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特許7445786パターン計測装置、パターン計測方法、パターン計測プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】パターン計測装置、パターン計測方法、パターン計測プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01B 15/04 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
G01B15/04 K
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022569383
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(86)【国際出願番号】 JP2020046854
(87)【国際公開番号】W WO2022130520
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 龍
(72)【発明者】
【氏名】山本 琢磨
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-11972(JP,A)
【文献】特開2019-46567(JP,A)
【文献】特開2018-45871(JP,A)
【文献】特開2014-16174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料上に形成されたパターンのサイズを計測するパターン計測装置であって、
前記試料に対して荷電粒子ビームを照射することにより得られる観察画像を用いて、前記パターンの上面の重心と前記パターンの底面の重心との間の位置ずれ量を算出する、コンピュータシステム、
前記荷電粒子ビームの照射角度の光軸からの角度ずれ量と前記位置ずれ量との間の第1関係を記述した関係データを記憶する記憶部、
を備え、
前記関係データはさらに、前記パターンの視野内座標と前記角度ずれ量との間の第2関係を記述しており、
前記コンピュータシステムは、前記パターンの視野内座標を用いて前記関係データを参照することにより、前記パターンの視野内座標に対応する前記角度ずれ量を取得し、
前記コンピュータシステムは、前記取得した前記角度ずれ量を用いて前記関係データを参照することにより、前記パターンの視野内座標に対応する前記位置ずれ量を取得し、
前記コンピュータシステムは、前記取得した前記位置ずれ量を用いて、前記パターンの上面の重心と前記パターンの底面の重心との間の計測位置ずれを補正する
ことを特徴とするパターン計測装置。
【請求項2】
前記第2関係は、
前記パターンの上面の重心の第1方向における座標、
前記第1方向における前記角度ずれ量、
の間の関係を記述するとともに、
前記パターンの上面の重心の前記第1方向に対して直交する第2方向における座標、
前記第2方向における前記角度ずれ量、
の間の関係を記述しており、
前記コンピュータシステムは、前記パターンの前記第1方向と前記第2方向それぞれにおける視野内座標を用いて前記第2関係を参照することにより、前記第1方向と前記第2方向それぞれにおける前記角度ずれ量を取得する
ことを特徴とする請求項1記載のパターン計測装置。
【請求項3】
前記第2関係はさらに、
前記パターンの上面の重心の前記第2方向における座標、
前記第1方向における前記角度ずれ量、
の間の関係を記述するとともに、
前記パターンの上面の重心の前記第1方向における座標、
前記第2方向における前記角度ずれ量、
の間の関係を記述しており、
前記コンピュータシステムは、前記パターンの前記第1方向と前記第2方向それぞれにおける視野内座標を用いて前記第2関係を参照することにより、前記第1方向と前記第2方向それぞれにおける前記角度ずれ量を取得する
ことを特徴とする請求項2記載のパターン計測装置。
【請求項4】
前記第1関係は、
前記第1方向における前記角度ずれ量と前記第1方向における前記位置ずれ量との間の関係、
前記第2方向における前記角度ずれ量と前記第2方向における前記位置ずれ量との間の関係、
を記述しており、
前記コンピュータシステムは、前記第1方向と前記第2方向それぞれにおける前記角度ずれ量を用いて前記第1関係を参照することにより、前記第1方向と前記第2方向それぞれにおける前記位置ずれ量を取得する
ことを特徴とする請求項2記載のパターン計測装置。
【請求項5】
前記第2関係は、
観察視野の中心座標から前記パターンの上面の重心までの前記第1方向におけるずれ量に起因する、前記第1方向における前記角度ずれ量、
観察視野の中心座標から前記パターンの上面の重心までの前記第2方向におけるずれ量に起因する、前記第1方向における前記角度ずれ量、
の合算を、前記第1方向における前記角度ずれ量として記述しており、
前記第2関係は、
観察視野の中心座標から前記パターンの上面の重心までの前記第2方向におけるずれ量に起因する、前記第2方向における前記角度ずれ量、
観察視野の中心座標から前記パターンの上面の重心までの前記第1方向におけるずれ量に起因する、前記第2方向における前記角度ずれ量、
の合算を、前記第2方向における前記角度ずれ量として記述している
ことを特徴とする請求項3記載のパターン計測装置。
【請求項6】
前記コンピュータシステムは、
観察視野の中心座標を変更しながら、形状とサイズが既知である前記試料の前記観察画像を、前記中心座標ごとに取得するステップ、
前記観察画像を用いて前記上面の重心と前記底面の重心との間のずれ量を算出することにより、前記中心座標ごとに前記角度ずれ量を算出するステップ、
前記中心座標ごとの前記角度ずれ量を用いて前記第2関係を算出するステップ、
を実行する
ことを特徴とする請求項2記載のパターン計測装置。
【請求項7】
