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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20240229BHJP
【FI】
H01L33/50
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022176183
(22)【出願日】2022-11-02
(62)【分割の表示】P 2020113376の分割
【原出願日】2020-06-30
(65)【公開番号】P2023011822
(43)【公開日】2023-01-24
【審査請求日】2022-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仁木 健太
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 潤
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-022660(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111213006(CN,A)
【文献】特開2019-125582(JP,A)
【文献】特表2017-531324(JP,A)
【文献】国際公開第2020/043649(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/200097(WO,A1)
【文献】特開2015-115507(JP,A)
【文献】特開2020-057777(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0069355(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
C09K 11/00-11/89
F21K 9/00- 9/90
F21S 2/00-45/70
F21V 1/00-15/04
H05B 39/00-39/10
H05B 45/00-45/59
H05B 47/00-47/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または複数の発光素子と、複数の蛍光体と、を備え、
第1の単体光、第2の単体光、及び、第3の単体光のうち、少なくとも、第1の単体光及び第3の単体光を含む、2以上の単体光を発し、
前記第1の単体光は、前記1または複数の発光素子、及び、複数の蛍光体のうちの、1または複数の発光素子、及び、少なくとも630nm付近に発光ピークを有するフッ化物蛍光体を含む1または複数の蛍光体による光であり、かつ、相関色温度が1500K以上3500K以下である第1色温度の光であり、かつ、演色評価数R9の値が50以上の光であって、
前記第2の単体光は、前記1または複数の発光素子、及び、複数の蛍光体のうちの、1または複数の発光素子、及び、少なくとも630nm付近に発光ピークを有するフッ化物蛍光体を含む1または複数の蛍光体による光であり、かつ、相関色温度が3500K以上5500K以下でありかつ前記第1色温度よりも高い第2色温度の光であり、かつ、演色評価数R9の値が50以上であって、
前記第3の単体光は、前記1または複数の発光素子、及び、複数の蛍光体のうちの、1または複数の発光素子、及び、少なくとも前記第1の単体光に含まれる前記1または複数の蛍光体と異なる蛍光体を含む1または複数の蛍光体による光であり、かつ、CIE1931表色系の色度図におけるX座標及びY座標の値が、黒体放射軌跡上の色温度5500KにおけるX座標及びY座標の値よりも小さく、かつ、メラノピック比の値が1.80以上であって、
前記第1の単体光、第2の単体光、及び、第3の単体光のうち、少なくとも、前記第1の単体光及び第3の単体光を含む2以上の光による相関色温度6500Kの光においてメラノピック比の値が1.0以上であり、また、少なくとも相関色温度3500K以上5000K以下の範囲の光において演色評価数R9の値が50以上である発光装置。
【請求項2】
前記第1の単体光、第2の単体光、及び、第3の単体光のうち、少なくとも、前記第1の単体光及び第3の単体光を含む2以上の光による少なくとも相関色温度3500K以上5000K以下の範囲の光において演色評価数R15の値が75以上である請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記第1の単体光、第2の単体光、及び、第3の単体光のうち、少なくとも、前記第1の単体光及び第3の単体光を含む2以上の光による少なくとも相関色温度3500K以上5000K以下の範囲の光において、平均演色評価数Raの値が80以上である、請求項1または2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記第1の単体光に係る630nm付近に発光ピークを有するフッ化物蛍光体は、式KSiF:Mn4+で表される組成を有し630nm付近に発光ピークを有するフッ化物蛍光体であり、
前記第2の単体光に係る630nm付近に発光ピークを有するフッ化物蛍光体は、式KSiF:Mn4+で表される組成を有し630nm付近に発光ピークを有するフッ化物蛍光体である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記第3の単体光は、演色評価数R9の値が30未満である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項6】
1または複数の発光素子と、
少なくとも、希土類アルミン酸塩蛍光体、希土類アルミニウムガーネット蛍光体、630nm付近に発光ピークを有するフッ化物蛍光体を含む複数の蛍光体と、を備え、
前記フッ化物蛍光体による蛍光を含み、相関色温度が1500K以上3500K以下である第1色温度の光であって、演色評価数R9の値が50以上である光と、
前記フッ化物蛍光体による蛍光を含み、相関色温度が3500K以上5500K以下でありかつ前記第1色温度よりも高い第2色温度の光であって、演色評価数R9の値が50以上である光と、
