(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】伝熱部材および伝熱部材を有する冷却デバイス
(51)【国際特許分類】
F28D 15/02 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
F28D15/02 101G
F28D15/02 102A
F28D15/02 M
F28D15/02 102G
(21)【出願番号】P 2020112764
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2023-02-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】虎谷 智明
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-004562(JP,A)
【文献】特開2005-233477(JP,A)
【文献】特開2015-008290(JP,A)
【文献】特表2012-526257(JP,A)
【文献】特開2003-161594(JP,A)
【文献】特開昭59-112199(JP,A)
【文献】特開昭52-097466(JP,A)
【文献】特開2002-022385(JP,A)
【文献】特開2002-031491(JP,A)
【文献】特開2020-063895(JP,A)
【文献】特開2013-155925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/00 - 15/06
F28F 13/02
H01L 23/427
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体が収容された容器の内側に設けられる伝熱部材において、
前記伝熱部材は、前記作動流体に対して熱を放出する放熱面を有し、
前記伝熱部材に、前記放熱面に設けられた開口部から前記伝熱部材の内部に向かって延びる複数の孔が形成され、
前記複数の孔のうちの少なくとも2つの孔は、前記伝熱部材の内部において互いに連通され
、
前記孔は、前記放熱面における内径が、前記伝熱部材の内部における内径よりも小さい
伝熱部材。
【請求項2】
互いに連通されている前記少なくとも2つの孔のうちの一部の孔の内径は、その他の孔の内径よりも小さい
請求項1に記載の伝熱部材。
【請求項3】
前記伝熱部材の前記放熱面には、複数の凸部が形成され、
互いに連通されている前記少なくとも2つの孔は、それぞれの前記開口部が、前記凸部の対向する側壁のそれぞれに配置されている
請求項
1または2に記載の伝熱部材。
【請求項4】
前記伝熱部材は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、鉄、鉄合金、マグネシウムおよびマグネシウム合金からなる群から選択される1種以上の金属または合金によって構成される
請求項
1乃至3のいずれかに記載の伝熱部材。
【請求項5】
請求項
1乃至4のいずれかに記載の伝熱部材の製造方法であって、
前記孔をレーザ加工によって形成する
伝熱部材の製造方法。
【請求項6】
請求項
1乃至4のいずれかに記載の伝熱部材を備えた
冷却デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱体から放出された熱を作動流体伝えて作動流体を液相から気相に相変化させる伝熱部材および伝熱部材を有する冷却デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の内部には、発熱体としての電気・電子部品が搭載されている。近年の電子機器は、高機能化に伴い多数の電気・電子部品が高密度に搭載されているため、発熱量が増大化する傾向がある。電気・電子部品は、それ自体の温度が所定の許容温度を超えると、誤作動を起こす原因となるため、それ自体の温度が許容温度以下となるように温度を調整する必要がある。そのため、電子機器の内部には、通常、電気・電子部品を冷却するための冷却デバイスが搭載されている。このような冷却デバイスとしては、作動流体を液相から気相に相変化させる際に必要な蒸発潜熱(気化熱)を利用して電気・電子部品を冷却する沸騰冷却装置が知られている。
【0003】
電子機器を構成する電気・電子部品は、上述したように発熱量が増大化する傾向があるため、冷却デバイスの冷却性能をさらに向上させることが要求されている。
【0004】
