(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】ウェーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20240301BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20240301BHJP
【FI】
H01L21/78 B
H01L21/78 S
H01L21/78 Q
B23K26/53
(21)【出願番号】P 2020070597
(22)【出願日】2020-04-09
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏行
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-156973(JP,A)
【文献】特開2014-192215(JP,A)
【文献】特開2010-177430(JP,A)
【文献】特表2003-505868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B23K 26/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の分割予定ラインに区画された各領域にデバイスが形成されたウェーハの加工方法であって、
シリコンウェーハを透過する波長を有するレーザービームをシリコンウェーハの内部に集光点を位置付けた状態でシリコンウェーハに照射し、該分割予定ラインに沿った改質層をシリコンウェーハの内部に形成する、改質層形成ステップと、
該改質層形成ステップ実施後、シリコンウェーハの裏面側を研削し、該改質層から進展させた亀裂を少なくともシリコンウェーハの裏面に到達させる裏面加工ステップと、
該裏面加工ステップ実施後、搬送パッドでシリコンウェーハの裏面を直接吸引保持し、プラズマ処理チャンバーへ搬送する搬送ステップと、
該搬送ステップを実施後、該プラズマ処理チャンバー中でプラズマ化したフルオロカーボンガスをシリコンウェーハの裏面に供給し、シリコンウェーハの裏面にフルオロカーボン膜をマスクとして形成する
とともに、該マスクの該亀裂上の位置に該亀裂を露出させる隙間を生じさせるマスク形成ステップと、
該マスク形成ステップ実施後、該プラズマ処理チャンバーの外部でプラズマ化したエッチングガスを
該プラズマ処理チャンバー内のシリコンウェーハの裏面に供給し、該亀裂に対応する該マスクの隙間から該エッチングガスを侵入させ、該亀裂が形成された領域及び該改質層を除去するリモートプラズマエッチングステップと、
該リモートプラズマエッチングステップ実施後、シリコンウェーハの裏面に形成された該マスクをアッシングで除去するマスク除去ステップと、
を備えるウェーハの加工方法。
【請求項2】
該マスクの厚さは、該亀裂の幅の半分以下である請求項1に記載のウェーハの加工方法。
【請求項3】
該マスク形成ステップ実施前に、該プラズマ処理チャンバーの内部でプラズマ化したエッチングガスをシリコンウェーハの裏面に供給し、シリコンウェーハの裏面に形成された該裏面加工ステップでの加工歪みを除去する歪み除去ステップを備える請求項1に記載のウェーハの加工方法。
【請求項4】
該裏面加工ステップでは、シリコンウェーハの裏面を研削の後、シリコンウェーハの裏面を研磨する請求項1、請求項2又は請求項3に記載のウェーハの加工方法。
【請求項5】
該リモートプラズマエッチングステップでは、プラズマ化したSF
6ガスを供給する請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4に記載のウェーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハの加工方法、特に、SDBG加工に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハから半導体デバイスチップを製造する方法として、例えば、レーザー加工及び研削加工によりウェーハを分割するSDBG(Stealth Dicing Before Grinding)が知られている。SDBGでは、ウェーハに透過される波長を有するレーザービームの集光点をウェーハの内部に位置付けた状態で、ウェーハの分割予定ライン(ストリート)に沿ってレーザービームを照射する。その後、ウェーハの裏面を研削して、薄化しつつ改質層を分割起点にウェーハをチップに分割する。
【0003】
この加工で形成されるチップは、切削加工に比べ、分割予定ラインの幅が狭くてもすむため、チップの取れ量が多く、裏面チッピングが無いのでチップの抗折強度が高くなる。しかしながら、さらなる抗折強度の向上を目的として、裏面の研削痕の除去のために研磨を実施したり、改質層のプラズマエッチングによる除去が考案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、機械加工後のウェーハをプラズマ処理装置のチャンバー内に搬送する過程で、ウェーハの裏面側に、厚さに面内ばらつきがある自然酸化膜が形成されることがある。厚さに面内ばらつきがある自然酸化膜が形成された裏面側に対してリモートプラズマエッチングを施すと、裏面側に微小なピット、荒れ等が形成されることにより、チップの裏面側も外観が乱反射により白濁する場合がある。更には、微小なピット、荒れ等により、チップの抗折強度が低下する場合がある。
【0006】
微小なピット等が形成される原因として、エッチングレートの差異が考えられる。例えば、ウェーハが主としてシリコンで形成されている場合に、フッ素系ガスを用いたリモートプラズマエッチングでは、シリコン酸化膜のエッチングレートは、シリコンウェーハのエッチングレートに比べて、30倍から100倍程度低い。それゆえ、自然酸化膜が薄い箇所では、ピットが形成されやすくなる。
【0007】
