(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】元素分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 1/22 20060101AFI20240229BHJP
G01N 31/12 20060101ALI20240229BHJP
F27B 14/06 20060101ALI20240229BHJP
G01N 25/00 20060101ALN20240229BHJP
【FI】
G01N1/22 R
G01N1/22 T
G01N31/12 B
F27B14/06
G01N25/00 J
(21)【出願番号】P 2022505879
(86)(22)【出願日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 JP2021006093
(87)【国際公開番号】W WO2021182059
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2020042062
(32)【優先日】2020-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】井上 貴仁
(72)【発明者】
【氏名】内原 博
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-187579(JP,A)
【文献】特開2004-286698(JP,A)
【文献】特開2004-077259(JP,A)
【文献】特開2000-002699(JP,A)
【文献】特開2000-258307(JP,A)
【文献】特開2000-065696(JP,A)
【文献】実開平02-095863(JP,U)
【文献】特開2000-338019(JP,A)
【文献】特開2000-266741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/22
G01N 31/12
F27B 14/06
G01N 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
るつぼに入れられた試料が加熱され、当該試料から試料ガスを発生させる加熱炉と、
前記加熱炉にキャリアガスを導入する導入流路と、
前記加熱炉からキャリアガス及び試料ガスからなる混合ガスが導出される導出流路と、
前記導出流路上に設けられたダストフィルタと、
前記導出流路上において前記ダストフィルタよりも下流側に設けられ、混合ガスに含まれる1又は複数の所定成分を検出する分析機構と、
前記ダストフィルタに対して混合ガスが流れる方向とは逆方向に清掃ガスを流す清掃ガス供給機構と、
前記導出流路において前記ダストフィルタと前記分析機構との間から分岐し、前記ダストフィルタを通過したガスが排気される排気流路とを備え、
前記清掃ガス供給機構が、
前記導出流路と前記排気流路との分岐点に設けられた切換弁を少なくとも具備し、前記導出流路において混合ガスが流れる方向とは逆方向に清掃ガスが流れるように流路を切り替える流路切替部と、
前記排気流路又は前記切換弁に清掃ガスを供給する清掃ガス供給部と、を備えた元素分析装置。
【請求項2】
前記清掃ガス供給部が、
清掃ガスを所定の圧力で噴射する清掃ガス供給源と、
前記清掃ガス供給源と、前記排気流路との間を接続する清掃ガス供給流路と、を備え、
前記流路切替部が、
前記
切換弁である第1三方弁と、
前記排気流路と前記清掃ガス供給流路の合流点に設けられた第2三方弁と、を備えた請求項
1記載の元素分析装置。
【請求項3】
前記清掃ガス供給部が、
清掃ガスを所定の圧力で噴射する清掃ガス供給源と、
前記清掃ガス供給源と、前記
切換弁との間を接続する清掃ガス供給流路と、備え、
前記流路切替部が、
前記切換弁として前記導出流路の前記加熱炉側に対して、前記導出流路の前記分析機構側、前記排気流路、又は、前記清掃ガス供給
流路のいずれか1つが接続されるように流路を切り替える四方弁を備えた請求項
1記載の元素分析装置。
【請求項4】
前記ダストフィルタが、
メンブレンフィルタと、
前記メンブレンフィルタを厚み方向に挟持して保持するフィルタホルダと、を備えた請求項1乃至
3いずれかに記載の元素分析装置。
【請求項5】
前記フィルタホルダが樹脂又はガラスで形成された請求項
4記載の元素分析装置。
【請求項6】
前記ダストフィルタが、
メタルフィルタと、
前記メタルフィルタが溶接されたフィルタホルダと、を備えた請求項1乃至
3いずれかに記載の元素分析装置。
【請求項7】
前記加熱炉が、
第1電極と、
前記第1電極との間で前記るつぼを挟持する炉閉位置と、前記炉閉位置から所定距離離間した炉開位置との間を移動可能に構成された第2電極と、
前記第2電極を前記炉閉位置と前記炉開位置との間で移動させる駆動機構と、
前記加熱炉内に開口し、ダストを吸入する吸塵口を具備する吸塵流路と、
前記吸塵流路上において前記加熱炉側に接続された吸入ポートと、前記吸塵流路上において排出側に接続された吐出ポートと、作動流体が供給される駆動ポートと、を具備するエジェクタと、を備え、
前記駆動機構が、前記第2電極を前記炉閉位置から前記炉開位置に移動させる場合に、前記エジェクタの前記駆動ポートに作動流体が流入するように構成された請求項1乃至
6いずれかに記載の元素分析装置。
【請求項8】
前記駆動機構が、作動流体が流入又は流出する第1ポートを具備し、当該第1ポートから作動流体が流入した場合にピストンロッドが引き込まれて前記第2電極が前記炉開位置側へ移動するように構成された流体圧シリンダであり、
前記第1ポートから前記流体圧シリンダ内に作動流体が流入する場合に、前記駆動ポートから前記エジェクタ内にも作動流体が流入するように構成された請求項
7記載の元素分析装置。
【請求項9】
作動流体の供給源と前記第1ポートとの間を接続する第1供給ラインと、
前記第1供給ラインから分岐し、前記駆動ポートに接続された駆動ラインと、をさらに備えた請求項
8記載の元素分析装置。
【請求項10】
前記流体圧シリンダが、作動流体が流入又は流出する第2ポートを具備し、当該第2ポートから作動流体が流入した場合に前記ピストンロッドが押し出されて前記第2電極が前記炉閉位置側へ移動するように構成された請求項
8又は
9記載の元素分析装置。
【請求項11】
