(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】遠心ろ過カートリッジ及び微生物検査方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/26 20060101AFI20240301BHJP
C12M 1/12 20060101ALI20240301BHJP
C12Q 1/22 20060101ALI20240301BHJP
C12Q 1/24 20060101ALI20240301BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20240301BHJP
G01N 1/10 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
C12M1/26
C12M1/12
C12Q1/22
C12Q1/24
C12Q1/04
G01N1/10 B
(21)【出願番号】P 2021050339
(22)【出願日】2021-03-24
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川邉 駿佑
(72)【発明者】
【氏名】石丸 真子
【審査官】平林 由利子
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-510398(JP,A)
【文献】特開2017-225448(JP,A)
【文献】国際公開第2020/194813(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/166130(WO,A1)
【文献】特開2000-254550(JP,A)
【文献】国際公開第2021/240911(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/229884(WO,A1)
【文献】特開2010-025931(JP,A)
【文献】国際公開第2016/158793(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00- 3/10
C12Q 1/00- 3/00
G01N 1/00- 1/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物を捕捉するフィルタと、前記フィルタを通過した液体を排出するノズルと、を有するフィルタカップと、
前記フィルタカップと接続可能に構成され、前記ノズルから排出された前記液体を収容可能な計測容器を内部に格納する汚染防止ボックスと、を備え、
前記汚染防止ボックスは、前記フィルタカップと前記計測容器の開口面との間に配置される隔壁を有し、
前記隔壁は、前記ノズルが通過可能な開口を有し、
前記ノズルは、前記汚染防止ボックスが前記フィルタカップと接続された際に、前記ノズルの先端が前記開口の下端よりも下に位置し、かつ前記計測容器の内部に侵入する長さを有することを特徴とする遠心ろ過カートリッジ。
【請求項2】
前記開口の断面積は、前記ノズルの断面積よりも大きく、前記計測容器の開口面の断面積よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の遠心ろ過カートリッジ。
【請求項3】
前記汚染防止ボックスは、前記計測容器の開口面側の第1のボックスと、前記計測容器の底側の第2のボックスとを備え、
前記第1のボックスと前記第2のボックスとが、分離可能なように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の遠心ろ過カートリッジ。
【請求項4】
前記汚染防止ボックスは、複数の前記計測容器を格納し、
前記隔壁は、前記複数の前記計測容器のそれぞれの上部に設けられた複数の前記開口を有し、
前記フィルタカップは、前記複数の前記計測容器と同数の複数の前記ノズルを有することを特徴とする請求項1に記載の遠心ろ過カートリッジ。
【請求項5】
前記開口には、前記開口を密閉するシールが設けられており、
前記ノズルの先端が針状であることを特徴とする請求項1に記載の遠心ろ過カートリッジ。
【請求項6】
前記ノズルの太さは5mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の遠心ろ過カートリッジ。
【請求項7】
前記汚染防止ボックスが前記フィルタカップと接続された状態において、前記ノズルの先端を含む面が、前記隔壁の下面から1mm以上下方に位置することを特徴とする請求項1に記載の遠心ろ過カートリッジ。
【請求項8】
前記汚染防止ボックスが前記フィルタカップと接続された状態において、前記ノズルの先端を含む面が、前記計測容器の開口面から1mm以上下方に位置することを特徴とする請求項1に記載の遠心ろ過カートリッジ。
【請求項9】
前記汚染防止ボックスが前記フィルタカップと接続された状態において、前記ノズルの側面と前記開口との間に隙間があることを特徴とする請求項1に記載の遠心ろ過カートリッジ。
【請求項10】
