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特許7445095感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物、およびプリント配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物、およびプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/032 20060101AFI20240228BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20240228BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240228BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
G03F7/032 501
G03F7/027 502
G03F7/004 501
G03F7/004 512
H05K3/28 D
H05K3/28 F
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023551806
(86)(22)【出願日】2022-09-28
(86)【国際出願番号】 JP2022036285
(87)【国際公開番号】W WO2023054523
(87)【国際公開日】2023-04-06
【審査請求日】2023-11-21
(31)【優先権主張番号】P 2021159246
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】播磨 英司
(72)【発明者】
【氏名】小澤 咲月
(72)【発明者】
【氏名】荒井 康昭
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/147938(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/030099(WO,A1)
【文献】特開2020-204774(JP,A)
【文献】特開2008-058979(JP,A)
【文献】特開2003-192764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/18
H05K 3/28
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基含有樹脂と、光重合性モノマーと、熱硬化性成分と、を含んでなる感光性樹脂組成物であって、
前記光重合性モノマーが、イソシアヌル環を有する(メタ)アクリレートを含み、
前記熱硬化性成分が、ビフェニル型エポキシ樹脂、および、重量平均分子量が500以下のビスフェノールA型エポキシ樹脂を含む、
ことを特徴とする、感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ビフェニル型エポキシ樹脂が、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂およびビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ビフェニル型エポキシ樹脂と前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂とが、質量基準において2:8~8:2の割合で含まれる、請求項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記カルボキシル基含有樹脂が、クレゾールノボラック型カルボキシル基含有樹脂を含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
シリカおよびタルクからなる群より選択される少なくとも1種のフィラーをさらに含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記シリカと前記タルクとが、質量基準において1:1~3:1の割合で含まれる、請求項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の感光性樹脂組成物を第1のフィルムに塗布、乾燥して得られる樹脂層を有する、ドライフィルム。
【請求項8】
請求項1に記載の感光性樹脂組成物、または請求項に記載のドライフィルムを硬化させて得られる硬化物。
【請求項9】
請求項に記載の硬化物からなる被膜を備えたプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物に関し、より詳細にはソルダーレジスト等の絶縁層の形成に好適に使用できる感光性樹脂組成物、感光性樹脂組成物を用いたドライフィルム、感光性樹脂組成物またはドライフィルムの硬化物、およびそれら硬化物を用いたプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子機器などに用いられるプリント配線板において、プリント配線板に電子部品を実装する際のはんだリフローなどの工程においてプリント配線板の不要な部分にはんだが付着するのを防止するために、回路パターンの形成された基板上の接続孔を除く領域にソルダーレジスト層が形成されている。ソルダーレジスト層は、基板に感光性樹脂組成物を塗布、乾燥し、露光、現像によりパターン形成した後、パターン形成された樹脂を加熱ないし光照射によって本硬化させる、いわゆるフォトソルダーレジストによって形成されるのが主流となっている。また、上記したような液状の感光性樹脂組成物を使用することなく、感光性のドライフィルムを使用してソルダーレジスト層を形成することも提案されている。これら感光性樹脂組成物や感光性ドライフィルムは、何れも露光、現像が可能なように、酸変性した(メタ)アクリレート樹脂等のアルカリ可溶性の感光性樹脂成分に加えて、光硬化性成分である(メタ)アクリレートや、耐熱性や基板密着性等を考慮してエポキシ等の熱硬化性成分が含まれている。
【0003】
近年、プリント配線板の高密度化が著しく、回路幅は最小でライン数μm程度になっており、ソルダーレジスト材料には従来よりも高い絶縁信頼性が要求されている。このようなファインパターンの回路間での絶縁信頼性を向上させるため、例えば、特許文献1には、アルカリ可溶性樹脂成分として、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂の有するエポキシ基のうちの少なくとも一部に多塩基酸が付加した構造を有するカルボキシル基含有樹脂を用いることが提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、ソルダーレジスト材料の絶縁信頼性を改善するため、感光性樹脂組成物中の熱硬化性成分として、ビフェニル型エポキシ樹脂とビスフェノールA型エポキシ樹脂等を併用することが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-104013号公報
【文献】特開2010-224168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように感光性樹脂組成物中にビフェニル型エポキシ樹脂を配合することで絶縁信頼性は向上するものの、露光、現像の際に現像残渣が再付着し易く、現像残渣の再付着抑制のためには、樹脂組成物の水溶性を高める必要がある。そこで、光重合性モノマーとして、エチレンオキサイド変性した(メタ)アクリレートを使用することで、絶縁信頼性を維持しながら現像残渣の再付着を抑制できる。
【0007】