前記流体圧シリンダがエアシリンダであり、作動流体が圧縮空気である請求項
8乃至
10いずれかに記載の元素分析装置。
【請求項12】
前記吸塵流路が内部に形成され、前記第2電極を支持する支持体をさらに備え、
前記流体圧シリンダの前記ピストンロッドが前記支持体に接続された請求項
8乃至
11いずれかに記載の元素分析装置。
【請求項13】
前記吸塵流路が、前記支持体の表面に開口する複数の吸塵ポートを具備する請求項
12記載の元素分析装置。
【請求項14】
前記第2電極が前記炉開位置にある場合に、前記第1電極と前記第2電極との間に移動して、前記第1電極又は前記第2電極からダストを落とすように構成された清掃機構をさらに備え、
前記清掃機構が前記第1電極又は前記第2電極から落としたダストが、前記吸塵流路を介して前記加熱炉内から回収されるように構成された請求項
7乃至
13いずれかに記載の元素分析装置。
【請求項15】
前記加熱炉が、
第1電極と、
前記第1電極との間で前記るつぼを挟持する炉閉位置と、前記炉閉位置から所定距離離間した炉開位置との間を移動可能に構成された第2電極と、
前記第2電極を前記炉閉位置と前記炉開位置との間で移動させる駆動機構と、
前記加熱炉内に開口し、ダストを吸入する吸塵口を具備する吸塵流路と、
前記吸塵流路上において前記加熱炉側に接続された吸入ポートと、前記吸塵流路上において排出側に接続された吐出ポートと、作動流体が供給される駆動ポートと、を具備するエジェクタと、を備え、
前記清掃ガス供給機構が、前記ダストフィルタに対して混合ガスが流れる方向とは逆方向に清掃ガスを流す場合に、前記エジェクタの前記駆動ポートに作動流体が流入するように構成された請求項1乃至
6いずれかに記載の元素分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料を加熱して生成される試料ガスに基づいて、試料中に含まれる元素を分析する元素分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
試料中に含まれる例えば窒素(N)、水素(H)、酸素(O)等の元素を定量するために元素分析装置が用いられる。このような元素分析装置は、試料を収容した黒鉛るつぼを加熱炉内において一対の電極により挟持し、当該るつぼに直接電流を流して、るつぼ及び試料を加熱する。加熱により発生した試料ガスとキャリガスからなる混合ガスは、ダストフィルタに通過させてすす等のダストが濾過される。濾過された後の混合ガスに含まれる各種成分の濃度は、NDIR(Non Dispersive Infrared:非分散型赤外線ガス分析計)やTCD(Thermal Conductivity Detector熱伝導度検出器)等からなる分析機構によって測定される。
【0003】
ところで、例えば石英ウール等により形成されたダストフィルタが所定量以上のすす等のダストを捕集した場合、分析機構での測定精度を保つためにダストフィルタを交換する必要がある。このようなダストフィルタの交換頻度はユーザが期待しているよりも高くなってしまうことがあり、メンテナンスの手間が大きな負担となる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述したような問題に鑑みてなされたものであり、ダストフィルタの交換頻度を低減し、ユーザによるメンテナンスにかかる手間を低減できる元素分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明に係る元素分析装置は、るつぼに入れられた試料が加熱され、当該試料から試料ガスを発生させる加熱炉と、前記加熱炉にキャリアガスを導入する導入流路と、前記加熱炉からキャリアガス及び試料ガスからなる混合ガスが導出される導出流路と、前記導出流路上に設けられたダストフィルタと、前記導出流路上において前記ダストフィルタよりも下流側に設けられ、混合ガスに含まれる1又は複数の所定成分を検出する分析機構と、前記ダストフィルタに対して混合ガスが流れる方向とは逆方向に清掃ガスを流す清掃ガス供給機構と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
このようなものであれば、前記清掃ガス供給機構によって供給される清掃ガスにより前記ダストフィルタに捕集されているすす等のダストを前記加熱炉側に押し流し、当該ダストフィルタを再生できる。この結果、前記ダストフィルタの交換や掃除といった保守頻度を従来よりも減らすことができる。
【0008】
また、前記清掃ガスは前記導出流路において前記ダストフィルタと前記分析機構の間から当該導出流路を逆流するように流されるので、前記ダストフィルタから剥離したすす等のダストは前記分析機構には流れない。したがって、前記ダストフィルタを再生しても前記分析機構の分析精度は保つことができる。
【0009】
清掃ガスが前記ダストフィルタへ向かって前記導出流路内を逆流するように流せるようにし、前記分析機構には清掃ガスが流れないようにして前記ダストフィルタから剥離したすす等のダストが当該分析機構には到達しないようにするには、前記導出流路において前記ダストフィルタと前記分析機構との間から分岐し、前記ダストフィルタを通過した混合ガスが排気される排気流路をさらに備え、前記清掃ガス供給機構が、前記導出流路と前記分岐流路との分岐点に設けられた切換弁を少なくとも具備し、前記導出流路において混合ガスが流れる方向とは逆方向に清掃ガスが流れるように流路を切り替える流路切替部と、前記排気流路又は前記切換弁に清掃ガスを供給する清掃ガス供給部と、を備えたものであればよい。
【0010】
前記ダストフィルタに対して混合ガスとは逆方向に清掃ガスを流して当該ダストフィルタを再生するための具体的な態様としては、前記清掃ガス供給部が、清掃ガスを所定の圧力で噴射する清掃ガス供給源と、前記供給源と、前記排気流路との間を接続する清掃ガス供給流路と、を備え、前記流路切替部が、前記切換弁である第1三方弁と、前記排気流路と前記清掃ガス供給流路の合流点に設けられた第2三方弁と、を備えたものが挙げられる。このようなものであれば、前記清掃ガス供給部を構成するために必要となる前記第2三方弁は、前記導出流路上に設けられていないので、前記導出流路上には従来の元素分析装置と同様に余計なバルブが増設されることがなく、分析精度を保つことができる。すなわち、前記導出流路上に前記第1三方弁以外のバルブが追加されると分析時において混合ガスが停滞してしまう箇所が増えることになり、分析時における前記分析機構へのガス抜けが悪くなって感度の低下等を招く恐れがある。また、前記ダストフィルタに清掃ガスを噴き付けて逆洗する際に清掃ガスの成分が前記導出流路上に設けられたバルブに残ってしまい、その次の分析時に清掃ガスの成分が混合ガスとともに前記分析機構で検出されて、分析精度が悪化する可能性もある。上述したような前記第2三方弁の配置であれば、これらのような問題がそもそも生じないようにできる。
