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特許7444860通気フィルタおよび純粋な液体保管タンク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】通気フィルタおよび純粋な液体保管タンク
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/04 20060101AFI20240228BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20240228BHJP
   B01J 20/04 20060101ALI20240228BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
B01D53/04 110
B01J20/18 C
B01J20/04 A
B01J20/04 C
B01J20/04 B
B01J20/20 A
B01J20/20 D
B01J20/18 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021512654
(86)(22)【出願日】2019-09-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 EP2019073648
(87)【国際公開番号】W WO2020049078
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-07-11
(31)【優先権主張番号】18290097.7
(32)【優先日】2018-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベルデュカー,クリスチャン
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0028342(US,A1)
【文献】特開2009-095744(JP,A)
【文献】実開昭64-001729(JP,U)
【文献】特公昭09-003296(JP,B1)
【文献】実公昭31-010395(JP,Y1)
【文献】特開2017-140562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 46/30
B01D 53/04
B01D 53/14
B01D 53/82
B01J 20/18
B01J 20/04
B01J 20/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
好ましくは純粋な液体保管タンクのための通気フィルタ(1)であって、
円筒型のシェル(2)、
顆粒状のフィルタ材料(3)を収容する少なくとも1つの区画(A)であって、シェル(2)の軸方向において分離板(5)を移動させて間隔を変えて固定することによって、少なくとも1つの区画(A)における顆粒状のフィルタ材料(3)に圧力を印加し得るように、シェル(2)の内周面(4)とシェル(2)の中に配置された間隔を空けた1対の軸方向に移動可能な分離板(5)との間で画定されている、前記少なくとも1つの区画(A)
なくとも1つの区画(A)において顆粒状のフィルタ材料(3)を通って空気が流れ得るように夫々配置された空気入口(6)および空気出口(7)および、
支持部材(8)、および分離板(5)の少なくとも1つを支持部材(8)上のシェル(2)の軸方向に画定された複数の位置に固定できるようにするための固定機構(10、12)を含み、分離板(5)が、シェル(2)の内周面(4)を摺動してシールするように構成されている、
前記通気フィルタ(1)
【請求項2】
分離板(5)の少なくとも1つが、夫々フレーム(13)およびフレーム(13)で支持されたスクリーン(16)を含み、ここでスクリーン(16)が空気を透過し、および顆粒状のフィルタ材料(3)を保持するように構成されている、請求項に記載の通気フィルタ(1)。
【請求項3】
フレーム(13)が、シェル(2)の内周面(4)を摺動してシールするように構成されている円周方向リム(15)を含む、請求項に記載の通気フィルタ(1)。