しかしながら、上記のようにビフェニル型エポキシ樹脂とエチレンオキサイド変性した(メタ)アクリレートとを併用すると硬化被膜の硬度が低下し、場合によっては搬送時に硬化被膜表面にローラー痕がついてしまうといった問題が生じることがわかった。
【0008】
したがって、本発明の目的は、絶縁信頼性を維持しながら、現像残渣の再付着を抑制でき、ローラー痕が生じにくい硬化被膜が得られる感光性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題に対して本発明者らが種々の検討を行ったところ、ビフェニル型エポキシ樹脂と特定の(メタ)アクリレートとを併用することで、絶縁信頼性を維持しながら、現像残渣の再付着やローラー痕の問題も改善できるとの知見を得た。本発明はかかる知見によるものである。即ち、本発明の要旨は以下のとおりである。
【0010】
[1] カルボキシル基含有樹脂と、光重合性モノマーと、熱硬化性成分と、を含んでなる感光性樹脂組成物であって、
前記光重合性モノマーが、イソシアヌル環を有する(メタ)アクリレートを含み、
前記熱硬化性成分が、ビフェニル型エポキシ樹脂を含む、
ことを特徴とする、感光性樹脂組成物。
[2] 前記ビフェニル型エポキシ樹脂が、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂およびビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である、[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[3] 前記熱硬化性成分が、重量平均分子量が500以下のビスフェノールA型エポキシ樹脂をさらに含む、[1]または[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[4] 前記ビフェニル型エポキシ樹脂と前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂とが、質量基準において2:8~8:2の割合で含まれる、[3]に記載の感光性樹脂組成物。
[5] 前記カルボキシル基含有樹脂が、クレゾールノボラック型カルボキシル基含有樹脂を含む、[1]~[4]のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
[6] シリカおよびタルクからなる群より選択される少なくとも1種のフィラーをさらに含む、[1]~[5]のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
[7] 前記シリカと前記タルクとが、質量基準において1:1~3:1の割合で含まれる、[6]に記載の感光性樹脂組成物。
[8] [1]~[7]のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を第1のフィルムに塗布、乾燥して得られる樹脂層を有する、ドライフィルム。
[9] [1]~[7]のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物、または[8]に記載のドライフィルムを硬化させて得られる硬化物。
[10] [9]に記載の硬化物からなる被膜を備えたプリント配線板。
【発明の効果】
【0011】
本発明による感光性樹脂組成物は、カルボキシル基含有樹脂と、光重合性モノマーと、熱硬化性成分とを必須成分として含むものである。以下、本発明による感光性樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<カルボキシル基含有樹脂>
カルボキシル基含有樹脂としては、分子中にカルボキシル基を有している従来公知の各種樹脂を使用できる。感光性樹脂組成物が、カルボキシル基含有樹脂を含むことにより、感光性樹脂組成物に対しアルカリ現像性を付与することができる。光硬化性や耐現像性の観点から、カルボキシル基含有樹脂として、特に、分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有樹脂が好ましい。エチレン性不飽和二重結合は、アクリル酸もしくはメタクリル酸またはそれらの誘導体由来であることが好ましい。
【0013】
カルボキシル基含有樹脂としてエチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂のみを用いる場合、後述するイソシアヌル環を有する、2官能以上の(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートを併用することによって、組成物に感光性を付与することができる。
【0014】
カルボキシル基含有樹脂の具体例としては、以下のような化合物(オリゴマーおよびポリマーのいずれでもよい)を挙げることができる。
【0015】
(1)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α-メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0016】
(2)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ジアルコール化合物およびポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキサイド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0017】
(3)ジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸等のエチレン性不飽和二重結合を有するモノカルボン酸化合物との反応物の部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物およびジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0018】
(4)前記(2)または(3)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子内に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0019】
(5)前記(2)または(3)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物など、分子内に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0020】
(6)2官能またはそれ以上の多官能(固形)エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0021】
(7)2官能(固形)エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0022】
(8)2官能オキセタン樹脂にアジピン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂。
【0023】
(9)1分子中に複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物に、p-ヒドロキシフェネチルアルコール等の1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸とを反応させ、得られた反応生成物のアルコール性水酸基に対して、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、アジピン酸等の多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0024】
