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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】止水装置、止水構造
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/00 20060101AFI20240228BHJP
   E04H 9/14 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E04H9/14 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021158376
(22)【出願日】2021-09-28
(65)【公開番号】P2023048835
(43)【公開日】2023-04-07
【審査請求日】2023-02-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】飯田 英邦
(72)【発明者】
【氏名】川西 洋太
(72)【発明者】
【氏名】秀島 有
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-223183(JP,A)
【文献】特開2017-002611(JP,A)
【文献】特開2006-299666(JP,A)
【文献】特許第6748317(JP,B1)
【文献】特開2016-108897(JP,A)
【文献】特表2019-504954(JP,A)
【文献】特開2022-160750(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/00
E04H 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浸水を防ぐために使用可能な止水装置であって、
設置面に設置する設置部と、
前記設置部に対してヒンジ部を介して開閉可能であり、前記設置部の後端側で起立する起立部と、
を具備し、
前記設置部の前端側の下面には、止水部材が配置され、
前記止水部材は、断面において、先端に行くにつれて細くなる凸形状を有し、
前記止水部材の凸形状の尾根方向が、前記設置部の前端側の辺に略平行であり、
前記設置部の一方の端部側には、第1設置部連結部が設けられ、前記設置部の他方の端部側には第2設置部連結部が設けられ、
前記起立部の一方の端部側には、第1起立部連結部が設けられ、前記起立部の他方の端部側には第2起立部連結部が設けられ、
前記第2設置部連結部は、隣り合う他の止水装置の前記第1設置部連結部に対して下方に向けて連結させることが可能であるとともに、前記第2起立部連結部は、隣り合う他の止水装置の前記第1起立部連結部に対して、前記起立部の開方向へ向けて連結させることが可能であり、
前記第1設置部連結部と前記第2設置部連結部との連結部、及び、前記第1起立部連結部と前記第2起立部連結部との連結部には、それぞれ、連結部止水部材が配置され、
前記第1設置部連結部と前記第2設置部連結部は、互いの溝部及び爪部が互いに噛み合うことで連結可能であり、
前記第1起立部連結部と前記第2起立部連結部は、互いの溝部及び爪部が互いに噛み合うことで連結可能であり、
それぞれの連結部において、前記溝部と前記爪部との間にはクリアランスが形成されており、連結方向の連結長さ及び連結角度を調整可能であり、
前記溝部及び前記爪部が互いに噛み合ったときに、前記連結部止水部材がそれぞれの連結部と密着して変形し、
既設の止水装置の隣の所定位置に、止水装置を配置するのみで、前記設置部同士の連結が完了することを特徴とする止水装置。
【請求項2】
浸水を防ぐために使用可能な止水装置であって、
設置面に設置する設置部と、
前記設置部の後端側で起立する起立部と、
を具備し、
前記設置部の前端側の下面には、止水部材が配置され、
前記止水部材は、断面において、先端に行くにつれて細くなる凸形状を有し、
前記止水部材の凸形状の尾根方向が、前記設置部の前端側の辺に略平行であり、
前記設置部の下面側には、滑り防止部材が配置され、
前記起立部の外面側には、前記止水装置を畳んで重ねた際における前記滑り防止部材に対応する部位を避けた位置に凸部が形成されることを特徴とする止水装置。
【請求項3】
浸水を防ぐために使用可能な止水装置であって、
設置面に設置する設置部と、
前記設置部の後端側で起立する起立部と、
を具備し、
前記設置部の前端部近傍における下面側には、止水部材が配置され、前記設置部の前端部近傍に配置された止水部材のうち、前記設置部の前端側の少なくとも一部の止水部材は、断面において、先端に行くにつれて細くなる凸形状を有し、
前記止水部材の凸形状の尾根方向が、前記設置部の前端側の辺に略平行であり、
前記設置部の長さは、前記起立部の長さよりも長く、
前記設置部の前端部近傍に配置された止水部材の長さをL1とし、前記起立部の前端からの前記設置部の前端部のはみ出し長さをL2とすると、
L1≦L2
であることを特徴とする止水装置。
【請求項4】
浸水を防ぐために使用可能な止水装置であって、
設置面に設置する設置部と、
前記設置部の後端側で起立する起立部と、
を具備し、
前記設置部の前端側の下面には、止水部材が配置され、
前記止水部材は、断面において、先端に行くにつれて細くなる凸形状を有し、
前記止水部材の凸形状の尾根方向が、前記設置部の前端側の辺に略平行であり、
前記設置部の上面には貯水部があり、水を貯留することが可能であることを特徴とする止水装置。
【請求項5】
前記貯水部は、升又はタンク形状であることを特徴とする請求項4に記載の止水装置。
【請求項6】
前記設置部の側部側の下面に、さらに凸形状を有する前記止水部材が配置され、前記設置部の側部側に配置された凸形状を有する前記止水部材の凸形状の尾根方向が、前記設置部の側端側の辺に略平行であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の止水装置。
【請求項7】
前記起立部の側部側の背面に、さらに凸形状を有する前記止水部材が配置され、前記起立部の側部側に配置された凸形状を有する前記止水部材の凸形状の尾根方向が、前記起立部の側端側の辺に略平行であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の止水装置。