【請求項4】
支持部材(8)が、シェル(2)の軸方向に延びており、および分離板(5)の少なくとも1つをその上に支持している中心シャフト(9)を好ましくは含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の通気フィルタ(1)。
【請求項5】
分離板(5)が、軸方向に移動可能となるようにシャフト(9)上に支持されたハブ(11)を有する、請求項に記載の通気フィルタ(1)。
【請求項6】
固定機構が、ハブ(11)上に提供され、およびハブ(11)の複数の軸固定位置を画定するためにシャフト(9)上に提供された複数の凹み(12)と噛み合うように構成された、1以上の突起(10)を含む、請求項に記載の通気フィルタ(1)。
【請求項7】
分離板(5)が同一である、請求項1~のいずれか一項に記載の通気フィルタ(1)。
【請求項8】
顆粒状のフィルタ材料(3)が、ソーダ石灰、活性炭、LiOH、および/またはゼオライトを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の通気フィルタ(1)。
【請求項9】
入口(6)から出口(7)への通気フィルタ(1)を通る空気の流れの方向に関して、少なくとも1つの区画(A)の上流および/または下流に、さらなる区画(B、C)を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の通気フィルタ(1)。
【請求項10】
入口(6)および/または出口(7)が、夫々蓋部材(17、18)上に形成されており、それの夫々の軸方向端部の開口を閉じるために、好ましくは取り外し不能にシェル(2)に付着されている、請求項1~のいずれか一項に記載の通気フィルタ(1)。
【請求項11】
タンクの内部体積と通じており、および通気フィルタ(1)の円筒形のシェル(2)の軸方向が、実質的に水平方向に延びるように、タンクの上面に配置された出口(7)を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の通気フィルタ(1)を含む、純粋な液体保管タンク。
【請求項12】
通気フィルタ(1)の、実質的に水平方向への、および、実質的に水平方向からの、旋回運動のための、通気フィルタ(1)をタンクと接続するための連結を含む、請求項11に記載の純粋な液体保管タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、純粋な液体保管タンクと共にとりわけ使用するための通気フィルタ、および通気フィルタと共に提供される純粋な液体保管タンクに関する。通気フィルタおよび液体保管タンクは、とりわけ純水保管タンクを意図している。
【背景技術】
【0002】
通気フィルタは、タンクから分配された液体を環境大気によって補い、および液体を純粋に保つために、液体保管タンクによく使用される。通気フィルタは、揮発性有機化合物、二酸化炭素、および粒子などの、通気フィルタを通り純粋な液体タンクに入る、環境大気からの空中汚染物質を取り除くためである。
【0003】
通気フィルタの、フィルタ能力およびスループットは、タンクから取り出される液体の体積に適合される。実験室用途の純水タンクの場合、それは本発明の好ましい応用の分野であるが、とりわけ洗浄機などの浄化された水を要する外部の機械にタンクが接続されている場合、取り出し流速は30L/分まであり得る。2L/分の範囲の、より低い流速のための小さな空気通気は、ミリリットルのオーダーの少ない量のフィルタ材料を要するだけである一方で、10L/分までまたはそれ以上のより高い流速は、必ずしも単に容量に起因してだけでなく、選択されたフィルタ材料に依存する吸収速度論的にも、数百ミリリットルの体積のフィルタ材料を要する。
【0004】
本発明はとりわけ、18.2MΩ*cmの抵抗率を有し、および全有機炭素(TOC)が5ppb未満の、超純水(UPW)の保管に関連する使用のために設計されており、およびそれは純水を精製することで産生される。純水の産生は、超純水の産生のための精製よりもより遅い流れのプロセスである。それゆえ、超純水を産生するためのシステムにおいて、純水はタンクに保管あるいはバッファーされなければならない。このタンクは、タンクの中に入る空気を浄化する空気通気フィルタを備えている。超純水の流速が高いほど、通気フィルタのフィルタ力学はより高い必要がある。それゆえ、より高い流速は通気フィルタのより大きな体積を要する。
