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  • 特許-イソシアネート化合物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】イソシアネート化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 263/10 20060101AFI20240229BHJP
   C07C 265/12 20060101ALI20240229BHJP
   C07C 265/04 20060101ALI20240229BHJP
   C07C 265/14 20060101ALI20240229BHJP
   C07C 319/20 20060101ALI20240229BHJP
   C07C 323/43 20060101ALI20240229BHJP
   C07F 7/18 20060101ALI20240229BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
C07C263/10
C07C265/12
C07C265/04
C07C265/14
C07C319/20
C07C323/43
C07F7/18 P
C08G18/32 003
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020556160
(86)(22)【出願日】2019-11-14
(86)【国際出願番号】 JP2019044666
(87)【国際公開番号】W WO2020100971
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2018214988
(32)【優先日】2018-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津田 明彦
(72)【発明者】
【氏名】岡添 隆
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第17/104709(WO,A1)
【文献】特開2013-181028(JP,A)
【文献】国際公開第2015/156245(WO,A1)
【文献】入江喜一,ホスゲンの製造と利用,燃料協会誌,1960年,Vol.39,No.400,pp.575-583
【文献】ALAPI, T. et al.,Direct VUV photolysis of chlorinated methanes and their mixtures in an oxygen stream using an ozone,Chemosphere,2007年,Vol.67,pp.693-701
【文献】河合聰,クロロホルムの分解に関する考察,薬学雑誌,1966年,Vol.86,No.12,pp.1125-1132
【文献】KUWAHARA, Y. et al.,Photochemical molecular storage of Cl2, HCl, and COCl2 : Synthesis of organochlorine compounds, salt,Org. Lett.,2012年,Vol.14, No.13,pp.3376-3379
【文献】HAUTECLOQUE,S.,On the photooxidation of gaseous HCCl3 and ClO radical formation,Journal of Photochemisty,1980年,Vol.14,pp.157-165
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン化メタンに、酸素存在下、15℃以下の温度で高エネルギー光を照射する工程、および、
更に第一級アミン化合物を添加し、上記高エネルギー光を照射せずに反応させる工程を含むことを特徴とするイソシアネート化合物の製造方法。
【請求項2】
上記温度が5℃以下である請求項1に記載のイソシアネート化合物の製造方法。
【請求項3】
上記アミン化合物に加えて、塩基を添加する請求項1または2に記載のイソシアネート化合物の製造方法。
【請求項4】
上記塩基が有機塩基である請求項3に記載のイソシアネート化合物の製造方法。
【請求項5】
上記有機塩基が、ピリジン、ピコリンおよびルチジンから選択される1以上の複素環式芳香族アミンである請求項4に記載のイソシアネート化合物の製造方法。
【請求項6】
上記有機塩基が、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エンおよび1,1,3,3-テトラメチルグアニジンから選択される1以上の非求核性強塩基である請求項4に記載のイソシアネート化合物の製造方法。
【請求項7】
上記高エネルギー光が180nm以上、280nm以下の波長の光を含むものである請求項1~6のいずれかに記載のイソシアネート化合物の製造方法。
【請求項8】
上記ハロゲン化メタンにおけるハロゲノ基が、クロロ、ブロモおよびヨードから選択される1以上のハロゲノ基である請求項1~7のいずれかに記載のイソシアネート化合物の製造方法。
【請求項9】
上記ハロゲン化メタンがクロロホルムである請求項8に記載のイソシアネート化合物の製造方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の方法により、2以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を製造する工程、および、
上記ポリイソシアネート化合物を含む上記工程の反応液にポリオール化合物を添加する工程を含むことを特徴とするポリウレタンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソシアネート化合物を安全かつ効率的に製造できる方法、および当該方法を利用したポリウレタンの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
イソシアネート基(-N=C=O)を有するイソシアネート化合物は反応性が極めて高く、ポリウレタンなどの原料として非常に有用である。イソシアネート化合物は、一般的に、アミン化合物とホスゲンを反応させて合成される(特許文献1等)。
【0003】
しかしホスゲンは水と容易に反応して塩化水素を発生させたり、毒ガスとして利用された歴史があるなど有毒なものである。ホスゲンは主として、活性炭触媒の存在下、無水塩素ガスと高純度一酸化炭素との高発熱気相反応によって製造される。ここで用いる塩素ガスや一酸化炭素も有毒である。ホスゲンの基本的な製造プロセスは、1920年代から大きく変わっていない。そのようなプロセスによるホスゲンの製造には、高価で巨大な設備が必要である。しかし、ホスゲンの高い毒性のために、幅広い安全性の確保はプラント設計に不可欠であり、それが製造コストの増大につながる。また、ホスゲンの大規模製造プロセスは、多くの環境問題を引き起こすおそれがある。その他、ホスゲンはトリホスゲンをトリエチルアミン等の塩基により分解して製造される。しかし、トリホスゲンは高価な試薬であるし、何らかの物理刺激もしくは化学刺激でホスゲンに分解する潜在的危険性を持ち、また自身も高い毒性を有することが知られている。
【0004】
本発明者は、ハロゲン化炭化水素に酸素存在下で光照射してホスゲン等の化合物を得る方法を開発している(特許文献2)。特許文献2には、発生した化合物を別の反応容器に導入する方法が記載されているが、ハロゲン化炭化水素と原料化合物を共存させておき、生成した化合物と原料化合物を1つの反応容器内で反応させる方法も記載されている。
【0005】
また、本発明者は、ハロゲン化炭化水素とアルコールとを含む混合物に、酸素存在下で光照射することを特徴とするハロゲン化カルボン酸エステルの製造方法を開発している(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2017/104709号パンフレット
【文献】特開2013-181028号公報
【文献】国際公開第2015/156245号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、本発明者は、より安全にホスゲンを利用する方法を開発している。しかし特許文献2に記載の方法では、例えば原料化合物として第一級アミン化合物を用いると尿素誘導体やポリ尿素まで反応が進行してしまい、イソシアネート化合物を得ることができない。
また、特許文献3に記載の方法では、ハロゲン化炭化水素に対して比較的少量のアルコールを用いることにより、カーボネートの生成を抑制してハロゲン化ギ酸エステルを得ている。しかし特許文献3には、原料化合物としてアルコール化合物が用いられており、第一級アミン化合物の使用は示唆されていない。
そこで本発明は、イソシアネート化合物を安全かつ効率的に製造できる方法と、当該方法を利用したポリウレタンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。従来、ハロゲン化メタンを分解してホスゲンを得るには光と共に熱も必要であるので、低温ではホスゲンは生成せず、また、ホスゲンは多量の酸素の存在下で光照射すると容易に分解して、一酸化炭素、二酸化炭素、塩素などを与えると考えられていた。しかし本発明者の実験的知見によれば、意外にも比較的低温でもホスゲンは発生し、且つ生成したホスゲンは容易には分解しない。また、比較的低温であれば、ホスゲンの常圧での沸点は8.3℃であるので、系外に漏出する懸念も低い。よって本発明者は、先ず比較的低温でハロゲン化カルボニル化合物を生成させておき、そこへ第一級アミン化合物を添加することにより、イソシアネート化合物を安全かつ効率的に製造できることを見出して、本発明を完成した。
以下、本発明を示す。
【0009】
[1] ハロゲン化メタンに、酸素存在下、15℃以下の温度で高エネルギー光を照射する工程、および、
更に第一級アミン化合物を添加し、上記高エネルギー光を照射せずに反応させる工程を含むことを特徴とするイソシアネート化合物の製造方法。
[2] 上記温度が5℃以下である上記[1]に記載のイソシアネート化合物の製造方法。
[3] 上記アミン化合物に加えて、塩基を添加する上記[1]または[2]に記載のイソシアネート化合物の製造方法。
