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特許7444773半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープ及び半導体チップの製造方法並びにこのテープの使用方法
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  • 特許-半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープ及び半導体チップの製造方法並びにこのテープの使用方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープ及び半導体チップの製造方法並びにこのテープの使用方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20240228BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240228BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240228BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240228BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
H01L21/78 M
H01L21/304 631
H01L21/304 622J
H01L21/78 Q
C09J7/38
C09J201/00
C09J11/06
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020526660
(86)(22)【出願日】2020-01-24
(86)【国際出願番号】 JP2020002617
(87)【国際公開番号】W WO2020153499
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2022-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2019011418
(32)【優先日】2019-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(72)【発明者】
【氏名】五島 裕介
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 晃
(72)【発明者】
【氏名】西川 拓弥
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/142085(WO,A1)
【文献】特開2011-210944(JP,A)
【文献】特開2017-155074(JP,A)
【文献】特開2005-86074(JP,A)
【文献】特開2010-129607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/304
C09J 7/38
C09J 201/00
C09J 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、該基材フィルム上に設けられた紫外線硬化型の粘着剤層とを少なくとも有する半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープであって、
JIS Z 0237に基づくSUS304に対する90°引きはがし試験方法により測定される前記粘着テープの粘着力の値が、下記(1)及び(2)を共に満たすことを特徴とする、半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープ。
(1)[波長365nmのLEDランプを光源とする紫外線照射装置による積算光量500mJ/cmの紫外線照射後の粘着力]/[紫外線照射前の粘着力]≧0.50
(2)[高圧水銀ランプを光源とする紫外線照射装置による積算光量500mJ/cmの紫外線照射後の粘着力]/[紫外線照射前の粘着力]≦0.50
【請求項2】
前記[紫外線照射前の粘着力]が、1N/25mm~10N/25mmであることを特徴とする、請求項1に記載の半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープ。
【請求項3】
前記粘着剤層がベースポリマー成分と光重合開始剤とを含有し、該ベースポリマー成分100質量部に対する光重合開始剤の含有量が0.1~3.0質量部であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープ。
【請求項4】
前記ベースポリマー成分が側鎖に紫外線重合性炭素-炭素二重結合を有するポリマーであることを特徴とする、請求項3に記載の半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープ。
【請求項5】
前記粘着剤層が紫外線吸収剤を含有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープ。
【請求項6】
半導体ウェハをダイシングする工程において使用されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープ。
【請求項7】
下記工程(a)~(e)を含むことを特徴とする、半導体チップの製造方法。
〔工程〕
(a)表面にパターン面を有する半導体ウェハの該パターン面側に、紫外線硬化型表面保護テープを貼り合せた状態で、該半導体ウェハの裏面を研削する工程、
(b)前記の研削した半導体ウェハの裏面に請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープを貼り合わせ、リングフレームに支持固定する工程、
(c)前記表面保護テープ側から、第1の紫外線照射装置により紫外線照射を行った後、前記表面保護テープを剥離する工程、
(d)前記半導体ウェハのパターン面側からダイシング装置を用いて、半導体ウェハの切断を行い、個々のチップ単位に個片化する工程、および、
(e)前記粘着テープ側から、第2の紫外線照射装置により紫外線照射を行う工程。
【請求項8】
前記第1の紫外線照射装置が、波長365nmのLEDランプを光源とする紫外線照射装置であることを特徴とする、請求項7に記載の半導体チップの製造方法。
【請求項9】
前記第2の紫外線照射装置が、高圧水銀ランプを光源とする紫外線照射装置であることを特徴とする、請求項7または8に記載の半導体チップの製造方法。
【請求項10】
半導体ウェハの一方の面に紫外線硬化型表面保護テープが貼合され、該半導体ウェハのもう一方の面に請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープが貼合された半導体ウェハに対して、該紫外線硬化型表面保護テープ側から紫外線を照射する工程を含むことを特徴とする、半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープの使用方法。
【請求項11】
前記紫外線照射が波長365nmのLEDランプを光源とする紫外線照射であることを特徴とする、請求項10に記載の半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープの使用方法。
【請求項12】
前記の紫外線照射後の紫外線硬化型表面保護テープを前記半導体ウェハから剥離する工程を含むことを特徴とする、請求項10または11に記載の半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープの使用方法。
【請求項13】
前記の半導体ウェハから紫外線硬化型表面保護テープを剥離する工程の後、該半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープ側から紫外線を照射する工程を含むことを特徴とする、請求項12に記載の半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープの使用方法。
【請求項14】
前記の半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープ側からの紫外線照射が高圧水銀ランプを光源とする紫外線照射であることを特徴とする、請求項13に記載の半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープの使用方法。
【請求項15】
前記の、半導体ウェハの一方の面に紫外線硬化型表面保護テープが貼合され、該半導体ウェハのもう一方の面に請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープが貼合された半導体ウェハが、半導体ウェハの加工工程において生じるものである、請求項10~14のいずれか1項に記載の半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープ及び半導体チップの製造方法、並びに、このテープの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンに代表されるモバイル情報端末のさらなる高機能化及び小型化の要求に対応した高密度実装技術の重要性がますます高まっている。例えば、ICカードの普及やUSBメモリの急激な容量アップが進み、チップを重ねる枚数の増加に伴い、チップのさらなる薄型化が望まれている。このため、従来は厚さが200μm~350μm程度であった半導体チップを、厚さ50μm~100μmあるいはそれ以下まで薄くする必要が生じている。
他方で、一度の加工によって製造できる半導体チップの数を増やしてチップの製造効率を向上させる点から、半導体ウェハを大径化する傾向にある。半導体ウェハの薄膜化に加えて大径化の流れは、特に、NAND型やNOR型が存在するフラッシュメモリの分野や、揮発性メモリであるDRAMなどの分野で、顕著な傾向を示している。
現在では、12インチの半導体ウェハを厚さ100μm以下に薄膜研削することが標準となってきている。