【0005】
実験室用途の純水保管タンクは、典型的には20~100Lくらいの体積の寸法である。このような応用で使用するための通気フィルタはとりわけ、揮発性有機物または溶媒をフィルタするための活性炭、二酸化炭素をフィルタするためのソーダ石灰、および細菌、塵または類似の粒子をフィルタするためのメンブレンフィルタを包含した、フィルタ材料の組み合わせを利用する。より低い純度の要求の場合、メンブレンフィルタだけが使用されてもよい。工業的な空気フィルタは、粒子保持の3つの機構を使用する:慣性打撃、横取り、および拡散吸収である。支配的な除去の機構は、粒子の大きさの関数で変わり得る。空気の流速および時間による流速の変化もまた、効果的な除去の機構に影響を与え、およびそれゆえ、使用の分野に対して特有である。
【0006】
ソーダ石灰を使用することによる化学吸着は、空気フィルタにおけるCO除去のための最先端の解である。他の物質は、特別の応用の分野に依存して効果的であり得る。CO除去媒体に使用される代替の化学的試薬は、水酸化リチウムであり得るが、しかしCO獲得反応は基本的にソーダ石灰のそれとは異なっている。
【0007】
ソーダ石灰の主でおよび主要な成分は、水酸化カルシウムである。水とおよび少量の水酸化ナトリウムが加えられている。大気中に含有されたCOは、2段階の発熱反応で、Ca(OH)と間接的に反応する。もともとソーダ石灰にある結果的な水、ならびに副産物の水は蒸発してもよく、および失われる。
【0008】
フィルタ材料は使用中に費やされるので、そのような応用の通気フィルタは通常、簡単に、および必要であればタンクの上で繰り返し交換および取り換えできるように設計された、カートリッジの形態となっている。
【0009】
実験室応用で使用するための現在の純水保管タンクの設計は、タンクの上にあって、垂直を向いた煙突状の形態をしたカートリッジの形態をした通気フィルタを有する。水浄化システムおよび水保管タンクはしばしば、実験室作業台および実験室流し台の下のような、実験室の不使用の空間に設置されるので、一体化はタンクの高さに制限を負わせる。付け加えて、現在知られている解において、煙突状の空気通気は、設置において使用可能な空間をさらに削減する。通気が上にある設計は、タンクが完全に家具の中、または実験室作業台または流し台の下に閉じ込められている場合、通気フィルタのための上部の空間および、取り換えのための追加のサービス空間を要する。
【0010】
空間の制限に取り組むいくつかの試みがあり、および1つは水平方向を向いた通気フィルタの使用である。1つの既存の設計において、カートリッジはタンク本体内のレセプタクルに、水平方向の動きにより取付けおよび取り外される。しかしながら、この解はいくつかの欠点を伴って実現される。通気フィルタカートリッジは、大きな直径および水平方向に平らな形を有する形態因子を持っている。空気通気が含有しているフィルタ以外の浄化媒体は、絶対的に乾燥していなければならない。それゆえ、カートリッジ本体はタンクに貯められた水の中にしずめられてはならない。従って、水面は明確に通気カートリッジの水準よりも下でなければならず、このことは見返りに、タンク内に液体を保管するために使用可能な体積を低減することになる。それゆえ、空間利用効率は悪い。
【0011】
もうひとつのうまくいきそうな解は、タンクの上に水平を向けて、小さい直径で引き延ばされた柱の形態の通気フィルタを置くことである。設置および取り換えは、カートリッジの水平の動きで行われ、サービスのための追加の上部の空きは要しない。
【0012】
