(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】形状測定機及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
G01B 5/20 20060101AFI20240301BHJP
【FI】
G01B5/20 C
(21)【出願番号】P 2020085358
(22)【出願日】2020-05-14
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】増田 光
(72)【発明者】
【氏名】森井 秀樹
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-310527(JP,A)
【文献】特開2019-007839(JP,A)
【文献】特開平07-083653(JP,A)
【文献】特開2018-136149(JP,A)
【文献】特開2001-349722(JP,A)
【文献】特開2014-109495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00- 5/30
G01B 21/00-21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物に接触する接触子を用いて前記測定対象物の形状測定を行う形状測定機において、
予め定められた検出器感度方向に沿った前記接触子の変位を検出する変位検出器と、
前記測定対象物に対して前記変位検出器を相対移動させて前記測定対象物の被測定面を前記接触子によりトレースさせる相対移動機構と、
前記測定対象物に対する前記変位検出器の相対位置を検出する位置検出センサと、
前記検出器感度方向の振動を検出する振動検出部と、
前記相対移動機構による相対移動が行われている間、前記位置検出センサによる前記相対位置の検出と前記変位検出器による前記変位の検出と前記振動検出部による前記振動の検出とを含む3つの動作を互いに同期させて繰り返し実行させる同期制御部と、
前記3つの動作が同期して実行されるごとに、前記位置検出センサにより検出された前記相対位置と、前記変位検出器により検出された前記接触子の変位と、前記振動検出部により検出された前記振動の振動変位と、を関連付けて記憶部に記憶させる記憶制御部と、
前記相対位置ごとの前記接触子の変位を示す変位検出信号を生成する第1信号生成部と、
前記相対位置ごとの前記振動変位を示す振動検出信号を生成する第2信号生成部と、
を備え
、
前記振動検出部が、
振動計と、
前記振動計から前記変位検出器までの第1振動伝達特性と、前記振動計から前記測定対象物までの第2振動伝達特性と、を取得する振動伝達特性取得部と、
前記振動計による前記相対位置ごとの振動検出結果と、前記振動伝達特性取得部が取得した前記第1振動伝達特性及び前記第2振動伝達特性とに基づき、前記相対位置ごとの前記変位検出器の前記振動変位及び前記相対位置ごとの前記測定対象物の前記振動変位を推定する振動変位推定部と、
を備え、
前記第2信号生成部が、前記振動変位推定部の推定結果に基づき、前記変位検出器に対応する前記振動検出信号と前記測定対象物に対応する前記振動検出信号とを生成する形状測定機。
【請求項2】
前記変位検出器の前記振動変位と前記測定対象物の前記振動変位との差分値を前記相対位置ごとに演算する差分値演算部を備える請求項
1に記載の形状測定機。
【請求項3】
測定対象物に接触する接触子を用いて前記測定対象物の形状測定を行う形状測定機において、
予め定められた検出器感度方向に沿った前記接触子の変位を検出する変位検出器と、
前記測定対象物に対して前記変位検出器を相対移動させて前記測定対象物の被測定面を前記接触子によりトレースさせる相対移動機構と、
前記測定対象物に対する前記変位検出器の相対位置を検出する位置検出センサと、
前記検出器感度方向の振動を検出する振動検出部と、
前記相対移動機構による相対移動が行われている間、前記位置検出センサによる前記相対位置の検出と前記変位検出器による前記変位の検出と前記振動検出部による前記振動の検出とを含む3つの動作を互いに同期させて繰り返し実行させる同期制御部と、
前記3つの動作が同期して実行されるごとに、前記位置検出センサにより検出された前記相対位置と、前記変位検出器により検出された前記接触子の変位と、前記振動検出部により検出された前記振動の振動変位と、を関連付けて記憶部に記憶させる記憶制御部と、
前記相対位置ごとの前記接触子の変位を示す変位検出信号を生成する第1信号生成部と、
前記相対位置ごとの前記振動変位を示す振動検出信号を生成する第2信号生成部と、
を備え、
前記振動検出部が、前記変位検出器の前記振動を検出可能な第1位置と、前記測定対象物の前記振動を検出可能な第2位置と、に設けられた振動計であり、
前記第2信号生成部が、前記第1位置の前記振動計による前記相対位置ごとの振動検出結果に基づき前記変位検出器に対応する前記振動検出信号を生成し、且つ前記第2位置の前記振動計による前記相対位置ごとの振動検出結果に基づき前記測定対象物に対応する前記振動検出信号を生成し、
前記変位検出器の前記振動変位と前記測定対象物の前記振動変位との差分値を前記相対位置ごとに演算する差分値演算部を備える形状測定機。
【請求項4】
前記差分値演算部による前記相対位置ごとの前記差分値の演算結果に基づき、前記被測定面を前記接触子により再トレースする再測定の実行の有無を判定する再測定判定部と、
前記再測定判定部が前記再測定の実行を判定した場合に、前記相対移動機構を駆動して前記再測定を実行する第1再測定制御部と、
を備える請求項
2又は3に記載の形状測定機。
【請求項5】
前記第1信号生成部が生成した前記変位検出信号をモニタに表示させる表示制御部と、
前記モニタに表示されている前記変位検出信号の任意の指定位置を指定する指定操作を受け付ける操作部と、
前記表示制御部が、前記記憶部を参照して、前記指定操作で指定された前記指定位置に対応する前記振動変位を示す振動変位情報を前記モニタに表示させる請求項
1から
4のいずれか1項に記載の形状測定機。
【請求項6】
測定対象物に接触する接触子を用いて前記測定対象物の形状測定を行う形状測定機において、
予め定められた検出器感度方向に沿った前記接触子の変位を検出する変位検出器と、
前記測定対象物に対して前記変位検出器を相対移動させて前記測定対象物の被測定面を前記接触子によりトレースさせる相対移動機構と、
前記測定対象物に対する前記変位検出器の相対位置を検出する位置検出センサと、
前記検出器感度方向の振動を検出する振動検出部と、
前記相対移動機構による相対移動が行われている間、前記位置検出センサによる前記相対位置の検出と前記変位検出器による前記変位の検出と前記振動検出部による前記振動の検出とを含む3つの動作を互いに同期させて繰り返し実行させる同期制御部と、
前記3つの動作が同期して実行されるごとに、前記位置検出センサにより検出された前記相対位置と、前記変位検出器により検出された前記接触子の変位と、前記振動検出部により検出された前記振動の振動変位と、を関連付けて記憶部に記憶させる記憶制御部と、
前記相対位置ごとの前記接触子の変位を示す変位検出信号を生成する第1信号生成部と、
前記相対位置ごとの前記振動変位を示す振動検出信号を生成する第2信号生成部と、
を備え、
前記第1信号生成部が生成した前記変位検出信号をモニタに表示させる表示制御部と、
前記モニタに表示されている前記変位検出信号の任意の指定位置を指定する指定操作を受け付ける操作部と、
前記表示制御部が、前記記憶部を参照して、前記指定操作で指定された前記指定位置に対応する前記振動変位を示す振動変位情報を前記モニタに表示させる形状測定機。
【請求項7】
前記振動検出部が、前記変位検出器の前記振動を検出可能な第1位置と、前記測定対象物の前記振動を検出可能な第2位置と、に設けられた振動計であり、
前記第2信号生成部が、前記第1位置の前記振動計による前記相対位置ごとの振動検出結果に基づき前記変位検出器に対応する前記振動検出信号を生成し、且つ前記第2位置の前記振動計による前記相対位置ごとの振動検出結果に基づき前記測定対象物に対応する前記振動検出信号を生成する請求項
6に記載の形状測定機。
【請求項8】
前記表示制御部が、前記指定位置が変更されるごとに、前記記憶部の参照と、前記モニタに表示する前記振動変位情報の更新と、を繰り返し実行する請求項
5から7のいずれか1項に記載の形状測定機。
【請求項9】
前記第1信号生成部が生成した前記変位検出信号に対してローパスフィルタ処理を施すローパスフィルタを備え、
前記表示制御部が、前記ローパスフィルタ処理の前後の前記変位検出信号を前記モニタに表示させる重畳表示モードを有する請求項
5から8のいずれか1項に記載の形状測定機。
【請求項10】
前記相対位置ごとの前記接触子の変位を示す変位検出信号を生成する第1信号生成部と、
前記第1信号生成部が生成した前記変位検出信号から、前記変位検出信号の波形が異常になる異常波形を検出する異常波形検出部と、
前記異常波形検出部により前記異常波形が検出された前記相対位置の範囲を第1範囲とした場合に、前記記憶部内の前記第1範囲に対応する前記振動変位に基づき、前記形状測定の異常の有無を判定する第1異常判定部と、
を備える請求項
1から
9のいずれか1項に記載の形状測定機。
【請求項11】
測定対象物に接触する接触子を用いて前記測定対象物の形状測定を行う形状測定機において、
予め定められた検出器感度方向に沿った前記接触子の変位を検出する変位検出器と、
前記測定対象物に対して前記変位検出器を相対移動させて前記測定対象物の被測定面を前記接触子によりトレースさせる相対移動機構と、
前記測定対象物に対する前記変位検出器の相対位置を検出する位置検出センサと、
前記検出器感度方向の振動を検出する振動検出部と、
前記相対移動機構による相対移動が行われている間、前記位置検出センサによる前記相対位置の検出と前記変位検出器による前記変位の検出と前記振動検出部による前記振動の検出とを含む3つの動作を互いに同期させて繰り返し実行させる同期制御部と、
前記3つの動作が同期して実行されるごとに、前記位置検出センサにより検出された前記相対位置と、前記変位検出器により検出された前記接触子の変位と、前記振動検出部により検出された前記振動の振動変位と、を関連付けて記憶部に記憶させる記憶制御部と、
前記相対位置ごとの前記接触子の変位を示す変位検出信号を生成する第1信号生成部と、
前記第1信号生成部が生成した前記変位検出信号から、前記変位検出信号の波形が異常になる異常波形を検出する異常波形検出部と、
前記異常波形検出部により前記異常波形が検出された前記相対位置の範囲を第1範囲とした場合に、前記記憶部内の前記第1範囲に対応する前記振動変位に基づき、前記形状測定の異常の有無を判定する第1異常判定部と、
を備える形状測定機。
【請求項12】
前記第1異常判定部が、前記第1範囲に対応する前記振動変位の変位量が予め定めた閾値よりも大きくなるか否かに基づき、前記形状測定の異常の有無を判定する請求項
10又は11に記載の形状測定機。
【請求項13】
前記相対移動機構を駆動して、前記被測定面を前記接触子により再トレースする再測定を実行する第2再測定制御部を備え、
前記第1異常判定部が異常有と判定するごとに、前記第2再測定制御部が前記再測定を実行し、且つ前記第1信号生成部が前記変位検出信号を生成し、且つ前記異常波形検出部が前記異常波形の検出を行い、且つ前記第1異常判定部が前記形状測定の異常の有無の判定を行う請求項
10から12のいずれか1項に記載の形状測定機。
【請求項14】
前記再測定の回数が予め定めた一定回数を超える場合に、警告情報を報知する報知部を備える請求項1
3に記載の形状測定機。
【請求項15】
前記記憶部に記憶されている前記相対位置ごとの前記振動変位に基づき、前記形状測定の異常の有無を判定する第2異常判定部を備える請求項
1から
9のいずれか1項に記載の形状測定機。
【請求項16】
前記相対位置ごとの前記接触子の変位を示す変位検出信号を生成する第1信号生成部と、
前記第1信号生成部が生成した前記変位検出信号をモニタに表示させる表示制御部と、
を備え、
前記表示制御部が、前記記憶部を参照して前記第2異常判定部が異常有と判定した前記振動変位に対応する前記相対位置の範囲を示す第2範囲を検出し、前記モニタに表示される前記変位検出信号の波形の中で前記第2範囲に対応する波形領域を識別可能に前記モニタに表示させる請求項1
5に記載の形状測定機。
【請求項17】
測定対象物に接触する接触子を用いて前記測定対象物の形状測定を行う形状測定機において、
予め定められた検出器感度方向に沿った前記接触子の変位を検出する変位検出器と、
前記測定対象物に対して前記変位検出器を相対移動させて前記測定対象物の被測定面を前記接触子によりトレースさせる相対移動機構と、
前記測定対象物に対する前記変位検出器の相対位置を検出する位置検出センサと、
前記検出器感度方向の振動を検出する振動検出部と、
前記相対移動機構による相対移動が行われている間、前記位置検出センサによる前記相対位置の検出と前記変位検出器による前記変位の検出と前記振動検出部による前記振動の検出とを含む3つの動作を互いに同期させて繰り返し実行させる同期制御部と、
前記3つの動作が同期して実行されるごとに、前記位置検出センサにより検出された前記相対位置と、前記変位検出器により検出された前記接触子の変位と、前記振動検出部により検出された前記振動の振動変位と、を関連付けて記憶部に記憶させる記憶制御部と、
前記記憶部に記憶されている前記相対位置ごとの前記振動変位に基づき、前記形状測定の異常の有無を判定する第2異常判定部と、
前記相対位置ごとの前記接触子の変位を示す変位検出信号を生成する第1信号生成部と、
前記第1信号生成部が生成した前記変位検出信号をモニタに表示させる表示制御部と、
を備え、
