(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】加工廃液処理装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/10 20060101AFI20240304BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20240304BHJP
B24B 55/12 20060101ALI20240304BHJP
C02F 1/42 20230101ALI20240304BHJP
C02F 1/469 20230101ALI20240304BHJP
B01D 61/48 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
B23Q11/10 E
B23Q11/00 U
B24B55/12
C02F1/42 A
C02F1/469
B01D61/48
(21)【出願番号】P 2019152630
(22)【出願日】2019-08-23
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】柏木 宏之
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-149403(JP,A)
【文献】特開2000-061322(JP,A)
【文献】特開2005-243814(JP,A)
【文献】特開2018-187721(JP,A)
【文献】特開2017-148888(JP,A)
【文献】特開2012-076159(JP,A)
【文献】特開2012-000705(JP,A)
【文献】特開2011-171324(JP,A)
【文献】特開2005-334992(JP,A)
【文献】特開平02-256418(JP,A)
【文献】特表2012-521896(JP,A)
【文献】特表2001-509074(JP,A)
【文献】実開平05-070861(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2011/0070811(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2001/0017277(US,A1)
【文献】米国特許第06077437(US,A)
【文献】米国特許第05788826(US,A)
【文献】韓国登録特許第10-0774663(KR,B1)
【文献】特開2019-130617(JP,A)
【文献】特開2015-025417(JP,A)
【文献】実開平02-048102(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00-13/00
B24B 49/02
B24B 53/00-57/04
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/42
C02F 1/44
C02F 1/46-1/48
H01L 21/304
H01L 21/78-21/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を加工する加工装置に接続され、該加工装置から排出された加工廃液を処理する加工廃液処理装置であって、
該加工廃液を貯留する廃液貯留タンクと、
該廃液貯留タンクから供給された該加工廃液を濾過する廃液濾過手段と、
該廃液濾過手段によって濾過された該加工廃液を該加工装置に供給するための第1流路と、
該廃液濾過手段によって濾過された該加工廃液からイオンを除去して純水を生成するイオン交換手段と、
該イオン交換手段によって生成された該純水を該加工装置に供給するための第2流路と、を備え、
該第1流路と該第2流路とは異なる流路であり、
該加工装置は、切削装置又は研削装置であ
り、
該廃液濾過手段によって濾過された該加工廃液が該第1流路を介して該加工装置に供給されるとともに該イオン交換手段によって生成された該純水が該第2流路を介して該加工装置に供給されることを特徴とする加工廃液処理装置。
【請求項2】
被加工物を加工する加工装置に接続され、該加工装置から排出された加工廃液を処理する加工廃液処理装置であって、
該加工廃液を貯留する廃液貯留タンクと、
該廃液貯留タンクから供給された該加工廃液を濾過する廃液濾過手段と、
該廃液濾過手段によって濾過された該加工廃液を該加工装置に供給するための第1流路と、
