みを帯びた介在が存在すると、ノッチ同士をつなぐ線上にも介在がはみ出してしまい、外被を切断する際に、光ファイバ心線の誤切断する恐れがある。
【0007】
また、光ファイバ心線収納部を大きくするために、防護壁同士の間隔を広くすると、防護壁同士の間隔に応じたサイズの介在を使用する必要があることから、撚って幅方向に丸みを帯びた介在の厚みがさらに厚くなる。このため、一部の光ファイバ心線にかかる応力集中が増加するし、伝送損失が増加するおそれがある。また、防護壁同士の間隔を広くすると、介在と防護壁との間に隙間が生じやすくなるため、隙間に外被樹脂が流れ、樹脂に光ファイバ心線が埋まってしまい、外被を引き裂く際に、光ファイバ心線が樹脂と分離されずに引き出されるおそれがある。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、内部に収容される光ファイバ心数が増えた場合でも、解体作業性に優れ、伝送損失の増加を抑制することが可能な光ファイバケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達するために本発明は、複数本の光ファイバ心線又は複数本の光ファイバが併設された一つ以上の光ファイバテープ心線からなる光ファイバユニットと、前記光ファイバユニットの長手方向に垂直な断面において、前記光ファイバユニットを挟み込むように配置される一対の防護壁と、前記防護壁の間であって、前記光ファイバユニットを両側方から挟み込む一対の介在と、前記光ファイバユニットの両側に設けられる一対のテンションメンバと、前記光ファイバユニット、前記防護壁、前記介在および前記テンションメンバを覆うように設けられる外被と、を具備し、前記介在には、長手方向に向けて断続的に複数のスリットが形成され、前記介在1枚の幅は、一対の前記防護壁の距離よりも長く、前記スリットにより分割された小片の幅は、前記介在1枚の厚み以上であり、前記介在は、撚りがないことを特徴とする光ファイバケーブルである。
【0010】
前記介在はフィルム状であり、長手方向に断続的に前記スリットが入ったスプリットヤーンであることが望ましい。
【0011】
前記小片の幅の平均値は、前記介在1枚の厚みの5倍以上であることが望ましい。
【0012】
スリットが存在する任意の部位において、少なくとも1つの前記小片の幅は、100~800μmであることが望ましい。さらに、介在の任意の部分において、前記小片の幅の平均は100~800μmであることが望ましい。
【0013】
前記介在は、一対の前記防護壁の間において、それぞれ、前記光ファイバユニット側の面が外側に膨らんでいることが望ましい。
【0014】
前記介在は一対の前記防護壁と接触し、前記光ファイバユニットの長手方向に垂直な断面において、一対の前記防護壁と一対の前記介在により囲まれた領域において、四隅に空隙がないことが望ましい。
【0015】
前記光ファイバユニットの長手方向に垂直な断面において、一対の前記防護壁と一対の前記介在により囲まれ、前記光ファイバ心線が収納される光ファイバ心線収納部において、前記光ファイバ心線の密度は、9本/mm2以上であることが望ましい。
【0016】
本発明によれば、介在に、長手方向に向けて断続的に複数のスリットが形成されるため、介在を幅方向に複数の小片に分割することができる。このため、光ファイバユニットの断面の形状に対して追従しやすく、光ファイバユニットを両側から完全に覆うことができる。また、スリットは断続的に形成されるため、小片同士は部分的に一体化している。このため、完全に分離した小片同士と比較して、小片同士の向きなどが光ファイユニットの形態に追従して変化した場合でも、元の形態に戻ろうとする復元力が働く。このため、防護壁と介在との間に隙間ができにくい。
【0017】
これに対し、スリットが断続的ではなく連続して形成されると、個々の小片が自由に変形可能であり、互いの拘束力がないので変形自体も大きくなりやすい。また、小片が変形すると、元の形状に戻ろうとする力が働かず、自由に変形しすぎるため、防護壁と介在との間に隙間ができやすくなる。この結果、光ファイバユニットへ外被樹脂が侵入し光ファイバ心線が外被の樹脂に埋まる恐れがある。このため、光ファイバ心線の取り出し作業性が悪化する。