一方で、空気からCOを吸収しおよび取り除くために、柱状設計のフィルタにおいてフィルタ材料として広く使用されているソーダ石灰または他の顆粒状媒体は、密な充填を要する。接触時間、すなわち媒体の体積と流速の比が、良い吸収性能のための重要なパラメータである。例えば、よりゆっくりな媒体カートリッジ中の空気の流れと、およびより長い空気と媒体の接触時間は、より良いCO吸収をもたらす。一方で、同じ媒体体積の2つの柱を考える場合、直径と高さの比が、効率に関して役割を果たす。もし、広くて短い柱と比べて狭くて長い柱が、同じ体積で同じ条件で稼働されたら、線速度はより速くなる。速度が速いほど、各々の顆粒状媒体粒子上での吸収現象を加速する、より少ない物質移動境界を生成する。唯一の欠点は圧力低下が大きいことである。
【0013】
水平を向いた柱の中で緩く充填された顆粒状材料は、吸収性能を劇的に悪化させる、部分的または全体的なバイパス流の危険を創出する。部分的な空隙は、媒体のベッドの片方かまたは両方の端部で創出され得、空隙の領域では浄化媒体が十分に使用されないという結果となる。媒体の充填が完璧でない場合、連続的な空隙が形成され得る。この場合、全体のバイパス経由の流れは柱の中で生成される。当然、空気は流れの制限が最小である経路を通る。この柱は、期待された性能を完全に失うかもしれない。
【0014】
特定の工業的な解を用いて、顆粒状または微粒子の媒体を柱に充填するいくつかの方法がある。これらの解は、しかしながら純水保管タンクで使用されることを意図した通気フィルタには適していない。
【0015】
1つの知られた解は、緩い充填および空隙の生成を避けるために、顆粒状媒体を圧縮するために泡を使用することに基づいている。泡自体は、多孔性であり、およびフィルタされるべき空気を十分に透過する材料として考えられる。しかしながら、プラスチックまたはポリマーに基づいた泡の製造の方法によっては、孔がガスの膨張またはポロジェン溶媒の転相によって生成され、および孔の連続性が良く発達しないかもしれない。付け加えて、圧縮デバイスとして使用される泡は多孔質構造の変形により変形する。泡の圧縮は、透過性の追加の制約である、孔を閉じる傾向がある。最後に、泡の圧縮の場合、圧縮された泡がしばしば弾性を失うため、圧縮効率が経時的に失われることがある。
【0016】
もう1つの実施可能な解は、ばねまたは他の付勢要素を使用して機械的にプレスされた、多孔質の円盤状のものの使用である。しかしながら、ばねの荷重ならびに泡の圧縮は、顆粒状媒体に永続的なストレスを残す。イオン交換樹脂および球状活性炭などの他の顆粒状媒体と異なり、ソーダ石灰および代替の顆粒状のCO除去媒体は壊れやすい。顆粒状媒体へのストレスは、あるいは輸送中の機械的衝撃と組み合わされて媒体を損傷し、および微小粒子または塵を生成し得る。顆粒状材料への損傷は結果的に、媒体の充填を緩くする媒体の摩滅をもたらす。さらに、より小さい粒子サイズで充填された顆粒状媒体は、より高い圧力低下を有するので、生成された微小粒子は、追加の流れの制限を創出する。
【0017】
さらにもっとうまくいきそうな解は、円筒形の容器中で顆粒状材料の体積を保持しおよび閉じ込めるために、境界だけで摩擦によって維持されている多孔質の円盤状のものの使用である。円盤の縁の特有な形態により、場合によってはエラストマO-リングなどの追加のシーリング材料の使用と組み合わされて、柱、すなわち容器の内側の壁表面と良くフィットするようにできる。しかしながら、輸送中および取り扱い中のカートリッジへの振動および衝撃は、そのような円盤を動かし得るし、および媒体の充填は緩くなり得る。強い摩擦は柱の中へ円盤を挿入するための強い力を要する、といういくらかの欠点を持ちながら、強い摩擦だけが、円盤の固定の完全性を保証する。円盤の挿入の端部位置を検出するのが困難であるため、挿入の力は、機構かまたは手動のどちらで印加されても、壊れやすいフィルタ媒体を圧縮および損傷し得る。このような圧縮円盤の傾きや回転もまた、知られた、あり得る欠陥である。この欠陥のリスクを低減するためには、柱の中で傾くのを避けるために、圧縮円盤は軸方向に十分に厚くなければならず、それはしかしながら、柱中の媒体の有効な体積を犠牲にする。
【0018】
