(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】車両管理装置、排ガス分析システム、車両管理用プログラム、及び車両管理方法
(51)【国際特許分類】
G01M 17/007 20060101AFI20240301BHJP
G01M 15/10 20060101ALI20240301BHJP
G01M 15/02 20060101ALI20240301BHJP
G01M 17/02 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
G01M17/007 Z
G01M17/007 P
G01M17/007 T
G01M15/10
G01M15/02
G01M17/02
(21)【出願番号】P 2019204185
(22)【出願日】2019-11-11
【審査請求日】2022-10-17
(31)【優先権主張番号】P 2018219450
(32)【優先日】2018-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019015341
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】駒田 峰之
(72)【発明者】
【氏名】阪口 正志
(72)【発明者】
【氏名】山本 光延
(72)【発明者】
【氏名】山岡 正弘
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/031219(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/00-17/02
G01M 15/10
G01M 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験車両の温度情報を管理する車両管理装置であって、
前記試験車両が保管されるソーク室に設けられた第1温度センサから、前記試験車両の周囲温度を取得する周囲温度取得部と、
前記試験車両の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記試験車両の周囲温度及び当該試験車両の位置情報を関連付けて記録する記録部とを備え
、
ビーコン信号を送信するビーコン送信機が前記試験車両に搭載されており、前記ビーコン信号を受信する複数のビーコン受信機が前記ソーク室に設けられており、
前記位置情報取得部は、前記試験車両に搭載されたビーコン送信機から送信されたビーコン信号を受信したビーコン受信機を、前記ソーク室に設けられた複数のビーコン受信機の中から特定することにより、前記ソーク室における前記試験車両の位置情報を取得する、車両管理装置。
【請求項2】
前記試験車両に搭載された第2温度センサから、当該試験車両の温度である車両温度を取得する車両温度取得部をさらに備え、
前記記録部が、前記試験車両の周囲温度及び当該試験車両の位置情報に加えて、当該試験車両の車両温度をさらに関連付けて記録する、請求項1記載の車両管理装置。
【請求項3】
試験車両の温度情報を管理する車両管理装置であって、
前記試験車両が保管されるソーク室に設けられた第1温度センサから、前記試験車両の周囲温度を取得する周囲温度取得部と、
前記試験車両の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記試験車両の周囲温度及び当該試験車両の位置情報を関連付けて記録する記録部とを備え、
前記ソーク室には、前記第1温度センサが複数設けられており、
前記周囲温度取得部が、前記位置情報取得部が取得した前記試験車両の位置情報に基づいて、当該試験車両に最も近い前記第1温度センサから、当該試験車両の周囲温度を取得する
、車両管理装置。
【請求項4】
前記車両温度取得部が、駐車場に駐車された前記試験車両から前記車両温度を取得し、
前記位置情報取得部が、前記試験車両の位置情報をGPSから取得し、
前記記録部が、前記駐車場に駐車された前記試験車両の車両温度及び当該試験車両のGPSから取得した位置情報を関連付けて記録する、請求項2に記載の車両管理装置。
【請求項5】
前記記録部が、前記試験車両の周囲温度及び当該試験車両の位置情報に加えて、当該試験車両に搭載されたバッテリの残容量をさらに関連付けて記録する、請求項1乃至
4のうち何れか一項に記載の車両管理装置。
【請求項6】
前記記録部が、前記試験車両の周囲温度及び当該
