(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】ステビオール配糖体の分離方法、レバウディオサイドAの製造方法およびステビオール配糖体の分離装置
(51)【国際特許分類】
C07H 15/256 20060101AFI20240229BHJP
C07H 1/06 20060101ALI20240229BHJP
B01J 20/281 20060101ALI20240229BHJP
G01N 30/46 20060101ALI20240229BHJP
G01N 30/88 20060101ALI20240229BHJP
G01N 30/26 20060101ALI20240229BHJP
B01D 15/00 20060101ALI20240229BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
C07H15/256 A
C07H1/06
B01J20/281 X
G01N30/46 A
G01N30/88 N
G01N30/26 A
B01D15/00 101A
B01J20/26 G
B01J20/26 L
(21)【出願番号】P 2022114161
(22)【出願日】2022-07-15
(62)【分割の表示】P 2020509226の分割
【原出願日】2019-03-27
【審査請求日】2022-08-12
(31)【優先権主張番号】P 2018060212
(32)【優先日】2018-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】596136316
【氏名又は名称】三菱ケミカルアクア・ソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【氏名又は名称】古部 次郎
(72)【発明者】
【氏名】西村 公志
(72)【発明者】
【氏名】渡部 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】足立 正
【審査官】早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-528966(JP,A)
【文献】特開2002-219367(JP,A)
【文献】特開2017-211352(JP,A)
【文献】特開平06-340818(JP,A)
【文献】特開2000-310623(JP,A)
【文献】特開2011-051909(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106749448(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101366496(CN,A)
【文献】特開平06-192283(JP,A)
【文献】国際公開第2009/140394(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/023103(WO,A1)
【文献】BA,Jing et al.,Separation of Rebaudiana A from Steviol glycoside using a polymeric adsorbent with multi-hydrogen bo,Journal of Chromatography B,2014年,Vol.971,pp.141-149
【文献】ZHANG,R. et al.,Hydrophilic modification gigaporous resins with poly(ethylenimine) for high-throughput proteins ion-,Journal of Chromatography A,2014年,Vol.1343,pp.109-118
【文献】カラム総合カタログ2016-2017Shodex,昭和電工株式会社,2016年,22-23頁
【文献】CHEN,B. et al.,Purification and Preparation of Rebaudioside A from Steviol Glycosides Using One-Dimensional Hydroph,Journal of Chromatographic Science,2016年,Vol.54,No.8,pp.1408-1414
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H 15/256
C07H 1/06
B01D 15/00-15/36
B01J 20/26-20/36
G01N 30/26-30/88
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種のステビオール配糖体を含む被分離液を、ポリエチレンイミンが担体に固定化され、当該担体が
、エポキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体
、及び
、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類由来の構成単位を含む
、多孔性粒子である分離剤に通液することで、少なくとも1種のステビオール配糖体を連続して分離する連続式液体クロマトグラフィーを行なう分離工程を含
み、
前記分離剤は、前記担体に前記ポリエチレンイミンが担体に固定化された後に、前記多孔性粒子に残存する前記エポキシ基をジオールに変換させておく、ステビオール配糖体の分離方法。
【請求項2】
前記多孔性粒子におけるアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類単量体の含有量が、全単量体に対して、5質量%以上95質量%以下である、請求項1に記載のステビオール配糖体の分離方法。
【請求項3】
前記被分離液は、ステビオール配糖体としてレバウディオサイドAを含み、
前記被分離液から前記レバウディオサイドAを分離することを特徴とする請求項1に記載のステビオール配糖体の分離方法。
【請求項4】
前記被分離液は、ステビオール配糖体としてステビオサイドをさらに含み、
前記被分離液から前記レバウディオサイドAとステビオサイドとをそれぞれ分離することを特徴とする請求項3に記載のステビオール配糖体の分離方法。
【請求項5】
前記被分離液は、炭素数4以下の低級アルコールを溶媒とすることを特徴とする請求項3に記載のステビオール配糖体の分離方法。
【請求項6】
前記連続式液体クロマトグラフィーは、擬似移動床式の装置を使用して行なうことを特徴とする請求項1に記載のステビオール配糖体の分離方法。
【請求項7】
レバウディオサイドAを含む複数種のステビオール配糖体を含む被分離液を、ポリエチレンイミンが担体に固定化され、当該担体が
、エポキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体
、及び
、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類由来の構成単位を含む
、多孔性粒子である分離剤に通液することで、前記レバウディオサイドAを連続して分離する連続式液体クロマトグラフィーを行なう分離工程を含
み、
前記分離剤は、前記担体に前記ポリエチレンイミンが担体に固定化された後に、前記多孔性粒子に残存する前記エポキシ基をジオールに変換させておく、レバウディオサイドAの製造方法。
【請求項8】
被分離液中に含まれる複数種のステビオール配糖体をクロマトグラフィーにより分離するためのポリエチレンイミンが担体に固定化され、当該担体が
、エポキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体
、及び
、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類由来の構成単位を含む
、多孔性粒子である分離剤を充填する、複数の充填部と、
前記充填部のそれぞれに設けられ、前記被分離液と、当該被分離液中の少なくとも1種のステビオール配糖体に富む分離液を抜き出すための溶離液とを、当該充填部に別々に供給する供給部と、
前記充填部のそれぞれに設けられ、前記分離液を当該充填部から抜き出す抜出部と、
を備え
、
前記分離剤は、前記多孔性粒子に残存する前記エポキシ基がジオールに変換されている、
ステビオール配糖体の分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステビオール配糖体の分離方法等に関し、より詳しくは、複数種のステビオール配糖体を含む被分離液から少なくとも1種のステビオール配糖体を分離するステビオール配糖体の分離方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
キク科ステビア属の草木であるステビアは、甘味を有し、ステビアから抽出されたステビア抽出物には、甘味成分として複数種のステビオール配糖体が含まれる。具体的には、ステビオール配糖体として、レバウディオサイドA(C44H70O23)およびステビオサイド(C38H60O18)が主成分として含まれ、他にもこれらの誘導体が含まれる。このうちステビオサイドは、砂糖に対し300倍の甘味度を有するが、苦味や渋味を有する。対してレバウディオサイドAは、砂糖に対し450倍の甘味度を有するのみならず、苦みや渋味がない。さらに低カロリーであることから、レバウディオサイドAは、例えば、甘味料として適している。
【0003】
特許文献1には、分子篩作用を有する樹脂を充填した少なくとも4つの充填塔を有する分離装置を用いて、レバウディオサイドAとステビオサイドを含む組成物からレバウディオサイドAを精製する方法であって、上記樹脂として水分含量が50~57質量%であるスチレン系のゲル型強酸性陽イオン交換樹脂を用いることを特徴とする、リサイクルクロマト法によるレバウディオサイドAの精製方法が開示されている。
【0004】
また特許文献2には、キク科植物ステビア・レバウディアナ・ベルトニーに含まれる甘味成分中のレバウディオサイドAをゲル濾過法を用いて単離するゲル濾過の濾過用ゲルとしては親水性ビニルポリマーを使用する純粋なレバウディオサイドAを生産する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-51909号公報
