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特許7445724低誘電材料用ガラスクロス、プリプレグ、及びプリント配線基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】低誘電材料用ガラスクロス、プリプレグ、及びプリント配線基板
(51)【国際特許分類】
   C03C 25/1095 20180101AFI20240229BHJP
   C03C 25/40 20060101ALI20240229BHJP
   C03C 25/32 20180101ALI20240229BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
C03C25/1095
C03C25/40
C03C25/32
H05K1/03 610T
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022156518
(22)【出願日】2022-09-29
(62)【分割の表示】P 2019220561の分割
【原出願日】2019-12-05
(65)【公開番号】P2022179572
(43)【公開日】2022-12-02
【審査請求日】2022-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】阿部 晋士
(72)【発明者】
【氏名】平野 史也
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-043984(JP,A)
【文献】特開2019-081987(JP,A)
【文献】特開2018-197411(JP,A)
【文献】特開2016-056469(JP,A)
【文献】特開平6-056561(JP,A)
【文献】コルコート株式会社,製品一覧 シリケートオリゴマー,2018年,[2023年5月25日検索],<URL:https://www.colcoat.co.jp/chemical/products/silicate_oligomer.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 25/00 - 25/70
H05K 1/03
C08G 77/14
C08K 5/5415
C08L 83/06
D06M 13/00 - 15/715
D06M 101:00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスクロス基材の表面がアルコキシ基含有オルガノポリシロキサン組成物で処理された低誘電材料用ガラスクロスであって、
前記アルコキシ基含有オルガノポリシロキサン組成物に含まれるアルコキシ基含有オルガノポリシロキサンは、ケイ素原子数が平均2~10であることを特徴とする低誘電材料用ガラスクロス(ただし、前記アルコキシ基含有オルガノポリシロキサン組成物が無機顔料を含む場合を除く)
【請求項2】
5G/IoT向け及び高周波用のプリント配線基板に用いるものであることを特徴とする請求項1に記載の低誘電材料用ガラスクロス。
【請求項3】
前記アルコキシ基含有オルガノポリシロキサン組成物が、さらにアルコキシシランからなるシランカップリング剤を含むものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の低誘電材料用ガラスクロス。
【請求項4】
前記アルコキシ基含有オルガノポリシロキサン組成物が、さらに水を含むものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の低誘電材料用ガラスクロス。
【請求項5】
前記ガラスクロス基材が、10GHzにおける誘電正接が1×10-4~1×10-2となるガラスを原料とするガラスクロス基材であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の低誘電材料用ガラスクロス。
【請求項6】
前記ガラスが、Eガラス、Lガラス、L2ガラス、NEガラス、NE2ガラス、Sガラス、Tガラス、UTガラス、LUガラス、Dガラス、シリカガラスからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項5に記載の低誘電材料用ガラスクロス。
【請求項7】
5G/IoT向け及び高周波用のプリント配線基板に用いるものであり、
前記ガラスクロス基材が、10GHzにおける誘電正接が1×10-4~1×10-2となるガラスを原料とするガラスクロス基材であり、かつ、
前記ガラスが、Sガラス、Tガラス、Dガラス、シリカガラスからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の低誘電材料用ガラスクロス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低誘電材料用ガラスクロス、及び該ガラスクロスを用いたプリプレグ及びプリント配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル技術の目覚しい発展に伴い、タブレット端末やスマートフォンに代表される電子機器の軽薄短小化、高機能化が進んでいる。例えば、これらの機器の重要部品の1つであるプリント配線基板に対して、高密度実装、軽薄短小化が必要とされている。これに対応するため、プリント配線基板の補強材として必須部品であるガラスクロスの特性向上が強く求められている。