前記コンピュータシステムは、
前記試料を載置したステージを移動させることによって観察視野の中心座標を変更するか、
または、
前記荷電粒子ビームの照射位置を変更することによって観察視野の中心座標を変更する
ことを特徴とする請求項6記載のパターン計測装置。
【請求項8】
前記コンピュータシステムは、
前記荷電粒子ビームの傾斜角を変化させながら、計測対象ウェハのパターンの観察画像を、前記傾斜角ごとに取得するステップ、
前記観察画像を用いて前記上面の重心と前記底面の重心との間のずれ量を算出することにより、前記傾斜角ごとに前記位置ずれ量を算出するステップ、
前記傾斜角ごとの前記位置ずれ量を用いて前記第1関係を算出するステップ、
を実行する
ことを特徴とする請求項1記載のパターン計測装置。
【請求項9】
前記コンピュータシステムは、
前記パターンごとの前記位置ずれ量、
前記パターンごとの前記補正における補正量、
前記パターンの種別ごとの前記補正量の平均値、
のうち少なくともいずれかを出力する
ことを特徴とする請求項1記載のパターン計測装置。
【請求項10】
前記関係データは、前記パターン計測装置の視野内の格子点ごとに前記角度ずれ量を記述しており、
前記コンピュータシステムは、前記関係データを参照することにより、前記格子点ごとに前記角度ずれ量を取得する
ことを特徴とする請求項1記載のパターン計測装置。
【請求項11】
前記コンピュータシステムは、4つの前記格子点によって囲まれた中間座標における前記角度ずれ量については、
前記中間座標と前記4つの格子点それぞれとの間の距離にしたがって、前記4つの格子点それぞれにおける前記角度ずれ量を比例配分することにより、前記中間座標における前記角度ずれ量を算出する
ことを特徴とする請求項10記載のパターン計測装置。
【請求項12】
前記関係データは、前記荷電粒子ビームを照射する荷電粒子ビーム装置の光学条件ごとに前記第1関係と前記第2関係を記述しており、
前記コンピュータシステムは、前記光学条件に対応する前記第1関係と前記第2関係を用いて、前記補正を実施する
ことを特徴とする請求項1記載のパターン計測装置。
【請求項13】
前記関係データは、前記荷電粒子ビームの照射条件ごとに前記第1関係と前記第2関係を記述しており、
前記コンピュータシステムは、前記照射条件に対応する前記第1関係と前記第2関係を用いて、前記補正を実施する
ことを特徴とする請求項1記載のパターン計測装置。
【請求項14】
試料上に形成されたパターンのサイズを計測するパターン計測方法であって、
前記試料に対して照射する荷電粒子ビームの照射角度の光軸からの角度ずれ量と、前記パターンの上面の重心と前記パターンの底面の重心との間の位置ずれ量との間の第1関係を記述した関係データを参照するステップ、
前記試料に対して前記荷電粒子ビームを照射することにより得られる観察画像を用いて、前記位置ずれ量を算出するステップ、
を有し、
前記関係データはさらに、前記パターンの視野内座標と前記角度ずれ量との間の第2関係を記述しており、
前記位置ずれ量を算出するステップにおいては、前記パターンの視野内座標を用いて前記関係データを参照することにより、前記パターンの視野内座標に対応する前記角度ずれ量を取得し、
前記位置ずれ量を算出するステップにおいては、前記取得した前記角度ずれ量を用いて前記関係データを参照することにより、前記パターンの視野内座標に対応する前記位置ずれ量を取得し、
前記位置ずれ量を算出するステップにおいては、前記取得した前記位置ずれ量を用いて、前記パターンの上面の重心と前記パターンの底面の重心との間の計測位置ずれを補正する
ことを特徴とするパターン計測方法。
【請求項15】
試料上に形成されたパターンのサイズを計測する処理をコンピュータに実行させるパターン計測プログラムであって、前記コンピュータに、
前記試料に対して照射する荷電粒子ビームの照射角度の光軸からの角度ずれ量と、前記パターンの上面の重心と前記パターンの底面の重心との間の位置ずれ量との間の第1関係を記述した関係データを参照するステップ、
前記試料に対して前記荷電粒子ビームを照射することにより得られる観察画像を用いて、前記位置ずれ量を算出するステップ、
を実行させ、
前記関係データはさらに、前記パターンの視野内座標と前記角度ずれ量との間の第2関係を記述しており、
前記位置ずれ量を算出するステップにおいては、前記コンピュータに、前記パターンの視野内座標を用いて前記関係データを参照することにより、前記パターンの視野内座標に対応する前記角度ずれ量を取得するステップを実行させ、
前記位置ずれ量を算出するステップにおいては、前記コンピュータに、前記取得した前記角度ずれ量を用いて前記関係データを参照することにより、前記パターンの視野内座標に対応する前記位置ずれ量を取得するステップを実行させ、
前記位置ずれ量を算出するステップにおいては、前記コンピュータに、前記取得した前記位置ずれ量を用いて、前記パターンの上面の重心と前記パターンの底面の重心との間の計測位置ずれを補正するステップを実行させる
ことを特徴とするパターン計測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、試料上に形成されたパターンのサイズを計測するパターン計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造過程において、リソグラフィー処理やエッチング処理そのほかの良否、異物発生などは、半導体デバイスの歩留まりに大きく影響を及ぼす。したがって、このような製造過程における異常や不良発生を早期的にまたは事前に検知するために、製造過程において半導体ウェハ上のパターンの計測や検査が実施される。精度の高い計測が求められる場合には、走査型電子顕微鏡(SEM)による計測が広く用いられている。
【0003】
