(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】磁気マーカシステム
(51)【国際特許分類】
G01V 3/08 20060101AFI20240229BHJP
G05D 1/244 20240101ALI20240229BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
G01V3/08 E
G05D1/244
G08G1/09 F
(21)【出願番号】P 2020562524
(86)(22)【出願日】2019-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2019051528
(87)【国際公開番号】W WO2020138460
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-07-27
(31)【優先権主張番号】P 2018248432
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116655
【氏名又は名称】愛知製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129654
【氏名又は名称】大池 達也
(72)【発明者】
【氏名】山本 道治
(72)【発明者】
【氏名】長尾 知彦
(72)【発明者】
【氏名】青山 均
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/225677(WO,A1)
【文献】特開平10-198887(JP,A)
【文献】国際公開第2017/187879(WO,A1)
【文献】特開2003-331400(JP,A)
【文献】特開2007-303950(JP,A)
【文献】特開2007-132689(JP,A)
【文献】特開2004-347443(JP,A)
【文献】特開2015-184243(JP,A)
【文献】特開2006-236282(JP,A)
【文献】特開2018-132791(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00977138(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 3/08
G05D 1/244
G08G 1/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に取り付けられた磁気検出部が検出可能なように走行路に敷設された複数の磁気マーカを含む磁気マーカシステムであって、
前記複数の磁気マーカのうちのいずれか
一の磁気マーカを検出したとき、
該一の磁気マーカを一意に特定可能なマーカ特定情報を含む検出情報を出力する複数の車両と、
該複数の車両の各車両が出力する前記検出情報を取得するサーバ装置と、を含み、
前記サーバ装置は、
前記一の磁気マーカに関する複数の前記検出情報に基づいて、
該一の磁気マーカの状態を推定する状態推定部を備えており、
当該状態推定部は、
前記複数の磁気マーカのうちのいずれか一の磁気マーカが検出された回数である被検出回数、及び該一の磁気マーカを前記複数の車両が通過した通過回数を特定し、前記被検出回数を前記通過回数で除算して求めることができる被検出率に基づいて該一の磁気マーカの状態を推定する磁気マーカシステム。
【請求項2】
車両に取り付けられた磁気検出部が検出可能なように走行路に敷設された複数の磁気マーカを含む磁気マーカシステムであって、
前記複数の磁気マーカのうちのいずれか
一の磁気マーカを検出したとき、
該一の磁気マーカを一意に特定可能なマーカ特定情報を含む検出情報を出力する複数の車両と、
該複数の車両の各車両が出力する前記検出情報を取得するサーバ装置と、を含み、
前記サーバ装置は、
前記一の磁気マーカに関する複数の前記検出情報に基づいて、
該一の磁気マーカの状態を推定する状態推定部を備えており、
当該状態推定部は、
前記複数の磁気マーカの状態に基づき前記磁気検出部の状態を推定可能であり、前記サーバ装置は、前記磁気検出部の状態を表すセンサ状態情報を車両側に提供するセンサ情報提供部を備えている磁気マーカシステム。
【請求項3】
請求項
2において、前記サーバ装置は、前記車両の経路上に位置する磁気マーカを特定するマーカ特定部と、当該車両によって検出された磁気マーカを記憶する記憶部と、を備え、
前記状態推定部は、前記経路上に位置する磁気マーカと、前記検出された磁気マーカと、を照合する処理を実行することにより前記磁気検出部の状態を推定する磁気マーカシステム。
【請求項4】
請求項
3において、前記状態推定部は、前記経路上に位置する磁気マーカの状態の良否レベルを推定可能であり、
前記状態推定部は、前記照合する処理において、前記状態推定部が推定した前記経路上に位置する磁気マーカの状態の良否レベルに応じて異なる指標を用いて前記磁気検出部の状態を推定する磁気マーカシステム。
【請求項5】
請求項
2~4のいずれか1項において、前記サーバ装置は、前記各車両の状態を表す車両情報を生成する車両情報生成部と、該車両情報を対応する車両側に提供する車両情報提供部と、を備え、
前記状態推定部は、前記磁気検出部の状態として、前記各車両における取付高さの変化を検出可能であり、
前記車両情報生成部は、前記各車両における前記磁気検出部の取付高さの変化に応じて前記各車両の地上高の変化を検出し、前記各車両について、該地上高の変化に対応する車両情報を生成する磁気マーカシステム。
【請求項6】
請求項
5において、前記各車両が出力する検出情報には磁気計測値(ピーク値)が含まれ、前記状態推定部は、磁気マーカに関する複数の前記検出情報に基づいて、該磁気マーカの磁気レベルを特定し、
前記状態推定部は、磁気マーカの磁気レベルと、前記磁気検出部が磁気マーカについて計測した磁気計測値(ピーク値)と、の相関関係を表す指標値を利用し、車両の地上高の変化を検出する磁気マーカシステム。