CIE1931表色系の色度図におけるX座標及びY座標の値が、黒体放射軌跡上の色温度5500KにおけるX座標及びY座標の値よりも小さく、かつ、メラノピック比が1.80以上である単体光と、前記フッ化物蛍光体による蛍光とを含み、相関色温度が6500Kであり、演色評価数R9の値が50以上であり、かつ、メラノピック比の値が1.0以上である光と、
を発する発光装置。
【請求項7】
前記希土類アルミン酸塩蛍光体は、式Y(Al,Ga)12:Ceで表される組成を有する蛍光体であり、
前記希土類アルミニウムガーネット蛍光体は、式LuAl12:Ceで表される組成を有する蛍光体であり、
前記フッ化物蛍光体は、式KSiF:Mn4+で表される組成を有する蛍光体である、請求項6に記載の発光装置。
【請求項8】
相関色温度6500Kの前記光において、演色評価数R15の値が85以上である請求項6または7に記載の発光装置。
【請求項9】
相関色温度3500K以上5500K以下の範囲の光において、演色評価数R9の値が60以上である、請求項6乃至8のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項10】
相関色温度2700K以上6500K以下の範囲の光において、平均演色評価数Raの値が80以上である、請求項6乃至9のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項11】
相関色温度2700K以上6500K以下の範囲の光において、メラノピック比の値が単調増加する請求項10に記載の発光装置。
【請求項12】
前記単体光は、演色評価数R9の値が30未満である、請求項6乃至11のいずれか一
項に記載の発光装置。
【請求項13】
相関色温度2700K以上6500K以下の範囲の光において、演色評価数R9の値が50以上である、請求項6乃至12のいずれか一項に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
照明やディスプレイなど、光は、人の作業空間において欠かせない要素となっている。
一日のうち、建物内やコンピュータ機器などからの光を受ける時間は多い。
【0003】
近年、人の作業環境を形成する上で、人体に与える影響を考慮することを重視する動きがある。その一つに、例えば、IWBI(International WELL Building Institute)が定めるWELL認証(Well Building Standard)という認証制度がある。WELL認証は、オフィスなどの建築物を、空気、水、食物、光、快適性などの複数の項目から評価し、基準を満たすことで認証を与える。例えば、WELL認証における光の項目に関しては、視環境への配慮、サーカディアンへの配慮、器具や太陽光のグレアへの配慮、演色性などが挙げられる。
【0004】
また、特許文献1には、人の概日リズム(サーカディアンリズム)をサポートする照明装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2018-511386号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
サーカディアンリズム、及び、演色性に配慮した発光装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態において開示される発光装置は、1または複数の発光素子と、複数の蛍光体と、を備え、第1の単体光、第2の単体光、及び、第3の単体光のうち、少なくとも、第1の単体光及び第3の単体光を含む、2以上の単体光を発し、前記第1の単体光は、前記1または複数の発光素子、及び、複数の蛍光体のうちの、1または複数の発光素子、及び、少なくとも630nm付近に発光ピークを有するフッ化物蛍光体を含む1または複数の蛍光体による光であり、かつ、相関色温度が1500K以上3500K以下である第1色温度の光であり、かつ、演色評価数R9の値が50以上の光であって、前記第2の単体光は、前記1または複数の発光素子、及び、複数の蛍光体のうちの、1または複数の発光素子、及び、少なくとも630nm付近に発光ピークを有するフッ化物蛍光体を含む1または複数の蛍光体による光であり、かつ、相関色温度が3500K以上5500K以下でありかつ前記第1色温度よりも高い第2色温度の光であり、かつ、演色評価数R9の値が50以上であって、前記第3の単体光は、前記1または複数の発光素子、及び、複数の蛍光体のうちの、1または複数の発光素子、及び、少なくとも前記第1の単体光に含まれる前記1または複数の蛍光体と異なる蛍光体を含む1または複数の蛍光体による光であり、かつ、CIE1931表色系の色度図におけるX座標及びY座標の値が、黒体放射軌跡上の色温度5500KにおけるX座標及びY座標の値よりも小さく、かつ、メラノピック比の値が1.80以上であって、前記第1の単体光、第2の単体光、及び、第3の単体光のうち、少なくとも、前記第1の単体光及び第3の単体光を含む2以上の光による相関色温度6500Kの光においてメラノピック比の値が1.0以上であり、また、少なくとも相関色温度3500K以上5000K以下の範囲の光において演色評価数R9の値が50以上である。
【0008】
また、実施形態において開示される発光装置は、1または複数の発光素子と、少なくとも、希土類アルミン酸塩蛍光体、希土類アルミニウムガーネット蛍光体、630nm付近に発光ピークを有するフッ化物蛍光体を含む複数の蛍光体と、を備え、前記フッ化物蛍光体による蛍光を含み、相関色温度が1500K以上3500K以下である第1色温度の光であって、演色評価数R9の値が50以上である光と、前記フッ化物蛍光体による蛍光を含み、相関色温度が3500K以上5500K以下でありかつ前記第1色温度よりも高い第2色温度の光であって、演色評価数R9の値が50以上である光と、CIE1931表色系の色度図におけるX座標及びY座標の値が、黒体放射軌跡上の色温度5500KにおけるX座標及びY座標の値よりも小さく、かつ、メラノピック比が1.80以上である単体光と、前記フッ化物蛍光体による蛍光とを含み、相関色温度が6500Kであり、演色評価数R9の値が50以上であり、かつ、メラノピック比の値が1.0以上である光と、を発する。
