(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
B24B 55/06 20060101AFI20240304BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240304BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240304BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20240304BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20240304BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
B24B55/06
H01L21/78 F
H01L21/304 631
B24B7/04 A
B23Q17/00 A
B23Q11/00 Z
(21)【出願番号】P 2020037099
(22)【出願日】2020-03-04
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】久保 徹雄
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-198838(JP,A)
【文献】特開2006-194680(JP,A)
【文献】特開昭59-079135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 55/06
H01L 21/301
H01L 21/304
B24B 7/04
B23Q 17/00
B23Q 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャックテーブルで保持された被加工物に加工水を供給しながら、スピンドルを有する加工ユニットで該被加工物を加工する加工装置であって、
上板と、複数の側板と、を含み、該チャックテーブルと該加工ユニットの一部とを覆う
カバー部材と、
該
カバー部材に接続された排気ダクトと、
上面側に該チャックテーブルが配置されており、該カバー部材の該上板よりも下方に配置された円盤状のターンテーブルと、を備え、
該ターンテーブルは、該ターンテーブルの該上面から突出している複数の仕切板を有し、該ターンテーブルの静止時には、該複数の仕切板は、該複数の側板のうちそれぞれ対応する側板の下方に配置されており、
該ターンテーブルの静止時には、少なくとも、該カバー部材、該ターンテーブルの該上面及び該複数の仕切り板で規定される空間が所定の負圧に維持されるが、
該ターンテーブルの回転により、該空間が開放されると、該空間の圧力が上昇し、
該排気ダクトは、
一端が該
カバー部材に接続され、他端が吸引源を有する排気ユニットに接続される排気経路と、
該排気ダクトの側面に形成された開口部を介して該排気経路に連通しており、内部に圧力センサを含む箱体と、を有し、
該開口部は、
該排気ダクトの内径の0.11%以上0.56%以下の直径を有することを特徴とする加工装置。
【請求項2】
該加工ユニット及び該ターンテーブルの動作を制御する制御部を含むことを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャックテーブルで保持された被加工物に加工水を供給しながら、当該被加工物を加工する加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスチップの製造プロセスでは、互いに交差する複数の分割予定ラインが表面側に設定され、この分割予定ラインで区画される各領域にIC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等のデバイスが形成されたウェーハを、複数のデバイスチップに分割する。
【0003】
ウェーハを複数のデバイスチップに分割する際には、例えば、まず、ウェーハの裏面側を研削装置で研削して、所定の厚さとなる様にウェーハを薄化する。そして、切削装置を用いて、薄化されたウェーハを各分割予定ラインに沿って切削することで、ウェーハを個々のデバイスチップに分割する。