【0018】
また、外被を解体した際にも、小片同士がつながっているため、一部の小片が外被に熱融着していれば、外被を除去する際に、介在全体を外被とともに除去するのが容易である。なお、介在を撚ればこの効果は得られるが、撚り合わせることで、前述したように、介在全体の厚みが厚くなるとともに断面形状に丸みが生じるため、伝送損失の増大の恐れがある。また、従来の介在では、防護壁の間隔によって、それぞれ異なるサイズのものが必要となるが、撚り合わせた介在の場合には、介在繊度(又は太さ)を変えないといけないので材料の共通化ができないという問題もある。これに対し、本発明では、防護壁の間隔が広いケーブルに合わせて介在を選定すれば、同一の介在が異なる光ファイバケーブルにも適用可能である。
【0019】
また、スリットにより分割された小片の幅が介在1枚の厚み以上であると、押出成形時に光ファイバユニットと溶融樹脂に挟まれた小片が防護壁に直交する向きに配向する確率が高い。例えば、小片の幅が狭いと、小片自体が回転しやすく(ねじれやすく)なり、小片の向きが揃いにくくなる。この結果、小片で光ファイバユニットを覆うことができず、光ファイバユニット内部への樹脂の流入の恐れがある。なお、小片の幅が介在1枚の厚みの5倍以上であれば、より確実に小片が防護壁に直交する向きに配向する。これにより、一対の防護壁の距離よりも幅が大きい介在を用いれば、確実に、光ファイバ心線収納部を1対の防護壁と1対の介在で囲むことができる。このため、光ファイバユニットへの外被樹脂の回り込みを抑制することができる。
【0020】
また、介在が、長手方向に断続的にスリットが入ったスプリットヤーンであれば、介在の製造が容易である。この際、介在がフィルム状であるため、部位による厚み分布が小さく、一部の光ファイバ心線に応力集中がかかることを抑制することができる。
【0021】
この場合、介在に撚りを設ける必要がないことから、製造が容易であるとともに、部位による厚み分布がほとんど生じないため、一部の光ファイバ心線に応力集中がかかることを抑制することができる。
【0022】
また、介在の撚り合わせを行うとしても、小片同士が部分的につながっているため、最小限の撚り合わせでも小片同士のばらけなどが生じない。このため、従来と比較して、部位による厚み分布が小さく、一部の光ファイバ心線に応力集中がかかることを抑制することができる。
【0023】
また、小片が形成される任意の部位において、少なくとも1つの小片の幅が100~800μmであれば、当該小片は、光ファイバユニットの形状に確実に追従させることができるため、光ファイバユニットへの外被樹脂の回り込みを抑制することができると共に、伝送特性と心線引抜力を両立させることができる。
【0024】
また、介在を、一対の防護壁の間において、それぞれ外側に膨らむように配置することで、介在と光ファイバユニットとの接触面積を増加させて、光ファイバ心線の引き抜き力を増加させることができる。また、介在を内側に膨らませると、防護壁との接触部近傍において、光ファイバ心線収納部の形状が鋭角となり、狭い窪み形状が形成されるため、光ファイバ心線が当該窪みに落ち込み、解体時に外被樹脂側に持っていかれる恐れがある。これに対し、介在を外側に膨らませることで、光ファイバ心線収納部の角部にこのような狭い窪みが形成されることを抑制することができる。
【0025】
また、介在を一対の防護壁と接触させることで、光ファイバ心線収納部の四隅に空隙が形成されず、光ファイバユニットに外被樹脂が回り込むことを確実に防ぐことができる。
【0026】