【0009】
また、実施形態において開示される発光装置は、1または複数の発光素子と、複数の蛍光体と、を備え、前記1または複数の発光素子、及び、複数の蛍光体のうちの、1または複数の発光素子、及び、1または複数の第1蛍光体による第1の光と、前記1または複数の発光素子、及び、複数の蛍光体のうちの、1または複数の発光素子、及び、少なくとも前記第1蛍光体と異なる蛍光体を含む1または複数の第2蛍光体による第2の光と、前記1または複数の発光素子、及び、複数の蛍光体のうちの、1または複数の発光素子、及び、少なくとも前記第1蛍光体及び第2蛍光体と異なる蛍光体を含む1または複数の第3蛍光体による第3の光と、を発し、前記第1の光は、相関色温度が1500K以上3500K以下である第1色温度の光であって、演色評価数R9の値が50以上であり、前記第2の光は、相関色温度が3500K以上5500K以下でありかつ前記第1色温度よりも高い第2色温度の光であって、演色評価数R9の値が50以上であり、前記第3の光は、CIE1931表色系の色度図におけるX座標及びY座標の値が、黒体放射軌跡上の色温度5500KにおけるX座標及びY座標の値よりも小さく、前記第1の光、第2の光、及び、第3の光のうち、少なくとも第3の光を含む2以上の光による相関色温度6500Kの光において、演色評価数R9の値が50以上であり、かつ、メラノピック比の値が1.0以上である。
【0010】
また、実施形態において開示される発光装置は、第1の光、第2の光、及び、第3の光のうち、少なくとも第3の光を含む2以上の光による相関色温度6500Kの光において、演色評価数R15の値が85以上である。
【0011】
また、実施形態において開示される発光装置は、第1の光、第2の光、及び、第3の光のうちの1または複数の光による相関色温度3500K以上5500K以下の範囲の光において、演色評価数R9の値が60以上である。
【0012】
また、実施形態において開示される発光装置は、第1色温度の相関色温度が1500K以上2700K以下であり、第1の光、第2の光、及び、第3の光のうちの1または複数の光による相関色温度2700K以上6500K以下の範囲の光において、平均演色評価数Raの値が80以上である。
【0013】
また、実施形態において開示される発光装置は、第1の光、第2の光、及び、第3の光のうちの1または複数の光による相関色温度2700K以上6500K以下の範囲の光において、メラノピック比の値が単調増加する。
【0014】
また、実施形態において開示される発光装置は、第3の光の演色評価数R9の値が30未満である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、サーカディアンリズム、及び、演色性に配慮した発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、サーカディアン応答と視感度応答の曲線を示す図である。
図2図2は、実施形態に係る発光装置の一例を記した模式的な斜視図である。
図3A図3Aは、実施形態に係る発光装置の他の一例を記した模式的な断面図である。
図3B図3Bは、実施形態に係るLEDパッケージの一例を記した模式的な断面図である。
図4図4は、実施形態に係る発光装置における第1の光の発光スペクトルの一例である。
図5図5は、実施形態に係る発光装置における第2の光の発光スペクトルの一例である。
図6図6は、実施形態に係る発光装置における第2の光の発光スペクトルの他の一例である。
図7図7は、実施形態に係る発光装置における第2の光の発光スペクトルの他の一例である。
図8図8は、実施形態に係る発光装置における第3の光の発光スペクトルの一例である。
図9図9は、実施形態に係る調色制御システムの一例を示すシステム構成図である。
図10図10は、情報処理装置のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、照明が人体に与える影響について説明する。
背景技術で述べたWELL認証を例に挙げると、サーカディアンに配慮した照明設計が求められる。なお、サーカディアンに配慮するとは、概日リズム(サーカディアンリズム)、に配慮するということである。
【0018】
ヒトのサーカディアンリズムは1日より長く約25時間であり、これを1日、つまり24時間周期に合わせなければ、1日とずれたリズム周期となってしまう。そこで、24時間に合わせるための同調因子として光が重要な役割を果たしている。太陽の光を浴びることでヒトの体内時計が24時間に調整され、これにより、生来的に人は朝起きて夜寝るといった1日のリズムの中で生活している。
【0019】
つまり、人間の体内には、24時間周期のリズムで生活するために、光を利用した同調機能が備わっている。具体的には、脳の視床下部に視交叉上核という非常に小さい領域があり、これがサーカディアンリズムを統率する体内時計の役割を担っている。また、この視交叉上核に光信号を与える細胞として、網膜上の内因性光感受性網膜神経節細胞(intrinsically photosensitive Retinal Ganglion Cell:以下、ipRGCと呼ぶ)がある。
【0020】
ipRGCはメラノプシンという光受容タンパク質を含み、メラノプシンがサーカディアンリズムの光同調に関与することが明らかにされている。メラノプシンは、光の波長に応じた吸収特性を有しており、そのピークは480nm~490nm付近にある。
【0021】
また、メラノプシンは睡眠促進ホルモンであるメラトニンの分泌または抑制にも関与しているとされ、例えばipRGCへの刺激量が増えることによって、メラトニンの分泌が抑制されると考えられている。なお、通常であれば、体内のメラトニンの分泌ピークは夜間に訪れ、メラトニンが分泌されることで睡眠が促進される。従って、日中はメラトニンの分泌は抑制されている。
【0022】
上述のWELL認証では、サーカディアンに配慮した照明設計であるかを評価するために、等価メラノピック照度(Equivalent Melanopic Lux:以下、EMLと呼ぶ)が導入されている。EMLは、下記の式(1)で求められる。