前記表示制御部が、前記記憶部を参照して前記第2異常判定部が異常有と判定した前記振動変位に対応する前記相対位置の範囲を示す第2範囲を検出し、前記モニタに表示される前記変位検出信号の波形の中で前記第2範囲に対応する波形領域を識別可能に前記モニタに表示させる形状測定機。
【請求項18】
前記第2異常判定部が、前記振動変位の変位量が予め定めた閾値よりも大きくなるか否
かに基づき、前記形状測定の異常の有無を判定する請求項1
5から17のいずれか1項に記載の形状測定機。
【請求項19】
前記第2異常判定部が異常有と判定した場合に、警告情報を報知する報知部を備える請求項1
5から18のいずれか1項に記載の形状測定機。
【請求項20】
前記相対移動機構が、前記測定対象物に対して前記変位検出器を前記検出器感度方向に垂直な直線方向に相対移動させる請求項1から19のいずれか1項に記載の形状測定機。
【請求項21】
互いに垂直なXYZ方向のうちで前記直線方向をX方向とし且つ前記検出器感度方向をZ方向とした場合に、前記変位検出器が、Y方向に平行な揺動支点を中心として揺動自在に支持されたアームを備え、
前記接触子が前記アームの先端部に設けられており、
前記振動検出部が、前記変位検出器の前記振動を検出する2個の振動計であって且つ前記変位検出器の前記直線方向の一端部と他端部とに設けられた2個の振動計であり、
前記2個の振動計の既知の間隔と、前記2個の振動計の前記相対位置ごとの振動検出結果とに基づき、前記変位検出器の前記Y方向に平行な軸周りの姿勢を前記相対位置ごとに検出する姿勢検出部と、
前記姿勢検出部による前記相対位置ごとの前記姿勢の検出結果と、前記揺動支点から前記接触子までの距離とに基づき、前記変位検出器の姿勢変化に応じた前記接触子の前記Z方向の変位量を前記相対位置ごとに演算する変位量演算部と、
を備える請求項20に記載の形状測定機。
【請求項22】
測定対象物に接触する接触子を用いて前記測定対象物の形状測定を行う形状測定機において、
予め定められた検出器感度方向に沿った前記接触子の変位を検出する変位検出器と、
前記測定対象物に対して前記変位検出器を相対移動させて前記測定対象物の被測定面を前記接触子によりトレースさせる相対移動機構と、
前記測定対象物に対する前記変位検出器の相対位置を検出する位置検出センサと、
前記検出器感度方向の振動を検出する振動検出部と、
前記相対移動機構による相対移動が行われている間、前記位置検出センサによる前記相対位置の検出と前記変位検出器による前記変位の検出と前記振動検出部による前記振動の検出とを含む3つの動作を互いに同期させて繰り返し実行させる同期制御部と、
を備え
、
前記相対移動機構が、前記測定対象物に対して前記変位検出器を前記検出器感度方向に垂直な直線方向に相対移動させ、
互いに垂直なXYZ方向のうちで前記直線方向をX方向とし且つ前記検出器感度方向をZ方向とした場合に、前記変位検出器が、Y方向に平行な揺動支点を中心として揺動自在に支持されたアームを備え、
前記接触子が前記アームの先端部に設けられており、
前記振動検出部が、前記変位検出器の前記振動を検出する2個の振動計であって且つ前記変位検出器の前記直線方向の一端部と他端部とに設けられた2個の振動計であり、
前記2個の振動計の既知の間隔と、前記2個の振動計の前記相対位置ごとの振動検出結果とに基づき、前記変位検出器の前記Y方向に平行な軸周りの姿勢を前記相対位置ごとに検出する姿勢検出部と、
前記姿勢検出部による前記相対位置ごとの前記姿勢の検出結果と、前記揺動支点から前記接触子までの距離とに基づき、前記変位検出器の姿勢変化に応じた前記接触子の前記Z方向の変位量を前記相対位置ごとに演算する変位量演算部と、
を備える形状測定機。
【請求項23】
前記相対移動機構が、円柱状又は円筒状の前記測定対象物の周面に前記接触子を接触させた状態で、前記測定対象物と前記変位検出器とを回転中心の周りに相対回転させる請求項1から19のいずれか1項に記載の形状測定機。
【請求項24】
前記相対移動機構が、前記変位検出器を、前記回転中心に対して前記検出器感度方向が垂直になる第1姿勢と、前記回転中心に対して前記検出器感度方向が平行になる第2姿勢とに選択的に保持する検出器保持部を有し、
前記振動検出部が、前記第1姿勢の前記変位検出器の前記振動を検出する第1振動計と、前記第2姿勢の前記変位検出器の前記振動を検出する第2振動計と、を有し、
前記変位検出器が前記第1姿勢である場合には前記第1振動計が作動し、且つ前記変位検出器が前記第2姿勢である場合には前記第2振動計が作動する請求項2
3に記載の形状測定機。
【請求項25】
測定対象物に接触する接触子を用いて前記測定対象物の形状測定を行う形状測定機において、
予め定められた検出器感度方向に沿った前記接触子の変位を検出する変位検出器と、
前記測定対象物に対して前記変位検出器を相対移動させて前記測定対象物の被測定面を前記接触子によりトレースさせる相対移動機構と、
前記測定対象物に対する前記変位検出器の相対位置を検出する位置検出センサと、
前記検出器感度方向の振動を検出する振動検出部と、
前記相対移動機構による相対移動が行われている間、前記位置検出センサによる前記相対位置の検出と前記変位検出器による前記変位の検出と前記振動検出部による前記振動の検出とを含む3つの動作を互いに同期させて繰り返し実行させる同期制御部と、
を備え、
前記相対移動機構が、円柱状又は円筒状の前記測定対象物の周面に前記接触子を接触させた状態で、前記測定対象物と前記変位検出器とを回転中心の周りに相対回転させ、
前記相対移動機構が、前記変位検出器を、前記回転中心に対して前記検出器感度方向が垂直になる第1姿勢と、前記回転中心に対して前記検出器感度方向が平行になる第2姿勢とに選択的に保持する検出器保持部を有し、
前記振動検出部が、前記第1姿勢の前記変位検出器の前記振動を検出する第1振動計と、前記第2姿勢の前記変位検出器の前記振動を検出する第2振動計と、を有し、
前記変位検出器が前記第1姿勢である場合には前記第1振動計が作動し、且つ前記変位検出器が前記第2姿勢である場合には前記第2振動計が作動する形状測定機。
【請求項26】
互いに垂直なXYZ方向のうちで前記回転中心をZ方向とし且つ前記検出器感度方向をX方向とし、且つ前記周面がテーパ形状又は曲面形状である場合において、
前記振動検出部が、
前記X方向の前記振動を検出する第1振動計と、
前記Z方向の垂直振動を検出する第2振動計と、
前記第2振動計による前記垂直振動の検出結果に基づき、前記垂直振動に伴う前記接触
子の前記X方向の変位量を演算する変位量演算部と、
を備える請求項2
3から25のいずれか1項に記載の形状測定機。
【請求項27】
測定対象物に接触する接触子を用いて前記測定対象物の形状測定を行う形状測定機において、
予め定められた検出器感度方向に沿った前記接触子の変位を検出する変位検出器と、
前記測定対象物に対して前記変位検出器を相対移動させて前記測定対象物の被測定面を前記接触子によりトレースさせる相対移動機構と、
前記測定対象物に対する前記変位検出器の相対位置を検出する位置検出センサと、
前記検出器感度方向の振動を検出する振動検出部と、
前記相対移動機構による相対移動が行われている間、前記位置検出センサによる前記相対位置の検出と前記変位検出器による前記変位の検出と前記振動検出部による前記振動の検出とを含む3つの動作を互いに同期させて繰り返し実行させる同期制御部と、
を備え、
前記相対移動機構が、円柱状又は円筒状の前記測定対象物の周面に前記接触子を接触させた状態で、前記測定対象物と前記変位検出器とを回転中心の周りに相対回転させ、
互いに垂直なXYZ方向のうちで前記回転中心をZ方向とし且つ前記検出器感度方向をX方向とし、且つ前記周面がテーパ形状又は曲面形状である場合において、
前記振動検出部が、
前記X方向の前記振動を検出する第1振動計と、
前記Z方向の垂直振動を検出する第2振動計と、
前記第2振動計による前記垂直振動の検出結果に基づき、前記垂直振動に伴う前記接触
子の前記X方向の変位量を演算する変位量演算部と、
を備える形状測定機。
【請求項28】
前記3つの動作が同期して実行されるごとに、前記位置検出センサにより検出された前記相対位置と、前記変位検出器により検出された前記接触子の変位と、前記振動検出部により検出された前記振動の振動変位と、を関連付けて記憶部に記憶させる記憶制御部を備える請求項
25又は27に記載の形状測定機。
【請求項29】
前記相対位置ごとの前記接触子の変位を示す変位検出信号を生成する第1信号生成部と、
前記相対位置ごとの前記振動変位を示す振動検出信号を生成する第2信号生成部と、
を備える請求項
28に記載の形状測定機。
【請求項30】
前記振動検出部が、前記変位検出器の前記振動を検出可能な第1位置と、前記測定対象物の前記振動を検出可能な第2位置と、に設けられた振動計であり、
前記第2信号生成部が、前記第1位置の前記振動計による前記相対位置ごとの振動検出結果に基づき前記変位検出器に対応する前記振動検出信号を生成し、且つ前記第2位置の前記振動計による前記相対位置ごとの振動検出結果に基づき前記測定対象物に対応する前記振動検出信号を生成する請求項
29に記載の形状測定機。
【請求項31】
前記同期制御部が、前記3つの動作を同期させる同期信号を、前記位置検出センサ、前記変位検出器、及び前記振動検出部に対して出力する請求項
1から30のいずれか1項に記載の形状測定機。
【請求項32】
測定対象物に接触する接触子と、予め定められた検出器感度方向に沿った前記接触子の変位を検出する変位検出器と、前記測定対象物に対して前記変位検出器を相対移動させて前記測定対象物の被測定面を前記接触子によりトレースさせる相対移動機構と、を備え、前記接触子を用いて前記測定対象物の形状測定を行う形状測定機の制御方法において、
前記測定対象物に対する前記変位検出器の相対位置を検出する位置検出ステップと、
前記変位検出器により前記接触子の変位を検出する変位検出ステップと、
前記検出器感度方向の振動を検出する振動検出ステップと、
前記相対移動機構による相対移動が行われている間、前記位置検出ステップでの前記相対位置の検出と前記変位検出ステップでの前記変位の検出と前記振動検出ステップでの前記振動の検出とを含む3つの動作を互いに同期させて繰り返し実行させる同期制御ステップと、
前記3つの動作が同期して実行されるごとに、前記位置検出ステップで検出された前記相対位置と、前記変位検出ステップで検出された前記接触子の変位と、前記振動検出ステップで検出された前記振動の振動変位と、を関連付けて記憶部に記憶させる記憶制御ステップと、
前記相対位置ごとの前記接触子の変位を示す変位検出信号を生成する第1信号生成ステップと、
前記相対位置ごとの前記振動変位を示す振動検出信号を生成する第2信号生成ステップと、
を有
し、
前記振動検出ステップが、
振動計から前記変位検出器までの第1振動伝達特性と、前記振動計から前記測定対象物までの第2振動伝達特性と、を取得する振動伝達特性取得ステップと、
前記振動計による前記相対位置ごとの振動検出結果と、前記振動伝達特性取得ステップで取得した前記第1振動伝達特性及び前記第2振動伝達特性とに基づき、前記相対位置ごとの前記変位検出器の前記振動変位及び前記相対位置ごとの前記測定対象物の前記振動変位を推定する振動変位推定ステップと、
を含み、
前記第2信号生成ステップでは、前記振動変位推定ステップの推定結果に基づき、前記変位検出器に対応する前記振動検出信号と前記測定対象物に対応する前記振動検出信号とを生成する形状測定機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触子を用いて測定対象物の形状測定を行う形状測定機及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワーク(被測定物)の表面の輪郭形状及び表面粗さ等の表面形状を測定する表面形状測定機(形状測定機)が知られている。このような表面形状測定機では、接触子をワーク表面に接触させた状態で接触子とワークとを水平方向に相対移動させることで、接触子でワーク表面をトレースしながら接触子の揺動による変位を変位検出器により検出し、この変位検出器から出力される変位検出信号に基づきワーク表面の表面形状を測定する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、表面形状測定機を用いてワークの表面形状を測定する場合に、変位検出器から出力される変位検出信号に異常な波形が発生することがある。この場合に、この異常な波形がワーク表面の実形状に起因するのか、或いは振動のような外的な環境要因に起因するのかを判別することは困難である。
【0005】
そこで、例えば表面形状測定機を低振動環境の測定室に設置したり或いは除振台上に設置したりすることが考えられる。しかしながら、表面形状測定機を低振動環境の測定室内に設置する場合には、この測定室の設置に多大なコストを要し、さらにワークの加工現場に表面形状測定機を設置することができないという問題がある。
【0006】
また、表面形状測定機を除振台上に設置する場合に、この除振台が所謂パッシブ式であると低周波成分の振動を除去することが困難である。さらに、所謂アクティブ式の除振台を用いると、低周波成分の振動を除去することはできるが、多大なコストを要するという問題が生じる。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、測定対象物の形状測定の異常発生の原因を容易に検出可能な形状測定機及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的を達成するための形状測定機は、測定対象物に接触する接触子を用いて測定対象物の形状測定を行う形状測定機において、予め定められた検出器感度方向に沿った接触子の変位を検出する変位検出器と、測定対象物に対して変位検出器を相対移動させて測定対象物の被測定面を接触子によりトレースさせる相対移動機構と、測定対象物に対する変位検出器の相対位置を検出する位置検出センサと、検出器感度方向の振動を検出する振動検出部と、相対移動機構による相対移動が行われている間、位置検出センサによる相対位置の検出と変位検出器による変位の検出と振動検出部による振動の検出とを含む3つの動作を互いに同期させて繰り返し実行させる同期制御部と、を備える。