(10)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドとを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0025】
(11)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0026】
(12)前記(1)~(11)の樹脂にさらに1分子内に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0027】
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
【0028】
上記したカルボキシル基含有感光性樹脂のなかでも、(6)の有感光性樹脂においてエポキシ樹脂としてクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を使用したものや、(12)の有感光性樹脂を好ましく使用することができ、特に(6)の有感光性樹脂においてエポキシ樹脂としてクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を使用したものをより好ましく使用することができる。
【0029】
これらカルボキシル基含有樹脂は、前記列挙したもの限らず使用することができ、1種類を単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
【0030】
カルボキシル基含有樹脂の酸価は、40~150mgKOH/gであることが好ましい。カルボキシル基含有樹脂の酸価が40mgKOH/g以上とすることにより、アルカリ現像が良好になる。また、酸価を150mgKOH/gを以下とすることで、良好なレジストパターンの描画をし易くできる。より好ましくは、50~130mgKOH/gである。
【0031】
カルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、一般的に2,000~150,000であることが好ましい。重量平均分子量が2,000以上とすることにより、タックフリー性能や解像度を向上させることができる。また、重量平均分子量が150,000以下とすることで、現像性や貯蔵安定性を向上させることができる。より好ましくは、5,000~15,000である。なお、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0032】
カルボキシル基含有樹脂の配合量は、感光性樹脂組成物中において、固形分換算で、20~60質量%であることが好ましい。20質量%以上とすることにより塗膜強度を向上させることができる。また60質量%以下とすることで粘性が適当となり印刷性が向上する。より好ましくは、30~50質量%である。
【0033】
<光重合性モノマー>
本発明による感光性樹脂組成物は、光重合性モノマーとして、イソシアヌル環を有する(メタ)アクリレートを含む。本発明による感光性樹脂組成物は、後記するように熱硬化性成分としてビフェニル型エポキシ樹脂を含むものであるが、ビフェニル型エポキシ樹脂とイソシアヌル環を有する(メタ)アクリレートとを併用することにより、絶縁信頼性を維持しながら、上記したようなビフェニル型エポキシ樹脂を配合することによる現像残渣の再付着の問題を抑制しながら、硬化被膜にローラー痕が付着するといった問題も抑制することができる。この理由は明らかではないが、イソシアヌル環を有する(メタ)アクリレートは、エチレンオキサイド変性した(メタ)アクリレートと同様に感光性樹脂組成物の水溶性を向上させる機能を有し、現像残渣を抑制しながら、感光性樹脂組成物が硬化した際の硬化物の硬度をある程度高く維持しローラー痕の付着を抑制することができるためと考えられる。
【0034】
イソシアヌル環を有する(メタ)アクリレートとしては、広く公知慣用のものを使用することができるが、そのなかでも、特にイソシアヌル環を有する2官能以上の(メタ)アクリレートを好ましく使用することができ、例えば、エトキシ化イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレートおよびこれらのカプロラクトン変性体が挙げられる。
【0035】
感光性樹脂組成物におけるイソシアヌル環を有する(メタ)アクリレートの配合量は、固形分換算で、カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、1~50質量部であることが好ましく、5~40質量部であることがより好ましい。
【0036】
本発明による感光性樹脂組成物は、光重合性モノマーとして、上記したイソシアヌル環を有する(メタ)アクリレート以外にも、(メタ)アクリロイル基からなる光重合性基を有するモノマーが含まれていてもよい。このような光重合性モノマーとしては、例えば、慣用公知のポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、カーボネート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。具体的には、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレート類;エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのジアクリレート類;N,N-ジメチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどのアクリルアミド類;N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリレートなどのアミノアルキルアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス-ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどの多価アルコールまたはこれらのエチレオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、もしくはε-カプロラクトン付加物などの多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、およびこれらのフェノール類のエチレンオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物などの多価アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの多価アクリレート類;前記に限らず、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール、水酸基末端ポリブタジエン、ポリエステルポリオールなどのポリオールを直接アクリレート化、もしくは、ジイソシアネートを介してウレタンアクリレート化したアクリレート類およびメラミンアクリレート、および前記アクリレートに対応する各メタクリレート類のいずれか少なくとも1種から適宜選択して用いることができる。このような光重合性モノマーは、反応性希釈剤としても用いることができる。
【0037】
イソシアヌル環を有する(メタ)アクリレート以外の光重合性モノマーを含む場合、その配合量は、固形分換算で、カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、1~10質量部であることがより好ましい。
【0038】
<熱硬化性成分>
本発明による感光性樹脂組成物は、熱硬化性成分としてビフェニル型エポキシ樹脂を含む。感光性樹脂組成物に熱硬化性成分としてビフェニル型エポキシ樹脂を配合することにより、硬化被膜の耐熱性を向上させるとともに、絶縁信頼性を向上させることができる。ビフェニル型エポキシ樹脂としては、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0039】