[4] 上記塩基が有機塩基である上記[3]に記載のイソシアネート化合物の製造方法。
[5] 上記有機塩基が、ピリジン、ピコリンおよびルチジンから選択される1以上の複素環式芳香族アミンである上記[4]に記載のイソシアネート化合物の製造方法。
[6] 上記有機塩基が、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エンおよび1,1,3,3-テトラメチルグアニジンから選択される1以上の非求核性強塩基である上記[4]に記載のイソシアネート化合物の製造方法。
[7] 上記高エネルギー光が180nm以上、280nm以下の波長の光を含むものである上記[1]~[6]のいずれかに記載のイソシアネート化合物の製造方法。
[8] 上記ハロゲン化メタンにおけるハロゲノ基が、クロロ、ブロモおよびヨードから選択される1以上のハロゲノ基である上記[1]~[7]のいずれかに記載のイソシアネート化合物の製造方法。
[9] 上記ハロゲン化メタンがクロロホルムである上記[8]に記載のイソシアネート化合物の製造方法。
[10] 上記[1]~[9]のいずれかに記載の方法により、2以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を製造する工程、および、
上記ポリイソシアネート化合物を含む上記工程の反応液にポリオール化合物を添加する工程を含むことを特徴とするポリウレタンの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明方法では、ホスゲンや一酸化炭素といった毒性が極めて高い化合物や、高価な触媒を原料化合物として使う必要が無い。また、ホスゲンが系外に漏出する可能性も比較的低く、また、イソシアネート化合物が高収率で得られ、延いては得られたイソシアネート化合物を利用してポリウレタン等を効率的に製造できる。よって本発明方法は、有用なイソシアネート化合物を安全且つ効率的に製造できる技術として、産業上極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明方法で用いられる反応装置の構成の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.ハロゲン化メタンの分解工程
本工程では、ハロゲン化メタンに、酸素存在下、15℃以下の温度で高エネルギー光を照射することにより、ハロゲン化メタンを分解してハロゲン化カルボニルまたはハロゲン化カルボニル様化合物を得る。
【0013】
本発明に係る反応においてハロゲン化メタンは、おそらく高エネルギー光と酸素により分解され、ホスゲン等のハロゲン化カルボニルまたはハロゲン化カルボニル様の化合物に変換されると考えられる。なお、例えばハロゲン化カルボニルであるホスゲンは非常に毒性が高く、その運搬などには厳しい規制が課せられているが、ハロゲン化メタンは勿論それほど危険ではない。
【0014】
特に常温常圧で液体であるハロゲン化メタンは有機溶媒などとして大量に消費される一方で、大気に放出されると大気汚染やオゾン層の破壊といった環境汚染の原因となる。本発明は、かかるハロゲン化メタンを光分解することで有用な化合物を製造する技術であり、工業的にもまた環境科学的にも寄与するところは大きい。
【0015】
ハロゲン化メタンは、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードからなる群から選択される1種以上のハロゲノ基で置換されたメタンであり、クロロ、ブロモおよびヨードからなる群から選択される1種以上のハロゲノ基で置換されたメタンが好ましい。上述した通り、本発明においてハロゲン化メタンの一部は高エネルギー光と酸素により分解され、ハロゲン化カルボニルと同等の働きをすると考えられる。
【0016】
具体的なハロゲン化メタンとしては、例えば、トリフルオロメタン等のフルオロメタン;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素などのクロロメタン;ジブロモメタン、ブロモホルム等のブロモメタン;ヨードメタン、ジヨードメタン等のヨードメタン;クロロジフルオロメタン、ジクロロフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ブロモフルオロメタン等を挙げることができる。
【0017】
ハロゲン化メタンは目的とする化学反応や所期の生成物に応じて適宜選択すればよく、また、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。好適には、製造目的化合物に応じて、ハロゲン化メタンは1種のみ用いる。ハロゲン化メタンの中でもクロロを有する化合物が好ましい。
【0018】
本発明方法で用いるハロゲン化メタンは、例えば溶媒として一旦使用したハロゲン化メタンを回収したものであってもよい。その際、多量の不純物や水が含まれていると反応が阻害されるおそれがあり得るので、ある程度は精製することが好ましい。例えば、水洗により水や水溶性不純物を除去した後、無水硫酸ナトリウムや無水硫酸マグネシウムなどで脱水することが好ましい。但し、水が含まれていても、少なくともハロゲン化メタンの分解反応は進行するため、生産性を低下させるような過剰な精製は必要ない。かかる水含量としては、0質量%以上が好ましく、0.0001質量%以上がより好ましく、また、0.5質量%以下が好ましく、0.2質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下がより更に好ましい。また、上記再利用ハロゲン化メタンには、ハロゲン化メタンの分解物などが含まれていてもよい。
【0019】
本発明において「酸素存在下」とは、ハロゲン化メタンが酸素と接している状態か、ハロゲン化メタン中に酸素が存在する状態のいずれであってもよい。従って、本工程の反応は、酸素を含む気体の気流下で行ってもよいが、ハロゲン化メタンの分解効率を高める観点からは、酸素を含む気体はバブリングによりハロゲン化メタン中へ供給することが好ましい。
【0020】
酸素源としては、酸素を含む気体であればよく、例えば、空気や、精製された酸素を用いることができる。精製された酸素は、窒素やアルゴン等の不活性ガスと混合して使用してもよい。コストや容易さの点からは空気を用いることが好ましい。高エネルギー光の照射によるハロゲン化メタンの分解効率を高める観点からは、酸素源として用いられる気体中の酸素含有率は約15体積%以上100体積%以下であることが好ましい。酸素含有率は上記ハロゲン化メタンなどの種類によって適宜決定すればよい。例えば、上記ハロゲン化メタンとしてジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化メタンを用いる場合は、酸素含有率15体積%以上100体積%以下が好ましく、ジブロモメタンやブロモホルムなどのブロモメタンを用いる場合は、酸素含有率90体積%以上100体積%以下が好ましい。なお、酸素(酸素含有率100体積%)を用いる場合であっても、反応系内への酸素流量の調節により酸素含有率を上記範囲内に制御することができる。酸素を含む気体の供給方法は特に限定されず、流量調整器を取り付けた酸素ボンベから反応系内に供給してもよく、また、酸素発生装置から反応系内に供給してもよい。
【0021】
酸素を含む気体の量は、ハロゲン化メタンの量や、反応容器の形状などに応じて適宜決定すればよい。例えば、反応容器中に存在するハロゲン化メタンに対する、反応容器へ供給する1分あたりの気体の量を、5容量倍以上とすることが好ましい。当該割合としては、10容量倍以上がより好ましく、25容量倍以上がより更に好ましい。当該割合の上限は特に制限されないが、500容量倍以下が好ましく、250容量倍以下がより好ましく、150容量倍以下がより更に好ましい。また、反応容器中に存在するハロゲン化メタンに対する、反応容器へ供給する1分あたりの酸素の量としては、1容量倍以上25容量倍以下とすることができる。気体の流量が多過ぎる場合には、ハロゲン化メタンが揮発してしまう虞があり得る一方で、少な過ぎると反応が進行し難くなる虞があり得る。酸素の供給速度としては、例えば、ハロゲン化メタン4mL当たり0.01L/分以上、10L/分以下とすることができる。
【0022】
本発明では、15℃以下でハロゲン化メタンと酸素を接触させる。例えば、ハロゲン化カルボニルであるホスゲンの常圧での沸点は8.3℃であるので、たとえホスゲンが生成しても、15℃以下であればハロゲン化メタンから漏出し難いといえる。ハロゲン化カルボニルおよびハロゲン化カルボニル様化合物の漏出のし難さの観点からは、当該温度としては10℃以下が好ましく、5℃以下または2℃以下がより好ましい。当該温度の下限は特に制限されないが、例えば、当該温度としては-80℃以上が好ましく、-20℃以上または-15℃以上がより好ましい。
【0023】
ハロゲン化メタンに照射する高エネルギー光は、ハロゲン化メタンを分解するに十分なエネルギーを有する光をいう。例えば、波長280nm以上315nm以下のUV-Bおよび/または波長180nm以上280nm以下のUV-Cを含む光を用いることができ、波長180nm以上280nm以下のUV-Cを含む光を用いることが好ましく、ピーク波長が180nm以上315nm以下の範囲に含まれる光がより好ましく、ピーク波長が180nm以上280nm以下の範囲に含まれる光がより更に好ましい。高エネルギー光の波長またはピーク波長は上記ハロゲン化メタンの種類に応じて適宜決定すればよいが、400nm以下がより好ましく、300nm以下がより更に好ましい。照射光に上記波長範囲の光が含まれている場合には、上記ハロゲン化メタンを効率良く酸化的光分解できる。例えば、波長280nm以上315nm以下のUV-Bおよび/または波長180nm以上280nm以下のUV-Cを含む光またはピーク波長がこの範囲に含まれる光を用いることができ、波長180nm以上280nm以下のUV-Cを含む光またはピーク波長がこの範囲に含まれる光を用いることが好ましい。なお、太陽光にも数%の紫外線が含まれ、蛍光灯の光にも極僅かの紫外線が含まれるが、蛍光灯の光や地表に到達する太陽光にはUV-Cは含まれず、ハロゲン化メタンを十分に分解する程度のエネルギーを有さないため、これらは本発明でいう高エネルギー光には含まれない。
【0024】