【文献】特開平6-192283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の通り、レバウディオサイドAは、例えば、甘味料として適しており、ステビア抽出物に含まれる複数種のステビオール配糖体を分離すること、特にレバウディオサイドAを抽出することが求められる。
しかしながら従来の方法では、複数種のステビオール配糖体を効率よく分離することは困難であり、例えば、高純度のレバウディオサイドAを得るには、分離処理に多大な労力や時間を要するという問題があった。
本発明の目的は、複数種のステビオール配糖体から少なくとも1種のステビオール配糖体を分離する際に、効率的に高純度化を図ることができるステビオール配糖体の分離方法等を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ポリエチレンイミンを担体に担持した新規な分離剤を用いて、ステビオール配糖体の液体クロマトグラフィーによる分離効率を高める検討を行った。その結果、工業化向けの効率的に高純度化を分離できるプロセスを見出して本発明を完成した。
かくして本発明によれば、複数種のステビオール配糖体を含む被分離液を、ポリエチレンイミンが担体に固定され、担体が、エポキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体、及び、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類由来の構成単位を含む、多孔性粒子である分離剤に通液することで、少なくとも1種のステビオール配糖体を連続して分離する連続式液体クロマトグラフィーを行なう分離工程を含み、分離剤は、担体にポリエチレンイミンが担体に固定化された後に、多孔性粒子に残存するエポキシ基をジオールに変換させておく、ステビオール配糖体の分離方法が提供される。
【0008】
ここで、多孔性粒子におけるアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類単量体の含有量が、全単量体に対して、5質量%以上95質量%以下にすることができる。この場合、ポリエチレンイミンに対する担体としてより優れている。
さらに被分離液は、ステビオール配糖体としてレバウディオサイドAを含み、被分離液からレバウディオサイドAを分離するようにすることができる。この場合、レバウディオサイドAを他のステビオール配糖体から効率よく分離することができる。
またさらに被分離液は、ステビオール配糖体としてステビオサイドをさらに含み、被分離液からレバウディオサイドAとステビオサイドとをそれぞれ分離するようにすることができる。この場合、レバウディオサイドAとステビオサイドとを効率よく分離することができる。
そして被分離液は、炭素数4以下の低級アルコールを溶媒とすることができる。この場合、ステビオール配糖体の分離効率がより向上する。
連続式液体クロマトグラフィーは、擬似移動床式の装置を使用して行なうことができる。この場合、ステビオール配糖体の高純度化と回収効率の両立を図ることができる。
【0009】
また本発明によれば、レバウディオサイドAを含む複数種のステビオール配糖体を含む被分離液を、ポリエチレンイミンが担体に固定化され、担体が、エポキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体、及び、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類由来の構成単位を含む、多孔性粒子である分離剤に通液することで、レバウディオサイドAを連続して分離する連続式液体クロマトグラフィーを行なう分離工程を含み、分離剤は、担体にポリエチレンイミンが担体に固定化された後に、多孔性粒子に残存するエポキシ基をジオールに変換させておく、レバウディオサイドAの製造方法を提供できる。
【0010】
さらに本発明によれば、被分離液中に含まれる複数種のステビオール配糖体をクロマトグラフィーにより分離するためのポリエチレンイミンが担体に固定化され、担体が、エポキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体、及び、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類由来の構成単位を含む、多孔性粒子である分離剤を充填する、複数の充填部と、充填部のそれぞれに設けられ、被分離液と、被分離液中の少なくとも1種のステビオール配糖体に富む分離液を抜き出すための溶離液とを、充填部に別々に供給する供給部と、充填部のそれぞれに設けられ、分離液を充填部から抜き出す抜出部と、を備え、分離剤は、多孔性粒子に残存するエポキシ基がジオールに変換されている、ステビオール配糖体の分離装置を提供できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数種のステビオール配糖体から少なくとも1種のステビオール配糖体を分離する際に、効率的に高純度化を図ることができるステビオール配糖体の分離方法等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態が適用されるステビオール配糖体の分離フローについて示した図である。
【
図2】本実施の形態が適用される擬似移動床式のクロマト分離装置について説明した図である。
【
図3】本実施形態におけるクロマト分離装置の動作について説明したフローチャートである。
【
図4】(a)~(b)は、充填部内のP成分およびR成分のそれぞれの濃度分布について示した図である。
【
図5】(a)~(h)は、
図3のステップ101~ステップ102の2工程(供給抜出工程、循環工程)を4回(1サイクル目~4サイクル目)繰り返した場合の充填部内の被分離液や溶離液の流れの向きを示した図である。
【
図6】クロマト分離装置の他の例として、リサイクル式のクロマト分離装置を示した図である。
【
図7】
図6に示したクロマト分離装置を使用したときのクロマトグラムを示した図である。
【
図8】実施例A1のクロマトグラムを示した図である。
【
図9】実施例A2のクロマトグラムを示した図である。
【
図10】実施例A3のクロマトグラムを示した図である。
【
図11】比較例A1のクロマトグラムを示した図である。
【
図12】比較例A2のクロマトグラムを示した図である。
【
図13】比較例A3のクロマトグラムを示した図である。
【
図14】比較例B1のクロマトグラムを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。また、使用する図面は本実施の形態を説明するためのものであり、実際の大きさを表すものではない。
【0014】
<被分離液、溶離液、分離剤の説明>
(被分離液)
本実施の形態の被分離液は、含まれる複数の成分を、後述するクロマト分離装置を使用して分離する対象となる液体であり、水または有機溶媒等の溶媒に複数の成分が溶解したものである。そして、各成分の分離剤に対する相互作用の差を利用することで、複数の成分を大きく2つの画分に分離する。この複数の成分が、例えば、P成分およびR成分の2成分だった場合、これらを分離し、P成分およびR成分の何れかまたは双方を有用成分として選択的に抽出することができる。なお以下の説明では、分離剤との相互作用がより大きい成分をP成分、分離剤との相互作用がより小さい成分をR成分とし(分離剤との相互作用が、R成分<P成分の場合)、このP成分とR成分とを分離する場合について説明を行なう。つまりこの場合、被分離液を分離剤に通液すると、R成分の通過速度の方が、P成分の通過速度より大きくなる。その結果、通液方向に向かいR成分が先に進みやすく、P成分が後に残りやすい。つまりP成分とR成分との分離が生ずる。なお以後、これらの成分を分離した後の液体であって、P成分とR成分の何れかに富む液体を、「分離液」と言うことがある。
【0015】
なお分離を行なうことができるのは、含まれる成分が2成分の場合に限られるものではなく、3成分以上であってもよい。そしてこれらの中から1成分を分離する場合や大きく2つの画分に分離する場合などにも適用できる。
【0016】
本実施の形態では、被分離液は、複数種のステビオール配糖体を含む。含まれるステビオール配糖体は、例えば、レバウディオサイドA、レバウディオサイドB、レバウディオサイドC、レバウディオサイドD、レバウディオサイドE、レバウディオサイドF、レバウディオサイドG、レバウディオサイドH、レバウディオサイドI、レバウディオサイドJ、レバウディオサイドK、レバウディオサイドL、レバウディオサイドM、レバウディオサイドN、レバウディオサイドO、ステビオサイド、ズルコサイドA、ズルコサイドB、ルブソシド、ステビオールビオシドである。この場合、被分離液は、レバウディオサイドA、ステビオサイド、およびレバウディオサイドAやステビオサイドの誘導体を含むと言うこともできる。このうちステビア抽出物に含まれるステビオール配糖体は、上述したように、レバウディオサイドAおよびステビオサイドを主成分とする。
【0017】
(溶離液)
本実施の形態では、溶離液は、分離剤を充填する充填層において成分を展開し、分離剤と成分の相互作用の大きさを調整するために使用する液体である。分離剤と成分間の相互作用を溶離液濃度によって調整することで、各成分を分離して溶出させることができる。
【0018】
(分離剤)
分離剤は、被分離液中の成分を吸着する。本実施の形態では、ポリエチレンイミンを担体に担持した分離剤を使用する。
【0019】
[1]担体
本実施の形態で用いられる担体は、水やアルコールに不溶性のものであれば特に制限なく用いることができる。例えば、高分子材料からなる高分子担体や無機材料からなる無機担体が挙げられる。
【0020】