【0003】
また、コンピュータ、モバイル、通信インフラ等の高速・高周波化が進み、プリント配線基板に用いられるガラスクロスに要求される特性として、伝送損失を改善するための誘電特性の向上や、低熱膨張特性、高引張剛性特性の改善要求もある。さらに、軽薄短小化及び多層化の要求から、ガラスクロスの薄物化の要求も高まっている。
【0004】
薄物ガラスクロスの製造方法として、よりフィラメント径がコントロールし易いシリカガラスの系での検討が進んでいる。例えば、特許文献1には厚さが27μmのシリカガラスクロスを製造する方法を開示している。特許文献2には、厚さが6μm~45μmの薄物シリカガラスクロスが紹介されている。しかし、薄物シリカガラスクロスは引張強度が乏しいため、表面処理等による引張強度の向上が求められる。
【0005】
一方、基板の製造にはガラスクロスとエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂との密着性、接着性が重要であり、ガラスクロスとマトリックス樹脂との濡れ性が悪いと接着が劣り、界面に水分の混入やガラスクロスに存在するシラノール基の影響で、誘電特性が低下する要因となる。そのため、ガラスクロスの表面にはシランカップリング剤が処理される。
【0006】
シランカップリング剤使用の一例として、特許文献3に、B配合の低誘電ガラスクロスに表面処理用としてシランカップリング剤が記載されているが、耐吸湿性の向上に関して述べられているに過ぎない。
【0007】
特許文献4~6には、ガラス繊維フィルムやガラスクロスの表面処理剤としてシラザン化合物が挙げられている。しかしこれらの化合物は、ガラスクロス含有シラノール基の低減効果が不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2006-282401号公報
【文献】特開2009-263824号公報
【文献】国際公開第2016/175248号パンフレット
【文献】特開2015-174937号公報
【文献】特開2015-155196号公報
【文献】特開2011-017113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、プリント配線基板に使用されるマトリックス樹脂との密着性、接着性、配線基板の強度、信頼性の更なる向上が求められ、特に誘電特性の改良からもガラスクロスに含まれるシラノール基の低減が求められている。
【0010】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、強度が向上され、誘電特性に優れた信頼性の高いプリント配線基板に好適に用いられる低誘電材料用ガラスクロスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を達成するために、本発明では、ガラスクロス基材の表面がアルコキシ基含有オルガノポリシロキサン組成物で処理された低誘電材料用ガラスクロスであって、前記アルコキシ基含有オルガノポリシロキサン組成物に含まれるアルコキシ基含有オルガノポリシロキサンは、ケイ素原子数が平均2~10である低誘電材料用ガラスクロスを提供する。
【0012】
また、本発明の低誘電材料用ガラスクロスは、5G/IoT向け及び高周波用のプリント配線基板に用いるものであることが好ましい。
【0013】
このような低誘電材料用ガラスクロスは、引張強度並びにマトリックス樹脂との濡れ性が改善されていることから、マトリックス樹脂との密着性、接着性が優れたプリプレグ、及び、強度が向上され信頼性が優れたプリント配線基板を与えるものであり、特にガラスクロス表面に存在するシラノール基の量を低減させて誘電特性を向上させ、5G/IoT向けおよび高周波用プリント配線基板用のものとすることができる。
【0014】
また、前記アルコキシ基含有オルガノポリシロキサン組成物が、さらにアルコキシシランからなるシランカップリング剤を含むものであることが好ましい。
【0015】
このようなものであれば、ガラスクロス基材表面に存在するシラノール基をより低減させて、更に誘電特性が向上したプリント配線基板を与えるものとなる。
【0016】
また、前記アルコキシ基含有オルガノポリシロキサン組成物が、さらに水を含むものであることが好ましい。
【0017】
このようなものであれば、有機溶媒の使用が軽減され作業者の安全性や地球環境を守ることができ、またアルコキシ基含有オルガノポリシロキサンが加水分解されて反応性が上がるため、ガラスクロス基材表面に均一に塗布可能となり、より誘電特性が向上したプリント配線基板を与えるものとなる。
【0018】
また、前記ガラスクロス基材が、10GHzにおける誘電正接が1×10-4~1×10-2となるガラスを原料とするガラスクロス基材であることが好ましい。