【0023】
また、式(1)におけるMeranopic Ratio(メラノピック比:以下、MRと呼ぶ)は、下記の式(2)で求められる。
ここで、Lightは照明灯具による光の分光分布、Circadianは上述した480nm~490nm付近にピークを有するメラノプシンの分光感度特性に基づくサーカディアン応答、Visualは視感度応答を示す。図1は、サーカディアン応答及び視感度応答の曲線を記した図である。
【0024】
式(1)からわかるように、EMLの数値を上げる方向性としては、照度を上げるか、MRを上げるか、の2通りが考えられる。また、サーカディアンリズムの特性に対する依存性は、照度よりもMRの方が大きいことが窺える。従って、サーカディアンリズムに配慮する上では、MRの値を考慮する方が好ましいと考えられる。
【0025】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら説明する。ただし、以下に示す形態は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、本発明を限定するものではない。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするために誇張していることがある。
【0026】
また、色名と色度座標との関係、光の波長範囲と単色光の色名との関係等は、JIS Z8110に従う。また、演色評価数については、JIS Z8726に従う。
【0027】
<実施形態>
実施形態に係る発光装置1について説明する。発光装置1は、例えば、照明装置である。また例えば、テレビやコンピュータのディスプレイなど、表示装置である。また例えば、照明装置や表示装置などに搭載される、LED(Light emitting diode)などの発光素子を搭載したパッケージである。なお、これらに限らなくてもよい。
【0028】
図2は、照明装置としての発光装置1の例である。また、図3Aは、LEDパッケージとしての発光装置1の例である。例えば、図2に示す照明装置としての発光装置1は、図3Aに示すLEDパッケージが複数実装される。また例えば、複数の発光素子12及び複数の蛍光体14を備えるLEDパッケージに代えて、図3Bのように、1の発光素子12に1または複数の蛍光体14を備えるLEDパッケージが複数実装されてもよい。
【0029】
発光装置1は、出射する光(以下、出射光という)の相関色温度を変化させることができる。なお、実際に、この変化を制御する機構は、発光装置1に組み込まれている他、発光装置1と接続する外部装置によって実現されてもよい。少なくとも、発光装置1は、異なる相関色温度の出射光を発することができる。
【0030】
発光装置1が照明装置であれば、出射光は、照明装置から発せられる照明である。また、発光装置1が表示装置であれば、出射光は、例えば、バックライトである。発光装置1がパッケージであれば、出射光は、パッケージから外部へと出射される光である。
【0031】
発光装置1は、1又は複数の発光素子12と、複数の蛍光体14と、を備える。また、発光装置1は、組成の異なる複数種類の蛍光体14を備える。また、発光装置1は、1又は複数の発光素子12と複数の蛍光体14とから選択される、1又は複数の発光素子12、及び、1または複数の蛍光体14を用いることにより、互いに発光スペクトルの異なる複数の光を発する。また、発光装置1は、これらの複数の光を、割合を調整して合わせることにより、所定の範囲内で、相関色温度を変化させることができる。
【0032】
例えば、発光装置1は、相関色温度2700K以上6500K以下の範囲で、相関色温度を変化させることができる。なお、発光装置1において変化させることのできる相関色温度の範囲はこれに限らなくてよい。例えば、3000K以上6000K以下の範囲であってもよい。
【0033】
ここで、選択された、1又は複数の発光素子12、及び、1または複数の蛍光体14による光を、単体光と呼ぶものとする。つまり、発光装置1は、互いに発光スペクトルの異なる複数の単体光を発するといえる。また、複数の単体光を合わせた光を、混合光と呼ぶものとする。発光装置1は、単体光、または、混合光を、出射光として出射することができる。
【0034】
発光装置1において発される複数の単体光はそれぞれ、CIE1931表色系の色度図(以下、単に色度図という)において、異なる色度座標にプロットされる。言い換えれば、複数の単体光はそれぞれ、色度図における色度座標が異なる光を発する。
【0035】
また、複数の単体光のうちの少なくとも2以上の単体光は、互いに異なる1以上の蛍光体を用いている。なお、同じ蛍光体が1以上用いられていてもよい。全ての単体光が、互いに異なる1以上の蛍光体を用いていてもよい。
【0036】
また、発光装置1において発される複数の単体光には、少なくとも3つの単体光が含まれる。ここで、3つの単体光をそれぞれ、第1の光、第2の光、第3の光、と呼ぶものとする。以下、各光について説明する。
【0037】
(第1の光)
第1の光は、その相関色温度が1500K以上3500K以下の光である。ここで、特定の光についての相関色温度を示す場合、具体的な指定がなければ、色偏差が±0.02の範囲にある相関色温度を指すものとする。
【0038】
第1の光は、平均演色評価数Raが80以上の光を発する。また、好ましくは、平均演色評価数Raが90以上の光を発する。また、さらに好ましくは、平均演色評価数Raが95以上の光を発する。
【0039】
第1の光は、演色評価数R9が50以上の光を発する。また、好ましくは、演色評価数R9が60以上の光を発する。また、さらに好ましくは、演色評価数R9が65以上の光を発する。なお、演色評価数R9は、赤色についての演色性の評価に用いられる値である。
【0040】
第1の光は、演色評価数R15が75以上の光を発する。また、好ましくは、演色評価数R15が85以上の光を発する。また、さらに好ましくは、演色評価数R15が90以上の光を発する。なお、演色評価数R15は、日本人の肌色についての演色性の評価に用いられる値である。