ビフェニル型エポキシ樹脂の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、300~10,000であることが好ましく、300~3,000であることがより好ましい。なお、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0040】
感光性樹脂組成物におけるビフェニル型エポキシ樹脂の配合量は、固形分換算で、カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して1~100質量部であることが好ましく、5~50質量部であることがより好ましい。
【0041】
本発明による感光性樹脂組成物は、熱硬化性成分として上記したビフェニル型エポキシ樹脂以外にも、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体等のアミノ樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、シクロカーボネート化合物、ビフェニル型エポキシ樹脂以外のエポキシ化合物、オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂、ビスマレイミド、カルボジイミド樹脂等の公知の熱硬化性成分が含まれていてもよい。これらのなかでも、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ化合物を好ましく使用することができる。
【0042】
熱硬化性成分としてビフェニル型エポキシ樹脂に他のエポキシ樹脂を併用する場合、エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂を使用することが好ましい。熱硬化性成分としてビスフェノールA型エポキシ樹脂を併用することにより、現像残渣の再付着をより効果的に抑制することができる。また、感光性樹脂組成物を硬化させた後の硬化物のガラス転移温度が高くなるため、硬化物の耐熱性がより向上する。ビフェニル型エポキシ樹脂と併用して使用するビスフェノールA型エポキシ樹脂は、重量平均分子量が500以下であることが好ましい。
【0043】
熱硬化性成分として、ビフェニル型エポキシ樹脂とビスフェノールA型エポキシ樹脂とを併用して使用する場合、ビフェニル型エポキシ樹脂とビスフェノールA型エポキシ樹脂との配合割合は、質量基準において2:8~8:2であることが好ましく、3:7~5:5であることがより好ましい。ビフェニル型エポキシ樹脂とビスフェノールA型エポキシ樹脂との配合割合が上記範囲内にあると、より一層、現像残渣の再付着を抑制でき、ローラー痕が生じにくくなる。
【0044】
熱硬化性成分の配合量は、固形分換算で、カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して1~100質量部であることが好ましく、5~55質量部であることがより好ましい。
【0045】
<光重合開始剤>
本発明による感光性樹脂組成物は、光重合させるために光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤としては、公知のものを用いることができ、例えば、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル]-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン等のα-アミノアセトフェノン系光重合開始剤:1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等のヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤;ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2-メチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤;ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn-プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル等のベンゾイン系光重合開始剤;ベンゾインアルキルエーテル系光重合開始剤;ベンゾフェノン、p-メチルベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、メチルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン系光重合開始剤;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン等のアセトフェノン系光重合開始剤;チオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤;アントラキノン、クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン、2-アミノアントラキノン等のアントラキノン系光重合開始剤;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール系光重合開始剤;エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、p-ジメチル安息香酸エチルエステル等の安息香酸エステル系光重合開始剤;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル系光重合開始剤;ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス[2,6-ジフルオロ-3-(2-(1-ピル-1-イル)エチル)フェニル]チタニウム等のチタノセン系光重合開始剤;等を挙げることができる。
光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
市販されるα-アミノアセトフェノン系光重合開始剤としては、IGM Resins社製のOmnirad 907、369、369E、379等が挙げられる。
市販されるアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、IGM Resins社製のOmnirad 819等が挙げられる。
市販されるチタノセン系光重合開始剤としては、Yueyang Kimoutain Sci-tech Co.,Ltd.製のJMT-784、湖北固潤科技股分有限公司製のGR-FMT等が挙げられる。
【0047】
また、分子内に2個のオキシムエステル基を有する光重合開始剤も好適に用いることができ、具体的には、下記一般式(I)で表されるカルバゾール構造を有するオキシムエステル化合物が挙げられる。
【化1】
【0048】