該廃液濾過手段によって濾過された該加工廃液からイオンを除去して純水を生成するイオン交換手段と、
該イオン交換手段によって生成された該純水を該加工装置に供給するための第2流路と、を備え、
該加工装置は、切削装置又は研削装置であり、
該廃液濾過手段によって濾過された該加工廃液は、該被加工物の加工に用いられる加工液として、該第1流路を介して該加工装置に供給され、
該イオン交換手段によって生成された該純水は、該被加工物の洗浄に用いられる洗浄液として、該第2流路を介して該加工装置に供給されることを特徴とす
る加工廃液処理装置。
【請求項3】
該イオン交換手段は、該加工廃液からイオンをイオン交換樹脂によって除去して該純水を生成するとともに、該イオン交換樹脂を電気透析によって再生することを特徴とする請求項1又は2記載の加工廃液処理装置。
【請求項4】
該廃液貯留タンクに接続され、該廃液貯留タンクから供給された該加工廃液の温度を調節する温度調節手段を更に備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の加工廃液処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置から排出された加工廃液を処理する加工廃液処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デバイスチップの製造工程では、格子状に配列された複数の分割予定ライン(ストリート)によって区画された複数の領域の表面側にそれぞれIC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等のデバイスが形成されたウェーハが用いられる。このウェーハを分割予定ラインに沿って分割することにより、デバイスをそれぞれ備える複数のデバイスチップが得られる。ウェーハの分割には、環状の切削ブレードでウェーハを切削する切削装置等が用いられる。
【0003】
また、近年では、電子機器の小型化、薄型化に伴い、デバイスチップにも薄型化が求められている。そこで、ウェーハの分割前にウェーハの裏面側を研削することによって、ウェーハを薄化する工程が実施される。ウェーハの研削加工には、複数の研削砥石が固定された研削ホイールでウェーハを研削する研削装置等が用いられる。
【0004】
上記の切削装置、研削装置等の加工装置によってウェーハを加工する際には、ウェーハに加工液が供給される。この加工液によって、ウェーハと加工工具(切削ブレード、研削ホイール等)とが冷却されるとともに、加工によって発生した屑(加工屑)が洗い流される。また、ウェーハの加工後には、ウェーハに洗浄液を供給してウェーハを洗浄する洗浄工程が実施される。加工液及び洗浄液としては、主に純水が用いられる。そして、加工装置で使用された純水は、加工廃液として加工装置の外部に排出され、処分される。
【0005】
加工装置でウェーハを加工及び洗浄する際には、多量の純水が使用される。そのため、加工装置で使用された純水を全て加工廃液として処分してしまうと、コストが増大する。そこで、加工装置から排出された加工廃液を再利用する方法が提案されている。例えば特許文献1には、加工装置から排出された加工廃液をイオン交換樹脂によって精製することにより、純水を生成する加工廃液処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
イオン交換によって純水を生成する方式としては、混床塔方式と多床塔方式とが知られている。混床塔方式では、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とが混合された状態で充填されたイオン交換塔(ボンベ)を備える加工廃液処理装置が用いられる。一方、多床塔方式では、カチオン交換樹脂が充填されたイオン交換塔と、アニオン交換樹脂が充填されたイオン交換塔とが直列に接続された加工廃液処理装置が用いられる。
【0008】
加工廃液処理装置の使用を継続すると、イオン交換樹脂のイオン交換能力が徐々に低下し、生成される純水の純度が低下する。そのため、加工廃液処理装置を一定期間使用した後には、イオン交換樹脂を再生し、イオン交換樹脂のイオン交換能力を回復させる処理が行われる。イオン交換樹脂の再生処理は、使用済みのイオン交換塔を加工廃液処理装置から取り外し、このイオン交換塔に薬液を供給することによって行われる。
【0009】