試験車両の位置情報に加えて、当該試験車両に充填された燃料に関する燃料データをさらに関連付けて記録する、請求項1乃至
5のうち何れか一項に記載の車両管理装置。
【請求項7】
前記記録部が、前記試験車両の周囲温度及び当該
試験車両の位置情報に加えて、当該試験車両のタイヤの空気圧を示す空気圧データをさらに関連付けて記録する、請求項1乃至
6のうち何れか一項に記載の車両管理装置。
【請求項8】
請求項1乃至
7のうち何れか一項に記載の車両管理装置と、
前記試験車両が載置されるシャシダイナモメータと、
前記試験車両からの排ガスを分析する排ガス分析装置とを具備する、排ガス分析システム。
【請求項9】
試験車両の温度情報を管理する車両管理に用いられるプログラムであって、
前記試験車両が保管されるソーク室に設けられた第1温度センサから、前記試験車両の周囲温度を取得する周囲温度取得部と、
前記試験車両の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記試験車両の周囲温度及び当該試験車両の位置情報を関連付けて記録する記録部としての機能をコンピュータに発揮させる
ものであり、
前記位置情報取得部は、前記試験車両に搭載されたビーコン送信機から送信されたビーコン信号を受信したビーコン受信機を、前記ソーク室に設けられた複数のビーコン受信機の中から特定することにより、前記ソーク室における前記試験車両の位置情報を取得する、車両管理用プログラム。
【請求項10】
試験車両の温度情報を管理する方法であって、
前記試験車両が保管されるソーク室に設けられた第1温度センサから、前記試験車両の周囲温度を取得し、
前記試験車両の位置情報を取得し、
前記試験車両の周囲温度及び当該試験車両の位置情報を関連付けて記録する
ものであり、
ビーコン信号を送信するビーコン送信機を前記試験車両に搭載し、前記ビーコン信号を受信する複数のビーコン受信機を前記ソーク室に設け、
前記試験車両に搭載されたビーコン送信機から送信されたビーコン信号を受信したビーコン受信機を、前記ソーク室に設けられた複数のビーコン受信機の中から特定することにより、前記ソーク室における前記試験車両の位置情報を取得する、車両管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験車両の温度情報を管理する管理装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、性能試験等の試験対象となる試験車両は、特許文献1に示すように、所定温度に温調されたソーク室と呼ばれる部屋に予め収容されており、そこから試験時にダイナモメータ等へ搬送されて試験が行われる。
【0003】
このソーク室の温度は、例えば排ガス計測などの試験結果に影響を及ぼし得る因子である。また、ソーク室の温度と同様、試験車両を試験する試験室の温度や、ソーク室における試験車両の様々な計測値(例えば、試験車両に関する温度計測値等)に関しても、試験結果に影響を及ぼし得る因子である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、昨今では、厳密な試験結果を得るために、ソーク室の温度、及びソーク室における試験車両の様々な計測値(例えば、試験車両に関する温度計測値等)のトレーサビリティを取得することが求められており、本発明は、ソーク室の温度、及びソーク室における試験車両の様々な計測値を収集して、そのトレーサビリティを取得可能なシステムを構築することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明に係る車両管理装置は、試験車両の温度情報を管理する車両管理装置であって、前記試験車両が保管されるソーク室又は前記試験車両を試験する試験室に設けられた第1温度センサから、前記試験車両の周囲温度を取得する周囲温度取得部と、前記試験車両の位置情報を取得する位置情報取得部と、前記試験車両の周囲温度及び当該試験車両の位置情報を関連付けて記録する記録部とを備えることを特徴とするものである。
【0007】
このように構成された車両管理装置によれば、試験車両の周囲温度及び当該試験車両の位置情報が関連付けて記録されるので、試験車両の温度トレーサビリティを取得可能なシステムを構築することができる。
【0008】
前記試験車両に搭載された第2温度センサから、当該試験車両の温度である車両温度を取得する車両温度取得部をさらに備え、前記記録部が、前記試験車両の周囲温度及び当該試験車両の位置情報に加えて、当該試験車両の車両温度をさらに関連付けて記録することが好ましい。
