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特許7445043減圧システムを洗浄するための方法、基板の減圧処理のための方法、及び基板を減圧処理するための装置
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  • 特許-減圧システムを洗浄するための方法、基板の減圧処理のための方法、及び基板を減圧処理するための装置 図1A
  • 特許-減圧システムを洗浄するための方法、基板の減圧処理のための方法、及び基板を減圧処理するための装置 図1B
  • 特許-減圧システムを洗浄するための方法、基板の減圧処理のための方法、及び基板を減圧処理するための装置 図2
  • 特許-減圧システムを洗浄するための方法、基板の減圧処理のための方法、及び基板を減圧処理するための装置 図3
  • 特許-減圧システムを洗浄するための方法、基板の減圧処理のための方法、及び基板を減圧処理するための装置 図4
  • 特許-減圧システムを洗浄するための方法、基板の減圧処理のための方法、及び基板を減圧処理するための装置 図5
  • 特許-減圧システムを洗浄するための方法、基板の減圧処理のための方法、及び基板を減圧処理するための装置 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】減圧システムを洗浄するための方法、基板の減圧処理のための方法、及び基板を減圧処理するための装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20240228BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20240228BHJP
   C23C 14/00 20060101ALI20240228BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20240228BHJP
   H01L 21/363 20060101ALN20240228BHJP
【FI】
H01L21/302 101H
H01L21/31 B
C23C14/00 B
C23C16/44 J
H01L21/363
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023031469
(22)【出願日】2023-03-02
(62)【分割の表示】P 2021518175の分割
【原出願日】2019-01-30
(65)【公開番号】P2023078187
(43)【公開日】2023-06-06
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ラデク, マヌエル
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-102200(JP,A)
【文献】国際公開第2005/098922(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/197008(WO,A1)
【文献】特開2007-284793(JP,A)
【文献】特開平10-144666(JP,A)
【文献】特開2014-165169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/31
C23C 14/00
C23C 16/44
H01L 21/363
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
減圧チャンバを洗浄するための方法であって、
前記減圧チャンバの壁の平均距離を特定することと、
前記壁の平均距離の20%から97%の平均自由行程長に対応する圧力で、前記減圧チャンバの面と前記減圧チャンバ内部の構成要素とのうちの少なくとも1つを活性種で洗浄することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記減圧チャンバを洗浄するための方法が、基板を減圧処理するための装置によって実現され、当該装置が、前記減圧チャンバ、遠隔プラズマ源、バルブ、及びバイパスを備え、前記遠隔プラズマ源が前記減圧チャンバに連結され、前記遠隔プラズマ源がプロセスガス入口、活性種用の導管、及びプロセスガス出口を備え、前記減圧チャンバと前記遠隔プラズマ源の間の前記バルブが前記導管を開閉するために配置され、且つ前記導管のための前記バイパスが前記プロセスガス出口と前記減圧チャンバを連結する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
動作中に、前記プロセスガス入口を介して酸素含有プロセスガスを前記遠隔プラズマ源に供給することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記酸素含有プロセスガスが、窒素又はアルゴンとの酸素混合物である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記減圧チャンバが、OLEDデバイスの製造において使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記洗浄することが、5×10-3mbar以下の圧力で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記洗浄することが、1×10-4mbar以下の圧力で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
第1の圧力で遠隔プラズマ源を点火すること、及び、
前記遠隔プラズマ源内の圧力を、前記第1の圧力より少なくとも一桁低い第2の圧力に低減させること
をさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記遠隔プラズマ源内の圧力を、前記第1の圧力より少なくとも三桁低い第2の圧力に低減させること
をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
プラズマ洗浄が、前記減圧チャンバの1以上の内壁の洗浄を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記方法は、減圧システム又は前記減圧システムの部分の保守手順の後に実行される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