高分子担体を構成する高分子材料としては、ビニル系合成高分子、例えば、ポリスチレン(PS)などのスチレン系合成高分子、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などの(メタ)アクリル系合成高分子、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラールなどのアセタール系合成高分子、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリアクリルアミド(PAA)、ポリビニルエーテル系合成高分子など;ジエン系合成高分子、例えばポリブタジエン(PBd)、ポリイソプレン(PIP)など;縮合系合成高分子、例えばナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系合成高分子、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリラクトンなどのポリエステル系合成高分子、ポリカーボネート(PC)、ポリオキシメチレン(POM)などのポリエーテル系合成高分子;硬化型合成高分子、例えばポリウレタン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、ポリアニリン(PANI)など;エポキシ系合成高分子;シリコーン系合成高分子;その他、キシレン系合成高分子、フラン系合成高分子、テルペン系合成高分子、石油系合成高分子、ケトン系合成高分子、ポリ環状チオエーテルなどの硫黄系合成高分子などが挙げられる。
【0021】
無機担体を構成する無機材料としては、例えば、活性炭、シリカゲル、珪藻土、ヒドロキシアパタイト、アルミナ、酸化チタン、マグネシア、ポリシロキサン等が挙げられる。
【0022】
このうち本実施の形態では、高分子担体を好適に用いることができ、(メタ)アクリル系合成高分子からなる高分子担体を特に好適に用いることができる。さらに高分子担体は、多孔性粒子であることが好ましい。
【0023】
本実施の形態で用いられる多孔性粒子は、架橋性(メタ)アクリル系合成高分子からなる多孔質の粒子を好適に用いることができる。例えば、多孔性粒子として、モノビニル(メタ)アクリレートと、架橋性(メタ)アクリレートとの共重合で得られる、架橋構造を有する多孔性粒子が挙げられる。なお、本明細書において(メタ)アクリル系合成高分子とは、重合体を構成する原料となる単量体の50重量%以上、好ましくは80重量%以上が、(メタ)アクリル系単量体からなることを言う。よって、本実施の形態で用いられる多孔性粒子は、高分子の全構成単位の50重量%以上がアクリル系単量体またはメタクリル系単量体由来の構成単位であればよく、その他の重合性ビニル単量体由来の構成単位を含んでいてもよい。つまり耐加水分解性に優れ、得られる分離剤の使用可能期間が向上することから、好ましくは高分子の全構成単位の50重量%以上をメタクリル系単量体由来の構成単位で構成されていることが好ましく、70重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上であることがより好ましい。
【0024】
本実施の形態で用いられる(メタ)アクリル系合成高分子を構成する構成単位としては、後述の多孔性粒子の製造方法における原料として挙げた(メタ)アクリル系単量体または重合性ビニル単量体に由来する構成単位が例示される。また、種類や比率などの好ましい範囲も後述の(メタ)アクリル系単量体または重合性ビニル単量体と同様に考えられる。
本実施の形態で用いられる多孔性粒子は、特定の分子量のポリエチレンイミンを共有結合で固定化するための反応性官能基を有していることが好ましい。反応性官能基としては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、クロロメチル基等のハロゲン基やエポキシ基などが挙げられるが、官能基導入のし易さおよび反応性の観点からエポキシ基が好ましい。
【0025】
この反応性官能基は、上述の(メタ)アクリル系単量体または重合性ビニル単量体由来の構成単位として、反応性官能基となり得る官能基を有する単量体由来の構成単位を選択することで導入することができる。よって、本実施の形態で用いられる多孔性粒子は、エポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体を含む(メタ)アクリル系単量体由来の構成単位で構成されていることが好ましい。反応性官能基となり得る官能基を有する単量体由来の構成単位やその比率については、多孔性粒子の製造方法における原料と同様に考えられる。
【0026】
(1)多孔性粒子の製造方法
本実施の形態で用いられる多孔性粒子は、典型的には重合性モノビニル単量体、重合性ポリビニル単量体、多孔質化剤、重合開始剤等を含むモノマー相を、分散安定剤等を含む水相に分散させ、加熱等による重合反応を行なうことにより製造することができる。そしてこれにより架橋構造を持つ、球状の多孔性粒子が得られる。この際、重合性モノビニル単量体、および重合性ポリビニル単量体の50重量%以上が(メタ)アクリル系単量体であるようにすることができる。多孔性粒子が有する反応性官能基は、上述の重合性モノビニル単量体または重合性ポリビニル単量体として、反応性基となり得る官能基を有する単量体を選択することで導入することができる。
【0027】
さらに具体的には、このような多孔性粒子は、例えば、特公昭58-058026号公報や、特開昭53-090911号公報に開示されているような方法を用いることができる。即ち、多孔性粒子は、反応性官能基付与性を有する(メタ)アクリル系単量体と(メタ)アクリル系単量体等とを、懸濁重合や乳化重合させることによって製造することができる。
重合性モノビニル単量体として選択される上記の(メタ)アクリル系単量体は、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類、(メタ)アクリロニトリルのようなニトリル類、グリシジル(メタ)アクリレート、4,5-エポキシブチル(メタ)アクリレート、9,10-エポキシステアリル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有単量体などが例示できる。
【0028】
また、この多孔性粒子に架橋構造を付与するための重合性ポリビニル単量体としては、重合反応時に重合可能な官能基を分子中に複数個有する多官能性(メタ)アクリル系単量体を共存させる方法が一般的に用いられる。このような多官能性(メタ)アクリル系単量体としては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類や、その他アルキレンジ(メタ)アクリレート、N,N’-アルキレンビス(メタ)アクリルアミド類、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多価(メタ)アクリル化合物、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート等の多価アリル化合物などが挙げられる。
【0029】
このような多官能性(メタ)アクリル系単量体などの重合性ポリビニル単量体の使用量としては、全単量体に対して、多官能性単量体量が5重量%以上、95重量%以下であるのが好ましく、より好ましくは10重量%以上、90重量%以下である。
重合性ポリビニル単量体が5重量%未満では、細孔構造の発達が不十分になったり、得られる重合体粒子の強度も低下する。一方、多官能性単量体量が95重量%を超えて高くなると、ポリエチレンイミンの固定化が進行しにくくなり、導入量が低下して、ステビオール配糖体の吸着量が不十分となりやすい。
【0030】
上述したように、本実施の形態で用いられる多孔性粒子の原料として、モノ(メタ)アクリル系単量体以外の重合性ビニル単量体を含んでいてもよい。重合性ビニル単量体は、通常、原料となる全単量体の30重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下含んでいてもよい。
モノ(メタ)アクリル系単量体以外の重合性モノビニル単量体としては、イタコン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸類;スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレンおよびそのアルキルまたはハロゲン置換体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;アリルアルコールおよびそのエステルまたはエーテル類;(メタ)アクリロニトリル、ビニルスルホン酸、p-スチレンスルホン酸、ビニルピリジン、ビニルピロリドン等、その他のビニル化合物;等が挙げられる。
【0031】
多官能系(メタ)アクリル系単量体以外の重合性ポリビニル単量体としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、2,4,6-トリビニルエチルベンゼン等の芳香族ポリビニル化合物;アジピン酸ジビニル、マレイン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸トリアリル等のポリカルボン酸ポリビニルエステル、ポリカルボン酸ポリアリルエステル類;ジビニルエーテル、(ポリ)エチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル等のポリオールポリビニルエーテル、ポリオールポリアリルエーテル類;ブタジエン、メチレンビスアクリルアミド等その他のポリビニル化合物;等が挙げられる。
【0032】
反応性官能基付与性を有する重合性ビニル単量体としては、特定の分子量のポリエチレンイミンを共有結合で固定化できるような反応性官能基そのものを有する重合性単量体がある。またはこのような反応性官能基を有する化合物(リンカー)と反応可能な官能基を有する重合性単量体がある。本実施の形態ではそのいずれも使用可能である。
この特定の分子量のポリエチレンイミンを共有結合で固定化できる反応性官能基としては、ポリエチレンイミンの結合部位に相当する官能基の種類に応じて選択すればよい。例えばエポキシ基、カルボキシル基などが挙げられる。中でも反応性の点から、エポキシ基が好ましい。
【0033】
このようなエポキシ基を有する重合性単量体としては、上述の(メタ)アクリル系単量体の例として挙げられている、グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有単量体の他、アリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、4-エポキシ-1-ブテンなどが挙げられる。中でもグリシジル(メタ)アクリレートが好ましく、さらにグリシジルメタクリレートが特に好ましい。
【0034】
[2]ポリエチレンイミン
本実施の形態の分離剤は、前述の多孔性粒子にポリエチレンイミンが共有結合で固定化されていることが好ましい。