【請求項7】
車両に取り付けられた磁気検出部が検出可能なように走行路に敷設された複数の磁気マーカを含む磁気マーカシステムであって、
前記複数の磁気マーカのうちのいずれか
一の磁気マーカを検出したとき、
該一の磁気マーカを一意に特定可能なマーカ特定情報を含む検出情報を出力する複数の車両と、
該複数の車両の各車両が出力する前記検出情報を取得するサーバ装置と、を含み、
前記サーバ装置は、
前記一の磁気マーカに関する複数の前記検出情報に基づいて、
該一の磁気マーカの状態を推定する状態推定部を備えており、
当該サーバ装置は、前記複数の磁気マーカの運用状況を表す運用データを記憶する記憶部を有し、当該記憶部において、前記複数の磁気マーカを振り分けたグループ毎に管理可能に前記運用データを記憶している磁気マーカシステム。
【請求項8】
請求項
7において、前記状態推定部は、前記運用データに関する統計処理を前記グループ毎に実施し、当該統計処理の結果に基づいて前記複数の磁気マーカのうちの各磁気マーカの状態を推定する磁気マーカシステム。
【請求項9】
車両に取り付けられた磁気検出部が検出可能なように走行路に敷設された複数の磁気マーカを含む磁気マーカシステムであって、
前記複数の磁気マーカのうちのいずれか
一の磁気マーカを検出したとき、
該一の磁気マーカを一意に特定可能なマーカ特定情報を含む検出情報を出力する複数の車両と、
該複数の車両の各車両が出力する前記検出情報を取得するサーバ装置と、を含み、
前記サーバ装置は、
前記一の磁気マーカに関する複数の前記検出情報に基づいて、
該一の磁気マーカの状態を推定する状態推定部を備えており、
当該サーバ装置は、前記複数の磁気マーカの運用状況を表す運用データを記憶する記憶部を有し、当該記憶部において、前記複数の磁気マーカが敷設された道路種別毎に管理可能に前記運用データを記憶している磁気マーカシステム。
【請求項10】
請求項
9において、前記状態推定部は、前記運用データに関する統計処理を前記道路種別毎に実施し、当該統計処理の結果に基づいて前記複数の磁気マーカのうちの各磁気マーカの状態を推定する磁気マーカシステム。
【請求項11】
車両に取り付けられた磁気検出部が検出可能なように走行路に敷設された複数の磁気マーカを含む磁気マーカシステムであって、
前記複数の磁気マーカのうちのいずれか
一の磁気マーカを検出したとき、
該一の磁気マーカを一意に特定可能なマーカ特定情報を含む検出情報を出力する複数の車両と、
該複数の車両の各車両が出力する前記検出情報を取得するサーバ装置と、を含み、
前記サーバ装置は、
前記一の磁気マーカに関する複数の前記検出情報に基づいて、
該一の磁気マーカの状態を推定する状態推定部を備えており、
当該サーバ装置は、さらに、いずれか一の車両から時間的に前後して取得した2つの検出情報のうち、時間的に先行する一方の検出情報を出力した後、他方の検出情報を出力するまでの間に、当該一の車両が未検出の磁気マーカが有るか無いかを判断する判断部を備えている磁気マーカシステム。
【請求項12】
請求項
1~11のいずれか1項において、前記状態推定部は、磁気マーカが検出された回数である被検出回数の統計処理の結果に基づいて各磁気マーカの状態を推定する磁気マーカシステム。
【請求項13】
請求項1~
12のいずれか1項において、前記サーバ装置は、前記磁気マーカの状態に基づき、各磁気マーカに必要な保守作業を表すメンテナンス情報を生成するメンテナンス情報生成部を備えている磁気マーカシステム。
【請求項14】
請求項1~
13のいずれか1項において、磁気マーカは、前記マーカ特定情報を出力可能な無線タグを保持しており、
車両が磁気マーカを検出したときに出力する前記検出情報には、当該磁気マーカに保持された無線タグから取得した前記マーカ特定情報が含まれている磁気マーカシステム。
【請求項15】
請求項
14において、前記無線タグはシート状をなし、磁気マーカの表面に配設されている磁気マーカシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両側で検出できるように敷設された磁気マーカを含む磁気マーカシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路に敷設された磁気マーカを利用する車両用の磁気マーカシステムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。この磁気マーカシステムは、車体フロアに磁気センサが取り付けられた車両を対象として、車線に沿って敷設された磁気マーカを利用する自動操舵制御や車線逸脱警報等、各種の運転支援の提供を目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のシステムでは、次のような問題がある。すなわち、磁気マーカや磁気センサ等に起こり得るトラブルの未然の回避や、トラブルが発生した後の早急な対処等を可能にするため、定期的な点検作業や保守作業が必要となり管理コストが嵩むおそれがある。
【0005】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、磁気マーカあるいは磁気センサの点検や保守に役立つ磁気マーカシステムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両に取り付けられた磁気検出部が検出可能なように走行路に敷設された複数の磁気マーカを含む磁気マーカシステムであって、
前記複数の磁気マーカのうちのいずれか一の磁気マーカを検出したとき、該一の磁気マーカを一意に特定可能なマーカ特定情報を含む検出情報を出力する複数の車両と、
該複数の車両の各車両が出力する前記検出情報を取得するサーバ装置と、を含み、
前記サーバ装置は、前記一の磁気マーカに関する複数の前記検出情報に基づいて、該一の磁気マーカの状態を推定する状態推定部を備えている磁気マーカシステムにある。
【発明の効果】