上記式中、Xは、水素原子、炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、フェニル基、フェニル基(炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1~8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)、ナフチル基(炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1~8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)を表し、Y、Zはそれぞれ、水素原子、炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、ハロゲン基、フェニル基、フェニル基(炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1~8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)、ナフチル基(炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1~8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)、アンスリル基、ピリジル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基を表し、Arは、炭素数1~10のアルキレン、ビニレン、フェニレン、ビフェニレン、ピリジレン、ナフチレン、チオフェン、アントリレン、チエニレン、フリレン、2,5-ピロール-ジイル、4,4’-スチルベン-ジイル、4,2’-スチレン-ジイルを表し、nは0または1の整数である。
【0049】
特に、上記式中、X、Yが、それぞれ、メチル基またはエチル基であり、Zがメチルまたはフェニルであり、nが0であり、Arが、フェニレン、ナフチレン、チオフェンまたはチエニレンであるオキシムエステル系光重合開始剤が好ましい。
【0050】
上記した光重合開始剤以外にも、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、3級アミン化合物、およびキサントン化合物等を光重合開始剤として使用するができる。
しかしながら、これらは、単独で光重合開始剤として、使用するより、上記した光重合開始剤と併用して、光重合開始助剤または増感剤として使用することが好ましい。
上記した中でも、深部硬化性という観点から、チオキサントン化合物および3級アミン化合物が好ましく、チオキサントン化合物がより好ましい。また、上記化合物2種以上を併用してもよい。
【0051】
感光性樹脂組成物における光重合開始剤の配合量は、固形分換算で、カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、1~50質量部であることが好ましく、1~20質量部であることがより好ましい。これにより、深部の硬化性を向上することができる。
また、感光性樹脂組成物が、上記ベンゾイン化合物等を光重合開始助剤等として含む場合、その配合量は、固形分換算で、カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、0.1~5質量部であることがより好ましい。これにより、深部の硬化性を向上することができる。
【0052】
<熱硬化触媒>
本発明の感光性樹脂組成物は、上記した熱硬化性成分の硬化を促進するための熱硬化触媒を含むことが好ましい。熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4-(ジメチルアミノ)-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メトキシ-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルフォスフィン等のリン化合物等が挙げられる。また、市販されているものとしては、例えば四国化成工業株式会社製の2MZ-A、2MZ-OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ株式会社製のU-CAT 3513N(ジメチルアミン系化合物の商品名)、DBU、DBN、U-CAT SA 102(いずれも二環式アミジン化合物およびその塩)等が挙げられる。
【0053】
上記した化合物に限られるものではなく、エポキシ樹脂やオキセタン化合物の熱硬化触媒、もしくはエポキシ基およびオキセタニル基の少なくとも何れか1種とカルボキシル基の反応を促進するものであればよく、これら化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用してもよい。また、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン、2-ビニル-2,4-ジアミノ-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS-トリアジン誘導体を用いることもできる。
【0054】
また、熱硬化触媒として、メラミンおよびその誘導体からなる群から選択される化合物(以下、「メラミン化合物」ともいう)を含むことが好ましい。メラミン化合物は熱硬化反応の硬化促進剤として作用し、硬化物の導体回路との密着性に加えて、耐熱性等の特性をより一層向上させることができる。
【0055】
メラミン化合物としては、例えば、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等のグアナミン類;メラミン;エチルジアミノ-S-トリアジン、2,4-ジアミノ-S-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-キシリル-S-トリアジン等のトリアジン誘導体類が挙げることができ、これらは1種を単独または2種以上混合して用いることができる。これらのなかでもメラミンを好ましく使用することができる。
【0056】
メラミン化合物は、感光性樹脂組成物全体に対して0.01~10質量部の割合で含まれることが好ましく、0.1~5質量部の割合で含まれることがより好ましい。また、メラミン化合物は、熱硬化性成分全体に対して1~20質量部の割合で含まれることが好ましく、5~15質量部の割合で含まれることがより好ましい。メラミン化合物が上記範囲で含まれることにより、密着性および耐熱性をより一層向上させることができる。
【0057】
また、熱硬化成分としてビフェニル型エポキシ樹脂が含まれる場合は、メラミン化合物は、ビフェニル型エポキシ樹脂に対して5~40質量部の割合で含まれることが好ましく、5~30質量部の割合で含まれることがより好ましい。ビフェニル型エポキシ樹脂に対して、メラミン化合物が上記範囲で含まれることにより、密着性や耐熱性に加えて、電気特性をより一層向上させることができる。
【0058】
<フィラー>
本発明による感光性樹脂組成物は、硬化被膜の物理的強度等を上げるために、必要に応じてフィラーを配合することができる。フィラーとしては、公知の無機または有機フィラーが使用でき、特に、シリカ、タルク、マイカ、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、フライアッシュ、脱水汚泥、カオリン、クレー、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、燐酸マグネシウム、セピオライト、ゾノライト、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、シリカバルーン、ガラスフレーク、ガラスバルーン、製鉄スラグ、銅、鉄、酸化鉄、センダスト、アルニコ磁石、各種フェライト等の磁性粉、セメント、ガラス粉末、ノイブルグ珪土、珪藻土、三酸化アンチモン、マグネシウムオキシサルフェイト、水和アルミニウム、水和石膏、ミョウバンおよび硫酸バリウム等が挙げられる。その他の無機充填剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
上記したなかでも、シリカおよびタルクが好ましい。シリカとしては、無定形シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカおよび球状シリカ等が挙げられる。