本実施の形態に用いられるポリエチレンイミンは、質量平均分子量(以下、単に「分子量」ともいう)が200以上、10万以下であることが好ましい。ポリエチレンイミンの分子量は、好ましくは300以上、より好ましくは500以上であって、好ましくは10万以下、より好ましくは1万以下である。本実施の形態の分離剤では、官能基であるポリエチレンイミンが分離対象であるステビオール配糖体と三次元的に相互作用するために分離性が向上するものと推定されることから、分子量が200を下回ると分離対象であるステビオール配糖体との相互作用程度が不十分となる。また10万を上回ると粘度が高くなることから固定化反応に際して多量の溶媒での希釈が必要となり、また固定化反応の反応率が低下し分離剤への導入量が低下することから結果的にステビオール配糖体の吸着量が低下する。
なお、この分子量とは代表的な値であり、具体的には株式会社日本触媒より販売される工業用ポリエチレンイミン(商品名:エポミン)や各種試薬会社より販売される試薬ポリエチレンイミン等に表記される分子量を満たす。
【0035】
(1)多孔性粒子の反応性官能基
上述のポリエチレンイミンを、架橋構造を有する(メタ)アクリル系合成高分子の多孔性粒子に共有結合で固定化する方法は、通常以下のような方法が用いられるが、これに限定されるものではない。
固定化は、(メタ)アクリル系合成高分子粒子に反応性官能基付与性を有する(メタ)アクリル系単量体を共重合等の形で取り込ませておいた上で、この反応性官能基と、ポリエチレンイミンとを直接反応させる方法を用いることができる。また他にも(メタ)アクリル系合成高分子の構成成分に含まれる官能基およびポリエチレンイミンにそれぞれ反応可能な官能基を分子内にそれぞれ1個以上有する低分子または高分子化合物(以下、このような化合物をまとめて「スペーサー」と記す)を介して結合させる方法を用いることができる。
【0036】
例えば前者の方法としては、(メタ)アクリル系合成高分子粒子にエポキシ基、カルボキシル基などのアミノ基と共有結合を形成する官能基を含有させておき、これとポリエチレンイミンを直接反応させて固定化する方法が例示できる。
また、後者の方法としては、例えば、スペーサーとしてアミノ酸(アミノカルボン酸)類を用い、そのアミノ基部位と(メタ)アクリル系合成高分子のエポキシ基とを反応させた上で、他の末端のカルボキシル基によってポリエチレンイミンのアミノ基と反応させる方法が挙げられる。また他にもスペーサーとして(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリオールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物を用いて、(メタ)アクリル系合成高分子中のヒドロキシル基やアミノ基とポリグリシジル化合物の一方の末端を結合させ、残る末端のエポキシ基をポリエチレンイミンと結合させる方法などが挙げられる。
【0037】
なお、スペーサーとしてはポリエチレンイミンとの反応性や固定化時の(メタ)アクリル系合成高分子粒子との立体障害の関係を考慮すると、直鎖状の構造を有していることが好ましい。分岐鎖状の構造のスペーサーを用いると、立体障害が大きくなって、ポリエチンイミンの固定化反応を抑制するためか、吸着量が低下する傾向となる。
【0038】
(2)ポリエチレンイミンの固定化反応
ポリエチレンイミンの固定化反応に際しては、例えばポリエチレンイミンをそのまま、あるいは有機溶媒溶液または水溶液として、上記エポキシ基等を有する(メタ)アクリル系合成高分子の多孔性粒子に供給し、反応を行わせる。
ポリエチレンイミンを単独で用いると粘度が高く、工業的に製造するには設備的な問題があることから、有機溶媒溶液または水溶液として上記エポキシ基等を有する(メタ)アクリル系多孔性粒子に供給することが好ましい。さらにエポキシ基を有する(メタ)アクリル系多孔性粒子を用いる場合には、水溶液系ではエポキシ基への水付加によるジオール生成反応との競争反応となることから、有機溶媒溶液として上記エポキシ基等を有する(メタ)アクリル系合成高分子の多孔性粒子に供給することが特に好ましい。
【0039】
有機溶媒については、ポリエチレンイミンを溶解することが可能なものが好ましく、ブチルアルコール類、プロピルアルコール類、エチルアルコールおよびメチルアルコール等のアルコール類や、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)およびジオキサン等のエーテル類、またジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類等が例示されるが、上記エポキシ基等を有する(メタ)アクリル系合成高分子の多孔性粒子を膨潤させるエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチルエーテル、THFおよびジオキサン等のエーテル類がさらに好ましい。
固定化反応の温度は常温(25℃)~100℃程度が好ましい。温度が高くなると(メタ)アクリル系多孔性粒子の分解の懸念があり、一方温度が低いと反応に長時間を要することとなる。
【0040】
(3)後処理
上記のように固定化反応を行った後、多孔性粒子側に残存する反応性官能基は、後処理により不活性化しておくことが好ましい。不活性化せずに残った反応性官能基は、徐々にステビオール配糖体やステビア葉抽出物中の夾雑物等の活性基と反応し、分離剤の吸着容量を低下させたり、分離選択性を悪化させたりする場合がある。
【0041】
このような後処理としては、例えば反応性官能基としてエポキシ基を例に取れば、水と反応させてジオールに変換する方法が例示できる。このときの触媒としてリン酸、硫酸等の無機酸水溶液、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ類水溶液が挙げられ、特に硫酸水溶液の使用が好ましい。硫酸水溶液の濃度や反応温度、反応時間等の処理条件は、特に制限されるものではないが、通常、濃度1%~30%、温度10℃~90℃の条件で0.1時間~24時間実施することができる。さらに好ましい処理条件は濃度3%~20%、温度20℃~80℃にて1時間~10時間である。
【0042】
<ステビオール配糖体の分離フローの説明>
図1は、本実施形態が適用されるステビオール配糖体の分離フローについて示した図である。なお
図1で示したステビオール配糖体の分離フローは、ステビオール配糖体の分離方法と捉えることもできる。
【0043】
図示するように、本実施の形態のステビオール配糖体の分離フローは、熱水抽出工程51と、薬剤処理工程52と、ろ過工程53と、吸着工程54と、分離工程55と、溶媒留去工程56と、カチオン交換工程57と、アニオン交換工程58と、脱色工程59と、濃縮工程60と、噴霧乾燥工程61とを含む。
【0044】
熱水抽出工程51では、ステビアの葉を乾燥した乾葉を原料とし、この乾葉を熱水に入れ、乾葉に含まれる成分を抽出する熱水抽出を行なう。原料である乾葉は、例えば、ステビアの葉を、20℃~60℃にて1時間~24時間乾燥させたものである。また乾燥後の葉をさらに粉砕したものを原料としてもよい。なお溶媒として、水の代わりに、アルコール等の有機溶媒を使用して抽出を行なってもよい。また超臨界流体を用いて抽出を行なう超臨界流体抽出、酵素を用いて抽出を行なう酵素抽出、微生物を用いて抽出を行なう微生物抽出、超音波を用いて抽出を行なう超音波抽出、マイクロ波を用い抽出を行なうマイクロ波抽出などの方法を利用することもできる。熱水抽出した後の抽出液には、複数のステビオール配糖体の他、不純物が含まれる。
【0045】
薬剤処理工程52では、熱水抽出工程51を経た後の抽出液に薬剤を添加し、不純物を凝集させる処理を行なう。ここでは、抽出液に含まれる不純物表面の電荷を中和し、ファンデルワールス力(分子間引力)により抽出液中に分散する粒子を集合させる凝結作用により凝集を生じさせる。つまり薬剤は、凝集剤であり、例えば、カリウムミョウバン(カリウムイオン、水和アルミニウムイオンおよび硫酸イオンを含む複塩)、硫酸アルミニウム(Al2(SO4)3)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、酸化アルミニウム(Al2O3)、五酸化二リン(P2O5)、酸化マグネシウム(MgO)、硫酸鉄(FeSO4)、塩化鉄(FeCl3)等を用いることができる。
薬剤処理工程52では、抽出液に薬剤を添加し、pHを例えば、8.5~9.0の間に調整しつつ、5分~1時間撹拌することで処理を行なう。pHの調整は、例えば、塩化カルシウム(CaCl2)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化ナトリウム(NaOH)等を使用することで行なう。
【0046】
ろ過工程53では、薬剤処理工程52で凝集した不純物を、ろ過することにより除去する。ろ過は、例えば、フィルタを使用した重力ろ過や遠心ろ過により行なう。
【0047】
吸着工程54では、合成吸着剤を用いてステビオール配糖体を吸着する。吸着工程54では、例えば、合成吸着剤を充填した1つまたは複数のカラムにろ過工程53によりろ過したろ過液を通液することで処理を行なう。合成吸着剤は、多孔質構造を有する架橋高分子からなり、例えば、球状とすることができる。吸着工程54で使用できる合成吸着剤としては、例えば、スチレン-ジビニルベンゼン系合成吸着剤である三菱ケミカル株式会社製のダイヤイオン(登録商標)HP20や、芳香族系合成吸着剤である同社製のSP700が挙げられる。なお合成吸着剤を通液後の液は、廃液とする。
【0048】
合成吸着剤に吸着させたステビオール配糖体は、アルコール水溶液を用いて溶出させる。アルコール水溶液に含まれるアルコール(アルコール溶媒)としては、水と自由に混和するアルコールであれば特に限られるものではない。アルコールとしては、例えば、炭素数4以下の低級アルコールであることが好ましく、炭素数3以下の低級アルコールであることがさらに好ましい。具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール(イソプロピルアルコール(IPA))、1-ブタノール、2-ブタノール、およびこれらの混合物等が挙げられる。またアルコールは、アルコール水溶液全体に対し、例えば、30重量%~95重量%の濃度とすることができる。
吸着工程54によりさらに不純物を除去することができる。そして吸着工程54を経た後の被分離液は、不純物が除去されており、複数のステビオール配糖体が含まれる。
【0049】