OLEDデバイスを製造するために基板を減圧処理するための方法であって、
請求項1から11のいずれか一項に記載の洗浄するための方法、及び
前記基板上に有機材料の1以上の層を堆積させること
を含む、方法。
【請求項13】
基板を減圧処理するための装置であって、
減圧チャンバと、
前記減圧チャンバに連結された遠隔プラズマ源と
を備え、当該遠隔プラズマ源が、
プロセスガス入口、
活性種用の導管、及び
プロセスガス出口
を備え、
前記装置がさらに、
前記導管を開閉するために配置された、前記減圧チャンバと前記遠隔プラズマ源の間のバルブと、
前記プロセスガス出口と前記減圧チャンバを連結する、前記導管のためのバイパスと
を備える、装置。
【請求項14】
前記基板を減圧処理するための装置が、OLEDデバイスを製造するためのものである、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
プロセッサと、当該プロセッサによって実行されたときに、前記装置に請求項1から12のいずれか一項に記載の方法を実行させる命令を記憶したメモリとを備える、コントローラをさらに備える、請求項13又は14に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本開示の実施形態は、減圧システムを洗浄するための方法、基板を減圧処理するための方法、及び基板を減圧処理するための装置に関する。本開示の実施形態は、特に、有機発光ダイオード(OLED)デバイスの製造に使用される方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] 基板上での層堆積のための技法は、例えば、熱蒸着(thermal evaporation)、物理的気相堆積(PVD)、及び化学気相堆積(CVD)を含む。被覆された基板は、幾つかの用途や幾つかの技術分野で使用することができる。例えば、被覆された基板は、有機発光ダイオード(OLED)デバイスの分野で使用され得る。OLEDは、情報を表示するための、テレビ画面、コンピュータモニタ、携帯電話、他の携帯型デバイスなどの製造において使用され得る。OLEDディスプレイなどのOLEDデバイスは、基板上に堆積された2つの電極の間に配置された有機材料の1以上の層を含み得る。
【0003】
[0003] OLEDデバイスは、例えば、処理装置の減圧チャンバ内で蒸着する幾つかの有機材料のスタックを含み得る。減圧チャンバ内部の減圧状態と減圧チャンバ内部の汚染とは、堆積される材料層とこれらの材料層を用いて製造されるOLEDデバイスとの品質に影響を及ぼす。
【0004】
[0004] 例えば、OLEDデバイスの寿命は有機汚染の影響を受ける。汚染は、減圧内部で使用される部品及び材料から、並びに/又は保守中の二次汚染(cross-contamination)から生じ得る。製造前又は製造中の洗浄、すなわち汚染の除去は、OLEDデバイスの安定的で高品質な製造を可能にする。
【0005】
[0005] 製造に適した汚染水準に到達するまでの洗浄の期間又は時間(予防保守リカバリー)は、重要なリソース(resource)である。ツールのダウンタイムは、一瞬一瞬が、製造システムの所有者にとって費用がかかる。したがって、洗浄効率を高め、洗浄時間を短縮することにより、製造費用を低減させることができる。
【0006】
[0006] したがって、減圧チャンバ内部の減圧状態及び減圧チャンバの洗浄を改善することができる方法及び装置が必要とされている。本開示は、特に、基板上に堆積される有機材料の層の品質が改善され得るように、汚染を低減させることを目的とする。
【発明の概要】
【0007】
[0007] 上記に鑑み、特にOLEDデバイスの製造において使用される減圧システムを洗浄するための方法、OLEDデバイスを製造するための基板上での減圧堆積のための方法、及び特にOLEDデバイスを製造するための基板上での減圧堆積のための装置が提供される。本開示の更なる態様、利点、及び特徴は、特許請求の範囲、明細書の説明、及び添付図面から明らかになる。
【0008】
[0008] 一実施形態によれば、減圧チャンバ、特にOLEDデバイスの製造において使用される減圧チャンバを洗浄するための方法が提供される。該方法は、減圧チャンバの面と減圧チャンバ内部の構成要素とのうちの少なくとも1つを活性種で洗浄することを含み、活性種を生成するためのプロセスガスは、少なくとも90%の酸素及び少なくとも2%のアルゴンを含み、特に、プロセスガスは、約95%の酸素及び約5%のアルゴンを含む。
【0009】
[0009] 一実施形態によれば、OLEDデバイスを製造するために基板を減圧処理するための方法が提供される。該方法は、本明細書で説明される実施形態の何れかに従って洗浄し、基板上に有機材料の1以上の層を堆積させるための方法を含む。
【0010】
[0010] 一実施形態によれば、特にOLEDデバイスを製造するために基板を減圧処理するための装置が提供される。該装置は、減圧チャンバ、減圧チャンバに連結された遠隔プラズマ源であって、プロセスガス入口及び活性種用の導管を有する遠隔プラズマ源、並びに、コントローラであって、プロセッサと、プロセッサによって実行されたときに、装置に本開示の実施形態の何れかによる方法を実行させる指示命令を記憶したメモリとを備える、コントローラを含む。
【0011】
[0011] 本開示の上記の特徴を詳細に理解することができるように、実施形態を参照することによって、上で簡単に概説した本開示のより具体的な説明を得ることができる。添付の図面は本開示の実施形態に関連し、以下の記述において説明される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A図1A及び図1Bは、本明細書で説明される実施形態による、OLEDデバイスの製造において使用される減圧システムを洗浄するための方法のフローチャートを示す。
図1B図1A及び図1Bは、本明細書で説明される実施形態による、OLEDデバイスの製造において使用される減圧システムを洗浄するための方法のフローチャートを示す。
図2】本明細書で説明される実施形態による、OLEDデバイスを製造するための基板の減圧処理のための方法のフローチャートを示す。
