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特許7444857室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物および電気・電子部品の保護剤または接着剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物および電気・電子部品の保護剤または接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/06 20060101AFI20240228BHJP
   C08K 3/01 20180101ALI20240228BHJP
   C08K 5/5415 20060101ALI20240228BHJP
   C09D 183/06 20060101ALI20240228BHJP
   C09J 183/06 20060101ALI20240228BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20240228BHJP
   H01B 3/46 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
C08L83/06
C08K3/01
C08K5/5415
C09D183/06
C09J183/06
C09K3/10 G
H01B3/46 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021511419
(86)(22)【出願日】2020-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2020011999
(87)【国際公開番号】W WO2020203298
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-03-06
(31)【優先権主張番号】P 2019065808
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】719000328
【氏名又は名称】ダウ・東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】太田 健治
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-150491(JP,A)
【文献】特開平10-316861(JP,A)
【文献】国際公開第2015/093139(WO,A1)
【文献】特開2013-216716(JP,A)
【文献】特開平10-195085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00-83/16
C08K 5/54-5/5419
C08K 3/00-3/40
C09D 183/06
C09J 183/06
C09K 3/10
H01B 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分子鎖末端がヒドロキシシリル基で封鎖された25℃における粘度が20~1,000,000mPa・sであるジオルガノポリシロキサン 100重量部、
(B)分子鎖末端がアルコキシシリル基で封鎖された25℃における粘度が20~1,000,000mPa・sであるジオルガノポリシロキサン、(A)成分100質量部に対して50~200質量部、
)機能性フィラー、
(D)1分子中にケイ素原子に結合しているアルコキシ基を2個以上有する化合物 0.1~30質量部、および
(E)触媒量の縮合反応用触媒、
を含有してなり、
前記(D)が以下の(d2)と(d3)の少なくとも何れかの化合物を含み、
(d2)一分子中に少なくとも二つのアルコキシシリル基を有し、かつそれらのシリル基の間にケイ素-酸素結合以外の結合が含まれている有機化合物、
(d3)アミノ基含有オルガノアルコキシシランとエポキシ基含有オルガノアルコキシシランとの反応混合物、
別に保存される以下の(I)液および(II)液を少なくとも含み、
(I)液成分が、前記の(A)成分および(C)成分を含み、(B)成分および(E)成分を含まず、
(II)液成分が、前記の(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分を含み、(A)成分を含まないことを特徴とする室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項2】
前記(A)成分が、(A-1)分子鎖両末端がヒドロキシシリル基で封鎖されたジオルガノポリシロキサンと(A-2)分子鎖の片末端のみがヒドロキシシリル基で封鎖されたジオルガノポリシロキサンジオルガノポリシロキサンとの混合物であって、
その混合比が、質量比で(A-1):(A-2)=95:5~70:30の範囲である、請求項1に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項3】
二液型である、請求項1~2のいずれか1項に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物からなる、電気・電子部品の保護剤または接着剤組成物。
【請求項5】
電気・電子部品が請求項1~3のいずれか1項に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物により封止またはシールされてなる電気・電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室温により容易に硬化し、各種基材への接着性に優れた硬化性オルガノポリシロキサン組成物に関するものであり、さらに、当該硬化性オルガノポリシロキサン組成物からなる電気・電子部品の保護剤または接着剤組成物、これらの硬化性オルガノポリシロキサン組成物により電気・電子部品が封止またはシールされてなる電気・電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、電気・電子部品の保護剤組成物として広く使用されているが、保護材としての信頼性および耐久性の見地から、硬化途上で接触する基材に対し、優れた自己接着性を示すことが求められる。例えば、特許文献1では未洗浄のアルミダイキャスト等への接着性に優れ、100℃程度の加熱により硬化する、1分子中に特定のアルコキシシリル基およびアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンを含有するヒドロシリル化反応硬化型の硬化性オルガノポリシロキサン組成物が提案されている。また、同文献には、チタン化合物等が接着促進用触媒として使用可能であることが記載されている。しかしながら、前記の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、ヒドロシリル化反応硬化型の組成物であり、100℃程度に加熱しなければ硬化せず、また、各種基材への接着性について未だ改善の余地があった。また、塗布面に硬化阻害物質であるアミン化合物等を含む金属切削油が残存してしまうと、硬化不良が生じてしまう問題があった。
【0003】