【0009】
この形状測定機によれば、3つの動作を互いに同期させて繰り返し実行させることにより、変位検出器の相対位置ごとに、相対位置と同期したタイミングで取得された振動検出結果をオペレータが確認することができる。すなわち、任意の相対位置に対応する振動検出結果をオペレータが確認することができる。
【0010】
本発明の他の態様に係る形状測定機において、同期制御部が、3つの動作を同期させる同期信号を、位置検出センサ、変位検出器、及び振動検出部に対して出力する。これにより、上述の3つの動作を互いに同期させて繰り返し実行させることができる。
【0011】
本発明の他の態様に係る形状測定機において、3つの動作が同期して実行されるごとに、位置検出センサにより検出された相対位置と、変位検出器により検出された接触子の変位と、振動検出部により検出された振動の振動変位と、を関連付けて記憶部に記憶させる記憶制御部を備える。これにより、変位検出器の相対位置ごとに、相対位置と同期したタイミングで取得された振動検出結果をオペレータが確認することができる。
【0012】
本発明の他の態様に係る形状測定機において、相対位置ごとの接触子の変位を示す変位検出信号を生成する第1信号生成部と、相対位置ごとの振動変位を示す振動検出信号を生成する第2信号生成部と、を備える。これにより、変位検出信号の波形と振動検出信号の波形とを比較することで、形状測定の異常発生の原因を効率的且つ容易に検出することができる。
【0013】
本発明の他の態様に係る形状測定機において、振動検出部が、変位検出器の振動を検出可能な第1位置と、測定対象物の振動を検出可能な第2位置と、に設けられた振動計であり、第2信号生成部が、第1位置の振動計による相対位置ごとの振動検出結果に基づき変位検出器に対応する振動検出信号を生成し、且つ第2位置の振動計による相対位置ごとの振動検出結果に基づき測定対象物に対応する振動検出信号を生成する。これにより、変位検出器及び測定対象物に対応する振動検出信号に基づき、形状測定の異常発生の原因を効率的且つ容易に検出することができる。
【0014】
本発明の他の態様に係る形状測定機において、振動検出部が、振動計と、振動計から変位検出器までの第1振動伝達特性と、振動計から測定対象物までの第2振動伝達特性と、を取得する振動伝達特性取得部と、振動計による相対位置ごとの振動検出結果と、振動伝達特性取得部が取得した第1振動伝達特性及び第2振動伝達特性とに基づき、相対位置ごとの変位検出器の振動変位及び相対位置ごとの測定対象物の振動変位を推定する振動変位推定部と、を備え、第2信号生成部が、振動変位推定部の推定結果に基づき、変位検出器に対応する振動検出信号と測定対象物に対応する振動検出信号とを生成する。これにより、形状測定機に複数の振動計を設ける必要がないので、形状測定の異常発生の原因を低コストに検出することができる。
【0015】
本発明の他の態様に係る形状測定機において、変位検出器の振動変位と測定対象物の振動変位との差分値を相対位置ごとに演算する差分値演算部を備える。これにより、変位検出器に対応する振動検出信号における変位検出器の振動以外の振動の影響を判別することができる。
【0016】
本発明の他の態様に係る形状測定機において、差分値演算部による相対位置ごとの差分値の演算結果に基づき、被測定面を接触子により再トレースする再測定の実行の有無を判定する再測定判定部と、再測定判定部が再測定の実行を判定した場合に、相対移動機構を駆動して再測定を実行する第1再測定制御部と、を備える。これにより、変位検出器の振動以外の振動の影響を受けない状態での測定対象物の形状測定結果が得られる。
【0017】
本発明の他の態様に係る形状測定機において、第1信号生成部が生成した変位検出信号をモニタに表示させる表示制御部と、モニタに表示されている変位検出信号の任意の指定位置を指定する指定操作を受け付ける操作部と、表示制御部が、記憶部を参照して、指定操作で指定された指定位置に対応する振動変位を示す振動変位情報をモニタに表示させる。これにより、所望の指定位置に対応する振動変位をオペレータが確認することができる。
【0018】
本発明の他の態様に係る形状測定機において、表示制御部が、指定位置が変更されるごとに、記憶部の参照と、モニタに表示する振動変位情報の更新と、を繰り返し実行する。これにより、所望の指定位置に対応する振動変位をオペレータが確認することができる。また、変位検出信号に異常波形が発生した場合に、その前後で検出された振動変位を確認することができるので、異常波形の発生原因を容易に検出することができる。
【0019】
本発明の他の態様に係る形状測定機において、第1信号生成部が生成した変位検出信号に対してローパスフィルタ処理を施すローパスフィルタを備え、表示制御部が、ローパスフィルタ処理の前後の変位検出信号をモニタに表示させる重畳表示モードを有する。これにより、形状測定の測定結果から異物等の外的な環境要因に起因する偽形状をより高精度に排除することができるので、測定結果の信頼性及び精度をより高めることができる。
【0020】
本発明の他の態様に係る形状測定機において、相対位置ごとの接触子の変位を示す変位検出信号を生成する第1信号生成部と、第1信号生成部が生成した変位検出信号から、変位検出信号の波形が異常になる異常波形を検出する異常波形検出部と、異常波形検出部により異常波形が検出された相対位置の範囲を第1範囲とした場合に、記憶部内の第1範囲に対応する振動変位に基づき、形状測定の異常の有無を判定する第1異常判定部と、を備える。これにより、形状測定の異常の有無を自動的に判定することができる。
【0021】
本発明の他の態様に係る形状測定機において、第1異常判定部が、第1範囲に対応する振動変位の変位量が予め定めた閾値よりも大きくなるか否かに基づき、形状測定の異常の有無を判定する。これにより、形状測定の異常の有無を自動的に判定することができる。
【0022】
本発明の他の態様に係る形状測定機において、相対移動機構を駆動して、被測定面を接触子により再トレースする再測定を実行する第2再測定制御部を備え、第1異常判定部が異常有と判定するごとに、第2再測定制御部が再測定を実行し、且つ第1信号生成部が変位検出信号を生成し、且つ異常波形検出部が異常波形の検出を行い、且つ第1異常判定部が形状測定の異常の有無の判定を行う。これにより、形状測定の異常が発生した場合に再測定を実施することができるので、異常が被測定面の実形状に起因するのか或いは外的な環境要因(振動等)に起因するのかをより正確に判別することができる。
【0023】
本発明の他の態様に係る形状測定機において、再測定の回数が予め定めた一定回数を超える場合に、警告情報を報知する報知部を備える。これにより、オペレータが異常の発生を認識して、その異常の発生要因の確認を速やかに実行することができる。
【0024】
本発明の他の態様に係る形状測定機において、記憶部に記憶されている相対位置ごとの振動変位に基づき、形状測定の異常の有無を判定する第2異常判定部を備える。これにより、形状測定の異常の有無を自動的に判定することができる。
【0025】
本発明の他の態様に係る形状測定機において、第2異常判定部が、振動変位の変位量が予め定めた閾値よりも大きくなるか否かに基づき、形状測定の異常の有無を判定する。これにより、形状測定の異常の有無を自動的に判定することができる。
【0026】
本発明の他の態様に係る形状測定機において、相対位置ごとの接触子の変位を示す変位検出信号を生成する第1信号生成部と、第1信号生成部が生成した変位検出信号をモニタに表示させる表示制御部と、を備え、表示制御部が、記憶部を参照して第2異常判定部が異常有と判定した振動変位に対応する相対位置の範囲を示す第2範囲を検出し、モニタに表示される変位検出信号の波形の中で第2範囲に対応する波形領域を識別可能にモニタに表示させる。これにより、形状測定の異常が発生している第2範囲の位置及び範囲をオペレータに報知することができる。
【0027】
本発明の他の態様に係る形状測定機において、第2異常判定部が異常有と判定した場合に、警告情報を報知する報知部を備える。これにより、オペレータが異常の発生を認識して、その異常の発生要因の確認を速やかに実行することができる。
【0028】
本発明の他の態様に係る形状測定機において、相対移動機構が、測定対象物に対して変位検出器を検出器感度方向に垂直な直線方向に相対移動させる。
【0029】
本発明の他の態様に係る形状測定機において、互いに垂直なXYZ方向のうちで直線方向をX方向とし且つ検出器感度方向をZ方向とした場合に、変位検出器が、Y方向に平行な揺動支点を中心として揺動自在に支持されたアームを備え、接触子がアームの先端部に設けられており、振動検出部が、変位検出器の振動を検出する2個の振動計であって且つ変位検出器の直線方向の一端部と他端部とに設けられた2個の振動計であり、2個の振動計の既知の間隔と、2個の振動計の相対位置ごとの振動検出結果とに基づき、変位検出器のY方向に平行な軸周りの姿勢を相対位置ごとに検出する姿勢検出部と、姿勢検出部による相対位置ごとの姿勢の検出結果と、揺動支点から接触子までの距離とに基づき、変位検出器の姿勢変化に応じた接触子のZ方向の変位量を相対位置ごとに演算する変位量演算部と、を備える。これにより、測定対象物の形状測定結果における変位検出器の姿勢の影響を判別することができる。また、この形状測定結果から変位検出器の姿勢の影響を除去することができる。
【0030】
本発明の他の態様に係る形状測定機において、相対移動機構が、円柱状又は円筒状の測定対象物の周面に接触子を接触させた状態で、測定対象物と変位検出器とを回転中心の周りに相対回転させる。
【0031】
本発明の他の態様に係る形状測定機において、相対移動機構が、変位検出器を、回転中心に対して検出器感度方向が垂直になる第1姿勢と、回転中心に対して検出器感度方向が平行になる第2姿勢とに選択的に保持する検出器保持部を有し、振動検出部が、第1姿勢の変位検出器の振動を検出する第1振動計と、第2姿勢の変位検出器の振動を検出する第2振動計と、を有し、変位検出器が第1姿勢である場合には第1振動計が作動し、且つ変位検出器が第2姿勢である場合には第2振動計が作動する。これにより、2種類の姿勢での形状測定に対応することができる。
【0032】
本発明の他の態様に係る形状測定機において、互いに垂直なXYZ方向のうちで回転中心をZ方向とし且つ検出器感度方向をX方向とし、且つ周面がテーパ形状又は曲面形状である場合において、振動検出部が、X方向の振動を検出する第1振動計と、Z方向の垂直振動を検出する第2振動計と、第2振動計による垂直振動の検出結果に基づき、垂直振動に伴う接触子のX方向の変位量を演算する変位量演算部と、を備える。これにより、第1振動計で検出されたX方向の振動検出結果に対する垂直振動の影響を判別することができる。その結果、形状測定の異常発生の原因をより正確に検出することができる。
【0033】
本発明の目的を達成するための形状測定機の制御方法は、測定対象物に接触する接触子と、予め定められた検出器感度方向に沿った接触子の変位を検出する変位検出器と、測定対象物に対して変位検出器を相対移動させて測定対象物の被測定面を接触子によりトレースさせる相対移動機構と、を備え、接触子を用いて測定対象物の形状測定を行う形状測定機の制御方法において、測定対象物に対する変位検出器の相対位置を検出する位置検出ステップと、変位検出器により接触子の変位を検出する変位検出ステップと、検出器感度方向の振動を検出する振動検出ステップと、相対移動機構による相対移動が行われている間、位置検出ステップでの相対位置の検出と変位検出ステップでの変位の検出と振動検出ステップでの振動の検出とを含む3つの動作を互いに同期させて繰り返し実行させる同期制御ステップと、を有する。
【発明の効果】
【0034】
本発明は、測定対象物の形状測定の異常発生の原因を容易に検出可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】第1実施形態の表面形状測定機の概略図である。
【
図2】第1実施形態の制御装置の構成を示したブロック図である。
【
図3】記憶制御部によりデータストレージに記憶される保存データの概略図である。
【
図4】表示制御部によりモニタに表示される変位検出信号及び振動検出信号の一例を示した説明図である。
【
図5】表面形状測定機によるワークの表面の形状測定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】第2実施形態の表面形状測定機の制御装置の構成を示したブロック図である。
【
図7】差分値演算部による差分値の演算及び差分振動検出信号の生成を説明するための説明図である。
【
図8】第3実施形態の表面形状測定機の概略図である。
【
図9】第3実施形態の表面形状測定機の制御装置の構成を示したブロック図である。
【
図10】指定操作に応じたモニタ上での振動変位情報の表示を説明するための説明図である。
【
図11】第5実施形態の表面形状測定機の制御装置の構成を示したブロック図である。
【
図12】第5実施形態においてモニタに表示される変位検出信号の波形及び振動変位情報を説明するための説明図である。
【
図13】第6実施形態の表面形状測定機の制御装置の構成を示したブロック図である。
【
図14】異常波形検出部による異常波形の検出の第1例から第3例を説明するための説明図である。
【
図15】異常判定部による表面の形状測定の異常の有無の判定処理を説明するための説明図である。