そこで、冷却性能を向上させる冷却デバイスとしては、作動流体に熱を放出する放熱面に設けられた開口部から内部に延びる複数の孔が形成された伝熱部材を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記伝熱部材は、複数の孔を形成することによって作動流体が接触する面積を大きくすることができるため、冷却デバイスの冷却性能の向上を図る点で有利である。しかしながら、前記伝熱部材は、それぞれの孔の一端部が閉鎖されており、それぞれの孔に流入してそれぞれの孔から流出する作動流体の流れが円滑でないため、放熱面の近傍における作動流体の流通状態が悪化し、冷却デバイスの冷却性能の向上を図る点で不利となるおそれがある。
【0007】
本発明の目的とするところは、発熱体と作動流体との間の熱交換効率を向上させることのできる伝熱部材および伝熱部材を有する冷却デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の伝熱部材は、作動流体が収容された容器の内側に設けられる伝熱部材において、前記伝熱部材が、前記作動流体に対して熱を放出する放熱面を有し、前記伝熱部材に、前記放熱面に設けられた開口部から前記伝熱部材の内部に向かって延びる複数の孔が形成され、前記複数の孔のうちの少なくとも2つの孔が、前記伝熱部材の内部において互いに連通され、前記孔は、前記放熱面における内径が、前記伝熱部材の内部における内径よりも小さい。
【0009】
また、本発明の伝熱部材は、互いに連通されている前記少なくとも2つの孔のうちの一部の孔の内径が、その他の孔の内径よりも小さい。
【0011】
また、本発明の伝熱部材は、前記伝熱部材の前記放熱面に、複数の凸部が形成され、互いに連通されている前記少なくとも2つの孔は、それぞれの前記開口部が、前記凸部の対向する側壁のそれぞれに配置されている。
【0012】
また、本発明の伝熱部材は、前記伝熱部材は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、鉄および鉄合金、マグネシウムおよびマグネシウム合金からなる群から選択される1種以上の金属または合金によって構成される。
【0013】
また、本発明の伝熱部材の製造方法は、前記孔をレーザ加工によって形成する。
【0014】
また、本発明の伝熱部材の冷却デバイスは、前記伝熱部材を備えている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、互いに連通された孔の間において作動流体を流通させることができるので、発熱体と作動流体との間の熱交換効率の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態を示す伝熱部材を備えた冷却デバイスの内部の構造を表す全体斜視図である。
【
図2】
図2(a)は、伝熱部材の平面図であり、
図2(b)が
図2(a)のA-A線上の断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2実施形態を示す図であり、
図4(a)が伝熱部材の要部の平面図であり、
図4(b)が
図4(a)のB-B線上の断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第3実施形態を示す図であり、
図5(a)が伝熱部材の要部の平面図であり、
図5(b)が
図5(a)のC-C線上の断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第4実施形態を示す図であり、
図6(a)が伝熱部材の平面図であり、
図6(b)が
図6(a)のD-D線上の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
図1乃至
図3は、本発明の第1実施形態を示すものである。
図1は、伝熱部材を備えた冷却デバイスの内部の構造を表す全体斜視図であり、
図2(a)は、伝熱部材の平面図であり、
図2(b)は、
図2(a)のA-A線上の断面図であり、
図3は、伝熱部材の要部の断面図である。
【0018】
本発明の冷却デバイス1は、例えば、電子機器を構成する部品等、使用によって発熱する発熱体2を冷却するための沸騰冷却装置である。この冷却デバイス1は、発熱体2から放出された熱を、液相の第1作動流体F1(L)を気相の第1作動流体F1(g)に変化させるときの蒸発潜熱として吸収させることによって発熱体2を冷却する。冷却デバイス1は、気相の第1作動流体F1(g)の熱を、第2作動流体F2に放出させて気相の第1作動流体F1(g)を液相の第1作動流体F(L)に変化させることによって、発熱体2の冷却を継続的に行う。
【0019】
ここで、液相および気相の第1作動流体F1(L),F1(g)としては、例えば、水、アルコール、アンモニア、フルオロカーボン類、シクロペンタン、エチレングリコールおよびこれらの混合物が用いられる。また、第2作動流体F2としては、例えば、水、エチレングリコール等を含む不凍液が用いられる。ここで、第2作動流体F2は、気相の第1作動流体F1(g)を凝縮温度まで冷却することが可能な温度に保持されている。