イオン交換樹脂の再生処理を行っている間は、予備のイオン交換塔が純水の生成に用いられる。よって、加工廃液処理装置から使用済みのイオン交換塔が取り外された後、加工廃液処理装置に予備のイオン交換塔が装着される。しかしながら、イオン交換塔の交換作業中は、加工廃液処理装置によって純水が生成されず、加工装置への純水の供給も停止される。そのため、イオン交換樹脂の再生処理を行う際には、加工装置の稼働を一時的に停止して加工を中断する必要があり、これによって加工効率が低下する。この純水の生成の停止による加工効率の低下は、イオン交換樹脂の再生処理の頻度が高いほど顕著になる。
【0010】
また、イオン交換樹脂に再生処理が行われると、イオン交換樹脂の体積が減少する。そのため、イオン交換樹脂の再生時には、必要に応じて新たなイオン交換樹脂が補充され、加工廃液が適切に精製されるようにイオン交換樹脂の量が維持される。しかしながら、イオン交換樹脂の再生処理の頻度が高いと、イオン交換樹脂の体積の減少量が大きくなり、イオン交換樹脂の補充量も増大する。これにより、純水の生成コストが増大する。
【0011】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、イオン交換樹脂の再生処理の頻度を低減することが可能な加工廃液処理装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、被加工物を加工する加工装置に接続され、該加工装置から排出された加工廃液を処理する加工廃液処理装置であって、該加工廃液を貯留する廃液貯留タンクと、該廃液貯留タンクから供給された該加工廃液を濾過する廃液濾過手段と、該廃液濾過手段によって濾過された該加工廃液を該加工装置に供給するための第1流路と、該廃液濾過手段によって濾過された該加工廃液からイオンを除去して純水を生成するイオン交換手段と、該イオン交換手段によって生成された該純水を該加工装置に供給するための第2流路と、を備え、該第1流路と該第2流路とは異なる流路であり、該加工装置は、切削装置又は研削装置であり、該廃液濾過手段によって濾過された該加工廃液が該第1流路を介して該加工装置に供給されるとともに該イオン交換手段によって生成された該純水が該第2流路を介して該加工装置に供給される加工廃液処理装置が提供される。また、本発明の他の一態様によれば、被加工物を加工する加工装置に接続され、該加工装置から排出された加工廃液を処理する加工廃液処理装置であって、該加工廃液を貯留する廃液貯留タンクと、該廃液貯留タンクから供給された該加工廃液を濾過する廃液濾過手段と、該廃液濾過手段によって濾過された該加工廃液を該加工装置に供給するための第1流路と、該廃液濾過手段によって濾過された該加工廃液からイオンを除去して純水を生成するイオン交換手段と、該イオン交換手段によって生成された該純水を該加工装置に供給するための第2流路と、を備え、該加工装置は、切削装置又は研削装置であり、該廃液濾過手段によって濾過された該加工廃液は、該被加工物の加工に用いられる加工液として、該第1流路を介して該加工装置に供給され、該イオン交換手段によって生成された該純水は、該被加工物の洗浄に用いられる洗浄液として、該第2流路を介して該加工装置に供給される加工廃液処理装置が提供される。
【0013】
なお、好ましくは、該イオン交換手段は、該加工廃液からイオンをイオン交換樹脂によって除去して該純水を生成するとともに、該イオン交換樹脂を電気透析によって再生する。また、好ましくは、該加工廃液処理装置は、該廃液貯留タンクに接続され、該廃液貯留タンクから供給された該加工廃液の温度を調節する温度調節手段を更に備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様に係る加工廃液処理装置は、廃液濾過手段によって濾過された加工廃液を加工装置に供給するための第1流路と、廃液濾過手段によって濾過された加工廃液からイオンを除去して純水を生成するイオン交換手段と、イオン交換手段によって生成された純水を加工装置に供給するための第2流路と、を備える。
【0015】
上記の加工廃液処理装置では、廃液濾過手段によって濾過された加工廃液の一部を、イオン交換手段によって精製せずに加工装置に供給できる。これにより、イオン交換手段によって精製される加工廃液の量が低減される。その結果、イオン交換樹脂のイオン交換能力の低下が抑制され、イオン交換樹脂の再生処理の頻度が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】イオン交換手段の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明の一態様に係る実施形態を説明する。まず、本実施形態に係る加工廃液処理装置の構成例について説明する。