【0007】
本発明の磁気マーカシステムによれば、各車両による磁気マーカの検出情報を利用し、磁気マーカ及び磁気検出部の少なくともいずれかの状態を効率良く推定できる。本発明の磁気マーカシステムが推定する状態を利用すれば、磁気マーカあるいは磁気センサの点検や保守を効率良く実施でき、管理コストを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1における、磁気マーカシステムの構成図。
【
図2】実施例1における、磁気マーカを示す斜視図。
【
図4】実施例1における、車両が磁気マーカを検出する様子を示す説明図。
【
図5】実施例1における、車両側の構成を示すブロック図。
【
図6】実施例1における、サーバ装置の構成を示すブロック図。
【
図7】実施例1における、磁気マーカの設置データの説明図。
【
図8】実施例1における、磁気マーカの運用データの説明図。
【
図9】実施例1における、磁気マーカの状態データの説明図。
【
図10】実施例1における、磁気マーカを通過する際の進行方向の磁気計測値の変化を例示する説明図。
【
図11】実施例1における、車幅方向に配列された磁気センサCnによる車幅方向の磁気計測値の分布曲線を例示する説明図。
【
図12】実施例1における、磁気マーカシステムの動作の流れを示すフロー図。
【
図13】実施例1における、未検出マーカの特定方法の説明図。
【
図14】実施例1における、磁気マーカの運用データの他の例を示す説明図。
【
図15】実施例2における、サーバ装置の構成を示すブロック図。
【
図16】実施例2における、磁気マーカ、車両の経路Rがマッピングされた電子地図を例示する説明図。
【
図17】実施例2における、センサアレイの運用データの説明図。
【
図18】実施例2における、センサアレイの状態データの説明図。
【
図19】実施例3における、サーバ装置の構成を示すブロック図。
【
図20】実施例3における、磁気マーカの状態データの説明図。
【
図21】実施例3における、磁気マーカの磁気レベルと、磁気センサによる磁気計測値(ピーク値)と、の相関を表すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態につき、以下の実施例を用いて具体的に説明する。
(実施例1)
本例は、磁気マーカ10の状態を推定する機能を備える磁気マーカシステム1に関する例である。この磁気マーカシステム1を構成するサーバ装置11は、各車両5から取得する磁気マーカ10の検出情報を利用し、磁気マーカ10の状態を推定する。この内容について、
図1~
図14を用いて説明する。
【0010】
磁気マーカシステム1は、
図1のごとく、インターネット19などの公衆通信回線に接続可能な車両5と、各車両5から磁気マーカ10の検出情報を取得するサーバ装置11と、の組み合わせにより構成されている。この磁気マーカシステム1は、RFID(Radio Frequency IDentification)タグ15(
図2)を一体的に保持する磁気マーカ10が敷設された道路を対象として運用される。
【0011】
以下、(1)磁気マーカ10を概説した後、磁気マーカシステム1を構成する(2)車両5、及び(3)サーバ装置11について説明し、続いて(4)磁気マーカシステム1の動作内容、を説明する。
【0012】
(1)磁気マーカ
磁気マーカ10は、
図2のごとく、直径20mm、高さ28mmの柱状の磁石を含み、その端面にRFIDタグ15が取り付けられた道路マーカである。この磁気マーカ10は、例えば路面に穿設された孔に収容されて敷設される。磁気マーカ10は、例えば、左右のレーンマークで区分された車線(走行路の一例)の中央に沿って10m間隔で配列される。
【0013】
磁気マーカ10では、
図2のごとく、敷設時に上面となる端面に、シート状のRFIDタグ15が貼り付けられて配設されている。無線タグの一例であるRFIDタグ15は、無線による外部給電により動作し、マーカ特定情報の一例である識別情報としてのタグIDを無線通信により外部出力する。なお、磁気マーカの敷設位置を表す情報を、RFIDタグ15が出力するマーカ特定情報として採用しても良い。
【0014】
RFIDタグ15は、
図3のごとく、例えばPET(Polyethylene terephthalate)フィルムから切り出したタグシート150の表面に、ICチップ157が実装された電子部品である。タグシート150の表面には、ループコイル151及びアンテナ153の印刷パターンが設けられている。ループコイル151は、外部からの電磁誘導によって励磁電流が発生する受電コイルである。アンテナ153は、位置データ等を無線送信するための送信アンテナである。
【0015】
(2)車両
車両5は、
図4のごとく、計測ユニット2、タグリーダ34、制御ユニット32、及び無線通信機能を備える通信ユニット(図示略)を備えている。さらに、車両5は、目的地までの経路案内を実行するナビゲーション装置6を備えている。車両5は、通信ユニットを介して公衆通信回線に接続可能である。車両5は、磁気マーカ10の検出情報やマーカ位置情報等の情報を、例えばインターネット19を介してサーバ装置11との間で送受する。
【0016】
計測ユニット2は、
図4及び
図5のごとく、磁気マーカ10を検出するセンサアレイ(磁気検出部の一例)21と、慣性航法を実現するためのIMU(Inertial Measurement Unit)22と、が一体化されたユニットである。細長い棒状の計測ユニット2は、路面100Sと対面し、かつ、車幅方向に沿う状態で、例えば車両5のフロントバンパーの内側などに取り付けられる。本例の車両5の場合、路面100Sを基準とした計測ユニット2の取付け高さが200mmとなっている。なお、計測ユニット2に対して、タグリーダ34を一体的に組み込むことも良い。
【0017】