光照射の手段は、上記波長の光を照射できるものである限り特に限定されないが、上記の波長範囲の光を波長域に十分量含む光源としては、例えば、太陽光、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、メタルハライドランプ、LEDランプ等が挙げられる。反応効率やコストの点から、低圧水銀ランプが好ましく用いられる。
【0025】
照射光の強度などの条件は、出発原料の種類や使用量によって適宜設定すればよい。例えば、光源から上記組成物の最短距離位置における所望の光の強度としては、1mW/cm2以上、50mW/cm2以下が好ましい。また、光源とハロゲン化メタンとの最短距離としては、1m以下が好ましく、50cm以下がより好ましく、10cm以下または5cm以下がより更に好ましい。当該最短距離の下限は特に制限されないが、0cm、即ち、光源をハロゲン化メタン中に浸漬してもよい。
【0026】
本発明方法に使用できる反応装置としては、反応容器に高エネルギー光照射手段を備えたものが挙げられる。反応装置には、攪拌装置や温度制御手段が備えられていてもよい。図1に、本発明方法に使用できる反応装置の一態様を示す。図1に示す反応装置は、筒状反応容器6内に高エネルギー光照射手段1を有するものである。筒状反応容器6内に、ハロゲン化メタンを添加し、当該反応容器6内に酸素を含有する気体を供給またはハロゲン化メタンに酸素を含有する気体をバブリングしながら(図示せず)、高エネルギー光照射手段1より高エネルギー光を照射して反応を行う。高エネルギー光照射手段1をジャケット2等で覆う場合、該ジャケットは、高エネルギー光を透過する素材であることが好ましい。また、反応容器の外側から高エネルギー光照射を行ってもよく、この場合、反応容器は、高エネルギー光を透過する素材であることが好ましい。高エネルギー光を透過する素材としては、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、石英ガラス等が好ましく挙げられる。
【0027】
高エネルギー光の照射時間は、ハロゲン化メタンが十分に分解される範囲で適宜調整すればよいが、例えば0.5時間以上10時間以下が好ましく、1時間以上6時間以下がより好ましく、2時間以上4時間以下がより更に好ましい。高エネルギー光照射の態様も特に限定されず、本工程の開始から終了まで連続して高エネルギー光を照射する態様、高エネルギー光照射と非照射とを交互に繰り返す態様、反応開始から所定の時間のみ高エネルギー光を照射する態様など、いずれの態様も採用できるが、本工程の開始から終了まで連続して高エネルギー光を照射する態様が好ましい。
【0028】
2.イソシアネート化合物の生成工程
本発明の一態様では、次に、高エネルギー光を照射したハロゲン化メタンに、更に第一級アミン化合物を添加し、高エネルギー光を照射せずに、ハロゲン化メタンの分解物と反応させることにより、イソシアネート化合物を得る。ここでのハロゲン化メタンの分解物とは、ハロゲン化カルボニルまたはハロゲン化カルボニル様化合物をいい、ハロゲン化カルボニル様化合物は、ハロゲン化カルボニルと完全に同一ではないが、ハロゲン化カルボニルと類似の化合物であり、ハロゲン化カルボニルと同様の働きにより第一級アミンと反応してイソシアネート化合物を生成する化合物をいう。
【0029】
【化1】
【0030】
第一級アミン化合物は、1以上のアミノ基(-NH2基)を有する化合物であれば特に制限されない。例えば、上記反応式において、第一級アミン化合物R1-(NH2nのR1は、n価の有機基を示す。かかる有機基としては、例えば、C1-15鎖状脂肪族炭化水素基、C3-15環状脂肪族炭化水素基、C6-15芳香族炭化水素基、およびこれら2以上5以下の基が結合した基を挙げることができる。また、nは1以上、6以下の整数を示し、5以下、4以下または3以下が好ましく、1または2がより好ましく、2がより更に好ましい。
【0031】
「C1-15鎖状脂肪族炭化水素基」は、炭素数1以上、15以下の直鎖状または分枝鎖状の飽和脂肪族炭化水素基をいう。例えばC1-15二価鎖状脂肪族炭化水素基としては、C1-15アルキレン基、C2-15アルケニレン基、およびC2-15アルキニレン基を挙げることができる。
【0032】
1-15アルキレン基としては、例えば、メチレン、エチレン、n-プロピレン、イソプロピレン、n-ブチレン、1-メチルプロピレン、2-メチルプロピレン、1,1-ジメチルエチレン、2,2-ジメチルエチレン、n-ペンチレン、n-ヘキシレン、n-ヘプチレン、n-オクチレン、n-デシレン、n-ペンタデカニレン等である。好ましくはC1-10アルキレン基であり、より好ましくはC1-6アルキレン基またはC1-4アルキレン基であり、より更に好ましくはC1-2アルキレン基である。
【0033】
2-15アルケニレン基としては、例えば、エテニレン(ビニレン)、1-プロペニレン、2-プロペニレン(アリレン)、ブテニレン、ヘキセニレン、オクテニレン、デセニレン、ペンタデセニレン等である。好ましくはC2-10アルケニレン基であり、より好ましくはC2-6アルケニレン基またはC2-4アルケニレン基であり、より更に好ましくはエテニレン(ビニレン)または2-プロペニレン(アリレン)である。
【0034】
2-15アルキニレン基としては、例えば、エチニレン、プロピニレン、ブチニレン、ヘキシニレン、オクチニレン、ペンタデシニレン基等である。好ましくはC2-10アルキニレン基であり、より好ましくはC2-6アルキニレン基またはC2-4アルキニレン基である。
【0035】
「C3-15環状脂肪族炭化水素基」は、炭素数1以上、15以下の環状の飽和脂肪族炭化水素基をいう。例えばC3-15二価環状脂肪族炭化水素基としては、C3-15シクロアルキレン基、C4-15シクロアルケニレン基、およびC4-15シクロアルキニレン基を挙げることができ、C3-10シクロアルキレン基、C4-10シクロアルケニレン基、およびC4-10シクロアルキニレン基が好ましい。
【0036】
「C6-15芳香族炭化水素基」とは、炭素数が6以上、15以下の芳香族炭化水素基をいう。例えば、C6-15二価芳香族炭化水素基としては、フェニレン、インデニレン、ナフチレン、ビフェニレン、フェナレニレン、フェナントレニレン、アントラセニレン等であり、好ましくはC6-12二価芳香族炭化水素基であり、より好ましくはフェニレンである。
なお、上記基の定義において、例えばアルキレン基は二価の飽和脂肪族炭化水素基をいうが、アミン化合物R1-(NH2nのnが1である場合には一価のアルキル基に、nが3である場合には三価のアルキリジン基に読み替えるものとする。例えば二価のエチレン(-CH2CH2-)は、nが1である場合にはメチル(-CH2CH3)に、nが3である場合にはエチリジン(-CH2CH<)に読み替えられる。
【0037】
上記有機基は、イソシアネート基と反応する求核性基以外の置換基を有していてもよい。C1-15鎖状脂肪族炭化水素基の置換基としては、例えば、C1-6アルコキシル基、C1-7アシル基、ハロゲノ基、ニトロ基、シアノ基、カルバモイル基、および-SiR303132から選択される1以上の置換基を挙げることができ、C3-15環状脂肪族炭化水素基およびC6-15芳香族炭化水素基の置換基としては、例えば、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシル基、C1-7アシル基、ハロゲノ基、ニトロ基、シアノ基、カルバモイル基、および-SiR303132から選択される1以上の置換基を挙げることができる。ここでの「ハロゲノ基」としては、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードを例示することができる。R30~R32は、独立して、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシル基、ビニル、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル、3-グリシドキシプロピル、p-スチリル、3-メタクリロキシプロピル、3-アクリロキシプロピル、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチル、3-アミノプロピル、N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピル、N-フェニル-3-アミノプロピル、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピル、3-ウレイドプロピル、3-メルカプトプロピル、または3-イソシアネートプロピルを示し、R30~R32のうち少なくとも1つは、C1-6アルコキシル基を示す。
【0038】
n=2である場合、第一級アミン化合物(I)のR1として以下の基(II)を挙げることができる。
【0039】
【化2】
【0040】
[式中、
2とR3は、独立して-(CR67n1-または-(-O-(CR67n2-)n3-(式中、R6とR7は、独立して、HまたはC1-6アルキル基を表し、n1は0以上、10以下の整数を表し、n2は1以上、10以下の整数を表し、n3は1以上、10以下の整数を表し、n1またはn2が2以上の整数である場合、複数のR6またはR7は互いに同一であっても異なっていてもよい)を表し、
4とR5は、独立して、ハロゲノ基、C1-20脂肪族炭化水素基、C1-20アルコキシル基、C3-20シクロアルキル基、C6-20芳香族炭化水素基、C7-20アラルキル基、C6-20芳香族炭化水素オキシ基、またはC3-20シクロアルコキシル基を表し、
Xは下記に示すいずれかの基を表し、
【0041】
【化3】
【0042】
(式中、
8とR9は、独立して、H、ハロゲノ基、置換基αを有してもよいC1-20脂肪族炭化水素基、置換基αを有してもよいC1-20アルコキシル基、置換基βを有してもよいC6-20芳香族炭化水素基を表すか、或いはR8とR9が結合して、C3-20炭素環または5-12員複素環を形成してもよく、
10とR11は、独立して、HまたはC1-6アルキル基を表し、m1が2以上の整数である場合、複数のR10またはR11は互いに同一であっても異なっていてもよく、
12~R19は、独立して、ハロゲノ基、置換基αを有してもよいC1-20脂肪族炭化水素基、置換基αを有してもよいC1-20アルコキシル基、または置換基βを有してもよいC6-12芳香族炭化水素基を表し、