【0019】
このようなものであれば、低誘電材料用ガラスクロスは、より誘電特性が向上したプリント配線基板を与えるものとなる。
【0020】
このとき、前記ガラスが、Eガラス、Lガラス、L2ガラス、NEガラス、NE2ガラス、Sガラス、Tガラス、UTガラス、LUガラス、Dガラス、シリカガラスからなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
【0021】
本発明では、このようなガラスを原料とするガラスクロス基材を用いることができる。
【0022】
また、本発明では、上記の低誘電材料用ガラスクロスと、該ガラスクロスに含浸されたマトリックス樹脂とを含むものであるプリプレグを提供する。
【0023】
このようなプリプレグは、低誘電材料用ガラスクロスとマトリックス樹脂との密着性、接着性に優れ、強度が向上され、誘電特性に優れた信頼性の高いプリント配線基板を与えるものとなる。
【0024】
このとき、前記マトリックス樹脂が、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂及びポリテトラフルオロエチレン樹脂の中から選択される1種以上の樹脂であることが好ましい。
【0025】
このようなプリプレグはより誘電特性が向上したプリント配線基板を与えるものとなる。
【0026】
さらに本発明では、上記のプリプレグを備えるものであるプリント配線基板を提供する。
【0027】
このようなプリント配線基板は優れた誘電特性を有し、10GHz以上の電気信号を伝送する回路を有する電子部品に好適に用いることができるものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ガラスクロス基材の表面がアルコキシ基含有オルガノポリシロキサン組成物で処理された低誘電材料用ガラスクロスは、引張強度並びにマトリックス樹脂との濡れ性が改善され、マトリックス樹脂との密着性、接着性に優れ、強度が向上され信頼性のより優れたプリプレグ及びプリント配線基板を与えるものである。特にガラスクロス表面に存在するシラノール基の量が低減されて誘電特性が向上され、10GHz以上の電気信号を伝送する回路を有する電子部品に好適に用いられる高周波用プリント配線基板用のガラスクロスとなる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
上述のように、強度が向上され、誘電特性に優れた信頼性の高いプリント配線基板に好適に用いられる低誘電材料用ガラスクロスの開発が求められていた。
【0030】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、表面が所定のアルコキシ基含有オルガノポリシロキサン組成物で処理されたガラスクロスが、引張強度に優れ、かつ誘電特性が良好であり、10GHz以上の電気信号を伝送する回路を有する電子部品に用いる高周波用プリント配線基板用として好適に用いることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0031】
即ち、本発明は、ガラスクロス基材の表面がアルコキシ基含有オルガノポリシロキサン組成物で処理された低誘電材料用ガラスクロスであって、前記アルコキシ基含有オルガノポリシロキサン組成物に含まれるアルコキシ基含有オルガノポリシロキサンは、ケイ素原子数が平均2~10である低誘電材料用ガラスクロスである。
【0032】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、これは例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
【0033】
<低誘電材料用ガラスクロス>
本発明の低誘電材料用ガラスクロスは、ガラスクロス基材の表面がアルコキシ基含有オルガノポリシロキサン組成物で処理された低誘電材料用ガラスクロスであって、前記アルコキシ基含有オルガノポリシロキサン組成物に含まれるアルコキシ基含有オルガノポリシロキサンは、ケイ素原子数が平均2~10である低誘電材料用ガラスクロスである。
【0034】
また、本発明の低誘電材料用ガラスクロスは、5G/IoT向け及び高周波用のプリント配線基板に用いるものであることが好ましい。
【0035】
なお、ここで「5G/IoT」とは、第5世代移動通信システム(5G)、またそれを活用した物のインターネット(IoT)のことを指し、「5G/IoT向け」とは、高速大容量通信などに必要な特性を有する材料であることを指す。具体的に必要な特性としては、低誘電、低伝送損失などが挙げられ、具体的な用途としてはコンピュータ、モバイル端末、通信インフラの高周波用プリント配線基板などが挙げられる。
【0036】
本発明の低誘電材料用ガラスクロスは、ガラスクロス基材表面をアルコキシ基含有オルガノポリシロキサン組成物で処理することでガラスクロスの引張強度並びにマトリックス樹脂との濡れ性を改善し、後述するプリプレグを作製する際に、ガラスクロスとマトリックス樹脂との密着性、接着性を向上させ、強度が向上されたプリント配線基板を与えるという効果を有する。