図3】本明細書で説明される実施形態による、OLEDデバイスを製造するために基板を減圧処理するためのシステムの概略図を示す。
図4】本明細書で説明される実施形態による、減圧チャンバを洗浄するための装置の概略図を示す。
図5】本明細書で説明される実施形態による、OLEDデバイスの製造において使用される減圧システムを洗浄するための方法のフローチャートを示す。
図6】標準的な洗浄プロセスの洗浄効率と本開示の実施形態によるプロセスの洗浄効率とを比較するグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[0012] これより、本開示の様々な実施形態を詳しく参照し、かかる実施形態の1以上の実施例を図に示す。図面に関する以下の説明の中で、同じ参照番号は同じ構成要素を指している。概して、個々の実施形態に対する相違のみが説明される。本開示の説明として各実施例が与えられているが、これは本開示を限定することを意図しているわけではない。更に、一実施形態の部分として図示且つ説明されている特徴を、他の実施形態で用いてもよく、或いは他の実施形態と併用してもよい。それにより、更に別の実施形態が生み出される。本説明には、このような修正例及び変形例が含まれることが意図されている。
【0014】
[0013] 減圧チャンバ内部の減圧状態及び汚染(特に有機汚染)の量は、基板上に堆積される材料層の品質に強く影響し得る。特に、OLEDの大量生産では、減圧構成要素の清浄度が、製造されるデバイスの寿命に強く影響する。電解研磨された表面でさえ、OLEDデバイスの製造にとっては未だ汚れ過ぎている可能性がある。本開示の幾つかの実施形態は、減圧洗浄のために(例えば遠隔プラズマ源を用いた)プラズマ洗浄を使用する。例えば、減圧洗浄は、例えば減圧システムの最終洗浄手順として、予洗浄手順後に提供されてよい。本開示の実施形態は、超清浄減圧(UCV)洗浄に関する。
【0015】
[0014] 例えば、プラズマ洗浄を使用して、減圧チャンバ及び/又は減圧システムの部品若しくは構成要素を処理することができる。例えば、プラズマ洗浄は、清浄度レベルを改善するために、プロセスの始動又は製造の開始前に減圧下で実行されてよい。処理は、例えば、純粋な酸素又は窒素若しくはアルゴンとの酸素混合物の遠隔プラズマを用いて、特定の時間だけ実行されてよい。幾つかの実施形態によれば、遠隔プラズマ源(RPS)を利用して、プロセスガスから活性種を生成することができる。化学的な活性種は、炭素ベースの成分などの有機分子と反応する。有機分子と反応すると、分子はより小さな断片に解離する。より小さい断片の脱着エンタルピーは、そのままの有機分子と比較して低い。より低いエンタルピーは、断片のより速いポンプアウト(pump out)を可能にする。したがって、より優れた洗浄効率が提供され得る。
【0016】
[0015] 活性種は、純粋な酸素、クリーンドライエア(CDA)プロセスガス、及び/又はアルゴン混合物プロセスガスから生成され得る。本開示の実施形態は、酸素の改善された活性化確率(activation probability)を提供する。したがって、遠隔プラズマ源によって提供される活性種の濃度が高められ得る。本明細書で説明されるように、本開示の実施形態によれば、活性化確率は、90%以上の酸素濃度及び2%以上のアルゴン濃度を有することによって高められ得る。例えば、プロセスガスの酸素濃度は約95%であってよく、プロセスガスのアルゴン濃度は約5%であってよい。酸素の活性化確率を高めることによって、理論的には洗浄効率が約30%向上する。第1の洗浄期間をもたらす最初の洗浄効率を有する洗浄プロセスでは、本開示の実施形態による改善されたプロセスガス組成物のために、第1の洗浄期間が30%低減され得る。プラズマ化学は、洗浄効果の原因となる全体的な活性種濃度を改善することができる。
【0017】
[0016] 本開示の実施形態によれば、化学物質、元素、又は化合物の量が、体積%を指す%で提供される。
【0018】
[0017] 本開示の実施形態によれば、洗浄プロセスは、遠隔プラズマ源内のインシトゥ洗浄デバイス及び/又はプロセスガスの改善された化学を利用する。したがって、既存の洗浄効率が更に改善され得る。例えば、更に改善されるべき洗浄プロセスは、非常に低い減圧レベルを利用するプラズマ洗浄プロセスであってよい。非常に低い減圧レベルによって、特に大容量の減圧チャンバにとって、洗浄効率が大幅に高められる可能性がある。より高い活性種濃度を生成するためにより高い減圧レベルを使用する工業規格とは対照的に、本発明の発明者らは、以下でより詳細に説明されるように、非常に低い減圧レベルが、洗浄効率を高めるために本明細書で説明されるように利用され得ることを見出した。
【0019】
[0018] 本開示の幾つかの実施形態によれば、減圧チャンバ(特にOLEDデバイスの製造において使用される減圧チャンバ)を洗浄するための方法が提供される。該方法は、減圧チャンバの内部と減圧チャンバ内部の構成要素とのうちの少なくとも1つを活性種で洗浄することを含む。活性種を生成するためのプロセスガスは、少なくとも90%の酸素及び少なくとも2%のアルゴンを含み、特に、プロセスガスは、約95%の酸素及び約5%のアルゴンを含む。
【0020】
[0019] 任意選択的に、洗浄手順は、5×10-3mbar以下、特に1×10-4mbar以下の圧力で行うことができる。チャンバ又は面の清浄度は、例えば、接触角測定(contact angle measurement)によって特定することができる。図6で例示的に示されているように、点線の曲線は、標準的な洗浄プロセスの洗浄効率を示している。接触角は、例えば、70時間をわずかに超える範囲内で、10よりわずかに下に低減させることができる。実線は、本発明の実施形態による洗浄プロセスを示している。測定される略ゼロの接触角は、例えば(110)シリコン基板の減圧曝露によって非常に短時間で、例えば10時間以下又は更には5時間以下の範囲内で到達され得る。接触角は、予洗浄された(110)シリコン基板を、洗浄されたチャンバ内で16時間だけ減圧曝露した状態で測定されてよい。洗浄効率は、少なくとも一桁又は更に数桁だけ高めることができる。OLED産業で使用される従来の洗浄ストラテジー、例えば「減圧下でのべークアウト(bake-out)」と比較すると、本開示の実施形態は、減圧チャンバ内部の有機汚染を低減させ及び/又は除去するために高温に基づかない。特に、システム内部に温度に敏感な構成要素(例えば電子機器)を有するときに、べークアウトは有益な選択肢ではない。更に、本開示の実施形態による活性種の使用は、従来のストラテジーと比較して、特にベークアウト手順なしでも、より高い洗浄効率を示す。