【請求項8】
前記設置部の下面に、滑り防止部材が配置されることを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載の止水装置。
【請求項9】
前記設置部の前端側の下面において、前記設置部の前端側に配置された凸形状を有する前記止水部材の後方に、凸形状を有さない平坦な他の止水部材が配置されることを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載の止水装置。
【請求項10】
凸形状を有する前記止水部材は、凸形状が複数併設された波型の断面形状を有することを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載の止水装置。
【請求項11】
前記止水部材は、発泡樹脂で形成されることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれかに記載の止水装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれかに記載の止水装置を用いた止水構造であって、
前記止水部材の前記設置部が地面に設置されていることを特徴とする止水構造。
【請求項13】
前記地面の表面に溝が形成されており、前記止水部材の凸形状の尾根方向と前記溝が交わるように配置されていることを特徴とする請求項12記載の止水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、水害の発生時における浸水対策を行うための止水装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水害が発生した際に、建物などへの浸水を防止する方法として、種々の浸水防止用設備が提案されている。例えば、建物の入り口に、開閉式やスライド式の防水シャッターや防水扉を設けて、必要な際にはシャッターや扉を閉じる方法がある。このような防水用設備は建物と一体で設置される。このため、設備が大掛かりであり、特定の場所でしか利用することができない。
【0003】
これに対し、簡易的ではあるが、必要な際に特定の場所に運搬して設置する持ち運び式の止水部材がある。例えば、水害の発生時に、土嚢を所定の場所に設置して水をせき止めることで、浸水を防止することができる。しかし、土嚢は重量があり、所定の範囲の浸水を防止するためには、数多くの土嚢が必要となるため、より設置作業性に優れた方法が望まれる。
【0004】
より設置作業が良好な方法として、略L字状の止水板を用いて止水を行う方法が提案されている(例えば特許文献1)。特許文献1の方法では、L字状の一体型パネルを連結フレームで連結することで、所定の範囲の止水を行うことができる。
【0005】
しかし、特許文献1の止水部材は略L字状であるため、運搬時や保管時にかさばるという問題がある。
【0006】
これに対し、折り畳みが可能な略L字状の止水装置が提案されている(特許文献2)。特許文献2の止水装置によれば、運搬時や保管時には折り畳んだ状態とすることができるため、場所をとることがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-223183号公報
【文献】特許第6748317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1も特許文献2も、地面に設置した際に、地面と止水装置との隙間への水の浸入を防止する必要がある。しかし、地面は必ずしも平坦ではなく、凹凸がある場合がある。このような、水の浸入を防ぐためには、止水装置の下面に弾性変形可能な止水部材を配置して、止水部材を変形させて地面に密着させる方法がある。
【0009】
しかし、特に、タイルの目地やコンクリートの継ぎ目等のように、ある程度の深さで、所定の長さ連続するような細い溝形状があると、止水部材の変形能力が不足して、水の浸入を防ぐことが困難な場合がある。このため、当該溝を通って水が止水装置の後方へ流出するおそれがある。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、地面に溝などの凹凸がある場合であっても止水性能が良好な止水装置等を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、浸水を防ぐために使用可能な止水装置であって、設置面に設置する設置部と、前記設置部に対してヒンジ部を介して開閉可能であり、前記設置部の後端側で起立する起立部と、を具備し、前記設置部の前端側の下面には、止水部材が配置され、前記止水部材は、断面において、先端に行くにつれて細くなる凸形状を有し、前記止水部材の凸形状の尾根方向が、前記設置部の前端側の辺に略平行であり、前記設置部の一方の端部側には、第1設置部連結部が設けられ、前記設置部の他方の端部側には第2設置部連結部が設けられ、前記起立部の一方の端部側には、第1起立部連結部が設けられ、前記起立部の他方の端部側には第2起立部連結部が設けられ、前記第2設置部連結部は、隣り合う他の止水装置の前記第1設置部連結部に対して下方に向けて連結させることが可能であるとともに、前記第2起立部連結部は、隣り合う他の止水装置の前記第1起立部連結部に対して、前記起立部の開方向へ向けて連結させることが可能であり、前記第1設置部連結部と前記第2設置部連結部との連結部、及び、前記第1起立部連結部と前記第2起立部連結部との連結部には、それぞれ、連結部止水部材が配置され、前記第1設置部連結部と前記第2設置部連結部は、互いの溝部及び爪部が互いに噛み合うことで連結可能であり、前記第1起立部連結部と前記第2起立部連結部は、互いの溝部及び爪部が互いに噛み合うことで連結可能であり、それぞれの連結部において、前記溝部と前記爪部との間にはクリアランスが形成されており、連結方向の連結長さ及び連結角度を調整可能であり、前記溝部及び前記爪部が互いに噛み合ったときに、前記連結部止水部材がそれぞれの連結部と密着して変形し、既設の止水装置の隣の所定位置に、止水装置を配置するのみで、前記設置部同士の連結が完了することを特徴とする止水装置であるである。