【0060】
シリカおよびタルクの2種を組み合わせて使用することで、感光性樹脂組成物の耐熱性および冷熱サイクル耐性が顕著に向上することからより好ましい。シリカとタルクとを併用する場合は、質量基準において1:1~3:1の割合で感光性樹脂組成物に配合されることが好ましい。
【0061】
使用するフィラーは、分散性等の観点から、平均粒径(D50)が0.1~100μmであることが好ましく、0.1~50μmであることがより好ましい。なお、平均粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法を用いて得られる体積累積50%における粒径を意味する。また、フィラーの平均粒径は、感光性樹脂組成物を調製(予備攪拌、混練)する前のフィラーを上記のようにして測定した値をいうものとする。
【0062】
感光性樹脂組成物におけるフィラーの配合量は、固形分換算で、カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、1~500質量部であることが好ましく、10~300質量部であることがより好ましい。これにより、感光性樹脂組成物の密着力低下防止性および冷熱サイクル耐性をより向上できる。
【0063】
上記したフィラーは、感光性樹脂組成物中での分散性を高めるために表面処理されたものであってもよい。表面処理がされているフィラーを使用することで、凝集を抑制することができる。表面処理方法は特に限定されず、公知慣用の方法を用いればよいが、硬化性反応基を有する表面処理剤、例えば、硬化性反応基を有機基として有するカップリング剤等で無機フィラーの表面を処理することが好ましい。
【0064】
カップリング剤としては、シラン系、チタネート系、アルミネート系およびジルコアルミネート系等のカップリング剤が使用できる。中でもシラン系カップリング剤が好ましい。かかるシラン系カップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N-(2-アミノメチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アニリノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができ、これらは単独で、あるいは併用して使用することができる。これらのシラン系カップリング剤は、あらかじめフィラーの表面に吸着あるいは反応により固定化されていることが好ましい。ここで、球状シリカ100質量部に対するカップリング剤の処理量は、0.5~10質量部であることが好ましい。
【0065】
<その他の成分>
本発明による感光性樹脂組成物は、上記した成分以外にも必要に応じて、着色剤、エラストマー、メルカプト化合物、ウレタン化触媒、チキソ化剤、密着促進剤、ブロック共重合体、連鎖移動剤、重合禁止剤、銅害防止剤、酸化防止剤、防錆剤、有機ベントナイト、モンモリロナイト等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤およびレベリング剤の少なくともいずれか1種、フォスフィン酸塩、燐酸エステル誘導体、フォスファゼン化合物等のリン化合物等の難燃剤などの成分を配合することができる。これらは、電子材料の分野において公知の物を使用することができる。
【0066】
本発明の感光性樹脂組成物には、調製のし易さや塗布性の観点から有機溶剤を配合してもよい。有機溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤など、公知慣用の有機溶剤が使用できる。これらの有機溶剤は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0067】
感光性樹脂組成物における有機溶剤の配合量は、感光性樹脂組成物を構成する材料に応じ適宜変更することができ、例えば、固形分換算で、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して30~300質量部とすることができる。
【0068】
本発明の感光性樹脂組成物は、ドライフィルム化して用いても液状として用いてもよい。また、液状として用いる場合は、1液性でも2液性以上でもよい。
【0069】
<ドライフィルム>
本発明の感光性樹脂組成物は、第1のフィルムと、当該第1のフィルム上に形成された上記感光性樹脂組成物からなる樹脂層とを備えたドライフィルムの形態とすることもできる。本発明によるドライフィルムにおける第1のフィルムとは、基板等の基材上に、ドライフィルム上に形成された感光性樹脂組成物からなる樹脂層側が接するように加熱等によりラミネートして一体成形する際には少なくとも樹脂層に接着しているものをいう。第1のフィルムは、ラミネート後の工程において、樹脂層から剥離しても良い。特に、本発明においては露光後の工程において、樹脂層から剥離することが好ましい。
【0070】
ドライフィルムを作製するには、本発明の感光性樹脂組成物を有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整し、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等で第1のフィルム上に均一な厚さに塗布し、通常、50~130℃の温度で1~30分間乾燥して膜を得ることができる。塗布膜厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後の膜厚で、1~150μm、好ましくは10~60μmの範囲で適宜選択される。
【0071】
第1のフィルムとしては、公知のものであれば特に制限なく使用することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等の熱可塑性樹脂からなるフィルムを好適に使用することができる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度、取扱性等の観点から、ポリエステルフィルムが好ましい。また、これらフィルムの積層体を第1のフィルムとして使用することもできる。
【0072】
また、上記したような熱可塑性樹脂フィルムは、機械的強度向上の観点から、一軸方向または二軸方向に延伸されたフィルムであることが好ましい。
【0073】
第1のフィルムの厚さは、特に制限されるものではないが、例えば、10μm~150μmとすることができる。
【0074】
第1のフィルム上に本発明の感光性樹脂組成物の樹脂層を形成した後、さらに、樹脂層の表面に塵が付着するのを防ぐなどの目的で、樹脂層の表面に剥離可能な第2のフィルムを積層することが好ましい。本発明によるドライフィルムにおける第2のフィルムとは、基板等の基材上にドライフィルムの樹脂層側が接するように加熱等によりラミネートして一体成形する際、ラミネート前に樹脂層から剥離するものをいう。
【0075】
樹脂層から剥離可能な第2のフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができ、第2のフィルムを剥離するときに樹脂層と第1のフィルムとの接着力よりも樹脂層と第2のフィルムとの接着力がより小さいものであればよい。
【0076】
第2のフィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、10μm~150μmとすることができる。
【0077】
<硬化物>
本発明の硬化物は、上記した感光性樹脂組成物、または上記したドライフィルムの樹脂層を硬化して得られるものである。
【0078】
<プリント配線版>
