(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】表面処理剤及び表面処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240301BHJP
C09K 3/18 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
H01L21/304 647A
C09K3/18 104
(21)【出願番号】P 2019221093
(22)【出願日】2019-12-06
【審査請求日】2022-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真
(72)【発明者】
【氏名】大川 夏実
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一生
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 江美
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-063179(JP,A)
【文献】特開2013-118347(JP,A)
【文献】特開2012-044065(JP,A)
【文献】特開2012-222329(JP,A)
【文献】特開2009-033089(JP,A)
【文献】特開2013-177537(JP,A)
【文献】特開2015-188087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304-21/308
H01L 21/02 -21/033
H01L 21/768
C09K 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンを有する半導体基板の表面を処理するために用いる表面処理剤であって、
シリル化剤(A)と、溶剤(S)とを含有し、
前記シリル化剤(A)が、
下記一般式(A-1-1)で表される化合物を含む、表面処理剤。
【化1】
[式中、
Ra
1
及びRa
2
は、炭素原子数1~5の直鎖状のアルキル基である。]
【請求項2】
前記シリル化剤(A)は、N,N-(ジメチルシリル)ジメチルアミンである、請求項1に記載の表面処理剤。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の表面処理剤を用いて、被処理体の表面処理を行う、表面処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理剤及び表面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの高集積化及び微小化の傾向が高まり、基板上の無機パターンの微細化及び高アスペクト比化が進んでいる。しかし、その一方で、いわゆるパターン倒れの問題が生じるようになっている。このパターン倒れは、基板上に多数の無機パターンを並列させて形成する際、隣接するパターン同士がもたれ合うように近接し、場合によってはパターンが基部から折損したり、剥離したりする現象のことである。このようなパターン倒れが生じると、製品の歩留まり及び信頼性の低下を引き起こすことになる。
【0003】
このパターン倒れは、パターン形成後の洗浄処理において、洗浄液が乾燥する際、その洗浄液の表面張力により発生することが分かっている。つまり、乾燥過程で洗浄液が除去される際に、パターン間に洗浄液の表面張力に基づく応力が作用し、パターン倒れが生じることになる。
【0004】
このような背景から、特許文献1や特許文献2にあるような保護膜形成用薬液の適用が提案されている。これらの文献に記載の薬液によれば、凹凸パターンの表面を撥水化することができ、結果としてパターン倒れが抑制できるとされている。
【0005】
また、パターン倒れとは異なるが、エッチングマスクとなる樹脂パターンと基板との密着性を向上させて現像液による樹脂パターンの一部損失を防止するために、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)等のシリル化剤を用いて基板の表面を撥水化(シリル化)することが行われている(例えば、特許文献3の[発明の背景]を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-66785号公報
【文献】特開2012-033873号公報
【文献】特表平11-511900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
基板上の無機パターンの微細化及び高アスペクト比化がますます進み、洗浄・乾燥時のパターン倒れがより発生しやすくなってきている。これに対して、上述したような従来の表面処理剤で、パターン表面又は基板表面を撥水化処理しても、パターン倒れを十分に抑制できないことがある。
そのため、パターン倒れをより効果的に抑制できる表面処理剤が求められている。加えて、洗浄処理後には、該表面処理剤を除去する必要があるため、除去が容易である必要もある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、パターン倒れの抑制効果に優れ、かつ、被処理体からの除去性にも優れる表面処理剤及び表面処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