分離工程55では、複数のステビオール配糖体の分離を行なう。具体的には、分離工程では、被分離液を、分離剤に通液することで、少なくとも1種のステビオール配糖体を連続して分離する連続式液体クロマトグラフィーを行なう。このとき使用される分離剤は、上述したポリエチレンイミンを担体に担持した分離剤である。分離工程55では、例えば、レバウディオサイドAを、他のステビオール配糖体から分離する。また上述したように、ステビア抽出物に含まれるステビオール配糖体は、レバウディオサイドAおよびステビオサイドを主成分とするため、この主成分同士を分離することが重要である。よって分離工程55では、レバウディオサイドAとステビオサイドとを分離する、と言うこともできる。分離工程55で使用されるステビオール配糖体の分離装置については、後で詳述する。
【0050】
溶媒留去工程56では、分離工程55を経た後の分離液に含まれるアルコール溶媒を除去する。具体的には、分離液を、減圧下で蒸留または蒸発することでアルコール溶媒を除去する。
【0051】
カチオン交換工程57では、カチオン交換体が充填されたカラムに溶媒留去工程56を経た後の分離液を通液する。これにより、溶媒留去工程56を経た後の分離液中のカチオン成分と、カチオン交換体中のイオン交換基とがイオン交換を行ない、カチオン成分を吸着する。カチオン交換体としては、カチオン交換樹脂(陽イオン交換樹脂)を使用することができる。
【0052】
カチオン交換樹脂としては、強酸性カチオン交換樹脂と弱酸性カチオン交換樹脂とに大別されるが、何れも使用することができる。ただし本実施の形態では、強酸性カチオン交換樹脂を使用している。
強酸性カチオン交換樹脂は、例えば、スルホン基を持つ酸性イオン交換樹脂が挙げられる。また本実施の形態で使用するカチオン交換樹脂を架橋度または多孔度で分類した場合には、ゲル型、ポーラス型、ハイポーラス型等が挙げられるが、いずれも使用可能である。具体的には、強酸性カチオン交換樹脂として、三菱ケミカル株式会社製のゲル型の強酸性カチオン交換樹脂であるダイヤイオンSK1B等を用いることができる。
弱酸性カチオン交換樹脂は、例えば、カルボキシル基(-COOH)を交換基とするものが挙げられる。またカルボキシル基の対イオンである水素イオン(H+)の替わりに、金属イオン、アンモニウムイオン(NH4
+)等の陽イオンとなっていてもよい。具体的には、弱酸性カチオン交換樹脂として、三菱ケミカル株式会社製のダイヤイオンWK40L等を用いることができる。
【0053】
アニオン交換工程58では、アニオン交換体が充填されたカラムにカチオン交換工程57を経た後の分離液を通液する。これにより、カチオン交換工程57を経た後の分離液中のアニオン成分と、アニオン交換体中のイオン交換基とがイオン交換を行ない、アニオン成分を吸着する。アニオン交換体としては、アニオン交換樹脂(陰イオン交換樹脂)を使用することができる。
【0054】
アニオン交換樹脂としては、強塩基性アニオン交換樹脂と弱塩基性アニオン交換樹脂に大別されるが、何れも使用することができる。ただし本実施の形態では、強塩基性アニオン交換樹脂を使用している。
強塩基性アニオン交換樹脂は、例えば、四級アンモニウム基を交換基とするものが挙げられる。具体的には、三菱ケミカル株式会社製のダイヤイオンHPA25LやPA308等を用いることができる。
弱塩基性アニオン交換樹脂は、例えば、一級アンモニウム基や二級アンモニウム基を交換基とするものが挙げられる。具体的には、三菱ケミカル株式会社製のダイヤイオンWA10等を用いることができる。
【0055】
脱色工程59では、カチオン交換工程57およびアニオン交換工程58を経た後の脱イオン液に対し、脱色を行なう。脱色は、例えば、脱イオン液を活性炭に通液することで行なう。これにより着色成分が活性炭に吸着され、脱色が行なわれる。
【0056】
濃縮工程60は、脱色工程59を経た後の脱色液を加熱し、水分を蒸発させることで濃縮を行なう。
【0057】
噴霧乾燥工程61は、濃縮工程60を経た後の濃縮液を、噴霧乾燥機(スプレードライヤー)を使用することで噴霧乾燥する。
【0058】
以上の工程により、複数のステビオール配糖体から、例えば、レバウディオサイドAを選択的に分離し、これを甘味料等の製品とすることができる。また上述した工程によりレバウディオサイドAを分離する方法は、レバウディオサイドAの製造方法と考えることもできる。
なお熱水抽出工程51、薬剤処理工程52、ろ過工程53、吸着工程54は、複数種のステビオール配糖体を含む被分離液を準備する準備工程と捉えることができる。なおこれに限られるものではなく、例えば、被分離液を、例えば、購入し、用意するような場合もこの準備工程であると考えることができる。
【0059】
<ステビオール配糖体の分離装置の説明>
次に、分離工程55で使用されるステビオール配糖体の分離装置について詳述する。
本実施の形態では、ステビオール配糖体の分離装置として、以下に示す擬似移動床式のクロマト分離装置を使用する。
【0060】
図2は、本実施の形態が適用される擬似移動床式のクロマト分離装置1について説明した図である。
【0061】
クロマト分離装置1は、成分の分離を行なう充填部10と、被分離液や溶離液の供給を行なう供給部20と、分離液を抜き出す抜出部30と、流路の切り換えを行なう切換部40とを備える。
【0062】
本実施の形態では、充填部10は、1つのクロマト分離装置1に4個備えられる。本実施の形態では、充填部10として、充填部11、12、13、14(充填部11~14)を図示している。なお以後、充填部11、12、13、14のそれぞれを区別しない場合は、単に充填部10と言うことがある。充填部10は、被分離液中に含まれる複数種のステビオール配糖体をクロマトグラフィーにより分離するための分離剤を充填する。この分離剤は、上述したポリエチレンイミンを担体に担持した分離剤である。これらの分離剤を充填する分離塔は上部に空塔を持たないパックドカラムタイプとすることがより好ましい。なお充填部10は、1つのクロマト分離装置1に2個備えれば足りる。ただし、分離効率の観点から3個以上備えることがより好ましく、被分離液の状態等に基づいて分離工程の条件を調整したい場合には、4個以上備えることがさらに好ましい。また充填部10は、1つのクロマト分離装置1に5個以上備えてもよい。
【0063】
充填部10は、例えば、カラムであり、分離剤を充填するための空間を内部に有する。充填部10は、材質として例えば、鋼板などからなり、接液部はゴムライニングしたものとすることができるが、これに限られるものではない。例えば、充填部10の材質として樹脂等も使用することができる。また充填部10の形状としては特に限られるものではないが、本実施の形態では、例えば、略円筒形状とし、全体として塔形状をなす。
【0064】
供給部20は、充填部10のそれぞれに設けられ、被分離液と、被分離液中の少なくとも1種のステビオール配糖体に富む分離液を抜き出すための溶離液とを、充填部10に別々に供給する。供給部20は、例えば、充填部10の上部に設けられた供給口である。本実施の形態では、供給部20として、供給部21、22、23、24(供給部21~24)を図示している。なお以後、供給部21、22、23、24のそれぞれを区別しない場合は、単に供給部20と言うことがある。
【0065】
抜出部30は、充填部10のそれぞれに設けられ、分離液を充填部10から抜き出す。抜出部30は、例えば、充填部10の下部に設けられた排出口である。本実施の形態では、抜出部30として、抜出部31、32、33、34(抜出部31~34)を図示している。なお以後、抜出部31、32、33、34のそれぞれを区別しない場合は、単に抜出部30と言うことがある。
【0066】
切換部40は、例えば、開閉弁(開閉バルブ)である。そしてこの開閉弁を開閉することで、被分離液、溶離液、分離液の流路を切り換えることができる。本実施の形態では、切換部40は、溶離液開閉弁W1、W2、W3、W4(溶離液開閉弁W1~W4)、被分離液開閉弁F1、F2、F3、F4(被分離液開閉弁F1~F4)、接続路開閉弁X1、X2、X3、X4(接続路開閉弁X1~X4)、R成分開閉弁R1、R2、R3、R4(R成分開閉弁R1~R4)、およびP成分開閉弁P1、P2、P3、P4(P成分開閉弁P1~P4)を備える。
【0067】
被分離液において溶質であるステビオール配糖体の溶解度が温度に依存するため、クロマト分離装置1内の温度を一定に維持する必要がある。具体的には、30重量%~95重量%のイソプロピルアルコール(IPA)を溶媒としてステビオール配糖体を溶出させた場合には、装置内の温度が10℃~50℃であることが好ましく、20℃~40℃であることがより好ましく、25℃~35℃であることがさらに好ましい。装置内の温度が10℃以下では、ステビオール配糖体が装置内に析出しやすくなるため、配管詰まりや樹脂固まりが発生しやすくなり、その結果、偏流が生じて液流れが悪化しやすい。この場合、被分離液を装置内に連続的に通液できない問題があり、工業化を実現することが難しい。また、装置内の温度が50℃以上では、ステビオール配糖体の加熱による変質等の恐れがある。
装置内の温度を一定に維持するためには、保温材で配管やカラムの周囲を覆ってもよく、温度が変動しやすい場所にて熱交換装置を設置してもよい。また、ステビオール配糖体を含む被分離液の溶解を促進するために、超音波をかけてもよい。
【0068】
クロマト分離装置1内の温度が22℃~35℃であり、30重量%~95重量%のイソプロピルアルコール(IPA)を溶媒として用いた場合には、被分離液におけるステビオール配糖体の濃度が5g/L~120g/Lであることが好ましく、10g/L~100g/Lであることがより好ましい。被分離液の濃度が、120g/Lを超ると、ステビオール配糖体が装置内に析出しやすくなる。また、被分離液の濃度が、濃度が5g/L以下であると、分離効率低下の問題が生じる。
【0069】
クロマト分離装置1は、被分離液に含まれる不純物を確実に除去するため、前処理部を備えることが好ましい(図示せず)。複数種のステビオール配糖体を含む被分離液には、天然物由来の色素成分や有機酸等の不純物が含まれる。これらの不純物の中には、親水性の物質と疎水性の物質とがそれぞれ含まれる。このうち、親水性の物質は、分離剤における高分子担体の表面に固定されたポリエチレンイミンとの間で、負電荷を帯びた親水性の物質との静電相互作用に基づく吸着が発生しやすい。またさらに、疎水性の物質は、高分子担体である(メタ)アクリル多孔体粒子との間で、水素結合や疎水性相互作用に基づく吸着が発生しやすい。そのため、分離剤中の有効なイオン交換基が少なくなり、分離剤のイオン交換機能が低下していく問題が起こる。この場合、水酸化ナトリウム、純水等により分離剤の再生操作をしても、分離剤の機能を完全に回復させることは難しい。