【0041】
第1の光は、MRの値が0.70以下の光を発する。また、好ましくは、MRの値が0.60以下の光を発する。また、さらに好ましくは、MRの値が0.55以下の光を発する。
【0042】
例えば、第1の光は、410nm以上490nm以下の範囲に発光ピークを有する、窒化物半導体である発光素子12と、主な蛍光体として式Y(Al,Ga)12:Ceで表される組成を有し496nm付近に発光ピークを有する希土類アルミン酸塩蛍光体14、及び、式KSiF:Mn4+で表される組成を有し630nm付近に発光ピークを有するフッ化物蛍光体14と、による光を発する。
【0043】
図4は、第1の光の発光スペクトルの具体例である。この具体例における第1の光は、相関色温度が2700Kであり、平均演色評価数Raが96であり、演色評価数R9が68であり、演色評価数R15が94であり、MRの値が0.51である。第1の光は、平均演色評価数Ra及び演色評価数R15の値に優れ、演色評価数R9の値を良好としつつ、MRの値を低くした光である。
【0044】
ここで、平均演色評価数Raについては、その値が80以上90未満である場合を良好であると言い、90以上である場合を優れていると言うものとする。また、演色評価数R9については、その値が50以上70未満である場合を良好であると言い、70以上である場合を優れていると言うものとする。また、演色評価数R15については、その値が75以上85未満である場合を良好であると言い、85以上である場合を優れていると言うものとする。なお、良好であるとされる数値範囲を下回る場合は、良好でないと言うものとする。
【0045】
(第2の光)
第2の光は、その相関色温度が3500K以上5500K以下の光である。また、第2の光は、その相関色温度が3500K以上4500K以下の光である。また、第2の光は、その相関色温度が4500K以上5500K以下の光である。
【0046】
第2の光は、平均演色評価数Raが80以上の光を発する。また、好ましくは、平均演色評価数Raが90以上の光を発する。また、さらに好ましくは、平均演色評価数Raが95以上の光を発する。
【0047】
第2の光は、演色評価数R9が50以上の光を発する。また、好ましくは、演色評価数R9が70以上の光を発する。また、さらに好ましくは、演色評価数R9が80以上の光を発する。
【0048】
第2の光は、演色評価数R15が75以上の光を発する。また、好ましくは、演色評価数R15が85以上の光を発する。また、さらに好ましくは、演色評価数R15が90以上の光を発する。また、殊に好ましくは、演色評価数R15が95以上の光を発する。
【0049】
第2の光は、MRの値が0.55以上1.00以下の光を発する。また、好ましくは、MRの値が0.60以上0.90以下の光を発する。また、好ましくは、MRの値が0.65以上0.75以下の光を発する。
【0050】
例えば、第2の光は、410nm以上490nm以下の範囲に発光ピークを有する、窒化物半導体である発光素子12と、主な蛍光体として式LuAl12:Ceで表される組成を有し520nm付近に発光ピークを有する希土類アルミニウムガーネット蛍光体14、及び、式KSiF:Mn4+で表される組成を有し630nm付近に発光ピークを有するフッ化物蛍光体14と、による光を発する。
【0051】
図5は、このような発光素子12及び蛍光体14による第2の光の発光スペクトルの具体的な一例である。この具体例における第2の光は、相関色温度が4000Kであり、平均演色評価数Raが94であり、演色評価数R9が82であり、演色評価数R15が95であり、MRの値が0.69である。第2の光は、平均演色評価数Ra、演色評価数R9、及び、演色評価数R15の値に優れた光である。
【0052】
また例えば、第2の光は、410nm以上490nm以下の範囲に発光ピークを有する、窒化物半導体である発光素子12と、主な蛍光体として式Y(Al,Ga)12:Ceで表される組成を有し520nm付近に発光ピークを有する希土類アルミン酸塩蛍光体14、及び、式KSiF:Mn4+で表される組成を有し630nm付近に発光ピークを有するフッ化物蛍光体14と、による光を発する。
【0053】
図6は、このような発光素子12及び蛍光体14による第2の光の発光スペクトルの具体的な他の一例である。この具体例における第2の光は、相関色温度が5000Kであり、平均演色評価数Raが94であり、演色評価数R9が86であり、演色評価数R15が95であり、MRの値が0.85である。第2の光は、平均演色評価数Ra、演色評価数R9、及び、演色評価数R15の値に優れた光である。
【0054】
図7は、このような発光素子12及び蛍光体14による第2の光の発光スペクトルの具体的な他の一例である。この具体例における第2の光は、相関色温度が3500Kであり、平均演色評価数Raが95であり、演色評価数R9が79であり、演色評価数R15が96であり、MRの値が0.62である。第2の光は、平均演色評価数Ra、演色評価数R9、及び、演色評価数R15の値に優れた光である。
【0055】
(第3の光)
第3の光は、色度図におけるX座標及びY座標の値が、黒体放射軌跡上の色温度5500KにおけるX座標及びY座標の値よりも小さい値にプロットされる光である。また、色度図において、相関色温度が6500K以下の範囲にはプロットされない光である。また、色度図において、相関色温度が8000K以下の範囲にはプロットされない光である。
【0056】
第3の光は、MRの値が1.80以上の光を発する。また、好ましくは、MRの値が2.00以上の光を発する。また、さらに好ましくは、MRの値が2.20以上の光を発する。また、MRの値が3.00以下の光を発する。
【0057】
第3の光は、演色評価数R9が50未満の光を発する。またあるいは、演色評価数R9が30未満の光を発する。またあるいは、演色評価数R9が10未満の光を発する。
【0058】
第3の光は、演色評価数R15が50未満の光を発する。またあるいは、演色評価数R15が30未満の光を発する。またあるいは、演色評価数R15が10未満の光を発する。
【0059】
