(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】潤滑剤供給装置、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
G03G21/00
(21)【出願番号】P 2019195888
(22)【出願日】2019-10-29
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100117215
【氏名又は名称】北島 有二
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 優妃
【審査官】内藤 万紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-058647(JP,A)
【文献】特開2008-139799(JP,A)
【文献】特開2004-361698(JP,A)
【文献】特開2006-235015(JP,A)
【文献】特開2014-029408(JP,A)
【文献】特開2007-187845(JP,A)
【文献】特開2007-057966(JP,A)
【文献】特開2014-134828(JP,A)
【文献】特開2011-197123(JP,A)
【文献】特開2008-107661(JP,A)
【文献】特開2007-017738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像が担持される像担持体の表面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置であって、
回転軸を中心に所定の回転方向に回転するとともに、前記像担持体に摺接する潤滑剤供給ローラと、
前記潤滑剤供給ローラに摺接する柱状の固形潤滑剤と、
前記潤滑剤供給ローラに近づく付勢方向に前記固形潤滑剤を付勢する付勢部材と、
を備え、
前記固形潤滑剤は、新品状態であるときに、前記付勢方向の長さが前記潤滑剤供給ローラのローラ径よりも長く、前記回転方向の下流側に対応する側面に前記付勢方向の先端部から中央部の第1位置まで断面積が同等であり前記第1位置から中央部の第2位置にかけて断面積が漸増する切欠きが回転軸方向の全域にわたって形成されたものであることを特徴とする潤滑剤供給装置。
【請求項2】
前記潤滑剤供給ローラと前記固形潤滑剤とが当接する位置から離れた前記固形潤滑剤の前記付勢方向の後端部を保持する保持部材を備え、
前記切欠きの前記中央部の側の端部から前記保持部材までの前記付勢方向の長さが、前記潤滑剤供給ローラのローラ径よりも短いことを特徴とする請求項1に記載の潤滑剤供給装置。
【請求項3】
トナー像が担持される像担持体の表面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置であって、
回転軸を中心に所定の回転方向に回転するとともに、前記像担持体に摺接する潤滑剤供給ローラと、
前記潤滑剤供給ローラに摺接する柱状かつ単層の固形潤滑剤と、
前記潤滑剤供給ローラに近づく付勢方向に前記固形潤滑剤を付勢する付勢部材と、
前記潤滑剤供給ローラと前記固形潤滑剤とが当接する位置から離れた前記固形潤滑剤の前記付勢方向の後端部を保持する保持部材と、
を備え、
前記固形潤滑剤は、新品状態であるときに、前記付勢方向の長さが前記潤滑剤供給ローラのローラ径よりも長く、前記回転方向の下流側に対応する側面から前記回転方向の上流側に対応する側面に至らない範囲であって前記付勢方向の中央部に
回転軸方向の全域にわたって溝状の切欠きが形成されたものであることを特徴とする潤滑剤供給装置。
【請求項4】
前記切欠きから前記保持部材までの前記付勢方向の長さが、前記潤滑剤供給ローラのローラ径よりも短く、
前記固形潤滑剤の前記付勢方向の先端部から前記切欠きまでの前記付勢方向の長さが、前記潤滑剤供給ローラのローラ径よりも短いことを特徴とする請求項3に記載の潤滑剤供給装置。
【請求項5】
トナー像が担持される像担持体の表面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置であって、
回転軸を中心に所定の回転方向に回転するとともに、前記像担持体に摺接する潤滑剤供給ローラと、
前記潤滑剤供給ローラに摺接する柱状かつ単層の固形潤滑剤と、
前記潤滑剤供給ローラに近づく付勢方向に前記固形潤滑剤を付勢する付勢部材と、
前記潤滑剤供給ローラと前記固形潤滑剤とが当接する位置から離れた前記固形潤滑剤の前記付勢方向の後端部を保持する保持部材と、
を備え、
前記固形潤滑剤は、新品状態であるときに、前記付勢方向の長さが前記潤滑剤供給ローラのローラ径よりも長く、前記回転方向の下流側に対応する側面から前記回転方向の上流側に対応する側面に至らない範囲に回転軸方向の全域にわたって前記付勢方向に間隔をあけて
複数の溝状の切欠きが形成されたものであることを特徴とする潤滑剤供給装置。
【請求項6】
前記複数の切欠きのうち最後端部の切欠きから前記保持部材までの前記付勢方向の長さが、前記潤滑剤供給ローラのローラ径よりも短く、
前記固形潤滑剤の前記付勢方向の先端部から前記複数の切欠きのうち最先端部の切欠きまでの前記付勢方向の長さが、前記潤滑剤供給ローラのローラ径よりも短く、
前記複数の切欠きの隣接する切欠きと切欠きとの前記付勢方向の長さが、前記潤滑剤供給ローラのローラ径よりも短いことを特徴とする請求項5に記載の潤滑剤供給装置。
【請求項7】
前記固形潤滑剤は、前記溝状の切欠きの位置まで消耗が進んだときに、前記潤滑剤供給ローラに接触せずに前記潤滑剤供給ローラに削られなかった部分が破断することを特徴とする請求項3~請求項6のいずれかに記載の潤滑剤供給装置。
【請求項8】
画像形成装置本体に対して着脱可能に設置されるプロセスカートリッジであって、
請求項1~請求項7のいずれかに記載の潤滑剤供給装置と前記像担持体とを備えたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項9】