20は置換基αを有してもよいC1-9アルキレン基を表し、
m1は1以上、20以下の整数を表し、
m2は1以上、500以下の整数を表す。)
n1とn2は、独立して、0以上、4以下の整数を表し、
置換基αは、C1-6アルコキシル基、C1-7アシル基、ハロゲノ基、ニトロ基、シアノ基、カルバモイル基、および-SiR303132から選択される1以上の置換基であり、
置換基βは、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシル基、C1-7アシル基、ハロゲノ基、ニトロ基、シアノ基、カルバモイル基、および-SiR303132から選択される1以上の置換基である。)]
【0043】
第一級アミン化合物の添加量は適宜調整すればよいが、例えば、ハロゲン化メタンの当初量に対して0.5mmol/mL以上、100mmol/mL以下とすることができる。当該割合が0.5mmol/mL以上であれば、反応がより効率的に進行すると考えられ、当該割合が100mmol/mL以下であれば、生成したイソシアネートにアミン化合物が反応して尿素化合物が生成する可能性がより低減されると考えられる。
【0044】
高エネルギー光の照射は、アミン化合物の添加後に停止してもよいが、反応により生成したイソシアネート化合物が高エネルギー光の照射により分解する可能性があるため、アミン化合物の添加前に停止することが好ましい。
【0045】
第一級アミン化合物の反応温度は、ハロゲン化メタンの分解反応の温度と同様にすることができる。即ち、15℃以下とすることができ、10℃以下が好ましく、5℃以下がより好ましく、2℃以下がより更に好ましい。当該温度の下限は特に制限されないが、例えば、当該温度としては-80℃以上が好ましく、-20℃以上または-15℃以上がより好ましい。当該反応工程を比較的低く設定することで、ハロゲン化カルボニルおよびハロゲン化カルボニル様化合物の漏出や、生成したイソシアネート化合物の反応や分解をより確実に抑制することができる。
【0046】
本反応工程では、アミン化合物に加えて塩基を添加することが好ましい。反応が進行すると、副生するハロゲン化水素によりアミン化合物の反応性が低下するおそれがあるが、塩基によりアミン化合物の反応性を維持することが可能になる。塩基としては、特に制限されないが、-NH2を有する塩基は生成したイソシアネート化合物と反応するおそれがあるため、複素環式芳香族アミンおよび非求核性強塩基から選択される1種以上の塩基が好ましい。
【0047】
複素環式芳香族アミンは、少なくとも一つの複素環を含み且つ-NH2以外のアミン官能基を少なくとも一つ有している化合物をいう。複素環式芳香族アミンとしては、例えば、ピリジン、α-ピコリン、β-ピコリン、γ-ピコリン、2,3-ルチジン、2,4-ルチジン、2,6-ルチジン、3,5-ルチジン、2-クロロピリジン、3-クロロピリジン、4-クロロピリジン、2,4,6-トリメチルピリジン、4-ジメチルアミノピリジンなどの、ピリジンおよびその誘導体などを挙げることができる。
【0048】
「非求核性強塩基」とは、立体的な障害により窒素原子上の孤立電子対の求核性が弱いが塩基性の強い塩基をいう。例えば、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリデシルアミン、トリドデシルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(MTBD)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)、および1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(TMG)を挙げることができる。また、塩基性度が比較的高い塩基を用いてもよい。例えば、アセトニトリル中における塩基性度(pKBH+)が20以上の塩基として、TBD(pKBH+:25.98)、MTBD(pKBH+:25.44)、DBU(pKBH+:24.33)、DBN(pKBH+:23.89)、およびTMG(pKBH+:23.30)を用いることができる。
【0049】
その他、トリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、N-エチル-N-メチルブチルアミン、1-メチルピロリジン等の汎用有機アミンも用い得る。
【0050】
塩基の使用量は、反応が良好に進行する範囲で適宜調整すればよいが、例えば、アミン化合物1モルに対して1倍モル以上、20倍モル以下とすることができる。当該割合としては、10倍モル以下が好ましい。
【0051】
反応時間は特に制限されず、予備実験により決定したり、或いは原料化合物であるアミン化合物が消費されるまでとすればよいが、例えば、30分間以上、10時間以下とすることができる。
【0052】
塩基を用いない場合や、塩基を用いても反応が完全に完結しない場合には、反応温度を上げてもよい。この場合の反応温度としては、例えば、20℃以上、80℃以下とすることができる。また、加熱還流条件で反応を行ってもよい。
【0053】
イソシアネート化合物は、従来公知の方法で精製をしてもよい。精製方法としては、蒸留、出発原料化合物の減圧留去、カラムクロマトグラフィーなどが挙げられる。
【0054】
3.イソシアネート化合物の利用
(1)カルバメートの製造
本発明の製造方法で製造されたイソシアネート化合物は、カルバメートやポリウレタンの合成中間体となる。例えば、上記イソシアネート化合物に一価アルコールを反応させることにより、カルバメートが得られる。イソシアネート化合物が式R1-(N=C=O)nで表される化合物であり、一価アルコールが式R21-OHで表される化合物である場合の反応式を以下に示す。
【0055】
【化4】
【0056】
21としては、例えば炭化水素基、単環ヘテロアリール基、多環ヘテロアリール基を挙げることができる。炭化水素基としては、例えば、C1-30アルキル基、C2-30アルケニル基、C2-30アルキニル基、C6-32芳香族炭化水素基、およびこれら2以上5以下の基が結合した基を挙げることができる。上記基は、イソシアネート基と反応する求核性基以外の置換基を有していてもよい。炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、C1-6アルコキシル基、C1-7アシル基、ハロゲノ基、ニトロ基、シアノ基、カルバモイル基、および-SiR303132から選択される1以上の置換基を挙げることができ、単環ヘテロアリール基および多環ヘテロアリール基が有していてもよい置換基としては、例えば、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシル基、C1-7アシル基、ハロゲノ基、ニトロ基、シアノ基、カルバモイル基、および-SiR303132から選択される1以上の置換基を挙げることができる。
【0057】
(2)ポリウレタンの製造
また、本発明の製造方法で製造された2以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させることにより、ポリウレタンを製造することができる。即ち、本発明は、上記方法により2以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を製造する工程、および、上記ポリイソシアネート化合物を含む上記工程の反応液にポリオール化合物を添加する工程を含むポリウレタンの製造方法にも関する。例えば、2つのイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物と2つの水酸基を有するポリオール化合物を反応させることにより、下記式の通りポリウレタンを製造できる。
【0058】
【化5】
[式中、R22はR1のうち二価の基を示し、R23としては、例えば二価炭化水素基、二価単環ヘテロアリール基、二価多環ヘテロアリール基を挙げることができる。二価炭化水素基としては、例えば、C1-30アルキレン基、C2-30アルケニレン基、C2-30アルキニレン基、二価C6-32芳香族炭化水素基、およびこれら2以上5以下の基が結合した基を挙げることができる。上記基は、水素原子の一部がC1-6アルキル基、C1-6アルコキシル基、C1-7アシル基、ハロゲノ基、ニトロ基、シアノ基、カルバモイル基、および-SiR303132から選択される1以上の置換基で置換されていてもよい。]
【0059】
イソシアネート化合物に反応させるアルコール化合物R24-(OH)pは、p個の水酸基を有する化合物であれば特に制限されない。例えば、R24としては、p価炭化水素基、p価単環ヘテロアリール基、p価多環ヘテロアリール基を挙げることができる。当該アルコール化合物は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、環状構造やエーテル基(-O-)を有していてもよい。pとしては、例えば、1以上、1,000以下とすることができる。pとしては、1以上、50以下が好ましく、20以下または10以下が好ましく、5以下または3以下がより好ましく、2が最も好ましい。
【0060】
また、ポリオール化合物としては、以下のポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、およびポリカーボネートジオールを用いることもできる。また、ポリオール化合物としてアクリルポリオールも用いることができる。
【0061】
【化6】
[式中、R25~R29は、独立してC1-30アルキレン基を表し、C1-6アルコキシル基、C1-7アシル基、ハロゲノ基、ニトロ基、シアノ基、カルバモイル基、および-SiR303132から選択される1以上の置換基で置換されていてもよく、q、rおよびsは、独立して1以上、50以下の整数を表す。]
【0062】
アクリルポリオールは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと水酸基含有モノマーと、必要に応じその他のモノマーを共重合させたポリマーであり、2以上の水酸基を有するものをいう。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エチルなど、(メタ)アクリル酸のC1-30アルキルエステルが上げられる。水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。