【0004】
研削装置、切削装置等の加工装置には、ウェーハを加工する加工室が設けられている。加工室は、板材等で所定の空間を囲むことで形成された閉鎖空間である。加工室内には、ウェーハを吸引保持するためのチャックテーブルが配置される。
【0005】
チャックテーブルでウェーハを保持した状態で、純水等の加工水をウェーハに供給しながらウェーハを加工すると、加工により生じた加工屑を含有した加工水が、霧状になって加工室内に拡散することがある。
【0006】
霧状の加工水が、加工装置に設けられた窓に付着すると、窓を通じた視認性が低下し、加工装置の内部を確認することが困難になる。また、霧状の加工水が加工室外に飛散すると、加工室外に位置する加工装置の各構成要素や、加工前のウェーハが汚染される。
【0007】
例えば、ウェーハを吸着して搬送する搬送機構が、霧状の加工水で汚染されると、搬送機構を介して別のウェーハが汚染される場合や、吸着不具合によりウェーハが落下して割れる場合がある。また、加工屑を含む霧状の加工水とは別に、粉状の加工屑が、加工室内に拡散して加工室内を汚染することもある。
【0008】
この様に、加工屑を含む霧状の加工水や粉状の加工屑は、いずれもウェーハや加工装置に対して悪影響を及ぼす。この弊害を回避するために、加工室には、霧状の加工水や粉状の加工屑を排出するための排気ダクトが接続されている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
排気ダクトの内部の圧力は、通常、大気圧又はクリーンルーム内の圧力よりも低い圧力(即ち、負圧)に設定される。また、排気ダクト内の圧力が適切であるかどうかを監視するために、排気ダクトには圧力計が配置されることがある。
【0010】
しかし、加工室は、ウェーハの搬入又は搬出のために、一時的に大気又はクリーンルーム内の雰囲気に開放される。この一時的な開放により、加工室及び排気ダクト内へ空気が流入し、排気ダクト内の負圧の大きさが、一時的に低下する。つまり、排気ダクト内の圧力が、大気圧又はクリーンルーム内の圧力に近づくように一時的に上昇する。
【0011】
加工室及び排気ダクトの異常を検知するために、たとえ一時的であっても排気ダクト内の負圧の大きさが所定の閾値以下に低下すると、加工装置はアラートを発する様に設定されている。加工装置がアラートを発すると、オペレーターによるアラート解除等の対応が必要になる。
【0012】
加工室及び排気ダクトの異常は正しく検知されることが望ましいが、ウェーハの搬入又は搬出は頻繁に行われる動作であるので、加工装置はこれらの動作に起因する不要なアラートを発しないことが望ましい。不要なアラートが発せられると、オペレーターの対応が必要になり、単位時間当たりの生産性が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、通常は、加工装置の排気ダクト内の圧力を監視し、排気ダクト内の一時的な負圧の大きさの低下に対してはアラートを発しない加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様によれば、チャックテーブルで保持された被加工物に加工水を供給しながら、スピンドルを有する加工ユニットで該被加工物を加工する加工装置であって、上板と、複数の側板と、を含み、該チャックテーブルと該加工ユニットの一部とを覆うカバー部材と、該カバー部材に接続された排気ダクトと、上面側に該チャックテーブルが配置されており、該カバー部材の該上板よりも下方に配置された円盤状のターンテーブルと、を備え、該ターンテーブルは、該ターンテーブルの該上面から突出している複数の仕切板を有し、該ターンテーブルの静止時には、該複数の仕切板は、該複数の側板のうちそれぞれ対応する側板の下方に配置されており、該ターンテーブルの静止時には、少なくとも、該カバー部材、該ターンテーブルの該上面及び該複数の仕切り板で規定される空間が所定の負圧に維持されるが、該ターンテーブルの回転により、該空間が開放されると、該空間の圧力が上昇し、該排気ダクトは、一端が該カバー部材に接続され、他端が吸引源を有する排気ユニットに接続される排気経路と、該排気ダクトの側面に形成された開口部を介して該排気経路に連通しており、内部に圧力センサを含む箱体と、を有し、該開口部は、該排気ダクトの内径の0.11%以上0.56%以下の直径を有することを特徴とする加工装置が提供される。