請求項1~請求項7のいずれかに記載の潤滑剤供給装置と前記像担持体とを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、感光体ドラム、中間転写ベルトなどの像担持体の表面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置と、さらにそれを備えたプロセスカートリッジ及び画像形成装置と、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、プリンタ等の画像形成装置において、感光体ドラムや中間転写ベルト等の像担持体に当接するクリーニングブレードの磨耗・欠損や像担持体の劣化を低減するとともに、経時におけるクリーニング不良や像担持体の表面へのフィルミングの発生を抑止することを目的として、像担持体の表面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置を設置する技術が広く知られている(例えば、特許文献1等参照。)。
【0003】
詳しくは、潤滑剤供給装置は、クリーニングブレード(クリーニング装置)の下流側の位置で感光体ドラム(像担持体)に摺接する潤滑剤供給ローラ、潤滑剤供給ローラに摺接する固形潤滑剤、固形潤滑剤を保持する保持部材、固形潤滑剤を潤滑剤供給ローラに向けて付勢するバネ(付勢部材)、等で構成される。
そして、所定方向に回転する潤滑剤供給ローラによって固形潤滑剤から潤滑剤が徐々に削り取られて、潤滑剤供給ローラによって削り取られた潤滑剤が感光体ドラムの表面に塗布(供給)される。
【0004】
一方、特許文献1には、経時においても潤滑剤供給量を均一にすることを目的として、固形潤滑剤において、潤滑剤供給ローラの回転方向下流側に対応する位置に、潤滑剤供給ローラに接触しない非接触部を設ける技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術は、固形潤滑剤の消耗が進んでいくにつれて、潤滑剤供給ローラの回転方向下流側に対応する固形潤滑剤の部分(非接触部)が削られずに、徐々に像担持体(感光体ドラム)に近づいて、やがてその部分が像担持体に接触してしまう不具合が生じる可能性があった。
そして、そのように経時で固形潤滑剤の一部が像担持体に直接的に接触してしまうと、異常音が発生してしまう不具合などが生じてしまうことになる。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、経時で固形潤滑剤が像担持体に直接的に接触してしまう不具合が生じにくい、潤滑剤供給装置、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明における潤滑剤供給装置は、トナー像が担持される像担持体の表面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置であって、回転軸を中心に所定の回転方向に回転するとともに、前記像担持体に摺接する潤滑剤供給ローラと、前記潤滑剤供給ローラに摺接する柱状の固形潤滑剤と、前記潤滑剤供給ローラに近づく付勢方向に前記固形潤滑剤を付勢する付勢部材と、を備え、前記固形潤滑剤は、新品状態であるときに、前記付勢方向の長さが前記潤滑剤供給ローラのローラ径よりも長く、前記回転方向の下流側に対応する側面に前記付勢方向の先端部から中央部の第1位置まで断面積が同等であり前記第1位置から中央部の第2位置にかけて断面積が漸増する切欠きが回転軸方向の全域にわたって形成されたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、経時で固形潤滑剤が像担持体に直接的に接触してしまう不具合が生じにくい、潤滑剤供給装置、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】この発明の実施の形態における画像形成装置を示す全体構成図である。
【
図3】(A)新品状態の固形潤滑剤が設置された潤滑剤供給装置の要部と、(B)固形潤滑剤の消耗が進んだ潤滑剤供給装置の要部と、を示す図である。
【
図4】比較例としての、(A)新品状態の固形潤滑剤が設置された潤滑剤供給装置の要部と、(B)固形潤滑剤の消耗が進んだ潤滑剤供給装置の要部と、を示す図である。
【
図5】変形例1としての、新品状態の固形潤滑剤が設置された潤滑剤供給装置の要部を示す図である。
【
図6】変形例2としての、(A)新品状態の固形潤滑剤が設置された潤滑剤供給装置の要部と、(B)固形潤滑剤の消耗が進んだ潤滑剤供給装置の要部と、を示す図である。
【
図7】変形例3としての、新品状態の固形潤滑剤が設置された潤滑剤供給装置の要部を示す図である。
【
図8】変形例4としての、新品状態の固形潤滑剤が設置された潤滑剤供給装置の要部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0011】
まず、
図1にて、画像形成装置における全体の構成・動作について説明する。
本実施の形態における画像形成装置1は、複数の作像部としてのプロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKが中間転写ベルト17に対向するように並設されたタンデム型のカラー画像形成装置である。
【0012】
図1において、1は画像形成装置としてのカラー複写機、3は原稿を原稿読込部4に搬送する原稿搬送装置、4は原稿の画像情報を読み込む原稿読込部、6は入力画像情報に基づいたレーザ光を発する書込み部(露光部)、7は用紙等のシートPが収納される給紙装置、を示す。
また、10Y、10M、10C、10BKは各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した作像部としてのプロセスカートリッジ、17は複数色のトナー像が重ねて転写される中間転写ベルト、18は中間転写ベルト17上に形成されたトナー像をシートPに転写する2次転写ローラ、を示す。