本発明の第1の態様は、シリル化剤(A)と、溶剤(S)とを含有し、前記シリル化剤(A)が、下記一般式(A-1)で表される化合物(A1)を含む、表面処理剤である。
【0009】
【化1】
[式中、Ra
1は、炭素原子数1~10の1価の有機基又は水素原子である。Ra
2は、炭素原子数1~10の1価の有機基である。Ra
1及びRa
2は、互いに結合して環を形成してもよい。但し、Ra
1及びRa
2における、式中の窒素原子と結合する原子において、Si原子は除かれる。Ra
3は、フッ素原子で置換されていてもよい炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基、又は水素原子である。Ra
4は、フッ素原子で置換されていてもよい炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基である。]
【0010】
本発明の第2の態様は、前記第1の態様に係る表面処理剤を用いて、被処理体の表面処理を行う、表面処理方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、パターン倒れの抑制効果が高く、かつ、被処理体からの除去性にも優れる表面処理剤及び表面処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(表面処理剤)
本実施形態の表面処理剤は、シリル化剤(A)と、溶剤(S)とを含有する。
本実施形態の表面処理剤は、例えば、パターンを有する半導体基板の表面を処理するために用いられる。
【0013】
<シリル化剤(A)>
シリル化剤(A)(以下「(A)成分」ともいう)は、被処理体(例えば、半導体基板)の表面をシリル化し、被処理体(例えば、半導体基板)の表面の撥水性を高くするための成分である。
本実施形態の表面処理剤におけるシリル化剤(A)は、下記一般式(A-1)で表される化合物(A1)(以下「(A1)成分」ともいう)を含む。
【0014】
≪化合物(A1)≫
化合物(A1)は、下記一般式(A-1)で表される化合物である。
【0015】
【化2】
[式中、Ra
1は、炭素原子数1~10の1価の有機基又は水素原子である。Ra
2は、炭素原子数1~10の1価の有機基である。Ra
1及びRa
2は、互いに結合して環を形成してもよい。但し、Ra
1及びRa
2における、式中の窒素原子と結合する原子において、Si原子は除かれる。Ra
3は、フッ素原子で置換されていてもよい炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基、又は水素原子である。Ra
4は、フッ素原子で置換されていてもよい炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基である。]
【0016】
上記式(A-1)中、Ra1は、炭素原子数1~10の1価の有機基又は水素原子である。炭素原子数1~10の1価の有機基としては、置換基を有してもよい1価の炭化水素基が挙げられる。なお、「置換基を有してもよい」とは、水素原子(-H)を1価の基で置換する場合と、メチレン基(-CH2-)を2価の基で置換する場合との両方を含む。
該1価の置換基としては、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、スルホ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。
該2価の置換基としては、-O-、-C(=O)-O-、-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-NH-、-NH-、-CH=N-、-CH=N-CH=、-NH-C(=NH)-、-S-、-S(=O)2-、-S(=O)2-O-等が挙げられる。なお、該2価の置換基におけるHは、アルキル基、アシル基等の置換基で置換されていてもよい。
【0017】
該1価の炭化水素基としては、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基、又は環状の炭化水素基が挙げられる。
【0018】
該直鎖状のアルキル基は、炭素原子数が1~5であることが好ましく、炭素原子数が1~4がより好ましく、炭素原子数が1または2がさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基またはn-ブチル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
【0019】
該分岐鎖状のアルキル基は、炭素原子数が3~8であることが好ましく、炭素原子数が3~5がより好ましい。具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、2,2-ジメチルブチル基等が挙げられ、イソプロピル基であることが好ましい。
【0020】
該直鎖状のアルケニル基は、炭素原子数が2~10であることが好ましく、炭素原子数が2~5がより好ましく、炭素原子数が2~4がさらに好ましい。具体的には、ビニル基、プロペニル基(アリル基)、ブチニル基等が挙げられる。