前記フィルタカップを保持し、前記フィルタカップの上方を覆う蓋を有し、前記汚染防止ボックスと接続可能に構成されたホルダをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の遠心ろ過カートリッジ。
【請求項11】
前記第1のボックスと前記第2のボックスとを分離した際に、前記計測容器が前記第2のボックスから突出することを特徴とする請求項3に記載の遠心ろ過カートリッジ。
【請求項12】
前記汚染防止ボックスを取り外した状態の前記フィルタカップと接続可能な廃液容器をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の遠心ろ過カートリッジ。
【請求項13】
請求項1に記載の遠心ろ過カートリッジを準備することと、
前記フィルタカップに検査試料を分注することと、
前記フィルタカップと前記計測容器とを接続することと、
前記フィルタカップと前記計測容器とが接続された状態の前記遠心ろ過カートリッジを遠心機に設置して、前記フィルタにより遠心ろ過を行うことと、を含む微生物検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遠心ろ過カートリッジ及び微生物検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製造施設の清浄度を保証するため、又は、製造に用いる水(例えば製薬用水等)若しくは製品自体の無菌性を保証するために、微生物検査や無菌試験が行われる。一般に、微生物検査や無菌検査の方法として、細菌の培養を利用したメンブレンフィルタ法(MF法)が採用されている。MF法は、採取した試料をメンブレンフィルタでろ過した後、メンブレンフィルタを寒天培地に載せて、恒温機中にて最大14日間培養し、生育した細菌のコロニー数を目視で計数する方法である。しかしながら、増殖の速い細菌であってもコロニーの目視検出に至るまでに少なくとも数日の期間を要する。さらに、従来の培地ではコロニー形成能が低いため、培養のみでは検出及び定量が困難な細菌が存在することが、近年の微生物研究の進展により明らかとなってきている。これらの課題を解決する手段として、培養を利用した従来のMF法とは異なる、様々な測定原理を利用した迅速微生物検査技術に期待が寄せられている。
【0003】
迅速微生物検査法は、直接的検出法と間接的検出法とに大別される。前者には固相サイトメトリー、フローサイトメトリーなどがあり、後者には免疫学的方法、核酸増幅法、生物発光、蛍光(染色)法などがある。例えば、細菌内に含まれるアデノシン三リン酸(Adenosine triphosphate(ATP))を利用したATP生物発光法(以下、ATP法という)が存在する。この方法は、細菌内に含まれるATPを抽出し、酵素であるルシフェラーゼと反応させることで生物発光を起こし、その発光量を計測することで菌量を推定する方法である。ATP法では、細菌1個あたりに含まれるATP分子の存在を数万個相当のフォトンとして検出できるため、細菌1個レベルで高感度に検出することが可能であり、迅速微生物検査法として期待されている。
【0004】
無菌検査の迅速化に要求される性能において優先させるべき性能は、細菌の検出感度であるが、一方で、検出感度の向上に伴って偽陽性の確率も上昇する。ATP法において、検体内に存在する極微量(数個レベル)の細菌を高感度、高精度で検出するためには、発光計測装置の性能が高感度であると同時に、周辺環境中に存在するATPや細菌のコンタミネーションを抑制しなければならない。
【0005】
特許文献1には、細菌由来のATPを高感度に発光検出するために、周辺環境からの試料汚染を軽減するフィルタリング部材及びフィルタリング方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、微生物検査や無菌検査において、検査を行うための計測装置が用いられ、検査試料からターゲット物質(例えば細菌由来のATP等)を抽出した後、ターゲット物質を含む水溶液を計測装置専用の計測容器に移し替えることが必要である。しかし、この移し替えの作業の途中で、ターゲット物質を含む水溶液が計測容器の外へ紛失したり、計測の阻害を引き起こす物質(例えば周辺環境に存在する細菌やATP等)が混入したりする可能性がある。ターゲット物質の紛失や、計測を阻害する物質の混入は、検査の偽陽性及び偽陰性を発生させる原因となる。
【0008】
例えば、ATP法を用いた微生物検査において、検査試料をフィルタでろ過し、フィルタに捕捉した細菌からATPを抽出した後、細菌由来のATPを含む水溶液を計測装置専用の計測チューブへ移し替えなければいけない。この際に、水溶液が計測チューブの外へ漏れ出したり、周辺環境から阻害物質(例えば環境由来のATP等)が混入したりすると、偽陽性及び偽陰性の原因となる。
【0009】
特に、周辺環境からのコンタミネーションを厳密に防止しなければならない無菌検査において、検査試料の密閉性を担保するために、検査試料のろ過及び移動は遠心機を用いることが多い。しかし、遠心力による送液は、その他の送液方法(例えば吸引ポンプによる吸引ろ過等)と比べて、送液方向が正確には定まらず、検査試料が想定外の不要な部分に接触したりすることがある。ATP法においても、遠心ろ過によって検体を送液し、計測チューブへ移動させる際に、ろ過フィルタと計測チューブ以外の部分に水溶液が接触し、周辺環境からのATPがコンタミネーションしてしまうことがある。周辺環境からのATPの混入は、偽陽性の原因となる。