上記した効果は、特に、光ファイバ心線収納部における光ファイバ心線の密度が、9本/mm2以上となるような高密度に光ファイバ心線が収納された光ファイバケーブルにおいて顕著に得ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、内部に収容される光ファイバ心数が増えた場合でも、解体作業性に優れ、伝送損失の増加を抑制することが可能な光ファイバケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図2】(a)は介在5の斜視概念図、(b)は介在5の断面概念図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(第1実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1は、光ファイバケーブル1の断面図である。光ファイバケーブル1は、外被3、介在5、光ファイバユニット15、テンションメンバ9、防護壁13等により構成される。
【0030】
光ファイバケーブル1の断面略中央位置には、光ファイバユニット15が配置される。光ファイバユニット15は、複数本の光ファイバ心線7からなる。なお、光ファイバユニット15は、複数本の光ファイバが併設された一つ以上の光ファイバテープ心線で構成されてもよい。この場合、光ファイバテープ心線としては、例えば複数の光ファイバが長手方向に間欠的に接着された間欠接着型の光ファイバテープ心線が適用可能である。
【0031】
光ファイバユニット15の長手方向に垂直な断面において、光ファイバユニット15の全体を上下方向から挟み込むように、一対の防護壁13が設けられる。防護壁13は、例えばナイロンテープ等であり、外被3との剥離性が良いものが使用される。防護壁13は、光ファイバユニット15よりも幅広に形成される。なお、上下のそれぞれの防護壁13は、最上部および最下部の光ファイバ心線7とそれぞれ接触する。
【0032】
光ファイバユニット15の両側方であって、防護壁13の間には、一対の介在5が設けられる。介在5は、光ファイバユニット15に接触し、光ファイバユニット15を両側方から挟み込むように配置される。介在5については、詳細を後述する。
【0033】
なお、光ファイバユニット15の長手方向に垂直な断面において、一対の防護壁13と一対の介在5により囲まれ、光ファイバ心線7が収納される光ファイバ心線収納部において、光ファイバ心線7の密度は、9本/mm2以上15本/mm2以下であることが望ましい。光ファイバ心線7の密度が小さすぎると、従来の光ファイバケーブルの外径で40心程度の高密度化が出来なくなる。また、光ファイバ心線7の密度が大きすぎると、光ファイバケーブル1を曲げた際に、光ファイバ心線収納部内で光ファイバ心線7同士で応力を掛け合い、伝送損失が増加する恐れがある。なお、光ファイバユニット15は、例えば一方向に螺旋状に撚られていてもよく、またはSZ状に撚られていてもよい。
【0034】
防護壁13の対向方向に対して略直交する方向であって、光ファイバユニット15(介在5)の両側方には、一対のテンションメンバ9が設けられる。テンションメンバ9は、光ファイバケーブル1の張力を負担する。テンションメンバ9は、例えば鋼線、モノフィラメント、アラミド繊維等による繊維補強プラスチック等が使用でき、望ましくは亜鉛メッキ鋼線を使用することができる。
【0035】
介在5、光ファイバユニット15、防護壁13及びテンションメンバ9は外被3によって一体化される。すなわち、光ファイバユニット15、防護壁13、介在5およびテンションメンバ9が、外被3で覆われる。外被3は、略矩形形状である。外被3は、例えばポリオレフィン系樹脂製等の熱可塑性樹脂を使用することができる。
【0036】
外被3の上下面には、互いに対向するように2組のV字状のノッチ11が形成される。より詳細には、外被3の対向する外周部(図中上下面)であって、上下のそれぞれの防護壁13に対応する位置に、それぞれ二つずつのノッチ11が形成される。すなわち、ノッチ11は、計四か所に配置される。前述したように、ノッチ11は、解体工具などによって、光ファイバケーブル1を分割する起点部となる。なお、防護壁13は、対向するノッチ11をつなぐ線上にかかるよう配置される。
【0037】
次に、介在5の詳細について説明する。
図2(a)は、介在5を示す斜視概念図であり、
図2(b)は、介在5の断面概念図である。介在5は、長手方向に向けて断続的に複数のスリット17が形成された、厚さ10~30μm厚程度のフィルム状の部材である。すなわち、介在5は、スリット17以外の部位において、少なくとも一部がつながっている。