【0063】
「C1-30アルキル基」は、炭素数1以上、30以下の直鎖状、分枝鎖状、または環状の飽和脂肪族炭化水素基をいう。例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、シクロブチル、n-ペンチル、シクロペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、シクロヘプチル、オクチル、シクロオクチル、n-ノニル、n-デシル、n-イコシル、n-トリアコンチル等である。好ましくはC1-20アルキル基またはC1-10アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基またはC1-4アルキル基であり、より更に好ましくはC1-2アルキル基またはメチルである。
【0064】
「C2-30アルケニル基」は、炭素数が2以上、30以下であり、少なくとも一つの炭素-炭素二重結合を有する直鎖状、分枝鎖状、または環状の不飽和脂肪族炭化水素基をいう。例えば、エテニル(ビニル)、1-プロペニル、2-プロペニル(アリル)、イソプロペニル、2-ブテニル、3-ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、オクテニル、デセニル、イコセニル、トリアコンテニル等である。好ましくはC2-20アルケニル基またはC2-10アルケニル基であり、より好ましくはC2-6アルケニル基またはC2-4アルケニル基であり、より更に好ましくはエテニル(ビニル)または2-プロペニル(アリル)である。
【0065】
「C2-30アルキニル基」は、炭素数が2以上、30以下であり、少なくとも一つの炭素-炭素三重結合を有する直鎖状、分枝鎖状、または環状の不飽和脂肪族炭化水素基をいう。例えば、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、2-ブチニル、3-ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、オクチニル、デシニル、イコシニル、トリアコンチニル基等である。好ましくはC2-20アルキニル基またはC2-10アルキニル基であり、より好ましくはC2-6アルキニル基またはC2-4アルキニル基である。
【0066】
「C6-32芳香族炭化水素基」とは、炭素数が6以上、32以下の芳香族炭化水素基をいう。例えば、フェニル、インデニル、ナフチル、ビフェニル、フェナレニル、フェナントレニル、アンドレセニル、トリフェニレニル、ピレニル、ナフタセニル、ペリレニル、ペンタセニル、ヘキサセニル、コロネニル、トリナフチレニル、ヘプタセニル、オヴァレニル等であり、好ましくはC6-20芳香族炭化水素基であり、より好ましくはC6-12芳香族炭化水素基であり、より更に好ましくはフェニルである。
【0067】
「単環ヘテロアリール基」とは、窒素原子、酸素原子または硫黄原子などのヘテロ原子を少なくとも1個有する5員単環芳香族ヘテロシクリル基または6員単環芳香族ヘテロシクリル基をいう。但し、求核性基である>NHを有するものを除く。例えば、チエニル、フリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾール等の5員単環ヘテロアリール基;ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル等の6員単環ヘテロアリール基を挙げることができる。
【0068】
「多環ヘテロアリール基」とは、窒素原子、酸素原子または硫黄原子などのヘテロ原子を少なくとも1個有する多環芳香族ヘテロシクリル基をいい、上記単環ヘテロアリール基同士や、上記単環ヘテロアリール基と芳香族炭化水素基が、単結合で結合していたり縮合したものをいう。例えば、インドリル、イソインドリル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、クロメニル等を挙げることができる。
【0069】
上記有機基は、生成したイソシアネート化合物と反応する反応性基以外の置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、例えば、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシル基、C1-7アシル基、ハロゲノ基、ニトロ基、シアノ基、カルバモイル基、および-SiR303132から選択される1以上の置換基を挙げることができる。
【0070】
アルコール化合物R24-(OH)pのpが2以上の整数であり、R24が2価以上の有機基である場合は、上記1価有機基の具体例は、2以上のn価に読み替えることができる。例えば、nが2である場合、上記C1-30アルキル基はC1-30アルキレン基に、nが3である場合、上記C1-30アルキル基はC1-30アルキリジン基に読み替えることができる。
【0071】
上記C1-30アルキル基、C2-30アルケニル基、C2-30アルキニル基、C6-32芳香族炭化水素基は、C1-6アルコキシル基、ハロゲノ基、ニトロ基、およびシアノ基から選択される1以上の置換基を有していてもよい。ハロゲノ基としては、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードから選択される1以上のハロゲン基が挙げられる。
【0072】
例えば、1個の水酸基を有するフルオロアルコールとしては、モノフルオロエタノール、ジフルオロエタノール、トリフルオロエタノール、モノフルオロプロパノール、ジフルオロプロパノール、トリフルオロプロパノール、テトラフルオロプロパノール、ペンタフルオロプロパノール、ヘキサフルオロプロパノール、モノフルオロブタノール、ジフルオロブタノール、トリフルオロブタノール、テトラフルオロブタノール、ペンタフルオロブタノール、ヘキサフルオロブタノール、ヘプタフルオロブタノール、モノフルオロペンタノール、ジフルオロペンタノール、トリフルオロペンタノール、テトラフルオロペンタノール、ペンタフルオロペンタノール、ヘキサフルオロペンタノール、ヘプタフルオロペンタノール、オクタフルオロペンタノール、ノナフルオロペンタノール、モノフルオロヘキサノール、ジフルオロヘキサノール、トリフルオロヘキサノール、テトラフルオロヘキサノール、ペンタフルオロヘキサノール、ヘキサフルオロヘキサノール、ヘプタフルオロヘキサノール、オクタフルオロヘキサノール、ノナフルオロヘキサノール、デカフルオロヘキサノール、ウンデカフルオロヘキサノール、モノフルオロヘプタノール、ジフルオロヘプタノール、トリフルオロヘプタノール、テトラフルオロヘプタノール、ペンタフルオロヘプタノール、ヘキサフルオロヘプタノール、ヘプタフルオロヘプタノール、オクタフルオロヘプタノール、ノナフルオロヘプタノール、デカフルオロヘプタノール、ウンデカフルオロヘプタノール、ドデカフルオロヘプタノール、トリデカフルオロヘプタノール、モノフルオロオクタノール、ジフルオロオクタノール、トリフルオロオクタノール、テトラフルオロオクタノール、ペンタフルオロオクタノール、ヘキサフルオロオクタノール、ヘプタフルオロオクタノール、オクタフルオロオクタノール、ノナフルオロオクタノール、デカフルオロオクタノール、ウンデカフルオロオクタノール、ドデカフルオロオクタノール、トリデカフルオロオクタノール、テトラデカフルオロオクタノール、ペンタデカフルオロオクタノール、モノフルオロノナノール、ジフルオロノナノール、トリフルオロノナノール、テトラフルオロノナノール、ペンタフルオロノナノール、ヘキサフルオロノナノール、ヘプタフルオロノナノール、オクタフルオロノナノール、ノナフルオロノナノール、デカフルオロノナノール、ウンデカフルオロノナノール、ドデカフルオロノナノール、トリデカフルオロノナノール、テトラデカフルオロノナノール、ペンタデカフルオロノナノール、ヘキサデカフルオロノナノール、ヘプタデカフルオロノナノール、モノフルオロデカノール、ジフルオロデカノール、トリフルオロデカノール、テトラフルオロデカノール、ペンタフルオロデカノール、ヘキサフルオロデカノール、ヘプタフルオロデカノール、オクタフルオロデカノール、ノナフルオロデカノール、デカフルオロデカノール、ウンデカフルオロデカノール、ドデカフルオロデカノール、トリデカフルオロデカノール、テトラデカフルオロデカノール、ペンタデカフルオロデカノール、ヘキサデカフルオロデカノール、ヘプタデカフルオロデカノール、オクタデカフルオロデカノール、ノナデカフルオロデカノール等が挙げられる。
【0073】
芳香族炭化水素基を有し1個の水酸基を有するアルコールとしては、モノフルオロフェノール、ジフルオロフェノール、トリフルオロフェノール、テトラフルオロフェノール、ペンタフルオロフェノール、トリフルオロメチルフェノール、モノフルオロベンジルアルコール、ジフルオロベンジルアルコール、トリフルオロベンジルアルコール、テトラフルオロベンジルアルコール、ペンタフルオロベンジルアルコール、トリフルオロメチルベンジルアルコール、モノフルオロフェノキシエタノール、ジフルオロフェノキシエタノール、トリフルオロフェノキシエタノール、テトラフルオロフェノキシエタノール、ペンタフルオロフェノキシエタノール等が挙げられる。
【0074】