本発明のプリント配線板は、本発明の感光性樹脂組成物またはドライフィルムの樹脂層から得られる硬化物を有するものである。本発明のプリント配線板の製造方法としては、例えば、本発明の感光性樹脂組成物を、上記有機溶剤を用いて塗布方法に適した粘度に調整して、基材上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコート法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により塗布した後、60~100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることで、タックフリーの樹脂層を形成する。また、ドライフィルムの場合、ラミネーター等により樹脂層が基材と接触するように基材上に貼り合わせた後、キャリアフィルムを剥がすことにより、基材上に樹脂層を形成する。
【0079】
上記基材としては、あらかじめ銅等により回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素樹脂・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル,ポリフェニレンオキサイド・シアネート等を用いた高周波回路用銅張積層板等の材質を用いたもので、全てのグレード(FR-4等)の銅張積層板、その他、金属基板、ポリイミドフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。
【0080】
ドライフィルムの形態である場合には、基材上への貼合は、真空ラミネーター等を用いて、加圧および加熱下で行うことが好ましい。このような真空ラミネーターを使用することにより、回路形成された基板を用いた場合に、回路基板表面に凹凸があっても、ドライフィルムが回路基板に密着するため、気泡の混入がなく、また、基板表面の凹部の穴埋め性も向上する。加圧条件は、0.1~2.0MPa程度であることが好ましく、また、加熱条件は、40~120℃であることが好ましい。
【0081】
本発明の感光性樹脂組成物が有機溶剤を含む場合、基材表面に感光性樹脂組成物を塗布した後、揮発乾燥を行うことが好ましい。揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用いて乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法およびノズルより基材に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
【0082】
基材上に樹脂層を形成後、所定のパターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光し、未露光部を希アルカリ水溶液(例えば、0.3~3質量%炭酸ソーダ水溶液)により現像して硬化物のパターンを形成する。ドライフィルムの場合には、露光後、ドライフィルムから第1のフィルムを剥離して現像を行うことにより、基材上にパターニングされた硬化物を形成する。なお、ドライフィルムの形態である場合、特性を損なわない範囲であれば、露光前にドライフィルムから第1のフィルムを剥離して、露出した樹脂層を露光および現像しても良い。さらに、硬化物に活性エネルギー線を照射後に加熱硬化(例えば、100~220℃)、もしくは加熱硬化後に活性エネルギー線を照射、または、加熱硬化のみで最終仕上げ硬化(本硬化) させることにより、密着性、硬度等の諸特性に優れた硬化被膜を形成することができる。
【0083】
上記活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ等を搭載し、350~450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えば、コンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)も用いることができる。直描機のランプ光源またはレーザー光源としては、最大波長が350~450nmの範囲にあるものでよい。画像形成のための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には10~1000mJ/cm、好ましくは20~800mJ/cmの範囲内とすることができる。
【0084】
上記現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類等のアルカリ水溶液が使用できる。
【0085】
上記のようにして基材上に硬化被膜を形成した後、基材上に電子素子等の部品がはんだリフロー処理により実装される。はんだリフロー処理は従来公知の方法により行うことができる。また、はんだリフローは、例えば245~260℃で5~10秒の処理条件により行うのが一般的である。
【0086】
本発明の感光性樹脂組成物またはドライフィルムは、プリント配線板等の電子部品製造用として好適に使用され、より好適には、永久被膜を形成するために使用される。その際、本発明の感光性樹脂組成物またはドライフィルムを用いて、上記した方法等により硬化物を形成する。本発明の感光性樹脂組成物またはドライフィルムの樹脂層が絶縁性である場合、好適には、ソルダーレジストまたはカバーレイまたは層間絶縁層を形成するために使用される。なお、本発明による感光性樹脂組成物は、ソルダーダムを形成するために使用してもよい。
【実施例
【0087】
次に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0088】
<合成例1(カルボキシル基含有樹脂ワニスAの合成)>
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、EPICLON N-695、エポキシ当量:220)220質量部を撹拌機および還流冷却器の付いた四つ口フラスコに入れ、カルビトールアセテート214質量部を加え、加熱溶解した。次に、重合禁止剤としてハイドロキノン0.1質量部と、反応触媒としてジメチルベンジルアミン2.0質量部を加えた。この混合物を95~105℃に加熱し、アクリル酸72質量部を徐々に滴下し、16時間反応させた。この反応生成物を80~90℃まで冷却し、テトラヒドロフタル酸無水物106質量部を加え、8時間反応させ、冷却後、取り出した。
このようにして得られたエチレン性不飽和結合およびカルボキシル基を併せ持つ感光性樹脂は、不揮発分65%、固形物の酸価100mgKOH/g、重量平均分子量Mw約3,500であった。以下、この樹脂溶液をワニスAと称す。なお、得られた樹脂の重量平均分子量の測定は、GPCにより測定した。
【0089】
<合成例2(カルボキシル基含有樹脂ワニスBの合成)>
ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、品番NC-3000-H、エポキシ当量288)288質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート155質量部、メチルハイドロキノン0.2質量部、アクリル酸22.0質量部、及びトリフェニルフォスフィン3質量部をフラスコに仕込み、フラスコ内で100℃加熱、攪拌し、溶解した。
続いて、フラスコ内の混合物に、テトラヒドロフタル酸119質量部、メチルハイドロ
キノン0.3質量部及び、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート78.2
質量部を加え、続いてこの混合物を90℃で10時間反応させ、固形分酸価が67mgKOH/g、固形分濃度65%の樹脂溶液を得た。以下、ワニスBと称する。
【0090】
<合成例3(カルボキシル基含有樹脂ワニスCの合成)>