【0020】
冷却デバイス1は、
図1に示すように、液相および気相の第1作動流体F1(L),F1(g)を収容するための容器10と、発熱体2から放出された熱を液相の第1作動流体F1(L)に伝えるための伝熱部材20と、気相の第1作動流体F1(g)を冷却して凝縮させる第2作動流体F2を流通させるための一対の凝縮管30と、を備えている。
【0021】
容器10は、下端部および上端部が閉塞された上下方向に延びる筒状の密閉容器である。容器10の内部空間Sには、常温(例えば20℃)の環境下において内部空間Sの上下方向の略中央部に液面が位置する程度の量の液相の第1作動流体F1(L)が収容されている。また、容器10の側壁11の上部側には、液相の第1作動流体F1(L)の液面よりも上方において、凝縮管30が貫通する貫通孔11aが形成されている。容器10の底板部12の下面には、発熱体2が取り付けられる。なお、蒸気を凝縮させるのは凝縮管30の外面のみならず、外面に放熱フィンの付いた空冷管の内面に蒸気を通し凝縮させてもよい。
【0022】
容器10は、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、鉄、鉄合金、マグネシウム、マグネシウム合金等の熱伝導性の高い材料によって形成されている。
【0023】
伝熱部材20は、
図1に示すように、容器10の底板部12の上面における発熱体2の取り付け位置に対応する位置に取り付けられており、常に液相の第1作動流体F1(L)の中に位置している。伝熱部材20は、
図2に示すように、板状に形成されており、下面側が発熱体2から放出された熱を吸収する吸熱面21となり、上面側が液相の第1作動流体F1(L)に熱を放出する放熱面22となる。放熱面22は、水平方向に拡がる平面である。
【0024】
また、伝熱部材20には、
図2および
図3に示すように、放熱面22に設けられた開口部23aから伝熱部材20の内部(吸熱面21側)に向かって延びる複数の孔23が形成されている。
【0025】
複数の孔23は、それぞれ、放熱面22側の端部が開放され、伝熱部材20の内部に向かって直線状に延びている。複数の孔23のうちの対をなす2つの孔23は、伝熱部材20の内部において互いに連通されている。互いに連通されている2つの孔23は、それぞれ、異なる方向に直線状に延びており、伝熱部材20側(吸熱面21側)の端部が互いに交差する位置において連通されている。ここで、孔23の開口部23aは、内径d1が例えば400μmの円形状である。また、互いに隣り合う孔23の開口部23aの中心部同士の距離s1は、例えば600μmである。さらに、孔23は、上下方向の高さh1が例えば800μmである。また、互いに連通されている2つの孔23の連通している部分は、上下方向の高さh2が、例えば孔23の上下方向の高さh1の少なくとも一割以上となるように形成される。
【0026】
伝熱部材20は、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、鉄、鉄合金、マグネシウム、マグネシウム合金等の熱伝導性の高い材料によって形成されている。
【0027】
ここで、伝熱部材20は、孔23をレーザ加工によって形成することによって製造される。
【0028】
一対の凝縮管30は、
図1に示すように、それぞれ、第2作動流体F2の流路が容器10内において水平方向に延びており、第2作動流体F2の流入側の端部と流出側の端部が貫通孔11aを介して容器10の側壁11の外面から突出している。一対の凝縮管30は、内部空間Sの液相の第1作動流体F1(L)の液面よりも上方において互いに上下に配置されている。一対の凝縮管30には、それぞれ、図示しないポンプが接続されており、ポンプによって圧送された第2作動流体F2が流通する。
【0029】
一対の凝縮管30は、それぞれ、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、鉄、鉄合金、マグネシウム、マグネシウム合金等の熱伝導性の高い材料によって形成されている。
【0030】
以上のように構成された冷却デバイス1において、発熱体2から放出された熱は、容器10の底板部12を介して吸熱面21から伝熱部材20に吸収される。伝熱部材20に吸収された熱は、放熱面22から液相の第1作動流体F1(L)に放出される。放熱面22の近傍の液相の第1作動流体F1(L)は、伝熱部材20の放熱面22から放出される熱を吸収して沸点に達すると核沸騰の状態となり、一部の液相の第1作動流体F1(L)が気相の第1作動流体F1(g)となる。伝熱部材20の放熱面22の近傍における気相の第1作動流体F1(g)は、上方に移動して容器10の内部空間Sの上部側に溜まることになる。内部空間Sの上部側に溜まった気相の第1作動流体F1(g)は、凝縮管30を介して第2作動流体F2と熱交換することによって熱を放出して凝縮し、液相の第1作動流体F1(L)となる。内部空間Sの上部側における液相の第1作動流体F1(L)は、下方に移動して内部空間Sの下部側に溜まることになる。