【0010】
また、ATP法による無菌検査では、極微量の細菌を検出するために、検査試料をフィルタでろ過した後、少量の抽出液(例えば数十μL等)でATPを抽出することがある。これは、細菌から抽出したATPをできるだけ高濃度に濃縮して、発光計測を行うためである。しかし、抽出液の量が少なくなるほど、検査試料をフィルタから計測チューブへ遠心ろ過で送液する際に、検査試料を損失することなく正確に移し替えることが難しくなる。例えば、フィルタ底面及びろ液の排出部から計測チューブまでの流路の凹凸に検査試料が残存したりする。検査試料の損失は、偽陰性の原因となる。
【0011】
そこで、本開示は、微生物検査の偽陽性及び偽陰性を低減する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本開示の遠心ろ過カートリッジは、微生物を捕捉するフィルタと、前記フィルタを通過した液体を排出するノズルと、を有するフィルタカップと、前記フィルタカップと接続可能に構成され、前記ノズルから排出された前記液体を収容可能な計測容器を内部に格納する汚染防止ボックスと、を備え、前記汚染防止ボックスは、前記フィルタカップと前記計測容器の開口面との間に配置される隔壁を有し、前記隔壁は、前記ノズルが通過可能な開口を有し、前記ノズルは、前記汚染防止ボックスが前記フィルタカップと接続された際に、前記ノズルの先端が前記開口の下端よりも下に位置し、かつ前記計測容器の内部に侵入する長さを有することを特徴とする。
【0013】
本開示に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、本開示の態様は、要素及び多様な要素の組み合わせ及び以降の詳細な記述と添付される特許請求の範囲の様態により達成され実現される。本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、本開示の特許請求の範囲又は適用例を如何なる意味に於いても限定するものではない。
【発明の効果】
【0014】
本開示の技術によれば、微生物検査の偽陽性及び偽陰性を低減することができる。上記以外の課題、構成及び効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1の実施形態に係る遠心ろ過カートリッジの第1の状態の外観を示す六面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る遠心ろ過カートリッジの第1の状態の外観を示す斜視図である。
【
図3】第1の実施形態に係る遠心ろ過カートリッジの第1の状態の透光性素材からなる部分を示す参考図である。
【
図4】第1の実施形態に係る遠心ろ過カートリッジの第1の状態のI-I断面図である。
【
図5】第1の実施形態に係る遠心ろ過カートリッジの汚染防止ボックスの外観を示す六面図である。
【
図6】第1の実施形態に係る遠心ろ過カートリッジの汚染防止ボックスの外観を示す斜視図である。
【
図7】第1の実施形態に係る遠心ろ過カートリッジの汚染防止ボックスの透光性素材からなる部分を示す参考図である。
【
図8】第1の実施形態に係る遠心ろ過カートリッジの汚染防止ボックスのV-V断面図である。
【
図9】第1の実施形態に係る遠心ろ過カートリッジの第2の状態の外観を示す六面図である。
【
図10】第1の実施形態に係る遠心ろ過カートリッジの第2の状態の外観を示す斜視図である。
【
図11】第1の実施形態に係る遠心ろ過カートリッジの第2の状態の透光性素材からなる部分を示す参考図である。
【
図12】第1の実施形態に係る遠心ろ過カートリッジの第2の状態のIX-IX断面図である。
【
図13】第1の実施形態に係る遠心ろ過カートリッジを用いた無菌検査方法のフローチャートである。
【
図14A】第1の実施形態に係る無菌検査方法のステップS101における遠心ろ過カートリッジの状態を示す概略断面図である。
【
図14B】第1の実施形態に係る無菌検査方法のステップS102における遠心ろ過カートリッジの状態を示す概略断面図である。
【
図14C】第1の実施形態に係る無菌検査方法のステップS103における遠心ろ過カートリッジの状態を示す概略断面図である。
【
図14D】第1の実施形態に係る無菌検査方法のステップS104における遠心ろ過カートリッジの状態を示す概略断面図である。
【
図14E】第1の実施形態に係る無菌検査方法のステップS105における遠心ろ過カートリッジの状態を示す概略断面図である。
【
図14F】第1の実施形態に係る無菌検査方法のステップS106における遠心ろ過カートリッジの状態を示す概略断面図である。
【
図14G】第1の実施形態に係る無菌検査方法のステップS107における遠心ろ過カートリッジの状態を示す概略断面図である。
【
図14H】第1の実施形態に係る無菌検査方法のステップS108における遠心ろ過カートリッジの状態を示す概略断面図である。