近年、微細化の進行が鈍化する一方で、3D-NANDに代表されるように3次元化による高集積化の進行が著しい。異なる工程間のパターンの重ね合わせずれ、ならびに深い穴や溝のパターン形状の計測ニーズが高まっている。例えば、電子ビーム装置による深穴や深溝の深さ測定、複数の検出器信号を活用した異なる工程間での重ね合わせずれ計測、などの先行技術が報告されている。
【0004】
深穴や深溝はエッチングプロセスにより加工されるが、加工すべきパターンが深くなるにともない、エッチングパターンのボトムが下層パターン位置に合うように加工することが厳しくなってきている。これにより、加工されるパターンのボトム寸法やトップに対する重心位置ずれ(垂直度)などをウェハ面内で計測し、エッチング装置に対してフィードバックをかけることが重要になってきている。例えば、エッチャーの状態が良くない場合には、ウェハ外周で加工均一性が低下し、パターンが傾斜して加工されるケースがある。パターンが傾斜して加工されると、パターンの上面の重心と底面の重心との間で位置ずれが生じる。エッチング装置に対してこの情報をフィードバックすることにより、加工均一性を改善することができる。
【0005】
上記重心位置ずれ(垂直度)量を計測する場合、試料面に対して照射電子が斜め上方から入射する(電子ビームが試料に対して垂直に入射しない)とき、その傾きに起因して、重心位置ずれ測定値の誤差が生じる問題がある。
【0006】
下記特許文献1は、『荷電粒子線装置により得られた信号に基づいて、試料上に形成されたパターンの寸法を測定する演算装置を備えており、前記演算装置は、任意のビームチルト角で取得した画像から、異なる高さの2つのパターンの間の、ウェハ表面と並行方向の位置ずれ量を算出する位置ずれ量算出部と、予め求めておいた前記位置ずれ量と前記パターンの傾斜量との関係式により前記位置ずれ量から前記パターンの傾斜量を算出するパターン傾斜量算出部と、前記パターンの傾斜量に一致するようにビームチルト角を制御するビームチルト制御量算出部と、を有し、算出したビームチルト角に設定して、再度画像を取得してパターンの計測を行うパターン計測装置。』という技術を記載している(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】WO2019/073592
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のような従来技術においては、観察視野内において照射電子を走査することにより試料に対する電子入射角が変化する場合、その入射角の変化に起因して、照射位置ごとの重心位置ずれ測定値の誤差が生じる可能性があることについて、十分検討していない。換言すると、照射電子の入射角が試料上の位置ごとに異なり、これにともなって重心位置ずれ測定値が試料上の位置ごとに変動する可能性があることについて、十分検討していない。
【0009】
本開示は、以上の技術的課題に鑑みてなされたものであり、荷電粒子ビームの照射位置ごとに荷電粒子ビームの入射角が変化する場合であっても、パターンの上面の重心とパターンの底面の重心との間の位置ずれを正確に測定することができる、パターン計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係るパターン計測装置は、パターンの視野内座標と荷電粒子ビームの角度ずれ量との間の関係にしたがって、前記パターンの視野内座標に対応する前記角度ずれ量を取得し、前記角度ずれ量と重心位置ずれ量との間の関係にしたがって、前記パターンの視野内座標に対応する前記位置ずれ量を取得する。
【発明の効果】
【0011】
本開示に係るパターン計測装置によれば、荷電粒子ビームの照射位置ごとに荷電粒子ビームの入射角が変化する場合であっても、パターンの上面の重心とパターンの底面の重心との間の位置ずれを正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態1に係るパターン計測装置100の構成図である。
図2a】ディフレクタ7が1次電子ビームを偏向させる様子を示す。
図2b】ホール形状パターンの側断面図である。
図2c図2bの入射ビーム(21a~21c)により撮像されるSEM画像である。
図3a】標準試料12の例を示す斜視図である。
図3b】視野位置とビーム傾斜変化量との間の関係式を算出するプロセスを示すフローチャートである。
図3c】ビーム傾斜量を求める手順を示す図である。
図3d】視野中心からのX方向位置ずれに対するX方向の傾斜変化量を示す図である。
図3e】視野中心からのY方向位置ずれに対するY方向の傾斜変化量を示す図である。
図3f】視野中心からのY方向位置ずれに対するX方向の傾斜変化量を示す図である。
図3g】視野中心からのX方向位置ずれに対するY方向の傾斜変化量を示す図である。
図4a】視野内の特定位置のパターンにおける1次電子ビーム傾斜変化量と重心位置ずれ量との間の関係式を算出するプロセスを示すフローチャートである。
図4b】X方向ビーム傾斜変化量に対するX方向の重心位置ずれ量を示す図である。
図4c】Y方向ビーム傾斜変化量に対するY方向の重心位置ずれ量を示す図である。
図5a】視野内の特定位置のパターンに対する重心位置ずれ量計測と重心位置ずれ補正処理を示すフローチャートである。
図5b図5aの各ステップにおける計算式を説明するための模式図である。
図5c】計測結果の例を示す。
図6】パターン計測装置100が実施するレシピ処理のフローチャートである。
図7a】視野内におけるパターン位置を様々に変化させた例を示す。
図7b】視野内位置とビーム傾斜変化量との間の関係を記述した2次元マップを求めるプロセスを示すフローチャートである。
図7c図7aの各視野位置において、図7bの計測処理により求めた2次元マップの模式図である。
図7d】位置82のビーム傾斜変化量を算出する手順を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施の形態1>