厚さに面内ばらつきがある自然酸化膜は、特に、バキューム方式の搬送パッド部(即ち、吸着パッド)をウェーハに接触させた状態でウェーハを搬送する場合に形成されやすい。加えて、この場合、微細な異物がウェーハに付着しやすい。それゆえ、搬送パッド部をウェーハに接触させる場合には、厚さに面内ばらつきがある自然酸化膜が生じ、リモートプラズマエッチングを施すと、自然酸化膜とウェーハの母材とのエッチングレートの差により、特に、微小なピット、荒れ等が形成されやすいので、白濁と抗折強度低下との問題が顕著になる。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、白濁発生と抗折強度低下を抑制することができるウェーハの加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のウェーハの加工方法は、表面の分割予定ラインに区画された各領域にデバイスが形成されたウェーハの加工方法であって、シリコンウェーハを透過する波長を有するレーザービームをシリコンウェーハの内部に集光点を位置付けた状態でシリコンウェーハに照射し、該分割予定ラインに沿った改質層をシリコンウェーハの内部に形成する、改質層形成ステップと、該改質層形成ステップ実施後、シリコンウェーハの裏面側を研削し、該改質層から進展させた亀裂を少なくともシリコンウェーハの裏面に到達させる裏面加工ステップと、該裏面加工ステップ実施後、搬送パッドでシリコンウェーハの裏面を直接吸引保持し、プラズマ処理チャンバーへ搬送する搬送ステップと、該搬送ステップを実施後、該プラズマ処理チャンバー中でプラズマ化したフルオロカーボンガスをシリコンウェーハの裏面に供給し、シリコンウェーハの裏面にフルオロカーボン膜をマスクとして形成するとともに、該マスクの該亀裂上の位置に該亀裂を露出させる隙間を生じさせるマスク形成ステップと、該マスク形成ステップ実施後、該プラズマ処理チャンバーの外部でプラズマ化したエッチングガスを該プラズマ処理チャンバー内のシリコンウェーハの裏面に供給し、該亀裂に対応する該マスクの隙間から該エッチングガスを侵入させ、該亀裂が形成された領域及び該改質層を除去するリモートプラズマエッチングステップと、該リモートプラズマエッチングステップ実施後、シリコンウェーハの裏面に形成された該マスクをアッシングで除去するマスク除去ステップと、を備えることを特徴とする。
【0010】
前記ウェーハの加工方法において、該マスクの厚さは、該亀裂の幅の半分以下でも良い。
【0011】
前記ウェーハの加工方法において、該マスク形成ステップ実施前に、該プラズマ処理チャンバーの内部でプラズマ化したエッチングガスをシリコンウェーハの裏面に供給し、シリコンウェーハの裏面に形成された該裏面加工ステップでの加工歪みを除去する歪み除去ステップを備えても良い。
【0012】
前記ウェーハの加工方法において、該裏面加工ステップでは、シリコンウェーハの裏面を研削の後、シリコンウェーハの裏面を研磨しても良い。
【0013】
前記ウェーハの加工方法において、該リモートプラズマエッチングステップでは、プラズマ化したSF6ガスを供給しても良い。
【発明の効果】
【0014】
本願発明のウェーハの加工方法は、白濁と抗折強度低下を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るウェーハの加工方法の加工対象のウェーハの一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係るウェーハの加工方法の流れを示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、
図2に示されたウェーハの加工方法の改質層形成ステップにおいてウェーハの表面側をチャックテーブルに吸引保持した状態を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図2に示されたウェーハの加工方法の改質層形成ステップを一部断面で示す側面図である。
【
図5】
図5は、
図4に示されたウェーハの要部の断面図である。
【
図6】
図6は、
図2に示されたウェーハの加工方法の研削ステップを一部断面で示す側面図である。
【
図7】
図7は、
図2に示されたウェーハの加工方法の研削ステップ後のウェーハの要部の断面図である。
【
図8】
図8は、
図2に示されたウェーハの加工方法の洗浄ステップを一部断面で示す側面図である。
【
図9】
図9は、
図2に示されたウェーハの加工方法の搬送ステップにおいてスピンナーテーブル上のウェーハを搬送ユニットが保持した状態を一部断面で示す側面図である。
【
図10】
図10は、
図2に示されたウェーハの加工方法の搬送ステップにおいて搬送ユニットがウェーハをプラズマ処理チャンバー内に搬入した状態を一部断面で示す側面図である。
【
図11】
図11は、
図2に示されたウェーハの加工方法の搬送ステップ後のウェーハの要部の断面図である。
【
図12】
図12は、
図2に示されたウェーハの加工方法のマスク形成ステップを示す断面図である。
【
図13】
図13は、
図2に示されたウェーハの加工方法のマスク形成ステップ中のウェーハの要部の断面図である。
【
図14】
図14は、
図2に示されたウェーハの加工方法のリモートプラズマエッチングステップを示す断面図である。
【
図15】
図15は、
図2に示されたウェーハの加工方法のリモートプラズマエッチングステップ中のウェーハの要部の断面図である。
【
図16】
図16は、
図2に示されたウェーハの加工方法のマスク除去ステップ中のウェーハの要部の断面図である。
【
図17】
図17は、実施形態2に係るウェーハの加工方法の流れを示すフローチャートである。
【
図18】
図18は、
図17に示されたウェーハの加工方法の歪み除去ステップ中のウェーハの要部を示す断面図である。
【
図19】
図19は、実施形態1及び実施形態2の変形例に係るウェーハの加工方法の裏面加工ステップの裏面を研磨する状態を一部断面で示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0017】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係るウェーハの加工方法を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係るウェーハの加工方法の加工対象のウェーハの一例を示す斜視図である。
図2は、実施形態1に係るウェーハの加工方法の流れを示すフローチャートである。
【0018】
実施形態1に係るウェーハの加工方法は、
図1に示すウェーハ1の加工方法である。ウェーハ1は、シリコン、サファイア、又はガリウムヒ素などを半導体基板2とする円板状の半導体ウェーハや光デバイスウェーハ等のウェーハである。なお、実施形態1では、半導体基板2は、シリコンにより構成されて、ウェーハ1は、シリコンウェーハである。ウェーハ1は、
図1に示すように、半導体基板2の表面3の分割予定ライン4に区画された各領域にデバイス5が形成されている。
【0019】
デバイス5は、例えば、IC(Integrated Circuit)、又はLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、CCD(Charge Coupled Device)、又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサである。