【0021】
[0020] 本開示の実施形態によれば、活性種は、例えばチャンバ内の面を洗浄するために、減圧チャンバの中に放出されるか又はその中に供給される。インシトゥ洗浄原理、例えば減圧チャンバの壁及び減圧チャンバ内の構成要素を洗浄することは、数個の単層などの微細な層を洗浄するために非常に効率的であり得る。本明細書で説明される他の実施形態と組み合わされ得る本開示の実施形態によれば、活性種は、例えば汚染分子を解離させるために励起された分子又は原子などの化学的な活性種であってよい。
【0022】
[0021] 本開示の実施形態による洗浄方法は、分子(例えば酸素)の励起状態の生成を含む。したがって、反応性のO、O3、及び/又は他の活性種が提供されてよく、酸素の改善された活性化確率を実現することができる。例えば、活性種は、特に遠隔プラズマ源において、プラズマを用いて生成され得る。
【0023】
[0022] 低減された圧力での洗浄を含む実施形態では、以下の態様を有利に考慮することができる。衝突のたびに、プラズマ分子(例えばO)は、崩壊してO2の安定した状態になることがある。O2は非反応性である。より低い圧力はより低い密度をもたらし、したがって、低減された最初の活性種濃度をもたらす。しかし、より低い圧力は、励起された分子の平均自由行程長(mean free path length)を増加させる。
【0024】
[0023] 例えば、平均自由行程長は、以下のように計算することができる。すなわち、
【0025】
[0024] 結果として得られる値は、例えば、10-3Paで約6m、及びそれに対応して1Paで6mmであり得る。
【0026】
[0025] 上述されたように、化学的な活性種の寿命は限られている。例えば、減圧内の他の分子、チャンバ壁、又は構成要素の面との衝突のたびに、活性種が非反応性分子に再結合する可能性がある。高圧、例えば1mbar以上では、体積当たりの原子の量は多い。更に、平均自由行程長、すなわち衝突間の平均距離は短い。したがって、生成される活性種の最初の濃度が高くても、大きなチャンバの遠く離れた面に到達する可能性は少ない。
【0027】
[0026] 本明細書で説明される本開示の幾つかの実施形態は、低い圧力を利用することができ、その結果、活性種の平均自由行程長が長くなる。平均自由行程長は、チャンバの圧力を変更することによって調整され得る。チャンバの圧力が低減されたときに、散乱特性が、原子間(又は分子間)衝突から、原子と壁との衝突(すなわち、見通し線散乱(line-of-sight scattering))へと連続的に変化する。
【0028】
[0027] OLEDチャンバでは、3mの平均壁間距離が設けられ得る。したがって、活性種の平均自由行程長は、散乱による均一な分布を保証するために3mであってよい。更に、平均自由行程長を0.5m以上とすることで、チャンバ内の到達範囲を良好にすることができる。例えば、5×10-5mbar以上及び/又は9×10-5mbar以下のベース圧力が、本明細書で説明される他の実施形態と組み合わされ得る幾つかの実施形態に従って提供され得る。平均壁間距離又は壁の平均距離は、例えば、以下のように規定され得る。減圧チャンバは、典型的には、垂直間隔を有する下壁と上壁とを有する。更に、減圧チャンバは、典型的には、第1の水平間隔を有する2つの対向する側壁と、第2の水平間隔を有する2つの対向する側壁とを有する。例えば、壁の平均距離は、垂直間隔、第1の水平間隔、及び第2の水平間隔からの平均であり得る。上記は、例示的に、立方体形状の減圧チャンバを指す。円筒状チャンバ又は断面が台形のチャンバでも、同様なやり方で平均距離を計算することができる。
【0029】
[0028] 本明細書で説明される他の実施形態と組み合わされ得る幾つかの実施形態によれば、減圧チャンバ、特にOLEDデバイスの製造において使用される減圧チャンバを洗浄するための方法が提供される。該方法は、減圧チャンバの壁の平均距離を特定すること、及び、減圧チャンバの壁の面と減圧チャンバ内部の構成要素とのうちの少なくとも1つを、壁の平均距離の20%から97%の平均自由行程長に対応する圧力において活性種で洗浄することを含む。
【0030】
[0029] 図1Aは、例えば、本明細書で説明される実施形態による、OLEDデバイスの製造において使用される減圧システムを洗浄するための方法100のフローチャートを示している。
【0031】
[0030] 方法100は、活性種で洗浄することを含み、活性種を生成するためのプロセスガスは、少なくとも90%の酸素及び少なくとも2%のアルゴンを含み、特に、プロセスガスは、約95%の酸素及び約5%のアルゴンを含む(ブロック110)。例えば、活性種は、プラズマ源(例えば遠隔プラズマ源)及び/又は紫外線光を用いて生成することができる。プラズマ洗浄は、例えば、基板上に1以上の有機材料の層を堆積させるために減圧システムを動作させる前の最終洗浄手順であってよく、又は動作(例えばアイドル時間)中の洗浄手順であってもよい。「最終」という語は、プラズマ洗浄後に更なる洗浄手順が実行されないという意味において、理解されるべきである。
【0032】
[0031] 遠隔プラズマ源では、ガス(例えばプロセスガス)が、典型的には、洗浄処理が実行されることとなる減圧チャンバから離れた遠隔チャンバ内で活性化される。このような活性化は、例えば、遠隔プラズマ源内で行うことができる。本開示の実施形態で使用される遠隔プラズマの例には、非限定的に、アルゴンとの酸素混合物の遠隔プラズマが含まれる。
【0033】
[0032] 減圧システムの少なくとも一部分を洗浄するための予洗浄と、例えば減圧システムの少なくとも一部分を洗浄するための遠隔プラズマ源を使用するプラズマ洗浄とは、減圧システムの様々な構成要素向けに使用することができる。幾つかの実施態様では、予洗浄とプラズマ洗浄とが、それぞれ、減圧チャンバの洗浄を含む。例えば、洗浄は、それぞれ、減圧チャンバの1以上の内壁の洗浄を含む。更に又は代替的に、洗浄は、減圧システムの減圧チャンバ内部の1以上の構成要素の洗浄を含み得る。1以上の構成要素は、機械構成要素、移動可能構成要素、ドライバ、バルブ、及びそれらの任意の組み合わせから成る群から選択され得る。例えば、機械構成要素は、減圧システムを動作させるために使用される移動可能構成要素のような、減圧チャンバ内部に設けられた任意の構成要素であってよい。例示的な移動可能構成要素は、非限定的に、ゲートバルブなどのバルブを含む。ドライバは、減圧システム内の基板及び/又はキャリアの輸送に使用されるドライバ、基板及び/又はマスクの位置合わせのためのドライバ若しくはアクチュエータ、隣接する減圧領域又はチャンバを分離するゲートバルブなどのバルブのためのドライバなどを含み得る。