また、20はシートP上の未定着画像を定着する定着装置、28は各プロセスカートリッジ(作像部)10Y、10M、10C、10BKの現像装置に各色のトナーを補給するためのトナー容器、を示す。
【0013】
ここで、各プロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BK(作像部)は、それぞれ、像担持体としての感光体ドラム11、帯電装置12、現像装置13、クリーニング装置15、潤滑剤供給装置16が一体化されたものである(
図2参照)。そして、各プロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKは、寿命に達したときに装置本体1に対して交換される。
各プロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKにおける感光体ドラム11(像担持体)上では、それぞれ、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のトナー像が形成される。
【0014】
以下、画像形成装置における、通常のカラー画像形成時の動作について説明する。
まず、原稿は、原稿搬送装置3の搬送ローラによって、原稿台から搬送されて、原稿読込部4のコンタクトガラス上に載置される。そして、原稿読込部4で、コンタクトガラス上に載置された原稿の画像情報が光学的に読み取られる。
そして、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像情報は、書込み部6に送信される。そして、書込み部6からは、各色の画像情報に基づいたレーザ光L(露光光)が、それぞれ、対応するプロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKの感光体ドラム11上に向けて照射される。
【0015】
一方、4つの感光体ドラム11は、それぞれ、図の時計方向に回転している。そして、まず、感光体ドラム11の表面は、帯電装置12(帯電ローラ)との対向位置で、一様に帯電される(帯電工程である。)。こうして、感光体ドラム11上には、帯電電位が形成される。その後、帯電された感光体ドラム11の表面は、それぞれのレーザ光Lの照射位置に達する。
書込み部6において、光源から画像信号に対応したレーザ光Lが各色に対応して射出される。レーザ光は、ポリゴンミラーに入射して反射した後に、複数のレンズを透過する。複数のレンズを透過した後のレーザ光は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色成分ごとに別の光路を通過することになる(露光工程である。)。
【0016】
イエロー成分に対応したレーザ光は、紙面左側から1番目のプロセスカートリッジ10Yの感光体ドラム11の表面に照射される。このとき、イエロー成分のレーザ光は、高速回転するポリゴンミラーにより、感光体ドラム11の回転軸方向(主走査方向)に走査される。こうして、帯電装置12にて帯電された後の感光体ドラム11上には、イエロー成分に対応した静電潜像が形成される。
【0017】
同様に、シアン成分のレーザ光は、紙面左から2番目のプロセスカートリッジ10Cの感光体ドラム11の表面に照射されて、シアン成分の静電潜像が形成される。マゼンタ成分に対応したレーザ光は、紙面左から3番目のプロセスカートリッジ10Mの感光体ドラム11の表面に照射されて、マゼンタ成分に対応した静電潜像が形成される。ブラック成分のレーザ光は、紙面左から4番目(中間転写ベルト17の走行方向に対して最も下流側である。)のプロセスカートリッジ10BKの感光体ドラム11の表面に照射されて、ブラック成分の静電潜像が形成される。
【0018】
その後、各色の静電潜像が形成された感光体ドラム11の表面は、それぞれ、現像装置13との対向位置に達する。そして、各現像装置13から感光体ドラム11上に各色のトナーが供給されて、感光体ドラム11上の潜像が現像される(現像工程である。)。
その後、現像工程後の感光体ドラム11の表面は、それぞれ、中間転写ベルト17との対向位置に達する。ここで、それぞれの対向位置には、中間転写ベルト17の内周面に当接するように1次転写ローラ14が設置されている。そして、1次転写ローラ14の位置で、中間転写ベルト17上に、感光体ドラム11上に形成された各色のトナー像が、順次重ねて転写される(1次転写工程である。)。
【0019】
そして、1次転写工程後の感光体ドラム11の表面は、それぞれ、クリーニング装置15との対向位置に達する。そして、クリーニング装置15で、感光体ドラム11上に残存する未転写トナーが回収される(クリーニング工程である。)。
その後、感光体ドラム11の表面は、潤滑剤供給装置16、除電装置の位置とを順次通過して、感光体ドラム11における一連の作像プロセスが終了する。
【0020】
他方、感光体ドラム11上の各色の画像が重ねて転写された中間転写ベルト17表面は、図中の矢印方向に走行して、2次転写ローラ18の位置に達する。そして、2次転写ローラ18の位置で、シートP上に中間転写ベルト17上のフルカラーの画像が2次転写される(2次転写工程である。)。
その後、中間転写ベルト17の表面は、中間転写ベルトクリーニング装置の位置に達する。そして、中間転写ベルト17上の未転写トナーが中間転写ベルトクリーニング装置に回収されて、中間転写ベルト17上の一連の転写プロセスが完了する。
【0021】
ここで、2次転写ローラ18の位置に搬送されるシートPは、給紙装置7から搬送ガイド、レジストローラ19等を経由して搬送されるものである。
詳しくは、シートPを収納する給紙装置7から、給紙ローラ8により給送されたシートPが、搬送ガイドを通過した後に、レジストローラ19に導かれる。レジストローラ19に達したシートPは、中間転写ベルト17上のトナー像とタイミングを合わせて、2次転写ローラ18の位置に向けて搬送される。