このような構成であれば、車両管理装置が、試験車両の周囲温度のみならず、試験車両の車両温度を取得するので、これらの温度差等を把握することができ、試験車両の温度トレーサビリティの取得のみならず、ソーク室内において試験車両が所定温度に温調されているかなどをもチェックすることができる。
【0009】
ビーコン信号を送受信するビーコン送信機及びビーコン受信機の一方が前記ソーク室又は前記試験室に設けられるとともに、他方が前記試験車両に搭載されており、前記位置情報取得部が、前記ビーコン受信機により受信されたビーコン信号に含まれる識別情報に基づいて、前記試験車両の位置情報を取得することが好ましい。
このような構成であれば、仮にソーク室が複数設けられている場合であっても、試験車両が保管されているソーク室を正しく識別することができる。
【0010】
前記ソーク室には、前記第1温度センサが複数設けられており、前記周囲温度取得部が、前記位置情報取得部が取得した前記試験車両の位置情報に基づいて、当該試験車両に最も近い前記第1温度センサから、当該試験車両の周囲温度を取得することが好ましい。
このような構成であれば、仮にソーク室が広大で場所によって温度にばらつきがある場合であっても、試験車両の正確な周囲温度を取得することができる。
【0011】
前記車両温度取得部が、駐車場に駐車された前記試験車両から前記車両温度を取得し、前記位置情報取得部が、前記試験車両の位置情報をGPSから取得し、前記記録部が、前記駐車場に駐車された前記試験車両の車両温度及び当該試験車両のGPSから取得した位置情報を関連付けて記録することが好ましい。
このような構成であれば、室内における試験車両の周囲温度のみならず、屋外における試験車両の車両温度をも、試験車両の温度トレーサビリティとして取得することができる。
【0012】
前記記録部が、前記試験車両の周囲温度及び当該試験車両の位置情報に加えて、当該試験車両に搭載されたバッテリの残容量をさらに関連付けて記録することが好ましい。
このような構成であれば、試験車両の周囲温度のみならず、バッテリの残容量も含めた広範囲なトレーサビリティを取得することができる。
【0013】
本発明に係る排ガス分析システムは、上述した車両管理装置と、前記試験車両が載置されるシャシダイナモメータと、前記試験車両からの排ガスを分析する排ガス分析装置とを具備することを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明に係る車両管理用プログラムは、試験車両の温度情報を管理する車両管理に用いられるプログラムであって、前記試験車両が保管されるソーク室又は前記試験車両を試験する試験室に設けられた第1温度センサから、前記試験車両の周囲温度を取得する周囲温度取得部と、前記試験車両の位置情報を取得する位置情報取得部と、前記試験車両の周囲温度及び当該試験車両の位置情報を関連付けて記録する記録部としての機能をコンピュータに発揮させることを特徴とするものである。
【0015】
さらに、本発明に係る車両管理方法は、試験車両の温度情報を管理する方法であって、前記試験車両が保管されるソーク室又は前記試験車両を試験する試験室に設けられた第1温度センサから、前記試験車両の周囲温度を取得し、前記試験車両の位置情報を取得し、前記試験車両の周囲温度及び当該試験車両の位置情報を関連付けて記録することを特徴とする方法である。
【0016】
このような排ガス分析システム、車両管理用プログラム、及び車両管理方法であれば、上述した車両管理装置と同様の作用効果を発揮させることができる。
【発明の効果】
【0017】
このように構成した本発明によれば、試験車両の温度トレーサビリティを取得可能なシステムを構築することができ、その温度トレーサビリティをデータとして記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態の排ガス分析システムの構成を示す模式図。
【
図2】本実施形態の車両管理装置の機能を示す機能ブロック図。
【
図3】その他の実施形態における車両管理装置の情報の授受を示す模式図。
【
図4】その他の実施形態における車両管理装置の情報の授受を示す模式図。
【
図5】その他の実施形態における車両管理装置の使用態様を示す模式図。
【