【
図14I】第1の実施形態に係る無菌検査方法のステップS109における遠心ろ過カートリッジの状態を示す概略断面図である。
【
図15】第2の実施形態に係る遠心ろ過カートリッジを示す概略断面図である。
【
図16】第3の実施形態に係る遠心ろ過カートリッジを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1の実施形態]
<遠心ろ過カートリッジの第1の状態の構成例>
図1は、第1の実施形態に係る遠心ろ過カートリッジ100の第1の状態の外観を示す六面図である。
図1(a)は正面図であり、
図1(b)は背面図であり、
図1(c)は右側面図であり、
図1(d)は左側面図であり、
図1(e)は上面図であり、
図1(f)は底面図である。
図1に示すように、第1の状態の遠心ろ過カートリッジ100は、蓋付きホルダ2及び廃液容器12を備える。蓋付きホルダ2には開閉可能な蓋1が設けられている。詳細は後述するが、蓋付きホルダ2と廃液容器12とは着脱可能に構成されている。
【0017】
図2は、第1の状態における遠心ろ過カートリッジ100の斜視図である。
図2に示すように、蓋付きホルダ2及び廃液容器12は、略円筒形である。廃液容器12の外径は、蓋付きホルダ2の外径よりも小さい。
【0018】
図3は、第1の状態における遠心ろ過カートリッジ100の透光性素材からなる部分を示す参考図である。
図3のハッチングで示す部分、すなわち、蓋1、蓋付きホルダ2及び廃液容器12は、光を透過する材料(樹脂やガラス)で構成することができる。
【0019】
図4は、第1の状態における遠心ろ過カートリッジ100のI-I断面図である。
図4に示すように、蓋付きホルダ2は、内部にフィルタカップ3を有する。フィルタカップ3は略筒状である。フィルタカップ3には、検査試料(溶液)が導入される。フィルタカップ3の上端は、蓋付きホルダ2の上端と同じ高さである。フィルタカップ3は、内底部に配置されたフィルタ4を有する。フィルタカップ3の下端部には、ノズル5が設けられており、フィルタ4を通過した液体は、ノズル5から排出される。ノズル5を設ける代わりに、単にフィルタカップ3に開口を設けることによっても、フィルタ4により検査試料をろ過したろ液をフィルタカップ3から排出することができる。
【0020】
フィルタ4は、フィルタカップ3に導入された検査試料をろ過し、検査対象の微生物(細菌、真菌、古細菌などの菌)を捕捉可能なものであればよく、例えばメンブレンフィルタを用いることができる。フィルタ4の材質としては、例えばセルロース混合エステル、PTFE、PVDF(Polyvinylidene Fluoride)、ポリカーボネートなどが挙げられる。
【0021】
フィルタ4の孔径は、検査対象の微生物のサイズや、微生物検査の諸条件に応じて適宜選択することができ、例えば0.20μm以上とすることができる。具体的には、フィルタ4として、孔径が0.22μmや0.45μm等のメンブレンフィルタが挙げられる。
【0022】
フィルタカップ3に検査試料を導入し、蓋1を密閉し、蓋付きホルダ2と廃液容器12とを接続した状態で遠心ろ過カートリッジ100を遠心機にセットし、遠心分離を行うことで、フィルタカップ3に添加された検査試料は、フィルタ4を通過してろ過され、ろ液(廃液)が廃液容器12に回収される。
【0023】
蓋付きホルダ2は、外径が異なる二つの部分を有し、蓋付きホルダ2の上部の外径が下部の外径より小さく、蓋1の外径と蓋付きホルダ2の上部の外径とが略等しくなる。蓋付きホルダ2の下部の内径は、廃液容器12の外径に略等しい。蓋付きホルダ2及び廃液容器12にはねじ溝が設けられており、廃液容器12が蓋付きホルダ2に螺嵌(接続)されている。なお、蓋付きホルダ2及び廃液容器12の接続方式は、スクリュー方式に限定されず、遠心機による遠心分離に耐えうる固定強度が得られればよい。例えば、蓋付きホルダ2及び廃液容器12は、単に嵌合により接続可能に構成されていてもよい。
【0024】
図4に示す例では、蓋1は、スクリュー方式で蓋付きホルダ2の上部に対し着脱可能に構成されている。ただし、蓋1は、ヒンジ機構であってもよい。
【0025】
<汚染防止ボックスの構成例>
図5は、遠心ろ過カートリッジ100の汚染防止ボックス9の外観を示す六面図である。
図5(a)は正面図であり、
図5(b)は背面図であり、
図5(c)は右側面図であり、
図5(d)は左側面図であり、
図5(e)は上面図であり、
図5(f)は底面図である。
図5に示すように、汚染防止ボックス9は、上枠7及び下枠8を備える。上枠7の上部にはねじ溝が設けられており、当該ねじ溝により、上枠7は蓋付きホルダ2と螺嵌(接続)可能である。なお、蓋付きホルダ2及び汚染防止ボックス9の接続方式は、スクリュー方式に限定されず、遠心機による遠心分離に耐えうる固定強度が得られればよい。例えば、蓋付きホルダ2及び汚染防止ボックス9は、単に嵌合により接続可能に構成されていてもよい。
【0026】
図6は、汚染防止ボックス9の斜視図である。
図6に示すように、汚染防止ボックス9は、略円筒形である。
【0027】