好ましくは、該加工装置は、該加工ユニット及び該ターンテーブルの動作を制御する制御部を含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様に係る加工装置は、加工室と、加工室に接続された排気ダクトと、を備える。排気ダクトは、排気経路と、箱体とを有する。排気経路は、一端が加工室に接続され、他端が吸引源を有する排気ユニットに接続される。箱体は、排気経路の側面に形成された開口部を介して排気経路に連通しており、内部に圧力センサを含む。
【0017】
排気経路と箱体とを連通させる開口部は、排気経路の圧力の急激な変化が箱体へ及ぶことを低減可能な大きさを有する。それゆえ、排気経路の負圧の大きさが一時的に低下しても、箱体内部の負圧の大きさは所定の閾値以下にはならない。
【0018】
従って、圧力センサは、通常は、排気ダクト内における排気経路の圧力を監視しつつも、排気経路の一時的な負圧の大きさの低下に対しては、影響を受け難い。これにより、排気経路の負圧の大きさが一時的に低下しても、加工装置はアラートを発しないので、不要なアラートを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図3】
図3(A)はターンテーブルの上面図であり、
図3(B)はターンテーブルの斜視図である。
【
図4】本実施形態に係る研削室等の一部断面側面図である。
【
図5】比較例に係る研削室等の一部断面側面図である。
【
図6】排気経路の圧力変化を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。
図1は、加工装置の一例である研削装置2の斜視図である。なお、
図1に示すX軸方向、Y軸方向(前後方向)、及び、Z軸方向(鉛直方向、研削送り方向)は互いに直交する。
【0021】
研削装置2は、構成要素を支持又は収容する略直方体状の基台4を有する。基台4の前方(Y軸方向の一方)には凹部4aが形成されており、この凹部4aには、被加工物11(
図2等を参照)を搬送する搬送ロボット6が設けられている。
【0022】
X軸方向において凹部4aを挟む様に、カセット載置領域8a及びカセット載置領域8bが存在する。例えば、カセット載置領域8a上には、加工前の1以上の被加工物11を収容しているカセット10aが載置されている。
【0023】
例えば、カセット10aには、それぞれ表面側に樹脂製の保護テープが貼り付けられた1又は複数の被加工物11が収容されている。また、カセット載置領域8b上には、加工後の1以上の被加工物11を収容するカセット10bが載置されている。
【0024】
カセット載置領域8aの後方(Y軸方向の他方)には、搬送ロボット6により搬出された被加工物11の位置を決める位置決めテーブル12が設けられている。X軸方向において位置決めテーブル12に隣接する領域には、ローディングアーム14が設けられている。
【0025】
ローディングアーム14の後方にはXY平面上で回転可能な円盤状のターンテーブル16が設けられている。ターンテーブル16の下面側には、ターンテーブル16を回転させるモーター等の第1の回転駆動源(不図示)が配置されている。
【0026】
ターンテーブル16の上面側には、ターンテーブル16の円周方向に略120度離れる態様で3個のチャックテーブル18が設けられている。ローディングアーム14に最も近い搬入搬出領域Aには、1つのチャックテーブル18が配置されている。
【0027】
また、搬入搬出領域Aから上面視で時計回りに略120度進んだ粗研削領域Bと、搬入搬出領域Aから上面視で反時計回りに略120度進んだ仕上げ研削領域Cとには、それぞれ1つのチャックテーブル18が配置されている。
【0028】
各チャックテーブル18は、セラミックス等で形成された円盤状の枠体を有する。枠体の上面側には、円盤状の凹部が形成されており、この凹部に嵌合する態様で、凹部には円盤状のポーラス板が固定されている。
【0029】