図6】その他の実施形態におけるコンピュータの表示画面を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明に係る排ガス分析システムの一実施形態について図面を参照して説明する。
【0020】
本実施形態の排ガス分析システム100は、
図1に示すように、試験室S1、シャシダイナモメータ10、排ガス分析装置20等を備えているもので、試験車両Vをシャシダイナモメータ10上で擬似走行させ、その試験車両Vの燃費、電費(電気自動車などの電力消費率)、排ガス成分等に係る性能を試験することができる。なお、試験室S1は、その内部に試験車両Vを搬入して走行試験を行うための部屋であり、外部から隔離して測定に必要な種々の環境(温度等)に設定できるように構成されている。
【0021】
そして、この排ガス分析システム100は、
図1に示すように、試験車両Vが保管されるソーク室S2と、試験車両Vの温度情報を管理する車両管理装置30とをさらに備えている。
【0022】
ソーク室S2は、1又は複数の試験車両Vを少なくとも試験前に収容するための部屋である。なお、ソーク室S2に複数の試験車両Vを保管する場合、これらの試験車両Vを複数階に亘って収容しても良いし、全ての試験車両Vを1つの階に収容しても良い。
【0023】
本実施形態の排ガス分析システム100は、複数のソーク室S2(ここでは、第1ソーク室及び第2ソーク室の2部屋)を備えている。各ソーク室S2には、室内を所定温度に温調するための空調機構(不図示)や室内の温度を検出する第1温度センサT1が設けられている。また、複数のソーク室S2に保管されている試験車両Vの全部又は一部には、第2温度センサT2が搭載されている。
【0024】
車両管理装置30は、CPU、メモリ、ディスプレイ、入力手段(キーボードやマウス等)、通信インタフェース等を備えた汎用乃至専用のコンピュータである。そして、前記メモリに記憶させた車両管理用プログラムに従ってCPU及びその周辺機器を協働させることにより、
図2に示すように、周囲温度取得部31、車両温度取得部32、位置情報取得部33、及び記録部34等としての機能を発揮するものである。なお、車両管理装置30は、例えばスマートフォンやタブレット端末等といった携帯可能なモバイル端末などであっても良い。
以下、車両管理装置30の動作説明を兼ねて各部を説明する。
【0025】
周囲温度取得部31は、第1温度センサT1により検出された温度を、当該第1温度センサT1が設けられているソーク室S2を示す部屋識別子とともに取得するものであり、その温度を当該ソーク室S2に保管されている試験車両Vの周囲の温度(以下、周囲温度という)として取得するものである。なお、周囲温度取得部31と第1温度センサT1との間の通信は、例えば無線通信や公衆回線など種々の通信網を利用することができる。
【0026】
本実施形態では、
図1に示すように、試験車両Vを試験する試験室S1にも第1温度センサT1が設けられている。そして周囲温度取得部31は、試験室S1に設けられた第1温度センサT1により検出された温度を、当該試験室S1を示す部屋識別子とともに取得し、その温度を当該試験室S1で試験されている試験車両Vの周囲温度として取得する。
【0027】
車両温度取得部32は、第2温度センサT2により検出された温度を、当該第2温度が搭載されている試験車両Vを示す車両識別子とともに取得するものであり、その温度を当該試験車両Vの温度(以下、車両温度という)として取得する。なお、車両温度取得部32と第2温度センサT2との間の通信は、例えば無線通信や公衆回線など種々の通信網を利用することができる。
【0028】
位置情報取得部33は、試験車両Vの位置情報を、当該車両Vを示す車両識別子とともに取得するものである。位置情報には、少なくとも試験車両Vの屋内における位置を特定する情報が含まれており、ここでは、位置情報として、ソーク室S2や試験室S1を示す部屋識別子を用いている。なお、部屋識別子に加えて、或いは、部屋識別子に代えて、GPSから取得した試験車両Vの位置情報を用いても良い。
【0029】
本実施形態では、
図1に示すように、各試験車両Vには、ビーコン信号を送信するビーコン送信機B1が搭載されており、このビーコン信号を受信するビーコン受信機B2がソーク室S2や試験室S1に設けられている。ビーコン信号には、ビーコン送信機B1を識別するための識別情報が含まれており、この識別情報と当該ビーコン送信機B1が搭載されている車両識別子とが結び付けられている。
【0030】