一方、特許文献2では、空気中の水分と接触することにより室温で硬化し、硬化途上で接触している基材に対して良好な接着性を示す室温硬化性シリコーンゴム組成物として、トリメトキシシリルエチル含有基等の特定のアルコキシシリル基を有するジオルガノポリシロキサン、当該アルコキシシリル基および水酸基を有しないオルガノポリシロキサン、架橋剤であるアルコキシシランまたはその加水分解物、および縮合反応触媒からなる室温硬化性シリコーンゴム組成物が提案されている。しかしながら、特許文献2に係る室温硬化性シリコーンゴム組成物は、室温下での硬化速度が不十分であり、各種基材への接着性について未だ改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-348119号公報
【文献】特開2012-219113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、従来の硬化性オルガノポリシロキサン組成物と異なり、室温により容易に硬化し、硬化途上で接触している各種基材、特に、未洗浄のアルミダイキャスト、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂等の有機樹脂に対して初期接着性に優れ、硬化後は、高い接着強度を実現できる硬化性オルガノポリシロキサン組成物を提供することを目的とする。
【0006】
特に、本発明は、前記の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を用いることにより、室温で硬化し、アルミダイキャストや樹脂材料への初期接着性および接着耐久性に優れ、電気・電子部品の信頼性・耐久性を長期間に渡って維持することを可能とする、電気・電子部品の保護剤または接着剤組成物を提供することを目的とする。また、そのような信頼性・耐久性に優れた電気・電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
鋭意検討の結果、本発明者らは、以下の(A)~(E)成分を含有してなる、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物により、上記課題を解決できる事を見出し、本発明に到達した。
(A)分子鎖末端がヒドロキシシリル基で封鎖された25℃における粘度が20~1,000,000mPa・sであるジオルガノポリシロキサン 100重量部、
(B)分子鎖末端がアルコキシシリル基で封鎖された25℃における粘度が20~1,000,000mPa・sであるジオルガノポリシロキサン、(A)成分100質量部に対して50~200質量部、
(C)機能性フィラー、
(D)1分子中にケイ素原子に結合しているアルコキシ基を2個以上有する化合物0.1~30質量部、および
(E)触媒量の縮合反応用触媒、
を含有してなり、個別に保存される以下の(I)液および(II)液を少なくとも含み、
(I)液成分が、前記の(A)成分および(C)成分を含み、(B)成分および(E)成分を含まず、
(II)液成分が、前記の(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分を含み、(A)成分を含まないことを特徴とする室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【0008】
なお、本発明の目的は、前記の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を、電気・電子部品の保護剤または接着剤として使用することにより達成されうる。同様に、本発明の目的は、前記の硬化性オルガノポリシロキサン組成物により、電気・電子部品を保護または接着する方法、または、前記の硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物を供えた電気・電子機器によっても達成されうる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物により、室温で容易に硬化し、硬化途上で接触している各種基材、特に、未洗浄のアルミダイキャスト、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂等の有機樹脂に対して初期接着性に優れ、硬化後は、高い接着強度を実現できる硬化性オルガノポリシロキサン組成物を提供することができる。
【0010】
また、本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を用いることにより、室温で硬化し、アルミダイキャストや樹脂材料への初期接着性および接着耐久性に優れ、電気・電子部品の信頼性・耐久性を長期間に渡って維持することを可能とする、電気・電子部品の保護剤または接着剤組成物を提供することができる。また、そのような信頼性・耐久性に優れた電気・電子部品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、(I)液成分と(II)液成分で異なるオルガノポリシロキサンを用いることで、保存安定性に優れながら、深部硬化性に優れる組成物が得られることを見出し、本発明をなすに至ったものである。以下、詳細に説明する。
【0012】
(A)成分は、上記硬化性オルガノポリシロキサン組成物(I)液成分の主剤であり、必要に応じて(A-1)分子鎖両末端がヒドロキシシリル基で封鎖されたジオルガノポリシロキサンと(A-2)分子鎖の片末端のみがヒドロキシシリル基で封鎖されたジオルガノポリシロキサンジオルガノポリシロキサンの混合物であってもよい。
【0013】
(A)成分において、(A-2)成分が多すぎると硬化後のシリコーンエラストマーの
強度が低下したり、基体との接着性が低下したりする傾向がある。その混合比は、質量比で(A-1):(A-2)=100:0~20:80の範囲にあることが好ましく、(A-1):(A-2)=100:0~60:40の範囲であることがより好ましく、(A-1):(A-2)=95:5~70:30の範囲であることが更に好ましく、(A-1):(A-2)=95:5~80:20の範囲であることが最も好ましい。
【0014】
また、(A)成分の粘度は低すぎると硬化後のシリコーンエラストマーの強度が低くなり、高すぎると製造時および使用時の作業性が低下するので、25℃における粘度が20~1,000,000mPa・sの範囲内にあることが好ましく、100~200,000mPa・sの範囲内にあることがより好ましい。なお、(A)成分が(A-1)成分と(A
-2)成分の混合物である場合は、上記粘度は混合物としての粘度である。
【0015】
好ましい(A-1)成分は一般式:
【化1】
で表されるジオルガノポリシロキサンである。式中、R1は水素原子であり、aは2である。R2は一価炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基およびシアノアルキル基から選ばれる基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基等の炭素原子数1~10のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルフロピル基等のアラルキル基;トリフルオロプロピル基、クロロプロピル基等のハロゲン化炭化水素基;β-シアノエチル基、γ-シアノプロピル基等のシアノアルキル基が例示される。中でもメチル基であることが好ましい。
【0016】
Yは酸素原子、二価炭化水素基、または一般式:
【化2】