ポーラス板の下面側は枠体内に形成されている流路(不図示)の一端に接続されている。この流路の他端には、真空ポンプ等の吸引源(不図示)が接続されている。吸引源を動作させるとポーラス板の上面(保持面18a(
図2等参照))には負圧が生じる。
【0030】
各チャックテーブル18の下方には、モーター等の第2の回転駆動源(不図示)が設けられている。第2の回転駆動源の出力軸は、チャックテーブル18の下部に連結されている。第2の回転駆動源を動作させると、チャックテーブル18は所定方向に回転する。
【0031】
ターンテーブル16の粗研削領域Bの後方には、基台4の上面から突出する態様で、四角柱状の支持構造22aが設けられている。支持構造22aの前面側には研削送りユニット(移動ユニット)24が設けられている。
【0032】
研削送りユニット24は、支持構造22aの前面に固定されたZ軸方向に略平行な一対のZ軸ガイドレール26を有する。一対のZ軸ガイドレール26には、Z軸移動プレート28がスライド可能に取り付けられている。
【0033】
Z軸移動プレート28の後方(裏面)側には、ナット部(不図示)が設けられている。ナット部には、一対のZ軸ガイドレール26の間においてZ軸方向に沿って設けられたZ軸ボールネジ30が、回転可能な態様で連結している。
【0034】
Z軸ボールネジ30の上端部には、Z軸パルスモーター32が連結されている。Z軸パルスモーター32でZ軸ボールネジ30を回転させれば、Z軸移動プレート28は、Z軸ガイドレール26に沿ってZ軸方向に移動する。
【0035】
Z軸移動プレート28の前面には、粗研削ユニット(加工ユニット)36aが固定されている。粗研削ユニット36aは、Z軸移動プレート28に固定されている円筒状の保持部材38を有する。保持部材38の内部には、Z軸方向に略平行に配置された円筒状のスピンドルハウジング40(
図2参照)が設けられている。
【0036】
スピンドルハウジング40内には、Z軸方向に略平行に配置された円柱形状のスピンドル42(
図2参照)の一部が回転可能な状態で収容されている。スピンドル42の上端部には、モーター44が連結されている。
【0037】
スピンドル42の下端部には、円盤状のホイールマウント48が固定されている。ホイールマウント48の下面には、ネジ等の固定部材(不図示)により、円環状の粗研削ホイール50aが装着されている。
【0038】
粗研削ホイール50aの直下は、上述の粗研削領域Bに対応する。粗研削ホイール50aは、アルミニウム合金等の金属材料で形成された円環状のホイール基台52aと、ホイール基台52aの下面側に装着された複数の粗研削砥石54aとを有する(
図2参照)。
【0039】
複数の粗研削砥石54aは、ホイール基台52aの下面の円周に沿って、隣り合う粗研削砥石54a同士の間に間隙が設けられる態様で環状に配列されている。粗研削砥石54aは、例えば、金属、セラミックス、樹脂等の結合材に、ダイヤモンド、cBN(cubic boron nitride)等の砥粒を混合して形成される。
【0040】
ホイール基台52a、ホイールマウント48、スピンドル42等には、粗研削砥石54aに、純水等の研削水(加工水)を供給するための流路(不図示)が設けられている。当該流路の一端には、研削水供給ユニット(不図示)が接続されている。研削水供給ユニットは、例えば、研削水が貯留されたタンク(不図示)、タンクからホイール基台52a等へ研削水を供給するためのポンプ(不図示)等を含む。
【0041】
図1に示す様に、支持構造22aのX軸方向の一方に隣接し、且つ、仕上げ研削領域Cの後方には、四角柱状の支持構造22bが設けられている。支持構造22bの前方には、支持構造22aと同様に、研削送りユニット24が設けられている。
【0042】
支持構造22bの研削送りユニット24には、仕上げ研削ユニット(加工ユニット)36bが連結されている。仕上げ研削ユニット36bも、粗研削ユニット36aと同様に、保持部材38、スピンドルハウジング40、スピンドル42、モーター44及びホイールマウント48を有する。
【0043】
但し、仕上げ研削ユニット36bのスピンドル42には、ホイールマウント48を介して円環状の仕上げ研削ホイール50bが装着されている。仕上げ研削ホイール50bの直下は、上述の仕上げ研削領域Cに対応する。