2個の水酸基を有するフルオロアルコールとしては、モノフルオロプロピレングリコール、ジフルオロプロピレングリコール、モノフルオロブタンジオール、ジフルオロブタンジオール、トリフルオロブタンジオール、テトラフルオロブタンジオール、モノフルオロペンタンジオール、ジフルオロペンタンジオール、トリフルオロペンタンジオール、テトラフルオロペンタンジオール、ペンタフルオンタンジオール、ヘキサフルオロペンタンジオール、モノフルオロヘキサンジオール、ジフルオロヘキサンジオール、トリフルオロヘキサンジオール、テトラフルオロヘキサンジオール、ペンタフルオロヘキサンジオール、ヘキサフルオロヘキサンジオール、ヘプタフルオロヘキサンジオール、オクタフルオロヘキサンジオール、モノフルオロヘプタンジオール、ジフルオロヘプタンジオール、トリフルオロヘプタンジオール、テトラフルオロヘプタンジオール、ペンタフルオロヘプタンジオール、ヘキサフルオロヘプタンジオール、ヘプタフルオロヘプタンジオール、オクタフルオロヘプタンジオール、ノナフルオロヘプタンジオール、デカフルオロヘプタンジオール、モノフルオロオクタンジオール、ジフルオロオクタンジオール、トリフルオロオクタンジオール、テトラフルオロオクタンジオール、ペンタフルオロオクタンジオール、ヘキサフルオロオクタンジオール、ヘプタフルオロオクタンジオール、オクタフルオロオクタンジオール、ノナフルオロオクタンジオール、デカフルオロオクタンジオール、ウンデカフルオロオクタンジオール、ドデカフルオロオクタンジオール、モノフルオロノナンジオール、ジフルオロノナンジオール、トリフルオロノナンジオール、テトラフルオロノナンジオール、ペンタフルオロノナンジオール、ヘキサフルオロノナンジオール、ヘプタフルオロノナンジオール、オクタフルオロノナンジオール、ノナフルオロノナンジオール、デカフルオロノナンジオール、ウンデカフルオロノナンジオール、ドデカフルオロノナンジオール、トリデカフルオロノナンジオール、テトラデカフルオロノナンジオール、モノフルオロデカンジオール、ジフルオロデカンジオール、トリフルオロデカンジオール、テトラフルオロデカンジオール、ペンタフルオロデカンジオール、ヘキサフルオロデカンジオール、ヘプタフルオロデカンジオール、オクタフルオロデカンジオール、ノナフルオロデカンジオール、デカフルオロデカンジオール、ウンデカフルオロデカンジオール、ドデカフルオロデカンジオール、トリデカフルオロデカンジオール、テトラデカフルオロデカンジオール、ペンタデカフルオロデカンジオール、ヘキサデカフルオロデカンジオール等が挙げられる。
【0075】
芳香族炭化水素基を有し2個の水酸基を有するアルコールとしては、モノフルオロベンゼンジオール、ジフルオロベンゼンジオール、トリフルオロベンゼンジオール、テトラフルオロベンゼンジオール、モノフルオロベンゼンジメタノール、ジフルオロベンゼンジメタノール、トリフルオロベンゼンジメタノール、テトラフルオロベンゼンジメタノール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。
【0076】
3個の水酸基を有するフルオロアルコールとしては、モノフルオロペンタントリオール、ジフルオロペンタントリオール、モノフルオロヘキサントリオール、ジフルオロヘキサントリオール、トリフルオロヘキサントリオール、テトラフルオロヘキサントリオール、モノフルオロヘプタントリオール、ジフルオロヘプタントリオール、トリフルオロヘプタントリオール、テトラフルオロヘプタントリオール、ペンタフルオロヘプタントリオール、ヘキサフルオロヘプタントリオール、モノフルオロオクタントリオール、ジフルオロオクタントリオール、トリフルオロオクタントリオール、テトラフルオロオクタントリオール、ペンタフルオロオクタントリオール、ヘキサフルオロオクタントリオール、ヘプタフルオロオクタントリオール、オクタフルオロオクタントリオール、モノフルオロノナントリオール、ジフルオロノナントリオール、トリフルオロノナントリオール、テトラフルオロノナントリオール、ペンタフルオロノナントリオール、ヘキサフルオロノナントリオール、ヘプタフルオロノナントリオール、オクタフルオロノナントリオール、ノナフルオロノナントリオール、デカフルオロノナントリオール、モノフルオロデカントリオール、ジフルオロデカントリオール、トリフルオロデカントリオール、テトラフルオロデカントリオール、ペンタフルオロデカントリオール、ヘキサフルオロデカントリオール、ヘプタフルオロデカントリオール、オクタフルオロデカントリオール、ノナフルオロデカントリオール、デカフルオロデカントリオール、ウンデカフルオロデカントリオール、ドデカフルオロデカントリオール等が挙げられる。
【0077】
4個以上の水酸基を有するフルオロアルコールとしては、ノナフルオロヘキサンテトラオール、デカフルオロヘキサンテトラオール、モノフルオロヘプタンテトラオール、ジフルオロヘプタンテトラオール、モノフルオロオクタンテトラオール、ジフルオロオクタンテトラオール、トリフルオロオクタンテトラオール、テトラフルオロオクタンテトラオール、モノフルオロノナンテトラオール、ジフルオロノナンテトラオール、トリフルオロノナンテトラオール、テトラフルオロノナンテトラオール、ペンタフルオロノナンテトラオール、ヘキサフルオロノナンテトラオール、モノフルオロデカンテトラオール、ジフルオロデカンテトラオール、トリフルオロデカンテトラオール、テトラフルオロデカンテトラオール、ペンタフルオロデカンテトラオール、ヘキサフルオロデカンテトラオール、ヘプタフルオロデカンテトラオール、オクタフルオロデカンテトラオール等が挙げられる。
【0078】
(3)反応条件
上記イソシアネート化合物と反応させるアルコール化合物の添加量は適宜調整すればよいが、例えば、使用した第一級アミン化合物と同モルまたは略同モルのアルコール化合物を用いることができる。ここで略同モルとは、0.8倍モル以上、1.2倍モル以下をいい、0.9倍モル以上、1.1倍モル以下が好ましい。なお、カルバメートとポリウレタンは、本発明に係る上記イソシアネート化合物の製造方法の反応液にアルコール化合物を添加することにより、同一系内で製造することも可能である。
【0079】
反応時間は特に制限されず、予備実験により決定したり、或いはイソシアネート化合物またはアルコール化合物が消費されるまでとすればよいが、例えば、30分間以上、50時間以下とすることができる。反応温度は、第一級アミン化合物の反応温度と同様にすればよいが、反応の促進のため、20℃以上、80℃以下としてもよい。
カルバメートやポリウレタンは、従来公知の方法で精製をしてもよい。精製方法としては、蒸留、クロマトグラフィー、貧溶媒による洗浄や再結晶などが挙げられる。
【0080】
本願は、2018年11月15日に出願された日本国特許出願第2018-214988号に基づく優先権の利益を主張するものである。2018年11月15日に出願された日本国特許出願第2018-214988号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【実施例
【0081】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0082】
実施例1: フェニルイソシアネートの合成
【化7】
直径42mm、容量100mLの筒状反応容器内に、直径30mmの石英ガラスジャケットを装入し、更に石英ガラスジャケット内に低圧水銀ランプ(「UVL20PH-6」SEN Light社製,20W,φ24×120mm)を装入した反応システムを構築した。当該反応システムの模式図を図1に示す。なお、当該低圧水銀ランプからの照射光には波長254nmのUV-Cが含まれ、管壁から5mmの位置における波長254nmの光の照度は6.23~9.07mW/cm2であった。反応容器内に精製したクロロホルム(50mL)を入れ、0℃で攪拌しつつ0.5L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、上記低圧水銀ランプを使ってUV-Cを含む光を照射した。
3時間後、低圧水銀ランプの電源を切り、通常の室内灯下、アニリン(0.91mL,10mmol)のクロロホルム溶液(5mL)を添加し、0℃で10分間攪拌した。次いで、2,6-ルチジン(5.81mL,50mmol)を添加し、0℃で1時間攪拌した。
反応液を1H NMRで分析したところ、目的化合物であるフェニルイソシアネートが収率97%で生成していることが確認された。
【0083】
実施例2: フェニルイソシアネートの合成
実施例1において、2,6-ルチジン(5.81mL,50mmol)をピリジン(4mL,50mmol)に変更した以外は同様にして反応を行った。
反応液を1H NMRで分析したところ、目的化合物であるフェニルイソシアネートが収率>99%で生成していることが確認された。
【0084】
実施例3: フェニルイソシアネートの合成
実施例1で用いた反応システムの反応容器内に精製したクロロホルム(50mL)を入れ、0℃で攪拌しつつ0.5L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、UV-Cを含む光を照射した。
3時間後、低圧水銀ランプの電源を切り、通常の室内灯下、アニリン(0.91mL,10mmol)のクロロホルム溶液(5mL)を添加し、0℃で10分間攪拌した。次いで、反応温度を60℃に上げて1.5時間攪拌した。
反応液を1H NMRで分析したところ、目的化合物であるフェニルイソシアネートが収率80%で生成していることが確認された。
【0085】
実施例4: ヘキシルイソシアネートの合成
【化8】
実施例1で用いた反応システムの反応容器内に精製したクロロホルム(50mL)を入れ、0℃で攪拌しつつ0.5L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、UV-Cを含む光を照射した。
3時間後、低圧水銀ランプの電源を切り、通常の室内灯下、ヘキシルアミン(1.33mL,10mmol)のクロロホルム溶液(5mL)を添加し、0℃で10分間攪拌した。次いで、ピリジン(4mL,50mmol)を添加し、0℃で1時間攪拌した。
反応液を1H NMRで分析したところ、目的化合物であるヘキシルイソシアネートが収率>99%で生成していることが確認された。
【0086】
実施例5: ヘキサメチレンジイソシアネートの合成
【化9】
実施例1で用いた反応システムの反応容器内に精製したクロロホルム(50mL)を入れ、0℃で攪拌しつつ0.5L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、UV-Cを含む光を照射した。
3時間後、低圧水銀ランプの電源を切り、通常の室内灯下、ヘキサメチレンジアミン(0.58g,5mmol)のクロロホルム溶液(10mL)を添加し、0℃で10分間攪拌した。次いで、ピリジン(4mL,50mmol)を添加し、0℃で1時間攪拌し、更に60℃で1.5時間攪拌した。
黄濁した反応液を濾過し、濾液を1H NMRで分析したところ、目的化合物であるヘキサメチレンジイソシアネートが収率96%で生成していることが確認された。この反応液から溶媒を減圧留去し、n-ヘキサン(50mL)を添加し、アルゴン雰囲気下、室温で撹拌した。生じた析出物を濾別し、濾液から溶媒を減圧留去した。得られたオイル状物を、ガラスチューブオーブンを用いて減圧蒸留し、0.2kPaで100℃の留分(0.6g)を単離した。得られた無色の液体を1H NMRとFT-IRスペクトルで分析したところ、目的とするヘキサメチレンジイソシアネートであることが確認された(収率71%)。