【0003】
例えば、メモリ系デバイスは、半導体チップを重ねることにより性能を向上させているため、薄膜研削の必要性が非常に高い。チップの薄型化を達成する方法として、特殊な保護テープを用いて通常の工程で薄膜研削をする方法や、先ダイシングと呼ばれるウェハの表面側から所定深さの溝を形成した後、この裏面側から研削を行う半導体チップの製造方法が知られている。このような方法により、安価で高性能なフラッシュメモリなどを製造することが可能となってきている。
また、フリップチップ実装に用いられるバンプ付ウェハについても、薄膜化の要求が高まっている。このバンプ付ウェハは、その表面に大きな凹凸を有しているため薄膜加工が難しく、通常の保護テープを用いて裏面研削を行うとウェハ割れが生じたり、ウェハの厚み精度が悪化したりする。そのため、バンプ付ウェハの研削には特殊な表面保護テープが用いられている(引用文献1参照)。
【0004】
しかしながら、近年の半導体ウェハの更なる薄膜化の進展に伴い、薄膜研削後にウェハの反りが大きくなるという問題が生じている。ウェハの反りが大きいと研削後の搬送機構にてウェハの搬送を円滑にできず、ウェハの取り出し不可や搬送時の取り落としによる破損等が生じる可能性がある。
この、ウェハの反りは、上記表面保護テープとして紫外線硬化型の表面保護テープを用いた場合、特に大きくなる。紫外線硬化型のテープは、紫外線を照射することで表面保護テープ中の粘着剤が硬化反応により硬化収縮するため、非紫外線硬化型のテープに比べて反りが大きくなり、ウェハの破損リスクがより高くなる。
【0005】
従来のウェハの加工方法では、半導体ウェハに研削用の表面保護テープの貼付け後、所定の厚みへウェハを研削し、半導体ウェハへ表面保護テープ側から紫外線照射を行って表面保護テープの密着力を低下させ、その後半導体ウェハの裏面側へダイシングテープの貼付けを行った後、表面保護テープを剥離させる工程が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-235395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の従来工程では、表面保護テープに紫外線照射を行うとウェハの反りが大きくなり搬送不具合が生じてしまう。このため、ウェハの反りを抑制する点から、研削後に表面保護テープへの紫外線照射は行わず、ダイシングテープの貼付け後に表面保護テープ側への紫外線照射を行い、表面保護テープの密着性を低下させる方法が考えられる。
【0008】
しかしながら、ダイシングテープ貼付け後に表面保護テープへの紫外線照射を行うと、ダイシングテープの一部の面にも紫外線が照射されてしまう。特に、紫外線がウェハのエッジ部から裏面のダイシングテープ側に回り込んでしまい、紫外線硬化型のダイシングテープの場合、硬化反応によりウェハエッジ部近辺の粘着力が低下してしまうことになる。このため、その後の半導体ウェハの切断分離(ダイシング)工程として、ブレードによる切削加工を行うブレードダイシングを選択した場合、この粘着力が低下した部分のチップがダイシングした際に飛散する、「チップ飛び」が発生してしまう。チップ飛びの発生に伴い、チップ収率(チップの製造効率)の低下やブレードへ飛散したチップが衝突した場合にはブレードが破損するといった問題が生じる。
【0009】
上記問題を解消する点から、ダイシングテープには、表面保護テープ側からの紫外線照射時にはダイシングテープの粘着力が低下しない性質が求められる。上記性質を有するダイシングテープとして、紫外線硬化反応性を低下させたテープや非紫外線硬化型のテープを使用することにより、ダイシング時のチップ飛びを抑制可能である。一方、このようなダイシングテープを用いた場合には、切断分離されたチップを取り出すピックアップ工程において、ダイシングテープからチップを剥離することが困難となり、「チップのピックアップ性」が不十分となる。
【0010】
本発明は、半導体ウェハの加工工程に用いた際に、表面保護テープへの紫外線照射に伴う薄膜ウェハの反りを抑制することができ、しかも、ダイシング時におけるチップ飛びの抑制とその後の優れたピックアップ性とを両立可能な半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープを提供することを課題とする。また、本発明は、表面保護テープへの紫外線照射に伴う薄膜ウェハの反りを抑制することができ、しかも、ダイシング時におけるチップ飛びの抑制とその後の優れたピックアップ性とを両立可能な半導体チップの製造方法を提供する。また、半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープの粘着力の低下を抑制しながら、紫外線硬化型表面保護テープを硬化させ、粘着力を十分に低下させることができる、半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープの使用方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記課題は、以下の手段によって達成された。
<1>
基材フィルムと、該基材フィルム上に設けられた紫外線硬化型の粘着剤層とを少なくとも有する半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープであって、
JIS Z 0237に基づくSUS304に対する90°引きはがし試験方法により測定される前記粘着テープの粘着力の値が、下記(1)及び(2)を共に満たすことを特徴とする、半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープ。
(1)[波長365nmのLEDランプを光源とする紫外線照射装置による積算光量500mJ/cmの紫外線照射後の粘着力]/[紫外線照射前の粘着力]≧0.50
(2)[高圧水銀ランプを光源とする紫外線照射装置による積算光量500mJ/cmの紫外線照射後の粘着力]/[紫外線照射前の粘着力]≦0.50
<2>
前記[紫外線照射前の粘着力]が、1N/25mm~10N/25mmであることを特徴とする、<1>に記載の半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープ。
<3>
前記粘着剤層がベースポリマー成分と光重合開始剤とを含有し、該ベースポリマー成分100質量部に対する光重合開始剤の含有量が0.1~3.0質量部であることを特徴とする、<1>又は<2>に記載の半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープ。
<4>
前記ベースポリマーが側鎖に紫外線重合性炭素-炭素二重結合を有するポリマーであることを特徴とする、<1>~<3>のいずれか1つに記載の半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープ。
<5>
前記粘着剤層が紫外線吸収剤を含有することを特徴とする、<1>~<4>のいずれか1つに記載の半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープ。
<6>
半導体ウェハをダイシングする工程において使用されることを特徴とする、<1>~<5>のいずれか1つに記載の半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープ。
<7>
下記工程(a)~(e)を含むことを特徴とする、半導体チップの製造方法。
〔工程〕
(a)表面にパターン面を有する半導体ウェハの該パターン面側に、紫外線硬化型表面保護テープを貼り合せた状態で、該半導体ウェハの裏面を研削する工程、
(b)前記の研削した半導体ウェハの裏面に<1>~<6>のいずれか1つに記載の半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープを貼り合わせ、リングフレームに支持固定する工程、
(c)前記表面保護テープ側から、第1の紫外線照射装置により紫外線照射を行った後、前記表面保護テープを剥離する工程、
(d)前記半導体ウェハのパターン面側からダイシング装置を用いて、半導体ウェハの切断を行い、個々のチップ単位に個片化する工程、および、
(e)前記粘着テープ側から、第2の紫外線照射装置により紫外線照射を行う工程。
<8>
前記第1の紫外線照射装置が、波長365nmのLEDランプを光源とする紫外線照射装置であることを特徴とする、<7>に記載の半導体チップの製造方法。
<9>
前記第2の紫外線照射装置が、高圧水銀ランプを光源とする紫外線照射装置であることを特徴とする、<7>または<8>に記載の半導体チップの製造方法。
<10>
半導体ウェハの一方の面に紫外線硬化型表面保護テープが貼合され、該半導体ウェハのもう一方の面に<1>~<6>のいずれか1つに記載の半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープが貼合された半導体ウェハに対して、該紫外線硬化型表面保護テープ側から紫外線を照射する工程を含むことを特徴とする、半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープの使用方法。
<11>
前記の紫外線照射が波長365nmのLEDランプを光源とする紫外線照射であることを特徴とする、<10>に記載の半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープの使用方法。
<12>
前記の紫外線照射後の紫外線硬化型表面保護テープを前記半導体ウェハから剥離する工程を含むことを特徴とする、<10>または<11>に記載の半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープの使用方法。
<13>
前記の半導体ウェハから紫外線硬化型表面保護テープを剥離する工程の後、該半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープ側から紫外線を照射する工程を含むことを特徴とする、<12>に記載の半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープの使用方法
<14>