【0044】
仕上げ研削ホイール50bは、ホイール基台52aと同じ構造を有するホイール基台を備える。仕上げ研削ユニット36bのホイール基台、ホイールマウント48、スピンドル42等にも、研削水を供給するための流路(不図示)が設けられている。また、当該流路の一端には、研削水供給ユニット(不図示)が接続されている。
【0045】
仕上げ研削ホイール50bのホイール基台の下面側には、複数の仕上げ研削砥石が設けられている。複数の仕上げ研削砥石は、ホイール基台の下面の円周に沿って、隣り合う仕上げ研削砥石同士の間に間隙が設けられる態様で環状に配列されている。
【0046】
仕上げ研削砥石の砥粒は、粗研削砥石54aの砥粒よりも平均粒径が小さい。但し、仕上げ研削砥石の結合材や砥粒の材料に特段の制限はなく、仕上げ研削砥石の仕様に応じて適宜選択できる。
【0047】
搬入搬出領域Aの前方、且つ、ローディングアーム14のX軸方向に隣接する領域には、アンローディングアーム56が設けられている。アンローディングアーム56の前方には、研削後の被加工物11を洗浄及び乾燥するためのスピンナ洗浄ユニット58が設けられている。
【0048】
研削装置2は、構成要素の動作を制御する制御部(不図示)を備える。制御部は、位置決めテーブル12、ローディングアーム14、ターンテーブル16、チャックテーブル18、粗研削ユニット36a、仕上げ研削ユニット36b、アンローディングアーム56、スピンナ洗浄ユニット58等の動作を制御する。
【0049】
制御部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の主記憶装置と、フラッシュメモリー、ハードディスクドライブ等の補助記憶装置と、を含むコンピュータによって構成されている。補助記憶装置に記憶されるソフトウェアに従い処理装置等を動作させることによって、制御部の機能が実現される。
【0050】
次に、
図1及び
図2を参照して、研削装置2の研削室等について説明する。
図2は、研削室等の一部断面側面図である。
図1に示す様に、粗研削領域Bの上方には、金属で形成された角柱状のカバー部材60aが設けられている。
【0051】
カバー部材60aは、搬入搬出領域A及び仕上げ研削領域Cから粗研削領域Bを分離する、粗研削用の研削室(加工室)62aを形成している。カバー部材60aは、粗研削領域Bに位置するチャックテーブル18と、粗研削ユニット36aの一部(ホイールマウント48、粗研削ホイール50a等)とを覆う様に、複数の側板と1つの上板とを有する。
【0052】
カバー部材60aの上板には、スピンドル42が貫通するための第1開口(不図示)が形成されている。当該第1開口の直径は、スピンドル42の直径に比べて僅かに大きいので、第1開口の内周部はスピンドル42の外周部には接しない。
【0053】
カバー部材60aの後方側の側板には、第2開口が形成されており、この第2開口には、金属で形成された排気ダクト64aが接続されている。排気ダクト64aは、屈曲した円筒状のダクトであり、内径90mmの空洞部(即ち、排気経路70a)を有する。
【0054】
排気経路70aの一端は、研削室62aに接続している。また、排気経路70aの他端は、ファン等の吸引源66と、フィルター(不図示)とを含む排気ユニット68に接続している。
【0055】
排気ダクト64aの側面には、排気ダクト64aの一部を貫通する貫通開口(開口部)72aが形成されている。本実施形態の貫通開口72aは、円柱形状を有し、貫通開口72aの長さ(即ち、円柱の高さ)は、排気ダクト64aを構成する壁の厚さに略等しい。
【0056】
また、貫通開口72aの大きさ(即ち、円柱の直径)は、排気経路70aでの急激な圧力の変化が箱体74aに及ぶことを低減できる程度に十分に小さい。本実施形態の貫通開口72aは、0.2mm(排気ダクト64aの直径の0.22%)の直径を有する。
【0057】
但し、貫通開口72aは、0.1mm以上0.5mm以下(即ち、排気ダクト64aの直径の約0.11%以上約0.56%以下)の任意の直径を有してもよい。この範囲であれば、排気経路70aでの急激な圧力の変化が、箱体74aに及ぶことを低減できる。
【0058】