【0031】
ここで、伝熱部材20には、放熱面22に設けられた開口部23aから伝熱部材20の内部に向かって延びる複数の孔23が形成されており、孔23を有していない伝熱部材と比較して、伝熱部材20と液相の第1作動流体F1(L)との接触する面積が大きい。このため、発熱体2から放出されて伝熱部材20が吸収した熱は、放熱面22および複数の孔23の壁面を介して液相の第1作動流体F1(L)に放出され、伝熱部材20から液相の第1作動流体F1(L)への熱の伝達量を増加させることが可能となる。
【0032】
また、伝熱部材20には、複数の孔23のうちの対をなす2つの孔23が互いに連通されている。これにより、伝熱部材20の放熱面22の近傍の液相の第1作動流体F1(L)は、
図3に示すように、一方の孔23から流入して一部の液相の第1作動流体F1(L)が沸騰することによって気相の第1作動流体F1(g)に変化して他方の孔23から流出したり、他方の孔23から流入して一部の液相の第1作動流体F1(L)が沸騰することによって気相の第1作動流体F1(g)に変化して一方の孔23から流出したり、を交互に繰り返す。このため、伝熱部材20の放熱面22の近傍における液相および気相の第1作動流体F1(L),F1(g)は、攪拌されることになって伝熱部材20から液相の第1作動流体F1(L)に伝達される熱量をより増加させることができ、発熱体2と液相の第1作動流体F1(L)との間の熱交換効率が向上する。
【0033】
このように、本実施形態の伝熱部材20によれば、液相および気相の第1作動流体F1(L),F1(g)が収容された容器10の内側に設けられる伝熱部材20において、伝熱部材20は、液相の第1作動流体F1(L)に対して熱を放出する放熱面22を有し、伝熱部材20に、放熱面22に設けられた開口部23aから伝熱部材20の内部に向かって延びる複数の孔23が形成され、複数の孔23のうちの少なくとも2つの孔23は、伝熱部材20の内部において互いに連通されている。
【0034】
これにより、伝熱部材20の放熱面22の近傍の液相の第1作動流体F1(L)を、互いに連通された2つ以上の孔23に対して流通させることができるので、伝熱部材20の放熱面22の近傍において液相および気相の第1作動流体F1(L),F1(g)を攪拌させて液相および気相の第1作動流体F1(L),F1(g)の流通状態を良好な状態とすることができ、発熱体2と液相の第1作動流体(L)との間の熱交換効率の向上を図ることが可能となる。
【0035】
また、伝熱部材20は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、鉄、鉄合金、マグネシウムおよびマグネシウム合金からなる群から選択される1種以上の金属または合金によって構成されることが好ましい。
【0036】
これにより、伝熱部材20の熱伝導性を向上させることが可能となるので、発熱体2から放出された熱を液相の第1作動流体F1(L)に確実に伝達することが可能となり、発熱体2と液相の第1作動流体F1(L)との間の熱交換効率の向上を図ることが可能となる。
【0037】
また、伝熱部材20の製造方法では、孔23をレーザ加工によって形成することが好ましい。
【0038】
これにより、伝熱部材20に対して寸法精度の高い孔23を形成することが可能となる。
【0039】
また、本発明の冷却デバイス1は、伝熱部材20を備えていることが好ましい。
【0040】
これにより、伝熱部材20によって発熱体2と液相の第1作動流体F1(L)との間の熱交換効率の向上を図ることが可能となるので、冷却デバイス1の冷却性能を向上させることが可能となる。
【0041】
<第2実施形態>
図4は、本発明の第2実施形態を示すものであり、
図4(a)は、伝熱部材の要部の平面図であり、
図4(b)は、
図4(a)のB-B線上の断面図である。尚、前記第1実施形態と同様の構成部分には、同一の符号を付して示す。
【0042】
本実施形態の冷却デバイス1の伝熱部材20は、複数の孔23のうちの3つ以上の孔23が、伝熱部材20の内部(吸熱面21側)において、互いに連通されている。ここで、本実施形態の伝熱部材20は、
図4(a)に示すように、伝熱部材20の内部(吸熱面21側)において、3つの孔23が互いに連通している。ここで、孔23の開口部23aは、内径d2が例えば300μmの円形状である。また、互いに連通している孔23の開口部23aの中心部同士の距離s2は、例えば500μmである。さらに、互いに連通している孔23は、上下方向の高さh3が例えば500μmである。