図1は、本開示の実施形態1に係るパターン計測装置100の構成図である。パターン計測装置100は、1次電子ビームを試料(ウェハ11)に対して照射することにより、試料上に形成されているパターンサイズを計測する装置である。パターン計測装置100は、カラム1(電子光学系)と試料室2を備える。カラム1は、電子銃3、コンデンサレンズ4、対物レンズ8、ディフレクタ7、アライナ5、2次電子検出器9、EXBフィルタ6(電磁界直交フィルタ)、後方散乱電子検出器10を含む。
【0014】
電子銃3によって発生された1次電子ビーム(照射電子)は、コンデンサレンズ4と対物レンズ8によってウェハ11に対して収束させて照射される。アライナ5は1次電子ビームが対物レンズ8に入射する位置をアライメントする。1次電子ビームは、ディフレクタ7によってウェハ11に対して走査される。ディフレクタ7は、ビーム走査コントローラ17からの信号にしたがって1次電子ビームをウェハ11に対して走査させる。1次電子ビームの照射によってウェハ11から得られる2次電子はEXBフィルタ6によって2次電子検出器9の方向に向けられ、2次電子検出器9によって検出される。ウェハ11からの後方散乱電子は後方散乱電子検出器10によって検出される。2次電子や後方散乱電子を総称して電子ビーム照射により試料から得られる信号を信号電子と呼ぶこととする。荷電粒子光学系には、これ以外に他のレンズや電極、検出器を含んでもよいし、一部が上記と異なっていてもよく、荷電粒子光学系の構成はこれに限られない。
【0015】
試料室2に設置されるXYステージ13は、ステージコントローラ18からの信号にしたがってカラム1に対してウェハ11を移動する。XYステージ13上には、ビーム校正のための標準試料12が取り付けられている。パターン計測装置100はウェハアライメントのための光学顕微鏡14を有している。2次電子検出器9および後方散乱電子検出器10からの信号はアンプ15ならびにアンプ16により信号変換され、画像処理ボード19に送られ画像化される。
【0016】
パターン計測装置100は制御コンピュータ20により装置全体の動作が制御される。制御コンピュータ20は、マウスやキーボードなどユーザが指示入力するための入力部、画面を表示するモニタなどの表示部、ハードディスクやメモリなどの記憶部、などを備える。
【0017】
パターン計測装置100は、この他にも各部分の動作を制御する制御部や、検出器から出力される信号に基づいて画像を生成する画像生成部を備える(図示省略)。制御部や画像生成部は、専用の回路基板によってハードウェアとして構成されていてもよいし、コンピュータが実行するソフトウェアによって構成されてもよい。ハードウェアにより構成する場合には、処理を実行する複数の演算器を配線基板上、または半導体チップまたはパッケージ内に集積することにより実現できる。ソフトウェアにより構成する場合には、コンピュータに汎用CPU(Central Processing Unit)を搭載して所望の演算処理を実行するプログラムを実行することにより実現できる。このプログラムが記録された記録媒体により、既存の装置をアップグレードすることも可能である。これらの装置や回路、コンピュータ間は有線または無線のネットワークで接続され、適宜データが送受信される。
【0018】
1次電子ビームの入射角は、XYステージ13あるいは試料に対して校正することができる。例えば、標準試料12としてピラミッド形状(4角すい形状)にエッチングされたパターンを備え、画像に現れるピラミッドの4つの面が同じ形状となるように、偏向器が電子ビームを偏向することによって、電子ビーム軌道を理想光軸と一致させることができる。また、ピラミッドの各面の幾何学的演算に基づいて、所望の傾斜角となるように、電子ビームの軌道を調整することもできる。
【0019】
本実施形態においては、理想光軸と1次電子ビームの進行方向との間の相対角度をビーム傾斜角とするが、試料と電子ビームの相対角度をビーム傾斜角と定義するようにしてもよい。通常の電子ビーム計測装置(SEM)においては基本的に、電子ビーム軌道は、XYステージの移動軌道(X方向とY方向)に対して垂直(Z方向)に設定されている。Z方向をゼロ度と定義し、X方向、Y方向ともに傾斜角をプラスマイナスの数字で示す。XとYを組み合わせてあらゆる方向の角度の設定が可能である。
【0020】
以下、図2a~図2cを用いて、視野内のビーム傾斜ばらつきの発生原因およびビーム傾斜変化による重心位置ずれ計測への影響について説明する。
【0021】
図2aは、ディフレクタ7が1次電子ビームを偏向させる様子を示す。ディフレクタ7は、上段のディフレクタ7aによって電子ビームを理想光軸から離軸させ、下段のディフレクタ7bによって、理想的には垂直方向となるように電子ビームを偏向する。しかしながら、現実的にはディフレクタ7の応答性などの影響により、視野内での傾斜ばらつきが発生する。
【0022】
図2bと図2cを用いて、入射ビーム傾斜変化による重心位置ずれ量の計測誤差の発生原理について説明する。
【0023】
図2bは、ホール形状パターンの側断面図である。ホール22は試料面に対して垂直方向(Z軸)にエッチングされており、ホール深さはLである。入射ビーム21bが試料面に対して垂直である場合は、パターンのトップの中心を通過したビームがボトム部の中心に到達する。入射ビーム21aが-X側に傾斜した場合(入射角-α°)は、トップの中心を通過したビームがボトムの中心に対して+X方向にL・tanαずれた位置に到達する。入射ビーム21cが+X側に傾斜した場合(入射角+α°)は、トップの中心を通過したビームがボトムの中心に対してが-X方向にL・tanαずれた位置に到達する。
【0024】