センサアレイ21は、一直線上に配列された15個の磁気センサCn(nは1~15の整数、磁気検出部の一例)と、図示しないCPU等を内蔵した検出処理回路212と、を備えている。センサアレイ21では、15個の磁気センサCnが10cmの等間隔で配置されている。磁気センサCnは、アモルファスワイヤなどの感磁体のインピーダンスが外部磁界に応じて敏感に変化するという公知のMI効果(Magneto Impedance Effect)を利用して磁気を検出するセンサである。
【0018】
センサアレイ21の検出処理回路212(
図5)は、磁気マーカ10を検出するためのマーカ検出処理などの処理を実行する演算回路である。この検出処理回路212は、各種の演算を実行するCPU(central processing unit)や、ROM(read only memory)やRAM(random access memory)などのメモリ素子等を利用して構成されている。検出処理回路212は、磁気センサCnが出力するセンサ信号を3kHz周期で取得してマーカ検出処理を実行し、その検出結果を制御ユニット32に入力する。
【0019】
計測ユニット2に組み込まれたIMU22は、慣性航法により車両5の相対位置を推定する慣性航法ユニットである。IMU22は、方位を計測する電子コンパスである2軸磁気センサ221と、加速度を計測する2軸加速度センサ222と、角速度を計測する2軸ジャイロセンサ223と、を備えている。IMU22は、計測した加速度や角速度などを利用し、基準となる車両位置に対する相対位置を演算する。
【0020】
車両5が備えるタグリーダ34(
図5)は、磁気マーカ10の表面に配置されたRFIDタグ15(
図3)と無線で通信するユニットである。タグリーダ34は、RFIDタグ15の動作に必要な電力を無線で送電し、RFIDタグ15が送信する情報を受信する。なお、RFIDタグ15の送信情報には、RFIDタグ15の識別情報であるタグIDが含まれている。
【0021】
車両5が備える制御ユニット32(
図5)は、計測ユニット2やタグリーダ34を制御するユニットである。制御ユニット32は、通信ユニットを介してサーバ装置11との間で各種の情報を交換する。制御ユニット32は、各種の演算を実行するCPUのほか、ROMやRAMなどのメモリ素子等が実装された電子基板(図示略)を備えている。
【0022】
制御ユニット32は、磁気マーカ10の検出情報をサーバ装置11にアップロードする一方、検出情報のアップロードに応じてサーバ装置11からマーカ位置情報の返信を受ける。マーカ位置情報は、磁気マーカ10の位置を表すマーカ位置データを含む情報である。制御ユニット32がアップロードする検出情報には、磁気マーカ10を一意に特定可能なマーカID(マーカ特定情報、識別情報)や、車両の識別情報である車両ID等が含まれている。なお、本例の構成では、磁気マーカ10を検出した際にRFIDタグ15から読み取ったタグIDが、マーカIDとして利用される。
【0023】
制御ユニット32(
図5)は、サーバ装置11から受信するマーカ位置情報を利用して自車位置を特定する。磁気マーカ10を検出したとき、サーバ装置11は、マーカ位置情報が表す位置を基準として、磁気マーカ10に対する車両5の横ずれ量の分だけずらした位置を自車位置として特定する。一方、磁気マーカ10を検出した後、新たな磁気マーカ10を検出するまでの間は、慣性航法を利用して新たな自車位置を特定する。具体的には、サーバ装置11は、直近の自車位置を基準として慣性航法により車両5の相対位置を推定する。そして、この相対位置の分だけ直近の自車位置からずらした位置を新たな自車位置として特定する。制御ユニット32は、例えば目的地までの経路案内等を実行するナビゲーション装置6に自車位置を入力する。なお、ナビゲーション装置6は、地図データを記憶しており、地図データに基づく電子地図上に自車位置をマッピング可能である。
【0024】
(3)サーバ装置
サーバ装置11は、CPUが実装された図示しない電子基板等を含む主回路110を有する演算処理装置である。サーバ装置11では、ハードディスクなどの記憶装置11Mが主回路110に接続されている。主回路110には、図示しないLAN(Local Area Network)に対応する通信機を具備している。サーバ装置11は、LANポートに接続された通信ケーブルを介してインターネット19(
図1)等の公衆通信回線に接続可能である。
【0025】
主回路110に対しては、車両5から磁気マーカ10の検出情報を取得する検出情報取得部116や、検出情報の送信元の車両5に対してマーカ位置情報を提供する位置情報提供部118などが接続されている。また、主回路110は、磁気マーカ10の状態を推定する状態推定部11Aや、磁気マーカ10に必要な保守作業を表すメンテナンス情報を生成するメンテナンス情報生成部11Bなどの機能を備えている。これらの機能は、ソフトウェアプログラムをCPU等で処理することで実現される。
【0026】
サーバ装置11では、主回路110に接続された記憶装置11Mの記憶領域を利用し、磁気マーカ10に関するデータを格納するマーカデータベース(マーカDB)111が設けられている。記憶部の一例をなすマーカDB111には、磁気マーカ10の設置データ(
図7)、磁気マーカ10の運用データ(
図8)、磁気マーカ10の状態データ(
図9)等が格納されている。
【0027】
図7の設置データは、磁気マーカ10が設置された位置を表すマーカ位置データや、道路の種別である道路種別を表すフラグデータ等を含んでいる。各磁気マーカ10のマーカ位置データ等には、磁気マーカ10の識別情報であるマーカID(マーカ特定情報)がひも付けされている。なお、本例の道路種別は、交通量の度合いによる道路の分類である。例えば「道路種別2」など、道路種別が共通している磁気マーカ10は、車両の通過台数が似通っている。
【0028】
図8の運用データは、磁気マーカ10の被検出回数など、磁気マーカ10の運用状況を表すデータであり、マーカIDがひも付けされている。磁気マーカ10の運用状況を表す指標である被検出回数は、磁気マーカ10が車両5によって検出された回数である。この運用データは、道路種別毎、日毎に管理されている。例えば