【0043】
以上のように構成された冷却デバイス1において、伝熱部材20には、複数の孔23のうちの3つ以上の孔23が連通されている。これにより、伝熱部材20の放熱面22の近傍の液相の第1作動流体F1(L)は、3つ以上の孔23のうちの一部の孔23から流入して一部の液相の第1作動流体F1(L)が沸騰することによって気相の第1作動流体F1(g)に変化してその他の孔23から流出させたり、その他の孔23から流入して一部の液体の第1作動流体F1(L)が沸騰することによって気相の第1作動流体F(g)に変化して一部の孔23から流出させたりすることが可能となる。このため、伝熱部材20の放熱面22の近傍における液相および気相の第1作動流体F1(L),F1(g)をより円滑に流通させることが可能となるので、伝熱部材20から液相の第1作動流体F1(L)に伝達される熱量をより増加させることができ、発熱体2と液相の第1作動流体F1(L)との間の熱交換効率が向上する。
【0044】
このように、本実施形態の伝熱部材によれば、前記第1実施形態と同様に、伝熱部材20の放熱面22の近傍の液相の第1作動流体F1(L)を、互いに連通された2以上の孔23に対して流通させることができるので、伝熱部材20の放熱面22の近傍において液相および気相の第1作動流体F1(L),F1(g)を攪拌させて液相および気相の第1作動流体F1(L),F1(g)の流通状態を良好な状態とすることができ、発熱体2と液相の第1作動流体(L)との間の熱交換効率の向上を図ることが可能となる。
【0045】
また、複数の孔23のうちの3つ以上の孔23が伝熱部材20の内部において互いに連通している。
【0046】
これにより、伝熱部材20の放熱面22の近傍を流通する液相の第1作動流体F1(L)の状態に応じて、互いに連通された3つ以上の孔23に対して液相の第1作動流体F1(L)を流通させることが可能となるので、伝熱部材20の放熱面22の近傍において液相および気相の第1作動流体F1(L),F1(g)をより円滑に流通させることが可能となる。
【0047】
尚、前記第2実施形態では、
図4に示すように、3つの孔23を互いに連通するものを示したが、これに限られるものではない。4つ以上の孔を互いに連通するようにしても第2実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0048】
<第3実施形態>
図5は本発明の第3実施形態を示すものであり、
図5(a)は、伝熱部材の要部の平面図であり、
図5(b)は、
図5(a)のC-C線上の断面図である。尚、前記実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0049】
伝熱部材20は、互いに連通している少なくとも2つの孔231,232のうちの一部の孔231の内径d31,d311は、その他の孔232の内径d32,d321よりも小さいことが好ましい。
【0050】
また、孔232は、放熱面22における内径d32が、伝熱部材20の内部における孔232の内径d321よりも小さいことが好ましい。
【0051】
本実施形態の冷却デバイス1を構成する伝熱部材20は、互いに連通される2つの孔23のうちの一方の孔231の開口部231aの内径d31よりも他方の孔232の開口部232aの内径d32の方が大きく形成されている。また、一方の孔231の伝熱部材20の内部における内径d311よりも他方の孔232の伝熱部材20の内部における内径d321の方が大きく形成されている。さらに、孔231,232の開口部231a,232aの内径d31,d32は、伝熱部材20の内部における孔231,232の内径d311,d321よりも小さく形成されている。また、一方の孔231の上下方向の高さh31は、他方の孔232の上下方向の高さh32よりも小さく形成されている。また、一方の孔231の伝熱部材20の内部側(吸熱面21側)の端部は、他方の孔232の上下方向の中間部に連通されている。ここで、一方の孔231の開口部231aは、内径d31が例えば192μmの円形状である。他方の孔232の開口部232aは、内径d32が例えば400μmの円形状である。また、互いに隣り合う一方の孔231の開口部231aと他方の孔232の開口部232aとの中心部同士の距離s31は、例えば400μmである。また、互いに隣り合う一方の孔231の開口部231aの中心部同士、他方の孔232の開口部232aの中心部同士の距離s32は、例えば600μmである。また、一方の孔231の上下方向の高さh31は、例えば500μmである。他方の孔232の上下方向の高さh32は、例えば1000μmである。