(式中、R2は前記と同じであり、Zは二価炭化水素基である。)で示される基である。二価炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキセン基などの炭素原子1~10のアルキレン基であることが好ましい。nは25℃における粘度が20~1,000,000mPa・sとなるような数である。
【0017】
(A-1)成分は周知の方法、例えば、特公平3-4566号公報、特開昭63-270762公報に記載された方法により製造することができる。
【0018】
(A-2)成分は本発明組成物の硬化物であるシリコーンエラストマーのモジュラスを低くしたり、難接着性の基材への接着性を向上させたりする働きをする。好ましい(A-2)成分としては、一般式:
【化3】
で示されるジオルガノポリシロキサンである。式中、R1、R2、Y、aは前記と同じであり、R3はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基等の炭素原子数1~10のアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基であり、好ましくは炭素原子数1~10のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。mは25℃における粘度が20~1,000,000mPa・sとなるような数を表す。
【0019】
(A-2)成分は周知の方法、例えば、特開平4-13767号公報、特開昭63-270762号公報に記載された方法により製造することができる。
【0020】
(B)成分は、上記硬化性オルガノポリシロキサン組成物(II)液成分の主剤であり、必要に応じて(B-1)分子鎖両末端がアルコキシシリル基で封鎖されたジオルガノポリシロキサンと(B-2)分子鎖の片末端のみがアルコキシシリル基で封鎖されたジオルガノポリシロキサンジオルガノポリシロキサンの混合物であってもよい。
【0021】
また、(B)成分の粘度は低すぎると硬化後のシリコーンエラストマーの強度が低くなり、高すぎると製造時および使用時の作業性が低下するので、25℃における粘度が20~1,000,000mPa・sの範囲内にあることが好ましく、100~200,000mPa・sの範囲内にあることがより好ましい。なお、(B)成分が(B-1)成分と(B
-2)成分の混合物である場合は、上記粘度は混合物としての粘度である。
【0022】
好ましい(B-1)成分は一般式:
【化4】
で表されるジオルガノポリシロキサンである。式中、R1はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基などの炭素原子数1~10のアルキル基;メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエトキシ基などのアルコキシアルキル基から選択される基であり、メチル基、エチル基であることが好ましい。R2は一価炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基およびシアノアルキル基から選ばれる基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基等の炭素原子数1~10のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルフロピル基等のアラルキル基;トリフルオロプロピル基、クロロプロピル基等のハロゲン化炭化水素基;β-シアノエチル基、γ-シアノプロピル基等のシアノアルキル基が例示される。中でもメチル基であることが好ましい。なお、aは0、1または2である。
【0023】
Yは酸素原子、二価炭化水素基、または一般式:
【化5】
(式中、R2は前記と同じであり、Zは二価炭化水素基である。)で示される基である。二価炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキセン基などの炭素原子1~10のアルキレン基であることが好ましい。nは25℃における粘度が20~1,000,000mPa・sとなるような数である。
【0024】
(B-1)成分は周知の方法、例えば、特公平3-4566号公報、特開昭63-270762公報に記載された方法により製造することができる。
【0025】
(B-2)成分は本発明組成物の硬化物であるシリコーンエラストマーのモジュラスを低くしたり、難接着性の基材への接着性を向上させたりする働きをする。好ましい(B-2)成分としては、一般式:
【化6】
で示されるジオルガノポリシロキサンである。式中、R1、R2、Y、aは前記と同じであり、R3はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基等の炭素原子数1~10のアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基であり、好ましくは炭素原子数1~10のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。mは25℃における粘度が20~1,000,000mPa・sとなるような数を表す。
【0026】
(B-2)成分は周知の方法、例えば、特開平4-13767号公報、特開昭63-2
70762号公報に記載された方法により製造することができる。
【0027】
[(C)機能性フィラー]
成分(C)は、本組成物および本組成物を硬化して得られるシリコーンゴム硬化物に機械的強度を付与し、保護剤または接着剤としての性能を向上させるための成分である。当該機能性フィラーは補強性フィラーおよび導電性フィラーから選ばれる1種類以上であることが好ましく、特に、本発明組成物を保護剤または接着剤用途で使用する場合には、補強性フィラーを含有することが好ましい。
【0028】
このような補強性フィラーとしては、例えば、ヒュームドシリカ微粉末、沈降性シリカ微粉末、焼成シリカ微粉末、ヒュームド二酸化チタン微粉末、石英微粉末、ケイ藻土微粉末、炭酸カルシウム微粉末、酸化アルミニウム微粉末、水酸化アルミニウム微粉末、酸化亜鉛微粉末、炭酸亜鉛微粉末等の無機質充填剤を挙げることができるが、耐熱性に悪影響を与えないものがより好ましく、ヒュームドシリカ微粉末、沈降性シリカ微粉末、焼成シリカ微粉末、ヒュームド二酸化チタン微粉末、石英微粉末、ケイ藻土微粉末が最適である。これらの無機質充填剤をメチルトリメトキシシラン等のオルガノアルコキシシラン、トリメチルクロロシラン等のオルガノハロシラン、ヘキサメチルジシラザン等のオルガノシラザン、α,ω-シラノール基封鎖ジメチルシロキサンオリゴマー、α,ω-シラノール基封鎖メチルフェニルシロキサンオリゴマー、α,ω-シラノール基封鎖メチルビニルシロキサンオリゴマー等のシロキサンオリゴマー等の処理剤により表面処理した無機質充填剤を含有してもよい。特に、分子鎖両末端にシラノール基を有する低重合度のオルガノポリシロキサン、好適には、分子中に当該末端シラノール基以外の反応性官能基を有しないα,ω-シラノール基封鎖ジメチルポリシロキサンにより成分(C)の表面を予め処理することにより、低温かつ短時間で優れた初期接着性、接着耐久性および接着強度を実現でき、さらに十分な使用可能時間(保存期間および取り扱い作業時間)を確保できる場合がある。
【0029】
補強性フィラーの微粉末の粒子径は、特に限定されないが、例えばレーザー回折散乱式粒度分布測定によるメジアン径で0.01μm~1000μmの範囲内であり得る。