図1は、加工廃液処理装置2を示す模式図である。加工廃液処理装置2は、純水を用いて被加工物を加工する加工装置(不図示)に接続されている。そして、加工廃液処理装置2は、加工装置から排出された廃液を精製して純水を生成し、その純水を加工装置に供給する。
【0018】
加工廃液処理装置2が接続される加工装置の種類に制限はない。加工装置の例としては、環状の切削ブレードで被加工物を切削する加工ユニット(切削ユニット)を備える切削装置、複数の研削砥石が固定された研削ホイールで被加工物を研削する加工ユニット(研削ユニット)を備える研削装置、研磨パッドで被加工物を研磨する加工ユニット(研磨ユニット)を備える研磨装置等が挙げられる。
【0019】
例えば、格子状に配列された複数の分割予定ライン(ストリート)によって区画された複数の領域の表面側にそれぞれIC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等のデバイスが形成されたシリコンウェーハが、加工装置によって加工される。シリコンウェーハを研削装置及び研磨装置によって薄化した後、切削装置によって分割予定ラインに沿って分割することにより、デバイスをそれぞれ備える複数のデバイスチップが製造される。
【0020】
なお、被加工物の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えば被加工物は、シリコン以外の半導体(GaAs、InP、GaN、SiC等)、セラミックス、樹脂、金属等の材料でなるウェーハであってもよい。また、被加工物に形成されるデバイスの種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はなく、被加工物にはデバイスが形成されていなくてもよい。また、被加工物は、CSP(Chip Size Package)基板、QFN(Quad Flat Non-leaded package)基板等のパッケージ基板であってもよい。
【0021】
加工装置では、被加工物の加工時に加工ユニット及び被加工物に供給される加工液や、加工後の被加工物を洗浄するための洗浄液が用いられる。この加工液や洗浄液としては、純水等が用いられる。そして、使用済みの加工液及び洗浄液は、加工廃液として加工装置から排出される。
【0022】
加工廃液処理装置2は、加工装置から排出された加工廃液を貯留する廃液貯留タンク4を備える。廃液貯留タンク4は、配管、チューブ等の流路を介して加工装置に接続されており、加工装置から排出された加工廃液はこの流路を伝って廃液貯留タンク4に供給され、貯留される。なお、加工装置から廃液貯留タンク4に供給される加工廃液には、加工装置によって被加工物を加工した際に生じた屑(加工屑)等の異物や、不純物イオンが含まれている。
【0023】
廃液貯留タンク4は、廃液供給ポンプ6を介して温度調節手段(温度調節ユニット)8に接続されている。廃液供給ポンプ6は、廃液貯留タンク4に貯留された加工廃液を温度調節手段8に供給するポンプである。この廃液供給ポンプ6によって、廃液貯留タンク4から温度調節手段8に供給される加工廃液の量が制御される。
【0024】
温度調節手段8は、温度調節器等によって構成され、廃液貯留タンク4から供給された加工廃液の温度を調整する。温度調節手段8によって温度が調節された加工廃液は、温度調節手段8に接続された廃液濾過手段(廃液濾過ユニット)10に供給される。
【0025】
廃液濾過手段10は、廃液貯留タンク4から温度調節手段8を介して供給された加工廃液を濾過して精製する。具体的には、廃液濾過手段10は加工廃液を濾過するためのフィルターを備える濾過器によって構成される。廃液濾過手段10のフィルターとしては、例えば逆浸透膜(RO膜)が用いられる。このフィルターを加工廃液が通過すると、加工廃液に含まれる異物がフィルターによって捕獲される。これにより、廃液濾過手段10によって濾過、精製された加工廃液(清水)20が得られる。
【0026】
廃液濾過手段10は、廃液濾過手段10によって濾過された加工廃液20を精製して純水を生成するイオン交換手段(イオン交換ユニット)12に接続されている。イオン交換手段12はイオン交換樹脂を備えており、イオン交換によって加工廃液20からイオンを除去する。具体的には、イオン交換手段12は、イオン交換樹脂が収容されたイオン交換塔(ボンベ)によって構成できる。