【
図16】第6実施形態の報知制御部による警告情報の報知を説明するための説明図である。
【
図17】第6実施形態の表面形状測定機による再測定処理及び警告処理の流れを示すフローチャートである。
【
図18】第7実施形態の表面形状測定機の制御装置の構成を示したブロック図である。
【
図19】異常判定部が表面の形状測定の異常有と判定した場合に、モニタに表示される変位検出信号の一例を説明するための説明図である。
【
図20】第7実施形態の報知制御部による警告情報の報知を説明するための説明図である。
【
図21】第8実施形態の表面形状測定機の制御装置の構成を示したブロック図である。
【
図22】第8実施形態の表面形状測定機の変位検出器の拡大図である。
【
図23】姿勢検出部による変位検出器の検出器姿勢角の検出と、変位量演算部による接触子の変位量の演算と、を説明するための説明図である。
【
図24】第9実施形態の真円度測定機の概略図である。
【
図25】第9実施形態の真円度測定機の概略図である。
【
図26】第10実施形態の真円度測定機の概略図である。
【
図27】第10実施形態の制御装置の構成の一部を示したブロック図である。
【
図28】設計情報取得部が取得するテーパ角及び変位量演算部による接触子の変位量の演算を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
[第1実施形態]
図1は、本発明の形状測定機に相当する第1実施形態の表面形状測定機10の概略図である。
図1に示すように、表面形状測定機10は、ワークWの表面Waの形状測定、具体的には輪郭形状又は表面粗さ等を測定する。ここで、ワークWは本発明の測定対象物に相当し、表面Waは本発明の被測定面に相当する。また、図中の互いに直交するXYZ方向のうちでXY方向を含むXY平面は水平方向に平行な面であり且つZ方向は水平方向に対して垂直な上下方向である。なお、X方向は本発明の直線方向に相当する。
【0037】
表面形状測定機10は、平板状の測定台12と、コラム14と、検出器移動機構16と、位置検出センサ18と、変位検出器20と、振動計22A,22Bと、操作部25と、モニタ27と、制御装置28と、を備える。
【0038】
測定台12のXY平面に平行な上面にはワークWがセットされる。また、測定台12の上面にはZ方向に延びたコラム14が設けられている。このコラム14には、検出器移動機構16がZ方向に移動自在に取り付けられている。
【0039】
検出器移動機構16は、本発明の相対移動機構に相当するものであり、ホルダ17をX方向に移動自在に保持する公知のアクチュエータである。この検出器移動機構16を駆動することで、ワークWに対して変位検出器20(接触子34)をX方向に相対移動させることができる。また、検出器移動機構16には位置検出センサ18が設けられている。
【0040】
位置検出センサ18は、例えばX方向(左右方向)に延びたリニアスケール18aと、このリニアスケール18aを光学的又は磁気的等の各種方法で読み取る読取ヘッド18bとを有する。位置検出センサ18は、検出器移動機構16によりX方向に移動されるホルダ17のX方向の変位(変位方向及び変位量)を検出することで、後述の変位検出器20のX方向位置、すなわちワークWに対する変位検出器20のX方向の相対位置を検出する。そして、位置検出センサ18は、変位検出器20のX方向位置検出結果D1を制御装置28へ出力する。なお、位置検出センサ18として、スケール型検出器以外の公知の検出器を用いてもよい。
【0041】
ホルダ17には、変位検出器20が設けられている。これにより、変位検出器20は、ホルダ17を介して検出器移動機構16によりX方向に移動自在に保持される。また、変位検出器20は、ホルダ17及び検出器移動機構16を介して、コラム14によりZ方向に位置調整自在に保持される。
【0042】
変位検出器20は、揺動支点30と、アーム32と、接触子34と、変位検出センサ36と、を備える。
【0043】
揺動支点30は、Y方向に平行な回転軸(揺動軸)を中心としてアーム32を揺動自在に支持する。
【0044】
アーム32は、揺動支点30に揺動自在に支持されており、X方向の一方向側(コラム14とは反対側)に延びたアーム先端部32aと、X方向の他方向側に延びたアーム基端部32bと、を備える。
【0045】
アーム先端部32aの先端側には、接触子34(触針又は測定子ともいう)が設けられている。接触子34は表面Waに接触する。接触子34は、アーム32が揺動支点30を中心として揺動することでZ方向に変位する。従って、本実施形態の変位検出器20の検出器感度方向K1はZ方向である。また、接触子34は、検出器移動機構16により変位検出器20がX方向に移動されることで、表面WaをX方向に沿ってトレース(走査)する。
【0046】
アーム基端部32bは、不図示の付勢部材によりZ方向上方側に付勢される。これにより、アーム先端部32a及び接触子34は、揺動支点30を中心として、Z方向下方側に付勢される。これにより、接触子34が表面Waに接触した状態が維持される。
【0047】
変位検出センサ36は、例えば線形可変差動変圧器(Linear Variable Differential Transformer:LVDT)が用いられる。この場合、変位検出センサ36は、図示は省略するが、アーム基端部32bに設けられたコアと、このコアが挿入されるコイルとを備える。変位検出センサ36は、アーム32及び接触子34の揺動によるZ方向の変位(変位方向及び変位量)を検出して、この変位の検出結果である変位検出結果D2を制御装置28へ出力する。なお、変位検出センサ36として、LVDT以外の公知のセンサ(例えばスケール型のセンサ)を用いてもよい。
【0048】
振動計22A,22Bは、本発明の振動検出部に相当するものであり、Z方向に検出感度を有している。すなわち、振動計22A,22Bの振動計感度方向K2は既述の検出器感度方向K1と一致しており、振動計22A,22BはZ方向の振動を検出する。なお、振動計22A,22Bの種類は特に限定されるものではなく、公知の各種振動計が用いられる。
【0049】
振動計22Aは、変位検出器20の内部、すなわち変位検出器20のZ方向の振動を検出可能な位置(本発明の第1位置に相当)に設けられている。この振動計22Aは、変位検出器20のZ方向の振動を連続検出して、変位検出器20のZ方向の振動の変位を示す振動変位V1(振動検出結果)を制御装置28へ逐次出力する。これにより、例えば外部から変位検出器20に対して振動が加えられた否かを確認することができる。
【0050】
振動計22Bは、測定台12のワークWの近傍位置、すなわち測定台12上のワークWのZ方向の振動を検出可能な位置(本発明の第2位置に相当)に設けられている。この振動計22Bは、ワークW(測定台12)のZ方向の振動を連続検出して、ワークWのZ方向の振動の変位を示す振動変位V2(振動検出結果)を制御装置28へ逐次出力する。
【0051】
操作部25は、例えばキーボード、マウス、操作パネル、及び操作ボタン等が用いられ、オペレータによる各種操作の入力を受け付ける。
【0052】
モニタ27は、公知の液晶表示ディスプレイ等の各種ディスプレイが用いられる。このモニタ27は、表面形状測定機10による表面Waの形状測定結果である後述の変位検出信号D3(
図2参照)、形状測定中の変位検出器20及びワークWの振動波形を示す後述の振動検出信号V3A,V3B(
図2参照)、各種設定画面、及び各種操作画面等を表示する。
【0053】
制御装置28は、各種のプロセッサ(Processor)及びメモリ等から構成された演算回路を備える。各種のプロセッサには、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、及びプログラマブル論理デバイス[例えばSPLD(Simple Programmable Logic Devices)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、及びFPGA(Field Programmable Gate Arrays)]等が含まれる。なお、制御装置28の各種機能は、1つのプロセッサにより実現されてもよいし、同種または異種の複数のプロセッサで実現されてもよい。
【0054】
図2は、第1実施形態の制御装置28の構成を示したブロック図である。
図2に示すように、制御装置28には、既述の検出器移動機構16、位置検出センサ18、変位検出器20(変位検出センサ36)、振動計22A,22B、操作部25、及びモニタ27等が接続されており、表面形状測定機10の各部の動作を統括制御する。また、制御装置28は、位置検出センサ18による検出と、変位検出センサ36による検出と、振動計22A,22Bによる検出とを同期させる。さらに、制御装置28は、上述の各検出が実行されるごとに、位置検出センサ18により検出された変位検出器20のX方向位置検出結果D1と、変位検出センサ36により検出された接触子34の変位検出結果D2と、振動計22A,22Bによる振動変位V1,V2と、を関連付けてデータストレージ50に記憶させる。
【0055】
制御装置28には、駆動制御部40、同期制御部42、信号取得部44,46、記憶制御部48、データストレージ50、第1信号生成部52、ローパスフィルタ54(Low Pass Filter:LPF)、第2信号生成部55、及び表示制御部56が設けられている。
【0056】
駆動制御部40は、検出器移動機構16の駆動を制御する。この駆動制御部40は、操作部25に対する測定開始操作の入力に応じて、検出器移動機構16を駆動して変位検出器20等をX方向に移動させる。これにより、接触子34によりX方向に沿って表面Waがトレースされる、すなわち表面Waの形状測定が実行される。
【0057】
同期制御部42は、検出器移動機構16による変位検出器20のX方向の移動が実行されている間、すなわち表面形状測定機10による表面Waの形状測定が行われている間(以下、単に「表面形状測定中」と略す)、位置検出センサ18と変位検出センサ36と振動計22A,22Bとに対して同期信号CLを出力する。この同期信号CLは、位置検出センサ18による検出と、変位検出センサ36による検出と、振動計22A,22Bによる検出とを同期させる信号であり、例えばクロック信号が用いられる。これにより、表面形状測定中において、位置検出センサ18による変位検出器20のX方向位置の検出と、変位検出センサ36による接触子34の変位の検出と、振動計22A,22Bによる変位検出器20及びワークWの振動検出と、を含む3つの動作(以下、単に「3つの動作」と略す)が同期信号CLにより互いに同期して繰り返し実行される。
【0058】
信号取得部44は、位置検出センサ18及び変位検出センサ36に接続する接続インタフェースである。信号取得部44は、表面形状測定中において、位置検出センサ18からの変位検出器20のX方向位置検出結果D1の取得及び記憶制御部48へのX方向位置検出結果D1の出力を実行し、且つ変位検出センサ36からの接触子34の変位検出結果D2の取得及び記憶制御部48への変位検出結果D2の出力を実行する。
【0059】
信号取得部46は、振動計22A,22Bに接続する接続インタフェースであり、振動計22A,22Bと共に本発明の振動検出部を構成する。この信号取得部46は、表面形状測定中において、振動計22A,22Bからの振動変位V1,V2の取得及び記憶制御部48への振動変位V1,V2の出力を実行する。
【0060】
図3は、記憶制御部48によりデータストレージ50に記憶される保存データ51の概略図である。
図3及び既述の
図2に示すように、データストレージ50は、本発明の記憶部に相当するものであり、データを永続的(一時的でも可)に記憶可能な公知の各種記憶媒体(メモリ、ストレージ等)である。
【0061】
記憶制御部48は、表面形状測定中に、データストレージ50に対する保存データ51の記憶を行う。この保存データ51は、表面形状測定中において、同期信号CLに同期した3つの動作で取得されたX方向位置検出結果D1、変位検出結果D2、及び振動変位V1,V2を関連付けて連続的に記憶したデータである。
【0062】
具体的に記憶制御部48は、同期信号CLに同期して3つの動作が実行されると、位置検出センサ18及び変位検出センサ36から信号取得部44を介してX方向位置検出結果D1及び変位検出結果D2を取得する。また、記憶制御部48は、振動計22A,22Bから信号取得部46を介して変位検出器20の振動変位V1及びワークWの振動変位V2を取得する。そして、記憶制御部48は、X方向位置検出結果D1と変位検出結果D2と振動変位V1,V2と、を関連付けてデータストレージ50に記憶させる。これにより、3つの動作が実行されるごとに、X方向位置検出結果D1、変位検出結果D2、及び振動変位V1,V2が関連付けられた状態でデータストレージ50に繰り返し記憶される。
【0063】
図2に戻って第1信号生成部52は、データストレージ50の保存データ51を参照して、変位検出器20(接触子34)のX方向位置ごとの接触子34のZ方向の変位、すなわち表面Waの表面形状を示す変位検出信号D3(
図4参照)を生成して、この変位検出信号D3をローパスフィルタ54へ出力する。なお、第1信号生成部52が、表面形状測定中に信号取得部44から直接的且つ連続的にX方向位置検出結果D1及び変位検出結果D2を取得することで、変位検出信号D3を生成してローパスフィルタ54へ出力してもよい。
【0064】
ローパスフィルタ54は、第1信号生成部52から出力される変位検出信号D3に対し、予め設定されたカットオフ値に基づきローパスフィルタ処理を行い、変位検出信号D3から高周波ノイズを除去する。ローパスフィルタ54から出力された変位検出信号D3は表示制御部56に入力される。
【0065】