図2cは、図2bの入射ビーム(21a~21c)により撮像されるSEM画像である。ホールパターンのトップの中心が画像の中心となるようにして撮像している。入射ビーム21bの入射角がパターンのエッチング方法と一致している場合(入射角0°)は、SEM像23bのようにトップの重心24cとボトムの重心24dが一致している。入射ビーム21aが-X側に傾斜した場合(入射角-α°)は、SEM像23aのようにトップの重心24aに対してボトムの重心24bが-X方向にL・tanα程度ずれる。入射ビーム21cが+X側に傾斜した場合(入射角+α°)は、SEM像23cのようにトップの重心24eに対してボトムの重心24fが+X方向にL・tanαずれる。このように、入射ビームの傾斜変化により、重心位置ずれ量の計測誤差が発生する。
【0025】
電子ビームを観察視野内で走査する場合、視野内の走査位置により、ビームの入射角が変化するので、計測したパターンの重心位置ずれ量に誤差が入っている。そこで、パターンの重心位置ずれ量を補正する必要がある。
【0026】
視野内の任意位置のパターンの重心位置ずれ量を補正しようとする場合、視野内のビーム傾斜変化量、パターン位置(パターンの上層重心位置)、および重心位置ずれ量の関係をあらかじめ測定して関係式を求めておき、この関係式を用いて、視野内の任意位置のパターンへのビーム傾斜変化量から重心位置ずれ補正量を算出する。
【0027】
図3aは、標準試料12の例を示す斜視図である。本実施形態においては、図3aに示す凹形のピラミッドパターン25が形成された標準試料12を用いて、ピラミッドの上面26aの重心位置とボトム位置26bから、視野内におけるビーム傾斜量を計測する。
【0028】
図3bは、視野位置とビーム傾斜変化量との間の関係式を算出するプロセスを示すフローチャートである。図3bにしたがって、視野位置とビーム傾斜変化量との間の関係式を求める手順を説明する。
【0029】
図3b:ステップS301~S302)
制御コンピュータ20は、試料上の視野位置をセットし(S301)、ステージコントローラ18によってXYステージ13をその視野位置へ移動させる(S302)。視野位置の例については後述の図3cを用いて説明する。
【0030】
図3b:ステップS303~S304)
制御コンピュータ20は、視野範囲に対して1次電子ビームを照射することによって得られる視野画像を取得する(S303)。制御コンピュータ20は、視野画像を用いて、その視野位置におけるビーム傾斜量を算出する(S304)。ビーム傾斜量を算出する具体的手法については、図3c~図3gを用いて説明する。
【0031】
図3b:ステップS305)
制御コンピュータ20は、あらかじめ設定した条件がすべて完了するまで(例えば試料上の全範囲について視野画像を取得するまで)、S301~S304を繰り返す。
【0032】
図3b:ステップS306)
制御コンピュータ20は、視野画像とビーム傾斜量との間の関係に基づき、視野位置とビーム傾斜変化量との間の関係式を算出する。関係式の例については、図3c~図3gの後に改めて説明する。
【0033】
図3cは、ビーム傾斜量を求める手順を示す図である。ステージ移動により、同一のピラミッドパターン25の視野内における位置(X方向、Y方向)を変えながら画像を取得し、各視野位置におけるビーム傾斜変化量を測定する。各視野位置におけるビーム傾斜変化量を求めるための具体的手順を以下説明する。
【0034】
図3dは、視野中心からのX方向位置ずれに対するX方向の傾斜変化量(ΔTx)を示す図である。図3cと図3dにより、X方向の視野位置に対するX方向のビーム傾斜変化の係数を算出する手順を説明する。図3cのSEM画像27aは、ピラミッドパターンが画像中心から-X方向にずれた位置での画像である。図3dのグラフ内のポイント28aは、SEM画像27aにおけるピラミッドパターンの視野内の位置ずれ量と、X方向のビーム傾斜量のプロットである。SEM画像27bは、ピラミッドパターンが画像中心となっている。ポイント28bは、SEM画像27bにおけるピラミッドパターンの視野内の位置ずれ量と、X方向のビーム傾斜量のプロットである。SEM画像27cは、ピラミッドパターンが画像中心から+X方向にずれた位置での画像である。ポイント28cは、SEM画像27cにおけるピラミッドパターンの視野内の位置ずれ量と、X方向ビーム傾斜量のプロットである。制御コンピュータ20は、プロット28a~28cに対する1次近似により、視野中心からのX方向位置ずれによるX方向のビーム傾斜変化(deg/nm)の係数Aを算出する。
【0035】
図3eは、視野中心からのY方向位置ずれに対するY方向の傾斜変化量(ΔTy)を示す図である。図3cと図3eにより、Y方向の視野位置に対するY方向のビーム傾斜変化の係数を算出する手順を説明する。図3cのSEM画像27eは、ピラミッドパターンが画像中心から-Y方向にずれた位置での画像である。図3eのグラフ内のポイント29aは、SEM画像27eにおけるピラミッドパターンの視野内の位置ずれ量と、Y方向のビーム傾斜量のプロットである。SEM画像27bは、ピラミッドパターンが画像中心となっている。ポイント29bは、SEM画像27bにおけるピラミッドパターンの視野内の位置ずれ量と、Y方向のビーム傾斜量のプロットである。SEM画像27dは、ピラミッドパターンが画像中心から+Y方向にずれた位置での画像である。ポイント29cは、SEM画像27dにおけるピラミッドパターンの視野内の位置ずれ量と、Y方向ビーム傾斜量のプロットである。制御コンピュータ20は、プロット29a~29cに対する1次近似により、視野中心からのY方向位置ずれによるY方向のビーム傾斜変化(deg/nm)の係数Bを算出する。
【0036】
実際の電子ビームは、磁場により回転しながら収束するので、視野中心からの位置ずれ方向に対して直交方向のビーム傾斜角も変化すると想定される。そこで、図3fと図3gに示すように、位置ずれ方向に対して直交方向のビーム傾斜角変化の関係式を求める必要がある。
【0037】