【0087】
実施例6: 2,2-ジフルオロエチルイソシアネートの合成
【化10】
実施例1で用いた反応システムの反応容器内に精製したクロロホルム(50mL)を入れ、0℃で攪拌しつつ0.5L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、UV-Cを含む光を照射した。
3時間後、低圧水銀ランプの電源を切り、通常の室内灯下、2,2-ジフルオロエチルアミン(0.7mL,10mmol)のクロロホルム溶液(5mL)を添加し、0℃で10分間攪拌した。次いで、ピリジン(4mL,50mmol)を添加し、0℃で1時間攪拌した。
反応液に内部標準としてジクロロメタン(320μL)を添加し、1H NMRで分析したところ、目的化合物である2,2-ジフルオロエチルイソシアネートが収率66%で生成していることが確認された。
【0088】
実施例7: トルエン-2,4-ジイソシアネートの合成
【化11】
実施例1で用いた反応システムの反応容器内に精製したクロロホルム(50mL)を入れ、0℃で攪拌しつつ0.5L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、UV-Cを含む光を照射した。
3時間後、低圧水銀ランプの電源を切り、通常の室内灯下、2,4-ジアミノトルエン(0.61g,5mmol)のクロロホルム溶液(10mL)を添加し、-20℃で10分間攪拌した。次いで、ピリジン(4mL,50mmol)を添加し、-20℃で1時間攪拌した。
反応液に内部標準としてジクロロメタン(480μL)を添加し、1H NMRで分析したところ、目的化合物であるトルエン-2,4-ジイソシアネートが収率80%で生成していることが確認された。
【0089】
実施例8: 4-フルオロフェニルイソシアネートの合成
【化12】
実施例1で用いた反応システムの反応容器内に精製したクロロホルム(50mL)を入れ、0℃で攪拌しつつ0.5L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、UV-Cを含む光を照射した。
3時間後、低圧水銀ランプの電源を切り、通常の室内灯下、4-フルオロアニリン(0.96mL,10mmol)のクロロホルム溶液(5mL)を添加し、0℃で10分間攪拌した。次いで、ピリジン(4mL,50mmol)を添加し、0℃で1時間攪拌した。
反応液に内部標準としてジクロロメタン(640μL)を添加し、1H NMRで分析したところ、目的化合物である4-フルオロフェニルイソシアネートが収率62%で生成していることが確認された。
【0090】
実施例9: メチレンジフェニルジイソシアネートの合成
【化13】
実施例1で用いた反応システムの反応容器内に精製したクロロホルム(50mL)を入れ、0℃で攪拌しつつ0.5L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、UV-Cを含む光を照射した。
3時間後、低圧水銀ランプの電源を切り、通常の室内灯下、メチレンジフェニルジアミン(1.0g,5mmol)のクロロホルム溶液(5mL)を添加し、-30℃で10分間攪拌した。次いで、ピリジン(4mL,50mmol)を添加し、-30℃で1時間攪拌した。
反応液に内部標準としてジクロロメタン(320μL)を添加し、1H NMRで分析したところ、目的化合物であるメチレンジフェニルジイソシアネートが収率90%で生成していることが確認された。
【0091】
実施例10: カルバメートの合成
【化14】
実施例1で用いた反応システムの反応容器内に精製したクロロホルム(50mL)を入れ、0℃で攪拌しつつ0.5L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、UV-Cを含む光を照射した。
3時間後、低圧水銀ランプの電源を切り、通常の室内灯下、メチレンジフェニルジアミン(1.0g,5mmol)のクロロホルム溶液(5mL)を添加し、-30℃で10分間攪拌した。次いで、ピリジン(4mL,50mmol)を添加し、-30℃で1時間攪拌した。
更に、反応液へエタノール(0.6mL,10mmol)を添加し、室温で12時間攪拌した。
次いで、反応液に水とジクロロメタンを添加し、分液した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮した。ジクロロメタンとヘキサンを使って再結晶し、析出した結晶を濾取し、真空乾燥した。得られた薄茶色固体を1H NMRで分析したところ、目的化合物であるカルバメートが収率81%で生成していることが確認された。
【0092】
実施例11: ポリウレタンの合成
【化15】
実施例1で用いた反応システムの反応容器内に精製したクロロホルム(50mL)を入れ、0℃で攪拌しつつ0.5L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、UV-Cを含む光を照射した。
3時間後、低圧水銀ランプの電源を切り、通常の室内灯下、メチレンジフェニルジアミン(1.0g,5mmol)のクロロホルム溶液(5mL)を添加し、-20℃で10分間攪拌した。次いで、ピリジン(4mL,50mmol)を添加し、-20℃で1時間攪拌した。
更に、反応液へ1,6-ヘキサンジオール(0.59g,5mmol)のクロロホルム溶液(5mL)を添加し、室温で12時間攪拌した。
次いで、反応液をある程度減圧濃縮した後、水とジクロロメタンを添加し、分液した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮した。ジクロロメタンとヘキサンを使って再沈殿し、析出した固体を濾取し、真空乾燥した。
また、水素には薄茶色固体が析出していたことから、濾取し、真空乾燥した。
得られた2つの結晶を1H NMRで分析したところ、共にポリウレタンに由来するピークが認められたが、有機相から得られたポリウレタンは分子量がより小さく、水層から得られたポリウレタンは分子量がより大きいことが確認された。両固体を合わせた収量は0.92g、収率は50%であった。
得られたポリウレタンを下記の条件のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で分析し、分子量を求めた。結果を表1に示す。
装置: 「Co-2060Plus」,「MD-2018Plus」,「PU-2089Plus」,「LC-NetII/ADC」(日本分光社製)で構成された高速GPC装置
カラム: 「TSKgel G3000HHR」および「TSKgel G4000HHR」(それぞれ4.6mm×150mm,東ソー社製)を直列
移動相: THF 流速: 0.5mL/min
オーブン温度: 20℃ 濃度: 0.2w/v%
注入量: 5μL 分子量標準: ポリスチレン
検出器: PDA
【0093】
【表1】
【0094】
実施例12: イソホロンジイソシアネート(IPDI)の合成
【化16】
実施例1で用いた反応システムの反応容器内に精製したクロロホルム(50mL)を入れ、0℃で攪拌しつつ0.5L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、UV-Cを含む光を照射した。
3時間後、低圧水銀ランプの電源を切り、通常の室内灯下、イソホロンジアミン(cis-trans混合物)(0.92mL,5mmol)のクロロホルム溶液(5mL)を添加し、次いで、ピリジン(4mL,50mmol)を添加し、0℃で30分間攪拌した。反応液に内部標準として1,2-ジクロロエタン(0.79mL,10mmol)を添加し、1H-NMRで分析したところ、目的化合物であるイソホロンジイソシアネートが収率42%で生成していることが確認された。
【0095】
実施例13: m-キシリレンジイソシアネート(XDI)の合成
【化17】
実施例1で用いた反応システムの反応容器内に精製したクロロホルム(50mL)を入れ、0℃で攪拌しつつ0.5L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、UV-Cを含む光を照射した。
3時間後、低圧水銀ランプの電源を切り、通常の室内灯下、m-キシリレンジアミン(0.65mL,5mmol)のクロロホルム溶液(5mL)を添加し、次いで、ピリジン(4mL,50mmol)を添加し、0℃で30分間攪拌した。反応液に内部標準として1,2-ジクロロエタン(0.4mL,5mmol)を添加し、1H-NMRで分析したところ、目的化合物であるm-キシリレンジイソシアネートが収率63%で生成していることが確認された。
【0096】
実施例14: MDAとPPGからポリウレタンの合成
【化18】
実施例1で用いた反応システムの反応容器内に精製したクロロホルム(50mL)を入れ、0℃で攪拌しつつ0.5L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、UV-Cを含む光を照射した。
3時間後、低圧水銀ランプの電源を切り、通常の室内灯下、メチレンジフェニルジアミン(1.0g,5mmol)のクロロホルム溶液(5mL)を添加し、-20℃で10分間攪拌した。次いで、ピリジン(4mL,50mmol)を添加し、-20℃で1時間攪拌した。反応液に内部標準としてジクロロメタン(320μL)を添加し、1H-NMRで分析したところ、目的化合物であるメチレンジフェニルジイソシアネートが収率72%で生成していることが確認された。
更に、反応液に2mLのピリジンと混合したポリプロピレングリコール(平均分子量400,2mL,5mmol)を添加し、室温で終夜攪拌した。
次いで、60℃で1時間撹拌した後、反応液をある程度減圧濃縮し、塩酸とジクロロメタンを添加し、分液した。有機相を食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮し、得られたオイル状化合物を真空乾燥した。収量は1.95g、収率は83%であった。
得られたポリウレタンを実施例11の条件のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で分析し、分子量を求めた。結果を表2に示す。
【表2】
【0097】