【0034】
[0033] 本明細書で説明される他の実施形態と組み合わされ得る幾つかの実施形態によれば、洗浄するための方法、例えば方法100は、減圧システム又は減圧システムの部分の保守手順の後で実行される。特に、保守後の湿式洗浄のような予洗浄は、OLEDの大量生産のための適切な清浄度レベルを実現するのに十分でないことがある。予洗浄の後の洗浄手順、すなわちプラズマ洗浄は、熱蒸着プロセスなどの堆積プロセス中に堆積される有機材料の層の品質を改善することができる清浄度レベルを保証し得る。プラズマ洗浄はまた、製造中又はシステムのアイドル時間中にポリマー(Oリング、ケーブルなど)のガス放出によって引き起こされる再汚染を防止するためにも使用することができる。
【0035】
[0034] 「保守手順」という用語は、減圧システムが動作しておらず、減圧システム又は減圧システムの部分の整備及び/又は初期設置などの様々な作業を実行することができるという意味において、理解され得る。保守手順は、定期的に、例えば、所定の整備間隔で実行することができる。
【0036】
[0035] 幾つかの実施態様では、洗浄が、ロードロックチャンバ、洗浄チャンバ、減圧堆積チャンバ、減圧処理チャンバ、移送チャンバ、経路指定モジュール(routing module)、及びそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される、減圧システムの1以上の(減圧)チャンバで実行される。
【0037】
[0036] 上述のように、本開示の幾つかの実施形態は、低い圧力、特に、洗浄される減圧チャンバのサイズ及び任意選択的に形状寸法に適応し得る低い圧力での洗浄プロセスに言及する。OLEDディスプレイの製造などのディスプレイ製造は、大面積基板で行われる。例えば、基板のサイズは、0.67m2以上、例えば1m2以上であってよい。
【0038】
[0037] 本明細書で説明されるシステムは、大面積基板上での蒸着、例えばOLEDディスプレイ製造向けに利用され得る。具体的には、本明細書で説明される実施形態によるシステムが提供される基板は、大面積基板である。例えば、大面積基板又はキャリアは、約0.67m2(0.73×0.92m)の表面積に相当するGEN4.5、約1.4m2(1.1m×1.3m)の表面積に相当するGEN5、約2.7m2(1.5m×1.8m)の表面積に相当するGEN6、約4.29m2(1.95m×2.2m)の表面積に相当するGEN7.5、約5.7m2(2.2m×2.5m)の表面積に相当するGEN8.5、更には、約8.7m2(2.85m×3.05m)の表面積に相当するGEN10であってよい。GEN11及びGEN12といった更に大きい世代、並びにそれに相当する表面積を、同様に実装することができる。GEN世代の半分のサイズも、OLEDディスプレイ製造で提供され得る。
【0039】
[0038] 本開示の実施形態によれば、チャンバのサイズに応じて、活性種で洗浄するための改善された圧力レベルを提供することができる。したがって、より低い圧力は、より大きなチャンバ向けに有益に利用され得る。より小さなチャンバでは、より短い平均自由行程長に対応して、圧力がより高くてもよい。
【0040】
[0039] 本明細書で説明される他の実施形態と組み合わされ得るまた更なる実施形態によれば、低圧洗浄に関連する発明者らの知見は、半導体産業、例えば、ウエハ処理又はウエハ検査における減圧チャンバに同様に適用され得る。チャンバは典型的にはより小さくてもよいので、圧力はより高くてよい。特に、平均チャンバ壁距離に応じて平均自由行程長を最適化することに言及する実施形態は、より小さい減圧チャンバに適用可能である。更に、追加的又は代替的に、更なる洗浄パラメータの改善又は最適化が、同様に半導体製造に適用可能である。
【0041】
[0040] 図1Bは、本明細書で説明される実施形態による、例えばOLEDデバイスの製造において使用される減圧システムを洗浄するための方法100のフローチャートを示している。
【0042】
[0041] 方法100は、上述されたように、減圧チャンバの壁の平均距離を特定すること(ブロック120)と、低い圧力で活性種を用いて洗浄を実行すること(ブロック110)とを含む。低い圧力は、壁の平均距離の20%から97%の平均自由行程長に対応する。
[0042] 本明細書で説明される他の実施形態と任意選択的に組み合わされ得るまた更なる実施形態は、本明細書で説明されるように、洗浄化学に使用される適応したプロセスパラメータに言及する。
【0043】
[0043] 特に、OLEDデバイスにとって、減圧チャンバ内の減圧及び減圧チャンバ内の汚染の質は、デバイス性能に強く影響する。特に、製造デバイスの寿命は、汚染によって劇的に短縮され得る。したがって、減圧チャンバ内部の面は、頻繁に洗浄されることを必要とする。処理チャンバ、製造チャンバ、移送チャンバ、搬送チャンバ、貯蔵チャンバ、及び組み立てチャンバは、汚染に敏感である。そのようなチャンバの内面との人間の相互作用は、チャンバの面及び/又は構成要素の面によって吸収される有機及び非有機汚染を導入する。
【0044】
[0044] 人間のオペレータによる内面の湿式洗浄プロセスは、時間がかかり、労働集約的であり得るが、湿式洗浄は、溶剤に受容される用途や粒子などのような微細な汚染を除去するのに有益である。更に、人間のオペレータは、更なる有機汚染をシステムの中に導入することがあり、幾つかの整備は、人間のオペレータによって効率的に実現することができない。
【0045】
[0045] 本開示の実施形態によれば、湿式洗浄プロセスを導入して、微細な汚染を除去することができる。インシトゥの洗浄プロセスが、本明細書で説明される実施形態に従って、湿式洗浄プロセス又は別の予洗浄プロセスの後に提供されてよい。
【0046】