図3fは、視野中心からのY方向位置ずれに対するX方向の傾斜変化量(ΔTx)を示す図である。図3cと図3fにより、Y方向の視野位置に対するX方向のビーム傾斜変化の係数を算出する手順を説明する。図3cのSEM画像27eは、ピラミッドパターンが画像中心から-Y方向にずれた位置での画像である。図3fのグラフ内のポイント30aは、SEM画像27eにおけるピラミッドパターンの視野内の位置ずれ量と、X方向のビーム傾斜量のプロットである。SEM画像27bは、ピラミッドパターンが画像中心となっている。ポイント30bは、SEM画像27bにおけるピラミッドパターンの視野内の位置ずれ量と、X方向のビーム傾斜量のプロットである。SEM画像27dは、ピラミッドパターンが画像中心から+Y方向にずれた位置での画像である。ポイント30cは、SEM画像27dにおけるピラミッドパターンの視野内の位置ずれ量と、X方向ビーム傾斜量のプロットである。制御コンピュータ20は、プロット30a~30cに対する1次近似により、視野中心のY方向位置ずれによるX方向のビーム傾斜変化(deg/nm)の係数Cを算出する。
【0038】
図3gは、視野中心からのX方向位置ずれに対するY方向の傾斜変化量(ΔTy)を示す図である。図3cと図3gにより、X方向の視野位置に対するY方向のビーム傾斜変化の係数を算出する手順を説明する。図3cのSEM画像27aは、ピラミッドパターンが画像中心から-X方向にずれた位置での画像である。図3gのグラフ内のポイント31aは、SEM画像27aにおけるピラミッドパターンの視野内の位置ずれ量と、Y方向のビーム傾斜量のプロットである。SEM画像27bは、ピラミッドパターンが画像中心となっている。ポイント31bは、SEM画像27bにおけるピラミッドパターンの視野内の位置ずれ量と、Y方向のビーム傾斜量のプロットである。SEM画像27cは、ピラミッドパターンが画像中心から+X方向にずれた位置での画像である。ポイント31cは、SEM画像27cにおけるピラミッドパターンの視野内の位置ずれ量と、Y方向ビーム傾斜量のプロットである。制御コンピュータ20は、プロット31a~31cに対する1次近似により、視野中心のX方向位置ずれによるY方向のビーム傾斜変化(deg/nm)の係数Dを算出する。
【0039】
上記係数について、本実施形態においては、近似式として1次関数を用いたが、近似式のフォーマットはこれに限定されるものではなく、より高次の関数(例えば3次式)としてもよい。
【0040】
視野内のパターン位置と視野中心との間のX方向位置ずれをΔXとし、視野内のパターン位置と視野中心との間のY方向位置ずれをΔYとする。係数A、B、C、Dにより、XY方向それぞれにおけるビーム傾斜変化量(ΔT,ΔT)は下記1次式を用いて算出できる。制御コンピュータ20は下記式にしたがってビーム傾斜変化量を算出し、記憶装置に保持しておく。
【0041】
ΔT= A * ΔX + C * ΔY
ΔT= B * ΔY + D * ΔX
【0042】
図4aは、計測対象ウェハに対して、視野内の特定位置のパターンにおける1次電子ビーム傾斜変化量と重心位置ずれ量との間の関係式を算出するプロセスを示すフローチャートである。本フローチャートは視野内の位置ごとに(すなわち視野内のパターンごとに)それぞれ実施して結果をレシピに保存する。以下図4aの各ステップを説明する。
【0043】
図4a:ステップS401~S402)
制御コンピュータ20は、視野内の特定位置のパターンに対して、1次電子ビームのビーム傾斜量をセットする(S401)。制御コンピュータ20は、セットしたビーム傾斜量を用いて、重心位置ずれ量を計測する(S402)。重心位置ずれ量は、計測対象ウェハのパターンのトップ重心とボトム重心との間の差分を、計測対象ウェハのパターンの観察画像から計算することによって、計測できる。
【0044】
図4a:ステップS403)
制御コンピュータ20は、あらかじめ設定した条件がすべて完了するまで(例えばある角度範囲内にわたるビーム傾斜量を全て用いるまで)S401~S402を繰り返す。
【0045】
図4a:ステップS404)
制御コンピュータ20は、一連の計測結果に基づき、ビーム傾斜変化量と重心位置ずれ量との間の関係式を算出する。関係式の例については図4b~図4cの後に改めて説明する。
【0046】
図4bは、X方向ビーム傾斜変化量に対するX方向の重心位置ずれ量を示す図である。グラフ内のポイント45aは、ビームが垂直入射(入射角0°)から-X方向に傾斜した場合における、傾斜変化量とX方向の重心位置ずれ量のプロットである。ポイント45bは、ビームが垂直入射した場合における、X方向の重心位置ずれ量のプロットである。ポイント45cは、ビームが垂直入射(入射角0°)から+X方向に傾斜した場合における、傾斜変化量とX方向の重心位置ずれ量のプロットである。プロット45a~45cに対する1次近似により、X方向のビーム傾斜変化量によるX方向の重心位置ずれ量(nm/deg)の係数Eを算出する。
【0047】
図4cは、Y方向ビーム傾斜変化量に対するY方向の重心位置ずれ量を示す図である。グラフ内のポイント46aは、ビームが垂直入射(入射角0°)から-Y方向に傾斜した場合における、傾斜変化量とY方向の重心位置ずれ量のプロットである。ポイント46bは、ビームが垂直入射した場合における、Y方向の重心位置ずれ量のプロットである。ポイント46cは、ビームが垂直入射(入射角0°)から+Y方向に傾斜した場合における、傾斜変化量とY方向の重心位置ずれ量のプロットである。プロット46a~46cに対する1次近似により、Y方向のビーム傾斜変化量によるY方向の重心位置ずれ量(nm/deg)の係数Fを算出する。
【0048】
上記係数について、本実施形態では、近似式として1次関数を用いたが、近似式のフォーマットはこれに限定されるものではなく、より高次の関数(例えば3次式)としてもよい。
【0049】