【0037】
さらに本発明の低誘電材料用ガラスクロスは、ケイ素原子数が平均2~10のアルコキシ基含有オルガノポリシロキサンを含む組成物でガラスクロス基材を表面処理することによって、アルコキシ基がガラスクロス基材表面のシラノール基と反応してシラノール基の量を低減させ、これにより誘電特性を向上させるという効果を有する。
【0038】
<ガラスクロス基材>
以下、本発明の低誘電材料用ガラスクロスに用いられる、アルコキシ基含有オルガノポリシロキサン組成物で表面処理されるガラスクロス基材について説明する。
【0039】
ガラスクロス基材は、特に限定はされないが、10GHzにおける誘電正接が1×10-4~1×10-2となるガラスを原料とするガラスクロスであることが好ましい。ガラスクロス基材の例としては、Eガラス、Lガラス、L2ガラス、NEガラス、NE2ガラス、Sガラス、Tガラス、UTガラス、LUガラス、Dガラス、シリカガラスからなる群から選択される1種以上のガラスクロスが挙げられ、誘電特性からLガラス、L2ガラス、NEガラス、NE2ガラス、LUガラス、シリカガラスから選ばれるガラスクロスであることが好ましい。特に10GHzにおける誘電正接が5×10-3以下、好ましくは2×10-4~2×10-3であるシリカガラスからなるガラスクロスがより好ましい。
【0040】
なお、本発明において10GHzにおける誘電正接は、JIS R 1641:2007(ファインセラミックス基板のマイクロ波誘電特性の測定方法)に記載の方法で測定した値を指すものとする。
【0041】
また、ガラスクロス基材は、アルコキシ基含有オルガノポリシロキサン組成物で表面処理する前に、表面に付着した集束剤などの有機物を予め除去しておくと、アルコキシ基含有オルガノポリシロキサン組成物でガラスクロス基材の表面をむらなく処理できるため好ましい。有機物の除去方法としては、ヒートクリーニング処理やコロナ処理、湯洗い処理などが挙げられる。
【0042】
また、ガラスクロス基材の厚さは好ましくは6μm~200μm、より好ましくは10μm~100μmであり、単位面積当たりの質量が、好ましくは5g/m~200g/mであり、より好ましくは10g/m~100g/mのガラスクロス基材である。
【0043】
<アルコキシ基含有オルガノポリシロキサン組成物>
以下、本発明に用いるアルコキシ基含有オルガノポリシロキサン組成物について説明する。
【0044】
<アルコキシ基含有オルガノポリシロキサン>
本発明に用いるアルコキシ基含有オルガノポリシロキサン組成物は、ケイ素原子数が平均2~10、好ましくは平均3~5の低分子量のアルコキシ基含有オルガノポリシロキサンを必須成分とする。ケイ素原子数が10を超えると、ガラスクロス基材の表面をアルコキシ基含有オルガノポリシロキサン組成物で処理した際に、未反応のアルコキシ基が多く残存するため、誘電特性が悪化する恐れがある。またケイ素原子数が2を下回ると、ガラスクロスの引張強度を高めることができない。
なお、本発明でいう「アルコキシ基含有オルガノポリシロキサン」とは、ケイ素原子に直結したアルコキシ基を含有するオルガノポリシロキサンを指し、アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基などが挙げられる。中でもメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基が好ましい。
【0045】
アルコキシ基含有オルガノポリシロキサンは、ガラスクロス基材表面のシラノール基と反応し、該シラノール基の量を低減するので、本発明の低誘電材料用ガラスクロスは誘電特性が向上され、信頼性が高められたプリント配線基板を与えるという効果を有する。本発明の低誘電材料用ガラスクロスは特に10GHz以上の電気信号を伝送する回路を有する電子部品に用いる高周波プリント配線基板用に最適なガラスクロスとなる。
【0046】
なお、本明細書中で言及する平均ケイ素原子数は、下記条件で測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレンを標準物質とした数平均分子量から求められる。
【0047】
[測定条件]
展開溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流量:0.6mL/min
検出器:UV検出器
カラム:TSK Guardcolumn SuperH-L
TSKgel SuperMultiporeHZ-M
(4.6mmI.D.×15cm×4)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:3μL(濃度0.5質量%のTHF溶液)
【0048】