【0011】
前記ダストフィルタに対して清掃ガスによる逆洗を可能としつつ、前記導出流路上にバルブが増えることにより分析精度が低下を引き起こさないようにできる別の態様としては、前記清掃ガス供給部が、清掃ガスを所定の圧力で噴射する清掃ガス供給源と、前記清掃ガス供給源と接続された清掃ガス供給流路と、を備え、前記流路切替部が、前記切換弁として前記導出流路の前記加熱炉側に対して、前記導出流路の前記分析機構側、前記排気流路、又は、前記清掃ガス供給路のいずれか1つが接続されるように流路を切り替える四方弁を備えたものが挙げられる。
【0012】
前記清掃ガス供給機構により供給する清掃ガスによって捕集されたすす等のダストを剥離させて簡単に再生でき、メンテナンスの頻度をさらに低減できるようにするには、前記ダストフィルタが、メンブレンフィルタと、前記メンブレンフィルタを厚み方向に挟持して保持するフィルタホルダと、を備えたものであればよい。また、このようなものであれば、清掃ガスでは前記メンブレンフィルタを再生できなくなった場合には、前記フィルタホルダから前記メンブレンフィルタを外して交換するだけでよい。したがって、交換作業にかかる手間も従来よりも低減できる。
【0013】
前記ダストフィルタを軽量化でき、交換に係る手間を軽減できるようにするには、前記フィルタホルダが樹脂又はガラスで形成されたものであればよい。また、透明樹脂又はガラスで前記フィルタホルダを形成すれば、例えば前記メンブレンフィルタにおけるすす等のダストの捕集度合いを目視によって確認できるので、清掃ガスを供給する時期を判断しやすい。このため、清掃ガスを供給する頻度を最小限にしてメンテナンスにかかる手間を軽減できる。
【0014】
前記ダストフィルタについては交換を行わずに、清掃ガスの逆洗で使用し続けるようにしてメンテナンスの頻度を低くするには、前記ダストフィルタが、メタルフィルタと、前記メタルフィルタが溶接されたフィルタホルダと、を備えたものであればよい。
【0015】
前記加熱炉が、第1電極と、前記第1電極との間で前記るつぼを挟持する炉閉位置と、前記炉閉位置から所定距離離間した炉開位置との間を移動可能に構成された第2電極と、前記第2電極を前記炉閉位置と前記炉開位置との間で移動させる駆動機構と、前記加熱炉内に開口し、ダストを吸入する吸塵口を具備する吸塵流路と、前記吸塵流路上において前記加熱炉側に接続された吸入ポートと、前記吸塵流路上において排出側に接続された吐出ポートと、作動流体が供給される駆動ポートと、を具備するエジェクタと、を備え、前記駆動機構が、前記第2電極を前記炉閉位置から前記炉開位置に移動させる場合に、前記エジェクタの前記駆動ポートに作動流体が流入するように構成されたものであれば、前記第2電極が前記炉閉位置から前記炉開位置へ移動するのに合わせて前記エジェクタに吸引作用を発揮させることができる。
【0016】
したがって、前記加熱炉が開放されるのに伴って散らされるダストは、前記エジェクタの吸引作用によって前記加熱炉内の前記吸塵口から前記吸塵流路を介して回収できる。
【0017】
しかも、エジェクタの特性として供給される作動流体の流量に対して数倍の流量を吸引できるので、前記加熱炉内を強力に吸引してダストをほぼ完全に吸引することも可能となる。
【0018】
前記エジェクタに吸引作用を発揮させるための作動流体によって前記駆動機構を動作させるようにして装置全体の構成を簡素なものにするには、前記駆動機構が、作動流体が流入又は流出する第1ポートを具備し、当該第1ポートから作動流体が流入した場合にピストンロッドが引き込まれて前記第2電極が前記炉開位置側へ移動するように構成された流体圧シリンダであり、前記第1ポートから前記流体圧シリンダ内に作動流体が流入する場合に、前記駆動ポートから前記エジェクタ内にも作動流体が流入するように構成されたものであればよい。
【0019】
前記流体圧シリンダを動作させて前記第2電極を前記炉開位置側へ移動させる場合に、切換弁等を制御しなくても前記エジェクタに対して自動的に作動流体が同時に供給されるようにして、前記加熱炉の開放動作と前記エジェクタによる吸引動作を連動させられるようにするには、作動流体の供給源と前記第1ポートとの間を接続する第1供給ラインと、前記第1供給ラインから分岐し、前記駆動ポートに接続された駆動ラインと、をさらに備えたものであればよい。
【0020】
前記第2電極を前記炉閉位置に移動させた場合に、前記第1電極と前記第2電極との間で前記るつぼが十分な力で挟持できるようにするには、前記流体圧シリンダが、作動流体が流入又は流出する第2ポートを具備し、当該第2ポートから作動流体が流入した場合に前記ピストンロッドが押し出されて前記第2電極が前記炉閉位置側へ移動するように構成されたものであればよい。
【0021】
前記作動流体を前記元素分析装置が用いられるような環境で用意しやすいものにし、使い捨てできるようにして、前記エジェクタによる吸引力を大きくできるようにするには、前記流体圧シリンダがエアシリンダであり、作動流体が圧縮空気であればよい。
【0022】
前記吸塵流路が内部に形成され、前記第2電極を支持する支持体をさらに備え、前記流体圧シリンダの前記ピストンロッドが前記支持体に接続されたものが挙げられる。
【0023】
前記加熱炉内から偏りなくダストを吸引できるようにするには、前記吸塵流路が、前記支持体の表面に開口する複数の吸塵ポートを具備するものであればよい。
【0024】
前記加熱炉が開放された後で前記第1電極又は前記第2電極に付着しているダストを清掃するための具体的な構成例としては、前記第2電極が前記炉開位置にある場合に、前記第1電極と前記第2電極との間に移動して、前記第1電極又は前記第2電極からダストを落とすように構成された清掃機構をさらに備え、前記清掃機構が前記第1電極又は前記第2電極から落としたダストが、前記吸塵流路を介して前記加熱炉内から回収されるように構成されたものが挙げられる。
【0025】