前記の半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープ側からの紫外線照射が高圧水銀ランプを光源とする紫外線照射であることを特徴とする、<13>に記載の半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープの使用方法。
<15>
前記の、半導体ウェハの一方の面に紫外線硬化型表面保護テープが貼合され、該半導体ウェハのもう一方の面に<1>~<6>のいずれか1つに記載の半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープが貼合された半導体ウェハが、半導体ウェハの加工工程において生じるものである、<10>~<14>のいずれか1つに記載の半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープの使用方法。
【0012】
本発明において単に「(メタ)アクリル」という場合、アクリル及びメタクリルのいずれか又は両方を意味する。したがって、(メタ)アクリルポリマーという場合、アクリロイル基を有する1種又は2種以上のモノマーの重合体、メタクリロイル基を有する1種又は2種以上のモノマーの重合体、及び、アクリロイル基を有する1種又は2種以上のモノマーとメタクリロイル基を有する1種又は2種以上のモノマーとの重合体を含む意味である。
また、本発明において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープは、半導体ウェハの加工工程に用いた際に、表面保護テープへの紫外線照射に伴う薄膜ウェハの反りを抑制することができ、しかも、ダイシング時におけるチップ飛びの抑制とその後の優れたピックアップ性とを両立することができる。また、本発明の半導体チップの製造方法は、表面保護テープへの紫外線照射に伴う薄膜ウェハの反りを抑制することができ、しかも、ダイシング時におけるチップ飛びの抑制とその後のピックアップ性とを両立することができる。また、本発明の半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープの使用方法は、本発明の半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープの粘着力の低下を抑制しながら、紫外線硬化型表面保護テープを硬化させ、粘着力を十分に低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】半導体ウェハへの表面保護テープの貼合工程を説明する概略断面図である。図1において、分図1(A)は半導体ウェハの表面に表面保護テープを貼合する様子を示し、分図1(B)は表面保護テープを貼合した半導体ウェハを示す。
図2】半導体ウェハの薄膜化と固定までの工程を説明する概略断面図である。図2において、分図2(A)は半導体ウェハの裏面研削による薄膜化処理を示し、分図2(B)は薄膜化処理した半導体ウェハに本発明の半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープを貼合する様子を示し、分図2(C)は半導体ウェハをリングフレームに固定した状態を示す。
図3】表面保護テープへのLEDランプを光源とする第1の紫外線照射装置による紫外線照射と表面保護テープの剥離までの工程を説明する概略断面図である。図3において、分図3(A)は半導体ウェハの表面に表面保護テープを貼合し、半導体ウェハの裏面に本発明の半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープを貼合した状態を示し、分図3(B)は表面保護テープを貼合した面側からLEDランプを光源とする紫外線が照射される様子を示し、分図3(C)は表面保護テープを引き剥がす様子を示す。
図4】本発明の半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープへの高圧水銀ランプを光源とする第2の紫外線照射装置による紫外線照射とダイシングまでの工程を説明する概略断面図である。図4において、分図4(A)は、半導体ウェハから表面保護テープを引き剥がした後の状態を示し、分図4(B)はダイシングブレードにより個々のチップに分割して個片化する工程を示し、分図4(C)は、本発明の半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープを貼合した面側から高圧水銀ランプを光源とする第2の紫外線照射装置により紫外線が照射される様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
[半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープ]
本発明の半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープ(以下、「本発明の粘着テープ」とも称す。)2は、基材フィルム3及び基材フィルム3上に設けられた紫外線硬化型の粘着剤層4を少なくとも有するテープである。また、粘着剤層4の上には、必要に応じて設けられる剥離ライナー(セパレータとも称される)が形成されていてもよい。なお、本発明の粘着テープ2の使用時には、上記剥離ライナーを剥がして粘着剤層4を剥き出しにして、用いる。
【0017】
(本発明の粘着テープの粘着力)
本発明の粘着テープ2は、JIS Z 0237に基づくSUS304(ステンレス鋼)に対する90°引きはがし試験方法により測定される粘着力の値が、下記(1)及び(2)を共に満たす粘着テープである。
(1)[波長365nmのLEDランプを光源とする紫外線照射装置による積算光量500mJ/cmの紫外線照射後の粘着力]/[紫外線照射前の粘着力](以下、「ALED/A」とも略す。)≧0.50
(2)[高圧水銀ランプを光源とする紫外線照射装置による積算光量500mJ/cmの紫外線照射後の粘着力]/[紫外線照射前の粘着力](以下、「AHPM/A」とも略す。)≦0.50
上記において、[紫外線照射前の粘着力]とは、本発明の粘着テープを作製後、未使用の状態での粘着力を意味する。なお、長期保管等により経時した本発明の粘着テープについては、遮光等により紫外線硬化が生じない状況で保管した状態での粘着力を意味する。
また、[紫外線照射後の粘着力]とは、上記未使用の状態の本発明の粘着テープに対して、各光源ランプを用いた紫外線照射装置により積算光量500mJ/cmの紫外線を照射した後の粘着力を意味する。
上記粘着力の具体的な測定方法は、実施例の項に記載の通りである。
【0018】
上記[紫外線照射前の粘着力](A)は、紫外線照射前の本発明の粘着テープが半導体ウェハと十分な密着性を有する点から、1N/25mm~10N/25mmであることが好ましく、1N/25mm~5N/25mmであることがより好ましい。
上記(1)におけるALED/Aは、0.60以上が好ましく、0.70以上がより好ましい。なお、上記(1)におけるALED/Aの上限値は特に制限はないが、1.30以下が好ましく、1.20以下がより好ましく、1.10以下がさらに好ましく、1.00以下が特に好ましい。
上記(2)におけるAHPM/Aは、0.40以下が好ましく、0.30以下がより好ましく、0.20以下がさらに好ましい。なお、上記(2)におけるAHPM/Aの下限値は特に制限はないが、0.05以上が好ましく、0.10以上がより好ましい。
なお、[高圧水銀ランプを光源とする紫外線照射装置による積算光量500mJ/cmの紫外線照射後の粘着力]に対する[波長365nmのLEDランプを光源とする紫外線照射装置による積算光量500mJ/cmの紫外線照射後の粘着力]の比(以下、「ALED/AHPM」とも略す。)は、0.2~200であることが好ましく、2.0~100であることがより好ましい。
【0019】
本発明の粘着テープ2は、紫外線照射前後での粘着力の値の比であるALED/A及びAHPM/Aが共に上記(1)及び(2)を満たすことにより、波長365nmのLEDランプ(本明細書中において、単に「LEDランプ」とも称す。)を光源とする紫外線照射では粘着力の低下を抑えることができ、高圧水銀ランプを光源とする紫外線照射により粘着力を十分に低下させることができる。
このため、本発明の粘着テープ2は、半導体ウェハの加工工程においてダイシングテープとして用いた場合には、表面保護テープへの紫外線照射の光源としてLEDランプを用いることにより、表面保護テープへの紫外線照射では粘着力の低下を抑えることができ、LEDランプの紫外線が本発明の粘着テープ2(ダイシングテープ)に回り込んでも、ダイシング時におけるチップ飛びを抑制することができる。また、本発明の粘着テープ2は、光源として高圧水銀ランプを用いる紫外線照射により、本発明の粘着テープ2の粘着力を十分に低下させることができ、優れたピックアップ性を示すことができる。
【0020】
(基材フィルム)
本発明における基材フィルム3は、特に制限されるものでなく、公知のプラスチックなどの樹脂を用いることができる。半導体ウェハのダイシング用途のテープ(以下、「ダイシングテープ」と称す。)を構成する基材フィルムとしては、通常、熱可塑性のプラスチックフィルムが用いられる。
基材フィルム3を構成する樹脂(材料)として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体およびポリブテン等のポリオレフィン、スチレン-水添イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体、スチレン-水添ブタジエン-スチレン共重合体およびスチレン-水添イソプレン/ブタジエン-スチレン共重合体等の熱可塑性エラストマー、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体およびエチレン-(メタ)アクリル酸金属塩系アイオノマー等のエチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネートおよびポリメタクリル酸メチル等のエンジニアリングプラスチック、軟質ポリ塩化ビニル、半硬質ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、天然ゴムならびに合成ゴム等の高分子材料が好ましい。