そして、ビーコン受信機B2がビーコン信号を受信すると、位置情報取得部33は、ビーコン受信機B2から、受信したビーコン信号に含まれる識別情報に結び付けられた車両識別子を取得するとともに、そのビーコン受信機B2が設けられたソーク室S2や試験室S1を示す部屋識別子を位置情報として取得する。なお、位置情報取得部33とビーコン受信機B2との間の通信は、例えば無線LAN等を用いた種々の無線通信を利用することができる。
【0031】
記録部34は、試験車両Vの周囲温度及び当該試験車両Vの位置情報を関連付けて前記メモリの所定領域に記録するものである。なお、記録部34としては、車両管理装置30が備える前記メモリに記録するものに限らず、例えばクラウドやUSBメモリやSDカード等の外部メモリに記録するものであっても良い。
【0032】
具体的に記録部34は、周囲温度取得部31が試験車両Vの周囲温度とともに取得した車両識別子と、位置情報取得部33が試験車両Vの位置情報とともに取得した車両識別子とを照合して、これらの車両識別子が一致している場合に、その周囲温度と位置情報とを関連付けて記録する。なお、記録部34は、試験車両Vの周囲温度及び当該試験車両Vの位置情報に加えて、試験車両Vの車両識別子を関連付けてメモリに記録するものであってもよい。
【0033】
より具体的に説明すると、記録部34は、例えば周囲温度の時系列データ及び位置情報の時系列データを関連付けて記録する。この場合、周囲温度の時系列データ及び位置情報の時系列データを時刻で結び付ける態様が挙げられ、これにより周囲温度と、当該周囲温度を周囲温度取得部31が取得した時刻に位置情報取得部33が取得した位置情報とが紐付けられて記録される。なお、記録部34は、試験車両Vの周囲温度及び当該試験車両Vの位置情報に加えて、これらの情報を取得した時の時刻情報を関連付けてメモリに記録するものであってもよい。
【0034】
本実施形態の記録部34は、試験車両Vの周囲温度及び当該試験車両Vの位置情報に加えて、当該試験車両Vを示す車両識別子とともに車両温度取得部32が取得した車両温度をさらに関連付けて記録するように構成されている。なお、試験室S1やソーク室S2の第1温度センサT1が故障等により機能しない場合には、記憶部32は、試験車両Vの車両温度、当該試験車両Vの位置情報、及び当該試験車両Vの車両識別子とを関連付けて記録するものであってもよい。
具体的に記録部34は、周囲温度の時系列データ、位置情報の時系列データ、及び車両温度の時系列データを関連付けるものであり、具体的には上述した態様と同様、各時系列データを時刻で結び付ける態様が挙げられる。この場合、周囲温度と、当該周囲温度を周囲温度取得部31が取得した時刻に位置情報取得部33が取得した位置情報と、同時刻に車両温度取得部32が取得した車両温度とが紐付けられて記録される。すなわち、記録部34は、これらの互いに関連した情報をデータベース化して記録している。
【0035】
ここでの車両管理装置30は、少なくとも関連付けられた周囲温度と位置情報とを比較可能に出力する出力部35を備えている。具体的に出力部35は、関連付けられた周囲温度及び位置情報を、例えば車両管理装置30のディスプレイや、車両管理装置30とは別の例えばスマートフォンやタブレット端末等といった携帯可能なモバイル端末のディスプレイに比較可能に出力するものであり、ここでは周囲温度及び位置情報に関連付けられた車両温度をさらに比較可能に出力する。
なお、出力部35は、記録部34が記録したデータベースを一覧として出力してもよいし、データベースから、車両識別子、位置情報又は時刻情報等をキーにして、これらに紐づけられた試験車両Vの周囲温度又は車両温度等を引き出せるものであってもよい。また、出力部35は、記録部34に記録されたデータベースを有線又は無線を用いた通信手段や外部メモリを介して、他のサーバ等に持ち出すことも可能である。
【0036】
このように構成された車両管理装置30によれば、試験車両Vの周囲温度及び当該試験車両Vの位置情報が関連付けて記録されるので、試験車両Vの温度トレーサビリティを取得可能な排ガス分析システム100を構築することができる。
【0037】
また、車両管理装置30が、試験車両Vの周囲温度のみならず、試験車両Vの車両温度を取得するので、これらの温度差等を把握することができ、試験車両Vの温度トレーサビリティの取得のみならず、ソーク室S2内において試験車両Vが所定温度に温調されているかなどをもチェックすることができる。