また、被分離液に不純物が含まれると、或る充填部10から抜き出した被分離液と溶離液を他の充填部10に導入する際に、P成分、R成分と他の成分とのピークの位置や高さが充填部10毎に異なる現象が起こる。そして、複数のピークの位置が重なる場合には、抜出部30から抜出した成分の純度が低下する。また、ピークの高さが低くなると、抜出部30から抜出した成分の回収率が低下する。よって、複数種のステビオール配糖体を含む被分離液に含まれる不純物を前処理より確実に除去しないと、安定的に連続式液体クロマトグラフィーを行えない問題が生じる。
前処理部は、例えば、プレカラムであり、分離剤を充填するための空間を内部に有する。そして、色素成分や有機酸等の不純物を含有する被分離液を前処理部に通液させ、不純物を除去してから充填部11、12、13、14に供給する。そうすると、安定的に連続式液体クロマトグラフィーを行うことができる。不純物除去率や、管理のしやすさを考慮すると、プレカラムに充填された分離剤と充填部11、12、13、14に充填された分離剤とは同じものであっても良い。不純物除去ができたかどうかの判断基準は、継続的に単管カラム試験を行い、P成分、R成分と他の成分とのピークの位置や高さが変化しないことである。
本発明において、不純物が除去されたか否かの判断は、単管カラム試験により行う。単管カラム試験では、一の単管カラムに、前処理後に行う連続式液体クロマトグラフィーと同一の条件で、前処理された被分離液を2回連続して通し、それぞれの通過液の、BV(ベッドボリューム)に対するP成分およびR成分の濃度を測定する。
1回目に単管カラムを通過した液のP成分およびR成分のピークトップのBVに対し、2回目に単管カラムを通過した液のP成分およびR成分のピークトップのBVの変化量が、通常P成分が20%以下かつR成分が10%以下、好ましくはP成分が10%以下かつR成分が5%以下、より好ましくはP成分が5%以下かつR成分が3%以下、さらに好ましくはP成分が3%以下かつR成分が1%以下であると、不純物は除去されたと判断できる。
プレカラムに充填された分離剤と充填部11、12、13、14に充填された分離剤とが同じ場合には、前処理を行う条件は、クロマト分離工程の条件と同じであることが好ましい。具体的には、30重量%~95重量%のイソプロピルアルコール(IPA)を溶媒としてステビオール配糖体を溶出させた場合には、装置内の温度が10℃~50℃であることが好ましく、20℃~40℃であることがより好ましく、25℃~35℃であることがさらに好ましい。装置内の温度が10℃以下では、ステビオール配糖体が装置内に析出しやすくなるため、配管詰まりや樹脂固まりが発生しやすくなり、その結果、偏流が生じて液流れが悪化しやすい。この場合、被分離液を装置内に連続的に通液できない問題があり、工業化を実現することが難しい。また、装置内の温度が50℃以上では、ステビオール配糖体の加熱による変質等の恐れがある。
装置内の温度を一定に維持するためには、保温材で配管やカラムの周囲を覆ってもよく、温度が変動しやすい場所にて熱交換装置を設置してもよい。また、ステビオール配糖体を含む被分離液の溶解を促進するために、超音波をかけてもよい。
単管カラム内の温度が22℃~35℃であり、30重量%~95重量%のイソプロピルアルコール(IPA)を溶媒として用いた場合には、被分離液中ステビオール配糖体の濃度が5g/L~120g/Lであることが好ましく、10g/L~100g/Lであることがより好ましい。被分離液の濃度が、120g/Lを超えると、ステビオール配糖体が装置内に析出しやすくなる。また、被分離液の濃度が、濃度が5g/L以下であると、分離効率低下の問題が生じる。
【0070】
またクロマト分離装置1は、溶離液を溶離液槽等から供給する配管HW、溶離液を配管HWから充填部11に供給する配管HW1、溶離液を配管HWから充填部12に供給する配管HW2、溶離液を配管HWから充填部13に供給する配管HW3、および溶離液を配管HWから充填部14に供給する配管HW4を備える。この場合、溶離液開閉弁W1~W4は、それぞれ配管HW1~HW4に設けられ、充填部11~14への溶離液の供給を制御する。
【0071】
さらにクロマト分離装置1は、被分離液を被分離液槽等から供給する配管HF、被分離液を配管HFから充填部11に供給する配管HF1、被分離液を配管HFから充填部12に供給する配管HF2、被分離液を配管HFから充填部13に供給する配管HF3、および被分離液を配管HFから充填部14に供給する配管HF4を備える。この場合、被分離液開閉弁F1~F4は、それぞれ配管HF1~HF4に設けられ、充填部11~14への被分離液の供給を制御する。
【0072】
またさらにクロマト分離装置1は、各充填部10間を接続する接続路として、充填部11の抜出部31と充填部12の供給部22とを接続する配管HX1、充填部12の抜出部32と充填部13の供給部23とを接続する配管HX2、充填部13の抜出部33と充填部14の供給部24とを接続する配管HX3、充填部14の抜出部34と充填部11の供給部21とを接続する配管HX4を備える。この場合、接続路開閉弁X1~X4は、それぞれ配管HX1~HX4に設けられ、充填部11~14の相互間の被分離液の流通を制御する。
なお配管HX4の接続路開閉弁X4の箇所には、バイパス路HBが設けられ、バイパス路HBには、ポンプPMが設けられる。なおバイパス路HBおよびポンプPMは、配管HX4に設置されているが、配管HX1~HX4の何れに設置してもよく、配管HX1~HX4の複数位置(例えば、全ての位置)に設置してもよい。
【0073】
そしてクロマト分離装置1は、R画分を抜き出す配管HR、R画分を充填部11から配管HRに抜き出す配管HR1、R画分を充填部12から配管HRに抜き出す配管HR2、R画分を充填部13から配管HRに抜き出す配管HR3、およびR画分を充填部14から配管HRに抜き出す配管HR4を備える。この場合、R成分開閉弁R1~R4は、それぞれ配管HR1~HR4に設けられ、充填部11~14からの分離液の抜き出しを制御する。
【0074】
そしてクロマト分離装置1は、P画分を抜き出す配管HP、P画分を充填部11から配管HPに抜き出す配管HP1、P画分を充填部12から配管HPに抜き出す配管HP2、P画分を充填部13から配管HPに抜き出す配管HP3、およびP画分を充填部14から配管HPに抜き出す配管HP4を備える。この場合、P成分開閉弁P1~P4は、それぞれ配管HP1~HP4に設けられ、充填部11~14からの分離液の抜き出しを制御する。
【0075】
<クロマト分離装置1の動作の説明>
以上説明したクロマト分離装置1は、以下のように動作する。
【0076】
図3は、本実施形態におけるクロマト分離装置1の動作について説明したフローチャートである。
また
図4(a)~(b)は、充填部11~14内のP成分およびR成分のそれぞれの濃度分布について示した図である。ここで横方向は、充填部11~14内の位置を表す。各充填部11~14において、図中において、より左方ほど充填部11~14内のより上部(より上流側)の位置であり、図中において、より右方ほど充填部11~14内のより下部(より下流側)の位置であることを意味する。また縦方向は、各位置におけるP成分およびR成分の濃度を表す。さらに右矢印は、充填部11~14内において、被分離液や溶離液の流れの向きを表し、この場合は、充填部11~14内を被分離液や溶離液が下向流で流れることを意味する。さらに右矢印および左矢印が図示されていない場合は、その充填部11~14内で、流れが生じていないことを意味する。また下矢印や上矢印は、被分離液や溶離液を供給する箇所、およびP成分に富む分離液であるP画分やR成分に富む分離液であるR画分を抜き出す箇所を表す。図中、被分離液を「F」、溶離液を「W」、P成分やP画分を「P」、R成分やR画分を「R」で表す。
【0077】
なお
図4において、充填部13を吸着帯域(Zone1)、充填部14を精製帯域(Zone2)、充填部11を脱着帯域(Zone3)、充填部12を濃縮帯域(Zone4)と言うことがある。そして本実施の形態では、これらの帯域(Zone)を1つずつずらしながら分離運転を連続式に行なう。
【0078】
充填部11~14に対し、被分離液を分離剤に通液すると、上述したように、R成分の通過速度の方が、P成分の通過速度より大きくなる。そのため例えば、
図4(a)に示すように、通液方向に向かいR成分が先に進みやすく、P成分が後に残りやすい。つまり充填部11~14内で、P成分とR成分との分離が生じた状態となる。
【0079】
そして
図4(a)の状態において、被分離液および溶離液を別々の供給部から下向流で供給する。またこれとともに、P成分に富む分離液とR成分に富む分離液とをそれぞれ別々の抜出部から抜き出す(ステップ101:供給抜出工程)。
【0080】
この場合、被分離液開閉弁F3、溶離液開閉弁W1、接続路開閉弁X1、X2、P成分開閉弁P1、R成分開閉弁R3を開とし、他の開閉弁は、閉とする。これにより被分離液を、供給部23から充填部13に供給するとともに、溶離液を、供給部21から充填部11に供給する。またP成分に富む分離液であるP画分を、抜出部31から抜き出し、R成分に富む分離液であるR画分を、抜出部33から抜き出す。
【0081】
即ち、供給抜出工程では、供給部21から充填部11に供給する溶離液によってP成分を溶離させ、供給した溶離液の一部を、P成分に富む分離液であるP画分を配管HP1に抜き出す。また抜出部31から抜き出さなかった溶離液の残部は、配管HX1から充填部12に流入する。これにより、溶離液は、下向方向に移動し、充填部12および充填部13を流通する。そして充填部12および充填部13においてP成分とR成分との分離が進むとともに、P成分およびR成分の濃度分布についても下流側に移動する。そして、充填部13に被分離液を供給し、充填部13の抜出部33から、R成分に富む分離液であるR画分を配管HR3に抜き出す。
【0082】
ここで、配管HP1に抜き出す液量は、供給部21から供給する液量の一部である。よってこの流量を制御するため、配管HP1の先にポンプを取付け一定流量で抜き出すか、あるいは積算流量計で抜き出し量を調整する必要がある。