最後に、柱に顆粒状のフィルタ材料を充填することはもう1つの困難の側面を有する。顆粒状のフィルタ媒体がカートリッジ、柱、または容器に入れられる場合、意図された充填密度は保証されない。小さくておよび球状の媒体の場合、容器への自由落下の充填が初期的に最大のベッド体積を産生し得るが、しかしその後、容器が機械的に軽くたたかれると、体積は低減されるだろう。不規則な形状の媒体、または不完全な粒度分析の媒体は反対にふるまうこともあり得る:最初の自由落下の充填が最小のベッド体積をとり、およびその後容器を揺らすことで充填が緩む。それゆえ、充填の方法に依存して、体積または量が変化する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、純水保管タンクのような、純粋な液体保管タンクのために好ましい通気フィルタを提供することに関し、それはタンクの上に設置して空間の節約をすることができ、空隙および/または他の充填の変動に起因するフィルタ効率のあり得る変動を低減し、および輸送中または取り扱い中の振動または機械的衝撃の結果としての媒体へのストレスを低減する。本発明はまた、かような通気フィルタを包含する純水保管タンクのような、純粋な液体保管タンクを提供することに関する。
解決策
【0020】
本発明は、請求項1の特徴をもつ、好ましくは純粋な液体保管タンクのための通気フィルタ、および請求項12の特徴をもつ、純粋な液体保管タンクを提供する。好ましい態様は、従属のクレーム中で画定される。
【0021】
本発明に従う、好ましくは純粋な液体保管タンクのための通気フィルタは、円筒型のシェル、顆粒状のフィルタ材料を収容する少なくとも1つの区画であって、少なくとも1つの区画における顆粒状のフィルタ材料に圧力を印加するために、シェルの軸方向において分離板の間隔を変えて固定し得るように、シェルの内周面と、シェルの中に配置された間隔を空けた1対の分離板との間で画定されている、前記該少なくとも1つの区画、および、少なくとも1つの区画において顆粒状のフィルタ材料を通って空気が流れ得るように夫々配置された空気入口および空気出口、を含む。
【0022】
好ましくは、通気フィルタはさらに、支持部材、および分離板の少なくとも1つを、支持部材上のシェルの軸方向に画定された複数の位置に固定できるようにする固定機構、を含む。
【0023】
好ましくは、分離板の少なくとも1つは夫々、フレームおよびフレームに支持されたスクリーンを含み、ここでスクリーンは空気を透過し、および顆粒状のフィルタ材料を保持するように構成されている。
【0024】
好ましくは、フレームは、シェルの内周面に摺動してシールするように構成されている円周方向リム(circumferential rim)を含む。
【0025】
好ましくは、支持部材は、シェルの軸方向に延び、および分離板の少なくとも1つをそこで支持している、中心シャフトを好ましくは含む。
【0026】
好ましくは、分離板は軸方向に移動可能となるように、シャフト上に支持されたハブを有する。
【0027】
好ましくは、固定機構は、ハブ上に提供され、およびハブの複数の軸方向固定位置を画定するためにシャフト上に提供された複数の凹みに噛み合うように構成された、1以上の突起を含む。
【0028】
好ましくは、分離板は同一である。
好ましくは、顆粒状のフィルタ材料はソーダ石灰、活性炭、LiOH、および/またはゼオライトを含む。
好ましくは、通気フィルタは、入口から出口への通気フィルタを通る空気の流れ方向に関して、少なくとも1つの区画の上流および/または下流に、さらなる区画を含む。
好ましくは、入口および/または出口は、その夫々の軸方向端部の開口を閉じるために好ましくはシェルに取り外し可能に付着された、蓋部材の上に夫々形成されている。
【0029】
本発明はまた、タンクの内部体積と通じる出口を有し、および通気フィルタの円筒形のシェルの軸方向が実質的に水平方向に延びるように、タンクの上側に配置された、本発明に従う通気フィルタを含む、純粋な液体保管タンクを提供する。
【0030】
好ましくは、純水な液体保管タンクは、実質的に水平方向へのおよび水平方向からの、通気フィルタの旋回運動を可能にするような、通気フィルタをタンクに接続するための連結(link)を含む。
【0031】
先行技術の通気フィルタと比較して、本発明の通気フィルタは多くの利点を提供する:
-例えば泡の使用と比較して、区画内の顆粒状のフィルタ材料を保持するための構造によって創出される圧力低下が、ないか、実質的にない。