【0020】
実施形態1に係るウェーハの加工方法は、ウェーハ1を薄化するとともに、分割予定ライン4に沿って個々のデバイスチップ6に分割する方法である。なお、デバイスチップ6は、半導体基板2の一部と、半導体基板2の表面3に形成されたデバイス5とにより構成される。なお、
図1は、半導体基板2の表面3の裏側の裏面7側を上方に向けて、ウェーハ1を示している。ウェーハの加工方法は、
図2に示すように、改質層形成ステップ1001と、裏面加工ステップ1002と、洗浄ステップ1003と、搬送ステップ1004と、マスク形成ステップ1005と、リモートプラズマエッチングステップ1006と、マスク除去ステップ1007とを備える。
【0021】
(改質層形成ステップ)
図3は、
図2に示されたウェーハの加工方法の改質層形成ステップにおいてウェーハの表面側をチャックテーブルに吸引保持した状態を示す斜視図である。
図4は、
図2に示されたウェーハの加工方法の改質層形成ステップを一部断面で示す側面図である。
図5は、
図4に示されたウェーハの要部の断面図である。改質層形成ステップ1001は、ウェーハ1の半導体基板2を透過する波長(実施形態では、1300nm~1064nm)を有するレーザービーム34を、ウェーハ1の半導体基板2の内部に集光点34-1を位置付けた状態でウェーハ1に裏面7側から分割予定ライン4に沿って照射し、分割予定ライン4に沿った
図4に示す改質層8をウェーハ1の半導体基板2の内部に形成するステップである。
【0022】
なお、改質層8とは、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲のそれとは異なる状態になった領域のことを意味し、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域、及びこれらの領域が混在した領域等を例示できる。また、改質層8は、ウェーハ1の他の部分よりも機械的な強度等が低い。
【0023】
実施形態1において、改質層形成ステップ1001では、
図3及び
図4に示すように、ウェーハ1と同径の保護テープ20をウェーハ1の表面3に貼着する。実施形態1では、保護部材として保護テープ20を用いるが、本発明では、保護部材は、保護テープ20に限定されない。
【0024】
実施形態1において、改質層形成ステップ1001では、レーザー加工装置30が保護テープ20を介してウェーハ1の半導体基板2の表面3側をチャックテーブル31の保持面32に吸引保持する。改質層形成ステップ1001では、
図4及び
図5に示すように、レーザービーム照射ユニット33の集光点34-1を半導体基板2の内部に設定して、レーザー加工装置30が、チャックテーブル31とレーザービーム照射ユニット33とを分割予定ライン4に沿って相対的に移動させながらパルス状のレーザービーム34を分割予定ライン4に沿って照射する。
【0025】
実施形態1において、改質層形成ステップ1001では、レーザー加工装置30が、チャックテーブル31に吸引保持されたウェーハ1に対してレーザービーム照射ユニット33を
図4中に点線で示す位置から
図4中に実線で示す位置に向かうように、チャックテーブル31を移動させながらレーザービーム34を照射する。改質層形成ステップ1001では、レーザー加工装置30が、ウェーハ1に対して透過性を有する波長を有するレーザービーム34を照射するために、
図4及び
図5に示すように、半導体基板2の内部に分割予定ライン4に沿って改質層8を形成する。
【0026】
改質層形成ステップ1001では、全ての分割予定ライン4に沿って半導体基板2の内部に改質層8を形成すると、レーザービーム34の照射、チャックテーブル31の吸引保持を解除して、裏面加工ステップ1002に進む。
【0027】
(裏面加工ステップ)
図6は、
図2に示されたウェーハの加工方法の研削ステップを一部断面で示す側面図である。
図7は、
図2に示されたウェーハの加工方法の研削ステップ後のウェーハの要部の断面図である。裏面加工ステップ1002は、改質層形成ステップ1001実施後、ウェーハ1の裏面7側を研削し、改質層8から進展させた亀裂9-2を少なくともウェーハ1の裏面7に到達させるステップである。
【0028】
実施形態1において、裏面加工ステップ1002では、研削装置40が、チャックテーブル41の保持面42に保護テープ20を介してウェーハ1の半導体基板2の表面3側を吸引保持する。裏面加工ステップ1002では、
図6に示すように、スピンドル43により研削ホイール44を回転しかつチャックテーブル41を軸心回りに回転させ、研削液ノズル45から純水等の研削液46を供給しつつ、研削ホイール44の研削用砥石47をウェーハ1の半導体基板2の裏面7に当接させてチャックテーブル41に所定の送り速度で近づけて、研削用砥石47でウェーハ1の裏面7を研削して、ウェーハ1を薄化する。
【0029】
実施形態1において、裏面加工ステップ1002では、研削装置40が、研削用砥石47をウェーハ1の裏面7に当接させてチャックテーブル31に所定の送り速度で近づけて、研削用砥石47をウェーハ1の裏面7に向けて押圧することとなる。実施形態1において、裏面加工ステップ1002では、研削装置40が、研削ホイール44から作用する研削応力によって、
図7に示すように、改質層8を起点として亀裂9-1,9-2をウェーハ1の表面3及び裏面7に進展させて、改質層8を分割起点としてウェーハ1を分割予定ライン4に沿って個々のデバイスチップ6に分割する。実施形態1において、亀裂9-1,9-2の幅9-3は、0.1μm以上でかつ2.0μm以下である。
【0030】
なお、実施形態1において、裏面加工ステップ1002では、研削装置40が、改質層8から亀裂9-1,9-2を表面3と裏面7との双方に進展させたが、本発明では、これに限定されることなく、少なくとも亀裂9-2を裏面7に進展させれば良い。なお、実施形態1において、裏面加工ステップ1002では、研削装置40が、ウェーハ1を所定の厚さまで薄化すると、研削ホイール44をウェーハ1から退避させ、チャックテーブル41の吸引保持を解除して、洗浄ステップ1003に進む。また、実施形態1において、裏面加工ステップ1002後のウェーハ1は、
図7に示すように、半導体基板2の裏面7の表層に、凹凸やクラック等の結晶構造が歪んだ破砕層である歪み層10(加工歪みに相当)が形成されている。
【0031】
(洗浄ステップ1003)
図8は、
図2に示されたウェーハの加工方法の洗浄ステップを一部断面で示す側面図である。洗浄ステップ1003は、裏面加工ステップ1002実施後、ウェーハ1の裏面7側を洗浄するステップである。なお、