【0022】
その後、フルカラー画像が転写されたシートPは、定着装置20に導かれる。定着装置20では、定着ローラと加圧ローラとのニップにて、カラー画像がシートP上に定着される。
そして、定着工程後のシートPは、排紙ローラ29によって装置本体1外に出力画像として排出された後に、排紙部5上にスタックされて、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0023】
次に、
図2にて、画像形成装置の作像部について詳述する。
なお、
図2は黒色用の作像部としてのプロセスカートリッジ10BKを示す構成図である。黒色用のプロセスカートリッジ10BKと、カラー用のプロセスカートリッジ10Y、10M、10Cと、は、作像プロセスに用いられるトナーの色が異なる点を除き、ほぼ同じ構成部材によって構成されているため、カラー用のプロセスカートリッジ10Y、10M、10Cの図示と説明は適宜省略する。
【0024】
図2に示すように、プロセスカートリッジ10BKには、像担持体としての感光体ドラム11と、感光体ドラム11を帯電する帯電装置12(帯電ローラ)と、感光体ドラム11上に形成される静電潜像を現像する現像装置13と、感光体ドラム11上の未転写トナーを回収するクリーニング装置15と、感光体ドラム11上に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置16と、がケースに一体的に収納されている。
【0025】
ここで、像担持体としての感光体ドラム11は、負帯電性の有機感光体であって、ドラム状導電性支持体上に感光層等を設けたものである。
感光体ドラム11は、基層としての導電性支持体上に、絶縁層である下引き層、感光層としての電荷発生層及び電荷輸送層、保護層(表面層)が順次積層されている。
【0026】
帯電装置12は、導電性芯金の外周に中抵抗の弾性層を被覆してなる帯電ローラであって、潤滑剤供給装置16に対して感光体ドラム11の回転方向下流側に配設されている
そして、帯電装置12には電源部から所定の電圧が印加されて、これにより対向する感光体ドラム11の表面を一様に帯電する。
【0027】
現像装置13は、主として、感光体ドラム11に対向する現像ローラ13aと、現像ローラ13aに対向する第1搬送スクリュ13b1と、仕切部材を介して第1搬送スクリュ13b1に対向する第2搬送スクリュ13b2と、現像ローラ13aに対向するドクターブレード13cと、で構成される。現像ローラ13aは、内部に固設されてローラ周面に磁極を形成するマグネットと、マグネットの周囲を回転するスリーブと、で構成される。マグネットによって現像ローラ13a(スリーブ)上に複数の磁極が形成されて、現像ローラ13a上に現像剤が担持されることになる。
現像装置13内には、キャリアとトナーとからなる2成分現像剤が収容されている。
【0028】
クリーニング装置15は、潤滑剤供給装置16に対して感光体ドラム11の回転方向上流側に配設されている。クリーニング装置15には、感光体ドラム11に当接するクリーニングブレード15a、クリーニング装置15内に回収されたトナーを廃トナーとして廃トナー回収容器に向けて搬送する搬送コイル15b、等が設置されている。クリーニングブレード15aは、ウレタンゴム等のゴム材料からなり、感光体ドラム11の表面に所定角度かつ所定圧力で当接している。これにより、感光体ドラム11上に付着する未転写トナー等の付着物が機械的に掻き取られてクリーニング装置15内に回収されることになる。ここで、感光体ドラム11上に付着する付着物としては、未転写トナーの他に、シートP(用紙)から生じる紙粉、帯電装置12による放電時に感光体ドラム11上に生じる放電生成物、トナーに添加されている添加剤、等がある。
【0029】
潤滑剤供給装置16は、固形潤滑剤16b、感光体ドラム11と固形潤滑剤16bとに摺接する潤滑剤供給ローラ16a、固形潤滑剤16bを保持する保持部材16f、保持部材16fを固形潤滑剤16bとともに収納するケース16g、保持部材16fとともに固形潤滑剤16bを潤滑剤供給ローラ16aに向けて付勢する付勢部材としての圧縮スプリング16c(加圧機構)、潤滑剤供給ローラ16aによって感光体ドラム11上に供給された潤滑剤を薄層化する薄層化ブレード16d、等で構成される。
このように構成された潤滑剤供給装置16によって、感光体ドラム11上に薄層化された潤滑剤が供給される。なお、潤滑剤供給装置16の構成・動作については、後で詳しく説明する。
【0030】
図2にて、先に述べた作像プロセスをさらに詳しく説明する。
現像ローラ13aは、
図2中の矢印方向(反時計方向)に回転している。現像装置13内の現像剤は、間に仕切部材を介在するように配設された第1搬送スクリュ13b1及び第2搬送スクリュ13b2の回転によって、トナー容器28から補給されたトナーとともに撹拌混合されながら長手方向に循環する(
図2の紙面垂直方向である。)。
【0031】
そして、摩擦帯電してキャリアに吸着したトナーは、キャリアとともに現像ローラ13a上に担持される。現像ローラ13a上に担持された現像剤は、その後にドクターブレード13cの位置に達する。そして、現像ローラ13a上の現像剤は、ドクターブレード13cの位置で適量に調整された後に、感光体ドラム11との対向位置(現像領域である。)に達する。
【0032】
その後、現像領域において、現像剤中のトナーが、感光体ドラム11の表面に形成された静電潜像に付着する。詳しくは、レーザ光Lが照射された画像部の潜像電位(露光電位)と、現像ローラ13aに印加された現像バイアスとの、電位差(現像ポテンシャル)によって形成される電界によって、トナーが潜像に付着する(トナー像が形成される)。
【0033】
その後、現像工程にて感光体ドラム11に付着したトナーは、そのほとんどが中間転写ベルト17上に転写される。そして、感光体ドラム11上に残存した未転写のトナーが、クリーニングブレード15aによってクリーニング装置15内に回収される。