上記エチレン共重合体において、樹脂の構成単位である、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリル酸金属塩は、エチレン共重合体中に1種含まれていてもよく2種以上含まれていてもよい。また、エチレン-(メタ)アクリル酸金属塩系アイオノマーにおける金属塩は、2価以上の金属塩が好ましく、例えば、Zn2+の金属塩が挙げられる。
基材フィルム3を構成する樹脂として、1種又は2種以上の樹脂を用いることができる。
基材フィルム3は、単層構造であってもよく、二層以上の層が積層した複層体であってもよい。
基材フィルム3を構成する樹脂は、粘着剤層4との接着性に応じて適宜に選択することができる。
【0021】
基材フィルム3は、市販のものを用いてもよいし、キャスト法、Tダイ法、インフレーション法及びカレンダー法等の常法により製膜したフィルムを用いてもよい。
基材フィルム3の厚さは、特に限定されるものではなく、通常のダイシングテープにおける基材フィルムの厚さに設定することができる。通常、30~200μmが好ましく、より好ましくは50~150μmである。
【0022】
基材フィルム3の粘着剤層4に接する面には、密着性を向上させるために、コロナ処理及びプライマー処理等のいずれかの表面処理を施してもよい。
【0023】
<粘着剤層>
粘着剤層4を構成する粘着剤は、上記で(1)及び(2)で規定する紫外線照射前後での粘着力の比を満たすことができる紫外線硬化型粘着剤(以下、単に「粘着剤」とも称す。)である限り、特に限定されることはない。
具体的には、上記紫外線硬化型粘着剤を含有する粘着剤層4は、波長365nmのLEDランプを光源とする紫外線照射では硬化があまり進行せず、この紫外線照射によっては粘着力が低下しにくい。他方、高圧水銀ランプを光源とする紫外線照射により硬化が進行し、粘着力を十分に低下させることができ、半導体ウェハ(半導体チップ)から剥離しやすくなる。すなわち、高圧水銀ランプを光源に用いると、254nm、313nm、365nm、405nm及び436nm等の波長を含む波長分布の広い光を照射することができるため、波長365nmのLEDランプを光源に用いた場合に比べて、硬化反応をより効率化できる。本発明において、粘着剤層4は、照射する紫外線の波長域(波長分布)によって硬化反応性が異なる紫外線硬化型の層である。
【0024】
上記粘着剤に含まれるポリマー(本明細書中において、「ベースポリマー」とも称す。)としては、(メタ)アクリルポリマーが好ましい。
粘着剤層4中に含まれるベースポリマーの含有量は、50~95質量%が好ましく、70~95質量%がより好ましい。
【0025】
(紫外線硬化型粘着剤)
上記紫外線硬化型粘着剤は、上述の通り、照射する紫外線の波長域によって硬化反応性が異なる粘着剤であればよい。ここで、高圧水銀ランプを光源とする紫外線照射による硬化は、三次元網状化する性質を利用するものであればよく、大きく分けて、1)側鎖に紫外線重合性炭素-炭素二重結合(エチレン性二重結合)を有するベースポリマーを含有する粘着剤と、2)通常のゴム系あるいは(メタ)アクリル系の感圧性ベースポリマーに対して、分子中に少なくとも2個の紫外線重合性炭素-炭素二重結合(エチレン性二重結合)を有する低分子量化合物(以下、紫外線重合性低分子量化合物という)を含有する粘着剤に分類される。
【0026】
本発明の粘着テープ2が低分子量化合物(分子量が約1000以下)を含有すると、粘着テープを半導体ウェハに貼付した後、紫外線照射やピックアップを行うまでの期間が長いと、低分子量化合物が粘着テープと半導体ウェハ又は半導体チップとの界面に移行することにより、密着性が上昇し、ピックアップ時の粘着テープと半導体チップとの間での剥離が重くなる現象が見られる場合がある。このため、上記紫外線硬化型粘着剤は、上記1)の側鎖に紫外線重合性炭素-炭素二重結合(エチレン性二重結合)を有するベースポリマーを含有する粘着剤が好ましい。この1)の粘着剤は、低分子量化合物を含有していてもよいが、上記剥離が重くなる現象が見られない程度の含有量であることがより好ましい。なお、後述する光重合開始剤及び硬化剤を含有することを制限するものではない。
【0027】
(側鎖に紫外線重合性炭素-炭素二重結合を有するベースポリマーからなる粘着剤)
粘着剤層4を構成する粘着剤が、側鎖に紫外線重合性炭素-炭素二重結合を有するベースポリマーを含有する場合、粘着剤層4は、側鎖に紫外線重合性炭素-炭素二重結合を有する(メタ)アクリルポリマーを含むことが好ましい。粘着剤層4中の側鎖に紫外線重合性炭素-炭素二重結合を有する(メタ)アクリルポリマーの含有量は、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
上記(メタ)アクリルポリマーは、上記側鎖に有する紫外線重合性炭素-炭素二重結合(エチレン性二重結合)の他に、エポキシ基やカルボキシ基などの官能基を有してもよい。
【0028】
側鎖に紫外線重合性炭素-炭素二重結合を有する(メタ)アクリルポリマーとしては、ポリマーの構成単位の少なくとも1種がエチレン性炭素-炭素二重結合を有する(メタ)アクリルポリマーが好ましい。上記(メタ)アクリルポリマーは、どのようにして製造されたものでもよく、常法により製造することができる。例えば、側鎖に官能基(α)を有する(メタ)アクリルポリマーと、(メタ)アクリルロイル基などの紫外線重合性炭素-炭素二重結合を有し、かつ、この(メタ)アクリルポリマーの側鎖の官能基(α)と反応し得る官能基(β)をもつ化合物とを反応させて得たものが好ましい。
紫外線重合性炭素-炭素二重結合を有する基は、非芳香族性のエチレン性二重結合を有すればどのような基でも構わないが、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、アリル基、1-プロペニル基、ビニル基(スチレンもしくは置換スチレンを含む)が好ましく、(メタ)アクリロイル基又は(メタ)アクリロイルオキシ基がより好ましい。
官能基(α)、(β)としては、カルボキシ基、水酸基、アミノ基、メルカプト基、環状酸無水基、エポキシ基、イソシアネート基(-N=C=O)等が挙げられる。
【0029】
ここで、官能基(α)と官能基(β)のうちの一方の官能基が、カルボキシ基、水酸基、アミノ基、メルカプト基、または環状酸無水基である場合には、他方の官能基は、エポキシ基、イソシアネート基が挙げられ、一方の官能基が環状酸無水基の場合、他方の官能基はカルボキシ基、水酸基、アミノ基、メルカプト基が挙げられる。なお、一方の官能基が、エポキシ基である場合は、他方の官能基はエポキシ基であってもよい。
【0030】
官能基(α)としては、カルボキシ基又は水酸基が好ましく、水酸基が特に好ましい。
側鎖に官能基(α)を有する(メタ)アクリルポリマーは、官能基(α)を有する(メタ)アクリルモノマー、好ましくは(メタ)アクリル酸エステル〔(特に、アルコール部に官能基(α)を有するもの〕をモノマー成分に使用することで得ることができる。
側鎖に官能基(α)を有する(メタ)アクリルポリマーは、共重合体が好ましい。この場合、側鎖に官能基(α)を有する(メタ)アクリルモノマーとの共重合成分は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、なかでもアルコール部に官能基(α)や紫外線重合性炭素-炭素二重結合を有する基が置換していない(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。
【0031】
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ペンチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、デシルアクリレートヘキシルアクリレート、およびこれらに対応するメタクリレートが挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルは1種でも2種以上でも構わないが、アルコール部の炭素数が5以下のものと炭素数が6~12のものを併用することが好ましい。
【0032】
なお、アルコール部の炭素数の大きなモノマーを使用するほどガラス転移点(Tg)は低くなるので、所望のガラス転移点のものを得ることができる。また、ガラス転移点の他、相溶性と各種性能を上げる目的で酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリルなどの炭素-炭素二重結合をもつ低分子化合物を配合することも好ましく、この場合、これらのモノマー成分の含有量は5質量%以下の範囲内が好ましい。
【0033】
官能基(α)を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、けい皮酸、イタコン酸、フマル酸、フタル酸、2-ヒドロキシアルキルアクリレート類、2-ヒドロキシアルキルメタクリレート類、グリコールモノアクリレート類、グリコールモノメタクリレート類、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、アリルアルコール、N-アルキルアミノエチルアクリレート類、N-アルキルアミノエチルメタクリレート類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フマル酸、無水フタル酸、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の一部を水酸基またはカルボキシ基および紫外線重合性炭素-炭素二重結合を有する単量体でウレタン化したものなどが挙げられる。
【0034】
これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、2-ヒドロキシアルキルアクリレート類、2-ヒドロキシアルキルメタクリレート類、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートが好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、2-ヒドロキシアルキルアクリレート類又は2-ヒドロキシアルキルメタクリレート類がより好ましく、2-ヒドロキシアルキルアクリレート類又は2-ヒドロキシアルキルメタクリレート類がさらに好ましい。