該分岐鎖状のアルケニル基として、具体的には、1-メチルビニル基、1-メチルプロペニル基、2-メチルプロペニル基等が挙げられる。
【0021】
該環状の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基でも芳香族炭化水素基でもよく、また、多環式基でも単環式基でもよい。
単環式基である脂肪族炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素原子数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
多環式基である脂肪族炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素原子数7~10のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン等が挙げられる。
【0022】
該芳香族炭化水素基は、芳香環を少なくとも1つ有する炭化水素基である。
この芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、具体的には、ベンゼン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
該芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基またはヘテロアリール基);2以上の芳香環を含む芳香族化合物(例えば、チオフェン等)から水素原子を1つ除いた基;前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(例えば、ベンジル基等のアリールアルキル基など)等が挙げられる。前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環に結合するアルキレン基の炭素原子数は、1~4であることが好ましく、炭素原子数1~2であることがより好ましく、炭素原子数1であることが特に好ましい。
【0023】
上記式(A-1)中、Ra2は、炭素原子数1~10の1価の有機基である。該1価の有機基としては、上記Ra1と同様のものが挙げられる。
【0024】
Ra1が、炭素原子数1~10の1価の有機基である場合、該有機基において、式(A-1)中の窒素原子と結合する原子は、ヘテロ原子であってもよいが、Si原子が結合する場合はない。Ra2においても同様である。
【0025】
Ra1及びRa2は、互いに結合して環を形成してもよい。Ra1及びRa2が互いに結合して形成する環として、具体的には、下記環構造が挙げられる。*は、上記式(A-1)中のSi原子との結合手を示す。
【0026】
【0027】
上記式(A-1)中、Ra1は、上記の中でも、炭素原子数1~10の1価の有機基であることが好ましい。すなわち、上記式(A-1)中、Ra1及びRa2はいずれも、炭素原子数1~10の1価の有機基であることが好ましい。該1価の有機基としては、炭素原子数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であることがより好ましく、炭素原子数1~10の直鎖状のアルキル基であることがさらに好ましい。
該直鎖状のアルキル基としては、炭素原子数が1~5であることが好ましく、炭素原子数が1~4がより好ましく、炭素原子数が1または2がさらに好ましい。具体的には、メチル基又はエチル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0028】
上記式(A-1)中、Ra3は、フッ素原子で置換されていてもよい炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基、又は水素原子である。
フッ素原子で置換されていてもよい炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基において、フッ素原子の数は特に限定されず、該脂肪族炭化水素基における水素原子が全てフッ素原子で置換されていてもよい。その中でも、フッ素原子の数は0~2が好ましく、該脂肪族炭化水素基における水素原子はフッ素原子で置換されていないことがより好ましい。
【0029】
Ra3における炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基として、具体的には、上記Ra1における直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基で例示したものの中で、炭素原子数が1~4であるもの等が挙げられる。
【0030】
上記式(A-1)中、Ra4は、フッ素原子で置換されていてもよい炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基である。Ra4として、具体的には、上記Ra3におけるフッ素原子で置換されていてもよい炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
【0031】