【0034】
ここで、装置本体1に設けられたトナー補給装置は、交換自在に構成されたボトル状のトナー容器28と、トナー容器28を保持・回転駆動するとともに現像装置13に新品トナーを補給するトナーホッパ部と、で構成されている。また、トナー容器28内には、新品のトナー(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのいずれかである。)が収容されている。また、トナー容器28(トナーボトル)の内周面には、螺旋状の突起が形成されている。
【0035】
なお、トナー容器28内の新品トナーは、現像装置13内のトナー(既設のトナーである。)の消費にともない、トナー補給口から現像装置13内に適宜に補給されるものである。図示は省略するが、現像装置13内のトナーの消費は、感光体ドラム11に対向する反射型フォトセンサと、現像装置13の第2搬送スクリュ13b2の下方に設置された磁気センサと、によって間接的又は直接的に検知される。
【0036】
以下、本実施の形態における、潤滑剤供給装置16の構成・動作について詳しく説明する。
図2を参照して、潤滑剤供給装置16は、潤滑剤供給ローラ16a、固形潤滑剤16b、付勢部材としての圧縮スプリング16c、保持部材16f、ケース16g、薄層化ブレード16d、等で構成される。
潤滑剤供給装置16は、クリーニング装置15(クリーニングブレード15a)に対して感光体ドラム11の回転方向下流側であって、帯電装置12に対して感光体ドラム11の回転方向上流側に配設されている。また、薄層化ブレード16dは、潤滑剤供給ローラ16aに対して感光体ドラム11の回転方向下流側に配設されている。
【0037】
潤滑剤供給ローラ16aは、金属材料からなる軸部(芯金)上に発泡ポリウレタンからなる発泡弾性層が形成されたローラ部材であって、その発泡弾性層が感光体ドラム11の表面に接触した状態で所定の回転方向(
図2の時計方向である。)に回転駆動される。これにより、固形潤滑剤16bから潤滑剤供給ローラ16aを介して感光体ドラム11上に潤滑剤が供給される。
また、潤滑剤供給ローラ16aは、固形潤滑剤16bと感光体ドラム11とに摺接するように配置されていて、潤滑剤供給ローラ16aが回転することによって固形潤滑剤16bから潤滑剤を掻き取り、その潤滑剤を感光体ドラム11上に塗布する。
【0038】
固形潤滑剤16bは、潤滑剤供給ローラ16aに摺接するものであって、柱状に形成されている。
詳しくは、固形潤滑剤16bは、脂肪酸金属亜鉛に無機潤滑剤を含有させて形成したものである。また、脂肪酸金属亜鉛としては、少なくともステアリン酸亜鉛を含んだものが好ましい。また、無機潤滑剤としては、タルク、マイカ、窒化ホウ素のうち少なくとも1つであることが好ましい。
ステアリン酸亜鉛は、代表的なラメラ結晶紛体である。ラメラ結晶は両親媒性分子が自己組織化した層状構造を有していて、せん断力が加わると層間にそって結晶が割れて滑りやすい。したがって、感光体ドラム11の表面を低摩擦係化することができる。すなわち、せん断力を受けて均一に感光体ドラム11の表面を覆っていくラメラ結晶によって、少量の潤滑剤によって効果的に感光体ドラム11の表面を覆うことができる。そして、感光体ドラム11の表面を比較的均等に覆い帯電工程における電気的ストレスから良好に保護できることになる。
また、タルク、マイカ、窒化ホウ素のような板状構造を有する無機潤滑剤を使用することで、クリーニング装置15(クリーニングブレード15a)でのトナーや潤滑剤のすり抜けが生じにくくなり、帯電装置12を汚れにくくすることができる。
【0039】
付勢部材としての圧縮スプリング16cは、潤滑剤供給ローラ16aに近づく付勢方向(
図3の黒矢印方向である。)に固形潤滑剤16bを付勢するものである。
詳しくは、固形潤滑剤16bの後端部(付勢方向の後端部である。)には、潤滑剤供給ローラ16aと固形潤滑剤16bとの接触ムラをなくすために、保持部材16fを介して圧縮スプリング16c(付勢部材)が配置されていて、固形潤滑剤16bを潤滑剤供給ローラ16aに向けて付勢している。
【0040】
保持部材16fは、潤滑剤供給ローラ16aと固形潤滑剤16bとが当接する位置から離れた固形潤滑剤16bの後端部(付勢方向の後端部である。)を保持するものである。すなわち、保持部材16fは、付勢方向の後方で固形潤滑剤16bを支持している。
ケース16gは、保持部材16fと固形潤滑剤16bとを付勢方向にスライド移動可能に収納するものである。また、ケース16gの内壁面(保持部材16fに対向する対向面である。)には、圧縮スプリング16cの一端側が接続されている。また、圧縮スプリング16cの他端側は、保持部材16fに接続されている。このような構成により、固形潤滑剤16bの消耗が進むと、圧縮スプリング16cによる付勢によって、ケース16g内で保持部材16fが潤滑剤供給ローラ16aに近づく方向にスライド移動することになる。
【0041】
薄層化ブレード16dは、ウレタンゴム等のゴム材料からなる板状部材であって、感光体ドラム11の表面に所定角度かつ所定圧力で当接している。薄層化ブレード16dは、クリーニングブレード14aに対して、感光体ドラム11の回転方向下流側(走行方向下流側)に配設されている。そして、潤滑剤供給ローラ16aによって感光体ドラム11上に供給された潤滑剤は、薄層化ブレード16dによって、感光体ドラム11上に均一かつ適量に薄層化される。
固形潤滑剤16bを潤滑剤供給ローラ16aを介して感光体ドラム11の表面に塗布すると、感光体ドラム11の表面には粉体状の潤滑剤が塗布されるが、この状態のままでは潤滑性は充分に発揮されないため、薄層化ブレード16dが潤滑剤を薄層化・均一化する部材として機能することになる。薄層化ブレード16dにより、感光体ドラム11上での潤滑剤の皮膜化がおこなわれて、潤滑剤はその潤滑性を充分に発揮することになる。
【0042】
以下、
図3等を用いて、本実施の形態における潤滑剤供給装置16における特徴的な構成・動作について詳述する。