【0083】
なお、供給抜出工程では、供給部23から被分離液を供給し、抜出部33からR画分を抜き出す操作、供給部21から溶離液を供給し、抜出部31からP画分を抜き出す操作、および供給部21から溶離液を供給し、抜出部33からR画分を抜き出す操作をそれぞれ分割して実施してもよい。
【0084】
そしてステップ101の終了時点で、P成分およびR成分の濃度分布は、
図4(b)に示すようなものになる。
そして
図4(b)の状態において、充填部10内の被分離液および溶離液を、下向流にて充填部10間で循環させ、複数の成分の分離を進める(ステップ102:循環工程)。なおこのとき被分離液および溶離液の供給は行なわない。
【0085】
この場合、接続路開閉弁X1、X2、X3を開とし、他の開閉弁は、閉とする。そしてポンプPMを動作させることにより、充填部10内の被分離液および溶離液を、下向流にて充填部10間で循環させる。つまりこの場合、接続路開閉弁X1、X2、X3を開けることで、配管HX1、HX2、HX3、HX4、バイパス路HBにより、全ての充填部10が連結された状態となり、循環路が形成される。そしてポンプPMを動作させ、この循環路内を、被分離液や溶離液を移動させる。ここでは、充填部10内の被分離液および溶離液を、充填部10の1個分、下向方向に移動する。またこの際に、P成分とR成分との分離が進む。その結果、
図4(a)の状態から、充填部10について、図中右側に1個分ずれた形の濃度分布となる。つまり図中右側に充填部10について、1個分ずれた形で濃度分布が再現される。これにより、再びステップ101に戻り、同じ分離処理を繰り返すことができ、クロマト分離を連続して行なうことができる。
【0086】
そして、次にクロマト分離を終了させるか否かを決定する(ステップ103)。クロマト分離を終了させる場合としては、例えば、予め定められた量の被処理水を処理した場合である。また、圧力損失が予め定められた大きさを超えた場合に終了としてもよく、予め定められた分離運転時間が経過したときに終了としてもよい。
【0087】
そしてクロマト分離を終了させる場合(ステップ103でYes)、分離運転を停止する(ステップ104)。
対して、クロマト分離を終了させない場合(ステップ103でNo)、ステップ101に戻る。つまり上記ステップ101~ステップ102の2工程を繰り返す。
【0088】
図5(a)~(h)は、
図3のステップ101~ステップ102の2工程(供給抜出工程、循環工程)を4回(1サイクル目~4サイクル目)繰り返した場合の充填部11~14内の被分離液や溶離液の流れの向きを示した図である。ここで、
図5(a)~(b)は、1サイクル目であり、
図5(c)~(d)は、2サイクル目である。また
図5(e)~(f)は、3サイクル目であり、
図5(g)~(h)は、4サイクル目である。また
図5では、
図3の場合と同様に、右矢印は、下向流であることを意味する。さらに右矢印が図示されていない場合は、その充填部11~14内で、流れが生じていないことを意味する。そして、下矢印や上矢印は、被分離液や溶離液を供給する箇所、およびP画分やR画分を抜き出す箇所を表す。この場合、被分離液を「F」、溶離液を「W」、P成分やP画分を「P」、R成分やR画分を「R」で表す。
【0089】
また以下の表1は、切換部40の各開閉弁について開にするものを示している。なおここで示した開閉弁以外の開閉弁は閉とする。
【0090】
【0091】
図5(a)~(b)、
図5(c)~(d)、
図5(e)~(f)、
図5(g)~(h)をそれぞれ比較すると、流れの方向の位置、被分離液や溶離液を供給する箇所、およびP画分やR画分を抜き出す箇所は、それぞれ充填部10について、図中右側(下流側)に1個分ずつずれていく。また表1を参照すると、開にする開閉弁の位置も、同様に、それぞれ填部10について、図中右側(下流側)に1個分ずつずれていく。なお1サイクルを4回行なうと、再び、元の状態に戻る。つまり
図5(h)の後は、
図5(a)に戻る。
【0092】
ただし本実施の形態で使用されるステビオール配糖体の分離装置は、擬似移動床式のクロマト分離装置に限られるものではなく、連続式液体クロマトグラフィーを行なう装置であればよい。ここで連続式液体クロマトグラフィーとは、バッチ式のように、被分離液を供給して分離された成分を取り出し、さらにこれを繰り返す処理ではなく、被分離液を連続的に供給しつつ分離された成分を連続的に取り出す処理を言う。
【0093】
図6は、連続式液体クロマトグラフィーを行なう装置の他の例として、リサイクル式のクロマト分離装置を示した図である。
図示するリサイクル式のクロマト分離装置100は、被分離液が貯留される被分離液槽110と、溶離液が貯留される溶離液槽120と、被分離液に含まれる成分の分離を行なうカラム130と、成分分離後の精製液を貯留する精製液槽140と、成分分離後の廃液を貯留する廃液槽150とを備える。またクロマト分離装置100は、他にポンプP1と、開閉弁B1、B2、B3、B4、B5とを備える。
このクロマト分離装置100では、被分離液は、被分離液槽110から、開閉弁B1を開とし、開閉弁B2を閉とすることで、ポンプP1を使用し、配管H1および配管H3を介してカラム130に移送される。そして溶離液は、溶離液が貯留される溶離液槽120から開閉弁B1を閉とし、開閉弁B2を開とすることで、配管H2および配管H3を介してカラム130に移送される。そしてカラム130を通液し、カラム130から排出された精製液は、開閉弁B3を開とし、開閉弁B4および開閉弁B5を閉とすることで、配管H5を介し、精製液槽140に送ることができる。そしてカラム130を通液し、カラム130から排出された廃液は、開閉弁B3および開閉弁B4を閉とし、開閉弁B5を開とすることで、配管H6を介し、廃液槽150に送ることができる。
一方、カラム130を通過後の精製液は、開閉弁B1、B2、B3および開閉弁B5を閉とし、開閉弁B4を開とすることで、循環配管H4を介して、再び配管H3に戻すことができる。つまり循環配管H4を使用することで、カラム130を複数回通過させることができる。
【0094】
図7は、
図6に示したクロマト分離装置100を使用し、被分離液をカラム130に5回ないし6回通過させたときのクロマトグラムを示した図である。
図7において、横軸は、時間(分)を表し、縦軸は、分離液中に含まれる成分の濃度を表す。
この場合、142分~190分の間にカラム130から排出後の精製液は、循環配管H4を使用して再びカラム130に戻される。そして190分~310分の間にカラム130から排出後の精製液は、廃液槽150に送られる。さらに310分~380分の間にカラム130から排出後の精製液は、精製液槽140に送られる。またさらに380分~480分の間にカラム130から排出後の精製液は、廃液槽150に送られる。つまりこの一連の被分離液をカラム130に2回通過させる工程を1サイクルとした処理を、計3回行ない、P成分およびR成分の分離を行なう。これにより2倍の長さのカラム130を3回使用したのとほぼ同様の分離を行なうことができる。
【0095】
このときクロマトグラムにおいて、L1で示した箇所のP成分は、ロスとなる。対して、上述した擬似移動床式のクロマト分離装置1では、このようなロスが生じにくく、回収効率がより優れている。
【0096】
また連続式液体クロマトグラフィーを行なう装置としては、他にも環状式のクロマト分離装置(環状クロマト分離装置、環状クロマトグラフィー装置)が挙げられる。
【0097】
環状式のクロマト分離装置では、溶離剤の流れ方向と十字流となるように、充填剤を移動させることによって、被分離液供給を連続的に供給し、複数の多成分の連続分離を行なう十字流方式である。この方式は、充填剤を環状に充填した環状充填部の上部から下部に流れる溶離剤と被分離液の流れとが、相対的に十字流となるように、環状充填部を回転移動させる。環状式のクロマト分離装置は、例えば、周方向に回転する二重円筒体の内筒と外筒との間の間隙に充填剤を充填して環状充填部を形成し、この環状充填部に上部より被分離液および溶離剤を連続的に供給し、下部より分離された成分を連続的に取り出すものである。
【0098】
なお上述した形態において、開閉弁である切換部40の開閉の制御は、手動で行ってもよく、自動で行ってもよい。また手動で行なう場合と自動で行なう場合とを併用してもよい。自動で行なう場合は、例えば、制御盤等の制御部を設け、制御部が、ソフトウェアとハードウェア資源とを協働させ切換部40の制御を行なう。即ち、制御部に設けられた制御用PLC(Programmable Logic Controller)が、切換部40の開閉の制御を実現するプログラムを読み込み、このプログラムを実行することで、切換部40の開閉の制御を行なう。
【0099】
以上詳述した擬似移動床式のクロマト分離装置1によれば、複数種のステビオール配糖体を含む被分離液から、少なくとも1種のステビオール配糖体を分離する際に、純度を向上させることができる。例えば、レバウディオサイドAとステビオサイドとを分離する場合は、純度として95%以上を実現できる。この95%以上という純度は、アメリカ食品医薬品局(FDA)より食品添加物に与えられる安全基準合格証であるGRAS(Generally Recognized As Safe)を満たす。
一方、以上詳述した擬似移動床式のクロマト分離装置1を使用した場合、回収効率としても優れ、被分離液に含まれるレバウディオサイドAのうち、例えば、98%以上を回収することができ、ロスが少ない。即ち、高純度化と回収効率の両立を図ることができる。
【0100】
また上述したクロマト分離装置1では、被分離液に対し脱色を行なうこともできる。つまり上述した形態では、分離工程55でクロマト分離装置1を使用したが、脱色工程59で使用することもできる。よって分離工程55および脱色工程59の少なくとも一方で、クロマト分離装置1を使用することができる。
【0101】
なお以上説明したクロマト分離装置1で行なう被分離液の処理は、以下の(i)、(ii)の工程を含むレバウディオサイドAの製造方法であると捉えることもできる。この(i)の工程は、上述した熱水抽出工程51、薬剤処理工程52、ろ過工程53、吸着工程54に対応する。また(ii)の工程は、上述した分離工程55に対応する。
【0102】
(i)レバウディオサイドAを含む複数種のステビオール配糖体を含む被分離液を準備する準備工程
(ii)被分離液を、ポリエチレンイミンを担体に担持した分離剤に通液することで、レバウディオサイドAを連続して分離する連続式液体クロマトグラフィーを行なう分離工程