-壊れやすい顆粒状媒体の完全性は、玉または粒子にかかる圧力がより低く、および1つまたは両方の分離板をシャフトの軸方向に沿って動かすことにより画定された段階に設定され得るので、維持される。
-自己支持ユニットを形成する、堅いシャフト上での分離板の間隔を空けた固定は、シェルの中で分離板がずれたりまたは傾いたりすること、または顆粒状材料に対して動くことを回避し、そのことは壊れやすい顆粒状材料を輸送中および取り扱い中に損傷するリスクを回避する。
-顆粒状材料の、軸方向端部でのまたは区画の長さを通しての空隙の形成は、通気フィルタカートリッジが、その軸方向の延長が水平方向であるように稼働される場合でさえ、回避される。
-分離板は、それらの支持が中心シャフトによって達成させるため、相対的に薄くてよく、それにより、フィルタ媒体を収容するためのシェル内の限られた空間を使用する効率を最大化する。
-区画内に充填される顆粒状材料の量は、シャフトの長さに沿った分離板の固定位置の数に依存して変わり得、それにより、通気フィルタの全体設計を修正する必要なしに、顆粒状材料の異なる充填プロセスまたはタイプに適応する。通気フィルタに使用されるべき顆粒状材料が粒子径に関して実質的に異なる場合は、異なったスクリーンメッシュサイズをもつ異なった分離板の提供が材料に適応するためには十分である。および、
-区画を顆粒状材料で充填することを包含する、通気フィルタの製造および組み立ては、特有な工具が不要で、および中心シャフト上への固定に起因して、分離板が傾けられ、またはシェル内で不適切に設置されるリスクが低減されているため、容易である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明は、添付の図面を参照し、好ましい態様に関連して記載されるだろう。図面において:
図1図1は、好ましい態様の通気フィルタカートリッジの、部分透視図であり;
図2図2は、図1の通気フィルタカートリッジの横断面図であり;
図3図3は、図1および図2の通気フィルタカートリッジの部分断面図であり;および
図4図4Aおよび図4Bは、図1図3の態様の、固定機構をもつシャフトの2つの先端部の、拡大された詳細横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図面に示される好ましい態様に従う通気フィルタカートリッジの形態の通気フィルタ1は、とりわけ純粋な液体保管タンク、とりわけ実験室環境で使用するための純水保管タンクと共に使用することを意図している。
【0034】
通気フィルタまたは通気フィルタカートリッジは、顆粒状または特別のフィルタ材料3を収容するための少なくとも1つの区画Aを取り囲む、円筒形のシェルまたは容器2を含む。少なくとも1つの区画Aは、円筒形のシェル2の内周壁面4と、シェル2の中に配置された間隔を空けた1対の分離板5とによって画定され、特定の圧力を少なくとも1つの区画Aの中の顆粒状のフィルタ材料3に印加し、および与えられた充填状態を維持するために、分離板5のシェルの軸方向の間隔を変え、および固定し得る。
【0035】
通気フィルタカートリッジの形態をした通気フィルタ1はさらに、少なくとも1つの区画A中の顆粒状のフィルタ材料3を通る(または随意的に、下記に記載するようなさらなる区画およびフィルタ媒体を通る)空気の流れを可能にするために通気フィルタ1の両端に夫々配置された、空気入口6および空気出口7を有する。空気入口6は典型的には環境大気のためであり、および空気出口7は、通気フィルタが設置された液体保管タンクの内部体積にフィルタされた空気を導くためである。
【0036】
シェル2のなかでの分離板5の可変の間隔および、分離板5の夫々の軸方向位置の固定は、支持部材8と、支持部材8上でシェル2の軸方向に画定された複数の位置の中で、少なくとも1つの区画Aの範囲を定める2つの分離板5のうち少なくとも1つを固定できるようにする固定機構とを用いて達成される。最も広い理解としては、分離板5の1つは支持部材の固定されたおよび移動不能な位置に維持され得、一方で他の分離板5だけは、顆粒状のフィルタ材料3を区画Aに充填、および顆粒状のフィルタ材料に画定された圧力を印加できるように、軸方向の複数の画定された位置に移動可能および固定可能にし得る。
【0037】