なお、
図3(及び、後述の
図4~
図8)は、簡単のため、潤滑剤供給装置16の一部のみを図示するとともに、感光体ドラム11に対する回転方向の姿勢を変えて図示している。
【0043】
図3(A)に示すように、本実施の形態における固形潤滑剤16bは、新品状態であるときに、付勢方向の長さMが潤滑剤供給ローラのローラ径Rよりも長く(M>R)、回転方向の下流側に対応する側面16b5であって付勢方向の一部に切欠き16b1(小断面部)が形成されたものである。
詳しくは、本実施の形態において、固形潤滑剤16bの切欠き16b1は、付勢方向の先端部(
図3(A)の上端)から中央部にかけて破線で示す部分が切欠かれたものである。具体的に、本実施の形態における固形潤滑剤16bは、四角柱状の固形潤滑剤に対して、下流側の側面16b5を先端部から中央部にかけて、回転軸方向に直交する断面で直線状(三角状)に切欠いたものである。したがって、切欠き16b1を立体的にみると、直角四角錐状の切欠きとなる。さらに換言すると、固形潤滑剤16bの切欠き16b1が形成された断面(付勢方向に直交する断面であって、小断面部である。)は、下流側側面16b5の先端部から中央部まで断面積が比例的に漸増するように形成されている。
【0044】
そして、そのように形成された固形潤滑剤16bは、潤滑剤供給ローラ16aの回転にともない
図3の白矢印方向に力を受けて、ケース16g内のガタ分だけ白矢印方向にずれた状態で潤滑剤供給ローラ16aに摺接することになる。そして、固形潤滑剤16bは、経時で消耗(削れ)が進むと、やがて
図3(B)に示すような状態になる。
【0045】
なお、本実施の形態では、四角柱状の固形潤滑剤に対して2次加工を施して切欠き16bを形成したが、初めから金型を用いて
図3(A)のような切欠き16bが形成された固形潤滑剤16bを製造することもできる。そして、本願明細書等では、そのような製造方法の違いに関わらず、柱状の固形潤滑剤に付された切欠き状の部分を「切欠き」というものと定義する。
また、本願明細書等において、固形潤滑剤の「新品状態」とは、リサイクル品であるか否かや製造工程や保管状態などに関わらず、そのものが潤滑剤供給装置において使用が開始される前の状態であるものと定義する。
【0046】
このように、固形潤滑剤16bの下流側側面16b5の一部に切欠き16b1を設けることで、経時で固形潤滑剤16bが感光体ドラム11に直接的に接触してしまう不具合が生じにくくなる。
詳しくは、
図4(A)に示す比較例としての潤滑剤供給装置116のように、新品状態の固形潤滑剤116bが切欠きのない柱状のものである場合も、潤滑剤供給ローラ16aの回転にともない
図4の白矢印方向に力を受けて、ケース16g内のガタ分だけ白矢印方向にずれた状態で潤滑剤供給ローラ16aに摺接することになる。そのため、比較例としての潤滑剤供給装置116に設置された固形潤滑剤116bは、その回転方向下流側の側面116b5の側の部分が、潤滑剤供給ローラ16aに接触せずにほとんど削られない領域となってしまう。したがって、
図4(B)に示すように、固形潤滑剤116bの消耗が進んでいくにつれて、その削られない部分(破線で囲んだ部分である。)が徐々に大きくなって、感光体ドラム11に近づいて、やがてその部分が感光体ドラム11に接触してしまうことになる。そして、そのように経時で固形潤滑剤116bの一部が感光体ドラム11に直接的に接触してしまうと、異常音が発生してしまう不具合などが生じてしまうことになる。
これに対して、本実施の形態における潤滑剤供給装置16は、固形潤滑剤16bの下流側側面16b5に断面が小さな切欠き16b1(小断面部)が形成されているため、潤滑剤供給ローラ16aに接触せずに削られない領域が形成されにくくなる。したがって、
図3(B)に示すように、固形潤滑剤16bの消耗が進んでいっても、下流側側面16b5の一部が感光体ドラム11に接触してしまう不具合が生じにくくなる。そのため、経時で固形潤滑剤16bの一部が感光体ドラム11に直接的に接触して異常音が発生してしまう不具合なども生じにくくなる。
【0047】
ここで、
図3(A)を参照して、本実施の形態では、切欠き16b1の中央部の側の端部から保持部材16f(又は、固形潤滑剤16bの付勢方向後端部)までの付勢方向の長さNが、潤滑剤供給ローラ16aのローラ径Rよりも短くなるように構成している(N<R)。
柱状の固形潤滑剤16bにおいて断面(付勢方向に直交する断面である。)の面積が大きな部分(切欠き16b1が形成されていない部分である。)は、その部分が潤滑剤供給ローラ16aに当接するときに潤滑剤供給ローラ16aに当接せずに削られない部分が生じ得るため、その部分の付勢方向の長さNが長いと、その部分がやがて感光体ドラム11に直接的に接触してしまうことになる。そのような不具合を防止するため、大断面部の付勢方向の長さNを潤滑剤供給ローラ16aのローラ径Rよりも短く設定している。すなわち、大断面部の下流側側面16b5の一部が削られずに付勢方向に長くなっても、その長さは最大でもローラ径Rを超えずに、感光体ドラム11に接触しないことになる。したがって、上述した本発明の効果がさらに発揮されることになる。
【0048】
ここで、本実施の形態において、固形潤滑剤16bの消耗(削れ)が進んで切欠き16b1が形成された部分が潤滑剤供給ローラ16aに当接したときに、その部分の付勢方向に直交する断面(小断面部)のすべてが潤滑剤供給ローラ16aに当接することが好ましい。
これにより、固形潤滑剤16bの小断面部が潤滑剤供給ローラ16aに当接しているときには、下流側側面16b5の側に削られない領域が形成されないことになるため、経時で固形潤滑剤16bの一部が感光体ドラム11に直接的に接触してしまう不具合が生じにくくなる。
【0049】
<変形例1>
図5に示すように、変形例1における潤滑剤供給装置16は、新品状態の固形潤滑剤16bの切欠き16b1の形状が、本実施の形態のものと相違する。