第2信号生成部55は、データストレージ50の保存データ51を参照して、変位検出器20のX方向位置ごとの振動変位V1を示す振動検出信号V3Aを生成すると共に、X方向位置ごとのワークWの振動変位V2を示す振動検出信号V3Bを生成する。そして、第2信号生成部55は、振動検出信号V3A,V3Bを表示制御部56へ出力する。なお、第2信号生成部55が、表面形状測定中に信号取得部44,46から直接的且つ連続的にX方向位置検出結果D1及び振動変位V1,V2を取得して、振動検出信号V3A,V3Bしてもよい。また、第2信号生成部55からローパスフィルタ54を経て振動検出信号V3A,V3Bを表示制御部56へ出力してもよい。
【0066】
図4は、表示制御部56によりモニタ27に表示される変位検出信号D3及び振動検出信号V3A,V3Bの一例を示した説明図である。
図4及び既述の
図2に示すように、表示制御部56は、第1信号生成部52からローパスフィルタ54を介して入力された変位検出信号D3(符号4A参照)と、第2信号生成部55から入力された振動検出信号V3A,V3B(符号4B参照)とをモニタ27に表示させる。
【0067】
この際に表示制御部56は、モニタ27に表示される変位検出信号D3の波形及び振動検出信号V3A,V3Bの波形の双方のX方向の原点の表示位置と、双方のX方向のスケールとを揃えることが好ましい。これにより、オペレータは、図中の矢印A1に示すように、例えばモニタ27に表示中の変位検出信号D3の波形内に異常波形ERが含まれている場合に、この異常波形ERの発生位置(X方向位置)に対応する振動検出信号V3A,V3Bの波形を効率的且つ容易に確認することができる。
【0068】
なお、本実施形態では、変位検出信号D3の波形及び振動検出信号V3A,V3Bの波形をモニタ27の画面の縦方向に並べて表示させているが、その表示方法は特に限定されるものではなく、例えばモニタ27の画面の横方向に並べて表示させたり或いは選択的に表示させたりしてもよい。
【0069】
[第1実施形態の作用]
図5は、本発明の形状測定機の制御方法に係る表面形状測定機10によるワークWの表面Waの形状測定処理の流れを示すフローチャートである。
図5に示すように、オペレータは、測定台12にワークWをセットし且つ接触子34の先端を表面Waに接触させた後、操作部25にて測定開始操作を行う。この操作を受けて駆動制御部40が検出器移動機構16を駆動して、変位検出器20をX方向に移動させる(ステップS1)。これにより、表面Waが接触子34によりX方向に沿ってトレースされる。
【0070】
また、測定開始操作に応じて、同期制御部42が位置検出センサ18と変位検出センサ36と振動計22A,22Bとに対して同期信号CLを出力する(ステップS2、本発明の同期制御ステップに相当)。これにより、位置検出センサ18による変位検出器20のX方向位置の検出(ステップS3A)と、変位検出センサ36による接触子34の変位の検出(ステップS3B)と、振動計22A,22Bによる変位検出器20及びワークWの振動検出(ステップS3C)と、含む3つの動作が同期して実行される。なお、ステップS3Aは本発明の位置検出ステップに相当し、ステップS3Bは本発明の変位検出ステップに相当し、ステップS3Cは本発明の振動検出ステップに相当する。
【0071】
次いで、位置検出センサ18が検出したX方向位置検出結果D1及び変位検出センサ36が検出した変位検出結果D2が、信号取得部44を介して記憶制御部48に入力される。また、振動計22A,22Bが検出した振動変位V1,V2が、信号取得部46を介して記憶制御部48に入力される。そして、記憶制御部48が、既述の
図3に示したように、互いに同期した3つの動作で取得されたX方向位置検出結果D1、変位検出結果D2、及び振動変位V1,V2を関連付けて保存データ51に記憶させる(ステップS4)。
【0072】
以下、変位検出器20の移動が終了するまで、ステップS2からステップS4までの処理が繰り返し実行される(ステップS5でNO)。これにより、表面形状測定中に、3つの動作が同期信号CLにより互いに同期して繰り返し実行され、且つ3つの動作が実行されるごとに、X方向位置検出結果D1、変位検出結果D2、及び振動変位V1,V2が関連付けられた状態で保存データ51に繰り返し記憶される。
【0073】
変位検出器20の移動の終了後(ステップS5でYES)、すなわち表面Waの形状測定の完了後、オペレータが操作部25に対して表面Waの形状測定結果の表示操作を実行すると、第1信号生成部52及び第2信号生成部55が作動する。次いで、第1信号生成部52が保存データ51を参照して変位検出信号D3を生成し、第2信号生成部55が保存データ51を参照して振動検出信号V3A,V3Bを生成する(ステップS6)。変位検出信号D3は、ローパスフィルタ54でローパスフィルタ処理が施された後で表示制御部56に入力され、振動検出信号V3A,V3Bは表示制御部56に入力される。
【0074】
そして、表示制御部56が、既述の
図4に示したように、ローパスフィルタ処理後の変位検出信号D3と、振動検出信号V3A,V3Bとをモニタ27に表示させる(ステップS7)。これにより、オペレータは、変位検出信号D3の波形内に異常波形ERが含まれている場合に、異常波形ERの発生位置に対応する振動検出信号V3A,V3Bの波形を確認することができる。その結果、この異常波形ERの発生原因が変位検出器20及びワークWの振動(すなわち外部からの振動入力)によるものであるか、或いは表面Waについた傷に起因するものであるかを容易に判定することができる。
【0075】
[第1実施形態の効果]
以上のように第1実施形態では、表面形状測定中に3つの動作(X方向位置の検出、接触子34の変位検出、変位検出器20等の振動検出)を互いに同期させて繰り返すことで、3つの動作が実行されるごとにX方向位置検出結果D1、変位検出結果D2、及び振動変位V1,V2を関連付けて保存データ51に記憶させることができる。その結果、変位検出信号D3の波形上の所望の位置に対応する振動検出信号V3A,V3Bの波形をオペレータが確認することができるので、表面Waの形状測定の異常発生の原因を効率的且つ容易に検出することができる。
【0076】
また、低振動環境の測定室或いは除振台等を用意する必要がなくなるのでコスト増加が防止され、さらに表面形状測定機10をワークWの加工現場に設置することができる。
【0077】
[第2実施形態]
図6は、第2実施形態の表面形状測定機10の制御装置28の構成を示したブロック図である。振動計22Aにより検出される振動変位V1には、変位検出器20の振動だけでなく表面形状測定機10(測定台12等)の振動の影響も含まれる。そこで、第2実施形態では、振動計22A,22Bによる変位検出器20のX方向位置ごとの振動変位V1,V2に基づき、変位検出器20の振動起因の信号を推定し、この信号に基づき表面Waの形状の再測定の要否を判定する。そして、第2実施形態では再測定が要と判定した場合に再測定を実行する。
【0078】
図6に示すように、第2実施形態の表面形状測定機10は、制御装置28に差分値演算部57、再測定判定部58、及び再測定制御部59が設けられている点を除けば上記第1実施形態と基本的に同じ構成であるので、上記第1実施形態と機能又は構成上同一のものについては同一符号を付してその説明は省略する。
【0079】
図7は、差分値演算部57による差分値ΔVの演算及び差分振動検出信号V4の生成を説明するための説明図である。
図7及び既述の
図6に示すように、差分値演算部57は、保存データ51を参照して、変位検出器20のX方向位置ごとに振動変位V1,V2の差分値ΔV(=V1-V2)を演算、すなわち振動検出信号V3A,V3B(符号7A参照)の差分を演算する。
【0080】
このように差分値ΔVの演算を行うことで、振動計22Aにより検出された振動変位V1から測定台12等の振動の影響を除去して、変位検出器20の振動起因の信号(変位検出器20の振動のみを示す信号)が得られる。その結果、変位検出器20の振動のみを正確に検出することができる。また逆に、振動検出信号V3Aにおける変位検出器20の振動以外の振動の影響の大きさを判別することができる。
【0081】
そして、差分値演算部57は、変位検出器20のX方向位置ごとの差分値ΔVを示す差分振動検出信号V4(
図7の符号7B参照)を生成し、この差分振動検出信号V4を表示制御部56と再測定判定部58とに出力する。これにより、表示制御部56は、差分振動検出信号V4をモニタ27に表示させる。
【0082】
図6に戻って、再測定判定部58は、差分値演算部57から入力された差分振動検出信号V4に基づき、表面Waの被測定領域をX方向に沿って接触子34で再トレースする再測定の実行の有無を判定する。具体的には再測定判定部58は、差分振動検出信号V4に基づき、振動検出信号V3Aに含まれる変位検出器20の振動以外の振動の影響(例えば振動変位量)の大きさを判別する。そして、再測定判定部58は、この影響の大きさが予め定めた閾値よりも大きくなるか否かに基づき再測定の実行の有無を判定し、その判定結果を再測定制御部59へ出力する。
【0083】
再測定制御部59は、本発明の第1再測定制御部に相当する。この再測定制御部59は、再測定判定部58が再測定の実行を判定した場合に、駆動制御部40を介して検出器移動機構16を駆動して変位検出器20をX方向に移動させることで、再測定を実行する。以下、再測定判定部58が測定の実行無と判定するまで、再測定と、差分値演算部57による差分振動検出信号V4等の生成と、再測定判定部58による判定とが繰り返し実行される。これにより、上述の振動の影響を受けない状態での表面Waの形状測定が実行される。
【0084】
以上のように第2実施形態では、差分値演算部57により差分値ΔV(差分振動検出信号V4)を求めることで、振動検出信号V3Aにおける変位検出器20の振動以外の振動の影響を判別することができる。これにより、変位検出器20の振動以外の振動の影響が大きくなる場合には再測定を実行することで、上述の振動の影響を受けない状態での表面Waの形状測定結果が得られる。また、再測定を実行する代わりに振動検出信号V3Aから上述の振動の影響を除去してもよく、この場合には再測定に時間を消費する必要がなくなる。
【0085】
[第3実施形態]
図8は、第3実施形態の表面形状測定機10の概略図である。
図9は、第3実施形態の表面形状測定機10の制御装置28の構成を示したブロック図である。上記各実施形態の表面形状測定機10では振動計22A,22Bにより変位検出器20の振動変位V1とワークWの振動変位V2とを検出しているが、第3実施形態では1つの振動計22による振動変位V0の検出結果に基づき振動変位V1,V2の推定を行う。
【0086】
図8及び
図9に示すように、第3実施形態の表面形状測定機10は、振動計22A,22Bの代わりに振動計22を備え、且つ制御装置28に振動伝達特性取得部60及び振動変位推定部62が設けられている点を除けば上記各実施形態と基本的に同じ構成である。このため、上記各実施形態と機能又は構成上同一のものについては同一符号を付してその説明は省略する。なお、第3実施形態では、振動計22、振動伝達特性取得部60、及び振動変位推定部62が本発明の振動検出部を構成する。
【0087】
振動計22は、上記各実施形態の振動計22A,22Bと基本的に同じものであり、表面形状測定機10内の予め定められた位置、例えば測定台12に設けられている。振動計22は、同期信号CLに同期して外部から測定台12に入力された入力振動Fを検出し、測定台12(振動計22の設置部)のZ方向の振動の変位を示す振動変位V0を制御装置28へ逐次出力する。
【0088】
振動伝達特性取得部60は、不図示のメモリ或いは外部サーバに予め記憶されている第1振動伝達特性T1及び第2振動伝達特性T2を取得し、第1振動伝達特性T1及び第2振動伝達特性T2を振動変位推定部62へ出力する。
【0089】
第1振動伝達特性T1は、振動計22から変位検出器20までの振動伝達特性である。また、第2振動伝達特性T2は、振動計22からワークWまでの振動伝達特性である。第1振動伝達特性T1及び第2振動伝達特性T2は予め実験又はシミュレーションを行うことで取得可能である。なお、振動伝達特性(振動伝達率ともいう)の定義については公知技術(例えば特許6179379号公報、特開2001-292590号公報参照)であるので、ここでは具体的な説明は省略する。
【0090】
振動変位推定部62は、振動計22から信号取得部46を介して入力された振動変位V0と、振動伝達特性取得部60から入力された第1振動伝達特性T1及び第2振動伝達特性T2と、に基づき、変位検出器20の振動変位V1とワークWの振動変位V2とを推定(演算)する。そして、振動変位推定部62は、同期信号CLに同期して振動計22から振動変位V0が入力されるごとに、振動変位V1,V2の推定を繰り返し実行する。これにより、上記各実施形態と同様に、同期信号CLに同期して、振動変位V1,V2の取得及び保存データ51への記憶が繰り返し実行される。
【0091】
これ以降の処理については上記各実施形態と基本的に同じであるので、ここでは具体的な説明は省略する。
【0092】
以上のように第3実施形態では、予め第1振動伝達特性T1及び第2振動伝達特性T2を取得しておくことで、振動計22の数が1つであっても同期信号CLに同期して変位検出器20の振動変位V1及びワークWの振動変位V2の取得(推定)及び記憶を実行することができる。その結果、上記各実施形態よりもより低コストに表面Waの形状測定の異常発生の原因を検出することができる。
【0093】
なお、上記第3実施形態では、信号取得部46から振動変位推定部62に対して振動変位V0を出力しているが、この振動変位V0を信号取得部46から記憶制御部48に出力することで、上記3つの動作が実行されるごとに振動変位V0をX方向位置検出結果D1等に関連付けた状態で保存データ51に記憶してもよい。この場合に振動変位推定部62は、保存データ51内の各振動変位V0に基づき、変位検出器20のX方向位置ごとの振動変位V1,V2を推定する。