第2の発明は、浸水を防ぐために使用可能な止水装置であって、設置面に設置する設置部と、前記設置部の後端側で起立する起立部と、を具備し、前記設置部の前端側の下面には、止水部材が配置され、前記止水部材は、断面において、先端に行くにつれて細くなる凸形状を有し、前記止水部材の凸形状の尾根方向が、前記設置部の前端側の辺に略平行であり、前記設置部の下面側には、滑り防止部材が配置され、前記起立部の外面側には、前記止水装置を畳んで重ねた際における前記滑り防止部材に対応する部位を避けた位置に凸部が形成されることを特徴とする止水装置である。
第3の発明は、浸水を防ぐために使用可能な止水装置であって、設置面に設置する設置部と、前記設置部の後端側で起立する起立部と、を具備し、前記設置部の前端部近傍における下面側には、止水部材が配置され、前記設置部の前端部近傍に配置された止水部材のうち、前記設置部の前端側の少なくとも一部の止水部材は、断面において、先端に行くにつれて細くなる凸形状を有し、前記止水部材の凸形状の尾根方向が、前記設置部の前端側の辺に略平行であり、前記設置部の長さは、前記起立部の長さよりも長く、前記設置部の前端部近傍に配置された止水部材の長さをL1とし、前記起立部の前端からの前記設置部の前端部のはみ出し長さをL2とすると、L1≦L2であることを特徴とする止水装置である。
第4の発明は、浸水を防ぐために使用可能な止水装置であって、設置面に設置する設置部と、前記設置部の後端側で起立する起立部と、を具備し、前記設置部の前端側の下面には、止水部材が配置され、前記止水部材は、断面において、先端に行くにつれて細くなる凸形状を有し、前記止水部材の凸形状の尾根方向が、前記設置部の前端側の辺に略平行であり、前記設置部の上面には貯水部があり、水を貯留することが可能であることを特徴とする止水装置である。
前記貯水部は、升又はタンク形状であってもよい。
【0012】
前記設置部の側部側の下面に、さらに凸形状を有する前記止水部材が配置され、前記設置部の側部側に配置された凸形状を有する前記止水部材の凸形状の尾根方向が、前記設置部の側端側の辺に略平行であってもよい。
【0013】
前記起立部の側部側の背面に、さらに凸形状を有する前記止水部材が配置され、前記起立部の側部側に配置された凸形状を有する前記止水部材の凸形状の尾根方向が、前記起立部の側端側の辺に略平行であってもよい。
【0014】
前記設置部の下面に、滑り防止部材が配置されてもよい。
【0015】
前記設置部の前端側の下面において、前記設置部の前端側に配置された凸形状を有する前記止水部材の後方に、凸形状を有さない平坦な他の止水部材が配置されてもよい。
【0016】
凸形状を有する前記止水部材は、凸形状が複数併設された波型の断面形状を有してもよい。
【0017】
前記止水部材は、発泡樹脂で形成されてもよい。
【0018】
第1-4の発明によれば、設置部の前端側の下面に配置される止水部材として、先端に行くにつれて細くなる凸形状を有する止水部材を用いることで、平坦な止水部材と比較して、上方からの荷重によって局所的に止水部材を大きく変形させることができる。このため、地面に溝が形成されている場合でも、止水部材によって溝を塞ぎ、止水性を確保することができる。特に、止水部材の凸形状の尾根方向が、設置部の前端側の辺に略平行であるため、設置部の先端の辺に交差するような向きの溝に対し確実に凸部を交差させることができる。このため、溝を止水部材の凸形状で塞ぎ、前方からの水の浸入を抑制することができる。
【0019】
また、設置部の側部側の下面に凸形状を有する止水部材が配置され、止水部材の凸形状の尾根方向が、設置部の側端側の辺に略平行であれば、側方からの水の浸入を抑制することができる。
【0020】
また、起立部の側部側の背面に凸形状を有する止水部材が配置され、止水部材の凸形状の尾根方向が、起立部の側端側の辺に略平行であれば、壁面に溝が形成されるような場合でも、側方からの水の浸入を抑制することができる。
【0021】
設置部の下面に、滑り防止部材が配置されれば、設置した際に、風などによって止水装置が移動してしまうことを抑制することができる。
【0022】
設置部の前端側の下面において、設置部の前端側に配置された凸形状を有する止水部材の後方に、凸形状を有さない平坦な他の止水部材を配置することで、止水装置を地面に設置した際に、止水部材と地面との接触面積を確保して、止水装置の位置ずれを抑制することができる。
【0023】
また、止水部材の凸形状を複数設けることで、より確実に止水性を確保すことができる。
【0024】
また、止水部材を発泡樹脂で形成することで、高い変形能力を有するため、高い止水性を確保することができる。
【0025】
の発明は、第1-4の発明にかかる止水装置を用いた止水構造であって、前記止水部材の前記設置部が地面に設置されていることを特徴とする止水構造である。
【0026】
前記地面の表面に溝が形成されており、前記止水部材の凸形状の尾根方向と前記溝が交わるように配置されていてもよい。
【0027】
の発明によれば、地面と設置部との間からの水の浸入を抑制した止水構造を得ることができる。特に、溝が凸形状の尾根方向と交差するように止水装置を設置することで、確実に溝を凸形状で塞ぐことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、地面に溝などの凹凸がある場合であっても止水性能が良好な止水装置等を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】閉じた状態の止水装置1を示す斜視図。
図2】開いた状態の止水装置1を示す斜視図。
図3】止水装置1の底面図。
図4】(a)は、閉じた状態の止水装置1の側面図、(b)は、(a)のヒンジ部7近傍の拡大図。
図5】(a)は、開いた状態の止水装置1の側面図、(b)は、(a)のヒンジ部7近傍の拡大図。
図6】(a)は、水を貯留した状態の止水装置1の平面図、(b)は(a)のE-E線断面図。
図7】(a)、(b)は、止水装置1、1aの設置方法を示す図。
図8】(a)は、図7(a)のF部における断面図、(b)は、図7(b)のH部における断面図、(c)は(b)に対して、連結方向等の調整を行っている状態を示す図。