【0035】
紫外線重合性炭素-炭素二重結合と官能基(β)を有する化合物における官能基(β)としては、イソシアネート基が好ましく、例えば、アルコール部にイソシアネート(-N=C=O)基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられ、なかでもイソシアネート(-N=C=O)基で置換された(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。このようなモノマーとしては、例えば、2-イソシアナトエチルメタクリレート、2-イソシアナトエチルアクリレート等が挙げられる。
また、官能基(β)がイソシアネート基以外の場合の好ましい化合物は、官能基(α)を有する(メタ)アクリルモノマーで例示した化合物が挙げられる。
【0036】
紫外線重合性炭素-炭素二重結合と官能基(β)を有する化合物と、側鎖に官能基(α)を有する(メタ)アクリルポリマーとを反応させることにより、ポリマーに紫外線重合性炭素-炭素二重結合を組み込むことができ、紫外線硬化型の粘着剤層を形成することができる。
【0037】
(メタ)アクリルポリマーの合成において、反応を溶液重合で行う場合の有機溶剤としては、ケトン系、エステル系、アルコール系、芳香族系のものを使用することができるが、中でもトルエン、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、ベンゼンメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、アセトン、メチルエチルケトンなどの、一般に(メタ)アクリルポリマーの良溶媒で、沸点60~120℃の溶剤が好ましい。重合開始剤としては、α,α’-アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾビス系、ベンゾイルペルオキシドなどの有機過酸化物系などのラジカル発生剤を通常用いる。この際、必要に応じて触媒、重合禁止剤を併用することができ、重合温度および重合時間を調節することにより、所望の分子量の(メタ)アクリルポリマーを得ることができる。また、分子量を調節することに関しては、メルカプタン、四塩化炭素等の溶剤を用いることが好ましい。なお、この反応は溶液重合に限定されるものではなく、塊状重合、懸濁重合など別の方法でもさしつかえない。
【0038】
側鎖に紫外線重合性炭素-炭素二重結合を有するベースポリマー〔好ましくは(メタ)アクリルポリマー〕の質量平均分子量(Mw)は、20万~100万程度が好ましい。
質量平均分子量が100万以下であると、紫外線を照射した場合に、紫外線照射後も粘着剤層4が脆くならずに可撓性を有するため、剥離時に半導体チップ面に糊残りを生じにくい。また、質量平均分子量が20万以上であると、紫外線照射前の凝集力が小さすぎず、十分な粘着力を有するため、ダイシング時に十分に半導体チップを保持することができ、チップ飛びが生じにくい。また、紫外線照射後の硬化が十分で、剥離時に半導体チップ面に糊残りを生じにくい。本発明における質量平均分子量とは、ポリスチレン換算の質量平均分子量である。
【0039】
側鎖に紫外線重合性炭素-炭素二重結合を有するベースポリマー中への紫外線重合性炭素-炭素二重結合の導入量は、0.8~1.8meq/gが好ましく、0.8~1.5meq/gがより好ましい。紫外線重合性炭素-炭素二重結合の導入量が上記範囲内であると、高圧水銀ランプを光源とする紫外線照射により硬化反応が十分に進み、しかも、十分な流動性を有するため、糊残りが低減される。
【0040】
側鎖に紫外線重合性炭素-炭素二重結合を有するベースポリマーのガラス転移点は、-70~-35℃が好ましく、-70~-40℃がより好ましい。ガラス転移点が上記下限値以上であると、粘着剤の流動性が高すぎず糊残りを抑制することができ、上記上限値以下であると、半導体ウェハの裏面になじむ十分な流動性を有し、本発明の粘着テープをエキスパンドする場合にも、半導体ウェハからの剥がれを抑制することができる。
粘着剤層4に用いるベースポリマーのガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)により、昇温速度0.1℃/分の条件で測定される値である。示差走査熱量計としては、例えば、島津製作所社製のDSC-60(商品名)が挙げられる。本発明においてガラス転移温度は、JIS K 7121「プラスチックの転移温度測定方法」の、補外ガラス転移開始温度である。
【0041】
側鎖に紫外線重合性炭素-炭素二重結合を有するベースポリマーの酸価〔ベースポリマー1g中に存在する遊離脂肪酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数〕は、0.5~30が好ましく、1~20がより好ましい。
側鎖に紫外線重合性炭素-炭素二重結合を有するベースポリマーの水酸基価〔ベースポリマー1gをアセチル化させたとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数〕は、5~100が好ましく、10~80がより好ましい。
このようにすることで、さらに本発明の粘着テープ剥離時の糊残り防止効果に優れる。
【0042】
なお、酸価や水酸基価の調製は、側鎖に官能基(α)を有する(メタ)アクリルポリマーと、紫外線重合性炭素-炭素二重結合を有し、かつ、この(メタ)アクリルポリマーの側鎖の官能基(α)と反応し得る官能基(β)をもつ化合物とを反応させる段階で、未反応の官能基を残すことにより所望のものに調製することができる。
【0043】
(硬化剤)
側鎖に紫外線重合性炭素-炭素二重結合を有するベースポリマーを含有する粘着剤は、硬化剤を含有することが好ましい。硬化剤は、ベースポリマーが有する官能基と反応して粘着力及び凝集力を調整するために用いられる。
上記硬化剤としては、好ましくは、ポリイソシアネート類、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂およびエポキシ樹脂が挙げられる。このなかでも、本発明では、ポリイソシアネート類がより好ましい。
【0044】
ポリイソシアネート類としては、特に制限がなく、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’-〔2,2-ビス(4-フェノキシフェニル)プロパン〕ジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等が挙げられる。具体的には、コロネートL(日本ポリウレタン株式会社製、商品名)等を用いることができる。
【0045】
メラミン・ホルムアルデヒド樹脂としては、具体的には、ニカラックMX-45(三和ケミカル株式会社製、商品名)、メラン(日立化成工業株式会社製、商品名)等を用いることができる。
【0046】
エポキシ樹脂としては、TETRAD-X(三菱化学株式会社製、商品名)等を用いることができる。
【0047】
粘着剤を塗布後に、硬化剤により、ベースポリマーが架橋構造を形成することで、粘着剤の凝集力を向上させることができる。
上記の硬化剤は、未使用の粘着テープの粘着剤層4中において、すでにベースポリマーと反応した状態にある。なお、本発明において「ベースポリマー成分」という場合、硬化剤成分を含まない。すなわち、ベースポリマーと硬化剤とが反応した状態においては、硬化剤成分を除いた構造部をベースポリマー成分と称す。
ただし、粘着剤層4中に含有される全ての硬化剤が反応していても、その一部が反応していてもよい。
【0048】
粘着剤層4中において、硬化剤成分の含有量は、ベースポリマー成分100質量部に対して0.1~10質量部が好ましく、1~10質量部がより好ましい。
硬化剤成分の含有量が上記下限値以上であると、凝集力向上効果が十分となり、粘着剤の糊残りが抑制される。また粘着剤層と被着体面がずれにくく、エキスパンド時の剥がれが抑制される。硬化剤の配合量が上記上限値以下であると。粘着剤の配合および塗布作業中に架橋構造が急速に形成されることなく硬化反応が進行するため、作業性に優れる。また、粘着剤の柔軟性が損なわれず、エキスパンド時の剥がれが抑制される。
【0049】
粘着剤のベースポリマーに凝集力を付加するために、上述するポリイソシアネート類、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂およびエポキシ樹脂以外に、架橋剤を配合することができる。架橋剤としては、ベースポリマーに対応して、例えば、金属キレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン樹脂が挙げられる。さらに粘着剤には、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、各種添加成分を含有させることができる。
【0050】
(光重合開始剤)
側鎖に紫外線重合性炭素-炭素二重結合を有するベースポリマーを紫外線照射によって硬化させる場合には、粘着剤中に光重合開始剤を配合することが好ましい。
上記光重合開始剤としては、特に制限はなく、通常用いられる光重合開始剤を広く用いることができる。例えば、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシメチルフェニルプロパン等を使用することができる。
本発明の粘着テープ2に、所定の波長域に対する反応性差を持たせるため、粘着剤層4中において、光重合開始剤の含有量は、ベースポリマー成分100質量部に対して、0.1~3.0質量部が好ましく、0.1~1.5質量部がより好ましく、0.1~1.0質量部がさらに好ましい。光重合開始剤の含有量が上記上限値以下であると、波長365nmのLEDランプを光源とする紫外線照射による硬化反応性と高圧水銀ランプを光源とする紫外線照射による硬化反応性との間に、所望の差を持たせることができる。光重合開始剤の含有量が上記下限値以上であると、高圧水銀ランプを光源とする紫外線の照射時に硬化反応が十分に進行して硬化され、本発明の粘着テープ2と被着体との剥離性をより向上させることができる。