【0052】
以上のように構成された冷却デバイス1において、伝熱部材20には、互いに連通されている2つの孔23のうちの一方の孔231が、一方の孔231の開口部231aよりも大きい開口部232aを有する他方の孔232に連通されている。これにより、伝熱部材20の放熱面22の近傍の液相の第1作動流体F1(L)は、一方の孔231から流入して一部の液相の第1作動流体F1(L)が沸騰することによって気相の第1作動流体F1(g)に変化して他方の孔232から流出する。また、他方の孔232の開口部232aの内径d32は、開口部232aよりも伝熱部材20の内部における孔232の内径d321よりも小さく形成されている。これにより、孔232において液相の第1作動流体F1(L)から変化した気相の第1作動流体(g)の微細な蒸気泡が孔232の開口部232aの近傍に残りやすくなるため、蒸気泡を起点とした核沸騰が促進され、発熱体2と液相の第1作動流体F1(L)との間の熱交換効率が向上する。
【0053】
このように、本実施形態の伝熱部材によれば、前記第1実施形態と同様に、伝熱部材20の放熱面22の近傍の液相の第1作動流体F1(L)を、互いに連通されている2つ以上の孔23に対して流通させることができるので、伝熱部材20の放熱面22の近傍において液相および気相の第1作動流体F1(L),F1(g)を攪拌させて液相および気相の第1作動流体F1(L),F1(g)の流通状態を良好な状態とすることができ、発熱体2と液相の第1作動流体F1(L)との間の熱交換効率の向上を図ることが可能となる。
【0054】
また、互いに連通されている少なくとも2つの孔231,232のうちの一部の孔231の内径d31,d311は、その他の孔232の内径d32,d321よりも小さい。
【0055】
これにより、伝熱部材20の放熱面22の近傍の液相の第1作動流体F1(L)が、一部の孔231の開口部231aから流入し、その他の孔232の開口部232aから流出することになり、伝熱部材20の放熱面22の近傍において液相および気相の第1作動流体F1(L),F1(g)を円滑に流通させることが可能となるので、発熱体2と液相の第1作動流体F1(L)との間の熱交換効率の向上を図ることが可能となる。
【0056】
また、孔232の開口部232aの内径d32は、伝熱部材20の内部(吸熱面21側)における孔232の内径d321よりも小さい。
【0057】
これにより、孔232において液相から変化した気相の第1作動流体F1(g)の微細な蒸気泡が孔232の開口部232aの近傍に残りやすくなり、蒸気泡を起点とした核沸騰が促進されるため、発熱体2と液相の第1作動流体F1(L)との間の熱交換効率を向上させることが可能となる。
【0058】
<第4実施形態>
図6は本発明の第4実施形態を示すものであり、
図6(a)は、伝熱部材の平面図であり、
図6(b)は、
図6(a)のD-D線上の断面図である。尚、前記実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0059】
本実施形態の冷却デバイス1を構成する伝熱部材20は、複数の凸部22aが形成された放熱面22を有していることが好ましい。また、互いに連通されている2つの孔23は、それぞれの開口部23aが、凸部22aの対向する側壁のそれぞれに配置されており、凸部22aの内部において互いに連通されていることが好ましい。
【0060】
凸部22aは、断面が三角形状を有し、伝熱部材20の上面に沿って直線状に延びる筋状に形成されている。複数の凸部22aは、凸部22aの延びる方向に対して直交する方向に配置されている。これにより、伝熱部材20は、複数の凸部22aのそれぞれの側壁が放熱面22となり、伝熱部材20と液相の第1作動流体F1(L)との接触面積が増大することになる。ここで、本実施形態において、吸熱面21から放熱面22の凸部22aの基端部までの高さt1は例えば1mmであり、凸部22aの基端部から先端部までの高さt2は、例えば1.5mmである。また、孔23の開口部23aの内径d4は、例えば150μmである。
【0061】
以上のように構成された冷却デバイス1において、伝熱部材20には、凸部22aに形成された複数の孔23のうちの一方の孔23が、他方の孔23に連通されている。これにより、伝熱部材20は、凸部22aの側壁に形成された放熱面22および複数の孔23の壁面を介して液相の第1作動流体F1(L)に熱を伝達する。また、伝熱部材20の放熱面22の近傍の液相の第1作動流体F1(L)は、一方の孔23の開口部23aから流入して一部の液相の第1作動流体F1(L)が沸騰することによって気相の第1作動流体F1(g)に変化して他方の孔23の開口部23aから流出したり、他方の孔23の開口部23aから流入して一部の液相の第1作動流体F1(L)が沸騰することによって気相の第1作動流体F1(g)に変化して一方の孔23の開口部23aから流出したり、を交互に繰り返す。このため、伝熱部材20の放熱面22の近傍における第1作動流体F1をより円滑に流通させることが可能となるので、伝熱部材20から液相の第1作動流体F1(L)への熱の伝達量をより増加させることができ、発熱体2と液相の第1作動流体F1(L)との間の熱交換効率が向上する。