前記ダストフィルタを再生するために清掃ガスが流される場合に、当該ダストフィルタから前記加熱炉内に流入するダストが自動的に回収されるようにして、前記加熱炉の清浄度を保てるようにするには、前記加熱炉が、第1電極と、前記第1電極との間で前記るつぼを挟持する炉閉位置と、前記炉閉位置から所定距離離間した炉開位置との間を移動可能に構成された第2電極と、前記第2電極を前記炉閉位置と前記炉開位置との間で移動させる駆動機構と、前記加熱炉内に開口し、ダストを吸入する吸塵口を具備する吸塵流路と、前記吸塵流路上において前記加熱炉側に接続された吸入ポートと、前記吸塵流路上において排出側に接続された吐出ポートと、作動流体が供給される駆動ポートと、を具備するエジェクタと、を備え、前記清掃ガス供給機構が、前記ダストフィルタに対して混合ガスが流れる方向とは逆方向に清掃ガスを流す場合に、前記エジェクタの前記駆動ポートに作動流体が流入するように構成されたものであればよい。
【発明の効果】
【0026】
このように本発明に係る元素分析装置であれば、前記ダストフィルタに対して前記清掃ガス供給機構により分析時に混合ガスが流れる方向とは逆方向に清掃ガスを供給して捕集されたすす等のダストを前記加熱炉へと流すことができる。このため、前記ダストフィルタを再生して、交換頻度を下げることができるとともに、再生時に前記ダストフィルタから剥離するすす等のダストは前記分析機構には到達しないようにして分析精度を保てる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施形態における元素分析装置の全体構成を示す模式図。
【
図2】同実施形態における加熱炉及びその周辺の構造を示す模式図。
【
図3】同実施形態における下部電極(第2電極)の周辺の構造を示す模式的斜視図。
【
図4】同実施形態におけるエジェクタの構成を示す模式的断面図。
【
図5】同実施形態における清掃ガス供給機構の周辺を拡大した排気時の状態を示す模式図。
【
図6】同実施形態における清掃ガス供給機構の周辺を拡大した測定時の状態を示す模式図。
【
図7】同実施形態における清掃ガス供給機構の周辺を拡大した分析時の状態を示す模式図。
【
図8】同実施形態におけるダストフィルタの構造を示す模式的斜視図。
【
図9】ダストフィルタの変形例を示す模式的断面図。
【
図10】ダストフィルタの別の変形例を示す模式的断面図。
【
図11】本発明の別の実施形態における清掃ガス供給機構の周辺を拡大した模式図。
【
図12】本発明のさらに別の実施形態における加熱炉及びその周辺の構造を示す模式図。
【符号の説明】
【0028】
100・・・元素分析装置
1 ・・・供給源
2 ・・・精製器
3 ・・・加熱炉
31 ・・・上部電極(第1電極)
32 ・・・下部電極(第2電極)
33 ・・・支持体
34 ・・・エアシリンダ
35 ・・・ピストンロッド
36 ・・・シリンダ
37 ・・・エジェクタ
DL ・・・吸塵流路
DP ・・・吸塵口
4 ・・・ダストフィルタ
41 ・・・メンブレンフィルタ、メタルフィルタ、メタルメッシュフィルタ
42 ・・・フィルタホルダ
5 ・・・CO検出部
6 ・・・酸化器
7 ・・・CO2検出部
8 ・・・H2O検出部
9 ・・・除去機構
10 ・・・マスフローコントローラ
11 ・・・N2検出部(熱伝導度分析部)
R ・・・清掃ガス供給機構
RS ・・・清掃ガス供給部
RC ・・・流路切替部
R1 ・・・清掃ガス供給源
R2 ・・・清掃ガス供給流路
R3 ・・・第1三方弁
R4 ・・・第2三方弁
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の一実施形態に係る元素分析装置100について各図を参照しながら説明する。
図1に本実施形態の元素分析装置100の概略を示す。元素分析装置100は、黒鉛るつぼMP内に収容された例えば金属試料やセラミックス試料等(以下、単に試料という)を加熱溶解し、その際に発生する試料ガスを分析することにより、当該試料内に含まれている元素の量を測定するものである。第1実施形態では試料中に含まれているO(酸素)、H(水素)、N(窒素)が測定対象となる。
【0030】
具体的には
図1に示すように、元素分析装置100は、るつぼMPに収容された試料が加熱される加熱炉3と、加熱炉3に対してキャリアガスを導入する導入流路L1と、加熱炉3からキャリアガスと試料ガスの混合ガスが導出される導出流路L2と、を備えている。より具体的には、元素分析装置100は、加熱炉3と、導入流路L1又は導出流路L2に設けられた各機器と、各機器の制御や測定された濃度等の演算処理を司る制御演算機構COMによって構成されている。制御演算機構COMは例えばCPU、メモリ、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、各種入出力手段を備えたいわゆるコンピュータであって、メモリに格納されているプログラムが実行され、各種機器が協業することにより後述する測定値算出部C1、モード設定器C2としての機能を発揮する。また、制御演算機構COMは後述する、例えばCO検出部5、CO
2検出部7、H
2O検出部8、N
2検出部11の出力に基づいて試料中に含まれる各種元素の濃度を表示する表示部(図示しない)としての機能も発揮する。
【0031】
各部について詳述する。
【0032】
導入流路L1の基端にはキャリアガスの供給源1であるガスボンベが接続されている。第1実施形態では供給源1からHe(ヘリウム)が導入流路L1内に供給される。また、導入流路L1上にはキャリアガスに含まれる微小量の炭化水素を除去し、キャリアガスの純度を上昇させる精製器2が設けられている。
【0033】
精製器2はキャリアガス中に含まれる炭化水素を物理的に吸着し、キャリアガス自体は実質的に吸着しない特性を有する材料で形成されている。なお、精製器2を形成する材料はキャリアガス又は炭化水素とは化学的には反応しない。すなわち、この精製器2は例えばガスクロマトグラフにおいても用いられるものであり、この精製器2を形成する材料として例えばゼオライト系モレキュラーシーブを用いることができる。また、精製器2を形成する材料としてはシリカゲルや活性炭、アスカライト等であっても構わない。
【0034】
加熱炉3は、試料を収容した黒鉛るつぼMPを一対の電極である第1電極と第2電極により挟持し、当該るつぼMPに直接電流を流して、るつぼMP及び試料を加熱するように構成されている。具体的には