【0027】
例えば、イオン交換手段12として、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とが混合された状態で充填されたイオン交換塔によって構成される、混床式イオン交換手段(混床式イオン交換ユニット)を用いることができる。また、イオン交換手段12として、カチオン交換樹脂が充填されたイオン交換塔と、アニオン交換樹脂が充填されたイオン交換塔とが直列に接続された、多床式イオン交換手段(多床式イオン交換ユニット)を用いることもできる。
【0028】
廃液濾過手段10からイオン交換手段12に加工廃液20が供給されると、加工廃液20は、イオン交換手段12が備えるイオン交換塔に充填されたイオン交換樹脂の隙間を通過する。このとき、加工廃液20に含まれるイオンが、イオン交換樹脂によって除去される。これにより、加工廃液20が精製され、純水22が生成される。この純水22は、廃液濾過手段10によって濾過された加工廃液20よりも純度が高い。
【0029】
なお、イオン交換手段12による加工廃液20の精製を継続すると、イオン交換手段12が備えるイオン交換樹脂のイオン交換能力が徐々に低下し、イオン交換手段12によって生成される純水22の純度が低下する。そのため、イオン交換手段12は、一定期間使用された後に、予備のイオン交換手段と交換される。このイオン交換手段12の交換作業中は、加工廃液処理装置2による純水22の生成が一時的に停止される。
【0030】
そして、加工廃液処理装置2から取り外されたイオン交換手段12が備える使用済みのイオン交換樹脂に対して、再生処理が施される。具体的には、イオン交換樹脂を収容するイオン交換塔に薬液が注入され、イオン交換樹脂が再生される。例えば、カチオン交換樹脂を再生する際は薬液として塩酸等が用いられ、アニオン交換樹脂を再生する際は薬液として水酸化ナトリウム水溶液等が用いられる。
【0031】
また、廃液濾過手段10には、廃液濾過手段10によって濾過された加工廃液20が供給される流路(流水路)14が接続されている。流路14の一端側は廃液濾過手段10に接続され、流路14の他端側は加工廃液を排出した加工装置に接続されている。また、イオン交換手段12には、イオン交換手段12によって生成された純水22が供給される流路(流水路)16が接続されている。流路16の一端側はイオン交換手段12に接続され、流路16の他端側は加工廃液を排出した加工装置に接続されている。
【0032】
加工廃液処理装置2から加工装置には、廃液濾過手段10によって濾過された加工廃液20が流路14を介して供給されるとともに、イオン交換手段12によって生成された純水22が流路16を介して供給される。なお、流路14,16はそれぞれ、例えば金属製の配管や樹脂製のチューブによって構成される。ただし、流路14,16の構造や材質に制限はない。
【0033】
ここで、加工装置によって被加工物に施される各種の処理には、被加工物等に液体が供給される処理が含まれる。そして、この液体が供給される処理には、純水の使用が好ましい処理と、純水よりも純度の低い液体を用いても支障がない処理とが含まれる。
【0034】
例えば、加工後の被加工物を洗浄する洗浄工程では、被加工物に洗浄液が供給される。この洗浄液に不純物イオンが含まれていると、不純物イオンが洗浄後の被加工物に付着した状態で残存する。その後、被加工物に乾燥処理が施されると、不純物イオンが被加工物に強固に固着して除去が困難な残痕(ウォーターマーク)となり、被加工物の品質低下、被加工物に形成されたデバイスの動作不良等の不都合が生じることがある。そのため、洗浄液としては、イオンが除去された純水が用いられることが好ましい。
【0035】
一方、例えば被加工物の加工中には、被加工物及び加工ユニットに加工液が供給される。そして、加工液の供給によって、ウェーハと加工ユニットとが冷却されるとともに、加工によって発生した屑(加工屑)が洗い流される。
【0036】
この加工液は被加工物の加工中に継続して供給され、被加工物は濡れた状態に維持される。そのため、加工液に不純物イオンが含有されており、この不純物イオンが被加工物に付着しても、ウォーターマークが残存することはない。また、加工後の被加工物に不純物イオンが付着していても、その後に実施される上記の洗浄工程において、不純物イオンが純水によって洗い流される。そのため、加工液には純水よりも純度の低い液体(不純物イオンが多く含まれる液体)を用いることができる。
【0037】