【0094】
また、上記第3実施形態では、測定台12に振動計22を設けているが、表面形状測定機10の他の部位に振動計22を設けてもよい。この場合には、振動計22の設置位置に対応した第1振動伝達特性T1及び第2振動伝達特性T2を求めておく。
【0095】
さらに上記第3実施形態においても、振動変位推定部62の推定結果に基づき、上記第2実施形態と同様に、差分値ΔVの演算(差分振動検出信号V4の生成)、再測定の有無の判定、及び再測定を実行してもよい。
【0096】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態の表面形状測定機10について説明を行う。この第4実施形態では、モニタ27に表示されている変位検出信号D3の波形上の任意位置をオペレータが指定した場合に、この指定した位置と同期したタイミングで取得された振動変位V1,V2(振動検出信号V3A,V3B)の波形及び振動変位量を含む振動変位情報68をモニタ27に表示させる。
【0097】
なお、第4実施形態の表面形状測定機10は、上記各実施形態の表面形状測定機10と基本的に同じ構成であるので、上記各実施形態と機能又は構成上同一のものについては同一符号を付してその説明は省略する。
【0098】
図10は、指定操作に応じたモニタ27上での振動変位情報68の表示を説明するための説明図である。なお、
図10では、図面の煩雑化を防止するため、振動変位V1(振動検出信号V3A)に対応する振動変位情報68の表示のみを例示し、振動変位V2(振動検出信号V3B)に対応する振動変位情報68の表示については図示を省略している(後述の
図12、
図15も同様)。
【0099】
図10の符号XAに示すように、操作部25は、モニタ27に表示されている変位検出信号D3の波形上の任意の指定位置SPを指定する指定操作の入力を受け付ける。これにより、オペレータは、例えばモニタ27上の変位検出信号D3の波形内に異常波形ERが含まれている場合に、この異常波形ERを指定位置SPとして指定することができる。また、表示制御部56は、変位検出信号D3の波形をモニタ27に表示させる場合に、変位検出信号D3の波形上に指定位置SPを示すカーソルCuを重畳表示させる。
【0100】
図10の符号XBに示すように、表示制御部56は、操作部25に対する指定位置SPの指定操作に基づき、この指定位置SPに対応する変位検出器20のX方向位置を判別する。次いで、表示制御部56は、判別したX方向位置に基づき、データストレージ50を参照して、このX方向位置及びその前後の範囲の振動変位V1,V2の波形を示す振動変位波形66と、このX方向位置に対応する振動変位V1,V2の振動変位量の検出値67とを保存データ51から取得する。
【0101】
次いで、表示制御部56は、
図10の符号XCに示すように、変位検出信号D3に加えて、保存データ51から取得した振動変位波形66及び検出値67を含む振動変位情報68をモニタ27に表示させる。これにより、オペレータは、指定位置SPに対応する振動変位波形66及び検出値67を確認することができる。ここでいう指定位置SPに対応する振動変位波形66及び検出値67とは、指定位置SPに対応する変位検出器20のX方向位置の検出と同期して検出された振動変位波形66及び検出値67を指す。
【0102】
そして、表示制御部56は、カーソルCu(指定位置SP)をX方向に移動させる指定位置変更操作C1(符号XA参照)が操作部25に入力された場合、移動後のカーソルCuに対応した変位検出器20のX方向位置を再判別する。次いで、表示制御部56は、変位検出器20のX方向位置の再判別結果に基づき、符号XB及び符号XCに示したように振動変位情報68(振動変位波形66及び検出値67)の取得と表示更新とを実行する。
【0103】
以下、カーソルCu(指定位置SP)の指定位置変更操作C1が実行されるごとに、変位検出器20のX方向位置の再判別と、振動変位情報68の取得及び表示更新と、が繰り返し実行される。
【0104】
なお、振動変位V2(振動検出信号V3B)に対応する振動変位情報68についても同様に各操作(指定操作、指定位置変更操作C1)に応じてモニタ27に表示させることができる。
【0105】
以上のように、第4実施形態では、オペレータが、所望のカーソルCuの位置(指定位置SP)に対応した振動変位情報68を確認することができる。その結果、表面Waの形状測定の異常発生の原因をより効率的且つ容易に検出することができる。
【0106】
[第5実施形態]
図11は、第5実施形態の表面形状測定機10の制御装置28の構成を示したブロック図である。
図12は、第5実施形態においてモニタ27に表示される変位検出信号D3の波形及び振動変位情報68を説明するための説明図である。
【0107】
なお、第5実施形態の表面形状測定機10は、モニタ27での変位検出信号D3の表示方法が異なる点を除けば上記各実施形態(特に第4実施形態)と基本的に同じ構成である。このため、上記各実施形態と機能又は構成上同一のものについては同一符号を付してその説明は省略する。また、
図11では、第5実施形態の制御装置28として、
図2に示した第1実施形態の制御装置28の変形例を示しているが、他実施形態の制御装置28についても適用可能である。
【0108】
上記各実施形態の表示制御部56は、ローパスフィルタ54によるローパスフィルタ処理後の変位検出信号D3をモニタ27に表示させている。この場合には、変位検出信号D3の波形から振動等に起因する波形の突起形状(偽形状)を判別することは困難である。
【0109】
そこで、
図11及び
図12の符号XIIAに示すように、第5実施形態の表示制御部56は、ローパスフィルタ54によるローパスフィルタ処理前後の変位検出信号D3をモニタ27に重畳表示させる重畳表示モードを有している。これにより、ローパスフィルタ処理によって判別が困難となる上述の偽形状を容易に判別することができる。
【0110】
そして、
図12の符号XIIB及び符号XIICに示すように、変位検出信号D3の波形上で偽形状が発生している位置にカーソルCu(指定位置SP)を設定することで、その付近の振動変位情報68をモニタ27に表示させることができる。これにより、表面Waの形状測定の異常発生の原因をより高精度に特定することができるので、この形状測定の信頼性を高めることができる。
【0111】
[第6実施形態]
図13は、第6実施形態の表面形状測定機10の制御装置28の構成を示したブロック図である。この第6実施形態の表面形状測定機10は、変位検出信号D3に基づき表面Waの形状測定の異常の有無を判定し、形状測定の異常有と判定した場合に表面Waの形状の再測定を実行する。
【0112】
第6実施形態の表面形状測定機10は、制御装置28に異常波形検出部70、異常判定部72、再測定制御部74、及び報知制御部76が設けられている点を除けば上記各実施形態と基本的に同じ構成である。このため、上記各実施形態と機能又は構成上同一のものについては同一符号を付してその説明は省略する。なお、
図13では、第6実施形態の制御装置28として、
図2に示した第1実施形態の制御装置28の変形例を示しているが、他実施形態の制御装置28についても適用可能である。
【0113】
異常波形検出部70は、第1信号生成部52が生成した変位検出信号D3の波形から異常波形ERを検出する。
【0114】
図14は、異常波形検出部70による異常波形ERの検出の第1例から第3例を説明するための説明図である。
【0115】
図14の符号XIVAに示すように、第1例において異常波形検出部70は、変位検出信号D3に基づき、接触子34のZ方向の変位量が予め定められた異常判定閾値ETよりも大きくなるか或いは正常範囲NR内(異常判定閾値ET内)に収まるかに基づき、異常波形ERの発生の有無を判定する。そして、異常判定部72は、異常波形ERの発生有と判定した場合に、異常波形ERのX方向位置の範囲を示す範囲情報75(本発明の第1範囲に相当)を異常判定部72へ出力する。
【0116】
図14の符号XIVBに示すように、第2例において異常波形検出部70は、変位検出信号D3に基づき、接触子34のZ方向の変位量が異常判定閾値ETを超える状態が所定期間以上だけ連続した場合に異常波形ERの発生有と判定し、異常波形ERの範囲情報75を異常判定部72へ出力する。これにより、変位検出信号D3のノイズにより異常波形ERの発生有との誤検出を行うことが防止される。
【0117】
図14の符号XIVCに示すように、第3例において異常波形検出部70は、変位検出信号D3に基づき、接触子34のZ方向の変位量の移動平均線MAを演算する。そして、異常判定部72は、移動平均線MAからの変位量の偏差が異常判定閾値ETを超えた状態から元の状態(異常判定閾値ET内の状態)に戻った場合に異常波形ERの発生有と判定し、異常波形ERの範囲情報75を異常判定部72へ出力する。これにより、変位検出信号D3のドリフトと異常波形ERとを区別することができ、異常波形検出部70の検出精度を向上させることができる。
【0118】
図15は、異常判定部72による表面Waの形状測定の異常の有無の判定処理を説明するための説明図である。
図15に示すように、異常判定部72は、本発明の第1異常判定部に相当するものであり、異常波形検出部70から入力される異常波形ERの範囲情報75に基づき、保存データ51内の振動変位V1,V2を参照して、表面Waの形状測定の異常の有無を判定する。
【0119】
具体的には異常判定部72は、異常波形検出部70から入力された範囲情報75に基づき、この範囲情報75が示す変位検出器20のX方向位置範囲WQ内の振動変位V1,V2を保存データ51から取得する。そして、異常判定部72は、X方向位置範囲WQ内の振動変位V1,V2(振動変位量)の少なくとも一方が予め定められた閾値FTよりも大きくなるか否かに基づき、表面Waの形状測定の異常の有無を判定する。
【0120】
図13に戻って、再測定制御部74は本発明の第2再測定制御部に相当する。この再測定制御部74は、異常判定部72が形状測定の異常有と判定した場合に、上記第2実施形態の再測定制御部59と同様に、駆動制御部40を介して検出器移動機構16を駆動して再測定を実行する。これにより、上述の3つの動作が互いに同期して繰り返し実行され、且つ3つの動作が実行されるごとにX方向位置検出結果D1、変位検出結果D2、及び振動変位V1,V2を関連付けて保存データ51に記憶させることができる。なお、本実施形態では、表面Waの被測定領域の全領域を再測定しているが、範囲情報75に基づき被測定領域の中で異常波形ERの発生箇所のみを再測定してもよい。
【0121】
再測定制御部74により再測定が実行されると、上述の第1信号生成部52による変位検出信号D3の生成と、異常波形検出部70による異常波形ERの検出と、異常判定部72による判定とが繰り返し実行される。以下、異常判定部72が形状測定の異常有と判定するごとに、後述の一定回数の範囲内において、再測定制御部74による再測定と、第1信号生成部52による変位検出信号D3の生成と、異常波形検出部70による異常波形ERの検出と、異常判定部72による判定と、が繰り返し実行される。
【0122】
図16は、第6実施形態の報知制御部76による警告情報79の報知を説明するための説明図である。
図16及び既述の
図13に示すように、報知制御部76は、モニタ27と共に本発明の報知部を構成する。この報知制御部76は、再測定制御部74による再測定の実行回数が予め定められた一定回数を超える場合に、その旨を示す警告情報79をモニタ27に表示させる。これにより、ワークW(表面Wa)の形状測定の異常発生をオペレータに報知することができる。なお、警告情報79をモニタ27に表示させる代わりに、或いは警告情報79をモニタ27に表示させると共に、この警告情報79を不図示のスピーカ(報知部に相当)から音声出力させてもよい。
【0123】
図17は、第6実施形態の表面形状測定機10による再測定処理及び警告処理の流れを示すフローチャートである。なお、ステップS1からステップS5までのワークWの表面Waの形状測定の流れは既述の
図5に示した第1実施形態と同様であるので、ここでは具体的な説明は省略する。
【0124】
初回の表面Waの形状測定が完了すると、第1信号生成部52が保存データ51を参照して変位検出信号D3を生成する(ステップS21)。変位検出信号D3の生成が完了すると、異常波形検出部70が、既述の
図14に示したように、変位検出信号D3の波形から異常波形ERの検出を行い、変位検出信号D3に異常波形ERが含まれている場合にはその範囲情報75を異常判定部72へ出力する(ステップS22)。
【0125】
次いで、異常判定部72が、異常波形検出部70から入力された範囲情報75に基づき、既述の
図15に示したようにX方向位置範囲WQ内の振動変位V1,V2を保存データ51から取得する(ステップS23)。そして、異常判定部72が、X方向位置範囲WQ内の振動変位V1,V2(振動変位量)の少なくとも一方が閾値FTよりも大きくなるか否かに基づき、表面Waの形状測定の異常の有無を判定する(ステップS24)。
【0126】
異常判定部72が形状測定の異常有と判定した場合(ステップS24でYES、ステップS25でNO)、再測定制御部74が、駆動制御部40を介して検出器移動機構16を駆動することで表面Waの形状の再測定を実行する(ステップS26)。これにより、上述の3つの動作が互いに同期して繰り返し実行され、且つ3つの動作が実行されるごとにX方向位置検出結果D1、変位検出結果D2、及び振動変位V1,V2を関連付けて保存データ51に記憶させることができる。
【0127】