図2等に示されるように加熱炉3は、内部空間が形成された円筒状の第1電極である上部電極31と、内部空間内に挿入されて、るつぼMPを上部電極31との間に挟持する円柱状の第2電極である下部電極32とを備えている。
【0035】
上部電極31には導入流路L1から供給されるキャリアガスを内部空間に供給するための貫通穴が上下方向に形成されている。また、試料から生成された試料ガスとキャリアガスの混合ガスは、上部電極31の側面に形成された貫通穴を介して導出流路L2に流れ出す。
【0036】
また、下部電極32は
図2に示すように直動流体圧シリンダであるエアシリンダ34によって上下方向に進退するように構成されている。すなわち、具体的にはるつぼMP内の試料が加熱される場合には、エアシリンダ34によって下部電極32は上方に移動し、上部電極31の内部空間内に挿入される。この状態では、るつぼMPは上部電極31と下部電極32との間に挟持される。また、下部電極32は、側面に外周側に突出するように設けられたシール部により上部電極31の下側開口を気密に閉塞する。この結果、試料が加熱されることにより発生する試料ガスとキャリアガスとが混合された混合ガスは上部電極31の側面側から導出流路L2へと流れ出す。
【0037】
言い換えると下部電極32は、
図2(a)に示すように上部電極31との間でるつぼを挟持する炉閉位置と、
図2(b)に示すように炉閉位置から所定距離離間した炉開位置との間を移動可能に構成されている。本実施形態では炉開位置に対して炉閉位置は下方に配置されている。炉閉位置では内部で発生する試料ガスが外部へ漏洩しないように、加熱炉3は図示しない扉が閉じられる。一方、炉開位置ではるつぼMPの交換、あるいは、加熱炉3内の清掃やメンテナンスのために図示しない扉が開放される。すなわち、後述するダストフィルタ4の清掃や試料の交換が行われる場合には、エアシリンダ34によって下部電極32は下方に移動し、上部電極31の内部空間の外側に配置される。
【0038】
このように加熱炉3が開放された状態では加熱炉3内の空間は掃除機等の吸引源Pと連通された状態となる。下部電極32が炉開位置に移動し、加熱炉3が開放される際には、加熱炉3内が自動的に吸引されて、上部電極31及び下部電極32等に付着しているすす等のダストが回収されるように構成されている。
【0039】
以下では加熱炉3における吸引動作に関連する構成について詳述する。
【0040】
下部電極32は、概略扁平直方体状に形成された底面部を有する支持体33によって支持されている。この支持体33の外側にエアシリンダ34のピストンロッド35が接続されており、エアシリンダ34で支持体33を上下方向に移動させることにより、下部電極32は炉閉位置と炉開位置との間で移動する。
【0041】
エアシリンダ34には、作動流体である圧縮空気が流入又は流出する第1ポートSP1及び第2ポートSP2がシリンダ36の側面に開口している。第1ポートSP1に対して圧縮空気が流入する場合には、ピストンロッド35がシリンダ36内に引き込まれる。第2ポートSP2に対して圧縮空気が流入する場合にはピストンロッド35がシリンダ36の外側に押し出される。すなわち、シリンダ36内ではピストンロッド35によって第1ポートSP1に連通した第1室と、第2ポートSP2に連通した第2室とが区成されており、圧縮空気の流出入により第1室及び第2室の圧力差を変更することで、ピストンロッド35の押出量が制御される。本実施形態では圧縮空気の供給源と第1ポートSP1との間は、第1供給ラインSL1で接続されており、供給源と第2ポートSP2との間は第2供給ラインSL2で接続されている。供給源から第1ポートSP1又は第2ポートSP2のいずれに圧縮空気を供給するかや、供給する圧縮空気の量は、供給源が具備する圧縮空気制御機構により制御される。なお、圧縮空気制御機構は例えばモード設定器C2から入力される加熱炉3の炉開指令、又は、炉閉指令に応じた予め定められた動作を行うように構成されている。
【0042】
また、支持体33の底面部の炉内側表面には
図3に示すようにダストを吸入するための吸塵口DPが複数開口している。具体的には、支持体33の底面部の中央に下部電極32が支持されており、四隅にそれぞれ吸塵口DPが開口している。加えて、支持体33の内部には、
図2に示すように前述した吸塵口DPを具備する吸塵流路DLが形成されている。
【0043】
本実施形態では支持体33内に形成された吸塵流路DLにおいて加熱炉3の内部側と吸入ポートVPが接続されるようにエジェクタ37が設けられている。また、エジェクタ37の駆動ポートAPと第1供給ラインSL1との間は、第1供給ラインSL1から分岐する駆動ラインALで接続されている。すなわち、圧縮空気の供給源からエアシリンダ34の第1ポートSP1に圧縮空気が供給されると、並行してエジェクタ37の駆動ポートAPに対しても圧縮空気が供給されるように構成されている。加えて、エジェクタ37の吐出ポートEPは、吸塵流路DLにおいて例えばダストボックス等がある排気側に接続される。
【0044】
ここで、本実施形態のエジェクタ37について詳述すると、
図4に示すようにエジェクタ37は概略円筒形状をなすものであり、一方の端面に吸入ポートVPが形成され、他方の端面に吐出ポートEPが形成されている。また、エジェクタ37の側面には作動流体である圧縮空気が流入する駆動ポートAPが形成されている。駆動ポートAPはエジェクタ37の内部に形成された図示しないノズルと連通しており、圧縮空気がノズルを通過することで生じる空気の減圧によって、
図4(a)に示すように吸入ポートVPから気体が吸入される。また、駆動ポートAPから流入する圧縮空気と、吸入ポートVPから吸入された気体は、混合された状態で吐出ポートEPから外部へと吐出される。ここで、駆動ポートAPから流入する圧縮空気の流量に対して、吐出ポートEPから吐出される流量は例えば3~4倍程度となる。すなわち、吸入ポートVPから吸入される気体の流量は、駆動ポートAPへ流入する圧縮空気の2~3倍程度となる。このようにエジェクタ37は、駆動ポートAPに圧縮空気を流入させることにより、吸入ポートVPに吸引力を発生させ、吸塵口DPから加熱炉3内のダストを吸引する。
【0045】
次に導出流路L2上に設けられている各機器について説明する。
【0046】