そこで、加工廃液処理装置2は、純度の異なる2種類の液体、すなわち濾過された加工廃液(清水)20と純水22とを生成して、加工装置に供給する。そして、加工装置では、純度の高い液体が必要な処理に純水22が用いられ、純水22よりも純度の低い液体によって実施可能な処理に濾過された加工廃液20が用いられる。例えば、濾過された加工廃液20は、被加工物の加工に用いられる加工液として、流路14を介して加工装置に供給される。また、純水22は、被加工物の洗浄に用いられる洗浄液として、流路16介して加工装置に供給される。
【0038】
加工廃液処理装置2から加工装置に加工廃液20と純水22とが供給される場合、廃液貯留タンク4に貯留された加工廃液の一部のみがイオン交換手段12によって精製される。そのため、廃液貯留タンク4に貯留された加工廃液の全てがイオン交換手段12によって精製される場合と比較して、イオン交換手段12が備えるイオン交換樹脂によってイオンが除去される加工廃液20の量が低減される。これにより、イオン交換樹脂のイオン交換能力の低下が抑制される。
【0039】
イオン交換樹脂のイオン交換能力の低下が抑制されると、イオン交換樹脂の再生処理を実施する頻度が低減される。これにより、イオン交換手段12の交換作業の頻度が低減され、交換作業によって純水22の生成が停止される期間が短縮される。また、再生処理によるイオン交換樹脂の体積の減少が抑制され、イオン交換樹脂の補充コストが低減される。
【0040】
なお、上記では、イオン交換樹脂が収容されたイオン交換塔(ボンベ)によってイオン交換手段12が構成される例について説明した。ただし、イオン交換手段12は、イオン交換によって加工廃液20の精製が可能であれば、その構成に制限はない。例えば、イオン交換手段12として、電気的な作用、具体的には電気透析によってイオン交換樹脂からイオンを除去してイオン交換樹脂を再生する、電気再生式イオン交換手段(電気再生式イオン交換ユニット)であってもよい。
【0041】
図2は、イオン交換手段12の変形例を示す断面図である。
図2に示すイオン交換手段12は、所定の電圧が印加される板状の陽極30及び陰極32を備える。陽極30と陰極32との間には、イオン交換樹脂36が収容される複数の脱塩室(精製室)34が設けられている。この脱塩室34は、陰極32側に設けられたカチオン膜38と、陽極30側に設けられたアニオン膜40とによって画定されている。すなわち、脱塩室34はカチオン膜38とアニオン膜40とによって挟まれた領域に相当する。なお、カチオン膜38は、カチオンを通過させアニオンの通過を阻止するイオン交換膜であり、アニオン膜40は、アニオンを通過させカチオンの通過を阻止するイオン交換膜である。
【0042】
脱塩室34には、カチオンを交換するイオン交換樹脂36(カチオン交換樹脂)と、アニオンを交換するイオン交換樹脂36(アニオン交換樹脂)とが混合された状態で充填されている。イオン交換樹脂36が充填された脱塩室34、カチオン膜38、アニオン膜40によって、セル42が構成される。なお、
図2には2組のセル42が設けられた構成例を示しているが、セル42の数に制限はない。
【0043】
陽極30と陽極30に隣接するセル42との間には、カチオン膜44が設けられている。また、陰極32と陰極32に隣接するセル42との間には、アニオン膜46が設けられている。カチオン膜44は、カチオンを通過させアニオンの通過を阻止するイオン交換膜であり、アニオン膜46は、アニオンを通過させカチオンの通過を阻止するイオン交換膜である。
【0044】
互いに隣接するカチオン膜38,44とアニオン膜40,46との間にはそれぞれ、濃縮室48が形成されている。この濃縮室48は、カチオン膜38,44とアニオン膜40,46とによって挟まれた領域に相当する。また、陽極30とカチオン膜44との間、及び、陰極32とアニオン膜46との間にはそれぞれ、電極室50が形成されている。
【0045】
脱塩室34の一端側(
図2では上側)には、廃液濾過手段10によって濾過された加工廃液20が供給される。そして、加工廃液20は、イオン交換樹脂36の隙間を通過しながら、脱塩室34の一端側から他端側(
図2では下側)に向かって流れる。このとき、加工廃液20に含まれるイオンがイオン交換樹脂36によって除去される。
【0046】
具体的には、加工廃液20に含まれるカチオン52がカチオン交換樹脂によって捕獲されるとともに、加工廃液20に含まれるアニオン54がアニオン交換樹脂によって捕獲される。これにより、加工廃液20が精製され、純水22が生成される。生成された純水22は、脱塩室34の他端側から流出する。この純水22が、