具体的に、
図5(A)に示す固形潤滑剤16bの切欠き16b1(小断面部)は、下流側側面16b5の先端部から中央部の途中まで断面積が同等になり、その位置から中央部の端部に向けた短い領域で断面積が漸増するように形成されている。
また、
図5(B)に示す固形潤滑剤16bの切欠き16b1(小断面部)は、下流側側面16b5の先端部から中央部まで断面積が2次曲線的にゆるやかに増加するように形成されている。
また、いずれの固形潤滑剤16bも、本実施の形態のものと同様に、大断面部の付勢方向の長さNが潤滑剤供給ローラ16aのローラ径Rよりも短くなるように設定している(N<R)。
このように構成された変形例1においても、本実施の形態のものと同様に、経時で固形潤滑剤16bの一部が感光体ドラム11に直接的に接触してしまう不具合を生じにくくすることができる。
【0050】
<変形例2>
図6(A)に示すように、変形例2における潤滑剤供給装置16も、新品状態の固形潤滑剤16bの切欠き16b1の形状が、本実施の形態のものと相違する。
図6(A)に示すように、新品状態の固形潤滑剤16bの切欠き16b1は、付勢方向の中央部に溝状(略矩形の溝状)に切欠かれたものである。
したがって、固形潤滑剤16bは、先端部から切欠き16b1までが大断面部となり、切欠き16b1が形成された部分が小断面部となり、切欠き16b1から後端部(保持部材16f)までが大断面部となっている。
このように構成された固形潤滑剤16bも、
図6(A)に示す新品状態であるときから潤滑剤供給ローラ16aの回転にともない
図6(A)の白矢印方向に力を受けて、ケース16g内のガタ分だけ白矢印方向にずれた状態で潤滑剤供給ローラ16aに摺接することになる。そして、固形潤滑剤16bの下流側側面16b5の側が、潤滑剤供給ローラ16aに接触せずにほとんど削られない領域となってしまう。そして、固形潤滑剤116bの消耗が進んでいくにつれて、その削られない部分が徐々に感光体ドラム11に近づくように長くなっていく。しかし、固形潤滑剤116bの消耗がさらに進んで、切欠き16b1が形成された小断面部が潤滑剤供給ローラ16aに摺接すると、
図6(B)に示すように、上述した削られない部分16b2が破断されて、プロセスカートリッジ10BKのケース内に落下することになる。したがって、
図6(B)に示すように、固形潤滑剤16bの消耗が進んでいっても、下流側側面16b5の側の一部が感光体ドラム11に接触してしまう不具合が生じないことになる。
ここで、変形例2では、
図6(A)に示すように、切欠き16b1から保持部材16f(又は、固形潤滑剤16bの後端部)までの付勢方向の長さN1が、潤滑剤供給ローラ16aのローラ径Rよりも短くなるように設定されている(N1<R)。これにより、
図6(B)の状態からさらに固形潤滑剤16bの消耗が進んでも、下流側側面16b5の側の一部が感光体ドラム11に接触してしまう不具合が生じないことになる。
また、
図6(A)に示すように、固形潤滑剤16bの付勢方向の先端部から切欠き16b1までの付勢方向の長さN2が、潤滑剤供給ローラ16aのローラ径Rよりも短くなるように設定されている(N2<R)。これにより、
図6(A)の新品状態から固形潤滑剤16bの消耗が進んでも、削れない部分16b2が感光体ドラム11に接触する前に脱落することになる。
このように構成された変形例2においても、本実施の形態のものと同様に、経時で固形潤滑剤16bの一部が感光体ドラム11に直接的に接触してしまう不具合を生じにくくすることができる。
【0051】
<変形例3>
図7に示すように、変形例3における潤滑剤供給装置16は、新品状態の固形潤滑剤16bに形成する溝状の切欠き16b1の形状が、前記変形例2のものと相違する。
具体的に、
図7(A)に示す固形潤滑剤16bの切欠き16b1(小断面部)は、略楔状に形成されている。
また、
図7(B)に示す固形潤滑剤16bの切欠き16b1(小断面部)は、略半楕円状に形成されている。
また、いずれの固形潤滑剤16bも、前記変形例2のものと同様に、切欠き16b1を挟んだ後端側と先端側との付勢方向の長さN1、N2がいずれも潤滑剤供給ローラ16aのローラ径Rよりも短くなるように設定している(N1<R、N2<R)。
このように構成された変形例3においても、前記変形例2のものと同様に、経時で固形潤滑剤16bの側の一部が感光体ドラム11に直接的に接触してしまう不具合を生じにくくすることができる。
【0052】
<変形例4>
図8に示すように、変形例4における潤滑剤供給装置16は、新品状態の固形潤滑剤16bに形成した溝状の切欠き16b1の数が、前記変形例2、3のものと相違する。
図8に示すように、新品状態の固形潤滑剤16bの切欠き16b1は、付勢方向に間隔をあけて切欠かれた複数の切欠きである。具体的に、固形潤滑剤16bの下流側側面16b5に、2つの切欠き16b1が付勢方向に間隔をあけて形成されている。
このように構成された固形潤滑剤16bは、固形潤滑剤16bの付勢方向の長さMが長くても、固形潤滑剤116bの消耗が進んでいって、その削られない部分が長くなってしっても、切欠き16b1が形成された小断面部が潤滑剤供給ローラ16aに摺接する位置に達するたびに、その削られない部分が破断されることになる。したがって、固形潤滑剤16bの消耗が進んでいっても、下流側側面16b5の側の一部が感光体ドラム11に接触してしまう不具合が生じないことになる。
ここで、変形例4では、
図8に示すように、複数の切欠き16b1のうち最後端部の切欠き16b1から保持部材16f(又は、固形潤滑剤16bの後端部)までの付勢方向の長さN1が、潤滑剤供給ローラ16aのローラ径Rよりも短くなるように設定されている(N1<R)。これにより、固形潤滑剤16bの消耗が進んで、残りの固形潤滑剤16bが領域N1の部分だけになった後も、下流側側面16b5の側の一部が感光体ドラム11に接触してしまう不具合が生じないことになる。
また、