第3の光は、410nm以上490nm以下の範囲に発光ピークを有する、窒化物半導体である発光素子12と、主な蛍光体として式SrAl1425:Euで表される組成を有し495nm付近に発光ピークを有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体14と、による光を発する。
【0060】
図8は、第3の光の発光スペクトルの具体例である。この具体例における第3の光は、色度図におけるX座標が0.146、Y座標が0.237であり、MRの値が2.84である。また、演色評価数R9は0であり、演色評価数R15は0である。図8に示されるように、第3の光は、サーカディアン応答に対応した、MRの値の高い光である。また、MRに特化する一方で、演色評価数R9及び演色評価数R15については良好ではない。
【0061】
次に、発光装置1において、第1の光、第2の光、及び、第3の光を用いて相関色温度を変化させたときの、平均演色評価数Ra、演色評価数R9、演色評価数R15、及び、MRの値について説明する。また、この説明に先立って、比較となる従来の発光装置(以下、比較発光装置)について説明する。この比較発光装置は、従来の照明装置に採用される、発光効率の良さと平均演色評価数Raの高さのバランスから選択される発光装置である。
【0062】
(比較発光装置)
比較発光装置は、それぞれ相関色温度が2700K、6500Kの2つの単体光で構成される。また、いずれの単体光も、410nm以上490nm以下の範囲に発光ピークを有する窒化物半導体である発光素子12と、式YAl12:Ceで表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体、式LuAl12:Ceで表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体、及び、式(Sr,Ca)AlSiN:Euで表される組成を有するシリコンナイトライド蛍光体を含有する蛍光体と、による光を発する。
【0063】
比較発光装置では、相関色温度2700K以上6500K以下の範囲で、平均演色評価数Raは80以上であり、発光効率は180lm/W~200lm/Wを実現している。一方で、MRの値は、最大でも1.00を下回る。また、相関色温度2700K~6500Kの範囲で、MRの値の変動幅は0.55を下回る。所定の相関色温度における平均演色評価数Ra、演色評価数R9、演色評価数R15、及び、MRの値の詳細を、以下の表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
(第1参考発光装置)
次に、比較発光装置において採用された相関色温度が6500Kの単体光に代えて、MRに特化した第3の光を用いた場合の発光装置を、参考として示す。この発光装置を、第1参考発光装置と呼ぶものとする。
【0066】
第1参考発光装置では、相関色温度2700K以上6500K以下の範囲で、平均演色評価数Raは80以上であり、MRの値は、最大1.20を上回る。また、相関色温度2700K以上6500K以下の範囲で、MRの値の変動幅は0.80を上回る。つまり、第3の光により高いMRが実現されていることがわかる。一方で、演色評価数R9の値は、相関色温度3500K以下で50を下回り、演色評価数R15の値は、相関色温度2700Kで75を下回る。所定の相関色温度における平均演色評価数Ra、演色評価数R9、演色評価数R15、及び、MRの値の詳細を、以下の表2に示す。
【0067】
【表2】
【0068】
(第2参考発光装置)
次に、第1参考発光装置において採用された相関色温度が2700Kの単体光(比較発光装置においても採用されている)に代えて、演色評価数R9の値が良好な第1の光を用いた場合の発光装置を、参考として示す。この発光装置を、第2参考発光装置と呼ぶものとする。
【0069】
第2参考発光装置では、相関色温度2700K以上6500K以下の範囲で、平均演色評価数Raは75以上であり、MRの値は、最大1.20を上回る。また、相関色温度2700K以上6500K以下の範囲で、MRの値の変動幅は0.75を上回る。第1参考発光装置と同様に第3の光により高いMRが実現されている。一方で、演色評価数R9の値は、相関色温度6500Kでは50を下回り、演色評価数R15の値は、相関色温度4000K以上で85を下回る。所定の相関色温度における平均演色評価数Ra、演色評価数R9、演色評価数R15、及び、MRの値の詳細を、以下の表3に示す。
【0070】
【表3】
【0071】
(第1発光装置)
次に、発光装置1の一例である第1発光装置について説明する。第1発光装置は、図4で示した第1の光、図5で示した第2の光、及び、図8で示した第3の光を採用した発光装置1である。
【0072】
第1発光装置では、相関色温度が2700K以上6500K以下の範囲で、平均演色評価数Raは90以上であり、MRの値は、最大1.10を上回る。また、相関色温度2700K以上6500K以下の範囲で、MRの値の変動幅は0.60を上回る。また、演色評価数R9は60以上であり、相関色温度が3000K以上の範囲で70以上、3500K以上の範囲で80以上である。また、演色評価数R15は90以上である。
【0073】
第1発光装置は、第3の光によって従来よりも高いMRを実現するだけでなく、演色評価数R9の値についても良好である。またさらに、演色評価数R15の値についても優れている。所定の相関色温度における平均演色評価数Ra、演色評価数R9、演色評価数R15、及び、MRの値の詳細を、以下の表4に示す。
【0074】
【表4】
【0075】
(第2発光装置)
次に、発光装置1の一例である第2発光装置について説明する。第2発光装置は、図4で示した第1の光、図6で示した第2の光、及び、図8で示した第3の光を採用した発光装置1である。
【0076】
第2発光装置では、相関色温度が2700K以上6500K以下の範囲で、平均演色評価数Raは90以上であり、MRの値は、最大1.00を上回る。また、相関色温度2700K以上6500K以下の範囲で、MRの値の変動幅は0.55を上回る。また、演色評価数R9は60以上であり、相関色温度が3000K以上の範囲で70以上、3500K以上の範囲で80以上である。また、演色評価数R15は90以上である。