図8は、道路種別1の日毎の運用データの一部である。運用データに基づけば、各磁気マーカ10の日毎の被検出回数を把握できる。さらに、運用データは、記憶部の一例をなすマーカDB111において、道路種別毎に管理可能に記憶されている。道路種別毎に管理されている運用データに基づけば、磁気マーカ10の被検出回数の統計処理を道路種別毎に実施できる。
【0029】
図9の状態データは、磁気マーカ10の良否レベル(状態の一例)を表すフラグデータである。この状態データには、マーカIDがひも付けされている。
図9の例では、磁気マーカ10の良否レベルを表すフラグデータとして、例えば丸、三角、バツに対応する3種類のデータがある。丸は、良好な状態であって、トラブルの可能性の度合いが低いことを表すフラグデータである。バツは、トラブルの可能性が高く、保守作業を要することを表すフラグデータである。三角は、直ちに保守作業を実施する必要はないが、トラブルの可能性があり監視を要することを表すフラグデータである。
図9の状態データは、各磁気マーカ10の保守作業の要否を表すメンテナンス情報の元データとして利用可能である。
【0030】
(4)磁気マーカシステムの動作
上記のような構成の磁気マーカシステム1の動作の内容を説明する。まず、
図10及び
図11を参照して車両5による(a)マーカ検出処理を説明する。続いて、
図12のフロー図を参照し、車両5による(b)検出情報のアップロード処理、及びサーバ装置11による(c)マーカ位置情報の送信処理について説明する。さらに(d)磁気マーカのメンテナンス情報の生成処理、について説明する。
【0031】
(a)マーカ検出処理
車両5が道路を走行している間、計測ユニット2のセンサアレイ21(
図5)が、磁気マーカ10を検出するためのマーカ検出処理を繰り返し実行する。
上記のごとく、磁気センサCnは、車両5の進行方向及び車幅方向の磁気成分を計測可能である。例えばこの磁気センサCnが、進行方向に移動して磁気マーカ10の真上を通過するとき、進行方向の磁気計測値は、
図10のごとく磁気マーカ10の前後で正負が反転すると共に、磁気マーカ10の真上の位置でゼロを交差するように変化する。したがって、車両5の走行中では、いずれかの磁気センサCnが検出する進行方向の磁気について、その正負が反転するゼロクロスZcが生じたとき、計測ユニット2が磁気マーカ10の真上に位置すると判断できる。検出処理回路212(
図5)は、進行方向の磁気計測値のゼロクロスZcが生じたときに磁気マーカ10を検出したと判断する。
【0032】
また例えば、磁気センサCnと同じ仕様の磁気センサについて、磁気マーカ10の真上を通過する車幅方向の仮想線に沿う移動を想定すると、車幅方向の磁気計測値は、磁気マーカ10を挟んだ両側で正負が反転すると共に、磁気マーカ10の真上の位置でゼロを交差するように変化する。15個の磁気センサCnを車幅方向に配列した計測ユニット2の場合には、
図11の例の通り、磁気マーカ10を介してどちらの側にあるかによって磁気センサCnが検出する車幅方向の磁気の正負が異なってくる。
【0033】
計測ユニット2の各磁気センサCnの車幅方向の磁気計測値を例示する
図11の分布曲線に基づけば、車幅方向の磁気の正負が反転するゼロクロスZcを利用して磁気マーカ10の車幅方向の位置を特定可能である。隣り合う2つの磁気センサCnの中間(中央とは限らない)にゼロクロスZcが位置している場合には、ゼロクロスZcを挟んで隣り合う2つの磁気センサCnの中間の位置が、磁気マーカ10の車幅方向の位置となる。あるいはいずれかの磁気センサCnの位置にゼロクロスZcが一致している場合、すなわち車幅方向の磁気計測値がゼロであって両外側の磁気センサCnの磁気計測値の正負が反転している磁気センサCnが存在する場合には、その磁気センサCnの直下の位置が、磁気マーカ10の車幅方向の位置となる。検出処理回路212は、計測ユニット2の中央の位置(磁気センサC8の位置)に対する磁気マーカ10の車幅方向の位置の偏差を、磁気マーカ10に対する車両5の横ずれ量として計測する。例えば、
図11の場合であれば、ゼロクロスZcの位置がC9とC10との中間辺りのC9.5に相当する位置となっている。上記のように磁気センサC9とC10の間隔は10cmであるから、磁気マーカ10に対する車両5の横ずれ量は、車幅方向において計測ユニット2の中央に位置するC8を基準として(9.5-8)×10=15cmとなる。
【0034】
(b)検出情報のアップロード処理
図12のごとく、車両5のセンサアレイ21が上記のマーカ検出処理P1を実行して磁気マーカ10を検出したとき(S101:YES)、タグリーダ34が、RFIDタグ15のタグIDを読み取るためのタグID読取処理を実行する(S102)。タグリーダ34は、RFIDタグ15の動作に必要な電力を無線で送電してRFIDタグ15の動作を開始させ、RFIDタグ15の送信データ(タグIDなど)を受信する。そして、タグリーダ34は、このタグID読取処理により読み取ったタグIDを制御ユニット32に入力する。制御ユニット32は、このタグIDをマーカ特定情報であるマーカIDとして取り扱い、このマーカIDを含む検出情報を生成する(S103)。そして、制御ユニット32は、車両5の識別情報である車両IDをひも付けてサーバ装置11に検出情報を送信する。
【0035】
(c)マーカ位置情報の送信処理
サーバ装置11は、
図12のごとく、車両5側から検出情報を取得すると(S201)、各磁気マーカ10のマーカ位置データ等を格納するマーカDB111(
図6)を参照する(S202)。そして、マーカDB111の中から、検出情報に対応する磁気マーカ10、すなわち検出情報のマーカIDに係る磁気マーカ10を選択する。
【0036】
サーバ装置11は、マーカDB111の設置データ(
図7)を参照し、選択した磁気マーカ10のマーカ位置データ等を取得する(S203)。さらに、マーカDB111の運用データ(