[0046] 上述されたように、活性種の平均自由行程長を決定する低減された圧力は、洗浄効率を改善するための1つのパラメータである。圧力は、汚染された面に到達する活性種の濃度、例えば、洗浄効率に関与する活性種の濃度を決定する。活性種は、減圧チャンバ内の全体のプロセスガスの分画であってよい。チャンバの圧力、したがって平均自由行程長を設定することにより、一定のポンピング速度が与えられたとして、汚染表面に到達する活性種の個数が規定される。入口流量が増加したときでも、ポンピング速度を上げることにより、動作圧力(及び平均自由行程)を維持することができる。
【0047】
[0047] 本明細書で説明される他の実施形態と組み合わされ得る幾つかの実施形態によれば、プラズマの活性化効率を低減させることなく、入口流量を増加させることができる。
【0048】
[0048] 図2は、OLEDデバイス、ディスプレイデバイス、又は半導体デバイスを製造するための基板上の減圧堆積のための方法200のフローチャートを示している。該方法は、有機汚染に対する感受性の観点からOLEDデバイスで特に有用であり得、方法200は、本開示による例えばOLEDデバイスの製造において使用される減圧システムを洗浄するための方法の態様を含み得る。
【0049】
[0049] 方法200は、減圧システムの少なくとも一部分を洗浄すること(ブロック110)と、有機材料などの材料の1以上の層を基板上に堆積させること(ブロック210)と、を実行することを含む。
【0050】
[0050] 本開示の幾つかの実施形態によるプラズマ洗浄は、減圧システムの清浄度レベル及び/又は洗浄効率を大幅に改善し得る。プラズマ洗浄は、大面積基板向けの減圧チャンバについて、5時間以下の範囲内の洗浄で略ゼロの接触角をもたらし得る。接触角は、予洗浄された(110)シリコン基板を、洗浄されたチャンバ内で16時間だけ減圧曝露した状態で測定されてよい。
【0051】
[0051] 図3は、本明細書で説明される実施形態による、OLEDデバイスを製造するための例えば基板上での減圧堆積のための処理システム300を示している。
【0052】
[0052] 図3では、プロセスモジュール310が、経路指定モジュール320に連結されている。保守モジュール340が、プロセスモジュールに結合され得る。トランジットモジュール330が、第1の経路指定モジュールから第2の経路指定モジュール(図示せず)への輸送方向に沿った経路を提供する。モジュールのそれぞれは、1以上の減圧チャンバを有し得る。更に、トランジットモジュールは、2以上のトラック、例えば4つの輸送トラック352を提供し得る。ここで、キャリアは、経路指定モジュールのうちの1つから移動させることができる。図3で示されているように、経路指定モジュール及び/又はトランジットモジュールに沿った輸送方向が、第1の方向であり得る。更なる経路指定モジュールが、更なるプロセスモジュール(図示せず)に連結されてよい。図3で示されているように、ゲートバルブ305は、隣接するモジュール間又は減圧チャンバ間で、それぞれ、第1の方向に沿って、例えば、トランジットモジュールと隣接する経路指定モジュールとの間で、及び第2の方向に沿って設けられてよい。ゲートバルブ305は、減圧チャンバ間に減圧密封を提供するために閉じたり又は開いたりすることができる。ゲートバルブの存在は、処理システムの適用の仕方、例えば、基板上に堆積される有機材料の層の種類、数、及び/又は順序に依存し得る。したがって、1以上のゲートバルブが、移送チャンバ間に設けられ得る。
【0053】
[0053] 典型的な実施形態によれば、第1の輸送トラック352及び第2の輸送トラック352は、減圧チャンバ内の汚染を低減させるために、基板キャリア及び/又はマスクキャリアの非接触輸送のために構成される。特に、第1の輸送トラック及び第2の輸送トラックは、保持アセンブリと、基板キャリア及び/又はマスクキャリアの非接触並進のために構成された駆動構造体とを含み得る。
【0054】
[0054] 図3で示されているように、第1の経路指定モジュール320では、2つの基板301が回転される。基板が位置付けられている2つの輸送トラックは、第1の方向と整列するように回転される。したがって、輸送トラック上の2つの基板は、トランジットモジュール及び隣接する更なる経路指定モジュールに移送される位置に設けられる。
【0055】
[0055] 本明細書で説明される他の実施形態と組み合わされ得る幾つかの実施形態によれば、輸送トラック構成の輸送トラックは、減圧プロセスチャンバから減圧経路指定チャンバ320の中に延在し、すなわち、第1の方向とは異なる第2の方向に方向付けられ得る。したがって、基板のうちの1以上は、減圧プロセスチャンバから隣接する減圧経路指定チャンバへと移送され得る。更に、図3で示されているように、ゲートバルブ305が、プロセスモジュールと経路指定モジュールとの間に設けられ、ゲートバルブ305は、1以上の基板の搬送のために開放され得る。したがって、基板は、第1のプロセスモジュールから第1の経路指定モジュールへと、第1の経路指定モジュールから更なる経路指定モジュールへと、及び、更なる経路指定モジュールから更なるプロセスモジュールへと移送され得ることを理解されたい。したがって、基板を、望まれない環境(例えば、大気環境又は非減圧環境)に曝露せずに、幾つかのプロセス(例えば、基板上への有機材料の様々な層の堆積)を行うことができる。
【0056】
[0056] 図3は、更に、プロセスモジュール310内のマスク303及び基板301を示している。堆積源309が、マスク及び/又は基板の間にそれぞれ設けられ得る。
【0057】
[0057] 図3で示されているモジュールの各減圧チャンバは、遠隔プラズマ源350を含む。例えば、遠隔プラズマ源が、減圧チャンバのチャンバ壁に取り付けられ得る。
例示的に、チャンバ壁は、上側チャンバ壁であってよい。処理システム300が、各チャンバで遠隔プラズマ源を有する減圧チャンバを示しているとしても、処理システムは、少なくとも1つの遠隔プラズマ源350を含んでよい。特に、処理システム300は、第1の遠隔プラズマ源350を有する第1の減圧チャンバ、及び第2の遠隔プラズマ源350を有する第2の減圧チャンバを含み得る。
【0058】
[0058] 例えばプロセスモジュール310の遠隔プラズマ源350は、減圧チャンバに連結される。遠隔プラズマ源に連結されたコントローラは、本開示の実施形態に従ってプラズマ洗浄を実行するように構成されている。特に、コントローラは、例えば、本開示のOLEDデバイスの製造に使用される減圧システム又は減圧チャンバを洗浄するための方法を実施するように構成され得る。遠隔プラズマ源を有する例示的な減圧チャンバが、図4に関してより詳細に説明される。