上記式(A-1)中、Ra3は、上記の中でも、フッ素原子で置換されていてもよい炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。すなわち、上記式(A-1)中、Ra3及びRa4は、いずれもフッ素原子で置換されていてもよい炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、いずれも炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基であることがより好ましく、いずれも炭素原子数1~4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であることがさらに好ましく、いずれも炭素原子数1~4の直鎖状のアルキル基であることが特に好ましい。
該直鎖状のアルキル基としては、炭素原子数が1または2が好ましく、具体的には、メチル基又はエチル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0032】
(A1)成分は、上記の中でも、下記一般式(A-1-1)で表される化合物であることが好ましい。
【0033】
【化4】
[式中、Ra
1は、炭素原子数1~10の1価の有機基又は水素原子である。Ra
2は、炭素原子数1~10の1価の有機基である。Ra
1及びRa
2は、互いに結合して環を形成してもよい。但し、Ra
1及びRa
2における、式中の窒素原子と結合する原子において、Si原子は除かれる。]
【0034】
上記式(A-1-1)中、Ra1及びRa2は、上述した式(A-1)中のRa1及びRa2と同一である。
【0035】
(A1)成分の好適な具体例としては、N,N-(ジメチルシリル)ジメチルアミン、N,N-(ジメチルシリル)ジエチルアミン、N,N-(ジメチルシリル)イミダゾール、N,N-(ジメチルシリル)トリアゾール、N,N-(ジメチルシリル)アジリジン、N,N-(ジメチルシリル)オキサジリジン、N,N-(ジメチルシリル)モルホリンが挙げられ、その中でも、N,N-(ジメチルシリル)ジメチルアミン又はN,N-(ジメチルシリル)ジエチルアミンが好ましく、N,N-(ジメチルシリル)ジメチルアミンがより好ましい。
【0036】
本実施形態の表面処理剤における(A1)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
本実施形態の表面処理剤における(A1)成分の含有量の下限値としては、表面処理剤全量に対して、0.1~50質量%が好ましく、0.5~30質量%がより好ましく、1.0~20質量%がさらに好ましく、5.0~10質量%が特に好ましい。
(A1)成分の含有量が、上記の好ましい下限値以上であれば、被処理体の表面の撥水性をより向上させることができる。
一方で、(A)成分の含有量が上記の好ましい上限値以下であれば、取扱い性に一段と優れる表面処理剤を得やすくなる。
【0038】
本実施形態の表面処理剤における(A1)成分のモル濃度は、0.01~5.0Mが好ましく、0.1~1.0Mがより好ましい。
(A1)成分のモル濃度が、上記好ましい下限値以上であれば、被処理体の表面の撥水性をより向上させることができる。
(A1)成分のモル濃度が、上記の好ましい上限値以下であれば、取扱い性に一段と優れる表面処理剤を得やすくなる。
【0039】
本実施形態の表面処理剤におけるシリル化剤(A)は、上述した(A1)成分以外のシリル化剤(A2)(以下、「(A2)成分」ともいう)を含有していてもよい。
【0040】
・(A1)成分以外のシリル化剤(A2)
(A2)成分としては、特に限定されず、上述した(A1)成分以外の従来公知のあらゆるシリル化剤を用いることができる。例えば下記一般式(1)~(3)でそれぞれ表されるシリル化剤を用いることができる。なお、下記一般式(1)~(3)において、アルキル基は炭素数1~5であり、シクロアルキル基は炭素数5~10であり、アルコキシ基は炭素数1~5であり、ヘテロシクロアルキル基は炭素数5~10である。
【0041】
【化5】
[式(1)中、R
1は水素原子、又は飽和若しくは不飽和アルキル基を示し、R
2は飽和若しくは不飽和アルキル基、飽和若しくは不飽和シクロアルキル基、又は飽和若しくは不飽和ヘテロシクロアルキル基を示す。R
1及びR
2は互いに結合して窒素原子を有する飽和又は不飽和ヘテロシクロアルキル基を形成してもよい。]
【0042】
【化6】
[式(2)中、R
3は水素原子、メチル基、トリメチルシリル基、又はジメチルシリル基を示し、R
4,R
5はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、又はビニル基を示す。]
【0043】
【化7】
[式(3)中、XはO、CHR
7、CHOR
7、CR
7R
7、又はNR
8を示し、R
6,R
7はそれぞれ独立に水素原子、飽和若しくは不飽和アルキル基、飽和若しくは不飽和シクロアルキル基、トリアルキルシリル基、トリアルキルシロキシ基、アルコキシ基、フェニル基、フェネチル基、又はアセチル基を示し、R
8は水素原子、アルキル基、又はトリアルキルシリル基を示す。]
【0044】
上記式(1)で表されるシリル化剤としては、N,N-ジメチルアミノトリメチルシラン(TMSDMA)、N,N-ジエチルアミノトリメチルシラン、t-ブチルアミノトリメチルシラン、アリルアミノトリメチルシラン、トリメチルシリルアセタミド、トリメチルシリルピペリジン、トリメチルシリルイミダゾール、トリメチルシリルモルホリン、3-トリメチルシリル-2-オキサゾリジノン、トリメチルシリルピラゾール、トリメチルシリルピロリジン、2-トリメチルシリル-1,2,3-トリアゾール、1-トリメチルシリル-1,2,4-トリアゾール等が挙げられる。