【0038】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0039】
例えば、前記実施形態では、試験車両Vの周囲温度、位置情報、及び車両温度を関連付けて記録していたが、必ずしも車両温度を関連付ける必要はない。この場合、試験車両Vに第2温度センサT2を設ける必要はないし、車両管理装置30としては車両温度取得部32としての機能を備えたものである必要はない。
【0040】
ソーク室S2には、複数の第1温度センサT1及び複数のビーコン受信機B2が設けられていても良い。
この実施形態においては、位置情報取得部33は、試験車両Vに搭載されたビーコン送信機B1から送信されたビーコン信号を受信したビーコン受信機B2を、ソーク室S2に設けられた複数のビーコン受信機B2の中から特定するように構成されていても良い。
これにより、位置情報取得部33は、特定したビーコン受信機B2のソーク室S2における設置場所を、ソーク室S2における試験車両Vの詳細位置を示す位置情報として取得することができる。
かかる構成において、周囲温度取得部31は、位置情報取得部33が取得した試験車両Vの詳細位置に基づいて、当該試験車両Vに最も近い第1温度センサT1が検出した温度を、当該試験車両Vの周囲温度として取得するように構成されていても良い。
このような構成であれば、仮にソーク室S2が広大で場所によって温度にばらつきがある場合であっても、試験車両Vの正確な周囲温度を取得することができる。
【0041】
また、前記実施形態では、ビーコン送信機B1を試験車両Vに搭載するとともに、ビーコン受信機B2をソーク室S2や試験室S1に設けた場合を説明したが、ビーコン送信機B1をソーク室S2や試験室S1に設けるとともに、ビーコン受信機B2を試験車両Vに搭載しても良い。
【0042】
さらに、
図3に示すように、試験車両Vが駐車される例えば屋外の駐車場にも第3温度センサT3が設けられていても良い。
この場合、位置情報取得部33は、試験車両Vの位置情報をGPSから取得しても良い。
かかる構成において、記録部34としては、駐車場に駐車された試験車両Vの周囲温度を第3温度センサT3から取得して、当該周囲温度及び当該試験車両VのGPSから取得した位置情報を関連付けて記録しても良い。
このような構成であれば、室内における試験車両Vの周囲温度のみならず、屋外における試験車両Vの周囲温度をも、試験車両Vの温度トレーサビリティとして取得することができる。
【0043】
そのうえ、車両温度取得部32は、駐車場に駐車された試験車両Vから車両温度を取得しても良い。
この場合、位置情報取得部33は、試験車両Vの位置情報をGPSから取得しても良い。
かかる構成において、記録部34は、駐車場に駐車された試験車両Vの車両温度及び当該試験車両のGPSから取得した位置情報を関連付けて記録しても良い。
なお、この場合は、駐車場に
図3に示す第3温度センサT3が設けられている必要はない。
【0044】
加えて、車両管理装置30が、
図4に示すように、試験車両Vに搭載されたバッテリの残容量を取得する残容量取得部36を備えており、記録部34が、試験車両Vの周囲温度及び当該試験車両Vの位置情報に加えて、残容量取得部36が取得した残容量をさらに関連付けて記録するように構成されていても良い。
また、図示していないが、車両管理装置30が、排ガス分析装置20の分析結果を取得する分析結果取得部を備えており、記録部34が、試験車両Vの周囲温度及び当該試験車両Vの位置情報に加えて、分析結果取得部が取得した分析結果を関連付けて記録するように構成されていても良い。
このような構成であれば、試験車両Vの周囲温度のみならず、バッテリの残容量や排ガス計測結果等を含んだ広範囲なトレーサビリティを取得することができる。
【0045】
さらに加えて、前記実施形態の出力部35は、第1温度センサT1により検出された試験車両Vの周囲温度と、第2温度センサT2により検出された試験車両Vの車両温度とを比較可能に出力するものであっても良い。
また、車両管理装置30としては、試験車両Vの周囲温度と試験車両Vの車両温度とを比較して、これらの温度差が所定の閾値を越えた場合にそのことを報知する報知部としての機能をさらに備えていても良い。
このような構成であれば、例えばソーク室S2の温調管理の不具合等を知ることができる。
【0046】
また、本発明に係る車両管理装置30は、
図5に示すように、試験車両Vのタイヤの空気圧を記録するように構成されていても良い。