【0059】
[0059] ターボポンプ及び/又はクライオポンプなどの1以上の減圧ポンプが、減圧チャンバ内部の工業的減圧の生成のために、例えばベローズチューブなどの1以上のチューブを介して、減圧チャンバに連結され得る。コントローラは、例えばプラズマ洗浄手順の前に、減圧チャンバ内の圧力を低減させるために、1以上の減圧ポンプを制御するように更に構成され得る。
【0060】
[0060] 本開示の全体を通して使用される際に、「減圧」という用語は、例えば10mbar未満の減圧を有する工業的減圧の意味において、理解され得る。減圧チャンバ内の圧力は、特に大面積基板を処理するための減圧チャンバについて、10-3mbarと約10-7mbarの間、特に10-4mbarと10-5mbarの間であってよい。
【0061】
[0061] 図3で示されているように、減圧処理システム300は、複数の異なるモジュールを有し得る。各モジュールは、少なくとも1つの減圧チャンバを有し得る。減圧チャンバのサイズや形状寸法は異なる場合がある。上述したように、本明細書で説明される他の実施形態と組み合わされ得る本開示の幾つかの実施形態によれば、活性種を用いた洗浄の洗浄効率は、平均自由行程長を減圧チャンバのサイズ及び形状寸法に適合させることによって、大幅に向上させることができる。減圧チャンバ内での活性種の分布の均一性を増大させるための原子間衝突と、原子と壁との間の衝突(すなわち、チャンバ内での活性種の到達範囲が十分である)と、の間の良好な妥協点を特定することができる。種々の散乱メカニズムの間の有益な妥協点を選択することは、洗浄効率を大幅に増加させる。
【0062】
[0062] したがって、幾つかの実施形態によれば、活性種を用いた洗浄中の減圧チャンバ内の圧力は、減圧処理システム内の2以上の減圧チャンバに個別に適合させることができる。平均自由行程長は、個々のチャンバのサイズ及び/又は個々のチャンバの形状寸法に対して改善又は最適化される。一実施形態によれば、第1の減圧チャンバ及び第2の減圧チャンバを有する減圧システムを洗浄するための方法が提供される。該方法は、1mbar未満の第1の圧力において活性種で第1の減圧チャンバを洗浄すること、及び第1の圧力とは異なる1mbar未満の第2の圧力において活性種で第2の減圧チャンバを洗浄することを含む。
【0063】
[0063] 本開示の実施形態によれば、例えば遠隔プラズマ源の活性種による洗浄は、非常に効率的であり得る。典型的な遠隔プラズマ源は、該源の点火のための圧力範囲を有する。例えば、遠隔プラズマ源の点火は、0.05mbar以上、例えば0.1mbarから1.5mbarで行うことができる。遠隔プラズマ源、したがって、遠隔プラズマ源内で活性種が生成される空間は、減圧チャンバに連結される。したがって、減圧チャンバのチャンバ圧力は、遠隔プラズマ源の点火圧力まで高められ得るが、遠隔プラズマ源は、点火の後に減圧チャンバに連結され、低減された圧力を有する洗浄状態が生成される。減圧チャンバのポンピングは、更なる時間を要し、予防保守の直後の時間に洗浄が行われることを制限し得る。洗浄されるべき減圧チャンバのチャンバ圧力を増加させない洗浄手順は、より頻繁な洗浄を可能にする。以下の図4に関して例示的に説明される実施形態は、短い中断又はアイドル時間の最中にも高効率の洗浄プロセスを可能にする。したがって、製造中に再汚染及び全体的な汚染レベルの制御を提供することができる。OLEDデバイスの一貫した高品質が確保できる。したがって、短い中断中のアイドル時間を遠隔プラズマ洗浄に利用することができるので、本明細書で説明される実施形態は、汚染の効率的な洗浄も可能にする。
【0064】
[0064] 図4は、基板を減圧処理するための装置400を示している。例えば、基板は、本明細書で説明されるような大面積基板又は半導体産業用のウエハであり得る。特に、減圧処理のための装置は、OLEDデバイスの製造のために構成され得るか、又はOLEDデバイスを製造するための処理システム内に含まれることがある。該装置は、減圧チャンバ410を含む。減圧チャンバ410は、減圧ポンプ420を用いて排気され得る。特にOLEDプロセスでは、減圧ポンプがクライオポンプであってよい。遠隔プラズマ源350は、減圧チャンバ410に結合されている。幾つかの実施形態によれば、遠隔プラズマ源は、減圧チャンバの上側壁に結合されてよい。
【0065】
[0065] 遠隔プラズマ源350は、プラズマが生成される筐体450と、プラズマ生成器451とを含む。活性種を生成するために、プロセスガス入口452が筐体450に設けられている。動作中、酸素を含有するプロセスガスのようなプロセスガスを、プロセスガス入口452を通して遠隔プラズマ源に供給することができる。例えば、プロセスガスは、酸素と、窒素とアルゴンのうちの少なくとも一方とを含み得る。バルブ455が、遠隔プラズマ源350と減圧チャンバ410との間に設けられ得る。例えば、バルブ455は、遠隔プラズマ源350を減圧チャンバ410に連結するフランジ453内に含まれ得る。
【0066】
[0066] バルブ455は、減圧チャンバ410と遠隔プラズマ源350の筐体450との中に異なる圧力を有することを可能にする。したがって、遠隔プラズマ源350は、減圧チャンバ410が比較的低い圧力に維持されている一方で、比較的高い圧力で点火され得る。本明細書で説明される実施形態と組み合わされ得る幾つかの実施形態によれば、バルブ455用のバイパスが設けられ得る。バイパス456は、筐体450と減圧チャンバ410との間の流体連通を可能にする。バルブ455が閉位置にある場合、プロセスガス入口452を通って流れるプロセスガスは、入ってくるガス流用の出口を有することなしに、筐体450内の圧力を変化させ得る。
【0067】
[0067] したがって、遠隔プラズマ源と減圧チャンバとを連結する導管457に加えて、プロセスガス出口が、本明細書で説明される実施形態に従って有益に設けられる。プロセスガス出口は、バイパス456であってよい。本明細書で説明される他の実施形態と組み合わされ得る更なる又は代替的な変形例によれば、プロセスガス出口は、遠隔プラズマ源に連結されたポンプ425であってもよい。導管457に加えてプロセスガス出口は、遠隔プラズマ源のための安定した点火状態を生成することを可能にする。遠隔プラズマ源の点火後に、導管457内のバルブ455を開くことができる。活性種は、遠隔プラズマ源の筐体から減圧チャンバ410に提供され得る。導管457は、フランジ453の更なる一部分であってよい。