【0077】
第2発光装置は、第3の光によって従来よりも高いMRを実現するだけでなく、演色評価数R9の値についても良好である。またさらに、演色評価数R15の値についても優れている。所定の相関色温度における平均演色評価数Ra、演色評価数R9、演色評価数R15、及び、MRの値の詳細を、以下の表5に示す。
【0078】
【表5】
【0079】
相関色温度2700K以上6500K以下の範囲で全体的にみると、第2発光装置は、第1発光装置と比較して、MRの値がやや低い傾向にある一方で、演色評価数R9の値がやや高い傾向にある。また、演色評価数R15の値もやや高い傾向にある。つまり、第1発光装置と比べると、より演色評価数R9または演色評価数R15の値を重視した発光装置であるといえる。
【0080】
(第3発光装置)
次に、発光装置1の一例である第3発光装置について説明する。第3発光装置は、図4で示した第1の光、図7で示した第2の光、及び、図8で示した第3の光を採用した発光装置1である。
【0081】
第3発光装置では、相関色温度が2700K以上6500K以下の範囲で、平均演色評価数Raは90以上であり、MRの値は、最大1.10を上回る。また、相関色温度2700K以上6500K以下の範囲で、MRの値の変動幅は0.65を上回る。また、演色評価数R9は60以上であり、相関色温度が3000K以上の範囲で70以上である。また、演色評価数R15は80以上であり、相関色温度が5000K以下の範囲で90以上である。
【0082】
第2発光装置は、第3の光によって従来よりも高いMRを実現するだけでなく、演色評価数R9の値についても良好である。またさらに、演色評価数R15の値についても優れている。所定の相関色温度における平均演色評価数Ra、演色評価数R9、演色評価数R15、及び、MRの値の詳細を、以下の表6に示す。
【0083】
【表6】
【0084】
相関色温度2700K以上6500K以下の範囲で全体的にみると、第3発光装置は、第1発光装置と比較して、MRの値がやや高い傾向にある一方で、演色評価数R9の値がやや低い傾向にある。また、演色評価数R15の値もやや低い傾向にある。つまり、第1発光装置と比べると、よりMRの値を重視した発光装置であるといえる。
【0085】
このように、第1発光装置、第2発光装置、及び、第3発光装置のいずれも、相関色温度2700K以上6500K以下の範囲で、従来よりも高いMRの値を実現し、また、より大きなMRの変動幅を実現する。この点については、第1参考発光装置及び第2参考発光装置も同様であり、第1参考発光装置及び第2参考発光装置は、第1発光装置、第2発光装置、及び、第3発光装置よりも高い最大値と大きな変動幅を実現することができる。つまり、MRの観点でみれば、これらの発光装置は従来よりも優れた効果を得られることが期待できる。
【0086】
加えて、第1発光装置、第2発光装置、及び、第3発光装置は、演色評価数R9の値においても、広い相関色温度の範囲に亘って、良好または優れた特性を示す。この点については、第1発光装置、第2発光装置、及び、第3発光装置の方が、第1参考発光装置及び第2参考発光装置よりも優れているといえる。
【0087】
また、第2の光は相関色温度が3500K以上5500K以下の範囲にあるが、相関色温度6500Kにおける発光装置1のMRの値は、第2の光の相関色温度が下限値(3500K)に近い程高くなる。また、第2の光の相関色温度が上限値(5500K)に近い程、全体的に演色評価数R9の値が向上する。
【0088】
つまり、第2の光の相関色温度を調整することで、MRの値と、演色評価数R9の値と、のバランスを適宜調整することができる。MRの値と、演色評価数R15の値と、のバランスについても同様である。
【0089】
なお、発光装置1において実現される相関色温度の最大値は6500Kに限らなくてもよい。6500Kを超えてもよいし、6500Kを下回ってもよいが、第2の光の相関色温度よりは高い。また、第1の光の相関色温度は、発光装置1において実現される相関色温度の最小値以下となり得る。発光装置1に備わる複数の単体光のうち第1の光が相関色温度の最も低い光である場合、第1の光の相関色温度は、発光装置1において実現される相関色温度の最小値以下である。
【0090】
発光装置1は、第1の光、第2の光、及び、第3の光のうち、少なくとも第3の光を含む2以上の光による相関色温度6500Kの光において、演色評価数R9の値が50以上であり、かつ、MRの値が1.0以上を実現する。また、演色評価数R15の値は85以上である。またさらに、第1の光、第2の光、及び、第3の光のうち、少なくとも第1の光を含む1以上の光による相関色温度2700Kの光において、演色評価数R9の値が50以上を実現する。
【0091】
また、発光装置1は、第1の光、第2の光、及び、第3の光のうち、少なくとも第3の光を含む2以上の光による相関色温度6500Kの光において、演色評価数R9の値が70以上を実現する。
【0092】
また、発光装置1は、第1の光、第2の光、及び、第3の光のうち、少なくとも第3の光を含む2以上の光による相関色温度6500Kの光において、MRの値が1.05以上を実現する。
【0093】
また、発光装置1は、第1の光、第2の光、及び、第3の光のうち、少なくとも第3の光を含む2以上の光による相関色温度6500Kの光において、演色評価数R9の値が80以上であり、かつ、MRの値が1.10以上を実現する。
【0094】
また、発光装置1は、第1の光、第2の光、及び、第3の光のうち、少なくとも第3の光を含む2以上の光による相関色温度6500Kの光において、演色評価数R9の値が90以上であり、かつ、MRの値が1.05以上を実現する。
【0095】
また、発光装置1は、第1の光、第2の光、及び、第3の光のうち、少なくとも第3の光を含む2以上の光による相関色温度6500Kの光において、演色評価数R9の値が70以上であり、かつ、MRの値が1.15以上を実現する。
【0096】