また、アルコキシ基含有オルガノポリシロキサンはアルコキシ基以外の官能基を有していてもよい。アルコキシ基以外の官能基は、同一であっても異なる官能基の組み合わせでも良い。具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基、トリフルオルプロピル基等のフルオロアルキル基、フェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基等のアリール基、ビニル基、アリル基、4-ビニルブチル基、8-ビニルオクチル基などのアルケニル基、3-シクロヘキセニル基、ノルボルネニル基などの脂環式不飽和炭化水素基、エチニル基、2-プロピニル基などのアルキニル基、スチリル基などの芳香族不飽和炭化水素基、アクリル基、メタクリル基などの不飽和エステル基、N-プロピルマレイミド基などの不飽和環状イミド基、メチルアミノ基、3-アミノプロピル基、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピル基等のアミノ基などが挙げられ、中でも、マトリックス樹脂である熱硬化性樹脂に含まれる不飽和基と類似の構造を有するアルケニル基や不飽和エステル基が好ましく、特に反応性、接着性に優れるビニル基やメタクリル基がより好ましい。
【0049】
炭素-炭素不飽和結合を有する有機基を含有することで、マトリックス樹脂としての不飽和基含有熱硬化性樹脂との反応性が向上し、接着強度の向上や濡れ性、密着性の向上により誘電特性が改良されるため好ましい。
【0050】
また、アルコキシ基含有オルガノポリシロキサンは分子中にアルコキシ基を有さないD単位、又はT単位を含んでいてもよく、分岐構造、環状構造、又は籠構造を含有しているオルガノポリシロキサンを用いることもできる。
【0051】
また、アルコキシ基含有オルガノポリシロキサンは、構造の異なる2種類以上を併用して使うことができる。複数のオリゴマーを併用すると、ガラスクロスの引張強度や基板用樹脂との密着性が向上し、加工性に優れるため好ましい。
【0052】
異なるオリゴマー2種類以上を併用して用いるガラスクロスの処理方法としては、2種類以上の構造の異なるオリゴマーを順不同で複数回表面処理をしてもよく、あらかじめ2種類以上の構造の異なるオリゴマーを混合して、同時に表面処理してもよい。
【0053】
<シランカップリング剤>
本発明に用いるアルコキシ基含有オルガノポリシロキサン組成物は、アルコキシシランからなるシランカップリング剤を含むことができる。シランカップリング剤を含有することにより、塗布性や、ガラスクロス表面に存在するシラノール基との反応性が向上するため好ましい。
【0054】
シランカップリング剤は、例えばメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン塩酸塩などが挙げられ、ビニルトリメトキシシランや3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが、マトリックス樹脂である熱硬化性樹脂に含まれる不飽和基と反応性、接着性に優れるため好ましい。
【0055】
シランカップリング剤は単独で、あるいは2種又は3種以上を任意の割合で添加してもよい。オリゴマー(アルコキシ基含有オルガノポリシロキサン)とシランカップリング剤との混合比は、質量比で好ましくは0.1/99.9~99.9/0.1の範囲であり、より好ましくは1/99~99/1であり、更に好ましくは10/90~90/10の範囲である。
【0056】
<溶媒>
本発明に用いるアルコキシ基含有オルガノポリシロキサン組成物(オリゴマー含有組成物)は、溶媒で希釈して用いても良い。溶媒は水系、有機溶剤系のいずれでも良いが、水を主溶媒とすることにより、有機溶剤の使用を低減することができるので、作業者の安全性や地球環境を守ることが可能となる。また、オリゴマーが加水分解され反応性が上がるため、ガラスクロス表面に均一に塗布可能となるため好ましい。
【0057】
また、溶媒として水の他に有機溶剤を1種、2種又は3種以上を任意の割合で添加してもよい。有機溶剤は、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどの脂肪族アルコール、アセトン、メチルエチルケトンなどの脂肪族ケトン、n-ペンタン、i-ペンタン、n-ヘキサン、i-ヘキサン、n-ヘプタン、i-ヘプタン、n-オクタン、i-オクタン、2,2,4-トリメチルペンタン(イソオクタン)、n-ノナン、i-ノナン、n-デカン、i-デカン、2,2,4,6,6-ペンタメチルヘプタン(イソドデカン)などの飽和鎖状脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、p-メンタン、デカヒドロナフタレンなどの飽和環状脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼンやテトラヒドロナフタレンなどの芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、メチルターシャリーブチルエーテル、ブトキシエチルエーテルなどのアルキルエーテル類やアニソール、ジフェニルエーテルなどのアリールエーテル類、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、カプロン酸エチルなどのエステル化合物などが挙げられ、メタノールなどの脂肪族アルコールが水に対する溶解性が良好なため好ましく用いられる。