【0045】
上記式(2)で表されるシリル化剤としては、テトラメチルジシラザン(TMDS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、N-メチルヘキサメチルジシラザン、1,2-ジ-N-オクチルテトラメチルジシラザン、1,2-ジビニルテトラメチルジシラザン、ヘプタメチルジシラザン、ノナメチルトリシラザン、トリス(ジメチルシリル)アミン等が挙げられる。
【0046】
また、上記式(3)で表されるシリル化剤としては、トリメチルシリルアセテート、トリメチルシリルプロピオネート、トリメチルシリルブチレート、トリメチルシリルオキシ-3-ペンテン-2-オン等が挙げられる。
【0047】
本実施形態の表面処理剤における(A2)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の表面処理剤における(A2)成分の含有量としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、例えば、0.001質量%以上30質量%以下が好ましく、0.1質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0048】
本実施形態の表面処理剤において、(A)成分中の(A1)成分の割合は、(A)成分の総含有量に対し、25質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、75質量%以上がさらに好ましく、100質量%であってもよい。
(A)成分中の(A1)成分の割合が25質量%以上であると、被処理体の表面の撥水性をより向上させることができ、かつ、表面処理剤の除去性もより向上させることができる。
【0049】
<溶剤(S)>
本実施形態の表面処理剤は、溶剤(S)(以下「(S)成分」ともいう)を含有する。(S)成分は、各成分を溶解・混合し、均一な溶液とするために用いられる。(S)成分は、各成分を溶解・混合できるものであればよく、表面処理剤の溶剤として一般的に用いられるものを特に制限なく使用することができる。
【0050】
(S)成分としては、例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、n-ウンデカン、n-ドデカン、n-トリデカン、n-テトラデカン、n-ペンタデカン、n-ヘキサデカン、n-ヘプタデカン、n-オクタデカン、n-ノナデカン、n-イコサン等の直鎖状飽和脂肪族炭化水素類;2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチルブタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、2,3-ジメチルペンタン、2,4-ジメチルペンタン、2,2,3-トリメチルペンタン、2,2,4-トリメチルペンタン、3,4-ジエチルヘキサン、2,6-ジメチルオクタン、3,3-ジメチルオクタン、3,5-ジメチルオクタン、4,4-ジメチルオクタン、3-エチル-3-メチルヘプタン、2-メチルノナン、3-メチルノナン、4-メチルノナン、5-メチルノナン、2-メチルウンデカン、3-メチルウンデカン、2,2,4,6,6-ペンタメチルヘプタン、2,2,4,4,6,8,8-ヘプタメチルノナン等の分岐鎖状飽和脂肪族炭化水素類;デカリン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、1,2-ジメチルシクロヘキサン、1,3-ジメチルシクロヘキサン、1,4-ジメチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン、イソプロピルシクロヘキサン、1,2-メチルエチルシクロヘキサン、1,3-メチルエチルシクロヘキサン、1,4-メチルエチルシクロヘキサン、1,2,3-トリメチルシクロヘキサン、1,2,4-トリメチルシクロヘキサン、1,3,5-トリメチルシクロヘキサン等の環状飽和脂肪族炭化水素類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ビス(2-ヒドロキシエチル)スルホン、テトラメチレンスルホン等のスルホン類;N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド等のアミド類;N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-プロピル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシメチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン等のラクタム類;1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジイソプロピル-2-イミダゾリジノン等のイミダゾリジノン類;ジメチルグリコール、ジメチルジグリコール、ジメチルトリグリコール、メチルエチルジグリコール、ジエチルグリコール