【0030】
補強性フィラーの含有量は、限定されないが、組成物全体における成分(A)100質量部に対して0.1~200質量部の範囲内であり、組成物全体として、(I)液および(II)液中の成分(C)の総和は0.2~400質量部の範囲である。
【0031】
熱伝導性フィラーまたは導電性フィラーは、所望により、本組成物を硬化して得られるシリコーンゴム硬化物に熱伝導性または電気伝導性を付与する成分であり、金、銀、ニッケル、銅等の金属微粉末;セラミック、ガラス、石英、有機樹脂等の微粉末表面に金、銀、ニッケル、銅等の金属を蒸着またはメッキした微粉末;酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化亜鉛等の金属化合物、およびこれらの2種以上の混合物が例示される。特に好適には、銀粉末、アルミニウム粉末、酸化アルミニウム粉末、酸化亜鉛粉末、窒化アルミニウム粉末またはグラファイトである。また、本組成物に、電気絶縁性が求められる場合には、金属酸化物系粉末、または金属窒化物系粉末であることが好ましく、特に、酸化アルミニウム粉末、酸化亜鉛粉末、または窒化アルミニウム粉末であることが好ましい。また、これらの熱伝導性フィラーまたは導電性フィラーは、減圧下、100~200℃の温度で、前記の(A)成分と加熱混合することが好ましい。特に、(A)成分はアルコキシシリル含有基を有するオルガノポリシロキサンであり、熱伝導性フィラーまたは導電性フィラーの表面処理により、高充填しても低粘度で取扱作業性に優れる組成物を得られる場合がある。
【0032】
このような熱伝導性フィラーまたは導電性フィラーの平均粒子径としては、メジアン径で1~100μmの範囲内であることが好ましく、特に、1~50μmの範囲内であることが好ましい。
【0033】
[(D)1分子中にケイ素原子に結合しているアルコキシ基を2個以上有する化合物]
本発明の組成物に含有される化合物は、1分子中にケイ素原子に結合している、アルコキシ基を2個以上有する化合物であれば特に制限されない。
例えば、
(d1) 一般式:
【化7】
[式中、nは2,3または4であり、Rはアルキル基であり、Rは有機基である。]
で表される1分子中1個のケイ素原子を有し、ケイ素原子にアルコキシ基が2個以上結合している化合物、またはその加水分解縮合物が挙げられる。
【0034】
化合物(d1)は1分子中に1個以上の有機基を有することができる。
ケイ素化合物が有することができる有機基としては、例えば、酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでもよい炭化水素基が挙げられる。具体的には、例えば、アルキル基(炭素数1~18のものが好ましい。)、(メタ)アクリレート基、アルケニル基、アリール基、エポキシ基、これらの組合せが挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-メチルアリル基が挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。
【0035】
化合物(d1)としては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランのようなジアルコキシシラン;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランのようなトリアルコキシシラン;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロピルオキシシランのようなテトラアルコキシシラン;トリアルコキシシラン、テトラアルコキシシランの加水分解物;メチルトリヒドロキシシラン、エチルトリヒドロキシシラン、フェニルトリヒドロキシシランのようなトリヒドロキシシラン;テトラヒドロキシシラン;γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシランのような(メタ)アクリロキシアルキルトリアルコキシシラン、エポキシ基含有シランとしては、3-グリシドキシプロリルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシランが挙げられる。
【0036】
化合物(d2)は一分子中に少なくとも二つのアルコキシシリル基を有し、かつそれらのシリル基の間にケイ素-酸素結合以外の結合が含まれている有機化合物であり、単独でも初期接着性を改善するほか、特に前記の成分(d1)および成分(d3)と併用することにより本接着促進剤を含んでなる硬化物に苛酷な条件下での接着耐久性を向上させる働きをする。
【0037】
特に、成分(d2)は、下記の一般式:
【化8】
(式中、Rは置換または非置換の炭素原子数2~20のアルキレン基であり、Rは各々独立にアルキル基またはアルコキシアルキル基であり、Rは各々独立に一価炭化水素基であり、bは各々独立に0または1である。)で示されるジシラアルカン化合物が好適である。かかる成分(d2)は各種化合物が試薬や製品として市販されており,また必要ならグリニャール反応やヒドロシリル化反応等,公知の方法を用いて合成することができる。例えば、ジエンとトリアルコキシシランまたはオルガノジアルコキシシランとをヒドロシリル化反応させるという周知の方法により合成することができる。
【0038】
式中、Rはメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基等のアリール基で例示される一価炭化水素基であり、低級アルキル基が好ましい。Rはメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;メトキシエチル基等のアルコキシアルキル基であり、その炭素原子数が4以下のものが好ましい。Rは置換または非置換のアルキレン基であり、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基が制限なく用いられ、これらの混合物であっても良い。接着性改善の見地から、炭素数は2~20の直鎖および/または分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、炭素原子数5~10の直鎖および/または分岐鎖状のアルキレン、特に炭素原子数6のヘキシレンが好ましい。非置換アルキレン基はブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基またはこれらの分岐鎖状体であり、その水素原子がメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビニル基、アリル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、3-クロロプロピル基によって置換されていても構わない。
【0039】