図9】(a)、(b)は、止水装置1、1aの設置方法を示す図。
図10】(a)、(b)は、図9(b)のL部における断面図、(c)は(b)に対して、連結方向等の調整を行っている状態を示す図。
図11】止水構造30を示す図。
図12】止水構造30aを示す斜視図。
図13】止水構造30aの平面図。
図14】止水装置1bの底面図
図15】下面止水部材23aを示す斜視図。
図16】下面止水部材23、23aの機能を示す図であり、(a)は止水装置1bを設置する前の状態を示す図、(b)は溝45aの部位に設置された状態を示す図、(c)は溝45a以外の部位に設置された状態を示す図。
図17】下面止水部材23aの他の形態を示す図。
図18】(a)は、止水装置1を積み重ねた状態を示す側面図、(b)は、(a)のR-R線断面図。
図19】止水装置1cを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、閉じた状態の止水装置1を示す斜視図、図2は、開いた状態の止水装置1の斜視図である。止水装置1は、浸水を防ぐために使用可能な部材であり、保管時や運搬時には、図1に示すように折り畳んでおき、使用時には図2に示すように開いて使用することができる。
【0031】
止水装置1は、主に地面などの設置面に設置される設置部3と、設置部3に対してヒンジ部7(図2参照)を介して開閉可能な起立部5等からなる。なお、以下の説明において、起立部5を開く側(図中A方向)を止水装置の前方とし、ヒンジ部7側(図中B方向)を止水装置1の後方とする。また、止水装置1の前後方向に直交する方向(図中C、D方向)を止水装置1の幅方向とする。
【0032】
設置部3の幅方向の一方の端部側(図中C方向の端部側)には、第1の設置部連結部である設置部連結部9aが設けられる。また、設置部3の幅方向の他方の端部側(図中D方向の端部側)には第2の設置部連結部である設置部連結部9bが設けられる。止水装置1を併設した際には、隣り合う止水装置1の設置部連結部9aと設置部連結部9bを連結することができる。なお、設置部連結部9aと設置部連結部9bの詳細については後述する。
【0033】
また、起立部5の幅方向の一方の端部側(図中C方向の端部側)には、第1の起立部連結部である起立部連結部11a(図2参照)が設けられる。また起立部5の幅方向の他方の端部側(図中D方向の端部側)には第2の起立部連結部である起立部連結部11bが設けられる。止水装置1を併設した際には、隣り合う止水装置1の起立部連結部11aと起立部連結部11bを連結することができる。なお、起立部連結部11aと起立部連結部11bの詳細については後述する。
【0034】
図2に示すように、起立部5を開いた状態では、起立部5は設置部3の後端側で起立する。この際、固定部材19が、一端側が設置部3に固定され、他端側が起立部5に固定される。このため、設置部3と起立部5は、一対の固定部材19によって固定されて、略L字状の状態を維持することができる。なお、固定部材19は、起立部5を折り畳んだ状態では、設置部3と起立部5の内部に収容可能である。なお、固定部材19の配置や個数は図示した例には限られない。
【0035】
図3は、設置部3の下面を示す図である。設置部3の下面において、設置部3の前端側には下面止水部材23が配置される。下面止水部材23は、設置部3の幅方向の全体に配置される。なお、下面止水部材23の幅方向の端部には、隣り合う止水装置1の下面止水部材23同士が互いに噛み合うように、一部に切り欠き部が形成される。下面止水部材23は、例えば発泡樹脂やゴム製など圧縮変形可能な部材で構成される。
【0036】
また、設置部3の幅方向の端部側の下面には、下面止水部材23とつながるように、下面止水部材24が配置される。下面止水部材24は、止水装置1の前後方向に対して全体に配置される。下面止水部材24は、例えば発泡樹脂やゴム製など圧縮変形可能な部材で構成される。なお、下面止水部材24は、必ずしもすべての止水装置1に対して必須ではなく、詳細は後述するが、止水装置1を併設した際に、両端部に位置する止水装置1にのみ配置してもよい。
【0037】
また、設置部3の下面止水部材23の後方には、排水溝25が設けられる。排水溝25は、設置部3の幅方向の略中央であって、下面止水部材23の後方から、設置部3の後端まで連続する。排水溝25は設置部3の下面に設けられた溝であり、下面止水部材23を超えて設置部3の下方に浸入した水を止水装置1の後方へ排出するための部位である。このように設置部3の下面に排水溝25を設けることで、設置部3の下方の水による水圧によって、止水装置1を持ち上げようとする力が生じることを抑制することができる。
【0038】
設置部3の下面には、下面止水部材23の後方であって、排水溝25の両側に、滑り防止部材27が配置される。滑り防止部材27は、止水装置1を地面等の設置面に設置した際に、止水装置1のずれや意図しない移動を抑制するための部材である。滑り防止部材27は、例えばゴム製など圧縮変形可能な部材で構成される。
【0039】
次に、各部の構造についてより詳細に説明する。図4(a)は、閉じた状態の止水装置1の側面図であり、図4(b)は、図4(a)のヒンジ部7近傍の拡大図である。図5(a)は、開いた状態の止水装置1の側面図であり、図5(b)は、図5(a)のヒンジ部7近傍の拡大図である。
【0040】
前述したように、設置部3に対して、ヒンジ部7を介して起立部5を開くことができる。この際、ヒンジ部7の後方には溝31が形成され、溝31には、ヒンジ部止水部材29が配置される。ヒンジ部止水部材29は、例えばゴム製など圧縮変形可能な部材で構成される。
【0041】
図5(b)に示すように、起立部5を設置部3に対して起立させた状態において、設置部3と起立部5とでヒンジ部止水部材29が挟み込まれる。より詳細には、起立部5の後端面と設置部3の上面がヒンジ部止水部材29と密着する。このため、ヒンジ部7の後方において、設置部3と起立部5との間の隙間を、ヒンジ部止水部材29によって止水することができる。
【0042】
次に、設置部3についてより詳細に説明する。図6(a)は止水装置1を設置した状態を示す平面図であり、図6(b)は図6(a)のE-E線断面図である。設置部3は、全周にわたって周縁部が起立した側壁が形成される。すなわち、設置部3の上面は、升形状である。このため、設置部3の上面は、水32を貯留することが可能な貯水部となる。