図1に示すように導出流路L2上には、加熱炉3から導出された混合ガスが流入するダストフィルタ4と、ダストフィルタ4を通過した混合ガス中から1又は複数の所定成分を検出する分析機構AMと、が設けられている。本実施形態では分析機構AMは、CO検出部5、酸化器6、CO
2検出部7、H
2O検出部8、除去機構9、マスフローコントローラ10、熱伝導度分析部であるN
2検出部11からなり、各機器が導出流路L2において上流側からこの順番で並べて設けられている。また、導出流路L2には、ダストフィルタ4に対して混合ガスが流れる方向とは逆方向に清掃ガスを供給する清掃ガス供給機構Rが設けられている。清掃ガス供給機構Rは、ダストフィルタ4と分析機構AMにおいて最も上流側に配置されているCO検出部5との間から分岐する排気流路L3を介して、清掃ガスをダストフィルタ4に供給するように構成されている。
【0047】
各部について詳述する。
【0048】
ダストフィルタ4は、混合ガスに含まれているすすなどのダストを濾し取り、除塵するものである。
図8に示すように、ダストフィルタ4は、例えばPTFE製のメンブレンフィルタ41と、このメンブレンフィルタ41を厚み方向に挟持して保持するフィルタホルダ42と、を備えている。フィルタホルダ42は、導出流路L2においてフランジ継手として構成されており、それぞれ概略円盤状の上流側ホルダ4Aと、下流側ホルダ4Bとからなる。下流側ホルダ4Bの中央部にはメッシュ状のシートスクリーン4Cが形成されており、このシートスクリーン4Cの上にメンブレンフィルタ41が配置されて、上流側ホルダ4Aとの間に挟持される。なお、上流側ホルダ4Aと下流側ホルダ4Bはそれぞれ図示しないボルトとナットによって外周部が締結される。フィルタホルダ42は、例えばアクリル等の透明樹脂で形成されており、フィルタホルダ42の外側からメンブレンフィルタ41の状態を目視できるように構成されている。
【0049】
清掃ガス供給機構Rは、
図5乃至
図7に示すように導出流路L2においてダストフィルタ4とCO検出部5との間から分岐する排気流路L3からダストフィルタ4に対して清掃ガスを所定の圧力以上で逆噴射するように構成されている。すなわち、清掃ガス供給機構Rは、排気流路L3に清掃ガスを供給する清掃ガス供給部RSと、2つの切換弁からなる流路切替部RCを備えている。この流路切替部RCは、例えばモード設定器C2によって制御され、設定されるモードに応じて各切換弁の接続先が変更される。
【0050】
清掃ガス供給部RSは、例えば不活性ガスを清掃ガスとして所定の圧力で噴射する清掃ガス供給源R1と、清掃ガス供給源R1と排気流路L3との間を接続する清掃ガス供給流路R2と、を備えている。清掃ガス供給流路R2は、排気流路において下流端側に設けられたキャピラリよりも上流側に合流するように設けられている。ここで、清掃ガス供給源R1から噴射される不活性ガスは、分析機構AMにおいて検出されないものが好ましく、例えば本実施形態のキャリアガスと同じく、Heを用いることができる。このような清掃ガスを用いれば、導出流路L2上にある後述する第1三方弁R3やダストフィルタ4に清掃ガスの成分が残留してしまったとしても、分析精度に影響を与えにくくできる。なお、求められる分析精度や測定対象とする元素の種類によっては、不活性ガスとしてキャリアガスとは異なる成分であるArやN2を用いることもできる。
【0051】
流路切替部RCは、導出流路L2と排気流路L3の分岐点に設けられた第1三方弁R3と、排気流路と清掃ガス供給流路R2の合流点に設けられた第2三方弁R4と、を備えている。第1三方弁R3と第2三方弁R4の状態が切り替えられることによって、
図2乃至
図4に示すように流れるガスの種類やその流れる向きが変更される。すなわち、流路切替部RCの切り替えによって、
図5に示す排気モードと、
図6に示す分析モードと、
図7に示す清掃モードが実現される。
【0052】
図5に示す排気モードでは、第1三方弁R3は導出流路L2と排気流路L3とを連通させ、導出流路L2の分析機構AM側を閉塞し、第2三方弁R4は清掃ガス供給流路R2を閉塞する。この結果、加熱炉3から導出される混合ガスは、分析機構AMを経由させずに排気流路L3から排気される。排気モードは、るつぼMP内に試料をいれずに空焼きして、るつぼMPに含まれている不純物をガス化させ、分析機構AMには入れずに排気流路L3から外部に排気するために使用される。
【0053】
図6に示す分析モードでは、第1三方弁R3は排気流路L3を閉塞し、混合ガスを分析機構AMに対して流入させる。分析機構AMは流入する混合ガスについて各種成分の濃度を測定する。
【0054】
図7に示す清掃モードでは、第1三方弁R3は導出流路L2と排気流路L3とを連通させ、導出流路L2の分析機構AM側を閉塞する。また、第2三方弁R4は排気流路L3と清掃ガス供給流路R2とを連通させ、排気流路L3の出口側を閉塞する。加えて、加熱炉3では下部電極32は下方に配置され、清掃ガス供給源R1から噴射された清掃ガスは、ダストフィルタ4を逆流し、その後加熱炉3内から吸引源Pに至るように流路が形成される。清掃モードでダストフィルタ4に対して清掃ガスが供給されると、ダストフィルタ4におけるメンブレンフィルタ41の上流側の面に捕集されているすす等のダストは加熱炉3内へと流される。加熱炉3内に流入した清掃ガス及びダストは、吸引源Pで吸引され、加熱炉3内は清浄に保たれる。
【0055】
次に分析機構AMの詳細について
図1を参照しながら説明する。
【0056】
CO検出部5は、ダストフィルタ4を通過した混合ガスに含まれるCO(一酸化炭素)を検出し、その濃度を測定するものであり、NDIR(非分散型赤外線ガス分析計)で構成されている。このCO検出部5は、その測定精度から試料内部に含まれている酸素が高濃度の場合に有効に動作する。具体的には150ppm以上のCOを測定対象とするのが好ましい。
【0057】
酸化器6は、CO検出部5を通過した混合ガスに含まれるCOやCO2を酸化するとともに、H2をH2O(水)に酸化して水蒸気を生成するものである。この酸化器6として第1実施形態では酸化銅が用いられており、その温度は周囲に設けられた発熱抵抗体により450℃以下の温度に保たれている。
【0058】
CO2検出部7は、酸化器6を通過した混合ガス中のCO2を検出して、その濃度を測定するNDIRである。このCO2検出部7は、測定精度の観点から試料に含まれる酸素が低濃度(例えば150ppm未満)の場合に有効に動作する。
【0059】