化合物(d2)の具体例としては、ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,2-ビス(メチルジメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(メチルジエトキシシリル)エタン、1,1-ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,4-ビス(トリメトキシシリル)ブタン、1,4-ビス(トリエトキシシリル)ブタン、1-メチルジメトキシシリル-4-トリメトキシシリルブタン、1-メチルジエトキシシリル-4-トリエトキシシリルブタン、1,4-ビス(メチルジメトキシシリル)ブタン、1,4-ビス(メチルジエトキシシリル)ブタン、1,5-ビス(トリメトキシシリル)ペンタン、1,5-ビス(トリエトキシシリル)ペンタン、1,4-ビス(トリメトキシシリル)ペンタン、1,4-ビス(トリエトキシシリル)ペンタン、1-メチルジメトキシシリル-5-トリメトキシシリルペンタン、1-メチルジエトキシシリル-5-トリエトキシシリルペンタン、1,5-ビス(メチルジメトキシシリル)ペンタン、1,5-ビス(メチルジエトキシシリル)ペンタン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,6-ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、1,4-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,5-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、2,5-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1-メチルジメトキシシリル-6-トリメトキシシリルヘキサン、1-フェニルジエトキシシリル-6-トリエトキシシリルヘキサン、1,6-ビス(メチルジメトキシシリル)ヘキサン、1,7-ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、2,5-ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、2,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、1,8-ビス(トリメトキシシリル)オクタン、2,5-ビス(トリメトキシシリル)オクタン、2,7-ビス(トリメトキシシリル)オクタン、1,9-ビス(トリメトキシシリル)ノナン、2,7-ビス(トリメトキシシリル)ノナン、1,10-ビス(トリメトキシシリル)デカン、3,8-ビス(トリメトキシシリル)デカンが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、また2種以上を混合しても良い。本発明において、好適には、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,6-ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、1,4-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,5-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、2,5-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1-メチルジメトキシシリル-6-トリメトキシシリルヘキサン、1-フェニルジエトキシシリル-6-トリエトキシシリルヘキサン、1,6-ビス(メチルジメトキシシリル)ヘキサンが例示できる。
【0040】
化合物(d3)は、アミノ基含有オルガノアルコキシシランとエポキシ基含有オルガノアルコキシシランとの反応混合物である。このような化合物(d3)は、硬化途上で接触している各種基材に対する初期接着性、特に未洗浄被着体に対しても低温接着性を付与するための成分である。また、本接着促進剤を配合した硬化性組成物の硬化系によっては、架橋剤としても作用する場合もある。このような反応混合物は、特公昭52-8854号公報や特開平10-195085号公報に開示されている。
【0041】
このような化合物(d3)を構成するアミノ基含有有機基を有するアルコキシシランとしては、アミノメチルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)アミノメチルトリブトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アニリノプロピルトリエトキシシランが例示される。
【0042】
また、エポキシ基含有オルガノアルコキシシランとしては、3-グリシドキシプロリルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシランが例示される。
【0043】
これらアミノ基含有有機基を有するアルコキシシランとエポキシ基含有有機基を有するアルコキシシランとの比率はモル比で、(1:1.5)~(1:5)の範囲内にあることが好ましく、(1:2)~(1:4)の範囲内にあることが特に好ましい。この成分(e1)は、上記のようなアミノ基含有有機基を有するアルコキシシランとエポキシ基含有有機基を有するアルコキシシランとを混合して、室温下あるいは加熱下で反応させることによって容易に合成することができる。
【0044】
特に、本発明においては、特開平10-195085号公報に記載の方法により、アミノ基含有有機基を有するアルコキシシランとエポキシ基含有有機基を有するアルコキシシランとを反応させる際、特に、アルコール交換反応により環化させてなる、一般式:
【化9】
{式中、R1はアルキル基またはアルコキシ基であり、R2は同じかまたは異なる一般式:
【化10】
(式中、R4はアルキレン基またはアルキレンオキシアルキレン基であり、R5は一価炭化水素基であり、R6はアルキル基であり、R7はアルキレン基であり、R8はアルキル基、アルケニル基、またはアシル基であり、aは0、1、または2である。)
で表される基からなる群から選択される基であり、R3は同じかまたは異なる水素原子もしくはアルキル基である。}
で表されるカルバシラトラン誘導体を含有することが特に好ましい。このようなカルバシラトラン誘導体として、以下の構造で表される1分子中にアルケニル基およびケイ素原子結合アルコキシ基を有するシラトラン誘導体が例示される。
【化11】
(式中、Rcはメトキシ基、エトキシ基、ビニル基、アリル基およびヘキセニル基から選ばれる基)
【0045】
同様に、本発明においては、
下記構造式で表される、シラトラン誘導体を接着付与剤として利用してもよい。
【化12】
式中のR1は同じかまたは異なる水素原子もしくはアルキル基であり、特に、R1としては、水素原子、またはメチル基が好ましい。また、上式中のR2は水素原子、アルキル基、および一般式:-R4-Si(OR5)x6 (3-x)で表されるアルコキシシリル基含有有機基からなる群から選択される同じかまたは異なる基であり、但し、R2の少なくとも1個はこのアルコキシシリル基含有有機基である。R2のアルキル基としては、メチル基等が例示される。また、R2のアルコキシシリル基含有有機基において、式中のR4は二価有機基であり、アルキレン基またはアルキレンオキシアルキレン基が例示され、特に、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、メチレンオキシプロピレン基、メチレンオキシペンチレン基であることが好ましい。また、式中のR5は炭素原子数1~10のアルキル基であり、好ましくは、メチル基、エチル基である。また、式中のR6は置換もしくは非置換の一価炭化水素基であり、好ましくは、メチル基である。また、式中のxは1、2、または3であり、好ましくは、3である。