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の他のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n-ペンチル、酢酸n-ヘキシル、酢酸n-ヘプチル、酢酸n-オクチル、蟻酸n-ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸n-ブチル、酪酸エチル、酪酸n-プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸n-ブチル、n-オクタン酸メチル、デカン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n-プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸エチル、アジピン酸ジメチル、プロピレングリコールジアセテート、炭酸プロピレン等の他のエステル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン等のケトン類;β-プロピロラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-ペンチロラクトン等のラクトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、1,3,5-トリメチルベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素類;p-メンタン、ジフェニルメンタン、リモネン、テルピネン、ボルナン、ノルボルナン、ピナン等のテルペン類などが挙げられる。
【0051】
本実施形態の表面処理剤が(S)成分の含有量は、表面処理剤全量に対して、50~99.9質量%であることが好ましく、70~98質量%であることがより好ましく、80~96質量%であることがさらに好ましい。
【0052】
<その他の成分>
本実施形態の表面処理剤は、本発明の効果を損なわない範囲において、上述の成分以外の、その他の成分を含有することができる。その他の成分としては、酸や塩基などのpH調整剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0053】
≪界面活性剤≫
界面活性剤としては、たとえば、フッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤が挙げられる。
【0054】
フッ素系界面活性剤として、具体例には、BM-1000、BM-1100(いずれもBMケミー社製)、メガファックF142D、メガファックF172、メガファックF173、メガファックF183(いずれもDIC社製)、フロラードFC-135、フロラードFC-170C、フロラードFC-430、フロラードFC-431(いずれも住友スリーエム社製)、サーフロンS-112、サーフロンS-113、サーフロンS-131、サーフロンS-141、サーフロンS-145(いずれも旭硝子社製)、SH-28PA、SH-190、SH-193、SZ-6032、SF-8428(いずれも東レシリコーン社製)等の市販のフッ素系界面活性剤が挙げられる。
【0055】
シリコーン系界面活性剤として、具体例には、未変性シリコーン系界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、ポリエステル変性シリコーン系界面活性剤、アルキル変性シリコーン系界面活性剤、アラルキル変性シリコーン系界面活性剤、及び反応性シリコーン系界面活性剤等を好ましく用いることができる。
シリコーン系界面活性剤としては、市販のシリコーン系界面活性剤を用いることができる。市販のシリコーン系界面活性剤の具体例としては、ペインタッドM(東レ・ダウコーニング社製)、トピカK1000、トピカK2000、トピカK5000(いずれも高千穂産業社製)、XL-121(ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、クラリアント社製)、BYK-310(ポリエステル変性シリコーン系界面活性剤、ビックケミー社製)等が挙げられる。
【0056】
本実施形態の表面処理剤が界面活性剤を含有する場合、界面活性剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の表面処理剤における界面活性剤の含有量は、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、例えば、0.001質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0057】
以上説明した本実施形態の表面処理剤は、シリル化剤として、(A1)成分を含むため、被処理体の表面の撥水性をより向上させることができ、パターン倒れの抑制効果をより向上させることができる。加えて、(A1)成分は加熱により除去が容易であるため、本実施形態の表面処理剤は、被処理体からの除去性にも優れる。
本実施形態の表面処理剤は、パターンを有する半導体基板の表面を処理するために用いるのに有用な表面処理剤である。
【0058】
(表面処理方法)
本実施形態に係る表面処理方法は、上記表面処理剤を用いて、被処理体の表面処理を行う表面処理方法である。