好ましい態様において分離板5は、夫々フレーム13およびフレーム13に支持されたスクリーン16を含む。スクリーン16は空気を透過し、および顆粒状のフィルタ材料3を区画の中で保持するように設計されている。フレーム13は好ましくはシェル2の内周壁面4に摺動してシールするように構成された円周方向リムまたはエッジ15を含む。O-リング、弾性的なシール材料またはラビリンスシールを包含する追加のシールデバイスが、円周方向リム15とシェル2の壁面4との間の境界面に提供されてもよい。
【0038】
分離板5(すなわち、少なくとも1つの移動可能な板)は夫々、周囲リム13に、スクリーン16を通る空気のスループットを最大化し、および分離板5の十分な剛性および安定性を提供するように設計されたステーまたはスポーク14の配置を用いて接続されている、中心のハブ11を有する。分離板は異なっていても、または好ましくは同一であってもよい。
【0039】
好ましい態様において支持部材8は、シェル2の軸方向に延び、およびその上で分離板5の少なくとも1つまたは両方を支持している中心シャフト9を好ましくは含む。分離板5の中心シャフト9上の支持は中心ハブ11を用い、およびハブ11は、中心シャフトの単一の位置に固定して設置されるか、それは分離板の1つにとってはあり得るが、またはシャフト9の軸方向に移動可能であるか(それゆえ通気フィルタの設計に依存して、分離板の1つかまたは両方がそうなり得る)のどちらかである。
【0040】
移動可能な分離板5の固定は、図4に示された好ましい態様の場合、ハブ11の中心の穴の上にまたは隣接して形成され、およびハブの複数の軸方向固定位置を画定するためにシャフト9の軸部分に渡って提供された複数の凹み10と噛み合うように構成された、1以上の突起12を含む、固定機構を用いて実現される。
【0041】
シャフト9上で分離板の固定機構を画定する突起12および凹み10は夫々、図4A/Bで示されるように、シャフト9の軸方向に沿って平行に間隔を空けた円周状のくぼみとして形成され得るし、またはらせん状のねじ山の形態、またはシャフトの軸方向長さの一部分に沿った他の機械的な固定機構でもあり得る。くぼみの形態の中で、突起/凹みの形態の固定機構は、移動可能な分離板5の複数の画定された位置での動きおよび固定が、潜在的には顆粒状材料をすり砕き、すり減らし、またはさもなければ損傷するかもしれない、分離板5の回転を要せず、軸方向の動きだけで達成され得る点で有利である。
【0042】
固定機構に対するもう1つの解は、ハブ11がシャフトに直接固定されていないけれども、シャフトの軸部分と係合する固定機構を提供することであり、すなわち、ナットまたはクランプの形態をして、区画Aの外に位置しており、およびハブを軸方向に押すために、他の適合する係合特徴のねじ山を係合させることである。固定機構の固定位置の軸方向間隔が細かいほど、区画A内の顆粒状材料の圧縮(compression)またはコンパクション(compaction)の調節が細かくなる。ねじ山の機構は、例えば、ねじの動きの範囲内で、無制限の数の固定位置を提供する。
【0043】
シャフト9は、ハブ11にとっての軸方向端部位置を画定する台座20(図4B参照)を有してもよい。同様に、シャフト9に沿って軸方向に移動可能でない1つでそれゆえあり得る、分離板の1つのために、シェル2の内周壁面もまた台座21(図2参照)を有しても良い。少なくとも1つの区画Aに充填された顆粒状のフィルタ材料3は、前述の記載のように、および当該技術分野において知られているように、フィルタの目的に依存して、ソーダ石灰または他の好適な顆粒状のフィルタ材料を含んでよい。フィルタ媒体の形態は、例えば不規則な顆粒状の粒子、球形または非球形の粒子でもよい。CO吸収のための好適なフィルタ材料は例えばLiOHまたはソーダ石灰である。有機分子の吸収のために好適なフィルタ材料は、顆粒状の活性炭またはゼオライト、およびそれらの組み合わせから選択されてよい。
【0044】