【0043】
このように設置部3の上部に水32を貯留可能とすることで、止水装置1を設置した後に、水32によって重量を増加させ、止水装置1の錘とすることができる。このため、風などによる止水装置1のずれや移動を抑制することができる。なお、設置部3の上面に形成される貯水部としては、升形状ではなく、タンク形状であってもよい。
【0044】
次に、止水装置の設置方法を説明する。図7(a)は、設置部3の連結前の状態を示す正面図であり、図7(b)は、設置部3同士を連結した状態を示す図である。なお、以下の説明において、隣り合う止水装置を区別するため、既設の止水装置1の隣に、新たに止水装置1aを設置するものとして説明するが、止水装置1aは止水装置1と全く同一の構成である。
【0045】
図7(a)に示すように、止水装置1を設置面である地面に載置して、起立部5を開き、固定部材19で設置部3と起立部5とを固定することで、止水装置1が設置される。次に、既設の止水装置1に対して、止水装置1aを設置する。この際、止水装置1aは、起立部5を折り畳んだ状態で、止水装置1に隣接するように配置する。
【0046】
図8(a)は、図7(a)の状態におけるF部の拡大断面図である。前述したように、止水装置1の一方の端部側(図中左側の端部)には、設置部連結部9aが設けられる。設置部連結部9aは、上方に開口した溝部15aを有する。また、溝部15aの外側の側壁部が、上方に向けて突出する凸部15cとなる。
【0047】
また、止水装置1aの他方の端部側(図中右側の端部)には、設置部連結部9bが設けられる。設置部連結部9bは、下方に向けて突出する爪部15bを有する。また、爪部15bの内側には、下方に向けて露出する連結部止水部材21bが設けられる。連結部止水部材21bは、例えばゴム製など圧縮変形可能な部材で構成される。
【0048】
図7(b)は、設置部3同士が連結された状態を示す正面図であり、図8(b)は、図7(b)のH部における拡大断面図である。止水装置1aを止水装置1の隣に配置する際には、止水装置1aの設置部連結部9bの爪部15bを、止水装置1の設置部連結部9aの溝部15aへ挿入する(図中矢印G)。爪部15bを溝部15aへ挿入すると、設置部連結部9aの凸部15cが、設置部連結部9bの連結部止水部材21bと密着する。なお、図示した例では、連結部止水部材21bが大きく変形している例を示すが、連結部止水部材21bと凸部15cとが密着できれば、連結部止水部材21bの変形はわずかでよい。
【0049】
このように、止水装置1aの設置部連結部9bは、隣り合う他の止水装置1の設置部連結部9aに対して、下方に向けて連結させることが可能である。このため、既設の止水装置1の隣の所定の位置に、止水装置1aを配置するのみで、設置部3同士の連結が完了する。この際、設置部連結部9aと設置部連結部9bとの連結部には、連結部止水部材21bが配置されるため、連結部における止水性も確保することができる。
【0050】
ここで、前述したように、設置部連結部9aと設置部連結部9bは、溝部15aと爪部15bとを有し、互いの溝部15aと爪部15bが互いに噛み合うことで連結可能である。この際、図8(c)に示すように、溝部15aと爪部15bとの間にはクリアランス33が形成される。このため、止水装置1、1aの連結方向の連結長さ(図中J)及び連結角度(図中I)を調整可能である。このようにすることで、止水装置同士の連結長さの調整が可能であるとともに、地面が平らでない場合にも確実に止水装置同士を連結して止水性を確保することができる。
【0051】
次に、止水装置1aの起立部5を開いて、設置部3に対して起立させる。図9(a)は、止水装置1aの起立部5を開く前の平面図であり、図9(b)は、起立部5を開いて起立させた状態を示す平面図である。前述したように、隣り合う止水装置1、1aの設置部3の端部が連結して重なり合っているため、起立部5を開くと(図中矢印K)、起立部5同士にも重なり部が形成される。
【0052】
図10(a)は、図9(b)のL部における連結前の状態を示す拡大断面図であり、図10(b)は、図9(b)のL部における連結後の状態を示す拡大断面図である。前述したように、止水装置1の一方の端部側(図中左側の端部)には、起立部連結部11aが設けられる。起立部連結部11aは、起立させた際の前方(閉じた際の下面側)に開口した溝部17aを有する。また、溝部17aの側壁部が、前方(閉じた際の下面側)に向けて突出する凸部17cとなる。
【0053】
また、止水装置1aの他方の端部側(図中右側の端部)には、起立部連結部11bが設けられる。起立部連結部11bは、起立させた際の後方(閉じた際の上面側)に向けて突出する爪部17bを有する。また、爪部17bの内側には爪部17bの突出方向に露出する連結部止水部材21aが設けられる。連結部止水部材21aは、例えばゴム製など圧縮変形可能な部材で構成される。
【0054】
止水装置1aの起立部5を開くと、止水装置1aの起立部連結部11bの爪部17bが、止水装置1の起立部連結部11aの溝部17aへ挿入される。爪部17bが溝部17aへ挿入されると、起立部連結部11aの凸部17cが、起立部連結部11bの連結部止水部材21aと密着する。以上により、起立部5同士が連結される。
【0055】
このように、止水装置1aの起立部連結部11bは、隣り合う他の止水装置1の起立部連結部11aに対して、起立部5の開方向へ向けて連結させることが可能である。このため、既設の止水装置1の隣の所定の位置に、止水装置1aを配置して設置部3同士が連結し、止水装置1aの起立部5を開くだけで、起立部5同士の連結が完了する。この際、起立部連結部11aと起立部連結部11bとの連結部には、連結部止水部材21aが配置されるため、連結部における止水性も確保することができる。
【0056】
ここで、設置部3同士の連結部と同様に、起立部連結部11aと起立部連結部11bは、溝部17aと爪部17bとを有し、互いの溝部17aと爪部17bが互いに噛み合うことで連結可能である。この際、図10(c)に示すように、溝部17aと爪部17bとの間にはクリアランス35が形成される。このため、止水装置1、1aの連結方向の連結長さ(図中M)及び連結角度(図中L)を調整可能である。このようにすることで、止水装置同士の連結長さ調整が可能であるとともに、止水装置同士を所定の角度で曲げて連結することができる。