表面処理の目的の代表的な例としては、被処理体に形成された無機パターンの表面を撥水化し、洗浄処理におけるパターン倒れを防止することが挙げられる。
【0059】
本実施形態に係る表面処理方法は、被処理体の表面を撥水化(シリル化)する撥水化処理工程を有する。
【0060】
<撥水化処理工程>
本実施形態における撥水化処理工程としては、上述した表面処理剤を被処理体の表面に付与する方法が挙げられる。
被処理体の表面に表面処理剤を付与する方法としては、スプレー法、スピンコート法、浸漬法等が例示される。被処理体の表面に表面処理剤を付与する時間は特に限定されず、例えば、1秒から5分が例示される。
【0061】
被処理体の表面の撥水性については、表面処理後には、水の被処理体の表面に対する接触角が40~120°となることが好ましく、70~110°となることがより好ましく、90~110°となることがさらに好ましい。
【0062】
撥水化処理工程に用いられる装置としては、被処理体に対して表面処理剤を付与し得る装置であれば特に限定されない。このような装置としては、被処理体に対して、スプレー法、スピンコート法、浸漬法等により表面処理剤を付与し得る装置が例示される。
【0063】
表面処理の対象となる「被処理体」としては、半導体デバイス作製のために使用される基板が例示され、例えば、ケイ素(Si)基板、窒化ケイ素(SiN)基板、シリコン酸化膜(Ox)基板、炭化ケイ素(SiC)基板、タングステン(W)基板、炭化タングステン(WC)基板、コバルト(Co)基板、窒化チタン(TiN)基板、窒化タンタル(TaN)基板、ゲルマニウム(Ge)基板、シリコンゲルマニウム(SiGe)基板、アルミニウム(Al)基板、ニッケル(Ni)基板、チタン(Ti)基板、ルテニウム(Ru)基板、銅(Cu)基板等が挙げられる。
ケイ素(Si)基板を例にとって説明すると、自然酸化膜、熱酸化膜及び気相合成膜(CVD膜など)等の酸化ケイ素膜が表面に形成されたものであってもよく、前記酸化ケイ素膜にパターンが形成されたものであってもよい。
【0064】
「表面」とは、基板自体の表面のほか、基板上に設けられた無機パターンの表面、並びにパターン化されていない無機層の表面が挙げられる。
【0065】
基板上に設けられた無機パターンとしては、フォトレジスト法により基板に存在する無機層の表面にエッチングマスクを作製し、その後、エッチング処理することにより形成された無機パターンが例示される。無機層としては、基板自体のほか、基板を構成する元素の酸化物からなる層、基板の表面に形成した窒化珪素、窒化チタン、タングステン等の無機物からなる層等が例示される。このような無機層としては、特に限定されないが、半導体デバイスの製造過程において形成される無機層が例示される。
【0066】
前記パターンの形状は、特に限定されず、例えば半導体製造工程で一般的に形成されるパターン形状とすることができる。パターン形状は、ラインパターンであってもよく、ホールパターンであってもよく、複数のピラーを含むパターンであってもよい。パターン形状は、好ましくは、複数のピラーを含むパターンである。ピラーの形状は、特に限定されないが、例えば、円柱形状、多角柱形状(四角柱形状など)等が挙げられる。
【0067】
[任意工程]
本実施形態に係る表面処理方法は、上述した撥水化処理工程に加えて、洗浄工程、リンス工程、及び乾燥工程を有していてもよい。
例えば、本実施形態に係る表面処理方法の一実施形態としては、被処理体の表面を洗浄する洗浄工程と、前記洗浄された被処理体を上述した表面処理剤によって、撥水化(シリル化)する撥水化処理工程と、前記撥水化された被処理体の表面をリンス液でリンスするリンス工程と、前記リンスされた被処理体を乾燥する乾燥工程とを有する、表面処理方法である。
【0068】
≪洗浄工程≫
洗浄工程は、被処理体の表面を予め洗浄する工程である。
洗浄方法は、特に限定されず、例えば、半導体基板の洗浄方法として、公知のRCA洗浄法等が挙げられる。このRCA洗浄法では、まず、半導体基板を過酸化水素と水酸化アンモニウムのSC-1溶液に浸漬して、半導体基板から微粒子及び有機物を除去する。次いで、半導体基板をフッ化水素水溶液に浸漬して、基板表面の自然酸化膜を除去する。その後、半導体基板を、過酸化水素と希塩酸のSC-2溶液の酸性溶液に浸漬して、SC-1溶液で不溶のアルカリイオンや金属不純物を除去する。
【0069】
≪リンス工程≫
リンス工程は、撥水化(シリル化)された被処理体の表面をリンス液でリンスする工程である。
【0070】
リンス工程では、撥水化(シリル化)された被処理体の表面を、後述するリンス液でリンスする。リンスの方法は、特に限定されず、半導体製造工程において、基板の洗浄に一般的に用いられる方法を採用することができる。そのような方法としては、例えば、被処理体をリンス液に浸漬する方法、被処理体にリンス液の蒸気を接触させる方法、被処理体をスピンさせながらリンス液を被処理体に供給する方法等が挙げられる。中でも、リンス方法としては、被処理体をスピンさせながらリンス液を被処理体に供給する方法が好ましい。前記方法において、スピンの回転速度としては、例えば、100rpm以上5000rpm以下が例示される。
【0071】
・リンス液