【0051】
(紫外線吸収剤)
本発明の粘着テープ2に、所定の波長域の吸収性を高め、所定の光源を用いた際の硬化反応性を制御する点から、粘着剤に紫外線吸収剤を添加してもよい。
【0052】
上記紫外線吸収剤として、トリアジン骨格、ベンゾフェノン骨格、ベンゾトリアゾール骨格またはベンゾエート骨格を有する紫外線吸収剤のうち少なくとも1種を含有することが好ましい。
上記トリアジン骨格を有する化合物として、例えば、2,4-ビス[2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-(2-ヒドロキシ-4-n-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジンが挙げられる。
【0053】
上記ベンゾフェノン骨格を有する化合物として、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクチロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノンが挙げられる。
【0054】
上記ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物として、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノールが挙げられる。
【0055】
上記ベンゾエート骨格を有する化合物として、例えば、2,4-ジ-t-ブチルフェニル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、2,4-ジ-t-ブチルフェニル-4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルベンゾエートが挙げられる。
【0056】
上記紫外線吸収剤は、市販されているものを使用してもよく、例えば、いずれも商品名で、株式会社ADEKA製のアデカスタブLAシリーズ(LA-24、LA-29、LA-31、LA-32、LA-36、LA-F70、1413)、BASF社製のTINUVIN P、TINUVIN 234、TINUVIN 326、TINUVIN 329、TINUVIN 213、TINUVIN 571、TINUVIN 1577ED、CHIMASSORB 81、TINUVIN 120などが挙げられる。
【0057】
紫外線吸収剤は1種類でも2種以上併用してもよい。
紫外線吸収剤の添加量は、所望の波長域に対する硬化反応性に応じて調整することができる。例えば、ベースポリマー100質量部に対して0.1~10.0質量部が好ましく、0.1~5.0質量部がより好ましく、0.1~1.0質量部がさらに好ましい。
【0058】
粘着剤は、剥離ライナー上に粘着剤を塗工して形成する場合の塗工性、均質な粘着剤を調製する点から、溶媒を含有していてもよい。上記溶媒としては、特に制限されず、半導体ウェハの加工用テープにおける粘着剤で常用される溶媒を挙げることができる。
【0059】
粘着剤層4の厚さは特に限定されるものではなく、適宜に設定してよいが、本発明では、5~30μmが好ましい。
【0060】
本発明の粘着テープ2は、使用前には上記粘着剤層4を保護するため、粘着剤層4の上面に剥離フィルムを仮粘着しておくことが好ましい。
【0061】
<製造方法>
本発明において、基材フィルム3を設ける方法、並びに基材フィルム3上に粘着剤層4を設ける方法は特に制限されるものではなく、公知の方法から適宜選択して設けることができる。一例を下記に記載するが、下記の例に限定されるものではない。
剥離ライナー上に、粘着剤を塗工し、所望の厚みを有する粘着剤層4を形成する。この粘着剤層4と基材フィルム3(基材フィルムを構成する樹脂をフィルム化したもの)とを貼り合せることにより、本発明の粘着テープ2を作製することができる。
なお、本発明の粘着テープは、作製後、遮光条件下で保存することも好ましい。
【0062】
<用途>
本発明の粘着テープ2は、LEDを光源とする紫外線照射では粘着力の低下を抑えることができ、高圧水銀ランプを光源とする紫外線照射により粘着力を十分に低下させることができる。
そのため、本発明の粘着テープ2を半導体チップの製造において、ダイシングテープ(固定テープ)として用いることにより、表面保護テープへの紫外線照射に伴う薄膜ウェハの反りを抑制することができ、しかも、ダイシング時のチップ飛びの抑制とその後の優れたピックアップ性とを両立することができる。
また、本発明の粘着テープ2と紫外線硬化型表面保護テープを半導体ウェハにそれぞれ貼り合せ、波長365nmのLEDランプを光源とする紫外線照射により紫外線硬化型表面保護テープを硬化させる、本発明の粘着テープの使用方法に、好適に用いることができる。この使用方法では、本発明の粘着テープ2の粘着力の低下を十分に抑えながら紫外線硬化型表面保護テープを硬化して半導体ウェハから剥離することができる。
なお、それぞれの紫外線の照射条件は、所望の粘着力とするために適宜調整することができる。
【0063】
[半導体チップの製造方法]
本発明の半導体チップの製造方法は、本発明の粘着テープ2を用いて半導体チップを得る方法である。
好ましくは、表面にパターン面を有する半導体ウェハの該パターン面側に、紫外線硬化型表面保護テープ(以下、単に「表面保護テープ」とも称す。)を貼り合せ、その状態でパターン面を保護しながら該半導体ウェハの裏面を研削する。次いで、半導体ウェハの裏面に本発明の粘着テープ2を貼り合わせ、リングフレームに支持、固定する。次いで、表面保護テープ側から、第1の紫外線照射装置により紫外線照射を行った後、表面保護テープを剥離して、半導体ウェハの表面にパターン面を露出させる。次いで、半導体ウェハのパターン面側からダイシング装置を用いて、半導体ウェハの切断を行い、個々のチップ単位に個片化する(ダイシング)ことで、目的の半導体チップを得ることができる。ダイシングの方法は特に制限されず、通常の方法を採用することができる。なかでも、ダイシングブレードを用いたダイシングが好ましい。
本発明の半導体チップの製造方法は、さらに、本発明の粘着テープ2側から、第2の紫外線照射装置から紫外線を照射することで、粘着テープ2の粘着性を低下させることが好ましい。次いで、本発明の粘着テープ2から半導体チップをピックアップする工程を有することも好ましい。またさらに、ピックアップした半導体チップをダイボンディング工程に移行する工程を含んでもよい。
第1の紫外線照射装置は、例えば、波長365nmのLEDランプを光源とする紫外線照射装置が好ましい。また、第2の紫外線照射装置は、例えば、高圧水銀ランプを光源とする紫外線照射装置が好ましい。
第1の紫外線照射装置による紫外線照射及び第2の紫外線照射装置による紫外線照射の条件は、使用する表面保護テープ及び本発明の粘着テープ2の光源に対する硬化反応性にあわせて、適宜調整することができる。照射条件は特に限定されないが、例えば、波長365nmのLEDランプを光源とする紫外線照射は、照射強度が30mW/cm~50mW/cmであることが好ましく、積算光量が200mJ/cm~1000mJ/cmとなる照射であることが好ましく、高圧水銀ランプを光源とする紫外線照射は、照射強度が40mW/cm~80mW/cmであることが好ましく、紫外線(波長250nm~450nm)積算光量が200mJ/cm~1000mJ/cmとなる照射であることが好ましい。
また、上記高圧水銀ランプの種類は、特に制限されず、通常用いられる高圧水銀ランプを使用することができる。
【0064】
上記紫外線硬化型表面保護テープとしては、通常、半導体チップの製造工程において、半導体ウェハのパターン面の保護に用いられる紫外線硬化型表面保護テープを用いることができる。具体的には、基材フィルムと、この基材フィルム上に設けられた紫外線硬化型の粘着剤層とを少なくとも有する限り、特に限定されない。また、粘着剤層の基材フィルムを有する側とは反対側の面に、フィルム状半導体封止剤をNCF(non conductive film、非導電性フィルム)として有する形態も好ましく挙げられる。表面保護テープがフィルム状半導体封止剤を有する形態である場合、半導体ウェハからの表面保護テープの剥離とは、半導体ウェハ上にフィルム状半導体封止剤を残した状態で、基材フィルムと粘着剤層とを一体として剥離すること意味する。
【0065】
本発明の半導体チップの製造方法(以下、単に「本発明が適用される製造方法」とも称す)について、その好ましい実施形態を、図1~4を参照して以下に説明する。なお、下記の実施形態において、特に断りのない限り、本発明で規定されること以外は下記実施形態に限定されるものではない。また、各図面に示される形態は、本発明の理解を容易にするための概略断面図であり、各部材のサイズ、厚み、ないしは相対的な大小関係等は説明の便宜上大小を変えている場合があり、実際の関係をそのまま示すものではない。また、本発明で規定する事項以外はこれらの図面に示された外形、形状に限定されるものでもない。
【0066】
半導体ウェハ1は、その表面Sに半導体素子の回路などが形成されたパターン面を有している(分図1(A)参照)。パターン面は、半導体素子の回路などが形成された面であって、平面視においてストリートを有する。このパターン面側に、基材フィルム12上に紫外線硬化型粘着剤層13を設けた表面保護テープ11を貼合し、パターン面が表面保護テープ11で被覆された半導体ウェハ1を得る(分図1(B)参照)。分図1(B)では基材フィルム12と粘着剤層13とを合わせて表面保護テープ11として示した。なお、分図1(A)における矢印DAは、表面保護テープ11を半導体ウェハ1に貼り合せる方向を示している。
【0067】
次に、半導体ウェハ1の裏面をウェハ研削装置M1で研削し、半導体ウェハ1の厚みを薄くする(分図2(A)参照)。その後、裏面が研削された状態の半導体ウェハ1Bの裏面Bに本発明の粘着テープ2を貼り合わせて(分図2(B)参照)、本発明の粘着テープ2をリングフレームFに支持固定する(分図2(C)、分図3(A)参照)。なお、分図2(A)における矢印DBは、ウェハ研削装置M1における研削砥石の回転方向を示しており、分図2(B)における矢印DCは、半導体ウェハ1の裏面Bに本発明の粘着テープ2を貼り合せる方向を示している。