図8は、亀裂9-1,9-2を省略している。
【0032】
実施形態1において、洗浄ステップ1003では、洗浄装置50が、スピンナーテーブル51の保持面52に保護テープ20を介してウェーハ1の表面3側を吸引保持する。洗浄ステップ1003では、洗浄装置50が、スピンナーテーブル51を軸心回りに回転させた状態で、洗浄液供給ノズル53から純水である洗浄液54をウェーハ1の裏面7に向けて供給する。このとき、洗浄ステップ1003では、洗浄装置50が、洗浄液供給ノズル53を移動軌跡が円弧状となるように保持面52上を往復移動させながら洗浄液供給ノズル53から洗浄液54を供給する。
【0033】
実施形態1において、洗浄ステップ1003では、洗浄装置50が、洗浄液54を遠心力によりウェーハ1の裏面7側全体に広がるように、裏面7上を流して、裏面7側を洗浄する。これにより、実施形態1において、洗浄ステップ1003では、洗浄装置50が、裏面加工ステップ1002後に裏面7側に残留していた加工屑等を裏面7から除去する。実施形態1において、洗浄ステップ1003では、洗浄装置50が、所定時間、ウェーハ1の裏面7を洗浄すると、搬送ステップ1004に進む。なお、洗浄ステップ1003後のウェーハ1は、裏面7が洗浄液54により洗浄されているので、裏面7が酸化されやすい状態になっている。
【0034】
(搬送ステップ)
図9は、
図2に示されたウェーハの加工方法の搬送ステップにおいてスピンナーテーブル上のウェーハを搬送ユニットが保持した状態を一部断面で示す側面図である。
図10は、
図2に示されたウェーハの加工方法の搬送ステップにおいて搬送ユニットがウェーハをプラズマ処理チャンバー内に搬入した状態を一部断面で示す側面図である。
図11は、
図2に示されたウェーハの加工方法の搬送ステップ後のウェーハの要部の断面図である。
【0035】
搬送ステップ1004は、裏面加工ステップ1002及び洗浄ステップ1003実施後、搬送パッド62でウェーハ1の裏面7を直接吸引保持し、プラズマ処理チャンバー102へ搬送するステップである。実施形態1において、搬送ステップ1004では、搬送装置60が、スピンナーテーブル51上に搬送アーム61の搬送パッド62を移動させ、
図9に示すように、ウェーハ1の裏面7に搬送パッド62を接触させて、搬送パッド62に直接ウェーハ1の裏面7を吸引保持する。なお、搬送パッド62は、エジェクタ等の図示しない吸引源に接続された図示しない細孔を複数備える円盤状のポーラス材を備え、ポーラス材が吸引源により吸引されることで、ウェーハ1の裏面7を直接吸引保持する。
【0036】
実施形態1において、搬送ステップ1004では、プラズマ処理装置100が、
図10に示すように、ドア101でプラズマ処理チャンバー102の搬入出口103を開放し、搬送装置60が、搬送パッド62に吸引保持したウェーハ1をプラズマ処理チャンバー102内に搬入する。実施形態1において、搬送ステップ1004では、搬送装置60が、プラズマ処理チャンバー102内のテーブルベース104の保持面105にウェーハ1の表面3側を保護テープ20を介して載置し、搬送パッド62のウェーハ1の吸引保持を停止する。搬送ステップ1004では、搬送装置60が、搬送アーム61をプラズマ処理チャンバー102外に搬出して、マスク形成ステップ1005に進む。
【0037】
なお、搬送ステップ1004後のウェーハ1は、搬送装置60の搬送パッド62が裏面7を直接物理的に接触して吸引保持する際に、搬送パッド62の細孔を有するポーラス材が裏面7に接触した箇所と接触しない箇所が生じて、裏面7に厚さに面内ばらつきがある自然酸化膜11が形成される。更に、酸化物、金属等で形成され、大きさが1μm程度以下の微細な図示しない異物が裏面7側に付着する可能性もある。
【0038】
なお、異物の大きさが1μm以下とは、例えば、異物(即ち、粒子)の粒子径(即ち、長さ)が1μm以下であることを意味する。粒子径の表し方には、幾何学的径、相当径等の既知の手法がある。幾何学的径には、フェレー(Feret)径、定方向最大径(即ち、Krummbein径)、Martin径、ふるい径等があり、相当径には、投影面積円相当径(即ち、Heywood径)、等表面積球相当径、等体積球相当径、ストークス径、光散乱径等がある。
【0039】
なお、プラズマ処理チャンバー102内のテーブルベース104は、ウェーハ1が載置される保持面105を有する静電チャック106である。静電チャック106は、絶縁材料によって形成された円盤状の本体部と、本体部内に埋め込まれた複数の電極とを備える。複数の電極のそれぞれには、高電圧を発生可能な直流電源部が接続されている。
【0040】
実施形態1では、静電チャック106は、双極型静電チャックであり、正電位が供給される第1の電極と、負電位が供給される第2の電極とを有する。例えば、静電チャック106は、第1の電極には直流電源部から+3kVの高電圧が印加され、第2の電極には直流電源部から-3kVの高電圧が印加されることで、保持面105にウェーハ1を吸着保持する。なお、静電チャック106は、図示しない冷媒循環装置から所定の温度に制御された冷媒が供給されるための図示しない流路が形成され、所定の温度(例えば、35℃)に維持される。
【0041】
また、テーブルベース104は、静電チャック106の複数の電極とは電気的に分離された態様で、高周波電圧印加ユニット107から高周波電圧が印加されるバイアス用電極108が設けられている。高周波電圧印加ユニット107は、例えば、13.56MHzの高周波電圧をバイアス用電極108に印加可能な高周波電源107-1と、バイアス用電極108及び高周波電源107-1の間に設けられた直流カット用のブロッキングコンデンサ107-2とを含む。
【0042】
プラズマ処理チャンバー102は、テーブルベース104の上方に金属で形成されたプラズマ拡散部材109を設けている。プラズマ拡散部材109は、プラズマ処理チャンバー102の内を、上方側の第1領域102-1と、下方側の第2領域102-2とに区画するメッシュ状の領域を有している。メッシュ状の領域は、第1領域102-1と第2領域102-2とを空間的に接続する複数の貫通開口が形成されている。プラズマ拡散部材109は、例えば、第1領域102-1に供給されたプラズマ化(即ち、ラジカル化、イオン化等)されたガス又はプラズマ前のガスを分散させて、第2領域102-2へ供給する。
【0043】