図8)を参照し、選択した磁気マーカ10の被検出回数(
図8参照。)を1回加算する(S204)。そして、ステップS203で取得したマーカ位置データを含むマーカ位置情報を生成し、上記のステップS201で取得した検出情報の送信元の車両5に対して、マーカ位置情報を送信する(S205)。
【0037】
車両5の制御ユニット32は、マーカ位置情報を取得すると(S104)、このマーカ位置情報が表す位置を基準として車両位置を特定する(S105)。具体的には、磁気マーカ10の位置を基準として、上記のように計測ユニット2が計測した横ずれ量(相対位置の一例)の分だけオフセットさせる演算を実行して車両位置を求める。ナビゲーション装置6は、この車両位置を自車位置として取り扱い、経路案内等を実施する。
【0038】
なお、磁気マーカ10を検出した後、新たな磁気マーカ10を検出するまでの走行区間では(S101:NO)、制御ユニット32は、直近の磁気マーカ検出時の車両位置を基準位置として、慣性航法により車両5の相対位置を推定する(S112)。具体的には、計測ユニット2に組み込まれたIMU22(
図5)が、2軸加速度センサ222による計測加速度を二階積分して変位量を演算し、さらに、2軸ジャイロセンサ223が計測する車両5の進行方位に沿って変位量を積算する演算を実行する。これにより、上記の基準位置に対する車両5の相対位置を推定する。そして、この相対位置の分だけ基準位置から移動させた位置を自車位置として特定する(S105)。
【0039】
(d)磁気マーカのメンテナンス情報の生成処理
サーバ装置11は、各磁気マーカ10の被検出回数(
図8の運用データ)について、平均値や標準偏差(統計処理の結果の一例)等を算出するための統計処理を実施する。なお、本例の構成では、交通量の度合いが同程度の道路種別毎に統計処理を実施することで、統計処理の信頼性を確保している。
【0040】
サーバ装置11は、各磁気マーカ10について、被検出回数の偏差値(統計処理の結果の一例)を算出すると共に、この偏差値に関する閾値処理を実行する。サーバ装置11は、例えば、被検出回数の偏差値が所定の閾値を下回る磁気マーカ10について、トラブルのおそれが高いと判定する。このようにしてサーバ装置11は、各磁気マーカ10の状態を表す状態データ(
図9)を生成する。この状態データは、各磁気マーカ10の良否レベルを表す良否情報である。この状態データは、各磁気マーカ10の保守作業の要否を表すメンテナンス情報の元データとして利用可能である。なお、本例では、
図9のごとく、上記の被検出回数の偏差値について2段階の閾値を設定している。そして、2段階の閾値により、磁気マーカ10の良否レベルを3段階(同図中の丸、三角、バツ)に区別している。
【0041】
図9の状態データは、そのままメンテナンス情報として利用することが可能である。状態データに基づくメンテナンス情報によれば、例えば道路の管理者等が適切なタイミングで磁気マーカ10のメンテナンスを実施できる。例えば、バツの磁気マーカについては、トラブルのおそれがあり、至急のメンテナンスを要する、等の判断が可能である。例えば、三角の磁気マーカについては、近日中のメンテナンスを要する、等の判断が可能である。なお、
図9の状態データを加工しても良い。例えば、良否が丸の磁気マーカ10については、例えばメンテナンス情報として「良好な状態を維持しています。」等の文字情報に変換、あるいは加工しても良い。また、例えば、良否がバツの磁気マーカ10については、例えば「早急な点検が必要です。」等のメンテナンス情報に変換あるいは加工することも良い。
【0042】
以上の通り、本例の磁気マーカシステム1では、各車両5から取得する検出情報に基づいて、サーバ装置11が磁気マーカ10の状態を推定可能である。この磁気マーカシステム1によれば、各車両5による磁気マーカ10の検出情報を利用することで、磁気マーカ10の状態を効率良く推定できる。そして、この磁気マーカシステム1が推定する磁気マーカ10の状態(例えば良否レベル)を活用すれば、磁気マーカ10の点検や保守を効率良く実施できる。
【0043】
なお、本例では、磁気マーカ10について道路種別毎の統計処理を施して磁気マーカ10の状態(良否)を判定している。これに代えて、あるいは加えて、磁気マーカ1をグループに分けて統計処理を実施することも良い。グループとしては、対象の磁気マーカ10の手前及び通過後の所定区間(例えば前後20メートルずつ等)に属する磁気マーカ10のグループ、あるいは例えば半径20メートルの円内など付近の所定範囲内の磁気マーカ10のグループを例示できる。このような構成は、分岐箇所や合流箇所が多く存在する道路構造に有効である。分岐箇所や合流箇所が存在するために交通量に位置的な粗密がある場合であっても、その粗密の影響を抑制しながら精度高く磁気マーカ10の状態を推定できる。上記の所定区間としては、例えば道路の分岐箇所あるいは合流箇所を両端とする区間等を設定することも良い。あるいは、上記の所定区間として、隣り合う2つの交差点の間の区間を設定しても良い。
【0044】
なお、磁気マーカ10の位置がマッピングされた電子地図上で、検出情報の送信元の車両5の位置を特定可能なようにサーバ装置11を構成することも良い。このサーバ装置11であれば、各車両5から検出情報を取得したとき、同じ車両5から取得した1回前の検出情報に対応する磁気マーカ10Bを起点とし、最新の検出情報に対応する対応する磁気マーカ10Aに至る経路Rを特定できる。この経路R上に未検出の磁気マーカが有るか無いかを判断する判断部としての機能を、サーバ装置1の主回路に設けると良い。この判断部は、いずれか一の車両から時間的に前後して取得した2つの検出情報のうち、時間的に先行する一方の検出情報を出力した後、他方の検出情報を出力するまでの間に対応する経路Rに、他の磁気マーカ(例えば
図13中の符号10Cの磁気マーカ)が有ったとき、その磁気マーカを未検出と判断できる。
【0045】
図13のごとく未検出マーカ10Cを特定できたとき、例えば