【0057】
なお、上述した例では、設置部連結部9bに連結部止水部材21aを配置したが、設置部連結部9a側に設けてもよい。同様に、起立部連結部11bに連結部止水部材21aを配置したが、起立部連結部11a側に設けてもよい。また、設置部連結部9aに溝部15aを設け、設置部連結部9bに爪部15bを設けたが、設置部連結部9aに爪部15bを設け、設置部連結部9bに溝部15aを設けてもよい。同様に、起立部連結部11aに溝部17aを設け、起立部連結部11bに爪部17bを設けたが、起立部連結部11aに爪部17bを設け、起立部連結部11bに溝部17aを設けてもよい。
【0058】
図11は、複数の止水装置を連結して形成した止水構造30を示す概念図である。止水装置1を幅方向(図中C、D方向)に複数連結し、所定の長さに形成することで、止水装置1の前方側(図中A方向)からの水を、止水装置1(起立部5)によってせき止めることができる。
【0059】
なお、起立部5の前面側には水圧がかかるが、設置部3の上方にも水圧がかかるため、止水装置1が倒れることがない。また、設置部3の上方からの水圧によって、下面止水部材23(図3参照)が地面に押し付けられるため、下面止水部材23、24が地面に密着し、設置部3の下面への水の流出を抑制することができる。また、設置部3の上方からの水圧によって、滑り防止部材27(図3参照)が地面に押し付けられるため、滑り防止部材27が地面に密着し、止水装置1がずれることを抑制することができる。
【0060】
また、前述したように、ヒンジ部7の後方にヒンジ部止水部材29が配置されるため、設置部3と起立部5との隙間からの水の流出を抑制することができる。また、起立部連結部11a、11bの連結部、及び、設置部連結部9a、9bの連結部に、それぞれ、連結部止水部材21a、21bが配置されるため、止水装置同士の隙間からの水の流出を抑制することができる。このように止水構造30によれば、止水装置1の後方(図中B方向)への水の流出を抑制することができる。
【0061】
なお、止水装置1は、例えば建物等の出入口の止水にも用いられる。図12は、止水装置1を用いた、建物の出入口41への水の浸入を防ぐための止水構造30aを示す図である。複数の止水装置1が連結されて設置部3が地面37上に設置されて、建物の出入口41の両側の壁面39にまたがるように配置される。すなわち、併設された止水装置1の内、少なくとも両端の止水装置1は、出入口41の両側の壁面39にはみ出すように配置される。
【0062】
このように、止水構造30は、少なくとも一部の止水装置1の起立部5の背面の一部のみが、壁面39と対向するように配置される。この際、起立部5の背面側には、幅方向の少なくとも両端部側において、凹凸の無い平坦面が形成され、壁面39と起立部5の平坦面とが対面する。
【0063】
併設された止水装置1の内、両端の止水装置1に対して、壁面39と、止水装置1の起立部5の背面との間には、止水部材43が挟み込まれる。止水部材43は、ゴムやスポンジなどの弾性部材であり、壁面39と起立部5の背面に密着することで、両者の隙間を埋めることができる。このようにすることで、設置部3の下面に配置された下面止水部材23と、ヒンジ部7におけるヒンジ部止水部材29による、前方からの水の浸入を防ぐことができるとともに起立部5と壁面39の隙間からの水の浸入を防ぐことができる。
【0064】
また、前述したように、併設された止水装置1の側方からの水の浸入は、設置部3の下面に配置された下面止水部材24によって防ぐことができる。この際、全ての止水装置1に対して下面止水部材24を配置する必要はなく、併設された止水装置1の内、両端の止水装置1に対してのみ、下面止水部材24を配置すればよい。さらに、下面止水部材24は、止水装置1の幅方向の両端に一対配置する必要はなく、併設された際に、外側に位置する部位にのみ下面止水部材24を配置すればよい。
【0065】
ここで、出入口41(壁面39)前の地面37が、平坦である場合には、下面止水部材23、24によって、前方及び側方からの水の浸入を防ぐことができるが、地面37に、ブロックやタイル等の目地部などの溝が形成される場合がある。図示した例では、壁面39(出入口41)に対して略垂直な方向に向けて形成される溝45aと、壁面39(出入口41)に対して略平行な方向に向けて形成される溝45bとが形成される。
【0066】
図13(a)は、止水構造30aの平面図である。前述したように、止水装置1の設置部3の底面側には下面止水部材23、24が配置され、下面止水部材23の変形によって、地面37の細かな凹凸にも密着して、止水装置1の前方及び側方から、止水装置1の下面側への水の浸入が抑制される。
【0067】
ここで、下面止水部材23、24は、上方からの止水装置1による荷重(重力)によって変形する。この荷重による変形量は、下面止水部材23、24の材質等によって調整可能であるが、所定の荷重における変形量が小さすぎると、凹凸への追従が十分ではなくなり、十分な止水性を得ることができない。一方、所定の荷重における変形量が大きすぎると、過剰に柔軟となり、地面との密着力が不足して却って止水性が悪化する。このため、適切な弾性変形能(圧縮弾性率)が求められる。
【0068】
一方、通常の地面37における細かな凹凸に対して、適切な変形量を有する下面止水部材を選択すると、タイル目地などのように、地面の細かな凹凸と比較して深く、また、幅が細くて長手方向に連続するような溝45a、45bに対して十分な止水性を確保できない場合がある。
【0069】
図13(b)は、図13(a)のN部における断面概念図である。下面止水部材23は、止水装置1の幅方向に連続するが、溝45a以外の部位では所定の圧縮量で変形するが、この圧縮量が十分でないと、溝45aを完全にふさぐことができず、溝45aが水の浸入経路となりうる。すなわち、図13(a)に示すように、溝45aにおける隙間を伝って、水が止水装置1の前方から後方へ浸入する恐れがある(図中矢印O)。同様に、溝45bを伝って、水が止水装置1の側方から後方へ浸入する恐れがある(図中矢印P)。