また、プラズマ処理チャンバー102は、底部に排気筒110を介して排気ユニット111が接続された排気口112が設けられ、上部に導入筒113を介してガス供給ユニット114が接続されたガス導入口120が設けられている。排気ユニット111は、排気筒110に接続された電磁弁等の排気用バルブ111-1と、排気用バルブ111-1に接続された排気ポンプ111-2とを備え、排気用バルブ111-1が開き、排気ポンプ111-2が吸引することで、プラズマ処理チャンバー102内を減圧する。
【0044】
導入筒113は、マイクロ波が透過する材質(例えば、サファイア、水晶、セラミックス等)で形成されている。ガス供給ユニット114は、不活性ガス供給源115と、フッ素系ガス供給源116と、酸素ガス供給源117とを有する。
【0045】
不活性ガス供給源115は、第1バルブ118-1、図示しない第1の流量コントローラー等を介して、導入筒113に接続され、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、窒素(N2)等の不活性ガスを導入筒113を通して第1領域102-1へ供給する。不活性ガス供給源115がら供給される不活性ガスは、例えば、他のガスを運ぶためのキャリアガスとして利用されるとともに、放電を安定させる目的で利用されることもある。
【0046】
フッ素系ガス供給源116は、第2バルブ118-2、図示しない第2の流量コントローラー等を介して、導入筒113に接続され、六フッ化硫黄(SF6)、フルオロカーボンガスであるオクタフルオロシクロブタン(C4F8)等のフッ素系ガスを導入筒113を通して第1領域102-1へ供給する。フッ素系ガスは、例えば、ウェーハ1をエッチングするために使用されるガスである。なお、本発明では、フルオロカーボンガスは、他にも、C3F8、又はC5F10等でも良い。
【0047】
酸素ガス供給源117は、第3バルブ118-3、図示しない第3の流量コントローラー等を介して、導入筒113に接続され、酸素(O2)ガスを導入筒113を通して第1領域102-1へ供給する。酸素ガスは、例えば、ウェーハ1のエッチングレートを制御するために使用される。フッ素含有ガス分子が酸化される過程で、エッチングに寄与するフッ素原子の活性種(フッ素ラジカル、フッ素イオン等)が生成されることにより、ウェーハ1のエッチングレートが上昇する場合がある。
【0048】
ガス供給ユニット114は、第1、第2及び第3の流量コントローラーを調節することにより、複数の種類のガスを所定の流量で導入筒113を通して第1領域102-1へ供給する。なお、ガス供給源の数、ガスの種類、各ガスの流量は、ウェーハ1の種類等に応じて適宜変更できる。
【0049】
また、導入筒113には、金属等の導電性材料で形成された筐体を含むアプリケータ119が取り付けられている。アプリケータ119の筐体は、例えば、マグネトロン等の高周波発生源で発生したマイクロ波を導入筒113に照射するための導波管を含む。
【0050】
マイクロ波は、周波数が300MHz以上300GHz以下(例えば2.45GHz)
の電磁波である。アプリケータ119の導波管を介して導入筒113を流れる複数の種類のガスにマイクロ波を照射することで、ガス供給ユニット114から供給されるガスは、プラズマ化される。
【0051】
プラズマ化したガスは、ガス導入口120からプラズマ処理チャンバー102内の第1領域102-1へ供給され、更に、プラズマ拡散部材109を介して第2領域102-2へ供給される。テーブルベース104の保持面105にウェーハ1が吸着保持されている場合、ウェーハ1は、プラズマ処理チャンバー102の外部でプラズマ化したガスでエッチングされる(リモートプラズマエッチング)。
【0052】
但し、ガス供給ユニット114から供給されるガスにマイクロ波を照射しない(即ち、アプリケータ119がオフ状態である)場合、ガス導入口120からは、プラズマ化していないガスが処理空間の第1領域102-1へ供給される。この場合、バイアス用電極108に接続された高周波電圧印加ユニット107を動作させると、ガス導入口120から供給されたガスは、プラズマ処理チャンバー102内でプラズマ化される。テーブルベース104の保持面105にウェーハ1が吸着保持されている場合、ウェーハ1は、プラズマ処理チャンバー102内でプラズマ化したガスでエッチングされる(ダイレクトプラズマ)。
【0053】
(マスク形成ステップ)
図12は、
図2に示されたウェーハの加工方法のマスク形成ステップを示す断面図である。
図13は、
図2に示されたウェーハの加工方法のマスク形成ステップ中のウェーハの要部の断面図である。マスク形成ステップ1005は、搬送ステップ1004を実施後、プラズマ処理チャンバー102中でプラズマ化したフルオロカーボンガスであるC
4F
8ガスをウェーハ1の裏面7に供給し、ウェーハ1の裏面7にフルオロカーボン膜であるパッシベーション膜12をマスク13として形成するステップである。
【0054】
実施形態1において、マスク形成ステップ1005では、プラズマ処理装置100が、ドア101で搬入出口103を閉じ、静電チャック106の各電極に直流電源部から電圧を印加して、テーブルベース104の保持面105上にウェーハ1を吸着保持する。マスク形成ステップ1005では、プラズマ処理装置100が、排気ユニット111を動作して、プラズマ処理チャンバー102内を第1の所定の圧力まで減圧し、冷媒循環装置を動作して静電チャック106の流路に冷媒を循環させて、静電チャック106の異常昇温を抑制する。
【0055】
実施形態1において、マスク形成ステップ1005では、プラズマ処理装置100が、アプリケータ119からマイクロ波を照射することなく、第1バルブ118-1と第2バルブ118-2とを開いて、不活性ガス供給源115から不活性ガスをプラズマ処理チャンバー102内に供給するとともに、フッ素系ガス供給源116からフルオロカーボンガスであるC4F8ガスをプラズマ処理チャンバー102内に供給する。
【0056】
マスク形成ステップ1005では、プラズマ処理装置100が、高周波電圧印加ユニット107からバイアス用電極108に高周波電力を印加する。すると、第2領域102-2内のC
4F
8ガスに電場が印加され、プラズマ処理チャンバー102内の第2領域102-2内のC
4F
8ガスがプラズマ化される。プラズマ処理チャンバー102の第2領域102-2でプラズマ化した
図12及び
図13に示すC
4F
8ガス200は、ウェーハ1の裏面7全体に供給され、ウェーハ1の裏面7全体(即ち、自然酸化膜11上)に、パッシベーション膜12をマスク13として形成する。パッシベーション膜12は、ウェーハ1の半導体基板2を構成するシリコンよりもリモートプラズマエッチングステップ1006で用いられるプラズマ化したエッチングガスに対する耐性が高い(即ち、エッチングされにくい)。
【0057】