再測定が完了すると、ステップS21からステップS24までの処理が繰り返し実行される。異常判定部72が形状測定の異常有と判定し且つ再測定の回数が上述の一定回数未満である場合には、再びステップS26、S21~S24の処理が繰り返し実行される(ステップS24でYES、ステップS25でNO)。以下、再測定の回数が一定回数に達するまでは、異常判定部72が形状測定の異常有と判定するごとに上述の処理が繰り返し実行される。振動に起因する偽形状が変位検出信号D3に発生する場合においても、再測定を繰り返し実施することで偽形状を測定結果として採用するリスクが低減される。
【0128】
報知制御部76は、再測定の回数が一定回数を超える場合には、既述の
図16に示したようにその旨を示す警告情報79をモニタ27に表示させる警告表示を行う(ステップS25でYES、ステップS27)。これにより、表面Waの形状測定の異常の発生をオペレータに報知することができる。その結果、オペレータが異常の発生を認識して、その異常の発生要因の確認を速やかに実行することができる。
【0129】
以上のように第6実施形態では、変位検出信号D3の波形に基づき表面Waの形状測定の異常の有無を判定し、形状測定に異常が発生している場合には再測定を行うことで、この異常が表面Waの実形状に起因するのか或いは外的な環境要因(振動等)に起因するのかをより正確に判別することができる。
【0130】
[第7実施形態]
図18は、第7実施形態の表面形状測定機10の制御装置28の構成を示したブロック図である。上記第6実施形態の異常判定部72は、変位検出信号D3に基づき表面Waの形状測定の異常の有無を判定しているが、第7実施形態の異常判定部72は、保存データ51に記憶されている振動変位V1,V2に基づき形状測定の異常の有無を判定する。
【0131】
図18に示すように、第7実施形態の表面形状測定機10は、上記第6実施形態の表面形状測定機10と基本的に同じ構成であるので、上記第6実施形態と機能又は構成上同一のものについては同一符号を付してその説明は省略する。
【0132】
第7実施形態の異常判定部72は、本発明の第2異常判定部に相当する。この異常判定部72は、保存データ51内に記憶されている各振動変位V1,V2に基づき形状測定の異常の有無を判定する。
【0133】
具体的には異常判定部72は、既述の
図15に示した上記第6実施形態と同様に、各振動変位V1,V2が閾値FTよりも大きくなるか否かに基づき、形状測定の異常の有無を判定する。これにより、異常判定部72が表面Waの形状測定の異常有と判定した場合には、上記第6実施形態と同様に再測定制御部74により再測定が実行される。なお、表面Waの被測定領域の全てを再測定してもよいし、或いは後述の範囲情報75Aに基づき被測定領域の中で異常波形ERの発生箇所のみを再測定してもよい。
【0134】
また、異常判定部72は、表面Waの形状測定の異常有と判定した場合、保存データ51を参照して、形状測定の異常有と判定した振動変位V1,V2に対応する変位検出器20のX方向位置の範囲を示す範囲情報75A(本発明の第2範囲に相当)を生成する。そして、異常判定部72は、範囲情報75Aを表示制御部56に出力する。
【0135】
さらに、異常判定部72は、表面Waの形状測定の異常有と判定した場合、既述の範囲情報75Aに基づき、第1信号生成部52が生成した変位検出信号D3の中から範囲情報75Aに対応する異常波形ERのデータを抽出する。さらにまた、異常判定部72は、形状測定の異常の内容(例えば振動等)を示す異常内容情報78を生成する。そして、異常判定部72は、範囲情報75A、異常波形ERのデータ、異常内容情報78、及び形状測定の異常有と判定した振動変位V1,V2の波形を示す振動変位波形66Aを含む警告情報80(
図20参照)を生成して、この警告情報80を報知制御部76へ出力する。
【0136】
図19は、異常判定部72が表面Waの形状測定の異常有と判定した場合に、モニタ27に表示される変位検出信号D3の一例を説明するための説明図である。
図19に示すように、表示制御部56は、異常判定部72が形状測定の異常有と判定した場合に、変位検出信号D3をモニタ27に表示させる。
【0137】
また、この際に表示制御部56は、異常判定部72から入力された範囲情報75Aに基づき、モニタ27に表示される変位検出信号D3の波形の中で範囲情報75Aに対応する波形領域WRを識別可能に表示、例えば着色表示等する。これにより、形状測定の異常が発生している範囲情報75Aの位置及び範囲をオペレータに報知することができる。なお、波形領域WRを識別可能であればその表示態様については特に限定はされない。
【0138】
図20は、第7実施形態の報知制御部76による警告情報80の報知を説明するための説明図である。
図20に示すように、第7実施形態の報知制御部76は、異常判定部72が表面Waの形状測定の異常有と判定した場合に、この異常判定部72から入力される警告情報80に基づき、表示制御部56を制御してモニタ27に警告情報80を表示させる。これにより、表面Waの形状測定の異常の発生と、その異常の発生位置(範囲)及び内容と、異常波形ERと、異常発生箇所の振動変位波形66Aと、をオペレータに通知することができる。
【0139】
以上のように第7実施形態では、データストレージ50(保存データ51)に記憶されている振動変位V1,V2に基づき形状測定の異常の有無を判定可能であるので、上記第6実施形態と同様の効果が得られる。
【0140】
[第8実施形態]
図21は、第8実施形態の表面形状測定機10の制御装置28の構成を示したブロック図である。
図22は、第8実施形態の表面形状測定機10の変位検出器20の拡大図である。第8実施形態では、2個の振動計22A1,22A2を用いて変位検出器20の姿勢を検出すると共に、その姿勢変化に応じた接触子34のZ方向の変位量ΔZ1(
図23参照)を演算する。
【0141】
図21と
図22の符号XXIIA及び符号XXIIBとに示すように、第8実施形態の表面形状測定機10は、変位検出器20に2種類の振動計22A1,22A2が設けられ、且つ制御装置28に姿勢検出部82及び変位量演算部84が設けられている点を除けば上記各実施形態と基本的に同じ構成である。このため、上記各実施形態と機能又は構成上同一のものについては同一符号を付してその説明は省略する。なお、
図21では、第8実施形態の制御装置28として、
図2に示した第1実施形態の制御装置28の変形例を示しているが、他実施形態の制御装置28についても適用可能である。
【0142】
振動計22A1,22A2は、上記各実施形態の振動計22Aと基本的に同じものであり、変位検出器20のX方向の一端部と他端部とに設けられている。振動計22A1は、同期信号CLに同期して変位検出器20の一端部のZ方向の振動変位V1Aを検出し、検出した振動変位V1Aを制御装置28へ逐次出力する。また、振動計22A2は、同期信号CLに同期して変位検出器20の他端部のZ方向の振動変位V1Bを検出し、検出した振動変位V1Bを制御装置28へ逐次出力する。
【0143】
振動変位V1A,V2Bは、信号取得部46を経て、記憶制御部48によりデータストレージ50の保存データ51内に記憶される。これにより、上記3つの動作が実行されるごとに、振動変位V1A,V2BがX方向位置検出結果D1等に関連付けられた状態で保存データ51に繰り返し記憶される。
【0144】
なお、
図22中の符号L1は振動計22A1,22A2の既知の間隔を示し、符号L2は揺動支点30から接触子34までの距離を示す。
【0145】
姿勢検出部82は、保存データ51に記憶されている変位検出器20のX方向位置ごとの振動変位V1A,V2Bに基づき、詳しくは後述するが、変位検出器20の姿勢を示す検出器姿勢角θ(
図23参照)をX方向位置ごとに検出(演算)する。検出器姿勢角θは、変位検出器20のY方向に平行な軸周りの姿勢であって且つ接触子34の先端のZ方向位置に影響を及ぼす変位検出器20の姿勢を示す。
【0146】
変位量演算部84は、姿勢検出部82により検出されたX方向位置ごとの検出器姿勢角θに基づき、詳しくは後述するが、変位検出器20の姿勢変化に応じた接触子34のZ方向の変位量ΔZ1(
図23参照)をX方向位置ごとに演算する。
【0147】
図23は、姿勢検出部82による変位検出器20の検出器姿勢角θの検出と、変位量演算部84による接触子34の変位量ΔZ1の演算と、を説明するための説明図である。
【0148】
図23の符号XXIIIAに示すように、姿勢検出部82は、保存データ51を参照して、変位検出器20のX方向位置ごとに、振動変位V1Aと振動変位V1Bとの差分値ΔVを演算する。換言すると、姿勢検出部82は、変位検出器20のX方向位置ごとに、X方向位置ごとの振動変位V1Aを示す振動検出信号V3A1と、X方向位置ごとの振動変位V1Bを示す振動検出信号V3A2との差分値ΔVを演算する。
【0149】
次いで、
図23の符号XXIIIBに示すように、姿勢検出部82は、変位検出器20のX方向位置ごとの差分値ΔVと、既知の振動計22A1,22A2の間隔L1とに基づき、数式[θ=atan(ΔV)/L1]を用いて検出器姿勢角θをX方向位置ごとに検出する。
【0150】
図23の符号XXIIICに示すように、変位量演算部84は、姿勢検出部82による変位検出器20のX方向位置ごとの検出器姿勢角θと、既知の揺動支点30から接触子34までの距離L2とに基づき、数式[ΔZ1=L2sinθ]を用いて接触子34の変位量ΔZ1をX方向位置ごとに演算する。
【0151】
以上のように第8実施形態では、変位検出器20のX方向位置ごとに検出器姿勢角θ及び接触子34の変位量ΔZ1を検出することで、表面Waの形状測定結果における変位検出器20の姿勢の影響を判別することができる。これにより、表面Waの形状測定結果から変位検出器20の姿勢の影響を除去することができる。
【0152】
[第9実施形態]
図24及び
図25は、本発明の形状測定機に相当する第9実施形態の真円度測定機100の概略図である。真円度測定機100(円筒形状測定機を含む)は、接触子132を用いて、
図24に示すような円柱状又は円筒状のワークWの周面Wb(外周面、内周面)の真円度測定と、
図25に示すようなワークWの上面Wcの表面形状(例えば平面度等)の測定と、を実行する。なお、周面Wb及び上面Wcは被測定面に相当する。
【0153】
真円度測定機100は、測定台102と、回転テーブル104と、モータ106と、回転角度検出センサ108と、コラム110と、水平アーム112と、変位検出器114と、振動計116A,116Bと、操作部118と、モニタ120と、制御装置122と、を備える。
【0154】
測定台102は、真円度測定機100の各部を支持する支持台(基台)である。測定台102の上面側には、回転テーブル104とコラム110とが設けられている。また、測定台102の内部には、モータ106及び回転角度検出センサ108が設けられている。
【0155】
回転テーブル104の上面にはワークWが載置される。この回転テーブル104は、Z方向に平行な回転中心RC(回転軸)を中心として回転自在に測定台102に設けられている。
【0156】
モータ106は、本発明の相対移動機構に相当するものであり、後述の制御装置122の制御の下、回転中心RCを中心として回転テーブル104を回転させる。このように回転テーブル104を回転させることで、周面Wb或いは上面Wcに対しその周方向(以下、単にワーク周方向という)に沿って変位検出器114(接触子132)を相対移動させることができる。
【0157】
回転角度検出センサ108は、本発明の位置検出センサに相当するものであり、例えばロータリエンコーダが用いられる。この回転角度検出センサ108は、回転テーブル104の回転角度を検出することで、周面Wb或いは上面Wcに対する変位検出器114のワーク周方向の相対位置を検出する。そして、回転角度検出センサ108は、回転テーブル104の回転角度検出結果Dθを制御装置122へ出力する。
【0158】
コラム110は、測定台102の上面で且つ回転テーブル104からX方向側にシフトした位置に設けられており、Z方向に延びた形状を有している。このコラム110は、不図示のキャリッジを介して水平アーム112をZ方向(矢印AZ参照)及びX方向(矢印AX参照)に移動自在に保持している。この水平アーム112の先端部には、変位検出器114が姿勢変更可能に保持されている。このため、水平アーム112は、本発明の検出器保持部として機能する。
【0159】
変位検出器114は、アーム130と、接触子132と、変位検出センサ134と、を備える。この変位検出器114は、周面Wbの真円度測定時には水平アーム112の先端部によりZ方向に平行な第1姿勢で保持される(
図24参照)。また、変位検出器114は、上面Wcの表面形状測定時には水平アーム112の先端部によりX方向に平行な第2姿勢で保持される(
図25参照)。
【0160】
アーム130は、変位検出器114において揺動自在に支持されている。なお、アーム130の支点は第1姿勢ではY方向に平行であり(
図24参照)、第2姿勢ではX方向に平行である(
図25参照)。
【0161】
接触子132は、アーム130の先端部に設けられている。接触子132は、周面Wbの真円度測定時には周面Wbに接触し、アーム130の揺動に応じてX方向に揺動する(
図24参照)。従って、この場合の変位検出器114の検出器感度方向K1はX方向である。そして、接触子132は、モータ106により回転テーブル104及びワークWが変位検出器114に対して相対回転されることで、周面Wbをワーク周方向に沿ってトレース(走査)する。
【0162】
また、接触子132は、上面Wcの表面形状測定時には上面Wcに接触し、アーム130の揺動に応じてZ方向に揺動する(