H2O検出部8は、CO2検出部7を通過した混合ガス中のH2Oを検出して、その濃度を測定するNDIRである。なお、酸化器6からH2O検出部8に至るまでの流路は混合ガスの温度が100℃以上に保たれて、H2Oが水蒸気の状態を保つように構成されている。このようにして、結露による測定誤差がH2O検出部8において発生しないようにしている。
【0060】
除去機構9は、混合ガス中に含まれているCO2及びH2Oを吸着して除去するものである。この除去機構9は吸着剤によって構成されており、例えば前述した導入流路L1に設けられた精製器2と同じものが用いられる。したがって、除去機構9を構成する吸着剤としては例えばゼオライト系モレキュラーシーブを用いることができる。また、除去機構9を形成する材料としてはシリカゲルや活性炭、アスカライト等であっても構わない。
【0061】
マスフローコントローラ10は、流量センサ、制御バルブ、流量制御器(それぞれ図示しない)が1つのパッケージとなった流量制御デバイスである。このマスフローコントローラ10は、下流側にあるN2検出部11には設定流量で一定に保たれた混合ガスを供給する。
【0062】
N2検出部11は、TCD(熱伝導度検出器)であり、混合ガスの熱伝導度の変化と、供給されている混合ガスの流量から混合ガスに含まれている所定成分であるN2の濃度を測定する。すなわち、N2検出部11に供給される混合ガスはほぼキャリアガスとN2だけで構成されているので、混合ガス中に含まれるN2の濃度は測定される熱伝導度の変化に対応した値となる。また、第1実施形態ではN2検出部11の下流側には流量計は設けられておらず、N2検出部11の下流側は導出流路L2の排気口に直結されている。
【0063】
このように構成された元素分析装置100の分析フローについて
図1を参照しながら説明する。
【0064】
加熱炉3内において試料を収容したるつぼMPに直接電流を流してるつぼMPを通電加熱する。この加熱時には導入流路L1からキャリアガスを加熱炉3内が大気圧に対して差圧が60kPa以下に昇圧された状態で保たれるように供給し続ける。加熱炉3内において熱分解還元により生じる試料ガスはキャリアガスにより導出流路L2に導出される。
【0065】
加熱炉3から導出されたキャリアガスと試料ガスからなる混合ガスはダストフィルタ4を通った後CO検出部5に導かれる。ここで、CO検出部5に導入される試料ガスに含まれている可能性のある成分はCO、H2、N2である。CO検出部5においてCOの濃度が測定される。
【0066】
次にCO検出部5を通過した混合ガスは、酸化器6に導かれる。ここで、混合ガスに含まれるCOはCO2に酸化され、H2はH2Oに酸化される。したがって、酸化器6を通過した試料ガスに含まれている可能性のある成分はCO2、H2O、N2である。
【0067】
酸化器6を通過した混合ガスはCO2検出部7に導かれる。このCO2検出部7によって混合ガスに含まれるCO2の濃度が測定される。
【0068】
CO2検出部7を通過した混合ガスはH2O検出部8に導かれ、混合ガス中に含まれるH2Oの濃度が測定される。
【0069】
H2O検出部8を通過した混合ガスは除去機構9に導かれる。除去機構9においてはCO2、H2Oが吸着除去されるので、除去機構9を通過した試料ガスに含まれている可能性のある成分はN2のみとなる。
【0070】
除去機構9を通過した混合ガスはマスフローコントローラ10によって設定流量で一定の流量に保たれた状態でN2検出部11に導かれる。N2検出部11ではN2の濃度が測定される。
【0071】
各検出部で得られた各成分の濃度を示す測定信号は測定値算出部C1に対して入力される。測定値算出部C1は各測定信号に基づき、試料に含まれているO,H,Nの濃度を算出する。なお、測定値算出部C1は、試料に含まれる酸素濃度を算出する際に試料内部の酸素濃度が所定の閾値(150ppm)以上の場合にはCO検出部5で得られた酸素濃度を出力値とし、閾値未満の場合にはCO2検出部7で得られた酸素濃度を出力値とする。
【0072】
このように構成された元素分析装置100であれば、清掃モードが実行されることにより清掃ガス供給機構Rによってダストフィルタ4に対して分析モードで混合ガスが流れる方向とは逆向きに清掃ガスが噴射されるので、メンブレンフィルタ41をフィルタホルダ42から取り外すことなく、捕集されているすす等のダストを脱着させてフィルタとしての機能を再生できる。このため、メンブレンフィルタ41を交換することなく、元素分析を行える回数が大幅に増加させることができ、メンテナンスの頻度とその手間を低減できる。
【0073】
また、ダストフィルタ4はメンブレンフィルタ41を用いているので、すす等のダストはメンブレンフィルタ41の加熱炉3側の面にのみほぼ堆積する。したがって、メンブレンフィルタ41に対して加熱炉3側へ向かって清掃ガスを流すことにより、捕集されたすす等のダストは分析機構AM側へはほぼ流さずに、加熱炉3側へ戻して吸引源Pで回収できる。この結果、清掃モードによりメンブレンフィルタ41を再生しても分析機構AMの分析精度を保つことができる。
【0074】
さらにメンブレンフィルタ41であれば、石英ウール等をフィルタとして用いる場合と比較して、ダストやフィルタを構成する材料自体が分析機構AM側には流出しにくい。加えて、分析が繰り返されて清掃モードによる再生ができなくなるほどメンブレンフィルタ41の性能が低下した場合でも、フィルタホルダ42内にメンブレンフィルタ41を配置し、挟み込むだけで簡単に交換できる。このため、保守不良によってすす等のダストが分析装置側へリークするのを防ぎやすい。
【0075】
さらに、
図2(b)に示すように下部電極32を炉開位置に移動させるためにエアシリンダ34の第1ポートSP1に圧縮空気を供給すると、エジェクタ37の駆動ポートAPにも圧縮空気が供給される。したがって、例えば掃除機等を別途動作させなくても、加熱炉3を開放しながら同時に加熱炉3内のダストを吸塵口DPから吸引できる。したがって、開放動作に伴って加熱炉3内がダストで汚れてしまうのを防ぐことができる。
【0076】
また、吸塵流路DL上にエジェクタ37を設けるとともに、エアシリンダ34を動作させるための第1供給ラインSL1とエジェクタ37の駆動ポートAPとの間を駆動ラインALで接続するだけで加熱炉3の開放動作に連動させて加熱炉3内を吸引できる。したがって、開閉動作と加熱炉3内の吸引を連動させるために高度な制御機器を用いる必要がない。また、エアシリンダ34を動作させるための動力源とエジェクタ37を動作させるための動力源とを共通化できるので、簡素な構成で加熱炉3内のダストを回収できる。