【0068】
次に、表面保護テープ11で被覆された半導体ウェハ1Bのパターン面側から、365nmの波長を有するLEDランプを光源とする第1の紫外線照射装置UVS1を用いて紫外線UV(分図3(B)注の矢印で示す)を照射する(分図3(B)参照)。この紫外線UV照射により、表面保護テープ11の粘着剤層13を硬化させて粘着力を低下させた後、表面保護テープ11を剥離して(分図3(C)参照)、半導体ウェハ表面を剥き出しにする(分図4(A)参照)。
【0069】
次に、半導体ウェハ1のパターン面側(表面Sの側)からダイシングブレードDによる処理を行い、ウェハの切断を行い、個々のチップ7に分割して個片化する(分図4(B)参照)。最後に、半導体ウェハ1の裏面B側より高圧水銀ランプを光源とする第2の紫外線照射装置UVS2を用いて紫外線UV(分図4(C)注の矢印で示す)を照射する(分図4(C)参照)。この紫外線UV照射により、本発明の粘着テープ2の粘着剤層4を硬化させて粘着力を低下させる。その後、個片化されたチップ7をピックアップ装置でピンにより突き上げコレットにより吸着してピックアップする(図示しない)。
【0070】
図4(C)で示す、高圧水銀ランプを光源とする第2の紫外線照射装置UVS2を用いた紫外線UV照射の後、ピックアップ工程の前に、本発明の粘着テープ2をエキスパンドし、個片化されたチップ7間に一定の距離を設けることも好ましい。この場合、本発明の粘着テープ2として、エキスパンド性を有するテープを使用する。エキスパンドの速度、エキスパンド量等の条件は適宜調製することができ、例えば、エキスパンダーを使用する態様が挙げられる。
【0071】
上記各実施形態は本発明の一例であり、こうした形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に反しない限度において、各プロセスにおける公知のプロセスの付加や削除、変更等を行い得るものである。
【0072】
[本発明の粘着テープの使用方法]
本発明の粘着テープの使用方法は、半導体ウェハ1の一方の面(例えばパターン面)に紫外線硬化型表面保護テープが貼合され、該半導体ウェハ1のもう一方の面に本発明の粘着テープ2が貼合された半導体ウェハに対して、表面保護テープ11側から紫外線を照射する工程を有する。
この紫外線照射により、表面保護テープ11(好ましくは表面保護テープの粘着剤層)を硬化させて粘着力を低下させる。上記紫外線照射は波長365nmのLEDランプを光源とする紫外線照射が好ましい。
【0073】
本発明の粘着テープ2の使用方法においては、上記紫外線照射の後、表面保護テープ11を半導体ウェハから剥離する工程を有することが好ましく、さらに、この表面保護テープ11の剥離工程の後、本発明の粘着テープ2側から紫外線を照射する工程を有することがより好ましい。
この紫外線照射により、本発明の粘着テープ2における粘着剤層を硬化させて粘着力を低下させる。上記紫外線照射は高圧水銀ランプを光源とする紫外線照射が好ましい。
【0074】
上記の各紫外線照射の条件は、本発明の効果を損なわない範囲で、使用する表面保護テープ11及び本発明の粘着テープ2の光源に対する反応性にあわせて、適宜調整することができる。照射条件は特に限定されないが、例えば、前述の本発明の半導体チップ1の製造方法における紫外線照射の条件の記載を好ましく適用することができる。
【0075】
本発明の粘着テープの使用方法は、前述の半導体チップ1の製造方法に好ましく適用することができる。また、本発明の粘着テープ2の使用方法は、フィルム状半導体封止剤一体型の表面保護テープ(以下、「一体型表面保護テープ」とも称す。)を用いたTSV(シリコン貫通電極、Through-Silicon Via)ウェハのミドル層の加工工程においても、好適に使用することができる。
具体的には、TSVウェハのミドル層の加工工程は、以下の工程を含む。まず、ウェハの一方の面にサポートガラスが貼合された状態でビアを形成する。次いで、サポートガラスが貼付された面とは逆側(反対側)のウェハ面をバックグラインド研削(BG研削)し、研削した面にバンプを形成する。続いて、バンプ形成面にダイシングテープを貼合した後、サポートガラスを除去する。続いて、サポートガラスが除去された面にフィルム状半導体封止剤一体型の表面保護テープを貼り付ける。その後、一体型表面保護テープ側から紫外線照射を行い、表面保護テープを剥離してウェハ上にフィルム状半導体封止剤のみを残す。
上記加工工程では、ウェハの両側の面にダイシングテープと一体型表面保護テープとがそれぞれ貼付けられた状態が存在する。このため、一体型表面保護テープへの紫外線照射を行うと、ダイシングテープの一部の面にも紫外線が照射されてしまい、ダイシングテープとして通常の紫外線硬化型テープを用いた場合には、ウェハ端部付近における粘着力が低下してしまい、ダイシング時にチップ飛びが発生するおそれがあることが、本発明者らの検討によりわかってきた。一方、本発明の粘着テープ2をダイシングテープとして使用することで、一体型表面保護テープに対する紫外線照射による粘着力の低下を抑制することができ、ダイシング時におけるチップ飛びの発生を抑制することができる。
【0076】
すなわち、上記の、「半導体ウェハの一方の面に紫外線硬化型表面保護テープが貼合され、該半導体ウェハのもう一方の面に本発明の粘着テープが貼合された半導体ウェハ」は、半導体ウェハの加工工程において生じるものであることが好ましい。
【実施例
【0077】
以下、実施例に基づき、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0078】
<実施例1>
(1)基材フィルムの作製
エチレン-メタクリル酸-(アクリル酸2-メチル-プロピル)3元共重合体-Zn2+-アイオノマー樹脂である、ハイミランAM-7316(商品名、三井デュポンケミカル社製)を使用し、厚さ80μmの基材フィルム3を作製した。なお、このフィルムの片面にはコロナ処理を施した。
【0079】
(2)粘着剤の調製
粘着剤は、ベースポリマーとして、側鎖に紫外線硬化性炭素-炭素二重結合を有する紫外線硬化型アクリルポリマーを有する、以下の粘着剤を使用した。
((メタ)アクリル共重合体Aの合成)
2-エチルヘキシルアクリレート70mol%、2-ヒドロキシエチルアクリレート20mol%およびメチルメタクリレート10mol%を記載のモル比で配合し、酢酸エチル溶液中で共重合させることにより(メタ)アクリル共重合体のポリマー溶液を得た。このポリマー溶液中へ、(メタ)アクリル共重合体100質量部に対して10質量部の2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製、カレンズMOI(商品名))を加えて反応させ、(メタ)アクリル共重合体の側鎖のヒドロキシル基に前記イソシアネートに由来する二重結合含有基を付加させることで、側鎖に二重結合含有基を有する(メタ)アクリル共重合体Aの組成物を得た。
側鎖に二重結合含有基を有するアクリル共重合体Aは、質量平均分子量60万、ガラス転移温度(Tg)-64℃、紫外線硬化性炭素-炭素二重結合量0.9meq/gであった。
(粘着剤の調製)
上記(メタ)アクリル共重合体Aの組成物中へ、100質量部の(メタ)アクリル共重合体Aに対する配合量で、硬化剤としてコロネートL〔日本ポリウレタン工業(株)社製、商品名、イソシアネート系硬化剤〕を2.0質量部と、光重合開始剤としてイルガキュア184(BASF社製、商品名)を0.1質量部とを配合し、粘着剤Aを得た。
【0080】
(3)粘着テープの作製
上記粘着剤Aを剥離ライナー上に乾燥後の厚みが10μmとなるように塗工し、粘着剤層4を形成した。形成した粘着剤層4を、上記で作製した厚さ80μmの基材フィルム3におけるコロナ処理を施した面側に貼り合せ、総厚90μmの半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープ(粘着テープ)2を作製した。
【0081】
<実施例2>
実施例1で使用した粘着剤Aにおいて、光重合開始剤であるイルガキュア184(BASF社製)の配合量を0.1質量部から0.75質量部に変更して粘着剤Bを得た。粘着剤Aに代えて粘着剤Bを使用した以外は、実施例1と同様にして、粘着テープ2を作製した。
【0082】
<実施例3>
実施例1で使用した粘着剤Aにおいて、光重合開始剤であるイルガキュア184(BASF社製)の配合量を0.1質量部から1.0質量部に変更して粘着剤Cを得た。粘着剤Aに代えて粘着剤Cを使用した以外は、実施例1と同様にして、粘着テープ2を作製した。
【0083】
<実施例4>
実施例1で使用した粘着剤Aにおいて、光重合開始剤であるイルガキュア184(BASF社製)の配合量を0.1質量部から0.5質量部に変更し、紫外線吸収剤としてLA-F70(株式会社ADEKA製、商品名)を0.3質量部配合し粘着剤Dを得た。粘着剤Aに代えて粘着剤Dを使用した以外は、実施例1と同様にして、粘着テープ2を作製した。
【0084】
<実施例5>
実施例1で使用した粘着剤Aにおいて、光重合開始剤であるイルガキュア184(BASF社製)を光重合開始剤のイルガキュア651(BASF社製、商品名)に変更し、かつ配合量を0.1質量部から0.3質量部へ変更し、紫外線吸収剤としてLA-F70(株式会社ADEKA製)を0.3質量部配合し粘着剤Eを得た。粘着剤Aに代えて粘着剤Eを使用した以外は、実施例1と同様にして、粘着テープ2を作製した。
【0085】
<比較例1>
実施例1で使用した粘着剤Aにおいて、光重合開始剤であるイルガキュア184(BASF社製)の配合量を0.1質量部から5.0質量部に変更して粘着剤Fを得た。粘着剤Aに代えて粘着剤Fを使用した以外は、実施例1と同様にして、粘着テープを作製した。
【0086】
<比較例2>
実施例1で使用した粘着剤Aにおいて、光重合開始剤であるイルガキュア184(BASF社製)を光重合開始剤のイルガキュア651(BASF社製)に変更し、かつ配合量を0.1質量部から4.0質量部へ変更し粘着剤Gを得た。粘着剤Aに代えて粘着剤Gを使用した以外は、実施例1と同様にして、粘着テープを作製した。
【0087】
<比較例3>