こうして、実施形態1において、マスク形成ステップ1005では、プラズマ処理チャンバー102内でプラズマ化したC4F8ガス200をウェーハ1の裏面7に供給する所謂ダイレクトプラズマで、ウェーハ1の裏面7全体にパッシベーション膜12を形成する。ダイレクトプラズマは、リモートプラズマエッチングよりもラジカルが低濃度なプラズマ化したガスを供給するので、実施形態1において、マスク形成ステップ1005では、プラズマ化したC4F8ガス200を前述した微小な幅の亀裂9-1,9-2内に侵入させることなく、ウェーハ1の裏面7全体にパッシベーション膜12を形成する。
【0058】
実施形態1において、マスク形成ステップ1005では、プラズマ処理装置100が、不活性ガス及びC4F8ガスをプラズマ処理チャンバー102内に供給し、高周波電圧印加ユニット107からバイアス用電極108に高周波電力を所定時間印加すると、不活性ガス及びC4F8ガスの供給を停止し、高周波電圧印加ユニット107からのバイアス用電極108への高周波電力の印加を停止して、リモートプラズマエッチングステップ1006に進む。
【0059】
なお、実施形態1において、マスク形成ステップ1005では、プラズマ処理装置100が、プラズマ処理チャンバー102内に供給する不活性ガス及びC4F8ガスの流量、ガスの種類、高周波電圧印加ユニット107からバイアス用電極108に印加する高周波電力の電力値は、パッシベーション膜12が亀裂9-2を塞ぐことが規制されるとともに、マスク13の厚さ13-1が亀裂9-2の幅9-3の半分以下となる値である。こうして、実施形態1において、マスク形成ステップ1005で形成されるマスク13の厚さ13-1は、亀裂9-2の幅9-3の半分以下であり、マスク13の亀裂9-2に対応する位置である亀裂9-2上の位置には、隙間14が生じている。
【0060】
また、実施形態1において、マスク形成ステップ1005では、プラズマ処理装置100が、パッシベーション膜12が亀裂9-2を塞ぐことが規制されるとともに、マスク13の厚さ13-1が亀裂9-2の幅9-3の半分以下となるように、ウェーハ1の裏面7にプラズマ化したC4F8ガス200を供給する。また、本発明では、マスク13の厚さ13-1は、亀裂9-2の幅9-3に応じて、又はリモートプラズマエッチングステップ1006のリモートプラズマエッチング量に応じて設定されるのが望ましい。
【0061】
(リモートプラズマエッチングステップ)
図14は、
図2に示されたウェーハの加工方法のリモートプラズマエッチングステップを示す断面図である。
図15は、
図2に示されたウェーハの加工方法のリモートプラズマエッチングステップ中のウェーハの要部の断面図である。リモートプラズマエッチングステップ1006は、マスク形成ステップ1005実施後、プラズマ処理チャンバー102の外部でプラズマ化したエッチングガスであるSF
6ガス201をウェーハ1の裏面7に供給し、亀裂9-2に対応するマスク13の隙間14からSF
6ガス201を亀裂9-1,9-2内に侵入させ、亀裂9-1,9-2が形成された領域及び改質層8を除去するステップである。
【0062】
実施形態1において、リモートプラズマエッチングステップ1006では、プラズマ処理装置100が、排気ユニット111を動作して、プラズマ処理チャンバー102内を第2の所定の圧力に維持し、アプリケータ119から導入筒113内にマイクロ波を照射しながら、第1バルブ118-1と第2バルブ118-2と第3バルブ118-3とを開いて、不活性ガス供給源115から不活性ガスを導入筒113内に供給し、フッ素系ガス供給源116からSF6ガスを導入筒113内に供給し、酸素ガス供給源117から酸素ガスを導入筒113内に供給する。
【0063】
すると、リモートプラズマエッチングステップ1006では、導入筒113内ではエッチングガスであるSF
6ガスがプラズマ化され、プラズマ処理チャンバー102の外部でプラズマ化したSF
6ガス201が、
図14に示すように、ガス導入口120からプラズマ処理チャンバー102内の第1領域102-1へ供給され、プラズマ拡散部材109を介して、第2領域102-2へ供給される。
【0064】
実施形態1において、リモートプラズマエッチングステップ1006では、プラズマ処理チャンバー102の外部でプラズマ化したSF
6ガス201をウェーハ1の裏面7に供給する所謂リモーとプラズマエッチングで、ウェーハ1の裏面7全体をエッチングしようとする。リモートプラズマエッチングは、ダイレクトプラズマよりもラジカルが高濃度なプラズマ化したガスを供給する。このために、実施形態1において、リモートプラズマエッチングステップ1006では、プラズマ処理チャンバー102の外部でプラズマ化したSF
6ガス201は、ウェーハ1の裏面7にパッシベーション膜12が形成されているので、マスク13のエッチングが規制されて、
図15に示すように、隙間14を通して亀裂9-1,9-2内に侵入して亀裂9-1,9-2の内面及び改質層8をエッチングし、亀裂9-1,9-2の幅9-3を広げるとともに改質層8を除去する。
【0065】
実施形態1において、リモートプラズマエッチングステップ1006では、プラズマ処理装置100が、不活性ガス、SF6ガス及び酸素ガスをプラズマ処理チャンバー102内に供給し、アプリケータ119からマイクロ波を所定時間照射すると、不活性ガス、SF6ガス及び酸素ガスの供給を停止し、アプリケータ119からのマイクロ波の照射を停止して、マスク除去ステップ1007に進む。
【0066】
なお、実施形態1において、リモートプラズマエッチングステップ1006では、プラズマ処理装置100が、プラズマ処理チャンバー102内に供給する不活性ガス、SF6ガス及び酸素ガスの流量、ガスの種類、アプリケータ119から照射するマイクロ波の周波数及び出力は、パッシベーション膜12をエッチングして少なくとも裏面7の一部分を露出させることが規制される値である。こうして、実施形態1において、リモートプラズマエッチングステップ1006では、プラズマ処理装置100が、パッシベーション膜12をエッチングして裏面7の少なくとも一部分を露出させることが規制されるとともに、プラズマ化したエッチングガスであるSF6ガス201が隙間14を通して亀裂9-1,9-2内に侵入して、改質層8を除去するように、ウェーハ1の裏面7にプラズマ化したSF6ガス201を供給する。
【0067】
(マスク除去ステップ)
図16は、
図2に示されたウェーハの加工方法のマスク除去ステップ中のウェーハの要部の断面図である。マスク除去ステップ1007は、リモートプラズマエッチングステップ1006実施後、ウェーハ1の裏面7に形成されたマスク13をアッシングで除去するステップである。