【0058】
溶媒とアルコキシ基含有オルガノポリシロキサンとの混合比は、質量比で好ましくは99.99/0.01~90/10の範囲であり、より好ましくは99.95/0.05~95/5であり、更に好ましくは99.9/0.1~99/1の範囲である。この範囲内であれば、保存安定性や塗工性等が良好となるため好ましい。
【0059】
<その他添加剤>
本発明に用いるアルコキシ基含有オルガノポリシロキサン組成物には、pH調整剤、界面活性剤、シラザン構造含有化合物を、保存安定性、塗布性、マトリックス樹脂との密着性、接着性向上などのために添加することができる。
【0060】
pH調整剤としては、塩酸、酢酸、アンモニア、水酸化ナトリウムなどが例示され、安全性や揮発性の観点から酢酸やアンモニアが好まれる。
【0061】
界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤または非イオン界面活性剤のいずれも使用する事ができるが、作業性、特性面などから非イオン界面活性剤が好ましい。例えば、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンセカンドアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、アルキルカルボニルオキシポリオキシエチレン、脂肪族多価アルコールポリオキシエチレン、脂肪族ショ糖エステルなどが挙げられる。
【0062】
シラザン構造含有化合物としては、1,1,3,3-テトラメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザン、オクタメチルトリシラザン、1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルシクロトリシラザン、1,1,3,3,5,5-トリメチルトリビニルシクロトリシラザンなどの低分子シラザン化合物などが挙げられる。
【0063】
その他の成分の添加量は、アルコキシ基含有オルガノポリシロキサン100質量部に対して、1~500質量部が好ましく、10~200質量部がより好ましい。
【0064】
<プリプレグ>
また本発明では、上述の低誘電材料用ガラスクロスと、該ガラスクロスに含浸されたマトリックス樹脂とを含むものであるプリプレグ(低誘電材料用ガラスクロス含有プリプレグ)を提供する。
【0065】
このようなプリプレグは、低誘電材料用ガラスクロスとマトリックス樹脂との密着性、接着性に優れ、強度が向上され、誘電特性に優れた信頼性の高いプリント配線基板を与えるものとなる。
【0066】
<マトリックス樹脂>
本発明のアルコキシ基含有オルガノポリシロキサン組成物で表面処理されたガラスクロスは、該ガラスクロスにマトリックス樹脂を含浸してプリプレグを製造するのに好適に用いられる。優れた誘電特性を有する高周波基板用のプリプレグを製造するには、マトリックス樹脂の誘電特性も優れることが好ましい。
【0067】
本発明におけるマトリックス樹脂とは、上述の低誘電材料用ガラスクロスに含浸され、プリプレグを形成するものであり、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂の何れも使用することができる。特に、低誘電特性を有する樹脂が好ましく、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂及びポリテトラフルオロエチレン樹脂の中から選択される1種以上の樹脂であることがより好ましい。なお、マトリックス樹脂は1種のみで使用しても良いし、2種以上の樹脂を併用しても構わない。
【0068】
本発明におけるマトリックス樹脂には、樹脂の硬化促進や高強度化等のために、その他の成分を添加することができる。例えば、無機充填剤、難燃剤、添加剤及び反応開始剤等が挙げられる。
【0069】
その他の成分の添加量は、マトリックス樹脂100質量部に対して、1~900質量部が好ましく、10~500質量部がより好ましい。
【0070】
<プリプレグの製造方法>
本発明の低誘電材料用ガラスクロスを含有するプリプレグの製造方法としては、特に限定されない。一般的なガラスクロス含有基板やフィルム、プリプレグなどの製造方法を適用することができる。例えば、一般的なガラスクロス繊維への硬化性樹脂組成物の塗布方法(コーティング方式)に準じて製造することができる。
【0071】
代表的なコーティング方式としては、ダイレクトグラビアコーター、チャンバードクターコーター、オフセットグラビアコーター、一本ロールキスコーター、リバースキスコーター、バーコーター、リバースロールコーター、スロッタダイ、エアードクターコーター、正回転ロールコーター、ブレードコーター、ナイフコーター、含浸コーター、MBコーター、MBリバースコーターなどがある。
【0072】
塗布性を向上、確保するためにマトリックス樹脂を溶媒で希釈してもよい。マトリックス樹脂の溶解特性から有機溶媒を単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
【0073】