【0038】
なお、スリット17が形成されている任意の断面(すなわち、長手方向のスリット17が存在しない部位を除く部位)において、スリット17によって幅方向に分割された部位を小片19とする。なお、図示したように、介在5の長手方向の一部に、スリット17が完全に形成されていない部位が存在してもよく、又は、長手方向のいずれの部位でも、少なくとも1つのスリット17が形成されてもよい。
【0039】
なお、介在5としては、例えば、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PET(ポリエステル)、ナイロンを用いることができる。また、ポリオレフィン系樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、UV樹脂、繊維FRPなどのプラスチック製材料からなる、長手方向に断続的にスリットが入ったスプリットヤーンを使用することができる。このようなスプリットヤーンには単層(1枚のフィルムをスリット加工したもの)や複数枚枚重ね(複数枚のフィルムを重ね合わせ、スリット加工したもの)があり、どちらを用いてもよい。
【0040】
また、介在5の材質として、PP等融点が比較的低い材料を用いる事で、押出時に外被3と介在5が熱融着し、光ファイバ心線7を取り出す作業時に、外被3と介在5を一度に切断できるため、作業性が良い。すなわち、外被3を分割し、外被3の上下部分(2か所)、外被3の左右部分(介在5と一体)(2か所)、上下の防護壁13(2か所)の計6か所を切断すればよい。介在5が熱融着していないと、外被3の左右部分(2か所)と左右の介在5(2カ所)を別々に切断する必要があり、切断箇所が計8か所となる。
【0041】
なお、介在5の繊度は1000d(デニール)~2000dが好ましい。特に1500dであれば8心~40心すべての光ファイバ心線に対して良好な特性が得られる。繊度が低すぎると、介在5の幅が小さくなってしまい、防護壁13間の隙間をうまく覆うことが出来なくなる。また、繊度が高すぎると、ケーブル状態において介在5の占める領域が大きくなるため、ノッチ11同士の延長線上に介在5がかかってしまい、ケーブル解体時に、光ファイバ心線7を断線させてしまう恐れがある。
【0042】
なお、介在5の幅(
図2(b)のC)は、一対の防護壁13の距離(
図1のA)よりも長い。このため、介在5の両端部は、一対の防護壁13と接触する。すなわち、光ファイバユニット15の長手方向に垂直な断面において、一対の防護壁13と一対の介在5により囲まれた領域(光ファイバ心線収納部)において、四隅に空隙が形成されることがない。
【0043】
なお、
図1に示すように、介在5は、一対の防護壁13の間において、それぞれ外側に膨らんでいることが望ましい。このようにすることで、防護壁13と介在5とで囲まれた光ファイバ心線収納部の断面形状において、四隅の角度(内角)を大きくすることができる。この結果、光ファイバ心線収納部のスペースを効率良く使用することができ、角部まで光ファイバ心線7を収容することができるとともに、光ファイバ心線7が狭い角部に挟まり、光ファイバ心線7の移動が妨げられることを抑制することができる。
【0044】
なお、スリット17により分割された小片19の幅(
図2(b)のB1~B3)の平均は、1枚の介在5の厚み(
図2(b)のt)以上であることが望ましく、5倍以上であるとさらに望ましい。小片19の幅が狭くなりすぎると、小片19が光ファイバ心線7の隙間に入り込みやすく、外被3の樹脂が、光ファイバ心線収納部へ侵入することを防ぐ効果が小さくなる。
【0045】
ここで、スリット17が存在する介在5の長手方向の任意の部位において、少なくとも1つの小片19の幅(
図2(b)B1~B3のいずれか)は、100~800μmであることが望ましい。より望ましくは、介在5の長手方向の任意の部位において、小片19の幅の平均値(
図2(b)B1~B3の平均)が、100~800μmであることが望ましく、さらに望ましくは、すべての小片19の幅(