図7は、汚染防止ボックス9の透光性素材からなる部分を示す参考図である。
図7のハッチングで示す部分、すなわち、汚染防止ボックス9の上枠7及び下枠8は、光を透過する材料(樹脂やガラス)で構成することができる。
【0028】
図8は、汚染防止ボックス9のV-V断面図である。
図8に示すように、上枠7及び下枠8は螺合されており、分離可能に構成されている。上枠7の内部空間の上部には、後述するように、蓋付きホルダ2のフィルタカップ3を格納可能な空間が設けられている。汚染防止ボックス9の内部には、計測チューブ10(計測容器)が設けられている。計測チューブ10の長さは、下枠8の長さよりも長く、下枠8から上枠7を取り外すと、下枠8の開口面から計測チューブ10が突出する。
【0029】
上枠7の内部には、開口を有する隔壁6が設けられている。隔壁6は、フィルタカップ3を格納可能な空間と、計測チューブ10が格納される空間とを隔てる。隔壁6の開口の断面積は、計測チューブ10の開口の断面積よりも小さい。隔壁6の開口の断面積はノズル5の断面積よりも大きく、隔壁6の開口にノズル5が通過可能である。
【0030】
<遠心ろ過カートリッジの第2の状態の構成例>
図9は、第1の実施形態に係る遠心ろ過カートリッジ100の第2の状態の外観を示す六面図である。
図9(a)は正面図であり、
図9(b)は背面図であり、
図9(c)は右側面図であり、
図9(d)は左側面図であり、
図9(e)は上面図であり、
図9(f)は底面図である。
図9に示すように、第2の状態の遠心ろ過カートリッジ100は、蓋付きホルダ2に汚染防止ボックス9が接続された状態である。
【0031】
図10は、第2の状態における遠心ろ過カートリッジ100の斜視図である。
図10に示すように、蓋付きホルダ2及び汚染防止ボックス9は、略円筒形である。汚染防止ボックス9の外径は、蓋付きホルダ2の外径よりも小さい。
【0032】
図11は、第2の状態における遠心ろ過カートリッジ100の透光性素材からなる部分を示す参考図である。
図11のハッチングで示す部分、すなわち、蓋1、蓋付きホルダ2及び汚染防止ボックス9は、光を透過する材料(樹脂やガラス)で構成することができる。
【0033】
図12は、第2の状態における遠心ろ過カートリッジ100のIX-IX断面図である。
図12に示すように、蓋付きホルダ2に汚染防止ボックス9を接続すると、ノズル5が隔壁6の開口を通り、計測チューブ10の内部へ侵入する。これにより、遠心ろ過の際にフィルタ4及びノズル5を通過した溶液は、遠心ろ過カートリッジ100の計測チューブ10の内部以外に接触しない。したがって、計測チューブ10に導入される液体の汚染を防止することができる。また、計測チューブ10が汚染防止ボックス9により覆われていることにより、計測チューブ10が周辺環境に曝露されず、空気中に浮遊している細菌や作業者の飛沫等の付着を防止することができる。ノズル5及び隔壁6は、蓋付きホルダ2と汚染防止ボックス9とを接続した際に、ノズル5と隔壁6とが接触しないように設計されており、これにより、フィルタ4を通過した溶液が隔壁6に接触することを防止することができる。
【0034】
ノズル5は、略円筒状とすることができるが、略角筒状であってもよい。ノズル5の先端の太さ(断面が円形である場合は直径、断面が多角形である場合は対角線の最大の長さ)は、例えば5mm以下とすることができ、場合に応じて3mm以下とすることができる。これにより、遠心ろ過カートリッジ100を用いて遠心ろ過する際に、溶液がノズル5に残存することを防止することができる。
【0035】
ノズル5の先端面を含む面が隔壁6の下面よりも例えば1mm以上、場合に応じて3mm以上離れるように、ノズル5を設計することができる。これにより、遠心ろ過の際に、溶液が汚染防止ボックス9及び隔壁6に接触することを防止することができる。また、ノズル5の先端面を含む面が計測チューブ10の開口面よりも例えば1mm以上、場合に応じて5mm以上離れるように、ノズル5を設計することができる。これにより、遠心ろ過の際に、溶液が計測チューブ10の外に漏れ出すことを防止することができる。
【0036】
<遠心ろ過カートリッジの包装>
遠心ろ過カートリッジ100は、蓋付きホルダ2、汚染防止ボックス9及び廃液容器12を含む検査キットとして、流通させることができる。検査キットにおいて、蓋付きホルダ2と廃液容器12とが接続された第1の状態の遠心ろ過カートリッジ100と、汚染防止ボックス9単体とが、それぞれ密封包装された状態とすることができる。検査キットをこのように構成することにより、後述する使用時に、廃液容器12と汚染防止ボックス9との付け替えが一度で済むため、操作が簡単となり、外部からの汚染を防止することもできる。蓋付きホルダ2、汚染防止ボックス9及び廃液容器12は、ガンマ線滅菌、EOG滅菌、オートクレーブなどの滅菌工程を経て包装することができる。遠心ろ過カートリッジ100は、使い捨てとすることができる。
【0037】
<遠心ろ過カートリッジ100を用いた無菌検査方法>