有機溶媒の例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノールなどの脂肪族アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの脂肪族ケトン類、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールエーテル類、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテルなどのアルキルエーテル類などが挙げられる。
【0074】
本発明の低誘電材料用ガラスクロスに対するマトリックス樹脂の付着量としては、10~80質量%が好ましく、20~70質量%がより好ましい。この範囲内であれば、本発明の低誘電材料用ガラスクロスへのマトリックス樹脂の付着量がより適切であり、ガラスクロスのマトリックス樹脂との密着性、接着性、配線基板の強度向上の効果がある。付着量が10質量%以上であれば、プリプレグからプリント配線基板を作製した際に、銅箔と密着しているマトリックス樹脂量が少なすぎることもなく、銅箔とのピール強度も十分な強度が得られる。また、付着量が80質量%以下であれば、マトリックス樹脂量が多すぎることもなく、プレス時の樹脂流れが起こりにくいため好ましい。なお、ここで言う付着量とはプリプレグ全体の質量に対するマトリックス樹脂の質量%のことを示す。
【0075】
使用するマトリックス樹脂により条件は異なるが、例えば、塗布後に乾燥させ、硬化目的で50℃~300℃で1分間~24時間加熱する方法を挙げることができる。
【0076】
<プリント配線基板>
また本発明では、上述のプリプレグを備えるものであるプリント配線基板(低誘電材料用ガラスクロス含有プリント配線基板)を提供する。
【0077】
このようなプリント配線基板は優れた誘電特性を有し、10GHz以上の電気信号を伝送する回路を有する電子部品に好適に用いることができるものである。
【0078】
<プリント配線基板の製造方法>
本発明の低誘電材料用ガラスクロス含有プリント配線基板は、例えば、上述のガラスクロス含有プリプレグを1枚以上、好ましくは2~20枚積層したものを加熱硬化することで製造する。加熱硬化条件としては、100~250℃/1~600分間加熱し、必要に応じて加熱と同時に0.1~20MPa加圧しても良い。
【実施例
【0079】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0080】
<アルコキシ基含有オルガノポリシロキサン(オリゴマー)の調製例>
以下のとおり、アルコキシ基を含有するオルガノポリシロキサンであるOrigo-1~Origo-6を準備した。
【0081】
[Origo-1]
メチル基含有オリゴマー(Origo-1)として、KC-89R-P(信越化学工業(株)製)を用いた。オリゴマーのケイ素原子数は平均2.1であった。
【0082】
[Origo-2]
フェニル基含有オリゴマー(Origo-2)として、KC-103M(信越化学工業(株)製)を用いた。オリゴマーのケイ素原子数は平均2.5であった。
【0083】
[Origo-3]
アミノ基含有オリゴマー(Origo-3)として、DC-3055(Dow Corning Corporation製)を用いた。オリゴマーのケイ素原子数は平均3.9であった。
【0084】
[Origo-4]
メチルトリメトキシシラン34.1gに0.01N塩酸水5.4gを滴下後、室温/3hrで熟成させ、炭酸水素ナトリウムで中和後に濾過した。次いで、メタノールと水を除去してメチル基含有オリゴマー(Origo-4)を合成した。得られたオリゴマーのケイ素原子数は平均15.2であった。
【0085】
[Origo-5]
フェニルトリメトキシシラン49.6gに0.1N塩酸水9.0gを滴下後、室温/3hrで熟成させ、炭酸水素ナトリウムで中和後に濾過した。次いで、メタノールと水を除去してフェニル基含有オリゴマー(Origo-5)を合成した。得られたオリゴマーのケイ素原子数は平均12.8であった。
【0086】
[Origo-6]
3-アミノプロピルトリメトキシシラン44.8gに1.0N塩酸水5.4gを滴下後、室温/3hrで熟成させ、炭酸水素ナトリウムで中和後に濾過した。次いで、メタノールと水を除去してアミノ基含有オリゴマー(Origo-6)を合成した。得られたオリゴマーのケイ素原子数は平均11.4であった。
【0087】
<マトリックス樹脂の調製例>
プリプレグの作製に用いたマトリックス樹脂は、以下のように調製した。
【0088】
[マトリックス樹脂(BMI)]
ビスマレイミド化合物(BMI-5000P(Designer Molecules Inc.製))100質量部にトルエン122質量部を添加し、樹脂濃度が45質量%になるように調製した。次いで硬化触媒としてジクミルパーオキサイド2質量部を添加し、マトリックス樹脂(BMI)を調製した。
【0089】
[実施例1~6、比較例2~6]
表1に示す質量%比で混合したオリゴマーとシランカップリング剤の0.1質量%溶液(水95質量%+メタノール2質量%の混合溶媒)となるように、オリゴマー含有組成物を調製した。