実施例15: 2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ-1,6-ジイソシアナトヘキサンの合成
【化19】
実施例1で用いた反応システムの反応容器内に精製したクロロホルム(50mL)と2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロヘキサン-1,6-ジアミン塩酸塩(1.0g)を入れ、0℃で攪拌しつつ0.5L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、UV-Cを含む光を照射した。
3時間後、低圧水銀ランプの電源を切り、通常の室内灯下、ピリジン(4mL,50mmol)を添加し、0℃で1時間攪拌した。反応液に内部標準としてジクロロメタン(384μL)を添加し、1H-NMRで分析したところ、目的化合物である2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ-1,6-ジイソシアナトヘキサンが収率98%で生成していることが確認された。
【0098】
実施例16: ビス(2-イソシアナトエチル)スルファンの合成
【化20】
実施例1で用いた反応システムの反応容器内に精製したクロロホルム(50mL)を入れ、0℃で攪拌しつつ0.5L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、UV-Cを含む光を照射した。
3時間後、低圧水銀ランプの電源を切り、通常の室内灯下、2,2-チオビス(エチルアミン)(1.15mL,10mmol)のクロロホルム溶液(5mL)を添加し、次いで、ピリジン(4mL,50mmol)を添加し、0℃で30分間攪拌した。反応液に内部標準としてジクロロメタン(1.28mL)を添加し、1H-NMRで分析したところ、目的化合物であるビス(2-イソシアナトエチル)スルファンが収率34%で生成していることが確認された。
【0099】
実施例17: (3-イソシアナトプロピル)トリメトキシシランの合成
【化21】
実施例1で用いた反応システムの反応容器内に精製したクロロホルム(60mL)を入れ、0℃で攪拌しつつ0.5L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、UV-Cを含む光を照射した。
3時間後、低圧水銀ランプの電源を切り、通常の室内灯下、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(3.6mL,20mmol)のクロロホルム溶液(5mL)を添加し、次いで、ルチジン(11.2mL,100mmol)を添加し、0℃で1時間攪拌した。反応液に内部標準として1,2-ジクロロエタン(0.79mL,10mmol)を添加し、1H-NMRで分析したところ、目的化合物である(3-イソシアナトプロピル)トリメトキシシランが収率93%で生成していることが確認された。
【0100】
実施例18: (3-イソシアナトプロピル)トリエトキシシランの合成
【化22】
実施例1で用いた反応システムの反応容器内に精製したクロロホルム(50mL)を入れ、0℃で攪拌しつつ0.5L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、UV-Cを含む光を照射した。
3時間後、低圧水銀ランプの電源を切り、通常の室内灯下、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(2.4mL,10mmol)のクロロホルム溶液(5mL)を添加し、次いで、ルチジン(5.8mL,50mmol)を添加し、0℃で1時間攪拌した。反応液に内部標準としてジクロロメタン(0.64mL,10mmol)を添加し、1H-NMRで分析したところ、目的化合物である(3-イソシアナトプロピル)トリエトキシシランが収率56%で生成していることが確認された。
【0101】
実施例19: 含フッ素ビスカルバメートの合成
【化23】
実施例1で用いた反応システムの反応容器内に精製したクロロホルム(50mL)を入れ、0℃で攪拌しつつ0.5L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、UV-Cを含む光を照射した。
3時間後、低圧水銀ランプの電源を切り、通常の室内灯下、ヘキサメチレンジアミン(0.58g,5mmol)のクロロホルム溶液(10mL)を添加し、0℃で10分間攪拌した。次いで、ピリジン(4mL,50mmol)を添加し、0℃で30分間攪拌し、更に60℃で1.5時間攪拌した。反応液に内部標準としてジクロロメタン(0.64mL,10mmol)を添加し、1H-NMRで分析したところ、目的化合物であるヘキサメチレンジイソシアネートが収率96%で生成していることが確認された。
更に、反応液へヘキサフルオロ-2-プロパノール(5.3mL,50mmol)を添加し、室温で3日間攪拌した。次いで、反応液に水とジクロロメタンを添加し、分液した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られたサンプルをシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:THF)によって精製し、ジクロロメタンで再結晶し、析出した結晶を濾取し、真空乾燥した。得られた白色固体を1H NMRで分析したところ、目的化合物である含フッ素ビスカルバメート[ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2-イル) ヘキサン-1,6-ジイルジカルバメート]が23%の単離収率で得られた。
【0102】
実施例20: 1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの合成
【化24】
実施例1で用いた反応システムの反応容器内に精製したクロロホルム(50mL)を入れ、0℃で攪拌しつつ0.5L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、UV-Cを含む光を照射した。
3時間後、低圧水銀ランプの電源を切り、通常の室内灯下、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(cis-trans混合物)(0.76mL,5mmol)のクロロホルム溶液(5mL)を添加し、次いで、ピリジン(4mL,50mmol)を添加し、0℃で30分間攪拌した。反応液に内部標準として1,2-ジクロロエタン(395μL,5mmol)を添加し、1H NMRで分析したところ、目的化合物である1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンが収率58%で生成していることが確認された。
【0103】
実施例21: 1,5-ナフタレンジイソシアネートの合成
【化25】
実施例1で用いた反応システムの反応容器内に精製したクロロホルム(50mL)を入れ、0℃で攪拌しつつ0.5L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、UV-Cを含む光を照射した。
3時間後、低圧水銀ランプの電源を切り、通常の室内灯下、1,5-ジアミノナフタレン(0.79g,5mmol)のクロロホルム溶液(5mL)を添加し、次いで、ピリジン(4mL,50mmol)を添加し、0℃で30分間攪拌した。反応液に内部標準として1,2-ジクロロエタン(198μL,2.5mmol)を添加し、1H NMRで分析したところ、目的化合物である1,5-ナフタレンジイソシアネートが収率67%で生成していることが確認された。
【0104】
実施例22: ノルボルネンジイソシアネートの合成
【化26】
実施例1で用いた反応システムの反応容器内に精製したクロロホルム(50mL)を入れ、0℃で攪拌しつつ0.5L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、UV-Cを含む光を照射した。
3時間後、低圧水銀ランプの電源を切り、通常の室内灯下、ノルボルネンジアミン(NBDA,0.77mL,5mmol)のクロロホルム溶液(5mL)を添加し、次いで、ピリジン(4mL,50mmol)を添加し、0℃で30分間攪拌した。反応液に内部標準として1,2-ジクロロエタン(395μL,5mmol)を添加し、1H-NMRで分析したところ、目的化合物であるノルボルネンジイソシアネートが収率65%で生成していることが確認された。
【0105】
実施例23: ペンタメチレンジイソシアネートの合成
【化27】
実施例1で用いた反応システムの反応容器内に精製したクロロホルム(50mL)を入れ、0℃で攪拌しつつ0.5L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、UV-Cを含む光を照射した。
3時間後、低圧水銀ランプの電源を切り、通常の室内灯下、ペンタメチレンジアミン(PDA)(0.59mL,5mmol)のクロロホルム溶液(5mL)を添加し、次いで、ピリジン(4mL,50mmol)を添加し、0℃で30分間攪拌した。反応液に内部標準として1,2-ジクロロエタン(395μL,5mmol)を添加し、1H-NMRで分析したところ、目的化合物であるペンタメチレンジイソシアネートが収率83%で生成していることが確認された。
【0106】
実施例24: 1,4-フェニレンジイソシアネートの合成
【化28】
実施例1で用いた反応システムの反応容器内に精製したクロロホルム(50mL)を入れ、0℃で攪拌しつつ0.5L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、UV-Cを含む光を照射した。
3時間後、低圧水銀ランプの電源を切り、通常の室内灯下、1,4-フェニレンジアミン(0.54g,5mmol)のクロロホルム溶液(5mL)を添加し、次いで、ピリジン(4mL,50mmol)を添加し、0℃で30分間攪拌した。反応液に内部標準として1,2-ジクロロエタン(395μL,5mmol)を添加し、1H-NMRで分析したところ、目的化合物である1,4-フェニレンジイソシアネートが収率47%で生成していることが確認された。
【符号の説明】
【0107】
1: 光照射手段, 2: ジャケット, 3: ウォーターバス
4: 撹拌子, 5: 熱媒または冷媒, 6: 筒状反応容器
図1