貫通開口72aに対して、排気経路70aとは反対側には、排気ダクト64aと同じ金属材料で形成された空洞の箱体74aが設けられている。箱体74aは、貫通開口72aを介して排気経路70aに連通している。
【0059】
箱体74aには、箱体74a内部の圧力を検出する圧力センサ76aが設けられている。圧力センサ76aとしては、ピエゾ抵抗型、静電容量型等の種々の圧力センサが用いられる。圧力センサ76aは、箱体74a内部の圧力の大きさが、所定の閾値(例えば、-100Paの大きさ)を下回ったことを検知した場合に、上述の制御部へ所定の信号を送る。
【0060】
制御部は、圧力センサ76aから所定の信号を受けた場合に、基台4上の筐体(不図示)に取り付けられている、警報ランプ、ブザー、モニター等のアラート通知部(不図示)を動作させて、アラートを発する。
【0061】
仕上げ研削領域Cの上方には、カバー部材60aと同様のカバー部材60b(
図1参照)が設けられている。カバー部材60bは、仕上げ研削用の研削室(加工室)62bを形成している。
【0062】
カバー部材60bは、仕上げ研削領域Cに位置するチャックテーブル18と、仕上げ研削ユニット36bの一部(ホイールマウント48、仕上げ研削ホイール50b等)とを覆う様に、複数の側板と1つの上板とを有する。カバー部材60bの上板にも、スピンドル42が貫通する第1開口が形成されている。
【0063】
また、カバー部材60bの後方側の側板には、第2開口(不図示)が形成されており、この第2開口には、金属で形成された排気ダクト64bが接続されている。排気ダクト64bは、排気ダクト64aと略同じ形状、構造、機能等を有するので、詳細な説明は省略する。
【0064】
排気ダクト64bの内部にも、排気経路70aと同じ形状の排気経路が形成されている。また、排気ダクト64bの側面には、貫通開口72aと同じ形状の貫通開口(不図示)が形成されている。
【0065】
排気ダクト64bの貫通開口に対して、排気ダクト64bの排気経路とは反対側には、箱体74aと同じ箱体(不図示)が設けられている。この箱体の内部にも、圧力センサ76aと同じ圧力センサ(不図示)が設けられている。
【0066】
ところで、研削室62a、62bの底部には、ターンテーブル16が配置されている。
図3(A)は、ターンテーブル16の上面図である。ターンテーブル16の上面には、円形のターンテーブル16を略三等分する様に、複数の仕切板78が設けられている。
【0067】
各仕切板78は、ターンテーブル16の上面の中心近傍で互いに接続されており、ターンテーブル16の上面の中心近傍から外周まで形成されている。
図3(B)は、ターンテーブル16の斜視図である。
【0068】
仕切板78は、ターンテーブル16の上面から所定長さだけ突出している。ターンテーブル16の静止時に、各仕切板78の上部は、Z軸方向で隣接するカバー部材60a及びカバー部材60bの側板の底部から僅かに離れている(
図2参照)。
【0069】
次に、研削装置2を用いて、被加工物11を研削する手順について説明する。まず、搬送ロボット6が、カセット10aから位置決めテーブル12へ、被加工物11を搬送する。位置決めテーブル12で被加工物11の位置が調整された後、ローディングアーム14が、搬入搬出領域Aに位置するチャックテーブル18へ被加工物11を搬送する。
【0070】
このとき、被加工物11は、被加工物11の裏面側が上方を向くように、保持面18a上に載置される。そして、被加工物11の表面側が保持面18aで吸引保持される。その後、ターンテーブル16を時計回りに回転させる。
【0071】
これにより、被加工物11を吸引保持したチャックテーブル18は、粗研削領域Bに移動する。粗研削領域Bでは、チャックテーブル18と、粗研削ユニット36aのスピンドル42と、をそれぞれ回転させる。そして、粗研削砥石54aに研削水を供給しながら、粗研削ユニット36aを研削送りする。
【0072】
図2に示す様に、粗研削砥石54aが被加工物11の裏面側に接触すると、裏面側が粗研削(加工)される。研削時には、吸引源66を動作させることで、研削室62a及び排気経路70aの気圧を、大気圧よりも低い状態(即ち、負圧)とする。
【0073】