【0046】
このようなR2のアルコキシシリル基含有有機基としては、次のような基が例示される。
-(CH2)2Si(OCH3)3-(CH2)2Si(OCH3)2CH3
-(CH2)3Si(OC2H5)3-(CH2)3Si(OC2H5)(CH3)2
-CH2O(CH2)3Si(OCH3)3
-CH2O(CH2)3Si(OC2H5)3
-CH2O(CH2)3Si(OCH3)2CH3
-CH2O(CH2)3Si(OC2H5)2CH3
-CH2OCH2Si(OCH3)3-CH2OCH2Si(OCH3)(CH3)2
【0047】
上式中のR3は置換もしくは非置換の一価炭化水素基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、グリシドキシアルキル基、オキシラニルアルキル基、およびアシロキシアルキル基からなる群から選択される少なくとも一種の基であり、R3の一価炭化水素基としては、メチル基等のアルキル基が例示され、R3のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が例示され、R3のグリシドキシアルキル基としては、3-グリシドキシプロピル基が例示され、R3のオキシラニルアルキル基としては、4-オキシラニルブチル基、8-オキシラニルオクチル基が例示され、R3のアシロキシアルキル基としては、アセトキシプロピル基、3-メタクリロキシプロピル基が例示される。特に、R3としては、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基であることが好ましく、さらには、アルキル基またはアルケニル基であることが好ましく、メチル基、ビニル基、アリル基およびヘキセニル基から選ばれる基が特に好適に例示される。
【0048】
(E)硬化触媒としては、スズ、チタン、ジルコニウム、鉄、アンチモン、ビスマス、マンガン等の金属の有機酸塩、有機チタン酸エステル、有機チタンキレート化合物が挙げられる。このような硬化触媒の具体例としては、ジメチルスズジラウレート、ジメチルスズジオクトエート、ジメチルスズジネオデカノエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジネオデカノエートなどのジアルキルスズジカルボン酸;スタナスオクトエートなどの有機スズ化合物、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトン)チタン、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタンなどの有機チタン化合物が例示される。中でも、本発明組成物の速硬化性や深部硬化性などの硬化特性が優れることから、有機スズ化合物であることが好ましく、中でも、ジアルキルスズジカルボン酸であることが好ましい。その添加量は、(A)成分100質量部に対して0.001~10質量部であるが、0.01~2.0質量部の範囲が好ましい。
本発明組成物には、前記した(A)~(E)成分に加えて(F)アミノアルキルメトキシシランを含んでもよい。アミノアルキルメトキシシランとしては、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシランなどのアミノアルキルオルガノジメトキシシラン;γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノアルキルトリメトキシシラン;N-(β-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシランなどのN-(β-アミノアルキル)アミノアルキルオルガノジメトキシシラン;N-(β-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのN-(β-アミノアルキル)アミノアルキルトリメトキシシラン等が例示される。
【0049】
[その他の成分]
前記(A)~(E)成分以外にも、必要に応じて、以下のその他の成分を配合してもよい。これらのその他の成分は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。この任意成分としては、例えば、耐寒性付与剤、難燃性付与剤、顔料、染料等が挙げられる。また、本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、所望により、公知の接着性付与剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、または非イオン系界面活性剤などからなる1種類以上の帯電防止剤;離型性成分;チクソ性付与剤;防カビ剤;耐熱剤;可塑剤;チクソ性付与剤;硬化促進剤;電極・配線等の腐食防止剤・マイグレーション防止剤などを含むことができる。また、所望により、有機溶媒を添加してもよい。これらの添加剤は、(I)液および(II)液から選ばれるどちらか一方に配合してもよく、本組成物を3成分以上に設計した場合は、独立した1成分として添加してもよい。
【0050】
[組成物の製造方法]
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、上記の各成分を混合することにより調製でき、例えば(I)液の場合、(A)成分、(C)成分、並びに他の任意の成分を混合することにより調製できる。また、必要に応じて(C)成分、任意でアルコキシシラン等の(D)成分を混合し、(C)成分の表面を(D)成分で処理した後、成分(A)を混合することにより調整できる。
【0051】
(II)液の場合、(B)成分、(C)成分、(D)成分を混合し、(C)成分の表面を(D)成分で処理した後、(E)成分、(F)成分、並びに他の任意の成分を混合することにより調製できる
【0052】
上記混合装置としては特に限定がなく、一軸または二軸の連続混合機、二本ロール、ロスミキサー、ホバートミキサー、デンタルミキサー、プラネタリミキサー、ニーダーミキサー、ヘンシェルミキサー等が例示される。
【0053】
[組成物の形態およびパッケージ]
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、分液した多成分を使用時に混合する多成分硬化型(多液型、特に二液型を含む)の組成物であり、個別に保存される複数の組成物を所定の比率で混合して使用することができる。なお、これらのパッケージは、後述する硬化方法や塗布手段、適用対象に応じて所望により選択することができ、特に制限されない。
【0054】
[硬化性]
本発明にかかる硬化性オルガノポリシロキサン組成物は縮合反応性かつ室温硬化性の組成物であり、湿気の存在下、60℃以下、好適には50℃以下、より好適には室温(25℃)~50℃の温度範囲において加水分解反応を伴う縮合反応(特に脱水縮合、脱オキシム縮合または脱アルコール縮合)を主とする硬化反応により、オルガノポリシロキサン硬化物を形成可能である。その硬化プロセスは特に限定されるものではないが、各成分を混合後、15~50℃の温度範囲で、通常、空気中の水分と接触することで速やかに硬化して、接着性に優れるオルガノポリシロキサン硬化反応物を形成する。こうした硬化物は硬化途上で接触している基材に対して良好な接着性を示すため、部材に対して空隙や間隙を生じることなく、保護材としての信頼性および耐久性に優れるものである。