【0068】
実施形態1において、マスク除去ステップ1007では、プラズマ処理装置100が、排気ユニット111を動作して、プラズマ処理チャンバー102内を第3の所定の圧力に維持し、アプリケータ119からマイクロ波を照射することなく、第3バルブ118-3を開いて、酸素ガス供給源117が酸素ガスをプラズマ処理チャンバー102内に供給する。
【0069】
マスク除去ステップ1007では、プラズマ処理装置100が、高周波電圧印加ユニット107からバイアス用電極108に高周波電力を印加する。すると、第2領域102-2内の酸素ガスに電場が印加され、プラズマ処理チャンバー102内の第2領域102-2内の酸素ガスがプラズマ化される。プラズマ処理チャンバー102の第2領域102-2でプラズマ化した
図16に示す酸素ガス202は、ウェーハ1の裏面7全体に供給され、ウェーハ1の裏面7全体(即ち、自然酸化膜11上)上のパッシベーション膜12及び自然酸化膜11をアッシングして除去する。
【0070】
実施形態1において、マスク除去ステップ1007では、プラズマ処理装置100が、酸素ガスをプラズマ処理チャンバー102内に供給し、高周波電圧印加ユニット107からバイアス用電極108に高周波電力を所定時間印加すると、酸素ガスの供給を停止し、高周波電圧印加ユニット107からのバイアス用電極108への高周波電力の印加を停止して、ウェーハの加工方法を終了する。
【0071】
以上説明したように、実施形態1にかかるウェーハの加工方法は、リモートプラズマエッチングステップ1006においてウェーハ1の裏面7をリモートプラズマエッチングする前に、マスク形成ステップ1005において、ウェーハ1の裏面7にC4F8ガスを用いた所謂ダイレクトプラズマでパッシベーション膜12をマスク13として形成する。このために、ウェーハの加工方法は、リモートプラズマエッチングステップ1006では、ウェーハ1の裏面7をリモートプラズマエッチングすることを抑制しながらも、デバイスチップ6に分割される亀裂9-1,9-2内にプラズマ化したエッチングガスであるSF6ガス201を侵入させて、改質層8を除去することができる。
【0072】
その結果、ウェーハの加工方法は、リモートプラズマエッチングステップ1006ではウェーハ1の裏面7上の自然酸化膜11をエッチングすることなく、改質層8を除去できるために、ウェーハ1即ちデバイスチップ6の裏面7の白濁発生及びデバイスチップ6の抗折強度低下を抑制することができるという効果を奏する。
【0073】
また、実施形態1にかかるウェーハの加工方法は、マスク形成ステップ1005において形成されるマスク13の厚さ13-1が亀裂9-2の幅9-3の半分以下であるので、マスク形成ステップ1005後のウェーハ1では亀裂9-2上にマスク13の隙間14を形成でき、リモートプラズマエッチングステップ1006においてプラズマ化したエッチングガスであるSF6ガス201を亀裂9-1,9-2内に侵入させることができる。
【0074】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係るウェーハの加工方法を図面に基づいて説明する。
図17は、実施形態2に係るウェーハの加工方法の流れを示すフローチャートである。
図18は、
図17に示されたウェーハの加工方法の歪み除去ステップ中のウェーハの要部を示す断面図である。
図17及び
図18は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0075】
実施形態2に係るウェーハの加工方法は、
図17に示すように、搬送ステップ1004後、マスク形成ステップ1005前に、歪み除去ステップ1010を実施すること以外、実施形態1に係るウェーハの加工方法と同じである。歪み除去ステップ1010は、マスク形成ステップ1005実施前に、プラズマ処理チャンバー102の内部でプラズマ化したエッチングガスであるSF
6ガス203をウェーハ1の裏面7に供給し、ウェーハ1の裏面7に形成された裏面加工ステップ1002での歪み層10を除去するステップである。
【0076】
実施形態2において、歪み除去ステップ1010では、プラズマ処理装置100が、ドア101で搬入出口103を閉じ、静電チャック106の各電極に直流電源部から電圧を印加して、テーブルベース104の保持面105上にウェーハ1を吸着保持する。歪み除去ステップ1010では、プラズマ処理装置100が、排気ユニット111を動作して、プラズマ処理チャンバー102内を第4の所定の圧力まで減圧し、冷媒循環装置を動作して静電チャック106の流路に冷媒を循環させて、静電チャック106の異常昇温を抑制する。
【0077】
実施形態2において、歪み除去ステップ1010では、プラズマ処理装置100が、アプリケータ119からマイクロ波を照射することなく、第1バルブ118-1と第2バルブ118-2とを開いて、不活性ガス供給源115から不活性ガスをプラズマ処理チャンバー102内に供給するとともに、フッ素系ガス供給源116からエッチングガスであるSF6ガスをプラズマ処理チャンバー102内に供給する。
【0078】
歪み除去ステップ1010では、プラズマ処理装置100が、高周波電圧印加ユニット107からバイアス用電極108に高周波電力を印加する。すると、第2領域102-2内のSF
6ガスに電場が印加され、プラズマ処理チャンバー102内の第2領域102-2内のSF
6ガスがプラズマ化される。プラズマ処理チャンバー102の第2領域102-2でプラズマ化した
図18に示すSF
6ガス203は、ウェーハ1の裏面7全体に供給され、ウェーハ1の裏面7全体の表層(即ち、自然酸化膜11、微細な異物及び歪み層10)をエッチングする。
【0079】
こうして、実施形態2において、歪み除去ステップ1010では、プラズマ処理チャンバー102内でプラズマ化したSF6ガス203をウェーハ1の裏面7に供給する所謂ダイレクトプラズマで、ウェーハ1の裏面7全体の表層をエッチングして、自然酸化膜11、微細な異物及び歪み層10を除去する。ダイレクトプラズマは、リモートプラズマエッチングよりもラジカルが低濃度なプラズマ化したガスを供給するので、実施形態2において、歪み除去ステップ1010では、プラズマ化したSF6ガス203を前述した微小な幅9-3の亀裂9-1,9-2内に侵入させることなく、ウェーハ1の裏面7全体の表層をエッチングする。また、ダイレクトプラズマは、第2領域102-2内に形成された電界に起因して、プラズマ化したSF6ガス203中のイオンがウェーハ1の裏面7側に衝突しやすいので、自然酸化膜11、微細な異物及び歪み層10を、リモートプラズマエッチングに比べて効率的に除去できる。
【0080】