研削室62a及び排気経路70aの気圧は、例えば、大気圧よりも110Paだけ低い負圧(即ち、-110Pa[gauge])に調整される。この様に、研削室62a及び排気経路70aを負圧にすることより、霧状の研削水や粉状の加工屑は、排気経路70a等を通じて研削装置2に外部へ排出される。
【0074】
粗研削終了後、まず、吸引源66の動作を停止させる。次に、粗研削領域Bに位置するチャックテーブル18が、仕上げ研削領域Cへ移動する様に、例えば、約1.3秒の時間をかけて、ターンテーブル16を時計回りに約120度回転させる。
【0075】
ターンテーブル16の回転時には、
図4に示す様に、仕切板78の上部と、カバー部材60aの下部とに隙間が生じて、研削室62a、62bが一時的に大気又はクリーンルーム内の雰囲気に開放される。
【0076】
図4は、本実施形態に係る研削室62a等の一部断面側面図であり、一時的に研削室62aが開放された様子を示す。なお、本明細書において、研削室62a、62bの一時的な開放とは、ターンテーブル16の回転に起因する開放であって、例えば、1秒以上3秒以下の時間の開放を意味する。
【0077】
研削室62aの一時的な開放により、研削室62aへ空気が流入し、排気経路70aの負圧の大きさが一時的に低下する。即ち、排気経路70aの圧力が、大気圧に近づくように一時的に上昇する。
【0078】
しかし、上述のように、排気経路70aと箱体74aとを連通させる貫通開口72aは十分に小さいので、排気経路70aの圧力の急激な変化が箱体74aへ及び難い。その結果、箱体74a内の負圧は、その大きさが若干低下するが、-100Pa以下-120Pa以上の範囲で維持される。
【0079】
従って、圧力センサ76aは、通常は、排気経路70aの圧力を監視しつつも、排気経路70aの一時的な負圧の大きさの低下に対しては、影響を受け難い。それゆえ、排気経路70aの負圧の大きさが一時的に低下しても、研削装置2はアラートを発しない。
【0080】
なお、排気ダクト64bの側面に形成された貫通開口においても同様の現象が生じるので、排気ダクト64bの排気経路の負圧の大きさが一時的に低下しても、研削装置2はアラートを発しない。それゆえ、研削装置2での不要なアラートを低減できる。
【0081】
次に、仕上げ研削領域Cで、被加工物11の裏面側に対して研削水を供給しながら仕上げ研削(加工)を施す。仕上げ研削終了後、まず、吸引源66の動作を停止させる。次に、例えば約2.6秒の時間をかけてターンテーブル16を反時計回りに回転させる。
【0082】
これにより、仕上げ研削領域Cに位置するチャックテーブル18を、搬入搬出領域Aへ移動させる。但し、ターンテーブル16の回転時にも、研削室62a及び62bの一時的な開放により、排気経路70aと、排気ダクト64bの排気経路との各負圧の大きさが一時的に低下する。
【0083】
しかし、上述のように、本実施形態では、箱体74a内の負圧の大きさが低下し難い。排気ダクト64bの箱体内の負圧の大きさも、同様に、低下し難い。それゆえ、研削装置2における不要なアラートを低減できる。
【0084】
搬入搬出領域Aへ戻されたチャックテーブル18上に位置する被加工物11は、アンローディングアーム56でスピンナ洗浄ユニット58へ搬送され、スピンナ洗浄ユニット58での洗浄及び乾燥の後、搬送ロボット6によりカセット10bへ搬送される。
【0085】
次に、比較例について説明する。
図5は、比較例に係る研削室62a等の一部断面側面図であり、一時的に研削室62aが開放された様子を示す。比較例では、排気経路70aと、箱体74aとを連通させる貫通開口82aの大きさが、上述の貫通開口72aに比べて大きい。
【0086】
貫通開口82aは、例えば、円柱形状を有する。貫通開口82aの大きさ(即ち、円柱の直径)は、例えば、排気ダクト64aの内径と略同じである。貫通開口82aの大きさに起因して、ターンテーブル16の回転時に、箱体74a内部の負圧の大きさが排気経路70aと同程度まで低下する。
【0087】
それゆえ、圧力センサ76aは、排気経路70aの負圧の大きさの一時的な低下の影響を受け易い。
図6は、チャックテーブル18を粗研削領域Bから仕上げ研削領域Cへ移動させる際の排気経路70aの圧力変化を説明する模式図である。
【0088】