【0062】
このように、本実施形態の伝熱部材によれば、前記第1実施形態と同様に、伝熱部材20の放熱面22の近傍の液相の第1作動流体F1(L)を、互いに連通された2つ以上の孔23に対して流通させることができるので、伝熱部材20の放熱面22の近傍において液相および気相の第1作動流体F1(L),F1(g)を攪拌させて液相および気相の第1作動流体F1(L),F1(g)の流通状態を良好な状態とすることができ、発熱体2と液相の第1作動流体F1(L)との間の熱交換効率の向上を図ることが可能となる。
【0063】
また、伝熱部材20の放熱面22には、複数の凸部22aが形成され、互いに連通されている少なくとも2つの孔は、それぞれの開口部23aが、凸部22aの対向する側壁のそれぞれに配置されている。
【0064】
これにより、伝熱部材20の放熱面22の近傍において、液相の第1作動流体F1(L)を、凸部22aを通過させる方向に流通させることが可能となり、放熱面22の近傍において、凸部22aによって液相の第1作動流体F1(L)の流通が妨げられることがなく、伝熱部材20の放熱面22の近傍において液相および気相の第1作動流体F1(L),F1(g)を攪拌させて液相および気相の第1作動流体F1(L),F1(g)の流通状態を良好な状態とすることが可能となる。
【0065】
尚、前記実施形態では、第2作動流体F2を流通させるための凝縮管30を備え、凝縮管30を流通する第2作動流体F2によって気相の第1作動流体F1(g)を液相の第1作動流体(L)とする冷却デバイス1を示したが、これに限られるものではない。冷却デバイスとしては、気相の第1作動流体F1(g)を液相の第1作動流体F1(L)とすることが可能であれば、冷凝縮管30を用いることなく、気相の第1作動流体F1(g)と大気とを熱交換する伝熱フィンを備え、気相の第1作動流体F1(g)から大気中に熱を放出させて液相の第1作動流体F1(L)とするものでもよい。
【0066】
また、前記実施形態では、伝熱部材20を容器10の底板部12の上面に取り付けるようにしたものを示したが、これに限られるものではない。例えば、伝熱部材は、容器10の底板部12に一体に形成してもよい。この場合、伝熱部材は、容器の底面部に対して、例えばレーザ加工を施すことによって底面部と一体に形成することが可能である。
【0067】
また、前記実施形態では、容器10の底板部12の下面に発熱体2を取り付けたものを示したが、底板部12の下面に対して直接的に発熱体2を取り付けるものに限られない。底板部12の下面に対する発熱体2の取り付け方としては、発熱体2から放出された熱が、底板部12を介して伝熱部材20に伝えられる構成であればよく、底板部12に対して他の部材を介して発熱体2を取り付けてもよい。
【0068】
また、前記実施形態では、伝熱部材20の孔23を、レーザ加工によって形成する方法を示したが、これに限られるものではない。孔23を形成する方法としては、切削加工、エッチンク加工を用いることが可能である。
【0069】
また、前記実施形態では、伝熱部材20の放熱面22を、水平方向に拡がる平面としたものを示したが、これに限られるものではない。例えば、伝熱部材の放熱面を、鉛直方向に拡がる平面とし、互いに連通する一方の孔および他方の孔を互いに上下に配置するようにしてもよい。この場合、第1作動流体は、下方に位置する孔から流入し、上方に位置する孔から流出する。
【0070】
また、前記実施形態では、互いに連通される一方の孔23および他方の孔23を、それぞれ互いに異なる方向に延びる直線状に形成し、伝熱部材20の内部側(吸熱面21側)の端部が互いに連通するものを示したが、これに限られるものではない。一方の孔および他方の孔が互いに連通されるものであれば、例えば、それぞれ放熱面に対して直交する方向に直線状に延びる一方の孔および他方の孔を、連通路によって互いに連通してもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 冷却デバイス
2 発熱体
10 容器
20 伝熱部材
22 放熱面
22a 凸部
23 孔
23a 開口部
231 孔
231a 開口部
232 孔
232a 開口部
F1(L) 液相の第1作動流体
F1(g) 気相の第1作動流体
F2 第2作動流体