本発明に従う通気フィルタまたは通気フィルタカートリッジ1は、入口6から出口7まで通気フィルタ1を通る(図2参照)空気の流れ方向に関して、さらなる区画Bを、顆粒状のフィルタ材料3を含有する少なくとも1つの区画Aの上流に含んでもよく、および/または、さらなる区画Cを少なくとも1つの区画Aの下流に含んでも良い。上流の区画Bは、揮発性の有機および無機物または溶媒または粒子をフィルタするためのフィルタを含有してよく、および下流の区画Cは、細菌、塵および他の粒子をフィルタするためのフィルタを含有してよい。
【0045】
図2および3で示される好ましい態様において、入口6および出口7は夫々別の蓋または端部材またはカバー17,18上に形成されている。好ましい態様において下流の区画Cは、シェル2の内部体積に一体化している。上流の区画Bは蓋部材17の中に受け取られている。区画を開けることができ、およびフィルタ取り換えのために簡単にアクセスでき、および設置を楽にすることは、有利である。
【0046】
空気のための通じる開口をもつ、さらなる蓋部材またはカバー19が、図2で示される通りの移動可能な分離板5の側面でシェル2の軸方向端部に近い部分で提供されてもよい。蓋部材17、18およびさらなる蓋部材またはカバー19は、もし提供されるのならば、シェル2に、その夫々の軸方向端部を閉じるために、振動または熱または超音波溶接により、好ましくは取り外し不能に、付着される。
【0047】
この態様においては入口6は、蓋部材17のその外側の円周方向表面上に形成された、複数の軸方向に延びた長い穴の形態である(図1および3参照)。この配置は、タンクの上に設置された状態において、蓋部材の軸方向端部にさらなる空間を要しないので好ましい。入口6はしかしながら、十分な量の空気を通気フィルタに導入し、および空気が順番に区画を通りぬけるようにするという要件によって単に画定される、様々な配置で形成されてよい。
【0048】
このケースにおいて、出口7は、蓋部材18上に形成されており、および中心ハブまたはポートの形態で提供される。図3に示される通り、タンクの上の適合するホルダまたはレセプタクルと、カートリッジの簡単な係合/解除ができるように、ポートの外周面にはねじ山状の特徴23が提供されている。バイヨネットの形態、または分離された固定部材を用いる、他の接続手段もあり得る。
【0049】
シャフト9は分離板を固定された軸方向間隔で支持しているので、分離板に加わる力は主に中心シャフト9で生まれ、シェル2の内周壁4に関する分離板5の外周リムでのシール効果は、非常にタイトでなくともよい。
【0050】
1つの中心シャフト9が好ましい態様において使用されているが、好ましくは周辺に等しく分配され、分離板の回転の動きをすることなく、軸方向に沿った複数の画定された位置における分離板の動きおよび固定を可能にする、とりわけ、くぼみをもつ固定機構に関連した、複数のシャフトが実施可能である。
【0051】
通気フィルタは自己支持型のカートリッジの形態であり、簡単にタンク上の対応するレセプタクルまたはホルダに設置し得るし、およびそれから取り外し得る。
【0052】
タンク上の通気フィルタのための上部の空間の要件を低減するために、本発明の通気フィルタカートリッジは、通気フィルタの円筒形シェルの軸方向が実質的に水平方向に延びるように、タンクの上面側の位置に設置し得る。この方向で、通気フィルタは前面からの水平方向の動きにより、設置されおよび取り換えられ得る。
【0053】
好ましい態様(示されない)においては、本発明のフィルタカートリッジと使用するために設計された純粋な液体保管タンクは、通気フィルタの、水平方向へのおよび水平方向からの旋回運動、すなわち、水平な実動方向から、通気フィルタカートリッジの取り換えをやりやすくするための、および/またはそのような上向きまたは垂直方向での稼働を可能にするための、実質的に垂直方向への動き、を可能にする、通気フィルタカートリッジをタンクに接続するための連結と共に提供されてもよい。連結は、通気フィルタカートリッジのフィルタされた空気の出口7とタンクの内部体積との間の直接的な通じ合いを提供してもよいが、しかし、ひとたび通気フィルタカートリッジが特別の作動方向に旋回されると開く、バルブまたはスイッチと機能的に組み合わされてもよい。これにより、通気フィルタカートリッジの取り換え中にタンクの内部体積を汚染するリスクなしに、バルブを閉じた位置でフィルタカートリッジの交換または取り換えができるようになる。
図1
図2
図3
図4