図1に示す流路16に供給される。
【0047】
なお、加工廃液処理装置2の使用を継続すると、イオン交換樹脂36のイオン交換能力が徐々に低下し、イオン交換手段12によって生成される純水22の純度が低下する。そのため、イオン交換樹脂36を再生させる処理を行うことによって、イオン交換樹脂36のイオン交換能力が維持される。加工廃液処理装置2では、電気的な作用、具体的には電気透析によって、イオン交換樹脂36が再生される。
【0048】
イオン交換樹脂36の再生を行う際は、
図2に示すように、廃液濾過手段10によって濾過された加工廃液20の一部が濃縮室48の一端側(
図2では上側)に供給される。そして、加工廃液20は濃縮室48の一端側から他端側(
図2では下側)に向かって流れる。また、廃液濾過手段10によって濾過された加工廃液20の一部が、電極室50の一端側(
図2では上側)に供給される。そして、加工廃液20は電極室50の一端側から他端側(
図2では下側)に向かって流れる。
【0049】
この状態で、陽極30及び陰極32にそれぞれ所定の電圧を印加し、陽極30と陰極32との間に電位差を生じさせる。その結果、イオン交換樹脂36に捕獲されたカチオン52が、カチオン膜38を通過して陰極32側に移動する。このカチオン52はアニオン膜40,46を通過せず、濃縮室48に蓄積される。同様に、イオン交換樹脂36に捕獲されたアニオン54が、アニオン膜40を通過して陽極30側に移動し、濃縮室48に蓄積される。これにより、イオン交換樹脂36に捕獲されたイオンが離脱し、イオン交換樹脂36が再生される。
【0050】
上記のように、
図2に示すイオン交換手段12では、陽極30及び陰極32に電圧を印加することにより、イオン交換手段12を加工廃液処理装置2から取り外すことなくイオン交換樹脂36の再生を実施できる。そのため、イオン交換樹脂36の再生処理時、イオン交換手段12の交換作業によって純水22の生成が中断されることがなく、加工装置への純水22の供給を継続できる。
【0051】
また、
図2に示すイオン交換手段12は、加工廃液20の精製中にもイオン交換樹脂36を再生できる。すなわち、イオン交換手段12を用いると、純水22の生成とイオン交換樹脂36の再生とを同時進行で実施できる。なお、イオン交換樹脂36の再生期間は自由に設定できる。例えば、イオン交換樹脂36の再生は、純水22が生成されている間、常時実施されてもよいし、所定の間隔で断続的に実施されてもよい。
【0052】
イオン交換樹脂36の再生を実施すると、脱塩室34を流れる加工廃液20から取り出されたイオン(イオン交換樹脂36に捕獲されたイオン)が濃縮室48に放出され、濃縮室48内でイオンが濃縮された濃縮水24が生成される。また、電極室50内では、電極室50を流れる加工廃液20が電気分解され、電解水26が生成される。この濃縮水24及び電解水26は、例えば加工廃液処理装置2に設けられた排出路を介して、加工廃液処理装置2の外部に排出される。
【0053】
以上の通り、本実施形態に係る加工廃液処理装置2は、廃液濾過手段10によって濾過された加工廃液20を加工装置に供給するための流路14と、廃液濾過手段10によって濾過された加工廃液20からイオンを除去して純水22を生成するイオン交換手段12と、イオン交換手段12によって生成された純水22を加工装置に供給するための流路16と、を備える。
【0054】
上記の加工廃液処理装置2では、廃液濾過手段10によって濾過された加工廃液20の一部を、イオン交換手段12によって精製せずに加工装置に供給できる。これにより、イオン交換手段12によって精製される加工廃液20の量が低減される。その結果、イオン交換樹脂のイオン交換能力の低下が抑制され、イオン交換樹脂の再生処理の頻度が低減される。
【0055】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0056】
2 加工廃液処理装置
4 廃液貯留タンク
6 廃液供給ポンプ
8 温度調節手段(温度調節ユニット)
10 廃液濾過手段(廃液濾過ユニット)
12 イオン交換手段(イオン交換ユニット)
14,16 流路(流水路)
20 加工廃液(清水)
22 純水
24 濃縮水
26 電解水
30 陽極
32 陰極
34 脱塩室(精製室)
36 イオン交換樹脂
38 カチオン膜
40 アニオン膜
42 セル
44 カチオン膜
46 アニオン膜
48 濃縮室
50 電極室
52 カチオン
54 アニオン