図14の運用データにおいて、検出情報に対応する磁気マーカ10について通過回数及び被検出回数を1回ずつ加算する一方、未検出マーカについては通過回数のみを1回加算すると良い。同図の運用データによれば、各磁気マーカ10につき、被検出回数を通過回数で除算することで被検出率を算出可能である。被検出率に関する閾値処理を実施すれば、磁気マーカ10の良否を判断できる。あるいは、例えば被検出率そのものを磁気マーカ10の状態を表す指標として取り扱うことも良い。また例えば、被検出率に閾値処理を適用した結果を、磁気マーカ10の良否情報あるいはメンテナンス情報としても良い。
【0046】
なお、本例では、磁気マーカ10がマッピングされた電子地図の地図データを記憶しているサーバ装置11を例示している。これに代えて、磁気マーカ10の隣接関係を表すデータを記憶しているサーバ装置であっても良い。磁気マーカ10の隣接関係が分かっていれば、同じ車両5が時間的に前後してアップロードした2つの検出情報に対応する磁気マーカ10が隣り合っているか否かを判断できる。これら2つの検出情報に対応する磁気マーカ10が隣り合っていないとき、中間に位置する磁気マーカ10を未検出マーカ10Cと判断できる。
【0047】
(実施例2)
本例は、実施例1の磁気マーカシステムに基づき、車両側の磁気検出部の一例であるセンサアレイ21の状態を推定可能に構成したシステムの例である。この内容について、
図5、及び
図15~
図18を参照して説明する。
【0048】
図15のサーバ装置11は、実施例1の構成に加えて、各車両5による磁気マーカ10の検出履歴を記憶する記憶部11Fと、各車両5が走行した経路R(
図16参照。)を電子地図上にマッピングする経路マッピング部11Cと、経路R上の磁気マーカ10を特定するマーカ特定部11Dと、車両5側のセンサアレイ21の状態を評価する評価部11Eと、センサアレイ21の状態を表すセンサ状態情報を車両5側に提供するセンサ情報提供部117と、を備えている。
【0049】
さらに、サーバ装置11は、マーカDB111に加えて、各車両5のデータを格納するための車両データベース(車両DB)112を備えている。車両DB112には、各車両のセンサアレイ21の運用状況を表す運用データ(
図17)や、各車両のセンサアレイの状態を表す状態データ(
図18)等が格納されている。なお、車両DBに格納される運用データ及び状態データには、車両の識別情報である車両IDがひも付けられている。
【0050】
サーバ装置11では、地図データに基づく電子地図上に磁気マーカ10の位置をマッピング可能である(
図16)。電子地図にマッピングされた各磁気マーカ10には、同図中に丸、三角、バツで示すように、磁気マーカ10の状態データの一例である良否レベルを表すフラグデータがひも付けられている。ここで、磁気マーカ10の良否レベルを表す丸、三角、バツの意味は、実施例1で参照した
図9の例と同様である。経路マッピング部11Cは、磁気マーカ10がマッピングされた電子地図(
図16)に対して、各車両5の経路Rをマッピングする。電子地図上では、経路R上に位置する磁気マーカ10がマーカ特定部11Dによって特定される。
【0051】
評価部11Eは、対象の車両5について記憶部11Fが記憶する磁気マーカ10の検出履歴を、その車両5の経路R上に位置する磁気マーカ10と照合する。評価部11Eは、この照合によって、経路R上の磁気マーカ10を、検出された磁気マーカ、及び検出されなかった磁気マーカ(未検出マーカ)のいずれかに区別する。そして、評価部11Eは、
図17の状態データのごとく、磁気マーカ10の良否の各レベル(丸、三角、バツ)につき、通過回数と被検出回数を集計すると共に、被検出回数を通過回数で除して検出率を算出する。評価部11Eは、このような処理を各車両5について実施する。このように評価部11Eによって集計あるいは算出された車両5毎の運用データ(通過回数、被検出回数及び検出率)は車両DB112(
図15)に格納される。
【0052】
評価部11Eは、さらに、各車両5が備えるセンサアレイ21の状態を判断する。評価部11Eは、例えば磁気マーカ10の検出率について閾値処理を実施する。例えば良否レベルが丸と三角の磁気マーカ10の検出率(
図17)に閾値を設定しても良い。閾値の大きさは、例えば(良否が丸の磁気マーカの検出率の閾値)>(良否が三角の磁気マーカの検出率の閾値)とすると良い。評価部11Eは、例えば、良否レベルが丸の磁気マーカ10、及び三角の磁気マーカ10のうちの少なくともいずれかに、閾値を下回る検出率があれば、センサアレイ21にトラブルが発生している可能性があると判断する。そして、センサアレイ21が点検を要する状態にあると判断する。そして、評価部11Eは、
図18のごとく、点検の要否を表すフラグデータを状態データとして生成する。なお、検出率に対する閾値処理は、上記に代えて、例えば良否レベルが丸の磁気マーカ10についてのみ実施しても良い。
【0053】
センサ情報提供部117は、
図18の状態データを元にして、点検を要すると判断されたセンサアレイ21に対応する車両5に対して、その旨の注意情報を送信する。センサ状態情報の一例であるこの注意情報は、例えば車両が備える液晶ディスプレイ等に表示される。このような表示により注意情報を把握した運転者は、修理・点検等のために車両販売店に車両を持ち込む等の対処が可能である。
なお、その他の構成及び作用効果については実施例1と同様である。
【0054】
(実施例3)
本例は、実施例2の磁気マーカシステムに基づいて、車両の地上高に関する車両情報を生成する機能を追加した例である。この内容について、
図19~
図21を参照して説明する。
図19のサーバ装置11は、実施例2のサーバ装置を基にして、車両情報を生成する車両情報生成部11Gと、この車両情報を車両側に提供する車両情報提供部119と、が追加された装置である。また、本例の磁気マーカシステムでは、車両がアップロードする検出情報に、磁気マーカを検出した際の磁気計測値(ピーク値)が追加されている。