【0055】
[電気・電子機器]
本発明に係る電子機器は、上述したオルガノポリシロキサン硬化反応物を備え、当該硬化物により封止またはシールされてなる電子機器である。電子機器としては、特に限定されないが、例えば、ガラス、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、またはセラミック等の基材上に、銀、銅、アルミニウム、または金等の金属電極;ITO(Indium Tin Oxide)等の金属酸化膜電極が形成された電気回路または電極を含む電子機器が例示される。こうした電極としては、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、フラットパネルディスプレイ(FPD)、およびフラットパネル表示装置の電極等が挙げられる。本組成物は、こうした電極のコーティングとしても用いることができる。本発明に係る電子機器は、オルガノポリシロキサン硬化物が基材に対して高い接着性を示すので部品固定に有用であり、且つ、深部硬化性に優れることから、良好な信頼性を有する。
【実施例
【0056】
以下、本発明に関して実施例を挙げて説明するが、本発明は、これらによって限定されるものではない。
【0057】
成分(A)~(F)を以下のように混合して、実施例1~6および比較例1~3の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得た。
【0058】
本発明に関わる効果に関する試験は次のように行った。
[粘度]
室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の25℃における粘度(Pa・s)を、アントンパール社製レオコンパスMCR102を用いて測定した。ジオメトリーは直径20mmのパラレルプレートを用い、ギャップ100μmでシェアレイト10.0(1/s)の値を測定した。

[室温硬化性熱伝導性シリコーン組成物の可使時間の評価方法]
また、個別に保存されたシリコーンエラストマーベース組成物と架橋剤組成物を硬化性評価温度雰囲気中で24時間以上放置した後、混合し、各評価温度雰囲気下に放置した。試料を金属ヘラですくったときに粘性が失われて塑性が発現するまでの時間を測定し、スナップタイムとした。可使時間の評価は25℃で行った。

[室温硬化性熱伝導性シリコーン組成物の接着性の評価方法]
室温硬化性シリコーンエラストマー組成物の混合物を2枚のアルミテストパネル(アルマイトA5052P)の間に、それぞれ1mmと100μmとなるように挟み込み、温度25±2℃、湿度50±5%の条件下で静置して硬化させた。得られた接着試験体の引張りせん断接着強さを7日後にJIS K 6850:1999「接着剤-剛性被着材の引張りせん断接着強さ試験方法」に規定の方法に準じて測定した。
【0059】
以下に示す実施例等では下記の化合物ないし組成物を原料に用いた。粘度は25℃において回転粘度計により測定された値である。
成分(A):
A-1:末端が水酸基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(粘度420mPa・s、末端率85%、15%トリメチルシロキシ基封鎖)
A-2:両末端が水酸基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(粘度80000mPa・s)
【0060】
成分(B):
[(B-1)成分:下記アルコキシシリル含有基を有するオルガノポリシロキサン]
【化13】
(b1-1)両末端変性ポリシロキサン: 分子鎖の両末端に前記のアルコキシシリル含有基を有するジメチルポリシロキサン(粘度400mPa・s)
(b1-2)片末端変性(Vi)シロキサン:分子鎖の片末端のみに前記のアルコキシシリル含有基を有し、他の末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン(粘度400mPa・s、Vi含有量0.04質量%)
(b1-3)両末端Viポリシロキサン:分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン(粘度400mPa・s、Vi含有量0.08質量%)
以上、(b1-1)~(b1-3)成分は、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン(粘度400mPa・s)に、ビニル基あたり0.8モル当量となるように下記アルコキシシリル含有シロキサンをヒドロシリル化反応用触媒の存在下でヒドロシリル化反応することにより調製して得た混合物である

【化14】
【0061】
成分(C):
C-1:ヘキサメチルジシラザンにより表面処理されたヒュームドシリカ(表面積130m/g)
C-2:平均粒径4.8μmの石英微粉末

成分(D):
D-1:メチルトリメトキシシラン
D-2:1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン
D-3:カルバシラトラン:下式で示されるシラトラン誘導体
【化15】
【0062】
成分(E):
E-1:ジメチルスズジネオデカノエート

成分(F):
F-1:N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン
【0063】
[実施例1]
成分(A-1)37.5質量部、成分(A-2)62.5質量部を計量し、そこに90分かけて成分(C-1)10質量部を均一混合し、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の(I)液を得た。
次に成分(B-1)94.5質量部に成分(C-1)10質量部を90分かけて均一混合した。この混合物に、成分(D-1)1.9質量部、成分(D-2)2.0質量部、成分(E-1)0.10質量部および、成分(F-1)1.5質量部を均一混合し、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の(II)液を得た。
上記室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を25℃で7日養生後、(I)液と(II)液を同一質量で混合後、粘度、可使時間、接着性を測定した。
【0064】
[実施例2]
実施例1の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物(II)液の成分(D-2)を成分(D-3)に変えた以外は実施例1と同様に室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物(I)液と(II)液を得た。
上記室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を25℃で7日養生後、(I)液と(II)液を同一質量で混合後、粘度、可使時間、接着性を測定した。
【0065】
[実施例3]
成分(A-1)37.5質量部、成分(A-2)62.5質量部を計量し、そこに90分かけて成分(C-1)10質量部を均一混合し、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の(I)液を得た。