具体的には、
図5に示すように、例えば可搬型又は据え置き型のコンピュータCで試験車両Vに付されているバーコードやQRコード等を読み取ることで、当該試験車両Vの車両識別子を取得し、その車両識別子と、当該試験車両Vのタイヤの空気圧を測定した結果とを、互いに関連付けて車両管理装置30のメモリに記録する構成が挙げられる。
【0047】
例えば、タイヤの空気圧を記録する場合、空気圧センサS1等を用いて試験車両Vの前後左右のタイヤの空気圧を測定し、その測定結果を示す空気圧データをコンピュータCに無線通信等で送信する態様が挙げられる。
この時、コンピュータCのディスプレイには、例えば
図6に示す測定画面を表示させても良い。具体的には、試験車両を示す車両シンボルの前後左右には、前後左右のタイヤそれぞれの空気圧を測定するための測定開始ボタン(F-L、F-R、R-L、R-R)が表示されている。そして、測定対象のタイヤに対応する入力開始ボタンを押し、そのタイヤの空気圧を空気圧センサS1により測定すると、その測定値がコンピュータCに送信されるとともに、その測定値がコンピュータCのディスプレイにグラフ表示される。コンピュータCは、その測定値を空気圧データとして確定し、例えば測定開始ボタンの近傍に設定された測定結果表示領域に表示する。このようにして測定された各タイヤの空気圧データは、車両識別子と関連付けられて、車両管理装置30に出力されて管理される。具体的には、空気圧データと、試験車両Vの車両識別子とが車両管理装置30に出力され、記録部34が、それらを互いに関連付けてメモリの所定領域に記録する。なお、空気圧データ及び車両識別子とともに、空気圧の測定日時、及び空気圧を測定した際の試験車両Vの位置情報が関連付けられて管理されても良い。
【0048】
なお、上述した空気圧データを車両管理装置30で管理する方法としては、例えば可搬型のコンピュータCのディスプレイに表示させたバーコードやQRコード等を、車両管理装置30に備えさせた読み取り機器により読み取らせることで、各種データが車両管理装置30に出力されるようにする方法が挙げられる。ただし、例えば有線や無線等により各種データを車両管理装置30に出力する方法であっても構わない。
【0049】
さらに、本発明に係る車両管理装置30は、試験車両Vに充填された燃料に関する燃料情報を、試験車両Vの車両識別子と関連付けて管理しても良い。具体的には、燃料の種類及び/又は充填量を示す燃料情報と、試験車両Vの車両識別子とが車両管理装置30に出力され、記録部34が、それらを互いに関連付けてメモリの所定領域に記録する。なお、燃料情報及び車両識別子とともに、燃料の充填日時、及び試験車両Vの位置情報が関連付けられて管理されても良い。なお、燃料情報は、例えば燃料の充填設備や燃料の容器などに設けたバーコードやQRコード等を読み取ることで取得できるようにしても良い。
【0050】
また、試験車両Vが電気自動車或いはハイブリッド車である場合、車両管理装置30は、試験車両Vのバッテリの残容量(SOC:State Of Charge)を示す充電データを、試験車両Vの車両識別子と関連付けて管理しても良い。具体的には、充電データと車両識別子とが車両管理装置30に出力され、記録部34が、それらを互いに関連付けてメモリの所定領域に記録する。なお、充電データ及び車両識別子とともに、充電日時及び試験車両Vの位置情報が互いに関連付けられて管理されても良い。
【0051】
さらに、車両管理装置30は、試験車両Vの重量を示す車重データを、試験車両Vの車両識別子と関連付けて管理しても良い。具体的には、車重データと車両識別子とが車両管理装置30に出力され、記録部34が、それらを互いに関連付けてメモリの所定領域に記録する。なお、車重データ及び車両識別子とともに、車両重量の測定日時及び車両重量を測定した試験車両Vの位置情報が互いに関連付けられて管理されても良い。
【0052】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0053】
100・・・排ガス分析システム
V ・・・試験車両
S1 ・・・試験室
10 ・・・シャシダイナモメータ
20 ・・・排ガス分析装置
S2 ・・・ソーク室
T1 ・・・第1温度センサ
T2 ・・・第2温度センサ
B1 ・・・ビーコン送信機
B2 ・・・ビーコン受信機
30 ・・・車両管理装置
31 ・・・周囲温度取得部
32 ・・・車両温度取得部
33 ・・・位置情報取得部
34 ・・・記録部