また、発光装置1は、相関色温度2700K以上6500K以下の範囲で、MRの値の変動幅は0.55以上であり、演色評価数R9の値が65以上である。また、MRの値は、相関色温度が高くなるにつれて、単調に増加する。なお、単調に増加すれば、線形に増加しなくてもよい。
【0097】
また、発光装置1は、相関色温度2700K以上6500K以下の範囲で、平均演色評価数Raの値が80以上である。また、相関色温度2700K以上6500K以下の範囲で、演色評価数R15の値が85以上である。また、第1の光の相関色温度は、1500K以上2700K以下である。
【0098】
また、発光装置1は、相関色温度3500K以上6500K以下の範囲で、演色評価数R9の値が75以上である。また、発光装置1は、相関色温度3500K以上6500K以下の範囲で、演色評価数R9の値が80以上である。また、発光装置1は、相関色温度3500K以上6500K以下の範囲で、演色評価数R9の値が85以上である。
【0099】
(調色制御システム)
次に、発光装置1を用いて行われる調色制御について説明する。ここでは、照明装置としての発光装置1が、建物内の居室に複数設置されるような場面を想定する。なお、照明装置としての発光装置1は、このような提供形態に限らない。
【0100】
発光装置1として調色が可能な相関色温度の範囲内であれば、発光装置1による照明を制御する情報処理装置2によって、所望の範囲で調色を行うことができる。言い換えれば、発光装置1として調色が可能な範囲よりも小さな範囲で、照明の相関色温度を調整してもよい。
【0101】
調色制御システムは、複数の発光装置1と、情報処理装置2と、を備える。また、複数の発光装置1と情報処理装置2とは、通信可能に接続しており、情報処理装置2は、通信手段を介して発光装置1に制御信号を送信し、発光装置1による照明を制御する。図9は、調色制御システムの構成の一例を示す構成図である。なお、発光装置1は1台であってもよい。
【0102】
情報処理装置2は、コンピュータやサーバ装置などで構成することができる。図10は、情報処理装置2のハードウェア構成の一例を示す図である。情報処理装置2では、CPU70、ROM71、RAM72、ストレージ73、グラフィクスI/F74、データI/F75、通信I/F76、及び、入力デバイス77が、バスに対して接続される。
【0103】
ストレージ73は、データを不揮発に記憶することが可能な記憶媒体である。例えば、ハードディスクドライブやフラッシュメモリなどを用いることができる。CPU70は、ROM71およびストレージ73に記憶されるプログラムに従い、RAM72をワークメモリとして用いて処理を実行するプロセッサである。グラフィクスI/F74は、生成された表示制御信号を、装置が表示可能な信号に変換して出力するインタフェースである。
【0104】
データI/F75は、外部からのデータの入力を行うためのインタフェースである。例えば、USBなどによるインタフェースを適用することができる。通信I/F76は、所定のプロトコルを用いてネットワークと通信を行うためのインタフェースである。入力デバイス77は、ユーザ入力を受け付けて所定の制御信号を出力する。
【0105】
調色制御システムにおいて、情報処理装置2は、発光装置1による照明光を調節するための制御命令を決定する調光決定部3を有する。調光決定部3は、第1の値から第2の値までの範囲で相関色温度を制御するときに、発光装置1の複数の単体光を発光させる発光割合を決定する。
【0106】
また、情報処理装置2は、決定した発光割合での発光を指示する制御命令を送信する送信部4を有する。発光装置1は、情報処理装置2から受信した制御命令に基づいて照明を発する。
【0107】
なお、サーカディアンリズムに合わせた調色を行うには、太陽光の色温度の変化に対応した調色を行うのが好ましい。但し、太陽光の変化に正確に合わせなくてもよい。例えば、一日のうち、6時から10時にかけて、相関色温度を4000Kから6500Kへと線形に増加させ、10時に6500Kになるようにする。その後、14時30分までは6500Kを保ち、14時30分から17時に至るまでに相関色温度を6500Kから4000Kまで線形に減少させる。さらに、17時から19時にかけて、相関色温度を4000から2700Kへと減少させる。
【0108】
以上、説明してきたように、実施形態にかかる発光装置1は、演色評価数R9、つまり、赤色の領域における演色性を高く保った出射光を出射させることができる。これにより、赤色の再現性に優れた出射光を、照明やディスプレイなどに利用することができ、ユーザの視認性を向上させることができる。
【0109】
また、メラノピック比にも優れた発光装置1であるため、ユーザのサーカディアンリズムに配慮することもできる。メラノピック比の値が増減する調色制御においても、演色評価数R9の値の変動を抑え、良好な値を維持することができるため、サーカディアンリズム、及び、演色性に配慮した発光装置が実現される。
【0110】
以上、本発明に係る実施形態を説明してきたが、本発明の技術思想は、説明してきた具体的な実施形態に限定されるわけではない。また、各実施形態により開示された全ての構成要素を必要十分に備えることを必須とせずとも、本発明は適用され得る。当業者、あるいは、発明の属する技術分野において、設計の自由度の範囲であれば、特許請求の範囲に、実施形態により開示された構成要素の一部が記載されていないとしても、本発明の適用は可能であり、本明細書はこれを含むものであることを前提として発明を開示する。
【産業上の利用可能性】
【0111】
実施形態に記載の発光装置または調色制御システムは、照明やディスプレイの分野に利用することができる。また、電子看板や電子広告などにも利用することができる。また、拡張現実や、仮想3D空間などを表示する情報処理端末などにも利用することができる。
【符号の説明】
【0112】
1 発光装置
12 発光素子
14 蛍光体
2 情報処理装置
3 調光決定部
4 送信部
70 CPU
71 ROM
72 RAM
73 ストレージ
74 グラフィクスI/F
75 データI/F
76 通信I/F
77 入力デバイス
10 調色制御システム
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10