図2(b)B1~B3のすべて)が、100~800μmであることが望ましい。小片19の幅が狭くなりすぎると、外被3の樹脂が光ファイバ心線収納部へ侵入する恐れがある。また、小片19の幅が広すぎると、光ファイバ心線7の径に対し小片19の幅が大きくなるので、小片19の一部が光ファイバ心線7の外形にフィットしなくなる。このため、介在5と光ファイバ心線7との接触面積が小さくなり、光ファイバ心線7の引抜力が低下する。これに対し、光ファイバ心線7の密度を上げて引抜力を高めようとすると、損失が増加するおそれがある。なお、小片19の幅を100~500μmとすることで、さらに安定した品質を得ることができる。
【0046】
一方、小片19の幅を上記範囲とすることで、光ファイバユニット15の外形の凹凸に小片19を追従させて、光ファイバ心線7と効率良く密着させることができるため、光ファイバ心線7の引き抜き抵抗を向上させることができる。なお、小片19の幅は、例え介在を切り裂く刃の間隔等を適宜設定することで調整することができる。
【0047】
介在5は、従来の繊維を用いた介在のように撚られなくてもよい。介在5は、部分的に小片19同士がつながっているため、従来の繊維の集合体と比較してばらけにくいため、撚りがなくてもよい。
【0048】
なお、介在5は、緩く撚られていてもよい。この場合、撚り合わせることで、フィルム状態の介在5の幅よりも、撚り合わせた後の介在5の幅が小さくなるが、この場合でも、撚り合わせた後の介在5の幅(最小幅)が、防護壁13同士の間隔よりも大きければよい。なお、介在5を撚りすぎると、介在5が、幅方向に丸みを帯びた断面形状となり、部分的に占める領域が大きくなり一部の光ファイバ心線7に応力集中が生じるため、伝送損失が増加するおそれがある。このため、介在5を撚り合わせる場合には、5回/m以下であることが望ましい。
【0049】
以上、本実施の形態によれば、介在5に複数の断続的なスリット17が形成されるため、適度に小片19が自由に動けるとともに、部分的に小片19同士がつながっているため、小片19同士が自由に動いても、元の形態に復元する力が働く。このため、介在5と防護壁13と間に隙間が生じにくい。このように、断続的なスリット17が形成された介在5を用い、防護壁13同士の間において、介在5を一対の防護壁13に接触させることで、光ファイバ心線収納部への樹脂の侵入を抑制することができる。
【0050】
これに対し、従来の介在のように、長繊維の集合体等または小片同士に接続がない場合では、繊維や小片同士に拘束がないので変形自体が大きくなりやすい。また、小片等が変形した状態から、元の形状に戻ろうとしないため、小片と防護壁13等との間に隙間が生じやすくなる。また、小片の変形が多くなるため、小片が光ファイバ心線7の内部にも入り込みやすくなる。この結果、小片19によって確実に光ファイバユニット15を覆うことができなくなり、光ファイバユニット15内部への外被3の樹脂が侵入しやすくなる。
【0051】
さらに、光ファイバユニット15内部に小片19が入り込むと、光ファイバ心線7の取り出し作業時に、光ファイバ心線7と小片とが絡むため、作業性が悪い。これに対し、小片19同士が適度につながっており、介在5全体が一体化しているので、一部が外被3に熱融着していれば外被3の除去時に介在5の全体が外被3に持っていかれ、光ファイバ心線7に絡まずに除去することができる。
【0052】
なお、長繊維や、完全に分割された小片であっても、これらを撚り合わせることで、上記の効果は得られるが、このように強く撚り合わせられた介在は、断面が丸みを帯びるため、光損失が増大する恐れや、ノッチ同士の延長線上に介在が入り込む恐れがある。また、従来の介在では、光ファイバ心線の心数が変わり、防護壁13同士の間隔が変わると、それに合わせて介在繊度を変えないといけないので材料の共通化することが困難であるが、本発明では、防護壁の間隔が広いケーブルに合わせて介在を選定すれば、同一の介在が異なる光ファイバケーブルにも適用が可能である。。
【実施例】
【0053】
複数種類の光ファイバケーブルを作成し、光ファイバ心線の引抜力等の評価を行った。光ファイバケーブルとしては、概ね