図8に示すように、固形潤滑剤16bの付勢方向の先端部から複数の切欠き16b1のうち最先端部の切欠き16b1までの付勢方向の長さN2が、潤滑剤供給ローラ16aのローラ径Rよりも短くなるように設定されている(N2<R)。これにより、
図8の新品状態から固形潤滑剤16bの消耗が進んでも、削れない部分が感光体ドラム11に接触する前に脱落することになる。
また、
図8に示すように、複数の切欠き16b1の隣接する切欠き16b1と切欠き16b1との付勢方向の長さN3が、潤滑剤供給ローラ16aのローラ径Rよりも短くなるように設定されている(N3<R)。これにより、隣接する2つの切欠き16b1の間で固形潤滑剤16bの消耗が進んでも、削れない部分が感光体ドラム11に接触する前に脱落することになる。
このように構成された変形例4においても、前記変形例2、3のものと同様に、経時で固形潤滑剤16bの一部が感光体ドラム11に直接的に接触してしまう不具合を生じにくくすることができる。
なお、変形例4では、付勢方向の離れた位置に2つの切欠き16b1を形成したが、切欠き16b1の数はこれに限定されず、3つ以上とすることもできる。
【0053】
以上説明したように、本実施の形態における潤滑剤供給装置16は、所定の回転方向に回転するとともに感光体ドラム11(像担持体)に摺接する潤滑剤供給ローラ16aと、潤滑剤供給ローラ16aに摺接する柱状の固形潤滑剤16bと、潤滑剤供給ローラ16aに近づく付勢方向に固形潤滑剤16bを付勢する圧縮スプリング16c(付勢部材)と、が設けられている。そして、固形潤滑剤16bは、新品状態であるときに、付勢方向の長さMが潤滑剤供給ローラ16aのローラ径Rよりも長く、回転方向の下流側に対応する側面16b5であって付勢方向の一部に切欠き16b1が形成されている。
これにより、経時で固形潤滑剤16bが感光体ドラム11に直接的に接触してしまう不具合が生じにくくなる。
【0054】
なお、本実施の形態では、作像部における各部(感光体ドラム11、帯電装置12、現像装置13、クリーニング装置15、潤滑剤供給装置16である。)を一体化してプロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKを構成して、作像部のコンパクト化とメンテナンス作業性の向上とを図っている。
これに対して、作像部における各部11、12、13、15、16をプロセスカートリッジの構成部材とせずに、それぞれ単体で装置本体1に交換自在に設置されるように構成することもできる。このような場合にも、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
なお、本願において、「プロセスカートリッジ」とは、像担持体を帯電する帯電装置と、像担持体上に形成された潜像を現像する現像装置と、像担持体上をクリーニングするクリーニング装置と、のうち少なくとも1つと、像担持体と、が一体化されて、画像形成装置本体に対して着脱可能に設置されるユニットと定義する。
【0055】
また、本実施の形態では、カラー画像形成装置1に設置された潤滑剤供給装置16に対して本発明を適用した。これに対して、モノクロ画像形成装置に設置された潤滑剤供給装置に対しても、当然に本発明を適用することができる。
また、本実施の形態では、像担持体としての感光体ドラム11上に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置16に対して本発明を適用したが、感光体ドラム11以外の像担持体に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置(例えば、中間転写ベルト17に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置である。)に対しても当然に本発明を適用することができる。
また、本実施の形態では、クリーニングブレード15a(クリーニング装置15)の下流側に設置された潤滑剤供給装置16に対して本発明を適用したが、クリーニングブレード15aの上流側に潤滑剤供給装置を設置した場合であっても、その潤滑剤供給装置に対して本発明を適用することができる。
そして、それらのような場合であっても、本実施の形態のものと同様の効果を得ることができる。
【0056】
また、本実施の形態では、潤滑剤供給ローラ16aとして芯金上に発泡弾性層が形成されたものを用いたが、潤滑剤供給ローラ16aとして芯金の外周に直毛状又はループ状のブラシ毛が巻装されたものを用いることもできる。その場合、ブラシ毛としては、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、アクリル、ビニロン、塩化ビニル等の樹脂繊維を用いることができ、必要に応じてカーボン等の導電付与剤が混入された導電繊維を用いることができる。また、ブラシ毛は、長さ(毛足)が0.2~20mm、ブラシ密度が2~10万F/inch2のものを用いることができる。
また、本実施の形態では、潤滑剤供給ローラ16aに対して固形潤滑剤16bを付勢する付勢部材として圧縮スプリング16cを用いたが、付勢部材の構成はこれに限定されることなく、種々の形態のものを用いることもできる。
そして、それらのような場合であっても、本実施の形態のものとほぼ同様の効果を得ることができる。
【0057】
なお、本発明が本実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、本実施の形態の中で示唆した以外にも、本実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 画像形成装置(画像形成装置本体)、
11 感光体ドラム(像担持体)、
16 潤滑剤供給装置、
16a 潤滑剤供給ローラ、
16b 固形潤滑剤、
16b1 切欠き、
16c 圧縮スプリング(付勢部材)、
16f 保持部材、
16g ケース。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0059】