還流冷却器、温度計、窒素置換用ガラス管および撹拌機を取り付けた四ツ口フラスコに、メタクリル酸42質量部、メチルメタクリレート43質量部、スチレン35質量部、ベンジルアクリレート35質量部、カルビトールアセテート100質量部、ラウリルメルカプタン0.5質量部およびアゾビスイソブチロニトリル4質量部を加え、窒素気流下で75℃・5時間加熱して重合反応を進行させて、共重合体溶液(固形分濃度50質量部)を得た。
この共重合体溶液に、ハイドロキノン0.05質量部、グリシジルメタクリレート23質量部およびジメチルベンジルアミン2.0質量部を加え、80℃で24時間付加反応を行った後、カルビトールアセテート35質量部を加えて、固形分酸価が100mgKOH/g、固形分濃度50質量%の芳香環を有する共重合樹脂溶液を得た。以下、ワニスCと称する。
【0091】
<感光性樹脂組成物の調製>
下記表1および2に記載の各成分を配合し、3本ロールミルを用いて室温にて混合することにより、同表に記載の各感光性樹脂組成物を得た。なお、表中の各数値は質量部を示す。
【0092】
なお、下記表1および2中の各成分*1~*13は、以下のとおりである。
*1:イソシアヌル環を有する(メタ)アクリレート(新中村化学工業株式会社製)
*2:イソシアヌル環を有する(メタ)アクリレート(中村化学株式会社製)
*3:ジペンタエリスリトールペンタおよびヘキサアクリレート(共栄社化学株式会社)
*4:トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリアクリレート(東亜合成株式会社製)
*5:ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製)
*6:ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製)(固形分:75%)
*7:テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製)
*8:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製)
*9:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製)
*10:イソシアヌル環を有するトリエポキシ樹脂(日産化学株式会社製)
*11:アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(IGM Resins社製Omnirad 819)
*12:α-アミノアセトフェノン系光重合開始剤(IGM Resins社製Omnirad 369)
*13:ジシアンジアミド(三菱ケミカル株式会社製)
【0093】
<感光性樹脂組成物の評価>
(1)現像残渣の再付着
上記のようにして得られた各感光性樹脂組成物を、バフで研磨された0.5m×0.5m×1.6mmの銅張積層板に、硬化後の膜厚が20μmの厚みとなるように両面スクリーン印刷により塗膜を形成した。
次いで、印刷した基板を10分間保持した後、熱風循環式乾燥炉にて80℃、40分間乾燥させた。乾燥させた基板を室温にて30分放置したのち、1%のNaCO水溶液(液温30℃)を入れた現像機(東京化工機株式会社製、ソルダーレジスト現像装置(150L槽))を用いて100枚現像し、現像残渣の再付着の有無を確認した。評価基準は以下のとおりとした。
○:再付着は認められない
△:僅かに再付着が認められる
×:再付着が明らかに認められる
評価結果は下記表1および2に示されるとおりであった。
【0094】
(2)スラッジの有無
上記基板を通過させた現像液の状態を確認し、現像槽の様子を確認した。評価基準は以下のとおりとした。
◎:現像槽に浮遊したスラッジは認められない
○:基板を汚染しない程度の細かいスラッジが若干認められる
△:スラッジが多く浮遊しているが、現像槽を汚染しない程度である
×:スラッジが多く浮遊し、現像槽を汚染している
評価結果は下記表1および2に示されるとおりであった。
【0095】
(3)ローラー痕の有無
上記基板を乾燥後、オーク社製DiIMPACTの搬送ローラーで露光せず基板を搬送し、ローラー痕の有無を確認した。評価基準は以下のとおりとした。
◎:ローラー痕は認められない
○:薄いローラー痕が1本認められる
△:目立つローラー痕が1本認められる
×:目立つローラー痕が数多く認められる
評価結果は下記表1および2に示されるとおりであった。
【0096】
(4)絶縁信頼性
各感光性樹脂組成物を、櫛形基板L/S=100/100の基板に、硬化後の膜厚が20μmの厚みとなるように両面スクリーン印刷により塗膜を形成した。
次いで、印刷した基板を熱風循環式乾燥炉にて80℃、40分間乾燥させた。乾燥させた基板を室温にて30分放置したのち、400mJ/cmの露光量にて露光し、1%のNaCO水溶液(液温30℃)を入れた現像機(東京化工機株式会社製、ソルダーレジスト現像装置(150L槽))を用いて60秒間の現像を行った。続いて、150℃で60分間のポストキュア処理を行い基板を作製した。
得られた基板の絶縁信頼性を、絶縁劣化評価試験器(IMV株式会社製 MIG-8600B)を用いて、印加電圧100V、温度85℃、湿度85%の条件にて1000時間の促進試験を実施した後、槽外における絶縁抵抗値を測定した。評価基準は以下のとおりとした。
◎:1012Ω以上である
○:1010~1011Ωである
△:10~10Ωである
×:10Ω未満である
評価結果は下記表1および2に示されるとおりであった。
【0097】
(5)耐熱性
各感光性樹脂組成物を、銅箔(古河電気工業株式会社製F2-WS、18μm厚)の光沢面上にフィルムアプリケーターを用いて、硬化後の膜厚が30μmの厚みとなるように塗布し、熱風循環式乾燥炉にて80℃で40分間乾燥後、乾燥させた銅箔を室温にて30分放置したのち、400mJ/cmの露光量にて露光し、続いて、150℃で60分間のポストキュアを行った後、銅箔を剥離し、厚み30μmの硬化後フィルムを作製した。
次に、作成した硬化後フィルムを測定サイズ(3mm×10mmのサイズ)にサンプルを切り出し、熱機械分析装置(ティー・エイ・インスツルメント株式会社製 Q400EM)を用いて、ガラス転移点(Tg)を測定した。熱機械分析は、試験荷重5gにて、サンプルを10℃/minの昇温速度で室温から200℃まで昇温した後、室温まで空冷し、再度10℃/minの昇温速度で室温から280℃まで昇温した。2回目の昇温過程での変曲点をガラス転移温度(Tg)とした。耐熱性の評価基準は以下のとおりとした。
◎:Tg=135℃以上である
〇:Tg=125℃以上135℃未満である
△:Tg=115℃以上125℃未満である
×:Tg=115℃以下である
評価結果は下記表1および2に示されるとおりであった。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
表1からも明らかなように、熱硬化性成分としてビフェニル型エポキシ樹脂を含み、光重合性モノマーとしてイソシアヌル環を有する(メタ)アクリレートを含む感光性樹脂組成物(実施例1~11)は、絶縁信頼性を維持しながら、現像残渣の再付着やローラー痕の問題を改善していることがわかる。
一方、熱硬化性成分としてビフェニル型エポキシ樹脂を含み、光重合性モノマーとしてイソシアヌル環を有しない(メタ)アクリレートを含む感光性樹脂組成物(比較例1、2)や、光重合性モノマーとしてイソシアヌル環を有する(メタ)アクリレートを含み、熱硬化性成分としてクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を含む感光性樹脂組成物(比較例3)や、熱硬化性成分としてイソシアヌル環を有するトリエポキシ樹脂を含み、光重合性モノマーとしてイソシアヌル環を有しない(メタ)アクリレートを含む感光性樹脂組成物(比較例4)では、絶縁信頼性を維持しながら、現像残渣の再付着やローラー痕の問題を改善できないことがわかる。