図1に示す形状であり、外被は略長方形であり、長辺寸法が5.5mm、短辺寸法が3.3mmの断面形状とした。また、外被の材質は、ノンハロゲン難燃ポリエチレンとした。なお、外被のJISK7210の溶融性試験(190℃、2.16kg)の結果は、MFR0.35g/10分であった。
【0054】
0.25mmφの光ファイバが間欠的に接着された、4心の光ファイバテープ心線を準備し、外被の内部に、この光ファイバテープ心線を10枚収容した。防護壁としては、厚さ0.2mm×幅3.1mmのナイロンテープを用いた。光ファイバユニットの両側には介在を配置し、介在の両側には、0.7mm径の亜鉛めっき鋼線製のテンションメンバを配置した。介在としては、ポリプロピレンスプリットヤーンを用いた。各種条件と結果を表1、表2に示す。
【0055】
【0056】
【0057】
表1中の「平均小片幅」は、介在の長手方向の一部において、当該部位のすべての小片の幅の平均値である。また、「ファイバ密度」は、介在と防護壁とで囲まれた空間の単位断面積当たりの光ファイバの本数である。また、「介在の外側への膨らみ」は、
図1に示すように、光ファイバユニット15の両側において、介在が外側に膨らんでいるものを「あり」とし、略まっすぐに配置されているものを「なし」とした。また、「四隅の空隙」は、介在と防護壁との間の隙間の有無であり、介在と防護壁とが、4か所で確実に接しているものを「なし」とし、介在と防護壁とが接触せずに隙間があるものを「あり」とした。
【0058】
表2中の「ファイバへの樹脂の流れ込み」は、光ファイバケーブルの両端断面構造をマイクロスコープで観察し、外被樹脂の光ファイバ心線内への侵入の有無を評価した結果である。樹脂が介在を越え光ファイバ心線側に侵入していないものを合格「○」、若干の樹脂が侵入し光ファイバ心線に接しているものの、心線が樹脂に囲まれていないものを「△」とし、シース樹脂が光ファイバ心線内に入り込んでいるものを不合格「×」とした。また、「ファイバの中間取り出し可否」は、ケーブル中間部を解体工具で切り裂いた際、光ファイバ心線を取り出せたものを合格「○」、樹脂にひっかかり取り出せないものを不合格「×」とした。また、「ファイバ取り出し時の接着部分離」は、ケーブル端末のノッチにニッパ等の工具で切り込みを入れた後、手で外被を引き裂いて内部の光ファイバテープ心線を取り出した際に、間欠的に接着された接着部が損傷なく維持されていた場合を「○」、接着部が損傷し、光ファイバ心線が分離した場合を「×」とした。
【0059】
また、表中の「光損失」は、測定波長1550nmにて光損失を測定し、光損失が0.3dB/kmより大きい場合を「×」、0.3dB/km以下の場合を「○」とした。
【0060】
また、「ノッチと介在の位置関係」は、光ファイバケーブルの両端断面構造をマイクロスコープで観察し、上下のノッチ同士をつなぐ線上に介在がかかっているものを「×」とし、線よりも介在が内側に配置されているものを「○」とした。
【0061】
また、「心線引抜力」は、以下のようにして測定した。まず、11mのケーブルの内、両端末50cmの外被および他の部材を除去して、光ファイバ心線を取り出した。次に、片端の光ファイバユニットを引張り、逆端の光ファイバユニットが移動し始めた時の張力を光ファイバ心線の引抜力として測定した。引抜力が70N/10m以上であれば合格かつ極めて良好な結果「☆」とし、50N/10m以上70N/10m未満であれば合格かつ良好な結果「◎」とし、20N/10m以上50N/10m未満であれば合格「〇」とし、20N/10m未満であれば不合格「×」とした。
【0062】
結果より、実施例1~実施例14は、全ての評価が「○」又は「◎」又は「☆」であった。これに対し、比較例1は、介在の全幅が防護壁同士の間隔よりも狭いため、ファイバへの樹脂の流れ込みが生じた。また、比較例2は、ファイバ密度が大きすぎるため、光損失が大きくなった。
【0063】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0064】
1………光ファイバケーブル
3………外被
5………介在
7………光ファイバ心線
9………テンションメンバ
11………ノッチ
13………防護壁
15………光ファイバユニット
17………スリット
19………小片