【実施例】
【0103】
以下、本発明を実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限りこれらの実施例により限定されるものではない。
【0104】
[単管カラム試験]
ここでは、レバウディオサイドAを含む複数種のステビオール配糖体を含む被分離液の分離性能を確認するため、上述した本実施の形態の分離剤と、従来の分離剤とをそれぞれ単カラムに充填し、単管カラム試験を行なった。なおこの場合、分離モードは、HILIC(Hydrophilic Interaction Liquid Chromatography:親水性相互作用クロマトグラフィー)モードである。この分離モードでは、レバウディオサイドAとステビオサイドとは、溶媒として水が多いと早く溶出するが、アルコールが多いと溶出が遅くなる。ここでは、下記に記載するように、アルコールを多くし、レバウディオサイドAおよびステビオサイドを遅く溶出させ、その間に分離を行なうことを行なっている。
【0105】
(実施例A1)
実施例A1では、以下のようにして製造した分離剤を用いた。
つまり、グリシジルメタクリレート70重量部、エチレングリコールジメタクリレート30重量部から成り、比表面積37m2/g、細孔直径942Å,細孔容積0.99mL/gである(メタ)アクリル系多孔性粒子400重量部に、ジエチレングリコールジメチルエーテル1400重量部、ポリエチレンイミン(和光純薬社製、試薬、分子量600)600重量部を加え、撹拌して懸濁状態とした。この懸濁液を80℃に昇温し、6時間反応させた。冷却後、ポリエチレンイミンが固定化された多孔性粒子を水洗した。
【0106】
水洗後のポリエチレンイミンが固定化された多孔性粒子に10重量%硫酸水溶液2000重量部を添加し、撹拌して懸濁状態とした。この懸濁液を50℃に昇温し、5時間保持することにより未反応のエポキシ基への水付加によるジオール生成反応を実施した。
冷却後、多孔性粒子を水洗し、さらに2N水酸化ナトリウム水溶液によりイオン交換基の再生を行って分離剤を得た。
得られた分離剤の平均粒径は140μm、総交換容量2.99ミリ等量/g、比表面積31m2/g、細孔直径944Å,細孔容積0.85mL/gであった。
【0107】
この分離剤を直径20mmφ、長さ250mmのカラムを4個直列に繋げたカラム(合計長さ1000mm)に充填した。このとき充填した分離剤は、314mlとなるようにした。よってこの場合、分離剤の量である1BV(ベッドボリューム)は、314mlとなる。そしてサンプルとして、守田化学工業株式会社製のレバウディオJM-100を用意し、これを90%エタノール水溶液とした。レバウディオJM-100には、ステビオール配糖体として、レバウディオサイドAおよびステビオサイドが主成分として含まれる。またレバウディオJM-100には、他の種類のステビオール配糖体や不純物が含まれる。そしてこの90%エタノール水溶液を、分離剤を充填したカラムに通液して、単管カラム試験を行なった。このとき流速は、5.2ml/分とした。この場合、空間速度SV(Space Velocity)は、1h-1となる。また90%エタノール水溶液は、カラムに室温28℃にて50g/Lで計15.7ml注入し、UV検出器波長210nmにてクロマトグラムを測定した。
【0108】
(実施例A2)
実施例A2では、実施例A1と同様の分離剤を用いた。
実施例A2では、実施例A1に比較して、溶離液を89%イソプロピルアルコール(IPA)水溶液に変更した。またサンプルのレバウディオJM-100を、カラムに室温24℃にて10g/Lで計15.6ml注入した。そして他は、実施例A1と同様にしてクロマトグラムを測定した。
【0109】
(実施例A3)
実施例A3では、実施例A1と同様の分離剤を用いた。
実施例A3では、実施例A2に比較して、サンプルのレバウディオJM-100を、カラムに室温26℃にて100g/Lで計15.6ml注入した。そして他は、実施例A2と同様にしてクロマトグラムを測定した。
【0110】
(比較例A1)
比較例A1では、分離剤として、三菱ケミカル株式会社製の工業クロマト分離用カチオン交換樹脂である、UBK530(H型)を用いた。
これを直径20mmφ、長さ1000mmの単管カラムに充填した。このとき充填したUBK530は、314mlとなるようにした。よってこの場合、1BV(ベッドボリューム)は、314mlとなる。そしてサンプルであるレバウディオJM-100を89%イソプロピルアルコール(IPA)水溶液とした。そしてこの89%イソプロピルアルコール(IPA)水溶液を、分離剤を充填したカラムに通液して、単管カラム試験を行なった。このとき流速は、5.2ml/分とした。この場合、空間速度(SV)は、1h-1となる。また89%イソプロピルアルコール(IPA)水溶液は、カラムに室温25℃にて10g/Lで計15.7ml注入し、UV検出器波長210nmにてクロマトグラムを測定した。
【0111】
(比較例A2)
比較例A2では、比較例A1に比較して、分離剤を、スチレン系ジメチルアミン型の弱塩基性アニオン交換樹脂である、三菱ケミカル株式会社製のセパビーズFP-DA13(OH型)に変更したこと以外は、比較例A1と同様にしてクロマトグラムを測定した。
【0112】
(比較例A3)
比較例A3では、比較例A1に比較して、分離剤を、スチレン系ポリアミン型の弱塩基性アニオン交換樹脂である、三菱ケミカル株式会社製のダイヤイオンWA20(OH型)に変更したこと以外は、比較例A1と同様にしてクロマトグラムを測定した。
【0113】
(比較例A4)
比較例A4では、比較例A1に比較して、分離剤を、スチレン系ジメチルアミン型の弱塩基性アニオン交換樹脂である、三菱ケミカル株式会社製のダイヤイオンWA33L(OH型)に変更したこと以外は、比較例A1と同様にしてクロマトグラムを測定した。
【0114】
[擬似移動床式のクロマト分離装置を使用した分離試験]
(実施例B1)
実施例B1では、
図2で示した擬似移動床式のクロマト分離装置1を使用し、ステビオール配糖体の分離試験を行なった。このとき実施例A1と同様の分離剤を用いた。
被分離液として、原料濃度が10mg/mgの水溶液を用意した。原料には、レバウディオサイドAとステビオサイドが主成分として含まれ、その質量比は、51:44であった。また原料には、他の種類のステビオール配糖体や不純物が含まれる。また溶離液として89%イソプロピルアルコール(IPA)水溶液を用いた。また装置の運転時の空間速度SVは、1h
-1とした。また1時間あたりの分離剤に対する被分離液の注入量であるLoad(負荷量)は、0.058h
-1とした。
【0115】
(比較例B1)
比較例B1では、実施例B1と同様の分離剤を使用した。そしてこの分離剤を、直径20mmφ、長さ1000mmの単管カラムに充填した。このとき充填した分離剤は、314mlとなるようにした。これに実施例B1と同様の被分離液と溶離液とを交互に単管カラムに通液し、ステビオール配糖体の分離試験を行なった。 このとき流速は、5.2ml/分とした。このとき空間速度SVは、1h-1とした。またLoad(負荷量)は、0.038h-1とした。なお以下、この方法で成分の分離を行なう方法を「単管カラム連続処理」と言うことがある。
【0116】
[結果]
実施例A1~A3、比較例A1~A3の結果について、それぞれ
図8~
図13に示す。
図8~
図13は、実施例A1~A3、比較例A1~A3のクロマトグラムを示した図である。ここで、横軸は、BV(ベッドボリューム)を表し、縦軸は、分離液中に含まれる成分の濃度を表す。
実施例A1~A3の結果である
図8~
図10と、比較例A1~A3の結果である
図11~
図13とを比較すると、実施例A1~A3では、レバウディオサイドAとステビオサイドとが分離しているのに対し、比較例A1~A3では、これらは、イオン交換樹脂に吸着せずに同時に溶出し、分離できないことがわかる。なお比較例A3では、溶出したレバウディオサイドAおよびステビオサイドのピークが低く、濃度が他よりも低い。確認を行なったところ全体の6割程度しか分離液に溶出しておらず、残りの4割は、イオン交換樹脂に吸着したままであった。なお比較例A4では、レバウディオサイドAおよびステビオサイドの双方がイオン交換樹脂に吸着したままであり溶出しなかった。
【0117】
図14は、比較例B1のクロマトグラムを示した図である。ここで、横軸は、BV(ベッドボリューム)を表し、縦軸は、分離液中に含まれる成分の濃度を表す。
図示するように、レバウディオサイドAとステビオサイドとが交互に排出され、レバウディオサイドAとステビオサイドとを別々に回収できる。
【0118】
また実施例B1および比較例B1の結果を以下の表2に示す。
【0119】
【0120】
実施例B1の擬似移動床式のクロマト分離装置1を使用した場合は、レバウディオサイドAの純度が95.87%となった。さらにレバウディオサイドAの回収率は、98.2%となった。対して比較例B2の連続パルス式を使用した場合は、レバウディオサイドAの純度が95.32%となったものの回収率は、81.7%に過ぎなかった。
つまり実施例B1と比較例B1とを比較すると、レバウディオサイドAの純度を同程度とする場合、回収率は、実施例B1の方が比較例B1よりも優れる結果となった。
【0121】
これらの装置を1年に180日稼働させ、10.00tのレバウディオサイドAを生産したときに、使用する分離剤の量、および分離工程55(
図1参照)で使用するアルコール溶媒使用量を算出した。これによると、実施例B1の場合には、使用する分離剤の量が、10m
3であるのに対し、比較例B1の場合には、14m
3が必要となることがわかった。また溶媒使用量は、実施例B1の場合には、100m
3/dであるのに対し、比較例B1の場合には、323m
3/dが必要となり、アルコール溶媒使用比として、約3.2倍必要なことがわかった。
つまり実施例B1と比較例B1とを比較すると、実施例B1の方が比較例B1に比べて、使用する分離剤の量や溶媒使用量が削減できる。よってレバウディオサイドAを生産するのに要する費用について、実施例B1の方が比較例B1よりも低廉になる。
【符号の説明】
【0122】
1、100…クロマト分離装置、10(11、12、13、14)…充填部、20(21、22、23、24)…供給部、30(31、32、33、34)…抜出部、40…切換部、54…吸着工程、55…分離工程、59…脱色工程