【0090】
調製したオリゴマー含有組成物にシリカガラスクロス(厚さ:95μm、単位面積当たりの質量:93g/m)を浸漬し、100℃/10min加熱乾燥して表面処理した。この表面処理ガラスクロスに、マトリックス樹脂(BMI)を含浸し、100℃/10分間加熱乾燥させて溶媒を除去しプリプレグとした。次いでプリプレグ1枚を、真空プレス機を用いて圧力5MPaの条件で180℃/60分間加熱硬化させてプリント配線基板を作製した。
【0091】
[実施例7、比較例7]
表1に示す質量%で混合したオリゴマーの0.1質量%溶液(メタノール溶媒)となるように、オリゴマー含有組成物を調製した。
【0092】
調製したオリゴマー含有組成物にシリカガラスクロス(厚さ:95μm、単位面積当たりの質量:93g/m)を浸漬し、100℃/10min加熱乾燥して表面処理した。この表面処理ガラスクロスに、マトリックス樹脂(BMI)を含浸し、100℃/10分間加熱乾燥させて溶媒を除去しプリプレグとした。次いでプリプレグ1枚を、真空プレス機を用いて圧力5MPaの条件で180℃/60分間加熱硬化させてプリント配線基板を作製した。
【0093】
[比較例1]
未処理のシリカガラスクロス(厚さ:95μm、単位面積当たりの質量:93g/m)に、実施例1~7及び比較例2~7と同様にマトリックス樹脂(BMI)を含浸し、100℃/10分間加熱乾燥させて溶媒を除去しプリプレグとした。次いでプリプレグ1枚を、真空プレス機を用いて圧力5MPaの条件で180℃/60分間加熱硬化させてプリント配線基板を作製した。
【0094】
<溶解性>
実施例1~6、比較例2~7で調製したオリゴマー含有組成物(アルコキシ基含有オルガノポリシロキサン組成物)の外観を目視で観察した。無色透明の場合を○、白濁・分離の場合を×と表記した。結果を表1に示す。
【0095】
<誘電特性>
各実施例及び比較例のプリント配線基板の誘電特性は下記方法により測定した。
【0096】
厚さ0.15mmで、3cm×4cmの長方形の成型片を作製した。ネットワークアナライザ(キーサイト社製:E5063-2D5)とストリップライン(キーコム株式会社製)を接続し、上記成型片の周波数10GHzにおける誘電率と誘電正接を測定した。結果を表1に示す。
【0097】
<引張強さ>
各実施例及び比較例と同一のオリゴマー含有組成物に、シリカガラスクロス(厚さ:31μm、単位面積当たりの質量:26g/m)を浸漬し、100℃/10min加熱乾燥して表面処理した。ガラスクロスの引張強さは下記方法により測定した。
【0098】
JIS R 3420:2013(ガラス繊維一般試験方法)に記載の方法で測定を行った。結果を表1に示す。
【0099】
<慣用曲げ剛性>
各実施例及び比較例のガラスクロスの慣用曲げ剛性は下記方法により測定した。
【0100】
JIS R 3420:2013(ガラス繊維一般試験方法)に記載の方法で測定を行い、縦糸方向での測定値を用いた。未処理のガラスクロス(比較例1)の慣用曲げ剛性の値を1として、表面処理ガラスクロスの慣用曲げ剛性の値を、倍数換算し表記した。結果を表1に示す。
【0101】
【表1】
Cap-1:メチルトリメトキシシラン
Cap-2:フェニルトリメトキシシラン
Cap-3:3-アミノプロピルトリメトキシシラン
【0102】
実施例1~6の平均2~10のケイ素原子で構成されたオリゴマーを含むオリゴマー含有組成物は、比較例4~6の平均11以上のケイ素原子で構成されたオリゴマーを含むオリゴマー含有組成物と比べ、水系溶媒に可溶であり作業者の安全性や地球環境を守ることができる。
【0103】
また、本発明の低誘電材料用ガラスクロスである実施例1~7のガラスクロスの引張強度は、表面処理されていない比較例1のガラスクロス、ケイ素原子数が1のシランカップリング剤で表面処理された比較例2、3のガラスクロスのものに比べ高かった。このことから、本発明の低誘電材料用ガラスクロスは、加工性に優れ、かつ強度が向上されたプリント配線基板を与えるものであることがわかる。
【0104】
さらに、本発明の低誘電材料用ガラスクロスを用いて作製された実施例1~7のプリント配線基板の10GHzにおける誘電正接は、表面処理されていないガラスクロスを用いて作製された比較例1のプリント配線基板、平均11.4のケイ素原子で構成されたオリゴマーを含むオリゴマー含有組成物で表面処理されたガラスクロスを用いて作製された比較例7のプリント配線基板のものに比べて小さかった。このことから、本発明の低誘電材料用ガラスクロスは、誘電特性に優れるものであり、高周波プリント配線基板として好適なものであることがわかる。
【0105】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明の低誘電材料用ガラスクロスは、マトリックス樹脂との密着性、接着性に優れ、強度が向上され、誘電特性に優れた信頼性のより高いプリプレグ及びプリント配線基板を与えるものであることから、高速サーバー等の10GHz以上の電気信号、特にミリ波を伝送する回路を有する電子部品の絶縁層等の素材として好適に用いることができるものである。