遠心ろ過カートリッジ100の使用形態の一例として、ATP法を用いた製薬用水(検査試料)の無菌検査方法について説明する。本方法において、高感度ATP検査キット(Lumione(登録商標)微生物迅速検査用試薬キット(日立ハイテクソリューションズ社製))と、高感度のATP計測装置(Lumione BL-2000(日立ハイテクソリューションズ社製))とを用いることとする。高感度ATP検査キットは、ATP活性消去液、洗浄液、発光液、抽出液、ポジティブコントロール(ATP 100amol/50μL抽出液)、測定チューブとその専用ラックを含む。
【0038】
以下説明する作業は、1CFU/m3未満で管理されているグレードA、又は、10CFU/m3以下で管理されているグレードBのクリーンルームで行われる。
【0039】
図13は、遠心ろ過カートリッジ100を用いた製薬用水の無菌検査方法を示すフローチャートである。
図14A~
図14Iは、各ステップにおける遠心ろ過カートリッジ100の状態を示す概略断面図である。なお、
図14A~
図14Iは、図示の簡略化のため、各部材が
図4、
図8及び
図12とは異なる縮尺、形状、大きさで示されている。
【0040】
(ステップS101:初期状態)
作業者は、遠心ろ過カートリッジ100、高感度ATP検査キット及びATP計測装置を準備し、遠心ろ過カートリッジ100及びピペット等の全ての備品を事前に滅菌処理(例えば放射線滅菌、ガス滅菌、高圧蒸気滅菌等)しておく。作業者は、準備が完了したら、無菌検査の作業を開始する。
【0041】
図14Aは、ステップS101における初期状態(第1の状態)の遠心ろ過カートリッジ100を示す概略断面図である。フィルタ4及びフィルタカップ3は蓋付きホルダ2に格納されており、蓋付きホルダ2の下部には廃液容器12が接続されている。蓋付きホルダ2の蓋1は密閉されている。
【0042】
(ステップS102:製薬用水の分注)
作業者は、蓋付きホルダ2の蓋1を開けて、製薬用水(検査試料)を含む容器から、ピペット操作により、製薬用水をフィルタカップ3に分注する。その後、作業者は、蓋1を閉じる。遠心ろ過をスムーズに行うために、製薬用水の容量は、例えば100ミリリットル以下、場合に応じて10ミリリットル以下に設定することができる。
【0043】
図14Bは、ステップS102における遠心ろ過カートリッジ100の状態を示す概略断面図である。製薬用水13が汚染されている場合は、製薬用水13の中には細菌14がいる。本実施形態では説明を明確にするため、細菌14が存在する場合を図示している。
【0044】
(ステップS103:製薬用水の遠心ろ過)
作業者は、遠心ろ過カートリッジ100を遠心機にセットし、遠心機を駆動して製薬用水13を遠心ろ過する。
【0045】
図14Cは、ステップS103における遠心ろ過カートリッジ100の状態を示す概略断面図である。製薬用水13に含まれている細菌14はフィルタ4上に捕捉され、製薬用水13のろ液は廃液容器12に廃液15として排出される。
【0046】
(ステップS104:ATP活性消去液の分注)
作業者は、蓋1を開け、高感度ATP検査キットに含まれるATP活性消去液をフィルタカップ3のフィルタ4上に分注し、蓋1を閉じる。ATP活性消去液をフィルタ4上に分注することにより、フィルタカップ3及びフィルタ4に残存する、検査試料中に含まれていた不要なATPを消去することができる。ATP活性消去液の容量は、ステップS102で分注した製薬用水13の容量よりも多くすることができる。ATP活性消去液の分注後、例えば37℃で40分以上インキュベートすることにより、消去反応を亢進することができる。
【0047】
図14Dは、ステップS104における遠心ろ過カートリッジ100の状態を示す概略断面図である。ATP活性消去液16を分注しても、フィルタ4上に捕捉されている細菌14の内部のATPは、細胞膜や細胞壁に覆われているため、ATP活性消去液16では消去されない。このように、ATP活性消去液16は、細菌由来以外のATPを消去することが可能である。
【0048】
(ステップS105:ATP活性消去液の遠心ろ過)
作業者は、遠心ろ過カートリッジ100を遠心機にセットし、遠心機を駆動してATP活性消去液16を遠心ろ過する。
【0049】
図14Eは、ステップS105における遠心ろ過カートリッジ100の状態を示す概略断面図である。ATP活性消去液16は、廃液15としてフィルタ下部の廃液容器12に排出される。
【0050】
(ステップS106:容器の入れ替え)
作業者は、廃液容器12を蓋付きホルダ2から外し、計測チューブ10が格納された状態の汚染防止ボックス9を蓋付きホルダ2に取り付ける。
【0051】
図14Fは、ステップS106における遠心ろ過カートリッジ100の状態を示す概略断面図である。蓋付きホルダ2から廃液容器12を取り外し、計測チューブ10が格納された状態の汚染防止ボックス9を、蓋付きホルダ2にセットする。フィルタ4の下方に設けられているノズル5の先端は、隔壁6の開口を貫通し、計測チューブ10の内部に侵入する。
【0052】
(ステップS107:抽出液の分注)