実施例1で使用した粘着剤Aにおいて、光重合開始剤であるイルガキュア184(BASF社製)を光重合開始剤のイルガキュア651(BASF社製)に変更し、かつ配合量を0.1質量部から3.1質量部へ変更し、紫外線吸収剤としてLA-F70(株式会社ADEKA製)を0.1質量部配合し粘着剤Hを得た。粘着剤Aに代えて粘着剤Hを使用した以外は、実施例1と同様にして、粘着テープを作製した。
【0088】
<特性および性能評価>
上記で作製した粘着テープについての粘着力を試験例1のようにして測定した。また、試験例2のようにしてダイシング時のチップ飛びを、試験例3のようにしてチップ個片化後のピックアップ性を、それぞれ評価した。
【0089】
[試験例1]粘着力の測定
本発明における粘着力は、JIS Z 0237に基づく、ステンレス試験板に対する90°引きはがし粘着力試験方法により測定される値である。具体的な測定方法は以下の通りである。なお、以下に記載しない条件については、JIS Z 0237に基づく。
まず、粘着テープから幅25mm×長さ150mmの試験片を3つ採取した。これらの試験片を、JIS R 6253に規定する280番の耐水研磨紙で仕上げた、JIS G 4305に規定する厚さ1.5mm~2.0mmのSUS304鋼板(ステンレス鋼試験版)上に貼着した。その後、2kgのゴムローラを3往復かけて圧着し、1時間放置した。その後、測定値がその容量の15~85%の範囲に入るJIS B 7721に適合する引張試験機を用いて粘着力を測定した。測定は、90°引きはがし法により、引張速さ50mm/min、測定温度23℃、相対湿度49%の条件で行った。本発明における粘着力は、上記方法により測定した3つの試験片の粘着力の算術平均である。
【0090】
(試験例1-1)紫外線照射前の粘着力
上記で作製した粘着テープについて、上記方法により紫外線照射前の粘着力(A)を測定した。
【0091】
(試験例1-2)波長365nmのLEDランプを光源とする紫外線照射後の粘着力
上記で作製した粘着テープに対して、波長365nmのLEDランプを光源とする紫外線照射装置(アイテックシステム社製、商品名:MUVBA-0.4×0.6×0.2、ピーク波長365nm)を用いて、照射強度30mW/cmで積算光量が500mJ/cmとなるように照射した。
紫外線を照射後、1時間放置した粘着テープについて、上記方法により波長365nmのLEDランプを光源とする紫外線照射後の粘着力(ALED)を測定した。
【0092】
(試験例1-3)高圧水銀ランプを光源とする紫外線照射後の粘着力
上記で作製した粘着テープに対して、高圧水銀ランプを光源とする紫外線照射装置(テクノビジョン社製、商品名:UVC-408)を用いて、照射強度70mW/cmで、紫外線(波長250nm~450nm)の積算光量が500mJ/cmとなるように照射した。
紫外線を照射後、1時間放置した粘着テープについて、上記方法により高圧水銀ランプを光源とする紫外線照射後の粘着力(AHPM)を測定した。
【0093】
[試験例2]ダイシング時のチップ飛び
厚み150μm、♯2000番手仕上げの8インチミラーウエハに対して、上記で作製した粘着テープを23℃、50%RHの条件下で貼合した。テープ貼合から1時間経過後、試験例1-2と同じ条件により、紫外線を照射した。紫外線を照射後、1時間放置した後、下記のダイシング条件により、5mm×5mm□のチップが1238枚得られるように切断した。
<ダイシング条件>
ダイシング装置 :DISCO社製のDFD-6340(商品名)
ブレード :DISCO社製のNBC-ZH2050 27HEDD(商品名)
ブレード回転数 :40,000rpm
切削速度 :80mm/sec
テープへの切り込み深さ :0.07mm
切削ライン :長さ205mmの切削ラインを縦横41本ずつ
切削水の流量 :2L/min
切削水温度 :23℃
上記ダイシングにより個片化されたチップを目視で観察し、個片化したチップの飛散が全く無ければ「〇」、チップの飛散があれば「×」として、評価した。
【0094】
[試験例3]ピックアップ性
試験例2のダイシング後、粘着テープ側から、試験例1-3と同じ条件により、紫外線を照射した。その後、下記のピックアップ条件により、個片化されたチップをピックアップした。
<ピックアップ条件>
ピックアップ装置:キャノンマシナリー社製のCAP-300II(商品名)
突き上げピン形状:半径0.7mm、先端曲率半径R=0.25mm、先端角度15°
ピン突き上げ高さ:1mm
ピン突き上げスピード:50mm/sec
コレット形状:吸着穴0.89mmφ
リングフレーム:DISCO社製の型式DTF-2-6-1(商品名)、SUS420J2製
上記条件にて個片化した1238チップをピックアップし、全てのチップが剥離可能であったものを「〇」、剥離できず粘着テープ上にチップが1~25チップ残ったものを「△」、剥離できず粘着テープ上にチップが26チップ以上残ったものを「×」として、評価した。本試験においては、「△」又は「○」が合格レベルである。
なお、上記試験例2においてチップの飛散が見られた場合には、飛散せずにテープ上に残っているチップについて、上記ピックアップ性を評価した。
【0095】
上記の各試験例における結果を、下記表にまとめて示した。
なお、表中における各粘着力の単位は「N/25mm」である。
【0096】
【表1】
【0097】
【表1-2】
【0098】
表1の結果から、以下のことがわかる。
実施例1~5の粘着テープは、本発明で規定する、(1)[紫外線照射前の粘着力]に対する[波長365nmのLEDランプを光源とする紫外線照射装置による積算光量500mJ/cmの紫外線照射後の粘着力]の比(ALED/A)が0.50以上の値を有し、(2)[紫外線照射前の粘着力]に対する[高圧水銀ランプを光源とする紫外線照射装置による積算光量500mJ/cmの紫外線照射後の粘着力]の比(AHPM/A)が0.50以下の値を有する。
これらの実施例1~5の紫外線照射型粘着テープは、半導体ウェハの一方の面に貼合して使用した場合に、波長365nmのLEDランプを光源とする紫外線照射後にダイシングを行っても、ダイシング時のチップ飛びを抑制することができることがわかった。さらに、上記ダイシング後に、高圧水銀ランプを光源とする紫外線を照射し、その後ピックアップを行うことにより、紫外線照射型粘着テープからチップを良好に剥離できることがわかった。つまり、これらの実施例1~5の紫外線照射型粘着テープは、チップ飛びの抑制とピックアップ性の両立に優れることがわかった。
実施例1~5についてみると、[紫外線照射前の粘着力]に対する[高圧水銀ランプを光源とする紫外線照射装置による積算光量500mJ/cmの紫外線照射後の粘着力]の比(AHPM/A)が0.43である実施例5の粘着テープを用いた場合には、ピックアップ工程時に粘着テープ上に12チップが残ったのに対し、上記比(AHPM/A)が0.40以下である実施例1~4の粘着テープを用いた場合には、ピックアップ工程時に粘着テープ上にチップが1つも残らず、ピックアップ性により優れることがわかった。
【0099】
これに対して、比較例1の粘着テープは、本発明で規定する(2)を満たすものの、[紫外線照射前の粘着力]に対する[波長365nmのLEDランプを光源とする紫外線照射装置による積算光量500mJ/cmの紫外線照射後の粘着力]の比(ALED/A)が0.10であり、本発明で規定する0.50以上を満たさない。この比較例1の粘着テープは、波長365nmのLEDランプを光源とする紫外線照射後のダイシングによるチップの飛散が見られ、チップ飛びの抑制が十分でなかった。
比較例2の粘着テープは、本発明で規定する(2)を満たすものの、[紫外線照射前の粘着力]に対する[波長365nmのLEDランプを光源とする紫外線照射装置による積算光量500mJ/cmの紫外線照射後の粘着力]の比(ALED/A)が0.33であり、本発明で規定する0.50以上を満たさない。この比較例2の粘着テープは、波長365nmのLEDランプを光源とする紫外線照射後のダイシングによるチップの飛散が見られ、チップ飛びの抑制が十分でなかった。なお、ピックアップ工程時には、粘着テープ上に4チップが残った。
比較例3の粘着テープは、本発明で規定する(1)を満たすものの、(2)[紫外線照射前の粘着力]に対する[高圧水銀ランプを光源とする紫外線照射装置による積算光量500mJ/cmの紫外線照射後の粘着力]の比(AHPM/A)が0.57であり、本発明で規定する0.50以下を満たさない。この比較例3の粘着テープは、LEDランプを光源とする紫外線照射後にダイシングを行い、次いで、高圧水銀ランプを光源とする紫外線を照射し、ピックアップを行った際には、1238枚の全てのチップが粘着テープ上に残り、ピックアップ性が十分でなかった。
【0100】
上記の通り、本発明の粘着テープは、半導体ウェハの加工用に好適に使用することができる。また、本発明の粘着テープと紫外線硬化型表面保護テープを半導体ウェハにそれぞれ貼り合せ、波長365nmのLEDランプを光源とする紫外線により紫外線硬化型表面保護テープを硬化させる、本発明の粘着テープの使用方法では、本発明の粘着テープの粘着力の低下を抑えながら紫外線硬化型表面保護テープを剥離することができる。
また、本発明の粘着テープを使用することにより、チップ飛びの抑制と優れたピックアップ性を両立しながら、半導体チップを製造することができる。
【0101】
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
【0102】
本願は、2019年1月25日に日本国で特許出願された特願2019-011418に基づく優先権を主張するものであり、これはいずれもここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。
【符号の説明】
【0103】
1 半導体ウェハ
1A 裏面研削中の半導体ウェハ
1B 裏面が研削された状態の半導体ウェハ
1C 分割された半導体ウェハ
2 半導体ウェハ加工用紫外線硬化型粘着テープ(粘着テープ)
3 基材フィルム
4 粘着剤層
7 チップ
11 表面保護テープ
12 基材フィルム
13 粘着剤層
S 表面
B 裏面
M1 ウェハ研削装置
D ダイシングブレード
F リングフレーム
UVS1 波長365nmのLEDランプを光源とする紫外線照射装置
UVS2 高圧水銀ランプを光源とする紫外線照射装置
図1
図2
図3
図4