算出した係数E、Fにより、視野内の任意位置におけるパターンについて、X方向、Y方向の入射ビーム傾斜変化量がそれぞれΔT、ΔTの場合、パターンX方向、Y方向の重心位置ずれ変化量ΔOVL、ΔOVLは下記式で算出することができる。
【0050】
ΔOVL = E * ΔT
ΔOVL = F * ΔT
【0051】
図5aは、視野内の特定位置のパターンに対する重心位置ずれ量計測と重心位置ずれ補正処理を示すフローチャートである。本フローチャートは視野内の位置ごとに(すなわち視野内のパターンごとに)それぞれ実施して結果を保存する。以下図5aの各ステップを説明する。
【0052】
図5a:ステップS501~S503)
制御コンピュータ20は、パターンの観察画像を用いて、パターン上層の重心を計測するとともに(S501)、パターン下層の重心を計測する(S502)。制御コンピュータ20は、これらの重心座標間の差分を求めることにより、補正前の重心位置ずれ量を算出する(S503)。
【0053】
図5a:ステップS504)
制御コンピュータ20は、視野内におけるパターンの位置(上層重心位置)を用いて、ビーム傾斜変化量を算出する。計算式は、図3c~図3gを用いて説明したものを用いることができる。実際の計算式の具体例は後述する。
【0054】
図5a:ステップS505)
制御コンピュータ20は、算出したビーム傾斜変化量を用いて、重心位置ずれ変化量を算出する。計算式は、図4a~図4cを用いて説明したものを用いることができる。実際の計算式の具体例は後述する。
【0055】
図5a:ステップS506)
制御コンピュータ20は、算出した重心位置ずれ変化量を用いて、S503において計算した重心位置ずれ量を補正する。
【0056】
図5a:ステップS507)
制御コンピュータ20は、あらかじめ設定した条件がすべて完了するまで(例えば全てのパターンについて重心位置ずれを補正するまで)、S501~S506を繰り返す。
【0057】
図5a:ステップS508)
制御コンピュータ20は、一連の計測結果からグループ毎の平均値を算出する。ここでいうグループの例については後述する。
【0058】
図5bは、図5aの各ステップにおける計算式を説明するための模式図である。図5bにおいて、視野中心座標を(0,0)とした。図5bの視野内任意位置のパターン47に対して、S501~S502で計測したパターンの上下層の重心位置はそれぞれ(PtX、tY)、(PbX、bY)であるとする。S503におけるX,Y方向の重心位置ずれ量OVL 、OVL は下記式によって算出することができる。
【0059】
OVL(補正前) = PbX - PtX
OVL(補正前) = PbY - PtY
【0060】
S504における視野内パターン47の位置(上層重心位置)に対するビーム傾斜変化量ΔT、ΔTは下記式によって算出できる。係数A、B、C、Dは図3bのプロセスにより算出した結果である。
【0061】
ΔT= A * PtX + C * PtY
ΔT= B * PtY + D * PtX
【0062】
S505におけるパターン47に対する重心位置ずれ補正量ΔOVL、ΔOVLは下記式によって算出できる。係数E、Fは図4aのプロセスにより算出した結果である。ただし補正により重心位置ずれの計測誤差量をキャンセルすることを想定しているので、マイナスの係数となっている。
【0063】
ΔOVL= E * ( A * PtX + C * PtY
ΔOVL= F * ( B * PtY + D * PtX
【0064】
S506におけるパターン47に対する補正後の重心位置ずれ量は下記式によって算出できる。
【0065】
OVL(補正後) = OVL(補正前)+ ΔOVL
OVL(補正後) = OVL(補正前)+ ΔOVL
【0066】
図5bの視野内のすべてのパターン47、48、49、50に対して補正後の重心位置ずれ量を計測する。S508において、すべてのパターンの補正後の重心位置ずれ量の平均値を算出する。
【0067】
図5cは、計測結果の例を示す。例えば以下の値を計算することができる:(a)視野内の各パターンにおけるX、Y方向の補正前の重心位置ずれ量と平均値61;(b)視野内の各パターンの位置(上層重心位置)と平均値62;(c)視野内の各パターンに対するX、Y方向のビーム傾斜変化量と平均値63;(d)視野内各パターンに対するX、Y方向の補正後の重心位置ずれ量と平均値64。
【0068】
本実施形態における係数A、B、C、Dの算出結果は設定条件(光学条件やスキャン条件など)により異なるので、あらかじめすべての設定条件に対する係数A、B、C、Dを算出し、その結果を光学条件毎に制御コンピュータ20の記憶部に保持しておく。
【0069】
図6は、パターン計測装置100が実施するレシピ処理のフローチャートである。以下図6の各ステップを説明する。
【0070】
図6:ステップS601)
レシピが開始されると、制御コンピュータ20は、選択されたウェハ11を試料室2へロードする(S601)。制御コンピュータ20は、光学顕微鏡とSEM像によるアライメントを実行する(S602)。
【0071】
図6:ステップS603~S605)
制御コンピュータ20は、XYステージ13を制御し、レシピに登録された測定点にウェハ11を移動させる(S603)。画像処理ボード19は、レシピに登録された所定の条件にしたがってSEM画像を取得する(S604)。制御コンピュータ20は、図5bまでにおいて説明した手順と計算式にしたがって、重心位置ずれ量計測と補正処理を実行する(S605)。
【0072】
図6:ステップS606)
制御コンピュータ20は、レシピに規定された測定点のすべての測定点について、S603~S605を繰り返す。
【0073】
図6:ステップS607~S608)
制御コンピュータ20は、ウェハ11をアンロードし(S607)、レシピ実行結果を出力する(S608)。
【0074】
<実施の形態2>