作業者は、蓋1を開け、高感度ATP検査キットに含まれる抽出液をフィルタカップ3のフィルタ4上に分注し、蓋1を閉じる。抽出液の容量は、例えば500μL以下、場合に応じて50μL以下に設定することができる。抽出液は、フィルタ4上に捕捉されている細菌14の細胞膜及び細胞壁を溶解し、細菌14内部のATPを抽出液中に放出させる。抽出液の分注後、例えば1分間以上静置することにより、ATP抽出を十分に行うことができる。
【0053】
図14Gは、ステップS107における遠心ろ過カートリッジ100の状態を示す概略断面図である。抽出液17を分注すると、細菌14の細胞膜及び細胞壁が破壊され、細菌14内部のATPが抽出液17に溶解する。
【0054】
(ステップS108:抽出液の遠心ろ過)
作業者は、遠心ろ過カートリッジ100を遠心機にセットし、遠心機を駆動して、細菌14由来のATPが溶解した抽出液17を遠心ろ過する。
【0055】
図14Hは、ステップS108における遠心ろ過カートリッジ100の状態を示す概略断面図である。細菌14由来のATPを含む抽出液17は、フィルタ4及びノズル5を通過し、計測チューブ10へ送液される。計測チューブ10に回収されるろ液は、検体11として後述の発光計測に用いられる。ノズル5の先端は計測チューブ10の内部に侵入しているため、検体11となるろ液が計測チューブ10の外部に漏れ出すことはない。また、計測チューブ10は最低限の開口部を除いて、周囲を汚染防止ボックス9に覆われていることで、計測チューブ10が暴露している従来よりも、作業中の汚染リスクを軽減することができる。
【0056】
(ステップS109:計測チューブの取り出し・発光計測)
作業者は、汚染防止ボックス9の下枠8を上枠7から取り外し、計測チューブ10を下枠8から取り出す。計測チューブ10の取り出しは、安全キャビネット内部等のクリーンな環境で行うことができる。作業者は、計測チューブ10を取り出した後、計測チューブ10をATP計測装置にセットして、ATP計測装置により細菌由来のATP生物発光量を計測する。発光量が事前に採用している閾値を超えた場合、規定以上の細菌が検査試料(製薬用水)の中に存在したことを表す。
【0057】
図14Iは、ステップS109における遠心ろ過カートリッジ100の状態を示す概略断面図である。
図14Iは、汚染防止ボックス9の下枠8を上枠7から取り外した状態を示しており、計測チューブ10の上部が下枠8から突出していることにより、作業者が計測チューブ10を把持しやすくなっている。計測チューブ10の下枠8からの突出量は、例えば、作業者が計測チューブ10を把持した際に指が計測チューブ10の開口に接触しないような長さとすることができる。具体的には、計測チューブ10の下枠8からの突出量は、例えば2cm以上とすることができる。
【0058】
<検査試料の種類について>
以上、検査試料が製薬用水である場合の無菌検査方法を説明したが、本開示の遠心ろ過カートリッジ100は、製薬用水の遠心ろ過以外にも適用することができる。例えば、飲料製品又は医薬品(例えば内服薬、外用薬、注射剤、細胞治療薬、遺伝子治療薬等)を検査試料とすることができる。したがって、遠心ろ過カートリッジ100は、飲料製品の工程内検査や出荷前検査、医薬品の工程内検査若しくは出荷前検査などに用いることができる。
【0059】
<第1の実施形態のまとめ>
以上のように、第1の実施形態に係る遠心ろ過カートリッジ100は、微生物を捕捉するフィルタ4と、フィルタ4を通過した液体を排出するノズル5と、を有するフィルタカップ3と、フィルタカップ3と接続可能に構成され、ノズル5から排出された液体を収容可能な計測チューブ10を内部に格納する汚染防止ボックス9と、を備える。汚染防止ボックス9は、フィルタカップ3と計測チューブ10の開口面との間に配置される隔壁6を有し、隔壁6は、ノズル5が通過可能な開口を有し、ノズル5は、汚染防止ボックス9がフィルタカップと接続された際に、ノズル5の先端が開口の下端よりも下に位置し、かつ計測チューブ10の内部に侵入する長さを有する。
【0060】
このように、計測チューブ10が汚染防止ボックス9に格納されており、計測チューブ10の開口面とフィルタカップ3との間に隔壁6が存在するため、周辺環境からの計測チューブ10の汚染を軽減することができる。また、ノズル5の先端が計測チューブ10の内部に侵入している(開口面よりも下に位置する)ため、フィルタ4を通過する液体(ターゲット物質を含みうる検体)を、フィルタ4、ノズル5及び計測チューブ10以外に接触することなく、遠心ろ過によって正確に全量を計測チューブ10に移動させることが可能になる。結果として、微生物検査の偽陽性及び偽陰性を低減することができる。
【0061】
[第2の実施形態]
上述の第1の実施形態においては、一度に1つの検査試料を検査可能な遠心ろ過カートリッジについて説明した。しかしながら、検査によっては、同一の検査試料を複数に分割し、複数回検査することが望まれる。例えば、一度の検査では偽陽性・偽陰性を判断することは難しいため、複数回測定を行い、所定の回数以上陽性となった場合に、検査結果として陽性と判断することが考えられる。そこで、第2の実施形態では、1つの検査試料から複数個の計測チューブに検体を取得可能な遠心ろ過カートリッジを提案する。
【0062】
<遠心ろ過カートリッジの構成例>
図15は、第2の実施形態に係る遠心ろ過カートリッジ200を示す概略断面図である。