リンス工程に用いるリンス液としては、特に限定されず、半導体基板のリンス工程に一般的に用いられるものを使用することができる。リンス液としては、例えば、溶剤を含有するものが挙げられる。溶剤としては、上述した溶剤(S)と同様のものやイソプロピルアルコール、1-ヘキサノール等のアルコール系溶剤が挙げられる。
リンス液は、前記溶剤に代えて、又は溶剤とともに水を含有していてもよい。
リンス液は、公知の添加物等を含有していてもよい。公知の添加剤としては例えば、フッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤が挙げられる。該フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤としては、上述した表面処理剤で説明したフッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤と同様のものが挙げられる。
【0072】
≪乾燥工程≫
乾燥工程は、被処理体を乾燥させる工程である。乾燥工程を行うことにより、リンス工程後に被処理体に残留するリンス液を効率よく除去することができる。
【0073】
被処理体の乾燥方法は、特に限定されず、スピン乾燥、加熱乾燥、温風乾燥、真空乾燥等の公知の方法を用いることができる。例えば、不活性ガス(窒素ガスなど)ブロー下でのスピン乾燥が好適に例示される。
【0074】
以上説明した本実施形態の表面処理方法は、上述した実施形態の表面処理剤が用いられているため、パターン倒れの抑制効果に優れる。
本実施形態の表面処理方法は、パターンを有する半導体基板の表面を処理するために用いるのに有用な方法である。
【実施例】
【0075】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0076】
<表面処理剤の調製>
(実施例1、比較例1~3)
表1に示す各成分を混合して、各例の表面処理剤を調製した。なお、各例の表面処理剤における(A)成分のモル濃度が、0.62Mとなるように各例の表面処理剤を調製した。
【0077】
【0078】
表1中、各略号はそれぞれ以下の意味を有する。[ ]内の数値は配合量(質量%)である。
【0079】
(A1)-1:N,N-(ジメチルシリル)ジメチルアミン(DMSDMA)
(A2)-1:N,N-ジメチルアミノトリメチルシラン(TMSDMA)
(A2)-2:テトラメチルジシラザン(TMDS)
(A2)-3:ヘキサメチルジシラザン(HMDS)
(S)-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
【0080】
<表面処理方法1>
被処理体としては、表面の材質がSiO2である基板を用いた。該基板を0.5%フッ化水素水溶液で1分間洗浄した後、該基板を各例の表面処理剤にそれぞれ室温(25℃)で1分間浸漬した。そして、基板表面をイソプロピルアルコールでリンスし、窒素ブローにより乾燥させた。
【0081】
[撥水性の評価]
上記<表面処理方法1>により、表面処理された基板の表面にDropmaster700(協和界面科学社製)を用い、該基板の表面に純水液滴(2.0μL)を滴下し、滴下2秒後における水の上記基板表面に対する接触角を測定した。接触角が大きいほど撥水性が高いことを意味する。その結果を表2に示す。
【0082】
[除去性の評価]
上記[撥水性の評価]により評価した基板を300℃に加熱したホットプレート上で20分間加熱処理した。その後、Dropmaster700(協和界面科学社製)を用い、該基板の表面に純水液滴(2.0μL)を滴下し、滴下2秒後における接触角を測定した。該接触角と、上記[撥水性の評価]で測定した接触角との差を求め、以下の基準で各例の表面処理剤の上記基板からの除去性を評価した。その結果を表2に示す。
なお、比較例3の表面処理剤については、撥水性が非常に低いため、除去性の評価は行わなかった。
<評価基準>
〇:加熱処理により接触角が4°以上低下した
×:加熱処理による接触角の低下が4°未満であった
【0083】
<表面処理方法2>
被処理体としては、ピラー構造を有するシリコンパターンチップ(1cm×1cm)を用いた。該チップを各例の表面処理剤にそれぞれ室温(25℃)で1分間浸漬した。そして、該チップ表面をイソプロピルアルコールでリンスし、窒素ブローにより乾燥させた。
【0084】
[パターン倒れ抑制性の評価]
上記<表面処理方法2>により、表面処理されたチップの表面をSEMで観察し、該チップのパターン倒れの発生率を算出し、以下の基準でパターン倒れの抑制性を評価した。その結果を表2に示す。
なお、上記チップを各例の表面処理剤で表面処理せず、該チップ表面をイソプロピルアルコールでリンスし、窒素ブローにより乾燥させた場合の該チップのパターン倒れの発生率は100%であった。
<評価基準>
〇:パターン倒れの発生率が10%未満
×:パターン倒れの発生率が10%以上
【0085】
【0086】
表2に示す結果から、実施例の表面処理剤は、比較例の表面処理剤と比較して、水の接触角が大きく、撥水性が高いことが確認できる。また、実施例の表面処理剤は、比較例の表面処理剤と比較して、加熱処理後の水の接触角の変化量が大きく、除去性にも優れることが確認できる。加えて、実施例の表面処理剤で表面処理した上記チップは、リンス及び乾燥後のパターン倒れの発生率が10%未満であり、パターン倒れの抑制性にも優れることが確認できる。