実施形態2において、歪み除去ステップ1010では、プラズマ処理装置100が、不活性ガス及びSF6ガスをプラズマ処理チャンバー102内に供給し、高周波電圧印加ユニット107からバイアス用電極108に高周波電力を所定時間印加すると、不活性ガス及びSF6ガスの供給を停止し、高周波電圧印加ユニット107からのバイアス用電極108への高周波電力の印加を停止して、マスク形成ステップ1005に進む。
【0081】
実施形態2にかかるウェーハの加工方法は、ウェーハ1の裏面7をリモートプラズマエッチングする前に、ウェーハ1の裏面7にC4F8ガスを用いた所謂ダイレクトプラズマでパッシベーション膜12をマスク13として形成する。このために、ウェーハの加工方法は、リモートプラズマエッチングステップ1006では、ウェーハ1の裏面7をリモートプラズマエッチングすることを抑制でき、亀裂9-1,9-2内にプラズマ化したSF6ガスを侵入させて、改質層8を除去できる。その結果、ウェーハの加工方法は、実施形態1と同様に、リモートプラズマエッチングステップ1006ではウェーハ1の裏面7上の自然酸化膜11をエッチングすることなく、改質層8を除去でき、ウェーハ1即ちデバイスチップ6の裏面7の白濁発生及びデバイスチップ6の抗折強度低下を抑制することができるという効果を奏する。
【0082】
また、実施形態2に係るウェーハの加工方法は、マスク形成ステップ1005実施前に、歪み除去ステップ1010において、自然酸化膜11、微細な異物及び歪み層10を除去するので、デバイスチップ6の抗折強度を向上することができる。
【0083】
また、実施形態2に係るウェーハの加工方法は、マスク形成ステップ1005実施前に、歪み除去ステップ1010において、プラズマ処理チャンバー102内でプラズマ化したSF6ガス203をウェーハ1の裏面7に供給する所謂ダイレクトプラズマで自然酸化膜11、微細な異物及び歪み層10を除去する。その結果、実施形態2に係るウェーハの加工方法は、歪み除去ステップ1010においてSF6ガス203のフッ素ガスがウェーハ1の裏面7に残留しても、残留したフッ素ガスをマスク除去ステップ1007のアッシングで除去されるため、大気成分と反応してフッ化水素(HF)となり、例えば、シッパーなどの密閉容器で保管された際、デバイス5の銅(Cu)合金やアルミニウム(Al)合金などの金属を腐食させる恐れがない。
【0084】
〔変形例〕
本発明の実施形態1及び実施形態2の変形例に係るウェーハの加工方法を図面に基づいて説明する。
図19は、実施形態1及び実施形態2の変形例に係るウェーハの加工方法の裏面加工ステップの裏面を研磨する状態を一部断面で示す側面図である。
図19は、実施形態1及び実施形態2と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0085】
変形例に係るウェーハの加工方法は、裏面加工ステップ1002において、研削装置40が、ウェーハ1の裏面7を研削した後、
図19に示すように、研磨装置70が、ウェーハ1の裏面7を研磨して、歪み層10を除去すること以外、実施形態1及び実施形態2に係るウェーハの加工方法と同じである。
【0086】
変形例に係るウェーハの加工方法は、裏面加工ステップ1002において、研削装置40が、ウェーハ1の裏面7を研削した後に、研磨装置70が、チャックテーブル71の保持面72に保護テープ20を介してウェーハ1の半導体基板2の表面3側を吸引保持する。変形例では、
図19に示すように、スピンドル73により研磨ホイール74を回転しかつチャックテーブル71を軸心回りに回転させ、研磨ホイール74の研磨パッド75をウェーハ1の半導体基板2の裏面7に当接させてチャックテーブル71に所定の送り速度で近づけて、研磨パッド75でウェーハ1の裏面7を研磨して、ウェーハ1の歪み層10を除去する。
【0087】
なお、本発明では、研磨パッド75に純水等の研磨液を供給しなから研磨しても良く、研磨パッド75に純水等の研磨液を供給しなから研磨(所謂ドライポリッシュ)しても良く、研磨パッド75にアルカリ性の研磨液を供給しながら化学的機械的研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)しても良い。
【0088】
実施形態2において、裏面加工ステップ1002では、研磨装置70が、所定時間、ウェーハ1の裏面7を研磨すると、研磨ホイール74をウェーハ1から退避させ、チャックテーブル71の吸引保持を解除して、洗浄ステップ1003に進む。
【0089】
変形例にかかるウェーハの加工方法は、ウェーハ1の裏面7をリモートプラズマエッチングする前に、ウェーハ1の裏面7にC4F8ガスを用いた所謂ダイレクトプラズマでパッシベーション膜12をマスク13として形成する。このために、ウェーハの加工方法は、リモートプラズマエッチングステップ1006では、ウェーハ1の裏面7をリモートプラズマエッチングすることを抑制でき、亀裂9-1,9-2内にプラズマ化したSF6ガスを侵入させて、改質層8を除去できる。その結果、変形例に係るウェーハの加工方法は、実施形態1と同様に、リモートプラズマエッチングステップ1006ではウェーハ1の裏面7上の自然酸化膜11をエッチングすることなく、改質層8を除去でき、ウェーハ1即ちデバイスチップ6の裏面7の白濁発生及びデバイスチップ6の抗折強度低下を抑制することができるという効果を奏する。
【0090】
また、変形例に係るウェーハの加工方法は、マスク形成ステップ1005実施前に、裏面加工ステップ1002において、ウェーハ1の裏面7を研磨して、歪み層10を除去するので、デバイスチップ6の抗折強度を向上することができる。
【0091】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0092】
1 ウェーハ(シリコンウェーハ)
3 表面
4 分割予定ライン
5 デバイス
6 デバイスチップ
7 裏面
8 改質層
9-1,9-2 亀裂
9-3 幅
10 歪み層(加工歪み)
12 パッシベーション膜(フルオロカーボン膜)
13 マスク
13-1 厚さ
14 隙間
34 レーザービーム
34-1 集光点
62 搬送パッド
102 プラズマ処理チャンバー
200 プラズマ化したC4F8ガス(プラズマ化したフルオロカーボンガス)
201 プラズマ化したSF6ガス(プラズマ化したエッチングガス)
203 プラズマ化したSF6ガス(プラズマ化したエッチングガス)
1001 改質層形成ステップ
1002 裏面加工ステップ
1004 搬送ステップ
1005 マスク形成ステップ
1006 リモートプラズマエッチングステップ
1007 マスク除去ステップ
1010 歪み除去ステップ