【0070】
図14は、このような溝45a、45bに対する止水性を確保することが可能な止水装置1bの底面図である。止水装置1bは、止水装置1と略同様の構造であるが、下面止水部材23a、24aが用いられる点で異なる。詳細は後述するが、下面止水部材23aは、凸形状を有する止水部材であり、下面止水部材23は、凸形状を有さない平坦な止水部材である。
【0071】
設置部3の前端側の下面において、設置部3の前端側に下面止水部材23aが配置され、下面止水部材23aの後方に下面止水部材23が配置される。すなわち、止水装置1(図3参照)に対して、下面止水部材23の一部が下面止水部材23aに置き代えられる。なお、止水装置1の下面止水部材23の全体を下面止水部材23aへ置き代えてもよい。
【0072】
また、下面止水部材24aは、止水装置1(図3参照)に対して、下面止水部材24が下面止水部材24aに置き代えられる。なお、前述したように、下面止水部材24aは、全ての止水装置1bに対して必要ではなく、併設して配置された複数の止水装置1bの内、両端に配置される止水装置1bの幅方向の外側にのみ配置すればよい。
【0073】
図15は、下面止水部材23aを示す斜視図である。なお、下面止水部材24aも構成は同様である。下面止水部材23aは、断面において、先端に行くにつれて細くなる凸形状の凸部47を有する。凸部47は、下面止水部材23aの長手方向に対して連続する。ここで、この凸部47の連続する方向(図中矢印Q方向)を、凸形状の尾根方向と称する。
【0074】
図14において、止水装置1bの前端側に配置される下面止水部材23aの凸形状の尾根方向は、設置部3の前端側の辺に略平行(図中C-D方向)である。また、設置部3の側部側に配置された下面止水部材24aの凸形状の尾根方向は、設置部3の側端側の辺に略平行(図中A-B方向)である。すなわち、それぞれの下面止水部材23a、24aが配置される側の設置部3の辺に略平行な向きに凸形状の尾根方向が向くように、下面止水部材23a、24aが配置される。このようにすることで、それぞれの辺と交差する溝(前端側の辺に対しては溝45aであり、側部側の辺に対しては溝45b)と、凸形状とを交差する向きに配置することができる。
【0075】
図16(a)~図16(c)は、このような向きに凸形状の尾根方向を向けて下面止水部材23aを配置した際の、溝45aに対する止水構造を示す図である。なお、下面止水部材24aと溝45bも同様である。
【0076】
図16(a)は、設置部3を設置する前の状態を示す図である。前述したように、紙面に対して垂直な方向(図13(a)の左右方向)が凸形状の尾根方向となり、溝45aがこれと直交する向き(図13(a)の上下方向)に形成される。なお、下面止水部材23、23aを併設する場合には、未圧縮の状態の下面止水部材23aの凸部47以外の部位の厚みと、下面止水部材23の厚みが略一致する。すなわち、凸部47が下方に突出する。
【0077】
図16(b)は、溝45aにおける止水部材の状態を示す図であり、図6(c)は、溝45a以外の部位における止水部材の状態を示す図である。凸部47は他の部位よりも下方に突出するため、上方からの荷重に対して、凸部47以外の部位に対して、凸部47には集中して力がかかる。このため、凸部47は、局所的に変形しやすい。このため、図16(c)に示すように、凸部47は、凸部47以外の部位と比較してより大きく変形しやすく、溝45a以外の部位においては、凸部47が止水性に大きな影響を与えることはない。
【0078】
一方、溝45a内では、凸部47は他の部位に対して十分な弾性反発力を有しているため、溝45aに密着して溝45aを塞ぎ、溝45aを経路とする水の浸入を防ぐことができる。このように、溝45aと交差する方向に凸部47の尾根方向を配置することで、確実に溝45aの一部を凸部47によって塞ぐことができる。
【0079】
なお、溝45bに対する下面止水部材24aの効果も同様である。また、図13(a)に示した例では、溝45a、45bが、止水装置1に対して直交するように形成されているが、前端部及び側部に対して交差する向きに形成される溝であれば、同様の効果を得ることができる。すなわち、地面の表面に溝が形成されている場合において、止水装置1bにおける止水部材の凸形状の尾根方向と溝が交わるように配置されていれば、互いに直交するように交差しなくてもよい。
【0080】
また、起立部5の側部側の背面に配置した止水部材43を、起立部5と一体化してもよい。また、止水部材43も、凸部47を有する止水部材としてもよい。この場合には、起立部5の側部側に配置された止水部材43の凸形状の尾根方向が、起立部5の側端側の辺に略平行であるようにすれば、側方からの水の浸入を防ぐことができる。
【0081】
なお、凸形状を有する止水部材としては、図17に示すように、凸形状が複数併設された波型の断面形状を有していてもよい。なお、図では、下面止水部材23aを示すが、下面止水部材24aや、止水部材43に対しても同様である。この場合も、全ての凸部47の凸形状が略平行に形成され、凸形状の尾根方向を、設置部3又は起立部5の対応する辺に平行に向けて配置すればよい。
【0082】
次に、止水装置1の保管及び運搬方法について説明する。図18(a)は、止水装置1を積み重ねた状態を示す側面図であり、図18(b)は、図18(a)のR-R線断面図である。なお、以下の説明では止水装置1を用いて説明するが、止水装置1bも同様である。前述したように、止水装置1は、保管及び運搬時には折り畳んだ状態とすることができる。なお、止水装置1を積み重ねる際には、底面を上方に向けて、設置状態とは逆向きにして積層させる。
【0083】
図示したように、設置部3の長さは、起立部5の長さよりも長い。このようにすることで、止水構造30(図11参照)において、設置部3に対する水圧を十分に受けることができるため、止水装置1の後方への転倒を抑制することができる。このように設置部3の長さが長いため、起立部5を折り畳んだ際に、起立部5の前端部から設置部3の一部がはみ出す。
【0084】
ここで、前述したように、設置部3の前端部近傍における下面側には、下面止水部材23(及び下面止水部材23a)が配置される。この際、下面止水部材23(及び下面止水部材23a)の前後方向の長さをL1とし、起立部5の前端からの設置部3の前端部のはみ出し長さをL2とすると、