実施形態1では、視野内のビーム傾斜変化量に関して、図3cのS306において1次近似式を用いて算出することを説明した。これに対して、スキャンの応答遅れなどの影響により1次式を用いて近似することが適当ではない場合は、2次元ルックアップテーブルを用いて、視野内位置とビーム傾斜変化量との間の関係を表すことが有効と考えられる。そこで本発明の実施形態2では、視野内位置とビーム傾斜変化量の関係を2次元データテーブルによって記述した構成例を説明する。パターン計測装置100のその他構成は実施形態1と同様であるので、以下では視野内位置とビーム傾斜変化量の関係を記述した2次元データテーブルについて主に説明する。
【0075】
図7aは、視野内におけるパターン位置を様々に変化させた例を示す。視野内位置とビーム傾斜変化量との間の関係を求めるために、ピラミッドパターン25を用いて、視野内のパターン位置ごとにビーム傾斜量を計測する。ビーム傾斜量計測は、図7aに示すように、XYステージ13の移動により、同一のピラミッドパターン25を視野中心からXY方向に距離nずつ位置をずらしながら画像を取得し、各視野位置でのビーム傾斜変化量を測定する。視野中心位置座標を(0,0)とした場合、各視野位置の座標は視野中心からの移動量および移動方向で決まる。例えば、視野中心からXY方向に3nずらした後の視野位置73、74、75、76の座標はそれぞれ(-3n,-3n)、(3n,-3n)、(3n,3n)、(-3n,3n)となる。
【0076】
図7bは、視野内位置とビーム傾斜変化量との間の関係を記述した2次元マップを求めるプロセスを示すフローチャートである。S301~S305までは図3bと同じであり、S306に代えてS701を実施する。S701において制御コンピュータ20は、視野内におけるパターン位置(図7aにおける(n,n)などの格子点座標)ごとに、ビーム傾斜変化量を記述した2次元データテーブルを、記憶装置に保存する。
【0077】
図7cは、図7aの各視野位置において、図7bの計測処理により求めた2次元マップの模式図である。視野内の各位置におけるビーム傾斜変化量を矢印により模式的に示している。例えば視野位置73、74、75、76に対するビーム傾斜変化量の矢印はそれぞれ78、79、80、81となる。
【0078】
図7cの2次元マップは、視野内の格子点ごとにビーム傾斜角変化量を記述している。格子点間の中間座標のビーム傾斜変化量については、周辺の4つの格子点のビーム傾斜変化量を比例配分することによって、按分計算することができる。図7cの位置82(2n+a、n+b)に対するビーム傾斜変化量(ΔT、ΔT)を計算する例について、計算手順を説明する。
【0079】
図7dは、位置82のビーム傾斜変化量を算出する手順を説明する図である。位置82の周辺の4つの格子点83、84、85、86それぞれのビーム傾斜変化量を用いて、下記計算式により位置82のビーム傾斜変化量を算出する。(ΔTx,ΔTY1)、(ΔTx,ΔTY2)、(ΔTx,ΔTY3)、(ΔTx,ΔTY4)はそれぞれ格子点83、84、85、86のビーム傾斜変化量である。
【0080】
ΔTx ={ΔTx*(1-a/n)+ΔTx*a/n}*(1-b/n)+{ΔTx*(1-a/n)+ΔTx*a/n}* b/n
ΔT={ΔTY1 *(1-a/n)+ΔTY2 *a/n}*(1-b/n)+{ΔTY3 *(1-a/n)+ΔTY4 *a/n}* b/n
【0081】
<本開示の変形例について>
本開示は、前述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本開示を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0082】
以上の実施形態において、荷電粒子ビーム装置を用いて試料上のパターンサイズを計測することを説明した。荷電粒子ビーム装置とは荷電粒子ビームを用いて試料の画像を撮影する装置を広く含むものとする。荷電粒子ビーム装置の例として、走査型電子顕微鏡を用いた検査装置、レビュー装置、パターン計測装置などが挙げられる。汎用の走査型電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡を備えた試料加工装置、試料解析装置についても本開示を適用可能である。荷電粒子ビーム装置は、複数の荷電粒子ビーム装置がネットワークで接続されたシステムも含むものとする。
【0083】
以上の実施形態において、「試料」はパターンが形成された半導体ウェハである例を説明したが、これに限られるものではない。また、「パターン」はホールパターンに限られるものではなく、上面重心と底面重心との間の位置ずれが生じ得る任意のパターンについて本開示を適用することができる。
【0084】
実施形態1で説明した関係式および実施形態2で説明した2次元マップは、荷電粒子ビームの光学条件やスキャン条件(例:ビーム照射位置の移動速度)ごとに作成・保持してもよい。これらの条件ごとに、視野内位置におけるビーム傾斜変化量が異なる場合があるからである。この場合はすべての条件に対して関係式または2次元マップをあらかじめ求め、その結果を制御コンピュータ20の記憶装置に保持しておく。
【符号の説明】
【0085】
100:パターン計測装置
1:カラム
2:試料室
3:電子銃
4:コンデンサレンズ
5:アライナ
6:EXBフィルタ
7:ディフレクタ
8:対物レンズ
9:2次電子検出器
10:後方散乱電子検出器
11:ウェハ
12:標準試料
13:XYステージ
14:光学顕微鏡
15、16:アンプ
17:ビーム走査コントローラ
18:ステージコントローラ
19:画像処理ボード
20:制御コンピュータ
図1
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図3c
図3d
図3e
図3f
図3g
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図5c
図6
図7a
図7b
図7c
図7d