次に成分(B-1)94.5質量部に成分(C-1)10質量部を90分かけて均一混合した。この混合物に、成分(D-1)1.9質量部、成分(D-2)3.5質量部および成分(E-1)0.10質量部を均一混合し、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の(II)液を得た。
上記室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を25℃で7日養生後、(I)液と(II)液を同一質量で混合後、粘度、可使時間、接着性を測定した。
【0066】
[実施例4]
成分(A-1)80質量部、成分(A-2)20質量部を計量し、そこに90分かけて成分(C-1)20質量部および成分(C-2)80質量部を均一混合し、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の(I)液を得た。
次に成分(B-1)95質量部に成分(C-1)20質量部および成分(C-2)80質量部を90分かけて均一混合した。この混合物に、成分(D-1)1.8質量部、成分(D-2)3.0質量部、成分(E-1)0.20質量部を均一混合し、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の(II)液を得た。
上記室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を25℃で7日養生後、(I)液と(II)液を同一質量で混合後、粘度、可使時間、接着性を測定した。
【0067】
[実施例5]
実施例1同様に室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の(I)液を得た。
次に成分(B-1)95質量部に成分(C-1)20質量部および成分(C-2)80質量部を90分かけて均一混合した。この混合物に、成分(D-2)4.6質量部、成分(E-1)0.40質量部を均一混合し、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の(II)液を得た。
上記室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を25℃で7日養生後、(I)液と(II)液を同一質量で混合後、粘度、可使時間、接着性を測定した。
【0068】
[実施例6]
実施例5の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物(II)液の成分(D-2)を成分(D-3)に変えた以外は実施例5と同様に室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物(I)液と(II)液を得た。
上記室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を25℃で7日養生後、(I)液と(II)液を同一質量で混合後、粘度、可使時間、接着性を測定した。
【0069】
[実施例7]
実施例1同様に室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の(I)液を得た。
次に成分(B-1)95質量部に成分(C-1)20質量部および成分(C-2)80質量部を90分かけて均一混合した。この混合物に、成分(E-1)0.40質量部 成分(F-1)1.0質量部を均一混合し、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の(II)液を得た。
上記室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を25℃で7日養生後、(I)液と(II)液を同一質量で混合後、粘度、可使時間、接着性を測定した。
【0070】
[比較例1]
次に成分(B-1)94.5質量部、成分(C-1)10質量部を90分かけて均一混合した。この混合物に、成分(E-1)1.9質量部、成分(E-2)2.0質量部、成分(E-1)0.10質量部および、成分(F-1)1.5質量部を均一混合し、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得た。
上記室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を25℃で7日養生後、粘度、可使時間、接着性を測定した。
【0071】
[比較例2]
成分(A-1)37.5質量部、成分(A-2)62.5質量部を計量し、そこに90分かけて成分(C-1)10質量部を均一混合した。この混合物に、成分(D-1)1.9質量部、成分(D-2)2.0質量部、成分(E-1)0.10質量部および、成分(F-1)1.5質量部を均一混合し、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得た。
上記室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を25℃で7日養生後、粘度、可使時間、接着性を測定した。
【0072】
[比較例3]
成分(B-1)95質量部に成分(C-1)20質量部および成分(C-2)80質量部を90分かけて均一混合した。この混合物に、成分(D-2)4.6質量部、成分(E-1)0.40質量部を均一混合し、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得た。
上記室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を25℃で7日養生後、粘度、可使時間、接着性を測定した。
【0073】
[比較例4]
成分(A-1)80質量部、成分(A-2)20質量部を計量し、そこに90分かけて成分(C-1)20質量部および成分(C-2)80質量部を均一混合した。この混合物に、成分(D-2)4.6質量部、成分(E-1)0.40質量部を均一混合し、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得た。
上記室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を25℃で7日養生後、粘度、可使時間、接着性を測定した。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】


【0076】
[参考例1]
実施例中、成分(C)を炭酸カルシウム微粉末とすることでも、同様の特性を得ることが可能である。その際、重質炭酸カルシウム微粉末、軽質炭酸カルシウム微粉末、またこれらの炭酸カルシウムを脂肪酸、樹脂酸等の有機酸で表面処理したものでも効果が得られるが、これらからなる組成物は耐熱性がその他機能性フィラーと比較して劣っているため、電気・電子部品の保護剤組成物としては用途が限定されることが考えられる。
【0077】
[総括]
実施例1~7に示すとおり、本発明にかかる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、十分な作業可使時間を得られると共に、厚み100μmの薄層においても、硬化7日後で接着強度の発現が確認された。
【0078】
一方、本発明の(A)成分を欠いた比較例1、比較例3では、7日後でも硬化を確認することが出来なかった。また、(A)成分、(C)成分、(D)成分および(E)成分を含む比較例2、比較例4では評価温度雰囲気中で24時間以上放置している間に硬化し、十分な保存安定性を得ることが出来なかった。