【0077】
加えて、エジェクタ37を用いているので、駆動ポートAPに供給する圧縮空気の流量をそれほど大きくしなくても、加熱炉3内にダストを吸引するのに十分な吸引力を発揮させることができる。
【0078】
本発明のその他の実施形態について説明する。
【0079】
ダストフィルタについては、メンブレンフィルタを用いたものに限られない。例えば、樹脂製以外の膜状のフィルタや、石英ウールを容器内に充填したフィルタであっても構わない。このようなものであっても、清掃ガス供給機構によって捕集されたダストが脱着され、フィルタとしての機能を再生し、メンテンナスの頻度や手間を低減することができる。
【0080】
また、ダストフィルタに振動を付与する振動子を設けておき、清掃モードにおいてダストフィルタを振動させるようにしてもよい。すなわち、ダストフィルタを振動させることによりダストを脱着しやすくした上で清掃ガスをダストフィルタに供給するようにしてもよい。
【0081】
メンブレンフィルタを保持するフィルタホルダは前述した実施形態において説明したものに限られない。例えばフィルタホルダは金属で形成されたものであってもよい。より具体的には、
図9に示すようにダストフィルタ4は、メタルフィルタ41を用いたものであってもよい。すなわち、薄板円形状のメタルフィルタ41の外周部が、金属製で概略フランジ状に形成された上流側ホルダ4A及び下流側ホルダ4Bに挟まれるとともに溶接Wで固定されたものであってもよい。また、
図10に示すようにフィルタについては薄板円形状ではなく円筒形状に形成されたメタルメッシュフィルタ41を用いてもよい。このような場合には、清掃ガスによる逆洗で十分に再生されるように、メタルメッシュフィルタ41は下流側ホルダ4Bに対して溶接Wで固定されたものであればよい。特にメタルフィルタ41及びメタルメッシュフィルタ41を用いた場合、フィルタの交換自体をなくす事が可能となり、メンテナンスが必要となる頻度を大幅に低減できる。
【0082】
清掃ガス供給機構は、ダストフィルタに対して混合ガスが流れる方向とは逆方向に清掃ガスを吹き付けるものであればよい。例えば排気流路を経由して清掃ガスを供給するのではなく、導出流路においてダストフィルタと分析機構の間に清掃ガスを直接供給するものであってもよい。また、清掃ガス供給機構を構成する流路切替部については1つの切替弁のみを備えているものであってもよい。例えば
図11に示すように1つの四方弁R5を用いて、導出流路L2の加熱炉3側に対して、導出流路L2の分析機構AM側、排気流路L3、又は、清掃ガス供給流路R2のいずれか1つが接続されるように構成してもよい。
【0083】
図12に示すように下部電極32が炉開位置にある場合に、上部電極31と下部電極32との間に移動して、上部電極31又は下部電極32からダストを落とすように構成された清掃機構38をさらに備えたものであってもよい。この清掃機構38は、加熱炉3内に配置された状態において上部電極31と接触する上部ブラシ38Aと、下部電極32と接触する下部ブラシ38Bと、上部ブラシ38A及び下部ブラシ38Bを回転させるアクチュエータ38Cと、上部電極31又は下部電極32から落とされたダストを受け、各吸塵口DPと連通するように配置されるダスト収容器38Dと、を備えている。このような清掃機構38であれば、上部電極31又は下部電極32から落としたダストが、周辺を汚すことなく、速やかに吸塵流路DLを介して回収されるようにできる。
【0084】
また、
図12(c)に示すような清掃機構38により加熱炉3内が清掃されている状態においてダストフィルタ4に清掃ガスを供給して逆洗を行うとともに、エジェクタ37の駆動ポートAPに作動流体を流して、ダストフィルタ4から剥離して加熱炉3内に流入するダストを吸塵流路DLから回収できるようにするにしてもよい。このようにすれば、加熱炉3内とダストフィルタ4の双方を清掃しながら、剥離するダストを効率よく回収できる。
【0085】
上述したように、エジェクタ37の駆動ポートAPに対して作動流体である圧縮空気が供給されるタイミングは、第2電極である下部電極32が炉開位置に移動するタイミングに限られず、ダストフィルタ4が逆洗されるタイミングであってもよいし、その他のタイミングであってもよい。また、ダストフィルタ4の逆洗に使用される清掃ガスは、エジェクタに供給される作動流体と同じ供給源から供給される圧縮空気であってもよい。元素分析装置で使用される清掃に関連する動作のために使用されるガスを共通化し、構成をより簡素化できる。
【0086】
前述した実施形態において、精製器は加熱された酸化銅/還元銅で構成し、導入流路において精製器と加熱炉との間にその下流側には脱CO2/H2O剤を設けてもよい。また、除去機構についても吸着でCO2及びH2Oを除去するものに限られず、試薬により化学的な反応によってCO2及びH2Oを除去するものであってもよい。
【0087】
元素分析装置は、元素としてO(酸素)、H(水素)、N(窒素)が測定対象となるものに限られない。すなわち、分析機構がH(水素)だけを測定対象とするものであってもよい。より具体的には、元素分析装置は、キャリアガスとしてArを用いるものであり、導出流路上には、ダストフィルタ、酸化器、除去機構、分離カラム、マスフローコントローラ、熱伝導度分析部であるH2検出部が上流側からこの順番で並べて設けられているものであってもよい。また、このような実施形態では、酸化器は常温酸化剤であればよいし、除去機構はCO2のみを吸着剤によって除去するものであればよい。また、C(炭素)を分析対象として含むものであってもよい。
【0088】
分析機構は前述した実施形態に限られるものではない。例えばマスフローコントローラの代わりにニードルバルブを設けておき、一定開度で保つようにしてもよい。また、分析機構は複数の成分を検出するものであってもよいし、単一の成分を検出するものであってもよい。
【0089】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や、各実施形態の一部同士の組み合わせを行っても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明によれば、ダストフィルタの交換頻度を低減し、ユーザによるメンテナンスにかかる手間を低減できる元素分析装置を提供できる。