【0068】
[0068] 本開示の幾つかの実施形態は、バイパスを使用して、チャンバの圧力がほとんど影響を受けることなしに、遠隔プラズマ源内の点火状態を生成する。例えば、バイパスに対応する(例えば、関連付けられた)バルブを開いた後で、本開示の実施形態による改善された洗浄状態が、略瞬間的に実現され得る。
【0069】
[0069] 遠隔プラズマ源(RPS)は、フランジを使用して減圧チャンバに連結される。フランジに組み込まれるのは、減圧チャンバと遠隔プラズマ源ユニットとを分離することができる振り子バルブ(pendulum valve)のようなバルブであってもよい。本明細書で説明される他の実施形態と組み合わされ得る幾つかの実施形態によれば、例えば可変オリフィスを有する小さいチューブが、フランジの上部(RPS側)及びフランジの下部(チャンバ側)に取り付けられる。小さいチューブは、バルブを迂回(バイパス)する。
【0070】
[0070] RPSユニット内部のプラズマの点火のために、バルブは閉じられ、入口を通る流れがRPSユニットの中に入る。小さいバイパスは、点火のためにプラズマユニット内部での一定の圧力を確保する。プラズマが安定した後で、バルブを開くことができる。遠隔プラズマ源内部のプラズマによって生成された活性種は、洗浄のためにチャンバの中へ直接的に移動することができる。
【0071】
[0071] 上記に鑑みて、一実施形態によれば、特にOLEDデバイスを製造するために、基板の減圧処理のための装置が提供される。該装置は、減圧チャンバと、減圧チャンバに連結された遠隔プラズマ源とを含む。遠隔プラズマ源は、プロセスガス入口と、活性種用の導管と、プロセスガス出口とを有する。たとえば、導管は、減圧チャンバと遠隔プラズマ源の筐体とを連結することができる。プロセスガス出口と導管とは、遠隔プラズマ源のフランジ内に含まれ得る。装置は、更に、導管を開閉するように配置された、減圧チャンバと遠隔プラズマ源との間のバルブを含む。幾つかの実施形態によれば、装置は、プロセスガス出口と減圧チャンバとを連結する導管用のバイパスを更に含み得る。
【0072】
[0072] 図4は、コントローラ490を示している。コントローラ490は、減圧ポンプ420と遠隔プラズマ源350とに接続されている。コントローラ490は、中央処理装置(CPU)、メモリ、及び例えばサポート回路を含むことができる。基板を処理するための装置の制御を容易にするために、CPUは、様々なチャンバを制御するための工業用設定で使用することができる、任意の形態の汎用コンピュータプロセッサと、サブプロセッサとのうちの1つであってよい。メモリはCPUに結合される。メモリ又はコンピュータ可読媒体は、ランダムアクセスメモリ、リードオンリーメモリ、フロッピーディスク、ハードディスク、又はローカル若しくはリモートのうちの何れかのデジタルストレージの何らかの他の形態などの、1以上の容易に入手可能なメモリデバイスであってよい。サポート回路は、従来のやり方でプロセッサをサポートするためにCPUに結合され得る。これらの回路は、キャッシュ、電源、時計回路、入出力回路、及び関連するサブシステムなどを含む。検査プロセス指示命令及び/又は基板上に設けられた電子デバイス内にノッチ(notch)を生成するためのプロセス指示命令は、一般的に、典型的にはレシピとして知られているソフトウェアルーチンとしてメモリ内に記憶される。ソフトウェアルーチンはまた、CPUによって制御されているハードウェアから遠隔に位置付けられた第2のCPU(図示せず)によって記憶及び/又は実行され得る。ソフトウェアルーチンは、CPUによって実行されたときに、汎用コンピュータを、とりわけ減圧ポンプ420及び遠隔プラズマ源350を制御するような装置の動作を制御する、特殊目的コンピュータ(コントローラ)に変換する。本開示の方法及び/又はプロセスは、ソフトウェアルーチンとして実施されるものと説明されるが、そこで開示される該方法ステップのうちの幾つかは、ハードウェア内でならびにソフトウェアコントローラによって実行されてもよい。したがって、実施形態は、コンピュータシステム上で実行されるようなソフトウェア内に、及び特定用途向け集積回路若しくは他の種類のハードウェア実装としてのハードウェア内に、又はソフトウェアとハードウェアの組み合わせ内に実装することができる。コントローラは、例えば、本開示の実施形態によるディスプレイ製造のために、減圧チャンバの洗浄及び/又は基板の処理のための方法を実行又は実施することができる。
【0073】
[0073] 本明細書で説明される実施形態によれば、基板の減圧処理のための方法は、コンピュータプログラム、ソフトウェア、コンピュータソフトウェア製品、及び相互に関連するコントローラを使用して実施することができ、これらは、CPU、メモリ、ユーザインターフェース、及び装置の対応する構成要素と通信する入出力デバイスを有することができる。
【0074】
図5は、本明細書で説明される実施形態による、更なる方法500を示すフローチャートを示している。方法500は、減圧チャンバ、特にOLEDデバイスの製造に使用される減圧チャンバを洗浄するためのものである。該方法は、減圧チャンバが第1の圧力よりも低い第2の圧力を有する間に、遠隔プラズマ源内の第1の圧力で遠隔プラズマ源に点火すること(ブロック510参照)を含む。該方法は、更に、遠隔プラズマ源内の圧力を、第2の圧力以上の圧力に低減させることを含む(ブロック520)。例えば、本明細書で説明される他の方法と組み合わされ得る幾つかの方法は、第1の圧力で遠隔プラズマ源に点火し、遠隔プラズマ源内の圧力を第1の圧力よりも少なくとも一桁低い、特に第1の圧力よりも少なくとも3桁低い第2の圧力に低減させることを含み得る。
【0075】
[0074] 以上の説明は本開示の実施形態を対象としているが、本開示の基本的な範囲を逸脱することなく本開示の他の更なる実施形態を考案することができ、本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定められる。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6