【0055】
本例のサーバ装置11は、磁気マーカの状態を推定するに当たって、磁気強度の度合いを10段階の磁気レベルで評価する。サーバ装置11は、各車両側から取得した検出情報に含まれる磁気計測値(ピーク値)の平均値を算出し、その平均値の大きさを10段階の磁気レベルのいずれかに割り当てる(
図20参照。)。この磁気レベルは、磁気マーカの状態を表す指標として利用可能である。
【0056】
サーバ装置11の評価部11Eは、各車両のセンサアレイ(磁気検出部)について実施例2と同様の評価を実施する一方、磁気マーカの磁気レベル(
図20)と、磁気計測値(ピーク値)と、の相関関係を表す指標値を車両毎に算出する。評価部11Eが内部的に実行する処理の内容は、例えば
図21のグラフを用いて説明できる。同図のグラフは、対象の車両がアップロードした検出情報に含まれる磁気計測値(ピーク値)と、対応する磁気マーカの磁気レベル(
図20)と、の関係を表している。同図のグラフの横軸は、磁気マーカの10段階の磁気レベルを示し、縦軸は、磁気計測値(ピーク値)を示している。
図21のグラフ上には、対象の特定の車両がアップロードした検出情報が順次、プロットされる。評価部11Eは、プロットされた点群について、例えば最小二乗法によって近似直線を算出する。そして、この近似直線の傾き(係数)や切片が、上記の相関関係を表す指標値となり得る。なお、切片は、近似直線が縦軸と交わる点の磁気計測値である。
【0057】
評価部11Eは、例えば1時間、2時間、1日、1週間などの所定時間を設定し、所定時間毎のプロットの点群(例えばD1~D3)の近似直線(例えばAP1~AP3)を求める。例えば、所定時間が1時間であれば、1時間毎の近似直線が求められる。例えば、センサアレイの磁気センサ(磁気検出部)の感度に変化がなく、かつ、センサアレイの取付高さに変化がなければ、上記の近似直線(例えばAP1~AP3)の傾きや切片が時間的にほぼ一定となる。一方、例えば、磁気センサの感度には変化がないが、センサアレイの取付高さに変化が生じると、上記の近似直線の傾き等が時間的に変化する。
【0058】
このような時間的な変化を検出すれば、評価部11Eが、車両の地上高の変化を検出できる。車両の地上高の変化を検出すれば、評価部11Eが、例えば車両の地上高の変化の要因であるタイヤのパンクや積荷の過積載等を検知できる。上記の近似直線の傾き等の時間的な変化について閾値処理を実行し、閾値を超える変化が発生したとき、サーバ装置11が車両の地上高の変化が大きい旨の車両情報を生成することも良い。この場合、サーバ装置11は、注意を促すためにこの車両情報を対応する車両に送信することも良い。例えばディスプレイ装置やスピーカなどを利用して車両情報を乗員に提示すれば、タイヤのパンクや積荷の過積載による事故の発生を未然に防止できる。
【0059】
例えば、点群D1→点群D2に移行したケースは、切片の変化がほとんど生じていないが、近似直線の傾きが大きくなっているケースである。このケースでは、例えば、過積載やパンクなどによって車両の地上高が低くなっている等の要因を想定できる。車両の地上高が低くなれば、センサアレイ(磁気センサ)の取付高さが低くなり、これにより、センサアレイ(磁気センサ)が磁気マーカを検出する際の磁気計測値(ピーク値)が大きくなる。この場合、車両情報生成部11Gは、過積載やパンク等に起因して車両の地上高が低くなっている旨の車両情報を生成する。
【0060】
車両情報提供部119は、その車両情報を車両側に提供すると良い。提供先の車両側としては、対応する車両であっても良く、対応する車両の整備を担う車両ディーラ等であっても良い。さらに、対応する車両がタクシーやトラックなどの営業車両であれば、営業車両を管理する企業や会社の担当部署であっても良い。車両ディーラや担当部署に車両情報を提供する方法としては、車両ディーラ等に設置された端末装置に対して、インターネット等の公衆通信回線を利用して車両情報を送信する等の方法がある。
【0061】
例えば、点群D1→点群D3に移行したケースは、近似直線の傾きの変化は少ないが、切片が変化し、近似直線AP1が上方に並行移動して近似直線AP3になっているケースである。このケースでは、磁気センサの感度が変化しているおそれがあると共に、車両の地上高の変化が発生している可能性もある。点群D1→点群D2に移行したケースと同様、車両の地上高の変化が生じている可能性がある旨の車両情報を車両側に提供すると良い。
【0062】
なお、点群の近似直線の傾きや切片の変化、あるいは点群の分布態様の変化と、発生原因との関係を機械学習等することも良い。このような機械学習によれば、人工知能的な手法によって発生原因を推定できるようになる。この場合には、発生原因を表す車両情報を車両側に提供すると良い。
なお、その他の構成及び作用効果については実施例2と同様である。
【0063】
以上、実施例のごとく本発明の具体例を詳細に説明したが、これらの具体例は、特許請求の範囲に包含される技術の一例を開示しているにすぎない。言うまでもなく、具体例の構成や数値等によって、特許請求の範囲が限定的に解釈されるべきではない。特許請求の範囲は、公知技術や当業者の知識等を利用して上記具体例を多様に変形、変更あるいは適宜組み合わせた技術を包含している。
【符号の説明】
【0064】
1 磁気マーカシステム
10 磁気マーカ
11 サーバ装置
11A 状態推定部
11B メンテナンス情報生成部
11C 経路マッピング部
11D マーカ特定部
11E 評価部
11F 記憶部
11G 車両情報生成部
111 マーカデータベース(マーカDB)
112 車両データベース(車両DB)
116 検出情報取得部
117 センサ情報提供部
118 位置情報提供部
119 車両情報提供部
15 RFIDタグ(無線タグ)
2 計測ユニット
21 センサアレイ(磁気検出部)
212 検出処理回路
32 制御ユニット
34 タグリーダ
5 車両
6 ナビゲーション装置
Cn(nは1~15) 磁気センサ(磁気検出部)