図25参照)。従って、この場合の変位検出器114の検出器感度方向K1はZ方向である。そして、接触子132は、モータ106により回転テーブル104及びワークWが変位検出器114に対して相対回転されることで、上面Wcをワーク周方向に沿ってトレース(走査)する。
【0163】
変位検出センサ134は、例えば上記各実施形態の変位検出センサ36と同様の線形可変差動変圧器或いはスケール型センサである。変位検出センサ134は、接触子132のX方向の変位(周面Wbの真円度測定時)又はZ方向の変位(上面Wcの表面形状測定時)を検出してその変位検出結果D2を制御装置122へ出力する。
【0164】
振動計116A,116Bは、例えば測定台102に設けられている。なお、振動計116A,116Bが測定台102以外に設けられていてもよい。
【0165】
振動計116Aは、本発明の第1振動計に相当する。振動計116Aの振動計感度方向K2はX方向(周面Wbの真円度測定時の検出器感度方向K1)と一致している。振動計116Aは、X方向の振動を連続検出してその振動変位V1を制御装置122へ逐次出力する。
【0166】
振動計116Bは、本発明の第2振動計に相当する。振動計116Bの振動計感度方向K2はZ方向(上面Wcの表面形状測定時の検出器感度方向K1)と一致している。振動計116Bは、Z方向の振動を連続検出してその振動変位V2を制御装置122へ逐次出力する。
【0167】
操作部118は、例えばキーボード、マウス、操作パネル、及び操作ボタン等が用いられ、オペレータによる各種操作の入力を受け付ける。
【0168】
モニタ120は、公知の液晶表示ディスプレイ等の各種ディスプレイが用いられる。このモニタ120は、周面Wb又は上面Wcの形状測定結果である変位検出信号D3、各種設定画面、及び各種操作画面等を表示する。また、モニタ120は、周面Wbの真円度測定時には後述の振動検出信号V3Aを表示し、上面Wcの表面形状測定時には後述の振動検出信号V3Bを表示する。
【0169】
制御装置122は、真円度測定機100の各部の動作を統括制御する。この制御装置122は、上記各実施形態の制御装置28と基本的に同じ構成である。制御装置122は、周面Wbの真円度測定時においては、振動計116A,116Bのうちで振動計116Aを作動させると共に、回転角度検出センサ108による検出と、変位検出センサ134による検出と、振動計116Aによる振動検出とを含む3つの動作を同期させる。さらに、制御装置28は、互いに同期した3つの動作が実行されるごとに、回転角度検出センサ108により検出された回転角度検出結果Dθと、変位検出センサ134により検出された接触子132の変位検出結果D2と、振動計116Aにより検出された振動変位V1と、を関連付けてデータストレージ50(
図2参照)に記憶させる。
【0170】
また、制御装置122は、回転テーブル104の回転角度位置ごとの接触子132のX方向の変位、すなわち周面Wbの表面形状(真円度)を示す変位検出信号D3を生成してモニタ120に表示させる。さらに、制御装置122は、回転テーブル104の回転角度位置ごとの振動変位V1を示す振動検出信号V3Aを生成して、この振動検出信号V3Aをモニタ120に表示させる。
【0171】
一方、制御装置122は、上面Wcの表面形状測定時においては、振動計116A,116Bのうちで振動計116Bを作動させると共に、回転角度検出センサ108による検出と、変位検出センサ134による検出と、振動計116Bによる振動検出とを含む3つの動作を同期させる。さらに、制御装置28は、互いに同期した3つの動作が実行されるごとに、既述の回転角度検出結果Dθ及び変位検出結果D2と、振動計116Bにより検出された振動変位V2と、を関連付けてデータストレージ50に記憶させる。
【0172】
また、制御装置122は、また、回転テーブル104の回転角度位置ごとの接触子132のZ方向の変位、すなわち上面Wcの表面形状(平面度等)を示す変位検出信号D3を生成してモニタ120に表示させる。さらに、制御装置122は、回転テーブル104の回転角度位置ごとの振動変位V2を示す振動検出信号V3Bを生成して、この振動検出信号V3Bをモニタ120に表示させる。
【0173】
以上のように第9実施形態の真円度測定機100においても3つの動作を互いに同期させて繰り返し実行することで、3つの動作が実行されるごとに回転角度検出結果Dθと、変位検出結果D2と、振動変位V1及び振動変位V2のいずれか一方と、を関連付けて保存データ51に記憶させることができる。その結果、上記各実施形態と同様の効果が得られる。また、変位検出器114の2種類の姿勢にそれぞれ対応した振動計116A,116Bを設けることで、周面Wbと上面Wcの2種類の形状測定に対応することができる。
【0174】
なお、第9実施形態の真円度測定機100に、上記各実施形態の発明を適宜組み合わせてもよい。
【0175】
[第10実施形態]
図26は、本発明の第10実施形態の真円度測定機100の概略図である。
図10に示すように、第10実施形態では、ワークWのテーパ形状の周面Wd(被測定面)の形状測定(真円度測定)を行う。なお、第10実施形態の真円度測定機100は、上記第9実施形態の真円度測定機100と基本的に同じ構成であるので、上記第9実施形態と機能又は構成上同一のものについては同一符号を付してその説明は省略する。
【0176】
第10実施形態の変位検出器114は、水平アーム112により第1姿勢で保持される。また、第10実施形態の接触子132は、周面Wbの真円度測定時には周面Wdに接触し、アーム130の揺動に応じてX方向に揺動する。
【0177】
第10実施形態の振動計116Aは、周面Wdの真円度測定時において、X方向の振動を連続検出してその振動変位V1を制御装置122へ逐次出力する。
【0178】
第10実施形態の振動計116Bは、周面Wdの真円度測定時において、Z方向の振動である垂直振動を連続検出してその振動変位V2を制御装置122へ逐次出力する。垂直振動が発生すると、周面Wdがテーパ形状であるため、この垂直振動に伴い接触子132がX方向に変位することで周面Wdの真円度測定結果に影響が及ぶ(
図28参照)。従って、第10実施形態では振動計116Bにより垂直振動の検出を行う。
【0179】
第10実施形態の制御装置122は、周面Wdの真円度測定時において、振動計116A,116Bの双方を作動させると共に、回転角度検出センサ108による検出と、変位検出センサ134による検出と、振動計116A,116Bによる振動検出とを含む3つの動作を同期させる。さらに、制御装置28は、互いに同期した3つの動作が実行されるごとに、既述の回転角度検出結果Dθ及び変位検出結果D2と、振動計116A,116Bにより検出された振動変位V1、V2と、を関連付けてデータストレージ50に記憶させる。
【0180】
図27は、第10実施形態の制御装置122の構成の一部を示したブロック図である。
図27に示すように、制御装置122には、上記各実施形態で説明した各部の他に、設計情報取得部124及び変位量演算部126が設けられている。なお、第10実施形態の第2信号生成部55は、回転テーブル104の回転角度位置ごとの振動変位V1を示す振動検出信号V3Aを生成して表示制御部56へ出力する。これにより、モニタ120に振動検出信号V3Aが表示される。
【0181】
図28は、設計情報取得部124が取得するテーパ角θA及び変位量演算部126による接触子132の変位量ΔXの演算を説明するための説明図である。
図28及び既述の
図27に示すように、設計情報取得部124は、不図示のメモリ、外部サーバ、又は操作部118からワークWの周面Wdのテーパ角θAの情報を取得し、このテーパ角θAの情報を変位量演算部126へ出力する。
【0182】
変位量演算部126は、保存データ51に記憶されている回転テーブル104の回転角度位置ごとの振動変位V2に基づき、変位検出器114の垂直振動に応じた接触子132のX方向の変位量ΔXを演算する。
【0183】
具体的には変位量演算部126は、保存データ51を参照して、回転テーブル104の回転角度位置ごとの接触子132のZ方向の変位量ΔZ2を検出する。そして、変位量演算部126は、回転角度位置ごとの接触子132の変位量ΔZ2と、設計情報取得部124から入力されたテーパ角θAの情報とに基づき、数式[ΔX=ΔZ2×tan(θA)]を用いて接触子132の変位量ΔXを回転角度位置ごとに演算し、その演算結果を表示制御部56へ出力する。これにより、回転テーブル104の回転角度位置ごとの接触子132の変位量ΔXがモニタ120に表示される。
【0184】
以上のように第10実施形態では、テーパ形状の周面Wdの形状測定を行う場合に、垂直振動に伴う接触子132の変位量ΔXを演算することで、振動検出信号V3A(周面Wdの形状測定結果)に対する垂直振動の影響を判別することができる。その結果、周面Wdの形状測定の異常発生の原因をより正確に検出することができる。
【0185】
なお、第10実施形態では、テーパ形状の周面Wdの形状測定を行う場合を例に挙げて説明したが、例えば球状のワークWの曲面形状の球面(被測定面)の形状測定を行う場合にも本発明を適用可能である。
【0186】
[その他]
上記各実施形態では、制御装置28にデータストレージ50が内蔵されているが、データストレージ50が表面形状測定機10と別体(例えば外部のサーバ或いはデータベース)に設けられていてもよい。
【0187】
上記第1実施形態から第8実施形態では、表面形状測定機10による表面Waの形状測定時に変位検出器20をX方向に移動させているが、測定台12及びワークWをX方向に移動させてもよい。すなわち変位検出器20とワークWとをX方向に相対移動可能であればその移動方法は特に限定はされない。また、第9実施形態及び第10実施形態においてワークWを回転させる代わりに、回転中心RCを中心として変位検出器114を回転させてもよい。
【0188】
上記各実施形態ではXY平面が水平面に平行であるが、水平面に対して非平行であってもよい。
【0189】
上記第1実施形態から第8実施形態では、据置型の表面形状測定機10を例に挙げて説明したが、ハンディタイプの表面形状測定機10にも本発明を適用可能である。
【0190】
上記各実施形態では、同期制御部42から出力される同期信号CLに基づき、位置検出センサ18による検出と、変位検出センサ36による検出と、各振動計22A,22B(振動計22、116A,116Bを含む)による振動検出とを同期させているが、位置検出センサ18、変位検出センサ36、及び各振動計22A,22Bのいずれかを同期制御部42として機能させてもよい。この場合、位置検出センサ18、変位検出センサ36、及び各振動計22A,22Bのいずれかの動作タイミングを同期信号CL(トリガ)として他の2つを動作させる。
【0191】
上記第1実施形態から第8実施形態では変位検出器20及びワークWの振動検出を行っているが、変位検出器20及びワークWのいずれか一方のみの振動検出を行ってもよい。また、表面形状測定機10において振動検出を行う部位は特に限定されず、任意の位置(例えば測定台12、コラム14等)の振動検出を行ってもよい。なお、第9実施形態及び第10実施形態についても同様に振動検出を行う部位は特に限定されず、任意の位置(例えば測定台102、回転テーブル104、コラム110、水平アーム112、及び変位検出器114等)の振動検出を行ってもよい。
【0192】
上記各実施形態では表面形状測定機10及び真円度測定機100を例に挙げて説明したが、本発明はワークW(測定対象物)に接触する接触子を用いてワークW又はその各種被測定面の形状測定を行う各種の形状測定機に適用可能である。
【符号の説明】
【0193】
10 表面形状測定機
12 測定台
14 コラム
16 検出器移動機構
17 ホルダ
18 位置検出センサ
18a リニアスケール
18b 読取ヘッド
20 変位検出器
22,22A,22B,22A1,22A2 振動計
25 操作部
27 モニタ
28 制御装置
30 揺動支点
32 アーム
32a アーム先端部
32b アーム基端部
34 接触子
36 変位検出センサ
40 駆動制御部
42 同期制御部
44,46 信号取得部
48 記憶制御部
50 データストレージ
51 保存データ
52 第1信号生成部
54 ローパスフィルタ
55 第2信号生成部
56 表示制御部
57 差分値演算部
58 再測定判定部
59 再測定制御部
60 振動伝達特性取得部
62 振動変位推定部
66 振動変位波形
66A 振動変位波形
67 検出値
68 振動変位情報
70 異常波形検出部
72 異常判定部
74 再測定制御部
75,75A 範囲情報
76 報知制御部
78 異常内容情報
79 警告情報
80 警告情報
82 姿勢検出部
84 変位量演算部
100 真円度測定機
102 測定台
104 回転テーブル
106 モータ
108 回転角度検出センサ
110 コラム
112 水平アーム
114 変位検出器
116A,116B 振動計
118 操作部
120 モニタ
122 制御装置
124 設計情報取得部
126 変位量演算部
130 アーム
132 接触子
134 変位検出センサ
C1 指定位置変更操作
CL 同期信号
Cu カーソル
D1 X方向位置検出結果
D2 変位検出結果
D3 変位検出信号
Dθ 回転角度検出結果
ER 異常波形
ET 異常判定閾値
F 入力振動
FT 閾値
K1 検出器感度方向
K2 振動計感度方向
L2 距離
MA 移動平均線
NR 正常範囲
RC 回転中心
SP 指定位置
T1 第1振動伝達特性
T2 第2振動伝達特性
V0,V1,V1A,V1B,V2 振動変位
V3A,V3A1,V3A2,V3B 振動検出信号
V4 差分振動検出信号
W ワーク
WQ X方向位置範囲
WR 波形領域
Wa 表面
Wb 周面
Wc 上面
Wd 周面
ΔV 差分値
ΔX,ΔZ1,ΔZ2 変位量
θ 検出器姿勢角
θA テーパ角