図15においては、蓋付きホルダ2に汚染防止ボックス9が接続された状態が示されている。遠心ろ過カートリッジ200は、主に、フィルタカップ3が2つのノズル5を有し、汚染防止ボックス9が2つの計測チューブ10を格納している点で、第1の実施形態の遠心ろ過カートリッジ100と異なっている。2つの計測チューブ10を格納する空間は互いに分離されている。隔壁6には、2つのノズル5と対応する位置のそれぞれに開口が設けられている。隔壁6の開口のそれぞれは、ノズル5の断面積よりも大きく、計測チューブ10の開口部の面積よりも小さい。ノズル5の数、隔壁6の開口の数及び計測チューブ10の数は2つに限定されず、3つ以上であってもよい。
【0063】
本実施形態においては、蓋1はヒンジ機構で開閉可能に構成されているが、第1の実施形態と同様にスクリュー方式であってもよい。
【0064】
図示は省略しているが、蓋付きホルダ2に接続される廃液容器12は、2つの空間に分離されている必要はないが、2つの空間に分離されていてもよい。
【0065】
<遠心ろ過カートリッジを用いた無菌検査方法>
本実施形態の無菌検査方法は、第1の実施形態と同様とすることができるため、説明を省略する。ただし、本実施形態によれば、上述のステップS108において、2つの計測チューブ10に検体が回収されるため、2つの検体について同時にATP発光計測を実施することができる。
【0066】
<第2の実施形態のまとめ>
以上のように、第2の実施形態に係る遠心ろ過カートリッジの汚染防止ボックスは、異なる空間に格納された複数の計測チューブを備える。これにより、1つの検査試料から複数の検体を取得することができるため、検査結果の正確性を向上できる。
【0067】
[第3の実施形態]
第1の実施形態では、計測チューブ10が周辺環境から汚染されるのを軽減するため、計測チューブ10を汚染防止ボックス9に格納する遠心ろ過カートリッジ100について説明した。第1の実施形態の構造でも阻害物質の混入を十分に軽減できるが、第3の実施形態では、さらに徹底した密閉性を実現可能な遠心ろ過カートリッジを提案する。
【0068】
<遠心ろ過カートリッジの構成例>
図16は、第3の実施形態に係る遠心ろ過カートリッジ300を示す概略断面図である。
図16においては、蓋付きホルダ2に汚染防止ボックス9を接続する直前の状態が示されている。遠心ろ過カートリッジ300は、汚染防止ボックス9の隔壁6の開口に密閉シール19が設けられ、密閉シール19を貫通するためにノズル18の先端が針状に加工されている点で、第1の実施形態の遠心ろ過カートリッジ100と異なっている。
【0069】
密閉シール19としては、例えばゴム状のセプタム又はアルミ箔のフィルム等を用いることができる。作業者は、蓋付きホルダ2に汚染防止ボックス9を接続する際に、ノズル18を密閉シール19に突き刺して、計測チューブ10に侵入させる。
【0070】
蓋付きホルダ2に汚染防止ボックス9を接続した状態において、ノズル18の先端を含む面が隔壁6の下面よりも例えば1mm以上、場合に応じて3mm以上離れるように、ノズル18を設計することができる。これにより、遠心ろ過の際に、溶液が汚染防止ボックス9及び隔壁6に接触することを防止することができる。また、ノズル18の先端を含む面が計測チューブ10の開口面よりも例えば1mm以上、場合に応じて5mm以上離れるように、ノズル18を設計することができる。これにより、遠心ろ過の際に、溶液が計測チューブ10の外に漏れ出すことを防止することができる。
【0071】
<遠心ろ過カートリッジを用いた無菌検査方法>
本実施形態の無菌検査方法は、第1の実施形態と同様とすることができるため、説明を省略する。
【0072】
<第3の実施形態のまとめ>
以上のように、第3の実施形態に係る遠心ろ過カートリッジ300の汚染防止ボックス9は、隔壁6の開口に密閉シール19が設けられている。これにより、汚染防止ボックス9を蓋付きホルダ2に接続されるまでは、計測チューブ10の密閉性及び無菌性が維持されるため、計測チューブ10の汚染をより確実に防止することが可能になる。
【0073】
[変形例]
本開示は、上述した実施形態に限定されるものでなく、様々な変形例を含んでいる。例えば、上述した実施形態は、本開示を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備える必要はない。また、ある実施形態の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることもできる。また、各実施形態の構成の一部について、他の実施形態の構成の一部を追加、削除又は置換することもできる。
【符号の説明】
【0074】
1…蓋、2…蓋付きホルダ、3…フィルタカップ、4…フィルタ、5…ノズル、6…隔壁、7…上枠(第1のボックス)、8…下枠(第2のボックス)、9…汚染防止ボックス、10…計測チューブ(計測容器)、11…検体、12…廃液容器、13…製薬用水、14…細菌(微生物)、15…廃液、16…ATP活性消去液、17…抽出液、18…ノズル、19…密閉シール、100~300…遠心ろ過カートリッジ