L1≦L2
が成立する。
【0085】
このようにすることで、止水装置1を積み重ねても、下面止水部材23(及び下面止水部材23a)が、上方に重ねられた他の止水装置1と接触することがなく、下面止水部材23(及び下面止水部材23a)が潰れたり傷ついたりすることを抑制することができる。
【0086】
また、図1に示すように、起立部5の外面側には、凸部13が形成される。凸部13は、起立部5の略中央部に、前後方向に沿って所定の範囲に形成される。なお、凸部13は、止水装置1を畳んで重ねた際における滑り防止部材27に対応する部位を避けた位置に形成される。したがって、止水装置1を積み重ねると、上方の止水装置1の凸部13が、下方の止水装置1の設置部3の下面(滑り防止部材27以外の部位)と接触する。
【0087】
ここで、図17(a)に示すように、滑り防止部材27の厚みをT1とし、図17(b)に示すように、凸部13の突出高さをT2とすると、
T2≧T1
が成立する。
【0088】
このようにすることで、止水装置1を積み重ねても、滑り防止部材27が上方の他の止水装置1によって押しつぶされることがなく、滑り防止部材27が潰れたり傷ついたりすることを抑制することができる。
【0089】
なお、下面止水部材24(又は下面止水部材24a)を設ける場合には、凸部13が、滑り防止部材27と共に、下面止水部材24(又は下面止水部材24a)に対応する部位を避けた位置に形成される。また、凸部13の突出高さT2を、下面止水部材24(又は下面止水部材24a)及び滑り防止部材27の厚みT1以上とする。このようにすることで、止水装置1を積み重ねても、下面止水部材24(又は下面止水部材24a)及び滑り防止部材27が上方の他の止水装置1によって押しつぶされることがなく、下面止水部材24(又は下面止水部材24a)及び滑り防止部材27が潰れたり傷ついたりすることを抑制することができる。
【0090】
なお、止水装置1同士を積み重ねた際に、止水装置1同士のずれを防止するため、例えば、設置部3の下面に、凸部13が嵌り込むような凹部を形成してもよい。この場合でも、凸部13の突出代が下面止水部材24(又は下面止水部材24a)及び滑り防止部材27の厚み以上であれば、滑り防止部材27等の潰れ等を抑制することができる。
【0091】
以上、本実施の形態によれば、止水装置1等は、使用時以外は折り畳むことができるため、保管時や運搬時に場所をとることがない。また、止水装置1等は、ヒンジ部7によって設置部3と起立部5とを開くことができるため、開閉を繰り返すことが可能である。
【0092】
また、壁面39と対向する起立部5を平坦面として、併設される複数の止水装置の内、両端に配置される止水装置の起立部5の背面と壁面39との間にのみ止水部材43を配置することで、必要最小限の止水部材43の使用で、止水性を確保することができる。
【0093】
また、保管時には、止水装置を上下逆さまにして重ねることが可能である。この際、設置部3の長さが起立部5の長さよりも十分に長いため、下面止水部材23、23aの上に起立部5が重なることがなく、下面止水部材23、23aの潰れ等を抑制することができる。
【0094】
また、設置部3の下面に凸部47を有する下面止水部材23a、24aを配置することで、地面37に形成された、止水装置の各辺に交差する溝45a、45bに対しても、高い止水性を確保することができる。
【0095】
同様に、起立部5の背面に、凸部47を有する止水部材を用いれば、壁面39に形成された、起立部5の側辺に交差する溝に対しても、高い止水性を確保することができる。
【0096】
また、凸形状を有しない平坦な下面止水部材23と、凸形状を有する下面止水部材23aとを組み合わせることで、凸形状を有する特殊な形状の止水部材の使用量を減らし、効率よく止水性を高めることができる。
【0097】
また、設置部3の下面の下面止水部材24、24aや滑り防止部材27を避けた位置であって、起立部5の上面に凸部13を形成することで、凸部13の突出代分だけ設置部3の下面(積み重ねた際の上面)と起立部5の上面(積み重ねた際の下面)の間に隙間を形成することができる。このため、止水装置を積み重ねた際に、下面止水部材24、24aや滑り防止部材27に荷重がかかることがなく、下面止水部材24、24aや滑り防止部材27の潰れ等を抑制することができる。
【0098】
なお、設置部3及び起立部5同士の連結構造や止水構造は、上述した実施形態には限られず、他の構造であってもよい。例えば、設置部3と起立部5とが所定の角度で固定された略L字状の部材にも適用可能である。
【0099】
図19は、止水装置1cの下方斜視図である。止水装置1cは、設置部3と起立部5とが開閉可能ではなく、略L字状に固定されたものである。なお、止水装置1c同士の連結構造については、図示を省略する。止水装置1cにおいても、設置部3の前端側の底面に下面止水部材23a、23を配置することで、地面37に溝45aがある場合でも、止水性を確保することができる。なお、設置部3の幅方向の側端側の底面に下面止水部材24aをさらに配置してもよく、起立部5の幅方向の側端側の背面に凸形状を有する止水部材をさらに配置してもよい。
【0100】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0101】
1、1a、1b、1c……止水装置
3………設置部
5………起立部
7………ヒンジ部
9a、9b………設置部連結部
11a、11b………起立部連結部
13………凸部
15a、17a………溝部
15b、17b………爪部
15c、17c………凸部
19………固定部材
21a、21b………連結部止水部材
23、24………下面止水部材
25………排水溝
27………滑り防止部材
29………ヒンジ部止水部材
30、30a………止水構造
31………溝
32………水
33、35………クリアランス
37………地面
39………壁面
41………出入口
43………止水部材
45a、45b………溝
47………凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19