横軸は時間を示す。t1は、ターンテーブル16の回転開始タイミングを示し、t2は、ターンテーブル16の回転停止タイミングを示す。t1からt2までの時間は、ターンテーブル16の回転時間であり、例えば、約1.3秒である。
【0089】
縦軸は大気圧を基準とした負圧(Pa[gauge])を示す。なお、縦軸では、下に行くほど負圧の大きさが大きくなり、上に行くほど負圧の大きさが小さくなる。
図6のグラフ90(実線)は、比較例に係る排気経路70aの圧力変化を示す。
【0090】
グラフ90(実線)に示す様に、比較例に係る箱体74a内の負圧の大きさは、排気経路70aの負圧の大きさが一時的に低下すると、急峻に低下する。それゆえ、圧力センサ76aが測定する箱体74a内の負圧の大きさは、-100Pa[gauge]の大きさを下回り、-70Pa[gauge]程度の大きさまで低下する。従って、ターンテーブル16を回転させる度に、研削装置2がアラートを発することとなる。
【0091】
これに対して、
図6のグラフ92(一点鎖線)は、上述の実施形態に係る排気経路70aの圧力変化を示す。グラフ92に示す様に、本実施形態に係る箱体74a内の負圧の大きさは、排気経路70aの負圧の大きさが一時的に低下しても、-100Pa[gauge]の大きさを下回らない。従って、研削装置2における不要なアラートを低減できる。
【0092】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。一例において、上述の実施形態では、排気ダクト64aの側面に箱体74aが直接接続されるが、排気ダクト64aの貫通開口72aと箱体74aとは、接続ホース(不図示)を介して接続されてもよい。
【0093】
この場合、接続ホースの長手方向に対して直交する断面の内径が、貫通開口72aと略同径とされる。なお、研削室62a等の加工室を負圧雰囲気にするのであれば、本願の技術的思想は、他の加工装置に適用されてもよい。
【0094】
他の加工装置としては、例えば、研磨装置が挙げられる。研磨装置は、研磨ユニットと、研磨ユニットの下方に配置され被加工物11を吸引保持するチャックテーブルとを備える。研磨ユニットは、スピンドルと、スピンドルの下端部に装着された研磨パッドホイールとを有する。
【0095】
研磨装置のチャックテーブルの上方は、カバー部材で覆われている。カバー部材は、チャックテーブルと、研磨ユニットの一部とを覆う様に、複数の側板と1つの上板とを有する。当該カバー部材は、研磨室(加工室)を構成する。
【0096】
カバー部材の上板には、スピンドルが貫通するための開口が形成されている。当該開口の直径は、スピンドルの直径に比べて僅かに大きい。カバー部材の後方側の側板には、他の開口が形成されており、他の開口には、金属で形成された排気ダクトが接続されている。
【0097】
被加工物11の研磨時には、研磨室を負圧雰囲気とし、研磨室に接続された排気ダクトを通じて、研磨室内に生じた霧状の研磨水(加工水)等は排気される。なお、研磨装置のチャックテーブルをターンテーブル16の一部に配置して、研削研磨装置(加工装置)としてもよい。
【符号の説明】
【0098】
2:研削装置
4:基台
4a:凹部
6:搬送ロボット
8a,8b:カセット載置領域
10a,10b:カセット
11:被加工物
12:位置決めテーブル
14:ローディングアーム
16:ターンテーブル
18:チャックテーブル
18a:保持面
22a,22b:支持構造
24:研削送りユニット
26:Z軸ガイドレール
28:Z軸移動プレート
30:Z軸ボールネジ
32:Z軸パルスモーター
36a:粗研削ユニット
36b:仕上げ研削ユニット
38:保持部材
40:スピンドルハウジング
42:スピンドル
44:モーター
48:ホイールマウント
50a:粗研削ホイール
50b:仕上げ研削ホイール
52a:ホイール基台
54a:粗研削砥石
56:アンローディングアーム
58:スピンナ洗浄ユニット
60a,60b:カバー部材
62a,62b:研削室
64a,64b:排気ダクト
66:吸引源
68:排気ユニット
70a:排気経路
72a:貫通開口
74a:箱体
76a:圧力センサ
78:仕切板
82a:貫通開口
90,92:グラフ
A:搬入搬出領域
B:粗研削領域
C:仕上げ研削領域